説明

ペプチド組成物の安定性および送達効率を上昇させるための修飾方法

開示する本発明は、安定性および送達効率を上昇させるためにペプチド組成物を修飾する方法に関する。具体的には、開示する本発明は、タンパク質キナーゼC(PKC)調節ペプチド組成物の安定性および送達効率を上昇させるための方法に関する。「治療ペプチド組成物」は、「キャリアペプチド」と「カーゴペプチド」とを含む。「キャリアペプチド」は、治療ペプチド組成物の細胞内取り込みを促進する、ペプチドまたはペプチド内のアミノ酸配列である。「カーゴペプチド」は、PKC調節ペプチドである。本明細書に記載される、キャリアペプチド、カーゴペプチドのいずれか、またはその両方に対するペプチド修飾は、ジスルフィド結合の交換の減少、物理的安定性、タンパク質分解の減少、および細胞内取り込み効率の上昇により、治療ペプチド組成物の安定性および送達効率を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、生物活性のある作用物質を生きた組織の細胞内へ運ぶキャリアを改良するための組成物および方法に関する。組成物および方法は、複合体に血漿安定性を与え、細胞にPKC調節ペプチドがより効率良く取り込まれることを可能にする、修飾tatペプチドに結合したPKC調節ペプチドを含む。
【背景技術】
【0002】
研究によって治療のための組成物としての可能性を持つペプチドが多く生産されてきた。それでも、様々な理由のために、細胞内標的に対するペプチドの治療可能性を十分に実現および活用することは、まだ実現していない。最も重要な理由の1つは、大部分のペプチドが、細胞膜を通過し、治療標的に到達する能力を持っていないことにある。この問題に対する1つの解決法は、標的細胞内へカーゴペプチドを輸送するキャリアペプチドを使用することである。
【0003】
カーゴペプチドによる標的細胞の膜の通過を促進するために有効なキャリアペプチドの注目すべき例がいくつかある。1つの例は、HIVウイルスのTATタンパク質に由来するペプチド配列である。その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,316,003号(特許文献1)を参照されたい。別の周知のキャリアペプチド配列は、「ポリArg」配列である。たとえば米国特許第6,306,993号(特許文献2)を参照されたい。
【0004】
多くの場合、キャリアペプチドとカーゴペプチドを連結するために、ジスルフィド結合を用いて治療ペプチド構築物を作製することは、可溶性ペプチドを細胞内標的にターゲティングする問題を解決するために、有効な戦略である。ジスルフィド結合の有用性を説明する1つの理論は、キャリア・カーゴ構築物が標的細胞に入ると、2つのペプチドは、ジスルフィド結合の還元によって分離できるというものである。細胞内環境におけるこの分離によって、キャリア・カーゴの連結が保持される他の連結機序よりも、カーゴペプチドが細胞内でより広く拡散できる可能性がある。しかしながら、とは言うものの、治療ペプチドの投与には、まだ、ジスルフィド結合の交換、タンパク質分解、および細胞内取り込み効率のような数多くの課題がある。これらの問題を制御するための方法は、治療ペプチドの安定性および効力を上昇させると考えられる。
【0005】
カーゴペプチドにジスルフィド結合したキャリアペプチドを含む治療ペプチドの効力を上昇させるための1つの方法は、ジスルフィド結合の交換を減少させることである。ジスルフィド結合の交換により、キャリアペプチドがカーゴペプチドを別のキャリアペプチドと交換することが可能になり、キャリア・キャリア構築物およびカーゴ・カーゴ構築物が生じるため、試料中のキャリア・カーゴペプチド構築物の量が減少する。キャリアのみの構築物には治療効果はない。キャリアペプチドが細胞内標的へのカーゴの送達を可能にしているので、カーゴ・カーゴ構築物は、効果がたとえ完全になくなっていないとしても途方もなく低下している。ジスルフィド結合の交換のコントロールという問題は、それ自体として、キャリア・カーゴペプチド構築物の治療可能性を最大化するために、重要である。
【0006】
治療ペプチドの使用の直面する別の問題は、タンパク質分解である。ペプチドは、不安定で有名な分子であり、対照に投与されるとしばしばタンパク質分解性の攻撃に不安定である。カーゴは、細胞内標的に到達するためにキャリアペプチドに依存しているので、投与すると分解される不安定なキャリアペプチドは、カーゴペプチドの有効性を低下させるかまたは排除することにさえなる。このように、治療ペプチドの不安定な性質をコントロールまたは排除するための方法も、キャリア・カーゴペプチドの治療可能性を最大化するために重要である。
【0007】
治療ペプチドの細胞内取り込み効率を上昇させることは、治療ペプチドの有効性または効力を低下させ得るもう一つの問題である。キャリアペプチド配列およびカーゴペプチドに対する相対的配置の最適化は、治療ペプチド構築物の安定性および効力を上昇させるための方法を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,316,003号
【特許文献2】米国特許第6,306,993号
【発明の概要】
【0009】
発明の開示
