説明

ペプチド模倣大環状分子

本発明は、新規なペプチド模倣大環状分子およびこのような大環状分子をウイルス疾患の処置のために使用する方法を提供する。一局面において、本発明は、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼに結合し得るペプチド模倣大環状分子を提供する。このような大環状分子は、例えば、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ複合体のサブユニットの構築を破壊し得るものであり得る。一実施形態では、このような大環状分子は、前記ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼに対する配列MDVNPTLLFLKVPAQまたはMERIKELRNLMのペプチドの結合と競合し得るものであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
この出願は、2009年1月14日に出願された米国仮出願第61/144,706号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
季節性インフルエンザ感染は、第一世界および発展途上国で同様に主要な健康問題である。毎年、米国では、人口の5〜20パーセントがインフルエンザに罹り、200,000人を超える人がインフルエンザ合併症で入院し、約36,000人がインフルエンザで死亡する。世界的には、インフルエンザは、毎年、数千万例の呼吸器の疾病および250,000〜500,000例の死亡を引き起こす。ヒトに伝播し得る新しいトリインフルエンザ株は、免疫がなく、死亡例が数百万になり得る汎流行疾患が、このインフルエンザ株によってもたらされることになり得るため、重要な世界的健康問題である。「トリインフルエンザ」は、鳥間で高度に感染性であり、家畜の家禽において高い死亡率をもたらす病原性のトリインフルエンザサブタイプをいう。家禽および野鳥におけるトリインフルエンザの大発生はいくつかの国々で継続しており、これまでに少なくとも3つの亜群のトリインフルエンザウイルスがヒトに感染している。ヒトのトリインフルエンザ感染は稀であり、ほとんどの場合、家畜間での大発生の際の家禽との直接接触に関連しているが、ヒトにおける感染は、起こった場合は非常に重篤である。これまで、ヒトで報告された全症例の過半数は致死性であった。1996年に香港で最初に報告されて以来、世界保健機関では、トリインフルエンザおよび動物からヒトへのインフルエンザの伝播の場合を注意深く追跡調査しており、中国、インドネシアおよび東南アジア;パキスタン;イラク;エジプト;他で症例報告が確認されており、世界中で385例のうち243例が死亡となっている。ヒトからヒトへの伝播の持続の証拠はないが、トリインフルエンザがヒトからヒトへ広がる例が起こり得る。インフルエンザウイルスはすべて、急速に変異する能力を有するため、トリインフルエンザがヒトに対してより容易に感染できるようになる可能性があり、ある人から別の人へと伝染可能となり得るという懸念が相当ある。また、トリインフルエンザウイルス株は、世界規模では多くのヒトに感染しておらず、そのため、ヒト集団において、この株に対する免疫防御はほとんどまたは全くない。したがって、インフルエンザ汎流行は、トリインフルエンザウイルスの伝播の持続が発生した場合、容易に起こり得る。
【0003】
インフルエンザウイルスの3つの類型A、BおよびCは、ヒトインフルエンザの原因であり、インフルエンザAおよびBウイルスは、ほぼ毎冬に季節性流行病を引き起こす。インフルエンザAウイルスは、ウイルス表面上の2つのタンパク質、血球凝集素(H)およびノイラミニダーゼ(N)の特徴に基づいてサブタイプに分けられる。16種の異なる血球凝集素サブタイプと9種の異なるノイラミニダーゼサブタイプが存在し、H1N1とH3N2がヒトにみられる最も一般的なサブタイプである。トリインフルエンザウイルスはインフルエンザA H5N1をいう。インフルエンザAは、マイナス−センス(3’から5’)の単鎖RNAウイルスである。そのウイルスゲノム(これは、そのRNAに11種類のタンパク質(HA、NA、NP、M1、M2、NS1、NEP、PA、PB1、PB1−F2、PB2)をコードしている)は、直接タンパク質に翻訳されない。そうではなく、上記ウイルスは、翻訳前にゲノムをプラス−センスRNAに転写するそのRNA依存性RNAポリメラーゼに依存性である。RNA依存性RNAポリメラーゼには哺乳動物の対応物(counterpart)がなく、このため、この酵素を標的化する治療薬の開発において、種選択性が問題となることは少なくなる。ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼの他の例としては、ポリオウイルスの3Dpol、水疱性口内炎ウイルスL、およびC型肝炎ウイルスNS5bが挙げられ、後者は、C型肝炎抗ウイルス治療の開発のための実際の標的である。現在のインフルエンザ標的(例えば、タミフルでのノイラミニダーゼ)とは異なり、インフルエンザRNAポリメラーゼは高度に保存されており、したがって、現在の薬物が直面する耐性の課題に苦しめられる可能性は低い。
【0004】
最近、一部の研究者により、ウイルスの複製に重要な酵素であり、かつインフルエンザ大発生の際の治療的介入と予防の両方についての新規な標的であるインフルエンザタンパク質RNAポリメラーゼの最初の原子構造解析の詳細が報告された(非特許文献1;非特許文献2)。インフルエンザRNA依存性RNAポリメラーゼは、3つのサブユニットPA、PB1およびPB2のヘテロ三量体であり、PB1の310−らせんN末端領域がPAタンパク質の「顎(jaw)」間に結合している。PB1らせんは、複合体形成と核輸送に重要であると考えられ、ポリメラーゼ活性を妨害することによりインフルエンザAウイルスの複製が阻害される。また、最近、PB2サブユニットは、ウイルスポリメラーゼ複合体の活性において、例えばPB1サブユニットとの接触によって必須の役割を果していることが示された。非特許文献3を参照のこと。しかしながら、このタンパク質の結合および活性を妨害し得る化合物に関してはほとんどわかっていない。一般的に、RNA依存性RNAポリメラーゼが役割を果しているウイルス疾患を処置する治療方法、ならびにこのようなポリメラーゼの活性を改変し得る組成物および方法の必要性が依然として存在している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】He,X.ら,Nature,2008.454:p.1123−6
【非特許文献2】Obayashi,E.ら,Nature,2008.454:p.1127−31
【非特許文献3】Sugiyamaら,EMBO Journal,2009,28,1803−1811
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の概要
本発明はこれらおよび他の必要性に対処するものである。一局面において、本発明は、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼに結合し得るペプチド模倣大環状分子を提供する。このような大環状分子は、例えば、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ複合体のサブユニットの構築を破壊し得るものであり得る。一実施形態では、このような大環状分子は、前記ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼに対する配列MDVNPTLLFLKVPAQまたはMERIKELRNLMのペプチドの結合と競合し得るものであり得る。一実施形態では、本発明のペプチド模倣大環状分子は、アミノ酸配列MDVNPTLLFLKVPAQ(PB1)またはMERIKELRNLM(PB2)と少なくとも約60%、80%、90%または95%同一であるアミノ酸配列を含む。あるいは、前記ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸配列は、PAタンパク質のPB1ペプチド結合部位またはPB1タンパク質のPB2ペプチド結合部位のいずれかに結合するその能力について、例えば、PAもしくはPB1標的タンパク質での親和性選択によって、または構造に基づいた設計によって特定され、および最適化され、このような作用機構は、生物物理的/構造的試験および/またはPB1もしくはPB2ペプチドとの競合的置換アッセイによって確認される。いくつかの実施形態では、ペプチド模倣大環状分子は、310らせんまたはα−らせんなどのらせんを含む。他の実施形態では、ペプチド模倣大環状分子は、α,α−二置換アミノ酸を含む。本発明のペプチド模倣大環状分子は、少なくとも2つのアミノ酸のα位同士を接続する架橋剤を含むものであり得る。前記2つのアミノ酸の少なくとも1つはα,α−二置換アミノ酸であり得る。
【0007】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、式(I):
【0008】
【化1】

を有し、
式中:
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然または非天然のアミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
【0009】
【化2】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
Lは、式−L−L−の大環状分子形成リンカーであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリール、またはD残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリール、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
vおよびwは独立して1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは独立して0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
【0010】
他の実施形態において、ペプチド模倣大環状分子は、ペプチド模倣大環状分子内で第1のアミノ酸の骨格アミノ基を第2のアミノ酸に接続する架橋剤を含むものであり得る。例えば、本発明は、式(IV)または(IVa):
【0011】
【化3】

(式中:
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然または非天然のアミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
【0012】
【化4】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキル、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
はそれぞれ独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
vおよびwは独立して、1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは独立して、0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である)
のペプチド模倣大環状分子を提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、x+y+zは2、3、5または6である。
【0014】
さらに、本発明は、被験体に本発明のペプチド模倣大環状分子を投与することを含む、上記被験体のインフルエンザウイルス感染の処置する方法を提供する。また、被験体に本発明のペプチド模倣大環状分子を投与することを含む、上記被験体においてインフルエンザウイルス感染を予防する方法、または被験体にこのようなペプチド模倣大環状分子を投与することを含む、上記被験体においてインフルエンザウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼの活性を阻害する方法を提供する。
【0015】
文献の引用
本明細書において言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が、具体的にかつ個々に参照により組み込まれて示されるのと同程度まで、参照により本明細書に援用される。
【0016】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲で詳細に説明される。本発明の特徴および利点は、本発明の原理を利用し、図面を伴った例示的な実施形態を説明する、以下の詳細な説明を参照することにより、さらに十分に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1aは、RNA依存性RNAポリメラーゼのPAサブユニットとの複合体の結合PB1らせんを示す。Leu7およびLeu10(明色)は、310らせんを安定化させるためのi,i+3大環状分子形成の候補残基である。図1bは、図1aの配列に由来する大環状分子を示す。
【図2】図2aは、RNA依存性RNAポリメラーゼのPAサブユニットとの複合体から切り取った図1aの配列を示す。図2bは、RNA依存性RNAポリメラーゼのPAサブユニットとの複合体から切り取った図1bの配列に由来する大環状分子を示す。
【図3−1】図3は、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿安定性を示す。
【図3−2】図3は、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子の血漿安定性を示す。
【図4】図4は、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子のインビボ薬物動態的特性を示す。
【図5A】図5a〜5fは、本発明のペプチド模倣大環状分子のインビボ薬物動態的特性を示す。
【図5B】図5a〜5fは、本発明のペプチド模倣大環状分子のインビボ薬物動態的特性を示す。
【図5C】図5a〜5fは、本発明のペプチド模倣大環状分子のインビボ薬物動態的特性を示す。
【図5D】図5a〜5fは、本発明のペプチド模倣大環状分子のインビボ薬物動態的特性を示す。
【図5E】図5a〜5fは、本発明のペプチド模倣大環状分子のインビボ薬物動態的特性を示す。
【図5F】図5a〜5fは、本発明のペプチド模倣大環状分子のインビボ薬物動態的特性を示す。
【図6】図6は、本発明のいくつかのペプチド模倣大環状分子に関して選択された薬物動態的パラメータを示す。
【図7】図7は、本発明のペプチド模倣大環状分子の静脈内および皮下投与様式での薬物動態的特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書において用いる場合、「大環状分子(macrocycle)」という用語は、少なくとも9個の共有結合された原子によって形成されるリングまたはサイクルを含む化学構造を有する分子を指す。
【0019】
本明細書において用いる場合、「ペプチド模倣大環状分子(peptidomimetic macrocycle)」または「架橋ポリペプチド」という用語は、同じ分子内の第一の天然に存在するアミノ酸残基、または天然に存在しないアミノ酸残基(またはアナログ)および第二の天然に存在するアミノ酸残基、または天然に存在しないアミノ酸残基(またはアナログ)の間で大環状分子を形成する、複数のペプチド結合および少なくとも1つの大環状分子形成リンカーによって結合された複数のアミノ酸残基を含む化合物を指す。ペプチド模倣大環状分子は、大環状分子形成リンカーが、第一のアミノ酸残基(またはアナログ)のα炭素を第二のアミノ酸残基(またはアナログ)のα炭素に連結する実施形態を含む。ペプチド模倣大環状分子は必要に応じて、1つ以上のアミノ酸残基および/またはアミノ酸アナログ残基の間の1つ以上の非ペプチド結合を含み、そして必要に応じて、1つ以上の天然に存在しないアミノ酸残基またはアミノ酸アナログ残基を、大環状分子を形成する任意のものに加えて、含む。「対応する非架橋ポリペプチド」は、ペプチド模倣大環状分子との関連においていう場合、大環状分子と同じ長さであり、上記大環状分子に対応する野生型配列の等価な天然アミノ酸を含むポリペプチドに関すると理解されたい。
【0020】
本明細書において用いる場合、「安定性」という用語は、円二色性、NMR、または別の生物物理学的手段によって測定される、本発明のペプチド模倣大環状分子によって溶液中で規定される二次構造の維持、またはインビトロもしくはインビボにおけるタンパク質分解性の分解に対する抵抗性を指す。本発明において企図される二次構造の非限定的な例は、らせん、β−ターン、およびβ−プリーツシートである。一般的に、「らせん」または「らせんの」という用語は、任意の型のらせんの二次構造、例えば、310−らせん、α−らせん、およびπ−らせんをいうために用いる。
【0021】
本明細書において用いる場合、「らせん(helical)安定性」という用語は、円二色性またはNMRによって測定される、本発明のペプチド模倣大環状分子によるらせん構造の維持を指す。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、対応する架橋されていない大環状分子と比較して、円二色性によって決定されるヘリシティにおいて、少なくとも1.25、1.5、1.75、または2倍の増大を示す。
【0022】
「α−アミノ酸」または単に「アミノ酸」という用語は、α−炭素と呼ばれる炭素に結合したアミノ基およびカルボキシル基の両方を含有する分子を指す。適切なアミノ酸としては、限定するものではないが、天然に存在するアミノ酸のD−異性体およびL−異性体の両方、ならびに有機合成または他の代謝経路によって調製される天然に存在しないアミノ酸が挙げられる。文脈が具体的に別のことを示さない限り、本明細書において使用されるアミノ酸という用語は、アミノ酸アナログを含むものとする。
【0023】
「天然に存在するアミノ酸」という用語は、自然界において合成されるペプチドにおいて一般に見つけられ、一文字の略語、A、R、N、C、D、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、Y、およびVによって公知の20個のアミノ酸のうちのいずれか1つを指す。
【0024】
「アミノ酸アナログ」または「非天然アミノ酸」という用語は、アミノ酸に構造的に類似しており、かつペプチド模倣大環状分子の形成においてアミノ酸の代わりに用いることができる分子を指す。アミノ酸アナログとしては、限定するものではないが、アミノ基とカルボキシル基の間に1つ以上の追加のメチレン基を包含すること(例えばα−アミノβ−カルボキシ酸)を除いて、または同様に反応性の基によってアミノ基もしくはカルボキシ基が置換されること(例えば第二級もしくは第三級アミンでの第一級アミンの置換またはエステルでのカルボキシ基の置換)を除いて、本明細書において規定されるアミノ酸と構造的に同一である化合物が挙げられる。
【0025】
「非必須」アミノ酸残基は、その必須の生物学的または生化学的活性(例えばレセプター結合または活性化)を消失することも、実質的に改変することもなく、ポリペプチドの野生型配列から改変することができる残基である(例えば、BH3ドメインまたはp53 MDM2結合ドメイン)。「必須」アミノ酸残基とは、ポリペプチドの野生型配列から改変された場合に、結果として、ポリペプチドの必須の生物学的または生化学的活性を消失し、または実質的に消失することになる残基である。
【0026】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基と交換される置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該分野において規定されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えばK、R、H)、酸性の側鎖(例えば、D、E)、非荷電極性側鎖(例えば、G、N、Q、S、T、Y、C)、非極性側鎖(例えば、A、V、L、I、P、F、M、W)、β分枝側鎖(例えば、T、V、I)、および芳香族側鎖(例えば、Y、F、W、H)を有するアミノ酸が挙げられる。従って、ポリペプチドにおける、予測される非必須アミノ酸残基は、例えば、好ましくは、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基と交換される。許容できる置換の他の例は、等比体積の(isosteric)考慮(例えば、メチオニンに対するノルロイシン)または他の特性(例えば、フェニルアラニンに対する2−チエニルアラニン)に基づく置換である。
【0027】
大環状分子または大環状分子形成リンカーと組み合わせて、本明細書において用いられる「メンバー」という用語は、大環状分子を形成し、または大環状分子を形成することができる原子を指し、そして置換基または側鎖の原子を除外する。類推によって、シクロデカン、1,2−ジフルオロ−デカン、および1,3−ジメチルシクロデカンは全て、水素またはフルオロ置換基またはメチル側鎖が大環状分子の形成に参加しないので、10員の大環状分子と考えられる。
【0028】
記号
【0029】
【化5】

