説明

ペプチドリガンドを介して結合された複数の免疫原性成分を有するHBVコア抗原粒子

【課題】複数の免疫原特異性により特徴付けられるHBVコア抗原粒子を提供すること。
【解決手段】複数の免疫原特異性により特徴付けられるHBVコア抗原粒子。より具体的には、HBVコアタンパク質に選択的に結合するHBVキャプシド結合ペプチドであるリガンドによって架橋された、免疫原、エピトープまたは他の関連構造を含むHBVコア抗原粒子。このような粒子の、多様な範囲の免疫原性エピトープ(HBVキャプシド結合ペプチドを含む)のための送達系としての使用。同じHBVコア粒子に架橋された、異なる免疫原および/またはキャプシド結合ペプチドリガンドの混合物。このような複数成分のまたは多価のHBVコア粒子の治療的または予防的なワクチンおよび組成物、ならびにそれらを用いた診断組成物および診断方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、複数の免疫原特異性により特徴付けられる、B型肝炎ウイルス(「HBV」)コア抗原粒子に関する。より具体的には、本発明は、HBVコアタンパク質に選択的に結合するHBVキャプシド結合ペプチドであるリガンドによって、HBVコア抗原粒子に架橋した免疫原、エピトープ、または他の関連する構造を含む、HBVコア抗原粒子に関する。このような粒子は、さまざまな範囲の免疫原性エピトープ(HBVキャプシド結合ペプチドを含み、これはまた、HBVコアタンパク質とHBV表面タンパク質との間の相互作用をブロックすることにより、有利には、HBVウイルスのアセンブリを阻害および妨害する)のための送達系として使用され得る。異なる免疫原、HBVキャプシド結合ペプチドリガンド、または両方の混合物は、同じHBVコア粒子に架橋され得る。このように生じる多成分HBVコア粒子または多価HBVコア粒子は、治療用および予防用のワクチンおよび組成物、ならびに治療組成物およびこれらを使用する方法において、有利に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
臨床的免疫療法レジメンの第一線は、感染性病原体および他の健康を脅かす因子に対して患者を免疫することを含む。過剰の免疫剤にかかわらず、接種は、せいぜい部分的な免疫を与え得、頻繁な再免疫を必要とする。種々の従来の一価または多価のワクチンは、こういう事情である。そしてこのようなワクチンのうちでさえ、種々の免疫原に対して免疫を惹起し得る単一薬剤の接種剤の数は、限定される。さらに、病原体間の抗原性変動は、従来のワクチンの効力を制限し得る。
【0003】
このような妨害のために、所与の免疫原に対する免疫系応答の増強のための方法論に、努力が集中されてきた。この目的のために、HBV核抗原のT細胞依存性決定因子およびT細胞非依存性決定因子の操作により架橋した免疫原の免疫性を増強させようと努力して、免疫原性結合体が、免疫原をB型肝炎ウイルス(「HBV」)コア粒子(ヌクレオキャプシドまたはヌクレオキャプシド殻とも呼ばれる)に架橋させることによって生成された。例えば、米国特許第4,818,527号およびR.Ulrichら、「Core Particles of Hepatitis B Virus as Carrier for Foreign Epitopes」、Adv.Virus.Res.、50、141〜82頁(1998)を参照のこと。目的のエピトープの増強された免疫原性もまた、少なくとも一部の天然に存在するウイルス粒子形成タンパク質(例えばHBV表面抗原)および1つ以上の目的のエピトープ部位を含む、ハイブリッドウイルス粒子形成タンパク質を介して、取りかかられた。米国特許第5,965,140号を参照のこと。このような努力から明らかであるように、HBVのタンパク質は、目的の免疫原を免疫系に提示するためのプラットフォームとして使用されてきた。
【0004】
B型肝炎ウイルスは、血行性ウイルスであり、小さな、部分的に二本鎖のDNAゲノムを含み(4つの広範囲にわたってオーバーラップするオープンリーディングフレームを担持する)内部ヌクレオキャプシドからなり(HBVコアタンパク質(「HBcAg」)、ウイルスポリメラーゼおよびウイルスDNAを含む)HBV表面抗原(「HBsAg」)を含む膜性エンベロープにより包囲されている。そのウイルスエンベロープは、3つの異なるが、関連する表面抗原タンパク質(長(L)、中(M)および短(S))を含み、これは、共通のカルボキシ末端領域を共有するが、異なるアミノ末端を有し、連続するオープンリーディングフレーム内の異なる地点の開始トリプレットの可変的使用から生じる。
【0005】
長いポリペプチド(Lポリペプチド)は、プレS1、プレS2およびS領域からなる。それは、リーディングフレーム全体の産物であり、108個のアミノ酸(または、199個、ウイルスサブタイプに依存する)のプレS1ドメインを、そのアミノ末端にて含み、次いで55個のアミノ酸のプレS2ドメイン、および226アミノ酸の短いポリペプチド(Sポリペプチド)領域が続く。中程度の長さのポリペプチド(Mポリペプチド)は、そのアミノ末端にプレS2ドメインを有し、次いでS領域が続くが、Sポリペプチド(これは、最も豊富な形態である)は、S領域のみからなる。このプレS領域は、宿主細胞へのウイルスのアセンブリおよび付着の両方において重要な役割を果たすと考えられている。このS形態は、ウイルスにおいて、HBsAgのM形態およびL形態よりも豊富であり、そしてグリコシル化形態および非グリコシル化形態の両方が存在する[V.BrussおよびD.Ganem、「The Role of Envelope Protein in Hepatitis B Virus Assembly」Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88、1059〜63(1991);V.Brussら、「Post−translational Alteration in Transmembrane Topology of Hepatitis B Virus Large Envelope Protein」、EMBO J、13、2273〜79頁(1994);A.R.Neurathら、「Identification and Chemical Synthesis of a Host Cell Receptor Binding Site on Hepatitis B Virus」、Cell、46、429〜36頁(1986);K,Uedaら、「Three Envelope Proteins of Hepatitis B Virus:Large S,Middle S and Major S Proteins Needed for the Formation of Dane Particles」J.Virol.、65、3521〜29頁(1991)]。コアの外部表面とエンベロープの内部表面との間の特異的な相互作用は、おそらく、正確なウイルスのアセンブリを導き、そして生じた粒子を安定化させる。
【0006】
HBVコアタンパク質は、E.coliにおいて効率的に発現され得る[M.Pasekら、「Hepatitis B Virus Genes and Their Expression in E.coli」、Nature、282、575−79(1979)]、ここで、それは、2つのサイズ(180(T=3)サブユニットまたは240(T=4)サブユニットを含む)の正二十面体殻の中にアセンブリする[R.A.Crowtherら、「Three Dimensional Structure of Hepatitis B Virus Core Particles Determined by Electron Microscopy」、Cell、77、943〜50頁(1994)]。そのサブユニットは、ダイマーとしてクラスター化され、そして各ダイマーは、殻の表面上に突出するスパイクを形成する。電子低温顕微鏡法(electron cryomicroscopy)および画像処理を使用して、最近、T=4の殻の地図を、6000を超える個々の粒子の画像から7.4Aの解像度で作製した[B.Bottcherら、「Determination of the Fold of the Core Protein of Hepatitis B Virus by Electron Cryomicroscopy」、Nature 386、88−91(1997)]。これは、そのポリペプチド鎖の折り畳みを明らかにし、その大部分はαヘリカルであって、以前に解析されたウイルスキャプシドと全く異なっていた。各ダイマースパイクは、一対の長αヘリカルヘアピンによって形成され、1つはダイマー内の各モノマーに由来する[Bottcherら、(1997);J.F.Conwayら、「Visualization of a 4−Helix Bundle in the Hepatitis B Virus Capsid by Cryoelectron Microscopy」、Nature、386、91−94頁(1997)]。折り畳みに対するアミノ酸配列に上書きした番号付けスキーム[Bottcherら、(1997)]は、HBVコアタンパク質の主要な免疫優性領域をスパイクの先端における78−82アミノ酸の周りに配置した[J.Salfeldら、「Antigenic Determinants and Functional Domains in Core Antigen and E Antigen from Hepatitis B Virus」、J.Virol、63、790−800頁(1989);M.Sallbergら、「Characterisation of a Linear Binding Site for a Monoclonal Antibody to Hepatitis B Core Antigen」J.Med.Virol.、33、248−52頁(1991)]。
【0007】
HBVウイルスアセンブリを阻害する薬剤は、HBVのコア抗原に結合し、それにより、HBVコアタンパク質とHBV表面タンパク質との間の相互作用をブロックする薬剤を含む。そのようないくつかのHBVキャプシド結合ペプチドは、PCT特許出願WO98/18818およびM.R.DysonおよびK.Murray、「Selection of Peptide Inhibitors of Interactions Involved in Complex Protein Assemblies:Association of
the Core and Surface Antigens of Hepatitis B Virus」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92、2194−98頁(1995)。
【0008】
以下の開示から明らかであるように、HBVキャプシド結合ペプチドは、単一または複数の免疫原に対する増強された免疫応答を誘発する能力によって特徴付けられるHBVコア抗原粒子を構築するためのリガンドとして有利に使用され得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の開示)
本発明は、一つ以上の成分の免疫原に対して増強された免疫原性を誘発するHBVコア抗原粒子を提供することにより上記で言及される問題に取り組む。そのような多成分のHBVコア抗原粒子または多価HBVコア抗原粒子は、免疫原、エピトープ、または他の関連構造を含み、HBVコア抗原粒子と選択的に結合するペプチドであるリガンドを介してそれらと架橋され、さらに、免疫原性ドメインまたはエピトープが、コード配列の遺伝子操作またはポリペプチド合成によってHBVコア抗原ポリペプチドに付着されるか、または挿入される。そのような、粒子は、多様な範囲の免疫原性エピトープの送達系として使用され得、HBVキャプシド結合ペプチドを含み、これはそれ自身で、HBVコアタンパク質とHBV表面タンパク質との間の相互作用をブロックすることによりHBVウイルスアセンブリを阻害および妨害する。生じた多成分のHBVコア粒子または多価HBVコア粒子は、治療および予防ワクチンおよび組成物、ならびに診断的組成物およびそれらを使用する方法において有利に使用され得る。
