説明

ペプチド合成方法及び該方法に使用可能な水性分散液

【課題】水性液中での縮合反応が従来技術と比較して早く、未反応保護アミノ酸を回収可能な、ペプチドの合成方法の提供。
【解決手段】ペプチド合成に使用される保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの粒子径に注目し、粒子径を非常に小さくした保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが分散した水性分散液を利用したペプチドの合成方法。すなわち、アミノ酸及び/又はペプチドのN末端アミノ基が保護基で保護された保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを縮合反応させるペプチドの合成方法であって、縮合反応が平均粒子径1〜750nmの保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの水性分散液中で行われることを特徴とするペプチドの合成方法。
【効果】水性液中でのペプチド合成方法としては、ペプチドの縮合反応速度に優れ、また未反応の保護アミノ酸及び/ペプチドの回収及び再利用が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一種類または複数種類のアミノ酸及び/又は原料ペプチドを所定の順序で縮合させて、ペプチドを合成する方法、該方法に使用可能な水性分散液及び試薬、並びに該水性分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチドの化学合成方法として液相合成と固相合成が知られている。ペプチド固相合成方法は1963年にメリフィールド(Merrifield)によって開発され(例えば非特許文献1参照)、現在はペプチド化学合成の一般的な手法として行われ、自動化もされている。一方、近年、生理活性低分子ペプチドは、医薬品の探索、抗原決定基の探索、抗体の調製などにおいて利用され、その需要が増加している。このような状況において、さらにコンビナトリアル化学の普及も手伝って、より正確により早くペプチドを合成する方法として、自動化が可能なペプチド固相合成方法はますます注目をあびている(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
ペプチド固相合成方法の一般的な工程は次のとおりである。保護基(代表的にはFmoc、Boc)でN末端の保護されたアミノ酸(保護アミノ酸)を、固体の不溶性担体(代表的にはポリスチレン樹脂製ビーズ)に、該保護アミノ酸のC末端で、リンカーを介して結合させる。次に、未反応の保護アミノ酸、すなわち担体に結合していない保護アミノ酸を除去する。次いで、担体に結合された保護アミノ酸が担体から遊離しない条件で、保護アミノ酸の保護基を除去する。別途、担体に結合されたアミノ酸と結合させるアミノ酸のN末端を保護基で保護した第2の保護アミノ酸を調製しておく。第2の保護アミノ酸を担体に結合したアミノ酸に添加し、担体に結合したアミノ酸のN末端と第2の保護アミノ酸のC末端を縮合する。次に、未反応の第2の保護アミノ酸を除去し、次いで、第2の保護アミノ酸の保護基を除去する。保護基でN末端の保護された第3のアミノ酸を添加して、第2のアミノ酸のN末端と第3の保護アミノ酸のC末端を縮合する。この操作を繰り返し、担体と結合した所望のアミノ酸配列を有するペプチドを合成する。このペプチドを担体から分離することによって所望のペプチドが得られる。
【0004】
ところが、ペプチド固相合成方法の多くは有機溶媒を反応溶媒としてだけでなく、洗浄等の工程にも繰り返し使用するため、大量に有機溶媒を消費する。これはペプチド液相合成方法においても同様であり、大量の有機溶媒が消費されていた。環境との調和が要望される現代では、ペプチド固相合成方法においても環境負荷の点から有機溶媒使用量の低減、環境負荷の低い代替溶媒(例えば水)の使用が要望されていた。このため、ペプチド固相合成方法において水性液の利用が試みられつつある。
【非特許文献1】R. B. Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85, 2149(1963)
【特許文献1】特開平06−220084号公報
【特許文献2】特開平07−089983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、FmocやBocで保護された保護アミノ酸は水に難溶であることから、水性液中でのペプチドの合成方法には使用することができないと考えられていた。このため、保護基を工夫して水溶性の保護アミノ酸を作成し、この水溶性の保護アミノ酸を使用したペプチド固相合成方法の開発が試みられていた。しかし、水溶性の保護アミノ酸を使用したペプチド固相合成方法は、合成速度が非常に遅いものであったため、より合成速度の速い、有機溶媒使用量の低減されたペプチド固相合成方法が要望されていた。また、水性液中でのペプチド液相合成方法は、それ自体があまり開発されていなかったため、水性液中でのペプチド液相合成方法については知られていないと考えられる。
また、ペプチドの合成では、収率を上げるため、当量数以上の保護アミノ酸が大量に使用され、大量の未反応の保護アミノ酸が発生するが、これらは有機溶媒に溶解しているため、回収及び再利用が困難であることから、多くの場合に捨てられていた。このため、大量に発生する未反応の保護アミノ酸の回収及び再利用も要望されていた。
