説明

ペプチドベースのジブロックおよびトリブロック分散剤およびジブロックポリマー

一般的なインク顔料と、紙および布帛をはじめとする様々な印刷媒体とに、高親和力で結合するペプチドが同定されている。これらのペプチドを使用して、インクジェット印刷をはじめとするコーティング用途のためのジブロックおよびトリブロック分散剤、および紙ならびに布帛を処理するためのジブロックポリマーを調製した。ジブロック分散剤は、親水性リンカーと共役する顔料結合ペプチド、印刷媒体結合ペプチドと共役する顔料結合ペプチド、または疎水性リンカーと共役する印刷媒体結合ペプチドからなる。ジブロックポリマーは、親水性リンカーまたは恩恵作用物質と共役する印刷媒体結合ペプチドからなる。トリブロック分散剤は、印刷媒体結合ペプチドと共役する親水性リンカーと共役する顔料結合ペプチドからなる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願との関係】
【0001】
本願明細書は、2003年9月8日に出願された米国特許仮出願第60/501497号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、微粒子固形物、特に顔料のための分散剤分野に関する。より具体的には、本発明はジブロックおよびトリブロック分散剤、および特異的ペプチド配列を含んでなるジブロックポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマー分散剤は、塗料および仕上げ剤などのコーティングシステム、およびインクジェット印刷インク中の顔料を安定化するのに広く使用される(非特許文献1、非特許文献2、および非特許文献3)。分散剤は顔料粒子の周囲にシェルを形成する役割を果たし、凝集および凝固を防止する。水性システムでは、顔料分散体は概して非イオン性またはイオン性技術のいずれかによって安定化される。非イオン性技術では、顔料粒子は、水中に伸長してエントロピー的または立体構造的安定化を提供する、水溶性で親水性のセクションを有するポリマーによって安定化される。この目的で有用な代表的なポリマーとしては、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、およびエチレンオキシド変性フェノールが挙げられる。非イオン性技術は、pH変化またはイオンの混入に対して非感応性ではあるが、それには最終生成物が感水性であるという、多くの用途における大きな不都合がある。したがってインク用途などで使用した場合、湿気に曝されると顔料がこすられて不鮮明になる傾向がある。
【0004】
イオン性技術では、顔料粒子は、中和されたアクリル酸、マレイン酸、またはビニルスルホン酸などのイオン含有モノマーのポリマーによって安定化される。ポリマーは、それによってイオン性反発が粒子の凝集を妨げる荷電二重層機序を通じて、安定化を提供する。中和構成要素は塗布後に蒸発する傾向があるので、ポリマーは水溶性が低下し、最終生成物は感水性でない。立体化学性およびイオン性安定化の双方を提供するブロックおよびグラフトポリマーなどのポリマー分散剤が、最も強健な顔料分散体を作る(非特許文献3)。
【0005】
ランダムおよびブロック構造の双方を有するポリマー分散剤が開示されている。例えばオオタ(Ohta)らは、特許文献1で顔料表面に接着するイオン性親水性セグメントおよび芳香族疎水性セグメントを有する、ランダムポリマー分散剤を開示する。マ(Ma)らは特許文献2で、水性インクジェットインクの分散剤としてのABまたはBABブロック共重合体の使用を開示する。Aセグメントは顔料粒子に結合する役割をする疎水性ホモポリマーまたは共重合体であり、Bセグメントは顔料を水性媒体中に分散する役割をする親水性ポリマーまたはその塩である。マ(Ma)らは特許文献3で、Aセグメントが顔料の水中の分散を容易にする役割をする親水性ポリマーであり、Bセグメントが顔料に結合できるポリマーであり、Cセグメントが分散体を安定化する役割をする親水性または疎水性ポリマーである、ABCトリブロックポリマー分散剤を開示する。ローズ(Rose)らが特許文献4で述べるように、ポリマー分散剤の組み合わせを使用してもよい。これらのランダムおよびブロックポリマー分散剤は、分散した顔料に良好な安定性を提供するものの、より高品質のコーティング用途のためにさらなる改善が所望される。例えば顔料とのより強力な相互作用を有する分散剤は、分散体の安定性を改善するであろう。さらにコーティング基材とのより強力な相互作用を有する分散剤は、より耐久性のあるコーティングをもたらすであろう。これは、強化された耐久性が必要とされるテキスタイル印刷で特に重要である。
【0006】
分散剤としてのタンパク質およびペプチドの使用もまた、技術分野で知られている。例えばブリュックマン(Brueckmann)らは特許文献5で、着色調合物中での分散剤としてのカゼイン、コラーゲン、アルブミン、およびゼラチンなどの化学的に変性されたタンパク質の使用について述べる。非特許文献4は、無機ミネラル粒子のための分散剤としてのポリアスパラギン酸などのポリアニオン性アミノ酸ペプチドの使用について述べる。しかし技術分野で、ジブロックおよびトリブロック分散剤における特異的結合ペプチド配列の使用の提案はされていない。
【0007】
セルラーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、アセチルエステラーゼ、およびキチナーゼなどの様々な酵素が、セルロースに特異的に結合する領域を含有することが知られている。これらのセルロース結合領域(CBD)はそれらのアミノ酸配列に基づいて、いくつかの異なるファミリーに分類されている(非特許文献5)。CBDはセルロース表面に結合するためにいくつかの芳香族アミノ酸に依存し、CBDの大きさは典型的にアミノ酸残基33〜168個の範囲であることが知られている。それらのセルロース結合特性のために、CBDは、布帛を処理して布帛上への恩恵作用物質の付着を確実にするための組成物中で使用されている。例えばペダーソン(Pedersen)らは特許文献6で、布帛を処理して漂白された外見を生じるためのCBD結合フェノール酸化酵素を含有するハイブリッド酵素について述べる。フォンデルオステン(Von der Osten)らは特許文献7で、CBDに結合するアミラーゼ、リパーゼ、ペクチナーゼ、および酸化還元酵素などの非セルロース分解性酵素を使用して、セルロース布帛から染みを除去または漂白するためのプロセスについて述べる。ジョーンズ(Jones)らは特許文献8で、スメッツ(Smets)らは特許文献9で、セルロース誘導体布帛を処理するための柔軟剤、芳香剤、抗酸化剤、ポリマー潤滑剤、染料固定剤、および汚れ忌避剤および剥離剤などの恩恵作用物質に結合するCBDを含んでなる組成物について述べる。
【0008】
30個以下のアミノ酸の合成ペプチドであり、好ましくは少なくとも3個の芳香族アミノ酸を含有する模擬CBDについてもまた述べられている(ビョルキスト(Bjorkquist)らに付与された特許文献10)。この開示で示される模擬CBDのための好ましい配列は、配列番号1として示される(AW)、および配列番号2として示される(WE)である。布帛表面への付着を改善するために、様々な恩恵作用物質に結合する模擬CBDを含んでなる布帛ケア組成物が、ビョルキスト(Bjorkquist)らに付与された特許文献10によって教示される。しかし技術分野において、ジブロックまたはトリブロック分散剤中でのCBDまたは模擬CBDの使用に関する記述はない。
【0009】
1985年に導入されて以来、ファージディスプレイは、ペプチド、タンパク質、および薬剤標的のための小型分子をはじめとする多様なリガンドを発見するために広く使用されている(非特許文献6)。その用途は、タンパク質の折りたたみ、新しい触媒の活性、新しい特性を有するDNA結合タンパク質、および組織工学のための新しいペプチドベースの生体材料骨格の研究などのその他の分野に拡大されている(非特許文献7および非特許文献8)。非特許文献9は、無機半導体基材の異なる結晶学的形態に特異的に結合できるペプチド配列を同定するための、ファージディスプレイスクリーニングの使用を開示する。炭素ベースのナノ構造に特異的に結合するペプチドを同定するためのファージディスプレイの使用については、ジャゴタ(Jagota)らに付与された同時係属の特許文献11および特許文献12で述べられる。ファージディスプレイにより大きくて多様なペプチドライブラリーを作り出す方法についてはかねて知られているが、改善された分散剤を作るのに使用するための顔料に特異的に結合するペプチドを見つける課題には応用されていない。ノラン(Nolan)ら(特許文献13および非特許文献10)は、ファージディスプレイスクリーニングを使用して同定された、フルオレセイン、オレゴングリーン514、ローダミンレッド、およびテキサスレッドなどの蛍光性の染料と高い親和力で結合するペプチドを開示する。しかしこれらはコーティング用途において顔料としての役割をしない小型の可溶性染料分子である。
【0010】
非特許文献11は、ファージディスプレイ法を使用した、セルロースマトリックスに特異的に結合するペプチドの同定について述べる。これらのセルロース結合ペプチドの推定されるアミノ酸配列は、保存された芳香族残基であるチロシンまたはフェニルアラニンを有し、それらはセルロース結合タンパク質の正常なセルロース結合領域と類似している。配列番号3として示されるアミノ酸配列SWYLは、セルロース結合モチーフのための有力候補として同定された。コーティング用途のための新しい分散剤におけるこれらのセルロース結合ペプチドの使用については、その開示では述べられていない。
【0011】
エステル(Estell)らは、特許文献14でペプチドライブラリーと抗標的とを接触させて、抗標的に結合するペプチドを除去し、次に非結合ペプチドと標的とを接触させることを含んでなる、修正ファージディスプレイスクリーニング法について述べる。この方法を使用して、襟の汚れに結合するがポリエステル/綿には結合しないペプチド配列、およびポリウレタンに結合するが綿、ポリエステル、またはポリエステル/綿布帛には結合しないペプチド配列が同定された。布帛に結合するペプチド配列は、この開示では報告されていない。
【0012】
ノモト(Nomoto)らは、特許文献15でファージディスプレイを使用した顔料結合ペプチドの同定について述べる。いくつかのカーボンブラック、銅フタロシアニン、二酸化チタン、および二酸化ケイ素結合ペプチド配列が開示される。この開示では顔料結合ペプチドが使用されて、酵素ポリヒドロキシアルカノアートシンターゼが顔料粒子上に固定化される。遺伝的工学が使用され、結合ペプチド配列が組換え融合タンパク質に組み込まれる。固定化酵素は顔料粒子上でポリヒドロキシアルカノアートの形成を触媒し、カプセル化された粒子を形成する。ペプチドベースのジブロックおよびトリブロック顔料分散剤については、この開示では述べられていない。
【0013】
本発明のペプチド結合配列のいくつかについては、その他の目的で報告されている。エングラー(Engler)ら(特許文献16および非特許文献12)は、ファージディスプレイスクリーニングによって、ヒトトランスフェリン受容体への結合ペプチドとして同定される、配列番号4で示されるペプチド配列を開示する。非特許文献13は、ファージディスプレイスクリーニングを使用して、配列番号5として示されるペプチド配列をDNA結合ペプチドとして同定した。非特許文献14は、ファージディスプレイスクリーニングを使用して、配列番号6として示されるペプチド配列をカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)由来β−1,2−連結マンノシドを模倣するペプチドとして同定した。マクドナルド(McDonald)らは、特許文献17で配列番号22として示されるペプチド配列を血管形成阻害タンパク質と結合するペプチドとして同定した。マスダ(Masuda)らは、特許文献18でファージディスプレイスクリーニングを使用して、レトロウィルスインテグラーゼのN−末端領域に特異的に結合するペプチドとして同定される、配列番号30によって示されるペプチド配列を開示する。非特許文献15は、ファージディスプレイスクリーニングを使用して、チロシンキナーゼ受容体EphB2に結合するペプチドとして同定される、配列番号33によって示されるペプチド配列を開示する。これらの開示のいずれもコーティング用途のための新しい分散剤中におけるこれらのペプチド配列の使用については、教示していない。
【0014】
上記を鑑みて、分散顔料に改善された安定性を提供し、商業的インクジェットプリンターをはじめとするより先進的な高品質コーティング用途の厳しい要求を満たす分散剤に対する必要性が存在する。様々な印刷媒体、特に編織布に改善された耐久性を提供するインク分散剤に対する必要性も存在する。
【0015】
出願人は、ファージディスプレイスクリーニングを使用して、高親和力で顔料および様々な印刷媒体に特異的に結合するペプチド配列を同定し、それらを使用して、ペプチドを様々なリンカーブロックにカップリングすることで、ジブロックおよびトリブロック分散剤およびジブロックポリマーをデザインして、既述の必要性を満たした。
【0016】
【特許文献1】米国特許第4,597,794号明細書
【特許文献2】米国特許第5,085,698号明細書
【特許文献3】米国特許第5,519,085号明細書
【特許文献4】GB2349153号明細書
【特許文献5】米国特許第5,124,438号明細書
【特許文献6】国際公開第9740127号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6015783号明細書
【特許文献8】国際公開第9800500号パンフレット
【特許文献9】国際公開第01/18897号パンフレット
【特許文献10】国際公開第0132848号パンフレット
【特許文献11】米国特許出願第10/453415号明細書
【特許文献12】国際公開第03/102020号パンフレット
【特許文献13】国際公開第00/23463号パンフレット
【特許文献14】国際公開第01/79479号パンフレット
【特許文献15】EP1275728号明細書
【特許文献16】国際公開第02/044329号パンフレット
【特許文献17】国際公開第00/032631号パンフレット
【特許文献18】国際公開第00/070035号パンフレット
【非特許文献1】ロイター(Reuter)ら、Progress in Organic Coatings 37:161〜167(1999)
【非特許文献2】シュミッツ(Schmitz)ら、Progress in Organic Coatings 35:191〜196(1999)
【非特許文献3】スピネリ(Spinelli)、Adv.Mater.10:1215〜1218(1998)
【非特許文献4】ガリス(Garris)ら、Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects 80:103〜112(1993)
【非特許文献5】リンダー(Linder)ら、J.Biotechnol.57:12〜28(1997)
【非特許文献6】ディクシト(Dixit)、J.of Sci. & Ind.Research、57:173〜183(1998)
【非特許文献7】ヘース(Hoess)、Chem.Rev.101:3205〜3218(2001)
【非特許文献8】ホームズ(Holmes)、Trends Biotechnol.20:16〜21(2002)
【非特許文献9】ホエーリー(Whaley)ら、Nature 405:665〜668(2000)
【非特許文献10】ノラン(Nolan)ら、Chemistry and Biology 5:731〜728(1998)
【非特許文献11】ハン(Han)ら、Shengwu Huaxue Yu Shengwu Wuli Xuebao 30:263〜266(1998)
【非特許文献12】エングラー(Engler)ら、Eur.J.Biochem.268:2004〜2012(2001)
【非特許文献13】ウォルケ(Wolcke)ら、Nucleotides and Nucleic Acids 20:1239〜1241(2001)
【非特許文献14】ジョールト(Jouault)ら、Glycobiology 11:693〜701(2001)
【非特許文献15】ザング(Zhang)ら、Shengwu Huaxue Yu Shengwu Wuli Xuebao 32:475〜479(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、
様々な顔料および印刷媒体、特にセルロースおよびポリエステルに対して特異的親和力を示す、コンビナトリアルバイオパニング(biopanning)手段によって選択されるいくつかのペプチドを提供する。ペプチドは、場合により多様な親水性および疎水性リンカーと結合する様々なジブロック、トリブロックおよび分散剤形状にアセンブルされる。これらの組成物は、選択的に顔料および染料を印刷媒体に付着させるのに有用である。
【0018】
したがって本発明は、配列番号7、8、9、10、14、15、16、17、18、19、20、21、23、24、25、26、27、28、および29よりなる群から選択される顔料結合ペプチドを提供する。
【0019】
同様に本発明は、配列番号31、32、34、35、36、37、38、および40よりなる群から選択される印刷媒体結合ペプチドを提供する。
【0020】
顔料結合ペプチドは、好ましくは、
(i)コンビナトリアルで作り出されたペプチドのライブラリーを提供し、
(ii)(i)のライブラリーと顔料とを接触させて、
(A)ペプチド−顔料複合体、
(B)非結合顔料、および
(C)非複合ペプチド
を含んでなる反応溶液を形成し、
(iii)(ii)のペプチド−顔料複合体を単離し、そして、
(iv)(ii)のペプチド複合体からペプチドを溶出する
工程を含んでなるプロセスによって選択される。
【0021】
同様にして、印刷媒体結合ペプチドは、好ましくは、
(i)コンビナトリアルで作り出されたペプチドのライブラリーを提供し、
(ii)(i)のライブラリーと顔料とを接触させて、
(A)ペプチド−顔料複合体、
(B)非結合顔料、および
(C)非複合ペプチド
を含んでなる反応溶液を形成し、
(iii)(ii)のペプチド−顔料複合体を単離し、そして、
(iv)(ii)のペプチド複合体からペプチドを溶出する
工程を含んでなるプロセスによって選択される。
【0022】
好ましい一実施態様では、一般構造式、
[PBP]−HL
(式中、
a)PBPは顔料結合ペプチドであり、
b)HLは親水性リンカーであり、そして、
c)nは1〜約5の範囲である)
を有するジブロック分散剤が提供される。
【0023】
本発明の別の好ましい実施態様では、一般構造式、
[PMBP]−HL
(式中、
a)PMBPは印刷媒体結合ペプチドであり、
b)HLは親水性リンカーであり、そして、
c)nは1〜約5の範囲である)
を有するジブロックポリマーが提供される。
【0024】
代案の実施態様では、本発明は、一般構造式、
[PBP]−[PMBP]
(式中、
a)PBPは顔料結合ペプチドであり、
b)PMBPは印刷媒体結合ペプチドであり、
c)nは1〜約5の範囲である)
を有するジブロック分散剤を提供する。
【0025】
別の実施態様では、本発明は、一般構造式、
[PMBP]−HPL
(式中、
a)PMBPは印刷媒体結合ペプチドであり、
b)HPLは疎水性リンカーであり、
c)nは1〜約5の範囲である)
を有するジブロック分散剤を提供する。
【0026】
代案の実施態様では、本発明は、一般構造式、
[PMBP]−BA
(式中、
a)PMBPは配列番号4、30、31、32、33、34、35,36、37、38、および40よりなる群から選択される印刷媒体結合ペプチドであり、
b)BAは恩恵作用物質であり、
c)nは1〜約5の範囲である)
を有するジブロックポリマーを提供する。
【0027】
別の好ましい実施態様では、本発明は、一般構造式、
[PBP]−HL−[PMBP]
(式中、
a)PBPは顔料結合ペプチドであり、
b)HLは親水性リンカーであり、
c)PMBPは印刷媒体結合ペプチドであり、そして
d)nは1〜約5の範囲である)
を有するトリブロック分散剤を提供する。
【0028】
別の実施態様では、本発明は、
a)水性キャリア媒体、
b)顔料、および
c)本発明の分散剤
を含んでなる水性インク組成物を提供する。
【0029】
同様にして本発明は、
a)水性キャリア媒体、
b)顔料、
c)フィルム形成樹脂、および
d)本発明の分散剤またはポリマー
を含んでなる、水性コーティング組成物を提供する。
【0030】
代案としては本発明は
a)プラスチック樹脂、
b)顔料、および
c)本発明の分散剤またはポリマー
を含んでなる着色可塑性組成物を提供する。
【0031】
さらに本発明は、
a)配列番号35、36、37、および38よりなる群から選択されるセルロース結合ペプチド配列を含有する組換えタンパク質を含んでなるサンプルを提供し、
b)サンプルとセルロース担体とを接触させて、
c)セルロース担体をサンプルから分離し、
d)担体を溶出剤で処理して組換えタンパク質を回収する
工程を含んでなる、組換えタンパク質を回収および精製する方法を提供する。
【0032】
a)配列番号5、6、7、8、9、10、14、15、16、17、18、19、20、21、23、24、25、26、27、28、および29よりなる群から選択される顔料結合ペプチド配列を含有する組換えタンパク質を含んでなるサンプルを提供し、
b)サンプルと顔料とを接触させて、
c)顔料をサンプルから分離し、
d)顔料を溶出剤で処理して組換えタンパク質を回収する
工程を含んでなる、組換えタンパク質を回収および精製する方法もまた提供される。
【0033】
さらに
a)顔料結合ペプチドおよび印刷媒体結合ペプチドを有する本発明のトリブロック分散剤を提供し、
b)(a)のトリブロック分散剤と顔料とを接触させることで、顔料が顔料結合ペプチドと複合体を形成して、ペプチド複合体トリブロックを形成し、
c)ステップ(b)のペプチド複合体トリブロックと印刷媒体とを接触させることで、印刷媒体が印刷媒体結合ペプチドと複合体を形成して、顔料が印刷媒体に固着される
工程を含んでなる、顔料を印刷媒体に固着する方法が提供される。
【0034】
配列説明
本願明細書の部分を形成する以下の詳細な説明、図、および添付の配列説明から、本発明をより完全に理解できる。
【0035】
以下の配列は、37C.F.R.1.821〜1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列開示を含む特許出願の要件−配列規則(Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures − the Sequence Rules)」)を満たし、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998)およびEPOおよびPCTの配列表要件(規則5.2および49.5(aの2)、および実施細則第208号および附属書C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データのために使用される記号および型式は、37C.F.R.§1.822で述べられる規則に従う。
【0036】
配列番号1〜3は、模擬CBDペプチドのアミノ酸配列である。
【0037】
配列番号4は、本発明の紙結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0038】
配列番号5は、本発明の顔料結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0039】
配列番号6は、本発明のカーボンブラック結合ペプチドおよびセルロース結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0040】
配列番号7〜29は、本発明の顔料結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0041】
配列番号30〜40は、本発明の印刷媒体結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0042】
配列番号41は、ファージDNAの配列決定に使用されるオリゴヌクレオチドプライマーである。
【0043】
配列番号42〜44は、ELISA結合アッセイで対照として使用されるペプチドのアミノ酸配列である。
【0044】
配列番号45は、ST−リンカーとして使用される、植物病原体菌・カビアスペルギルス(Aspergillus)のセロビオヒドロラーゼI中のドメイン間リンカーのアミノ酸配列である。
【0045】
配列番号46〜50は、TBP1遺伝子を調製するのに使用されるオリゴヌクレオチドである。
【0046】
配列番号51は、TPB1遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0047】
配列番号52は、TPB1と称されるトリブロックタンパク質分散剤のアミノ酸配列である。
【0048】
配列番号53、54は、TBP1断片を増幅するのに使用されるオリゴヌクレオチドプライマーである。
【0049】
配列番号55は、6H−TBP1タンパク質のアミノ酸配列である。
【0050】
配列番号56は、PT−リンカーとして使用される細菌セルロモナス・フィミ(Cellulomonas fimi)のエンドグルカナーゼA中のドメイン間リンカーのアミノ酸配列である。
【0051】
配列番号57〜61は、TBP2遺伝子を調製するのに使用されるオリゴヌクレオチドである。
【0052】
配列番号62は、TPB2遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0053】
配列番号63は、TPB2と称されるトリブロックタンパク質分散剤のアミノ酸配列である。
【0054】
配列番号64、65は、TBP2断片を増幅するのに使用されるオリゴヌクレオチドプライマーである。
【0055】
配列番号66は、6H−TBP2タンパク質のアミノ酸配列である。
【0056】
配列番号67〜114は、実施例6のプラスミドを調製するのに使用されるオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
【0057】
配列番号115は、実施例13のジブロック分散剤を調製するのに使用される綿結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0058】
配列番号116は、実施例19で述べられるゲートウェイエントランスプラスミドpENTR−TBP101のコード領域のヌクレオチド配列である。
【0059】
配列番号117は、Xa認識部位を表すテトラ−ペプチドのアミノ酸配列である。
【0060】
配列番号118は、ゲートウェイエントランスプラスミドpENTR−TBP101によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列である。
【0061】
配列番号119は、実施例19で述べられるゲートウェイエントランスプラスミドpENTR−TBP201のコード領域のヌクレオチド配列である。
【0062】
配列番号120は、ゲートウェイエントランスプラスミドpENTR−TBP201によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列である。
【0063】
配列番号121は、発現プラスミドpINK251のヌクレオチド配列である。
【0064】
配列番号122は、発現プラスミドpINK251によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
本発明は、様々な顔料または印刷媒体に特異的に結合するペプチド配列を提供する。さらに本発明は、インクジェット印刷インク、および塗料および仕上げ剤などのその他のコーティングシステムで使用するためのペプチドベースのジブロックおよびトリブロック分散剤を提供する。本発明のジブロック分散剤は、親水性リンカーと共役する特異的顔料結合ペプチド、疎水性リンカーと共役する印刷媒体結合ペプチド、または印刷媒体結合ペプチドと共役する顔料結合ペプチドを含んでなる。本発明のトリブロック分散剤は、特異的印刷媒体結合ペプチドと共役する、親水性リンカーと共役する特異的顔料結合ペプチドを含んでなる。本発明はまた、親水性リンカーまたは恩恵作用物質と共役する印刷媒体結合ペプチドを含んでなるジブロックポリマーも提供し、これは紙または布帛を処理するのに有用である。
【0066】
ここでは以下の定義が使用され、特許請求の範囲および明細書の解釈において参照されるべきである。
【0067】
「CBD」はセルロース結合領域を意味する。
【0068】
「PBP」は顔料結合ペプチドを意味する。
【0069】
「PMBP」は印刷媒体結合ペプチドを意味する。
【0070】
「HL」は親水性リンカーを意味する。
【0071】
「HPL」は疎水性リンカーを意味する。
【0072】
「BA」は恩恵作用物質を意味する。「恩恵作用物質」という用語は、ここでの用法では繊維、布帛または表面に望ましい効果を提供するあらゆる化合物を指す。
【0073】
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合または変性ペプチド結合によって互いにつながる2個以上のアミノ酸を指す。ここでの用法では「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、区別なく使用される。
【0074】
「顔料」という用語は、不溶性の有機または無機着色剤を指す。
【0075】
「印刷媒体」という用語は、インクジェット印刷に適するあらゆる基材を指す。
【0076】
「分散剤」という用語は、ここでの用法では、液体媒体中の固形顔料粒子のコロイド溶液の形成を安定化する物質を指す。
【0077】
「ジブロック分散剤」という用語は、ここでの用法では、それぞれが特定の機能を果たす2つの異なる単位またはブロックからなる顔料分散剤を指す。ペプチドベースの本発明のジブロック分散剤は、親水性リンカーブロックと共役する顔料結合ペプチドブロック、印刷媒体結合ペプチドブロックと共役する顔料結合ペプチドブロック、または印刷媒体結合ペプチドブロックと共役する疎水性リンカーブロックからなる。ジブロック分散剤は、あらゆるペプチドブロックの多重コピーを含有してもよい。
【0078】
「ジブロックポリマー」という用語は、ここでの用法では、それぞれが特定の機能を果たす2つの異なる単位またはブロックからなる組成物を指す。本発明のペプチドベースのジブロックポリマーは、親水性リンカーブロックと共役する印刷媒体結合ペプチドブロック、または恩恵作用物質と共役する印刷媒体結合ペプチドブロックからなる。ジブロックポリマーは、ペプチドブロックの多重コピー含有してもよい。
【0079】
「トリブロック分散剤」という用語は、ここでの用法では、それぞれが特定の機能を果たす3個の異なる単位またはブロックからなる顔料分散剤を指す。本発明のペプチドベースのトリブロック分散剤は、顔料結合ペプチドブロック、親水性リンカーブロック、および印刷媒体ペプチドブロックからなる。トリブロック分散剤は、あらゆるペプチドブロックの多重コピーを含有してもよい。
【0080】
「ストリンジェンシー」という用語は、本発明の顔料結合ペプチドおよび印刷媒体結合ペプチドの選択に適用される場合、顔料または印刷媒体からペプチドを溶出するのに使用される溶出剤(通常洗剤)の濃度を指す。溶出剤濃度が高いほど、よりストリンジェントな条件が提供される。
【0081】
「ペプチド−顔料複合体」という用語は、ペプチド上の結合部位を通じて顔料粒子に結合するペプチドを含んでなる構造を意味する。
【0082】
「ペプチド−印刷媒体複合体」は、ペプチド上の結合部位を通じて印刷媒体に結合するペプチドを含んでなる構造を意味する。
【0083】
「MB50」という用語は、実施例6で述べられるように、ELISAベース結合アッセイで得られる最大シグナル(Bmax)の50%のシグナルを与える、結合ペプチドの濃度を指す。MB50は、複合体構成要素の結合相互作用または親和力強度の指標を提供する。MB50の値が低いほど、ペプチドとその対応する基材との相互作用はより強力である。
【0084】
「アミノ酸」という用語は、タンパク質またはポリペプチドの基本的化学構造単位を指す。具体的なアミノ酸を同定するのに、ここでは以下の略語が使用される。
【0085】
【表1】