は、分子構造の一部として用いられる場合、単結合またはトランスもしくはシス二重結合を指す。
【0030】
「アミノ酸側鎖」という用語は、アミノ酸におけるα−炭素に結合した部分を指す。例えば、アラニンについてのアミノ酸側鎖は、メチルであり、フェニルアラニンについてのアミノ酸側鎖は、フェニルメチルであり、システインについてのアミノ酸側鎖は、チオメチルであり、アスパルテートについてのアミノ酸側鎖は、カルボキシメチルであり、チロシンについてのアミノ酸側鎖は、4−ヒドロキシフェニルメチルであるなどである。他の天然に存在しないアミノ酸側鎖、例えば、自然界において生じるもの(例えば、アミノ酸代謝物)または合成的に作製されるもの(例えば、α,α二置換アミノ酸)もまた含まれる。
【0031】
用語「α,α二置換アミノ」酸という用語は、2つの天然または非天然アミノ酸側鎖に結合した炭素(α−炭素)に結合したアミノ基およびカルボキシル基の両方を含有する分子または部分を指す。
【0032】
「ポリペプチド」という用語は、共有結合(例えば、アミド結合)によって結合した、2個以上の天然に存在するアミノ酸、または天然に存在しないアミノ酸を包含する。本明細書において記載されるポリペプチドとしては、完全長タンパク質(例えば、完全に処理された(processed)タンパク質)およびより短いアミノ酸配列(例えば、天然に存在するタンパク質の断片または合成ポリペプチド断片)が挙げられる。
【0033】
本明細書において使用される場合、「大環状分子化試薬(macrocyclization reagent)」または「大環状分子形成試薬」という用語は、2つの反応基の間の反応を媒介することによって、本発明のペプチド模倣大環状分子を調製するために用いられ得る任意の試薬を指す。反応性の基は、例えば、アジドおよびアルキンであってもよく、この場合には、大環状分子化試薬としては、限定するものではないが、CuBr、CuI、またはCuOTfなどの反応性Cu(I)種、ならびにアスコルビン酸またはアスコルビン酸ナトリウムなどの還元剤の添加によってインサイチュにおいて活性Cu(I)試薬に変換することができる、Cu(COCH、CuSO、およびCuClなどのCu(II)塩を提供する試薬などのCu試薬が挙げられる。大環状分子化試薬としては、例えば、CpRuCl(PPh、[CpRuCl]、または反応性Ru(II)種を提供し得る他のRu試薬などの、当該分野において公知のRu試薬をさらに挙げることができる。他の場合において、反応基は、末端のオレフィンである。そのような実施形態において、大環状分子化試薬または大環状分子形成試薬は、第VIII族遷移金属カルベン触媒などの、安定した後遷移金属カルベン錯体触媒を含むが、これらに限定されないメタセシス(metathesis)触媒である。例えば、そのような触媒は、+2酸化状態を有し、16の電子数を有し、かつ五配位のRuおよびOs金属中心である。追加の触媒は、Grubbsら、「Ring Closing Metathesis and Related Processes in Organic Synthesis」Acc.Chem.Res.1995、28、446〜452頁および米国特許第5,811,515号において開示される。さらに他の場合において、反応基は、チオール基である。そのような実施形態において、大環状分子化試薬は、例えば、ハロゲン基などの2つのチオール反応性基で官能化されたリンカーである。
【0034】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素またはその基を指す。
【0035】
「アルキル」という用語は、示された数の炭素原子を含有する、直鎖または分枝鎖である炭化水素鎖を指す。例えば、C〜C10は、基が、その中に1〜10個(両端を含む)の炭素原子を有することを示す。いかなる数の指示もない場合、「アルキル」とは、その中に1〜20個(両端を含む)の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。
【0036】
「アルキレン」という用語は、二価アルキル(つまり−R−)を指す。
【0037】
「アルケニル」という用語は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖である炭化水素鎖を指す。アルケニル部分は、示された数の炭素原子を含有する。例えば、C〜C10は、その基が、その中に2〜10個(両端を含む)の炭素原子を有することを示す。「低級アルケニル」という用語は、C〜Cアルケニル鎖を指す。いかなる数の指示もない場合、「アルケニル」とは、その中に2〜20個(両端を含む)の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。
【0038】
「アルキニル」という用語は、1つ以上の炭素−炭素三重結合を有する直鎖または分枝鎖である炭化水素鎖を指す。アルキニル部分は、示された数の炭素原子を含有する。例えば、C〜C10は、その基が、その中に2〜10個(両端を含む)の炭素原子を有することを示す。「低級アルキニル」という用語は、C〜Cアルキニル鎖を指す。いかなる数の指示もない場合、「アルキニル」とは、その中に2〜20個(両端を含む)の炭素原子を有する鎖(直鎖または分枝鎖)である。
【0039】
「アリール」という用語は、6個の炭素の単環式または10個の炭素の二環式芳香族環系を指し、ここで各々の環の0、1、2、3、または4個の原子は、置換基によって置換される。アリール基の例としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。「アリールアルキル」という用語または「アラルキル」という用語は、アリールで置換されたアルキルを指す。「アリールアルコキシ(arylalkoxy)」という用語は、アリールで置換されたアルコキシを指す。
【0040】
「アリールアルキル」とは、上記に規定されるアリール基であって、そのアリール基の水素原子のうちの1つが、上記に規定されるC〜Cアルキル基で置き換えられているものを指す。アリールアルキル基の代表的な例としては、限定するものではないが、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−エチルフェニル、3−エチルフェニル、4−エチルフェニル、2−プロピルフェニル、3−プロピルフェニル、4−プロピルフェニル、2−ブチルフェニル、3−ブチルフェニル、4−ブチルフェニル、2−ペンチルフェニル、3−ペンチルフェニル、4−ペンチルフェニル、2−イソプロピルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、2−イソブチルフェニル、3−イソブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、2−sec−ブチルフェニル、3−sec−ブチルフェニル、4−sec−ブチルフェニル、2−t−ブチルフェニル、3−t−ブチルフェニル、および4−t−ブチルフェニルが挙げられる。
【0041】
「アリールアミド」とは、上記に規定されるアリール基であって、そのアリール基の水素原子のうちの1つが、1つ以上の−C(O)NH基で置き換えられているものを指す。アリールアミド基の代表的な例としては、2−C(O)NH2−フェニル、3−C(O)NH−フェニル、4−C(O)NH−フェニル、2−C(O)NH−ピリジル、3−C(O)NH−ピリジル、および4−C(O)NH−ピリジルが挙げられる。
【0042】
「アルキルヘテロ環」とは、上記に規定されるC〜Cアルキル基であって、そのC〜Cアルキル基の水素原子のうちの1つが、ヘテロ環で置き換えられているものを指す。アルキルヘテロ環基の代表的な例としては、限定するものではないが、−CHCH−モルホリン、−CHCH−ピペリジン、−CHCHCH−モルホリン、および−CHCHCH−イミダゾールが挙げられる。
【0043】
「アルキルアミド」とは、上記に規定されるC〜Cアルキル基であって、そのC〜Cアルキル基の水素原子のうちの1つが、−C(O)NH基で置き換えられているものを指す。アルキルアミド基の代表的な例としては、限定するものではないが、−CH−C(O)NH、−CHCH−C(O)NH、−CHCHCHC(O)NH、−CHCHCHCHC(O)NH、−CHCHCHCHCHC(O)NH、−CHCH(C(O)NH)CH、−CHCH(C(O)NH)CHCH、−CH(C(O)NH)CHCH、−C(CHCHC(O)NH、−CH−CH−NH−C(O)−CH、−CH−CH−NH−C(O)−CH−CH3、および−CH−CH−NH−C(O)−CH=CHが挙げられる。
【0044】
「アルカノール」とは、上記に規定されるC〜Cアルキル基であって、そのC〜Cアルキル基の水素原子のうちの1つが、ヒドロキシル基で置き換えられているものを指す。アルカノール基の代表的な例としては、限定するものではないが、−CHOH、−CHCHOH、−CHCHCHOH、−CHCHCHCHOH、−CHCHCHCHCHOH、−CHCH(OH)CH、−CHCH(OH)CHCH、−CH(OH)CH、および−C(CHCHOHが挙げられる。
【0045】
「アルキルカルボキシ」とは、上記に規定されるC〜Cアルキル基であって、そのC〜Cアルキル基の水素原子のうちの1つが、−−COOH基で置き換えられているものを指す。アルキルカルボキシ基の代表的な例としては、限定するものではないが、−CHCOOH、−CHCHCOOH、−CHCHCHCOOH、−CHCHCHCHCOOH、−CHCH(COOH)CH、−CHCHCHCHCHCOOH、−CHCH(COOH)CHCH、−CH(COOH)CHCH、および−C(CHCHCOOHが挙げられる。
【0046】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書において用いる場合、3〜12個の炭素、好ましくは3〜8個の炭素、およびより好ましくは3〜6個の炭素を有する飽和環式炭化水素基および部分的に不飽和の環式炭化水素基であって、ここでそのシクロアルキル基が、必要に応じてさらに置換されている環式炭化水素基を包含する。いくつかのシクロアルキル基としては、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0047】
「ヘテロアリール」という用語は、単環式である場合、1〜3個のヘテロ原子、二環式である場合、1〜6個のヘテロ原子、または三環式である場合、1〜9個のヘテロ原子を有する芳香族の5〜8員の単環式、8〜12員の二環式、または11〜14員の三環式環系を指し、このようなヘテロ原子は、O、N、またはSから選択され(例えば、炭素原子と、単環式、二環式、または三環式である場合、それぞれ、1〜3、1〜6、または1〜9個のO、N、またはSのヘテロ原子)、ここで各々の環の0、1、2、3、または4個の原子が、置換基によって置換されている。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、フリル、またはフラニル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、ピリミジニル、チオフェニル、またはチエニル、キノリニル、インドリル、チアゾリルなどが挙げられる。
【0048】
「ヘテロアリールアルキル」という用語または「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルキルを指す。「ヘテロアリールアルコキシ」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルコキシを指す。
【0049】
「ヘテロアリールアルキル」という用語または「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルキルを指す。「ヘテロアリールアルコキシ」という用語は、ヘテロアリールで置換されたアルコキシを指す。
【0050】
「ヘテロシクリル」という用語は、単環式である場合、1〜3個のヘテロ原子、二環式である場合、1〜6個のヘテロ原子、または三環式である場合、1〜9個のヘテロ原子を有する非芳香族の5〜8員の単環式、8〜12員の二環式、または11〜14員の三環式環系を指し、このようなヘテロ原子は、O、N、またはSから選択され(例えば、炭素原子と、単環式、二環式、または三環式である場合、それぞれ、1〜3、1〜6、または1〜9個のO、N、またはSのヘテロ原子)、各々の環の0、1、2、または3個の原子は、置換基によって置換される。ヘテロシクリル基の例としては、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル(dioxanyl)、モルホリニル、テトラヒドロフラニルなどが挙げられる。
【0051】
「置換基」という用語は、任意の分子、化合物、または部分の上の水素原子などの第2の原子または基を交換する基を指す。適切な置換基としては、限定するものではないが、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、オキソ、ニトロ、ハロアルキル、アルキル、アルカリル、アリール、アラルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルコキシカルボニル、アミド、カルボキシ、アルカンスルホニル、アルキルカルボニル、およびシアノ基が挙げられる。
【0052】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上の不斉中心を含有し、従ってラセミ化合物およびラセミ混合物、単一の鏡像異性体、個々のジアステレオマー、ならびにジアステレオマー混合物として存在する。これらの化合物の全てのそのような異性体形態は、別段明確に規定されない限り、本発明に含まれる。いくつかの実施形態において、本発明の化合物はまた、複数の互変異性形態で表され、そのような事例において、本発明は、本明細書において記載される化合物の全ての互変異性形態を含む(例えば、環系のアルキル化が、複数の部位でアルキル化をもたらす場合、本発明は、全てのそのような反応産物を含む)。そのような化合物の全てのそのような異性体形態は、別段明確に規定されない限り、本発明に含まれる。本明細書において記載される化合物の全ての結晶形態は、明確に規定されない限り、本発明に含まれる。
【0053】
本明細書において用いる場合、「増加」および「減少」という用語は、統計的に有意に(すなわち、p<0.1)、それぞれ、少なくとも5%の増加または減少を引き起こすことを意味する。
【0054】
本明細書において用いる場合、変数についての数値的な範囲の記述は、本発明が、その範囲内の値のうちのいずれかに等しい変数で実行されてもよいことを伝えるように意図される。従って、本質的に不連続の変数については、変数は、その範囲の終点を含む数値的な範囲内の任意の整数値と等しい。同様に、本質的に連続の変数については、変数は、その範囲の終点を含む数値的な範囲内の任意の実際の値と等しい。例として、限定するものではないが、0および2の間の値を有するとして記載される変数は、その変数が本質的に不連続の場合、値0、1、または2をとり、その変数が本質的に連続の場合、値0.0、0.1、0.01、0.001、または任意の他の実際の値≧0かつ≦2をとる。
【0055】
本明細書において用いる場合、具体的に別のことを示されない限り、「または(あるいは、もしくは)」という単語は、「いずれか/または」の排他的な意味ではなく、「および/または」の包括的な意味で用いられる。
【0056】
「平均して」という用語は、各データポイントについての、少なくとも3回の独立した反復の実行に由来する平均値を表す。
【0057】
「生物学的活性」という用語は、本発明の大環状分子の構造的および機能的特性を包含する。生物学的活性は、例えば、構造的安定性、ヘリシティ(例えば、α−ヘリシティを含む)、標的に対する親和性、タンパク質分解性の分解に対する抵抗性、細胞透過性、細胞内安定性、インビボ安定性、またはその任意の組合せである。
【0058】
本発明の1つ以上の特定の実施形態の詳細は、添付の図面および下記の説明において記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、本明細書本文および図面からならびに本特許請求の範囲から明白となる。
【0059】
ペプチド模倣大環状分子の設計
一般的に、ウイルスが宿主細胞内での感染または複製のために必要とするタンパク質を標的化する、または上記タンパク質と相互作用するペプチド模倣大環状分子が調製される。このようなウイルスは、例えば、オルトミクソウイルス科のウイルスに属するインフルエンザウイルスであり得る。また、この科には、トゴトウイルスおよびドーリウイルスが含まれる。インフルエンザウイルスには、ヒトおよび他の種に感染するいくつかの型およびサブタイプが知られており、インフルエンザA型ウイルスは、人間、鳥、豚、馬、アザラシ科の動物(seal)および他の動物に感染するが、野鳥はこれらのウイルスの天然宿主である。インフルエンザA型ウイルスはサブタイプに分けられ、ウイルス表面上の2つのタンパク質:血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)に基づいて命名されている:例えば、「H7N2ウイルス」は、HA 7タンパク質とNA 2タンパク質を有するインフルエンザAサブタイプを指定する。同様に、「H5N1」ウイルスは、HA 5タンパク質とNA 1タンパク質を有する。HAサブタイプは16種類知られており、NAサブタイプは9種類知られている。HAおよびNAタンパク質の多くの異なる組合せが可能である。わずかに一部のインフルエンザAサブタイプ(すなわち、H1N1、H1N2、およびH3N2)は、現在のところ、人間において循環しており、他のサブタイプは他の動物種において非常に一般的に見られる。例えば、H7N7およびH3N8ウイルスは、馬において疾病を引き起こし、また、H3N8は、最近、犬においても疾病を引き起こすことが示された(http://www.cdc.gov/flu/avian/gen−info/flu−viruses.htm)。
【0060】
本発明による抗ウイルス剤は、高リスク群(病院組織、高齢者介護施設、免疫抑制個体)を保護するために、ケースバイケース基準で使用され得る。抗ウイルス剤の潜在的用途は、トリH5N1によって引き起こされるものであれ、他のインフルエンザウイルス株によって引き起こされるものであれ、今後の汎流行の広がりおよび重症度を限定的にすることである。サブタイプH5およびH7のトリインフルエンザAウイルス、例えば、H5N1、H7N7、およびH7N3ウイルスは高い病原性と関連しており、これらのウイルスによるヒト感染は、軽度のもの(H7N3、H7N7)から重度で致死性の疾患(H7N7、H5N1)までにわたる。低病原性ウイルス感染によるヒトの疾病は文献に示されており、非常に軽度の症状(例えば、結膜炎)からインフルエンザ様の疾病まで含まれる。ヒトに感染したことのある低病原性ウイルスの例としては、H7N7、H9N2およびH7N2が挙げられる(http://www.cdc.gov/flu/avian/gen−info/flu−viruses.htm)。
【0061】
インフルエンザBウイルスは、通常、ヒトにみられるが、アザラシ科の動物にも感染することがあり得る。インフルエンザAウイルスとは異なり、このウイルスは、サブタイプによって分類されない。インフルエンザBウイルスは、ヒトにおいて病的状態および死亡を引き起こすことがあり得るが、一般的には、インフルエンザAウイルスよりも重症度の低い流行病と関連している。インフルエンザB型ウイルスはヒト流行病を引き起こすことがあり得るが、汎流行病を引き起こしたことはない(http://www.cdc.gov/flu/avian/gen−info/flu−viruses.htm)。
【0062】
インフルエンザC型ウイルスは、ヒトにおいて軽度の疾病を引き起こすが、流行病または汎流行病は引き起こさない。また、このウイルスは犬や豚に感染することがあり得る。このウイルスはサブタイプによって分類されない(http://www.cdc.gov/flu/avian/gen−info/flu−viruses.htm)。
【0063】
インフルエンザウイルスは、細胞表面受容体特異性および細胞向性に関して互いに異なるが、共通の侵入経路を用いる。これらの経路のチャート化およびインフルエンザウイルスの伝播、侵入、複製、生合成、構築または脱出(exit)に関与している宿主細胞タンパク質の特定により、既存のインフルエンザ株および出現しているインフルエンザ株に対する一般薬剤の開発が可能になる。また、上記薬剤は、同様の経路を用いる非関連ウイルスに対して有用性が示されることがあり得る。例えば、上記薬剤は、インフルエンザウイルスに加えていくつかの異なるウイルスからも気道上皮細胞を防御するものであり得る。
【0064】
一実施形態では、標的化対象のウイルスはアデノウイルスである。アデノウイルスは、非常に一般的には呼吸器系の疾病を引き起こす。アデノウイルス感染によって引き起こされる呼吸器系の疾病の症状は、感冒症候群から肺炎、クループおよび気管支炎までにわたる。免疫機構が弱まった状態の患者は特に、アデノウイルス感染の重度の合併症に罹患し易い。急性呼吸器疾患(ARD)(最初に、第二次世界大戦中に軍隊の補充兵に認められた)は、群がった状態およびストレス状態の間にアデノウイルス感染症によって引き起こされ得る。アデノウイルスは、二本鎖DNAを含む中型(90〜100nm)でエンベロープのない二十面体(icosohedral)ウイルスである。免疫学的に相違する49の型(6つの亜属:A〜F)が存在し、ヒト感染症を引き起こすことがあり得る。アデノウイルスは、化学薬剤または物理的因子および有害なpH条件に対して異常に安定であり、体外での長期生存が可能である。いくつかのアデノウイルス、例えばAD2およびAd5(C種)などは、感染侵入のためにクラスリン媒介性エンドサイトーシスおよびマクロピノサイトーシスを利用する。別のいくつかのアデノウイルス、例えばAd3(B種)などは、感染侵入のためにダイナミン依存性エンドサイトーシスおよびマクロピノサイトーシスを利用する。
【0065】
一実施形態では、標的化対象のウイルスは呼吸器合胞体ウイルス(RSV)である。RSVは、乳児および1歳未満の小児における細気管支炎および肺炎の最も一般的な原因である。この疾病は、たいてい、発熱、鼻水、咳および場合によっては喘鳴から始まる。最初のRSV感染の間、乳児および幼児の25%〜40%は細気管支炎または肺炎の徴候または症状を有し、0.5%〜2%は入院が必要である。ほとんどの小児は8〜15日で疾病から回復する。RSV感染で入院する小児の大部分は年齢6ヶ月未満である。また、RSVは、一生涯を通して繰り返し感染を引き起こし、通常、中等度から重度の風邪様症状を伴う。しかしながら、どの年齢でも、特に、高齢者または心臓、肺もしくは免疫機構が弱まっている状態の人において重度の下気道疾患が起こることがあり得る。RSVはマイナス−センスでエンベロープを有するRNAウイルスである。ビリオンは、形状および大きさが種々であり(平均直径は120〜300nm)、その周囲環境において不安定であり(周囲環境表面上での生存は数時間だけ)、石鹸と水と消毒薬で容易に不活化される。
【0066】
一実施形態では、標的化対象のウイルスはヒトパラインフルエンザウイルス(HPIV)である。HPIVは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に次いで、幼児における下気道疾患の2番目に一般的な原因である。RSVと同様、HPIVも一生涯を通して繰り返し感染を引き起こすことがあり得、通常、上気道の疾病(例えば、風邪および/または喉の痛み)によって症状が発現する。また、HPIVは、特に、高齢者および免疫機構が弱まった状態の患者において、重篤な下気道疾患を引き起こすことがあり得、繰り返し感染する(例えば、肺炎、気管支炎および細気管支炎)。各々の4種類のHPIVは、異なる臨床的および疫学的特徴を有する。HPIV−1とHPIV−2の最も顕著な臨床像はクループ(すなわち、喉頭気管支炎)である。HPIV−1は小児のクループの主な原因であるが、HPIV−2はあまり高頻度に検出されない。HPIV−1および−2はともに、他の上気道および下気道の疾病を引き起こすことがあり得る。HPIV−3は、細気管支炎および肺炎と関連している頻度がより高い。HPIV−4は、おそらく重度の疾患を引き起こす可能性が低いため、検出されることは稀である。HPIVの潜伏期間は一般的に1〜7日間である。HPIVはマイナス−センス鎖で単鎖RNAのウイルスであり、融合および、その表面上に、血球凝集素−ノイラミニダーゼ糖タンパク質の「スパイク」を有する。HPIVの血清型には4つの型があり(1〜4)、サブタイプには2つある(4aおよび4b)。ビリオンは大きさ(平均直径は150〜300nm)および形状が種々であり、その周囲環境において不安定であり(周囲環境表面上での生存は数時間)、石鹸と水で容易に不活化される。
【0067】
一実施形態では、標的化対象のウイルスはコロナウイルスである。コロナウイルスは、コロナウイルス科に属する動物ウイルス属の1つである。コロナウイルスは、エンベロープを有し、プラス−センス鎖で単鎖のRNAゲノムおよびらせん対称を有するウイルスである。コロナウイルスのゲノムサイズはほぼ16〜31キロベースの範囲であり、RNAウイルスにしては並外れて大きい。「コロナウイルス」という名称は、ウイルスエンベロープが電子顕微鏡検査下で小さな球根構造体の特徴的な環により王冠状に見えるため、王冠を意味するラテン語coronaに由来している。この形態構造は、実際には上記ウイルスのスパイクペプロマー(spike peplomer)によって形成されており、上記ペプロマーは、ウイルス表面に存在し、宿主向性を決定するタンパク質である。コロナウイルスは、そのウイルス目の全ウイルスが、感染の間に、サブゲノムmRNAの3’共通末端ネステッドセット(3’ co−terminal nested set)をもたらすため、巣を意味するラテン語nidusにちなんで命名されたニドウイルス目に分類される。全コロナウイルスの全体構造に寄与するタンパク質はスパイク、エンベロープ、膜およびヌクレオキャプシドである。SARSの特定の場合では、S上の規定の受容体結合ドメインにより、ウイルスのその細胞受容体アンギオテンシン変換酵素2への結合が媒介される。
【0068】
一実施形態では、標的化対象のウイルスはライノウイルスである。ライノウイルス(「鼻」を意味するギリシャ語rhinに由来)は、ピコルナウイルス科の属の1つのウイルスである。ライノウイルスは、ヒトにおける最も一般的なウイルス感染因子であり、感冒の原因因子である。105を超える血清学的ウイルス型が存在し、これらは風邪症状を引き起こし、全症例のほぼ50%はライノウイルスが一因である。ライノウイルスは、7.2〜8.5kb長の単鎖でプラスのセンスRNAゲノムを有する。ゲノムの5’末端には、ウイルスコードタンパク質で哺乳動物のmRNAと同様に、3’ポリ−Aテールがある。構造タンパク質はゲノムの5’領域にコードされており、非構造タンパク質は末端にコードされている。これは、全ピコルナウイルスについて同じである。ウイルス粒子自体にエンベロープはなく、二十面体構造である。
【0069】
ウイルスタンパク質(またはウイルスの感染性に関与している宿主細胞タンパク質)の
任意の二次構造が本発明の方法の基礎を形成し得る。例えば、らせんである二次構造を含むウイルスタンパク質が、前記らせんを基礎とするペプチド模倣大環状分子を設計するために使用され得る。
【0070】
一実施形態では、本発明のペプチド模倣大環状分子は、インフルエンザウイルスのPB1またはPB2配列を基礎として設計される。PB1配列は、既知のすべてのインフルエンザAウイルス株間で高度に保存されており、もたらされる薬物耐性は、現行の医療水準で観察されるものより低いことがあり得る。NCBIデータバンクの2,485種類のインフルエンザAウイルス株由来のPB1の最初の25個のN末端アミノ酸のアラインメント(Ghanem,2007)により、PB1のPA相互作用ドメインにおいて注目すべき配列保存が実証されている。したがって、PB1配列を基礎とした抗ウイルス治療薬により、全部ではないが、ほとんどのインフルエンザAウイルス株がブロックされ得る。さらに、これらの変異がほとんどないPB1を基礎とするペプチド模倣大環状分子の配列改変により、PB1インヒビターの抗ウイルスカクテルによってエスケープ変異体による耐性を排除することが可能となり得る。
【0071】
本発明における使用のための大環状分子化ならびに大環状分子ペプチドに適した配列の非限定的な例示のリストを下記に示す。
【0072】
【表1−1】

