説明

ペプチド複合体

【解決手段】少なくとも1つの熱ショック蛋白質(HSP)と、
R1 - QXRAA - R2
式中、
R1 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
R2 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
X = KまたはR
GFFYTPK (インスリン23-29) 配列番号1
GFFYTPKT (インスリン23-30) 配列番号2
IYPPNANK (DER p1) 配列番号3
GIEYIQHNGVVQESYYR (DER P1) 配列番号4
ASTTTNYT (HIVのgp120) 配列番号5
DYEYLINVIHAFQYV (PLP 56-70) 配列番号6
EKLIETYFSKNYQDYEYLINVI (PLP 43-64) 配列番号7
KTTICGKGLSATVT (PLP 104-117) 配列番号8
HSLGKWLGHPDKF (PLP 139-151 C140 → S140) 配列番号9
PRHPIRVELPCRISP (MOG 8-22) 配列番号10
DEGGYTCFFRDHSYQ (MOG 92-106) 配列番号11
Ac-ASQKRPSQRHG (MBP ac1-11) 配列番号12
TGILDSIGRFFSG (MBP 35-47) 配列番号13
VHFFKNIVTPRTP (MBP 89-101) 配列番号14
HCLGKWLGHPDKF (PLP 139-151) 配列番号15
MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK (MOG) 配列番号16
QKRAAYDQYGHAAFE (大腸菌DnaJ) 配列番号17
QKRAAVDTYCRHNYG (HLA DRB1*0401) 配列番号18
QRRAAYDQYGHAAFE 配列番号19
及び
QRRAAVDTYCRHNYG 配列番号20
よりなる群から選ばれる少なくとも1つのペプチドとを含む、複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱ショック蛋白質と耐性発現性(tolerogenic)ペプチドとの複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱ショック蛋白質とペプチドとの複合体が耐性を誘導するのに好適であることが知られている。
【0003】
米国特許第6,312,711号には、ストレス蛋白質と抗原構造のエピトープとの複合体を投与することを含む、移植片拒絶、またはアレルギー若しくは自己免疫反応に関連した病理を治療するための、医薬または食品組成物が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
驚くべきことに、本発明の発明者らは、熱ショック蛋白質との複合体が、アレルギー、移植片拒絶または自己免疫性疾患の予防または治療に特に有用な、小型のペプチドを単離できている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは以下の配列を同定した。
GFFYTPK (インスリン23-29) 配列番号1
GFFYTPKT (インスリン23-30) 配列番号2
IYPPNANK (DER p1) 配列番号3
GIEYIQHNGVVQESYYR (DER P1) 配列番号4
ASTTTNYT (HIVのgp120) 配列番号5
DYEYLINVIHAFQYV (PLP 56-70) 配列番号6
EKLIETYFSKNYQDYEYLINVI (PLP 43-64) 配列番号7
KTTICGKGLSATVT (PLP 104-117) 配列番号8
HSLGKWLGHPDKF (PLP 139-151 C140 → S140) 配列番号9
PRHPIRVELPCRISP (MOG 8-22) 配列番号10
DEGGYTCFFRDHSYQ (MOG 92-106) 配列番号11
Ac-ASQKRPSQRHG (MBP ac1-11) 配列番号12
TGILDSIGRFFSG (MBP 35-47) 配列番号13
VHFFKNIVTPRTP (MBP 89-101) 配列番号14
HCLGKWLGHPDKF (PLP 139-151) 配列番号15
MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK (MOG) 配列番号16
QKRAAYDQYGHAAFE (大腸菌DnaJ) 配列番号17
QKRAAVDTYCRHNYG (HLA DRB1*0401) 配列番号18
QRRAAYDQYGHAAFE 配列番号19
及び
QRRAAVDTYCRHNYG 配列番号20
【0006】
DER:ヤケヒョウダニ
PLP:プロテオリピド・タンパク質
MOG:ミエリン・オリゴデンドロサイト糖タンパク質
MBP:ミエリン塩基性蛋白質
HLA:ヒト白血球抗原
【0007】
特に有用なものは、配列
R1 - QXRAA - R2
を有する配列であって、式中、