【0086】
「遺伝子」は、コード配列に先行する制御配列(5’非コード配列)およびその後ろの制御配列(3’非コード配列)を含めた特定のタンパクを発現する核酸断片を指す。「天然遺伝子」は、それ自体の制御配列を有して自然界に見いだされる遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」は、自然界には一緒に見られない制御およびコード配列を含んでなる天然遺伝子でないあらゆる遺伝子を指す。したがってキメラ遺伝子は、異なる供給源から誘導される制御配列およびコード配列、あるいは同一供給源から誘導されるが、自然界に見られるのとは異なるやり方で配列された制御配列およびコード配列を含んでなってもよい。「外来性」遺伝子は、常態では宿主生物に見られないが、遺伝子移入によって宿主生物中に導入される遺伝子を指す。外来遺伝子は、非天然生物に挿入された天然遺伝子、またはキメラ遺伝子を含んでなることができる。
【0087】
「合成遺伝子」は、当業者に知られた手順を使用して化学的に合成されるオリゴヌクレオチド構成単位から構築できる。これらの構成単位をライゲートしアニールして遺伝子セグメントを形成し、次にそれを酵素的にアセンブルして遺伝子全体を構成してもよい。DNA配列に関連して「化学的に合成された」とは、構成要素ヌクレオチドが生体外で(in vitro)アセンブルされたことを意味する。DNAの手動化学合成は確立した手順を使用して達成されても良く、あるいはいくつかの市販の機器の1つを使用して自動化学合成を実施できる。したがってヌクレオチド配列の最適化に基づいて、遺伝子を最適な遺伝子発現のために調整し、宿主細胞のコドンバイアスを反映させることができる。当業者は、コドン利用が宿主によって好まれるコドンに偏っている場合の遺伝子発現成功の見込みの真価を認める。好ましいコドンの判定は、配列情報が利用できる宿主細胞から誘導された遺伝子の調査に基づくことができる。
【0088】
「コード配列」は、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「適切な調節配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、配列内、または下流(3’非コード配列)に位置して、転写、RNAプロセシングまたは安定性、または関連コード配列の翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセッシング部位、エフェクター結合部位、およびステム−ループ構造を含んでもよい。
【0089】
「プロモーター」は、コード配列または機能性RNAの発現を調節できるDNA配列を指す。概してコード配列は、プロモーター配列に対して3’に位置する。プロモーターは、そっくりそのまま天然遺伝子から誘導されても良く、あるいは自然界に見られる異なるプロモーターから誘導される異なる要素からなっても良く、あるいは合成DNAセグメントを含んでなってさえよい。異なるプロモーターは、異なる組織または細胞タイプ中で、あるいは異なる発達段階において、あるいは異なる環境または生理学的条件に呼応して、遺伝子の発現を導いてもよいことが当業者には理解される。ほとんどの細胞タイプ中でほとんどの場合に遺伝子の発現を引き起こすプロモーターは、一般に「構造プロモーター」と称される。ほとんどの場合、制御配列のはっきりした境界は完全に画定されていないので、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有してもよいこともさらに認識される。
【0090】
「発現」という用語は、ここでの用法では、発明の核酸断片から誘導されるセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定した蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指してもよい。
【0091】
「形質転換」という用語は、遺伝的に安定した遺伝形質をもたらす、宿主生物体ゲノム中への核酸断片の転移を指す。形質転換核酸断片を含有する宿主生物体は、「トランスジェニック」または「組換え」または「形質転換」生物体と称される。
【0092】
「宿主細胞」という用語は、外来性ポリヌクレオチド配列によって、形質転換または形質移入されている、または形質転換または形質移入が可能な細胞を指す。
【0093】
「プラスミド」、「ベクター」、および「カセット」と言う用語は、細胞の中心的代謝の一部ではない遺伝子を運ぶことが多く、通常環状二本鎖DNA分子の形態である染色体外因子を指す。このような因子は、あらゆる供給源から誘導される一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの配列、ゲノム一体化配列、直鎖または環状のファージまたはヌクレオチド配列を自律的に複製するかもしれず、そこではいくつかのヌクレオチド配列が独自の構成に連結または組換えされ、それは選択された遺伝子産物のために、適切な3’非翻訳配列と共にプロモーター断片およびDNA配列を細胞中に導入することができる。「形質転換カセット」は、外来性遺伝子を含有し、外来遺伝子に加えて特定の宿主細胞の形質転換を容易にする因子を有する特定のベクターを指す。「発現カセット」は、外来性遺伝子を含有し、外来性遺伝子に加えて外来性宿主におけるその遺伝子の促進された発現を可能にする因子を有する特定のベクターを指す。
【0094】
「ファージ」または「バクテリオファージ」という用語は、細菌に感染するウィルスを指す。本発明の目的では改変形態を使用してもよい。好ましいバクテリオファージは、M13と称される「野生型」ファージから誘導される。M13システムは細菌中で生育できるので、感染した細胞を破壊せず、新しいファージを連続的に作らせる。これは一本鎖DNAファージである。
【0095】
「ファージディスプレイ」という用語は、バクテリオファージまたはファージミド粒子表面の機能性外来性ペプチドまたは小型タンパク質のディスプレイを指す。遺伝子改変ファージを使用して、ペプチドをそれらの未変性表面タンパク質のセグメントとして提示してもよい。異なる遺伝子配列のファージ集団によって、ペプチドのライブラリーを作り出してもよい。
【0096】
ここで使用される標準組換えDNAおよび分子クローン化技術は技術分野で良く知られており、サムブルック(Sambrook)J.、フリッチュ(Fritsch)E.F.、およびマニアティス(Maniatis)T.「分子クローン化:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、第二版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク(NY)(1989)(以下、マニアティス(Maniatis));およびシルハビー(Silhavy)T.J.、ベンナン(Bennan)M.L.およびエンクイスト(Enquist)L.W.「遺伝子融合実験(Experiments with Gene Fusions)」Cold Spring Harbor Laboratory Press、Spring Harbor、NY(1984);およびオースベル(Ausubel)F.M.ら「分子生物学現代プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscienceによる出版(1987)で述べられている。
【0097】
本発明は、特異的な顔料および印刷媒体結合ペプチド、およびインクジェットインクおよびその他のコーティング用途のためのジブロックおよびトリブロック分散剤におけるそれらの使用を含んでなる。
【0098】
顔料
ここでの用法では「顔料」という用語は、不溶性の着色剤を意味する。本発明では、多種多様な有機および無機顔料を単独でまたは組み合わせて使用してもよい。有機顔料の例としては、シアン、イエロー、レッド、ブルー、オレンジ、マゼンタ、ブラック、グリーン、バイオレット、ライトシアン、およびライトマゼンタが挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましい有機顔料は、カーボンブラックFW18などのカーボンブラック、およびクロモフタール(Cromophthal)(登録商標)イエロー131AK(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))、サンファスト(Sunfast)(登録商標)マゼンタ122(サンケミカル(Sun Chemical))およびサンファスト(Sunfast)(登録商標)ブルー15:3(サンケミカル(Sun Chemical))などの有色顔料である。無機顔料の例としては、銅、鉄、アルミニウム、およびそれらの合金などの超微粒子金属と、シリカ、アルミナ、およびチタニアなどの金属酸化物とが挙げられるが、これに限定されるものではない。適切な顔料の追加的な例は、参照によって本書に援用される米国特許第5,085,698号明細書で、マ(Ma)らによって述べられる。
【0099】
印刷媒体
「印刷媒体」という用語は、ここでの用法では、インクジェット印刷に適したあらゆる基材を指す。適切な印刷媒体としては、印刷紙と、シートと、フィルムと、不織布と、ポリエステル、ナイロン、ライクラ(登録商標)、絹、綿、綿混紡、レーヨン、亜麻、麻、羊毛、スパンデックス、アセテート、アクリル、モダクリル、アラミドおよびポリオレフィンなどの編織布とが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの印刷媒体は、いくつかの販売元から容易に入手できる。
【0100】
顔料結合および印刷媒体結合ペプチド
顔料結合ペプチド(PBP)および印刷媒体結合ペプチド(PMBP)はここでの定義では、顔料および印刷媒体のそれぞれと高親和力で特異的に結合するペプチド配列である。本発明の顔料結合ペプチドおよび印刷媒体結合ペプチドは、長さが約5個のアミノ酸〜20個のアミノ酸、より好ましくは約7個のアミノ酸〜約12個のアミノ酸である。
【0101】
適切な顔料結合ペプチドおよび印刷媒体結合ペプチド配列は、技術分野でよく知られている方法を使用して選択してもよい。本発明のペプチドは無作為に作り出され、次に関心のある基材に対するそれらの結合親和力に基づいて、特定の顔料または特定の印刷媒体に対して選択される。ペプチドのランダムライブラリーの作成についてはよく知られており、細菌ディスプレイ(ケンプ(Kemp)D.J.;Proc.Natl.Acad.Sci.USA78(7):4520〜4524(1981)、およびヘルフマン(Helfman)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA80(1):31〜35(1983))、酵母ディスプレイ(チェン(Chien)ら、Proc Natl Acad Sci USA88(21):9578〜82(1991))、コンビナトリアル固体相ペプチド合成(米国特許第5,449,754号明細書、米国特許第5,480,971号明細書、米国特許第5,585,275号明細書、米国特許第5,639,603号明細書)、およびファージディスプレイ技術(米国特許第5,223,409号明細書、米国特許第5,403,484号明細書、米国特許第5,571,698号明細書、米国特許第5,837,500号明細書)をはじめとする多様な技術によって達成されてもよい。このような生物学的ペプチドライブラリーを作り出す技術については、ダニ(Dani)M.、J.,Receptor & Signal Transduction Res.、21(4):447〜468(2001)で述べられる。
【0102】
ペプチドを無作為に作り出す好ましい方法は、ファージディスプレイによる。ファージディスプレイは、生体外(in vitro)選択技術であり、その中ではペプチドまたはタンパク質がバクテリオファージの外被タンパク質に遺伝的に融合して、ファージビリオンの外面に融合ペプチドのディスプレイをもたらす一方、融合をコードするDNAはビリオン中に存在する。ディスプレイされるペプチドとそれをコードするDNAの間のこの物理的結合により、「バイオパニング」と称される単純な生体外(in vitro)選択手順によって、それぞれが対応するDNA配列に結合する膨大な数のペプチドの変異体のスクリーニングができるようになる。その最も単純な形態では、バイオパニングは、ファージディスプレイされた変異体のプールをプレートまたはビーズ上に固定化されている関心のある標的と共にインキュベートして、非結合ファージを洗い流し、ファージと標的間の結合相互作用を中断して特異的に結合したファージを溶出して実施される。次に溶出されたファージを生体内(in vivo)で増幅し、プロセスを反復してファージプールの段階的な濃縮をもたらし、最も堅固な結合配列が選択される。3回以上の選択/増幅後、個々のクローンがDNA配列決定によって特性判定される。
【0103】
ペプチドの適切なライブラリーを作り出した後、次にそれらを適量の試験基材、具体的には選択された顔料または特定の印刷媒体と接触させる。試験基材を溶液中に懸濁しながら、ペプチドのライブラリーに提示する。好ましい溶液は、界面活性剤を含有する緩衝生理食塩水溶液である。適切な溶液は、0.1%トウィーン(Tween)(登録商標)20添加トリス緩衝食塩水(TBS)である。ペプチドの顔料または印刷媒体表面への質量移動速度を増大することで、最大結合を得るのに要する時間を短縮するために、溶液をあらゆる手段でさらに撹拌してもよい。
【0104】
接触すると、いくつかの無作為に作り出されたペプチドは、顔料または印刷媒体基材と結合してペプチド−基材複合体を形成する。非結合ペプチドは、洗浄によって除去してもよい。あらゆる非結合材料を除去した後、試験基材に対して様々な程度の結合親和性を有するペプチドは、様々なストリンジェンシーを有する緩衝液中での選択洗浄によって分画されてもよい。使用する緩衝液のストリンジェンシーを増大させることは、ペプチド−基材複合体中で要求されるペプチドと基材の間の結合強度を増大させる。
【0105】
酸性pH(1.5〜3.0)、塩基性pH(10〜12.5)、MgCl(3〜5M)およびLiCl(5〜10M)などの高い塩濃度、水、エチレングリコール(25〜50%)、ジオキサン(5〜20%)、チオシアネート(1〜5M)、グアニジン(2〜5M)、尿素(2〜8M)、そしてSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、DOC(デオキシコール酸ナトリウム)、ノニデット(Nonidet)P−40、トリトン(Triton)X−100、トウィーン(Tween)(登録商標)20などの様々な濃度の異なる界面活性剤をはじめとするが、これに限定されるものではないいくつかの物質を使用して、ペプチド選択における緩衝液溶液のストリンジェンシーを変化させてもよく、トウィーン(Tween)(登録商標)20が好ましい。これらの物質は、トリス−HCl、トリス−緩衝食塩水、トリス−ホウ酸、トリス−酢酸、トリエチルアミン、リン酸緩衝液、およびグリシン−HClをはじめとするが、これに限定されるものではない緩衝液溶液中で調製されてもよく、トリス−緩衝食塩水溶液が好ましい。
【0106】
顔料または印刷媒体基材に対して増大する結合親和性を有するペプチドは、増大するストリンジェンシーを有する緩衝液を使用して選択プロセスを反復することで溶出されてもよいものと理解される。溶出されたペプチドは、技術分野で知られているあらゆる手段によって同定および配列決定できる。
【0107】
したがって、本発明の目的は
a)コンビナトリアルで作り出されたペプチドのライブラリーを提供し、
b)(a)のライブラリーと顔料または印刷媒体とを接触させて、
(i)ペプチド−顔料またはペプチド−印刷媒体複合体、
(ii)非結合顔料または印刷媒体、および
(iii)非複合ペプチド
を含んでなる反応溶液を形成し、
c)(b)のペプチド−顔料またはペプチド−印刷媒体複合体を単離し、そして、
d)(b)のペプチド複合体から特異的結合特性を有するペプチドを溶出する
工程を含んでなる、顔料結合ペプチドまたは印刷媒体結合ペプチドを作り出すためのプロセスを提供することである。
【0108】
顔料結合ペプチドおよび印刷媒体結合ペプチドは、上のプロセスを使用して同定されている。本発明の顔料結合ペプチドは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、およびトリプトファンである少なくとも約40mol%のアミノ酸を含んでなる。具体的には、顔料カーボンブラックに対する高親和力を有する配列番号6〜9として示される結合ペプチド、クロモフタール(Cromophthal)(登録商標)イエローに対する高親和力を有する配列番号5、10〜17として示される結合ペプチド、サンファスト(Sunfast)(登録商標)マゼンタに対する高親和力を有する配列番号18〜20として示される結合ペプチド、およびサンファスト(Sunfast)(登録商標)ブルーに対する高親和力を有する配列番号5、21〜29として示される結合ペプチドが単離された。本発明のセルロース結合ペプチドは、セリン、スレオニン、およびチロシンである少なくとも約14mol%のアミノ酸を含んでなる。セルロース(綿の主要構成要素)に対する高い結合親和力を有する結合ペプチドとしては、配列番号35〜39が挙げられる。本発明のポリエステル結合ペプチドは、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンである、少なくとも約20mol%のアミノ酸を含んでなる。ポリエステル(ポリ(エチレンテレフタラート))に対する高親和力を有する結合ペプチドとしては、配列番号40が挙げられる。さらに以下の印刷媒体に対する結合親和力を有する結合ペプチドが単離された。綿に対する配列番号30〜31として示される結合ペプチド、ポリエステル/綿に対する配列番号30および32として示される結合ペプチド、および印刷紙に対する配列番号4、30、33、および34として示される結合ペプチド。
【0109】
ここでモルあたりのキロカロリー(kcal/mol)の単位で、結合ペプチドとそれぞれの基材との相互作用に際して放出されるエネルギー量として定義される結合エネルギーは、結合親和力の強度の指標を提供する。本発明の顔料結合ペプチドおよび印刷媒体結合ペプチドと、それらのそれぞれの基材との相互作用の吸着モル熱を相互作用の結合エネルギーの基準として使用してもよい。本発明の顔料結合ペプチドおよび印刷媒体結合ペプチドは、フローマイクロ熱量計測による測定で、少なくとも20kcal/molの水中における吸着の発熱モル熱を有する。吸着のモル熱は、実施例7で詳細に述べるようにマイクロスカル・ロンドン(Microscal、London、Ltd.)から入手できるようなフローマイクロ熱量計を使用して、標準熱量測定技術を使用して測定してもよい。結合ペプチドとその各基材との吸着のモル熱の測定は、水中に既知の濃度の結合ペプチドを含有する溶液を、フローマイクロ熱量計内の既知量のその各基材上に通過させ、マイクロ熱量計内に含まれるサーミスタの手段によって、結合相互作用の結果として放出される熱量を測定することで達成される。ここで基材の単位面積当たりに吸着される結合ペプチドの量として定義される質量移動値は、フローマイクロ熱量計の下流に位置する屈折計などの質量感応性検出計の手段によって判定してもよい。次にマイクロ熱量計測から得られた吸着熱を質量移動値で割って、吸着のモル熱を計算してもよい。発熱プロセスでは、吸着のモル熱が負の値として示され、プロセスにおいて熱が放出されることを示唆する。
【0110】
結合ペプチドの製造
本発明の結合ペプチドは、技術分野でよく知られている標準ペプチド合成法を使用して調製されてもよい(例えばスチュアート(Stewart)ら「固体相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)」Pierce Chemical Co.、ロックフォード(Rockford)、イリノイ州(IL)、1984;ボダンスキー(Bodanszky)「ペプチド合成の原理(Principles of Peptide Synthesis)」Springer−Verlag、ニューヨーク(New York)、1984;およびペニングトン(Pennington)ら「ペプチド合成プロトコル(Peptide Synthesis Protocols)」Humana Press、トトワ(Totowa)、ニュージャージー州(NJ)、1994を参照されたい)。さらに多くの会社が、カスタムペプチド合成サービスを提供している。
【0111】
代案としては、本発明のペプチドは、組換えDNAおよび分子クローニング技術を使用して調製されてもよい。顔料または印刷媒体結合ペプチドをコードする遺伝子は、異種の宿主細胞中、特に微生物の宿主細胞中で生成されてもよい。
【0112】
本発明の結合ペプチドの発現に好ましい異種の宿主細胞は、菌・カビまたは細菌ファミリー内に広く存在して、広範な温度、pH値、および溶剤耐性で生育する微生物宿主である。転写、翻訳、およびタンパク質生合成器官は、細胞原材料とは無関係に同一であるので、細胞生物体量を作り出すのに使用される炭素原材料とは無関係に、機能性遺伝子が発現される。宿主の例としてはアスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ピチア(Pichia)、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)などの菌・カビ性または酵母菌種、またはサルモネラ(Salmonella)、バシラス(Bacillus)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ロドコッカス(Rhodococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、エシェリキア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、メチロモナス(Methylomonas)、メチロバクター(Methylobacter)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、シネコシスティス(Synechocystis)、アナベナ(Anabaena),チオバシラス(Thiobacillus)、メタノバクテリウム(Methanobacterium)およびクレブシエラ(Klebsiella)などの細菌種が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0113】
多様な発現システムを使用して、本発明のペプチドを生成できる。このようなベクターとしては、例えば細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来、挿入要素由来、酵母エピソーム由来、バキュロウイルスやレトロウィルスなどのウィルス由来のベクターなどの染色体、エピソーム、およびウィルス−由来ベクター、およびコスミドおよびファージミドなどのプラスミドおよびバクテリオファージ遺伝要素に由来するものなどのそれらの組み合わせに由来するベクターが挙げられるが、これに限定されるものではない。発現システムコンストラクトは、発現を調節し、ならびに引き起こす調節領域を含有してもよい。一般に、宿主細胞中でポリヌクレオチドまたはポリペプチドを維持、増殖または発現するのに適した、あらゆるシステムまたはベクターをこの関連で発現に使用してもよい。微生物の発現システムおよび発現ベクターは、宿主細胞の生育に比べて外来性タンパク質の高レベル発現を導く制御配列を含有する。制御配列は当業者によく知られており、例としては、例えば転写促進因子配列などのベクター中の調節要素の存在をはじめとする化学的または物理的刺激に応答して、遺伝子発現をスイッチオンまたはオフするものが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらのいずれでも、キメラ遺伝子を構築して本発明のあらゆる結合ペプチドを生成するのに使用できる。次に形質転換を通じて、これらのキメラ遺伝子を適切な微生物中に導入して、ペプチドの高レベル発現を提供できる。
【0114】
適切な宿主細胞の形質転換に有用なベクターまたはカセットについては、技術分野でよく知られている。典型的にベクターまたはカセットは、当該遺伝子の転写および翻訳を導く配列、1つもしくはそれ以上の選択可能なマーカー、および自律性の複製または染色体の組み込みができるようにする配列を含有する。適切なベクターは、転写開始制御を宿す遺伝子の5'領域、および転写終了を制御するDNA断片の3'領域を含んでなる。双方の制御領域が形質転換宿主細胞の同族遺伝子から誘導されることが最も好ましいが、このような制御領域は必ずしも産生宿主として選択された特定の種に天然の遺伝子から誘導されなくてよいものと理解される。選択可能なマーカー遺伝子は、形質転換宿主細胞の選択のために、大腸菌(E.coli)におけるテトラサイクリンまたはアンピシリン抵抗性などの表現型形質を提供する。
【0115】
所望の宿主細胞においてキメラ遺伝子の発現を駆動するのに有用な開始制御領域またはプロモーターは多数あり、当業者にはなじみ深い。事実上、遺伝子を駆動できるあらゆるプロモーターが、以下をはじめとするが、これに限定されるものではない、本発明の結合ペプチドを生成するのに適している。CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセス(Saccharomyces)における発現に有用)、AOX1(ピチア(Pichia)における発現に有用)、およびlac、ara、tet、trp、lP、lP、T7、tac、およびtrc(大腸菌(Escherichia coli)における発現に有用)、ならびにバシラス(Bacillus)における発現に有用なamy、apr、nprプロモーターおよび様々なファージプロモーター。
【0116】
終結制御領域もまた、好ましい宿主に天然の様々な遺伝子から誘導されてもよい。場合により終了部位は不必要かもしれないが、含まれれば最も好ましい。
【0117】
上述のような適切なDNA配列を含有するベクター、ならびに適切なプロモーターまたは制御配列を用いて、宿主が本発明のペプチドを発現するように、適切な宿主を形質転換してもよい。本発明のDNA構築物から誘導されるRNAを使用して、このようなペプチドを生成するのに、細胞フリーの翻訳システムもまた用いることができる。場合により、形質転換された宿主の分泌生成物として、本遺伝子産物を生成することが所望されるかもしれない。生育培地中への所望のタンパク質の分泌は、簡易化されたより安価な精製手順という利点を有する。分泌シグナル配列は、細胞膜を超えた発現できるタンパク質の能動輸送を促進するのに有用であることが多いことが、技術分野ではよく知られている。分泌できる形質転換された宿主の創造は、産生宿主において機能性である分泌シグナルをコードするDNA配列の組み込みによって達成されてもよい。適切なシグナル配列を選択する方法は、技術分野でよく知られている(例えばEP 546049号明細書および国際公開第9324631号パンフレットを参照されたい)。分泌シグナルDNAまたは促進要素は、発現−制御DNAと本遺伝子または遺伝子断片の間、および後者の同一読み枠内に位置してもよい。
【0118】
ジブロック分散剤およびジブロックポリマー
本発明の一実施態様では、ジブロック分散剤は、親水性リンカー(HL)ブロックと共役する顔料結合ペプチド(PBP)ブロックからなる。好ましくはペプチドは、親水性リンカーに共有結合的に付着する。顔料結合ペプチドの機能は、顔料粒子に強力に結合することにより、安定した分散体を形成することである。親水性リンカーは水性相中に伸長し、凝集に対して顔料粒子の立体化学性およびイオン性安定化を提供する。顔料結合ペプチドとしては、配列番号5〜29によって示されるペプチド、最も好ましくは配列番号5〜7、9、10、14〜18、20、21、25、26、28、および29によって示されるペプチドが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0119】
親水性リンカーは、親水性アミノ酸Asp、Asn、Glu、Gln、His、Arg、Lys、Pro、セリン、スレオニン、およびそれらの混合物をはじめとするが、これに限定されるものではないアミノ酸から構成されるペプチドであってもよい。好ましいペプチドリンカーは、アミノ酸Pro、Glu、Lys、およびそれらの混合物から構成される。ペプチドリンカーは、1個〜約80個のアミノ酸、好ましくは約3個〜約50個のアミノ酸であってもよい。当業者は、効果的な分散剤として作用するあらゆる特定のジブロック組み合わせの能力が、添加剤、pH、およびペプチドリンカーをはじめとするペプチド上の酸または塩基の中和程度をはじめとする全体的な分散体の調合に強く依存することを認識するであろう。したがってあらゆる特定用途に対するペプチドリンカーの最適な長さは、日常的実験によって求めるべきである。これらの単純なジブロック分散剤に加えて、親水性リンカーと共役する複数の顔料結合ペプチドを有して、ペプチドと顔料の間の相互作用を向上させることが望ましいかもしれない。これらの分散剤は、一般構造式、[PBP]−HL(式中、nは1〜約5の範囲であり、より好ましくはnは1〜約3である)を有する。
【0120】
これらのジブロックペプチド分散剤は、技術分野で知られているあらゆる方法を使用して調製してもよい。例えば上述の標準ペプチド合成法を使用して顔料結合ペプチドを調製し、次に顔料結合ペプチドのN−末端アミンによる活性化を通じて、所望のアミノ酸のN−カルボキシ無水物の原位置(in situ)重合によって、ペプチドリンカーを添加してもよい。このアプローチは、一級アミンがN−カルボキシ無水物の開環重合を触媒する既知の能力に基づく(例えばペンツェック(Penczek)「開環重合モデル(Models of Ring Opening Polymerization)」CRC Press、ボーカラトーン(Boca Raton)、フロリダ州(FL)(1989)を参照されたい)。さらにカルボジイミドカップリング剤(例えばハーマンソン(Hermanson)「Bioconjugate Techniques」Academic Press、ニューヨーク(New York)(1996))、二酸塩化物、ジイソシアネート、およびペプチドの末端アミンおよび/またはカルボン酸末端基と反応性であるその他の二官能性カップリング試薬を使用して、ペプチドブロックを組み合わてもよい。代案としては、上述の組換えDNAおよび分子クローニング技術を使用してジブロックペプチド分散剤全体を調製してもよい。
【0121】
親水性リンカーはまた、有機ポリマーであってもよい。適切な合成有機ポリマーは、顔料結合ペプチドに共有結合できる1つもしくはそれ以上の部分を有することで特徴づけられる。好ましくは、これらの有機ポリマーリンカーは10,000未満、より好ましくは約500と4000との間の分子量を有する。適切な合成有機ポリマーリンカーとしては、ポリエチレングリコール誘導体、ポリアクリル酸/マレイン酸ポリマー、その塩をはじめとするポリアクリル酸誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメチルビニルエーテル、セルロース誘導体ポリマー、そしてデンプンおよびグリコーゲンなどのその他の多糖類が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば本発明で使用するのに適した多くのポリエチレングリコール(PEG)誘導体が市販される。これらのPEG誘導体の例としては、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシスクシンイミドエステル、およびアルデヒドが挙げられる。ポリアクリル酸ポリマーおよび誘導体、マレイン酸ポリマーおよびそれらの混合物は、例えばカルボジイミドカップリングを使用して、顔料結合ペプチド上でアミン基に共有結合的に付着していてもよいカルボン酸部分を有する。ポリビニルアルコールポリマーは、エステル化反応を通じて、顔料結合ペプチド上のアスパラギン酸またはグルタミン酸残基のカルボン酸基に結合していてもよい。適切なセルロース誘導体ポリマーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシメチルセルロースが挙げられる。これらのセルロース誘導体ポリマーおよびその他の多糖類では、ペプチドへの結合は、セルロース誘導体側鎖上のヒドロキシル基とペプチド上のカルボン酸基を使用したエステル化によるものでも、またはペプチド一級アミン基およびセルロース誘導体ヒドロキシル基を通じたジイソシアネートカップリングによるものでもよい。
【0122】
親水性リンカーはまた、上述の方法を使用して調製されてもよい、ペプチドリンカーと合成有機ポリマーの組み合わせであってもよい。
【0123】
本発明の別の実施態様では、ジブロックポリマーは、親水性リンカー(HL)ブロックに共役する印刷媒体結合ペプチド(PMBP)ブロックからなる。好ましくはペプチドは、親水性リンカーに共有結合的に付着する。印刷媒体結合ペプチドの機能は、親水性リンカーが表面を親水性にしながら、印刷媒体表面に強力に結合することである。印刷媒体結合ペプチドとしては、配列番号4、30〜40によって示されるペプチド、最も好ましくは配列番号4、30〜38および40によって示されるペプチドが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらのPMBP−HLジブロックポリマーはコーティング組成物中で有用であり、処理された表面に有益な表面特性を提供する。これらの改善された表面特性としては、ウェッティングおよびシーティング、汚れ除去、汚れ付着抵抗性、および染み抵抗性が挙げられる。
【0124】
親水性リンカーは、PBP−HLジブロック分散剤について上で述べたように、ペプチド、合成有機ポリマー、またはその混合物であってもよい。PMBP−HLジブロックポリマーは、PBP−HLジブロック分散剤について上述した方法を使用して調製してもよい。これらの単純なジブロックポリマーに加えて、親水性リンカーに共役する複数の印刷媒体結合ペプチドを有して、ペプチドと印刷媒体の間の相互作用を向上させることが望ましいかもしれない。これらのジブロックポリマーは、一般構造式、[PMBP]−HL(式中、nは1〜約5の範囲であり、より好ましくはnは1〜約3である)を有する。
【0125】
さらにPMBPは、布帛または紙表面に機能的利点を与える作用物質と共役していてもよい。PMBPは恩恵作用物質と直接に共役していても、またはカップリングはリンカーを通じていてもよい。上述のあらゆるリンカーを使用してもよい。適切な恩恵作用物質は、技術分野でよく知られている(例えばビョルキスト(Bjorkquist)ら、国際公開第01/32848号パンフレット、ジョーンズ(Jones)ら、国際公開第98/00500号パンフレット、およびスメッツ(Smets)ら、国際公開第00/18897号パンフレットを参照されたい)。恩恵作用物質の例としては、芳香剤、衛生作用物質、昆虫制御剤、酵素、軟化タンパク質、布帛柔軟剤、防汚剤、漂白剤、染料固定剤、光沢剤、抗菌剤、界面活性剤、およびそれらの混合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。好ましい恩恵作用物質は、香料および抗菌剤である。これらの恩恵作用物質は、上述の方法を使用してPMBPと共役していてもよい。これらのPMBP−恩恵作用物質(BA)ジブロックポリマーは、一般構造式、[PMBP]−BA(式中、nは1〜約5の範囲であり、より好ましくはnは1〜約3である)を有する。
【0126】
本発明の別の実施態様では、ジブロック分散剤は、好ましくは共有結合を通じて、印刷媒体結合ペプチドブロックに共役する顔料結合ペプチドブロックからなる。顔料結合ペプチドの機能は、顔料粒子と強力に結合することによって、安定した分散体を形成することである。印刷媒体結合ペプチドの機能は、印刷媒体基材と強力に結合することによって、コーティングの耐久性を向上させることである。これらのPBP−PMBPジブロック分散剤は、上に列挙した顔料結合ペプチドおよび印刷媒体結合ペプチドを使用して、技術分野で知られているあらゆる方法を使用し、それらを一緒にカップリングして調製してもよい。例えば2つのペプチドは、4,4’メチレンビス(フェニルイソシアネート)などの架橋剤を使用して共有結合していてもよい。2つのペプチドはまた、カルボジイミドカップリング剤、二酸塩化物、ジイソシアネート、およびペプチド上の末端アミンおよび/またはカルボン酸末端基と反応性であるその他の二官能性カップリング試薬を使用して結合されていてもよい。代案としてはPBP−PMBPジブロック分散剤は、上述の組換えDNAおよび分子クローニング技術を使用して調製してもよい。これらの単純なジブロック分散剤に加えて、複数のPMBPに共役する複数のPBPを有することが望ましいかもしれない。これらの分散剤は、一般構造式、[PBP]−[PMBP](式中、nは1〜約5の範囲であり、より好ましくはnは1〜約3である)を有する。
【0127】
本発明のさらに別の実施態様では、ジブロック分散剤は、好ましくは共有結合を通じて、疎水性リンカー(HPL)ブロックと共役する印刷媒体結合ペプチドブロックからなる。このジブロック分散剤では、印刷媒体結合ペプチドは具体的には、印刷媒体表面への強力な結合と、親水性リンカーとしての機能との2つの機能を果たして顔料を分散する。疎水性リンカーブロックは、顔料粒子と相互作用する役割をする。印刷媒体結合ペプチドとしては、配列番号4、6、30〜40によって示されるペプチド、最も好ましくは配列番号4、30〜38、および40によって示されるペプチドが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0128】
疎水性リンカーは、ペプチド、合成有機ポリマー、またはその混合物であってもよい。ペプチドベースの疎水性リンカーは、疎水性アミノ酸Ala、Gly、Met、Leu、Ile、Val、Cys、Phe、Tyr、Trp、およびそれらの混合物をはじめとするが、これに限定されるものではないアミノ酸から構成されるペプチドであってもよい。さらにペプチドベースの疎水性リンカーは、例えばグルタミン酸ベンジルなどの親水性アミノ酸の疎水性誘導体を含有してもよい。ペプチドリンカーは、1個〜約80個のアミノ酸、好ましくは約5個〜約30個のアミノ酸であってもよい。
【0129】
疎水性リンカーはまた、疎水性の合成有機ポリマーであってもよい。疎水性リンカーは水不溶性であり、少なくとも約300の分子量を有する。適切な疎水性の合成有機ポリマーリンカーについては、参照によって本書に援用されるマ(Ma)ら付与された米国特許第5,085,698号明細書で述べられる。好ましい疎水性の合成有機ポリマーは、メタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレートから調製されるホモポリマーおよび共重合体、またはメチルメタクリレートとブチルメタクリレートとの共重合体である。
【0130】
これらのPMBP−HPLジブロック分散剤は、その他のジブロック分散剤について上で述べた方法によって調製してもよい。これらの単純なジブロック分散剤に加えて、疎水性リンカーと共役する複数のPMBPを有することが望ましいかもしれない。これらの分散剤は、一般構造式、[PMBP]−HPL(式中、nは1〜約5の範囲であり、より好ましくはnは1〜約3である)を有する。
【0131】
トリブロック分散剤
本発明の好ましい実施態様では、分散剤は、印刷媒体結合ペプチドブロックに共役する親水性リンカー(HL)ブロックに共役する顔料結合ペプチド(PBP)ブロックからなるトリブロックである。好ましくは、ブロックは共有結合的に互いに付着する。顔料結合ペプチドの機能は、顔料粒子に強力に結合することにより、安定した分散体を形成することである。親水性リンカーは水性相中に伸長して、凝集に対して顔料粒子の立体化学性およびイオン性安定化を提供し、顔料表面からよりアクセスしやすいPMBPの提示を提供する。印刷媒体結合ペプチドの機能は、印刷媒体基材に強力に結合することによって、コーティング耐久性を向上させることである。適切な顔料結合ペプチド、親水性リンカー、および印刷媒体結合ペプチドは、ジブロック分散剤について上で述べたものと同一である。さらに配列番号1〜3によって示されるものなどの模擬CBDを、これらのトリブロック分散剤中でPMBPとして使用してもよい。単純なトリブロック分散剤に加えて、複数のPBPおよびPMBPを含有する分散剤を有して、分散剤と顔料粒子および印刷媒体基材との相互作用の強度を向上させることが望ましいかもしれない。これらの分散剤は、一般構造式、[PBP]−HL−[PMBP](式中、nは1〜約5の範囲であり、より好ましくはnは1〜約3である)を有する。
【0132】
これらのトリブロック分散剤は、ジブロック分散剤の調製について上で述べた化学的方法を使用して調製してもよい。化学的方法は、親水性リンカーとして合成有機ポリマーを含有する、トリブロック分散剤により適している。親水性リンカーとしてペプチドを含有するトリブロック分散剤では、ペプチド上の多数の官能基のために、様々なブロックが互いに付着する場所を制御することが困難であるので化学的合成は複雑である。したがってこれらの完全にペプチドベースのトリブロック分散剤を調製する好ましい方法は、上述の組換えDNAおよび分子クローニング技術を使用することである。
【0133】
分散剤の用途
本発明の分散剤の用途の1つは、インクジェットインクなどの水性インク中である。水性インク調合物については、技術分野でよく知られている。例えば適切な調合物について、どちらも参照によって本書に援用されるマ(Ma)らに付与された米国特許第5,272,201号明細書、およびマ(Ma)らに付与された米国特許第5,085,698号明細書で述べられている。水性インク調合物は、典型的に水性キャリア媒体、顔料または顔料混合物、分散剤、および様々なその他の成分を含んでなる。
【0134】
水性キャリア媒体は、水または水と少なくとも1つの水溶性有機溶剤との混合物を含んでなる。脱イオン水が一般に使用される。水溶性有機溶剤の代表的な例は、マ(Ma)らに付与された米国特許第5,085,698号明細書で開示される。適切な水と水溶性有機溶剤との混合物の選択は、所望の表面張力および粘度、選択される顔料、インク乾燥時間、およびインクがその上に印刷される媒体基材タイプなどの特定用途の要件に左右される。例えばジエチレングリコールなどの少なくとも2つのヒドロキシル基、および脱イオン水を有する水溶性多価アルコールの混合物が水性キャリア媒体として好ましく、水は水性キャリア媒体の総重量を基準にして重量で約30%〜約95%、好ましくは約60%〜約95%を構成する。水性キャリア媒体の量は、インクの総重量を基準にして、有機顔料が選択される場合、約70%〜約99.8%、好ましくは約94%〜約99.8%の範囲であり、無機顔料が選択される場合、約25%〜約99.8%、好ましくは約70〜約99.8%の範囲である。
【0135】
顔料は、単一顔料または顔料混合物であってもよい。適切な顔料については、マ(Ma)らに付与された米国特許第5,085,698号明細書で述べられる。インクは、約30重量%までの顔料を含有してもよく、好ましくは顔料の量は約0.1%〜約15重量%である。
【0136】
本発明のいずれの分散剤もインク調合物中において、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。顔料結合ペプチドそれ自体(すなわち親水性リンカーなし)が、それらの親水的性質のために、条件によっては水性分散剤の役割をしてもよいことにも留意すべきである。分散剤は、インク中に約0.1%〜約30重量%の範囲で存在する。
【0137】
特定用途の要件と一致させて、様々なタイプの水性添加剤を使用して、インク組成物の特性を変性できる。本発明の分散剤に加えて、界面活性剤化合物を使用してもよい。これらはアニオン性、カチオン性、非イオン性、または両性界面活性剤であってもよい。特定の界面活性剤が特定のインク組成物と不適合性で、顔料分散体を不安定化するかもしれないことが技術分野で知られている。特定の界面活性剤の選択はまた、印刷される印刷媒体基材のタイプにも高度に依存する。当業者は、特定のインク組成物中で使用される特定の基材のために、適切な界面活性剤を選択できることが予期される。水性インクでは、界面活性剤は、インク総重量を基準にして約0.01%〜約5%、好ましくは約0.2%〜約2%の量で存在してもよい。インク組成物の浸透および詰まり阻害特性を改善するための補助溶剤を添加してもよく、実際には好ましい。このような補助溶剤は、先行技術でよく知られている。さらにインク組成物中で殺生剤を使用して、微生物の生育を阻害してもよい。またエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などの金属イオン封鎖剤を含めて、重金属不純物の有害な効果を排除してもよい。また保湿剤、粘度変性剤、およびその他のアクリルまたは非アクリルポリマーなどのその他の既知の添加剤を添加して、必要に応じてインク組成物の様々な特性を改善できる。
【0138】
本発明のインク組成物は、マ(Ma)らに付与された米国特許5,272,201号明細書で述べられるようなその他の水性インク組成物と同一の様式で調製される。
【0139】
本発明の分散剤はまた、塗料およびカラーフィルムなどの水性コーティング用途で使用する組成物中で、顔料分散剤として使用してもよい。本発明のコーティング組成物は、金属、セラミック、プラスチック、紙または木材表面に塗布してもよい。特定の一用途は、水性自動車コーティング組成物である。着色水性コーティング組成物のための調合物については、技術分野でよく知られている。例えば適切な調合物については、全て参照によって本書に援用される、カーペンター(Carpenter)に付与された米国特許第5,320,673号明細書、バルゾッティ(Barsotti)に付与された米国特許第5,376,704号明細書、およびゲーベル(Goebel)らに付与された米国特許第6,350,809号明細書で述べられる。着色、水性コーティング組成物は、水性キャリア媒体、顔料または顔料混合物、分散剤、1つもしくはそれ以上のフィルム形成樹脂、および様々なその他の成分を典型的に含んでなる。
【0140】
水性キャリア媒体は、水と1つもしくはそれ以上の水溶性有機溶剤との混合物を含んでなる。適切な水溶性有機溶剤としては、一価または多価アルコール、グリコールエーテルまたはエステル、グリコール、およびケトンが挙げられるが、これに限定されるものではない。典型的に組成物の60〜70%が水である。
【0141】
適切なフィルム形成樹脂またはバインダーは、水分散性または水溶性のイオン性または非イオン性樹脂である。樹脂は、アクリル、ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、アルキド、エポキシ、またはフィルム中で有用なことが知られているその他のポリマーであってもよい。水性コーティング組成物で使用される水分散性ポリマーの例については、全て参照によって本書に援用される、サビーノ(Savino)らに付与された米国特許第4,794,147号明細書、サラティン(Salatin)らに付与された米国特許第4,791,168号明細書、およびクワジマ(Kuwajima)らに付与された米国特許第4,5518724号明細書で述べられる。
【0142】
顔料は、単一顔料、または顔料混合物であってもよい。適切な顔料については、参照によって本書に援用される、バデージョ(Badejo)らに付与された米国特許第6,066,203号明細書、およびゲーベル(Goebel)らに付与された前出の明細書で述べられる。有機顔料は、フィルム形成樹脂および架橋剤、および反応してコーティングのキュアリング中にポリマー網目状組織に組み込まれるあらゆるその他の化合物を含めた固体反応物の総重量を基準にして、約1%〜約200%の量で使用される。
【0143】
本発明のPBP−HL、PBP−PMBPまたはPMBP−HPLジブロック分散剤、またはPBP−HL−PMBPトリブロック分散剤のいずれもコーティング組成物中で単独でまたは組み合わせて使用してもよい。本発明の水性コーティング組成物はまた、架橋剤、可塑剤、組成物の安定化または塗布を助ける追加的補助溶剤、レオロジー制御剤、紫外線安定剤、抗酸化剤、触媒、殺菌・殺カビ剤などをはじめとするが、これに限定されるものではない、技術分野でよく知られているその他の成分を含有してもよい。
【0144】
本発明の分散剤はまた、着色プラスチック組成物中で顔料分散剤として使用してもよい。プラスチックの調製および加工については、技術分野でよく知られている(例えば「ウルマンの工業化学百科(Ullman’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)」、第6版、27巻、Wiley−VCH、ホーボーケ(Hoboken)、ニュージャージー州(NJ)(2003)、およびハーパー(Harper)「プラスチック、エラストマー、および複合材ハンドブック(Handbook of Plastic,Elastomers,and Composites)」、第3版、McGraw−Hill、ニューヨーク(New York)(1996)を参照されたい)。プラスチック中での顔料分散剤の使用については、技術分野でよく知られている。実例は、全て参照によって本書に援用されるメイ(May)らに付与された米国特許第5,652,316号明細書、ディーツ(Dietz)らに付与された米国特許第5,264,032号明細書、およびデルフィン(Delphin)らに付与された米国特許第4,948,546号明細書で述べられる。
【0145】
本発明の分散剤は、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、およびそれらの共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、塩素化ゴム、およびフッ化ポリビニリデンをはじめとするが、これに限定されるものではない、広範な標準プラスチック樹脂のための顔料分散剤として使用してもよい。可塑性組成物中で、単一顔料または顔料混合物を使用してもよい。適切な顔料としては、上述の顔料、およびメイ(May)らに付与された前出の明細書で述べられるものが挙げられる。典型的に顔料は、組成物の総重量に対して約0.5%〜約70%、好ましくは約1%〜約50重量%の量で使用される。
【0146】
本発明のPBP−HL、PBP−PMBPまたはPMBP−HPLジブロック分散剤またはPBP−HL−PMBPトリブロック分散剤のいずれも、可塑性組成物中で単独でまたは組み合わせて使用してもよい。プラスチックはまた、界面活性剤、流動学的添加剤、防腐剤、光安定剤などのその他の習慣的な添加剤を含有してもよい。
【0147】
さらに別の用途では、組換えタンパク質の回収および精製のために、具体的には配列番号35〜39である本発明のセルロース結合ペプチドを親和力タグとして単独でまたは組み合わせて使用してもよい。これらのあらゆる具体的セルロース結合ペプチド配列、またはそれらの組み合わせは、上述の組換えDNAおよび分子クローニング技術を使用して、所望の組換えタンパク質に融合させてもよい。所望ならば融合タンパク質は、異種タンパク質からのセルロース結合ペプチドのタンパク分解除去のための部位を含有するようにデザインしてもよい。この用途では、セルロース結合ペプチドがCBDの代わりに使用され、親和力タグとしてのその使用については、トム(Tomme)ら(Ann.N.Y.Acad.Sci.799:418〜424(1996)およびJ.Chromatogr.B、715:283〜296(1998))によって述べられる。本発明のセルロース結合ペプチドは、サイズが小さいことでCBDに勝る利点を有するので、組換えタンパク質に組み込むことがより容易である。
【0148】
親和力タグ付き組換えタンパク質は、タンパク質含有溶液をセルロース担体と接触させて分離および精製してもよい。セルロースは、ビーズ、粉末、繊維、膜、フィルター、およびシートはじめとする多くの異なる形態で、ミズーリ州セントルイスのシグマケミカル(Sigma Chemical Co.(St.Louis、MO))をはじめとするいくつかの供給元から市販される。組換えタンパク質含有溶液は、技術分野で知られている様々なやり方でセルロース担体と接触させてもよい。例としては次が挙げられる。バッチ反応器内での接触、膜を通した濾過、またはセルロース充填カラムの通過。次にタンパク質溶液をセルロース担体から分離して、担体を適切な緩衝液で洗浄し非結合材料を除去する。中性pHに近いリン酸塩およびトリス緩衝液をはじめとするが、これに限定されるものではない、タンパク質と適合性のあらゆる緩衝液を使用してもよい。次に溶出剤とセルロース担体を接触させて、それから親和力タグ付きタンパク質を回収する。溶出剤は、蒸留水、高pH溶液(pH>10)、低pH溶液(pH<3)、高濃度グアニジン塩酸塩または尿素、またはエチレングリコールであってもよい。好ましい溶出剤は、pH2.2の0.2Mグリシン−HClである。
【0149】
同様に、具体的には配列番号5〜10、14〜21、および23〜29である本発明の顔料結合ペプチドは、セルロース結合ペプチドについて上で述べたように、組換えタンパク質の回収および精製のために、親和力タグとして単独でまたは組み合わせて使用してもよい。顔料結合ペプチド配列は、上述の組換えDNAおよび分子クローニング技術を使用して、所望の組換えタンパク質と融合させてもよい。親和力タグ付き組換えタンパク質は、バッチ反応器または顔料充填カラムの通過をはじめとするが、これに限定されるものではない、技術分野で知られている様々なやり方で、タンパク質含有溶液を適切な顔料と接触させて、分離および精製してもよい。次に上述のようにタンパク質溶液を顔料から分離して、顔料を適切な緩衝液で洗浄し非結合材料を除去する。次に溶出剤と顔料を接触させて、親和力タグ付きタンパク質を場合により顔料から回収する。上述のあらゆる溶出剤を使用してもよい。
【0150】
さらに生物触媒および親和力用途のために、本発明のセルロース結合ペプチドを使用して、タンパク質をセルロース担体上に固定化してもよい。これらの用途のため、上述のように、セルロース結合ペプチドを所望の組換えタンパク質に融合させてもよく、または上述のペプチドカップリング法を使用して、結合ペプチドを未変性タンパク質と共有結合的に共役させてもよい。セルロース結合ペプチド−タンパク質抱合体を固定化するためには、抱合体を含有する溶液を所望のセルロース担体と単に接触させる。
【実施例】
【0151】
以下の実施例で本発明をさらに明らかにする。これらの実施例は本発明の好ましい実施態様を示しながら、例示のみの目的で提示されるものと理解される。上の考察およびこれらの実施例から、当業者は本発明の本質的特性を確認し、その精神と範囲を逸脱することなく本発明に様々な変更をおよび修正を加えて、それを様々な用途および条件に適合できる。
【0152】
使用した略語の意味は次の通り。「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「cm」はセンチメートルを意味し、「μm」はマイクロメートルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmol」はマイクロモルを意味し、「nmol」はナノモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「g」は重力定数を意味し、「J」はジュールを意味し、「mJ」はミリジュールを意味し、「v/v」は容積―対−容積比を意味し、「pfu」はプラーク形成単位を意味し、「kDA」はキロダルトンを意味し、「BSA」はウシ血清アルブミンを意味し、「ELISA」は酵素結合免疫吸着アッセイを意味し、「IPTG」はイソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシドを意味し、「OD」は光学濃度を意味し、「OD405」は波長405nmで測定した光学濃度を意味し、「OD600」は波長600nmで測定した光学濃度を意味し、「P」は圧力を意味し、「P」は等温における液体吸着質の蒸気圧を意味し、「TBS」はトリス−緩衝食塩水を意味し、「TBST−X」は指定量(X%)のトウィーン(Tween)(登録商標)20を含有するトリス−緩衝食塩水を意味し、「HRP」はホースラディシュ・ペルオキシダーゼを意味し、「Xgal」は5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシドを意味し、「DMF」はジメチルホルムアミドを意味し、「DP」は重合程度を意味し、「THF」はテトラヒドロフランを意味し、「NMR」は核磁気共鳴分光法を意味し、「TBP」はトリブロックタンパク質を意味し、「SDS−PAGE」はドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を意味し、「MALDI」はマトリックス補助レーザー脱離イオン化質量分析法を意味する。
【0153】
一般方法
実施例で使用される標準組換えDNAおよび分子クローン化技術は技術分野で良く知られており、サムブルック(Sambrook)J.、フリッチュ(Fritsch)E.F.、およびマニアティス(Maniatis)T.「分子クローン化:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」;Cold Spring Harbor Laboratory Press:コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor)(1989)、およびT.J.シルハビー(Silhavy)、M.L.ベンナン(Bennan)およびL.W.エンクイスト(Enquist)「遺伝子融合実験(Experiments with Gene Fusions)」Cold Spring Harbor Laboratory、コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク(N.Y.)(1984);およびオースベル(Ausubel)F.M.ら「分子生物学現代プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscienceによる出版(1987)で述べられている。
【0154】
細菌培養の維持および生育に適した材料および方法は、技術分野で良く知られている。以下の実施例で使用するのに適した技術は、以下で述べられる。「一般微生物学方法マニュアル(Manual of Methods for General Bacteriology」、フィリップス・ゲアハルト(Phillipp Gerhardt)、R.G.E.マレー(R.G.E.Murray)、ラルフN.コスティロウ(RalpHN.Costilow)、ユージーンW.ネスター(Eugene W.Nester)、ウィリスA.ウッド(Willis A.Wood)、ノエルR.クリーグ(Noel R.Krieg)、およびG.ブリッグス・フィリップス(G.Briggs Phillips)編、米国微生物学会、ワシントン(Washington)D.C.(1994)またはトーマスD.ブロック(Thomas D.Brock)著「バイオテクノロジー:工業微生物学テキストブック(Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology)第2版、Sinauer Associates Inc.:サンダーランド(Sunderland)、マサチューセッツ州(MA)(1989)。細菌細胞の生育および維持のために使用される全ての試薬、制限酵素および材料は、特に断りのない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee、WI))、メリーランド州スパークスのBDダイアグノスティック・システムズ(BD Diagnostic Systems(Sparks、MD))、メリーランド州ロックビルのライフ・テクノロジーズ(Life Technologies(Rockville、MD))、マサチューセッツ州ベバリーのニューイングランド・バイオラブズ(New England BioLabs(Beverly、MA))、ウィスコンシン州マディソンのプロメガ(Promega(Madison、WI))またはミズーリ州セントルイスのシグマケミカル(Sigma Chemical Company(St.Louis、MO))から得た。
【0155】
ファージディスプレイペプチドライブラリー
本発明で使用したファージディスプレイライブラリー、Ph.D.−7およびPh.D.−12はマサチューセッツ州ベバリーのニューイングランド・バイオラブズ(New England BioLabs(Beverly、MA))から購入した。これらのライブラリーは、M13ファージのマイナーコートタンパク質(pIII)に融合したランダムペプチド7−merおよび12−merのコンビナトリアルライブラリーに基づいている。ディスプレイされたペプチドは、pIIIのN−末端で発現され、短いスペーサーGGGSを介してそれに結合する。Ph.D.−7およびPh.D.−12ライブラリーは、それぞれおよそ2.8×10および2.7×10個の配列からなる。
【0156】
ペプチドディスプレイライブラリーのスクリーニング
供給元ニューイングランド・バイオラブズ(New England BioLabs)が提供する標準手順を修正して、本出願人らの実験的ニーズに合わせた。この方法の一般的説明は以下の通り。
バイオパニング:試験する適量の基材をマイクロ遠心管または24−ウェルプレートのウェルに入れた。次に遠心管またはウェルに、5mg/mLのBSAおよび0.1MのNaHCOをpH8.6で含有するブロック緩衝液を充填し、基材を1時間4℃でインキュベートした。基材および容器をTBST−0.1%(50mMトリス−HCl、pH7.5、および0.1%トウィーン(Tween)(登録商標)20を含有する150mM NaCl(TBS))で6回洗浄した。次に基材を2×1011個のファージ(10mLのオリジナルライブラリー)および1mg/mLのBSAを含有する1mLのTBST−0.1%と共に室温で10〜20分間インキュベートした。その後、TBST−X(下で具体的実験について述べるように、指定量のトウィーン(Tween)(登録商標)20添加TBS)を含有する1mg/mLのBSAで基材を5回洗浄し、次にTBST−X単独でさらに5回洗浄した。基材を1mg/mL BSAおよび0.2Mグリシン−HClをpH2.2で含有する1mLの溶出溶液と共に7minインキュベートして基材結合ファージを溶出した。150μLの1Mトリス−HCl、pH9.1を添加して、溶出溶液を即座に中和した。
【0157】
滴定および配列決定
溶出されたファージを1%バクト−トリプトン、0.5%バクト−酵母抽出物、および1%NaCl(NaOHでpH7.5に調節)からなるLB(ルリア−ベルタニ)培地で希釈し、10〜10の10倍連続希釈物を調製した。各希釈物の10μLのアリコートをLB培地中で生育させた200μLの対数増殖期中期の大腸菌(E.coli)ER2738(ニューイングランド・バイオラブズ(New England BioLabs))と共に2minインキュベートし、次に3mLのアガローストップ(5mM MgClおよび0.7%アガロース添加LB培地)と45℃で混合した。この混合物をLB培地/IPTG/Xgalプレート(15g/L寒天、0.05g/L IPTG、および0.04g/L Xgal添加LB培地)上に広げ、37℃で一晩インキュベートした。青色プラークを数えてファージ力価を計算した。
【0158】
基材結合ファージ中の融合ペプチド配列を判定するために、プレートからいくつかの青色プラークを無作為に選んで、2mLの一晩培養した大腸菌(E.coli)ER2738の100倍LB希釈物と共に37℃の振盪機内で5hインキュベートした。カリフォルニア州バレンシアのキアゲン(QIAGEN(Valencia、CA))からのキアプレップ・スピン(QIAprep Spin)M13キットを使用してファージDNAを培養物から精製し、−96 gIIIプライマー、配列番号41(5’CCCTCATAGTTAGCGTAAGG3’)を使用して、デュポン(DuPont)配列決定設備内で配列決定した。GGGSスペーサー(Ph.D.−7ファージでは21個のヌクレオチド、またはPh.D.−12ファージでは36個のヌクレオチド)コード領域上流のDNA配列をペプチド配列に翻訳した。
【0159】
増幅
候補ペプチド配列を同定するために、異なる条件下で数サイクルのパニングプロセスが、通常必要とされた。この目的で、前のランから溶出されたファージの半量を20mLの一晩培養した大腸菌(E.coli)ER2738の100倍LB希釈物と共に37℃の振盪機内で4.5hインキュベートして増幅した。細菌を10,000×gでの遠心分離によって除去した。1/6容積のPEG/NaCl(20%PEG−8,000、2.5M NaCl)を添加してファージを沈殿させ、10,000×gでの遠心分離によって収集した。ファージを1mLのTBS中に懸濁させ、再度PEG沈殿させた。増幅されたファージを0.2mLのTBS中に再懸濁させ、上述のプロトコル従ってその力価を判定した。その結果ファージに次のパニングを実施する準備ができた。これらの実験では、ランの間の唯一の違いは、TBST−X洗浄中に適用されるトウィーン(Tween)(登録商標)20の濃度であった。
【0160】
実施例1
顔料結合ペプチドの同定
この実施例の目的は、ファージディスプレイスクリーニングを使用して、一般的なインク顔料に特異的に結合するペプチド配列を同定することであった。
【0161】
この試験では4種の市販されるインク顔料を試験基材として使用した。これらの顔料には、ニュージャージー州ピスカタウェイのデグサ(Degussa(Piscataway、NJ))からのカーボンブラックFW−18、ノースカロライナ州ハイポイントのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals(High Point、NC))からのクロモフタール(Cromophtal)(登録商標)イエロー131AK、ニュージャージー州カールスタッドのサンケミカル(Sun Chemical(Carstadt、NJ))からのサンファスト(Sunfast)(登録商標)マゼンタ122、およびサンケミカル(Sun Chemical)からのサンファスト(Sunfast)(登録商標)ブルー15:3が含まれた。Ph.D.−7およびPh.D.−12スクリーニングライブラリーの双方を使用して顔料結合候補を同定した。
【0162】
ペプチドディスプレイライブラリーのスクリーニングを以下の修正を加えて上述のように行った。カーボンブラックFW−18の250μgのサンプルをマイクロ遠心管内で試験基材として使用した。TBST−X中それぞれ0.1%、0.5%、および1%のトウィーン(Tween)(登録商標)20によって、3回のスクリーニングを行い、続いてTBST−X中の1%および2%のトウィーン(Tween)(登録商標)20によって、4回目のスクリーニングを平行して2回行った。Ph.D.−12ライブラリーによるスクリーニングでは、TBST−X中2%のトウィーン(Tween)(登録商標)20によって、最初の4回のランのみ実施した。
【0163】
クロモフタール(Cromophtal)(登録商標)イエロー131AK、サンファスト(Sunfast)(登録商標)マゼンタ122、およびサンファスト(Sunfast)(登録商標)ブルー15:3顔料を試験基材として使用して、このスクリーニングを反復した。これらの実験では、500μgの顔料を使用した。
【0164】
ペプチド配列を判定するために、各スクリーニングにおいて16〜24個のファージプラークからのDNAを上述のように配列決定した。これらの結果に基づいて、特定のランにおいて高い再出現頻度を有する配列、および/または様々なストリンジェンシー条件下でいくつかのランにおいて、顔料と一貫して相互作用する配列を顔料結合ペプチド候補として同定した。これらの配列を表1に示す。
【0165】
【表2】