【0073】
【表1−2】

【0074】
【表1−3】

【0075】
【表1−4】

【0076】
【表1−5】

本発明のペプチド模倣大環状分子
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、式(I):
【0077】
【化6】

を有し、
式中:
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然または非天然のアミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
【0078】
【化7】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
Lは、式−L−L−の大環状分子形成リンカーであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリール、またはD残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリール、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
vおよびwは独立して1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは独立して0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
【0079】
一例において、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。別の例において、RおよびRの両方は、独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、メチルである。他の実施形態において、RおよびRは、メチルである。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態において、x+y+zは、少なくとも2である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明の大環状分子または大環状分子前駆体における、A、B、C、D、またはEの各出現(occurrence)は、独立して選択される。例えば、式[A]によって表される配列は、xが3である場合、アミノ酸が同一でない、例えばGln−Asp−Alaである実施形態、および、アミノ酸が同一である、例えばGln−Gln−Glnである実施形態を包含する。これは、示される範囲におけるx、y、またはzの任意の値に適用される。同様に、uが1より大きい場合、各々の本発明の化合物は、同じまたは異なるペプチド模倣大環状分子を包含し得る。例えば、本発明の化合物は、異なるリンカーの長さまたは化学組成を含むペプチド模倣大環状分子を含み得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、らせんである二次構造を含み、Rは、−Hであり、らせん内水素結合を可能にする。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。一例において、Bは、α,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。他の実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、
【0082】
【化8】

である。
【0083】
他の実施形態において、第1のCαから第2のCαまで測定される大環状分子形成リンカーLの長さは、第1のCαから第2のCαまでの間のものを含むが、必ずしもこれらに限定されない、上記ペプチド模倣大環状分子の残基によって形成されるらせんなどの所望の二次ペプチド構造を安定させるために選択される。
【0084】
一実施形態において、式(I)のペプチド模倣大環状分子は:
【0085】
【化9】

である。
【0086】
ここで、RおよびRは各々独立して、独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキルである。
【0087】
関連する実施形態において、式(I)のペプチド模倣大環状分子は:
【0088】
【化10】

である。
【0089】
大環状分子形成リンカーLの例示的な実施形態は、下記に示される。
【0090】
【化11】

いくつかの実施形態では、本発明のペプチド模倣大環状分子は、式(II):
【0091】
【化12】

を有しており、
式中:
A、C、DおよびEはそれぞれ独立して、天然または非天然のアミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然のアミノ酸、アミノ酸アナログ、
【0092】
【化13】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
Lは、式
【0093】
【化14】

の大環状分子形成リンカーであり;
、L、およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ、独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ、独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリール、またはD残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールまたはE残基を有する環状構造の一部であり;
vおよびwは独立して1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは独立して0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
【0094】
一例では、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。別の例において、RおよびRの両方とも、独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、メチルである。他の実施形態において、RおよびRは、メチルである。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態において、x+y+zは、少なくとも2である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明の大環状分子または大環状分子前駆体における、A、B、C、D、またはEの各出現は、独立して選択される。例えば、式[A]によって表される配列は、xが3である場合、アミノ酸が同一でない、例えばGln−Asp−Alaである実施形態、および、アミノ酸が同一である、例えばGln−Gln−Glnである実施形態を包含する。これは、示される範囲におけるx、y、またはzの任意の値に適用される。
【0096】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、らせんである二次構造を含み、Rは、−Hであり、これによってらせん内水素結合が可能になる。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。一例において、Bは、α,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。他の実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、
【0097】
【化15】

である。
【0098】
他の実施形態において、第1のCαから第2のCαまで測定される大環状分子形成リンカーLの長さは、第1のCαから第2のCαまでの間のものを含むが、必ずしもこれらに限定されない、上記ペプチド模倣大環状分子の残基によって形成されるらせんなどの所望の二次ペプチド構造を安定させるために選択される。
【0099】
大環状分子形成リンカーLの例示的な実施形態は、下記に示される。
【0100】
【化16】

【0101】
【化17】

他の実施形態において、本発明は、式(III)のペプチド模倣大環状分子:
【0102】
【化18】

を提供し、
式中:
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然または非天然アミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
【0103】
【化19】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
は、非置換であるかもしくはRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
、L、L、およびLは、独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であって、それぞれ、非置換であるかまたはRで置換され;
Kは、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
はそれぞれ、独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ、独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、非置換であるかもしくはRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールまたはD残基を有する環状構造の一部であり;
は、非置換であるかもしくはRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリールまたはE残基を有する環状構造の一部であり;
vおよびwは独立して1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは独立して0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
【0104】
一例において、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。別の例において、RおよびRの両方は、独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、メチルである。他の実施形態において、RおよびRは、メチルである。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態において、x+y+zは、少なくとも2である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明の大環状分子または大環状分子前駆体における、A、B、C、D、またはEの各々の出現は、独立して選択される。例えば、式[A]によって表される配列は、xが3である場合、アミノ酸が同一でない、例えばGln−Asp−Alaである実施形態、および、アミノ酸が同一である、例えばGln−Gln−Glnである実施形態を包含する。これは、示される範囲におけるx、y、またはzの任意の値に適用される。
【0106】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、らせんである二次構造を含み、Rは、−Hであり、これによってらせん内水素結合が可能になる。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。一例において、Bは、α,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。他の実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、
【0107】
【化20】

である。
【0108】
他の実施形態において、第1のCαから第2のCαまで測定される大環状分子形成リンカー[−L−S−L−S−L−]の長さは、第1のCαから第2のCαまでの間のものを含むが、必ずしもこれらに限定されない、上記ペプチド模倣大環状分子の残基によって形成されるらせん(310らせんまたはα−らせんを含むが、これらに限定されない)などの所望の二次ペプチド構造を安定させるために選択される。
【0109】
大環状分子または大環状分子前駆体は、例えば液相法または固相法によって合成され、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の両方を含むことができる。例えばChemistry and Biochemistry of the Amino Acids、G.C.Barrett編、Chapman and Hall、1985の中のHunt、「The Non−Protein Amino Acids」を参照のこと。いくつかの実施形態では、チオール部分は、アミノ酸残基L−システイン、D−システイン、α−メチル−Lシステイン、α−メチル−D−システイン、L−ホモシステイン、D−ホモシステイン、α−メチル−L−ホモシステイン、またはα−メチル−D−ホモシステインの側鎖である。ビスアルキル化試薬は、一般式X−L−Yで表されるものであり、式中、Lは、リンカー部分であり、XおよびYは、Lとの結合を形成するために−SH部分によって置き換えられる脱離基である。いくつかの実施形態において、XおよびYは、I、Br、またはClなどのハロゲンである。
【0110】
他の実施形態において、式I、II、またはIIIの化合物におけるDおよび/またはEは、細胞の取り込みを促進するためにさらに改変される。いくつかの実施形態において、ペプチド模倣大環状分子の脂質付加(lipidating)またはペグ化(PEGylating)は、細胞の取り込みを促進し、バイオアベイラビリティを増大させ、血液循環を増加させ、薬物動態を改変し、免疫原性を低下させ、および/または必要とされる投与の頻度を減少させる。
【0111】
他の実施形態において、式I、II、またはIIIの化合物における、[D]および[E]の少なくとも1つは、上記ペプチド模倣大環状分子が、少なくとも2つの大環状分子形成リンカーを含むような、追加の大環状分子形成リンカーを含む部分を表す。特定の実施形態において、ペプチド模倣大環状分子は、2つの大環状分子形成リンカーを含む。
【0112】
本発明のペプチド模倣大環状分子では、本明細書に記載されている任意の大環状分子形成リンカーは、表1〜4に示される任意の配列との任意の組み合わせで、および本明細書において示される任意のR−置換基との任意の組合せでも、用いられてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、310らせんモチーフまたはα−らせんモチーフのような少なくとも1つのらせんモチーフを含む。例えば、式I、II、またはIIIの化合物におけるA、B、および/またはCは、1つ以上のらせんを含む。一般的な問題として、らせんは、1ターンあたり3〜4個のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態において、上記ペプチド模倣大環状分子のらせんは、1〜5個のターン、および従って3〜20個のアミノ酸残基を含む。特定の実施形態において、らせんは、1個のターン、2個のターン、3個のターン、4個のターン、または5個のターンを含む。いくつかの実施形態において、大環状分子形成リンカーは、上記ペプチド模倣大環状分子内に含まれるらせんモチーフを安定化させる。従って、いくつかの実施形態において、第1のCαから第2のCαまでの大環状分子形成リンカーLの長さは、らせんの安定性を増加させるために選択される。いくつかの実施形態において、大環状分子形成リンカーは、らせんの1ターン〜5ターンまでの間に架かる(span)。いくつかの実施形態において、大環状分子形成リンカーは、らせんの約1ターン、2ターン、3ターン、4ターン、または5ターンに架かる。いくつかの実施形態において、大環状分子形成リンカーの長さは、らせんの1ターンあたり約5Å〜9Åまたはらせんの1ターンあたり約6Å〜8Åである。大環状分子形成リンカーが、らせんの約1ターンに架かる場合、その長さは、約5個の炭素−炭素結合〜13個の炭素−炭素結合、約7個の炭素−炭素結合〜11個の炭素−炭素結合、または約9個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、らせんの約2ターンに架かる場合、その長さは、約8個の炭素−炭素結合〜16個の炭素−炭素結合、約10個の炭素−炭素結合〜14個の炭素−炭素結合、または約12個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、らせんの約3ターンに架かる場合、その長さは、約14個の炭素−炭素結合〜22個の炭素−炭素結合、約16個の炭素−炭素結合〜20個の炭素−炭素結合、または約18個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、らせんの約4ターンに架かる場合、その長さは、約20個の炭素−炭素結合〜28個の炭素−炭素結合、約22個の炭素−炭素結合〜26個の炭素−炭素結合、または約24個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、らせんの約5ターンに架かる場合、その長さは、約26個の炭素−炭素結合〜34個の炭素−炭素結合、約28個の炭素−炭素結合〜32個の炭素−炭素結合、または約30個の炭素−炭素結合に等しい。大環状分子形成リンカーが、らせんの約1ターンに架かる場合、その連結は、約4個の原子〜12個の原子、約6個の原子〜10個の原子、または約8個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記らせんの約2ターンに架かる場合、その連結は、約7個の原子〜15個の原子、約9個の原子〜13個の原子、または約11個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記らせんの約3ターンに架かる場合、その連結は、約13個の原子〜21個の原子、約15個の原子〜19個の原子、または約17個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記らせんの約4ターンに架かる場合、その連結は、約19個の原子〜27個の原子、約21個の原子〜25個の原子、または約23個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記らせんの約5ターンに架かる場合、その連結は、約25個の原子〜33個の原子、約27個の原子〜31個の原子、または約29個の原子を含む。大環状分子形成リンカーが、上記らせんの約1ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約17員〜25員、約19員〜23員、または約21員を含有する環を形成する。大環状分子形成リンカーが、上記らせんの約2ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約29員〜37員、約31員〜35員、または約33員を含有する環を形成する。大環状分子形成リンカーが、上記らせんの約3ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約44員〜52員、約46員〜50員、または約48員を含有する環を形成する。大環状分子形成リンカーが、上記らせんの約4ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約59員〜67員、約61員〜65員、または約63員を含有する環を形成する。大環状分子形成リンカーが、上記らせんの約5ターンに架かる場合、得られる大環状分子は、約74員〜82員、約76員〜80員、または約78員を含有する環を形成する。
【0114】
他の実施形態において、本発明は、式(IV)または(IVa)のペプチド模倣大環状分子を提供し、
【0115】
【化21】

式中、
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然または非天然アミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
【0116】
【化22】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキル、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
Lは、式−L−L−の大環状分子形成リンカーであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ、独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
はそれぞれ、独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体、または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
vおよびwは独立して1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である。
【0117】
一例において、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。別の例において、RおよびRの両方は、独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換されるアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つは、メチルである。他の実施形態において、RおよびRは、メチルである。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態において、x+y+zは、少なくとも1である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、少なくとも2である。本発明の他の実施形態において、x+y+zは、3、4、5、6、7、8、9、または10である。本発明の大環状分子または大環状分子前駆体における、A、B、C、D、またはEの各々の出現は、独立して選択される。例えば、式[A]によって表される配列は、xが3である場合、アミノ酸が同一でない、例えばGln−Asp−Alaである実施形態、および、アミノ酸が同一である、例えばGln−Gln−Glnである実施形態を包含する。これは、示される範囲におけるx、y、またはzの任意の値に適用される。
【0119】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、らせんである二次構造を含み、かつRは、−Hであり、これによってらせん内水素結合が可能になる。いくつかの実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。一例において、Bは、α,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。他の実施形態において、A、B、C、D、またはEの少なくとも1つは、
【0120】
【化23】

である。
【0121】
他の実施形態において、第1のCαから第2のCαまで測定される大環状分子形成リンカーLの長さは、第1のCαから第2のCαまでの間のものを含むが、必ずしもこれらに限定されない、上記ペプチド模倣大環状分子の残基によって形成されるらせん(310らせんまたはα−らせんを含む)などの所望の二次ペプチド構造を安定させるために選択される。
【0122】
大環状分子形成リンカーL−L−の例示的な実施形態は、下記に示される。
【0123】
【化24】

ペプチド模倣大環状分子の調製
本発明のペプチド模倣大環状分子は、当技術分野において公知の任意の種々の方法によって調製され得る。例えば、表1において「X」で示される任意の残基が、同じ分子中の第2の残基またはそのような残基の前駆体とクロスリンカーを形成し得る残基で置換されてもよい。
【0124】
ペプチド模倣大環状分子の形成をもたらすための種々の方法が、当技術分野において公知である。例えば、式Iのペプチド模倣大環状分子の調製は、Schafmeisterら,J.Am.Chem.Soc.122:5891−5892(2000);Schafmeister & Verdine,J.Am.Chem.Soc.122:5891(2005);Walenskyら,Science 305:1466−1470(2004);および米国特許7,192,713において記載されている。引用文献において開示されているα,α−二置換アミノ酸およびアミノ酸前駆体を、ペプチド模倣大環状分子の前駆体ポリペプチドの合成において使用してもよい。例えば、「S5−オレフィンアミノ酸」は、(S)−α−(2’−ペンテニル)アラニンであり、「R8オレフィンアミノ酸」は(R)−α−(2’−オクテニル)アラニンである。このようなアミノ酸を前駆体ポリペプチド中に組み込んだ後、末端オレフィンをメタセシス触媒と反応させ、これによってペプチド模倣大環状分子の形成をもたらす。
【0125】
他の実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、式IVまたはIVaである。このような大環状分子の調製のための方法は、例えば、米国特許第7,202,332号において記載されている。
【0126】
いくつかの実施形態において、これらのペプチド模倣大環状分子の合成は、アジド部分およびアルキン部分を含有するペプチド模倣物前駆体の合成;その後ペプチド模倣物前駆体を大環状分子化試薬と接触させて、トリアゾール結合ペプチド模倣大環状分子を生成させることを特徴とする複数段階工程を含む。このようなプロセスは、例えば、2008年2月25日に出願された米国出願第12/037,041号に記載される。大環状分子または大環状分子前駆体は、例えば、液相法または固相法によって合成され、天然に存在するおよび天然に存在しないアミノ酸の両方を含有することができる。例えば、Chemistry and Biochemistry of the Amino Acids、G.C.Barrett編、Chapman and Hall、1985年の中のHunt、「The Non−Protein Amino Acids」を参照のこと。
【0127】
いくつかの実施形態において、アジドはある残基のα−炭素に結合しており、アルキンは別の残基のα−炭素に結合している。いくつかの実施形態において、アジド部分は、アミノ酸L−リジン、D−リジン、α−メチル−L−リジン、α−メチル−D−リジン、L−オルニチン、D−オルニチン、α−メチル−L−オルニチンまたはα−メチル−D−オルニチンのアジド−アナログである。別の実施形態において、アルキン部分は、L−プロパルギルグリシンである。さらに別の実施形態において、アルキン部分は、L−プロパルギルグリシン、D−プロパルギルグリシン、(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−5−ヘキシン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−5−ヘキシン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−7−オクチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−7−オクチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−8−ノニン酸および(R)−2−アミノ−2−メチル−8−ノニン酸からなる群より選択されるアミノ酸である。
【0128】
いくつかの実施形態において、本発明は、ペプチド模倣大環状分子を合成するための方法であって、式Vまたは式VI:
【0129】
【化25】