開示する本発明は、キャリアペプチドとPKC活性を調節するカーゴペプチドとを含む、治療ペプチド組成物の調製方法に関し、これにより得られた治療ペプチド組成物は、非修飾治療ペプチドと比べて安定性および効力が上昇している。本発明の1つの態様は、キャリアペプチドとカーゴペプチドが、第1のシステイン残基と第2のシステイン残基との間のシステイン・システインジスルフィド結合によって連結している、第1のシステイン残基を含むキャリアペプチドと、第2のシステイン残基を含むPKC活性調節カーゴペプチドとを含む、治療ペプチド組成物を提供する段階;および第1のシステイン残基もしくは第2のシステイン残基、または両残基に直接隣接した少なくとも1つの脂肪族残基を導入し、これによりジスルフィド結合の交換速度を非修飾治療ペプチド組成物と比べて減少させる段階を含む、治療ペプチド組成物においてジスルフィド結合の交換を減少させる方法である。
【0010】
開示する本発明の別の態様は、カーゴペプチドに連結されたキャリアペプチドと、PKC活性調節カーゴペプチドとを含む、治療ペプチド組成物を提供する段階;キャリアペプチド上の、カーゴペプチド上の、または両ペプチド上のタンパク質分解に不安定な部位を同定する段階;および該部位におけるタンパク質分解の速度を非修飾治療ペプチド組成物と比べて減少させるように、不安定な部位のアミノ酸配列を修飾する段階を含む、治療ペプチド組成物のタンパク質分解を減少させる方法に関する。
【0011】
開示する本発明の別の態様は、カーゴペプチドに連結されたキャリアペプチドと、PKC活性調節カーゴペプチドとを含む、治療ペプチド組成物を提供する段階;治療ペプチド組成物の血漿安定性を非修飾治療ペプチド組成物と比べて上昇させるように、キャリアペプチド、カーゴペプチド、または両方のアミノ末端残基、カルボキシル末端残基、もしくは両残基を修飾する段階を含む、治療ペプチド組成物の血漿安定性を上昇させる方法に関する。
【0012】
本明細書に開示する組成物も考察されている。開示する組成物の1つの態様には、細胞内キャリアペプチド、調節ペプチド、または両方がN末端において修飾されている、細胞内キャリアペプチドに共有結合で連結されたPKC調節ペプチドを含む、タンパク質キナーゼC(PKC)調節ペプチド組成物が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】治療ペプチドKAI-9706およびKAI-1455の濃度に対するCK放出をプロットしたグラフである。
【図2】治療ペプチドKAI-9706およびKAI-1455の濃度上昇に対する梗塞パーセントをプロットしたグラフである。
【図3】ヒト血清(3A)、ブタ血清(3B)、およびラット血清(3C)中で、時間の経過とともに残っている完全な治療ペプチドKAI-9803、KAI-9706、およびKAI-1455の割合(パーセント)をプロットしたグラフである。
【図4】ジスルフィド結合を介して連結しているキャリアペプチドとカーゴペプチドとを含む治療ペプチドの、線状の治療ペプチドへの変換を図示する。この線状ペプチド(KP-01547)は、アミノ末端およびカルボキシル末端にキャップが付いており、短いアミノ酸配列のリンカーを含む。
【図5】時間(日数)の経過とともに、完全な治療ペプチド(線状および非線状)の割合(パーセント)をプロットしたグラフである。
【図6】時間(日数)の経過とともに、治療ペプチドの安定性を比較したグラフである。
【図7】2つの線状ペプチドを図示する。
【図8】時間の経過とともに様々なPKC-βI治療ペプチドの安定性を比較したグラフである。
【図9】時間の経過とともに様々なPKC-βII治療ペプチドの安定性を比較したグラフである。
【図10】26℃(10A)および37℃(10B)でのKAI-9706、ならびに26℃(10C)および37℃(10D)でのKAI-1455の安定性に対する温度の影響を図示するグラフである。
【図11】10分間の灌流によるランゲンドルフのインビトロ虚血後アッセイ法において、KAI-9803またはKAI-1355ペプチドの濃度を上昇させた際のクレアチニンキナーゼ放出をプロットしたグラフである。
【図12】KAI-1479の作製を示す図である。
【図13】再灌流試験の結果を示す棒グラフである。図13Aは実験中の事象の時系列を示し、図13Bは様々な治療ペプチド(KAI-9803、KAI-1479、およびKAI-1482)の保護的な性質を示す棒グラフである。
【図14】ペプチドのアミノ末端にシステイン残基を持つSEQ ID NO: 33のカーゴペプチドを示す。
【図15】治療ペプチドの多量体の4つの可能な立体配置を示す。
【図16】線状ペプチドKP-1680、KP-1681、KP-1633、およびKP-1678を示す。
【図17A】時間の経過とともに試験溶液中に残存するペプチドの割合(%)を示すグラフである。
【図17B】時間の経過とともに試験溶液中に残存するペプチドの割合(%)を示すグラフである。
【図17C】時間の経過とともに試験溶液中に残存するペプチドの割合(%)を示すグラフである。
【図17D】時間の経過とともに試験溶液中に残存するペプチドの割合(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
開示する本発明は、安定性および送達効率を上昇させるためにペプチド組成物を修飾する方法に関する。具体的には、開示する発明は、タンパク質キナーゼC(PKC)調節ペプチド組成物の安定性および送達効率を上昇させるための方法に関する。「治療ペプチド組成物」は、「キャリアペプチド」と「カーゴペプチド」とを含む。「キャリアペプチド」は、治療ペプチド組成物の細胞内取り込みを促進する、ペプチドまたはペプチド内のアミノ酸配列である。「カーゴペプチド」は、PKC調節ペプチドである。本明細書に記載されるキャリアペプチド、カーゴペプチドのいずれか、またはその両方に対するペプチド修飾は、ジスルフィド結合の交換の減少、物理的安定性、タンパク質分解の減少、および細胞内取り込み効率の上昇により、治療ペプチド組成物の安定性および送達効率を上昇させる。