したがって、本発明は、水性液中での縮合反応が従来技術と比較して早く、未反応保護アミノ酸を回収可能な、ペプチドの合成方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ペプチド合成に使用される保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの粒子径に注目し、粒子径を非常に小さくした保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが分散した水性分散液を利用することによって、水性液中でのペプチド合成方法としては、ペプチドの合成速度に優れ、また未反応の保護アミノ酸及び/ペプチドの回収及び再利用が容易であることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の合成方法、水性分散液、試薬、製造方法等を提供するものである。
項1.アミノ酸及び/又はペプチドのN末端アミノ基が保護基で保護された保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを縮合反応させるペプチドの合成方法であって、縮合反応が平均粒子径1〜750nmの保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの水性分散液中で行われることを特徴とするペプチドの合成方法。
項2.保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの平均粒子径が10〜500nmである項1に記載のペプチドの合成方法。
項3.保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの水性分散液が、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを水及び分散剤の存在下で粉砕装置にて所望の平均粒子径に湿式粉砕して得られる、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドのナノ粒子が分散した水性液である項1又は2に記載のペプチドの合成方法。
項4.粉砕装置が遊星ボールミルである項3に記載のペプチドの合成方法。
項5.縮合反応において縮合剤が使用され、縮合剤が1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド、その塩酸塩又は4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリウムクロライドである項1〜3のいずれかに記載のペプチドの合成方法。
項6.ペプチドの合成方法がペプチド固相合成法である項1〜5のいずれかに記載のペプチドの合成方法。
項7.ペプチドの合成方法がペプチド液相合成法である項1〜5のいずれかに記載のペプチドの合成方法。
項8.平均粒子径1〜750nmの保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが分散した水性分散液。
項9.アミノ酸及び/又はペプチドのN末端アミノ基が保護基で保護された保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを縮合反応させるペプチドの合成方法において保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを供給するための試薬であって、平均粒子径1〜750nmの保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが分散した水性分散液を含有することを特徴とするペプチド合成用試薬。
項10.保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを水及び分散剤の存在下で粉砕装置にて1〜750nmの平均粒子径に湿式粉砕する、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが分散した水性分散液の製造方法。
【0008】
本発明は、水に難溶性のビルディングブロック(building block;反応基質)を水性液中で反応させる方法に応用できることが期待される。すなわち、ビルディングブロックが水に難溶性であるために水性液中で反応させ難いがゆえに有機溶媒中でしか反応させられなかったところ、本発明のようにビルディングブロックをナノサイズ化(例えば平均粒子径1〜750nm)することによって水性液中でも水難溶性のビルディングブロックを反応させうることが期待される。
【0009】
なお、本発明は、水に難溶性の保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを使用するペプチドの合成に関するものであるが、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドをビルディングブロック(building block;反応基質)として使用する反応全般において広く利用でき、そのような態様も本発明に包含しうる。したがって、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが縮合する対象である縮合対象物はアミノ酸及びペプチドに限定されず、縮合反応によって得られる物質はアミノ酸又はペプチド構造を有するものであれば、ペプチドに限定されるものではなく、低分子化合物、タンパク質、その他の高分子化合物などであってもよい。このような縮合反応は、アミノ酸及び/又はペプチドのN末端アミノ基が保護基で保護された平均粒子径1〜750nmの保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの水性分散液中で、縮合対象物に保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを縮合させる方法、と表現でき、本発明はこのような方法を包含しうるものである。なお、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの縮合は、その目的により、縮合対象物のアミノ酸、ペプチドによる修飾などと表現されることもあるが、このような修飾なども保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドによる縮合反応である限り、本発明に包含しうる。