【0010】
本発明は、異なる免疫原の混合物、HBVキャプシド結合ペプチドリガンドまたは両方が、同じHBVコア粒子と架橋されることを有利に可能にする。その結果は、T細胞の有効な刺激剤であり、そして免疫学的に多価である単一粒子である。従って、単一抗原提示細胞は、特異性の異なる複数のB細胞クローンの増殖を刺激し得る。
上記に加えて、本発明は、以下を提供する。
(項目1) 複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、該粒子が、少なくとも1つのキャプシド結合免疫原を含み、該キャプシド結合免疫原が、少なくとも1つのHBVキャプシド結合ペプチド成分および少なくとも1つの免疫原性成分を含む、HBVコア抗原粒子。
(項目2) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、該粒子が個体に投与される場合に、前記キャプシド結合免疫原性成分が免疫応答を誘発させるように該粒子上に配向されている、HBVコア抗原粒子。
(項目3) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記キャプシド結合免疫原が、前記HBVキャプシドペプチド成分の任意のアミノ酸残基を通じて該粒子に連結されている、HBVコア抗原粒子。
(項目4) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記キャプシド結合免疫原が、前記免疫原性成分の任意のアミノ酸残基または他の残基を通じて該粒子に連結されている、HBVコア抗原粒子。
(項目5) 項目4に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記免疫原性成分の他の残基が糖質である、HBVコア抗原粒子。
(項目6) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記キャプシド結合免疫原が、前記HBVキャプシド結合ペプチド成分のアミノ末端を通じて該粒子に連結されている、HBVコア抗原粒子。
(項目7) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記キャプシド結合免疫原が、前記HBVキャプシド結合ペプチド成分のカルボキシ末端を通じて該粒子に連結されている、HBVコア抗原粒子。
(項目8) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記キャプシド結合免疫原が、架橋剤によって該粒子に架橋されている、HBVコア抗原粒子。
(項目9) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記免疫原性成分が、前記HBVキャプシド結合ペプチド成分に直接またはリンカー配列を通じて連結されている、HBVコア抗原粒子。
(項目10) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記免疫原性成分が、前記HBVキャプシド結合ペプチド成分のアミノ末端に直接またはリンカー配列を通じて連結されている、HBVコア抗原粒子。
(項目11) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記免疫原性成分が、前記HBVキャプシド結合ペプチド成分のカルボキシ末端に直接またはリンカー配列を通じて連結されている、HBVコア抗原粒子。
(項目12) 項目9〜11のいずれか1項に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記免疫原性成分が、架橋剤によって前記HBVキャプシド結合ペプチド成分に連結されている、HBVコア抗原粒子。
(項目13) 前記架橋剤が多官能性架橋剤である、項目8に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子。
(項目14) 前記架橋剤が多官能性架橋剤である、項目12に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子。
(項目15) 前記多官能性架橋剤が、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリドおよびN−ヒドロキシ−スルホスクシンイミドからなる群より選択される、項目14に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子。
(項目16) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記免疫原性成分が免疫学的エピトープ、免疫原性エピトープおよび抗原性エピトープからなる群より選択される、1つ以上のエピトープを含む、HBVコア抗原粒子。
(項目17) 項目16に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記エピトープが直鎖状エピトープ、立体配座エピトープ、単一性エピトープ、および混合エピトープからなる群より選択される、HBVコア抗原粒子。
(項目18) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記免疫原性成分が、抗原、アレルゲン、抗原決定基、タンパク質、糖タンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、抗原または抗原決定基を模倣するミモトープ、ポリペプチド、糖ペプチド、糖質、オリゴサッカライド、ポリサッカライド、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドからなる群より選択される、HBVコア抗原粒子。
(項目19) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記免疫原性成分が、ウイルス、寄生体、マイコバクテリア、細菌、桿菌、真菌、原生動物、植物、ファージ、動物細胞および植物細胞からなる群より選択される病原性因子に標的化されるか、またはこれらの病原性因子から誘導される、HBVコア抗原粒子。
(項目20) 項目19に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記ウイルスが、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ヘパドナウイスル、フラビウイルス、ピコルナウイルス、パポバウイルス、アデノウイルス、バキュロウイルス、ハンタウイルス、パルボウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、腫瘍ウイルス、DNAウイルス、RNAウイルス、トガウイルス、ラブドウイルスおよびポックスウイルスからなる群より選択される、HBVコア抗原粒子。
(項目21) 項目20に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記ウイルスが、ヒト免疫不全1型ウイルス、ヒト免疫不全2型ウイルス、T細胞白血病ウイルス、単純ヘルペス1型ウイルス、単純ヘルペス2型ウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、RSウイルス、麻疹様ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、マラリア、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、オンコウイルス、ポリオウイルス、パピローマウイルス、風疹ウイルス、狂犬病ウイルスおよびワクシニアウイルスからなる群より選択される、HBVコア抗原粒子。
(項目22) 項目19に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記免疫原性成分が、Bacillus属、Enterobacteria属、Clostridium属、Listeria属、Mycobacterium属、Pseudomonas属、Staphylococcus属、Eubacteria属、Mycoplasma属、Chlamydia属、スピロヘータ、Neisseria属またはSalmonella属をに標的化されるか、またはこれらから誘導される、HBVコア抗原粒子。
(項目23) 項目19に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記免疫原性成分が、ジフテリア、破傷風、無細胞百日咳、インフルエンザ菌、ポリオ、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、B型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、肺炎球菌性肺炎、黄熱病、マラリア、腸チフス、髄膜炎菌性髄膜炎またはコレラに標的化される、HBVコア抗原粒子。
(項目24) 項目18に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記免疫原性成分が、動物アレルゲン、昆虫アレルゲン、植物アレルゲン、大気アレルゲン、および吸入アレルゲンからなる群より選択される、HBVコア抗原粒子。
(項目25) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、該HBVコア抗原が、HBVコア抗原融合タンパク質である、HBVコア抗原粒子。
(項目26) 項目25に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記HBVコア抗原融合タンパク質が、免疫学的エピトープ、免疫原性エピトープまたは抗原性エピトープを含む、HBVコア抗原粒子。
(項目27) 項目26に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記HBVコア抗原融合タンパク質が、HBVコア抗原に直接またはリンカー配列を通じて融合した免疫学的エピトープ、免疫原性エピトープまたは抗原性エピトープを含む、HBVコア抗原粒子。
(項目28) 項目26に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記HBVコア抗原融合タンパク質が、HBVコア抗原のカルボキシ末端に直接またはリンカー配列を通じて融合した免疫学的エピトープ、免疫原性エピトープまたは抗原性エピトープを含む、HBVコア抗原粒子。
(項目29) 項目26に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記HBVコア抗原融合タンパク質が、HBVコア抗原のアミノ末端に直接またはリンカー配列を通じて融合した免疫学的エピトープ、免疫原性エピトープまたは抗原性エピトープを含む、HBVコア抗原粒子。
(項目30) 項目25に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記HBVコア抗原融合タンパク質が、短縮化HBVコア抗原を含む、HBVコア抗原粒子。
(項目31) 項目25に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記HBVコア抗原融合タンパク質が、HBV表面抗原またはその部分を含む、HBVコア抗原粒子。
(項目32) 項目31に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記HBVコア抗原融合タンパク質が、HBV表面抗原のプレS1領域、HBV表面抗原のプレS2領域、HBV表面抗原の免疫優性領域、およびそれらの部分からなる群より選択される配列を含む、HBVコア抗原粒子。
(項目33) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記HBVコア抗原が、粒子状形態にアセンブリされ得る、全長HBVコア抗原ポリペプチド、またはその部分、短縮物、変異体または誘導体である、HBVコア抗原粒子。