R1 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
R2 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
X = KまたはR
である。
【0008】
好ましくは、これらの配列は、自然発生のペプチドまたはタンパク質の加水分解によって製造される。
【0009】
本発明の1つの様相では、本発明は、少なくとも1つの熱ショック蛋白質(HSP)と、配列番号1〜20から選ばれるか、配列
R1 - QXRAA - R2
を有し、式中、
R1 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
R2 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
X = KまたはR
である、少なくとも1つのペプチドとを含む複合体を提供する。
【0010】
好ましい態様において、HSPは細菌性HSPであり、より好ましくは腐生細菌由来の細菌性HSPである。好適なHSPは、hsp40、hsp70、grpE、hsp90、CPN60(hsp60)、FK506-結合タンパク質、gp96、カルレクチクリン(calrecticulin)、hsp110、grp170及びhsp100の、単独または組み合わせから選択することができる。
【0011】
本発明によれば、完全HPSまたはHPSのフラグメントのいずれかを使用することができる。好ましいフラグメントは、熱ショック蛋白質のポリペプチド結合ドメインである。
【0012】
本発明の別の様相は、配列番号1〜20を有するペプチド、または、配列
R1 - QXRAA - R2
を有し、式中、
R1 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
R2 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
X = KまたはR
であるペプチドの、少なくとも1つをコードする核酸である。
【0013】
さらなる様相において、本発明は、少なくとも1つのHSP、及び、配列番号1から配列番号20までから選ばれる配列、または、配列:R1 - QXRAA - R2を有し、式中、R1 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド、R2 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド、X = KまたはRである配列の少なくとも1つを含む、少なくとも1つのペプチドをコードする核酸を提供する。この核酸は、対応するペプチドをインビトロで、または細胞内、または患者において発現させるために使用することができる。患者において発現させるためには、遺伝子デリバリー用伝達手段を要すると思われる。従って、少なくとも本発明の核酸を含む遺伝子デリバリー用伝達手段もまた、本発明の一部である。
【0014】
このような遺伝子デリバリー用伝達手段は、細胞をトランスフェクションすると思われる。従って、少なくとも1つの本発明の遺伝子デリバリー用伝達手段でトランスフェクションした細胞もまた、本発明の一部である。
【0015】
前記の複合体または遺伝子デリバリー用伝達手段のいずれかは、要すれば患者に投与され得る。従って、本発明の複合体または遺伝子デリバリー用伝達手段を含む医薬または食品組成物もまた、本発明の1つの様相である。
【0016】
本発明の複合体は、少なくとも1つのタンパク質を少なくとも1つのプロテアーゼでインビトロで加水分解して、加水分解フラグメントを得、この加水分解フラグメントを少なくとも1つの熱ショック蛋白質と結合させて少なくとも1つの複合体を得ることによって、製造することができる。
【0017】
または、本発明の複合体は、配列番号1から配列番号20で特定されるペプチド、または、配列:R1 - QXRAA - R2を有し、式中、R1 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド、R2 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド、X = KまたはRであるペプチドを合成し、その合成されたペプチドを少なくとも1つの熱ショック蛋白質と結合させることによって、製造することができる。好適な方法は、メリフィールド(Merrifield)によるJ. Am. Chem. Soc. 85:2149(1963)に記載されている。
【0018】
好ましい態様において、ペプチド-HSP複合体は、少なくとも1つの還元剤を含有する緩衝液中、還元条件下で形成される。好適な還元剤は、例えば、ジチオトレイトール及びβ-メルカプトエタノールである。還元剤の最も好ましい濃度は、0.001mMから700mMまでであり、より好ましくは0.1mMと50mMの間である。
【0019】
別の態様において、ペプチド-HSP複合体は、少なくとも1つの酸化剤を含有する緩衝液中、酸化条件下で形成される。好適な酸化剤は、例えば、過酸化水素である。酸化剤の最も好ましい濃度は、0.1mMから100mMまでであり、より好ましくは0.5mMと20mMの間である。
