説明

ペプチド誘導体

【課題】皮下投与ではもちろん、経口投与によっても、少量の投与で強力な鎮痛作用又は抗侵害作用を発揮するペプチド誘導体、このようなペプチド誘導体を有効成分とする医薬品組成物を提供する。
【解決手段】RN=C(R)−AA−AA−AA−AA−Yという一般式で表されるペプチド誘導体またはその塩であって、Rは水素分子等、Rはメチル基等、Yはヒドロキシル基、AAはチロシン残基等、AAはD−アルギニン残基等、AAはフェニルアラニン残基等、AAはγ−アミノ酪酸残基等である、ペプチド誘導体又はその塩であり、皮下投与及び経口投与によって、様々な疼痛に対して優れた鎮痛作用を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド誘導体、特に、鎮痛作用又は抗侵害作用を有するペプチド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
人類にとって、未解決の問題の一つに「痛み」がある。
「痛み」、すなわち疼痛はけがの発生や、病気になったことを知らせる重要な情報となりうるが、例えば、急性疼痛、慢性疼痛、線維筋痛症、神経因性疼痛(ニューロパチックペイン)、糖尿病性神経症による疼痛、癌性疼痛、MSU(尿酸塩)誘発性膝関節疼痛、変形性膝関節症による疼痛、関節リウマチによる疼痛等々の疼痛は、現状では治療による迅速な除去は困難であって、これらの疼痛は日夜、患者を責め苛み、患者の病気と戦う気力を失わせ、ときには、患者を完全な絶望に至らせることさえある。
【0003】
このような疼痛に対して、歴史的な観点から見れば、人類はアヘンを用いて対抗してきた。未熟なケシの実汁から採取されるアヘンは、5000年前のメソポタミア文明のシュメール人が残した粘土板にその記述があることが知られ、また、ギリシャでは紀元前後から麻酔剤として使用されてきた。言い換えれば、アヘンは人類史上最古の医薬品である。
【0004】
一方、このようなアヘンから得られるモルヒネは、1803年、ドイツの薬剤師ゼルチュルナーによって発見されて以降、今日に至るまで優れた鎮痛薬、特に癌性疼痛を抑制するにはなくてはならない鎮痛薬として使用されてきている。
【0005】
しかしながら、このようなモルヒネは麻薬であって習慣性を有し、多数回投与による身体依存性・精神依存性があるため、慢性中毒、いわゆる、麻薬中毒をおこし、徐々に量を多く用いなければ効かないようになる。このように、モルヒネはその取り扱い、投与に際しては細心の注意が必要である。また、激甚な疼痛に対して、モルヒネはその効果の持続時間が比較的短いために短時間毎の投与が必要となるので、患者本人はもとより、周囲の医療従事者、及び、患者家族などの介護者の負担も大きく、また末期癌の場合の在宅末期癌治療(在宅ホスピス)の実現が困難であるという問題もある。
【0006】
一方、モルヒネが効きにくい疼痛(ニューロパチックペイン等)も知られており、そのような分野では、モルヒネを越える高い効果を有する鎮痛薬が求められていた。
【0007】
このように、麻薬性を有さずに、モルヒネを越える広い分野において、モルヒネと同等かそれ以上の効果を有し、さらにその効果持続時間がより長い鎮痛薬の登場が待たれていた。
【0008】
ここで、鎮痛剤の研究は上記モルヒネの発見以来、その化学構造と関連するアルカロイド化合物を中心に進められてきたが、1975年、モルヒネ様活性を有するペプチド化合物(オピオイドペプチド)であるメチオニンエンケファリン及びロイシンエンケファリンがブタの脳内から発見されたことから、鎮痛薬としてペプチド誘導体を利用するアプローチが始まった。
【0009】
ここで、鎮痛薬としては、投与が容易であり、患者の負担の少ない、経口あるいは皮下投与により、長時間の抗侵害作用又は鎮痛作用が得られることが求められるが、前記エンケファリンはともに、生体内の酵素によって容易に分解されるため、経口及び皮下投与では全く抗侵害作用及び鎮痛作用が得られない。
【0010】
1980年、南アメリカ産のカエルPhyllomedusa sauvageiの皮膚から単離同定されたデルモルフィンは、自然界では細菌類以外には存在しないとされていたD−異性体アミノ酸残基を含有し、生体内の酵素分解に抵抗性がある(非特許文献1)。この発見をヒントに、D−異性体アミノ酸残基を含む合成ペプチド誘導体による鎮痛薬の開発が試みられて来たが、特に、経口投与における高い抗侵害作用又は鎮痛作用を得ることには困難があった。
【0011】
例えば、本発明者らが合成したペプチド誘導体TAPA(Tyr−D−Arg−Phe−β−Ala)は、皮下投与における抗侵害作用はモルヒネの9倍である(非特許文献2〜5)。しかし、経口投与におけるTAPAの抗侵害作用はモルヒネとほぼ同程度であった。
【0012】
このような基礎検討を元に本発明者らは、経口投与による抗侵害作用の効力改善を目的として、アミノ末端にアミジノ基を有する一連のペプチド誘導体を合成した(特許文献1〜3)。これらのうち最強の抗侵害作用を引き起こすペプチド誘導体ADAMB(Nα−アミジノ−[Tyr]−[D−Arg]−[Phe]−[N−メチルβAla]−OH)は、皮下投与における抗侵害作用がモルヒネの約23倍であり、経口投与における抗侵害作用はモルヒネの約3.8倍と云う結果を得た(非特許文献6)。
【0013】
ここで、ADAMBの効力のさらなる改善をめざしてADAMBのカルボキシル末端をアミド化したところ、皮下投与における抗侵害作用はモルヒネの約7分の1に低下し、経口投与における抗侵害作用もモルヒネの約5分の1に低下してしまった。さらにADAMBのカルボキシル末端をN−メチルアミド化する検討をおこなったところ、皮下投与および経口投与における抗侵害作用はともにさらに低下した(非特許文献7)。このように、ADAMBのカルボキシル末端をアミド化又はメチルアミド化すると、抗侵害作用をADAMBより増強することができないばかりか、かえって抗侵害作用を低下させることが判った。
【0014】
つぎに、本発明者らは、アミノ末端に1−イミノメチル基を有し、第1アミノ酸残基がチロシン、第2アミノ酸残基がD−アルギニン又はD−メチオニンスルホキサイド、第3アミノ酸残基がフェニルアラニンという基本骨格を有する一連のペプチド誘導体を合成したところ、経口投与における抗侵害作用は上記ADAMBより改善が認められたものの充分であるとは云えなかった(特許文献4、非特許文献8)。
【0015】
このように、モルヒネに置換し得る、あるいは、麻薬性を有さないためにモルヒネが応用できない分野にも使用できる、皮下投与および経口投与における抗侵害作用および鎮痛作用が高く、モルヒネをも凌駕する優れた鎮痛薬を得るという問題は解決されていなかった。
【0016】
上記問題を解決するため、本発明者らはさらに検討を進め、アミノ末端に1−イミノエチル基を有するペプチド誘導体の抗侵害作用を増強するために、このペプチド誘導体のカルボキシル末端の改変を試みた。その中で、アミノ末端がイミノ低級アルキル基で置換されたADAMBの置換体をアミド化する検討を行ってみた。
【0017】
この場合、ADAMBのカルボキシル末端をアミド化した上記の実験結果から、アミノ末端がイミノ低級アルキル基で置換されたADAMBの置換体についても同様に、カルボキシル末端をアミド化すると抗侵害作用が低下することが予想された。
【0018】
しかしながら、この予想に全く反し、前記ペプチド誘導体のカルボキシル末端をアミド化した場合、皮下投与及び経口投与における抗侵害作用が増強し、かつ、抗侵害作用の持続時間が長くなるという、予想外の結果が得られた。さらにカルボキシル末端をメチルアミド化すると、皮下投与及び経口投与における抗侵害作用はアミド化した場合よりもさらに増強されたることを見出した。そこで、本発明者らは以下に説明する新規ペプチド誘導体が皮下投与はもとより及び経口投与においても優れた抗侵害作用を有することを見出し、国際公開第WO2007/145208号に係るペプチド誘導体を提案した(特許文献5)。
【0019】
すなわち、アミノ末端に1−イミノエチル基を有するペプチド誘導体の抗侵害作用を増強するために、該ペプチド誘導体のカルボキシル末端の改変について検討を行い、前記ペプチド誘導体のカルボキシル末端をアミド化した結果、皮下投与及び経口投与における抗侵害作用が増強し、かつ、抗侵害作用の持続時間が長くなるという、驚くべき結果が得られることが判った。さらにカルボキシル末端をメチルアミド化すると、皮下投与及び経口投与における抗侵害作用はアミド化した場合よりもさらに増強された。
【0020】
しかしながら、ペプチド誘導体では、皮下投与では驚くほど高い作用が得られるものの、経口投与では皮下投与に比べ抗侵害作用が依然として若干低いと云う結果であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】国際公開第Wo95/24421号公報
【特許文献2】国際公開第Wo97/10261号公報
【特許文献3】国際公開第Wo97/10262号公報
【特許文献4】国際公開第Wo99/33864号公報
【特許文献5】国際公開第WO2007/145208号公報
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Int.J.PeptideProtein Res.,17:275(1981)
【非特許文献2】Br.J.Pharmacol.,95:15(1988)
【非特許文献3】Peptides,11:139(1990)
【非特許文献4】Neuropharmacol.,32:689(1993)
【非特許文献5】Pharmacol.Biochem.Behav.,24:27(1986)
【非特許文献6】Chem.Pharm.Bull,50:771−780(2002)
【非特許文献7】J.Med.Chem.,45:5081−5089(2002)
【非特許文献8】Chem.Pharm,Bull.,51:759−771(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
臨床上、もっとも繁用される投与方法は経口投与であり、経口投与で優れた治療効果が得られることが、医療従事者の立場からも、被治療者の立場からも重要である。さらに、投与量が少なくても高い抗侵害作用が得られると云うことは、投与による副作用を低く抑え得ることを意味する。
【0024】
そのために、本発明は、皮下投与ではもちろん、経口投与によっても、少量の投与で強力な鎮痛作用又は抗侵害作用を発揮するペプチド誘導体、このようなペプチド誘導体を有効成分とする医薬品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明のペプチド誘導体は、上記課題を解決するために、請求項1に記載の通り、下記の一般式(1)

