説明

ペプチド誘導体及びそれを含む化粧料組成物

【課題】優れたチロシナーゼ抑制能及び抗酸化能を有するため優れた皮膚美白効果を奏するのみならず、優れた生体親和性を有することで皮膚への刺激がなく、且つ長期間の保存においても優れた安定性を有することにより、皮膚美白用化粧料組成物を提供する。
【解決手段】安息香酸誘導体に3ないし12個のアミノ酸残基からなるグルタチオン類似ペプチドが結合されたペプチド誘導体。及び、前記グルタチオン類似ペプチドが結合されたペプチド誘導体を含む化粧料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド誘導体及びそれを含む化粧料組成物に関し、より詳しくは、優れた皮膚美白効果を有し、皮膚への刺激がなく、且つ優れた安定性を有するペプチド誘導体及びそれを含む皮膚美白用化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、外部環境に直接露出するもので、人体を保護し、生化学的且つ物理的な機能を持っている非常に重要な組職である。この組職は、3つの層、即ち、表皮層、真皮層、及び皮下組織から構成される。ヒトの皮膚色は、血液内の赤血球、カロチン、及びメラニンによって複合的に決められるが、人種間の皮膚色の違いやしみ、そばかすなどの色素過剰は、メラニンによる影響が大きい。皮膚の最外層である表皮層に存在するメラニンは、アミノ酸の一つであるチロシンにチロシナーゼという酵素が働き、ドーパ、ドーパキノンという化合物に変わった後、非酵素的に酸化反応して作られるものであって、紫外線を遮断することで真皮層の下の皮膚器官を保護するという有用な役割をするものでもある。
【0003】
しかしながら、内・外的ストレスによる刺激によって生成されたメラニンは、ストレスが消えても皮膚角質化によって外部に排出される前までは消失しない安定な物質である。皮膚においてフリーラジカルの生成が多くなるか、炎症反応があるか、或いは紫外線などにさらされると、生体内でチロシナーゼなどの酵素を触媒とする重合化酸化反応が起こることでメラニンの生成が増大するようになる。特に、紫外線はメラニンの生成を増大させ、部分的に増大されたメラニンがしみなどに発展していき、外観上、望ましくない結果が生じることもある。
【0004】
このような理由から、メラニン生成抑制剤としてハイドロキノン、コウジ酸、アルブチン、グルタチオン、ビタミンC(ascorbic acid)などが化粧品の原料に用いられてきたが、満足のいく美白効果が得られず、また原料自体が不安定であることから皮膚刺激が強かったため、その利用が非常に制限的であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記のような従来技術の問題点を克服するために鋭意研究を重ねた結果、安息香酸誘導体にグルタチオン類似ペプチドが結合された本発明によるペプチド誘導体が、皮膚刺激が低いながらもメラニンの生成を抑制することができる優れたチロシナーゼ抑制能を有するのみならず、長期間の保存においても優れた安定性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
したがって、本発明の目的は、優れたチロシナーゼ抑制能及び抗酸化能を有するのみならず、皮膚への刺激がなく、且つ長期間の保存においても優れた安定性を有するペプチド誘導体を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、上記ペプチド誘導体を含む皮膚美白用化粧料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一観点において、本発明は、機能性化粧品原料に用いることができる下記一般式1で表される新規なペプチド誘導体に関する。
【化1】

上記式中、
ないしRは、それぞれ独立して水素、ヒドロキシ、C〜Cのアルキル基、C〜Cのアルコキシ基、シアノ、ハロ、またはアミノ、好ましくは、水素またはヒドロキシであり、
nは、1または2、好ましくは、2であり、
Lは、存在しないかまたは連結基、好ましくは、Lysであり、
Aは、3ないし12個のアミノ酸残基からなるグルタチオン類似ペプチドである。
【0009】
好ましくは、Aは、下記一般式2で表されるペプチド断片を含む3ないし12個のアミノ酸残基からなるグルタチオン類似ペプチドである。
【化2】


上記式中、
Xは、Glu、Gln、AspまたはAsn、好ましくは、Gluであり、
Yは、Cysであり、
Zは、Gly、Ala、Val、Leu、IleまたはPhe、好ましくは、Glyである。
【0010】
他の観点において、本発明は、下記一般式3で表されるペプチド誘導体に関する。
【化3】

上記式中、
Lは、存在しないかまたはLys、好ましくは、Lysであり、
Aは、Glu−Cys−Glyである。
【0011】
また他の観点において、本発明は、下記一般式4で表されるペプチド誘導体に関する。
【化4】