(項目34) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子であって、前記HBVキャプシド結合ペプチド成分が、
【化1】


からなる群より選択される、HBVコア抗原粒子。
(項目35) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有する、予防的に有効量のHBVコア抗原粒子を含む、ワクチン。
(項目36) 項目1に記載の複数の免疫原特異性を有する、治療的に有効量のHBVコア抗原粒子を含む、薬学的組成物。
(項目37) 個体における免疫応答を生成するための方法であって、該方法は、項目1に記載の複数の免疫原特異性を有する、免疫応答を生成するに有効な量のHBVコア抗原粒子を該個体に投与する工程を包含する、方法。
(項目38) 前記HBVコア抗原粒子が、非経口経路によって前記個体に投与される、項目37に記載の方法。
(項目39) 前記免疫原をHBVキャプシド結合ペプチドを通じてHBVコア抗原粒子に連結することによる、該免疫原の免疫原性を増大させるための方法。
(項目40) 前記キャプシド結合免疫原が、診断標識または化学マーカーを含む、項目1に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子。
(項目41) サンプルにおいて免疫原に対する抗体の存在を検出するための方法であって、該方法は、
(a)サンプルと、項目40に記載の複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子とを、該サンプル中の任意の抗体が、該キャプシド結合免疫原と複合体を形成することを可能にするに十分な時間にわたり接触させる工程;および
(b)該サンプル中の該キャプシド結合免疫原と該抗体との間で形成された該複合体を検出するための検出手段を用いる工程、
を包含する、方法。
(項目42) 少なくとも1つのキャプシド結合ペプチド成分および少なくとも1つの免疫原性成分を含む、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目43) 項目42に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記免疫原性成分が、前記HBVキャプシド結合ペプチド成分に直接またはリンカー配列を通じて連結されている、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目44) 項目42に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記免疫原性成分が、前記HBVキャプシド結合ペプチド成分のアミノ末端に直接またはリンカー配列を通じて該粒子に連結されている、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目45) 項目42に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記免疫原性成分が、前記HBVキャプシド結合ペプチド成分のカルボキシ末端に直接またはリンカー配列を通じて該粒子に連結されている、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目46) 項目42〜44のいずれか1項に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記免疫原性成分が、架橋剤によって前記HBVキャプシド結合ペプチド成分に架橋されている、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目47) 前記架橋剤が多官能性架橋剤である、項目46に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目48) 前記多官能性架橋剤が、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリドおよびN−ヒドロキシ−スルホスクシンイミドからなる群より選択される、項目47に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目49) 項目42に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記免疫原性成分が免疫学的エピトープ、免疫原性エピトープおよび抗原性エピトープからなる群より選択される、1つ以上のエピトープを含む、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目50) 項目49に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記エピトープが直鎖状エピトープ、立体配座エピトープ、単一性エピトープ、および混合エピトープからなる群より選択される、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目51) 項目42に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記免疫原性成分が、抗原、アレルゲン、抗原決定基、タンパク質、糖タンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、抗原または抗原決定基を模倣するミモトープ、ポリペプチド、糖ペプチド、糖質、オリゴサッカライド、ポリサッカライド、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドからなる群より選択される、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目52) 項目42に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記免疫原性成分が、ウイルス、寄生体、マイコバクテリア、細菌、桿菌、真菌、原生動物、植物、ファージ、動物細胞および植物細胞からなる群より選択される病原性因子に標的化されるか、またはこれらの病原性因子から誘導される、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目53) 項目52に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記ウイルスが、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ヘパドナウイスル、フラビウイルス、ピコルナウイルス、パポバウイルス、アデノウイルス、バキュロウイルス、ハンタウイルス、パルボウイルス、エンテロウイルス、ライノウイルス、腫瘍ウイルス、DNAウイルス、RNAウイルス、トガウイルス、ラブドウイルスおよびポックスウイルスからなる群より選択される、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目54) 項目53に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記ウイルスが、ヒト免疫不全1型ウイルス、ヒト免疫不全2型ウイルス、T細胞白血病ウイルス、単純ヘルペス1型ウイルス、単純ヘルペス2型ウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、RSウイルス、麻疹様ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、パラインフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、マラリア、ダニ媒介脳炎ウイルス、ポリオウイルス、風疹ウイルス、狂犬病ウイルスおよびワクシニアウイルスからなる群より選択される、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目55) 項目42に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記免疫原性成分が、Bacillus属、Enterobacteria属、Clostridium属、Listeria属、Mycobacterium属、Pseudomonas属、Staphylococcus属、Eubacteria属、Mycoplasma属、Chlamydia属、スピロヘータ、Neisseria属またはSalmonella属に標的化されるか、またはこれらから誘導される、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目56) 項目42に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記免疫原性成分が、ジフテリア、破傷風、無細胞百日咳、インフルエンザ菌、ポリオ、麻疹、流行性耳下腺炎、狂犬病、水痘、B型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、肺炎球菌性肺炎、黄熱病、マラリア、腸チフス、髄膜炎菌性髄膜炎またはコレラに標的化される、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目57) 項目42に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記免疫原性成分が、動物アレルゲン、昆虫アレルゲン、植物アレルゲン、大気アレルゲン、および吸入アレルゲンからなる群より選択される、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目58) 項目42に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記HBVキャプシド結合ペプチド成分が、
【化2】


からなる群より選択される、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目59) 項目42に記載のHBVキャプシド結合ペプチド免疫原であって、前記HBVキャプシド結合ペプチド成分が、
【化3】


のフラグメントまたはアナログである、HBVキャプシド結合ペプチド免疫原。
(項目60) 項目1に記載のHBVコア抗原粒子であって、前記HBVキャプシド結合ペプチド成分が、
【化4】


のフラグメントまたはアナログである、HBVコア抗原粒子。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本明細書中に記載される本発明が、より十分に理解され得るように、以下の詳細な記載が示される。
【0012】
本発明の一つの実施形態に従って、一つよりも多い型の免疫原、および1つ以上の型のHBVキャプシド結合ペプチドリガンドが、同じHBVコア粒子に架橋され得る。あるいは、同じ免疫原の複数のコピーが、HBVキャプシド結合ペプチドの一つの型に連結され得、HBVコア粒子上の種々の位置に架橋され得る。本発明に従う多成分または多価HBVコア抗原粒子は、すべての成分免疫原に対して抗体を誘導するために特に有用である。
【0013】
免疫原をHBVコア抗原粒子に連結させるHBVキャプシド結合ペプチドの使用は、変性、コンホメーションの崩壊または他の不安定化効果によって、免疫原の免疫原性または安定性を破壊することなしに、増強された免疫原提示を可能にする。例えば、HBVキャプシド結合ペプチドリンカーは、成分免疫原が、相互に妨害して機能物質の喪失を引き起こす危険を減少させる。結果として、HBVコア抗原粒子は、その免疫原成分に対する増強された免疫応答を誘発する。従って、各免疫原が、単一薬剤として投与される場合、必要とされるよりも少ない接種および/または少ない接種物をともなう、所望の治療効果または予防効果を達成することが可能である。
【0014】