N=C(R)−AA−AA−AA−AA−Y
(1)

で表される化合物又はその薬学的に許容できる塩であって、
上記Rは、ヒドロキシル基、低級アルキル基、及び、低級アルコキシル基から選ばれる1つであり、上記Rは、低級アルキル基であり、上記Yはヒドロキシル基であり、
上記AAは下記の化学式(3)
【化1】

で表されるα−アミノ酸残基であり、
化学式(3)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、及び、ハロゲン化低級アルキル基から選ばれる1つであり、
化学式(3)において、Xは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、下記の化学式(4)で表される基、及び、下記の化学式(5)で表される基

−O−CO−R
(4)

−O−CO−O−R
(5)

から選ばれる1つであり、化学式(4)のR、及び、化学式(5)のRは、それぞれ独立に、C1−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノC1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、複素環基、アリール基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つであり、
上記AAは下記の化学式(6)
【化2】

で表されるD−α−アミノ酸残基であり、化学式(6)において、Rは、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基、及び、ヒドロキシ低級アルキル基から選ばれる1つであり、nは1〜4の整数であり、AAは非置換フェニルアラニン残基、置換フェニルアラニン残基、非置換D−フェニルアラニン残基、及び、置換D−フェニルアラニン残基から選ばれる1つであり、
上記AAは、下記の化学式(7)
−N(R)−CH(R)−CH(R10)−(−CH(R11)−)−CO−
(7)

で表されるβ−アミノ酸残基であり(式中mは正の整数)、
化学式(7)において、R、R10、及び、R11は、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、アリール基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つであり、
上記Rは、水素原子、または、下記の化学式(8)

−Z−N(R12)−R13
(8)

で表される基であり、
化学式(8)において、Zは、低級アルキレン基、低級アルケニレン基、及び、低級アルキニレン基から選ばれる1つであり、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つ、または、R12及びR13はこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基である、化学式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容できる塩である。
【0026】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項2に記載の通り、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記Rが、水素原子である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩であることを特徴とする。
【0027】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項3に記載の通り、請求項1または請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記Rはメチル基又はエチル基であることを特徴とする。
【0028】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項4に記載の通り、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記AAは、下記の化学式(9)
【化3】

で表されるα−アミノ酸残基、または、化学式(10)
【化4】

で表されるD−α−アミノ酸残基であり、上記化学式(9)及び(10)において、R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、及び、ハロゲン化低級アルキル基から選ばれる1つである、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩である。
【0029】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項5に記載の通り、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記AAは、フェニルアラニン残基、D−フェニルアラニン残基、p−フルオロフェニルアラニン残基、D−p−フルオロフェニルアラニン残基、o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基、D−o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基、及び、2,6−ジメチルフェニルアラニン残基からなる群から選ばれるアミノ酸残基であることを特徴とする。
【0030】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項6に記載の通り、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記AA
γ−アミノ酪酸残基、または、δ−アミノバレリン酸残基であることを特徴とする。
【0031】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項7に記載の通り、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記化学式(3)において、Xが、ヒドロキシル基であることを特徴とする。
【0032】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項8に記載の通り、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記化学式(3)において、Xは、水素原子、または、ハロゲン原子であることを特徴とする。
【0033】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項8に記載の通り、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、
上記化学式(3)において、Xは、化学式(4)、または、化学式(5)で表され、化学式(4)におけるR、および、化学式(5)におけるRは、それぞれ独立に、C1−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノC1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、アリール基、複素環基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つである、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩ことを特徴とする。
【0034】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項10に記載の通り、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記AAは、チロシン残基、2,6−ジメチル−チロシン残基、o−アシル−チロシン残基、o−アルコキシカルボニル−チロシン残基、o−フェノキシカルボニル−チロシン残基、o−アセチルチロシン残基、及び、2,6−ジメチル−フェニルアラニン残基から選ばれる1つであることを特徴とする。
【0035】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項11に記載の通り、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記AAは、D−メチオニンスルホキシド残基、D−アルギニン残基、及び、D−シトルリン残基から選ばれる1つであることを特徴とする。
【0036】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項12に記載の通り、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記AAは、D−N−アセチルオルニチン残基、D−5−オキソノルロイシン残基、及び、D−5−ヒドロキシノルロイシン残基から選ばれる1つであることを特徴とする。
【0037】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項13に記載の通り、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記Rは水素原子であり、上記Rはメチル基であり、上記AAはo−アセチルチロシン残基であり、上記AAはD−メチオニンスルホキシド残基又はD−アルギニン残基であり、上記AAはフェニルアラニン残基であり、上記AAはγ−アミノ酪酸残基、または、δ−アミノバレリン酸残基であり、上記Yはヒドロキシル基であることを特徴とする。
【0038】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項14に記載の通り、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記Rは水素原子であり、上記Rはメチル基であり、上記AAはチロシン残基であり、上記AAはD−メチオニンスルホキシド残基又はD−アルギニン残基であり、上記AAはフェニルアラニン残基であり、上記AAはγ−アミノ酪酸残基、または、δ−アミノバレリン酸残基であり、上記Yはヒドロキシル基であることを特徴とする。
【0039】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項15に記載の通り、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記Rは水素原子であり、上記Rはメチル基であり、上記AAはチロシン残基であり、上記AAはD−5−ヒドロキシノルロイシン残基であり、上記AAはフェニルアラニン残基であり、上記AAはγ−アミノ酪酸残基、または、δ−アミノバレリン酸残基であり、上記Yはヒドロキシル基であることを特徴とする。
【0040】
また、本発明のペプチド誘導体は請求項16に記載の通り、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩において、上記Rは水素原子であり、上記Rはメチル基であり、上記AAは2,6−ジメチル−チロシン残基であり、上記AAはD−メチオニルスルホキシド残基あるいはD−アルギニン残基であり、上記AAはフェニルアラニン残基であり、上記AAはγ−アミノ酪酸残基、または、δ−アミノバレリン酸残基であり、上記Yはヒドロキシル基であることを特徴とする。
【0041】
また、本発明の医薬組成物は、請求項17に記載の通り、請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩の少なくとも1つを有効成分として含む医薬物組成物である。
【0042】
また、本発明の医薬組成物は、請求項18に記載の通り、請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩の少なくとも1つと、薬学的に許容できる担体と、を含む医薬品組成物である。
【0043】
また、本発明の医薬組成物は、請求項19に記載の通り、請求項17又は請求項18に記載の医薬品組成物において、疼痛の予防及び/又は治療に用いるための医薬品組成物である。
【0044】
また、本発明の医薬組成物は、請求項19に記載の医薬品組成物において、上記疼痛が癌性疼痛であることを特徴とする。
【0045】
また、本発明の医薬組成物は、請求項19に記載の医薬品組成物において、上記疼痛が神経因性疼痛であることを特徴とする。
【0046】
また、本発明の医薬組成物は、請求項19に記載の医薬品組成物において、上記疼痛が変形性膝関節症であることを特徴とする。
【0047】
また、本発明の医薬組成物は、請求項19に記載の医薬品組成物において、上記疼痛が関節リウマチであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0048】
本発明の化合物またはその薬学的に許容できる塩によれば、皮下投与ではもちろん、経口投与によっても強力な鎮痛作用又は抗侵害作用を発揮することができ、その時、経口投与及び皮下投与のいずれにおいても、鎮痛作用又は抗侵害作用の持続時間が長い。
【0049】
本発明によれば、熱刺激疼痛、神経因性疼痛、さらに、圧刺疼痛等、極めて広い疼痛に対して高い鎮痛作用又は抗侵害作用が得られ、効果が高く、かつ、その持続時間が長いため、麻薬性がないことも併せ、従来のモルヒネを越える新たな総合鎮痛剤として応用が可能であり、疼痛に苛まれ苦しむ患者本人はもとより、周囲の医療従事者、及び、患者家族などの介護者の負担を解消ないし、軽減することが可能となる。さらに、これら種類の異なった3つの疼痛に対して極めて有効な抗侵害作用が得られたことから、膠原病や、現状では原因不明な疼痛等の、その麻薬性のためにモルヒネが応用できなかった分野や、モルヒネが有効でなかった各種の疼痛等への応用の可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】SS8225−27(酢酸塩)のHPLCによるクロマトグラムである。
【図2】SS8225−27(実施例)のNMR解析データ
【図3】実施例の化合物を皮下投与後の抗侵害作用の経時的変化を示すグラフである。
【図4】実施例の化合物を皮下投与した場合の用量−反応曲線を示すグラフである。
【図5】実施例の化合物を経口投与後の抗侵害作用の経時的変化を示すグラフである。
【図6】実施例の化合物を経口投与した場合の用量−反応曲線を示すグラフである。
【図7】比較例の化合物を皮下投与後の抗侵害作用の経時的変化を示すグラフである。
【図8】比較例の化合物を皮下投与した場合の用量−反応曲線を示すグラフである。
【図9】比較例の化合物を皮下投与後の抗侵害作用の経時的変化を示すグラフである。
【図10】比較例の化合物を皮下投与した場合の用量−反応曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明に係る化合物又はその薬学的に許容できる塩は、上述のように下記の一般式(1)で表されるペプチド誘導体化合物又はその薬学的に許容できる塩である。
【0052】
N=C(R)−AA−AA−AA−AA−Y
(1)
【0053】
化学式(1)において、Rは、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基、及び、低級アルコキシル基から選ばれる1つであり、Rは低級アルキル基である。
【0054】
Yは、下記の化学式(2)で表されるヒドロキシル基である。
【0055】
−OH
(2)
【0056】
AAは下記の化学式(3)で表されるα−アミノ酸残基である。
【0057】
【化5】