【0010】
したがって、前記の保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを縮合させる方法は、例えば、細胞膜透過性等、特定の受容体に対する高親和性を付与する目的で、機能性ペプチドをウイルスベクターなどのタンパク質の表層にあるアミノ基に導入する際に、機能性ペプチドをナノ粒子の保護ペプチドの形態とし、そのナノ粒子の分散した水性液中で保護ペプチドを前記アミノ基に縮合させる方法、天然化合物、例えばキトサンなどの天然高分子をキャリアーとしてペプチド−キャリアーハイブリッド体を合成する目的で、ペプチドをナノ粒子の保護ペプチドの形態とし、そのナノ粒子の分散した水性液中で保護ペプチドを前記天然化合物のアミノ基に縮合させる方法、アミノ酸構造を有する化合物(天然物が多い)の合成を目的とし、その合成の過程において、アミノ酸をナノ粒子の保護アミノ酸の形態とし、そのナノ粒子の分散した水性液中で保護アミノ酸を所望の縮合対象物のアミノ基に縮合させる方法等を包含しうる。
【0011】
本発明の方法は、アミノ酸及び/又はペプチドのN末端アミノ基が保護基で保護された保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを、目的とするアミノ酸配列に応じて、順次縮合反応させてペプチドを合成する方法、例えばペプチド固相合成方法、ペプチド液相合成方法等において、数次にわたる縮合反応のうちの少なくとも1回の縮合反応が平均粒子径1〜750nmの保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの水性分散液中で行われることを特徴とする。
【0012】
すなわち、本発明の方法では平均粒子径1〜750nmの保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが水性液に分散した水性分散液を縮合反応の反応溶媒として使用する。したがって、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドは水難溶性である。該水性分散液中で水難溶性の保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの多くは溶解せずに分散していると考えられるが、少ないとはいえその一部は溶解しているものと考えられる。本発明者は、この溶解している保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが縮合されると推測しているが、本発明はこの推測により限定されるものではない。
【0013】
本発明の水性分散液は、平均粒子径1〜750nmの保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが水性液に分散した水性分散液であり、N末端アミノ基が保護基で保護された保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが関与する反応、特にペプチド縮合反応に有用である。したがって、本発明の水性分散液は、ペプチド合成用試薬として使用することができる。本発明の水性分散液における保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの平均粒子径は1〜750nm、好ましくは10〜500nm、より好ましくは10〜300nm、より一層好ましくは50〜300nmである。平均粒子径がこれらの範囲にあると、水性液中での粒子の分散が良好となり、その結果、縮合反応の時間が短くなる。さらに、縮合反応完了後に、生成物又は中間生成物と反応液とをろ過により分離すると、未反応の保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドは濾紙を通過するためろ液中に存在するが、このろ液を遠心分離などの適切な固液分離手段に供することによって、未反応の保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを容易に回収及び再利用することができる。
【0014】
なお、水性液は、水、又は水と相溶する非水溶媒と水との混合物であって水が50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占める液体である。非水溶媒は低級アルコール(メタノール、エタノール等)、ペプチド合成において縮合反応に使用される溶媒であって水と相溶する溶媒が包含される。環境負荷を考慮する場合には、非水溶媒を使用しないことが望ましい。本発明の水性分散液における保護アミノ酸及び保護ペプチドの含有量は水分散性を維持する範囲でなるべく高い濃度が好ましいのであるが、通常1〜30重量%、好ましくは5〜20重量%である。含有量がこれらの範囲にあると、粒子の分散性により優れた水性分散液となる。
【0015】
上記平均粒子径の保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドは、既知の粉砕方法により調製されうる。例えば、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを水及び分散剤の存在下で遊星ボールミル、媒体撹拌ミル等の湿式粉砕装置にて所望の平均粒子径に湿式粉砕し、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが分散した水性分散液として調製する方法、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドをジェットミル、遊星ボールミル、媒体撹拌ミル等の乾式粉砕装置にて所望の平均粒子径に乾式粉砕する方法などによって得られる。好ましくは、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを水及び分散剤の存在下で粉砕装置にて1〜750nmの平均粒子径に湿式粉砕する、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが分散した水性分散液として調製する方法である。湿式粉砕において使用される分散剤としては、ポリエチレングリコール等の両親媒性高分子などが例示され1種単独で又は2種以上組み合わせて使用でき、好ましくはポリエチレングリコールである。なお、上記の水性分散液に関する説明は、本発明の水性分散液の製造方法、試薬にも適用されうる。