【0015】
ジスルフィド結合の交換
開示する治療ペプチド組成物の好ましい態様は、各ペプチドに1つずつの、2つの硫黄含有残基を結合させるジスルフィド結合を介して、キャリアペプチドに結合されたカーゴペプチドを提供する。本態様のジスルフィド結合は、治療ペプチド組成物が、溶液中であっても、凍結乾燥されていても、沈殿していても、結晶化していても、または噴霧乾燥されていても、不安定である場合があり、その結果、キャリア・カーゴの組み合せが、不活性なキャリア・キャリア組成物に、および同様に不活性でしばしば不溶性のカーゴ・カーゴ組成物に分解するということになる。開示する治療ペプチド組成物の安定性は、化学修飾の利用によって、および使用前のペプチド組成物の物理的環境の制御によって、改善される。
【0016】
化学修飾
結合用硫黄含有残基は、キャリアペプチドまたはカーゴペプチドの配列のどこにでも配置することができる。たとえば、開示する治療ペプチド組成物の好ましい態様は、典型的には、結合用硫黄含有残基をキャリアペプチドおよびカーゴペプチドのアミノ末端に持つ。結合用硫黄含有残基は、両ペプチドのカルボキシル末端に、またはその代わりとして、一方のペプチドのアミノ末端および他方のペプチドのカルボキシル末端に配置することもできる。さらに、結合用硫黄含有残基は、どちらかのまたは両方のペプチドの配列内のどこにでも存在することができる。キャリアペプチド内に、カーゴペプチド内に、または両ペプチド内に結合用硫黄含有残基を配置すると、ジスルフィド結合の交換の速度が低下することが観察された。
【0017】
治療ペプチド組成物のジスルフィド結合を安定化させるために有用な化学修飾の例は、キャリアペプチドとカーゴペプチドを結合させるために使用する硫黄含有残基に直接隣接した、アミノ酸残基の最適化を含む。ジスルフィド結合を安定化させるための好ましい方法は、キャリアおよび/またはカーゴペプチドの硫黄含有残基に直接隣接するように脂肪族残基を配置する段階を含む。脂肪族残基は、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンを含む。したがって、結合用硫黄含有残基をペプチドのアミノ末端に配置する場合には、ジスルフィド結合の交換速度を低下させるために、脂肪族残基をアミノ末端から2番目の位置に配置する。結合用硫黄含有残基をペプチドのカルボキシル末端に配置する場合には、ジスルフィド結合の交換速度を低下させるために、脂肪族残基をペプチドのカルボキシル末端から2番目の位置に配置する。結合用硫黄含有残基をペプチドの配列内に配置する場合には、脂肪族残基を、その残基のアミノ末端側もしくはカルボキシル末端側に、または両側に配置することができる。
【0018】
本明細書に開示する本発明では、様々な硫黄含有残基の使用が考えられる。ペプチド組成物における結合システイン残基として、システインおよびシステイン類似体も使用できる。特定のシステイン類似体には、D-システイン、ホモシステイン、αメチルシステイン、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、ペニシラミン、アシル基を受け入れる能力のある類似体のアセチル化型、および他のブロッキング基で修飾されたシステイン類似体が含まれる。たとえば、カーゴペプチド、キャリアペプチド、または両ペプチドにおいてホモシステイン、アセチル化ホモシステイン、ペニシラミン、およびアセチル化ペニシラミンを使用すると、ペプチド組成物が安定化し、ジスルフィド結合の交換が減少することが示されている。1つのシステインからの塩基を介したα水素の引き抜きが、硫黄原子の存在により防止されるため、αメチルシステインはジスルフィド分解を阻害する。ジスルフィド結合で結合したカーゴ/キャリアペプチド複合体は、非修飾ペプチドよりも、グルタチオン還元に対して抵抗性が高いことが示された。他のシステイン類似体も、結合システインとして有用である。同様に、システインの立体異性体もジスルフィド結合の交換を阻害する。
【0019】
ジスルフィド結合の交換は、キャリアペプチドとカーゴペプチドを連結させて単一の線状ペプチドを形成させることにより、完全に排除できる。この方法は、以下に議論される。
【0020】
物理的安定性
ジスルフィドの物理的環境は、安定性に影響がある。図10で(部分的に)示されるように、溶液のpHが低下し(塩基性よりも酸性の環境の方が良い)、溶液の温度が低下し、および溶液中のペプチド組成物の濃度が低下すると、溶液中の安定性は上昇する。凍結乾燥した形態の場合は、pHが低下、温度が低下、および賦形剤に対するペプチド組成物の比率が上昇すると、安定性は上昇する。好ましい賦形剤は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる2005年9月30日付の米国特許出願第 11/240,962号に議論されている。
【0021】
予想外の「賦形剤効果」は、極めて結晶性の賦形剤であるマンニトールで最も顕著だった。より結晶性の低い賦形剤(スクロースのような)の使用、または賦形剤の不使用により、ペプチド組成物量への依存がはるかに少ないことが示された。理論に縛られることまたは理論によって限定されることは望まないが、非結晶性の賦形剤を使用すると、無定型基質が生成し、これが分子間会合を防止すると考えられる。理論的には、結晶性の基質内ではペプチド組成物は、排除され、バイアル壁に押し付けられ、おそらく局所濃度が高まる。API濃度が低いと、結果として生じる薄膜は、ペプチド-ガラス接触面積が高くなり、シリカは不安定である。
【0022】