であって、
式中、v、w、x、y、z、A、B、C、D、E、R、R、R、R、LおよびLは式(II)で定義されたとおりであり、大環状分子化試薬がCu試薬である場合R12は−Hであり、大環状分子化試薬がRu試薬である場合R12は−Hまたはアルキルである、ペプチド模倣物前駆体を、大環状分子化試薬と接触させる工程を含み、さらにこの接触させる工程が、式IIIまたは式IVにおいてアルキンとアジド部分との間に形成される共有結合をもたらす、方法を提供する。例えば、大環状分子化試薬がRu試薬である場合、R12はメチルであってもよい。
【0130】
本発明のペプチド模倣大環状分子において、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの両方が独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルである。いくつかの実施形態において、A、B、C、DまたはEの少なくとも1つは、α,α−二置換アミノ酸である。1つの例では、Bはα,α−二置換アミノ酸である。例えば、A、B、C、DまたはEの少なくとも1つは、2−アミノイソ酪酸である。
【0131】
例えば、RおよびRの少なくとも1つは、非置換であるかまたはハロ−で置換される、アルキルである。別の例において、RおよびRの両方が独立して、非置換であるかまたはハロ−で置換される、アルキルである。いくつかの実施形態において、RおよびRの少なくとも1つはメチルである。他の実施形態において、RおよびRはメチルである。大環状分子化試薬は、Cu試薬であっても、またはRu試薬であってもよい。
【0132】
いくつかの実施形態において、ペプチド模倣物前駆体は、接触工程の前に精製される。他の実施形態において、上記ペプチド模倣大環状分子は、接触工程の後に精製される。さらに他の実施形態において、上記ペプチド模倣大環状分子は、接触工程の後に再折り畳み(リフォールディング)される。この方法は溶液中で行われてもよいし、または、あるいは、この方法は固体支持体上で行われてもよい。
【0133】
上記結合に有利な条件下でペプチド模倣物前駆体またはペプチド模倣大環状分子に結合する、標的高分子の存在下で本発明の方法を行うこともまた、本発明において想定される。いくつかの実施形態において、この方法は、上記結合に有利な条件下でペプチド模倣物前駆体またはペプチド模倣大環状分子に優先的に結合する標的高分子の存在下で行われる。またこの方法を適用して、ペプチド模倣大環状分子のライブラリーを合成してもよい。
【0134】
いくつかの実施形態において、式Vまたは式VIのペプチド模倣物前駆体のアルキン部分は、L−プロパルギルグリシン、D−プロパルギルグリシン、(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−5−ヘキシン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−5−ヘキシン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−7−オクチン酸、(R)−2−アミノ−2−メチル−7−オクチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−8−ノニン酸、および(R)−2−アミノ−2−メチル−8−ノニン酸からなる群より選択されるアミノ酸の側鎖である。他の実施形態において、式Vまたは式VIのペプチド模倣物前駆体のアジド部分は、ε−アジド−L−リジン、ε−アジド−D−リジン、ε−アジド−α−メチル−L−リジン、ε−アジド−α−メチル−D−リジン、δ−アジド−α−メチル−L−オルニチン、およびδ−アジド−α−メチル−D−オルニチンからなる群より選択されるアミノ酸の側鎖である。
【0135】
いくつかの実施形態において、x+y+zは2であり、A、BおよびCは独立して、天然または非天然のアミノ酸である。他の実施形態において、x+y+zは3または6であり、A、BおよびCは独立して天然または非天然のアミノ酸である。
【0136】
いくつかの実施形態において、接触工程は、プロトン性溶媒(protic solvent)、水性溶媒、有機溶媒、およびこれらの混合物からなる群より選択される溶媒において行われる。例えば、溶媒は、HO、THF、THF/HO、tBuOH/HO、DMF、DIPEA、CHCNまたはCHCl、ClCHCHClまたはこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。溶媒は、らせん形成に有利な溶媒であってもよい。
【0137】
代替であるが等価な保護基、脱離基または試薬は置換され、かつ特定の合成工程は、代替の順番または所望の化合物を生成する順序で行われる。本明細書に記載の化合物の合成において有用な、合成化学による変換および保護基の方法論(保護および脱保護)としては、例えば、Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers(1989);GreeneおよびWuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、John Wiley and Sons(1991);FieserおよびFieser、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1994);およびPaquette編、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1995)、ならびにこれらの後続の版において記載されているものなどを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、本発明のペプチド模倣大環状分子は、構造:
【0139】
【化26】

を有する。
【0140】
また、上記に示すインフルエンザPB1ペプチド模倣大環状分子は、それぞれ、SP−8、SP−16、SP−13およびSP−41としても特定される。他の実施形態では、本発明のペプチド模倣大環状分子は、構造:
【0141】
【化27】

を有する。
【0142】
ペプチド模倣大環状分子の調製
本発明のペプチド模倣大環状分子は、例えば、Fieldsら、Synthetic Peptides:A User’s Guideの第3章、Grant編、W.H.Freeman&Co.、New York、N.Y.、1992年、77頁において記載されているものなどの化学合成法によって製造される。従って、例えば、ペプチドは、固相合成の自動化メリフィールド(Merrifield)技術を用いて、側鎖保護アミノ酸を用いてtBocまたはFmoc化学のいずれかによって保護されたアミンを用いて、例えば、自動ペプチド合成機(例えば、Applied Biosystems(Foster City、CA)、430A、431、または433型)において合成される。
【0143】
本明細書に記載のペプチド模倣物前駆体およびペプチド模倣大環状分子を製造する1つの方法は、固相ペプチド合成(SPPS)を用いる。C末端アミノ酸は、リンカー分子との酸不安定結合を介して架橋ポリスチレン樹脂に結合している。この樹脂は、合成に用いられる溶媒において不溶性であり、このため比較的簡単にかつ迅速に過剰な試薬および副産物を洗い流すようになる。N末端は、Fmoc基で保護されており、酸において安定であるが塩基によって除去することができる。側鎖官能基は、必要に応じて塩基に安定だが酸に不安定な基で保護されている。
【0144】
より長いペプチド模倣物前駆体は、例えば、自然な化学的ライゲーション(native chemical ligation)を用いて個々の合成ペプチドを結合することによって作製される。あるいは、より長い合成ペプチドは、周知の組換えDNA技術およびタンパク質発現技術によって生合成される。このような技術は、周知の標準的マニュアルにおいて詳細なプロトコールとともに提供されている。本発明のペプチド模倣物前駆体をコードする遺伝子を構築するために、アミノ酸配列を逆翻訳して、好ましくは遺伝子が発現される生物体に最適なコドンを有する、アミノ酸配列をコードする核酸配列を得る。次に、合成遺伝子を、典型的には、必要であればペプチドおよび任意の調節エレメントをコードするオリゴヌクレオチドを合成することによって作製する。合成遺伝子を適切なクローニングベクター中に挿入し、宿主細胞中にトランスフェクトする。次いでペプチドを、選択した発現系および宿主に適した適切な条件下で発現させる。ペプチドを標準的な方法によって精製し特徴付ける。
【0145】
ペプチド模倣物前駆体は、例えば、ハイスループット多チャンネルコンビナトリアル合成装置(例えば、CreoSalus、Louisville、KY製のThuramed TETRASマルチチャンネルペプチド合成装置またはAAPPTEC、Inc.、Louisville、KY製のModel Apex 396マルチチャンネルペプチド合成装置)を用いるハイスループットなコンビナトリアル法において、例えば作製される。
【0146】
以下の合成スキームは、本発明を例示するためだけに提供され、本明細書に記載の本発明の範囲を限定することを意図するものではない。図面を簡略化するために、例示的なスキームは、アジドアミノ酸アナログであるε−アジド−α−メチル−L−リジンおよびε−アジド−α−メチル−D−リジン、ならびにアルキンアミノ酸アナログであるL−プロパルギルグリシン、(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、および(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸を表す。従って、以下の合成スキームにおいて、各々のR、R、RおよびRは、−Hであり;各々のLは−(CH−であり;各々のLは−(CH)−である。しかしながら、上記の詳細な説明の全体にわたって述べたように、多くの他のアミノ酸アナログを使用することが可能で、ここでR、R、R、R、LおよびLは、本明細書に開示されている種々の構造から独立して選択することができる。
【0147】
合成スキーム1
【0148】
【化28】

合成スキーム1は、本発明のいくつかの化合物の調製を示す。キラル補助基(S)−2−[N−(N’−ベンジルプロリル)アミノ]ベンゾフェノン(BPB)およびグリシンまたはアラニンなどのアミノ酸に由来するシッフ塩基のNi(II)複合体は、Belokonら(1998)、Tetrahedron Asymm.9:4249〜4252において記載されているとおり調製する。得られた複合体を引き続き、アジドまたはアルキニル部分を含むアルキル化試薬と反応させて、鏡像異性的に濃縮された本発明の化合物を得る。必要に応じて、ペプチド合成において使用するために、得られた化合物を保護してもよい。
【0149】
合成スキーム2
【0150】
【化29】

合成スキーム2に示されるペプチド模倣大環状分子の合成のための一般的な方法において、ペプチド模倣物前駆体は、アジド部分およびアルキン部分を含み、市販のアミノ酸N−α−Fmoc−L−プロパルギルグリシンならびにアミノ酸(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンのN−α−Fmoc保護形態を用いる、液相または固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。次いでペプチド模倣物前駆体は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。ペプチド模倣物前駆体を、粗混合物として反応させるか、または有機溶液もしくは水性溶液においてCu(I)などの大環状分子化試薬との反応の前に精製する(Rostovtsevら(2002)、Angew.Chem.Int.Ed.41:2596〜2599;Tornoeら(2002)、J.Org.Chem.67:3057〜3064;Deitersら(2003)、J.Am.Chem.Soc.125:11782〜11783;Punnaら(2005)、Angew.Chem.Int.Ed.44:2215〜2220)。一実施形態において、トリアゾール形成反応は、らせん形成に有利な条件下で行われる。一実施形態において、大環状分子化工程は、HO、THF、CHCN、DMF、DIPEA、tBuOHまたはこれらの混合物からなる群より選択される溶媒において行われる。別の実施形態において、大環状分子化工程はDMFにおいて行われる。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、緩衝化された水性の溶媒または部分的に水性の溶媒において行われる。
【0151】
合成スキーム3
【0152】
【化30】

合成スキーム3に示されるペプチド模倣大環状分子の合成のための一般的な方法において、ペプチド模倣物前駆体は、アジド部分およびアルキン部分を含み、市販のアミノ酸N−α−Fmoc−L−プロパルギルグリシンならびにアミノ酸(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンのN−α−Fmoc保護形態を用いた、固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。ペプチド模倣物前駆体を、樹脂上で粗混合物としてCu(I)試薬などの大環状分子化試薬と反応させる(Rostovtsevら(2002)、Angew.Chem.Int.Ed.41:2596〜2599;Tornoeら(2002)、J.Org.Chem.67:3057〜3064;Deitersら(2003)、J.Am.Chem.Soc.125:11782〜11783;Punnaら(2005)、Angew.Chem.Int.Ed.44:2215〜2220)。次いで、得られたトリアゾール含有ペプチド模倣大環状分子を、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護して、固相樹脂から切断する。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、CHCl、ClCHCHCl、DMF、THF、NMP、DIPEA、2、6−ルチジン、ピリジン、DMSO、HOまたはこれらの混合物からなる群より選択される溶媒において行われる。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、緩衝化された水性の溶媒または部分的に水性の溶媒において行われる。
【0153】
合成スキーム4
【0154】
【化31】

合成スキーム4に示されるペプチド模倣大環状分子の合成のための一般的な方法において、ペプチド模倣物前駆体は、アジド部分およびアルキン部分を含み、市販のアミノ酸N−α−Fmoc−L−プロパルギルグリシンならびにアミノ酸(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンのN−α−Fmoc保護形態を用いる、液相または固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。次いでペプチド模倣物前駆体は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。ペプチド模倣物前駆体は、粗混合物として反応させるか、またはRu(II)試薬、例えば、CpRuCl(PPhもしくは[CpRuCl]などの大環状分子化試薬と反応させる前に精製する(Rasmussenら(2007)、Org.Lett.9:5337〜5339;Zhangら(2005)、J.Am.Chem.Soc.127:15998〜15999)。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、DMF、CHCNおよびTHFからなる群より選択される溶媒において行われる。
【0155】
合成スキーム5
【0156】
【化32】

合成スキーム5に示されるペプチド模倣大環状分子の合成のための一般的な方法において、ペプチド模倣物前駆体は、アジド部分およびアルキン部分を含み、かつ市販のアミノ酸N−α−Fmoc−L−プロパルギルグリシンならびにアミノ酸(S)−2−アミノ−2−メチル−4−ペンチン酸、(S)−2−アミノ−6−ヘプチン酸、(S)−2−アミノ−2−メチル−6−ヘプチン酸、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンのN−α−Fmoc保護形態を用いる、固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。ペプチド模倣物前駆体を、粗混合物として樹脂上でRu(II)試薬などの大環状分子化試薬と反応させる。例えば、試薬はCpRuCl(PPhまたは[CpRuCl]であってもよい(Rasmussenら(2007)、Org.Lett.9:5337〜5339;Zhangら(2005)、J.Am.Chem.Soc.127:15998〜15999)。いくつかの実施形態において、大環状分子化工程は、CHCl、ClCHCHCl、CHCN、DMF、およびTHFからなる群より選択される溶媒において行われる。
【0157】
本発明は、本明細書に記載のペプチド模倣大環状分子の合成における天然に存在しないアミノ酸およびアミノ酸アナログの使用を想定する。安定なトリアゾール含有ペプチド模倣大環状分子の合成のために使用される合成方法を行い易い任意のアミノ酸またはアミノ酸アナログを、本発明において用いることができる。例えば、L−プロパルギルグリシンが本発明において有用なアミノ酸として想定される。しかし、異なるアミノ酸側鎖を含む他のアルキン含有アミノ酸もまた、本発明において有用である。例えば、L−プロパルギルグリシンは、アミノ酸のα−炭素とアミノ酸側鎖のアルキンとの間に1つのメチレン単位を含む。本発明はまた、α−炭素とアルキンとの間に複数のメチレン単位を有するアミノ酸の使用も想定する。また、アミノ酸であるL−リジン、D−リジン、α−メチル−L−リジン、およびα−メチル−D−リジンのアジド−アナログが、本発明において有用なアミノ酸であると想定される。しかし、異なるアミノ酸側鎖を含有する他の末端アジドアミノ酸もまた、本発明において有用である。例えば、L−リジンのアジドアナログは、アミノ酸のα−炭素とアミノ酸側鎖の末端アジドとの間に4つのメチレン単位を含む。本発明はまた、α−炭素と末端アジドとの間に4つ未満のメチレン単位または4つより多いメチレン単位を有するアミノ酸の使用も想定する。表2は、本発明のペプチド模倣大環状分子の調製において有用ないくつかのアミノ酸を示す。
【0158】
【表2】

表2は、本発明のペプチド模倣大環状分子の調製において有用な例示的アミノ酸を示す。
【0159】
いくつかの実施形態において、アミノ酸およびアミノ酸アナログはD−配置のものである。他の実施形態において、アミノ酸およびアミノ酸アナログはL−配置のものである。いくつかの実施形態において、ペプチド模倣物中に含有されるアミノ酸およびアミノ酸アナログの一部はD−配置のものであるが、アミノ酸およびアミノ酸アナログの一部はL−配置のものである。いくつかの実施形態においてアミノ酸アナログは、α−メチル−L−プロパルギルグリシン、α−メチル−D−プロパルギルグリシン、ε−アジド−α−メチル−L−リジン、およびε−アジド−α−メチル−D−リジンなどのα,α−二置換のものである。いくつかの実施形態においてアミノ酸アナログは、N−アルキル化、例えば、N−メチル−L−プロパルギルグリシン、N−メチル−D−プロパルギルグリシン、N−メチル−ε−アジド−L−リジン、およびN−メチル−ε−アジド−D−リジンである。
【0160】
いくつかの実施形態において、そのアミノ酸の−NH部分は、−Fmocおよび−Bocを含むがこれらに限定されない保護基を用いて保護される。他の実施形態において、そのアミノ酸は、ペプチド模倣大環状分子の合成の前には保護されていない。
【0161】
他の実施形態において、式IIIのペプチド模倣大環状分子が合成される。このような大環状分子の調製は、例えば、2007年12月17日に出願された米国出願第11/957,325号に記載される。以下の合成スキームは、そのような化合物の調製を記載する。図面を簡略化するために、例示的なスキームは、LおよびLが両方とも−(CH)−であるL−システインまたはD−システインに由来するアミノ酸アナログを示す。しかしながら、上記の詳細な説明の全体にわたって述べたように、多くの他のアミノ酸アナログを使用することができ、LおよびLは、本明細書に開示されている種々の構造から独立して選択することができる。「[AA]」、「[AA]」、「[AA]」という記号は、天然または非天然アミノ酸などのアミド結合による結合部分の配列を表す。以前に記述されているとおり、「AA」のそれぞれの出現は任意の他の「AA」の出現とは無関係であり、「[AA]」などの式は、例えば、同一ではないアミノ酸の配列ならびに同一なアミノ酸の配列を包含する。
【0162】
合成スキーム6
【0163】
【化33】

