説明

ペプチド構造のライブラリーの構築およびスクリーニング方法

本発明は、薬物スクリーニング適用のためのペプチド構造のライブラリーを製造するための手段を提供し、該ペプチド構造は、人工足場または、該ペプチド構造が由来するタンパク質中のフランキング配列から独立して、その天然コンフォメーションをフォールドするか、または天然コンフォメーションをとることが可能なペプチド構造である。該ライブラリーは、それらが天然に存在するタンパク質構造のレパートリーを代表するように、非常に多様でありうる。該ライブラリーはまた、ソースデータセット中および/または天然に存在する特定構造に向かうバイアスが除去されるように、非冗長でありうるか、または正規化しうる。特に好ましい実施形態では、本発明は、本方法によって製造された30,000個の独立したフォールド構造を提供する。本発明はまた、該ペプチドライブラリーに関する構造データを含むコンピュータ可読媒体およびシステム、ならびに該ライブラリーを提示およびスクリーニングするための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、2006年2月20日出願の豪州特許出願第2006900864号の優先権を主張する。該文献の内容は、その全体が、ここに組み入れられる。
【0002】
発明の属する分野
本発明は、構造ペプチドのライブラリーおよびデータベースならびに同ライブラリーおよびデータベースを製造および/またはスクリーニングするための方法に関する。
【0003】
配列表
本明細書は配列表全体を参照により組み入れる。該配列表は電子ファイルとして2枚の複製CD-ROMで提供され、各CD-ROMは本明細書と同時に提出され、「copy 1」および「copy 2」とラベルされている。各CD-ROMは、2007年2月7日に、マシンフォーマットIBM-PCおよびオペレーティングシステム互換性MS-Windows(登録商標)で作成され、ファイル: 131467 sequence listing.ST25.txtを含有する。該ファイルは2007年2月7日に作成され、サイズは10,134KBである。この配列情報はPatentIn Version 3.3を使用して作成された。各配列は、配列表中で、数字表示<210>とその後ろに記載する配列識別番号(例えば<210>1、<210>2、<210>3、等)によって特定される。配列の長さおよびタイプ(DNA、タンパク質(PRT)、等)、および各ヌクレオチド配列の供給源生物は、それぞれ、数字表示フィールド<211>、<212>および<213>に提供される情報によって示される。配列表中の参照配列は、用語「配列番号」とその後ろに記載する配列識別番号によって規定される(例えば、配列番号1は、配列表中で<400>1として指定される配列を表す)。
【0004】
総論
本明細書中で使用される用語「由来」とは、指定した完全体(integer)が特定の供給源から得られることを示し、必ずしも該供給源から直接得られなくてもよいと解されるものとする。
【0005】
本明細書全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単語「含む(comprise)」、または「comprises」もしくは「comprising」等のバリエーションは、指定のステップもしくは要素もしくは整数またはステップ群もしくは要素群もしくは整数群の包含を意味し、いかなる他のステップもしくは要素もしくは整数または要素群もしくは整数群の排除をも意味しないと理解される。
【0006】
本明細書全体を通して、特に指定しない限り、または文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単一のステップ、物質の組成物(composition of matter)、ステップの一群または物質の組成物の一群への言及は、1および複数(すなわち1以上)の該ステップ、物質の組成物、ステップの群または組成物の群を包含すると解されるものとする。
【0007】
本明細書中に記載の各実施形態は、特に別に指定しない限り、必要な変更を加えて、それぞれおよびすべての他の実施形態に適用されるものとする。
【0008】
本明細書中に記載の発明には、具体的に記載されているバリエーションおよび改変以外のバリエーションおよび改変の余地があることを当業者は認識するであろう。本発明はすべてのそのようなバリエーションおよび改変を含むことが理解されるべきであろう。また、本発明は、本明細書中で言及されるか、または本明細書中に示されるすべてのステップ、特徴、組成物および化合物を、個別にまたは包括的に含み、該ステップまたは特徴の任意のおよびすべての組み合わせまたは任意の2以上の該ステップまたは特徴を含む。
【0009】
本発明は、本明細書中に記載の具体的実施形態によって範囲を限定されないものとし、該具体的実施形態は単に例証のためのものである。機能的に等価な製品、組成物および方法は、明らかに、本明細書中に記載される発明の範囲内である。
【0010】
本発明は、特に別に指定しない限り、分子生物学、微生物学、ウイルス学、組換えDNA技術、液中ペプチド合成、固相ペプチド合成、および免疫学の慣用技術を使用して、過度の実験を行うことなく実施される。そのような手順は、例えば、以下のテキストに記載されている。該テキストは参照により組み入れられる:
(i) J.F. Ramalho Ortigao, 「The Chemistry of Peptide Synthesis」In: Knowledge database of Access to Virtual Laboratory website (Interactiva, Germany);
(ii) Sakakibara, D., Teichman, J., Lien, E. Land Fenichel, R.L. (1976). Biochem. Biophys. Res. Commun. 73 336-342
(iii) Merrifield, R.B. (1963). J. Am. Chem. Soc. 85, 2149-2154.
(iv) Barany, G. and Merrifield, R.B. (1979) in The Peptides (Gross, E. and Meienhofer, J. eds.), vol. 2, pp. 1-284, Academic Press, New York.
(v) Wuensch, E., ed. (1974) Synthese von Peptiden in Houben-Weyls Metoden der Organischen Chemie (Mueler, E., ed.), vol. 15, 4th edn., Parts 1 and 2, Thieme, Stuttgart.
(vi) Bodanszky, M. (1984) Principles of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, Heidelberg.
(vii) Bodanszky, M. & Bodanszky, A. (1984) The Practice of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, Heidelberg.
(viii) Bodanszky, M. (1985) Int. J. Peptide Protein Res. 25, 449-474。
【背景技術】
【0011】
背景
関連技術の説明
生体中の大多数の生物学的プロセスは、タンパク質によって、および特異的リガンド、例えば他のタンパク質、抗原、抗体、核酸、脂質および炭水化物とタンパク質の相互作用によって媒介される。そのような相互作用は正常な生物学的プロセスに関与するだけでなく、タンパク質相互作用は、疾患または障害に関与するプロセスの原因でもある。したがって、タンパク質相互作用は新規治療用化合物を開発するための重要な標的である。
【0012】
好適な治療用化合物を同定するために、製薬産業は、タンパク質と相互作用し、かつ/またはタンパク質相互作用を阻害することが可能な小分子化合物を同定するためのスクリーニング方法に特に注目してきた。被験体への投与に好適な薬物として機能するために、小分子は、高親和性かつ高選択性で標的に結合可能でなければならない。
【0013】
小分子および短いペプチドはタンパク質相互作用を効果的にモジュレートしないことが多い。その理由は、それらが、概して、例えば複雑なタンパク質表面に適合するために必要な形状を有さないか、または比較的特色のない界面には結合しないからである。その結果、小分子および短いペプチドは、概して、多くの標的タンパク質表面に対し、該標的に対するリガンドの結合をモジュレートするのに十分に高いか、または別の様式で該標的タンパク質の活性を作動(agonize)または拮抗(antagonize)するのに十分に高い親和性および特異性で結合することができない。したがって、治療的適用のための、特にタンパク質相互作用等の標的に対する薬物候補(drug lead)のような分子のスクリーニングに関して、高い損耗率(attrition rate)が生じる。
【0014】
一例として、短いランダムペプチドが、化学合成による商業的な、すなわち大規模生産のために十分に小さいにもかかわらず、それらは、概して、標的タンパク質に対して、非常に変動する生物活性をもたらし、それらの標的との相互作用は概して低親和性相互作用である。例えば、HIVプロテアーゼを解離させることが可能なペプチドを同定するためのランダムペプチドライブラリーのスクリーニングでは、所望の活性を示すペプチドは約1 x 10-6 より少なかった(Park and Raines Nat. Biotechnol., 18: 548-550, 2000)。この低い「ヒット」率は、そのようなランダムペプチドが、安定な二次構造および/または三次構造をとることによって標的タンパク質との結合を促進することができないことに起因すると考えられる。
【0015】
新薬候補を同定するための低い「ヒット」率を受けて、製薬産業では、標的タンパク質の活性をモジュレートすることを目的として、タンパク質にリガンドを提示するための合成足場(scaffold)の開発に労力を費やしてきた。しかし、ランダムペプチドライブラリーのそのような制約のせいで、ランダムペプチド配列に基づいて新薬候補を同定するための「ヒット」率を、ペプチドを小分子に対する実行可能な代替物にするレベルまで高めることができていない。例えば、ランダムペプチドは、足場構造、例えばチオレドキシン(「Trx」; Colas et al., Nature, 380: 548-550, 1996)の活性部位ループ内に拘束され、サイクリン依存性キナーゼ2 (Cdk-2)との結合に関して試験されているが、該標的を実際に阻止するTrx拘束ペプチド(Trx-constrained peptide)は2 x 10-5より少なかった。ゆえに、合成足場を提供することが必ずしも「ヒット」率を向上させるわけではない。該産業に利用可能な人工足場のレパートリーが限られているせいで、必然的に、そのようなアプローチを使用して製造できる構造の多様性が限定され、形成された任意の天然構造をマスキングまたは改変しさえすることもありうる。
【0016】
天然タンパク質は重要な構造的特徴を有し、該特徴には、概して機能的に重要なタンパク質「ドメイン」が含まれる。本発明以前は、そのような構造的特徴は、主に、タンパク質間の進化的関係を決定するために、および動的フォールディング経路、すなわち特定のタンパク質がどのように折りたたまれるかを詳細に調べるために利用されてきた。例えば、CATHデータベース(Orengo et al., Structure 5, 1093-1108, 1997)では、構造、配列、および機能的考察に基づくクラス(Class)、アーキテクチャ(Architecture)、トポロジー(Topology)および相同スーパーファミリー(Homologous superfamily)の階層にしたがってタンパク質を分類する。特に、CATHの階層は、3つの基本的な構造的特徴、すなわちクラス、アーキテクチャおよびトポロジーを認めている。タンパク質の「クラス」はCATHの階層中で最も高く、この文脈では、タンパク質の二次構造組成およびパッキング、すなわち主にα-へリックス、主にβ-ストランド、およびα-β(二次構造がタンパク質鎖に沿って互い違いになっている交互α/β、およびαおよびβ領域が主として分離されているα+βが含まれる)への言及である。ゆえに、タンパク質が属する「クラス」は、二次構造の考察に基づく包括的な割当である。タンパク質の「アーキテクチャ」とは、該タンパク質中で連結されている順序と無関係の、類似の二次構造配置を示す群に基づくタンパク質の全体の形状を言う。タンパク質の「トポロジー」とは、三次元での二次構造の相対的関係および配向ならびにそれらが連結されている順序を説明する。タンパク質の「フォールド(fold)」は、CATHの階層では、トポロジーの関数として認識されるが、文献ではこの点が紛らわしい。その理由は、フォールドは特定のアーキテクチャをとることができるからである。例えばOrengo and Thornton, Ann. Rev. Biochem. 74, 867-900, 2005。
【0017】
したがって、本明細書中で使用される用語「フォールド」は、その最も広い意味では、アーキテクチャおよびトポロジーの両態様を含む複数の二次構造のフォールディングによって形成された三次構造を意味すると解される。ここに、用語「サブドメイン」は用語「フォールド」と交換可能に使用される。「フォールド」は、独立して、またはタンパク質の他の部分もしくは他のタンパク質もしくは足場構造とともに形成されうる。
【0018】
実用的観点から、薬物スクリーニング適用に構造データを利用する際には重大な制限が存在する。例えば構造データは、特に、利用可能な膨大な量の配列データと比較された場合に、限られている。このことは、特定の配列注釈を提供するフォールド認識およびスレッドアルゴリズムから本質的に構成されるソースデータを得るための計算方法、例えばPSI-BLASTまたはIMPALA (Muller et al., J. Mol. Biol. 293, 1257-1271, 1999; Buchan et al., Genome Res. 12, 503-514, 2002; J. Mol. Biol. 287, 797-815, 1999)の最近の開発と無関係である。そのような方法は、薬物スクリーニング適用への適用可能性が限定的であることが多い。その理由は、該方法から得られる注釈付き配列の長さが、実用化には長すぎることが多く、単一のフォールドに制限されず、大半の場合、フランキング配列を含有するからである。さらに重要なことに、そのような注釈付き配列データは天然タンパク質の関連以外では構造的検討を示さない。このことは、これらの方法が、主に、タンパク質間の進化的関係を決定するためおよび個別のタンパク質が天然にどのようにフォールドするかを評価するための研究ツールとして開発されたことに部分的に起因する。例えば、本明細書中の表1には、タンパク質ドメインを含むタンパク質のセグメントの説明が含まれる。
【表1】




























【0019】
表1で使用される用語は当業者に自明である。しかし、明確にするために以下に定義を挙げる。
【0020】
「メアンダー(Meander)」は、任意の連続した2個のストランドが隣接し、かつ逆平行である、ベータシートの単純なトポロジーである。
【0021】
「アップ・ダウン(Up-and-down)」は、ヘリカルバンドルまたはフォールドリーフに関する最も単純なトポロジーであり、該トポロジーでは、連続したヘリックスが隣接し、かつ逆平行である; それはベータシートのメアンダートポロジーとほぼ同等である。
【0022】
「クロスオーバー連結(Crossover connection)」は、二次構造を構造上のコアの反対端で連結し、ドメインの表面を横切る。
【0023】
「グリークキー(Greek-key)」は、少数のベータシートストランドに関するトポロジーであり、該トポロジーでは、いくつかのストランド間連結がバレルの末端を横切るか、または、サンドイッチフォールドでは、ベータシート間にある。
【0024】
「ゼリーロール(Jelly-roll)」は、サンドイッチまたはバレルフォールドの両端が2個のストランド間連結によって組み合わされている、グリークキートポロジーの変異体である。
【0025】
「オールアルファ」クラスは、3-、4-、5-、6-またはマルチヘリカルと称されるドメインまたは共通コア中の二次構造数を有する。
【0026】
「バンドル」は、それぞれが同一(バンドル)軸におおよそ沿って配向しているアルファヘリックスのアレイである。それは、ねじれを有するか、左巻き(各ヘリックスがバンドル軸に対して正の角度をなす場合)であるか、または右巻き(各ヘリックスがバンドル軸に対して負の角度をなす場合)でありうる。
【0027】
「フォールドリーフ(Folded leaf)」は、単純なバンドルの形状を有さない、単一の疎水性コアのまわりに巻きつけられたアルファヘリックスのレイヤーである。
【0028】
(ヘアピンの)「アレイ」は、バンドルまたはフォールドリーフとして説明することができないアルファヘリックスの組立体である。
【0029】
オールアルファ構造に関する「クローズ型」、「部分オープン型」および「オープン型」とは、疎水性コアが構成アルファヘリックスによって覆われている程度を説明する。「オープン型」とは、少なくともさらに1個のヘリックスがコアに容易に結合できるスペースがあることを意味する。
【0030】
ベータシートは、「逆平行」(すなわち任意の2個の隣接ストランドにおけるストランド方向が逆平行である)、「平行」(すべてのストランドが互いに平行である)または「混合型」(2個の隣接ストランドの一方に対して平行で、かつ他方に対して逆平行である少なくとも1ストランドが存在する)でありうる。
【0031】
「オールベータ」クラスには、2種の主要なフォールド群: サンドイッチおよびバレルが含まれる。「サンドイッチ」フォールドは2個のベータシートからなり、該ベータシートは通常ねじれていて、そのストランドが整列するようにパッキングする。「バレル」フォールドは単一のベータシートからなり、該ベータシートはねじれ、ほとんどの場合、該ベータシート中の最初のストランドが最後のストランドと水素結合するようにとぐろを巻いている。バレルフォールドの2つの反対側のストランド方向はおおよそ直交している。シートの直交パッキングはサンドイッチフォールドの少数の特殊な場合においても認められる。
【0032】
「バレル構造」は、通常、ベータシートの最初のストランドと最後のストランドの間の主鎖水素結合によって閉じられていて、この場合、それは2つの整数: ベータシート中のストランド数n、およびシート中のストランドがねじれている程度の尺度である、剪断数(shear number) Sによって定義される。
【0033】
「部分オープンバレル」は、ストランドの1つが、2個以上の残基からなるリンカーで連結された2パートに含まれるために、適切に水素結合していないエッジストランドを有する。これらのエッジストランドは、単一であるが分断されたストランドとして処理することができ、有効ストランドおよび剪断数、n*およびS*での分類が可能になる。少数のオープンバレルでは、ベータシートはエッジストランド間のほんの少数の側鎖水素結合によって連結されている。
【0034】
個別のタンパク質の理論解析と対照的に、タンパク質に関する利用可能な構造データをスクリーニング適用に使用することに対する追加の制限は、それらが、主として、多数の冗長配列および配列注釈を含有する偏ったデータセットであることである。例えば、CATHデータベースは、Protein Data Bank (PDB; Berman et al., Nucl. Acids Res. 28, 235-242, 2000)の、タンパク質構造内の、ドメインの階層的分類であり、したがって、PDBを反映する構造データを提供する。例えば、CATHデータベースには、約32のアーキテクチャが記載されているが、それらのアーキテクチャには莫大な量のバイアスが存在する。その理由は、フォールドの約30%およびタンパク質スーパーファミリーの50%が、約4〜5アーキテクチャ、特にαβ-サンドイッチ(2および3レイヤー)、αβ-バレル、β-バレル、α-アップダウン構造内に含まれるからである(Orengo et al., Ann. Rev. Biochem. 74, 867-900, 2005を参照のこと)。タンパク質のアーキテクチャと同様に、公的データベースのフォールド集団には莫大なバイアスが存在し、フォールド群の0.1%未満が非常に多数であり、PDBのすべての配列ファミリーの40%近くを占める(Orengo et al., Ann. Rev. Biochem. 74, 867-900 (2005)を参照のこと)。多数のフォールドはまた、単純な構造モチーフ、例えばαβ-モチーフ、ββ-モチーフ、スプリットβαβ-モチーフの反復のせいで、共通の構造モチーフを共有していると報告されている。これらのバイアスは天然のタンパク質構造の真の分布を必ずしも反映しないかもしれず、実際、現在までに利用可能な情報の大部分が結晶化研究または大規模に研究されている限られたクラスのタンパク質に基づくために生じうる(Ranea et al., J. Mol. Biol. 336, 871-887, 2004)。
【0035】
一方、単に、タンパク質構造および機能決定に適用される進化的制約のせいで、特定のフォールドへ向かう天然のバイアスが実際に存在する可能性が高い。例えば、3レイヤーのαβ-サンドイッチアーキテクチャをとる80種近くの異なるフォールドが分類され、最多数のフォールド群は、突然変異時に、より安定なレギュラーアーキテクチャ(例えばTIMバレルフォールド、αβ-バレル、ロスマンフォールド; 3レイヤー、αβ-サンドイッチ; αβ-プレイト(plait)、2レイヤーαβ-サンドイッチ)をとる(Orengo et al., 同書)。この結論を支持して、最近の統計分析では、より高度に代表されるフォールド、すなわち「スーパーフォールド」は、他のフォールドよりずっと広いレパートリーの一次配列を支持すると示唆される(Shakhnovich et al., J. Mol. Biol. 326, 1-9, 2003)。ゆえに、例えばタンパク質分解による消化産物を使用して天然タンパク質からペプチドライブラリーが製造される(例えばWO2004/008148を参照のこと)と、供給源タンパク質サンプルは一般的な構造に関して必然的に偏り、あまり一般的でない構造が十分に代表されないか、または失われる。
【0036】
一般に、当技術分野において公知の、ペプチドライブラリーを製造するための方法は、概して、配列が由来する供給源生物(群)中のタンパク質の相補物を「代表する」ために多数の配列を提供することを試みている。その際、これらの方法では、上で考察されるように、例えば、より一般的なレギュラーフォールドへ向かう天然のバイアスのせいで、ライブラリーには冗長性が必ず導入される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
したがって、タンパク質フォールド等の構造であって、その天然環境(native context)から単離された場合に、すなわち、それらが由来する完全長タンパク質中の該フォールドに隣接する配列が実質的に除去された場合に、その構造を保つ構造を形成可能なペプチドのライブラリーが当技術分野において必要とされる。そのようなライブラリーの製造は簡単ではない。その理由は、多数のフォールドがタンパク質の他の部分とともにタンパク質中に埋もれていて、その安定性はそれに依存し、すなわち、それらは独立していないからである。さらに、ハイスループットスクリーニングアプローチのための合成ペプチドライブラリーを製造することが実用的観点から明らかに望ましいが、そのようなライブラリーは、容易に合成および提示できるペプチド長の上限を有し、一方、多数の配列注釈はそのような実用的考察が許容するよりずっと長い構造を示す。さらにまた、独特のフォールドが保存されていて、概して一次アミノ酸配列のバリエーションがそのリガンド結合親和性に主に影響するようになっているという仮説に基づいて、そのようなライブラリーが独特のフォールドを別々に提示することが望ましい。しかし、ペプチドライブラリーの合成に容易に適合させることができる独特のフォールドの多量のデータセットは存在せず、突然変異に抵抗することができると考えられるフォールドへ向かう天然のバイアスがある。さらに、1ライブラリーが包括的に配列の天然レパートリーを代表しようとするならば、あまり一般的に使用されない構造を犠牲にして、より一般的に使用されるクラスのフォールドに関して過度に偏ることなく、ライブラリー中の具体的配列の選択において特に適切に判断する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0038】