【0166】
実施例2
印刷媒体結合ペプチドの同定
この実施例の目的は、ファージディスプレイスクリーニングを使用して、一般的な印刷媒体に特異的に結合するペプチド配列を同定することであった。
【0167】
この試験で基材として試験した印刷媒体には、ペンシルベニア州ウェストピストンのテストファブリックス(Testfabics(West Pittston、PA))から得られた100%綿布帛(綿ブロードクロススタイル419W)、テストファブリックス(Testfabics)から得られた65/35ポリエステル/綿布帛(プリントクロス(65/35PC)7436M)、およびデラウェア州ウィルミントンのファーストステートペーパー(First State Paper(Wilmington、DE))からのハンマーミル(Hammermill)(登録商標)タイダルMP紙(Tidal MP Paper)が含まれた。上述の手順を使用して、1枚の印刷媒体(7.5mm×7.5mm)をPh.D.−7ライブラリースクリーニングにおいて使用して、印刷媒体結合ペプチド候補を同定した。スクリーニングを24−ウェルプレート内で実施し、結合に使用したのとは異なるウェル内に結合ファージを溶出した。TBST−X中0.5%のトウィーン(Tween)(登録商標)20で3回のスクリーニングを行い、続いてそれぞれTBST−X中1%、3%、3%、および5%のトウィーン(Tween)(登録商標)20で、4回の追加的スクリーニングを実施した。ペプチド配列を判定するために、上述のように各ランにおいて16個のファージプラークからのDNAを配列決定した。
【0168】
これらの試験では、ファージと3つの全印刷媒体の間の非特異的相互作用に起因する高いバックグラウンドは、TBS−X中5%のトウィーン(Tween)(登録商標)20での6回目のランを含めて全てのランで観察された。このバックグラウンドは印刷媒体と特異的に相互作用するファージの濃縮を妨げたので、スクリーニングを妨害した。しかし配列データの注意深い検討からは、3回の各スクリーニング中の配列の少数が試験された基材との一貫した相互作用を示すことが示唆され、ある程度の濃縮が見られた。表2に列挙したこれらの配列を印刷媒体結合ペプチド候補として同定した。
【0169】
【表3】