【0058】
化学式(3)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、及び、ハロゲン化低級アルキル基から選ばれる1つである。
【0059】
化学式(3)において、Xは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、下記の化学式(4)で表される基、及び、化学式(5)で表される基から選ばれる1つである。
【0060】
−O−CO−R
(4)
【0061】
−O−CO−O−R
(5)
【0062】
化学式(4)及び(5)において、R及びRは、それぞれ独立に、C11−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノC1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、アリール基、複素環基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つである。
【0063】
AAは下記の化学式(6)で表されるD−α−アミノ酸残基である。
【0064】
【化6】

【0065】
化学式(6)において、Rは、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基、及び、ヒドロキシ低級アルキル基から選ばれる1つであり、nは1〜4の整数である。
【0066】
AAは、非置換のフェニルアラニン残基、置換のフェニルアラニン残基、非置換D−フェニルアラニン残基、及び、置換のD−フェニルアラニン残基から選ばれる1つである。
【0067】
AAは、下記の化学式(7)で表されるα−アミノ酸残基、または、下記の化学式(8)で表されるβ−アミノ酸残基である(式中mは正の整数)。
【0068】
−N(R)−CH(R)−CH(R10)−(−CH(R11)−)−CO−
(7)
【0069】
化学式(7)において、R、R10、および、R11は、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、アリール基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つであり、Rは、水素原子、または、下記の化学式(8)で表されるアミノ基である。
【0070】
−Z−N(R12)−R13
(8)
【0071】
化学式(8)において、Zは、低級アルキレン基、低級アルケニレン基、及び、低級アルキニレン基から選ばれる1つであり、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つであるか、あるいは、R12及びR13はこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員の含窒素複素環基又は6員の含窒素複素環基である。
【0072】
化学式(1)において、Rの好ましい例は、水素原子であるが本発明はこれらには限定されない。また、Rの好ましい例は、低級アルキル基であるが本発明はこれらには限定されない。Rのより好ましい例は、メチル基又はエチル基である。
【0073】
AAを表す化学式(3)におけるR及びRと、化学式(9)又は(10)におけるR14及びR15とのベンゼン環上における置換位置は特に限定されない。
【0074】
化学式(1)において、AAの好ましい例としては、チロシン残基、2,6−ジメチル−チロシン残基、o−アシル−チロシン残基、o−アルコキシカルボニル−チロシン残基、o−フェノキシカルボニル−チロシン残基、o−アセチルチロシン残基、2,6−ジメチル−フェニルアラニン残基等が挙げられるが、本発明はこれらには限定されない。
【0075】
化学式(1)において、AAの好ましい例としては、D−アルギニン残基、D−メチオニンスルホキシド残基、D−N−アセチルオルニチン残基、D−5−オキソノルロイシン残基、D−シトルリン残基、D−5−ヒドロキシノルロイシン残基等が挙げられるが、本発明はこれらには限定されない。
【0076】
AAは下記の化学式(9)又は(10)で表されるα−アミノ酸残基又はD−α−アミノ酸残基の場合がある。
【0077】
【化7】