いくつかの要因は、治療ペプチド組成物が標的細胞に取り込まれる効率に影響を与える。たとえば、治療ペプチドの溶解性は、標的細胞によってペプチドが取り込まれる効率に影響する。同様に、キャリアペプチドまたはカーゴペプチドのアミノ酸配列は、それらを用いるペプチド組成物の溶解性を大部分決定する。いくつかのペプチド、特にカーゴペプチドは、疎水性残基(例、Phe、Tyr、Leu)を含み、凝集につながる「ジッパー」機序によって分子内相互作用が可能になる、規則的な間隔を有すると考えられる。潜在的にそのような問題のあるペプチドの例は、図14に示されている。図示された配列は、δPKCのV1ドメインにおいてβ鎖を形成すると考えられている。そのようなペプチドは、不溶性の沈着物を形成する傾向がある。
【0023】
そのようなペプチドの溶解性は、カーゴペプチド配列に特定の修飾をすることにより、改善できる。たとえば、アミノ末端に、およびまたはカルボキシル末端に、または内部の残基に、ポリエチレングリコール(PEG)のような水和基、四級アンモニウム塩のような高度荷電基、または特定のアミノ酸残基のかさ高の分岐鎖のような可溶化基を導入すると、図14に図示されているようなペプチドの溶解性を改善する。さらに、活性には不要であることが示されている疎水性側鎖は、欠失によって、またはアラニン、グリシン、またはセリンのような保存的または非干渉性残基との置換によって除去し、このようにペプチドの溶解性を改善することができる。
【0024】
タンパク質分解:血漿安定性
血液および血漿は、本明細書で開示するタンパク質キナーゼC調節ペプチドもしくはペプチド組成物の細胞内取り込みを促進するキャリアペプチド、またはその両方を分解することのできるプロテアーゼを含む。キャリアペプチドまたはカーゴペプチドのタンパク質分解を減少させる1つの方法は、治療ペプチド組成物によって提示されるプロテアーゼの標的を覆うことである。
【0025】
治療ペプチドは、対象の血漿に入ると、ペプチダーゼの攻撃を受けやすくなる。エキソペプチダーゼ(ペプチド鎖の末端のアミノ酸によって形成されたペプチド結合を加水分解する酵素群の任意のもの)、またはエンドペプチダーゼ(タンパク質分子の長い鎖の内部のペプチド結合を加水分解する酵素群の任意のもの)によっておきるペプチド分解に対処するための戦略が、提供される。エキソペプチダーゼは、ペプチドまたはタンパク質のアミノ末端またはカルボキシル末端からアミノ酸残基を切断する酵素であり、特異的部位または非特異的部位で切断できる。エンドペプチダーゼは、アミノ酸配列内で切断し、同様に非特異的であり得るが、エンドペプチダーゼは、しばしば特定のアミノ酸配列(認識部位)を認識し、それらの部位またはその近くでペプチドを切断する。
【0026】
タンパク質分解からペプチド組成物を保護する1つの方法は、ペプチドのアミノおよび/またはカルボキシル末端の「キャッピング」を含む。「キャッピング(キャップ付け)」という用語は、共有結合の修飾を介して、ペプチドの末端にブロッキング基を導入することを指す。適当なブロッキング基は、ペプチドの生物学的活性を低下させることなく、ペプチドの末端にキャップを付ける。記載されたペプチドのアミノ末端のアセチル化は、ペプチドをタンパク質分解から保護する好ましい方法である。他のキャッピング部分も可能である。アシル化部分の選択により、ペプチドに「キャップ」を付け、また化合物の疎水性を調節する機会が提供される。たとえば、以下の一連のアシル基は、疎水性を上昇させ、さらにキャッピング部分としても考えられる:ホルミル、アセチル、プロパノイル、ヘキサノイル、ミリストイル。記載されたペプチドのカルボキシル末端のアミド化も、タンパク質分解からペプチドを保護するための好ましい方法である。
【0027】
エンドペプチダーゼからのペプチドの保護は、典型的には、ペプチドからのエンドペプチダーゼ認識部位の同定および除去を含む。プロテアーゼ認識部位は、当業者に周知である。したがって、潜在的なエンドペプチダーゼ認識部位を同定し、認識部位内のアミノ酸配列を変化させることによって、その部位を除去することが可能である。認識部位を破壊するために、認識配列内の残基を移動させるかまたは削除することができる。好ましくは、同定されたプロテアーゼ認識部位を含むアミノ酸の1つまたは複数に保存的置換を行う。これらのアミノ酸の側鎖は、様々な化学的性質を持っている。本議論のために、最も一般的なアミノ酸は、以下に列挙する9つのグループに分類される。これらのグループ内での置換は、保存的置換と見なされる。
【0028】
保存的アミノ酸置換

【0029】
細胞内取り込み効率
上記の修飾に加えて、キャリアペプチドとカーゴペプチドの連結を変化させることによって、開示する治療ペプチド組成物の有用性を改善することができる。たとえば、1つの態様では、キャリアペプチドとカーゴペプチドとが、ペプチド結合によって連結され、線状ペプチドを形成している。治療ペプチドの安定性および効力は、複数のカーゴペプチドが1つまたは複数のキャリアペプチドに連結している、ペプチド多量体を作製することによっても上昇できる。切断可能リンカー配列を含む本発明の別の態様も議論される。
【0030】
線状ペプチド
ペプチド組成物の安定性を改善するための別の戦略は、ジスルフィド結合を介してペプチドを結合する段階とは対照的に、カーゴペプチドとキャリアペプチドを結合して単一のペプチドにする段階を含む。たとえば、図4Aに示される態様では、カーゴペプチド(SEQ ID NO: 13)は、アミノ末端のシステインを介して連結している。カーゴペプチドおよびキャリアペプチドの線状の型は図4Bに示されており、カーゴペプチドとキャリアペプチドは、短いジペプチドリンカー(例、Ser-Gly)を介して連結している。このリンカーは例示である。
【0031】