発明の要旨
本発明は、タンパク質構造(二次構造(すなわちコンフォメーション)、二次構造の組立体、および二次構造間の相互作用によって形成される三次構造(例えばフォールドまたはサブドメイン)が含まれる)は高親和性タンパク質相互作用が生じるために必要かつ十分であり; かつ天然には限られた数の「フォールド」しか存在しないという発明者らによる理解を部分的に前提とする。このことは、保存構造を有するタンパク質の一次アミノ酸配列についての莫大な多様性とは無関係である。
【0039】
特に指定しない限り、または文脈上他の意味に解すべき場合を除き、用語「構造」は、その最も広い関連では、アミノ酸の一次配列と対立するものとして、形状を意味すると解されるものとする。
【0040】
用語「二次構造」は、例えばα-ヘリカル構造またはβ=シート等の、一次アミノ酸配列がとるコンフォメーションを表すことが生化学および生物物理学技術分野の当業者に知られている。
【0041】
本明細書中で使用される用語「組立体(assembly)」とは、指定の完全体(integer)のコレクションまたは複数の指定の完全体であるものとする。したがって、用語「二次構造の組立体」は、複数のコンフォメーションであり、それには、互いにゆるく結びついているコンフォメーションおよび互いに折り重なっているコンフォメーション、すなわちフォールドが含まれる。
【0042】
この関連で「リガンド」とは、特定の二次構造、二次構造の組立体またはフォールドに関する結合親和性を有する分子を意味する。リガンドには、非限定的に、酵素基質、補助因子、受容体、タンパク質-タンパク質相互作用またはDNA-タンパク質相互作用またはRNA-タンパク質相互作用等における結合パートナー、抗体、抗原、アゴニスト、アンタゴニスト、インバースアゴニストが含まれる。リガンドは、核酸(例えば、DNA、mRNA、rRNA、tRNA、RNAi、リボザイム、アンチセンスRNA、ミニザイム(minizyme)、等)、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物または他の有機分子、小分子、金属イオン、等であってよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
今や発明者らは、これらの理解を創薬のためのペプチドライブラリーの新規作成に適用している。該ライブラリーは、前記二次および三次構造を形成するペプチド、例えば合成ペプチド、を含む。本明細書中に記載の構造ライブラリー内に含まれる二次構造(すなわちコンフォメーション)、二次構造の組立体、および三次構造(例えばフォールド)は、概して、それらが由来するタンパク質中のフランキング配列の必要性に依存しないが、それは、それらが、起源であるタンパク質(すなわち「その天然環境」)中の該フランキング配列から単離された場合に、十分な構造を維持する高い見込みを有するという意味においてである。このことは、フォールドするか、または別の完全体と結びついて、二次構造、二次構造の組立体、またはフォールドを生じる一次配列に1種以上の他の配列(例えば、リンカー、タグ、またはタンパク質導入ドメイン)を付加してよいことを条件とする。本明細書中に記載の方法を任意の実施形態にしたがって使用して製造されるライブラリーは、標的分子と結合可能な、したがって目的の生物活性を有するペプチドの同定に有用である。そのようなペプチドは、治療標的を検証するための試薬に加えて、魅力的な治療用および/または診断用化合物である。
【0044】
本発明の方法にしたがって製造されるライブラリーは、成分ペプチドが由来するタンパク質に関して決定された一次配列および/または予測構造の注釈を含む「ソースデータ」に基づく。典型的なソースデータには、例えば、PRINTS、Pfam、SMART、ProDom、InterPro、TIGRFAMs、ADDA、CHOP、ProtoNet、SYSTERS、iProClass、SWISSPROT、COG/KOG等のタンパク質配列リソース、およびCAMPASS (Cambridge University, UK)、CATHデータベース(University College, London, UK)、CE (SDSC, La Jolla, CA, USA)、DHS (University College, London, UK)、ENTREZ/MMDB (NCBI, Bethesda MD, USA)、Structural Classification of Protein Database (SCOP) (Andreeva et al., Nucl. Acid Res. 32:D226-D229, 2004)、またはProtein Data Bank (PDB) (Berman et al., Nucleic Acid Res. 28: 235, 2000)等のタンパク質構造ファミリーリソースが含まれる。そのようなソースデータは、概して、薬物スクリーニングにおける実用的適用に好適な二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを独立して形成可能な特定のアミノ酸配列産物を濃縮し、かつライブラリーの最適な構造多様性が達成されるよう保証するために追加の精密化を必要とすることが理解されるべきであろう。
【0045】
したがって、本発明はペプチドライブラリーを製造するための方法であって、以下のステップを含む方法を提供する:
(i) 二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを独立して形成可能な複数のアミノ酸配列を得るステップ;
(ii) (i)で得られたアミノ酸配列を有するペプチドを製造するステップ; および
(iii) (ii)のペプチドを、該ペプチドが二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成するように提示させるステップ。
【0046】
タンパク質二次構造およびフォールドの決定およびライブラリーの構築に一次アミノ酸配列が関与するにもかかわらず、本発明は、単に、その一次アミノ酸配列によって特徴づけられるペプチドのライブラリーを製造するための方法ではないことが理解されるべきであろう。本発明は、二次構造および/または三次構造の安定な組立体、および特に安定な三次構造を形成する能力によって特徴づけられるペプチドのライブラリーを提供する。本発明にしたがって製造されるライブラリーは、単に一次配列によって特徴づけられるライブラリーより優れた重大な利点を提供する。その理由は、本発明のライブラリーが個別のペプチドをその形状(特定のリガンドに関する親和性の主要決定要因)にしたがってまとめ、その天然環境から独立してこれらの形状を提示するからである。対照的に、一次構造によって特徴づけられるペプチドのライブラリーはそのような親和性特性に関して必然的に選択されるペプチドを含まない。
【0047】
この例では、構造研究または予測方法によって決定されるように、二次構造の組立体および/またはフォールドは独立している可能性がより高く、すなわち組立体またはフォールドは、それが由来するタンパク質の残りの部分と接触している傾向が低い。ゆえに、「二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを独立して形成可能なアミノ酸配列」とは、該配列と同一のタンパク質由来の(すなわちその天然環境における)フランキング配列を必要とせず、かつ、該ペプチドの人工的足場を必要とせずに、平均して、指定の構造を形成する見込みが予測される(すなわち形成する可能性が高い)配列を意味し、それは、そのような構造形成が自律的または誘発的であるかどうかにかかわらない。あるいは、またはさらに、該配列は1種以上のそのような構造を形成することが経験的に試験されていてもよい。そのような独立性の利点は、本明細書中に記載されるように製造されたペプチドライブラリーによって形成される構造が、例えばフォールド時にコンパクトであり、および/またはいくらかの疎水性表面領域が埋もれているおかげで、提示時に安定である高い傾向、すなわち見込みを有することである。好ましい断片は、完全タンパク質構造の環境でその接触が少ないことから予測される高度の独立性を有する。その理由は、そのような断片が、概して、フォールドするか、または折りたたまれたコンフォメーションを保つために、天然タンパク質における他の配列との広範囲にわたる接触を必要としないからである。「独立性」とは、ここでは、特定の構造を形成するために供給源タンパク質の環境を必要としないと解釈されるが、この関連で、該供給源タンパク質と異なる標的タンパク質上で誘発的フォールドを形成できる配列を除外しないものとする。
【0048】
特に好ましい例では、独立してフォールドすることが計算によって予測されるタンパク質の断片は、例えばコンパクトネス、非極性埋没表面積、および独立性の程度から選択される1個以上の基準にしたがって同定され、独立してフォールドする傾向を有する断片が選択される。
【0049】
「コンパクトネス(compactness)」とは、単離状態で決定された場合、すわなち完全タンパク質構造から取り出された場合の、断片の全表面積を意味する。
【0050】
「非極性埋没表面積(non-polar buried surface area)」とは、断片内に埋もれている非極性表面領域の量を意味する。
【0051】
「独立性の程度」とは、断片が有する、タンパク質の残りの部分との接触の程度を意味する。
【0052】
好ましくは、独立してフォールドすることが計算によって予測されるタンパク質の断片は、例えばコンパクトネス、非極性埋没表面積、および独立性の程度から選択される2個または3個の基準にしたがって同定され、独立してフォールドする傾向を有する断片が選択される。
【0053】
より好ましくは、独立してフォールドすることが計算によって予測されるタンパク質の断片は、例えばコンパクトネス、非極性埋没表面積、および独立性の程度の基準にしたがって同定され、独立してフォールドする傾向を有する断片が選択される。
【0054】
好ましくは、アミノ酸配列は二次構造および/またはフォールドを形成可能であり、ペプチドは二次構造および/またはフォールドを形成するように提示される。
【0055】
より好ましくは、アミノ酸配列は二次構造の組立体および/またはフォールドを形成可能であり、ペプチドは二次構造の組立体および/またはフォールドを形成するように提示される。
【0056】
さらにより好ましくは、アミノ酸配列はフォールドを形成可能であり、ペプチドはフォールドを形成するように提示される。
【0057】
特定の構造は自律的に生じるか、または誘発的であってよい。「自律的」とは、構造形成が一次または二次構造とリガンドの相互作用に依存しないか、または外部介入、例えば変性および再生によらないことを意味する。「誘発的」とは、人工足場を用いるhaペプチドの拘束を含まないが、構造形成がリガンドとの相互作用に依存するか、または外部介入、例えば変性および再生によることを意味する。
【0058】
この方法によって製造されるペプチドは、天然タンパク質の連続しない部分の相互作用によって生じる三次構造を模倣する単一アミノ酸鎖を含んでもよいため、得られたライブラリーが三次構造の単鎖ペプチドミメティクスを含むこともまた、本発明の範囲内である。
【0059】
好ましくは、特定の構造を生じさせる能力を有する配列の取得データセットはサイズ選択によって精密化される。より好ましくは、本発明の方法は、好ましくは、(i)の配列をサイズ選択して、独立タンパク質フォールドの平均の長さを有する配列のサブセットを同定する追加のステップを含む。
【0060】
理論または作用様式に制約されることなく、そのようなサイズ選択により、提示を目的とする合成ペプチドの大規模製造に適用できるフォールド配列のデータセットの同定が可能になる。二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成可能な好ましいアミノ酸配列は、長さが100アミノ酸を超えないか、または75アミノ酸を超えないか、または50アミノ酸を超えないか、または40アミノ酸を超えないか、または30アミノ酸を超えない。そのような配列の最小の長さは約5アミノ酸残基であるが、長さが少なくとも約15アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも20アミノ酸残基、さらにより好ましくは少なくとも25アミノ酸残基の配列がそのような構造を形成することができる。特に、例えば複数のリガンドと結合するための、マルチドメインまたは混合ドメインペプチドを製造することが所望である場合、さらに長いペプチドは除外されないものとする。合成および提示の便宜のために、および本明細書中で例証されるように、二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成可能なアミノ酸配列を有するペプチドに関する好ましいサイズクラスは約20アミノ酸残基長〜約30アミノ酸残基長の範囲である。
【0061】
広範囲にわたる異なる配列構造のレパートリーを製造することによって、例えば冗長性を低減し、および/または追加のデータセットの関連配列を同定することによって、および/または突然変異によるアプローチによって、構造的に異なる二次構造および/または二次構造の会合および/またはフォールドを形成可能なペプチドが得られる。その結果、ペプチドライブラリーの多様性が向上し、それによって、ライブラリーのスクリーニング時に、望ましい生物活性を有するペプチドが同定される確率が高くなる。したがって、本発明の方法は、別個の構造を有するアミノ酸配列および/またはペプチドを選択するステップをさらに含むことが好ましい。
【0062】
また、本発明の方法は、冗長配列を同定し、冗長配列を除去または削除し、それによって「非冗長」の、または「正規化」された多数のアミノ酸配列を残すステップをさらに含むことが好ましい。
【0063】
「冗長(redundant)」とは、2個以上の二次および/または三次構造が同一または実質的に同一であること、あるいは、2個以上の一次アミノ酸配列が、同一または実質的に同一の二次および/または三次構造を形成するか、または形成すると予測されるほど十分に関連していることを意味する。
【0064】
この関連で「非冗長(Non-redundant)」とは、限られた数の二次および/または三次構造しか同一または実質的に同一ではないこと、あるいは、限られた数の一次アミノ酸配列しか、同一または実質的に同一の二次および/または三次構造を形成するか、または形成すると予測されるほど十分に相同ではないことを意味する。この関連で「限られた数」とは、ライブラリー中の各配列または各構造の1または2または3または4または5回の出現、好ましくは1または2または3回の出現、より好ましくは1または2回の出現、最も好ましくは単一出現を意味すると解されるものとする。
【0065】
「正規化(normalized)」とは、ライブラリー内に含まれる構造のプールにおいて、出現数にかかわらず、およそ同一の頻度で構造が表れることを意味する。
【0066】
非冗長でかつ正規化されたライブラリーは、使用されたソースデータ中のバイアスおよび/またはフォールドの表れに関する天然のバイアスによって導入された構造ライブラリー中のバイアスを低減するために十分である。一次スクリーニング「ヒット」のその後のプロセシングを容易にするために、ライブラリーは非冗長であることが好ましい。これにより同一または高度に関連した構造を同定するよう選別する必要性が排除されるからである。
【0067】
そのような除去または削除は、二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成可能なアミノ酸配列を得る段階で、あるいはペプチド製造段階で実施することができる。コストを低減するために、本発明の方法の早い段階で冗長配列を除去することが好ましい。
【0068】
一例では、得られた配列のプールから、すなわちソースデータから、または本明細書中に記載されるように製造された独立したフォールドのデータセットから、または本明細書中に記載されるように製造された独立したフォールドのサイズ選択データセットから、冗長配列を除去する計算方法を用いる。この例では、PISCESサーバー(Wang and Dunbrack, Bioinformatics 19, 1589-1591, 2003; Wang and Dunbrack, Nucl. Acids. Res. 33, W94-W98, 2005; Fox Chase Cancer Center, PA, USAから入手可能)を用いて、セット中のいずれの2個のタンパク質も互いに30%を超える同一性を共有しないように配列を除去することができる。PISCESでは、構造アライメントを使用して、配列アライメントおよび配列同一性を決定する。これは、従来の方法より、はるかにずっと正確な、配列冗長タンパク質を除去するための手順である。こうして、多様なタンパク質構造を含むペプチドが得られた後、コンビナトリアル構造ライブラリー、例えばタンパク質フォールドライブラリーを形成するように配置されるか、またはまとめられる。
【0069】
また、本発明の方法は、得られた多数のアミノ酸配列に対して関連する配列を同定し、それらの配列を該多数のアミノ酸配列に加えるステップをさらに含むことが好ましい。
【0070】
好ましくは、関連配列が、元のデータセット中に含まれる配列と異なる確率を最大にするために、および、より好ましくは、元の供給源データベースによって用いられる基準と異なる基準を使用してコンパイルされたデータソースを使用して、独立した、すなわち該多数の配列が元々同定された供給源と異なるデータソースから、関連配列が同定される。このステップを実施することによって、データセットは拡張され、より多様になる。このプロセスを数回反復して実施し、本明細書中で言及されるすべての利用可能なソースデータのセットを理論的に包含し、それによって天然のタンパク質構造の多様性を取り込むことができる。このプロセスステップの別の利点は、それが、任意の特定のデータベースにおける配列および構造の提示の少なさを埋め合わせることである。
【0071】
関連配列の同定は本発明のプロセスの任意の段階で実施することができる。例えば、関連配列は、例えば複数のデータベースから同時にデータを照合することによって、二次構造を形成可能なアミノ酸配列を得る段階で同定することができる。あるいは、サイズ選択にしたがって、あるいは非冗長データセットを使用して、関連配列を同定することができる。二次構造を形成可能なアミノ酸配列を得る段階で拡張するか、あるいは非冗長データセットを使用して拡張することが好ましい。これらの2つの好ましい実施形態のうち、非冗長データセットを使用して関連配列を同定することがより好ましい。その理由は、クエリ用語のサイズが低減されるからである。やはり、コストを低減するために、ペプチド合成前にそのようなステップを実施することが明らかに好ましい。
【0072】
コンピュータを利用した方法を使用して、取得配列に対して高い配列同一性および/または相同性を有する配列またはそのような配列を有するペプチドを発見することができる。好ましくは、クエリ配列に対して高い配列同一性、例えば約30%を超えるか、または約40%を超えるか、または約50%を超えるか、または約60%を超える配列同一性を有する配列を同定および排除するデータベースを利用する。
【0073】
特に好ましい実施形態では、アルゴリズムPSI-BLAST (Altschul et al., Nucl. Acids Res. 25, 3389-3402, 1997)を使用して、UniRef50データベース(すべての公的に入手可能なタンパク質配列についてのUniProtデータベースのサブセット; Bairoch et al., Nucl. Acids Res. 33, D154-D159, 2005)をサーチし、クエリ配列に対してアライメントされる配列を同定および/または単離する。そのような方法は、多様性を約10倍または20倍または30倍または40倍または50倍向上させうる。
【0074】
あるいは、またはさらに、ライブラリーの多様性は、当業者に公知の任意の手段を使用して、二次構造または二次構造の組立体またはフォールドを形成すると予測されるペプチドに突然変異を誘発することによって高められる。「基本」ペプチドの配列に関する各位置に突然変異を含有する合成ペプチドを製造することが好ましい。
【0075】
「基本ペプチド」とは、親和性成熟を含めた突然変異に供されるペプチドを意味する。
【0076】
構造を維持する突然変異、例えばペプチドの各位置での保存的アミノ酸置換が好ましい。そのようなアプローチは全体に満たされ、すなわちペプチド全体におよぶか、または標的化されうる。標的化アプローチの一例では、アラニンスキャニング突然変異誘発を使用して、構造形成に重要な残基を経験的に決定することができ、そして該位置に突然変異を導入することができる。
【0077】
組換えペプチド発現ライブラリー(合成ペプチドのライブラリーと対立するものとして)の多様性を拡張することも可能であり、それは、該ペプチドをコードする核酸に突然変異を導入することによって、例えばペプチドのランダム突然変異誘発によって、該ペプチドをコードする核酸の突然変異誘発によって、例えばランダム突然変異誘発、誤りがちなミスマッチ修復系を有する細胞での発現、誤りがちなポリメラーゼおよび/またはレプリカーゼ、例えばQβ-レプリカーゼの使用、翻訳スリッページ(translational slippage)の誘発、6通りの異なるリーディングフレームでの核酸の発現、等によって可能である。核酸を突然変異させるためのそのような方法は科学文献に記載されている。
【0078】
好ましくは、突然変異によるアプローチ、例えば前節で説明されたアプローチによって、特定のリガンドに関して異なる親和性を有するペプチドが得られ、より好ましくは、1種以上のリガンドに関して、より高い親和性を有する1種以上のペプチドが得られる。この実施形態には、天然に存在する構造を形成可能なペプチドの親和性成熟が含まれ、それによってリガンドに関する該構造の結合親和性が向上または改善し、該リガンドは、該構造の進化の対象となったリガンドと同一または異なるリガンドであってよい。例えば、親和性成熟を実施して、基本ペプチドの天然リガンドの構造を模倣するペプチドまたは小分子アゴニスト、アンタゴニスト、部分アゴニストまたはインバースアゴニストに関するペプチドの親和性を向上させてよい。
【0079】
突然変異によるプロセスおよび関連配列の同定によって、ペプチド構造のデータセットに冗長性が導入または再導入されうるため、本発明は、これらのプロセスの組み合わせ、すなわち突然変異と冗長配列の除去の組み合わせ、および関連配列の同定と冗長配列の除去の組み合わせ、および突然変異と冗長配列の除去および関連配列の特定の組み合わせを明らかに包含する。そのような組み合わせは反復性であってよく、すなわち1回または2回または3回または、非冗長であるが非常に多様なデータセットを得るために必要な回数繰り返してよい。
【0080】
タンパク質断片が二次構造または二次構造の会合またはタンパク質フォールドを形成する能力が決定されたら、本明細書中に記載の手段によって、該構造を生じるアミノ酸配列を決定し、該配列を有するペプチドを製造し(例えば合成または組換え手段によって)、得られたペプチドを提示させる(例えば物理的媒体上の直接提示によって、またはファージディスプレイもしくは組換え発現によって)。
【0081】
例えば、任意の合成または組換え手段によってペプチドを製造し、該ペプチドが二次構造を達成するか、またはそれが天然に形成するフォールドを組立体または形成するために十分な条件に導入するか、またはその条件中で維持する。先の説明から明らかであるように、これは自律的または誘発的であってよく、例えばリガンドをペプチドと接触させるか、または好適な緩衝条件または生理学的条件下でペプチドをインキュベートすることによって行う。
【0082】
好適な提示方法は当業者に自明であり、それには、例えば、合成手段によってペプチドを製造し、好適な条件下でペプチドを維持して、それらが会合またはフォールドするようにするステップが含まれる。そのような合成ペプチドは、固体表面、例えばマイクロアレイ上、または複数の固体表面、例えば複数のビーズ上またはマイクロウェル中に配置してよい。
【0083】
この点において、例えば当技術分野において公知の方法および/または本明細書中に記載の方法を使用して、ペプチドを固体表面上で直接合成するか、または固体表面上に固定してよい。例えば、ペプチドの平行アレイまたはプールを例えば合成によって製造し、例えばロボットテクノロジーを使用してマルチウェルプレートに配置してよい。そのようなアレイは、例えばペプチドのハイスループットスクリーニング(表現型主導スクリーン(phenotype driven screens)を含む)に有用である。