上記式中、
Lは、存在しないかまたはLys、好ましくは、Lysであり、
Aは、Glu−Cys−Glyである。
【0012】
本明細書においてC〜Cのアルキル基は、炭素数1〜6個からなる直鎖状または分岐状炭化水素を意味し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチルなどが含まれるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0013】
〜Cのアルコキシ基は、炭素数1〜6個からなる直鎖状または分岐状アルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロパンオキシなどが含まれるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0014】
本明細書においてペプチドを名付ける一般的な規則は、具体的に指示された例外事項がない限り、3文字または1文字アミノ酸コードの適用を基礎とする。言い換えれば、アミノ酸構造の中心部を3文字コード(例えば、Ala、Lys)で表示し、3文字コードの前に「D−」を付することでD−立体形態(例えば、D−Ala、D−Lys)であることを具体的に指示しない限り、L−立体形態であると仮定する。
【0015】
ペプチドを構成するアミノ酸残基は、天然または非天然アミノ酸残基のいずれも可能である。
【0016】
本発明によるペプチド誘導体は、目的とするペプチドを合成した後、安息香酸誘導体と結合反応させて製造することができる。
【0017】
上記目的とするペプチドは、生体内のタンパク質を抽出した後、タンパク質分解酵素による処理を施すことで低分子量化するか、遺伝子組換とタンパク質発現システムを用いて製造することもでき、好ましくは、ペプチド合成器などを用いた化学合成方法により製造することもできる。
【0018】
本発明によるペプチド誘導体は、例えば、
(1)通常の固相ペプチド合成法(solid phase peptide synthesis:SPPS)によりNH−保護されたペプチド−レジンを収得するステップと、
(2)収得されたNH−保護されたペプチド−レジンを安息香酸誘導体と反応させるステップ、及び
(3)レジンを除去するステップと、を実施して製造することができる。
【0019】
目的とするペプチドを構成するアミノ酸残基の側鎖に官能基が存在する場合には、上記ステップ(1)において上記官能基が保護されたアミノ酸を用いてペプチドを合成することができ、上記官能基に結合された保護基はステップ(3)において除去される。
【0020】
官能基が保護されたアミノ酸を用いた本発明によるペプチド誘導体の製造過程の一具体例を、下記の反応式1で簡略に表した。
(反応式1)

【0021】
また、官能基が保護されたアミノ酸を用いた本発明によるペプチド誘導体の製造過程の他の具体例を下記の反応式2で簡略に表した。
(反応式2)