図示された例では、カーゴのC末端は、リンカーを介してキャリアのN末端に連結している。しかし、それらのC末端を介して、それらのN末端を介して、およびキャリアペプチドをペプチド組成物のN末端部分に配置する場合に、ペプチドを連結する段階を含む、他の可能な順列も考えられる。
【0032】
さらに、ジスルフィド結合されたペプチド組成物を安定化するための上記の段階は、適切な場合には、線状でも使用できる。たとえば、図4Bに示された線状ペプチド組成物は、そのアミノ末端およびカルボキシル末端の両方にキャップが付いている。さらに、ペプチド内の配列は、ごちゃ混ぜにされる(scrambled)か、またはDアミノ酸で置換されていても良い。
【0033】
図7に示されるように、β-Iの7位のAsnの脱アミノ化は、Asn-Glyにより連結されたペプチド組成物の線状化型を有意に不安定にすることが観察された。GlyをLeuに変更すると、この線状ペプチド組成物は安定化する。同様に、線状β-II組成物の2位のGln残基の脱アミノ化は、有意に不安定にすることが観察された。Gluで置換すると線状組成物の安定性が改善した。これらのペプチドの修飾型を比較するデータは、図8および9に示されている。
【0034】
特定の理論に限定されることなく、脱アミノ化が、Asnの側鎖アミドのAsn残基に対するα鎖または主鎖のアミドHN-C末端の攻撃に起因し、アスパラギン酸部分に加水分解できる環状アスパルトアミド中間体を生成すると考えられる。C末端残基のサイズをAsnまで増加させることは、主鎖アミドの立体障害を増加させ、有意に脱アミド化を遅くすると考えられる。
【0035】
ペプチド多量体
安定性および効力を改善するための別の方法は、1つまたは複数のキャリアペプチドに会合した複数のカーゴペプチドで多量体を形成することによって使用可能である。そのような製剤の例は、図15に示されている。分岐した多価のペプチド組成物は、組成物の親和力、効力および安定性を上昇させる。切断部位を設計することによりまたは多量体組成物中への他の放出機序を設計することにより、複数の複合体が、標的細胞中にPKC調節カーゴペプチドをほぼ同時に放出することができる。多量体ペプチドの例は、Yu et al. JBC 275(6):3943-9 (2000)に議論されている。
【0036】
切断可能配列
典型的には、キャリアとカーゴは、エステラーゼ、アミダーゼ、および同様なもののような、遍在性酵素によって切断できる結合によって、連結されている。そのような酵素の濃度は、細胞外の環境よりも細胞内の方が高いと考えられている。したがって、一旦複合体が細胞内に入ると、カーゴとキャリアとの間の連結を切断できる酵素に出会う可能性がより高くなる。したがって、酵素は、最も有用だと考えられる細胞内で、生物学的活性のあるカーゴを放出できる。
【0037】
タンパク質キナーゼC調節ペプチド
タンパク質キナーゼC調節ペプチドという用語は、PKCアイソザイムおよび/または可変領域に由来する。様々なPKCアイソザイム特異的なペプチドおよび可変領域特異的なペプチドが記載されており、ここに開示する本発明を用いて使用できる。好ましくは、PKC調節ペプチドは、V1、V3、またはV5由来のペプチドである。(「V1」と「C2」という用語は同義である。)全体が参照により本明細書に組み入れられる以下の米国特許または米国特許出願は、本明細書に開示する本発明を用いて使用できる様々な適切なペプチドを記載している:5,783,405、6,165,977、6,855,693、US2004/0204364、US2002/0150984、US2002/0168354、US2002/057413、US2003/0223981、US2004/0009922、および10/428,280。表1は、本発明とともに使用する好ましいPKC調節ペプチドを列挙している。
【0038】
(表1)PKCアイソザイム由来のカーゴペプチド





【0039】
(表2)キャリアペプチド

【0040】
キャリアの他の例には、当技術分野で公知である、オクタ-Arg、オクタ-D-Arg、およびアンテナペディア(Antennapedia)由来ペプチドが含まれる。
【0041】
以下の実施例は、説明のためのもので、本発明を限定するものではない。
【0042】
実施例1
エキソペプチダーゼ保護:キャップ付きペプチドの血漿安定性
キャップ付きペプチドの血漿安定性を比較した。KAI-9706のアミノ末端およびカルボキシル末端を段階的に修飾した。血漿安定性は、15分後に残存するペプチド組成物の割合によって測定された。結果を表2に提供する。
【0043】
(表2)KAI-9706の血漿安定性

15分の時点において残存する親化合物(%)
ラット血漿中のt1/2=最長寿命の誘導体については40〜45分
【0044】
上記に提供されたデータは、非修飾のカーゴペプチドとキャリアペプチドとを含むペプチド組成物が最も不安定であることを示す。さらに、キャリアペプチドのみを保護しても、血漿中のペプチド組成物の半減期を延長できなかった。さらに、キャリアペプチドを修飾せずにカーゴペプチドを修飾しても、血漿中の半減期の安定性には明らかな影響はなかった。しかし、キャリアペプチドに保護基を付加することが、それがアミノ末端でもカルボキシル末端でも、ペプチド組成物の血漿安定性における著しくかつほぼ同等の増加につながった。キャリアペプチドの両方の基の保護により、さらに保護が提供された。興味深いことに、カーゴペプチドの保護は、組成物の安定性にほとんどまたは全く影響がなかった。
【0045】
実施例2
血漿安定性に対するD-ペプチドの効果