【0084】
あるいは、組換え手段を使用してペプチドを提示させる。例えば、ファージまたは細胞の表面で、またはリボソームディスプレイによって、またはin vitroディスプレイによってペプチドを発現させるか、または細胞または複数の細胞内でペプチドを発現させる。
【0085】
組換え方法によって製造されたペプチドの場合、本発明の方法は、好ましくは、該ペプチドをコード可能な核酸のヌクレオチド配列を決定または同定するステップをさらに含む。当業者はそのようなヌクレオチド配列を決定するための方法を承知している。例えば、ヌクレオチド配列は、例えば米国政府のNational Institutes of HealthのNational Library of MedicineのNational Center for Biotechnology Information (Bethesda, MD, 20894)のデータベース等のデータベースから得られる。あるいは、例えばColorado State Universityから入手可能なReverse Translateソフトウェアを使用して、in silico解析によってアミノ酸配列を逆に翻訳し、好適なヌクレオチド配列を得る。
【0086】
好ましくは、本発明の方法は、該ペプチドをコード可能なヌクレオチド配列を含む核酸を製造または提供し、および/または核酸から該ペプチドを発現させるステップをさらに含む。例えば、本発明の方法は、該ペプチドをコード可能な核酸を含む発現構築物を提供または製造するステップをさらに含む。
【0087】
しかし、本発明の特に好ましい実施形態は、組換えペプチドまたはDNA発現ライブラリーの使用または製造を含まないことが理解されるべきであろう。合成ペプチドライブラリーが特に好ましく、その理由は、それらが比較的容易に製造および維持できるからである。例えば、合成ライブラリーはクローニングおよび/または宿主細胞の製造または維持からなる中間ステップを必要とせず、かつそれらは長期間保存することができる。
【0088】
好ましくは、本発明の方法は、ペプチドまたはそのサブセットが、それらがフォールドして必要なまたは所望の構造を生じるように提示されていることを確認するステップをさらに含む。所望のまたは必要な構造を達成しているペプチドを決定するための好適な方法は当業者に自明であり、および/または本明細書中に記載されているが、経験的手段が明らかに好ましい。例えば、熱変性アッセイまたは円偏光二色性を使用して、ライブラリー中で提示されたペプチドのサンプルをアッセイすることができる。あるいは、またはさらに、提示されたペプチドを、好適なレポーター分子で標識された天然の該構造のリガンドと接触させ、該リガンドと該ペプチドの結合を決定することができる。
【0089】
必要なまたは所望の二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを有するペプチドの組み合わせを含むライブラリーを製造することによって、本発明はまた、比較的低い構造冗長性を有するペプチドライブラリーの製造を容易にする。
【0090】
一例では、本発明は、比較的低い構造冗長性を有するペプチドライブラリーを製造するための方法であって、以下のステップを含む方法を提供する:
(i) 二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを独立して形成可能な複数のアミノ酸配列を得るステップ;
(ii) (i)の複数のアミノ酸配列から冗長構造を同定し、冗長構造を形成可能な冗長配列を除去または削除して、非冗長の複数のアミノ酸配列を残すステップ;
(iii) (ii)の非冗長の複数のアミノ酸配列を有するペプチドを製造するステップ; および
(iv) (iii)のペプチドを、該ペプチドが二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成するように提示させるステップ。
【0091】
この実施形態にしたがって製造される非冗長ライブラリーの非冗長性、すなわち「個別性(distinctness)」とは、構造が同一の二次構造の組立体またはフォールドの反復ではないことを意味する。好ましくは、非冗長、すなわち「個別」構造は、二次構造の組立体またはフォールドのコンパクトネス、および/または二次構造の組立体またはフォールドの表面積、および/またはフォールドの疎水性表面積、および/または独立性の程度にしたがって選択される。より好ましくは、非冗長構造は前記属性の少なくとも1つが異なり、さらにより好ましくは前記属性の少なくとも2つが異なり、さらにより好ましくは3つの属性が異なり、最も好ましい実施形態では、4つすべての属性が異なる。
【0092】
非冗長、すなわち「個別」構造が許される程度の類似性を有してよいことが理解されるべきであろう。また、自律的に生じる構造が、例えばリガンド結合によって誘発される必要がある構造と異なることは明らかに許容されうる。その理由は、そのような差異がわずかな区別を示すからである。そのような非冗長、すなわち「個別」構造の他の許容しうる類似性には、例えば、二次構造の組立体またはフォールドを構成する二次構造のタイプ/クラス、および/または二次構造の組立体またはフォールドが結合する対象のリガンド、および/またはリガンドに関する二次構造の組立体またはフォールドの結合親和性および/または解離定数、および/またはその化学修飾、例えば、1種以上の標識および/またはレポーター分子および/またはタグおよび/またはタンパク質導入ドメインおよび/またはD-アミノ酸および/またはリン酸化部分および/またはグリコシル化部分、例えば糖の組み込みが含まれる。例えば、α-ヘリックスおよび/またはβ-シートは、種々の個別の二次構造の組立体またはフォールドで存在してよい。同様に、同一のリガンドは、異なる二次構造の組立体またはフォールドと、異なる親和性で結合しうる。もっと正確に言えば、二次構造は、例えばタンパク質ドメイン中のターンのサイズまたはヘリックスもしくはシートの長さ等のささいな特徴が変動しうる。化学修飾、例えばD-アミノ酸、アミノ酸のリン酸化またはグリコシル化の組み込みもまた、二次構造を改変しうる。そのような構造のバリエーションは、タンパク質ドメインが標的分子と相互作用する親和性または特異性をコントロールしうる。
【0093】
この実施形態にしたがって製造されるペプチドライブラリーにおける冗長性の程度は低く、それは、当然、親和性成熟のため等に、該ライブラリーを後に突然変異誘発に付さない限りである。特定のリガンドに関する異なる親和性の、多数の密接に関連する配列および類似構造を得るための該後のプロセスは当業者に理解される。好ましくは、一次ペプチドライブラリー(すなわち後の突然変異または親和性成熟を行わない)の冗長性の程度は、該ライブラリー中に同一の二次構造の組立体またはフォールドを形成可能なペプチドが約5個しか存在しない程度である。より好ましくは、一次ペプチドライブラリー(すなわち後の突然変異または親和性成熟を行わない)の冗長性の程度は、該ライブラリー中に同一の二次構造の組立体またはフォールドを形成可能なペプチドが4または5個しか存在しない程度である。さらにより好ましくは、一次ペプチドライブラリー(すなわち後の突然変異または親和性成熟を行わない)の冗長性の程度は、該ライブラリー中に同一の二次構造の組立体またはフォールドを形成可能なペプチドが3個しか存在しない程度である。さらにより好ましくは、一次ペプチドライブラリー(すなわち後の突然変異または親和性成熟を行わない)の冗長性の程度は、該ライブラリー中に同一の二次構造の組立体またはフォールドを形成可能なペプチドが2個しか存在しない程度である。最も特に好ましい実施形態では、一次ペプチドライブラリー(すなわち後の突然変異または親和性成熟を行わない)の冗長性の程度は、該ライブラリー中に同一の二次構造の組立体またはフォールドを形成可能なペプチドが1個しか存在しない程度である。
【0094】
好ましい実施形態では、該方法は、例えばPISCESを用いる等の計算による方法を使用して、非冗長、すなわち「個別」構造を決定するステップを含む。あるいは、またはさらに、そのような非冗長配列を、例えばSCOPまたはPDBを使用する等のin silicoのマニュアルサーチによって同定する。
【0095】
別の例では、本発明は、低い構造冗長性を有するペプチドライブラリーを製造するための方法であって、以下のステップを含む方法を提供する:
(i) 独立の二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成可能な複数のアミノ酸配列を得るステップ;
(ii) (i)で得られたアミノ酸配列を有するペプチドを製造するステップ;
(iii) (ii)で製造されたペプチドから冗長配列を同定し、冗長配列を有するペプチドを除去または削除して、非冗長の複数のアミノ酸配列を残すステップ; および
(iv) (iii)のペプチドを、該ペプチドが二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成するように提示させるステップ。
【0096】
この実施形態にしたがって製造される非冗長ライブラリーの非冗長性、すなわち「個別性」とは、該配列が、提示されたペプチドが、例えばそのコンパクトネス、表面積、疎水性表面積および独立性に関して、上記の個別構造を形成することを保証するほど十分に異なることを意味する。好ましくは、該配列は、一次アミノ酸配列のレベルで、せいぜい約60%同一、より好ましくはせいぜい約50%同一、さらにより好ましくはせいぜい約50%同一またはせいぜい約40%同一である。特に好ましい実施形態では、アミノ酸配列は、提示されたペプチドライブラリーにおける非冗長構造を保証するよう、せいぜい約30%同一である。標準配列アライメントおよび比較ツールをこの目的で利用することができる。
【0097】
非冗長、すなわち「個別」配列は、上で考察される許される程度の構造類似性を生じさせる許される程度の配列類似性を有してよいことが理解されるべきであろう。該構造類似性には、例えば、1種以上の標識および/またはレポーター分子および/またはタグおよび/またはタンパク質導入ドメインおよび/またはD-アミノ酸および/またはリン酸化部分および/またはグリコシル化部分、例えば糖の組み込みが含まれる。
【0098】
本明細書中に記載の非冗長ライブラリーを製造するための他の実施形態と同様に、この実施形態にしたがって製造されるペプチドライブラリーにおける冗長性の程度は低く、それは、親和性成熟のため等に、該ライブラリーが後に突然変異誘発に付されない限りである。好ましくは、一次ペプチドライブラリー(すなわち後の突然変異または親和性成熟を行わない)の冗長性の程度は、該ライブラリー中に、約30%を超えて同一の一次アミノ酸配列を有するペプチドが約2個または約3個しか存在しない程度である。これには、同一構造を形成する関連配列であって、一方の配列が該構造を自律的に形成し、他方の配列が該構造を形成するために誘発を必要とする関連配列に関する許容が含まれるが、後の突然変異および/または親和性成熟によって生じる配列は許容されない。
【0099】
一例では、計算による方法を使用して、取得配列に対して高い配列同一性および/または相同性を有する配列またはそのような配列を有するペプチドを発見する。好ましくは、クエリ配列に対して高い配列同一性、例えば30%を超えるか、または40%を超えるか、または50%を超えるか、または60%を超える配列同一性/類似性を有する配列を同定および排除するデータベースをサーチする。
【0100】
さらにより好ましい実施形態では、本発明は、ペプチドライブラリーを製造するための方法であって、以下のステップを含む方法を提供する:
(i) 天然環境での含有元のタンパク質の他の部分から独立してフォールディング可能な複数のアミノ酸配列を同定するステップ;
(ii) (i)の配列をサイズ選択して、独立したタンパク質フォールドの平均長を有する配列のサブセットを同定するステップ;
(iii) (ii)で選択された配列から冗長配列を同定し、冗長配列を除去または削除して、それによって非冗長の複数のアミノ酸配列を残すステップ;
(iv) (iii)の非冗長の複数のアミノ酸配列からペプチドを製造するステップ; および
(v) (iv)のペプチドを、該ペプチドが二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成するように提示させるステップ。
【0101】
好ましくは、提示されたペプチドは、例えば、溶液中で、またはその標的(群)と結合すると、構造的フォールドを形成する。
【0102】
本明細書中に記載の他の実施形態と同様に、ペプチドを提示する前またはその後に、非冗長の複数のアミノ酸配列または取得アミノ酸配列から製造されるペプチドの多様性を高めることは全面的に許容される。
【0103】
さらにより好ましい実施形態では、本発明は、ペプチドライブラリーを製造するための方法であって、以下のステップを含む方法を提供する:
(i) 天然環境での含有元のタンパク質の他の部分から独立してフォールディング可能な複数のアミノ酸配列を同定するステップ;
(ii) (i)の配列をサイズ選択して、独立したタンパク質フォールドの平均長を有する配列のサブセットを同定するステップ;
(iii) (ii)で選択された配列から冗長配列を同定し、冗長配列を除去または削除して、非冗長の複数のアミノ酸配列を残すステップ;
(iv) (iii)の非冗長の複数のアミノ酸配列の関連配列を同定し、(iii)の非冗長の複数のアミノ酸配列に該配列を加えるステップを含むプロセスによって配列の多様なプールを製造するステップ;
(v) (iv)の配列の多様なプールからペプチドを製造するステップ; および
(vi) (v)のペプチドを、該ペプチドが二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成するように提示させるステップ。
【0104】
好ましくは、提示されたペプチドは、例えば、溶液中で、またはその標的(群)と結合すると、構造的フォールドを形成する。
【0105】
好ましくは、冗長配列の同定および排除ならびに配列の多様なプールの製造は、それぞれ、計算による方法を使用して、およびデータベースサーチによって実施される。両段階では、(iii)で冗長配列の構成を決定するため、および(iv)で関連配列をサーチするためにパーセンテージ制限(percentage limit)を適用する。これらの制限が同一であることが不可欠であるわけではなく、かつ各段階のそのような制限が経験的に決定されるべきであろうことは当業者に理解される。例証される実施形態では、冗長配列を同定および除去するために30%のパーセンテージ制限が適用され、かつ関連配列の同定に50%のパーセンテージ制限が適用された。好都合には、冗長性の決定および関連性の決定に、約60%を超えない配列同一性を使用して、任意の他の配列に対して60%より高い配列同一性を有する配列がライブラリー中に存在しないようにすべきであろう。好ましくは、冗長性の決定および関連性の決定に、約50%を超えない配列同一性を使用して、任意の他の配列に対して50%より高い配列同一性を有する配列がライブラリー中に存在しないようにする。より好ましくは、冗長性の決定および関連性の決定に、約40%を超えない配列同一性を使用して、任意の他の配列に対して40%より高い配列同一性を有する配列がライブラリー中に存在しないようにすべきであろう。さらにより好ましくは、冗長性の決定および関連性の決定に、約30%を超えない配列同一性を使用して、任意の他の配列に対して30%より高い配列同一性を有する配列がライブラリー中に存在しないようにすべきであろう。当業者に公知であるように、ステップ(iii)および(iv)の反復によってペプチドライブラリーにおけるカットオフ値が得られ、該値は、両ステップに適用される2つのレベルのうちの低い方である。
【0106】
別の実施形態では、該方法は、例えば販売またはスクリーニング目的の人または団体に、任意の実施形態にしたがって本明細書中に記載されるように製造された二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドのアミノ酸配列を提供するステップをさらに含む。
【0107】
本発明は、独立したフォールドを形成可能な複数の非冗長アミノ酸配列または、例えばアミノ酸コンテンツもしくは組成、pI、またはその組み合わせに基づいて選択される該複数の非冗長アミノ酸配列のサブセットを含むデータセットの、薬物スクリーニング適用における使用を明らかに包含する。
【0108】
したがって、本発明はまた、スクリーニング適用で使用するためのコンピュータ可読媒体であって、独立したフォールドを形成可能な非冗長アミノ酸配列または、例えばアミノ酸コンテンツもしくは組成、pI、またはその組み合わせに基づいて選択される該複数の非冗長アミノ酸配列のサブセットのデータベースを含むコンピュータ可読媒体を提供する。
【0109】
好ましくは、該データベースの複数の配列中の各配列は、平均して、タンパク質フォールドの長さに対応する。例えば、該複数の配列中の各配列は、約50アミノ酸残基を超える長さ、より好ましくは約40アミノ酸残基を超える長さ、さらにより好ましくは約30アミノ酸残基を超える長さを含みうる。特に好ましい実施形態では、該データセットは、配列番号1〜30000または、例えばアミノ酸コンテンツ、アミノ酸組成、pI、または免疫原性に基づいて選択されるそのサブセットを含む。
【0110】
複数の配列から配列のサブセットを選択することは、特定の適用、例えば内因性または外因性膜構造、架橋構造、等のサーチに特に有用であり、配列データから、または当業者に公知の標準的アルゴリズムを使用して、容易に達成可能である。例えば、配列のサブセットを選択するために好ましいアミノ酸コンテンツは、プロリン、システイン、アルギニン、リシン、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、トリプトファン、チロシン、等の存在である。プロリン残基は構造を崩壊させるため、プロリンが存在しないこともまた好ましい。配列のサブセットを選択するために好ましいアミノ酸組成には、イオウ含有、疎水性、親水性、荷電、または極性アミノ酸のパーセンテージが含まれる。
【0111】
データベースは、各部分が性質の異なる情報を含む複数の部分に分けることができ、例えばある部分は構造データに関する部分であり、別の部分は配列に関する情報を保存するための部分である。データベースは追加の情報を含有してもよい。該追加の情報は、例えば、構造が天然に結合するリガンドである。
【0112】
本発明のデータベースは、フラットファイルデータベースまたはリレーショナルデータベースまたはオブジェクト指向データベースでありうる。該データベースは、外部ユーザーがアクセスできない内部データベース、すなわち私的データベースでありうる。そして典型的には、企業によってファイヤーウォールの背後に維持される。あるいは、該データベースは、外部データベース、すなわち内部データベースの外側に位置するおかげで外部ユーザーがアクセスできるデータベースでありうる。そして典型的には、内部データベースとは異なる団体によって維持される。
【0113】
多数の外部公的生物学的配列データベース、特に本明細書中で言及する化学物質ライブラリーおよび/または低精密化タンパク質構造データソースが利用可能であり、現在の発明とともに使用することができる。
【0114】
別の例では、該データベースは、ユーザーが新規情報を付け加えるために改変できる情報の集団を含む。該情報の集団は、典型的に、データベース内に含まれ、現在の発明の方法を使用して同定することができる。
【0115】
本発明はまた、スクリーニング適用に使用するためのコンピュータシステムであって、独立したフォールドを形成可能な非冗長アミノ酸配列または、例えばアミノ酸コンテンツもしくは組成、pI、またはその組み合わせに基づいて選択される該複数の非冗長アミノ酸配列のサブセットのデータベースを含むコンピュータ可読媒体および、例えばデータベースに問い合わせ、データベースクエリの結果を表示するために、ユーザーがタンパク質構造データおよび/またはリガンド構造データを入力することを可能にするユーザーインターフェースを含むコンピュータシステムを提供する。該インターフェースはまた、ユーザーが情報を入力する権限を有する、データベース中の1つ以上のデータフィールドの集団を許容しうる。
【0116】
該インターフェースは、例えば一連のメニュー、ダイアログボックス、および/または選択ボタンを使用して、入力および選択が施されるグラフィックユーザーインターフェースでありうる。該インターフェースは、典型的に、メインメニューで始まる一連のスクリーンを通じてユーザーを導く。ユーザーインターフェースには、追加情報(他の外部または内部データベース由来の情報が含まれる)にアクセスするためのリンクが含まれうる。
【0117】
入力データを処理し、かつデータベースクエリの結果を表示する本発明のコンピュータシステムは、典型的に、例えばコンピュータ利用可能な媒体上で具現化されたコンピュータ読み取り可能なプログラムコードを含み、かつプロセシングユニットに連結された記憶装置(memory function)中に存在するコンピュータプログラム等のコンピュータプログラムを実行するプロセシングユニットを含む。記憶装置はROMまたはRAMでありうる。該コンピュータプログラムは、典型的に、プロセシングユニットによって読まれ、実行される。該コンピュータ読み取り可能なプログラムコードは、データベースに保存された複数のデータファイルに関係している。
【0118】
例えば、該コンピュータプログラムはまた、ユーザーがタンパク質の構造および/または配列データを入力することを可能にし、入力されたクエリ情報に一致するデータを突き止め、入力されたクエリに一致するデータを表示することが可能なユーザーインターフェースを提供するためのコンピュータ読み取り可能なプログラムコードを含みうる。
【0119】
入力されたクエリ情報に一致するデータは、典型的に、上記データベースに問い合わせることによって突き止められる。
【0120】
別の例では、該コンピュータシステムおよびコンピュータプログラムを使用して、タンパク質構造データを精密化するため等に、本発明の方法を実施する。
【0121】
本発明のコンピュータシステムは、スタンドアローンコンピュータ、通常のネットワークシステム(クライアント/サーバー環境および1個以上のデータベースサーバーが含まれる)、および/または携帯デバイスでありうる。いくつかの通常のネットワークシステム(ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)が含まれる)が当技術分野において公知である。さらに、クライアント/サーバー環境、データベースサーバー、およびネットワークは、技術文献、営業用文献、および特許文献で十分に解説されている。例えば、データベースサーバーは、オペレーティングシステム、例えばUNIX(登録商標)上で動作して、リレーショナルデータベース管理システム、ワールドワイドウェブアプリケーション、およびワールドワイドウェブサーバーを作動させることができる。コンピュータシステムが携帯デバイスである場合、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)または別のタイプの携帯デバイスであってよく、それらのうち多数のデバイスが公知である。
【0122】
本発明はまた、独立したフォールドを形成可能な複数の非冗長アミノ酸配列または、例えばアミノ酸コンテンツもしくは組成、pI、またはその組み合わせに基づいて選択される該複数の非冗長アミノ酸配列のサブセットを含むペプチドライブラリーを提供する。
【0123】
好ましくは、該ライブラリーの複数の配列中の各配列は、平均して、タンパク質フォールドの長さに対応する。例えば、該複数の配列中の各配列は、約50アミノ酸残基を超える長さ、より好ましくは約40アミノ酸残基を超える長さ、さらにより好ましくは約30アミノ酸残基を超える長さを含みうる。
【0124】
特に好ましい実施形態では、該ライブラリーは、配列番号1〜30000を含む配列を有する複数のペプチドまたは、例えばアミノ酸コンテンツ、アミノ酸組成、pI、または免疫原性に基づいて選択されるそのサブセットを含む。
【0125】
本発明はまた、任意の実施形態にしたがって本明細書中に記載の方法によって製造されたペプチドライブラリーを提供する。特に好ましい実施形態では、該ペプチドライブラリーは合成ペプチドライブラリーである。
【0126】