【0078】
【化8】

【0079】
化学式(9)及び(10)において、R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、及び、ハロゲン化低級アルキル基から選ばれる1つである。
【0080】
化学式(1)において、AAの好ましい例としては、フェニルアラニン残基、p−フルオロフェニルアラニン残基及びo−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基、2,6−ジメチル−フェニルアラニン残基、D−フェニルアラニン残基、D−p−フルオロフェニルアラニン残基、D−o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基等が挙げられるが、本発明はこれらには限定されない。
【0081】
化学式(1)において、AAの好ましい例としては、γ−アミノ酪酸残基、δ−アミノバレリン酸残基等が挙げられるが、本発明はこれらには限定されない。
【0082】
本明細書では、痛みを止める作用を意味する用語として、鎮痛作用(analgesicactivity)及び抗侵害作用(antinociceptiveactivity)を使用する。両者の相違点は、前者が主にヒトについて使用されるのに対し、後者が主に実験動物について使用される点であり、本明細書においては、本発明の作用効果に関して互いに交換可能に用いられる。
【0083】
本明細書に記載のアミノ酸、その残基について、D−体とL−体とが存在する場合、特にD−と表示していない場合には、そのアミノ酸、その残基はL−アミノ酸を意味する。
【0084】
本明細書に記載の「低級アルキル」、「低級アルコキシル」、「低級アシル」及び「低級アルキレン」の用語において、「低級」とは、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含むことを意味する。本明細書に記載の「低級アルケニル」、「低級アルキニル」、「低級アルケニレン」及び「低級アルキニレン」の用語において、「低級」とは、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含むことを意味する。
【0085】
本明細書に記載の「アルキル」、「アルコキシル」、「アシル」、「アルキレン」、「アルケニル」、「アルキニル」、「アルケニレン」及び「アルキニレン」は、直鎖型異性体及び分岐鎖型異性体のいずれの場合であってもよい。分岐鎖型異性体としては、第2級炭素を含む分岐鎖型異性体と第3級炭素を含む分岐鎖型異性体とのいずれの場合であってもよい。
【0086】
前記低級アルキル基の好ましい例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基等があるが、これらの例に限定されない。また、本明細書に記載の「C1−16アルキル基」、「ヒドロキシC1−16アルキル基」、「アミノC1−16アルキル基」、「(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」、「(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」等における「C1−16アルキル基」の好ましい例としては、前記低級アルキル基の好ましい例に加えて、直鎖又は分岐鎖のヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基等があるが、これらの例に限定されない。C1−16アルキル基としては直鎖又は分岐鎖型のC6−12アルキル基が好ましく、C8−10アルキル基がより好ましい。特に好ましいのはC及びC10の直鎖又は分岐鎖型アルキル基である。
【0087】
本明細書に記載の「低級アルコキシル基」は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子数のアルコキシル基を指す。前記低級アルコキシル基の好ましい例としては、メトキシ基、エトキシ基等があるが、これらの例に限定されない。
【0088】
本明細書に記載の「C3−10シクロアルキル基」と、「C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基」における「C3−10シクロアルキル基」とは、ともに炭素原子の数が3、4、5、6、7、8、9又は10個のシクロアルキル基を指す。前記C3−10シクロアルキル基の好ましい例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等があるが、これらの例には限定されない。本明細書に記載の「C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基」における「C3−10シクロアルキル基」は低級アルキル基のどの炭素原子に置換していてもよく、低級アルキル基の炭素原子のうち何個の炭素原子に置換していてもよい。例えば1ないし4個、より好ましくは1ないし2個、特に好ましくは1個のC3−10シクロアルキル基が任意の位置の炭素原子に置換される場合がある。
【0089】
本明細書に記載の「C2−16アルケニル基」及び「C2−16アルキニル基」は、それぞれ、炭素原子の数が2個から16個までのいずれかのアルケニル基及びアルキニル基であって、直鎖又は分岐鎖型のものを指す。前記C2−16アルケニル基及びC2−16アルケニル基にそれぞれ含まれる二重結合及び三重結合の位置及び数は特に限定されない,前記2−16アルケニル基の好ましい例としては、ビニル基すなわちエテニル基、2−プロペニル基、cis−1−プロペニル基、trans−1−プロペニル基等があるが、これらの例に限定されない。前記C2−16アルキニル基の好ましい例としては、エチニル基、2−プロピニル基等があるが、本発明はこれらの例には限定されない。
【0090】
本明細書に記載の「複素環基」は、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなるグループから選択される少なくとも1種類の原子と炭素原子とからなる、飽和、不飽和又は部分不鉋和の環状化合物を指す。前記複素環基の好ましい例は、ピリジル基、フラニル基、チオフェニル基等があるが、これらの例に限定されない。化学式(8)におけるR11及びR12とは、これらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基を表す場合がある。該含窒素複素環基は、例えば、環を再成する原子として1個又は2個以上の窒素原子を含む5ないし6員の飽和又は部分不飽和の複素環基である場合がある。前記含窒素複素環基の好ましい例としては、ピロリジノ基、ピペリジノ基、3,4−デヒドロピロリジノ基、ピリジニオ基等が挙げられるが、本発明はこれらの例には限定されない。
【0091】
本明細書に記載の「アリール基」と、「アリール置換低級アルキル基」における「アリール基」とは、1個または2個以上の環からなる芳香族置換基を指す。前記アリール基の好ましい例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニリル基、フェナントリル基等があるが、これらの例に限定されない。本明細書に記載の「アリール置換低級アルキル基」における「アリール基」は、低級アルキル基のどの炭素原子に置換していてもよく、低級アルキル基の炭素原子のうち何個の炭素原子に置換していてもよい。例えば1ないし4個、より好ましくは1ないし2個、特に好ましくは1個のアリール基が任意の位置の炭素原子に置換される場合がある。前記アリール置換低級アルキル基の好ましい例としては、ベンジル基、フェネチル基等があるが、これらの例に限定されない。
【0092】
本明細書に記載の「低級アシル基」と、「低級アシルアミノ基」における「低級アシル基」とは、ともに1、2、3、4、5又は6個の炭素原子数のアシル基すなわちアルカノイル基を指す。前記低級アシル基の好ましい例としては、ホルミル基、アセチル基等があるが、これらの例に限定されない。基本明細書に記載の「低級アシルアミノ基」における「低級アシル基」は、アミノ基の水素原子の一方又は両方を置換する。前記低級アシルアミノ基の好ましい例としては、モノアセチルアミノ基、ジアセチルアミノ基等があるが、これらの例に限定されない。
【0093】
本明細書に記載の「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素のいずれでもよい。本明細書に記載の「ハロゲン化低級アルキル基」に置換するハロゲン原子の置換位置、個数及び種類は特に制限されず、モノハロゲン化低級アルキル基からパーハロゲン化低級アルキル基までいずれも利用可能である。2個以上のハロゲン原子が存在する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。前記ハロゲン化低級アルキル基の好ましい例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、フルオロメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基等があるが、本発明はこれらの例には限定されない。
【0094】
本明細書に記載の「ヒドロキシ低級アルキル基」又は「ヒドロキシC1−16アルキル基」における「ヒドロキシル基」は、アルキル基の炭素原子のうちどの炭素原子に置換していてもよく、アルキル基の炭素原子のうち何個の炭素原子に置換していてもよい。例えば1ないし4個、より好ましくは1ないし2個、特に好ましくは1個のヒドロキシル基が任意の位置の炭素原子に置換される場合がある。前記「ヒドロキシ低級アルキル基」及び「ヒドロキシC1−16アルキル基」の好ましい例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基等があるが、これらの例に限定されない。
【0095】
本明細書に記載の「アミノC1−16アルキル基」における「アミノ基」は、C1−16アルキル基の炭素原子のうちどの炭素原子に置換していてもよく、アルキル基の炭素原子のうち何個の炭素原子に置換していてもよい。例えば1ないし4個、より好ましくは1ないし2個、特に好ましくは1個のアミノ基が任意の位置の炭素原子に置換される場合がある。前記「アミノC1−16アルキル基」の好ましい例としては、アミノメチル基、2−アミノエチル基等があるが、これらの例に限定されない。
【0096】
本明細書に記載の「(モノ低級アルキル)アミノ基」と、「(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」における「(モノ低級アルキル)アミノ基」とは、ともに、炭素原子の数が1、2、3、4、5又は6個のアルキル基がアミノ基の1個の水素原子を置換したものを指す。本明細書に記載の「(モノ低級アルキル)アミノ基」と、「(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」における「(モノ低級アルキル)アミノ基」との好ましい例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基等があるが、これらの例に限定されない。本明細書に記載の「(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」における「(ジ低級アルキル)アミノ基」とは、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子数のアルキル基がアミノ基の2個の水素原子のそれぞれを置換したものを指す。それぞれの水素原子を置換する低級アルキル基は、同じ低級アルキル基であっても、異なる低級アルキル基であってもかまわない。前記(ジ低級アルキル)アミノ基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等があるが、これらの例に限定されない。本明細書に記載の「(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」は、前記(モノ低級アルキル)アミノ基が、C1−16アルキル基の炭素原子のどこに置換していてもよく、該アミノ基はさらに前記低級アルキル基1個で置換されていることを表す。前記(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基の好ましい例としては、3−(メチルアミノ)−n−プロニル基、2−(エチルアミノ)−n−ペンチル基等があるが、これらの例に限定されない。本明細書に記載の「(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基」は、前記(ジ低級アルキル)アミノ基が、C1−16アルキル基の炭素原子のどこに置換していてもよく、該アミノ基はさらに前記低級アルキル基2個で置換されていることを表す。前記(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基の好ましい例としては、2−(ジメチルアミノ)エチル基、2−(ジエチルアミノ)エチル基等があるが、これらの例には限定されない。
【0097】
本明細書において、ペプチド誘導体の構造の最も左端に「RN=C(R)−」、「イミノメチル−」又は「1−イミノエチル−」と表示されない場合は、アミノ末端のアミノ酸のアミノ基は無置換であることを示す。また、本明細書において、ペプチド誘導体のカルボキシル末端に「−OH」と記載される場合には、カルボキシル末端のアミノ酸のカルボキシル基は無置換であることを示す。
【0098】
本明細書において、「アミノ酸残基」という用語はペプチド化学の分野における通常の意味で用いられており、より具体的には、αアミノ酸においてα位の関係にあるアミノ基及びカルボキシル基、又はβアミノ酸においてβ位の関係にあるアミノ基及びカルボキシル基から、それぞれ水素原子及びヒドロキシル基を除いた残りの構造を意味する。アミノ酸残基の表記法は、生化学辞典(第3版、東京化学同人、1998年10月8日発行)、WIPO標準ST.25及び平成14年7月に特許庁が公表した「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」に準じる。D−アミノ酸残基を含む場合にはその旨を表示する。すなわち、化学式(1)において、「−AAi−」(iは1ないし4の整数)と表記される第i番目のアミノ酸残基が例えばチロシン残基のときには、「−[Tyr]−」、D−アルギニン残基のときには、「−[D−Arg]−」のようにアルファベット3文字による省略表記で表されるが、修飾アミノ酸残基の場合には、2,6−ジメチル−チロシン残基のときには、「−[2,6−ジメチル−Tyr]−」、D−メチオニンスルホキシド残基のときには、「−[D−Met(O)]−」とそれぞれ表される。
【0099】
本明細におけるγ−アミノ酪酸残基は以下の化学式(11)で表される構造を有する。
【0100】
【化9】