【0016】
本発明の方法においては、縮合反応には、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを分散させた水性液及び縮合剤が必須である。また、ペプチド固相合成方法においては、生成するペプチドと結合するための固相担体が必須である。一方、ペプチド液相合成方法では、生成するペプチドを保持するための固相担体は利用しないが、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチド以外の試薬(例えば縮合剤、塩基等)を樹脂に保持させた形態で試薬を利用することがあり、このような態様も包含される。
【0017】
使用できる固相担体は特に制限されず、ペプチド固相合成において既知の水不溶性の固相担体を広く使用でき、担体の中には担体と縮合反応の反応点とを連結するリンカーを有しているものもあり、これも使用でき、合成条件に応じて適宜選択できる。固相担体の例としては、スチレン樹脂、アクリルアミド樹脂、ポリエチレングリコール−アクリルアミド複合樹脂、ポリオキシエチレングラフテッドスチレン樹脂などが挙げられるがこれらに限定されない。これらはジビニルベンゼンで架橋されていても良く、また、1種単独又は2種以上組み合わせてもよい。好ましくは、水性液中で膨潤する樹脂、例えばポリエチレングリコールグラフテッド樹脂である。リンカーは既知のリンカーを広く使用できる。リンカーの例としては、クロロメチル、ヒドロキシメチル、ベンズヒドリルアミン、アミノメチル、4-ベンジルオキシベンジルアルコール、4-メチルベンズヒドリルアミン、フェニルアセトアミドメチル、4-ヒドロキシメチルフェニルアセトアミドメチル、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ、2-クロロトリチルクロライド樹脂、4-ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸(HMPA)、4-ヒドロキシメチル安息香酸(HMBA)、2,4-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられるがこれらに限定されない。これらは1種単独でも又は2種以上組み合わせてもよい。
【0018】
本発明において使用される保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドは水難溶性である。なお、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドは反応の前に、後述の活性エステル化剤等によってそのカルボキシル基が活性化処理されてもよい。保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドは市販されているものを利用することもできるし、ペプチド固相合成に供給されるアミノ酸又はペプチドのN末端アミノ基を保護基で保護して保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを製造する方法は既知であり、本発明においては既知の方法で得られる保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドも利用できる。また、アミノ酸及び/又はペプチドにおける他の反応性基も必要に応じて保護することができ、その手法はペプチド合成分野では公知であり、公知の手法を広く使用できる。アミノ酸及び/又はペプチドのアミノ基の保護基としては、たとえば、ベンジルオキシカルボニル(Z)、ターシャリーブトキシカルボニル(Boc)、ターシャリーアミルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、2-クロロベンジルオキシカルボニル(Cl-Z)、2-ブロモベンジルオキシカルボニル(Br-Z)、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタリル、ホルミル、2-ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)などがあげられる。好ましいのはFmoc、Boc、Zである。カルボキシル基の保護基としては、たとえばアルキルエステル(たとえば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2-アダマンチルなどのエステル基)、ベンジルエステル、2-ニトロベンジルエステル、4-メトキシベンジルエステル、4-クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル、フェナシルエステル、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどがあげられる。
【0019】