本発明はまた、自身に直接または間接的に結合している複数のペプチドから本質的に構成されるか、またはそれらを有する固体支持体を含む、薬物スクリーニングのためのハイスループットシステムを提供し、その場合、該複数のペプチドは、独立したフォールドを形成可能な非冗長アミノ酸配列または、例えばアミノ酸コンテンツまたは組成、pIまたはその組み合わせに基づいて選択される該複数の非冗長アミノ酸配列のサブセットを含む。好ましくは、該ハイスループットシステムは、天然のフォールド構造の多様性を代表するために十分な配列を含む。該ペプチドは、例えばアミノ酸コンテンツ(content)または組成、pI、またはその組み合わせに基づいて、サブセットに配置してよい。ハイスループットシステムに含まれるアレイ化ペプチドが本発明の方法の中間ステップによって得られることは前記説明から自明である。使用にあたって、本発明のハイスループットシステムは、タンパク質構造、特にフォールド構造の1種以上のリガンドを同定するための薬物スクリーニングに使用される。好ましくは、ペプチドライブラリーまたはそのサブセットを例えばスライドガラスまたはビーズ等の固体表面に固定する。
【0127】
あるいは、該ペプチドライブラリーを、例えば細胞またはウイルス粒子の表面に提示する。例えば、該ペプチドライブラリーはファージディスプレイライブラリーである。追加の好適なライブラリーには、細胞内または細胞集団内、例えば酵母細胞集団内で発現されるペプチドのライブラリーが含まれる。
【0128】
本発明のライブラリーは、例えば標的分子と結合し、かつ/または標的相互作用を阻害するペプチド等の、所望の生物活性を有するペプチドを同定するためのスクリーニングに好適である。一例では、本発明は、以下のステップを含むプロセスをさらに提供する:
(i) 本明細書中に記載の任意の実施形態にしたがってペプチドライブラリーを製造するための方法を実施するステップ; および
(ii) そのように製造されたペプチドライブラリーをスクリーニングするステップ。
【0129】
別の例では、本発明は、以下のステップを含むプロセスをさらに提供する:
(i) 本明細書中に記載の任意の実施形態にしたがって製造されたペプチドライブラリーを得るステップ; および
(ii) ペプチドライブラリーをスクリーニングするステップ。
【0130】
これらの実施形態は、スクリーニング手順の1回以上の反復を実施するステップを明らかに包含し、例えば、ペプチドライブラリーまたは発現ライブラリーを用いる第二ラウンドのスクリーニングであって、該ライブラリーのメンバーが、同定されたペプチドと関連した構造を有するペプチドを含むか、または発現するスクリーニングを実施するステップを包含する。そのような「パニング」は、一次スクリーンで同定されたペプチドと比較して、より高い親和性またはより低い親和性で標的と結合するか、または一次スクリーンで同定されたペプチドと比較して改変された生物活性を有するペプチドを同定するために有用である。
【0131】
当業者はまた、ペプチドライブラリーをスクリーニングするための好適な方法を承知しており、該方法は、例えば、アフィニティー精製またはN-ハイブリッドスクリーニング、FRET、BRET、タンパク質断片相補アッセイ、蛍光偏光アッセイ、時間分解捕捉アッセイ、合成ペプチドのアレイのプロービング(probing)である。
【0132】
好ましくは、これらのプロセスの結果、さらに、スクリーニング済みペプチドライブラリーからペプチドが同定され、より好ましくは、その後単離される。そのような実施形態では、本発明は、明らかに、そのような同定および/または単離産物におよぶ。
【0133】
本発明のライブラリーを利用するためのこれらのプロセスは、ペプチドの二次構造を決定するステップを含んでもよい。あるいは、またはさらに、同定したペプチドのアミノ酸配列が決定される。あるいは、またはさらに、同定したペプチドが、例えば組換えまたは合成手段によって、合成される。あるいは、またはさらに、同定したペプチドが突然変異または親和性成熟に付される。
【0134】
別の例では、該プロセスは、同定したペプチドによって形成される構造を模倣する化学物質、例えば小分子を同定するステップをさらに含む。例えば、そのような小分子は臨床試験のための推定の薬物候補である。小分子の構造を予測し、かつ/または所望の構造を有する小分子を同定するための方法は本明細書中に記載され、かつ/または当技術分野において公知であり、例えばQASRである。
【0135】
本発明は、以下のステップを含むプロセスをさらに提供する:
(i) 本明細書中に記載の任意の実施形態にしたがってペプチドライブラリーを製造するための方法を実施するステップ;
(ii) そのように製造されたペプチドライブラリーをスクリーニングして、所望の構造を有するペプチドを同定するステップ; および
(iii) 場合により、ペプチドまたはペプチドの構造を、例えば紙形式、機械読み取り可能な形式、またはコンピュータ読み取り可能な形式等で、人に提供するステップ。
【0136】
好ましい実施形態では、該ペプチドまたはペプチドの構造は、例えばその単離のために使用されたスクリーンによって決定される、その用途に関する表示とともに提供される。
【0137】
別の例では、このプロセスは、例えばその単離のために使用されたスクリーンによって決定される、該ペプチドの二次構造を有する1種以上の化学物質を同定するステップおよび、好ましくは、該ペプチドと同一の活性を有する1種以上の化学物質を同定するステップをさらに含む。
【0138】
好ましい実施形態の詳細な説明
以下の非限定的な実施例に関して本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0139】
実施例1
タンパク質フォールドの非冗長データセットの同定
タンパク質構造のソースデータ
タンパク質フォールドの、その天然環境における、すなわちそれらが見出されるタンパク質中での構造を含む多数のデータベースが当技術分野において公知である。
【0140】
そのようなデータベースの一例は、Structural Classification of Protein database (SCOP)であり、それはMedical Research Council Laboratory of Molecular Biologyから利用可能であり、かつ/またはMurzin et al., J. Mol. Biol. 247, 536-540, 1995によって最初に報告されている。SCOPデータベースの2005年7月にリリースされたバージョン1.69は、天然環境における約945のタンパク質フォールドのアミノ酸配列を含む。
【0141】
あるいは、2006年2月14日時点で、Protein Data Bank (PDB)は、天然環境における約700のタンパク質フォールドのアミノ酸配列を含む。PDB内に含まれるアミノ酸配列は、例えばResearch Collaboratory for Structural Bioinformatics, NJ, USAから入手可能である。PDBはまた、Berman et al., Nucleic Acids Research, 28: 235-242, 2000に記載されている。
【0142】
クラス、アーキテクチャ、トポロジー、相同スーパーファミリー(CATH)データベースバージョン2.6.0 (2005年4月リリース)は、天然環境における多数の個別タンパク質フォールドのアミノ酸配列を含み、トータルで約40,000のフォールドを含み、すなわち冗長を含む。CATHデータベースから得られる情報には、University College London, Department of Biochemistry and Molecular Biology, London UKからアクセスすることができる。CATHデータベースはまた、Orengo et al., Structure. 5: 1093-1108, 1997および/またはPearl et al., Nucleic Acids Research. 33: D247-D251, 2005に記載されている。
【0143】
Fold classification based on Structure-Structure alignment of Proteins (FSSP)データベースもまた、天然環境におけるタンパク質フォールドのアミノ酸配列を提供する。FSSPデータベースはEuropean Bioinformatics Instituteから利用可能である。
【0144】
あるいは、またはさらに、タンパク質フォールドの構造または他の構造はin silicoの方法を使用して予測される。該方法は、例えば上記方法またはスレッド化(Jones, Curr. Opin. Struct. Biol. 7:377-87, 1997; Sippl et al., Structure 4:15-19, 1996)、「プロファイル分析」(Bowie et al., Science, 253:164-70, 1991; Gribskov et al., Methods Enzymol. 183:146-59, 1990; Gribskov et al., Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 84:4355-58, 1989)、および「進化的関連」等である。
【0145】
例えば、アミノ酸配列の慣用のスレッド化を使用して、該アミノ酸配列を含むペプチドまたはタンパク質の三次元構造を予測する。典型的に、スレッド化は、配列ならびに局所変数、例えば構造および溶媒露出を組み込む評価関数を使用することによって潜在的な構造鋳型のライブラリーに対して配列をスレッド化(または比較)することによってタンパク質のフォールドまたは他の構造を割り当てるプロセスである(Rost et al. 270: 471-480, 1997; Xu and Xu Proteins: Structure, Function, and Genetics 40: 343-354, 2000); およびPanchenko et al. J. Mol. Biol. 296: 1319-1331, 2000)。例えば、スレッド化プロセスは、アミノ酸配列の構造およびクエリ配列の各残基に関する溶媒到達性の予測から出発する。得られた予測構造の一次元(1D)プロファイルを公知の三次元構造のライブラリーの各メンバー中にスレッド化する。動的計画法を使用して各配列-構造ペアに関する最適スレッド化を得る。概して最良の配列-構造ペアは、クエリ配列に関する予測三次元構造を構成する。
【0146】
あるいは、特定のアミノ酸配列を含むペプチドの構造を決定または予測することによってタンパク質フォールドまたは他の構造のアミノ酸配列を決定する。特定のアミノ酸配列を含むペプチドの構造を予測するための方法は当技術分野において公知であり、それには、例えば米国特許出願第20020150906号に記載の方法、または例えばMODELLER (Sali and Blundell, J. Mol. Biol. 234, 779-815, 1993)等のコンピュータプログラムまたはアルゴリズムの使用が含まれる。これらの技術は、ペプチドの配列を、あらかじめ特徴付けされた構造を有するタンパク質フォールドまたは他の構造の配列とアライメントすることに依存する。そのようなアライメントアルゴリズムは当技術分野において公知であり、例えばNCBIのBLAST等のソフトウェアパッケージによってアクセスできる。そして、あらかじめ特徴付けされたタンパク質フォールドまたは他の構造中のアライメント済み配列またはサブシークエンスに対応する構造情報に基づいて、クエリペプチドの構造情報、すなわち三次元構造を予測する。
【0147】
独立した構造の取得
計算による方法を使用して、任意の配列が、独立したフォールドを構成する可能性を予測する。
【0148】
例えば、Tsai et al., Proc. Natl Acad. Sci, (USA) 97, 12038-12043 (2000)によって開発された、タンパク質フォールディングの動態を研究するためのアルゴリズムを用いる。Tsaiらは、天然タンパク質構造を革新的に詳細に調べて、その構造を明らかにするための手順を必要としたため、タンパク質を切断して構築ブロックにし、すべての構築ブロック候補の相対的コンフォメーション安定性を測定することによって、断片サイズに依存しないタンパク質ドメインの階層を得ることに興味を示した。使用された基準では、Tsaiらは、疎水性がタンパク質フォールディングの主要な推進力であると考えた。
【0149】
本発明の特定の例では、タンパク質を疎水性フォールディング単位に「切断」することによって、計算によって独立してフォールドすると予測されるタンパク質の断片を予測する。該単位は、すなわち、例えばコンパクトネス、非極性埋没表面積、および天然にタンパク質の他の部分と結びついている傾向を含む属性に関して正のスコアを達成するタンパク質の単一セグメントである。コンパクトネスとは、完全タンパク質構造から取り出された場合のペプチド断片の全表面積を評価する。非極性埋没表面積とは、断片内に埋もれている非極性表面領域の量を評価する。タンパク質の他の部分と結びついている傾向は、該断片が有する、天然環境におけるタンパク質の残りの部分との接触の程度を反映し、それは、予測フォールドが、その天然環境から単離された場合に、すなわちペプチドとして発現された場合に、少なくともいくらかのフォールド安定性を有する可能性と高度に関連している。好ましくは、この傾向は主要な属性であり、適宜重視される。その理由は、この関連での目的が独立性を決定することであるからである。予測フォールドは、好ましくは、フォールド時にコンパクトであり、いくらかの疎水性表面領域を埋没させ、天然環境の完全タンパク質構造の関連で少ない接触しか有さず、それによって、フォールドするために天然タンパク質の残りの部分または異種足場(scaffold)との広範囲にわたる接触を必要とする可能性が低いものであるべきであろう。Protein Data Bankのタンパク質に対してタンパク質フォールドを同定するためのこの好ましいアプローチを実行して、独立してフォールドすると予測される各タンパク質中の各セグメントに関する残基数およびスコアを含有する約45,000タンパク質のそれぞれに関してデータファイルを得る。初期データセット中のこれらの約45,000タンパク質のうち、約17,500タンパク質は、正の断片フォールディングスコアを有する30アミノ酸残基以下の長さの少なくとも1セグメントを含有すると予測される。
【0150】
アミノ酸配列および/または構造中の冗長の低減
前記説明から当業者に自明であるように、本発明の好ましいペプチドライブラリーは、好ましくは、低減された構造冗長性を有する。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、アミノ酸配列が同一でないにもかかわらず構造が同一であるペプチドが、存在しないか、または限られた量しか存在しないライブラリーを製造することが好ましい。
【0151】
多数の計算による方法のいずれかの1つを使用して、データセットから冗長アミノ酸配列を同定および除去する。そのような計算による方法では、1種以上のデータベースからタンパク質フォールドまたは他の構造のアミノ酸配列を選択し、該配列をデータセット中の他の配列と比較し、冗長配列を除去する。
【0152】
特に好ましい例では、前節で言及される、正の断片フォールディングスコアを有する30アミノ酸残基以下の長さの少なくとも1セグメントを含有すると予測される約17,500タンパク質の多くが、実際に、類似または同一の配列を含んでいた。このデータセット中の冗長性を除去するために、PISCESサーバーを用いて、該セット中のいずれの2個のタンパク質も互いに30%を超える同一性を共有しないように配列を除去した。PISCESでは、構造アライメントを使用して、配列アライメントおよび配列同一性を決定する。これは、PISCESが開発される前に報告されている方法より、はるかにずっと正確な、配列冗長タンパク質を除去するための手順である。PISCESソフトウェアを利用することによって、30アミノ酸残基以下の長さで、かつ正の断片フォールディングスコアを有する、トータルで2,011配列を含む非冗長データセットを同定した。ゆえに、約45,000タンパク質の初期データセットから、約2,000配列のフォールドに低減された。このことは、初期データセット中の5%未満のタンパク質配列が個別のタンパク質フォールドを含んでいたことを意味する。
【0153】
タンパク質フォールドデータセットの多様性の向上
一実施形態では、データセット中のアミノ酸配列多様性を向上させてペプチドライブラリーの複雑さを改善する。この目的で標準突然変異アプローチを適用することができるが、多様性の向上を達成するために用いられるアプローチは、ペプチドを合成によって製造しようとするか、または発現ライブラリー中で組換えペプチドとして製造しようとするかに応じて異なってよい。
【0154】
合成ペプチドのライブラリーでは、多様なアミノ酸配列を作成し、そして標準ペプチド合成によって合成ペプチドを製造することが好ましい。対照的に、組換え発現ライブラリーの多様性を向上させるためには、多様なアミノ酸配列のセットをコードする核酸を部位特異的またはランダム突然変異誘発アプローチによって突然変異させることが必要である。
【0155】
例えば、複数のペプチドフォールドのアミノ酸配列をin silicoでプローブとして使用して、タンパク質配列の公的データベースから関連配列を同定し、該関連配列をタンパク質フォールドのデータセットに加えることができる。したがって、アライメントによって、多様なタンパク質フォールドを形成可能な複数のアミノ酸配列が得られる。
【0156】
この例では、発明者らは、PSI-BLASTを使用して、30アミノ酸残基以下の長さで、かつ正の断片フォールディングスコアを有する、トータルで2,011配列を含む非冗長データセットとして前節で言及されたタンパク質フォールドの2,011配列に対して相同性を有するUniRef50データベース中のタンパク質を同定した。UniRef50データベースは、すべての公的に入手可能なタンパク質配列からなるUniProtデータベースのサブセットであり、該セット中のいずれの2個のタンパク質も任意の他の配列と50%を超える配列同一性を有さず、すなわちそれが非冗長データベースであるようになっている。これらのPSI-BLASTサーチから、発明者らは、上記のように、クエリの独立にフォールドするセグメントに対してアライメントされた領域を同定し、それらの配列をその天然環境から単離した。相同配列がタンパク質のよく保存されている領域由来である可能性を低減するために、互いに50%未満の同一性しか有さないように相同体のサブセットを選択した。2,011フォールドのそれぞれに関して最大20までの断片を選択した。この手順の結果、23,548の非冗長配列が得られた。
【0157】
互いに50%未満の同一性しか有さない相同体のサブセットを選択するための代替法として、2,011配列のデータセットにすべての相同配列を単に加え、そして1回以上反復してPISCESを実施して該データセットから冗長性を除去することも可能である。例えば、上記のように30%カットオフ値でPISCESを使用すると、互いに50%未満の同一性しか有さなかった相同体を選択するよりストリンジェントな選択が達成され、結果として、より小さいデータセットが得られる。
【0158】
あるいは、PISCESを、互いに50%未満の同一性しか有さない相同体の選択と組み合わせることができる。
【0159】
多数の小さい、天然に存在するタンパク質は他のタンパク質に対する結合特性を有する可能性が高く、かつ多数のそのようなタンパク質は、酵素インヒビター、タンパク質ホルモン、または大きい複合体の小さい構成要素であるため、そのようなタンパク質から冗長性を除去して、タンパク質フォールドの望ましい非冗長データセットを達成することが実際に必要でありうる。例えば、本発明者らは、Uniref50データベース中の10〜30アミノ酸の長さを有する6,480タンパク質を同定し、Uniref50中の、例えばXと指定される、未定または非標準アミノ酸を有するタンパク質を除去した。各ペプチドのアミノ酸コンテンツを算出し、25%を超えるペプチドの長さをカバーする1アミノ酸タイプを有するペプチドをさらに除去した。この手順の結果、6,452の追加のタンパク質フォールドが得られ、そして該フォールドを上で言及される23,548の非冗長配列とまとめ、それによって配列番号1〜30000に記載の30,000配列を得た。
【0160】
ペプチドを核酸から発現させるために前記手順を使用してもよく、多様なタンパク質フォールドをコードする核酸を合成し、組換えタンパク質を発現させるための慣行の方法によって発現させる。しかし、このアプローチは、以下の段落で説明するように、小さい核酸セットを製造およびクローニングし、そして突然変異誘発によって該核酸の多様性を向上させるより厄介である可能性が高い。
【0161】
例えば、突然変異誘発PCRを使用して、例えば(i) マンガンの存在下でPCR反応を実施し; かつ/または(ii) ヌクレオチドの誤取り込みを生じさせるために十分な濃度のdNTPの存在下でPCRを実施することによって、核酸を増幅してよい。PCRを使用してランダム突然変異を誘発する方法は当技術分野において公知であり、例えばDieffenbach (ed) and Dveksler (ed) (In: PCR Primer: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratories, NY, 1995)に記載されている。さらにまた、例えばDiversify PCR Random Mutagenesis Kit (Clontech)またはGeneMorph Random Mutagenesis Kit (Stratagene)等の突然変異誘発PCRに使用するための市販キットを入手可能である。
【0162】
例えば、PCR反応は、少なくとも約200μMのマンガンまたはその塩、より好ましくは少なくとも約300μMのマンガンまたはその塩、またはさらにより好ましくは少なくとも約500μMまたは少なくとも約600μMのマンガンまたはその塩の存在下で実施する。そのような濃度のマンガンイオンまたはマンガン塩は、増幅核酸の1000 塩基対(bp)あたり約2突然変異〜1000 bpにつき約10突然変異を誘発する(Leung et al Technique 1, 11-15, 1989)。
【0163】
あるいは、核酸を突然変異させることが可能な宿主細胞内に核酸を導入することによって、核酸を突然変異させる。そのような宿主細胞は、例えば1種以上の組換えまたはDNA修復酵素等の1種以上の酵素が欠損していて、それによって突然変異の割合が非突然変異細胞より約5,000〜10,000倍高い割合に高められている。核酸の突然変異に特に有用な菌株は、ミスマッチ修復経路の構成要素を改変または不活性化する対立遺伝子を有する。そのような対立遺伝子の例には、mutY、mutM、mutD、mutT、mutA、mutCおよびmutSからなる群から選択される対立遺伝子が含まれる。ミスマッチ修復経路の構成要素を改変または不活性化する対立遺伝子を有する、例えばXL-1Red、XL-mutSおよびXL-mutS-Kanr細菌細胞(Stratagene)等の細菌細胞は当技術分野において公知である。
【実施例2】
【0164】
実施例2
フォールドまたは他の構造を形成可能なペプチドの製造
ペプチド合成
好ましくは、合成手段または方法を使用してペプチドを製造する。例えば、固相、液相、またはペプチド縮合の公知技術、またはその任意の組み合わせを使用して合成ペプチドを製造する。該ペプチドは天然および/または非天然アミノ酸を含みうる。ペプチド合成に使用されるアミノ酸は、Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154, 1963の元の固相手順の脱保護、中和、カップリングおよび洗浄プロトコルを用いる標準Boc (Nα-アミノ保護Nα-t-ブチルオキシカルボニル)アミノ酸樹脂、またはCarpino and Han, J. Org. Chem., 37:3403-3409, 1972に記載の塩基不安定性Nα-アミノ保護9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸であってよい。両FmocおよびBoc Nα-アミノ保護アミノ酸は、例えばFluka、Bachem、Advanced Chemtech、Sigma、Cambridge Research Biochemical、Bachem、またはPeninsula Labs等の種々の市販供給元から入手することができる。さらにまた、ホスホアミノ酸またはグリコールアミノ酸(glycol-amino aicds)を使用してリン酸化合成ポリペプチドを製造してもよい。糖ペプチドおよび/またはホスホルペプチドを製造するための方法は当業者に自明であり、かつ/またはFmoc Solid Phase Peptide Synthesis: A Practical Approach (Chan and White Eds.) December, 16, 1999, Oxford University Pressに記載されている。