HBVキャプシド結合ペプチドを介するHBVコア抗原粒子への免疫原の結合はまた、サイズ、コンホメーションおよび性質が変化した免疫原の提示を可能にする。結果として、本発明は、所定の個人における免疫または処置の広いスペクトルを誘発するのに有用な免疫原の組み合わせを一つのワクチンまたは組成物内に含めることを可能にする。
【0015】
(免疫原)
HBVキャプシド結合ペプチドに連結され得、従ってHBVコア抗原粒子内に組み込まれ得る免疫原としては、一つ以上の免疫性エピトープ、免疫原性エピトープまたは抗原性エピトープを含む任意の分子が挙げられる。そのようなエピトープは、直線性であり得、立体配置的であり得、単一であり得、または性質が混合され得る。
【0016】
より詳細には、免疫原は、免疫応答を誘発し得る任意の薬剤から選択され得る。そのような薬剤としては、抗原、抗原決定基、タンパク質、糖タンパク質、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、抗原または抗原決定基を模倣するペプチドミモトープ、ポリペプチド、糖ペプチド、糖質、オリゴ糖、多糖、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。免疫原はまた、アレルゲン、毒素、または内毒素であり得る。
【0017】
そのような薬剤はまた、種々の病原因子(例えば、ウイルス、寄生虫、細菌、真菌、ファージ、原生動物および植物)に標的化されるか、またはこれらに由来するものを含む。そのようなウイルスとしては、レトロウイルス(ヒト免疫不全1型および2型ウイルスならびにT細胞白血病ウイルスを含む);ヘルペスウイルス(例えば、単純疱疹1型および2型ウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルスおよびエプスタイン−バーウイルス);オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス;パラミクソウイルス(例えば、RSウイルス、麻疹様ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルスおよびパラインフルエンザウイルス);ヘパドナウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス);フラビウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、およびダニ媒介脳炎ウイルス);ピコルナウイルス(例えば、エンテロウイルス、ライノウイルス、口蹄疫ウイルスおよびポリオウイルス;トガウイルス(例えば、風疹ウイルス);ラブドウイルス(例えば、狂犬病ウイルス);アデノウイルス、エボラウイルス;バキュロウイルス;ハンタウイルス;パポバウイルス(papovirus)(例えば、パピローマウイルス);パルボウイルス;DNAウイルス;RNAウイルス;RNA腫瘍ウイルス(例えば、オンコウイルス);およびポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス)が挙げられる。さらに、免疫原は、杆菌、腸内細菌、クロストリジウム、リステリア、マイコバクテリア、シュードモナス、ストレプトコッカス、真正細菌、マイコプラズマ、クラミジア、スピロヘータ、ナイセリアまたはサルモネラに標的化されたものか、またはこれらに由来するものであり得る。免疫原はまた、以下のヒト免疫不全ウイルスのエピトープから選択され得る:GELDRWEKI(gag);ELDKWAS(gp40);IGPGRAFYTTKN(V3ループ);ELDKWA(gp41)およびDRFYKTKRA(gp41)。
【0018】
HBVキャプシド結合ペプチドに連結され得、従ってHBVコア抗原粒子に組み込まれ得る糖タンパク質としては、例えば、抗体、動物細胞もしくはウイルスもしくは細菌の表面成分に由来するか、または似ている糖ペプチド(例えば、髄膜炎を引き起こすようなもの)、またはそのような部分のフラグメントが挙げられる。
【0019】
当業者に理解されるように、免疫原のサイズは、その官能基がHBVキャプシド結合ペプチドリンカーを妨害することを可能にするほど十分に大きなものであるべきではない。
【0020】
(HBVコア抗原タンパク質)
その粒子の性質に起因して、HBVコア抗原タンパク質は、免疫系に複数の免疫原(類似している型または異なる型)の提示のために有利なプラットフォームを構成する。本発明に従って、この利点は、HBVキャプシド結合ペプチドを、HBVコア粒子に所望の免疫原を付着させるリガンドとして使用することにより、さらに増強される。そのような粒子は、90または120のいずれかのリガンド結合部位(キャプシドスパイク)を含み、各々は、HBVコア抗原ダイマーから構成された(図1参照のこと)。従って、複数の免疫原は、リガンドとしてのHBVキャプシド結合ペプチドによって、HBVコア抗原粒子に物理的に連結され得る。生じた粒子は、その成分免疫原の全てに対して免疫応答を誘導し得る。
【0021】
HBVコア抗原粒子は、適切な微生物系、動物系、または植物系におけるHBVコア抗原ペプチドに対する組換えコード配列の発現の際に形成され得る。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、New York(1989)を参照のこと。発現されるべきポリペプチドは、全長HBVコア抗原配列、変異体、誘導体、短縮物(truncation)、またはその部分を含み得、これは、発現系の細胞において粒子形態でアセンブリする能力を保持する。そのようなHBVコア抗原粒子を産生するための組換え方法は、当該分野において公知である。例えば、米国特許第4,710,463号を参照のこと。
【0022】
あるいは、化学合成法を使用して、HBVコア抗原ペプチドを産生し得る。化学合成は、HBVコア抗原ペプチドのアミノ酸配列に基づいて、固相合成を使用して実行され得る[R.B.Merrifield、Fed.Proced.、21、412頁(1964);R.B.Merrifield、Biochemistry、3、1385−90頁(1964)およびD.R.Milichら、J.Immunol.、139、1223−31頁(1987)]。
【0023】
当業者は、変異されたHBVコア抗原配列または改変体HBVコア配列は結合ペプチドまたはリガンドペプチドとの反応に影響を及ぼし得るので、本発明が、HBVコア抗原サブユニットまたは対応する結合ペプチドもしくはリガンドペプチドにおけるコード配列の操作または他の手順によって、天然改変体または変異に等しく適用されることを理解する。
【0024】
(ペプチド結合に重要なコアタンパク質残基の変異)
コアタンパク質の折り畳みを決定するために使用される方法は、SLLGRMKGA(L−HBsAgへの結合を阻害するHBVキャプシド結合ペプチド)のコア部分における結合部位を、低温顕微鏡(cryomicroscopy)によって、位置付けするために適用されている。このアプローチは、現在、T=3殻およびT=4殻の両方において、スパイクの先端に結合されるペプチドを示している[B.Bottcherら、「Peptides that Block Hepatitis B Virus Assembly:Analysis by Cryomicroscopy,Mutagenesis and Transfection]、EMBO J.,17、6349−45(1998)]。画像分析は、ポリペプチド結合部位が、ポリペプチドの折り畳みについて提唱された番号づけスキーム[Bottecherら(1997)]においてアミノ酸78〜82の領域の残基に対応するスパイクの先端に位置することを示す。コアタンパク質の先端に近い2つの酸性残基(glu77およびasp78)および2つの保存塩基性残基に含まれる選択された結合ペプチドが存在する。結合反応におけるこれらの逆に荷電した残基の重要性は、タンパク質の酸性残基のいずれかのアラニンへの変異が、変化したコア殻に対するペプチドの親和性を大きく減少することが見出され場合に確認された。アスパラギン酸78をアラニンに変化させると、親和性は160倍減少し、グルタミン酸77をアラニンに変更させると、親和性は1000倍減少した。このことは、HBVコア抗原タンパク質上のいずれかまたは両方の酸性残基が、HBVキャプシド結合タンパク質についての結合部位の少なくとも一部を提供し得ることを示唆する。
【0025】
これらの結果はまた、リガンド結合についてのスパイクの先端の領域におけるHBVコア抗原のアミノ酸配列の重要性を例示する。当業者は、いくつかのHBV株由来のHBVコア抗原が、特定のリガンド−免疫原ペプチドの有効な結合のための変異、または特定のHBVコア抗原改変体に有効に結合するタンパク質へのリガンドの改変体の選択および適合を必要とし得ることを理解する。
【0026】
(HBVコア抗原融合タンパク質)
本発明の1実施形態に従って、免疫原がHBVキャプシド結合ペプチドを介して連結され得るHBVコア抗原粒子は、遺伝子融合技術の結果として、1以上の免疫原をすでに提示しているものであり得る。1つのこのような技術において、関連コード配列は、HBVコア抗原ポリペプチドについてのものを保有する他のプラスミドまたはベクターにおける適切な位置で取り込まれる。
【0027】
HBVコア抗原ポリペプチドの発現レベルを増強するために使用したE.coliのβ−ガラクトシダーゼ遺伝子への融合は、この抗原の最初の2つのアミノ酸の、11のアミノ酸の配列(β−ガラクトシダーゼのアミノ末端からの8つおよび遺伝子融合において取り込まれたリンカー配列の翻訳から生じた3つのさらなる残基)との置換は、その産物の回収の容易さ、抗原性または形態学に有害な影響を与えなかったことを実証した[S.Stahlら、「Hepatitis B Virus Core Antigen.Synthesis in Escherichia Coli and Application in Diagnosis」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79、1606−10頁(1982);B.J.CohenおよびJ.E.Richmond,「Electron Microscopy of Hepatitis B Core Antigen Synthesized in E.Coli」、Nature,286、677−78頁(1982)]。
【0028】
本発明に有用なHBVコア抗原融合タンパク質は、S.J.StahlおよびK.Murray、「Immunogenicity of Peptide Fusions to Hepatitis B Virus Core Antigen」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86、6283−87頁(1989)に例示された通りに産生され得る。あるいは、高度に免疫原性の粒子を得るためのHBVコア抗原の主要なセグメントへのポリペプチド配列を融合は、図2に列挙されるような多数のウイルスコード配列とともに例示される。これらは、高度な免疫原性を有する特定の産物を含み、この産物は、ワクシニアウイルスベクターを介して、肝臓ペプチドリンカー配列を介してHBVコア抗原ポリペプチドのアミノ末端に直ぐ続くプレコア配列の6つのアミノ酸に融合されたVP1ペプチド(残基142−160)の発現によって産生される[B.E.Clarkeら、「Improved Immunogenicity of a Peptide Epitope after Fusion to Hepatitis B Core Protein」、Nature,330、381−84ページ(1987)]。他の有用なHBVコア抗原融合タンパク質については、Ulrichら(1998)もまた参照のこと。
【0029】