スキーム6において、ペプチド模倣物前駆体は2つの−SH部分を含み、かつN−α−Fmoc−S−トリチル−L−システインまたはN−α−Fmoc−S−トリチル−D−システインなどの市販のN−α−Fmocアミノ酸を用いる固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。D−システインまたはL−システインのα−メチル化バージョンは、公知の方法(Seebachら(1996)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35:2708〜2748、およびその参照文献)によって作製され、次いで公知の方法(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Bioorganic Chemistry:Peptides and Proteins」、Oxford University Press、New York:1998)によって適切に保護されたN−α−Fmoc−S−トリチルモノマーに変換される。次いで前駆体ペプチド模倣物は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。前駆体ペプチド模倣物は、粗混合物として反応されるか、または有機溶液もしくは水性溶液においてX−L−Yとの反応の前に精製される。いくつかの実施形態においてアルキル化反応は、大環状分子化を容易にし、重合を回避するために希釈条件下(すなわち0.15mmol/L)で行われる。いくつかの実施形態において、アルキル化反応は、液体NH(Mosbergら(1985)、J.Am.Chem.Soc.107:2986−2987;Szewczukら(1992)、Int.J.Peptide Protein Res.40:233−242)、NH/MeOH、またはNH/DMF(Orら(1991)、J.Org.Chem.56:3146−3149)などの有機溶液中で行われる。他の実施形態において、アルキル化は、6MのグアニジニウムHCL、pH8などの水性溶液中で行われる(Brunelら(2005)、Chem.Commun.(20):2552〜2554)。他の実施形態において、アルキル化反応に使用される溶媒はDMFまたはジクロロエタンである。
【0164】
合成スキーム7
【0165】
【化34】

スキーム7において、前駆体ペプチド模倣物は2つ以上の−SH部分を含んでおり、その2つは特別に保護されていて、それにより大環状分子形成のためのその選択的な脱保護およびその後のアルキル化が可能になる。前駆体ペプチド模倣物は、N−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチル−L−システインまたはN−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチル−D−システインなどの市販のN−α−Fmocアミノ酸を用いる固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。D−システインまたはL−システインのα−メチル化バージョンは、公知の方法(Seebachら(1996)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35:2708−2748、およびその参照文献)によって作製され、次いで公知の方法(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Bioorganic Chemistry:Peptides and Proteins」、Oxford University Press、New York:1998)によって、適切に保護されたN−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチルモノマーに変換される。次いでペプチド模倣物前駆体のMmt保護基は、標準的な条件(例えば、DCM中1%TFAなどの弱酸)によって選択的に切断される。次いで前駆体ペプチド模倣物を、樹脂上で有機溶液においてX−L−Yと反応させる。例えば、この反応は、ジイソプロピルエチルアミンなどの立体障害塩基の存在下で起こる。いくつかの実施形態において、アルキル化反応は、液体NH(Mosbergら(1985)、J.Am.Chem.Soc.107:2986−2987;Szewczukら(1992)、Int.J.Peptide Protein Res.40:233−242)、NH/MeOH、またはNH/DMF(Orら(1991)、J.Org.Chem.56:3146−3149)などの有機溶液中で行われる。他の実施形態において、アルキル化反応は、DMFまたはジクロロエタン中で行われる。次いでペプチド模倣大環状分子は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。
【0166】
合成スキーム8
【0167】
【化35】

スキーム8において、ペプチド模倣物前駆体は2つ以上の−SH部分を含んでおり、その2つが特別に保護されており、大環状分子形成のため、その選択的な脱保護およびその後のアルキル化が可能になる。ペプチド模倣物前駆体は、N−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチル−L−システイン、N−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチル−D−システイン、N−α−Fmoc−S−S−t−ブチル−L−システイン、およびN−α−Fmoc−S−S−t−ブチル−D−システインなどの市販のN−α−Fmocアミノ酸を用いる固相ペプチド合成(SPPS)によって合成される。D−システインまたはL−システインのα−メチル化バージョンは、公知の方法(Seebachら(1996)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.35:2708−2748、およびその参照文献)によって作製され、次いで公知の方法(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Bioorganic Chemistry:Peptides and Proteins」、Oxford University Press、New York:1998)によって、適切に保護されたN−α−Fmoc−S−p−メトキシトリチルまたはN−α−Fmoc−S−S−t−ブチルモノマーに変換される。ペプチド模倣物前駆体のS−S−tブチル保護基は、公知の条件によって選択的に切断される(例えば、DMF中20%2−メルカプトエタノール、参照:Galandeら(2005)、J.Comb.Chem.7:174−177)。次いで前駆体ペプチド模倣物を、樹脂上で、有機溶液においてモル過剰のX−L−Yと反応させる。例えば、反応は、ジイソプロピルエチルアミンなどの立体障害塩基の存在下で起こる。次いでペプチド模倣物前駆体のMmt保護基は、標準的な条件(例えば、DCM中1%TFAなどの弱酸)によって選択的に切断される。次いでペプチド模倣物前駆体は、樹脂上で有機溶液における立体障害塩基による処理によって環化される。いくつかの実施形態において、アルキル化反応は、NH/MeOHまたはNH/DMF(Orら(1991)、J.Org.Chem.56:3146−3149)などの有機溶液中で行われる。次いでペプチド模倣大環状分子は、標準的な条件(例えば、95%TFAなどの強酸)によって脱保護され、固相樹脂から切断される。
【0168】
合成スキーム9
【0169】
【化36】

スキーム9において、ペプチド模倣物前駆体は、2つのL−システイン部分を含む。ペプチド模倣物前駆体は、生きた細胞中で公知の生物学的発現系によって、または公知のインビトロの無細胞発現方法によって合成される。前駆体ペプチド模倣物は、粗混合物として反応されるか、または有機溶液もしくは水性溶液においてX−L2−Yとの反応の前に精製される。いくつかの実施形態においてアルキル化反応は、大環状分子化を容易にし、重合を回避するために希釈条件下(すなわち0.15mmol/L)で行われる。いくつかの実施形態において、アルキル化反応は、液体NH(Mosbergら(1985)、J.Am.Chem.Soc.107:2986−2987;Szewczukら(1992)、Int.J.Peptide Protein Res.40 :233−242)、NH/MeOH、またはNH/DMF(Orら(1991)、J.Org.Chem.56:3146−3149)などの有機溶液中で行われる。他の実施形態において、アルキル化は、6MグアニジニウムHCL、pH8(Brunelら(2005)、Chem.Commun.(20):2552−2554)などの水性溶液中で行われる。他の実施形態において、アルキル化は、DMFまたはジクロロエタン中で行われる。別の実施形態において、アルキル化は非変性水溶液中で実行され、さらに別の実施形態においてアルキル化は、らせん構造形成に有利な条件下で行われる。さらに別の実施形態において、アルキル化は、前駆体ペプチド模倣物が別のタンパク質に結合するのに有利な条件下で行われ、その結果、アルキル化の間に結合らせん高次構造の形成がもたらされる。
【0170】
チオール基との反応に適切な、XおよびYについての種々の実施形態が想定される。一般に、各々のXまたはYは独立して、表5に示す一般的なカテゴリーから選択される。例えば、XおよびYは、−Cl、−Brまたは−Iなどのハロゲン化物である。本明細書に記載の任意の大環状分子形成リンカーを、表1〜4に示す任意の配列との任意の組合せ、そしてまた、本明細書に示す任意のR−置換基との任意の組合せでも用いてもよい。
【0171】
【表3】

本発明は、式(III)のペプチド模倣大環状分子の合成における、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸の両方のアミノ酸およびアミノ酸アナログの使用を想定する。安定なビス−スルフヒドリル含有ペプチド模倣大環状分子の合成に使用される合成方法を行い易い任意のアミノ酸またはアミノ酸アナログを、本発明において用いてもよい。例えば、システインが、本発明における有用なアミノ酸として想定される。しかし、異なるアミノ酸側鎖を含むシステイン以外の含硫アミノ酸もまた、有用である。例えば、システインは、アミノ酸のα−炭素とアミノ酸側鎖の末端−SHとの間に1つのメチレン単位を含む。本発明はまた、α−炭素と末端−SHの間に複数のメチレン単位を有するアミノ酸の使用も想定する。非限定的な例としては、α−メチル−L−ホモシステインおよびα−メチル−D−ホモシステインが挙げられる。いくつかの実施形態において、アミノ酸およびアミノ酸アナログは、D−配置のものである。他の実施形態において、アミノ酸およびアミノ酸アナログはL−配置のものである。いくつかの実施形態において、ペプチド模倣物に含有されるアミノ酸およびアミノ酸アナログの一部はD−配置のものであるが、アミノ酸およびアミノ酸アナログの一部はL−配置のものである。いくつかの実施形態において、アミノ酸アナログは、α−メチル−L−システインおよびα−メチル−D−システインなどのα,α−二置換のものである。
【0172】
本発明は、大環状分子形成リンカーを用いてペプチド模倣物前駆体内の2つ以上の−SH部分を連結させて本発明のペプチド模倣大環状分子が形成される、大環状分子を包含する。上述したように、大環状分子形成リンカーは、立体構造の剛性、代謝安定性の増加および/または細胞透過性の増加を付与する。さらに、いくつかの実施形態において、大環状形成の連結は、ペプチド模倣物の大環状分子のらせん二次構造を安定化させる。大環状分子形成リンカーは式X−L−Yのものであり、ここで、上記で定義したとおりXおよびYは両方とも同じ部分または異なる部分である。XおよびYは両方とも、1つの大環状分子形成リンカー−L−によるビス−スルフヒドリル含有ペプチド模倣物前駆体のビスアルキル化を可能にするという化学的特性を有する。上記で定義されているとおり、リンカー−L−は、上記で定義されているとおり、全てが必要に応じてR基で置換することができる、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレンもしくはヘテロシクロアリーレン、または−R−K−R−を含む。さらに、スルフヒドリル含有アミノ酸の−SHに結合している炭素以外の、大環状分子形成リンカー−L−内の1〜3個の炭素原子は、N、SまたはOなどのヘテロ原子で必要に応じて置換される。
【0173】
大環状分子形成リンカーX−L−YのL成分は、とりわけ、ペプチド模倣大環状分子を形成するために用いられる2つのアミノ酸アナログの位置の間の距離に依存して、長さが変化し得る。さらに、大環状分子形成リンカーのL成分および/またはL成分の長さが変化するので、安定なペプチド模倣大環状分子の形成に適切な全長のリンカーを生み出すために、Lの長さもまた変化し得る。例えば、使用されるアミノ酸アナログがさらなるメチレン単位をLおよびLのそれぞれに付加することによって変化する場合、Lの長さは、LおよびLの増加した長さを相殺するために約2メチレン単位に相当する(equivalent)長さだけ減少する。
【0174】
いくつかの実施形態において、Lは、式−(CH−のアルキレン基であり、nは約1〜約15の整数である。例えば、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である。他の実施形態において、Lはアルケニレン基である。さらに別の実施形態において、Lはアリール基である。
【0175】
表4は、X−L−Y基のさらなる実施形態を示す。
【0176】
【表4】