【0165】
一般に、化学合成法は、成長中のペプチド鎖に対する1個以上のアミノ酸の逐次付加を含む。通常、第一のアミノ酸のアミノまたはカルボキシル基を好適な保護基によって保護する。そして、保護または誘導体化されたアミノ酸を不活性固体支持体に取りつけるか、または、アミド結合の形成を可能にする条件下で、好適に保護された相補的(アミノまたはカルボキシル)基を有する該配列中の次のアミノ酸を付加することによって溶液中で利用することができる。そして新たに付加されたアミノ酸残基から保護基を除去し、そして次のアミノ酸(好適に保護されている)を付加し、それが続く。所望のアミノ酸を適切な順序で連結した後、任意の残存保護基(および任意の固体支持体(固相合成技術を使用する場合))を逐次または同時除去して、最終ペプチドにする。あるいは、ペプチドを固体支持体上に保持して、例えばペプチドのアレイを製造する。この一般的手順の単純な修飾によって、例えば保護されたトリペプチドを、適切に保護されたジペプチドとカップリングして脱保護後にペンタペプチドを形成させることによって、成長中の鎖に一度に2個以上のアミノ酸を付加することが可能である。例えば、固相ペプチド合成技術に関しては、J. M. Stewart and J. D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis (Pierce Chemical Co., Rockford, IL 1984)およびG. Barany and R. B. Merrifield, The Peptides : Analysis, Synthesis, Biology, editors E. Gross and J. Meienhofer, Vol. 2, (Academic Press, New York, 1980), pp. 3-254; および古典的溶液合成に関しては、M. Bodansky, Principles of Peptide Synthesis, (Springer-Verlag, Berlin 1984)およびE. Gross and J. Meienhofer, Eds. , The Peptides : Analysis. Synthesis. Biology, Vol.1を参照のこと。これらの方法はペプチドの合成に好適である。
【0166】
典型的な保護基には、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)ベンジルオキシカルボニル(Cbz); p-トルエンスルホニル(Tx); 2,4-ジニトロフェニル; ベンジル(Bzl); ビフェニルイソプロピルオキシカルボキシ-カルボニル、t-アミルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、o-ブロモベンジルオキシカルボニル、シクロヘキシル、イソプロピル、アセチル、o-ニトロフェニルスルホニル等が含まれる。
【0167】
典型的な固体支持体は架橋ポリマーの支持体である。これらには、ジビニルベンゼン架橋スチレンベースのポリマー、例えばジビニルベンゼン-ヒドロキシメチルスチレンコポリマー、ジビニルベンゼン-クロロメチルスチレンコポリマーおよびジビニルベンゼン-ベンズヒドリルアミノポリスチレンコポリマーが含まれうる。
【0168】
長いペプチドの効率的製造を増強するための代替の合成方法論を使用してペプチドを製造することもでき、該方法には、マイクロ波によって可能な合成、ペプチジル結合(あるいは他の共有結合、例えばシステイン残基の酸化によってジスルフィド結合を形成させる共有結合またはチオエステル結合の形成)での短いペプチド配列のタンパク質ライゲーションが含まれる。
【0169】
例えば同時複数ペプチド合成の方法(例えばHoughten Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 5131-5135, 1985または米国特許第4,631,211号に記載されている)等の代替のペプチド合成方法は当業者に自明である。
【0170】
本明細書中の説明に基づいて当業者に明らかであるように、ペプチドは、D-アミノ酸、D-およびL-アミノ酸の組み合わせ、および特殊な特性を有する種々の非天然アミノ酸(例えばα-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、およびNα-メチルアミノ酸、等)を含んでよい。合成アミノ酸には、リシンに代わるオルニチン、フェニルアラニンに代わるフルオロフェニルアラニン、およびロイシンまたはイソロイシンに代わるノルロイシンが含まれる。そのようなペプチドを合成するための方法は前記内容に基づいて当業者に明らかである。
【0171】
ペプチドアナログ
別の実施形態では、該ライブラリーは、1種以上のペプチドアナログおよび/またはペプチド誘導体を含む。この点において、該ライブラリーは、もっぱらペプチドアナログまたはペプチド誘導体またはペプチドアナログおよびペプチドの混合物; ペプチド誘導体およびペプチドの混合物; またはペプチドアナログ、ペプチド誘導体およびペプチドの混合物で構成されていてよい。
【0172】
本明細書中で使用される用語「アナログ」とは、1個以上の天然に存在するアミノ酸および/または天然に存在しないアミノ酸を含むように改変されたペプチドを意味すると解されるものとする。例えば、用語「アナログ」は、フォールドまたは他の構造を形成可能で、かつ、基本ペプチドと比較して、1個以上の保存的アミノ酸変化を含むペプチドを包含する。用語「アナログ」はまた、例えば1個以上のD-アミノ酸を含むペプチドを包含する。例えば、そのようなアナログは、低減された免疫原性および/またはプロテアーゼ抵抗性の特性を有する。
【0173】
本明細書中で使用される用語「誘導体」とは、フォールドまたは他の構造を形成して、ある構造または三次構造を生じさせることが可能なペプチドから誘導体化されたペプチド、例えば該ペプチドの断片またはプロセシングされた形式を意味すると解されるものとする。用語「誘導体」はまた、該ペプチドを含む融合タンパク質を包含する。例えば、融合タンパク質は、例えばビオチン等の標識、またはエピトープ、例えばFLAGエピトープまたはV5エピトープまたはHAエピトープを含む。そのようなタグは、例えば融合タンパク質を精製するために有用である。
【0174】
好適なペプチドアナログは1個以上の保存的アミノ酸置換を含む。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されている置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野において定義されていて、それには、塩基性側鎖(例えばリシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、.ベータ.-分岐側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。当業者は、以下の置換が、構造を維持するために許容しうる保存的置換であることを十分に承知している: (i) アルギニン、リシンおよびヒスチジンが関与する置換; (ii) アラニン、グリシンおよびセリンが関与する置換; および(iii) フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンが関与する置換。
【0175】
本明細書中の任意の実施形態に記載のペプチドのアナログは、ペプチド構造の1個以上のアミノ酸が、元のペプチドの特性が維持されるように、相同アミノ酸で置換されているペプチドを含むものとする。好ましくは保存的アミノ酸置換は1個以上のアミノ酸残基で施される。
【0176】
タンパク質に対する相互作用性生物学的機能の付与に関するヒドロパシーアミノ酸指標の重要性は当技術分野において一般に理解されている(Kyte & Doolittle, J. Mol. Biol. 157, 105-132, 1982)。特定のアミノ酸を、類似のヒドロパシー指標またはスコアを有する他のアミノ酸の代わりに用いてよく、類似の生物学的活性、例えばフォールドまたは他の構造を形成して、ある構造および/または三次構造を形成させる能力を依然として保持することが知られている。アミノ酸のヒドロパシー指標はまた、機能的に等価な分子を生じさせる保存的置換を決定する際に考慮してよい。各アミノ酸は、その疎水性および電荷特性に基づいて、以下のようにヒドロパシー指標を割り当てられている: イソロイシン(+4.5); バリン(+4.2); ロイシン(+3.8); フェニルアラニン(+2.8); システイン/シスチン(+2.5); メチオニン(+1.9); アラニン(+1.8); グリシン(-0.4); スレオニン(-0.7); セリン(-0.8); トリプトファン(-0.9); チロシン(-1.3); プロリン(-1.6); ヒスチジン(-3.2); グルタミン酸(-3.5); グルタミン(-3.5); アスパラギン酸(-3.5); アスパラギン(-3.5); リシン(-3.9); およびアルギニン(-4.5)。ヒドロパシー指標に基づいて変化を施す際、ヒドロパシー指標が+/- 0.2以内のアミノ酸の置換が好ましい。より好ましくは、該置換には、+/- 0.1以内、より好ましくは約+/- 0.05以内のヒドロパシー指標を有するアミノ酸が関与する。
【0177】
また、類似のアミノ酸の置換が、親水性に基づいて効果的に施されることが当技術分野において理解される。米国特許第4,554,101号に詳説されるように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている: アルギニン(+3.0); リシン(+3.0); アスパラギン酸(+3.0 +/- 0.1); グルタミン酸(+3.0 +/- 0.1); セリン(+0.3); アスパラギン(+0.2); グルタミン(+0.2); グリシン(0); スレオニン(-0.4); プロリン(-0.5 +/- 0.1); アラニン(-0.5); ヒスチジン(-0.5); システイン(-1.0); メチオニン(-1.3); バリン(-1.5); ロイシン(-1.8); イソロイシン(-1.8); チロシン(-2.3); フェニルアラニン(-2.5); トリプトファン(-3.4)。類似の親水性値に基づいて変化を施す際、互いに約+/- 0.2以内、より好ましくは約+/- 0.1以内、さらにより好ましくは約+/- 0.05以内の親水性値を有するアミノ酸を置換することが好ましい。
【0178】
また、他の立体的に類似の化合物を組み立てて該ペプチド構造の重要な部分を模倣することが意図される。ペプチドミメティクスと称することができるそのような化合物を、本発明のペプチドと同一の様式で使用してよく、ゆえにそれもまた、本発明のペプチドのアナログである。そのようなアナログの作成は、当業者に公知のモデリングおよびケミカルデザインの技術によって達成することができる。すべてのそのような立体的に類似の抗菌性ペプチドアナログは本発明の範囲内に入ることが理解される。
【0179】
修飾ペプチドの「等価性」を決定するための別の方法には機能的アプローチが関与する。例えば本明細書中に記載の任意のスクリーニング方法を使用して、例えば、所定のペプチドアナログを、フォールドまたは他の構造を形成して、ある構造および/または三次構造を生じさせるその能力に関して試験または分析する。
【0180】
本発明のペプチドの好ましいアナログは、1個以上の天然に存在しないアミノ酸またはアミノ酸アナログを含む。例えば、本発明の抗菌性ペプチドは、1個以上の天然に存在する、遺伝子によってコードされないL-アミノ酸、合成L-アミノ酸またはアミノ酸のD-エナンチオマーを含んでよい。例えば、該ペプチドはD-アミノ酸のみを含む。より具体的には、該アナログは、以下の残基からなる群から選択される1個以上の残基を含んでよい: ヒドロキシプロリン、β-アラニン、2,3-ジアミノプロピオン酸、α-アミノイソ酪酸、N-メチルグリシン(サルコシン)、オルニチン、シトルリン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ノルロイシン、ナフチルアラニン、ピリジルアラニン(pyridylananine) 3-ベンゾチエニルアラニン4-クロロフェニルアラニン、2-フルオロフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、4-フルオロフェニルアラニン、ペニシラミン、1,2,3,4-テトラヒドロ-チック イソキノリン-3-カルボン酸 β-2-チエニルアラニン、メチオニンスルホキシド、ホモアルギニン、N-アセチルリシン、2,4-ジアミノ酪酸、ρ-アミノフェニルアラニン、N-メチルバリン、ホモシステイン、ホモセリン、ε-アミノヘキサン酸、δ-アミノ吉草酸、2,3-ジアミノ酪酸およびその混合物。
【0181】
遺伝子によってコードされず、かつ本発明の抗菌性ペプチドのアナログ中に存在しうるか、または該ペプチド中のアミノ酸の代わりに使用できる通常遭遇するアミノ酸には、非限定的に、β-アラニン(β-Ala)および他のオメガ-アミノ酸、例えば3-アミノプロピオン酸(Dap)、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dpr)、4-アミノ酪酸等; α-アミノイソ酪酸(Aib); ε-アミノヘキサン酸(Aha); δ-アミノ吉草酸(Ava); メチルグリシン(MeGly); オルニチン(omithine)(Orn); シトルリン(Cit); t-ブチルアラニン(t-BuA); t-ブチルグリシン(t-BuG); N-メチルイソロイシン(MeIle); フェニルグリシン(Phg); シクロヘキシルアラニン(Cha); ノルロイシン(Nle); 2-ナフチルアラニン(2-Nal); 4-クロロフェニルアラニン(Phe(4-Cl)); 2-フルオロフェニルアラニン(Phe(2-F)); 3-フルオロフェニルアラニン(Phe(3-F)); 4-フルオロフェニルアラニン(Phe(4-F)); ペニシラミン(Pen); 1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic); .ベータ.-2-チエニルアラニン(Thi); メチオニンスルホキシド(MSO); ホモアルギニン(hArg); N-アセチルリシン(AcLys); 2,3-ジアミノ酪酸(Dab); 2,3-ジアミノ酪酸(Dbu); p-アミノフェニルアラニン(Phe(pNH2)); N-メチルバリン(MeVal); ホモシステイン(hCys)およびホモセリン(hSer)が含まれる。
【0182】
本明細書中に記載のペプチドおよびペプチドアナログの作成に有用な他のアミノ酸残基は、例えばFasman, 1989, CRC Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology, CRC Press, Inc., および該文献中で引用される参考文献に見出すことができる。
【0183】
本発明は、本明細書中に記載のペプチドのアイソスターをさらに包含する。本明細書中で使用される用語「アイソスター」には、第一の構造の立体的コンフォメーションが第二の構造に特異的な結合部位に適合するので、第二の化学構造の代わりに使用できる化学構造が含まれるものとする。該用語には、特に、当業者に公知のペプチド主鎖の修飾(すなわちアミド結合ミメティクス)が含まれる。そのような修飾には、アミド窒素、α-炭素、アミドカルボニルの修飾、アミド結合の完全置換、伸長、欠失または主鎖の架橋が含まれる。いくつかのペプチド主鎖の修飾は公知であり、それには、ψ[CH2S]、ψ[CH2NH]、ψ[CSNH2]、ψ[NHCO]、ψ[COCH2]、およびψ[(E)または(Z) CH=CH]が含まれる。上で使用される命名法では、ψはアミド結合の不存在を示す。アミド基に取って代わる構造は括弧内に指定される。
【0184】
他の修飾には、例えばN-アルキル(またはアリール)置換(ψ[CONR])、またはラクタムおよび他の環状構造を構築するための主鎖架橋が含まれる。本発明のモジュレーター化合物の他の誘導体には、C末端ヒドロキシメチル誘導体、O-修飾誘導体(例えばC末端ヒドロキシメチルベンジルエーテル)、N-末端修飾誘導体、例えばアルキルアミドおよびヒドラジド等の置換アミドが含まれる。
【0185】
一実施形態では、該ペプチドアナログはレトロペプチドアナログである(Goodman et al., Accounts of Chemical Research, 12:1-7, 1979)。レトロペプチドアナログは、フォールドまたは他の構造を形成して該構造および/または三次構造を生じさせることができるペプチドの逆アミノ酸配列を含む。
【0186】
好ましい実施形態では、ペプチドアナログはレトロ-インベルソペプチド(retro-inverso peptide)である(Sela and Zisman, FASEB J. 11:449, 1997)。天然に存在するタンパク質中にほとんど排他的にL-アミノ酸が存在することは進化によって保証されている。結果として、実質的にすべてのプロテアーゼは隣接L-アミノ酸間でペプチド結合を切断する。したがって、D-アミノ酸からなる人工タンパク質またはペプチドは、好ましくは、タンパク質分解による崩壊に抵抗性である。レトロ-インベルソペプチドアナログは、アミノ酸配列の方向が逆になっていて(レトロ)、かつ、例えばL-アミノ酸ではなくD-アミノ酸を使用して、該配列中の1個以上のアミノ酸のキラリティ(D-またはL-)が逆さになっている(インベルソ)、直鎖ペプチドの異性体である。例えばJameson et al., Nature, 368, 744-746 (1994); Brady et al., Nature, 368, 692-693 (1994)。D-エナンチオマーと逆合成(reverse synthesis)を組み合わせることの正味の結果は、各アミド結合中のカルボニルおよびアミノ基の位置が交換され、一方、各アルファ炭素での側鎖基の位置が保存されることである。
【0187】
レトロ-インベルソペプチドの利点は、タンパク質分解による分解に対する抵抗性の改善に起因する、その向上したin vivo活性であり、すなわち該ペプチドは向上した安定性を有する。(例えばChorev et al., Trends Biotech. 13, 438-445, 1995)。
【0188】
レトロ-インベルソペプチドアナログは完全または部分的であってよい。完全レトロ-インベルソペプチドは、本発明の抗菌性ペプチドの全配列が逆になっていて、かつ配列中の各アミノ酸のキラリティが逆さまになっているペプチドである。部分的レトロ-インベルソペプチドアナログは、一部のペプチド結合のみが逆になっていて、かつ逆になっている部分のアミノ酸残基のみのキラリティが逆さまになっているペプチドアナログである。例えば、1個または2個または3個または4個または5個または6個または7個または8個または9個または10個または11個または12個または13個または14個または15個または16個または17個または18個または19個または20個または21個または22個または23個または24個または25個または26個または27個または28個または29個または30個または31個または32個または33個または34個または35個または36個または37個または38個のアミノ酸残基がD-アミノ酸である。あるいは、ペプチド中の10%または15%または20%または25%または30%または35%または40%または45%または50%または55%または60%または65%または70%または75%または80%または85%または90%または95%のアミノ酸がD-アミノ酸である。本発明は両部分的および完全レトロ-インベルソペプチドアナログを明らかに包含する。
【0189】
好ましいレトロ-インベルソアナログは、ペプチドの全アミノ酸配列が逆になっていて、かつ該配列中のグリシン以外のアミノ酸残基が逆さまになっている(すなわち、対応するD-アミノ酸残基で置換されている)部分アナログである。好ましくは、グリシン以外のすべてのアミノ酸残基が逆さまになっている。
【0190】
別の実施形態では、ペプチドアナログを改変して該アナログの免疫原性を低減する。そのような低減された免疫原性は、例えば被験体に注射しようとするペプチドに有用である。ペプチドの免疫原性を低減するための方法は当業者に明らかである。例えば、当技術分野において公知で、例えばKolaskar and Tongaonkar FEBS Letters, 276: 172-174, 1990に記載されている方法を使用してペプチドの抗原性領域を予測する。そして、任意の同定した抗原性領域を改変してペプチドアナログの免疫原性を低減してよく、ただし該アナログがフォールドまたは他の構造を形成して二次および/または三次構造を生じさせることが可能であることを条件とする。
【0191】
あるいは、またはさらに、Tangri et al., The Journal of Immunology, 174: 3187-3196, 2005では、ペプチド中の抗原部位を同定し、該部位を改変して、タンパク質の活性を大きく低減することなく該タンパク質の免疫原性を低減するためのプロセスが記載されている。該アプローチは、1) 例えば精製HLA分子との結合を決定することによる、免疫優性エピトープの同定; および2) HLA-DR分子とのその結合親和性を、天然に存在するヘルパーTリンパ球エピトープに付随するレベルより低いレベルに低減することに基づく。一般に、該アプローチは、in vitro免疫原性試験による前記エピトープの確認と組み合わされたHLA-DR 結合親和性の定量に基づく。
【0192】
ペプチド誘導体
ペプチド誘導体は、1個以上の、アミノ酸以外の化学物質部分を含有するように改変されている、任意の実施形態において本明細書中に記載のペプチドまたはそのアナログを包含する。該化学物質部分は、該ペプチドまたはアナログに、例えばアミノ末端のアミノ酸残基、カルボキシル末端のアミノ酸残基を介するか、または内部アミノ酸残基で、共有結合によって連結されていてよい。そのような改変には、ペプチド中の反応性部分に対する保護基またはキャップ形成基の付加、検出可能な標識の付加、および、ペプチド化合物の活性(例えばフォールドまたは他の構造を形成するその能力)を不都合に破壊しない他の変化が含まれる。
【0193】
本明細書中に記載のペプチドの「アミノ末端キャップ形成基」は、ペプチドまたはアナログのアミノ末端のアミノ酸残基に共有結合によって連結またはコンジュゲートされている任意の化学物質または部分である。アミノ末端キャップ形成基は、分子内環化または分子間重合を阻害または予防するため、他の分子との望ましくない反応からアミノ末端を保護するため、またはこれらの特性の組み合わせを提供するために有用でありうる。アミノ末端キャップ形成基を有する本発明のペプチドは、キャップされていないペプチドと比較して他の有益な活性、例えば向上した効力または低減された副作用を有しうる。本発明にしたがってペプチド誘導体を調製する際に有用なアミノ末端キャップ形成基の例には、非限定的に、ペプチドのアミノ末端のアミノ酸残基に共有結合によって連結されている1〜6個の天然に存在するL-アミノ酸残基、好ましくは、1〜6個のリシン残基、1〜6個のアルギニン残基、またはリシンおよびアルギニン残基の組み合わせ; ウレタン; 尿素化合物; リポ酸(「Lip」); グルコース-3-O-グリコール酸部分(「Gga」); またはアシル基が含まれ、その場合、本発明の組成物において有用なそのようなアシル基は、カルボニル基および、1炭素原子(例えばアセチル部分等の場合)〜25炭素まで(例えばパルミトイル基、「Palm」(16:0)およびドコサヘキサエノイル基、「DHA」(C22:6-3))の範囲の炭化水素鎖を有してよい。さらにまた、該アシル基の炭素鎖はPalm等のように飽和であるか、またはDHA等のように不飽和であってよい。ドコサヘキサエン酸、パルミチン酸、またはリポ酸等の酸がアミノ末端キャップ形成基として指定される場合、得られるペプチドはキャップされていないペプチドと該酸の縮合産物であることが理解される。
【0194】