【0020】
また別の好ましい態様において、ペプチド-HSP複合体は、還元剤も酸化剤も含有しない緩衝液中で形成される。
【0021】
本発明のさらなる様相は、本発明の複合体を、生物学的活性分子の伝達のためのキャリアとして使用することである。ペプチドは、生物学的活性分子、例えば、核酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多糖、脂質、薬物に連結することができ、次に、熱ショック蛋白質と結合することができる。
【0022】
さらなる様相において、本発明は、
GFFYTPK (インスリン23-29) 配列番号1
GFFYTPKT (インスリン23-30) 配列番号2
IYPPNANK (DER p1) 配列番号3
GIEYIQHNGVVQESYYR (DER P1) 配列番号4
ASTTTNYT (HIVのgp120) 配列番号5
DYEYLINVIHAFQYV (PLP 56-70) 配列番号6
EKLIETYFSKNYQDYEYLINVI (PLP 43-64) 配列番号7
KTTICGKGLSATVT (PLP 104-117) 配列番号8
HSLGKWLGHPDKF (PLP 139-151 C140 → S140) 配列番号9
PRHPIRVELPCRISP (MOG 8-22) 配列番号10
DEGGYTCFFRDHSYQ (MOG 92-106) 配列番号11
Ac-ASQKRPSQRHG (MBP ac1-11) 配列番号12
TGILDSIGRFFSG (MBP 35-47) 配列番号13
VHFFKNIVTPRTP (MBP 89-101) 配列番号14
HCLGKWLGHPDKF (PLP 139-151) 配列番号15
MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK (MOG) 配列番号16
QKRAAYDQYGHAAFE (大腸菌DnaJ) 配列番号17
QKRAAVDTYCRHNYG (HLA DRB1*0401) 配列番号18
QRRAAYDQYGHAAFE 配列番号19
QRRAAVDTYCRHNYG 配列番号20
及び
R1 - QXRAA - R2
式中
R1 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
R2 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
X = KまたはR
よりなる群から選択される、単離されたペプチドを提供する。
【0023】
限定されないが、抗体等の、これらのペプチドと少なくとも1つの他のタンパク質との複合体も、本発明の一部である。
【0024】
本発明の複合体または本発明の遺伝子デリバリー用伝達手段は、アレルギー、移植片拒絶または自己免疫性疾患の予防または治療に有用である。
【0025】
本発明の複合体は、配列番号1から配列番号20までから選択される少なくとも1つの配列、または、配列:R1 - QXRAA - R2であって、式中、R1 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド、R2 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド、X = KまたはRであるものを含む、少なくとも1つの抗原に暴露した後、免疫抑制性のサイトカインを分泌することが可能な細胞を含む、細胞反応の誘導に使用することもできる。
【0026】
本発明のさらなる様相は、本発明の複合体を含む診断用組成物である。
【0027】
本発明のさらなる様相は、
・タンパク質を含有する動物の体液を、本発明の診断用組成物に接触させる工程、
・前記のタンパク質と前記の該診断用組成物との結合を測定する工程であって、結合は該動物の疾病を示唆する
を含む、インビトロでの疾病の診断方法である。
【0028】
本発明の別の様相は、少なくとも1つの本発明のペプチドに特異的な抗体、または少なくとも1つの本発明の複合体に特異的な抗体を提供することである。この抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、または、限定されないが、Fab及びF(ab´)2等のフラグメントであり得る。
【0029】
本発明の抗体は、アレルギー、移植片拒絶または自己免疫性疾患の予防または治療に使用することができる。また、本発明の抗体は、アレルギー、移植片拒絶または自己免疫性疾患等の疾病の、インビトロの診断方法において使用することもできる。
【0030】
熱ショック蛋白質-ペプチド複合体の直接投与の代替として、熱ショック蛋白質及び発現可能な形態の標的ペプチドをコードする、1つ以上のポリヌクレオチド構築物を投与してもよい。発現可能なポリヌクレオチド構築物は、インビボまたはインビトロの方法を使用して、細胞中に導入される。
【0031】
HSP及び標的タンパク質のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列は、一般に、ゲンバンク(GenBank)及びスイスプロット(Swiss-Prot)等の配列データベースで入手可能である。