【0170】
実施例3
セルロースおよびポリ(エチレンテレフタラート)結合ペプチド候補の同定
この実施例の目的は、ファージディスプレイスクリーニングを使用して、セルロースおよびポリ(エチレンテレフタラート)に特異的に結合するペプチド配列を同定することであった。高バックグラウンドに起因する、印刷媒体結合ペプチドを明らかに同定する上で遭遇する困難さのために、追加的試験を行って、これらの印刷媒体の2つの主要成分であるセルロースおよびポリ(エチレンテレフタラート)と特異的に相互作用するペプチドを同定した。
【0171】
この試験では、Ph.D.−7およびPh.D.−12ライブラリースクリーニングにおいて、ミズーリ州セントルイスのシグマケミカル(Sigma Chemical Company(St Louis、MO))からの繊維サイズが100〜400μmの長い繊維状セルロース250μgを使用した。実施例1で述べた手順に従って、反応をマイクロ遠心管内で実施した。Ph.D−7ライブラリースクリーニングではTBST−X中0.1%、0.5%、1%、2%、および4%のトウィーン(Tween)(登録商標)20で、5回のランを行ったが、Ph.D.−12ライブラリースクリーニングでは、最初の4回のランのみ実施した。
【0172】
デラウェア州ウィルミントンのデュポン(DuPont Co.(Wilmington、DE))からのサイズおよそ2mm×2mm×1mmのポリ(エチレンテレフタラート)ペレットもまた、実施例2で述べるのと同一手順に従ってPh.D.−12ライブラリースクリーニングで使用した。TBST−X中0.1%および0.5%のトウィーン(Tween)(登録商標)20で2回のランを行い、続いてTBST−X中0.5%および1%のトウィーン(Tween)(登録商標)20で3回目のランを平行して行った。
【0173】
この試験の結果からは、3回の各スクリーニング中の少数の配列が、具体的には次のようである基材結合ペプチドの基準を満たすことが示された。特定のラン中での特異的に高い再出現頻度、および/または様々なストリンジェンシー条件下のいくつかのラン中での基材との一貫した相互作用。表3に列挙するこれらの配列をセルロースまたはポリ(エチレンテレフタラート)結合ペプチド候補として同定した。
【0174】
【表4】