本明細書中に記載のペプチドの「カルボキシル末端キャップ形成基」は、ペプチドのカルボキシル末端のアミノ酸残基に共有結合によって連結またはコンジュゲートされている任意の化学物質または部分である。そのようなカルボキシル末端キャップ形成基の主な目的は、分子内環化または分子間重合を阻害または予防すること、血液脳関門を横切る該ペプチド化合物の輸送を促進すること、およびこれらの特性の組み合わせを提供することである。カルボキシル末端キャップ形成基を有する本発明のペプチドはまた、キャップされていないペプチドと比較して他の有益な活性、例えば向上した効力、低減された副作用、向上した親水性、向上した疎水性を有しうる。本明細書中に記載のペプチド化合物中で特に有用なカルボキシル末端キャップ形成基には、該ペプチドのカルボキシル末端のアミノ酸のα-カルボキシル基にアミド結合によって連結されている一級または二級アミンが含まれる。本発明において有用な他のカルボキシル末端キャップ形成基には、1〜26個の炭素原子を有する脂肪族第一級および第二級アルコールおよび芳香族フェノール誘導体、例えばフラベノイド(flavenoids)、が含まれ、該基は、本明細書中に記載のペプチドのカルボキシ末端のアミノ酸残基のカルボン酸基に連結されるとエステルを形成する。
【0195】
ペプチドまたはアナログの他の化学修飾には、例えば、グリコシル化、アセチル化(N末端アセチル化が含まれる)、カルボキシル化、カルボニル化、リン酸化、ペグ化、アミド化、トランスオレフィンの付加、α-水素のメチル基での置換、公知の保護/封鎖基による誘導体化、環化(circularization)、タンパク質分解による切断の阻害(例えばDアミノ酸の使用)、抗体分子または他の細胞リガンドへの連結、等が含まれる。多数の化学修飾のうちのいずれかを公知技術によって実行してよく、それには、非限定的に、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、酸化、還元、等が含まれる。
【0196】
他のペプチド誘導体には、例えば、ペプチドの単離および/または固体表面へのペプチドの固定および/またはペプチドの検出を容易にするためのタグが含まれる。例えば、該ペプチドはビオチンタグを含む。そのようなビオチン化ペプチドは公知方法を使用して合成してよい。そのようなペプチドは、例えばストレプトアビジンコーティングチップ上に固定するために有用である。
【0197】
あるいは、またはさらに、ペプチドまたはアナログを、例えばインフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA) (配列番号30001)、シミアンウイルス5 (V5) (配列番号30002)、ポリヒスチジン(配列番号30003)、c-myc (配列番号30004)またはFLAG (配列番号30005)等のタグまたは標識に融合する。
【0198】
さらに別の実施形態では、例えば隣接するシステイン残基を酸化する手段によって、あるいはチオエステル結合の形成によって、該ペプチドを人工的に環化する。そのような拘束は、独立したフォールドに必要とされるべきでないが、ある場合には、二次構造の組立体に必要とされることがある。
【0199】
別の実施形態では、ペプチドは、該ペプチドに独立したフォールドまたは他の構造を形成させ、ある構造および/または三次構造を形成させることを容易にするリンカーを含む。好適なリンカーは当業者に自明である。例えば、α-ヘリックスまたはβ-ストランド構造をとる高い傾向を有するリンカー配列を有することは不都合であることが多い。それは、ペプチドの可動性を制限し、結果的にその機能的活性を制限しうる。むしろ、より望ましいリンカーは伸びたコンフォメーションをとる優先傾向を有する配列である。実際に、ほとんどの現在設計されているリンカー配列は、該リンカーがループコンフォメーションをとるよう強制する高含量のグリシン残基を有する。一般的に、設計リンカーにはグリシンが使用される。その理由は、β-炭素の不存在によって、ポリペプチド主鎖が、他のアミノ酸に関してはエネルギー的に許容されない二面角にアクセスすることが可能になるからである。
【0200】
好ましくは、該リンカーは親水性であり、すなわち該リンカー中の残基は親水性である。
【0201】
グリシンおよび/またはセリンを含むリンカーは2個のタンパク質またはペプチドを連結するための高い自由度を有し、すなわち、それらは融合タンパク質またはペプチドがフォールドまたは他の構造を形成することを可能にする。Robinson and Sauer Proc. Natl. Acad. Sci. 95: 5929-5934, 1998では、具体的配列ではなく、融合タンパク質の安定性およびフォールドまたは他の構造形成のために重要なのはリンカーペプチドの組成であることが発見された。例えば、著者らは、ほとんどもっぱらグリシンからなるリンカーを含む融合タンパク質が不安定であることを発見した。したがって、例えばアラニン、システイン、またはセリン等のグリシン以外のアミノ酸残基の使用もまた、リンカーの製造に有用である。
【0202】
一実施形態では、該リンカーはグリシンリッチリンカーである。好ましくは、該リンカーは、アラニンおよび/またはセリンをさらに含むグリシンリンカーである。
【0203】
典型的なリンカーは、1〜約6個のグリシンおよび/またはセリンおよび/またはアラニン残基、または配列番号30006〜30031のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0204】
特に好ましい実施形態では、該リンカーは、単一アミノ酸残基、好ましくは単一グリシン残基であって、例えばそれがともに連結する両構成ペプチジル部分のC末端またはN末端に好都合に付加された残基である。
【0205】
別の実施形態では、本発明のペプチド誘導体は、例えば細胞内への該ペプチドの取り込みを容易にするアミノ酸の配列、例えばタンパク質導入ドメインをさらに含む。例えば、取り込みを増強し、増加させるか、または支援することが可能なアミノ酸配列はショウジョウバエ(Drosophila)のペネトラチン(penetratin)ターゲティング配列である。このペプチド配列は、少なくともアミノ酸配列CysArgGlnIleLysIleTrpPheGlnAsnArgArgMetLysTrpLysLys (配列番号30032)を含み、最後のLys残基の後の(Xaa)nおよびその後のCysをさらに含む(Xaaは任意のアミノ酸であり、nは1より大きいかまたは1に等しい値を有する)。あるいは、該配列の相同体、誘導体またはアナログを使用する。
【0206】
代替のタンパク質導入ドメインは当技術分野において公知であり、それには、例えばHIV-1 TATタンパク質由来のタンパク質導入ドメイン、例えばTAT断片48〜60 (配列番号30036)または、グリシン以外の各残基がD-アミノ酸残基であるそのレトロインバートアナログ、またはTAT48-60断片の相同体、誘導体またはアナログ、例えば配列番号30033〜30035のいずれか1つまたは配列番号30037〜30040のいずれか1つ、またはそのレトロインバートアナログ、例えば配列番号30041〜30048のいずれか1つ、特に配列番号30048が含まれる。
【0207】
代替のタンパク質導入ドメインには、場合によりグリシンスペーサーが付加されている非インバートおよびレトロインバート型のカポジ線維芽細胞成長因子(FGF)の疎水性ペプチド(例えば配列番号30049〜30052); 非インバート型のシグナル配列ベースのペプチド1 (配列番号30053)およびそのレトロインバート型; 非インバート型のシグナル配列ベースのペプチド2 (配列番号30054)およびそのレトロインバート型、非インバート型のトランスポータン(transportan)タンパク質導入ドメイン(配列番号30055)およびそのレトロインバート型; 非インバート型の両親媒性モデルペプチド(配列番号30056)およびそのレトロインバート型; および非インバート型のポリアルギニンペプチド(配列番号30057)およびそのレトロインバート型が含まれる。
【0208】
他のタンパク質導入ドメインは当技術分野において公知であり、本発明において明らかに有用である。例えば、ショウジョウバエのアンテナペディアのアミノ酸43〜58、ポリアルギニン、PTD-5、トランスポータンおよびKALAである(Kabouridis, TRENDS in Biotechnology, 21: 498-503, 2003でレビューされている)。
【0209】
本明細書中で説明するように、タンパク質導入ドメインペプチドは、該ペプチド配列に内因性のグリシンスペーサー残基および/または該内因性ペプチド配列のC末端またはN末端に付加されたグリシンスペーサー残基を伴って、製造してよい。好ましくは、該ペプチドがレトロインバートペプチドでなければ、該スペーサーは天然配列中に存在するか、または合成時に該ペプチドの天然配列のC末端に付加される。好ましくは、該ペプチドが、グリシン以外のD-アミノ酸を含むレトロインバートペプチドであれば、該スペーサーは、対応する天然配列のC末端に存在して、該レトロインバート配列のN末端に導入されるようにするか、または合成時に該レトロインバートペプチド配列のN末端に付加される。この好ましい実施形態によって、該タンパク質導入ドメインが非インバートペプチドのN末端およびレトロインバートペプチドのC末端に位置する立体配置が得られる。
【0210】
組換えペプチド製造
一実施形態では、組換え手段または方法によってペプチドを製造する。組換えペプチドまたは融合タンパク質の製造を容易にするために、好ましくは、同ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸を単離するか、または合成する。この関連で、当技術分野において公知で、かつ/または本明細書中に記載の方法、例えば逆翻訳を使用して、該ペプチドをコードする核酸のヌクレオチド配列を同定する。そしてそのような核酸を合成手段または組換え手段によって製造する。例えば、該核酸を、例えば増幅等の公知の方法を使用して(例えばPCRまたはスプライスオーバーラップ伸長を使用して)単離する。そのような単離のための方法は当業者に自明であり、かつ/またはAusubel et al (In: Current Protocols in Molecular Biology. Wiley Interscience, ISBN 047 150338, 1987)、Sambrook et al (In: Molecular Cloning: Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Third Edition 2001)に記載されている。
【0211】
例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、ペプチドをコードする核酸を単離する。PCR法は当技術分野において公知であり、例えばDieffenbach (ed) and Dveksler (ed) (In: PCR Primer: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratories, NY, 1995)に記載されている。一般に、PCRでは、少なくとも約20ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも25ヌクレオチド長を含む2種の非相補的核酸プライマー分子を、核酸鋳型分子の異なる鎖とハイブリダイズさせ、該鋳型の特定の核酸分子コピーを酵素によって増幅する。好ましくは、該プライマーは、該ペプチドをコードする核酸に隣接する核酸とハイブリダイズし、それによって該サブユニットをコードする核酸の増幅が容易になる。増幅後、当技術分野において公知の方法を使用して増幅核酸を単離し、好ましくは好適なベクターにクローニングする。
【0212】
本発明の核酸を製造するための他の方法は当業者に自明であり、本発明に包含される。例えば、合成手段によって該核酸を製造する。核酸を合成するための方法は、Gait (Ed) (In: Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press, Oxford, 1984)に記載されている。オリゴヌクレオチド合成法には、例えば、リン酸トリエステルおよびリン酸ジエステル法(Narang, et al. Meth. Enzymol 68: 90, 1979)および支持体上での合成(Beaucage, et al Tetrahedron Letters 22: 1859-1862, 1981)ならびにホスホルアミダート技術、Caruthers, M. H., et al., "Methods in Enzymology," Vol. 154, pp. 287-314 (1988)が含まれ、他の方法は、"Synthesis and Applications of DNA and RNA," S. A. Narang, editor, Academic Press, New York, 1987、および該文献中に含まれる参考文献に記載されている。
【0213】
組換え手段によるタンパク質の発現では、該ペプチドをコードする核酸をプロモーターまたは、無細胞系または細胞系での発現を調節可能な他の調節配列と作動可能に連結して配置し、それによって発現構築物を製造する。例えば、好適なプロモーターと作動可能に連結されて配置された、ペプチドをコードする配列を含む核酸を、好適な細胞中で、発現が生じるために十分な時間および条件下で発現させる。
【0214】
本明細書中で使用される用語「プロモーター」とは、その最も広い関連で解されるものとし、ゲノム遺伝子の転写調節配列、例えばTATAボックスまたはイニシエーターエレメント(正確な転写開始に必要とされる)を含み、例えば発生上の刺激および/または外部刺激に応答して、または組織特異的様式で、核酸の発現を変化させる追加の調節エレメント(例えば上流の活性化配列、転写因子結合部位、エンハンサーおよびサイレンサー)を伴っても伴わなくてもよい。この関連で、用語「プロモーター」はまた、それが作動可能に連結されている核酸の発現を付与、活性化または増強する、組換え、合成または融合核酸、または誘導体を説明するために使用される。好ましいプロモーターは、さらに発現を増強し、かつ/または該核酸の空間的発現および/または時間的発現を変化させるための1種以上の特定の調節エレメントの追加コピーを含有することができる。
【0215】
本明細書中で使用される用語「と作動可能に連結されて(in operable connection with)」、「…と連結されて(in connection with)」または「…と作動可能に連結される(operably linked to)」とは、核酸の発現がプロモーターによって制御されるように該核酸に対してプロモーターを配置することを意味する。例えば、プロモーターは概して核酸の5' 側(上流)に配置され、該核酸の発現がその制御対象である。異種プロモーター/核酸の組み合わせを構築するために、該プロモーターと、その天然環境においてその制御対象である核酸、すなわち該プロモーターが由来する遺伝子の間の距離とほぼ同一の、該遺伝子の転写開始部位からの距離で該プロモーターを配置することが概して好ましい。当技術分野において公知であるように、プロモーター機能を失うことなく、この距離のいくらかの変動を吸収することができる。
【0216】
本発明のペプチドまたは融合タンパク質をin vitroで発現させることが好ましければ、好適なプロモーターには、非限定的に、T3またはT7バクテリオファージプロモーター(Hanes and Plueckthun Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94 4937-4942 1997)が含まれる。
【0217】
in vitro発現または無細胞での発現に関して典型的な発現ベクターが報告されていて、それには、非限定的に、TNT T7およびTNT T3系(Promega)、pEXP1-DESTおよびpEXP2-DESTベクター(Invitrogen)が含まれる。
【0218】
細菌細胞での発現に好適な典型的なプロモーターには、非限定的に、laczプロモーター、Ippプロモーター、温度感受性λLまたはλRプロモーター、T7プロモーター、T3プロモーター、SP6プロモーターまたは半人工プロモーター、例えばIPTG誘導性tacプロモーターまたはlacUV5プロモーターが含まれる。細菌細胞において本発明の核酸断片を発現させるための多数の他の遺伝子構築系が当技術分野において周知であり、例えばAusubel et al (In: Current Protocols in Molecular Biology. Wiley Interscience, ISBN 047 150338, 1987)、米国特許第5,763,239号(Diversa Corporation)およびSambrook et al (In: Molecular Cloning: Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Third Edition 2001)に記載されている。
【0219】
細菌細胞での組換えポリペプチドの発現および効率的リボソーム結合部位のための多数の発現ベクターが報告されていて、それには、例えばPKC30 (Shimatake and Rosenberg, Nature 292, 128, 1981); pKK173-3 (Amann and Brosius, Gene 40, 183, 1985)、pET-3 (Studier and Moffat, J. Mol. Biol. 189, 113, 1986); pCRベクタースイート(Invitrogen)、pGEM-T Easyベクター(Promega)、pL発現ベクタースイート(Invitrogen) アラビノース誘導性プロモーターを含有するpBAD/TOPOまたはpBAD/thio - TOPOシリーズのベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)、後者はさらに発現されたタンパク質のコンフォメーション制限のためのTrxループを有する融合タンパク質を製造するように設計されている; pFLEXシリーズの発現ベクター(Pfizer nc., CT,USA); pQEシリーズの発現ベクター(QIAGEN, CA, USA)、またはpLシリーズの発現ベクター(Invitrogen)が特に含まれる。
【0220】
例えばPichia pastoris、S. cerevisiaeおよびS. pombeを含む群から選択される酵母細胞等の酵母細胞での発現に好適な典型的なプロモーターは、非限定的に、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL4プロモーター、CUP1プロモーター、PHO5プロモーター、nmtプロモーター、RPR1プロモーター、またはTEF1プロモーターが含まれる。
【0221】
酵母細胞での発現のための発現ベクターが好ましく、それには、非限定的に、pACTベクター(Clontech)、pDBleu-Xベクター、pPICベクタースイート(Invitrogen)、pGAPZベクタースイート(Invitrogen)、pHYBベクター(Invitrogen)、pYD1ベクター(Invitrogen)、およびpNMT1、pNMT41、pNMT81 TOPOベクター(Invitrogen)、pPC86-Yベクター(Invitrogen)、pRHシリーズのベクター(Invitrogen)、pYESTrpシリーズのベクター(Invitrogen)が含まれる。
【0222】
真核細胞のウイルスおよび真核細胞での発現に好適な典型的なプロモーターには、SV40後期プロモーター、SV40初期プロモーターおよびサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、CMV IE (サイトメガロウイルス前初期)プロモーターが特に含まれる。哺乳類細胞(例えば293、COS、CHO、10T細胞、293T細胞)での発現に好ましいベクターには、非限定的に、Invitrogenによって供給されるpcDNAベクタースイート、特にCMVプロモーターを含み、かつC末端6xHisおよびMYCタグをコードするpcDNA 3.1 myc-His-タグ; およびレトロウイルスベクターpSRαtkneo (Muller et al., Mol. Cell. Biol., 11, 1785, 1991)が含まれる。
【0223】
本発明の抗菌性ペプチドまたは融合タンパク質を発現するために好適な広範囲の追加の宿主/ベクター系は公的に入手可能であり、例えばSambrook et al (In: Molecular cloning, A laboratory manual, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)に記載されている。
【0224】
単離した核酸分子または同分子を含む遺伝子構築物を、発現用の細胞内に導入するための手段は当業者に周知である。所定の生物に関して使用される技術は公知の好結果の技術に依存する。組換えDNAを細胞に導入するための手段には、マイクロインジェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクタミン(Gibco, MD, USA)および/またはセルフェクチン(Gibco, MD, USA)を使用するトランスフェクション等のリポソーム媒介トランスフェクション、PEG媒介DNA取り込み、エレクトロポレーションおよび、DNAコーティングタングステンまたは金粒子(Agracetus Inc., WI, USA)を使用する微粒子銃等の微粒子銃が特に含まれる。
【0225】
ペプチド単離
一実施形態では、合成または発現後に該ペプチドを単離または精製する。ペプチド精製の標準的方法を使用して単離ペプチドを得る。該方法には、非限定的に、種々の高圧(または性能)液体クロマトグラフィー(HPLC)および非HPLCペプチド単離プロトコル、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、相分離法、電気泳動による分離、沈殿法、塩入/塩析法、イムノクロマトグラフィー、および/または他の方法が含まれる。
【0226】
あるいは、標識を含む融合タンパク質を単離するためにアフィニティー精製が有用である。アフィニティークロマトグラフィーを使用してタンパク質を単離するための方法は当技術分野において公知であり、例えばScopes (In: Protein purification: principles and practice, Third Edition, Springer Verlag, 1994)に記載されている。例えば、該標識と結合する抗体または化合物(ポリヒスチジンタグの場合、これは例えばニッケル-NTAであってよい)を好ましくは固体支持体上に固定する。そして、融合タンパク質を含むサンプルを、結合が生じるために十分な時間および条件下で、固定済み抗体または化合物と接触させる。任意の未結合タンパク質または非特異的結合タンパク質を除去するために洗浄した後、該融合タンパク質を溶出する。
【実施例3】
【0227】
実施例3
ペプチド提示方法
固体支持体
フォールドまたは他の構造を形成可能なペプチドは、例えばマイクロチップ等の固体支持体上で直接合成するか、または固体支持体上に固定して、ペプチドのアレイを製造することができる。固体支持体上にペプチドを固定するための好適な方法は当技術分野において公知であり、それには、例えば、直接結合(例えば共有結合による結合、例えばシッフ塩基の形成、ジスルフィド結合、またはアミドもしくは尿素結合の形成による結合)または間接結合が含まれる。そのようなタンパク質チップの製造方法は当技術分野において公知であり、例えば米国特許出願第20020136821号、第20020192654号、第20020102617号および米国特許第6,391,625号またはLee et al, Proteomics, 3: 2289-2304, 2003に記載されている。
【0228】
一実施形態では、該ペプチドをプールするか、または平行アレイを製造する。例えば、各候補ペプチドを個別に(すなわち他のペプチドから単離して)製造し、そして多数または複数の異なるペプチドをプールする。そして、2個以上の前記ペプチドプールをプールし、必要であれば、このプロセスを繰り返す。したがって、数千または数百万のペプチドからなるプールが製造されうる。そして、前記プールのうち最大のプールをスクリーニングして、それが目的の生物活性を有するペプチドを含むかどうかを決定してよい。該プールがそのようなペプチドを含むならば、より小さいペプチドプールの1個以上の群(すなわちサブプール)をスクリーニングして、どのプールが目的のペプチドを含むかを決定する。このプロセスは、目的の個別ペプチドが単離される(すなわち該ペプチドプールが解明される)まで、減少するサイズのプールを用いて反復して繰り返すことができる。あるいは、少数のペプチド(例えば10または100個)からなるプールを直接スクリーニングして、存在すれば、どのペプチドが目的の表現型をモジュレート可能であるかを決定してよい。