一連の他の融合タンパク質は、他の代替的コード配列によるHBVコア抗原ポリペプチドのカルボキシ末端でのアルギニンリッチ領域の置換によって特徴付けられる。HBV表面抗原の免疫優性領域(残基111〜165)、プレS1およびプレS2エピトープ、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)のエンベロープタンパク質の種々のセグメントを含むペプチドは、HBVコア抗原ポリペプチドの残基144に付着された。全て物が、E,coliにおいて効率的に発現されて、HBVコア抗原自体の形態と同じ形態を本質的に提示する粒子状生成物を生じた(StahlおよびMurray,1989)。この生成物は、HBVコア抗原の抗原性反応性を提示し、そして残基144で短縮されたHBVコア抗原ポリペプチドの調製物のように、試験されたものもまた、HBV e抗原反応性を示したが、一方、全長HBVコア抗原は、このような活性を非常にわずかしか示さない。HBV表面抗原からの残基111〜156または111〜165を保有する融合タンパク質は、有意なHBV表面抗原反応性を提示せず、結果は、この主要なエピトープのコンホメーション依存性、または粒子内で不明瞭である配列の確率と一致しなかった。しかし、融合タンパク質に対する免疫原性応答は、これらの種々の成分エピトープを反映した。
【0030】
HBV表面抗原に対する免疫応答は、L−HBsAgおよび主要免疫優性のプレS1およびプレS2領域に存在するエピトープに加えて、領域について複雑であり、多数の可変サブタイプ決定基は、短い他の領域、またはHBV表面抗原のSポリペプチドに割り当てられている[G.L.LeBouvier,「The Hetetogeneity of Australia Antigen」、J.Infect.Dis.,123、671−75頁(1971);W.H.Bancroftら、「Detection of Additional Antigenic Determinants of Hepatitis B Antigen]、J.Immunol.、109、842−48頁(1972);A.−M.Courouce−Pauty P.V.およびHolland,「Summary of Workshop A2:HBsAg and its Subtypes]、in Viral Hepatitis,G.N.Vyas,S.N.CohenおよびR.Schmid編、(Philadelphia,USA:Franklin Institute Press),649−54頁)1978)]。異なるサブタイプの血清からクローニングされたHBV DNAにおいて決定されたHBV表面抗原コード配列は、対応するタンパク質配列において差異を提示する。しかし、明らかに重要な残基の特異的単一変異は、ある血清学的サブタイプ(y)から別のもの(d)へのスイッチをもたらさなかったが、さらなる単一変異は、同じ分子から提示されるyおよびdの両方の反応性および免疫原性との漸進的変化を誘導した[P.G.Ashton−RickardtおよびK.Murray,「Mutations that Change the Immunological Subtype of Hepatitis B Virus Surface Antigen and Distinguish Between Antigenic and Immunogenic Determination」、J.Med.Virol.,29、204−14(1989)]。関与する変異は、コンホメーション感受性免疫優性領域内またはそれに密接してなされ、そして上記のHBVコア抗原に対する融合において使用されるHBVコア抗原のセグメント内に全て存在した。
【0031】
誘導された抗体のサブタイプ特異性に対する変異の影響は、融合タンパク質はまた、特にそれらがコンホメーションに依存する場合に、目的のエピトープに対する応答の特異性を変化させるための手段を提供し得るという示唆を促した。グリシン145の、アルギニン、天然のエスケープ変異体の模倣物、および他の正もしくは負に荷電した残基(リジンおよびグルタミン酸)への変異は、それゆえ、体液性および細胞性の免疫応答の比較研究についてHBcS111-156におけるこの残基でなされた(A.L.ShiauおよびK.Murray,「Muttated Epitopes of Hepatitis B Surface Antigen Fused to the Core Antigen of the Virus Induce Antibodies That React with the Nature Surface Antigen」、J.Med.Virol.51、159−66頁(1997)]。全てのものが、E.coliにおいて効率的に発現され、強力なHBVコア抗原性を示す予測された粒子状生成物を生じ、そして全てものが、ウサギにおいてHBVコア抗原に対する抗力価の抗体を誘導した。
【0032】
それらの親タンパク質HBcS111-156のように、3つの残基145変異体は、固相ラジオイムノアッセイ(AUSRIA;Abbott Laboratories)または溶液における抗体沈降アッセイにおいてHBV表面抗原に対する抗体と最小の相互作用を示した。しかし、それらは全て、変性条件下でのアクリルアミドゲルにおける電気泳動後のイムノブロット実験において、ウサギ抗HBV表面血清との強力な反応を示した[A.L.Shiau,「Immunological Aspects of Hepatitis B Virus Core Antigen and its Derivatives」、履くし論文、University of Edinburgh,UK.(1993)]。高濃度では、親タンパク質および変異体タンパク質はまた、HBVコア抗原に対する抗体で被覆された固相上に捕捉される場合、おそらく、抗HBsAg分子に対する接近を与える粒子のいいくらかの破壊の結果として、HBV表面抗原に対する抗体との弱い陽性反応を与えた。(ShiauおよびMurray,1997)。
【0033】
免疫したウサギを使用して、融合タンパク質に対するT細胞応答および抗体産生を実験した。免疫後に種々の時間で採取した末梢血液単核細胞(PBMC)を、HBVコア抗原に対する曝露に応答する[3H]−チミジン取り込みに基づく増殖アッセイのために使用したか、または融合タンパク質を免疫のために使用した。全ての場合において、HBVコア抗原よりも高い刺激指数を示す融合タンパク質との強力な応答が見出され、そして、予測されたように、HBV表面抗原は、乏しい刺激因子(stimulant)であった。[128I]−HBV表面抗原を用いる二抗体放射性免疫沈降アッセイ(double antibody radio−immunoprecipitation assay)[C.J.Burrellら、「Rapid Detection of Hepatitis B Surface Antigen by Double Antibody Radioimmunoasay」、J.Med.Virol.,3、1926頁(1978)]を使用して、血清サンプルにおける抗HBsを測定し、そしてHBcS111-156に対する予測された陽性応答が示された。アルギニン変異体もまた、このアッセイにおいて陽性応答を生じたが、その親分子よりはいくらか低く、そして弱い応答がグルタミン酸変異体から得られたが、リジン変異体からは何も得られなかった。従って、これらの結果は、アルギニン145変異を保有する融合タンパク質(HBcS145Rと称する)が、強力なT細胞刺激因子であり、そしてより広範な反応特性を有する抗体を誘導したことを示した。
【0034】
HBVコア抗原ポリペプチドに対するHBV表面抗原ポリペプチド(残基145変異体を含む)の種々の部分のさらなる群の融合は、生成物の免疫原性に対する全体のサイズならびに種々のさらなる構成要素の数および位置に対する効果を探索するためになされた[Shiau(1993)]。これらの構築物は図2に含まれ、そして他の融合物を用いた場合、全てのものが、HBVコア抗原の形態学を提示する粒子状生成物を生じたが、HBVコア抗原のアミノ末端でのHBs111-156フラグメントとの融合は、あまり満足の行くものではなく、不溶性凝集物を形成した生成物を生じた。
【0035】
この群の産物は、HBcS111-156セグメントを有するより初期のものと同様に、固相上または溶液中でHBV表面抗原に対する抗体とわずかな反応性を示したか、またはまったく反応性を示さなかったが、固相上のHBVコア抗原に対する抗体によって捕捉された場合、それらは、HBV表面抗原に対する抗体との類似の固反応性を示し、そしてこれは、HBs111-156に加えてプレS1およびプレS2を保有する融合物を用いると、いくらか高い(約2倍)。リンパ球増殖阻害についての刺激指標は、また、全ての融合タンパク質およびプレSセグメントを誘導したものならびにより強力な応答を生じたネイティブまたは変異体HBs111-156配列について強力であった。HBcS144配列とHBcS111-156配列(野生型または変異体のいずれか)との間のプレS1およびプレ2配列の封入は、二抗体放射性免疫沈降アッセイにおいて、プレ5セグメントを欠く融合物より高い抗体レベルを生じたが、HBc144配列とプレ5配列との間の第2のHBcS111-156配列の挿入は、任意の応答においてさらなる増強を生成しなかった。プロリン144でHBVコア抗原ポリペプチドに付着した最長のこれらの配列(165アミノ酸)は、融合タンパク質の収率または物理的特徴に対する自明の有害な影響を有さなかった。
【0036】
C型肝炎ウイルス(HCV)のコアタンパク質(HCc)はまた、部分的および複数の全長コピーにおいて、バリン149で短縮されたHBVコア抗原ポリペプチドに融合されている[A.Yoshikawaら、「Chimeric Hepatitis B Virus Core Particles with Part of Copies of the Hepatitis C Virus Core Protein」、J.Virol.,67、6064−70頁(1993)]。HCc残基39−37を保有する融合物は、ごくわずかなHCc抗原性を示したが、残基1−91または180アミノ残の全長配列は陽性反応を生じ、そして抗原性は、短いリンカーを介する1−180配列のさらなるコピー(4つまで)の付加とともにほとんど等差級数的に増加した。電子顕微鏡は、HCc残基1−91の単一のコピーを保有する融合物は、HBVコア抗原ポリペプチドに形態学的に等しい粒子を形成したが、3つの全長コピーは、この構造を非常に破壊し、そしてこの生成物は、しかし、HBVコア抗原性を維持した物質を生じるタンパク質分解に対して非常に感受性であった。より大きな融合タンパク質は、720よりも多いさらなるアミノ酸をもたらしたが、HBVコア抗原型の粒子についての制限は、評価的に少ないようである。
【0037】
プレS配列は、HBcAgへの融合の位置の、免疫原性に対する効果の他の研究において使用されてきた。Borisovaら(1989)は、プロリン144で短縮されたHBVコア抗原に連結されるかまたは全長HBVコア抗原配列内のこの位置に挿入される、プレS1のセグメント(残基20〜68、20〜69または69〜106)またはプレS2の全体との融合を作製した。ウシ白血病ウイルス(BLV)のエンベロープタンパク質の残基56〜103またはHIV膜貫通タンパク質(gp41)の残基78〜129とのこれらおよび類似の構築物において、HBVコア抗原に融合された配列は、粒子表面に対して露出されると考えられており、全てについて、抗原性および免疫原性の両方であることが報告されており、そしてC末端アルギニンリッチドメインは、明らかにわずかな逆効果しか有さなかった。
【0038】
F.Schodelら、「The Psition of Heterologous Epitopes Inserted in Hepatitis B Virus Core Particles Determines Their Immunogenicity」、J.Virol.,6、106−14頁(1992)は、プレS1またはプレS2セグメントが全長HBVコア抗原のアミノ末端で(プレコア配列に直接またはその一部を介してのいずれかで)または短縮されたHBVコア抗原のカルボキシ末端で付着された場合、近交系マウスにおける融合の位置の免疫原性に対する影響および免疫応答を開発した:さらなる構築物は、HBVコア抗原の残基75と83との間のプレS1セグメントならびに短縮されたカルボキシ末端でのプレS2セグメント(プロリン156)を保有した。
【0039】