【0175】
実施例4
ELISAベース結合アッセイによる基材結合ペプチドの確認
この実施例の目的は、ファージディスプレイスクリーニングを使用して同定された基材結合ペプチド候補をELISAベース結合アッセイによって確認することであった。
【0176】
ペプチドによっては、例えば増幅中の特別なファージの速い生育速度など、基材特異的結合活性以外の理由で、スクリーニングプロセスから選択されるかもしれない。その基材特異的結合活性を確認するために、ペプチド候補を宿すファージを増幅して、ELISAベース結合アッセイを行った。Ph.D.−7およびPh.D.−12ライブラリーから得られた2つのファージが、アッセイにおいてそれぞれ7−および12−アミノ酸−ペプチド候補の対照の役割をした。1つのファージは、Ctrl−71(配列番号42)と称される7−アミノ酸−ペプチド配列SNRDLVYを有した。もう1つの対照ファージはCtrl−121(配列番号43)と称される12−アミノ酸ペプチド配列SSNLNLSWVQDTを有した。いくつかの結合アッセイでは、12−アミノ酸ペプチドKFQNMDRHPASL(配列番号44)を含有する、Ctrl−122と称される第3のファージを対照として使用した。
【0177】
アッセイを実施するために、上述のように候補ペプチドを宿すファージを精製し増幅して、精製されたファージの8×1010個のコピーを使用した。顔料結合ペプチド、印刷媒体結合ペプチド、および印刷媒体成分結合ペプチドについてアッセイを実施した。顔料結合アッセイでは、75μgのカーボンブラック、150μgのクロモフタール(Cromophtal)(登録商標)イエロー、150μgのサンファスト(Sunfast)(登録商標)マゼンタ、または150μgのサンファスト(Sunfast)(登録商標)ブルーを基材として使用した。印刷媒体結合アッセイでは、100%綿419W布帛および65/35ポリエステル/綿7436M布帛から個々の繊維のストリングを引き抜いた。これらの繊維、または16mmハンマーミル(Hammermill)タイダル(Tidal)MP紙の20mmのセグメントをアッセイで使用した。成分結合アッセイでは、シグマケミカル(Sigma Chemical Co.)からの150μgのタイプ20シグマセル(Sigmacell)セルロース、または実施例3で述べるペレットをニュージャージー州メタチェンのスペックス・サーティプレップ(SPEX CertiPrep Inc(Metuchen、NJ))からのスペックス(SPEX)6700フリーザーミル内で粉砕して調製した、450μgのポリ(エチレンテレフタラート)粉末を使用した。
【0178】
マサチューセッツ州ベッドフォードのミリポア(Millipore Corp.(Bedford、MA))から得たマルチスクリーン−HV(0.45μm)96ウェル濾過プレート内で、ELISAベースアッセイを行った。アッセイではミリポア(Millipore Corp.)からの真空マニフォールドを使用して、膜を通した溶液の除去によってウェルを空にした。
【0179】
アッセイを次のようにして実施した。上述のように試験する適量の基材を96ウェル濾過プレートのウェルに入れた。5mg/mL BSA、0.1M NaHCO、pH8.6からなる200μLのブロック緩衝液を各ウェルに添加し、ニューヨーク州ウェストベリーのブリンクマン・インストゥルメンツ(Brinkmann Instruments Inc.(Westbury、NY))からのオルビマックス(Orbimix)110振盪機を使用して室温で1h振盪して、基材およびウェルをブロックした。真空を使用してブロック緩衝液をウェルから除去し、1回量200μLのTBST−0.1%(TBS+0.1%トウィーン(Tween)(登録商標)20)を使用して、基材を5回洗浄した。1mg/mLのBSAを含有する200μLのTBST−0.1%中のファージ(8×1010コピー)の適量を各ウェルに添加した。プレートを室温で15min振盪した。真空を使用して、ファージ溶液を除去し、1mg/mLのBSAを含有する1回量200μLのTBST−0.5%を使用して基材を4回洗浄し、1回量200μLのTBST−0.5%を使用してさらに4回洗浄した。TBSを含有する1mg/mLのBSAで、ニュージャージー州ピスカタウェイのアマーシャム・バイオサイエンシズ(Amersham Biosciences(Piscataway、NJ))から得られたHRP/抗M13モノクローナル抗体抱合体を5000倍に希釈し、各ウェルに添加した。プレートを室温で1時間振盪した。その後、真空を使用して抱合体溶液を除去し、基材をTBST−0.1%で5回洗浄した。次に200μLのABTS基材溶液(0.4mMの2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸、0.05%のH、および50mMクエン酸のナトリウム、pH4.0)を各ウェルに添加して、プレートを室温で20min振盪した。得られた着色溶液を真空マニフォールドを使用して通常の96−ウェルプレートに移し、カリフォルニア州メンロパークのモレキュラーデバイシス(Molecular Devices(Menlo Park、CA))から得られた動態学的マイクロプレートリーダーを使用して、溶液の405nmにおけるODを測定した。
【0180】
各ペプチドを三連でアッセイし、平均OD405値および標準偏差を表4〜6にまとめる。
【0181】
【表5】

【0182】
【表6】

【0183】
【表7】

【0184】
【表8】

【0185】
スクリーニングプロセスから同定されたペプチド候補の大多数が対照よりも顕著に高いOD405値を有したので、これらの結果は、確かにそれらが特異的基材結合ペプチドであったことを確認する。ペプチドCY−72、SB−72、CEL−73、CY−73、CY−74、およびCEL−123は、対照よりも顕著に高いOD405値を有さず、それらが擬陽性結合ペプチドであることが示唆される。一般にこれらの結果は、それらのそれぞれの基材について、顔料結合ペプチドが、印刷媒体および印刷媒体成分結合ペプチドよりも高い結合親和力を有することを示すが、顔料粒子の表面積が印刷媒体基材に比べて高いことが、より高いOD405値に寄与しているのかもしれない。
【0186】
実施例5
直接ファージ計数による基材結合ペプチドの確認
この実施例の目的は、直接ファージ計数を使用してELISA結合アッセイの結果を確認することであった。
【0187】
実施例4で得られたOD405値と、それぞれの基材に対する実際のペプチドの結合親和力の間の相関を確認するために、以下のように直接ファージ計数手順を使用して、各群で最も高いOD405値のペプチドを試験した。実施例4で述べるようにして、選択されたペプチドを96−ウェル濾過プレート内でそれらの特異的基材と相互作用させた。HRP/抗M13モノクローナル抗体抱合体を添加する代わりに、200μLの溶出溶液(0.2M グリシン−HCl、1mg/mL BSA、pH2.2)を各ウェルに添加して、室温で5min混合して結合したファージを溶出したこと以外は、実施例4で述べた手順に従った。真空マニフォールドを使用してファージ含有溶液をレギュラー96−ウェルプレートに移し、pH9.1の30μL 1Mトリス−HClを添加して即座に中和した。アッセイで基材に結合するファージの数を上述のようにファージ滴定により判定した。
【0188】
3回の独立したアッセイからの平均結合ファージ数、および結果の標準偏差を表7〜9に示す。
【0189】
【表9】

【0190】
【表10】

【0191】
【表11】

【0192】
これらの結果は、顔料に結合したファージ数が対照よりも少なくとも10倍高いという事実によって示されるように、調べた顔料結合ペプチドのほとんどが、高い特異的結合親和力を有することを実証する。例外は結合ファージ数が対照よりも約5倍高かったSM−71およびSM−121であり、これらのペプチドは中程度の特異的結合親和力を有することが示唆される。印刷媒体および印刷媒体成分結合ペプチドでは、結合ファージ数は対照よりも統計学的に高かったが、10倍以内であり、中程度の特異的結合親和力が示唆された。1つの例外はCEL−121であり、対照の100倍を超える結合ファージ数を有した。結合親和力に加えて、顔料、印刷媒体、および印刷媒体成分の表面積もまた、これらの基材と結合するファージ数に寄与する。これらの結果は、実施例4のELISAベースアッセイ結果で得られたものと一致し、特異的基材結合ペプチド候補が確認される。
【0193】
実施例6
結合親和力(MB50)および最大結合(Bmax)の測定による結合ペプチド候補の特性判定
実施例4および5では、ペプチド候補を宿すファージの基材特異的結合活性が、ELISAアッセイおよび直接プラーク計数方法を使用して確認された。しかしこれらの方法にはいくつかの限界がある。それらは具体的に各候補がその対応する基材にどれだけ強力に結合するかを示唆せず、ファージそれ自体が方法で偽陽性を引き起こすかもしれない。これらの限界を克服するために、ファージから結合ペプチド候補を単離して、検出可能なタンパク質パートナーと融合させた。グルタチオンS−転移酵素(GST)をタンパク質パートナーとして使用した。結合活性の滴定を通じて、選択されたペプチド候補について結合親和力(MB50)および最大結合(Bmax)を測定した。
【0194】
pGSTfプラスミドの構造:
カリフォルニア州カールスバッドのインビトロジェン(Invitrogen(Carlsbad、CA))からのゲートウェイシステムのpDEST15プラスミドを修正して、発現プラスミドpGSTfを作り出した。修正はpDEST15プラスミド上のGUSのC−末端配列を単純化し、リンカーをコードする配列および4つのユニークな制限部位(NcoI、SacI、NotI、およびAscI)をGUS遺伝子の停止コドンの直前に追加した。これらのユニークな制限部位のために、結合ペプチドコード配列、および隣接SacIおよびAscI相補的付着端を含有する二本鎖DNAアダプターが、SacIおよびAscI部位の間でpGSTfプラスミドに挿入された。
【0195】
各結合ペプチド候補群からの2つの最良の7−mer配列および2つの最良の12−mer配列について、GST−ペプチド融合体を構築した。表10に示すように、オリゴヌクレオチドの組を各ペプチド候補に割り当てた。95℃で5min加熱し、次に1分あたり2℃の速度で24℃に冷却して、各ペプチドのためのオリゴヌクレオチドをアニールした。最後にアニールしたオリゴヌクレオチドをSacIおよびAscI部位間でpGSTfに挿入し、日常的分子遺伝子組換え技術を用いて、発現プラスミドpGST−ペプチドを形成した。ペプチドCEL−121のために使用したオリゴヌクレオチドは、その他のペプチドのために使用したオリゴヌクレオチドとは異なる形態を有した。CEL−121のためのオリゴヌクレオチドペアは、NcoIおよびAscI部位間でpGSTfに挿入してプラスミドpGST−CEL121を形成した。
【0196】
【表12】

【0197】
【表13】

【0198】
【表14】

【0199】
【表15】

【0200】
GST−ペプチド融合タンパク質の調製:
GST−ペプチド融合タンパク質を発現するために、これらの新しいpGSTfコンストラクトをインビトロジェン(Invitrogen)からのBL21 A1大腸菌(E.coli)細胞に形質転換した。各pGSTfコンストラクトで、1個の形質転換されたコロニーを50μg/mLのアンピシリン(LB−Amp50)を含有する2.5mLのLBブロス中で一晩37℃で生育させ、次に50mLの新鮮なLB−Amp50中で再度生育させた。細胞密度が0.8〜1.0のOD600値に達したら、0.2%の濃度でL−アラビノースを培養物に添加して、37℃で4hタンパク質発現を誘導した。およそ100μLの細胞を遠沈して、次に30μLのSDS−PAGEローディングバッファー中で10min沸騰させて溶解した。10μLの細胞溶解産物をインビトロジェン(Invitrogen)からのNuPAGE(登録商標)SDS−PAGEゲル上でランしてタンパク質発現を調べ、プラスミドが確かに融合タンパク質を生成したことを確認した。イリノイ州ロックフォードのピアス(Pierce(Rockford、IL))からのB−PER GST融合タンパク質精製キットを使用して、製造業者が提供するプロトコルに従って発現したタンパク質精製した。簡単に述べると、1mMのPMSF(フッ化フェニルメチルスルホニル)および5mMのEDTAを添加した2.5mLのB−PER試薬中で、50mLの培養物から収集した大腸菌(E.coli)を室温で30minかけて溶解した。細胞デブリを遠心分離によって除去した。可溶性画分(上清)を1mLの50%固定化グルタチオンスラリーと30min混合し、遠心分離して融合タンパク質と結合したグルタチオンゲルを収集した。ゲルを0.25mLのウォッシュバッファー中に再懸濁して、マイクロフィルタースピンカラムに装填し、遠心分離してウォッシュバッファーを除去した。次に1回当たり0.5mLのウォッシュバッファーを使用して、スラリーを2回洗浄した。0.45mLの溶出溶液を使用して、融合タンパク質をゲルから2回溶出した。2つの溶出サンプルを合わせて、IEB緩衝液(50mMトリス−HCl、pH7.5、50mMのNaCl、5%グリセロール)中で透析した。SDS−PAGEによってタンパク質の質を検査して、バイオラッド(Bio−Rad)タンパク質アッセイ試薬を使用してタンパク質濃度を判定した。
【0201】
MB50およびBmaxの測定:
MB50およびBmaxデータを得るために、0.025、0.05、0.1、0.15、0.25、0.4、および0.5nmolのタンパク質を添加して、実施例4で述たELISAベース結合アッセイにおいてGST−ペプチド融合タンパク質を滴定した。1つのアッセイ反応では、適量の基材をウェルに入れてウェルをブロッキングバッファー(0.1M NaHCO、pH8.6、5mg/m L BSA)で満たしてブロックした。基材およびウェルをTBST(TBS−0.1%トウィーン(Tween)−20)で3回洗浄し、試験するGST−ペプチド融合タンパク質、および1mg/mLのBSAを含有する200μLのTBST溶液と室温で15min反応させ、最後にTBSTで5回洗浄した。基材と結合するGST−ペプチド融合タンパク質を検出するために、シグマケミカル(Sigma Chemical Company)からの抗GST−HRP抱合体をTBSTで2,500倍に希釈し、ウェルに添加して室温で1hインキュベートした。TBSTでの5回の洗浄後、200μLのABTS(2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)基材溶液(0.4mM)、50mMナトリウムクエン酸、pH4.0、0.05%のH)をウェルに添加して、室温で25min発色反応を起こさせた。コネチカット州シェルトンのパーキン・エルマー(Perkin Elmer(Shelton、CT))からのヴィクター(Victor)−3 1420マルチ・レベル・カウンターを使用して、OD405値を測定した。
【0202】
アッセイでは、デグサ(Degussa)からの37.5μgのカーボンブラックFW−18、150μgのクロモフタール(Cromophtal)(登録商標)イエロー、150μgのサンファスト(Sunfast)(登録商標)マゼンタ、または150μgのサンファスト(Sunfast)(登録商標)ブルーを顔料結合基材として使用した。100%綿419W布帛および65/35ポリエステル/綿7436M布帛から20mmの繊維ストリングを引き抜いて、1つの反応で布帛結合基材として使用した。1片の16mmハンマーミル・タイダル(Hammermill Tidal)MP紙を紙結合基材として使用した。シグマケミカル(Sigma Chemical Company)からの600μgのシグマセル(Sigmacell)(セルロースタイプ20)をセルロース結合基材として使用した。100%ポリエステル布帛から引き抜いた20mmの繊維ストリングをポリエステル結合基材として使用した。各反応を三連で実施して、OD405値の平均を基材に対するペプチド結合親和力の測定値とした。タンパク質不在下での反応をブランク反応として使用した。
【0203】
カリフォルニア州サンディエゴのグラフパッド・ソフトウェア(GraphPad Software,Inc.(San Diego、CA))からのグラフパッド・プリズム(GraphPad Prism)4.0を使用して、各GST−ペプチド融合タンパク質で、タンパク質濃度に対する平均OD405値をプロットした。スキャッチャードプロットを使用して、タンパク質のMB50およびBmax値を判定し、表11に示す。表ではより小さなMB50値がより強力な結合親和力を示唆するのに対し、より高いBmax値は、より大量のペプチドが基材に付着することを示す。優れたペプチド候補は、CB−122のようにより小さなMB50と高いBmaxを有するべきである。GSTそれ自体は試験したいずれの基材に対しても結合活性を示さなかった(データ示さず)ので、このデータは、選択されたペプチド候補が基材特異的結合活性を確かに有し、ペプチドがより大きなタンパク質複合体に組み入れられた後もなおも活性であることを実証する。しかしこのアッセイは、大量の洗浄を使用したために非平衡状態条件下で実施された。したがってこのデータの組を異なる条件下でその他の方法によって得られたものと比較することは、適切でないかもしれない。
【0204】
【表16】

【0205】
実施例7
フローマイクロ熱量計測を使用したペプチド−基材結合エネルギーの測定
この実施例の目的は、相互作用の強度、具体的には、顔料結合および印刷媒体結合ペプチドの各基材との吸着モル熱をフローマイクロ熱量計測を使用して測定することである。
【0206】
結合ペプチドとそれらの各基材との相互作用に関する吸着および脱離熱をマイクロスカル・ロンドン(Microscal London,Ltd.)からのモデル4034フローマイクロ熱量計によって測定した。フローマイクロ熱量計は、ユニット内で一緒になって容積0.17cmのサンプルキャビティーまたはセルを形成する、入り口および出口コネクタを有する定温金属ブロックから構成される。1組の2個のサーミスタが、サンプルキャビティー内の2個のサーミスタの第2の組と共に、金属ブロック内に包埋される。ホイートストーンブリッジ回路の手段によって、マイクロカロリー範囲の熱変化を測定できる。出口チューブには25ミクロンフィルターが装着され、その上にサンプルベッドが位置し、またキャリブレーションコイルも含まれる。ホイートストーン回路からのアナログデータストリームは1秒間隔でサンプルされてデジタル化され、接続されたコンピューターに保管と引き続く分析のために送られる。あらゆる実験は24.5±0.5℃で行った。
【0207】
マサチューセッツ州ミルフォードのウォーターズ(Waters Corp.(Milford、MA))からのウォーターズ・モデル2410示差屈折計をフローマイクロ熱量計の下流に置いて、キャリア溶液へのそしてそれからの質量移動をモニターした。第2の吸着/脱離サイクルでは検出可能な質量移動が観察されなかったので、この第2のサイクルを下流検出器のブランクとして使用した。下流検出器を通るブランクとサンプルの間の時間毎の差を積分することで、濃度ピークが得られた。ピーク領域のキャリブレーションは、下流検出器上の既知容積のサンプルループ内に、ペプチド含有溶液を注入することで達成された。
【0208】
試験する基材、具体的には、シグマケミカル(Sigma Chemical Co.)からのセルロース繊維またはポリエチレンテレフタレート(ポリエステル)を繊維または微粒子形態で、装置のサンプルセル内に入れた。水をキャリア溶剤として使用した。サンプルセルへのまたはそれからの熱の流れの変化がないことで立証される平衡状態が得られるまで、キャリア溶剤をサンプルセルを通して汲み上げた。平衡状態を得た後、溶剤の流れを既知濃度の特異的結合ペプチドを含有するものの方に切り替えた。ペプチドの基材への吸着は、発熱ピークと、示差屈折率モニターを使用して下流で判定されるように、キャリア溶中のペプチド濃度の低下をもたらした。平衡状態が得られるまで、ペプチド含有溶剤の流れを継続した。次に溶剤の流れを元の純粋な溶剤に切り替え、もしあれば、基材からのペプチドの脱離をモニターした。比較のため同一方法を使用して、その基材への結合について、伝統的アクリルバインダー(ポリメタクリル酸)を試験した。
【0209】
基材表面の単位表面積あたりの結合ペプチドの質量移動を計算するために、屈折率モニターにより収集したデータを使用して、これらの試験において使用した印刷媒体基材の表面積を測定した。表面積の判定は、ジョージア州ノークロスのマイクロメリティクス(Micromeritics Inc.(Norcross、GA))からのマイクロメリティクス(Micromeritics)ASAP(登録商標)モデル2400/2405多孔率計を使用して、77.3°Kで二窒素吸着測定を使用して行った。データ収集に先だって、サンプルを60℃で一晩脱気した。相対圧力(P/P)0.05〜0.20にわたり収集した5点吸着等温線を使用して表面積測定を行い、ブルナウア(Brunauer)ら(J.Am.Chem.Soc.60:309(1938))が述べるようなBET法で分析した。μmol/mで示される質量移動値は、屈折率モニターで行った測定から判定された、基材上に吸着するサンプル量を基材の表面積で除して計算した。得られた質量移動値を表12に示す。いずれのサンプルでも脱離ステップ中に濃度の顕著な変化は観察されなかった。結果は不可逆的吸着と一致する。
【0210】
マイクロ熱量計測判定からの吸着熱を平方メートル当たりのミリジュール(mJ/m)単位で表13に示す。吸着熱を質量移動値で除して、所望の単位を得るのに適した転換因数を使用し、これらの値を表13でモルあたりのキロカロリー(kcal/mol)の単位で示される吸着のモル熱に変換した。表中の吸着熱および吸着のモル熱に関する負の値は、プロセスが発熱であり、すなわち結合の結果として熱が放出されたことを示唆する。表中のデータに見られるように、ペプチドの全ての吸着のモル熱は20kcal/mol以上であり、メタクリレート対照から得られた値と比較できる。いずれのサンプルについても顕著な脱離熱は観察されず、全例において吸着が本質的に不可逆的であることが示唆された。
【0211】
この試験の結果は、本発明のペプチドが、結合相互作用の強度の観点から、伝統的アクリルバインダー対照と比べて遜色がないことを示唆する。
【0212】
【表17】