本発明を実行するために適切であると想定される、ペプチド模倣大環状分子を形成するためのさらなる方法としては、Mustapa,M.Firouz Mohdら、J.Org.Chem(2003)、68、8193〜8198頁;Yang、Binら Bioorg Med.Chem.Lett.(2004)、14、1403〜1406頁;米国特許第5,364,851号;米国特許第5,446,128号;米国特許第5,824,483号;米国特許第6,713,280号;および米国特許第7,202,332号によって開示されているものが挙げられる。そのような実施形態において、α位にさらなる置換基R−を含有しているアミノ酸前駆体が用いられる。そのようなアミノ酸は、架橋剤が置換される位置、または、あるいは、大環状分子前駆体の配列中のどこか他の場所であってもよい所望の位置で、大環状分子前駆体中に組み込まれる。次いで前駆体の環化を、示される方法に従って達成する。
【0177】
いくつかの実施形態では、得られるペプチド模倣大環状分子の配置を改変することが望ましい。例えば、310らせん配置がより望ましい場合、このような高次構造を誘導または上記高次構造に偏向させるため、大環状分子に対して、さらなる置換または改変(本発明の配列内の1つ以上のアミノ酸を2−アミノイソ酪酸(Aib)で置換など)が行われ得る。例えば、Boalら,J.Am.Chem.Soc.2007,129,6986−6987を参照のこと。一実施形態では、本発明のらせん大環状分子は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれを超えるAib置換を含む。
【0178】
アッセイ
本発明のペプチド模倣大環状分子の性質は、例えば、後述する方法を使用することによりアッセイされる。いくつかの実施形態では、本発明のペプチド模倣大環状分子は、本明細書に記載の置換基がない対応するポリペプチドに比べて改善された生物学的特性を有する。
【0179】
ヘリシティを決定するためのアッセイ
溶液中で、らせんドメインを有するポリペプチドの二次構造は、ランダムコイル構造とらせん構造との間の動的平衡に到達し、「ヘリシティパーセント(percent helicity)」として表される場合が多い。従って、例えば、非改変らせんドメインは大部分が、溶液中で通常25%未満のらせん含量を有するランダムコイルであり得る。一方、最適化されたリンカーを有するペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する架橋されていないポリペプチドのそれよりも少なくとも2倍高いヘリシティを有する。いくつかの実施形態において、本発明の大環状分子は、50%より高いヘリシティを有する。本発明のペプチド模倣大環状分子のヘリシティをアッセイするために、上記化合物を、水性溶液(例えば、pH7の50mMのリン酸カリウム溶液、または蒸留水(distilled HO)、25〜50μMの濃度まで)に溶解する。標準的な測定パラメーター(例えば、温度、20℃;波長、190〜260nm;ステップ分解能、0.5nm;速度、20nm/秒;蓄積、10;応答、1秒;帯域幅、1nm;光路長(path length)、0.1cm)を用いて、分光偏光計(例えば、Jasco J−710)において円二色性(CD)スペクトルを得る。平均残基楕円率(例えば、[Φ]222obs)をらせんデカペプチドモデル(Yangら(1986)、Methods Enzymol.130:208)について報告されている値で割ることによって、各ペプチドのらせん含量を計算する。
【0180】
融解温度(Tm)を決定するためのアッセイ
らせんなどの二次構造を含む本発明のペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する架橋されていないポリペプチドよりも高い融解温度を示す。代表的には、本発明のペプチド模倣大環状分子は、水性溶液中で高度に安定な構造を表す60℃超のTmを示す。融解温度に対する大環状分子形成の影響をアッセイするために、ペプチド模倣大環状分子または非改変ペプチドを、蒸留水中に溶解(例えば、50μMの最終濃度で)し、分光偏光計(例えば、Jasco J−710)において標準的なパラメーター(例えば、波長222nm;ステップ解像度、0.5nm;速度、20nm/秒;蓄積、10;応答、1秒;帯域幅、1nm;温度上昇速度:1℃/分;光路長、0.1cm)を用いて、ある温度範囲(例えば、4〜95℃)にわたって楕円率の変化を測定することによって、Tmを決定する。
【0181】
プロテアーゼ耐性アッセイ
ペプチド骨格のアミド結合は、プロテアーゼによる加水分解を受けやすく、そのためペプチド性化合物は、インビボでの急速な分解に対して脆弱になる。しかし、ペプチドらせん形成は、代表的にはアミド骨格を埋没させ、従って、タンパク質分解性の切断からアミド骨格を保護することができる。本発明のペプチド模倣大環状分子をインビトロのトリプシンタンパク質分解に供して、対応する架橋されていないポリペプチドと比較した分解速度の変化について評価し得る。例えば、ペプチド模倣大環状分子および対応する架橋されていないポリペプチドを、トリプシンアガロースでインキュベートし、遠心分離によって種々の時点で反応をクエンチして、その後HPLC注入して、280nmでの紫外線吸収により残存基質を定量する。簡潔に述べると、ペプチド模倣大環状分子およびペプチド模倣物前駆体(5μg(mcg))を、トリプシンアガロース(Pierce)(S/E約125)で0、10、20、90、および180分間インキュベートする。高速での卓上遠心分離によって反応をクエンチし、HPLCによる280nmでのピーク検出によって単離した上清中の残存している基質を定量する。タンパク質分解反応は一次反応速度式(first−order kinetics)を示し、時間に対するln[S](k=−1X勾配)のプロットから速度定数、kを決定する。
【0182】
エキソビボ安定性アッセイ
最適化されたリンカーを有するペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する架橋されていないポリペプチドのそれよりも少なくとも2倍高いエキソビボ半減期を有し、かつ12時間以上のエキソビボ半減期を有する。エキソビボの血清安定性研究には、種々のアッセイを用いてもよい。例えば、ペプチド模倣大環状分子または対応する架橋されていないポリペプチド(2μg)を、新鮮なマウス血清、ラット血清および/またはヒト血清(2mL)とともに、37℃で0、1、2、4、8、および24時間インキュベートする。インタクトな化合物のレベルを決定するために、以下の手順を用いてもよい:100μlの血清を2mlの遠心管に移すこと、その後に10μLの50%ギ酸および500μLのアセトニトリルを添加し、4±2℃で10分間、14,000RPMで遠心分離することによって、サンプルを抽出する。次いで上清を新しい2mlのチューブに移し、TurbovapにおいてN<10psi下、37℃でエバポレートさせる。サンプルを100μLのアセトニトリル:水(50:50)中で再構成し、LC−MS/MS分析にかける。
【0183】
インビトロ結合アッセイ
アクセプタータンパク質に対するペプチド模倣大環状分子およびペプチド模倣物前駆体の結合および親和性を評価するために、例えば、蛍光偏光アッセイ(FPA)を用いる。FPA技術は、偏光および蛍光トレーサーを用いて分子の配向および運動性を測定する。偏光によって励起されると、高い見かけの分子量を有する分子に結合している蛍光トレーサー(例えば、FITC)(例えば、大きなタンパク質に結合したFITC標識ペプチド)は、より小さい分子に結合している蛍光トレーサー(例えば、溶液中で遊離しているFITC標識ペプチド)と比較してそのより遅い回転速度のために、より高いレベルの偏光蛍光を発する。
【0184】
例えば、フルオレセイン化(fluoresceinated)ペプチド模倣大環状分子(25nM)を、結合緩衝液(140mMのNaCl、50mMのTris−HCL、pH7.4)中で、アクセプタータンパク質(25〜1000nM)と一緒に室温で30分間インキュベートする。結合活性を、例えば、ルミネッセンス分光光度計(例えば、Perkin−Elmer LS50B)において蛍光偏光によって測定する。Kd値は、例えば、Graphpad Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc.、San Diego、CA)を用いて、非線形回帰分析によって決定し得る。本発明のペプチド模倣大環状分子は、場合によっては、対応する架橋されていないポリペプチドと同様のまたはそれより低いKdを示す。
【0185】
ペプチド−タンパク質相互作用のアンタゴニストを特徴付けるためのインビトロ置換アッセイ
ペプチドとアクセプタータンパク質との間の相互作用をアンタゴナイズする化合物の結合および親和性を評価するために、例えば、ペプチド模倣物前駆体配列に由来するフルオレセイン化ペプチド模倣大環状分子を利用する蛍光偏光アッセイ(FPA)を用いる。このFPA技術は、偏光および蛍光トレーサーを用いて分子の配向および運動性を測定する。偏光によって励起されるとき、高い見かけの分子量を有する分子に結合している蛍光トレーサー(例えば、FITC)(例えば、大きなタンパク質に結合したFITC標識ペプチド)は、より小さい分子に結合している蛍光トレーサー(例えば、溶液中で遊離しているFITC標識ペプチド)と比較してそのより遅い回転速度のために、より高いレベルの偏光蛍光を発する。フルオレセイン化ペプチド模倣大環状分子とアクセプタータンパク質との間の相互作用をアンタゴナイズする化合物は、競合的結合FPA実験において検出される。
【0186】
例えば、推定アンタゴニスト化合物(1nM〜1mM)およびフルオレセイン化ペプチド模倣大環状分子(25nM)を、結合緩衝液(140mMのNaCl、50mMのTris−HCL、pH7.4)中で、アクセプタータンパク質(50nM)と一緒に室温で30分間インキュベートする。アンタゴニスト結合活性を、例えば、ルミネッセンス分光光度計(例えば、Perkin−Elmer LS50B)において蛍光偏光によって測定する。Kd値は、例えば、Graphpad Prismソフトウェア(GraphPad Software,Inc.、San Diego、CA)を用いて非線形回帰分析によって決定することができる。
【0187】
有機低分子、ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはタンパク質などの任意のクラスの分子を、このアッセイにおいて推定アンタゴニストとして検査してもよい。
【0188】
インタクトな細胞における結合アッセイ
インタクトな細胞における、それらの天然アクセプターに対するペプチドまたはペプチド模倣大環状分子の結合は、免疫沈降実験によって測定することが可能である。例えば、インタクトな細胞を、血清の非存在下でフルオレセイン化(FITC標識)化合物とともに4時間インキュベートし、次に、血清置換(serum replacement)し、さらに4時間〜18時間の範囲でインキュベートする。次いで細胞をペレットにして、溶解緩衝液(50mMのTris[pH7.6]、150mMのNaCl、1%CHAPSおよびプロテアーゼ阻害剤カクテル)中で、10分間4℃でインキュベートする。抽出物を14,000rpmで15分間遠心分離にかけ、上清を回収して10μlのヤギ抗FITC抗体と4℃で回転させながら2時間インキュベートし、その後さらに4℃で2時間、プロテインA/Gセファロース(50μlの50%ビーズスラリー)とインキュベートする。短時間の遠心分離の後、ペレットを、漸増する塩濃度(例えば、150、300、500mM)を含有する溶解緩衝液中で洗浄する。次いで、ビーズを、150mMのNaClで再平衡化させて、その後SDS含有サンプル緩衝液の添加および煮沸を行う。遠心分離後、上清を必要に応じて、4%〜12%勾配Bis−Trisゲルを用いて電気泳動し、その後Immobilon−Pメンブレンに移す。ブロッキング後、必要に応じて、ブロットを、FITCを検出する抗体と、またペプチド模倣大環状分子に結合するタンパク質を検出する1つ以上の抗体とともに、インキュベートする。
【0189】
細胞透過性アッセイ
ペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する非架橋大環状分子に比べてより細胞透過性である。最適化されたリンカーを有するペプチド模倣大環状分子は、例えば、対応する非架橋大環状分子よりも少なくとも2倍大きい細胞透過性を有し、多くの場合、4時間後において、適用されたペプチド模倣大環状分子の20%以上が細胞を透過したことが観察される。ペプチド模倣大環状分子および対応する非架橋大環状分子の細胞透過性を測定するために、インタクトな細胞を、フルオレセイン化ペプチド模倣大環状分子または対応する非架橋大環状分子(10μM)と一緒に4時間、37℃で、無血清媒体中で、インキュベートし、媒体で2回洗浄し、トリプシン(0.25%)で10分間、37℃でインキュベートする。細胞を再度洗浄してPBS中に再懸濁する。細胞の蛍光を、例えば、FACSCaliburフローサイトメーターまたはCellomics’ KineticScan(登録商標)HCS Readerのいずれかを用いることによって分析する。
【0190】
インビボ安定性アッセイ
ペプチド模倣大環状分子のインビボ安定性を検討するために、化合物を、例えば、マウスおよび/またはラットに、IV、IP、POまたは吸入経路によって0.1〜50mg/kgの範囲の濃度で投与し、注入後0分、5分、15分、30分、1時間、4時間、8時間および24時間で血液検体を採取する。次いで25μLの新鮮血清中のインタクトな化合物のレベルをLC−MS/MSによって上記のとおり測定する。
【0191】
インフルエンザ複製の阻害に関するインビトロ試験
このインフルエンザ抗ウイルス評価アッセイでは、表示した用量応答濃度での上記化合物の効果を調べる。Noah,J.W.,W.Severson,D.L.Noah、L.Rasmussen,E.L.White、およびC.B.Jonsson,Antiviral Res,2007.73(1):p.50−9も参照のこと。メイディン・ダービーイヌ腎臓(MDCK)細胞をアッセイにおいて使用し、インフルエンザ感染によって誘導される細胞変性効果(CPE)の抑制における上記化合物の有効性を試験する。リバビリンまたはタミフルのいずれかを各々の実施(each run)に陽性対照化合物として含める。MDCK細胞のサブコンフルエント培養物を、細胞バイアビリティ(細胞傷害性)および抗ウイルス活性(CPE)の解析のために96ウェルプレート内でプレート培養する。24時間後、薬物を細胞に添加する。また、表示した時間に、CPEのウェルには、100組織培養感染用量(100 TCID50s)の滴定したインフルエンザウイルスも加える。72時間後、細胞バイアビリティを測定する。ウイルス誘導性CPEを25%(IC25)、50%(IC50)および90%(IC90)低下させる化合物の有効濃度を、半対数曲線フィッティングを用いた回帰解析によって計算する。細胞バイアビリティはCellTiter−Glo(Promega)を用いて評価する。細胞数を50%および90%減少させる薬物の毒性濃度(それぞれ、TC50およびTC90)も同様に計算する。また、選択性(治療)指数(SI=TC/IC)も計算する。
【0192】
インフルエンザ複製の阻害に関するインビボ試験
本発明の化合物のインビボ試験を行ってもよく、ラットまたはフェレットなどの哺乳動物での試験が挙げられる。フェレット(Mustela putorius furo)は、生まれつきヒトインフルエンザAおよびBウイルスに感染し易く、その疾患はヒトインフルエンザに類似しているため、この動物は、インフルエンザウイルスの発病学試験および免疫試験用モデルとして広く使用されている。Sidwell,R.W.and D.F.Smee,Antiviral Res,2000.48(1):p.1−16;およびColacino,J.M.,D.C.DeLong,J.R.Nelson,W.A.Spitzer,J.Tang,F.Victor、およびC.Y.Wu,Antimicrob Agents Chemother,1990.34(11):p.2156−63を参照のこと。また、フェレットは、哺乳動物におけるトリインフルエンザウイルスH5N1発病学の試験に選択されるモデルでもある。Zitzow,L.A.,T.Rowe,T.Morken,W.−J.Shieh,S.Zaki,およびJ.M.Katz,Pathogenesis of Avian Influenza A(H5N1)Viruses in Ferrets.2002.p.4420−4429も参照のこと。PB1ステープルペプチドの活性は、陽性対照としてのリバビリンまたはオセルタミビルと比較され得る。
【0193】
簡単には、血球凝集抑制アッセイにより現状で循環ヒトインフルエンザAまたはBウイルスについて血清学的に陰性である若年成体の雄または雌フェレット(各々の処置群には5匹のフェレット)を、感染前の少なくとも4日間、BSL−3+動物収容区域内で検疫し、ここでは、フェレットを、バイオクリーン携帯型層流クリーンルームの囲い(enclosure)に入れたケージ内に収容する(Lab Products,Seaford,Del.)。感染前、ベースライン体温を1日2回、少なくとも3日間測定する。フェレットをケタミン(25mg/kg)、キシラジン(2mg/kg)およびアトロピン(0.05mg/kg)で筋肉内経路によって麻酔し、外鼻孔に送達したウイルス/mlリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で鼻腔内(i.n.)感染させる。対照動物は、非感染性尿膜腔液の同等希釈物(1:30)で模擬感染させる。ウイルス感染の1時間後に、ステープルペプチドをi.v.またはi.p.で投与する。体温は1日2回、直腸体温計または皮下埋め込み式温度トランスポンダー(BioMedic Data Systems,Inc.,Seaford,Del.)のいずれかを用いて測定し、感染前の値を平均して各々のフェレットのベースライン体温を得る。体温(セ氏温度)の変化を、各々の時点で各々の動物について計算する。くしゃみ(麻酔前)、食欲不振、呼吸困難、および活動レベルの臨床徴候を評価する。また、スコア化システムを用いて活動レベルを評価し、群内の各々の動物の毎日のスコアに基づいて、相対不活発指数(relative inactivity index)を計算する。直腸温度および活動スコアを用いて、インフルエンザ感染の重症度およびステープルペプチドがインフルエンザ症状を予防する能力を評価する。
【0194】
ウイルスポリメラーゼ複合体の構築および活性の阻害のアッセイ
二分子蛍光相補性(Bimolecular Fluorescence Complementation)(「BiFC」)技術を用いて、本発明の化合物がアッセイされ得る。この技術では、蛍光タンパク質(例えば、GFPまたはその誘導体)のN−およびC末端断片を相互作用性タンパク質に融合させる。このフルオロフォアの2つの非機能性の半分は、細胞内で発現後、特異的タンパク質相互作用の結果、非常に近接し、それにより、上記断片の活性タンパク質へのフォールディングが開始され、タンパク質−タンパク質複合体部位において検出可能な蛍光シグナルがもたらされる。したがって、BiFCにより、PB1サブユニットとPAサブユニット間の特異的相互作用が、生細胞内で可視化、定量および位置特定され得る。本発明の化合物でPB1−PA相互作用を破壊することにより、BiFCシグナルが低減され、それはPB1−PA複合体の構築を標的化する潜在的インヒビターの存在を示す。Hemerkaら,J.Virol.2009,3944−3955を参照のこと。
【0195】
医薬組成物および投与経路
本発明のペプチド模倣大環状分子はまた、薬学的に受容可能な誘導体またはそのプロドラッグも含む。「薬学的に受容可能な誘導体」とは、レシピエントへの投与の際、本発明の化合物を(直接的または間接的に)提供することができる、本発明の化合物の任意の薬学的に受容可能な塩、エステル、エステルの塩、プロドラッグまたは他の誘導体を意味する。特に好ましい薬学的に受容可能な誘導体は、哺乳動物に投与される場合、本発明の化合物のバイオアベイラビリティを増加させる(例えば、経口投与された化合物の血液中への吸収を増加させることによって)か、またはその親種と比較して生物学的区画(例えば、脳またはリンパ系)への活性な化合物の送達を増加させるものである。いくつかの薬学的に受容可能な誘導体は、水溶解度(aqueous solubility)または胃腸粘膜の能動輸送を増大する化学基を含む。
【0196】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチド模倣大環状分子は、選択的な生物学的特性を増強するために、適切な官能基を共有結合または非共有結合で結合することによって改変される。そのような改変としては、所与の生物学的コンパートメント(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透性を増大させる、経口の利用可能性を増加させる、可溶性を増大させて注入による投与を可能にする、代謝を変化させる、および排泄率を変化させる改変が挙げられる。
【0197】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩としては、薬学的に受容可能な無機の酸および塩基に由来する塩ならびに有機の酸および塩基に由来する塩が挙げられる。適切な酸塩(acid salt)の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、二グルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、パルモエート、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が挙げられる。適切な塩基に由来する塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)塩、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)塩、アンモニウム塩およびN−(アルキル)塩が挙げられる。
【0198】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するために、薬学的に受容可能なキャリアとしては固体または液体のいずれかのキャリアが挙げられる。固体形態の調製物としては、粉末剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性粒剤が挙げられる。固体キャリアは、希釈剤、着香剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としても機能する1つ以上の物質であってもよい。処方および投与のための技術に関する詳細は、科学文献および特許文献において十分に記述されており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Maack Publishing Co、Easton PAの最新版を参照のこと。
【0199】
粉末剤においては、キャリアとは、微粉化した(finely divides)活性成分と混合されている微粉化した固体である。錠剤において、活性成分は、必要な結合特性を有するキャリアと適切な割合で混合され、所望の形状および大きさに圧縮される。
【0200】
適切な固体賦形剤は炭水化物またはタンパク質増量剤(filler)であり、これには、限定するものではないが、糖、例としては、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ、または別の植物由来のデンプン;セルロース、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウム;ならびにアラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質が挙げられる。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムなどのこれらの塩のような崩壊剤または可溶化剤を加える。
【0201】
液体形態の調製物としては、液剤、懸濁剤、および乳剤、例えば、水または水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。非経口注入用に、液体調製物は、水性ポリエチレングリコール溶液中の溶液に処方することができる。
【0202】
薬学的調製物は、好ましくは単位剤形である。このような形態では、調製物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に小分割される。単位剤形は、バイアルまたはアンプル中に、小分けされた錠剤、カプセル、および粉末など、個別量の調製物を収容しているパッケージであるパッケージ調製物であってもよい。また、単位剤形は、それ自体カプセル剤、錠剤、カシェ剤、またはロゼンジであってもよく、または、適切な数の任意のこれらのパッケージ化形態であってもよい。
【0203】
本発明の組成物がペプチド模倣大環状分子と1つ以上のさらなる治療剤または予防剤の組合せを含む場合、化合物およびさらなる薬剤の両方は、単独療法レジメンにおいて通常投与される投薬量の約1〜100%、およびより好ましくは約5〜95%の投薬量レベルで存在するべきである。いくつかの実施形態において、さらなる薬剤は、反復投与レジメンの一部として、本発明の化合物とは別々に投与される。あるいは、これらの薬剤は1つの剤形の一部であり、1つの組成物中で本発明の化合物と一緒に混合される。
【0204】
使用方法
一般的に、本発明は、ウイルス障害の処置に有用なペプチド模倣大環状分子を開示する。例えば、PB1らせん配列由来のペプチド模倣大環状分子、またはPAタンパク質のPB1ペプチド結合部位に選択的に結合するペプチド模倣大環状分子は、インフルエンザRNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に阻害するものであり得る。PB2らせん配列由来のペプチド模倣大環状分子、またはPB1タンパク質のPB2ペプチド結合部位に選択的に結合するペプチド模倣大環状分子は、インフルエンザRNA依存性RNAポリメラーゼを選択的に阻害するものであり得る。感染後、治療域(therapeutic window)内で投与した場合、このようなペプチド模倣大環状分子により、インフルエンザ感染の重症度または持続期間が低減され得る。予防的に投与した場合、このようなペプチド模倣大環状分子により、インフルエンザウイルスによる感染が予防され、それによりインフルエンザの広がりが縮小され、大規模流行病が低減され得る。
【0205】
一局面において、本発明は、ペプチド模倣大環状分子のモデル設計の基礎とするタンパク質またはペプチドの天然リガンド(1つまたは複数)に結合する薬剤を特定するための競合結合アッセイにおいて有用な新規なペプチド模倣大環状分子を提供する。例えば、PB1/PA系では、PB1を基礎とする標識ペプチド模倣大環状分子が、PAに競合的に結合する小分子とともに、PA結合アッセイにおいて使用され得る。競合結合試験により、迅速なインビトロ評価およびPB1/PA系に特異的な薬物候補の決定が可能になる。このような結合試験は、本明細書に開示した任意のペプチド模倣大環状分子およびその結合パートナーを用いて行われ得る。
【0206】
他の局面において、本発明は、インフルエンザウイルスに感染した、感染リスクのある、または感染し易い被験体を処置する予防方法および治療方法の両方を提供する。これらの方法は、有効量の本発明の化合物を温血動物(例えば、ヒト)に投与することを含む。いくつかの実施形態では、本発明の化合物の投与により、インフルエンザウイルスの増殖または伝播が予防される。
【0207】
本明細書において使用される場合、「処置」という用語は、疾患、疾患の症状または疾患に対する素因を、治療する、治癒する、軽減する、緩和する、変化させる、治す、改善する、好転させる、または影響を与えるという目的で、その疾患、疾患の症状または疾患に対する素因を有する患者への治療剤の適用もしくは投与、または、その患者から単離した組織もしくは細胞系統への治療剤の適用もしくは投与として定義される。
【0208】
いくつかの実施形態では、本発明のペプチド模倣大環状分子は、インフルエンザウイルスによって誘導される疾患を処置するために使用される。他のウイルスと同様、インフルエンザウイルスの複製は、6つの段階;伝播、侵入、複製、生合成、構築、および脱出を伴う。侵入はエンドサイトーシスによって行われ、複製およびvRNPの構築は核内で行われ、ウイルス出芽は原形質膜からおこる。感染患者において、上記ウイルスは気道上皮細胞を標的化する。
【0209】
また、本明細書に記載の方法は、エーベルソン白血病ウイルス、エーベルソンマウス白血病ウイルス、エーベルソンウイルス、急性喉頭気管支炎ウイルス、アデレードリバーウイルス、アデノ随伴ウイルス群、アデノウイルス、アフリカウマ病ウイルス、アフリカ豚コレラウイルス、AIDSウイルス、アリューシャンミンク病パルボウイルス、アルファレトロウイルス、アルファウイルス、ALV関連ウイルス、アマパリウイルス、アフトウイルス、アクアレオウイルス、アルボウイルス、アルボウイルスC、アルボウイルスA群、アルボウイルスB群、アレナウイルス群、アルゼンチン出血熱ウイルス、アルゼンチン出血熱ウイルス、アルテリウイルス、アストロウイルス、ウマ(Ateline)ヘルペスウイルス群、オーエスキー病ウイルス、アウラウイルス、Ausduk病ウイルス、オーストラリアコウモリリッサウイルス、トリアデノウイルス、トリ赤芽球症ウイルス、トリ感染性気管支炎ウイルス、トリ白血病ウイルス、トリ白血症(leukosis)ウイルス、トリリンパ腫症ウイルス、トリ骨髄芽球症ウイルス、トリパラミクソウイルス、トリ肺脳炎(pneumoencephalitis)ウイルス、トリ細網内皮症ウイルス、トリ肉腫ウイルス、トリC型レトロウイルス群、トリヘパドナウイルス、トリポックスウイルス、Bウイルス、B19ウイルス、ババンキ(Babanki)ウイルス、ヒヒヘルペスウイルス、バキュロウイルス、バーマフォレストウイルス、ベバルウイルス、ベリマー(Berrimah)ウイルス、ベータレトロウイルス、ビルナ(Birna)ウイルス、ビットナーウイルス、BKウイルス、ブラッククリークカナルウイルス、ブルータングウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、ボルナ(Boma)病ウイルス、ヒツジのボーダー病ウイルス、ボルナウイルス、ウシアルファヘルペスウイルス1、ウシアルファヘルペスウイルス2、ウシコロナウイルス、ウシ一日熱ウイルス、ウシ免疫不全ウイルス、ウシ白血病ウイルス(bovine leukemia virus)、ウシ白血症ウイルス(bovine leukosis virus)、ウシ乳頭炎ウイルス、ウシパピローマウイルス、ウシ丘疹性口内炎ウイルス、ウシパルボウイルス、ウシ合胞体ウイルス、ウシC型オンコウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、バギークリーク(Buggy Creek)ウイルス、弾丸型ウイルス群、ブンヤムウェラウイルススーパーグループ、ブンヤウイルス、バーキットリンパ腫ウイルス、ブワンバ熱、CAウイルス、カリシウイルス、カリフォルニア脳炎ウイルス、ラクダポックスウイルス、カナリヤポックスウイルス、イヌ(canid)ヘルペスウイルス、イヌコロナウイルス、イヌジステンパーウイルス、イヌヘルペスウイルス、イヌ微小ウイルス(canine minute virus)、イヌパルボウイルス、カノデルガジト(Cano Delgadito)ウイルス、ヤギ関節炎ウイルス、ヤギ脳炎ウイルス、ヤギヘルペスウイルス、ヤギポックスウイルス、カルジオウイルス、テンジクネズミ類(caviid)ヘルペスウイルス1、オナガザル類ヘルペスウイルス1、オナガザルヘルペスウイルス1、オナガザルヘルペスウイルス2、チャンディプラウイルス、チャングイノラウイルス、ブチナマズ(channel catfish)ウイルス、シャルルヴィルウイルス、水痘ウイルス、チクングニヤウイルス、チンパンジーヘルペスウイルス、チャブレオウイルス、シロザケ(chum salmon)ウイルス、球菌ウイルス(cocal virus)、ギンザケ(coho salmon)レオウイルス、媾疹ウイルス(coital exanthema virus)、コロラドダニ熱ウイルス、コルチウイルス、コロンビアSKウイルス、風邪ウイルス、接触伝染性膿瘡ウイルス、感染性膿疱性皮膚炎ウイルス、コロナウイルス、コリパルタウイルス、コリーザウイルス、牛痘ウイルス、コクサッキーウイルス、CPV(細胞質多角体病ウイルス)、コオロギ麻痺ウイルス、クリミア‐コンゴ出血熱ウイルス、クループ関連ウイルス、クリプトウイルス、サイポウイルス、サイトメガロウイルス、サイトメガロウイルス群、細胞質多角体病ウイルス、シカパピローマウイルス、デルタレトロウイルス、デング熱ウイルス、デンソウイルス、デペンドウイルス、ドーリウイルス、ディプロルナウイルス、ショウジョウバエCウイルス、アヒルB型肝炎ウイルス、アヒル肝炎ウイルス1、アヒル肝炎ウイルス2、デュオウイルス、デュベンヘージウイルス、変形翼(deformed wing)ウイルスDWV、東部ウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳脊髄炎ウイルス、EBウイルス、エボラウイルス、エボラ様ウイルス、エコーウイルス、エコーウイルス、エコーウイルス10、エコーウイルス28、エコーウイルス9、エクトロメリアウイルス、EEEウイルス、EIAウイルス、EIAウイルス、脳炎ウイルス、脳心筋炎群ウイルス、脳心筋炎ウイルス、エンテロウイルス、酵素上昇ウイルス、酵素上昇ウイルス(LDH)、流行性出血熱ウイルス、動物間流行性出血性疾患ウイルス、エプスタイン‐バーウイルス、ウマアルファヘルペスウイルス1、ウマアルファヘルペスウイルス4、ウマヘルペスウイルス2、ウマ流産ウイルス、ウマ動脈炎ウイルス、ウマ脳症ウイルス、ウマ感染性貧血ウイルス、ウマ麻疹ウイルス、ウマ鼻肺炎ウイルス、ウマライノウイルス、ユーベナングウイルス、ヨーロッパエルクパピローマウイルス、ヨーロッパブタコレラウイルス、エバーグレイズウイルス、ヤッチウイルス、ネコヘルペスウイルス1、ネコカリシウイルス、ネコ線維肉腫ウイルス、ネコヘルペスウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス、ネコ白血病/肉腫ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、ネコ肉腫ウイルス、ネコ合胞体ウイルス、フィロウイルス、フランダーズウイルス、フラビウイルス、口蹄疫ウイルス、フォートモーガンウイルス、フォーコーナーズハンタウイルス、家禽アデノウイルス1、鶏痘ウイルス、フレンドウイルス、ガンマレトロウイルス、GB肝炎ウイルス、GBウイルス、ドイツ麻疹ウイルス、ゲタウイルス、テナガザル白血病ウイルス、伝染性単核症ウイルス、ヤギポックスウイルス、ゴールデンシンナーウイルス、ゴノメタウイルス、ガチョウパルボウイルス、顆粒病ウイルス、グロスウイルス、ジリスB型肝炎ウイルス、A群アルボウイルス、グアナリトウイルス、モルモットサイトメガロウイルス、モルモットC型ウイルス、ハンターンウイルス、ハンタウイルス、ホンビノスガイ(hard clam)レオウイルス、野ウサギ線維腫ウイルス、HCMV(ヒトサイトメガロウイルス)、赤血球吸着ウイルス2、日本の赤血球凝集ウイルス、出血熱ウイルス、ヘンドラウイルス、ヘニパウイルス、ヘパドナウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス群、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、デルタ肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、F型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルス、非A非B肝炎ウイルス、肝炎ウイルス、肝炎ウイルス(非ヒト)、肝脳脊髄炎レオウイルス3、肝ウイルス、ヘロンB型肝炎ウイルス、ヘルペスBウイルス、単純疱疹ウイルス、単純疱疹ウイルス1、単純疱疹ウイルス2、ヘルペスウイルス、ヘルペスウイルス7、クモザルヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ヘルペスウイルス感染、リスザルヘルペスウイルス、ブタヘルペスウイルス、水痘ヘルペスウイルス、ハイランドJウイルス、ヒラメラブドウイルス、豚コレラウイルス、ヒトアデノウイルス2、ヒトアルファヘルペスウイルス1、ヒトアルファヘルペスウイルス2、ヒトアルファヘルペスウイルス3、ヒトBリンパ球指向性ウイルス、ヒトベータヘルペスウイルス5、ヒトコロナウイルス、ヒトサイトメガロウイルス群、ヒト泡沫状ウイルス、ヒトガンマヘルペスウイルス4、ヒトガンマヘルペスウイルス6、ヒトA型肝炎ウイルス、ヒトヘルペスウイルス1群、ヒトヘルペスウイルス2群、ヒトヘルペスウイルス3群、ヒトヘルペスウイルス4群、ヒトヘルペスウイルス6、ヒトヘルペスウイルス8、ヒト免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1、ヒト免疫不全ウイルス2、ヒトパピローマウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルスI、ヒトT細胞白血病ウイルスII、ヒトT細胞白血病ウイルスIII、ヒトT細胞リンパ腫ウイルスI、ヒトT細胞リンパ腫ウイルスII、ヒトT細胞リンパ球指向性ウイルス1型、ヒトT細胞リンパ球指向性ウイルス2型、ヒトTリンパ球指向性ウイルスI、ヒトTリンパ球指向性ウイルスII、ヒトTリンパ球指向性ウイルスIII、イクノウイルス(ichnovirus)、乳児胃腸炎ウイルス、感染性ウシ鼻気管炎ウイルス、感染性造血壊死ウイルス、感染性膵臓壊死ウイルス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、インフルエンザウイルスD、インフルエンザウイルスpr8、昆虫イリデスセントウイルス、昆虫ウイルス、イリドウイルス、日本Bウイルス、日本脳炎ウイルス、JCウイルス、フニンウイルス、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス、ケメロボウイルス、キラムラットウイルス、クラマスウイルス、コロンゴウイルス、韓国型出血熱ウイルス、クンバウイルス、キサヌール森林病ウイルス、キジラガーシュウイルス、ラクロスウイルス、乳酸デヒドロゲナーゼ上昇ウイルス、乳酸デヒドロゲナーゼウイルス、ラゴスコウモリウイルス、ラングールウイルス、ウサギパルボウイルス、ラッサ熱ウイルス、ラッサウイルス、潜伏性ラットウイルス、LCMウイルス、リーキーウイルス、レンチウイルス、ウサギポックスウイルス、白血病ウイルス、ロイコウイルス(leukovirus)、ランピースキン病ウイルス、リンパ節症関連ウイルス、リンパクリプトウイルス(lymphocryptovirus)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、リンパ増殖ウイルス群、マシュポウイルス、マッドイッチウイルス、哺乳動物B型オンコウイルス群、哺乳動物B型レトロウイルス、哺乳動物C型レトロウイルス群、哺乳動物D型レトロウイルス、乳腺腫瘍ウイルス、マプエラウイルス、マルブルクウイルス、マルブルク様ウイルス、メイソンファイザーサルウイルス、マストアデノウイルス、マヤロウイルス、MEウイルス、麻疹ウイルス、メナングルウイルス、メンゴウイルス、メンゴウイルス、ミデルブルグウイルス、搾乳者結節ウイルス、ミンク腸炎ウイルス、マウスの微小ウイルス、MLV関連ウイルス、MMウイルス、モコラウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、サルBウイルス、サルポックスウイルス、モノネガウイルス、麻疹ウイルス、マウントエルゴンコウモリウイルス、マウスサイトメガロウイルス、マウス脳脊髄炎ウイルス、マウス肝炎ウイルス、マウスKウイルス、マウス白血病ウイルス、マウス乳腺腫瘍ウイルス、マウス微小ウイルス、マウス肺炎ウイルス、マウス灰白髄炎ウイルス、マウスポリオーマウイルス、マウス肉腫ウイルス、マウスポックスウイルス、モザンビークウイルス、ムカンボウイルス、粘膜病ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ネズミ科ベータヘルペスウイルス1、ネズミ科サイトメガロウイルス2、マウスサイトメガロウイルス群、マウス脳脊髄炎ウイルス、マウス肝炎ウイルス、マウス白血病ウイルス、マウス結節誘発ウイルス、マウスポリオーマウイルス、マウス肉腫ウイルス、ムーロメガロウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、粘液腫ウイルス、ミクソウイルス、多形性ミクソウイルス、ミクソウイルス耳下腺炎(Myxovirus parotitidis)、ナイロビヒツジ病ウイルス、ナイロウイルス、ナニルナウイルス、ナリバウイルス、デュモウイルス、ニースリングウイルス、ネルソン湾ウイルス、神経指向性ウイルス、新世界アレナウイルス、新生児肺炎ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ニパーウイルス、非細胞変性ウイルス、ノーウォークウイルス、核多角体病ウイルス(NPV)、ニップルネックウイルス、オニョンニョンウイルス、オッケルボウイルス、腫瘍ウイルス、腫瘍ウイルス様粒子、オンコルナ