【0022】
本発明は、また他の観点において、本発明によるペプチド誘導体を含む化粧料組成物、特に皮膚美白用化粧料組成物に関する。
【0023】
本発明によるペプチド誘導体は、メラニンの生成に関与するチロシナーゼ酵素の抑制能による美白効果を有する。さらに、本発明によるペプチド誘導体は、抗酸化能をも有するため、皮膚美白用化粧料組成物に有効に用いることができる。
【0024】
本発明の化粧料組成物は、本発明によるペプチド誘導体を有効成分として、好ましくは、0.001〜10.0重量%の範囲で含む。なお、有効成分の含量は、その使用目的に応じて適宜決められていてよい。
【0025】
本発明の化粧料組成物は、有効成分として、本発明によるペプチド誘導体の他、化粧料組成物に通常に用いられる成分、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常の助剤、及び担体を含む。
【0026】
本発明の化粧料組成物は、当業界において通常に用いられるあらゆる剤形に製剤化することができ、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、パウダー、スプレーなどに製剤化することができる。
【0027】
本発明の剤形がペースト、クリームまたはゲルである場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛などを用いればよい。
【0028】
本発明の剤形がパウダーまたはスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ポリアミドパウダーなどを用いればよく、特に、スプレーである場合には、さらに、クロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタンまたはジメチルエーテルのような推進剤を含んでいてよい。
【0029】
本発明の剤形が溶液または乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤または乳濁化剤、例えば、水、エチルアルコール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステルなどを用いればよい。
【0030】
本発明の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として、水、エチルアルコールまたはプロピレングリコールのような液相の希釈剤、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステルまたはポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天(agar)、トラカントなどを用いればよい。
【0031】
本発明の化粧料組成物は、スキン、ローション、クリーム、パック、色調化粧品、ハンドクリーム、ツーウェイケーキ、フェイスパウダー、コンパクト、メーキャップベース、スキンカバー、アイシャドー、リップスティック、リップグロス、リップフィックス、アイブローペンシルなどの化粧品に適用することができる。
【発明の効果】
【0032】
安息香酸誘導体にグルタチオン類似ペプチドが結合された本発明によるペプチド誘導体は、優れたチロシナーゼ抑制能及び抗酸化能を有するため優れた美白効果を奏するのみならず、優れた生体親和性を有することで皮膚への刺激がなく、且つ長期間の保存においても優れた安定性を有するという効果がある。
【0033】
特に、安息香酸誘導体にグルタチオン類似ペプチドが連結基を介して結合された本発明によるペプチド誘導体は、安息香酸誘導体にグルタチオン類似ペプチドが連結基を介さずに直接結合されたペプチド誘導体よりも優れたチロシナーゼ抑制能を有する。
【0034】
したがって、本発明のペプチド誘導体は、機能性化粧品原料として化粧料組成物、特に皮膚美白用化粧料組成物に有効に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明することにする。なお、これら実施例は単に本発明を説明するためのものであるに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例に局限されないことは当業者にとって自明である。
【実施例】
【0036】
実施例1:ガロイル−テトラペプチド(リシル−グルタミル−システイニル−グリシン)の製造
1.1:NH−保護されたペプチド−レジンの合成
ペプチドは、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(9−fluorenylmethoxycarbonyl:Fmoc)をアミノ酸の保護基として用い、通常の固相ペプチド合成法(solid phase peptide synthesis:SPPS)によって合成し、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(N−hydroxybenzotriazole:HOBt)とN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(N,N'−dicyclohexylcarbodiimide:DCC)を活性化剤として用いてアミノ酸残基を延長した[参考文献:Wang C. Chan, Perter D. White,‘Fmoc solid phase peptide synthesis', Oxford]。
【0037】
具体的に、ガラス反応器においてアミノ基がFmocで保護されたグリシンレジン(Nova Biochem社製)0.04gを、溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(N−methyl−2−pyrrolidone:NMP)3mlで20分間膨張させた後、溶媒を除去し、20%ピペリジン3mlで2回処理を施してFmocを除去した。Fmocが除去されたグリシンレジンをジクロロメタン(dichloromethane:DCM)で2回、NMPで2回処理を施し、HOBt−DCCで活性化されたシステイン溶液と室温下に約2時間反応させた。このような過程においてグルタミンとリジンとを連続して反応させて収得したNH−保護されたペプチド(リシル−グルタミル−システイニル−グリシン)−レジンをDCMで2回、NMPで2回、DCMで2回洗浄した後、完全に乾燥させた。
【0038】
1.2:ガロイル−テトラペプチドの合成
上記のようにして合成されたNH−保護されたペプチド(リシル−グルタミル−システイニル−グリシン)−レジンに20%ピペリジン/NMP溶液を加えてアミノ基に結合されたFmocを除去し、NMPとDCMで洗浄した後、没食子酸(gallic acid, Lancaster社製)5当量と室温下に一晩結合反応させた。反応が終了した後、NMPとDCMで数回洗浄してから乾燥させた。
【0039】
乾燥されたガロイル−テトラペプチド−レジンを、トリフルオロ酢酸:フェノール:チオアニソール:水:エタンジチオール(82.5:5:5:5:2.5(v/v))の混合溶液で室温下に2〜3時間反応させ、ペプチドを構成するアミノ酸残基の側鎖に存在する官能基の保護基であるt−ブチルオキシカルボニル(Boc)及びトリチル(トリフェニルメチル)を除去し、レジンからガロイル−テトラペプチドを分離させた後、冷たいジエチルエーテルで上記ペプチドを沈殿させた。
【0040】
収得したガロイル−テトラペプチドを、0.1%トリフルオロ酢酸が含まれた水とアセトニトリルを溶媒とした逆相高性能液体クロマトグラフィー(reverse phase high performance liquid chromatography;column:Gemini、C18 110A 250×21.2mm)によって精製した。
収率:71%
【0041】
実施例2:ジガロイル−テトラペプチド(リシル−グルタミル−システイニル−グリシン)の製造
2.1:NH−保護されたペプチド−レジンの合成
上記実施例1と同様な方法によりNH−保護されたペプチド(リシル−グルタミル−システイニル−グリシン)−レジンを合成した。
【0042】
2.2:ジガロイル−テトラペプチドの合成
上記のようにして合成されたNH−保護されたペプチド(リシル−グルタミル−システイニル−グリシン)−レジンに20%ピペリジン/NMP溶液を加えてアミノ基に結合されたFmocを除去し、NMPとDCMで洗浄した後、没食子酸10当量と室温下に一晩結合反応させた。反応が終了した後、NMPとDCMで数回洗浄してから乾燥させた。
【0043】
乾燥されたジガロイル−テトラペプチド−レジンをトリフルオロ酢酸:フェノール:チオアニソール:水:エタンジチオール(82.5:5:5:5:2.5(v/v))の混合溶液で室温下に2〜3時間反応させ、ペプチドを構成するアミノ酸残基の側鎖に存在する官能基の保護基であるt−ブチルオキシカルボニル(Boc)及びトリチル(トリフェニルメチル)を除去し、レジンからジガロイル−テトラペプチドを分離させた後、冷たいジエチルエーテルで上記ペプチドを沈殿させた。
【0044】
収得したジガロイル−テトラペプチドを、0.1%トリフルオロ酢酸が含まれた水とアセトニトリルを溶媒とした逆相高性能液体クロマトグラフィー(reverse phase high performance liquid chromatography;column:Gemini、C18 110A 250×21.2mm)によって精製した。
収率:62%
HPLC純度:>98%
分子量:739.7(M+Na:760.5、M+K:776.4)
【0045】
実施例3:ガロイル−トリペプチド(グルタミル−システイニル−グリシン)の製造
3.1:NH−保護されたペプチド−レジンの合成
上記実施例1と同様な方法によりNH−保護されたペプチド(グルタミル−システイニル−グリシン)−レジンを合成した。
【0046】
3.2:ガロイル−トリペプチドの合成
上記のようにして合成されたNH−保護されたペプチド(グルタミル−システイニル−グリシン)−レジンに20%ピペリジン/NMP溶液を加えてアミノ基に結合されたFmocを除去し、NMPとDCMで洗浄した後、没食子酸5当量と室温下に一晩結合反応させた。反応が終了した後、NMPとDCMで数回洗浄してから乾燥させた。
乾燥されたガロイル−トリペプチド−レジンをトリフルオロ酢酸:フェノール:チオアニソール:水:エタンジチオール(82.5:5:5:5:2.5(v/v))の混合溶液で室温下に2〜3時間反応させ、ペプチドを構成するアミノ酸残基の側鎖に存在する官能基の保護基であるt−ブチルオキシカルボニル(Boc)及びトリチル(トリフェニルメチル)を除去し、レジンからガロイル−トリペプチドを分離させた後、冷たいジエチルエーテルで上記ペプチドを沈殿させた。
収得したガロイル−トリペプチドを0.1%トリフルオロ酢酸が含まれた水とアセトニトリルを溶媒として逆相高性能液体クロマトグラフィー(reverse phase high performance liquid chromatography;column:Gemini、C18 110A 250×21.2mm)して精製した。
収率:69%
【0047】
比較例1:ガロイル−トリペプチド(チロシル−ヒスチジル−チロシン)の製造
上記実施例1と同様な方法により表題化合物を製造した。
収率:76%
【0048】
比較例2:ジガロイル−テトラペプチド(リシル−チロシル−ヒスチジル−チロシン)の製造
上記実施例2と同様な方法により表題化合物を製造した。
収率:71%
【0049】
比較例3:ガロイル−デカペプチド(チロシル−グリシル−グリシル−フェニルアラニル−ルシル−アルギニル−リシル−チロシル−プロリル−リジン)の製造
上記実施例1と同様な方法により表題化合物を製造した。
収率:59%
【0050】
実験例1:チロシナーゼ活性抑制効果の実験
試料のチロシナーゼ活性抑制効果を公知の方法を用いて測定した[参考文献:Pomerantz S.H., J. Biochem., 24:161−168, 1966]。
【0051】
試料を最終濃度が100μΜになるように96−ウェルプレートに入れ、100mMのリン酸ナトリウム緩衝溶液(sodium phosphate buffer;pH6.8)220ul、1.5mMのL−チロシン溶液40ulを入れてから、マッシュルーム由来のチロシナーゼ(1,500units/ml、Sigma社製)20ulを添加して37℃で20分間反応させた後、0.2mlを取って96−ウェルプレートに移し、マイクロプレートリーダー(microplate reader)を用いて490nmで吸光度を測定してチロシナーゼに対する阻害率を測定した。
【0052】
チロシナーゼの活性抑制能の度合いは、純水を使用した対照群の吸光度を基準にして下記の計算式1による百分率で算出した。
(計算式1)
チロシナーゼ抑制能(%)=100−(各試料の反応吸光度/対照群の反応吸光度×100)
【0053】
その結果を下記の表1に表した。
【0054】
【表1】