また、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドにおいて、縮合反応条件下で反応することが望まれないその他の基(反応性側鎖)が存在する場合、この反応性側鎖を適当な保護基で保護することができる。このような保護基もペプチド合成分野では公知であり、本発明ではこのような公知のものも使用できる。セリンの水酸基は、たとえばエステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としてはたとえばアセチル基などの低級アルカノイル基(好ましくは炭素数1〜3のアルカノイル基)、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などがあげられる。またエーテル化に適する基としては、たとえばベンジル基、テトラヒドロピラニル基、ターシャリーブチル基などである。チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、たとえば、ベンジル(Bzl)、2,6-ジクロロベンジル(Cl2-Bzl)、2-ニトロベンジル、Br-Z、ターシャリーブチル(tBu)などがあげられる。ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、パラトルエンスルホニル(Tos)、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル、ジニトロフェニル(DNP)、ベンジルオキシメチル、ターシャリーブトキシメチル(Bum)、Boc、トリチル(Trt)、Fmocなどがあげられる。
【0020】
本発明の固相合成法では、これらの固相担体、必要に応じてリンカーを用い、先ず、目的とするペプチドのC末端のアミノ酸の保護アミノ酸を、必要に応じてリンカーを介して、固相担体に縮合させる。次いで保護アミノ酸の保護基除去処理を施し、現れたN末端アミノ基に目的とするペプチドのC末端から2番目のアミノ酸の保護アミノ酸を縮合させる。これを繰り返して目的とするペプチドのアミノ酸配列を有するペプチド−固相担体を製造し、固相担体分離処理を施してペプチドを単離し、目的とするペプチドを製造する。なお、ここでは保護アミノ酸を使用しているが、保護アミノ酸に代えて保護ペプチドを使用して縮合し、目的とするペプチドを製造することも可能であるし、保護アミノ酸と保護ペプチドを併用すること、例えば保護アミノ酸を縮合し、保護基除去処理した後、保護ペプチドを縮合することも可能であり、本発明はこのような態様も包含する。
【0021】
縮合反応において使用される縮合剤は水分散液中で機能するものであれば特に制限なく利用できる。水溶性の縮合剤としては、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド、その塩酸塩等の水溶性カルボジイミド類、2-(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド)テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TNTU)、スクシイミドテトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリウムクロライド(DMTMM)などが挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。好ましい縮合剤は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド、その塩酸塩、DMTMMである。
【0022】
また、縮合反応では、ペプチド合成において既知の各種の添加剤を使用することもできる。添加剤は水溶性であることが好ましい。添加剤としては、ラセミ化抑制剤、pH調整剤、活性エステル化剤などが挙げられる。添加剤の例としては、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(HONB)、N-ヒドロキシコハク酸イミド(HOSu)、N-ヒドロキシフタルイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、3-ヒドロキシ-4-オキソ-3,4-ジヒドロベンゾトリアジン(HOOBt)などが挙げられ、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。好ましい添加剤は、HONB、pH調整剤である。添加剤はペプチド合成における既知の操作で添加される。
【0023】
pH調整剤は、反応に関与しない塩基であり、通常、無機塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなど)、有機塩基、無機酸(塩酸など)や有機酸などが使用できる。前記反応に関与しない塩基としては、第三級アミン類、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)などのトリアルキルアミン類、N-メチルモルホリン、ピリジンなどの複素環式第三級アミン類などが例示できる。このような塩基の使用量は、通常、ペプチド成分および化合物中のアミノ基の総モル数の1〜5倍程度の範囲から選択できる。好ましいpH調整剤は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)である。
【0024】
縮合反応の反応温度は、ペプチド結合形成反応に使用されうることが知られている範囲から適宜選択され、通常約-20℃〜30℃、好ましくは20〜25℃である。反応液のpHは通常6〜8、好ましくは7〜8である。保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの使用量は、固相担体又は該担体に結合したアミノ酸及び/又はペプチドの反応点、すなわちアミノ基の通常1当量以上、好ましくは3〜4当量である。縮合が不十分な場合(例えばニンヒドリン反応により確認できる)には保護基の脱離を行うことなく再度同じ保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドによる縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸又は未反応ペプチドをアセチル化することができる。
【0025】