包括的な分析は、HBVコア抗原のアミノ末端に短いプレコア配列を介して融合されたプレS1配列は抗原性であるが、アミノ末端に直接融合されたものは抗原性ではなく、両方は同じHBVコア抗原免疫原性を有したが、プレコア配列を介する融合は、ずっと高い抗プレS1応答を刺激したことを示した。短縮されたHBVコア抗原末端でのプレS2配列は、両方の状況において同程度に抗原性および免疫原性であったが、残基76〜82(これは、主要なHBVコア抗原エピトープを含む)を置換するように内部融合されたプレS1配列は、N末端融合においてよりも、実質的により抗原性であり、そして劇的により免疫原性であった。予測されたように、HBVコア抗原性および免疫原性は、内部融合タンパク質において非常に減少された。HBVコア抗原(残基78〜82)の、免疫優性エピトープを含むHBV表面抗原のフラグメントとの置換はまた、陽性のHBVコア抗原性および免疫原性を示す生成物を生じた[G.Borisovaら、「Hybrid Hepatitis B Virus Nucleocapsid Bering an Immunodominant Region from Hepatitis B Surface Antigen」、J.Virol.,67、3696−3701(1993)]。
【0040】
さらなる代替として、または上記の融合タンパク質への追加として、免疫原性成分は、化学的架橋手順によって、HBVコア抗原に付着され得る。
【0041】
Bottcherら(1997)によって示唆された物理的構造に対するHBVコア抗原のアミノ酸配列の付加は、HBVコア抗原のカルボキシ末端で、もしくはその付近で融合された配列の低い抗原性の説明を補助する。なぜなら、このようなセグメントは、HBVコア抗原粒子に内に埋没されるようであり、一方N末端融合は、可撓性リンカー配列から利益を受け得、スパイクの足の相対的に限定された空間からさらに免疫原をもたらす。スパイクの先端での免疫優性HBVコア抗原エピトープの位置[残基78〜82;Salfeldら(1989)]は、HBVキャプシド結合ペプチド−免疫原の挿入または付着についてのこの位置の誘引力を示す。原則的には、すべてのこれらの位置は、所定のHBVコア抗原粒子によって提示されるエピトープの数および/または多様性を増加するために同時に使用され得る。
【0042】
(HBVコア抗原粒子に免疫原を連結するために使用されるHBVキャプシド結合ペプチド)
上記のように、目的の免疫原は、HBVキャプシド結合ペプチドであるリガンドを使用して、HBVコア粒子に結合され得る。このようなHBVキャプシド結合ペプチドは、単離され、精製されたペプチドである。これらのHBVキャプシド結合ペプチドは、HBVコアタンパク質とHBV表面タンパク質との間の相互作用をブロックすることによって、HBVウイルスのアセンブリを有利に阻害し、そして干渉する。
【0043】
好ましくは、HBVキャプシド結合ペプチドは、約2アミノ酸と約20アミノ酸との間の長さであるペプチド、そのフラグメント、アナログ、およびホモログを含む。より好ましくは、このペプチドは、約3アミノ酸〜約15アミノ酸の間の長さである。このようなペプチドは、下記の表に列挙したペプチド、ならびにそのフラグメントおよびアナログを含む。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「フラグメント」とは、そのフラグメントが由来するペプチドよりも短いが、もとのペプチドの生物学的活性と実質的に類似の生物学的活性を保持する、アミノ酸配列をいう。このようなフラグメントは、少なくとも2アミノ酸の長さである。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「アナログ」とは、ペプチドのアミノ酸配列のバリエーションをいい、このバリエーションは、代表的には、1〜約4アミノ酸の変化によってのみ異なる、アナログを含み得る。アナログの他の例は、本明細書中に例示されるペプチドからの少しのアミノ酸バリエーションを有するペプチドを含む。特に、保存的アミノ酸置換(すなわち、その側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの内で生じるアミノ酸置換)を含むペプチドは、アナログを構成する。
【0046】
遺伝子にコードされるアミノ酸は、一般的に、4つのファミリーへと分割される:(1)酸性:アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性:リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電極性:グリシン、アスパラギン酸、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時に、芳香族アミノ酸としてともに分類される。HBVキャプシド結合ペプチドに関して、1つ以上のアミノ酸を変化させることは、有益であり得る。当業者は、このような変化の影響を容易に評価し得る。
【0047】
用語「ホモログ」とは、参照ペプチドに対して、アミノ酸レベルでの少なくとも60%同一性、そして好ましくは75%同一性、そして実質的に類似の生物学的活性を共有する、ペプチドフラグメントを含む。これらの好ましいパーセンテージは、これらのペプチドのサイズの小ささを反映する。
【0048】
有用なHBVキャプシド結合ペプチドは、DvsonおよびMurray(1995)に開示されたペプチドに基づくものを含む。このようなペプチドは、融合ファージB1中のペプチドLLGRMKに隣接する残基のランダムな変異誘発、およびバイオパニング反応におけるHBVコア抗原に対する再選択の後に合成されて、改良された親和性で抗原に結合する誘導体を生じた。高解像度の電子低温顕微鏡は、このようなHBVキャプシド結合ペプチドが、HBVコアタンパク質の殻のスパイクの先端に結合することを、示した。感染した細胞におけるHBVコア抗原とHBV表面抗原タンパク質との間の相互作用に対するこのペプチドの阻害効果を、HBVゲノムの頭−尾二量体を保有する複製コンピテントプラスミドを用いた、透過性の肝細胞癌Hep G2細胞のトランスフェクションを介して、このペプチドの存在下または不在下で試験した。Boettcherら(1998)を参照のこと。
【0049】
このLLGRMK配列を保有するHBVキャプシド結合ペプチドは、トランスフェクトされた肝細胞癌細胞培養物中にて、用量依存性様式でHBVの収量を減少させ、そして溶液中のHBVコア抗原とL−HBV表面抗原との間の反応のこのペプチドによる阻害において、このペプチドについてのIC50値を反映する、相対効力を有した。
【0050】
HBVキャプシド結合ペプチドは、約10μM未満、好ましくは5μM未満、より好ましくは約2μM未満、そして最も好ましくは約0.5μM未満である、半最大濃度(half maximal concentration)(IC50)を好ましくは有する。好ましいペプチドとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:SLLGRMKG(β−A)C、RSLLGRMKGA、HRSLLGRMKGA、およびRSLLGRMKGA(β−A)C、あるいはこれら由来のペプチド。あるいは、このようなペプチドは、ペプチドALLGRMKGであり得、このペプチドは、長いB型肝炎ウイルス表面抗原(L HBsAg)とHBcAgとの間の相互作用を阻害し、半最大濃度(IC50)は、10.0μMである。
【0051】
HBVキャプシド結合ペプチドは、以下によって例証される。KDRel(nM)は、HBVコア抗原と、gpIIIタンパク質のアミノ末端領域中のペプチド配列を保有するfd融合ファージとの間の反応についての相対解離定数を示す。
【0052】
【化5】


これらのペプチド(L HBsAgの細胞質領域を模倣する)は、糸状ファージ上に提示されたランダムヘキサペプチドライブラリーからの選択、およびファージ結合形態にて決定された溶液中でのHBVコア抗原についてのこれらペプチドの親和性によって、同定された。以下の関連ペプチド(以下に列挙した)もまた、HBVキャプシド結合ペプチドの例であり、そしてそのIC50μM値は、半最大レベルのHBVコア抗原へのL HBsAgの結合を阻害するのに必要なペプチドの濃度を示し、N/Dは、観察可能な阻害がないことを示し、そしてβ−Aは、β−アラニンを示す[DysonおよびMurray(1995)]:
【0053】
【化6】


このHBVキャプシド結合ペプチド、そのフラグメント、アナログおよびホモログ(これらは、HBVコア抗原粒子に対する免疫原を結合するリガンドとして作用し得る)は、好ましくは、従来の合成技術を用いて(例えば、化学合成技術によって)、合成される。あるいは、当業者は、標準的化学(例えば、t−BOC化学)を使用する自動ペプチド合成機を使用することによって、これらのペプチドのいずれをも合成し得る。例えば、L.A.Carpino、J.Am.Chem.Soc.79、4427頁(1957)を参照のこと。そしてこれらのペプチドは、タンパク質の化学切断または他の方法によって、調製され得る。これらのペプチドは、化学的に合成された場合またはタンパク質の化学切断によって得られた場合に、そのペプチドが、化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まないように、単離される。
【0054】
あるいは、HBVキャプシド結合ペプチドは、従来の遺伝子操作技術(例えば、このペプチドをコードする核酸配列で形質転換された宿主細胞における組換えDNA技術)によって、その選択されたペプチドのコード配列を保有するDNAフラグメントを、宿主微生物または細胞中でクローニングおよび発現することによって、調製され得る。組換え技術によって適切に形質転換された細胞において産生された場合、このペプチドは、細胞培養培地、宿主細胞、またはその両方から、従来の方法を使用して精製され得る。この組換えペプチドは、組換えDNA技術によって産生された場合に、そのペプチドが細胞の物質または細胞培地を実質的に含まないように、単離される。このペプチドのコード配列は、合成によって調製されても、または公知の技術によってウイルスRNAに由来しても、または利用可能なcDNA含有プラスミドに由来してもよい。
【0055】
本発明の方法における使用のために、上記のペプチドは、そのペプチドの産生またはHBVコア抗原へのそのペプチドの結合を増大するように、従来から公知である構築物または代替的構築物へと設計され得る。例えば、これらのペプチドは、タンパク質融合パートナーまたはペプチド融合パートナーに、必要に応じて融合され得る。従って、当業者は、選択した融合パートナー(別のペプチド、またはそのペプチドに所望の特徴を付与する他のペプチドもしくはタンパク質)と結合したこのペプチドを設計し得る。
【0056】
種々の微生物および細胞(例えば、E.coli細胞、バチルス細胞、ストレプトミセス細胞、サッカロミセス細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および植物細胞を含む)においてHBVキャプシド結合ペプチドをクローニングおよび発現するための系ならびにその系に適切なベクターは、公知であり、そして私的および公的な、実験室および寄託機関から、そして商業的供給者から、入手可能である。
【0057】
組換え生成されようとまたは合成されようと、このHBVキャプシド結合ペプチドは、従来の精製手段を使用して精製され得る。当業者は、このペプチドが使用される所望の適用に必要な、適切なレベルの純度を容易に決定し得る。
【0058】
HBVキャプシド結合ペプチドリンカーの選択は、ある程度まで、HBVコア抗原粒子を形成する特定のHBVコア抗原ポリペプチドの性質に依存することが、理解されるべきである。例えば、異なる起源ウイルス株のHBVコア抗原粒子は、異なるHBVキャプシド結合ペプチドリガンドを必要とし得、それは、所定のHBVコア抗原ポリペプチドのリガンド結合部位のアミノ酸配列またはそのリガンド結合部位付近のアミノ酸配列の違いに起因する。
【0059】
(免疫原とのHBVキャプシド結合ペプチドの結合)