【0055】
上記表1から、没食子酸にグルタチオン類似ペプチドが結合された本発明によるペプチド誘導体は、没食子酸に比べ、チロシナーゼ抑制能が顕著に増加する他、没食子酸に抗酸化能に優れていると知られた大豆タンパク質来由のペプチドが結合されたペプチド誘導体(比較例1及び2)またはニューロペプチドが結合されたペプチド誘導体(比較例3)よりも顕著に優れたチロシナーゼ抑制能を有することを確認することができた。また、没食子酸にリジンを介してグルタチオン類似ペプチドが連結された場合、直接結合された場合よりもチロシナーゼ抑制能が増加することが分かった。
【0056】
実験例2:フリーラジカル消去効果実験(抗酸化能実験)
上記実施例1及び2においてそれぞれ製造されたガロイル−テトラペプチド及びジガロイル−テトラペプチドのフリーラジカル消去効果を、通常のDPPH法により測定した。
【0057】
陽性対照群として、代表的な抗酸化剤であるビタミンC(Sigma社製)を用い、上記本発明によるガロイル−テトラペプチド及びジガロイル−テトラペプチドをエチルアルコール中においてフリーラジカルを発生させる1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl:DPPH、Sigma社製)と一定の割合で混合して、生成されたフリーラジカルの量がどの程度減少したかを確認した。具体的に、エチルアルコール0.4mlに、精製水に溶かした上記ペプチド誘導体溶液0.1mlと0.1mMのDPPH 溶液0.5mlを添加して、最終濃度が10、50、100μMになるようにした。10秒間強くボルテックスさせてから冷暗所で30分間放置した後、ELISA法を用いて517nmで吸光度を測定した。
【0058】
抗酸化能(フリーラジカル消去効果)の度合いは、純水を使用した対照群の吸光度を基準にして下記の計算式2による百分率で算出した。
(計算式2)
フリーラジカル消去効果(%)=100−(各試料の反応吸光度/対照群の反応吸光度×100)
【0059】
その結果を下記の表2に表した。
【0060】
【表2】