KAI-9706は、ペプチド組成物の安定性に対する影響を決定するために、D-ペプチドを用いて操作された。非修飾KAI-9706は、同じアミノ酸配列を持つペプチド組成物と比較したが、用いたアミノ酸は、l-アミノ酸ではなくd-エナンチオマーであった。ペプチド組成物のレトロインベルソ型、およびごちゃ混ぜ型も調製された。実験データを表3に示す。
【0046】
(表3)KAI-9706の血漿安定性

15分の時点で残存する親化合物(%)
【0047】
キャリアの修飾は、組成物の半減期を改善する傾向が強かったが、カーゴの修飾はほとんど効果がなかった。
【0048】
実施例3
キャップ付きのKAI-9706はインビトロの効力を保持する
キャリアペプチド部分KAI-9706(KAI-1455)のキャッピングは、ペプチド組成物の血漿半減期を増やすことが示された。ラット心臓モデル(ランゲンドルフアッセイ法)において、キャップ付き組成物が虚血障害を阻害する能力を、キャップなしの形態と比較して評価した。結果を図1に示す。
【0049】
実施例4
キャップ付きKAI-9706は効力の上昇を示す
KAI-1455は、脳卒中モデルで試験した。図2に示されるように、キャップ付きのペプチド組成物は、梗塞パーセントによる判断では、脳組織の増強した保護を提供した。このデータは、より低い用量で脳組織の有意な保護が得られることを示す。
【0050】
実施例5
種に関係なくペプチドの安定性は上昇している
修飾KAI-9706ペプチド(KAI-1455)の安定性は、ヒト(図3A)、ブタ(図3B)、およびラット(図3C)の血清中で、KAI-9706およびKAI-9803と比較した。キャップ付きのKAI-1455は、3つの種の全てにおいて血漿安定性が上昇していた。
【0051】
実施例6
キャップ付きKAI-9706は効力の上昇を示す
KAI-1455は、脳卒中モデルで試験した。図2に示されるように、ペプチド組成物のキャップ付き型は、梗塞パーセントによる判断では、脳組織の増強した保護を提供した。このデータは、より低い用量で脳組織の有意な保護が得られることを示す。
【0052】
実施例7
種に関係なくペプチドの安定性は上昇している
修飾KAI-9706ペプチド(KAI-1455)の安定性は、ヒト(図3A)、ブタ(図3B)、およびラット(図3C)の血清中で、KAI-9706およびKAI-9803と比較した。キャップ付きのKAI-1455は、3つの種の全てにおいて血漿安定性が上昇していた。
【0053】
実施例8
線状ペプチドの安定性
KAI-9803およびBC2-4の線状型が構築され、これらのペプチド組成物および他のペプチド組成物のジスルフィド結合で連結した型と比較して安定性が評価された。ペプチドを37℃でPBS(pH 7.4)中に0.1 mg/mlで溶液中に入れた。図5に示されるように、KAI-9803およびBV2-4の線状型は、安定性が上昇していた。
【0054】
実施例9
線状PKC-βIおよびPKC-βIIペプチド組成物は、ジスルフィド結合した組成物よりも高い安定性を示す
PKC-βIおよびPKC-βIIペプチド組成物の線状型およびジスルフィド結合で連結した型を、実施例8に記載された条件下でインキュベーションした。図6に示されるように、PKC-βIおよびPKC-βIIペプチドの線状形態は、非線状対応物よりも安定性が上昇していた。
【0055】
実施例10
線状PKC-βIおよびPKC-βIIペプチド組成物の改善した安定性
PKC-βIおよびPKC-βIIペプチド組成物の線状型は、安定性が改善されていたが、脱アミノ化反応の対象でもあった。特に、β-Iおよびβ-IIペプチドの7位のAsn残基、およびβ-IIペプチドの2位のGln。これらの線状ペプチド組成物は、β-Iペプチド組成物中のAsnのすぐC末端側のGlyをLeuで置換すること、またはβ-IIペプチド組成物中のGlyをIleで置換することのいずれかにより修飾した。β-IIペプチド組成物の2位のGlnも、Glu残基で置換した。ペプチドの安定性は、実施例8に記載された条件下で検討された。図8および9に示されるように、上記のアミノ酸置換は、これらの線状ペプチド組成物を安定化させた。
【0056】
実施例11
KAI-9803誘導体(KAI-1355)は効力を保持した
カルボキシル末端のロイシンが除去されたKAI-9803の切断型である、KAI-1355の効力が試験された。KAI-1355の安定性試験は、C末端のLeu残基の欠失によりこのカーゴペプチドの安定性が増加したことを示した。誘導体ペプチド組成物の効力は、ランゲンドルフのインビトロ虚血後モデルにおいて、全長型のKAI-9803と比較された。実験結果は図11に示す。示されたように、KAI-1355(KAI-9803の修飾型)はまだ虚血から心筋を保護する能力を持っており、効力は全長KAI-9803と同等であった。
【0057】
実施例12
KAI-1479を生産するためのKAI-9803の最適化
カーゴペプチドKAI-9803の切断は、ペプチド組成物を安定化する一方で、効力にほとんどまたは全く影響がないことが示された。図12に図示されるように、TATキャリアペプチドのキャップ付き型は、切断カーゴペプチドKAI-1355に結合され、切断された9803カーゴペプチドと全長のキャップ付きTATキャリアペプチドとを含むKAI-1479が作製された。
【0058】
修飾されたKAI-1479、KAI-9803、およびKAI-1482ペプチド組成物は、ラットの中大脳動脈閉塞(MCAO)脳卒中モデルにおいてアッセイされ、ペプチド組成物が梗塞サイズを阻害する能力を決定した。ラットに2時間の大脳動脈閉塞が施された。各々のペプチド組成物または生理食塩水は、22時間の再灌流期間の直前に、試験動物に投与され、再灌流後に動物を屠殺して梗塞サイズを測定した。図13に示されるように、修飾KAI-1479ペプチド組成物は、梗塞サイズを妨害する能力がKAI-9803と比べて増加していた。KP-01482は、両端にキャップが付きかつカーゴにジスルフィド結合で結合したTATペプチドに、N末端のCysにより連結されたカーゴ配列