ウイルス、オルビウイルス、オルフウイルス、オロポーチウイルス、オルトヘパドナウイルス、オルトミクソウイルス、オルトポックスウイルス、オルトレオウイルス、オロンゴ、ヒツジパピローマウイルス、ヒツジカタル熱ウイルス、ヨザルヘルペスウイルス、パリアンウイルス、パピローマウイルス、ワタウサギパピローマウイルス、パポバウイルス、パラインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス1型、パラインフルエンザウイルス2型、パラインフルエンザウイルス3型、パラインフルエンザウイルス4型、パラミクソウイルス、パラポックスウイルス、パラワクシニアウイルス、パルボウイルス、パルボウイルスB19、パルボウイルス群、ペスチウイルス、フレボウイルス、アザラシジステンパーウイルス、ピコドナウイルス、ピコルナウイルス、ブタサイトメガロウイルス−ハトポックスウイルス、ピリーウイルス、ピクサナウイルス、マウスの肺炎ウイルス、肺炎ウイルス、灰白髄炎ウイルス、ポリオウイルス、ポリドナウイルス、多面体型ウイルス(polyhedral virus)、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルス、ウシポリオーマウイルス、オナガザルポリオーマウイルス、ヒトポリオーマウイルス2、マカク属サルポリオーマウイルス1、マウスポリオーマウイルス1、マウスポリオーマウイルス2、ヒヒポリオーマウイルス1、ヒヒポリオーマウイルス2、ワタウサギポリオーマウイルス、ポンギンヘルペスウイルス1、ブタ流行性下痢ウイルス、ブタ赤血球凝集性脳脊髄炎ウイルス、ブタパルボウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、ブタC型ウイルス、ポックスウイルス、ポックスウイルス、痘瘡ポックスウイルス、プロスペクトヒルウイルス、プロウイルス、偽牛痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、オウムポックスウイルス、ウズラポックスウイルス、ウサギ線維腫ウイルス、ウサギ腎臓空胞化ウイルス、ウサギパピローマウイルス、狂犬病ウイルス、アライグマパルボウイルス、アライグマポックスウイルス、ラニケートウイルス(Ranikhet virus)、ラットサイトメガロウイルス、ラットパルボウイルス、ラットウイルス、ラウシャーウイルス、組換えワクシニアウイルス、組換えウイルス、レオウイルス、レオウイルス1、レオウイルス2、レオウイルス3、爬虫類C型ウイルス、呼吸器感染ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、呼吸器ウイルス、細網内皮症ウイルス、ラブドウイルス、ラブドウイルスカルピア(carpia)、ラディノウイルス、ライノウイルス、リジディオウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ライリーウイルス、牛疫ウイルス、RNA腫瘍ウイルス、ロスリバーウイルス、ロタウイルス、ルージョールウイルス、ラウス肉腫ウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、ルビウイルス、ロシア秋季脳炎ウイルス、SA11サルウイルス、SA2ウイルス、サビアウイルス、サギヤマウイルス、サイミリンヘルペスウイルス1、唾液腺ウイルス、サシチョウバエ熱ウイルス群、サンジンバウイルス、SARSウイルス、SDAV(唾液腺涙腺炎ウイルス)、アザラシ科の動物のポックスウイルス、セムリキ森林熱ウイルス、ソウルウイルス、羊痘ウイルス、ショープ線維腫ウイルス、ショープ乳頭腫ウイルス、サル泡沫状ウイルス、サルA型肝炎ウイルス、サルヒト免疫不全ウイルス、サル免疫不全ウイルス、サルパラインフルエンザウイルス、サルT細胞リンパ球指向性ウイルス、シミアンウイルス、シミアンウイルス40、シンプレックスウイルス、シンノンブレウイルス、シンドビスウイルス、天然痘ウイルス、南アメリカ出血熱ウイルス、スズメポックスウイルス、スプマウイルス、リス線維腫ウイルス、リスザルレトロウイルス、SSV1ウイルス群、STLV(サルTリンパ球指向性ウイルス)I型、STLV(サルTリンパ球指向性ウイルス)II型、STLV(サルTリンパ球指向性ウイルス)III型、丘疹口内炎ウイルス、下顎ウイルス、ブタアルファヘルペスウイルス1、ブタヘルペスウイルス2、スイポックスウイルス、沼地熱ウイルス、ブタポックスウイルス、スイスマウス白血病ウイルス、TACウイルス、タカリベウイルス群、タカリベウイルス、タナポックスウイルス、タテラポックスウイルス、テンチレオウイルス、タイラー脳脊髄炎ウイルス、タイラーウイルス、トゴトウイルス、トッタパレイヤンウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルス、チオマンウイルス、トガウイルス、トロウイルス、腫瘍ウイルス、ツパイアウイルス、シチメンチョウ鼻気管炎ウイルス、シチメンチョウポックスウイルス、C型レトロウイルス、D型オンコウイルス、D型レトロウイルス群、潰瘍性疾患ラブドウイルス、ウナウイルス、ウクニエミウイルス群、ワクシニアウイルス、空胞化ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、水痘ウイルス、バリコラウイルス、大痘瘡ウイルス、痘瘡ウイルス、バシンギシュー病ウイルス、VEEウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス、ベネズエラ出血熱ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ベシクロウイルス、ビリュイスクウイルス、毒ヘビレトロウイルス、ウイルス出血性敗血症ウイルス、ビスナマエディウイルス、ビスナウイルス、ハタネズミポックスウイルス、VSV(水疱性口内炎ウイルス)、ウォーラルウイルス、ウォリゴウイルス、いぼウイルス、WEEウイルス、西ナイルウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳脊髄炎ウイルス、ワタロアウイルス、冬季嘔吐症ウイルス、ウッドチャックB型肝炎ウイルス、ウーリーモンキー肉腫ウイルス、創傷腫瘍ウイルス、WRSVウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルス、ヤバウイルス、ヤタポックスウイルス、黄熱ウイルス、およびヤグボダノバックウイルスなどのウイルスによって引き起こされる感染の処置のための薬剤の開発および/または特定にも有用である。一実施形態では、各々のウイルスについて、細胞侵入または複製サイクルなどのウイルス感染の特定の段階の間に、ウイルス感染に関与している宿主細胞内遺伝子の一覧(inventory)を含むインフェクトーム(infectome)が生じる。
【0210】
いくつかのウイルスでは、宿主細胞に対する感染の際に関与しているステップの解明においてかなりの進展がみられ、これらの任意のステップが、本発明のペプチド模倣大環状分子を用いて標的化され得る。例えば、1980代初期に始められた実験では、インフルエンザウイルスは、α−およびラブドウイルスなどの他のウイルスと共有されるエレメントを伴うエンドサイトーシスによる段階的侵入プログラムに従うことが示された(MarshおよびHelenius 1989;Whittaker 2006)。上記ステップとしては、:1)最初に細胞表面上のシアル酸含有複合糖質受容体に結合すること;2)ウイルス粒子によって誘導されるシグナル伝達;3)クラスリン依存性およびクラスリン非依存性細胞機構によるエンドサイトーシス;4)後期エンドソームからの酸誘導性血球凝集素(HA)媒介性透過;5)キャプシドの酸活性化型M2およびマトリックスタンパク質(M1)依存性脱殻;ならびに6)vRNPの細胞質ゾル内輸送および核内移行が挙げられる。これらのステップは、受容体の選別、小胞形成機構、キナーゼ媒介性調節、細胞小器官酸性化、および、たいていは細胞骨格の活動という形態での宿主細胞による補助に依存する。
【0211】
細胞表面へのインフルエンザの結合は、HA1サブユニットが、末端シアル酸残基を有するオリゴ糖部分を担持する細胞表面糖タンパク質および糖脂質に結合することによって起こる(SkehelおよびWiley 2000)。シアル酸が次の糖に接続する結合は種特異性に寄与する。トリ株(H5N1など)はα−(2,3)結合を、ヒト株はα−(2,6)結合を好む(Matrosovich 2006)。上皮細胞では、結合は、頂端膜側上の微絨毛で優先的に起こり、エンドサイトーシスはこれらの伸長部の基部で起こる(Matlin 1982)。受容体結合によって、細胞に侵入の準備をさせるシグナルが誘導されるかどうかは未だわかっていないが、これは、おそらく、プロテインキナーゼCの活性化とホスファチジルイノシトール−3−リン酸(PI3P)の合成が効率的な侵入に必要とされるためである(Sieczkarskiら 2003;Whittaker 2006)。
【0212】
エンドサイトーシスによるインターナリゼーションは、結合後、数分以内に起こる(Matlin 1982;YoshimuraおよびOhnishi 1984)。組織培養細胞では、インフルエンザウイルスは、3つの異なる型の細胞プロセス;1)既存のクラスリン被覆小窩、2)ウイルス誘導性クラスリン被覆小窩、および3)明らかな被覆のない小胞内でのエンドサイトーシス、を利用する(Matlin 1982;SieczkarskiおよびWhittaker 2002;Rustら 2004)。蛍光ウイルスを用いたビデオ顕微鏡検査では、ウイルス粒子が、細胞周縁部でのアクチン媒介性高速運動の後、細胞の核周囲領域へのマイナス末端指向性(minus end−directed)の微小管媒介性輸送が続くことが示された。生細胞の画像化により、ウイルス粒子は、透過が起こる前に、まず、上記粒子を細胞質内のより深部に担持する移動性の末梢初期エンドソームの亜集団内に侵入することが示された(Lakadamyaliら 2003;Rustら 2004)。エンドサイトーシスプロセスは、プロテインキナーゼおよび脂質キナーゼ、プロテアソームによって、ならびにRabおよびユビキチン依存性選別因子によって調節される(Khorら 2003;Whittaker 2006)。
【0213】
膜透過ステップは、三量体で準安定性のHAの低pH媒介性活性化、およびこのI型ウイルス融合タンパク質の膜融合に十分な構造への変換によって媒介される(Maedaら 1981;Whiteら 1982)。これは、インターナリゼーションの約16分後に起こり、pH閾値は、株間で5.0〜5.6の範囲で異なる。標的膜は、中期または後期エンドソームの境界膜である。融合の機構は、広範に研究されている(KielianおよびRey 2006)。さらに、融合それ自体は、脂質二重層膜および機能性酸性化系以外、なんら宿主細胞成分を必要としないようであることが観察された(Maedaら 1981;Whiteら 1982)。透過ステップは、リソソーム向性弱塩基、カルボン酸イオノフォア、およびプロトンポンプ阻害薬などの薬剤によって阻害される(Matlin 1982;Whittaker 2006)。
【0214】
侵入vRNPの核移行を可能にするためには、キャプシドが分解されなければならない。このステップは、アマンタジン感受性M2チャネルによるウイルス内部の酸性化によってvRNPからのM1の解離が引き起こされることを伴う(Bukrinskayaら 1982;MartinおよびHelenius 1991;Pintoら 1992)。個々のvRNPの核孔複合体への輸送および核内への輸送は、細胞の核輸送受容体に依存する(O’Neillら 1995;Crosら 2005)。ウイルスRNAの複製(プラスおよびマイナス鎖の合成)ならびに転写は、核内のクロマチンと強固に結合している複合体において起こる。これらのステップの多くはウイルスポリメラーゼによって触媒されることは明白であるが、RNAポリメラーゼ活性化因子、シャペロンHSP90、hCLE、およびヒトスプライシング因子UAP56などの細胞内因子も関与している。ウイルス遺伝子の発現は、転写レベルで、細胞キナーゼに依存性の制御系である複雑な細胞制御に従う(Whittaker 2006)。
【0215】
インフルエンザ粒子の最終構築は、原形質膜での出芽プロセスの際に行われる。上皮細胞では、出芽は頂端膜ドメインでのみ起こる(Rodriguez−Boulan 1983)。まず、子孫vRNPが核内で核包膜に、次いで核から細胞質に輸送され、最後に細胞周囲に蓄積される。核からの脱出は、ウイルスタンパク質NEPおよびM1、ならびにさまざまな細胞内タンパク質、例えばCRM1(核輸送受容体)、カスパーゼおよび場合によってはいくつかの核タンパク質シャペロンに依存性である。リン酸化は、M1およびNEP合成を調節することにより、また、MAPK/ERK系によって核輸送において役割を果している(Buiら 1996;Ludwig 2006)。Gタンパク質およびプロテインキナーゼシグナル伝達は、感染宿主細胞からのインフルエンザウイルスの出芽に関与している(Hui E.およびNayak D,2002)。
【0216】
上記ウイルスの3種類の膜タンパク質は、ER内で構築され、フォールディングされ、オリゴマーに合成される(Domsら 1993)。これらは、ゴルジ複合体を通過し、その炭水化物部分の改変およびタンパク質分解性切断によって成熟する。原形質膜に達した後、これらは出芽プロセスにおいてM1およびvRNPと会合し、これにより、8種類すべてのvRNPの内包および脂質以外のほとんどの宿主細胞成分の排除がもたらされる。
【0217】
インフルエンザ感染はいくつかのシグナル伝達カスケード、例えば、MAPK経路(ERK、JNK、p38およびBMK−1/ERK5)、IkB/NF−kBシグナル伝達モジュール、Raf/MEK/ERKカスケード、ならびにプログラムされた細胞死の活性化と関連している(Ludwig 2006)。これらにより、IFNbの転写活性化、アポトーシス細胞死、および後期エンドソームからのウイルスエスケープのブロックなどの感染の進行を抑制するさまざまな効果がもたらされる(Ludwig 2006)。
【実施例】
【0218】
実施例1.
図1および2は、PB1らせん由来配列MDVNPTLLFLKVPAQの可能な結合様式を示す。本発明のペプチド模倣大環状分子は、対応する非架橋ポリペプチド配列MDVNPTLLFLKVPAQで開始して、7番目と10番目のアミノ酸をα,α−二置換アミノ酸(例えば、S5オレフィンアミノ酸)で置き換えることにより調製される。オレフィンメタセシス反応を行うと、図2bに示すようなiからi+3までの架橋を含むペプチド模倣大環状分子がもたらされる。
【0219】
実施例2.
ペプチド模倣大環状分子を先に記載されたように(Walenskyら(2004)Science 305:1466−70;Walenskyら(2006)Mol Cell 24:199−210;Bernalら(2007)J.Am Chem Soc.9129,2456−2457)および以下に示すとおり、合成し、精製し、解析した。この試験に使用した大環状分子を表5に示す。対応する非架橋ポリペプチドは、本発明のペプチド模倣大環状分子の天然の対応物を表わす。
【0220】
オレフィン側鎖を含むα,α二置換非天然アミノ酸を、Williamsら(1991)J.Am.Chem.Soc.113:9276;Schafmeisterら(2000)J.Am.Chem Soc.122:5891およびVerdineら PCT WO 2008/121767に従って合成した。ペプチド模倣大環状分子は、2個以上の天然に存在するアミノ酸を対応する合成アミノ酸で置き換えることにより設計した。置換は、iおよびi+3の位置、iおよびi+4の位置、iおよびi+6の位置、ならびにiおよびi+7位置で行なった。大環状分子は、固相ペプチド合成の後、合成アミノ酸のオレフィンメタセシスに基づく架橋によって、そのオレフィン含有側鎖を介して生成した。
【0221】
表示する配列において、以下の略号を用いる:「Nle」はノルロイシンを表し、「Aib」は2−アミノイソ酪酸を表し、「Ac」はアセチルを表し、「Pr」はプロピオニルを表す。「$」で表されるアミノ酸は、1つの二重結合を含む全ての炭素iからi+4までの架橋剤によって接続されたα−Me S5−ペンテニル−アラニンオレフィンアミノ酸である。「$r5」で表されるアミノ酸は、1つの二重結合を含む全ての炭素iからi+4までの架橋剤によって接続されたα−Me R5−ペンテニル−アラニンオレフィンアミノ酸である。「$s8」で表されるアミノ酸は、1つの二重結合を含む全ての炭素iからi+7までの架橋剤によって接続されたα−Me S8−オクテニル−アラニンオレフィンアミノ酸である。「$r8」で表されるアミノ酸は、1つの二重結合を含む全ての炭素iからi+7までの架橋剤によって接続されたα−Me R8−オクテニル−アラニンオレフィンアミノ酸である。「Ahx」はアミノシクロヘキシルリンカーを表す。架橋剤は、各々のアミノ酸のα炭素間に8個または11個の炭素原子を含む線状の全ての炭素架橋剤である。「$/」で表されるアミノ酸は、いずれの架橋剤によっても接続されていないα−Me S5−ペンテニル−アラニンオレフィンアミノ酸である。「$/r5」で表されるアミノ酸は、いずれの架橋剤によっても接続されていないα−Me R5−ペンテニル−アラニンオレフィンアミノ酸である。「$/s8」で表されるアミノ酸は、いずれの架橋剤によっても接続されていないα−Me S8−オクテニル−アラニンオレフィンアミノ酸である。「$/r8」で表されるアミノ酸は、いずれの架橋剤によっても接続されていないα−Me R8−オクテニル−アラニンオレフィンアミノ酸である。
【0222】
非天然アミノ酸(五炭素のオレフィンアミノ酸のRおよびS鏡像異性体ならびに八炭素のオレフィンアミノ酸のS鏡像異性体)を、核磁気共鳴(NMR)分光法(Varian Mercury 400)および質量分析法(Micromass LCT)により特徴付けた。ペプチド合成を、固相条件、リンクアミドAM樹脂(rink amide AM resin)(Novabiochem)およびFmoc主鎖保護基化学を用いて、手作業または自動ペプチド合成装置(Applied Biosystems,model 433A)のいずれかで行った。天然Fmoc保護アミノ酸(Novabiochem)のカップリングのために、10当量のアミノ酸および1:1:2モル比のカップリング試薬HBTU/HOBt(Novabiochem)/DIEAを使用した。非天然のアミノ酸(4当量)を、1:1:2モル比のHATU(Applied Biosystems)/HOBt/DIEAを用いてカップリングした。オレフィンメタセシスを、脱気したジクロロメタンに溶解した10mMのGrubbs触媒(Blackewellら,1994、上記)(Strem Chemicals)を用いて、固相において行い、室温において2時間反応させた。メタセシスされた化合物の単離は、トリフルオロ酢酸が媒介する脱保護および切断、粗生成物を得るためのエーテル沈殿、ならびに純粋な化合物を得るための逆相C18カラム(Varian)における高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)(Varian ProStar)により達成した。純粋な生成物の化学組成は、LC/MS質量分析(Agilent 1100 HPLCシステムとインターフェース接続したMicromass LCT)およびアミノ酸分析(Applied Biosystems、モデル420A)により確認した。
【0223】
合成されるペプチドは、望ましくないチオエーテル酸化の問題を回避するため、メチオニンのノルロイシンでの置き換えを含む。いくつかのペプチドでは、ヘリシティを増大させるためにプロリン残基が2−アミノイソ酪酸残基(Aib)で置き換えられ、また、細胞透過性に対するGluのArgへの置換の効果を調べた。合成ペプチドのN末端はアセチル化したが、C末端はアミド化した。表5は、調製した本発明のペプチド模倣大環状分子のリストを示す。
【0224】
【表5−1】