【0101】
本発明におけるδ−アミノバレリン酸残基(δ−アミノ吉草酸残基)は以下の化学式(12)で表される構造を有する。
【0102】
【化10】

【0103】
本発明におけるD−メチオニンスルホキシド残基又はD−Met(O)は以下の化学式(13)で表される構造を有する。
【0104】
【化11】

【0105】
本発明の化合物は、アミノ末端が1−イミノエチル基又はイミノプロピル基の場合がある。すなわち、本発明の化合物は、化学式(1)におけるRが水素原子で、Rがメチル基又はエチル基であって、化学式(3)におけるR及びRが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基及びハロゲン化低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(3)におけるXが、水素原子、ハロゲン原子及びヒドロキシル基と、化学式(4)及び(5)とからなるグループから選択され、化学式(4)又は(5)におけるR又はRが、それぞれ独立に、C1−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノC1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、アリール基、アリール置換低級アルキル基及び複素環基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるRが、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基及びヒドロキシ低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるnが1〜4の整数から選択され、化学式(1)におけるAAが、非置換又は置換フェニルアラニン残基か、非置換又は置換D−フェニルアラニン残基かであり、化学式(7)におけるR、R10、及び、R11が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、C6−10アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(7)におけるRが、水素原子と、化学式(8)とからなるグループから選択され、化学式(8)におけるZが、低級アルキレン基、低級アルケニレン基及び低級アルキニレン基からなるグループから選択され、化学式(8)におけるR12及びR13が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択されるか、あるいは、R11及びR12はこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基を表すかである、化学式(1)で表される化合物の場合がある。本発明はこれらの化合物とその薬学的に許容できる塩とを提供する場合がある。
【0106】
本発明の化合物は、カルボキシル末端がアミド基又はメチルアミド基の場合がある。すなわち、本発明の化合物は、化学式(1)におけるRが、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基及び低級アルコキシル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるRが、低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(3)におけるR及びRが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基及びハロゲン化低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(4)又は(5)におけるR又はRが、それぞれ独立に、C1−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノC1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、アリール基、アリール置換低級アルキル基及び複素環基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるRが、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基及びヒドロキシ低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるnが1〜4の整数から選択され、化学式(1)におけるAAが、非置換又は置換フェニルアラニン残基か、非置換又は置換D−フェニルアラニン残基かであり、化学式(7)におけるR、R10、及び、R11が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、C6−10アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(7)におけるRが、水素原子と、化学式(8)とからなるグループから選択され、化学式(8)におけるZが、低級アルキレン基、低級アルケニレン基及び低級アルキニレン基からなるグループから選択され、化学式(8)におけるR12及びR13が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択されるか、あるいは、R12及びR13はこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基を表すかである、化学式(1)で表される化合物の場合がある。本発明はこれらの化合物とその薬学的に許容できる塩とを提供する場合がある。
【0107】
本発明の化合物は、化学式(3)におけるXがヒドロキシル基の場合がある。すなわち、本発明の化合物は、化学式(1)におけるRが、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基及び低級アルコキシル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるRが、低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(3)におけるXがヒドロキシル基であり、化学式(3)におけるR及びRが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基及びハロゲン化低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるRが、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基及びヒドロキシ低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるnが1〜4の整数から選択され、化学式(1)におけるAAが、非置換又は置換フェニルアラニン残基か、非置換又は置換D−フェニルアラニン残基かであり、化学式(7)におけるR、R10、及び、R11が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、C6−10アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(7)におけるRが、水素原子と、化学式(8)とからなるグループから選択され、化学式(8)におけるZは、低級アルキレン基、低級アルケニレン基及び低級アルキニレン基からなるグループから選択され、化学式(8)におけるR12及びR13が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択されるか、あるいは、R12及びR13はこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基を表すかである、化学式(1)で表される化合物の場合がある。本発明はこれらの化合物とその薬学的に許容できる塩とを提供する場合がある。
【0108】
本発明の化合物は、化学式(3)におけるXが水素原子又はハロゲン原子の場合がある。すなわち、本発明の化合物は、化学式(1)におけるRが、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基及び低級アルコキシル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるRが、低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(3)におけるXが、水素原子又はハロゲン原子であり、化学式(3)におけるR及びRが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基及びハロゲン化低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるRが、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基及びヒドロキシ低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるnが1〜4の整数から選択され、化学式(1)におけるAAが、非置換又は置換フェニルアラニン残基か、非置換又は置換D−フェニルアラニン残基かであり、化学式(7)におけるR、R10、および、R11が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、C6−10アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(7)Rが、水素原子と、化学式(8)とからなるグループから選択され、化学式(8)におけるZは、低級アルキレン基、低級アルケニレン基及び低級アルキニレン基からなるグループから選択され、化学式(8)におけるR12及びR13が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択されるか、あるいは、R12及びR13はこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基を表すかである、化学式(1)で表される化合物の場合がある。本発明はこれらの化合物とその薬学的に許容できる塩とを提供する場合がある。
【0109】
本発明の化合物は、化学式(1)におけるAAがチロシン残基又は2,6−ジメチル−チロシン残基の場合がある。すなわち、本発明の化合物は、化学式(1)におけるRが、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基及び低級アルコキシル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるRが、低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるAAがチロシン残基又は2,6−ジメチル−チロシン残基であり、化学式(6)におけるRが、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基及びヒドロキシ低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるnが1〜4の整数から選択され、化学式(1)におけるAAが、非置換又は置換フェニルアラニン残基か、非置換又は置換D−フェニルアラニン残基かであり、化学式(7)におけるR、R10、及び、R11が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、C6−10アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(7)におけるRが、水素原子と、化学式(8)とからなるグループから選択され、化学式(8)におけるZは、低級アルキレン基、低級アルケニレン基及び低級アルキニレン基からなるグループから選択され、化学式(8)におけるR12及びR13が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択されるか、あるいは、R12及びR13はこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基を表すかである、化学式(1)で表される化合物の場合がある。本発明はこれらの化合物とその薬学的に許容できる塩とを提供する場合がある。
【0110】
本発明の化合物は、化学式(1)におけるAAがo−アシル−チロシン残基、o−アルコキシカルボニル−チロシン残基、o−フェノキシカルボニル−チロシン残基、o−アセチルチロシン残基又は2,6−ジメチル−フェニルアラニン残基の場合がある。すなわち、本発明の化合物は、化学式(1)におけるRが、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基及び低級アルコキシル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるRが、低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるAAがo−アシル−チロシン残基、o−アルコキシカルボニル−チロシン残基、o−フェノキシカルボニル−チロシン残基、o−アセチルチロシン残基又は2,6−ジメチル−フェニルアラニン残基であり、化学式(6)におけるRが、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基及びヒドロキシ低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるnが1〜4の整数から選択され、化学式(1)におけるAAが、非置換又は置換フェニルアラニン残基か、非置換又は置換D−フェニルアラニン残基かであり、化学式(7)におけるR、R10、及び、R11が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、C6−10アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(7)におけるRが、水素原子と、化学式(8)とからなるグループから選択され、化学式(8)におけるZは、低級アルキレン基、低級アルケニレン基及び低級アルキニレン基からなるグループから選択され、化学式(8)におけるR12及びR13が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択されるか、あるいは、R14及びR15はこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基を表すかである、化学式(1)で表される化合物の場合がある。本発明はこれらの化合物とその薬学的に許容できる塩とを提供する場合がある。
【0111】
本発明の化合物は、化学式(1)におけるAAがD−アルギニン残基又はD−メチオニンスルホキシド残基の場合がある。すなわち、本発明の化合物は、化学式(1)におけるRが、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基及び低級アルコキシル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるRが、低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(3)におけるXが、水素原子、ハロゲン原子又はヒドロキシル基か、化学式(4)又は(5)で表される官能基かであり、化学式(3)におけるR及びRが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基及びハロゲン化低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(4)及び(5)におけるR及びRが、それぞれ独立に、C1−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノC1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、アリール基、複素環基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるAAがD−アルギニン残基又はD−メチオニンスルホキシド残基であり、化学式(1)におけるAAが、非置換又は置換フェニルアラニン残基か、非置換又は置換D−フェニルアラニン残基かであり、化学式(7)におけるR、R10、及び、R11が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、C6−10アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(7)におけるRが、水素原子と、化学式(8)とからなるグループから選択され、化学式(8)におけるZは、低級アルキレン基、低級アルケニレン基及び低級アルキニレン基からなるグループから選択され、化学式(8)におけるR12及びR13が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択されるか、あるいは、R11及びR12はこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基を表すかである、化学式(1)で表される化合物の場合がある。本発明はこれらの化合物とその薬学的に許容できる塩とを提供する場合がある。
【0112】
本発明の化合物は、化学式(1)におけるAAがD−N−アセチルオルニチン残基、D−5−オキソノルロイシン残基、D−シトルリン残基又はD−5−ヒドロキシノルロイシン残基の場合がある。すなわち、本発明の化合物は、化学式(1)におけるRが、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基及び低級アルコキシル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるRが、低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(3)におけるXが、水素原子、ハロゲン原子又はヒドロキシル基か、化学式(4)又は(5)で表される官能基かであり、化学式(3)におけるR及びRが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基及びハロゲン化低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(4)及び(5)におけるR及びRが、それぞれ独立に、C1−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノC1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、アリール基、複素環基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるAAがD−N−アセチルオルニチン残基、D−5−オキソノルロイシン残基、D−シトルリン残基又はD−5−ヒドロキシノルロイシン残基であり、化学式(1)におけるAAが、非置換又は置換フェニルアラニン残基か、非置換又は置換D−フェニルアラニン残基かであり、化学式(7)におけるR、R10、及び、R11が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、C6−10アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(7)におけるRが、水素原子と、化学式(8)とからなるグループから選択され、化学式(8)におけるZは、低級アルキレン基、低級アルケニレン基及び低級アルキニレン基からなるグループから選択され、化学式(8)におけるR12及びR13が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択されるか、あるいは、R12及びR13はこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基を表すかである、化学式(1)で表される化合物の場合がある。本発明はこれらの化合物とその薬学的に許容できる塩とを提供する場合がある。