HBVキャプシド結合ペプチドは、目的の免疫原と結合され得て、ペプチド結合を介してキャプシド結合免疫原を形成し得る。この免疫原自体がペプチドである場合、これは、通常は、単一の合成によってか、または形質転換された細胞における、この免疫原配列に結合したHBVキャプシド結合配列を含むペプチド(通常そして好ましくは、この長い方のペプチドの2つの成分間の一定程度の可撓性を付与するために、2〜5(しばしば3)つのグリシン残基を介する)の対応するコード配列の発現によって、従来通りに達成される。あるいは、このペプチドは、この免疫原に架橋され得る。
【0060】
このペプチドおよび免疫原の結合成分間の結合の配置は、このHBVコア抗原粒子へのキャプシド結合免疫原の架橋のための最終プロセスの効率に影響し得る。あるいは、HBVコア抗原粒子に架橋されるべき多数のキャプシド結合免疫原の中で、所定の免疫原は、その免疫原が結合するペプチドのアミノ末端に配置され得るが、一方、別の免疫原は、その免疫原が結合するペプチドのカルボキシ末端に配置され得る。いくつかの場合において、HBVキャプシド結合ペプチドの各末端に同じ免疫原または異なる免疫原を配置することは、有利であり得る。所定のHBVコア抗原粒子に架橋されるべきHBVキャプシド結合ペプチド−免疫原複合体の構成のこのようなバリエーションは、有利なことに、非常に多成分または多価のHBVコア抗原粒子を提供する。図1を参照のこと。
【0061】
従って、このHBVコア抗原粒子に架橋されるべきキャプシド結合免疫原の配置は、生じる粒子の最終的な免疫原性または多価性にとって重要である。その免疫原が、HBVキャプシド結合ペプチドのアミノ末端に位置付けられている場合、より高い免疫原性または多価性が予期される。このような配置(より大きな可撓性を付与する)もまた、大きなサイズの免疫原にとって好ましい。
【0062】
(HBVコア抗原粒子へのキャプシド結合免疫原の結合)
キャプシド結合免疫原は、従来の任意の架橋剤を使用して、HBVコア抗原粒子に架橋され得る。このような架橋剤としては、例えば、多官能性架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド、スクシンアルデヒド、オクタンジアルデヒド、およびグリオキサール(glyoxol))が挙げられる。さらなる架橋剤は、Pierce Catalog and Handbook、Pierce Chemical Company、Rockford、Illinois(1997)に列挙されている。他の架橋剤としては、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド(EDC)およびN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホ−NHS)のような架橋剤が挙げられ、これらは、隣接する一級アミノ基とカルボキシル基を結合してアミド結合を形成する。キャプシド結合免疫原/HBVコア抗原粒子混合物に添加された場合、このような薬剤は、このペプチドの利用可能なリジン成分を、HBVコア抗原からの隣接するアスパラギン酸またはグルタミン酸に共有結合的に架橋する。
【0063】
所定のHBVコア抗原粒子に結合される異なる免疫原の比率は、もちろん、HBVコア抗原粒子にキャプシド結合免疫原を結合するために使用される混合物中の個々の免疫原の相対比率によって変化され得ることもまた、理解されるべきである。
【0064】
(本発明に従う治療組成物)
本発明はまた、本明細書中に開示される多成分または多価のHBVコア抗原粒子を用いての個体の治療処置または予防処置に有用な、組成物を提供する。任意の個体(ヒトおよび他の哺乳動物を含む)ならびに任意の動物が、本明細書中に開示されるHBVコア抗原粒子を用いて処置され得る。治療組成物は、薬学的に有効な量(すなわち、その組成物がいくらかの期間にわたって投与される個体において、1つ以上の感染性因子に対して免疫するか、または1つ以上の状態を処置するために有効である量)のHBVコア抗原粒子を含む。予防組成物は、予防的に有効な量(すなわち、その組成物がいくらかの期間にわたって投与される個体において、1つ以上の状態を予防するために有効である量)のHBVコア抗原粒子を含む。
【0065】
このHBVコア抗原粒子が、異なる型の複数の免疫原を含む場合、この粒子を含む組成物およびワクチンは、個体において各成分免疫原に対する増強した免疫応答を惹起するために使用され得る。このHBVコア抗原粒子が、共通の型の複数の免疫原を含む場合、この粒子を含む組成物およびワクチンは、個体においてその共通の免疫原に対する増強した免疫応答を惹起するために使用され得る。この後者の組成物およびワクチンは、従来の単独療法(monotherapy)と比較した場合に、増強された一価性および能力によって特徴付けられる。
【0066】
本発明の多成分または多価のHBVコア抗原粒子を含む組成物は、単独でか、または薬学的調製物もしくは予防調製物(徐放性処方物を含む)の一部として(アジュバントを含んでも含まなくても)、投与され得る。これらは、このような感染の処置のための投与に適切な、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤をさらに含み得る。適切な、薬学的に受容可能なキャリアは、生理学的に不活性および/または非毒性である。多数のキャリアが、当該分野で公知であり、そして所望の適用に基づいて選択され得る。例示的キャリアとしては、以下があげられるが、これらに限定されない:滅菌した、生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストリン、寒天、ミョウバン、アルミナ、水酸化アルミニウム、ペクチン(peptin)、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、および水。さらに、このキャリアまたは賦形剤は、時間遅延(time delay)材料(例えば、モノステアリン酸グリセロールまたはジステアリン酸グリセロール)を、単独でか、またはろうと組み合わせて、含み得る。さらに、従来の徐放性ポリマー処方物(例えば、可溶性ガラスを含む)が、使用され得る。
【0067】
おそらく、多成分または多価のHBVコア抗原粒子を含む組成物は、他の治療剤または予防剤を含み得る。例えば、このような組成物は、感染の処置または予防にて有用な複数の試薬の「カクテル」を含み得る。1つのこのようなカクテルは、他の試薬(例えば、インターフェロン、ヌクレオシドアナログおよび/またはN−アセチル−システイン)を含み得る。
【0068】
必要に応じて、免疫原性HBVコア抗原粒子を含む組成物は、患者において抗体応答およびT細胞応答をさらに誘導するために有用であるアジュバントまたはサイトカインのような免疫系修飾因子をさらに含有し得る。このような修飾因子には、従来のミョウバンベースのアジュバント、またはムラミルジペプチド、保存剤、化学安定剤、またはその他の抗原性タンパク質が含まれる。代表的には、安定剤、アジュバント、および保存剤などは、所望の適用における効力について最良の処方物を決定するために最適化される。適切な保存剤は、クルリルブチノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫酸、プロピルガラード(propyl gallade)、パラベン、グリセリン、およびフェノールを含み得る。
【0069】
これらの組成物の適切な量は、所望の応答のレベルに基づいて決定され得る。一般に、免疫原性HBVコア抗原粒子を含む組成物は、約5μgと約200μgとの間の粒子を含有し得る。このような組成物は、1回または一連の接種(例えば、2ヶ月〜6ヶ月の間隔での3回の接種)として投与され得る。適切な投薬量はまた、処置している担当医の判断によって、患者の健康状態、体重、または年齢、ならびに単独療法として投与される場合の成分免疫原の一般的な投薬量のようなファクターを考慮して、決定され得る。患者の状態または所定の病原への曝露の増大の可能性の改善時に、免疫原性HBVコア抗原粒子を含む維持用量の組成物が、必要であれば、投与され得る。結果として、投与の投薬量または頻度、あるいはその両方は、所望の効果が維持できるレベルまで減少され得る。その時点では、処置は、中止すべきである。しかし、個体は、所定の所望でない状態の再発時には、長期ベースの間欠的な処置を必要とし得る。
【0070】
複数成分または多価のHBVコア抗原粒子を含む組成物は、任意の適切な経路(例えば、非経口投与(特に、筋肉内または皮下)および経口投与のような)で投与され得る。その他の経路(例えば、肺、鼻、耳、肛門、皮膚、眼、静脈内、動脈内、腹腔内、粘膜内、舌下、皮下、および頭蓋内)が使用され得る。
【0071】
本発明の免疫原性HBVコア抗原粒子は、HBV感染個体の能動的な治療において、体内でのそのウイルスの増殖を阻害、減少、または遅延するために使用され得る。治療用組成物は、そのウイルスの構築機構を不能に、阻害、または防止し得る免疫原性HBVコア抗原粒子を含む。このような治療用組成物は、キャリアまたは希釈剤、および本発明の1つ以上の免疫原性HBVコア抗原粒子を含有するように処方され得る。このようなキャリアおよび希釈剤は、特定の他の組成物と組み合わせて上記にて考察され、そして当業者には理解され得る。
【0072】
有効成分として免疫原性HBVコア抗原粒子を含有する組成物またはワクチンの調製は、注射可能な組成物またはワクチンを、液体溶液または懸濁液のいずれかとして処方するために実施され得る。注射前の液体中の溶液または懸濁液に適切な固体形態もまた調製され得る。調製物はまた、特定の実施形態において、徐放および/または長期の送達のために、リポソーム中または可溶性ガラス中に乳化され得るか、またはカプセル化され得る。あるいは、調製物は、エアロゾルまたはスプレーの形態であり得る。それらはまた、経皮パッチ中に含められ得る。有効成分は、薬学的に受容可能であり、そして有効成分と適合性である任意の数の賦形剤と混合され得る。このような賦形剤には、例えば、フロイントの不完全、細菌リポポリサッカライド、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、ムラミルジペプチド、レシチン、緩衝液物質、セルロースベースの物質、およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0073】
有利には、本発明に従うHBVコア抗原粒子を含むワクチンは、組み合わせワクチンであり得、これは多数の異なる免疫原を含む。このようなワクチンは、例えば、ジフテリア、破傷風、無細胞百日咳、インフルエンザ菌、ポリオ、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、B型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、または肺炎球菌性肺炎のうちの2つ以上に対する免疫原を含む組み合わせワクチンを含む。その他のワクチンには、国際旅行前の個体の接種のためのものが含まれる。このようなワクチンには、例えば、黄熱病、B型肝炎ウイルス、A型肝炎ウイルス、腸チフス、髄膜炎菌性脳炎、またはコレラのうちの2つ以上に対する免疫原を含むワクチンが含まれる。
【0074】
本発明のHBVコア抗原粒子を含む組成物はまた、動物アレルゲン、昆虫アレルゲン、植物アレルゲン、大気アレルゲン、および吸入アレルゲンのような1つ以上のアレルゲンに対して個体を脱感作するために免疫治療レジメンにおいて使用され得る。
【0075】
本発明の代替の実施形態に従って、HBVコア抗原粒子は、免疫治療または診断における使用のために、目的の免疫原に対する抗体を惹起するために使用され得る。例えば、HBVコア抗原粒子を接種された個体において惹起された抗体は、単離され得、そして精製された形態で使用され得る。あるいは、個体由来のこのような抗体またはB細胞は、従来の技術を使用してモノクローナル抗体を産生するために利用され得る。
【0076】
(本発明に従う検出方法)