【0229】
スクリーニングプロセス時に質量分析によって約100ペプチドまでの混合物から個々のペプチドを識別することも可能である。そして、標準的方法を使用して、質量分析データから該個々のペプチドを容易に合成し、その効力を検証することができる。ペプチドを検証するための方法は当業者に自明であり、例えば本明細書中に記載の方法を使用する。例えば、該ペプチドを、細胞、組織または生物に投与して、目的の表現型に対するその効果を決定する。あるいは、またはさらに、該ペプチドを動物(例えば疾患の動物モデル)に投与して、目的の表現型(例えば該疾患表現型)に対するその効果を、該ペプチドがモジュレートするかもしれない任意の他の表現型とともに決定する(例えば毒物学スクリーニング)。
【0230】
当業者に自明であるように、本発明は複数の異なるライブラリーの製造を明らかに包含する。したがって、本発明はまた、プールされたライブラリーを含む。例えば、本発明は2個以上のライブラリーをプールすることを包含する。一実施形態では、該ライブラリーは同一生物/群由来である。別の実施形態では、該ライブラリーは異なる生物由来である(例えば、あるライブラリーは、コンパクトなゲノムを含む真核生物由来であり、別のライブラリーは細菌由来である)。
【0231】
固体支持体の表面上に提示されるか、または溶液中で維持されるペプチドは、好ましくは、タンパク質フォールドまたは他の構造またはサブフォールドまたは他の構造への該ペプチドのフォールドまたは他の構造形成を容易にする中性バッファー中で維持される。好ましくは、そのようなバッファーは有意なレベルの界面活性剤または還元剤(例えばジチオスレイトール)または変性試薬、例えば尿素を含まない。
【0232】
In vitroディスプレイ
代替の実施形態では、該ペプチドライブラリーは、in vitroディスプレイライブラリーである(すなわち、該ペプチドは、in vitroディスプレイを使用して提示され、その場合、発現させたペプチドはその発現元であった核酸と結びつけられ、該ペプチドが宿主細胞の不存在下で提示されるようになっている)。例えば、該ペプチドライブラリーはリボソームディスプレイライブラリーである。当業者は、リボソームディスプレイライブラリーでは、発現構築物によってコードされるmRNAをそのコード対象のペプチドに直接に結びつけることを承知している。新生ポリペプチドを提示するために、それをコードする核酸を、適切なプロモーター(例えばバクテリオファージT3またはT7プロモーター)およびリボソーム結合配列の下流にクローニングし、該リボソーム結合配列は、場合により、リボソームトンネル内で発現させた融合タンパク質を安定化する翻訳可能なスペーサー核酸(例えば、線状ファージM13 mp19の遺伝子IIIのアミノ酸211〜299をコードする)を含む。例えば酢酸マグネシウムまたはクロロアンフェニコール(chloroamphenicol)等の試薬を加えることによって、該ペプチドおよび/またはそのコーディングmRNAから解離しないようにリボソーム複合体を安定化する。
【0233】
リボソーム不活性化ディスプレイ
あるいは、該ライブラリーは、例えばTabuchi, Biochem Biophys Res Commun. 305:1-5, 2003に記載のリボソーム不活性化ディスプレイライブラリーまたは共有結合ディスプレイライブラリーである。
【0234】
ファージディスプレイ
さらに別の実施形態では、該ペプチドライブラリーはファージディスプレイライブラリーであり、その場合、発現済みペプチドまたはタンパク質フォールドまたは他の構造はバクテリオファージの表面で提示される。例えば米国特許第5,821,047号および米国特許第6,190,908号に記載されている。報告されている基本原理は、ペプチドまたはタンパク質をコードする配列を含む第一の核酸を、例えばM13タンパク質-3、M13タンパク質-7、またはM13, タンパク質-8の群から選択されるファージコートタンパク質等のファージコートタンパク質をコードする配列を含む第二の核酸に融合することに関する。そして、これらの配列を適切なベクター、例えば細菌細胞中で複製可能なベクターに導入する。そして、例えば大腸菌(E. coli)等の好適な宿主細胞を該組換えベクターで形質転換する。また、該宿主細胞に、核酸断片が作動可能に連結されている無修飾型の該コートタンパク質をコードするヘルパーファージ粒子を感染させる。粒子の表面上に2コピー以上の融合タンパク質を含む組換えファージミド粒子を形成させるために好適な条件下で、形質転換させた感染宿主細胞を培養する。この系は、例えばλファージ、T4ファージ、M13ファージ、T7ファージおよびバキュロウイルスを含む群から選択されるウイルス粒子等のウイルス粒子の製造に有効であることが示されている。そして、そのようなファージディスプレイ粒子をスクリーニングして、標的タンパク質または核酸と結合するために十分なコンフォメーションを有する提示タンパク質を同定する。
【0235】
細胞ベースのディスプレイ
さらに別の実施形態では、該ペプチドライブラリーは細菌ディスプレイライブラリーであり、その場合、発現済みペプチドまたはタンパク質フォールドまたは他の構造は細菌細胞の表面で提示される。そして、発現させたペプチドまたはタンパク質フォールドまたは他の構造を提示する細胞を、例えば米国特許第5,516,637号に記載されるように、バイオパニングに使用する。あるいは、該ライブラリーは、例えば米国特許第6,423,538号に記載の酵母ディスプレイライブラリーまたはStrenglin et al EMBO J, 7, 1053-1059, 1988に記載の哺乳類ディスプレイライブラリーである。
【0236】
あるいは、当技術分野において公知で、かつ/または本明細書中に記載の方法を使用して、細胞または細胞集団中でペプチドを発現させることによって、該ペプチドライブラリーを提示させる。例えば、該ライブラリー中のペプチドのそれぞれを別々の細胞中で発現させる。
【実施例4】
【0237】
実施例4
提示ペプチドの構造的完全性の確認
好ましくは、種々の方法のいずれか1つによって該ペプチドの正しいフォールディングを確認する。通常、そのような手順を、概して、構造ライブラリーのサンプリングを手段として実施し、その構造的完全性を評価する。
【0238】
円偏光二色性
例えば、該ライブラリーのペプチドのランダムサンプルを円偏光二色性を使用して分析する。円偏光二色性分光法は、複屈折プレートに平面偏光を通過させることによって実施する。該プレートは、平面偏光を、異なる軸(例えば速軸および遅軸)に沿って振動する2つの平面偏光ビームに分割する。該ビームの一方を(4分の1波長遅延装置を使用して)90°遅延させた後、90°位相が異なる2つのビームを加算すると、結果は一方向の円偏光になる。該2つの軸を反転させて、もう一方のビームを遅延させることによって、もう一方の方向の円偏光が得られる。光学活性サンプルを通過する右および左の円偏光を加算した結果は楕円偏光であり、ゆえに円偏光二色性は楕円率と等価である。溶液中の精製ペプチドの吸収を種々の波長で決定し、該吸収を、予測構造を有するタンパク質および/またはペプチドに関して予測される吸収と比較することによって、該ライブラリーのペプチドが正しい構造を有することを確認することが可能である。
【0239】
熱変性
あるいは、またはさらに、熱変性アッセイを使用して、ライブラリーの正しいフォールディングまたは構造的完全性を確認する。そのようなアッセイを本発明に適合させるには、例えば分光光度計を使用して、ライブラリー由来のペプチドの蛍光を、約295nmで励起させて、約340nmでモニターする。種々の温度で、例えば約4℃〜90℃の範囲で蛍光データを得る。場合により、トリプトファン蛍光の本質的な温度依存性を示すように、該ペプチドに関して得られた結果から遊離トリプトファンの融解曲線を減算する。温度が増加するにつれてペプチドの蛍光が有意に減少すれば、該ペプチドが構造を達成可能であり、かつ変性していることが示される。熱変性アッセイは当技術分野において公知であり、例えばSocolich et al., Nature, 437: 512-518, 2005に記載されている。一例では、ライブラリー由来のペプチドに関して得られた熱変性プロファイルを、それが天然に存在する場合のタンパク質フォールドまたは他の構造の熱変性プロファイルと比較し、それによって、該ペプチドが正しいコンフォメーションをとっているかどうかを決定する。
【0240】
リガンド結合
あるいは、またはさらに、ペプチドライブラリーを1種以上のリガンド、例えば線状エピトープではなくコンフォメーション上のエピトープと結合することが知られている公知の抗体と接触させることよって、該ライブラリーの正しいフォールディングまたは構造的完全性を確認する。リガンド(群)がライブラリーと結合すると、該ライブラリーが、ある構造を形成可能なペプチドを含むことが示される。例えば、ELISAまたはFLISAアッセイを使用してライブラリーをアッセイする。そのようなアッセイを本発明の本実施形態に適合させるには、ペプチドライブラリーまたは同ライブラリーを提示する細胞を、固体表面、例えばマイクロプレートのウェルまたはピン上に固定する。コンフォメーション上のエピトープと結合することが知られている抗体を、抗体-抗原複合体の形成に十分な時間および条件下で、固定ペプチドライブラリーと直接接触させる。抗体は、好ましくは、ELISAの場合は酵素標識、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼで標識し、またはFLISAの場合は蛍光標識で標識する。未結合抗体または非特異的結合抗体を除去するために洗浄した後、該酵素の基質を加え、該基質の代謝を検出する。あるいは、蛍光手段によって蛍光マーカーを検出する。基質の代謝産物または蛍光の存在は、該抗体が結合可能な構造(すなわちコンフォメーション上のエピトープ)の指標である。
【実施例5】
【0241】
実施例5
スクリーニング手順
本発明にしたがって製造されるライブラリーが治療のための新規薬物候補の同定に特に有用であることが本明細書中の開示内容から明らかである。下記の通り、いくつかのスクリーニング方法を用いることができる。
【0242】
ペプチドのアフィニティー精製
一実施形態では、アフィニティー精製を使用して本発明のペプチドライブラリーをスクリーニングする。アフィニティー精製技術は当技術分野において公知であり、例えばScopes (In: Protein purification: principles and practice, Third Edition, Springer Verlag, 1994)に記載されている。アフィニティー精製の方法には、典型的に、ライブラリー中のペプチドを特定の標的分子、例えば標的タンパク質または核酸と接触させるステップおよび未結合ペプチドまたは非特異的結合ペプチドを除去するために洗浄した後、標的タンパク質または核酸と結合したままであるペプチドを溶出させるステップが含まれる。次第にストリンジェントな洗浄を実施することによって、標的分子に関して、より高い親和性を有するペプチドを同定する。
【0243】
一例では、本発明のペプチドライブラリーが固定されているタンパク質チップまたは一連のピンを、標的、例えば標的タンパク質または核酸と接触させる。好ましくは、検出可能なマーカー、例えば蛍光マーカーで標的を標識する。また、ペプチドのそれぞれをあらかじめ決められた部位に固定して、該ペプチドの同定を容易にすることが好ましい。すべての未結合標的を除去するために洗浄した後、結合している標識の位置を検出する。結合している標識の位置は、該標的分子と結合可能なペプチドを示す。そして、例えば本明細書中に記載の方法、例えばMALD-TOFを使用して、ペプチドが何であるかを確認することができる。
【0244】
表面プラズモン共鳴
あるいは、例えばBiacoreセンサーチップテクノロジー(Biacore AB, UK)等の表面プラズモン共鳴アッセイを使用してライブラリーをスクリーニングする。Biacoreセンサーチップは、カルボキシメチル化デキストランで修飾された金の薄層でコーティングされたガラス表面であり、該表面には、標的分子、例えばタンパク質または核酸が共有結合によって取りつけられている。そして、本発明のペプチドライブラリーを該標的分子と接触させる。本質的に、表面プラズモン共鳴アッセイでは、屈折率の変化を測定することによって、チップ表面に近接している水層の量の変化を検出する。したがって、本発明のライブラリー由来のペプチドが標的タンパク質または核酸と結合すると、屈折率は増加する。
【0245】
当業者に自明であるように、例えばエバネッセント(evanescent)バイオセンサー、メンブレンベースのバイオセンサー(AU 623,747, US 5,234,566およびUSSN 20030143726に記載されている)またはマイクロカンチレバー(microcantilever)バイオセンサー(USSN 20030010097に記載されている)等の別のバイオセンサーも本発明のペプチドのスクリーニングに有用である。
【0246】
バイオセンサー検出
あるいは、回折光学素子テクノロジー(光-散乱)の検出に基づくバイオセンサーを使用して、目的の生物活性を有するペプチドを決定する。そのようなバイオセンサーは、例えばAxela Biosensors Inc., Toronto, Canadaから市販されている。あるいは、音響共鳴に基づくバイオセンサー、例えばAkubio, Cambridge UK製のバイオセンサーを使用してよい。
【0247】
他のリガンド結合アッセイ
あるいは、ペプチドライブラリーをスクリーニングして、受容体、例えばGタンパク質共役受容体(GPCR)と結合可能なペプチドを同定する。例えば、本質的には、Fang et al., Chembiochem., 3: 987-991, 2002に記載されるように、GPCRチップを使用して本発明のライブラリーをスクリーニングする。
【0248】
あるいは、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫測定法、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間(MALDI-TOF)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、質量分析(タンデム質量分析、例えばLC MS/MSが含まれる)、バイオセンサーテクノロジー、エバネッセント光ファイバーテクノロジーまたはタンパク質チップテクノロジー等のスクリーンを使用して、ペプチドを同定する。そのような方法は当技術分野において公知であり、かつ/または本明細書中に記載されている。
【0249】
フォワードおよびリバースハイブリッドアッセイ
好ましい形式のスクリーニングでは、タンパク質と結合可能なペプチドおよび/または、別の分子、例えば別のタンパク質、ペプチド、抗体または核酸とタンパク質の相互作用を低減、防止または阻害可能なペプチドを同定する。
【0250】
例えば、米国特許第6,316,223号およびBartel and Fields, The Yeast Two-Hybrid System, New York, NY, 1997に記載の2ハイブリッドアッセイを使用して、標的タンパク質またはペプチドと結合可能なペプチドを同定する。報告されている基本メカニズムでは、例えば細菌細胞、酵母細胞、または哺乳類細胞等の適切な宿主細胞中で2個の別個の融合タンパク質として、結合パートナーを発現することを必要とする。標準2ハイブリッドスクリーンを本目的に適合させるには、第一の融合タンパク質は、標的タンパク質に融合されたDNA結合フォールドまたは他の構造からなり、かつ第二の融合タンパク質は、本発明のライブラリー由来のペプチドに融合された転写活性化フォールドまたは他の構造からなる。該DNA結合フォールドまたは他の構造は、1種以上のレポーター遺伝子の発現をコントロールするオペレーター配列と結合する。該転写活性化フォールドまたは他の構造は、本発明のライブラリー由来のペプチドと標的タンパク質間の機能的相互作用によって、プロモーターに動員される。その後、転写活性化フォールドまたは他の構造は、細胞の基礎となる転写機構と相互作用し、それによってレポーター遺伝子(群)の発現が活性化され、その発現を測定することができる。
【0251】
本明細書中で使用される用語「レポーター遺伝子」とは、生物学的活性または標的タンパク質または核酸の変化を測定でき、かつそれと相関しうるように変化する、物理的に測定可能な特性を示すペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸を意味すると解されるものとする。レポーター分子は当技術分野において公知であり、それには、非限定的に、蛍光を発するタンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質、基質の存在下で色の変化を誘発するタンパク質、例えば大腸菌β-ガラクトシダーゼ、例えばHIS1等の宿主細胞に対して生育特性を付与する分子、および例えばURA3およびCYH2CYH3等の宿主細胞の死または生育能力の低下を誘発する分子が含まれる。
【0252】
Nハイブリッドスクリーニングの他の変法は当技術分野において公知であり、例えばPolIII 2ハイブリッドシステム、トライブリッド(Tribrid)システム、ユビキチンベースのスプリットプロテインセンサーシステムおよびSosリクルートメントシステム(Vidal and Legrain Nucl. Acid Res. 27(4), 919-929 (1999)に記載されている)または3ハイブリッドアッセイ(Zhang et al (In: Bartel and Fields, The Yeast Two-Hybrid System, New York, NY pp 289-297, 1997)に記載されている)等である。これらのすべてのシステムは本発明によって考慮される。
【0253】
好ましいスクリーニングアッセイでは、標的タンパク質と別の分子、例えばタンパク質または核酸、間の相互作用に拮抗またはそれを阻害する本発明のライブラリー中の1個以上のペプチドを同定する。したがって、リバース'n-'ハイブリッドスクリーニングを用いてアゴニスト分子を同定する。リバースハイブリッドスクリーニングは、標的タンパク質または核酸と別のタンパク質または核酸間の相互作用に対抗して選択するために、例えばURA3遺伝子、CYH2遺伝子またはLYS2遺伝子等の対抗選択可能なレポーターマーカー(群)を使用する点で上記フォワードハイブリッドスクリーニングと異なる。細胞生存または細胞増殖は、薬物または対抗選択可能なレポーター遺伝子産物の毒素産生基質の存在下で低下するか、または妨げられる。該薬物または基質は、対抗選択可能なマーカーによって、例えば薬物5-FOAの存在下で致死性を付与するURA3遺伝子産物等の毒性化合物に変換される。したがって、標的タンパク質と別の分子間の相互作用がブロックまたは阻害されている細胞は、該物質の存在下で生存する。その理由は、対抗選択可能なレポーター分子が発現されず、したがって、該基質が毒性産物に変換されないか、または該薬物(シクロヘキシミドの場合)が、該レポーター遺伝子によってコードされる本質的な標的に対して活性ではないからである。そのような結果は、該ペプチドが標的タンパク質または核酸と別の分子間の相互作用のインヒビターであることを示す。
【0254】
好適なリバースNハイブリッド、例えばリバース2ハイブリッドシステムは当技術分野において公知であり、例えばWatt et al. (USSN 09/227,652)に記載されている。例えば、タンパク質-タンパク質相互作用がアッセイ対象である場合、2個のタンパク質結合パートナーの結合は、例えば該結合パートナーが融合タンパク質として発現されているおかげで、機能的転写調節タンパク質を再構成する。その場合、各融合タンパク質は、他方の部分がなければ転写をモジュレートしない転写調節タンパク質の部分を含む(例えば、上記の、転写活性化因子フォールドまたは他の構造を含む融合タンパク質およびDNA結合フォールドまたは他の構造を含む融合タンパク質である)。該融合タンパク質が発現されている細胞はまた、該転写因子の再構成のコントロール下で作動可能な対抗選択可能なレポーター遺伝子を含む。したがって、タンパク質相互作用の阻害の不存在下では、対抗選択可能なレポーター遺伝子が発現され、それによって、好適な基質(例えばURA3対抗選択可能なレポーター遺伝子に関する5-FOA)の存在下で培養された場合に、細胞が死滅する。本発明のライブラリー由来のペプチドを提示する細胞は、該ペプチドがタンパク質相互作用に拮抗または阻害する場合、該基質の存在下であっても生存する。対抗選択可能なレポーター遺伝子が発現されないからである。
【0255】
当業者に公知であるように、上で簡潔に記載されているリバース'n-'ハイブリッド技術は、1ハイブリッド、2ハイブリッドまたは3ハイブリッドアッセイで使用するために容易に修飾することができる。
【0256】
改変表現型に関するスクリーニング
別の実施形態では、本明細書中に記載の組換え発現ベクターを導入する方法を使用して、本発明のペプチドライブラリーをコードする核酸を複数の好適な宿主細胞に導入する。そして、例えばXu et al, (In: Nature Genetics 27, 23-29, 2001)に記載のように、表現型の変化に関して細胞をモニターする。表現型の変化の例には、非限定的に、細胞増殖のモジュレーション、形態学的変化、毒素に対する耐性、毒素に対する感受性および遺伝子発現の変化からなる群から選択される表現型の変化が含まれる。上記技術を本発明に適合させるには、本発明のペプチドライブラリーをコードする核酸で適切な宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトする。あるいは、本発明の発現ライブラリーから単離された合成または組換えペプチドを、宿主細胞へのペプチドの取り込みを促進するポリペプチド、すなわちタンパク質導入ドメインの存在下で、宿主細胞とインキュベートする。そして、例えばDNAマイクロアレイを使用してモニターされる遺伝子発現の変化等の特定の表現型の変化に関して該宿主細胞をモニターする。そして、該表現型の変化を誘発するペプチドをコードする核酸を単離する。表現型の所望の変化を誘発するペプチドについての追加の検査は明らかに予測でき、例えば該ペプチドがどのタンパク質と相互作用するか、およびどの細胞経路に影響するかを決定するための2ハイブリッド解析等である。
【0257】
抗菌活性に関するスクリーニング
あるいは、またはさらに、ペプチドライブラリーをスクリーニングして抗菌性ペプチドを決定する。例えば、ペプチドのペプチドライブラリーを、微生物(例えば細菌)の集団と、該微生物が成長するために十分な時間および条件下で直接接触させる。微生物の生育を妨害するか、または低下させるペプチドを決定することによって、抗微生物ペプチドを決定する。好適なスクリーニング方法は当技術分野において公知であり、例えばSteinberg and Lehrer, Methods Mol. Biol., 78: 169-88, 1997に記載されている。
【0258】
ペプチドの追加の特徴付け
本発明のペプチドライブラリーをスクリーニングした後、多数の公知の方法のいずれかを使用してペプチドをさらに特徴付けする。例えば、エドマンシークエンシング(配列決定)、混合ペプチドシークエンシング、質量分析(MALDI-TOF、ESIおよびイオントラップ解析が特に含まれる)からなる群から選択される方法を使用してペプチドを同定する。
【0259】
例えば、エドマンシークエンシング(本質的にEdman, Arch. Biochem. Biophys., 22, 475-483, 1949に記載されている)を使用してペプチドのN末端配列を決定し、この配列を公知の配列と比較して、ペプチドが何であるかを同定する。好ましくは、エドマンシークエンシングの前に、例えば別のタンパク質等の混入分子からペプチドを分離する。ペプチドの単離後、該タンパク質のアミノ末端を塩基性条件下でフェニルイソチオシアン酸で誘導体化する。例えば、このステップで使用される塩基は、例えばトリエチルアミンまたはジイソプロイルエチルアミン(diisoproylethylamine)等の非求核試薬である。このカップリングステップによって、フェニルチオカルバミルペプチドまたはタンパク質が得られる。該フェニルチオカルバミルペプチドまたはタンパク質のチオカルボニル官能基は中程度に強い求核試薬であり、酸性条件下で、隣接ペプチド結合のカルボニル炭素を切断する。この切断ステップの結果、末端アミノ酸のアニロチアゾリノン(anilothiazolinone)が生じ、1アミノ酸残基短縮された元のペプチドまたはタンパク質が残る。該末端アミノ酸のアニロチアゾリノンは該ペプチドまたはタンパク質と異なる溶解特性を有する。そのようなものとして、それを抽出し、追加の分析に付することができる。短縮ペプチドまたはタンパク質はやはり裸のアミノ末端を有し、結果として、カップリング、切断、および抽出の追加サイクルに付することができる。