【0032】
DNA配列は、公知の配列から設計された特異的プライマーを使用したPCRを使用し、ゲノムDNAまたはcDNAから増幅することができる。「PCR」は、サイクル(Saikl)ら、ネイチャー(Nature)324:163(1986);及びスカルフ(Scharf)ら、サイエンス(Science)(1986)233:1076-1078;及び、米国特許第4,683,195号;及び米国特許第4,683,202号に記載された通りの、ポリメラーゼ連鎖反応の技術を指す。あらゆる所望の長さのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、PCRによって製造することができる。PCRは、例えば、サーマルサイクラー及び耐熱性DNAポリメラーゼを使用して実施することができる。
【0033】
本発明のHSP-ペプチド融合タンパク質は、任意にペプチドリンカーによって分離される、1つのペプチド及び1つの熱ショック蛋白質を包含する。融合タンパク質の種々の製造方法が当業界では周知である。1つの好適な技術では、最初に個別のPCR増幅反応で、それぞれ片方の末端にリンカーを持つ、2つの配列をコードする個別のDNAセグメントを製造し、その後、さらなるPCR工程においてその2つの増幅産物を融合する。この技術は、リンカー・テーリングと呼ばれる。好適な制限酵素認識部位は、関心領域に組み込まれてもよいが、制限酵素消化および連結反応を使用して、所望のHSPペプチド融合蛋白質コード化配列を産生した後である。
【0034】
発現ベクター中に特定の核酸を組み込む方法は当業者に周知であるが、詳細は、例えば、サムブルック(Sambrook)らによる分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)(第二版)、1〜3巻、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、(1989)、または分子生物学新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、F.アスベル(Asubel)ら、グリーン・パグリッシング・アンド・ウィリー−インターサイエンス(Green Publishing and Wiley-Interscience)版、ニューヨーク(1987)に記載されている。
【0035】
発現可能なポリヌクレオチドを構築するために、熱ショック蛋白質及びペプチドをコードする領域を上述の通り製造し、SV40プロモーター、サイトメガロウィルス(CMV)プロモーターまたはラウス肉腫ウィルス(RSV)プロモーター等の好適なプロモーターに操作的に結合する哺乳類の発現ベクターに挿入する。次に、得られる構築物は、遺伝子による免疫法のためのワクチンとして使用してもよい。核酸ポリマーもまたウイルスベクター中でクローン化される可能性がある。好適なベクターには、レトロウイルス・ベクター、アデノウイルス・ベクター、牛痘ウィルスベクター、ポックスウイルス・ベクターおよびアデノウイルス関連ベクターが含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
また、HSPをコードする配列及び所望のペプチドをコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドをそれぞれ、同一の宿主の中の、共存及び複製能力を持つ2つの異なるベクターに導入してもよい。
【0037】
使用される形質転換方法は、形質転換される宿主による。異種のポリヌクレオチドを哺乳類細胞に導入する方法は当業者に公知であり、デキストリン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウムによる沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム中のポリヌクレオチドの錯体生成、及びDNAの核への直接的ミクロ注入を含む。
【0038】
発現のための宿主として利用可能な哺乳類細胞系は当業者に公知であり、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎培養細胞(COS)、ヒト肝細胞の癌細胞(例えば、HepG2)及び多くの他の細胞系等の、米国培養菌保存施設(American Type Culture Collection, ATCC)から利用可能な多くの不死化細胞系を含む。
【実施例】
【0039】
タンパク質の製造
酵素による消化の前に、対象のタンパク質は、セントリコン(centricon)YM-03またはYM-10装置での遠心分離による充分な水洗を行い、緩く結合した低分子量物質をすべて除去する。
【0040】
トリプシン消化
1〜5mgの対象のタンパク質をpH8.0の40mMリン酸緩衝液5mLに溶解する(最終濃度1mg/mL)。この溶液を100℃で10分間インキュベートする。次にこの溶液を 4℃で急激に冷却し、18〜90μLのβ-メルカプトエタノールを加える(1.8%v/v)。得られる溶液を37℃で10分間インキュベートし、このタンパク質溶液に、20〜100μLのトリプシン溶液(10mg/mLのトリス塩酸、40mM、pH8.0;最終的比率(w/w)プロテアーゼ:タンパク質=1:100)を添加する。