縮合反応後、反応液を吸引ろ過等によって除去し、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが結合した固相担体を必要に応じて水、50%含水エタノール等により洗浄する。なお、吸引ろ過後のろ液、すなわち反応液中にナノ粒子となって分散している未反応の保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドは遠心分離の手法などを用いて容易に回収することができる。保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの回収によって、廃液がよりクリーンになるとともに、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの再利用が可能となる。
【0026】
必要に応じて洗浄された、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが結合した固相担体は、次に保護基の除去工程に供される。保護基の除去工程は、ペプチド合成において既知の方法を利用できる。保護基除去剤としては、使用している保護基、固相担体、リンカー等を考慮し、適宜選択すればよい。例えば、Fmocの除去には、ピペリジンを20%v/vで含有するN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液等を使用することができる。なお、環境負荷軽減の観点から、本工程における有機溶媒使用量を低減する場合には、水系の保護基除去剤、たとえば水酸化ナトリウム含有含水エタノール(例;0.1M NaOH含有90%含水エタノール)等を使用することができる。その他の保護基除去剤としては、25%v/v臭化水素酢酸溶液、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)などが挙げられる。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。また、縮合反応に関与すべきでない官能基の保護および保護基、ならびにその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化、反応条件などもまた公知の基あるいは公知の手段から適宜選択しうる。
【0027】
ペプチド固相合成の場合、保護基除去工程によって得られたアミノ酸又はペプチドが結合した固相担体は、目的のペプチドが結合した固相担体が得られるまで、上記の縮合反応や保護基除去工程に繰り返し供される。目的のペプチドが結合した固相担体が得られると、固相担体を分離する工程に供され、該担体は目的のペプチドから分離される。固相担体を分離する工程は、ペプチドにおける縮合反応に関与すべきでない保護基の存在、固相担体の種類、リンカーの種類等を考慮し、ペプチド固相合成において既知の方法を適用すればよい。なお、保護基除去工程の中には、保護基除去と固相担体からのペプチドの分離を同時に発生させる方法があるため、固相担体から目的のペプチドを分離する工程が保護基除去工程と同時に行える場合もある。分離されたペプチドは必要に応じて、常法、例えば、抽出、分配、再沈澱、再結晶、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーにより精製される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、水性液中での縮合反応の時間が短縮されるため、水性液中での縮合反応を包含するペプチド合成に有利である。また、水性液の使用によって非水系溶媒を使用した縮合反応を包含するペプチド固相合成と比較して消費される有機溶媒の量が大きく低減される。特に、縮合反応工程以外の反応において水溶性の試薬を利用すれば全行程を水系で実施することも可能であり、その場合、有機溶媒の消費量は非常に顕著に低減される。さらに、反応液中の未反応の保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを容易に回収及び再利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施例等により、より詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
実施例1:Fmoc保護アミノ酸ナノ粒子が分散した水性分散液の調製
Fmoc保護アミノ酸:Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH(ワタナベケミカル社から購入)(平均粒子径は数μm×10μm程度)。
遊星ボールミル:P-7型(Fritsch社製)
粒子径測定器:LB-500(ホリバ製作所製)
走査型電子顕微鏡:JSM-5300LV(JEOL社製)

Fmoc-Phe-OH 水性分散液の調製
遊星ボールミルの密閉可能な容器(容量40mL)内に、粉砕のためのジルコニア製ビーズ(直径1mm)を80g装入し、さらに、2.0mmol(774.8mg)のFmoc-Phe-OH、400mg(0.1mmol)の分散剤(PEG(平均数分子量4000))及び20gの水を装入した。容器を密閉後、495rpm、室温で4時間粉砕した。粉砕後、ろ過によりジルコニア製ボールを除去することで、20mLのFmoc-Phe-OHの分散及び溶解した水性分散液を得た。得られた水性分散液の分散状況を目視で確認した(図1)。
図1中、Aは購入したFmoc-Phe-OHと分散剤(PEG(平均分子量4000))を水に添加して撹拌した混合液であり、保護アミノ酸が分散せずに分離していた。これに対し、Bの本実施例によりえられたFmoc-Phe-OHナノ粒子含有水性分散液は、保護アミノ酸が分離することなく分散していた。
また、得られた水性分散液中の粒子径を粒子径測定器により動的光散乱法(DLS)にて測定したところ、265±10nmであった。また、得られた水性分散液をスポイトで採取し、自然乾燥により水を乾燥させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、粒子径がナノサイズであることが確認された(図2)。図2中、Aは購入したFmoc-Phe-OHそのものの電子顕微鏡写真を示し、Bは本実施例により得られたFmoc-Phe-OHナノ粒子の電子顕微鏡写真を示す。