【0213】
【表18】

【0214】
実施例8
顔料結合ペプチド/リンカージブロック分散剤の調製
この実施例の目的は、顔料結合ペプチドおよびポリプロリンリンカーからなるジブロック分散剤を調製することであった。ポリプロリンリンカーは、配列番号7として示されるカーボンブラック結合ペプチドCB−71のN−末端アミンを通じた活性化による、L−プロリンのN−カルボキシ無水物の原位置(in situ)での重合によって合成された。
【0215】
L−プロリンN−カルボキシ無水物の合成:
乾燥テトラヒドロフラン(THF)中でのホスゲン化によってL−プロリンから、L−プロリンのN−カルボキシ無水物を合成した。熱電対ウェル付き3,000mLの丸底四つ口フラスコに、較正済み添加漏斗を装着し、それに小型のドライアイスコールドフィンガーを載せた。第2のより大きなコールドフィンガーもまた、フラスコに装着した。1500mLの乾燥THFおよびミズーリ州セントルイスのシグマケミカル(Sigma Chemical Co.(Saint Louis、MI))からの23.02g(200mmol)のL−プロリンを装入したフラスコに、磁気撹拌棒を入れた。反応に液体ホスゲン(28mL)を2つの14mLの部分に分けて添加し、透明な溶液が得られるまで反応混合物を撹拌した。次に溶剤を40℃以下で、約40mLの容積に真空蒸留した。透明な油が得られ、次に乾燥箱に移して、ニュージャージー州ギブスタウンのEMサイエンス(EM Science(Gibbstown、NJ))からの100mLのヘキサンを添加した。油を洗浄するために回旋させた後、ヘキサンをデカントして100mLのTHFを−20℃で添加した。次にトリエチルアミン(20.2g)を含有する追加的な100mLの冷THFを添加して、トリエチルアミン塩酸塩の沈殿を引き起こし、それを濾過して除去した。ヘキサン(150mL)を濾液に添加して、溶液を−20℃の冷蔵庫に24h入れた。得られた白色結晶(2回の収集)を真空濾過により収集した。得られた収量はそれぞれ13.3gおよび9.1gであった。
【0216】
カーボンブラック結合ペプチド/ポリプロリンジブロック分散剤の合成:
隔壁および磁気撹拌棒を装着した100mL丸底フラスコ内の10mLのジメチルホルムアミド(DMF)に、カリフォルニア州ダブリンのシンペップ(SynPep Corporation(Dublin、CA))から得られた1グラムのカーボンブラック結合ペプチドCB−71(配列番号7)を溶解した。上述のようにして調製されたプロリンN−カルボキシ無水物(1.2mLのDMF中の1.0mmol/mL溶液)を室温で迅速に撹拌しながら一度に添加した。反応混合物を室温で24h撹拌し、その後8mLのDMFを添加して、続いてマサチューセッツ州ホリストンの(Harvard Apparatus Inc.(Holliston、MA))からのハーバード(Harvard)モデル44シリンジポンプを使用して、追加的な10.8mLのプロリンN−カルボキシ無水物溶液を4hかけて滴下して添加した。反応を一晩撹拌し、次に凍結乾燥機を使用してDMFを除去した。生成物をヘキサンで洗浄し、濾過して収集して40℃で真空乾燥した。収量は1.69gのベージュ色の粉末であった。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して生成物を分析し、数平均分子量(M)は2170g/molであることが分かった。生成物の理論分子量は1800g/molである。
【0217】
実施例9
顔料結合ペプチド/リンカージブロック分散剤の調製および性能試験
この実施例の目的は、顔料結合ペプチドおよびポリプロリンリンカーからなるジブロック分散剤を調製して、顔料分散剤としてのそれらの性能を試験することであった。ポリプロリンリンカーは、配列番号8として示されるカーボンブラック結合ペプチドCB−121、または配列番号18として示されるマゼンタ結合ペプチドSM−71のN−末端アミンを通じた活性化によって、L−プロリンのN−カルボキシ無水物の原位置(in situ)での重合によって合成された。
【0218】
A.カーボンブラック結合ペプチド/ポリプロリンジブロック分散剤の合成:
隔壁および磁気撹拌棒を装着した100mL丸底フラスコ内の10mLのDMFに、カリフォルニア州ダブリンのシンペップ(SynPep Corporation(Dublin、CA))から得られた1グラムのカーボンブラック結合ペプチドCB−121(配列番号8)を溶解した。実施例8で述べたようにして調製したプロリンN−カルボキシ無水物(0.8mLのDMF中の1mmol/mL溶液)を室温で迅速に撹拌しながら一度に添加した。反応混合物を室温で24h撹拌し、その後12mLのDMFを添加して、続いてハーバード(Harvard)モデル44シリンジポンプを使用して、追加的な7.2mLのプロリンN−カルボキシ無水物溶液を4hかけて滴下して添加した。反応を一晩撹拌し、次に減圧下でDMFを除去した。生成物をヘキサンで洗浄し、濾過して収集して40℃で真空乾燥した。収量は1.36gのベージュ色の粉末であった。GPCを使用して生成物を分析し、数平均分子量(M)は2850g/molであることが分かった。生成物の理論分子量は2260g/molである。
【0219】
カーボンブラック結合ペプチド/ポリプロリンジブロック分散剤の分散試験:
振盪ボトル試験を使用して、本発明の分散剤の能力の定性試験を実施した。試験は、下で述べるように、関心のある分散剤を顔料、および不活性研磨粒子をはじめとするその他の添加剤と組み合わせることと、混合物を激しく振盪することからなった。振盪後に混合物の粘度および解凝集を調べて、分散剤の有効性を判定した。
【0220】
上述のように調製した1グラムのカーボンブラック結合ペプチドCB−121/ポリプロリンジブロック分散剤を0.27gの10%水性カリウム水酸化物溶液を含有する18.73gの脱イオン水に懸濁させた。得られた溶液はわずかに濁っていた。2オンスのねじ蓋式バイアルに、8gの分散剤溶液、7.5gのジルコニアビーズ、オハイオ州アクロンのノプコNDW(Nopco NDW、(Akron、OH))からの0.1gの脱泡剤、1.0gのFW−18カーボンブラック顔料、および3.5gの脱イオン水を装入した。バイアルにしっかり蓋をしてテープで密封し、緩衝材材料で満たされた塗料缶に入れた。次にこのアセンブリーをニュージャージー州ユニオンのレッドデビル(Red Devil(Union、NJ))からの塗料ミキサー上で30min撹拌した。その後、分散体がバイアルの壁を流下する際に形成される薄膜の特性によって判定して、粘度および凝集の程度について分散体を定性的に調べた。このジブロック分散剤は、カーボンブラック顔料について良好な分散体特性を有すると判定された。液体の粘度が低ければ、そしてガラスバイアルの側面を流下しながら色の大きなパッチまたは溝を形成せずに均一の薄膜を形成すれば、分散体は良好であると判定された。あらゆる特定のポリマーが効果的な分散剤として作用する能力は、添加剤、pHおよびポリマー上の酸または塩基の中和程度をはじめとする、全体的な分散体調合物に強く依存することを強調しておかなくてはならない。
【0221】
このカーボンブラック結合ペプチドCB−121/ポリプロリンジブロック分散剤は、顔料結合ペプチドを同定するために使用したFW−18顔料以外のカーボンブラック顔料、具体的には全てニュージャージー州ピスカタウェイのデグサ(Degussa(Piscataway、NJ))からのデグサ(Degussa)90、デグサ(Degussa)150T、および2つのロットのNIPex(登録商標)180を使用しても試験した。CB−121/ポリプロリンジブロック分散剤は、これらの別の顔料を分散するのに効果的でなかった。しかし上で述べたのと同様にして調製した別のカーボンブラック結合ペプチド分散剤、具体的にはCB−71(配列番号7)/ポリプロリン10、およびCB−72(配列番号6)/ポリプロリン10は、これらの別のカーボンブラック顔料のほとんどについて効果的な分散剤として機能した。一般には、調合物中で使用する特定の顔料について顔料結合ペプチドを選択することが一番よい。
【0222】
比較のために同一条件で、このカーボンブラック結合ペプチド/ポリプロリン分散剤を顔料サンファスト(Sunfast)(登録商標)マゼンタ122のための分散剤として試験した。このジブロックペプチドはサンファスト(Sunfast)マゼンタ顔料を分散しなかったが、代わりに高度に粘稠な混合物を生じた。この結果は、カーボンブラック結合ペプチド/ポリプロリン分散剤の選択性を実証する。
【0223】
B.マゼンタ結合ペプチド/ポリプロリンジブロック分散剤の合成:
隔壁および磁気撹拌棒を装着した100mL丸底フラスコ中の10mLのDMFに、カリフォルニア州ダブリンのシンペップ(SynPep Corporation(Dublin、CA))から得られた1グラムのマゼンタ結合ペプチドSM−71(配列番号18)を溶解した。実施例8で述べたように調製したプロリンN−カルボキシ無水物(0.8mLのDMF中の1mmol/mL溶液)を室温で迅速に撹拌しながら一度に添加した。反応混合物を室温で24h撹拌し、その後8mLのDMFを添加して、続いてハーバード(Harvard)モデル44シリンジポンプを使用して、追加的な11.2mLのプロリンN−カルボキシ無水物溶液を4hかけて滴下して添加した。反応を一晩撹拌し、次に減圧下でDMFを除去した。生成物をヘキサンで洗浄し、濾過して収集して40℃で真空乾燥した。収量は1.79gのベージュ色の粉末であった。GPCを使用して生成物を分析し、数平均分子量(M)は2460g/molであることが分かった。生成物の理論分子量は1745g/molである。
【0224】
マゼンタ結合ペプチド/ポリプロリンジブロック分散剤の分散試験
2オンスねじ蓋式バイアル中の0.5mLの10%水性KOH溶液を含有する10mLの脱イオン水に、上述のように調製したマゼンタ結合ペプチド/ポリプロリンジブロック分散剤(0.25g)を懸濁させた。サンファスト(Sunfast)(登録商標)マゼンタ122顔料(0.625g)、砂(7.5g)、および脱泡剤(0.1g)を添加して、バイアルに蓋をして上述のように30min振盪した。低粘度を示して凝集を示さない、非常に良好な分散体が得られた。比較のために同一条件で、顔料カーボンブラックFW18のための分散剤として、このマゼンタ結合ペプチド/ポリプロリンペプチド分散剤を試験した。このジブロックペプチドはカーボンブラック顔料を分散せず、その選択性が実証された。
【0225】
実施例10
印刷媒体結合ペプチド/疎水性リンカージブロック分散剤の調製
この実施例の目的は、綿結合ペプチドおよび疎水性ポリγベンジルグルタミン酸リンカーからなるジブロック分散剤を調製することであった。この実施例は、選択された印刷媒体結合ペプチドが、水性分散体のための親水性リンカーと、特異的印刷媒体バインダーの双方の役割を果たす能力を例証する。ポリγベンジルグルタミン酸リンカーは、配列番号30として示される綿結合ペプチドCOT−71のN−末端アミンを通じた活性化によって、γベンジルグルタミン酸のN−カルボキシ無水物の原位置(in situ)での重合によって合成された。
【0226】
γベンジルグルタミン酸N−カルボキシ無水物の合成:
γ−ベンジル−L−グルタミン酸を使用して、L−プロリンN−カルボキシ無水物の調製について実施例8で述べたようにして、ホスゲン化によってγベンジルグルタミン酸N−カルボキシ無水物を調製した。熱電対ウェル付き1,000mLの丸底四つ口フラスコに、較正済み添加漏斗を装着し、それに小型のドライアイスコールドフィンガーを載せた。第2のより大きなコールドフィンガーもまた、フラスコに装着した。500mLの乾燥THFおよびウィスコンシン州ミルウォーキーのフルカ・ケミカル(Fluka Chemical Corp.(Milwaukee、WI))からの50g(200mmol)のγ−ベンジル−L−グルタミン酸を装入したフラスコに、磁気撹拌棒を入れた。還流しながら加熱して、反応に液体ホスゲン(24mL)を2つの12mLの部分に分けて添加した。還流しながら透明な溶液が得られるまで反応混合物を撹拌した。次に溶剤を40℃以下で真空蒸留して乾燥させた。次に白色結晶性生成物を乾燥箱に移して、800mLのヘキサンを添加した。ヘキサン中で回旋させた後、結晶を濾過して収集した。生成物をTHF/ヘキサン混合物から再結晶化した。得られた白色結晶(2回の収集)を真空濾過して収集し、53.2g(収率95.9%)を得た。
【0227】
綿結合ペプチド/ポリγベンジルグルタミン酸ジブロック分散剤の合成:
乾燥箱中で、隔壁および磁気撹拌棒を装着した100mLの丸底フラスコ内の10mLの蒸留して乾燥させたDMFに、カリフォルニア州ダブリンのシンペップ(SynPep Corporation(Dublin、CA))から得られた1.0gの綿結合ペプチドCOT−71(配列番号30)を溶解した。次に上述のようにして調製した1.2mLのDMF中のγ−ベンジルL−グルタミン酸N−カルボキシ無水物の1mmol/mL溶液を室温で迅速に撹拌しながら一度に添加した。この反応混合物を室温で72h撹拌した。その後、8mLのDMFを添加して、ハーバード(Harvard)モデル44シリンジポンプを使用して、追加的な10.8mLのγ−ベンジルL−グルタミン酸N−カルボキシ無水物溶液を4hかけて緩慢に添加した。この反応混合物をさらに48h撹拌した。その後、溶剤を真空下で蒸発させて乾燥した。回収した乾燥生成物をヘキサンで洗浄して風乾させ、次に真空中において40℃で乾燥させた。収量は2.99gの灰色がかった粉末であった。GPCを使用して生成物を分析し、数平均分子量(M)が4230g/molであることが分かった。生成物の理論分子量は3482g/molである。
【0228】
実施例11
カーボンブラック結合ペプチド/印刷媒体結合ペプチドジブロック分散剤の調製
この実施例の目的は、綿結合ペプチドCOT−71(配列番号30)およびカーボンブラック結合ペプチドCB−71(配列番号7)からなるジブロック分散剤を調製することであった。
【0229】
隔壁および磁気撹拌棒を装着した100mL丸底フラスコ内の10mLのDMFに4,4’メチレンビス(フェニルイソシアネート)(0.308g)を溶解した。シリンジポンプを使用して、10mLのDMF中の1.0gのカーボンブラック結合ペプチドCB−71(配列番号7)溶液を室温で2hかけて滴下して添加し、添加完了後、反応混合物を室温でさらに4h撹拌した。10mLのDMF中の綿結合ペプチドCOT−71(配列番号30)(1.070g)を迅速に撹拌しながら一度に添加し、得られた溶液を室温で24h撹拌した。次に溶剤を真空蒸留によって除去し、生成物をヘキサンで洗浄して濾過によって収集した。サンプルを40℃で真空乾燥させ、2.02gの灰色がかった粉末を得た。生成物をGPCを使用して分析し、数平均分子量(M)は2430g/molであることが分かった。生成物の理論分子量は1960g/molである。
【0230】
実施例12
綿結合ペプチドの洗濯堅牢度試験
この実施例の目的は、配列番号30として示される綿結合ペプチドCOT−71の綿上における洗濯堅牢耐久性を実証し、それをポリメタクリレート対照と比較することであった。綿結合ペプチドおよびポリメタクリレートのどちらも染料に共役し、分光光度的判定が可能になった。
【0231】
4−(2−(4−イソシアナトフェニル)ジアゼニル)ベンゼンアミン(イソシアネート機能性付与分散オレンジ3)の調製:
ホスゲン(25.4mL)をトルエンに溶解して、35重量%溶液を作った。アルドリッチ(Aldrich)から得られた分散オレンジ3(4−(2−(4−ニトロフェニル)ジアゼニル)ベンゼンアミン(Cat.No.36,479−7)、(14.25g)をトルエン中に懸濁させ、前もって調製したホスゲン溶液を5分間かけて滴下して添加した。反応物を100℃に2h加熱して、次に室温に冷却させた。得られた固形物を濾過してトルエンで洗浄し、11.33g(84.5%収率)の所望のイソシアネート誘導体を得た。
【0232】
染料結合する綿結合ペプチドの調製:
アルドリッチ(Aldrich)から得られた4−(2−(4−イソシアナトフェニル)ジアゼニル)ベンゼンアミン(Cat.No.25,643−9)、(0.70g)をDMF(50mL)に溶解した。配列番号30として示される綿結合ペプチドCOT−71(1.45g)を25mLのDMFに溶解し、室温で激しく撹拌しながら上の溶液に添加した。反応を4日間撹拌した。反応溶液を濾過して未溶解固形物を除去し、濾液をジエチルエーテルで希釈して暗赤褐色粉末を沈殿させ、それを真空乾燥させた(0.5g、収率23%)。
【0233】
染料結合するメタクリル酸オリゴマーの調製:
トリメチルシリルメタクリレートの基移動重合によってポリメタクリル酸オリゴマー(DP=10、2.0g)を調製し、続いてマ(Ma)らに付与された米国特許第5,085,698号明細書で述べられるのと類似の方法を使用してトリメチルシリル基を除去した。オリゴマーを塩化オキサロイル(4mL)中に溶解し、混合物を30min還流した。過剰な塩化オキサロイルを真空蒸留によって除去した。アルドリッチ(Aldrich)から得られた分散オレンジ3、(4−(2−(4−ニトロフェニル)ジアゼニル)ベンゼンアミン)、(Cat.No.36,479−7)、(1.15g)を20mLのTHFに溶解し、この溶液を上の乾燥させた酸塩化物に添加した。酸塩化物が再溶解した後、溶液を加熱して30min還流した。次に5mLの水を添加して、混合物を加熱して30min還流した。溶液を濾過し、濾液を真空内で濃縮させ、収量2.01gの粗生成物を得た。この固形物を小さな部分に分割し、溶出溶剤として9:1v/vクロロホルム/メタノールを使用して、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0234】
洗濯堅牢度耐久性試験:
ジメチルホルムアミド中20%の固形分濃度で、染料結合する綿結合ペプチドおよび染料結合するメタクリル酸オリゴマーの溶液を調製した。これらの溶液を100%綿布帛スワッチ(10cm×10cm)上にスプレーして、直径約2.5〜5cmの着色スポットを調製した。次に布帛試験に先だって、布帛サンプルを室温に24h置いて、または70℃に10min加熱して順応させた。
【0235】
加速洗濯試験(米国繊維化学者・色彩技術者協会(AATCC)試験方法61−1996)を使用して、洗濯堅牢度耐久性を判定した。布帛の着色スポット領域を光センサー中に入れて、高度計応答を表すL、aおよびbパラメーターを計算して、加速洗濯前後の色強度測定を分光光度的に判定した。スポットを付けていない布帛について最初のベースラインL値を測定し、あらゆる測定は3回の個々の判定の平均であった。ΔE値を下の式1
ΔE=((L−L+(a−a+(b−b1/2 (1)
(式中、
=明度変数であり、aおよびbは国際照明委員会(CIE)によって定義されるCIELAB色空間の色度座標である(ミノルタ「正確な色のコミュニケーション−感触から器具使用への色制御(Precise Color Communication−Color Control From Feeling to Instrumentation)」ミノルタカメラ、1996))から計算した。ΔE値は色の損失と相関するので、より小さい値はより良い洗濯堅牢度耐久性の徴候である。
【0236】
結果を表14に提示する。表中のデータに見られるように、綿結合ペプチドの洗濯堅牢度は、メタクリレート対照よりも良好である。
【0237】
【表19】

【0238】
実施例13
綿結合ペプチド/疎水性リンカージブロック分散剤の調製
この実施例の目的は、顔料結合領域の役割をする、綿結合ペプチドおよびポリ(ベンジルメタクリレート)リンカーからなるジブロック分散剤を調製することであった。下の手順に従って、単一ヒドロキシエチルメタクリレート単位で終結するポリ(ベンジルメタクリレート)オリゴマー(DP=9)をビス(4−イソシアナトフェニル)メタンによって、末端ヒドロキシル基でキャッピングした。これによって綿結合ペプチドに直接結合する、反応性中間体が提供される。
【0239】
イソシアネートキャップドポリ(ベンジルメタクリレート)の調製:
マ(Ma)ら(前出)によって述べられる一般方法を使用して、基移動重合によってポリ(ベンジルメタクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート)を調製し、50mLのTHFに10gを溶解した。アルドリッチ(Aldrich)から得られたビス(4−イソシアナトフェニル)メタン、(Cat.No.25,643−9)、(12g)もまた50mLのTHFに溶解し、次に激しく撹拌しながら、ポリアクリレート溶液を数時間かけて滴下して添加した。添加完了後、10mLの乾燥エチルアミンを添加して、反応物を室温で一晩撹拌した。次にヘキサンの添加によって、注意深い分別沈殿によりイソシアネートキャップド生成物を得た。沈殿したポリマーを収集し、ジエチルエーテルに溶解して、ヘキサンの添加によってもう一度新たに沈殿させた。精製した生成物を乾燥した後、生成物重量は5.89gであった。NMRおよびMALDI質量分析法を使用して、精製された生成物のアイデンティティを確認した。
【0240】
綿結合ペプチド(COT−71)/ベンジルメタクリレートジブロック分散剤の合成:
COT−71綿結合ペプチド配列(配列番号30)と、テトラプロリンスペーサーによって綿結合領域から隔てられるN−末端リジンとを含有する、配列番号115として示される合成ペプチドが、上述の固相合成技術を使用してシンプレップ(Synpep Corporation)によって調製された。乾燥箱中で、0.72gの真空乾燥ペプチドを乾燥ジメチルホルムアミドに溶解した。ゴム隔壁が装着され磁気撹拌棒を含有する40mLねじ込み栓びんに、上述のイソシアネートキャップドアクリレート(1.04g)を装入した。ペプチド溶液をびんに一度に添加した。次にびんを撹拌しながら加熱ブロック内に入れて60℃に6h保ち、その後取り出して反応混合物を室温で一晩撹拌した。次に溶液を1μmフィルターに通過させ、次に溶剤を真空蒸留によって除去した。生成物をジエチルエーテルで数回洗浄して1.4gの精製生成物を得た。
【0241】
実施例14
綿結合ペプチド/疎水性リンカージブロック分散剤を有するカーボンブラックインクの洗濯堅牢度試験
この実施例の目的は、綿結合ペプチド/ポリ(ベンジルメタクリレート)分散剤を有するカーボンブラックインクの洗濯堅牢度耐久性を実証して、それを伝統的アクリレートジブロック共重合体分散剤を有するカーボンブラックインクと比較することであった。
【0242】
カーボンブラックインク調合物:
実施例9で述べるびん振盪法を使用して、カーボンブラックインク分散体を調製した。インク調合物の詳細は表15に述べる。実施例13で述べる綿結合ペプチド(COT−71)/ベンジルメタクリレートジブロック分散剤を使用して、ペプチドベースの分散剤調合物を調製した。ベンジルメタクリレート13/メタクリル酸10からなるアクリレートジブロック共重合体を使用して、アクリレートベースの分散剤調合物を調製した。ニュージャージー州ピスカタウェイのデグサ(Degussa(Piscataway、NJ))からのPrintex 150Tカーボンブラック顔料を使用して、分散体を作成した。砂(0.5g)を研磨材媒体として全体で使用した。
【0243】
【表20】

【0244】
カーボンブラックインクの洗濯堅牢度耐久性試験:
金属ローラーを使用してカーボンブラックインクを10cm×10cm四角い綿布帛に塗布し、一晩乾燥させた。次にAATCC試験方法61−1996を使用して、洗剤なしの冷水洗浄ステップ後、または加熱プラテン間での160℃で2minのヒートセットとそれに続く洗剤なしの冷水洗浄ステップ後に、それらを試験した。ΔE値を実施例12で述べるようにして測定し、表16に示す。結果は、ペプチドベースの分散剤を有するカーボンブラックインクの洗濯堅牢度耐久性が、アクリレートベースの分散剤を有するインクと比較できることを示唆する。
【0245】
【表21】

【0246】
実施例15
カーボンブラック結合ペプチド/ペプチドリンカー/セルロース結合ペプチドトリブロック分散剤の調製
この実施例の目的は、組換えDNAおよび分子クローニング技術を使用して、カーボンブラック顔料結合ペプチド、親水性ペプチドリンカー、およびセルロース結合ペプチドからなるトリブロックタンパク質分散剤を調製することであった。
【0247】
デザインされたトリブロック分散剤は、CB−72(配列番号6)/ST−リンカー/CEL−121(配列番号37)の構造を有する。ST−リンカーは、配列番号45によって示される配列を有する、植物病原体菌・カビアスペルギルス(Aspergillus)のセロビオヒドロラーゼIの天然ドメイン間リンカーである。
【0248】
TBP1遺伝子のデザインおよび合成:
TBP1と称される合成遺伝子を製作するために、CB−72(配列番号6)/ST−リンカー/CEL−121(配列番号37)トリブロックタンパク質分散剤を生成するために、テキサス州ウッドランドのシグマ−ジェノシス(Sigma−Genosys(Woodlands、TX))によって表17に列挙するオリゴヌクレオチドが合成された。
【0249】
【表22】