【0041】
得られる溶液を37℃で6時間インキュベートする。次に、この溶液をセントリコンYM-10装置で遠心分離し、残存するタンパク質とトリプシンを除去する。
【0042】
DnaK.ATP複合体の製造
25μLのATP溶液(4.5mg/mLの緩衝液1(25mM HEPES、10mM KCl、3mM塩化マグネシウム、5 mMβ-メルカプトエタノール、pH 7.5)を、400μLのDnaK(2mg/mLの緩衝液1)に添加する。この溶液を20℃で1時間インキュベートし、次にセントリコンYM-10装置で遠心分離し、DnaKと緩く結合している低分子量物質を全て除去する。高分子量フラクションを除去し、セントリコンYM-10を用いた限外濾過によって、緩衝液1で充分に洗浄する。
【0043】
ストレスタンパク質-ペプチド複合体のインビトロでの製造、及び、結合するペプチドの単離
限外濾過したトリプシン消化物を、ATPで予め処理したDnaKと混合し、少なくとも1:1(w:w)のDnaK:ペプチド比とする。次に、ADPを加え(最終1mM)、混合物を好適な緩衝液1中、25℃で少なくとも1時間インキュベートする。製造物をセントリコンYM-10装置で遠心分離して、残存する結合していないペプチドを除去する。低分子量フラクション及び高分子量フラクションを回収する。DnaK-ペプチド複合体を含有する高分子量フラクションを、セントリコンYM-10を用いた限外濾過によって、1mMのADPを含有する緩衝液1で充分に洗浄する。結合したペプチドは、低phの緩衝液中でHSP-ペプチド複合体をインキュベートすることによって溶出する。セントリコンYM-10を用いた最後の限外濾過で、高分子量フラクションを除去する。
【0044】
HPLC分析
得られた低分子量フラクションを、ヴィダック(Vydac)のC18逆相カラム(HP32, 201TP52 C18, 250/2.1mm, 5μm(ヴィダックより入手可能))を使用した、逆相高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって分画する。ペプチドの溶出物は、OD214nm及びOD280nmで分析することができる。
【0045】
生物学的研究
NOD(非肥満型糖尿病)マウスを自己免疫疾患の発症後に処置するモデルである。
糖尿病の最初の兆候が発症した後、幼若NODマウスの500の正常なランゲルハンス島を糖尿病動物の腎被膜下に移植する。その後、糖尿と血糖は毎日モニターする。糖尿が検出され、血糖が2日間連続で12mmole/L(2.16g/l)を超える場合、マウスは糖尿病と見なす。高血糖の初日を再発の開始と見なす。
【0046】
マウスの処置
全ての処置は、疾病が発症した初日であって、移植の前日に開始した。マウスは2日に1回、舌下注入によって処置し、総投与量は以下の通りであった。
グループ1:ペプチド(1μg)+HSP(1μg)
グループ2:ペプチド(1μg)
グループ3:HSP(1μg)
グループ4:緩衝液
【0047】
臨床結果
非処置のNODマウスにおいて、再発するまで平均遅延は約11〜12日である。14日を超える遅延は処置の効果によるものと考えられ、複合体で処置したグループにおいて、14日を超える遅延の比率は4/7(57%)であることがわかる。その他の、ペプチド、緩衝液またはHSP単独で処置したグループでは、この比率は2/6(33%)である。従って、経口投与されたHSPとペプチドとの組み合わせには治療効果がある。
【0048】
インターフェロン-γ及びIL-4のmRNAを種々の組織(移植片、脾臓、及びコントロールとして腎臓)におけるPCR増幅によって分析した。結果は、インターフェロン-γのmRNAの量対アクチンmRNAの量の比率として表す。IL-4は全てのサンプルで検出されなかったが、一方、インターフェロン-γは、全てのグループで同程度、脾臓中に検出された。
【0049】
これに対し、移植したランゲルハンス島では、興味深い差異が認められた。ペプチド-HSP複合体で処置したグループにおいて、インターフェロン-γの量が有意に低かった。従って、パイアー斑において、複合体が、移植片に移動した後、制御性T細胞を誘導し、制御性T細胞は、インターフェロン−γ等のサイトカインの分泌によって移植されたランゲルハンス島の破壊の一因となるTH1細胞を阻害した可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1.1】図1.1は、Derp1のトリプシン分解で産生するペプチド(分子量10kDa以下)である。
【図1.2】図1.2は、Derp1のトリプシン分解由来の、DnaKに結合していないペプチド(分子量10kDa以下)である。
【図1.3】図1.3は、Derp1のトリプシン分解由来の、DnaKに結合したペプチド(分子量10kDa以下)である。
【図2.1】図2.1は、インスリンのトリプシン分解で産生するペプチド(分子量10kDa以下)である。