【0061】
上記表2から分かるように、上記実施例1及び2においてそれぞれ製造されたガロイル−テトラペプチド及びジガロイル−テトラペプチドは、ビタミンCよりも優れたフリーラジカル消去効果を奏した。したがって、本発明のペプチド誘導体が、優れた抗酸化効果を有する物質であることを確認することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1で表されるペプチド誘導体。
【化1】

前記式中、
ないしRは、それぞれ独立して水素、ヒドロキシ、C〜Cのアルキル基、C〜Cのアルコキシ基、シアノ、ハロ、またはアミノであり、
nは、1または2であり、
Lは、存在しないかまたは連結基であり、
Aは、3ないし12個のアミノ酸残基からなるグルタチオン類似ペプチドである。
【請求項2】
Aが、下記一般式2で表されるペプチド断片を含む3ないし12個のアミノ酸残基からなるグルタチオン類似ペプチドであることを特徴とする請求項1に記載のペプチド誘導体。
【化2】

前記式中、
Xは、Glu、Gln、AspまたはAsnあり、
Yは、Cysであり、
Zは、Gly、Ala、Val、Leu、IleまたはPheである。
【請求項3】
XはGluであり、YはCysであり、ZはGlyであることを特徴とする請求項2に記載のペプチド誘導体。
【請求項4】
LがLysであることを特徴とする請求項1に記載のペプチド誘導体。
【請求項5】
nが2であることを特徴とする請求項1に記載のペプチド誘導体。
【請求項6】
ないしRが、それぞれ独立して水素またはヒドロキシであることを特徴とする請求項1に記載のペプチド誘導体。
【請求項7】
及びRはいずれも水素であり、RないしRはいずれもヒドロキシであることを特徴とする請求項1に記載のペプチド誘導体。
【請求項8】
下記一般式3で表されるペプチド誘導体。
【化3】

前記式中、
Lは、存在しないかまたはLysであり、
Aは、Glu−Cys−Glyである。
【請求項9】
LがLysであることを特徴とする請求項8に記載のペプチド誘導体。
【請求項10】
下記一般式4で表されるペプチド誘導体。
【化4】

前記式中、
Lは、存在しないかまたはLysであり、
Aは、Glu−Cys−Glyである。
【請求項11】
LがLysであることを特徴とする請求項10に記載のペプチド誘導体。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のいずれかに記載のペプチド誘導体を含む化粧料組成物。
【請求項13】
皮膚美白用であることを特徴とする請求項12に記載の化粧料組成物。

【公開番号】特開2010−248166(P2010−248166A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296068(P2009−296068)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(510001319)バイオ−エフディーアンドシー カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】