【0260】
しかし、抽出された末端アミノ酸のアニロチアゾリノンは安定ではない。酸性水性条件下で、アニロチアゾリノンは急速に再配置されて、より安定なフェニルチオヒダントインを形成し、それは分析に適する。そして、例えばUV吸収検出逆相高性能液体クロマトグラフィーによって、安定なフェニルチオヒダントインを分析して、該末端アミノ酸の同一性を決定する。
【0261】
ペプチドのN末端配列を決定した後、この配列をアミノ酸配列のデータベースと比較して、得られた配列が公知の配列と同一または実質的に同一であるかどうかを決定する。そのようなデータベースは例えばNCBIで利用可能である。
【0262】
あるいは、Damer et al, J. Biol. Chem. 273, 24396-24405, 1998に記載の混合ペプチドシークエンシングを使用してペプチドを同定する。
【0263】
好ましくは、質量分析を使用してペプチドを同定する。例えば本明細書中に記載のスクリーニング方法において単離されたペプチドを、例えばエレクトロスプレーイオン化(ESI; Fenn et al, Science, 246, 64-71, 1989またはWilm et al, Nature, 379, 466-469, 1996)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI; Karas and Hillenkamp, Anal. Chem., 60, 2299-2301, 1988)または大気圧化学イオン化等の方法を使用してイオン化する。イオン化後、例えば四極子質量分析計(Burlingame et al, Anal. Chem. 70, 674R-716R)、イオントラップ質量分析(Cooks et al, Chem. Eng. News, 69, 26, 1991)、飛行時間(TOF)分析(Yates, J. Mass Spectrom. 33, 1-19, 1998)、フーリエ変換イオンサイクロトロン質量分析(米国特許第3,937,955号)を使用して、得られた分子イオンの質量を分析する。
【0264】
スクリーニングにおいて同定されたペプチドまたはその断片の配列を決定した後、決定された配列を配列データベースと比較して、決定された配列が公知の配列と同一または実質的に同一であるかどうかを決定する。そのようなデータベースは、例えばNCBIまたはExPASYまたはSwiss-Protで利用可能である。さらにまた、質量分析計で、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の質量がさらに決定されると、この情報もまた、例えばタンパク質質量ライブラリーとの比較によって免疫原性タンパク質を同定する際に有用である。該ライブラリーは、例えばUK Human Genome Mapping Project Resource Centreによって提供されるライブラリー等である。
【0265】
本明細書中で使用される用語「ExPASY」は、Swiss Institute of Bioinformatics at Basel University 4056, Basel, SwitzerlandのExpert Protein Analysis Systemを意味すると解されるものとする。
【0266】
本明細書中で使用される用語「Swiss-Prot」は、Swiss Institute of Bioinformatics at Basel University 4056, Basel, Switzerlandのタンパク質配列データベースを意味すると解されるものとする。
【0267】
生体分子相互作用解析-質量分析(BIA-MS)もまた、所望の生物活性を有する本発明のペプチドライブラリー由来のペプチドを検出および/または特徴付けおよび/または同定するために有用である(Nelson et al. Electrophoresis 21: 1155-1163, 2000)。
【0268】
組換え技術を使用して製造されたペプチドの場合、例えば当技術分野において標準的な方法を使用して該ペプチドをコードする核酸のヌクレオチド配列を決定し、かつin silico翻訳を実施して該ぺプチドを同定することによって、該ペプチドの正体を決定してよい。
【0269】
同定したペプチドの親和性成熟
一実施形態では、スクリーンにおいて同定されたペプチドを突然変異させて、該ペプチドの生物活性、例えば該ペプチドが標的分子と結合する親和性および/またはペプチドが標的分子と結合する特異性を改善する。ペプチドを突然変異させるための方法は当業者に自明であり、かつ/または本明細書中に記載されている。
【0270】
別の実施形態では、該ペプチドを環化して、親和性および/または安定性を向上させる。
【0271】
診断および治療的適用
当業者に自明であるように、本発明のライブラリーは、被験体の治療処置または予防処置のための試薬として好適である。例えば、感染性生物またはアレルゲンの構造を模倣可能なペプチドは、感染またはアレルギー反応を予防または治療するためのワクチンとして有用である。
【0272】
あるいは、標的タンパク質と結合可能なペプチドまたは標的相互作用を妨害するためのペプチドは疾患または障害の治療に有用である。
【0273】
したがって、一実施形態では、本発明は、本明細書中の任意の実施形態に記載のスクリーニングにおいて同定されたペプチドを含む組成物、好ましくは医薬組成物を提供する。
【0274】
医薬化合物の製剤化は、選択される投与経路にしたがって様々である(例えば、溶液、エマルジョン、カプセル)。投与対象の同定されたモジュレーターを含む適切な組成物は、生理学的に許容しうるビヒクルまたは担体中で調製することができる。溶液またはエマルジョンに関して、好適な担体には、例えば、水性またはアルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液、例えば生理食塩水および緩衝化媒体が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンガー液または固定油が、例えば、含まれうる。静脈内ビヒクルには、種々の添加物、保存剤、または液体、栄養分または電解質補充物等が含まれうる(一般にはRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th Edition, Mack Publishing Co., Pa., 1985を参照のこと)。吸入に関しては、該物質を可溶化し、投与に好適なディスペンサー(例えば、アトマイザー、ネブライザーまたは加圧エアロゾルディスペンサー)に積載することができる。
【0275】
さらにまた、物質がタンパク質またはペプチドである場合、組換えタンパク質のin vivo発現によって該物質を投与することができる。in vivo発現は、好適な方法にしたがう体細胞発現によって達成することができる(例えば米国特許第5,399,346号を参照のこと)。この実施形態では、タンパク質をコードする核酸を、送達用のレトロウイルス、アデノウイルスまたは他の好適なベクター(好ましくは複製欠損感染性ベクター)に組み込むことができ、または送達のためのタンパク質を発現可能なトランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞に導入することができる。後者の実施形態では、治療有効量のタンパク質を発現させるために有効な量の細胞を、移植(単独で、またはバリアデバイス中で)、注射または他の様式で導入することができる。
【0276】
当業者に自明であるように、in vivoで活性な化合物が特に好ましい。ヒト被験体において活性な化合物はさらにより好ましい。したがって、疾患の治療に有用な化合物を製造する場合、ペプチドに添加する任意の成分が該ペプチドの活性を阻害または修飾しないよう保証することが好ましい。
【0277】
本発明のペプチドライブラリーはまた、疾患または障害の診断および/または予後診断に有用なペプチドを同定および/または製造するために有用である。したがって、そのようなペプチドは、疾患または障害を診断するために好適な形式で提供してよい。例えば、ペプチドを固体基質上に固定する。あるいは、検出可能なマーカー、例えば蛍光マーカーでペプチドを標識する。あるいは、疾患または障害の診断のためのキットを提供する。
【0278】
例えば、標的に結合可能なペプチドを固体基質上に固定する。該標的上の別の部位に結合可能な第二のペプチドを、検出可能なマーカーで標識する。そして、そのようなペプチドは、サンドイッチタイプアッセイを使用する生物学的サンプル中の該標的の検出に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップを含む、ペプチドライブラリーを製造するための方法:
(i) 二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを独立して形成可能な複数のアミノ酸配列を得るステップ;
(ii) (i)で得られたアミノ酸配列を有するペプチドを製造するステップ; および
(iii) (ii)のペプチドを、該ペプチドが二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成するように提示させるステップ。
【請求項2】
コンパクトネス、非極性埋没表面積、および独立性の程度から選択される1つ以上の基準にしたがって、二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを独立して形成する能力を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミノ酸配列が二次構造および/またはフォールドを形成可能であり、かつ前記ペプチドが、二次構造および/またはフォールドを形成するように提示される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アミノ酸配列が二次構造の組立体および/またはフォールドを形成可能であり、かつ前記ペプチドが、二次構造の組立体および/またはフォールドを形成するように提示される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記アミノ酸配列がフォールドを形成可能であり、かつ前記ペプチドが、フォールドを形成するように提示される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドが自律的に形成される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドの形成を誘発する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ペプチドが、天然タンパク質の連続していない部分同士の相互作用によって生じる三次構造を模倣する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(i)で配列をサイズ選択して、それにより、独立したタンパク質フォールドの平均長を有する配列のサブセットを同定するステップをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
冗長配列を同定し、冗長配列を除去または削除し、それによって非冗長の、または正規化された複数のアミノ酸配列を残すステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
得られた複数のアミノ酸配列に対して関連配列を同定し、それらの配列を該複数のアミノ酸配列に加えるステップをさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
複数のアミノ酸配列のソースと異なるデータソースから関連配列を同定する、請求項11の方法。
【請求項13】
二次構造または二次構造の組立体またはフォールドを形成すると予測されるペプチドを突然変異させるステップをさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ペプチドをコードする核酸を突然変異させるステップをさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ペプチドまたは該ペプチドをコードする核酸を突然変異させることによって、同定のリガンドに対して異なる親和性を有するペプチドを得る、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
以下の(i)〜(iii)から選択される組み合わせを実施するステップをさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法:
(i) (a) ペプチドを突然変異させるステップおよび(b) 冗長配列を同定し、冗長配列を除去または削除して、非冗長の、または正規化された複数のアミノ酸配列を残すステップ;
(ii) (a) 得られた複数のアミノ酸配列に対して関連配列を同定し、それらの配列を該複数のアミノ酸配列に加えるステップおよび(b) 冗長配列を同定し、冗長配列を除去または削除して、非冗長の、または正規化された複数のアミノ酸配列を残すステップ; および
(iii) (a) ペプチドを突然変異させるステップおよび(b) 冗長配列を同定し、冗長配列を除去または削除して、非冗長の、または正規化された複数のアミノ酸配列を残すステップおよび(c) 得られた複数のアミノ酸配列に対して関連配列を同定し、それらの配列を該複数のアミノ酸配列に加えるステップ。
【請求項17】
(i)および/または(ii)および/または(iii)のうちいずれか1つの任意の順序での反復を実施して、それにより、非冗長であるがなお非常に多様なデータセットを生成するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ペプチドを合成手段によって製造する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ペプチドを組換え手段によって製造する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ペプチドを固体表面または複数の固体表面上でアレイとして提示させる、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ファージまたは細胞の表面上で、またはリボソーム提示によって、またはin vitro提示によって前記ペプチドを発現させるか、または細胞または複数の細胞内で前記ペプチドを発現させる、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
以下のステップを含む、低い構造冗長性を有するペプチドライブラリーを製造するための方法:
(i) 二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを独立して形成可能な複数のアミノ酸配列を得るステップ;
(ii) (i)の複数の配列から冗長構造を同定し、冗長構造を形成しうる冗長配列を除去または削除して、それにより、非冗長の複数のアミノ酸配列を残すステップ;
(iii) (ii)の非冗長の複数のアミノ酸配列を有するペプチドを製造するステップ; および
(iv) (iii)の前記ペプチドを、該ペプチドが二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成するように提示させるステップ。
【請求項23】
非冗長の複数の配列が、自律的にフォールドするその能力において異なる複数の関連構造を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
非冗長の複数の配列が、そのリガンド結合親和性および/またはリガンドに関する会合/解離定数において異なる複数の関連構造を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
非冗長の複数の配列が、その化学修飾において異なる複数の関連構造を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
以下のステップを含む、低い構造冗長性を有するペプチドライブラリーを製造するための方法:
(i) 独立の二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成可能な複数のアミノ酸配列を得るステップ;
(ii) (i)で得られたアミノ酸配列を有するペプチドを製造するステップ;
(iii) (ii)で製造されたペプチドから冗長配列を同定し、冗長配列を有するペプチドを除去または削除し、それによって非冗長の複数のアミノ酸配列を残すステップ; および
(iv) (iii)のペプチドを、該ペプチドが二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成するように提示させるステップ。
【請求項27】
以下のステップを含む、ペプチドライブラリーを製造するための方法:
(i) 天然環境(native context)での含有元であるタンパク質の他の部分から独立してフォールディング可能な複数のアミノ酸配列を同定するステップ;
(ii) (i)の配列をサイズ選択して、それにより、独立したタンパク質フォールドの平均長を有する配列のサブセットを同定するステップ;
(iii) (ii)で選択された配列から冗長配列を同定し、冗長配列を除去または削除し、それによって非冗長の複数のアミノ酸配列を残すステップ;
(iv) (iii)の非冗長の複数のアミノ酸配列からペプチドを製造するステップ; および
(v) (iv)のペプチドを、該ペプチドが二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成するように提示させるステップ。
【請求項28】
以下のステップを含む、ペプチドライブラリーを製造するための方法方法:
(i) 天然環境での含有元であるタンパク質の他の部分から独立してフォールディング可能な複数のアミノ酸配列を同定するステップ;
(ii) (i)の配列をサイズ選択して、それにより、独立したタンパク質フォールドの平均長を有する配列のサブセットを同定するステップ;
(iii) (ii)で選択された配列から冗長配列を同定し、冗長配列を除去または削除し、それによって非冗長の複数のアミノ酸配列を残すステップ;
(iv) (iii)の非冗長の複数のアミノ酸配列に対して関連配列を同定し、(iii)の非冗長の複数のアミノ酸配列に該配列を加えるステップを含むプロセスによって配列の多様なプールを製造するステップ;
(v) (iv)の配列の多様なプールからペプチドを製造するステップ; および
(vi) (v)のペプチドを、該ペプチドが二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドを形成するように提示させるステップ。
【請求項29】
二次構造および/または二次構造の組立体および/またはフォールドのアミノ酸配列を提供するステップをさらに含む、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
スクリーニング適用において使用するためのコンピュータ可読媒体であって、独立したフォールドを形成可能な非冗長アミノ酸配列のまたはそのような複数の配列の選択サブセットのデータベースを含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項31】
前記の複数の配列のサブセットが、アミノ酸コンテンツ(content)もしくは組成、pI、またはその組み合わせに基づいて選択される、請求項30に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項32】
スクリーニング適用において使用するためのコンピュータシステムであって、独立したフォールドを形成可能な非冗長アミノ酸配列のまたは該複数の配列の選択サブセットのデータベースを含むコンピュータ可読媒体、およびユーザーがタンパク質構造データおよび/またはリガンド構造データを入力することを可能にするユーザーインターフェースを含むコンピュータシステム。
【請求項33】
複数の配列のサブセットが、アミノ酸コンテンツもしくは組成、pI、またはその組み合わせに基づいて選択される、請求項32に記載のコンピュータシステム。
【請求項34】
独立したフォールドを形成可能な複数の非冗長アミノ酸配列または該複数の配列の選択サブセットを含むペプチドライブラリー。
【請求項35】
複数の配列のサブセットが、アミノ酸コンテンツもしくは組成、pI、またはその組み合わせに基づいて選択される、請求項34に記載のペプチドライブラリー。
【請求項36】
配列番号1〜30000を含む配列を有する複数のペプチドまたはそのサブセットを含むペプチドライブラリー。
【請求項37】
複数のペプチドのサブセットが、アミノ酸コンテンツもしくは組成、pI、またはその組み合わせに基づいて選択される、請求項36に記載のペプチドライブラリー。
【請求項38】
請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法によって製造されるペプチドライブラリー。
【請求項39】
薬物スクリーニングのためのハイスループットシステムであって、それ自身に直接または間接的に結合している複数のペプチドから本質的に構成されるかまたはそれらを有する固体支持体を含み、該複数のペプチドが、独立したフォールドを形成可能な非冗長アミノ酸配列または該複数の配列のサブセットを含む、ハイスループットシステム。
【請求項40】
複数の配列のサブセットが、アミノ酸コンテンツもしくは組成、pI、またはその組み合わせに基づいて選択される、請求項39のハイスループットシステム。
【請求項41】
以下のステップを含む方法:
(i) 請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法を実施して、それにより、ペプチドライブラリーを製造するステップ; および
(ii) そのように製造されたペプチドライブラリーをスクリーニングして、ペプチドを同定するステップ。
【請求項42】
以下のステップを含む方法:
(i) 請求項1〜29のいずれか一項にしたがって製造されたペプチドライブラリーを得るステップ; および
(ii) ペプチドライブラリーをスクリーニングして、ペプチドを同定するステップ。
【請求項43】
同定したペプチドを単離するステップをさらに含む、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
単離したペプチドを突然変異または親和性成熟に付するステップをさらに含む、請求項43の方法。
【請求項45】
ペプチドによって形成される構造の模倣物を同定するステップをさらに含む、請求項41〜44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
以下のステップを含む方法:
(i) 請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法を実施して、それにより、ペプチドライブラリーを製造するステップ;
(ii) そのように製造されたペプチドライブラリーをスクリーニングして、それにより、所望の構造を有するペプチドを同定するステップ; および
(iii) 場合により、ペプチドまたは該ペプチドの構造を人に提供するステップ。
【請求項47】
ペプチドの二次構造および/または活性を有する1種以上の化学物質を同定するステップをさらに含む、請求項46に記載の方法。

【公表番号】特表2010−517930(P2010−517930A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555282(P2008−555282)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/003393
【国際公開番号】WO2007/097923
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(507055730)フィロジカ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】