本発明のHBVコア抗原粒子はまた、感染または感染性因子への曝露の診断のための多数の従来のアッセイ形式(特に、イムノアッセイ形式)において使用され得る。このような有用性は、本発明の構築物のHBVキャプシド結合ペプチド成分が、診断標識、化学マーカー、トキシン、または別のタンパク質もしくはペプチドと結合した場合に実現される。例えば、HBVキャプシド結合ペプチドは、所定のHBVコア抗原結合ペプチドへ結合した免疫原への曝露の際に、単独で、あるいは他の組成物または化合物と組み合わせて、サンプル中の標的分析物の存在を指示する検出可能なシグナルを提供し得る従来の標識と結合され得る。このような検出可能な標識は、診断アッセイの当業者に公知の、および容易に入手可能な多数の組成物の中から選択され得る。
【0077】
本発明は、それゆえ、特定のアッセイ形式の選択に限定されず、そして当業者に公知のアッセイ形式を包含すると考えられる。簡便のために、アッセイのための試薬は、キットの形態で提供され得る。これらのキットは、本発明のHBVコア抗原粒子が予め吸着されたマイクロタイタープレート、種々の希釈剤および緩衝剤、特異的に結合したキャプシド結合ペプチド免疫原の検出のための標識化結合体、ならびにその他のシグナル生成試薬(例えば、酵素基質、補因子、およびクロモゲン(chromagen))を含み得る。他の成分は、当業者に容易に決定され得る。
【0078】
あるいは、本発明のHBVコア抗原粒子は、病原体検出のために現在利用可能である免疫学的診断試験(すなわち、ラジオイムノアッセイまたはELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ))に使用され得る。
【0079】
本発明の1つの実施形態において、種々の免疫原に対する抗体の存在について試験されるべきサンプルは、そのサンプル中の任意の抗体が1つ以上のHBVキャプシド結合免疫原との複合体を形成し得るのに充分な時間、異なる免疫原性成分を有する検出可能に標識されたHBVキャプシド結合免疫原を含むHBVコア抗原粒子と接触され得る。次いで、検出手段が使用され、その複合体がそのサンプル中でキャプシド結合免疫原とその抗体との間に形成され得る。次いで、第2のスクリーニングを、各成分免疫原に基づいてサンプル上で行い、そのサンプル中の抗体の特異性を同定し得る。
【0080】
本発明の代替の実施形態において、特定の免疫原に対する抗体の存在について試験されるべきサンプルは、その特異的免疫原をその免疫原性成分として有する検出可能に標識されたHBVキャプシド結合免疫原を含むHBVコア抗原粒子と、そのサンプル中の任意の抗体が1つ以上のHBVキャプシド結合免疫原と複合体を形成し得るのに充分な時間、接触され得る。HBVコア抗原粒子によって実証される多価の(high valency)特異的免疫原のために、このような診断アッセイは、従来のアッセイよりも高い感度によって特徴づけられる。
【0081】
(実施例)
本明細書に記載される発明がより充分に理解されるために、以下の実施例が示される。これらの実施例は、例示目的のためのみであり、いかなる様式においても本発明を限定するものとは解釈されるべきではないことが理解されるべきである。
【0082】
(実施例1)
(HBVコア抗原調製物)
HBVコア抗原(aa3〜183)またはC末端短縮HBVコア抗原(aa3〜148)のいずれかのE.coli中での発現および精製を、DysonおよびMurray(1995)に記載されるように行った。タンパク質調製物を、4℃で、TBS、スクロース(20%)、およびNaN3(0.02%)を含有する緩衝液中にクロース勾配画分として保存した。調製物は、少なくとも6ヶ月間この形態で安定であった。
【0083】
(HBVキャプシド結合ペプチドのHBVコア抗原への化学架橋)
HBVキャプシド結合ペプチドMHRSLLGRMKGA(Albachem,University of Ediburgh)を、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)およびN−ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホNHS)(いずれもPierce Europe B.V.から入手)を使用して、HBVコア抗原粒子に架橋した。これらの試薬は、隣接する一級アミノ基およびカルボキシル基を連結して、アミド結合を形成する[Starosら、「Enhancement by N−Hydroxysulfosuccinimide of Water−Soluble Carbonddimide−Mediated Coupling Reactions」、Analytical Biochem.,156,220−22頁(1986)]。HBVキャプシド結合ペプチド/HBVコア抗原混合物に添加された場合、それらはペプチドからのリジンを、HBVコア抗原からの隣接するアスパラギン酸またはグルタミン酸に共有結合して、その分子量を増大させるべきである。
【0084】
より詳細には、短縮型HBVコア抗原(15μg)を、室温で、リン酸カリウム(25mM、pH7)、NaCl(150mM)、(EDC 1.8mM)およびスルホNHS(1.8mM)を含有する緩衝液(30μl)中で、ペプチドMHRSLLGRMKGA(1mM)の存在下または非存在下でインキュベートした。
【0085】
18時間後、その反応物を記載されたように(Sambrookら、(1989))SDS/PAGE(15%w/v)によって分析した。EDCおよびスルホNHSのペプチドHBVコア抗原粒子複合体への添加により、HBVコア抗原の画分に対するSDS−PAGE上に生じる約1kdに対応するバンドのシフトを生じた。種々の条件下での数回の反応にもかかわらず、シフトしたタンパク質バンドの50%を超える収量は得られなかった。これは、HBVコア抗原のダイマーに対して1つのペプチドの結合と一致し、局所的2倍軸に近く、従って、2倍関連部位への別のペプチドの結合を立体的にブロックしている。
【0086】
(実施例2)
(HBVコア抗原調製物)
実施例1で調製された2つのコア抗原サンプルに加えて、短縮型HBVコア抗原ポリペプチド(残基144にて短縮された)に短いリンカーペプチド配列を介して結合した、HBVプレS1配列1〜36またはHBV表面抗原配列111〜156もしくは111〜165を有するHBVコア抗原のサンプルもまた、StahlおよびMurray(1989)によって記載されたように調製された。
【0087】
(HBVキャプシド結合ペプチドのHBVコア抗原への化学架橋)
固相合成によって作製された以下のキャプシド結合免疫原は、Albachem、University of Edinburghから得た:
AS−151 GSLLGRMKGA GGG LDPAFRG
AS−152 GSLLGRMKGA GGG EQKLISEEDL
AS−163 LDPAFR GG CSLLGRMKGA
AS−164 EQKLISEEDL GG GSLLGRMKGA
ここで、配列GSLLGRMKGAは、HBVキャプシド結合ペプチドであり、配列LDPAFRは、HBVプレS1エピトープまたは免疫原であり、そして配列EQKLISEEDLは、myc癌遺伝子エピトープまたは免疫原である。これらのペプチドおよび塩基性HBVキャプシド結合ペプチドGSLLGRMKGAは、HBVコア抗原粒子に、異なる濃度で、別々に、または組み合わせて結合し、そして実施例1に記載のようにEDCまたはスルホNHSと架橋した。
【0088】
(得られるHBVコア抗原粒子の特性)
その産物を、アクリルアミドゲル中でSDSの存在下で(SDS−PAGE)、電気泳動によって分析し、次いでクーマシーブルーによって染色し、そしてHBVコア抗原粒子または変性HBV表面抗原粒子に対して惹起されたモノクローナル抗体およびポリクローナルウサギ血清を用いてウエスタンブロット分析した。HBVプレS1エピトープおよびmyc癌遺伝子エピトープの各々に対するモノクローナル抗体が入手可能である。これらは、それぞれ、モノクローナル抗体18/7[K.H.Heermannら、J.Virol.,52,396〜402頁(1984)]およびモノクローナル抗体9E10[Invitrogen,カタログ番号R950−25]である。
【0089】
これらの実験は、全ての架橋反応からの産物が、連結反応成分における構成性エピトープの各々に対する抗体に対して陽性反応を示したことを実証した。陽性反応物を、リガンドペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端を介して結合した免疫原を用いて得た。
【0090】
以下に詳述するように、共通のHBVキャプシド結合ペプチドリガンドを使用する2つ以上の異なる免疫原との架橋を含む反応物からの精製されたHBVコア抗原粒子の調製物は、全ての成分免疫原に対する抗体と反応する。さらに、免疫原の1つに対して特異的な抗体で沈殿するHBVコア抗原粒子は、リガンド架橋手順に含まれる他のペプチドに対する抗体との交差反応性を示す。
【0091】
連結産物を、スクロース勾配を介する限界濾過に供した。これらを、抗体の1つ(抗myc抗体)を用いて沈殿させ、次いで、SDS−PAGEおよびウエスタンブロットによって分析した。
【0092】
抗体の1つ(例えば、抗myc抗体)で沈殿させた材料は、ウエスタンブロットにおいて、抗myc抗体および抗プレS1抗体の両方との強力な交差反応性を示した。他の抗体(抗プレS1抗体)で沈殿させた産物もまた、同じことを示した。
【0093】
異なる免疫原を有する2つのHBVキャプシド結合ペプチドを結合について異なる比率で混合し、そしてコア粒子に架橋した反応において、SDS−PAGEおよびウエスタンブロットによる分析は、2つのモノクローナル抗体での染色の相対的な強度は、架橋のために使用された混合物中の2つの免疫原の比率を反映することを示した。
【0094】
これらの実験は、反応物から生じるHBVコア粒子の少なくともいくつかが、それに共有結合した両方の免疫原を有することを示した。リガンドペプチドは、HBVコア抗原粒子(ヌクレオキャプシド)の先端に結合するので、そのような調製物は、両方の成分について高い免疫原性効力を示し、そしてこれらが投与された個体において高い抗体力価を誘発することが予想される。
【0095】
本発明者らは、上記において、本発明の多数の実施形態を提示してきたが、本発明者らの基本的な構成が改変されて、本発明のプロセスを利用する他の実施形態を提供し得ることが明らかである。従って、本発明の範囲は、例示として上記に提示された特定の実施形態ではなく、むしろ、本明細書に添付の特許請求の範囲によって規定されることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、種々のキャプシド結合免疫原を含むHBVコア抗原粒子の構造を示す。「キャプシド結合免疫原」は、少なくとも一つのHBVキャプシド結合ペプチド成分および少なくとも一つの免疫原性成分を含む。各キャプシド結合免疫原は、EBVキャプシド結合ペプチドを介してEBVコア抗原粒子と連結される。
【図2】図2は、種々の免疫原がHBVキャプシド結合ペプチドを介して連結され得るHBVコア抗原としてもまた役に立ち得る種々のHBVコア抗原融合タンパク質を要約した表である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載される複数の免疫原特異性を有するHBVコア抗原粒子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−74867(P2008−74867A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292634(P2007−292634)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【分割の表示】特願2000−585266(P2000−585266)の分割
【原出願日】平成11年12月3日(1999.12.3)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】