【図2.2】図2.2は、インスリンのトリプシン分解由来の、DnaKに結合していないペプチド(分子量10kDa以下)である。
【図2.3】図2.3は、インスリンのトリプシン分解由来の、DnaKに結合したペプチド(分子量10kDa以下)である。
【図3.1】図3.1は、再発前の14日を超える遅延の比率である。
【図3.2】図3.2は、移植したランゲルハンス島におけるIFN-γmRNAの発現を示す。A:グループ2(ペプチド);B:グループ1(HSP+ペプチド);C:緩衝液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの熱ショック蛋白質(HSP)と、
R1 - QXRAA - R2
式中、
R1 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
R2 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
X = KまたはR
GFFYTPK (インスリン23-29) 配列番号1
GFFYTPKT (インスリン23-30) 配列番号2
IYPPNANK (DER p1) 配列番号3
GIEYIQHNGVVQESYYR (DER P1) 配列番号4
ASTTTNYT (HIVのgp120) 配列番号5
DYEYLINVIHAFQYV (PLP 56-70) 配列番号6
EKLIETYFSKNYQDYEYLINVI (PLP 43-64) 配列番号7
KTTICGKGLSATVT (PLP 104-117) 配列番号8
HSLGKWLGHPDKF (PLP 139-151 C140 → S140) 配列番号9
PRHPIRVELPCRISP (MOG 8-22) 配列番号10
DEGGYTCFFRDHSYQ (MOG 92-106) 配列番号11
Ac-ASQKRPSQRHG (MBP ac1-11) 配列番号12
TGILDSIGRFFSG (MBP 35-47) 配列番号13
VHFFKNIVTPRTP (MBP 89-101) 配列番号14
HCLGKWLGHPDKF (PLP 139-151) 配列番号15
MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK (MOG) 配列番号16
QKRAAYDQYGHAAFE (大腸菌DnaJ) 配列番号17
QKRAAVDTYCRHNYG (HLA DRB1*0401) 配列番号18
QRRAAYDQYGHAAFE 配列番号19
及び
QRRAAVDTYCRHNYG 配列番号20
よりなる群から選ばれる少なくとも1つのペプチドとを含む、複合体。
【請求項2】
該HSPが細菌性HSPであることを特徴とする、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
該HSPが、hsp40、hsp70、grpE、hsp90、CPN60(hsp60)、FK506-結合タンパク質、gp96、カルレクチクリン、hsp110、grp170及びhsp100より選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の複合体。
【請求項4】
該熱ショック蛋白質が、熱ショック蛋白質のポリペプチド結合ドメインであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の複合体。
【請求項5】
少なくとも1つのHSP、及び、配列番号1から配列番号20までから選択される配列の少なくとも1つを含む少なくとも1つのペプチドをコードするか、または、少なくとも1つのHSP、及び、配列
R1 - QXRAA - R2
であって、式中、
R1 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
R2 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
X = KまたはR
であるものの少なくとも1つを含む少なくとも1つのペプチドをコードする、核酸。
【請求項6】
少なくとも1つの請求項5に記載の核酸を含む、遺伝子デリバリー用伝達手段。
【請求項7】
少なくとも1つの請求項6に記載の遺伝子デリバリー用伝達手段でトランスフェクションされた細胞。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の複合体、または、請求項6に記載の遺伝子デリバリー用伝達手段を含む、医薬または食品組成物。
【請求項9】
・少なくとも1つのタンパク質をインビトロでプロテアーゼで加水分解して加水分解フラグメントを得る工程、
・該加水分解フラグメントを少なくとも1つの熱ショック蛋白質とインビトロで結合させて複合体を得る工程
を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の複合体の製造方法。
【請求項10】
結合していない加水分解フラグメントを複合体から分離することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
R1 - QXRAA - R2
式中、