Fmoc-Gly-OH 水性分散液の調製
保護アミノ酸を3.0mmol(891.9mg)、PEGを800mg(0.2mmol)使用した以外はFmoc-Phe-OH 水性分散液の調製と同様にしてFmoc-Gly-OHの水性分散液(平均粒子径354±26nm)を調製した。

Fmoc-Leu-OH 水性分散液の調製
PEGを1.2g(0.3mmol)使用した以外はFmoc-Phe-OH 水性分散液の調製と同様にしてFmoc-Leu-OHの水性分散液(平均粒子径265±8nm)を調製した。

Fmoc-Tyr(tBu)-OH 水性分散液の調製
PEGを1.2g(0.3mmol)使用した以外はFmoc-Phe-OH 水性分散液の調製と同様にしてFmoc-Leu-OHの水性分散液(平均粒子径440±20nm)を調製した。
【0031】
実施例2:ジペプチド水中固相合成
次の試薬、材料及び測定装置を使用してジペプチドの水中固相合成を行った。

固相担体:カルボキシル末端にロイシンが結合したポリエチレングリコールグラフテッドポリスチレン樹脂(Leu-PEG-grafted Rink amide resin)(ワタナベケミカル社から購入)
保護アミノ酸及び溶媒:実施例1で得られたFmoc保護アミノ酸水性分散液
縮合剤:水溶性のカルボジイミド(water-soluble carbodiimide(WSCD)(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩))
添加剤:N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(pH調整剤)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(HONB)
保護基除去剤:0.1mol/L NaOHを含有した90%EtOH
アミノ酸分析:Wasters Pico Tagアミノ酸分析機

使用した固相担体は水中でも膨潤し均一に分散するものである。水で膨潤させた固相担体(48mg、Leu-含量12.5μmol)、Fmoc-Phe-OH水性分散液(1.58mL;保護アミノ酸量38μmol)、WSCD(7.3mg;38μmol)、HONB(6.8mg;38μmol)及びDIEA(6.6μl;38μmol)を混合、撹拌し縮合反応させた。反応15分後に、樹脂(固相担体)を水で洗浄した。別途、同様に縮合反応を行い反応30分後に樹脂を水で洗浄した。次いで、保護アミノ酸のFmoc保護基を保護基除去剤で除去した。樹脂を真空乾燥し、6N-HClで加水分解(150℃;1.5hr)した。加水分解物中のPhe及びLeuを定量し、Leuに対するPheの割合から縮合率を算出したところ、反応15分後では68%、反応30分後では約100%であった。したがって、ペプチド合成は30分以内に終了したことが確認された。なお、本実施例は縮合反応を確認することを目的としたため、ペプチドと固相担体の分離は行っていない。これらのことから、水性液を使用したペプチド固相合成としては非常に短時間で合成できることが示された。なお、水溶性保護基であるEsc(2-(エタンスルホニル)エトキシカルボニル基)を使用した保護アミノ酸(Esc-Phe-OH)を4当量使用した水中固相合成では、反応終了まで1時間以上必要であった。また、縮合反応後の反応液中に残った保護アミノ酸のナノ粒子は遠心分離することによって分離することができた。このことから、排水中の未反応保護アミノ酸の含有量を遠心分離によって容易に低減できることが確認された。
【0032】
実施例3:オリゴペプチド固相合成
次の試薬、材料及び測定装置を使用して、内因性オピオイドペプチドとして知られている、アミノ酸5残基からなるロイシンエンケファリンアミド(Leu-enkephalin amide)(Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu-NH2)の水中固相合成を行った。

固相担体:カルボキシル末端にロイシンが結合したポリエチレングリコールグラフテッドポリスチレン樹脂(Leu-PEG-grafted Rink amide resin)
保護アミノ酸及び溶媒:実施例1で得られた保護アミノ酸含有水性分散液
(Fmoc-Leu-OH含有水性分散液、Fmoc-Gly-OH含有水性分散液、Fmoc-Tyr(tBu)-OH含有水性分散液、Fmoc-Phe-OH含有水性分散液)
縮合剤:WSCD
添加剤:N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(pH調整剤)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(HONB)
保護基除去剤:0.1mol/L NaOHを含有した90%EtOH
固相担体切断試薬:トリフルオロ酢酸(TFA)
逆相HPLC:DISOPAKカラムを備えたWatersモデル600。アセトニトリル/0.05%TFA含有水のグラジエント系
アミノ酸分析:Wasters Pico Tagアミノ酸分析機