を持つ。
【0059】
実施例13
一連の線状εPKC阻害物質のインビトロの生物学的安定性
ラットおよびヒトの血漿中および血清中での化合物の安定性に対する、N末端のアセチル化およびC末端のアミド化の効果を検討した。調べられた線状ペプチドを図16に示す。化合物は、100μg/mlの濃度で血漿/血清中で試験した。溶液は室温でインキュベーションし、5% TCAで沈殿させ、上清を酢酸アンモニウムで中和した。その後ペプチドをLC/MSで分析した。図17A〜17Dに示されたデータから分かるように、試験された化合物は全てヒトの血漿中では比較的安定だったが、C末端のアミドを含むKP-1633およびKP-1678は、ヒト血清中で安定性が上昇していた。N末端のアセチル化単独ではペプチドを安定させなかった。興味深いことに、KP-1680のアミノ酸配列およびその分解産物は、ペプチドの代謝された形態がC末端からのアルギニン残基の連続的切断を表すことを示した。血漿中ではなく血清中のカルボキシペプチダーゼNの活性により、観察された安定性の差異を説明することができた。血漿試料は、この亜鉛メタロプロテイナーゼを阻害することが公知であるEDTAを用いて採取した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアペプチドとカーゴペプチドとが、第1のシステイン残基と第2のシステイン残基との間のシステイン・システインジスルフィド結合によって連結している、第1のシステイン残基を含むキャリアペプチドと、第2のシステイン残基を含むPKC活性調節カーゴペプチドとを含む、治療ペプチド組成物を提供する段階;および
第1のシステイン残基もしくは第2のシステイン残基に、または両残基に直接隣接した少なくとも1つの脂肪族残基を導入し、これによりジスルフィド結合の交換速度を、非修飾治療ペプチド組成物と比べて減少させる段階
を含む、治療ペプチド組成物においてジスルフィド結合の交換を減少させる方法。
【請求項2】
第1のシステインが、キャリアペプチドのアミノ末端に、カルボキシル末端に、または配列内に配置される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第2のシステインが、カーゴペプチドのアミノ末端に、カルボキシル末端に、または配列内に配置される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
システイン残基がシステイン類似体である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
システイン類似体がホモシステインである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
システイン類似体がD-システインである、請求項4記載の方法。
【請求項7】
システイン類似体がαメチルシステインである、請求項4記載の方法。
【請求項8】
カーゴペプチドに連結されたキャリアペプチドと、PKC活性調節カーゴペプチドとを含む、治療ペプチド組成物を提供する段階;
キャリアペプチド上の、カーゴペプチド上の、または両ペプチド上のタンパク質分解に不安定な部位を同定する段階;および
該部位におけるタンパク質分解の速度を非修飾治療ペプチド組成物と比べて減少させるように、タンパク質分解を阻害するためにアミノ酸配列を修飾する段階
を含む、治療ペプチド組成物のタンパク質分解を減少させる方法。
【請求項9】
修飾段階が、キャリアペプチド、カーゴペプチド、または両方についてのアミノ末端のアシル化を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
修飾段階が、キャリアペプチド、カーゴペプチド、または両方についてのカルボキシル末端のアミド化を含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
タンパク質分解に不安定な部位がプロテアーゼ認識部位である、請求項8記載の方法。
【請求項12】
修飾段階が、
認識部位配列を変化させるような、プロテアーゼ認識部位内のアミノ酸の付加、欠失、または置換の導入
を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
アミノ酸付加またはアミノ酸置換がD-アミノ酸の導入を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
修飾段階が、タンパク質分解に不安定な部位の化学修飾の導入を含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
化学修飾がα-メチル化、またはN-メチル化である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
カーゴペプチドに連結されたキャリアペプチドと、PKC活性調節カーゴペプチドとを含む、治療ペプチド組成物を提供する段階;
治療ペプチド組成物の血漿安定性を非修飾治療ペプチド組成物と比べて上昇させるように、キャリアペプチド、カーゴペプチド、または両方のアミノ末端残基、カルボキシル末端残基、もしくは両残基を修飾する段階
を含む、治療ペプチド組成物の血漿安定性を上昇させる方法。
【請求項17】
キャリアペプチドが修飾tatペプチドである、請求項13記載の方法。