【0250】
T4ポリヌクレオチドキナーゼを使用して、各オリゴヌクレオチドをATPでリン酸化した。得られたオリゴヌクレオチドを混合し、5min煮沸して、次に緩慢に室温に冷却した。アニールしたオリゴヌクレオチドをT4DNAリガーゼでライゲートして、配列番号52として示されるCB−72/ST−リンカー/CEL−121トリブロックタンパク質分散剤をコードする、配列番号51として示される合成DNA断片TBP1を得た。
【0251】
pINK1発現プラスミドの構築:
タンパク質の過剰発現のために、TBP1をカリフォルニア州カールスバッドのインビトロジェン(Invitrogen(Carlsbad、CA))からのゲートウェイ(商標)技術システムに組み入れた。第1のステップでは50μLのPCR反応中で、2μLのTBP1ライゲーション混合物を使用した。標準PCRプロトコルに従って、カリフォルニア州ラホヤのストラタジーン(Stratagene(La Jolla、CA))からのpfu DNAポリメラーゼによって反応を触媒した。TBP1断片の増幅のために、配列番号53として示されるプライマー5’TBP1(5’−CAC CGG ATC CAT CGA AGG TCG T−3’)、および配列番号54として示されるプライマー3’TBP1(5’−TCA TTA TGC AGC CAG CAG CGC−3’)を使用した。これらのプライマーのデザインのために、増幅された断片の5’および3’末端に、追加的配列CACCおよび別の停止コドンTGAを付加した。インビトロジェン(Invitrogen)のpENTR方向性TOPO(登録商標)クローニングキットを使用して、増幅したTBP1をpENTR/D−TOPOベクター内に直接クローンし、ゲートウェイエントリープラスミドpENTR−TBP1を得た。このエントリープラスミドをインビトロジェン(Invitrogen)からのワンショット(One Shot)TOPO10大腸菌(E.coli)株中で増殖させた。PCR増幅およびクローニングの正確さは、デュポン(DuPont)配列決定設備でDNA配列決定によって判定した。最後にエントリープラスミドをインビトロジェン(Invitrogen)からのpDEST17(Invitrogen)と混合した。インビトロジェン(Invitrogen)からのLRクロナーゼ(Clonase)(商標)によって、LR遺伝子組換え反応を触媒した。目的プラスミドpINK1を構築し、DH5α大腸菌(E.coli)株中で増殖させた。遺伝子組換え反応の正確さをDNA配列決定によって判定した。LR遺伝子組換え反応のためのあらゆる試薬は、インビトロジェン(Invitrogen)のゲートウェイ(商標)技術大腸菌(E.coli)発現システムキット中で提供された。上述の全プロセスは、インビトロジェン(Invitrogen)の使用説明書に従った。
【0252】
目的プラスミドpINK1は、配列番号55として示される組換えタンパク質6H−TBP1のためのコード領域を含有し、それは11.6kDaのタンパク質である。このタンパク質の配列は6xHisタグおよびFactor Xa認識部位を含む。このN−末端配列に続いて、6H−TBP1は、配列番号52として示される、CB−72/ST−リンカー/CEL−121の構造を有するトリブロックタンパク質TBP1を含有する。TBP1は、Factor Xa処理によって6H−INK1から放出できる。
【0253】
6H−TBP1タンパク質の生成:
発現プラスミドpINK1をインビトロジェン(Invitrogen)からのBL21−AI大腸菌(E.coli)株に形質転換した。組換えタンパク質を生成するために、50mLのLB−カルベニシリンブロス(10g/Lバクト−トリプトン、5g/Lバクト−酵母抽出物、10g/LNaCl、50mg/Lカルベニシリン、pH7.0)に、形質転換された細菌の1個のコロニーを接種して、OD600が0.6に達するまで培養物を37℃で振盪した。培養物に0.5mLの20%L−アラビノースを添加して振盪をさらに4h継続し、発現を誘導した。培養物を10,000×gで15min遠心処理して、およそ0.15gの細菌を収集した。
【0254】
シグマケミカル(Sigma Chemical Company)からの0.2mg/mLのリゾチームを含有するミズーリ州セントルイスのシグマケミカル(Sigma Chemical Co.(St.Louis、MI))からの4mLのセリテック(Cellytic)B−細菌細胞溶解/抽出試薬中に、収集した細菌を懸濁させた。室温で30minのインキュベーション中に、細菌細胞を溶解させた。可溶性および不溶性の画分を4℃で10,000×gにおいて15minの遠心分離によって分離した。不溶性の画分を5mLの溶解緩衝液(8M尿素、0.1M NaHPO、0.01Mトリス−HCl、pH8.0)に溶解した。可溶性画分および溶解した不溶性画分のアリコート(13μL)を10%SDS−PAGEにかけて、得られたゲルをクーマシーブリリアントブルーG−250で染色した。電気泳動の結果を図1Aに示し、ここではレーンIおよびSはそれぞ不溶性画分および可溶性画分を示す。これらの結果は、タンパク質6H−TBP1が、不溶性の画分中で発現したことを示唆する(図1AのレーンSおよびI参照)。
【0255】
組換えタンパク質を精製するために、キアゲン(QIAGEN)からの1mLのNi−NTAスーパーフロー樹脂を添加して不溶性の画分を溶解し、室温で1h混合した。混合物をカリフォルニア州ハーキュリーズのバイオラッド(Bio−Rad(Hercules、CA))からのガラスエコノ−カラム、0.5cm×5cmに装入した。液相を重力によりNi−NTA樹脂に流してFT画分として収集した。次にカラムをそれぞれ6M、4M、2M、1M、および0Mの尿素を含有する溶解緩衝液の2mLの部分で逐次洗浄した。洗浄プロセス中の尿素濃度の段階的な低下により、組換えタンパク質のいくらかは再生しているかもしれない。したがって2mLの未変性溶出緩衝液(50mM NaHPO、pH8.0、300mM NaCl、250mMイミダゾール)を使用して、タンパク質をカラムから溶出し、未変性タンパク質画分として収集した。3mLの変性溶出緩衝液(8M尿素、0.1M NaHPO、0.01Mトリス−HCl、pH4.5)を使用して、残る変性組換えタンパク質をカラムから溶出し、変性タンパク質画分として収集した。SDS−PAGEを使用して未変性および変性画分の双方を調べ、結果を図1Aに示し、そこではレーンRおよびDがそれぞれ、再生溶出画分および変性溶出画分を示す。これらの結果は、Ni−NTA樹脂を使用して6H−TBP1が成功裏に精製されたこと、そしてタンパク質画分のいくらかはカラム上で直接に再生されたことを実証する(図1AのレーンRおよびD参照)。各溶出画分中のタンパク質濃度は、カリフォルニア州ハーキュリーズのバイオラッド(Bio−Rad(Hercules、CA))からのバイオラッド(Bio−Rad)タンパク質アッセイ試薬を使用して判定された。計算により本出願人らは、1Lの大腸菌(E.coli)培養物がおよそ52mgの精製された6H−TBP1を生じることができると結論づけた。
【0256】
実施例16
サンファスト(Sunfast)マゼンタ結合ペプチド/ペプチドリンカー/ポリ(エチレンテレフタラート)結合ペプチドトリブロック分散剤の調製
この実施例の目的は、組換えDNAおよび分子クローニング技術を使用して、サンファスト(Sunfast)マゼンタ顔料結合ペプチド、親水性ペプチドリンカー、およびポリ(エチレンテレフタラート)結合ペプチドからなるトリブロックタンパク質分散剤を調製することであった。
【0257】
デザインされたトリブロック分散剤は、SM−121(配列番号20)/PT−リンカー/PET−121(配列番号40)の構造を有する。PT−リンカーは細菌セルロモナス・フィミ(Cellulomonas fimi)のエンドグルカナーゼA中の天然ドメイン間リンカーであり、配列番号56によって示される配列を有する。
【0258】
TBP2遺伝子のデザインおよび合成:
TBP2と称される合成遺伝子を作るため、SM−121(配列番号20)/PT−リンカー/PET−121(配列番号40)トリブロックタンパク質分散剤を生成するために、表18に列挙したオリゴヌクレオチドが、テキサス州ウッドランズのシグマ・ジェノシス(Sigma−Genosys(Woodlands、TX))によって合成された。
【0259】
【表23】

【0260】
T4ポリヌクレオチドキナーゼを使用して、各オリゴヌクレオチドをATPでリン酸化した。得られたオリゴヌクレオチドを混合し、5min煮沸して、次に緩慢に室温に冷却した。最後にアニールしたオリゴヌクレオチドをT4DNAリガーゼにライゲートして、配列番号63として示されるSM−121/PT−リンカー/PET−121トリブロックタンパク質分散剤をコードする、配列番号62として示される合成DNA断片TBP2を得た。
【0261】
pINK2発現プラスミドの構築:
実施例15で述べた手順を使用して、TBP2をインビトロジェン(Invitrogen)からのタンパク質過剰発現のためのゲートウェイ(商標)技術システム中に組み入れた。配列番号64として示されるプライマー5’TBP1(5’−CAC CGG ATC CAT CGA AGG TCG T−3’)、および配列番号65として示されるプライマー3’TBP2(5’−TCA TTA GTT GAA GAA CGG CAT GA−3’)をTBP2断片増幅のために使用した。これらのプライマーのデザインのために、追加的配列CACC、および別の停止コドンTGAを増幅させた断片の5’および3’末端に付加した。インビトロジェン(Invitrogen)のpENTR方向性TOPOクローニングキットを使用して、増幅されたTBP2をpENTR/D−TOPOベクターに直接クローニングして、ゲートウェイエントリープラスミドpENTR−TBP2を得た。このエントリープラスミドをインビトロジェン(Invitrogen)からのワンショット(One Shot)TOPO10大腸菌(E.coli)株中で増殖させた。PCR増幅およびクローニングの正確さをDNA配列決定によって判定した。最後にエントリープラスミドをpDEST17と混合した。LR遺伝子組換え反応は、インビトロジェン(Invitrogen)からのLRクロナーゼ(Clonase)(商標)によって触媒した。目的プラスミドpINK2を構築し、DH5α大腸菌(E.coli)株中で増殖させた。遺伝子組換え反応の正確さをDNA配列決定によって判定した。LR遺伝子組換え反応のためのあらゆる試薬は、インビトロジェン(Invitrogen)のゲートウェイ(商標)技術大腸菌(E.coli)発現システムキット中で提供された。上述の全プロセスは、インビトロジェン(Invitrogen)の使用説明書に従った。
【0262】
目的プラスミドpINK2は、配列番号66として示される組換えタンパク質6H−TBP2のためのコード領域を含有し、それは10.7kDaのタンパク質である。このタンパク質の配列は、6xHisタグおよびFactor Xa認識部位を含み、それは実施例15で述べたように、6H−TBP1認識部位と同一である。このN−末端配列に続いて、6H−TBP2は、SM−121/PT−リンカー/PET−121の構造を有するトリブロックタンパク質TBP2を含有する。TBP2は、Factor Xa処理によって6H−TBP2から放出できる。
【0263】
6H−TBP2タンパク質の生成:
実施例15で6H−TBP2タンパク質について述べた手順を使用して、発現プラスミドpINK2をインビトロジェン(Invitrogen)からのBL21−AI大腸菌(E.coli)株に形質転換した。
【0264】
可溶性画分および溶解した不溶性画分のアリコート(13μL)を10%SDS−PAGEにかけて、得られたゲルをクーマシーブリリアントブルーG−250で染色した。電気泳動の結果を図1Bに示し、ここではレーンIおよびSはそれぞ不溶性画分および可溶性画分を示す。これらの結果は、タンパク質6H−TBP2が、不溶性の画分中で発現したことを示唆する(図1BのレーンSおよびI参照)。
【0265】
実施例15で述べたようにして、キアゲン(QIAGEN)からののNi−NTAスーパーフロー樹脂を使用して組換えタンパク質を精製した。SDS−PAGEを使用して未変性および変性画分の双方を調べ、結果を図1Bに示し、そこではレーンRおよびDがそれぞれ、再生溶出画分および変性溶出画分を示す。これらの結果は、Ni−NTA樹脂を使用して6H−TBP2が成功裏に精製されたこと、そしてタンパク質画分のいくらかはカラム上で直接に再生されたことを実証する(図1BのレーンRおよびD参照)。各溶出画分中のタンパク質濃度は、カリフォルニア州ハーキュリーズのバイオラッド(Bio−Rad(Hercules、CA))からのからのバイオラッド(Bio−Rad)タンパク質アッセイ試薬を使用して判定された。計算により本出願人らは、1Lの大腸菌(E.coli)培養物がおよそ40mgの精製された6H−TBP2を生じることができると結論づけた。
【0266】
実施例17
6H−TBP1および6H−TBP2タンパク質の特性決定
溶解緩衝液中における4℃で一晩の透析によって変性画分中の6H−TBP1(配列番号55)および6H−TBP2(配列番号66)組換えタンパク質を再生した。透析の過程において、緩衝液中の尿素濃度を徐々に0に低下させた。再生できなかったタンパク質、および形成した沈殿物を遠心分離によって除去した。最後に、全ての再生組換えタンパク質を合わせてINK緩衝液(50mMトリス−HCl、pH7.5、50mM NaCl、1mM β−メルカプトエタノール、20%グリセロール)中で透析した。
【0267】
実施例4で述べたELISAベース結合アッセイを使用して、これらのタンパク質の結合親和力を判定した。ファージ粒子の代わりに、1μgの6H−TBP1または6H−TBP2をアッセイで使用した。分析直前にタンパク質溶液を遠心分離して、あらゆる沈殿タンパク質を除去した。大腸菌(E.coli)YqhD遺伝子の翻訳生成物である5μgの42kDaのC−末端6XHis−タグ付き組換えタンパク質(Ctrl−6H)を対照として使用した。同様の分子量のあらゆるC−末端−Hisタグ付き組換えタンパク質を対照として使用してもよい。キアゲン(QIAGEN)からのPenta−His Abの1:2,000希釈物を第1の抗体として、ヤギ抗マウスIgG−HRP抱合体の1:1,000希釈物を第2の抗体として使用して、基材と相互作用するタンパク質を検出した。平行する三連の判定の平均および標準偏差として示されるELISAアッセイの結果を表19に要約する。表中の結果に見られるように、TBP1およびTBP2トリブロックタンパク質分散剤はどちらもそれぞれの基材に特異的に結合するが、TBP1の基材に対する結合親和力は、TBP2の基材に対する結合親和力よりも高い。
【0268】
【表24】

【0269】
実施例18
トリブロックペプチド分散剤の性能試験
この予言的実施例の目的は、トリブロックペプチド分散剤の試験について述べることである。トリブロック分散剤は、カーボンブラック結合ペプチド(配列番号6)、ST−リンカー(配列番号45)、およびセルロース結合ペプチド(配列番号37)からなる。
【0270】
カーボンブラックインク調合物:
実施例15で述べるようにして配列番号52として示されるトリブロックペプチド分散剤を調製し、この実施例の全ての調合物で使用する。実施例9で述べるびん振盪法を使用して、カーボンブラックインク分散体を調製する。3つの異なるインク調合物の詳細は表20で示す。分散体は、ニュージャージー州ピッスカタウェイのデグサ(Degussa(Piscataway、NJ))からのプリンテックス(Printex)150Tカーボンブラック顔料を使用して作られる。砂(0.5g)を研磨材媒体として使用する。
【0271】
【表25】

【0272】
トリブロックペプチド分散剤の分散体試験:
実施例9で述べる分散体試験を実施する。調合物1および2は、良好な分散体を与えることが予期される一方、調合物3は良好から非常に良好な分散体を与えることが予期される。
【0273】
実施例19
可溶性トリブロックタンパク質分散剤の調製
実施例15および16では、トリブロックタンパク質分散剤を調製する方法を実証した。この実施例の目的は、トリブロックタンパク質分散剤を調製する改善された方法を実証することであった。改善された方法では、コンストラクトpENTR−TBP1を修正して、そのトリブロックタンパク質−コード領域の各要素間に適切な制限部位を追加した。この修正によって、単純な「カットアンドペースト」法による各要素の置換が可能になるので、コンストラクトを適用して、あらゆるペプチドおよびリンカー候補の組み合わせを調製して検査できるようになる。さらにGST(グルタチオンS−転移酵素)タンパク質を融合パートナーとして使用し、水溶性トリブロックタンパク質分散剤を生成して精製した。
【0274】
pENTR−TBP1の修正:
カリフォルニア州ラホーヤのストラタジーン(Strategene(La Jolla、CA))からのクイックチェンジ(Quikchange)キットを使用して、実施例15で述べたプラスミドpENTR−TBP1に部位指向性変異誘発を実施し、リンカーコード配列の始めのユニークなNgoMI部位(GCCGGC)、および終わりのKasI部位(GGCGCC)に付加したので、このプラスミド上のTBP1コード領域内の各要素は、ユニークな制限酵素消化を通じて、その他のもので置き換えることができる。この手順によってIEGR(配列番号117)/CB−72(配列番号6)::ST−リンカー(配列番号45)::CEL−121(配列番号37)をコードする、配列番号116として示されるコード配列を有するゲートウェイエントランスプラスミドpENTR−TBP101が得られる。IEGRはXa認識部位を表す。コードタンパク質の対応するアミノ酸配列は、配列番号118として示される。
【0275】
さらにpENTR−TBP101内のSTリンカー配列は、PTリンカー(配列番号56)によって置換された。その小さなサイズのために、PTリンカー配列は、直接カットアンドペーストできない。その代わりPCR反応によって、pENTR−TBP2(実施例16参照)からリンカーコード配列および隣接領域を増幅し、NgoMIおよびKasIで消化した。得られた断片をpENTR−TBP101に挿入して、以前のリンカー配列を置き換えた。この挿入はゲートウェイエントランスプラスミドpENTR−TBP201を形成し、それはIEGR(配列番号117)/CB−72(配列番号6)::PT−リンカー(配列番号56)::CEL−121(配列番号37)をコードする、配列番号119として示されるコード配列を有する。コードタンパク質に対応するアミノ酸配列は、配列番号120として示される。
【0276】
実施例15および16で述べたバクテリオファージλの部位特異的遺伝子組換えを活用して、インビトロジェン(Invitrogen)からのゲートウェイ大腸菌(E.coli)発現システムに、修正されたエントリープラスミドpENTR−TBP201中のTBP構造を導入した。簡単に述べると、0.3μgのエントリープラスミドDNA、0.3μgのpDEST15目的プラスミドDNA、4μLのコロナーゼ緩衝液、および4μLのLRコロナーゼ混合物を含有する20μLの反応中で、25℃で1h遺伝子組換えを行った。次に4μLのタンパク質分解酵素Kを添加して、反応混合物を37℃で10min加熱した。得られた反応混合物(2μL)を使用して、50μLのライブラリー効率的DH5αコンピテント細胞を形質転換した。形質転換された細胞を500μLのSOC媒体内に回収して、LB−Amp50プレート上で生育させた。プレート上の大腸菌(E.coli)コロニーを選択し、さらにLB−Ampブロス内で生育させた。カリフォルニア州バレンシアのキアゲン(Qiagen(Valencia、CA))からのキアプレップ・ミニプレップ(QIAprep Miniprep)キットを使用して、発現プラスミドDNAを細胞から単離した。DNA配列決定によってコンストラクトを確認した。反応は、配列番号121として示される発現プラスミドpINK251を作り出した。このプラスミドは、配列番号122として示されるGST−TBP251(GST−CB72::PT−リンカー::CEL−121)融合タンパク質をコードする。
【0277】
GST−TBP251融合タンパク質の発現および生化学的特性決定:
極小規模の機能性分析を実施するため、発現プラスミドpINK251を小規模に発現させてGST−TBP251融合タンパク質を精製した。pINK251を発現するために、プラスミドをインビトロジェン(Invitrogen)からのBL21A1大腸菌(E.coli)細胞に形質転換した。1個の形質転換コロニーを10mLのLB−Amp50ブロス内において37℃で一晩生育させ、次に一晩生育させた細胞を20倍容積の新鮮なLB−Amp50に接種して、より大きな規模で再度生育させた。細胞密度がOD600値0.8〜1.0に達したら、L−アラビノースを濃度0.2%で培養物に添加して、タンパク質発現を37℃で4h誘導した。およそ100μLの細胞を遠沈して、30μLのSDS−PAGEローディングバッファー内で10min沸騰させて溶解した。10μLの細胞溶解産物をインビトロジェン(Invitrogen)からのNuPAGE(登録商標)SDS−PAGEゲルで分析し、GST−TBP251融合タンパク質の発現を確認した。
【0278】
発現タンパク質を精製するために、200mLの培養物から大腸菌(E.coli)細胞を収集し、シグマケミカル(Sigma Chemical Company)からの15μgのDNase Iおよび100μLのタンパク質分解酵素阻害剤カクテルを含有する、シグマケミカル(Sigma Chemical Company)からの5mLのセルリテテイック(CelLytic)B細菌細胞溶解抽出試薬中で室温で30min溶解させた。可溶性および不溶性の画分を遠心分離によって分離した。SDS−PAGEローディングバッファーを双方の画分の部分に添加して、それらのタンパク質プロフィールをSDS−PAGEによって調べた。結果はGST−TBP251融合タンパク質が完全に可溶性であることを示した。溶解産物をシグマケミカル(Sigma Chemical Company)からの1.5mLグルタチオン−アガロースカラムに装入して、1%トウィーン(Tween)−20を含有するカラムを10mLのTBSで洗浄した。FST溶出緩衝液(50mMトリス−HCl、pH9.5、および10mM還元グルタチオン)の2mLの部分を使用して、GST−TBP251融合タンパク質をカラムから4回溶出した。各精製ステップ中のタンパク質プロフィールをSDS−PAGEによって調べ、その結果から、溶出された画分中に33.7kDaのGST−TBP251融合タンパク質の存在が確認された。精製されたタンパク質をIEB緩衝液に対して透析し、バイオラッド(Bio−Rad)タンパク質アッセイ試薬を使用してタンパク質濃度を判定した。
【0279】
GST−TBP251融合タンパク質の結合活性:
GST−TBP251融合タンパク質のカーボンブラックおよびセルロースに対する結合活性は、実施例6で述べたELISAベース結合アッセイを実施して特性決定された。カーボンブラック顔料結合活性の判定のためにデグサ(Degussa)からの75μgのカーボンブラックFW−18を使用する一方、セルロース結合活性の判定のためには150μgのシグマ(Sigma)からのシグマセル(Sigmacell)(セルロースタイプ20)を使用した。アッセイでは、タンパク質が存在しない反応をブランク反応として使用し、4μg(およそ0.1nmol)のGSTを含有する反応が負の対照の役割をした。ELISA結果を表21に提示する。結果からは、GST−TBP251融合タンパク質がカーボンブラックおよびセルロースの双方に対して、結合活性を有することが確認された。
【0280】
【表26】