水中に固相担体を1分間浸漬し、次いで固相担体をろ取し、これを5回繰り返し、固相担体を膨潤させた。水で膨潤させた固相担体(196mg、Leu-含量50μmol)、Fmoc-Leu-OH水性分散液(9.5mL;保護アミノ酸量150μmol)、WSCD(28.6mg;150μmol)、HONB(26.8mg;150μmol)及びDIEA(26μl;150μmol)を混合、撹拌し1時間縮合反応させた。樹脂(固相担体)を水に浸漬して洗浄し(1分間×5回)、次いで50%含水エタノールに浸漬して洗浄した(1分間×2回)。洗浄した樹脂を保護基除去剤に浸漬して(5分間×3回)、保護アミノ酸のFmocを除去した後、50%含水エタノールに浸漬して洗浄した(1分間×2回)。次に、Fmoc-Phe-OH水性分散液、Fmoc-Gly-OH水性分散液、Fmoc-Gly-OH水性分散液、Fmoc-Tyr(tBu)-OH水性分散液の順で、同様にして縮合及び保護基除去を行い、得られたH-Tyr(tBu)-Gly-Gly-Phe-Leu-PEG-grafted Rink amide resinを50%含水エタノールで洗浄後、真空乾燥した。この樹脂の収量は205mgであった。この樹脂をTFA−トリイソプロピルシラン−水(体積比 92-4-4;15mL)で処理し(室温;2hr)、ろ過することによって、樹脂を分離した。TFAを蒸発させ、オイル状物を得た。この残渣を水で溶解し、ジエチルエーテルで洗浄し、凍結乾燥した。この粗精製物をHPLCで精製し、不定形の粉体を得た。収量は22.7mgであり、アミノ基含量から算出される収率は67%であった。アミノ酸分析結果:Tyr0.94、Gly2.00、Phe0.96、Leu1.03。得られたペプチドを逆相HPLCで分析したところ、メインピークが目的ペプチドに由来するものであることが確認できた(図3)。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は保護アミノ酸又は保護ペプチドを利用した分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、分散剤及び遊星ボールミル粉砕前のFmoc-Phe-OHを水に混合及び撹拌した混合液(A)と、遊星ボールミル粉砕後のFmoc-Phe-OHナノ粒子含有水性分散液(B)の写真である。
【図2】図2は、購入したFmoc-Phe-OH試薬の走査型電子顕微鏡写真(A)と遊星ボールミル粉砕後のFmoc-Phe-OHナノ粒子含有水性分散液の水を乾燥させて得られたナノ粒子の走査型電子顕微鏡写真(B)である。Aでは粒子の大きさは数μm×10μm程度である、Bではナノメートルサイズであった。
【図3】図3は、本発明の方法によって製造されたロイシンエンケファリンアミドのHPLC分析図である。横軸は時間(分)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸及び/又はペプチドのN末端アミノ基が保護基で保護された保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを縮合反応させるペプチドの合成方法であって、縮合反応が平均粒子径1〜750nmの保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの水性分散液中で行われることを特徴とするペプチドの合成方法。
【請求項2】
保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの平均粒子径が10〜500nmである請求項1に記載のペプチドの合成方法。
【請求項3】
保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドの水性分散液が、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを水及び分散剤の存在下で粉砕装置にて所望の平均粒子径に湿式粉砕して得られる、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドのナノ粒子が分散した水性液である請求項1又は2に記載のペプチドの合成方法。
【請求項4】
粉砕装置が遊星ボールミルである請求項3に記載のペプチドの合成方法。
【請求項5】
縮合反応において縮合剤が使用され、縮合剤が1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド、その塩酸塩又は4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリウムクロライドである請求項1〜3のいずれかに記載のペプチドの合成方法。
【請求項6】
ペプチドの合成方法がペプチド固相合成法である請求項1〜5のいずれかに記載のペプチドの合成方法。
【請求項7】
ペプチドの合成方法がペプチド液相合成法である請求項1〜5のいずれかに記載のペプチドの合成方法。
【請求項8】
平均粒子径1〜750nmの保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが分散した水性分散液。
【請求項9】
アミノ酸及び/又はペプチドのN末端アミノ基が保護基で保護された保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを縮合反応させるペプチドの合成方法において保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを供給するための試薬であって、平均粒子径1〜750nmの保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが分散した水性分散液を含有することを特徴とするペプチド合成用試薬。
【請求項10】
保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドを水及び分散剤の存在下で粉砕装置にて1〜750nmの平均粒子径に湿式粉砕する、保護アミノ酸及び/又は保護ペプチドが分散した水性分散液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−56577(P2008−56577A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232837(P2006−232837)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(506293236)
【出願人】(593065383)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】