【0113】
本発明の化合物は、化学式(1)におけるAAがフェニルアラニン残基の場合がある。すなわち、本発明の化合物は、化学式(1)におけるRが、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基及び低級アルコキシル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるRが、低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(3)におけるXが、水素、塩素、フッ素及びヒドロキシル基と、化学式(4)及び(5)とからなるグループから選択され、化学式(3)におけるR及びRが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基及びハロゲン化低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(4)及び(5)におけるR及びRが、それぞれ独立に、C1−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノ−C1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、アリール基、アリール置換低級アルキル基及び複素環基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるRが、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基及びヒドロキシ低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるnが1〜4の整数から選択され、化学式(1)におけるAAがフェニルアラニン残基であり、化学式(7)におけるR、R10、及び、R11が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、C6−10アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(7)におけるRが、水素原子と、化学式(8)とからなるグループから選択され、化学式(8)におけるZが、低級アルキレン基、低級アルケニレン基及び低級アルキニレン基からなるグループから選択され、化学式(8)におけるR12及びR13が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択されるか、あるいは、R12及びR13はこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基を表すかである、化学式(1)で表される化合物の場合がある。本発明はこれらの化合物とその薬学的に許容できる塩とを提供する場合がある。
【0114】
本発明の化合物は、化学式(1)におけるAAがp−フルオロフェニルアラニン残基、o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基、2,6−ジメチルフェニルアラニン残基、D−フェニルアラニン残基、D−p−フルオロフェニルアラニン残基又はD−o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基の場合がある。すなわち、本発明の化合物は、化学式(1)におけるRが、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基及び低級アルコキシル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるRが、低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(3)におけるXが、水素、塩素、フッ素及びヒドロキシル基と、化学式(4)及び(5)とからなるグループから選択され、化学式(3)におけるR及びRが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基及びハロゲン化低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(4)及び(5)におけるR及びRが、それぞれ独立に、C1−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノC1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、アリール基、アリール置換低級アルキル基及び複素環基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるRが、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基及びヒドロキシ低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるnが1〜4の整数から選択され、化学式(1)におけるAAがD−フェニルアラニン残基、p−フルオロフェニルアラニン残基、o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基、D−p−フルオロフェニルアラニン残基又はD−o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基であり、化学式(7)におけるR、R10、及び、R11が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、C6−10アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(7)におけるRが、水素原子と、化学式(8)とからなるグループから選択され、化学式(8)におけるZが、低級アルキレン基、低級アルケニレン基及び低級アルキニレン基からなるグループから選択され、化学式(8)におけるR12及びR13が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択されるか、あるいは、R12及びR13はこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基を表すかである、化学式(1)で表される化合物の場合がある。本発明はこれらの化合物とその薬学的に許容できる塩とを提供する場合がある。
【0115】
本発明の化合物は、化学式(1)におけるAAがγ−アミノ酪酸残基、または、δ−アミノバレリン酸残基の場合がある。すなわち、本発明の化合物は、化学式(1)におけるRが、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基及び低級アルコキシル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるRが、低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(3)におけるXが、水素、塩素、フッ素及びヒドロキシル基と、化学式(4)及び(5)とからなるグループから選択され、化学式(3)におけるR及びRが、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基及びハロゲン化低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(4)及び(5)におけるR及びRが、それぞれ独立に、C1−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノC1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、アリール基、アリール置換低級アルキル基及び複素環基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるRが、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基及びヒドロキシ低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(6)におけるnが1〜4の整数から選択され、化学式(1)におけるAAが、非置換又は置換フェニルアラニン残基か、非置換又は置換D−フェニルアラニン残基かであり、化学式(7)におけるR、R10、及び、R11が、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、C6−10アリール基及びアリール置換低級アルキル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるAAがγ−アミノ酪酸残基、または、δ−アミノバレリン酸残基である、化学式(1)で表される化合物の場合がある。本発明はこれらの化合物とその薬学的に許容できる塩とを提供する場合がある。
【0116】
本発明の化合物は、一般式(1)で表される化合物であって、化学式(1)におけるRが、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基及び低級アルコキシル基からなるグループから選択され、化学式(1)におけるRが、低級アルキル基からなるグループから選択され、AAは、チロシン残基、2,6−ジメチル−チロシン残基、o−アシル−チロシン残基、o−アルコキシカルボニル−チロシン残基、o−フェノキシカルボニル−チロシン残基、o−アセチルチロシン残基又は2,6−ジメチル−フェニルアラニン残基であり、AAは、D−メチオニンスルホキシド残基、D−アルギニン残基、D−シトルリン残基、D−N−アセチルオルニチン残基、D−5−オキソノルロイシン残基又はD−5−ヒドロキシノルロイシン残基であり、AAは、フェニルアラニン残基、D−フェニルアラニン残基、p−フルオロフェニルアラニン残基、D−p−フルオロフェニルアラニン残基、o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基又はD−o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基であり、AAはγ−アミノ酪酸残基、または、δ−アミノバレリン酸残基である、化学式(1)で表される化合物の場合がある。本発明はこれらの化合物とその薬学的に許容できる塩とを提供する場合がある。
【0117】
本発明の化合物は、任意の光学活性体またはラセミ体、ジアステレオ異性体またはそれらの任意の混合物がすべて含まれる。また、本発明の化合物の薬学的に許容できる塩の好ましい例としては、塩酸塩、酢酸塩、又はパラトルエンスルホン酸などの酸付加塩、アンモニウム塩又は有機アミン塩などの塩基付加塩、遊離形態及び塩の形態のペプチド誘導体の任意の水和物及び溶媒和物等があるが、これらに限定されない。本発明の化合物には、一般式(1)で表されるペプチド誘導体の2量体ないし多量体である化合物と、これらのペプチド誘導体のC−末端とn−末端が結合した環状の化合物も含まれる場合がある。ここで、本発明の化合物は、その詳細は検討中であるが、現状、神経系のμ−オピオイドレセプタに作用して、鎮痛作用又は抗侵害作用を発現させると考えられている。
【0118】
本発明は、痛み、特に疼痛の予防及び/又は治療に用いる医薬品組成物を提供する。本発明は、疼痛の予防及び/又は治療に用いる医薬の製造のための本発明の化合物又はその薬学的に許容できる塩の使用を提供する。本発明は、本発明の化合物又はその薬学的に許容できる塩の有効量をヒトを含む動物に投与するステップを含む、疹痛の予防及び/又は治療方法を提供する。
【0119】
本発明の医薬品組成物は、本発明の化合物又はその薬学的に許容できる塩の少なくとも1つを有効成分として含む。本発明の医薬品組成物は、少なくとも1つの本発明の化合物又はその薬学的に許容できる塩と、少なくとも1つの薬学的に許容できる担体とを含む場合がある。本発明の化合物又はその薬学的に許容できる塩を有効成分として含む。本発明の医薬品組成物は、一般的な疼痛の予防及び/又は治療をはじめ、ニューロパチックペインの予防及び/又は治療、癌性疼痛の予防及び/又は治療を目的として使用することができ、静脈内投与、皮下投与、直腸内投与などの非経口投与のほか、経口投与、経粘膜投与、又は経皮投与により適用可能である。これらの投与経路に適する剤形は当業者に種々知られており、当業者は所望の投与形態に適する剤形を適宜選択し、必要に応じて当業界で利用可能な1又は2以上の薬学的に許容できる担体又は製剤用添加物を用いて医薬用組成物の形態の製剤を製造することが可能である。例えば、経粘膜投与には、点鼻剤や鼻腔内スプレー剤などの鼻腔内投与剤又は舌下剤などのロ腔内投与剤などが好適である。本発明の医薬の有効成分として、本発明の化合物又はその薬学的に許容できる塩の水和物又は溶媒和物が用いられる場合がある。投与量は特に限定されないが、例えば、経皮投与又は経粘膜投与の場合には単回投与量を0.1〜10mgとし、経口投与の場合には単回投与量を1〜100mgとして、一日あたり2〜3回投与することができる。あるいは、通常成人1日あたり約0.1〜1,000mg、好ましくは、約1〜300mg投与することができる。また、投与量を患者の体重、年齢、遺伝子型、病状等のパラメータと関連づけて設定することができる。
【0120】
本発明の医薬品組成物は、錠剤、顆粒剤(細粒)、カプセル剤、注射剤(点滴静注剤)、貼布剤、坐剤、懸濁液及びエマルジョン、ペースト、軟膏、クリーム、ローション、点鼻剤、点眼剤等の剤形で提供される場合があるが、これらに限定されない。本発明の医薬品組成物は、持続時間を長時間維持することを目的として徐放化される場合がある。
【0121】
本発明の医薬品組成物に含まれる薬学的に許容できる担体又は製剤用添加物には、安定化剤、界面活性剤、可溶化剤、吸着剤等が含まれるが、これらに限定されない。本発明の医薬品組成物に含まれる薬学的に許容できる担体又は製剤用添加物は、上記に列挙される本発明の医薬品組成物の剤形に対応して選択される。
【0122】
本発明の化合物の製造方法は特に限定されないが、通常のペプチド合成に通常用いられる固相法および液相法で合成することができる。本明細書の実施例には、本発明の化合物の代表的化合物について、具体的かつ詳細に製造方法が説明されている。従って、当業者は、これらの実施例を参照しつつ、適宜の原料化合物及び試薬を選択し、必要に応じて反応条件や反応工程に適宜の修飾ないし改変を加えることによって、本発明の化合物を容易に製造することが可能である。アミノ基等の保護基および縮合反応の縮合剤等は、優れたものが種々知られており、以下の実施例を参考に、また、例えば:鈴木紘一編「タンパク質工学−基礎と応用」丸善(株)(1992)及びそこに引用された文献;M.Bondanszky,etal.,“PeptideSynthesis”,JohnWiley&Sons,n.Y.,1976;並びにJ.M.StewartandD.J.Young,”SolidPhasePeptideSynthesis”,W.H.FreemanandCo.,SanFrancisco,1969等を参照して適宜選択使用することができる。固相法では市販の各種ペプチド合成装置、例えば株式会社パーキン・エルマー・ジャパン製モデル430A、株式会社島津製作所製PSSM−8等を利用するのが便利な場合がある。合成に使用する樹脂、試薬等は市販品等を容易に入手できる。
【0123】
本発明の化合物の抗侵害作用は、テイルフリック(tail flick)法、圧刺激(tail pressure)法等を用いる動物実験によって定量的に評価できる。テイルフリック法については本明細書の実施例において詳細に説明する。圧刺激法は、特許文献3及び4に説明されている。簡単には、マウスの尾根部に10mmHg/秒の割合で圧刺激を加え、もがき、刺激部位への噛みつきなどの行動を示す圧力を測定し、これを疼痛反応閾値とした。最大刺激圧は100mmHgとした。実験に供するマウスとして、予備実験において40〜50mmHgの圧力に反応するマウスを選抜した。異なる投与する薬物の種類及び投与量の条件ごとに、同一条件のマウス数匹ないし数十匹を投与後の一定時間間隔で、圧刺激を加え、疼痛反応閾値を測定した。疼痛反応閾値の測定値にもとづいて、次式:
% of MPE=(Pt−Po)/(Pc−Po)×100
(式中、Poは薬物投与前の疼痛反応閾値;Ptは薬物投与t分後の疼痛反応閾値;Pcは最大刺激圧である)にしたがって、percent of maximum possible effect(% of MPE)を算出し、抗侵害作用の定量化を行った。
【0124】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本実施例を参照し、あるいは本実施例の方法を修飾・変更することによって、あるいは出発原料または反応試薬を適宜選択することにより、一般式(1)で表される本発明の化合物を容易に製造することができる。実施例において、アミノ酸基の意味は通常用いられているものと同様である。D−体とL−体とが存在するアミノ酸が言及される場合、特にD−と表示していない場合には、そのアミノ酸はL−アミノ酸を意味する。また、以下の略語を使うことがあり、特に示していない場合にも同様な略語を用いる場合がある。なお、イミノメチル−[Phe]−、Boc−[Phe]−等の表記は、フェニルアラニンのアミノ末端の窒素原子がそれぞれイミノメチル基又はt−ブトキシカルボニル基で修飾されていることを示す。
【0125】
以下の実施例の説明において用いられる略語の意味は以下のとおりである。
Boc:t−ブトキシカルボニル(butoxycarbonyl)
BrZ:2−ブロモベンジルオキシカルボニル(bromobenzyloxycarbony1)
Bzl:ベンジル(benzyl)
DIEA:N,N−ジイソプロピルアミン(N,N−diisopropylethylamine)
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)
HCTU:1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5−[クロロ−1H−ベンゾトリアゾリウム 3−オキサイド ヘクサフルオロフォスホスフェート(1−[bis(dimethylamino)methylene]−5−chloro−1H−benzotriazolium 3−oxide hexafluorophoshate)
HOBt:1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(hydroxybenzotriazole)
HPLC:高速液体クロマトグラフィ−(high−performance liquid chromatography)
N−MeAbu:4−(メチルアミノ)酪酸(4−(methylamino)butyric acid)のNCH(CH−COOH
NMP:N−メチルアミノ−2−ピロリドン
TFA:トリフルオロ酢酸(trifluoroaceticacid)
【0126】
N−MeAbu:4−アミノ酪酸のアミノ基にメチル基が1つ結合した構造式の残基を指す。
D−Met(O):D−メチオニン(D−Met)の硫黄原子に酸素原子が1つ結合した残基を指す。
Merrifield(メリーフィールド)樹脂:クロロメチル化ポリスチレン(樹脂)
【0127】
<1.SS8225−27>
本明細書で実施例及び比較例として合成されたペプチド誘導体はイミノエチル-[Tyr]-[D-Met(O)]-[Phe]-[N-Me(CH)-CO]-OH(化学式を下記(式(12)14)に示す)。略号:SS8225−27)であり、比較例としてモルヒネを用いた。
【0128】
【化12】