【0281】
実施例20
GST−TBP251融合タンパク質の性能試験
GST−TBP251融合タンパク質の二重結合活性を実証した(実施例19参照)が、結果はタンパク質が必ずしも顔料分散剤または印刷媒体バインダーのどちらかとして機能できることを実証しない。したがってこの実施例の目的は、TBP251タンパク質が、カーボンブラックのための分散剤として効果的に機能し、それがセルロースに結合することを実証することであった。
【0282】
トリブロックタンパク質TBP251の調製:
TBP251タンパク質をGST−TBP251融合タンパク質から次のようにして切断した。開裂反応では、10mgのGST−TBP251融合タンパク質を含有するタンパク質溶液に、ドイツ国マンハイムのロッシュ(Roche(Mannheim、Germany))からの100μgのビオチン標識制限プロテアーゼ因子Xaを添加して、反応混合物を4℃で18hインキュベートした。反応からは、SDS−PAGEによって判定されるように、ビオチン標識因子Xaおよび混合物中のわずかな非切断GST−TBP251タンパク質と共に、4.87kDaのTBP251タンパク質および28.9kDaのGST融合パートナーがもたらされた。混合物をグルタチオン−アガロースカラムに2回通過させて、TBP251タンパク質を反応混合物から精製し、続いてマサチューセッツ州ビルリカのミリポア(Millipore Corp.(Billerica、MA))からのセントリコン(Centricon)(登録商標)−3,000遠心フィルター装置を使用して、分子濾過を行った。
【0283】
TBP251によるカーボンブラック顔料分散体の極小規模アッセイ:
TBP251タンパク質が、カーボンブラック顔料分散体を安定化することを実証するために、標準分散体試験を模倣する極小規模分散体アッセイを開発した。このアッセイでは、10μLのIEB緩衝液中にデグサ(Degussa)からの50μgのカーボンブラックFW−18および3μg(0.6nmol)のTBP251タンパク質を含んだ、10μLの分散体反応混合物を調製した。素早い穏やかな混合後、5μLの混合物をペンシルベニア州メディアの(VWR Scientific(Media、PA))からの1片のマイクロスライドガラスに滴下した。ガラススライドを2min静置してから顔料分散を観察した。結果を図2Aに示す。図に示すように、カーボンブラック顔料は、TBP251タンパク質を添加すると微細に分散する。比較のために42μg(0.6nmol)のBSA、および緩衝液(タンパク質なし)も使用して分散体試験を行った。図2Aに示すように、これらの混合物はどちらもカーボンブラック顔料の凝集を示した。この実施例で実証した分散体は強い物理的力を必要としないので、TBP251とカーボンブラックの間の相互作用は、顔料の自己分散を仲介するのに十分強力なようである。これは現行の最先端技術の共重合体ベースの分散剤が提供しない特性である。
【0284】
分散体試験はまた、分散体混合物中でTBP251に代えて18μg(0.6nmol)のGSTを使用して行った。図2Aに示すように、GSTはカーボンブラック顔料分散剤としても機能した。GSTは、カーボンブラック結合ペプチドまたは結合領域を含有しない天然タンパク質であるので、GSTの分散体機能は、TBP251と異なる機序を有することが提案された。これを実証するために、カーボンブラック分散体の競合試験を行った。顔料分散体がより簡単に逆転できるように、上述の分散試験と比べて、競合混合物はグリセロールを含有せず、はるかに少ないタンパク質を含有した。したがってデグサ(Degussa)からの60μgのカーボンブラックFW−18を0.42μg(0.1nmol)のTBP251タンパク質を含有する13μLのIEB緩衝液(グリセロールを含有しない)と穏やかに混合した。混合物(5μL)を1片のマイクロスライドガラスに滴下して、それを2min静置してから顔料分散を観察した。結果は、カーボンブラック顔料を混合物中に分散するために、より少ない量のTBP251タンパク質で十分であることを示唆した。カリフォルニア州のダブリンのシンペップ(SynPep(Dublin、CA))から得られた0.6μg(0.66nmol)の合成CB−72ペプチド(配列番号6)もまた混合物に含めると、過剰量の競合ペプチドがTBP251の分散機能をブロックして、混合物中に顔料の凝集がもたらされる(図2B)。同一レベルの凝集は、0.6μg(0.66nmol)の合成CB−72ペプチドを含有するがTBP251タンパク質を欠く負の対照混合物でも観察された(図2B)。これらの競合結果は、CB−72ペプチド配列のカーボンブラック結合活性が、TBP251タンパク質の顔料分散機序に直接関与することを実証する。TBP251の代わりに2.52μg(0.1nmol)のGSTを使用して同一競合試験を行うと、CB−72ペプチドはGSTの分散機能をブロックできなかった(図2C)。この結果は、GSTによる顔料分散がCB−72ペプチドの特異的活性に依存せず、したがって異なる機序を有することを示唆した。競合試験混合物はグリセロールを欠いていたことから、カーボンブラック顔料の凝集(図2Bおよび2C)は、最初の分散試験におけるよりも大きかった(図2A)。
【0285】
TBP251によって媒介される印刷媒体表面への顔料接着性の極小規模アッセイ:
TBP251タンパク質が、カーボンブラック顔料を印刷媒体表面に付着できることを実証するため、標準洗濯堅牢度耐久性試験を模擬する極小規模アッセイを開発した。このアッセイでは、12μg(2.5nmol)のTBP251タンパク質を含有する40μLのIEB緩衝液に、デグサ(Degussa)からの200μgのカーボンブラックFW−18を添加した。2つの負の対照混合物、72μg(2.5nmol)のGSTおよび168μg(2.5nmol)のBSAをTBP251の代わりに使用した。室温で20minのインキュベーション後、5μLの混合物をニュージャージー州クリフトンのワットマン(Whatman(Clifton、NJ))からの1片のワットマン(Whatman)5濾紙に滴下した。その優れた水吸収能力のために、紙は水を迅速に吸収してカーボンブラックが表面に残り、紙表面と顔料−タンパク質複合体の間で、直接相互作用できるようになった。次に紙を10mLのTBSTに入れて激しく振盪しながら2min洗浄した。結果は図3Aに示すように、混合物がTBP251を含む場合、紙表面にカーボンブラックが付着するが、GSTまたはBSAを使用した場合は付着しないことを示した。印刷媒体として綿100%布帛を使用して試験を繰りしたところ同一結果が得られた(図3B)。綿布帛上の繊維間の大きな空間によって、多くの顔料は表面に留まらず透過したためにシグナルはより弱かったが、TBP251が綿布帛表面への顔料の付着を強化したのに対し、GSTおよびBSAは強化しなかったことは明らかであった。したがってTBP251は確かに印刷媒体バインダーとして機能し、カーボンブラック顔料をセルロース含有布帛に付着する。
【0286】
TBP251タンパク質のデザインに従って、CB−72配列はカーボンブラックと相互作用し、CEL−121配列はセルロース含有印刷媒体と相互作用する。カーボンブラック結合活性およびセルロース結合活性のどちらもTBP251のバインダーとしての機能に貢献する。これを直接実証するために、紙付着に対する競合試験を開発した。カーボンブラック結合競合試験では、デグサ(Degussa)からの50μgのカーボンブラックFW−18を7.5μg(8.2nmol)の合成CB−72ペプチドを含有する5μLのIEB緩衝液と室温で10min混合した。次に3μg(0.61nmol)のTBP251タンパク質を含有する10μLのIEB緩衝液を混合物に添加した。室温で20minのインキュベーション後、5μLの混合物を1片のワットマン(Whatman)5濾紙に滴下した。紙を10mLのTBSTに入れて、激しく振盪しながら2min洗浄した。カーボンブラックの紙への付着を洗浄前後に観察した。
【0287】
印刷媒体結合競合がある試験では、15μLのIEB緩衝液中で、特定の順序に従うのでなく、カーボンブラックを11μg(8.2nmol)の合成CEL−121ペプチドおよび3μg(0.61nmol)のTBP251タンパク質の双方と同時に混合した。
【0288】
双方の競合試験の結果を図3Cに示す。競合なしの混合物は、対照の役割をする。これらの結果は、遊離CB−72およびCEL−121ペプチドが、カーボンブラック顔料のための印刷媒体バインダーとしてのTBP251の機能を少なくとも部分的にブロックできることを実証する。したがってTBP251タンパク質はカーボンブラック−およびセルロース結合活性を有し、カーボンブラック顔料を分散して、顔料をセルロース−含有する印刷媒体に付着する機能をする。
【図面の簡単な説明】
【0289】
【図1】組換えトリブロックタンパク質分散剤(A)6H−TBP1および(B)6H−TBP2の精製からの画分のSDS−PAGEのゲル画像である。
【図2】トリブロックタンパク質TBP251によるカーボンブラック顔料分散の結果を示す。
【図3】トリブロックタンパク質TBP251によって媒介される顔料接着性試験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号7、8、9、10、14、15、16、17、18、19、20、21、23、24、25、26、27、28、および29よりなる群から選択される顔料結合ペプチド。
【請求項2】
配列番号31、32、34、35、36、37、38、および40よりなる群から選択される印刷媒体結合ペプチド。
【請求項3】
a)コンビナトリアルで作り出されたペプチドのライブラリーを提供し、
b)(a)のライブラリーと顔料とを接触させて、
(i)ペプチド−ポリエステル複合体、
(ii)非結合ポリエステル、および
(iii)非複合ペプチド
を含んでなる反応溶液を形成し、
c)(b)のペプチド−ポリエステル複合体を単離し、そして、
d)(b)のペプチド複合体から、特異的ポリエステル結合特性を有するペプチドを溶出する
工程を含んでなるプロセスによって選択される、ポリエステル結合ペプチド。
【請求項4】
ペプチドが約5〜約20個のアミノ酸であり、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンよりなる群から選択されるアミノ酸を少なくとも約20mol%含んでなり、少なくとも20kcal/molの結合エネルギーを有する、請求項3に記載のポリエステル結合ペプチド。
【請求項5】
約5〜約20個のアミノ酸を有し、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンよりなる群から選択されるアミノ酸を少なくとも約20mol%含んでなり、ポリエステル基材に対して20kcal/mol以上の結合エネルギーを有する、ポリエステル結合ペプチド。
【請求項6】
一般構造式、
[PBP]−HL
(式中、
a)PBPは顔料結合ペプチドであり、
b)HLは親水性リンカーであり、そして、
c)nは1〜約5の範囲である)
を有する、ジブロック分散剤。
【請求項7】
顔料結合ペプチドが約5個のアミノ酸〜約20個のアミノ酸であり、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、およびトリプトファンよりなる群から選択される少なくとも約40mol%のアミノ酸を含んでなり、少なくとも20kcal/molの結合エネルギーを有する、請求項6に記載のジブロック分散剤。
【請求項8】
顔料結合ペプチドが、
(i)コンビナトリアルで作り出されたペプチドのライブラリーを提供し、
(ii)(i)のライブラリーと顔料とを接触させて、
(A)ペプチド−顔料複合体、
(B)非結合顔料、および
(C)非複合ペプチド
を含んでなる反応溶液を形成し、
(iii)(ii)のペプチド−顔料複合体を単離し、そして、
(iv)(ii)のペプチド複合体からペプチドを溶出する
工程を含んでなるプロセスによって選択される、請求項6に記載のジブロック分散剤。
【請求項9】
一般構造式、
[PMBP]−HL
(式中、
a)PMBPは印刷媒体結合ペプチドであり、
b)HLは親水性リンカーであり、そして、
c)nは1〜約5の範囲である)
を有するジブロックポリマー。
【請求項10】
印刷媒体結合ペプチドが、セルロース結合ペプチドおよびポリエステル結合ペプチドよりなる群から選択される、請求項9に記載のジブロックポリマー。
【請求項11】
セルロース結合ペプチドが約5個のアミノ酸〜約20個のアミノ酸であり、セリン、スレオニン、およびチロシンよりなる群から選択される少なくとも約14mol%のアミノ酸を含んでなり、少なくとも20kcal/molの結合エネルギーを有する、請求項10に記載のジブロックポリマー。
【請求項12】
ポリエステル結合ペプチドが約5個のアミノ酸〜約20個のアミノ酸であり、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンよりなる群から選択される少なくとも約20mol%のアミノ酸を含んでなり、少なくとも20kcal/molの結合エネルギーを有する、請求項10に記載のジブロックポリマー。
【請求項13】
セルロース結合ペプチドが、
(i)コンビナトリアルで作り出されたペプチドのライブラリーを提供し、
(ii)(i)のライブラリーとセルロースとを接触させて、
(A)ペプチド−セルロース、
(B)非結合セルロース、および
(C)非複合ペプチド
を含んでなる反応溶液を形成し、
(iii)(ii)のペプチド−セルロース複合体を単離し、そして、
(iv)(iii)のペプチド複合体からペプチドを溶出する
工程を含んでなるプロセスによって選択される、請求項10に記載のジブロックポリマー。
【請求項14】
ポリエステル結合ペプチドが、
(i)コンビナトリアルで作り出されたペプチドのライブラリーを提供し、
(ii)(i)のライブラリーとポリエステルとを接触させて、
(A)ペプチド−ポリエステル、
(B)非結合ポリエステル、および
(C)非複合ペプチド
を含んでなる反応溶液を形成し、
(iii)(ii)のペプチド−ポリエステル複合体を単離し、そして、
(iv)(iii)のペプチド複合体からペプチドを溶出する
工程を含んでなるプロセスによって選択される、請求項10に記載のジブロックポリマー。
【請求項15】
一般構造式、
[PBP]−[PMBP]
a)PBPは顔料結合ペプチドであり、
b)PMBPは印刷媒体結合ペプチドであり、そして
c)nは1〜約5の範囲である)
を有する、ジブロック分散剤。
【請求項16】
顔料結合ペプチドが約5個のアミノ酸〜約20個のアミノ酸であり、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、およびトリプトファンよりなる群から選択される少なくとも約40mol%のアミノ酸を含んでなり、少なくとも20kcal/molの結合エネルギーを有する、請求項15に記載のジブロック分散剤。
【請求項17】
印刷媒体結合ペプチドが約5個のアミノ酸〜約20個のアミノ酸であり、セリン、スレオニン、およびチロシンよりなる群から選択される少なくとも約14mol%のアミノ酸を含んでなり、少なくとも20kcal/molの結合エネルギーを有し、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンよりなる群から選択される少なくとも約20mol%のアミノ酸を含んでなり、少なくとも20kcal/molの結合エネルギーを有する、請求項15に記載のジブロック分散剤。
【請求項18】
顔料結合ペプチドが、
(i)コンビナトリアルで作り出されたペプチドのライブラリーを提供し、
(ii)(i)のライブラリーと顔料とを接触させて、
(A)ペプチド−顔料複合体、
(B)非結合顔料、および
(C)非複合ペプチド
を含んでなる反応溶液を形成し、
(iii)(ii)のペプチド−顔料複合体を単離し、そして、
(iv)(ii)のペプチド複合体からペプチドを溶出する
工程を含んでなるプロセスによって選択される、請求項15に記載のジブロック分散剤。
【請求項19】
印刷媒体結合ペプチドが、
(i)コンビナトリアルで作り出されたペプチドのライブラリーを提供し、
(ii)(i)のライブラリーとセルロースまたはポリエステルとを接触させて、
(A)ペプチド−セルロース複合体またはペプチド−ポリエステル−複合体、
(B)非結合セルロースまたはポリエステル、および
(C)非複合ペプチド
を含んでなる反応溶液を形成し、
(iii)(ii)のペプチド−セルロースまたはペプチド−ポリエステル複合体を単離し、そして、
(iv)(ii)のペプチド複合体からペプチドを溶出する
工程を含んでなるプロセスによって選択される、請求項15に記載のジブロック分散剤。
【請求項20】
一般構造式、
[PMBP]−HPL
(式中、
a)PMBPは印刷媒体結合ペプチドであり、
b)HPLは疎水性リンカーであり、そして
c)nは1〜約5の範囲である)
を有するジブロック分散剤。
【請求項21】
印刷媒体結合ペプチドが、セルロース結合ペプチドおよびポリエステル結合ペプチドよりなる群から選択される、請求項20に記載のジブロック分散剤。
【請求項22】
セルロース結合ペプチドが約5個のアミノ酸〜約20個のアミノ酸であり、セリン、スレオニン、およびチロシンよりなる群から選択される少なくとも約14mol%のアミノ酸を含んでなり、少なくとも20kcal/molの結合エネルギーを有する、請求項21に記載のジブロック分散剤。
【請求項23】
ポリエステル結合ペプチドが約5個のアミノ酸〜約20個のアミノ酸であり、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンよりなる群から選択される少なくとも約20mol%のアミノ酸を含んでなり、少なくとも20kcal/molの結合エネルギーを有する、請求項21に記載のジブロック分散剤。
【請求項24】
セルロース結合ペプチドが、
(i)コンビナトリアルで作り出されたペプチドのライブラリーを提供し、
(ii)(i)のライブラリーとセルロースとを接触させて、
(A)ペプチド−セルロース、
(B)非結合セルロース、および
(C)非複合ペプチド
を含んでなる反応溶液を形成し、
(iii)(ii)のペプチド−セルロース複合体を単離し、そして、
(iv)(iii)のペプチド複合体からペプチドを溶出する
工程を含んでなるプロセスによって選択される、請求項22に記載のジブロック分散剤。
【請求項25】
ポリエステル結合ペプチドが、
(i)コンビナトリアルで作り出されたペプチドのライブラリーを提供し、
(ii)(i)のライブラリーとポリエステルとを接触させて、
(A)ペプチド−ポリエステル、
(B)非結合ポリエステル、および
(C)非複合ペプチド
を含んでなる反応溶液を形成し、
(iii)(ii)のペプチド−ポリエステル複合体を単離し、そして、
(iv)(iii)のペプチド複合体からペプチドを溶出する
工程を含んでなるプロセスによって選択される、請求項23に記載のジブロック分散剤。
【請求項26】
一般構造式、
[PMBP]−BA
(式中、
a)PMBPは配列番号4、30、31、32、33、34、35,36、37、38、および40よりなる群から選択される印刷媒体結合ペプチドであり、
b)BAは恩恵作用物質であり、そして
c)nは1〜約5の範囲である)
を有するジブロックポリマー。
【請求項27】
恩恵作用物質が、芳香剤、衛生作用物質、昆虫制御剤、酵素、軟化タンパク質、布帛柔軟剤、防汚剤、漂白剤、染料固定剤、光沢剤、抗菌剤、界面活性剤、およびそれらの混合物よりなる群から選択される、請求項26に記載のジブロックポリマー。
【請求項28】
一般構造式、
[PBP]−HL−[PMBP]
(式中、
a)PBPは顔料結合ペプチドであり、
b)HLは親水性リンカーであり、
c)PMBPは印刷媒体結合ペプチドであり、そして
d)nは1〜約5の範囲である)
を有するトリブロック分散剤。
【請求項29】
顔料結合ペプチドが約5個のアミノ酸〜約20個のアミノ酸であり、セリン、スレオニン、およびチロシンよりなる群から選択される少なくとも約14mol%のアミノ酸を含んでなり、少なくとも20kcal/molの結合エネルギーを有し、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンよりなる群から選択される少なくとも約20mol%のアミノ酸を含んでなり、少なくとも20kcal/molの結合エネルギーを有する、請求項28に記載のトリブロック分散剤。
【請求項30】
印刷媒体結合ペプチドが、セルロース結合ペプチドおよびポリエステル結合ペプチドよりなる群から選択される、請求項28に記載のトリブロック分散剤。
【請求項31】
セルロース結合ペプチドが約5個のアミノ酸〜約20個のアミノ酸であり、セリン、スレオニン、およびチロシンよりなる群から選択される少なくとも約14mol%のアミノ酸を含んでなり、少なくとも20kcal/molの結合エネルギーを有する、請求項30に記載のトリブロック分散剤。
【請求項32】
ポリエステル結合ペプチドが約5個のアミノ酸〜約20個のアミノ酸であり、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンよりなる群から選択される少なくとも約20mol%のアミノ酸を含んでなり、少なくとも20kcal/molの結合エネルギーを有する、請求項30に記載のトリブロック分散剤。
【請求項33】
セルロース結合ペプチドが、
(i)コンビナトリアルで作り出されたペプチドのライブラリーを提供し、
(ii)(i)のライブラリーとセルロースとを接触させて、
(A)ペプチド−セルロース、
(B)非結合セルロース、および
(C)非複合ペプチド
を含んでなる反応溶液を形成し、
(iii)(ii)のペプチド−セルロース複合体を単離し、そして、
(iv)(iii)のペプチド複合体からペプチドを溶出する
工程を含んでなるプロセスによって選択される、請求項31に記載のトリブロック分散剤。
【請求項34】
ポリエステル結合ペプチドが、
i)コンビナトリアルで作り出されたペプチドのライブラリーを提供し、
(ii)(i)のライブラリーとポリエステルとを接触させて、
(A)ペプチド−ポリエステル、
(B)非結合ポリエステル、および
(C)非複合ペプチド
を含んでなる反応溶液を形成し、
(iii)(ii)のペプチド−ポリエステル複合体を単離し、そして、
(iv)(iii)のペプチド複合体からペプチドを溶出する
工程を含んでなるプロセスによって選択される、請求項32に記載のトリブロック分散剤。
【請求項35】
顔料結合ペプチドまたは印刷媒体結合ペプチドが約7個のアミノ酸〜約12個のアミノ酸である、請求項6、15または28に記載の分散剤またはポリマー。
【請求項36】
顔料結合ペプチドが配列番号5、6、7、8、9、10、14、15、16、17、18、19、20、21、23、24、25、26、27、28、および29よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項6、15または28に記載の分散剤またはポリマー。
【請求項37】
印刷媒体結合ペプチドが配列番号4、30、31、32、33、34、35、36、37、38、および40よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項9、15、または20に記載の分散剤またはジブロックポリマー。
【請求項38】
印刷媒体結合ペプチドが配列番号1〜4、30、31、32、33、34、35、36、37、38、および40よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項28に記載のトリブロック分散剤。
【請求項39】
親水性リンカーがポリエチレングリコール誘導体、ポリアクリル酸/マレイン酸ポリマー、ポリアクリル酸の誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメチルビニルエーテル、セルロースポリマー、およびその他の多糖類よりなる群から選択される有機ポリマーである、請求項6、9または28に記載の分散剤またはポリマー。
【請求項40】
親水性リンカーがアスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、プロリン、セリン、スレオニン、およびそれらの混合物よりなる群から選択されるアミノ酸を含んでなるペプチドである、請求項6、9または28に記載の分散剤またはポリマー。
【請求項41】
親水性リンカーが3〜約50個のアミノ酸の長さを有するペプチドである、請求項40に記載の分散剤またはポリマー。
【請求項42】
親水性リンカーがポリプロリン、配列番号45、および配列番号56よりなる群から選択されるペプチドである、請求項40に記載の分散剤またはポリマー。
【請求項43】
疎水性リンカーがメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、およびそれらの共重合体よりなる群から選択される合成有機ポリマーである、請求項20に記載のジブロック分散剤。
【請求項44】
疎水性リンカーがアラニン、グリシン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、システイン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、親水性アミノ酸の疎水性誘導体、およびそれらの混合物よりなる群から選択されるアミノ酸を含んでなるペプチドである、請求項20に記載のジブロック分散剤。
【請求項45】
顔料結合ペプチドがシアン、イエロー、レッド、ブルー、オレンジ、マゼンタ、ブラック、グリーン、バイオレット、ライトシアン、およびライトマゼンタよりなる群から選択される有機顔料に対する親和力を有する、請求項6、15、または28に記載の分散剤またはポリマー。
【請求項46】
顔料結合ペプチドがカーボンブラック、クロモフタール(Cromophthal)(登録商標)イエロー、サンファスト(Sunfast)(登録商標)マゼンタ、およびサンファスト(Sunfast)(登録商標)ブルーよりなる群から選択される有機顔料に対する親和力を有する、請求項45に記載の分散剤またはポリマー。
【請求項47】
印刷媒体結合ペプチドが綿、ポリエステル/綿、セルロース、およびポリ(エチレンテレフタラート)よりなる群から選択される、紙および編織布に対する親和力を有する、請求項9、15、または20に記載の分散剤またはジブロックポリマー。
【請求項48】
顔料結合ペプチドまたは印刷媒体結合ペプチドが、20kcal/mol以上の結合エネルギーを有する、請求項6、15、または28に記載の分散剤またはポリマー。
【請求項49】
a)水性キャリア媒体、
b)顔料、および
c)請求項6、15、または28に記載の分散剤
を含んでなる、水性インク組成物。
【請求項50】
組成物が約0.1〜約15%の顔料、約0.1〜約30%の分散剤、および約70〜約99.8%の水性キャリア媒体を含有する、請求項49に記載のインク組成物。
【請求項51】
水性媒体が水、または水と少なくとも1つの有機溶剤との混合物を含んでなる、請求項49に記載のインク組成物。
【請求項52】
有機溶剤が多価アルコールである、請求項51に記載のインク組成物。
【請求項53】
界面活性剤をさらに含んでなる、請求項51に記載のインク組成物。
【請求項54】
界面活性剤がアニオン性、非イオン性、カチオン性、および両性界面活性剤よりなる群から選択される、請求項53に記載のインク組成物。
【請求項55】
界面活性剤が約0.01〜約5%の量で存在する、請求項53に記載のインク組成物。
【請求項56】
界面活性剤が約0.2〜約2%の量で存在する、請求項53に記載のインク組成物。
【請求項57】
a)水性キャリア媒体、
b)顔料、
c)フィルム形成樹脂、および
d)請求項6、15、または28に記載の分散剤またはポリマー
を含んでなる水性コーティング組成物。
【請求項58】
a)プラスチック樹脂、
b)顔料、および
c)請求項6、15、28に記載の分散剤またはポリマー
を含んでなる、着色可塑性組成物。
【請求項59】
a)配列番号35、36、37、および38よりなる群から選択されるセルロース結合ペプチド配列を含有する組換えタンパク質を含んでなるサンプルを提供し、
b)サンプルとセルロース担体とを接触させて、
c)サンプルからセルロース担体を分離し、そして、
d)担体を溶出剤で処理して組換えタンパク質を回収する
工程を含んでなる、組換えタンパク質を回収および精製する方法。
【請求項60】
a)配列番号5、6、7、8、9、10、14、15、16、17、18、19、20、21、23、24、25、26、27、28、および29よりなる群から選択される顔料結合ペプチド配列を含有する組換えタンパク質を含んでなるサンプルを提供し、
b)サンプルと顔料とを接触させて、
c)サンプルから顔料を分離し、そして
d)顔料を溶出剤で処理して組換えタンパク質を回収する
工程を含んでなる、組換えタンパク質を回収および精製する方法。
【請求項61】
a)顔料結合ペプチドと印刷媒体結合ペプチドとを有する請求項28に記載のトリブロック分散剤を提供し、
b)(a)のトリブロック分散剤と顔料とを接触させて、顔料が顔料結合ペプチドと複合体を形成して、ペプチド複合トリブロックを形成し、そして
c)ステップ(c)のペプチド複合トリブロックと印刷媒体とを接触させて、印刷媒体が印刷媒体結合ペプチドと複合体を形成し、顔料が印刷媒体に固着される
工程を含んでなる、顔料を印刷媒体に固着する方法。
【請求項62】
ステップb)およびc)が逆転される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
トリブロック分散剤がインク組成物、水性コーティング組成物、および着色可塑性組成物よりなる群から選択される組成物の一部として提供される、請求項61に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−508246(P2007−508246A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526301(P2006−526301)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/029513
【国際公開番号】WO2005/023836
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】