【請求項18】
修飾tatペプチドが、そのN末端アミノ酸のアミン基におけるアシル化もしくはそのC末端アミノ酸のカルボキシル基におけるアミド化によって、またはその両方によって修飾されている、請求項14記載の方法。
【請求項19】
細胞内キャリアペプチド、調節ペプチド、または両方がN末端において修飾されている、細胞内キャリアペプチドに共有結合で連結しているPKC調節ペプチド
を含む、タンパク質キナーゼC(PKC)調節ペプチド組成物。
【請求項20】
PKC調節ペプチドが、ジスルフィド結合によって細胞内キャリアペプチドに連結している、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
PKC調節ペプチドが、PKCアイソザイムの活性を阻害する阻害ペプチドである、請求項19記載の組成物。
【請求項22】
PKC調節ペプチドが、PKCアイソザイムの活性を促進する活性化ペプチドである、請求項19記載の組成物。
【請求項23】
細胞内キャリアペプチドが、

を含む修飾tatペプチドである、請求項19記載の組成物。
【請求項24】
細胞内キャリアペプチドが、

を含む修飾tatペプチドである、請求項19記載の組成物。
【請求項25】
修飾tatペプチドが、そのN末端においてアシル基、アルキル基、またはスルホニル基で置換されている、請求項23または24記載の組成物。
【請求項26】
修飾tatペプチドが、そのN末端においてアシル化されている、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
tatペプチドが、そのC末端においてさらに修飾されている、請求項19記載の組成物。
【請求項28】
tatペプチドが、そのC末端におけるアミド形成によってさらに修飾されている、請求項19記載の組成物。
【請求項29】
PKC調節ペプチドが、修飾tatペプチドのアミノ酸の側鎖に共有結合で連結されている、請求項19記載の組成物。
【請求項30】
PKC調節ペプチドが、システイン、リジン、およびチロシンより選択される残基の側鎖に共有結合で連結されている、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
PKC調節ペプチドが、N末端のシステイン残基の側鎖に共有結合で連結されている、請求項24記載の組成物。
【請求項32】
tatペプチドのN末端のシステインがアシル化されている、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
tatペプチドのC末端のアルギニンが第一級カルボキサミドである、請求項31記載の組成物。
【請求項34】
PKC調節ペプチドが、そのN末端におけるアシル化もしくはそのC末端におけるアミド化のいずれかにより、またはそのN末端におけるアシル化およびそのC末端におけるアミド化の両方により修飾されている、請求項31記載の組成物。
【請求項35】
修飾tatペプチドが、

である、請求項19記載の組成物。
【請求項36】
PKC調節ペプチドが、tatペプチドのシステイン残基のスルフヒドリル基を介して、tatペプチドに共有結合で連結されている、請求項35記載の組成物。
【請求項37】
第2の膜輸送ペプチドをさらに含む、請求項19記載の組成物。
【請求項38】
キャリアペプチドとカーゴペプチドとがペプチド結合で連結している、キャリアペプチドおよびPKC活性調節カーゴペプチド
を含む、線状の治療ペプチド。
【請求項39】
キャリアペプチドとカーゴペプチドとがペプチド結合でリンカーペプチドに連結されている、キャリアペプチドとカーゴペプチドとの間に位置付けられたリンカーペプチド
をさらに含む、請求項38記載の線状の治療ペプチド。
【請求項40】
治療ペプチドのアミノ末端、カルボキシル末端、または両末端が、アミノ末端アミノ酸のアミン基においてアシル化されているか、もしくはカルボキシル末端アミノ酸のカルボキシル基においてアミド化されているか、またはその両方である、請求項38記載の線状の治療ペプチド。
【請求項41】
複数のPKC活性調節カーゴペプチドに結合した少なくとも1つのキャリアペプチドを含む、治療ペプチド多量体。
【請求項42】
少なくとも1つのキャリアタンパク質が、第1および第2のシステイン残基を含む、請求項41記載の治療ペプチド多量体。
【請求項43】
第1のカーゴペプチドが、ジスルフィド結合によって第1のシステイン残基に連結され、かつ
第2のカーゴタンパク質が、ジスルフィド結合によって第2のシステイン残基に連結されている、
請求項42記載の治療ペプチド多量体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図17C】
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【図17D】
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【公表番号】特表2010−516707(P2010−516707A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546577(P2009−546577)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/051706
【国際公開番号】WO2008/089491
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(508083415)カイ ファーマシューティカルズ インコーポレーティッド (7)
【Fターム(参考)】