【0129】
SS8225−27の合成は下記のように行った。
<2.出発アミノ酸誘導体の合成>
(1)出発アミノ酸誘導体:Boc−N−MeAbu−OHの合成(Boc−NCH(CH−C00Hの合成)
H−N−MAbu−OH・塩酸塩を水、アセトン混合溶媒に溶解し、冷却下、トリエチルアミン、(Boc)0を加え攪拌。反応終了後、反応液を濃縮し、残渣に酢酸エチルを加え、1N塩酸と水とによって洗浄。次に酢酸エチル抽出液より重曹水を用いて目的物をナトリウム塩とし転溶。この転溶水溶液に、酢酸エチルおよび1N塩酸を加え酢酸エチルで抽出し、水および飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後,溶媒を減圧濃縮してBoc−N−MeAbu−OHを固体として得た。
【0130】
(2)出発アミノ酸樹脂:Boc−N−MeAbu−Merrifield樹脂の合成
Boc−N−MeAbu−OHをエタノールに溶解し、炭酸セシウムと水を加え、攪拌。次いで、溶媒濃縮後、残渣にトルエンを加え水を共沸除去し、得られた油状物残渣を減圧乾燥しBoc−[N−MeAbu]−OHのセシウム塩を得た。つぎにこのBoc−[N−MeAbu]−OHのセシウム塩をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解しMerrifield樹脂を加え、50℃で加熱撹拝した。反応液をグラスフィル
ターにあけ,樹脂をろ取。DMF、90重量%DMF水溶液、DMF、エタノールで洗浄し,減圧乾燥してBoc−N−MeAbu−Merrifield樹脂を得た。
【0131】
<3.SS8225−27の合成>
上記保護ペプチド樹脂(Boc−N−MeAbu−Merrifield樹脂)をACT−90固相合成機を用い、Boc−[N−MeAbu]−Merrifield樹脂の窒素末端(N末端)Boc基をTFAで除去後、Boc−Phe、Boc−D−Met(0)そしてBoc−Tyr(BrZ)を順次縮合し、BOC−Tyr(BrZ)−D−Met(0)−Phe−N−MeAbu−MenAbu−Merrifield樹脂を合成した。
【0132】
すなわち、N末端Boc基の除去にはTFAを使用し、それぞれのアミノ酸、縮合剤(HCTU)、添加剤(HOBt)は、Boc−[N−MeAbu]−Merrifield樹脂に対し4当量、塩基(DIEA)は6当量を使用し、反応溶媒は、NMP及び塩化メチレンを使用した。
【0133】
次にBoc−Tyr(BrZ)−D−Met(O)Phe−N−MeAbu−Merrifield樹脂のBoc基除去後、アセトイミド酸エチル塩酸塩およびトリエチルアミンを作用させ、Iminoethyl−Tyr(BrZ)−D−Met(O)−Phe−N−MeAbu−Merrifield樹脂を得た。
【0134】
合成されたIminoethyl−Tyr(BrZ)−D−Met(O)−Phe−N−MeAbu−Merrifield樹脂を、無水フッ化水素/p−クレゾール(85/15体積比)で−3〜−5℃下60分間処理し、樹脂から切り出すとともに脱保護して,粗ペプチドを得た。
【0135】
得られた粗ペプチドを、逆相HPLCカラム(ODS ワイエムシィ社製)を用い、0,1%TFAを含む水−アセトニトリルの系でグラジエント溶出を行い精製した。
目的物を高純度に含む分画を集め凍結乾燥して、Iminoethyl−Tyr(BrZ)−D−Met(O)−Phe−N−MeAbu−OHのTFA塩を得た。
【0136】
最後にIminoethyl−Tyr(BrZ)−D−Met(O)−Phe−N−MeAbu−OHのTFA塩を1%酢酸水溶液に溶解し,イオン交換樹脂Muromac1x2(酢酸型)に負荷、1%酢酸水溶液で溶出後,凍結乾燥し、目的とするSS8225−27である、イミノエチル−[Tyr]−[D−Met(O)]−[Phe]−[N−Me(CH]−COOHの酢酸塩(白色粉末)を得た。
【0137】
<4.SS8225−27の解析結果>
上記SS8225−27(酢酸塩)のHPLCによるクロマトグラムを図1に示す。
【0138】
また、SS8225−27のNMR解析データは、日本電子JEOLJNM−EX270を用いて、270MHz、室温で測定された。
SS8225−27(実施例)のNMR解析データを図2に示す。
【0139】
さらに、SS8225−27についての元素分析値は炭素54.02重量%、水素6.57重量%、窒素9.31重量%であり、C30S・1.9AcOH・1.2HOとしたときの炭素54.02重量%、水素6.84重量%、窒素9.32重量%とよく一致した。
【0140】
また、SS8225−27について、加水分解(6N HCl、フェノール共存下、110℃、22時間)を行い、アミノ酸分析を行った。
結果を表1に示す。
【0141】
【表1】