R1 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
R2 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
X = KまたはR
GFFYTPK (インスリン23-29) 配列番号1
GFFYTPKT (インスリン23-30) 配列番号2
IYPPNANK (DER p1) 配列番号3
GIEYIQHNGVVQESYYR (DER P1) 配列番号4
ASTTTNYT (HIVのgp120) 配列番号5
DYEYLINVIHAFQYV (PLP 56-70) 配列番号6
EKLIETYFSKNYQDYEYLINVI (PLP 43-64) 配列番号7
KTTICGKGLSATVT (PLP 104-117) 配列番号8
HSLGKWLGHPDKF (PLP 139-151 C140 → S140) 配列番号9
PRHPIRVELPCRISP (MOG 8-22) 配列番号10
DEGGYTCFFRDHSYQ (MOG 92-106) 配列番号11
Ac-ASQKRPSQRHG (MBP ac1-11) 配列番号12
TGILDSIGRFFSG (MBP 35-47) 配列番号13
VHFFKNIVTPRTP (MBP 89-101) 配列番号14
HCLGKWLGHPDKF (PLP 139-151) 配列番号15
MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK (MOG) 配列番号16
QKRAAYDQYGHAAFE (大腸菌DnaJ) 配列番号17
QKRAAVDTYCRHNYG (HLA DRB1*0401) 配列番号18
QRRAAYDQYGHAAFE 配列番号19
及び
QRRAAVDTYCRHNYG 配列番号20
よりなる群から選択されるペプチド。
【請求項12】
請求項11に記載のペプチドをコードする核酸。
【請求項13】
少なくとも1つの請求項11に記載のペプチドと少なくとも1つのタンパク質との複合体。
【請求項14】
アレルギー、移植片拒絶または自己免疫性疾患の予防または治療のための、請求項1〜4のいずれかに記載の複合体または請求項6に記載の遺伝子デリバリー用伝達手段の使用。
【請求項15】
配列番号1から配列番号20までから選択される少なくとも1つの配列、または、少なくとも1つの配列
R1 - QXRAA - R2
であって、式中、
R1 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
R2 = 1-10個のアミノ酸を有するペプチド
X = KまたはR
であるものを含む、少なくとも1つの抗原に暴露した後、免疫抑制性のサイトカインを分泌することが可能な細胞を含む、細胞反応を誘導するための、請求項1〜4のいずれかに記載の複合体の使用。
【請求項16】
請求項1〜4のいずれかに記載の複合体を含む、診断用組成物。
【請求項17】
・タンパク質を含有する動物の体液を、請求項16に記載の診断用組成物に接触させる工程、
・該タンパク質と該診断用組成物との結合を測定する工程であって、結合は該動物の疾病を示唆する
を含む、インビトロでの疾病の診断方法。
【請求項18】
請求項11に記載のペプチドに結合する抗体。
【請求項19】
請求項1〜4に記載の複合体に結合する抗体。

【図1.1】
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【図1.2】
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【図1.3】
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【図2.1】
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【図2.2】
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【図2.3】
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【図3.1】
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【図3.2】
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【公表番号】特表2008−500006(P2008−500006A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529850(P2006−529850)
【出願日】平成16年5月18日(2004.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005316
【国際公開番号】WO2004/104026
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(505430850)バイオテック トゥールス ソシエテ アノニム (2)
【Fターム(参考)】