【0225】
【表5−2】

実施例3.
いくつかのPB1ペプチド模倣大環状分子のエキソビボ血清安定性を、5000ng/mL(2μM,MW=2500において)の上記分子を新鮮ヒト血清とともに37℃でインキュベートし、試料を0、0.5、1、2、4、6および24時間の時点で採取することより試験した。各々の時点で、試料を解析まで二連でフラッシュ凍結させ、次いで、100μlの血清を2ml容遠心分離チューブに移した後、10μLの50%ギ酸および500μLのアセトニトリルを添加し、4±2℃で10分間、14,000RPMで遠心分離することにより抽出した。タンパク質の沈殿後、次いで、上清みを新たな2ml容チューブに移し、TurbovapにおいてN下、<10psiで、37℃にてエバポレートした。試料を100μLの50:50のアセトニトリル/水で再構成させ、LC−MS/MS解析によって定量した。各々の化合物での応答を正規化し、時間に対する濃度の減少割合を推定した。結果を図3に示す。
【0226】
実施例4.
いくつかのPB1ペプチド模倣大環状分子を、ラットにおいて、単回IV用量にてPK特性について試験した。存命中の試験部分は、ViviSource Laboratories(Waltham,MA)で行った。水、続いて5%PEG−400および2%デキストロース中で製剤化したステープルペプチドを、3mg/kgの単回静脈内用量で、頚静脈にカニューレ挿入した雄のSprague−Dawleyラットのペアに投与した。このIV用量は、ほぼ耐容性が良好であり、動物は試験期間中、健常のようであった。血液試料は、24時間までで13回の試料採取時点で採取し、血漿試料は、分析段階の試験のためにドライアイスに載せてTandem Bioanalytical Facilities,Inc.(Woburn,MA)に発送した。
【0227】
血漿試料の定量の前に、50μlの水酸化アンモニウム(14.5Mアンモニア)、1mLの1:1のアセトニトリル/メタノール溶液、および50μlの内部標準を50μlの各々の血漿試料と合わせることにより、試料抽出物の調製を行った。混合物を遠心分離して上清み液を固形沈殿物から分離し、上清みを、窒素ガス流下、40℃で乾燥させた。乾燥させた試料抽出物を、0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸を含む50μlの1:1の水/メタノール溶液中で再構成させた。多重反応モニタリング検出モード(MRM)を使用し、500℃の温度で陽イオン化モードで操作されるAPI 5000(Applied Biosystems)機器を用いる液体クロマトグラフィー−質量分析法によって、血漿試料抽出物を解析した。液体クロマトグラフィーの分析用カラムはVarian Metasil C18,50mm×2mmであり、移動相A(水中の0.1%ギ酸)およびB(アセトニトリル中の0.1%ギ酸)は、0.5ml/分の流速でポンプ輸送した。血漿抽出物における定量は、ステープルペプチドの純粋参照標準品を用いて線形回帰解析によって行い、上記参照標準品は、20〜10,000ng/mlの作業濃度範囲において8つの較正標準品が調製されるように正常ラット血漿で希釈したものであった。較正標準品は試料抽出物と同一の様式で抽出し、試料抽出物の前と後に解析した。
【0228】
薬物動態的パラメータは、マイクロソフトエクセル用のPK Functionsアドインを使用するノンコンパートメントモデルを用いて計算した。最終除去半減期をln(2)/(λz)として計算し、ここで、速度定数(λz)は、2〜12時間にわたる時間に対するlog濃度データの推定傾き値の−1倍として計算した。AUC値(時間ng/ml)は、0〜24時間の時点にわたって統計学的モーメントおよび線形台形近似法によって計算し、AUMCおよびAUCの値を無限時間に外挿するため、(λz)で割った24時間の濃度値を加えた。全身クリアランス(体重1kgあたり)を、AUCで割った用量として計算した。定常状態での分布容量(Vss)は、クリアランスと平均滞留(MRT=AUC/AUMC)の積として計算した。PKの結果を図4、5a〜5fにグラフで示し、測定したPKパラメータの表を図6に示す。
【0229】
また、種々の投与様式を比較する実験も行った。ペプチド模倣大環状分子の皮下注射を行い、静脈内投与と比較した。2つの群の2匹の動物の各々に3mg/kg用量を皮下注射した。血漿を規則正しい時点(例えば、5、20分;1、2、4、8 12および48時間)で採取し、試料を上記のようにして解析した。結果を図7においてプロットする。
【0230】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、記載しているが、このような実施形態が例示目的のみで提供されていることは当業者には明らかであろう。多くの変形、改変および置き換えが、本発明から逸脱することなく当業者には思い浮かぶであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の種々の代替は、本発明の実践に使用可能であると理解されるべきである。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義しており、そして本特許請求の範囲内の方法および構造、ならびにそれらの同等物が本発明の範囲に包含されるものとする。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスポリメラーゼに結合し得るペプチド模倣大環状分子。
【請求項2】
前記ポリメラーゼがRNA依存性RNAポリメラーゼである、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項3】
ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ複合体のサブユニットの構築を破壊し得る、請求項2に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項4】
前記ウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項5】
前記ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼに対する配列MDVNPTLLFLKVPAQまたはMERIKELRNLMのペプチドの結合と競合し得る、請求項2に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項6】
前記ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸配列がアミノ酸配列MDVNPTLLFLKVPAQまたはMERIKELRNLMと少なくとも約60%同一である、請求項2に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項7】
前記ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸配列がアミノ酸配列MDVNPTLLFLKVPAQまたはMERIKELRNLMと少なくとも約80%同一である、請求項2に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項8】
前記ペプチド模倣大環状分子のアミノ酸配列がアミノ酸配列MDVNPTLLFLKVPAQまたはMERIKELRNLMと少なくとも約90%同一である、請求項2に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項9】
らせんを含む、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項10】
10らせんを含む、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項11】
α,α−二置換アミノ酸を含む、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項12】
少なくとも2つのアミノ酸のα位を連結する架橋剤を含む、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項13】
前記2つのアミノ酸の少なくとも1つがα,α−二置換アミノ酸である、請求項12に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項14】
式:
【化37】

を有する、請求項12に記載のペプチド模倣大環状分子であって、式中:
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然または非天然のアミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
【化38】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
Lは、式−L−L−の大環状分子形成リンカーであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
はそれぞれ独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリール、またはD残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、もしくはヘテロシクロアリール、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
vおよびwは独立して、1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは独立して、0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である、ペプチド模倣大環状分子。
【請求項15】
前記ペプチド模倣大環状分子内の第1のアミノ酸の骨格アミノ基を第2のアミノ酸に連結させる架橋剤を含む、請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項16】
式(IV)または(IVa):
【化39】

【化40】

を有する、請求項15に記載のペプチド模倣大環状分子であって、式中:
A、C、D、およびEはそれぞれ独立して、天然または非天然のアミノ酸であり;
Bは、天然もしくは非天然アミノ酸、アミノ酸アナログ、
【化41】

、[−NH−L−CO−]、[−NH−L−SO−]、または[−NH−L−]であり;
およびRは独立して、非置換であるかもしくはハロ−で置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、もしくはヘテロシクロアルキル、またはE残基を有する環状構造の一部であり;
は、必要に応じてRで置換される、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
およびLは独立して、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、シクロアリーレン、ヘテロシクロアリーレン、または[−R−K−R−]であり、それぞれ、必要に応じてRで置換され;
はそれぞれ、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、ヘテロアルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、またはヘテロアリーレンであり;
Kはそれぞれ、O、S、SO、SO、CO、CO、またはCONRであり;
はそれぞれ独立して、ハロゲン、アルキル、−OR、−N(R、−SR、−SOR、−SO、−CO、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
はそれぞれ独立して、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、蛍光性部分、放射性同位体または治療剤であり;
は、必要に応じてRで置換される、−H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアリール、またはヘテロシクロアリールであり;
vおよびwは独立して、1〜1000の整数であり;
u、x、yおよびzは独立して、0〜10の整数であり;かつ
nは1〜5の整数である、ペプチド模倣大環状分子。
【請求項17】
請求項2に記載のペプチド模倣大環状分子を被験体に投与することを含む、前記被験体のインフルエンザ感染の処置方法。
【請求項18】
請求項2に記載のペプチド模倣大環状分子を被験体に投与することを含む、前記被験体におけるインフルエンザ感染の予防方法。
【請求項19】
請求項1に記載のペプチド模倣大環状分子を被験体に投与することを含む、前記被験体においてインフルエンザウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼの活性を阻害する方法。
【請求項20】
x+y+z=2である、請求項14に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項21】
x+y+z=3である、請求項14に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項22】
x+y+z=5である、請求項14に記載のペプチド模倣大環状分子。
【請求項23】
x+y+z=6である、請求項14に記載のペプチド模倣大環状分子。

【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−515172(P2012−515172A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545547(P2011−545547)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/021091
【国際公開番号】WO2010/083347
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(507272957)エルロン・セラピューティクス・インコーポレイテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】AILERON THERAPEUTICS,INC.
【Fターム(参考)】