【0142】
質量分分析を行った。結果を下に示す。
ESI−MS、 615.3 308.7
(計算値[M+ηH]monoiso./η:616.280(n=1)、308.644(n=2))
【0143】
<5.抗侵害作用試験、(テイル・フリック法での評価)>
(1)実験動物体重22〜25gのddY系雄性マウス(日本SLC)を実験動物として使用した。動物は、実験に供するまで室温22±2℃、湿度55±5%、明暗12時間サイクル(明期9:00〜21:00、暗期21:00〜9:00)の一定環境で飼育された。なお、動物はマウス用固形飼料(F2、船橋農場、船橋市)および水道水を自由に摂取させた。
【0144】
(2)投与薬物及び投与方法
上記のとおり合成されたSS8225−27と、比較例としてモルヒネとを投与薬物として用いた。投与液は、マウスの体重1kgあたり0.089〜10mg(mg/kg)のSS8225−27を、マウスの体重1kgあたり1.25〜67.5mg(mg/kg)のモルヒネの投与量条件にあわせて、マウス体重10gあたり0.1mLとなるように、それぞれの薬物の濃度を調整してリンゲル液に希釈した。また、リンゲル液だけの投与液を実験対照として用いた。
【0145】
マウスを測定環境に慣れさせるために60分間測定プラスチックケージ内に放置してから以下で説明するテイル・フリック法にしたがってマウス各個体について薬物投与前の潜時を測定した。マウス尾先端部より2cmの部分に輻射熱照射を行い、その熱刺激に対してマウス各個体が尾を振るまでの時間を薬物投与前の潜時として測定した。薬物投与前の潜時が2.5−3.5秒のマウス個体を薬物投与用に選択した。
【0146】
1つの投与量条件の投与液を10匹のマウスに投与して、1つの実験群とした。マウスの各個体について体重を測定し、マウス体重10gあたり0.1mLとなるように、前記投与液の体積を調整して投与した。投与方法は、皮下投与(s.c.)又は経口投与(p.o.)の2種類の投与方法を用いた。
【0147】
皮下投与には、27番ゲージ注射針を用いて、マウス体重10gあたり0.1mL(O.1mL/10g)の投与液をマウス後背部に注射した。経口投与には、マウス体重10gあたり0.1mL(0.1mL/10g)の投与液を経ロゾンデを用いて投与した。
【0148】
(3)抗侵害作用の評価方法抗侵害効果の指標として、熱侵害刺激であるテイル・フリック法を用いてそれぞれの薬物のそれぞれの投与方法及び投与量の条件ごとの抗侵害作用を定量的に評価した。薬物投与後、15、30又は60分の間隔を置いて設定した測定時間ごとに、それぞれの薬物のそれぞれの投与方法及び投与量の条件ごとの実験群について、マウス尾先端部より2cmの部分に輻射熱照射を行い、マウス各個体が尾を振るまでの潜時を測定し、該潜時を仮性疼痛閾値とした。刺激部位の損傷を最小限にするため、最長刺激時間(cut−offtime)は10秒とした。抗侵害作用は、下記の数式(I)から算出される%MPE(% of maximum possible effect)によって定量的に評価した。
【0149】
[数1]
(T2−T1)
%MPE=───────── ×100 ……(I)
(Tc−T1)
【0150】
上記の式において、T1は薬物投与前の潜時(秒)、T2は薬物投与後の潜時(秒)、Tcは最大刺激時間(cut−off time)を意味する。
【0151】
各薬物の投与量条件ごとに10匹のマウスの各個体の%MPEを算出し、その平均値および標準誤差(mean±S.E.M.)を縦軸に、投与後の時間を横軸にプロットして、%MPEの経時変化を示すグラフを作成した(図3、図5、図7及び図9)。各薬物ごとに同じ測定時間における、それぞれの投与量での実験群の各個体の%MPEデータと、対照実験のリンゲル液での実験群の各個体の%MPEデータとを二元配置の分散分析(two−way ANOVA)により処理した後、Bonferroni post−testに従って、危険率5%未満を有意差ありと判断した。
【0152】
本明細書において、それぞれの投与量条件での抗侵害作用の持続時間は、図3、図5、図7、及び、図9の%MPEの経時変化を示すグラフにおいて、各投与量条件の%MPEの経時変化を示す曲線について、投与後、最初にリンゲル液の対照と比べて抗侵害作用の有意差が5%未満になった時点から、最後に抗侵害作用の有意差が5%未満であった時点までの時間をいう。本明細書において、各薬物について抗侵害作用の持続時間とは、最も持続時間が長い投与量条件での抗侵害作用の持続時間をいう。
【0153】
各薬物について、投与量条件ごとの%MPEの経時変化のデータを、曲線解析プログラム(GraphPad Prismソフトウェア、バージョン3.0、GraphPadSoftware、米国カリフォルニア州サンジエゴ市)を用いて解析し、50%有効用量(ED50)とその95%信頼限界を算出して、用量−反応曲線のグラフを作成した。ED50はmg/kgの単位で表された。本明細書において、それぞれの薬物のそれぞれの投与方法ごとのED50とは、それぞれの薬物・投与方法について薬効が最も強い投与量条件でのED50値、すなわち、各投与量条件でのED50のうち最小値を指す。本明細書において各薬物の抗侵害作用の強弱を比較する際には、ある薬物のED50値が別の薬物のED50値の何倍であるかで表す。
【0154】
(4)抗侵害作用試験の結果、実施例及び比較例についてのテイル・フリック法による抗侵害作用試験の結果を以下の表3及び図2、図5、及び、図7に示す。これらの%MPEの経時変化を示すグラフでは投与量条件及び投与後時間ごとにプロットされた標準偏差の上限に*が付されている場合には、その投与量条件ではリンゲル液の対照と比べた抗侵害作用の有意差が危険率5%未満であることを意味する。
【0155】
これらの図から、それぞれの薬物について、皮下投与及び経口投与における抗侵害作用の経時変化の曲線が最大になる時間をピーク作用時間として求めることができる。表2における実施例及び比較例について、皮下ED50及び経口ED50の欄は、かっこの外の数値がそれぞれの薬物について作用ピーク時間におけるED50、すなわち、50%有効用量を表し、かっこ内の範囲が作用ピーク時間におけるED50の95%信頼限界を表す。抗侵害作用が弱いために、皮下投与でのED50が0.5mg/kgより大きい場合には「>0.5」と表され、経口投与でのED50が10mg/kgより大きい場合には「>10」と表される。
【0156】
【表2】

【0157】
上記グラフのうち、図3、図4、図7、及び、図8は皮下投与の試験結果を表すグラフであり、図5、図6、図9及び図10は経ロ投与の試験結果を表すグラフである。これらのうち、図番号が奇数のグラフは投与後の抗侵害作用の経時的変化を示し、縦軸は%MPE(単位はなし)、横軸は時間(単位は分)である。B及びDは用量−反応曲線を示し、縦軸は%MPE、横軸は投与量(単位はmg/kg)である。
【0158】
<実施例>
図3及び図4は、実施例(SS8225−27:イミノエチル-[Tyr]-[D-Met(O)]-[Phe]-[N-Me(CH)-CO]-OH)を皮下投与した場合の抗侵害作用試験の結果を示す。ペプチド誘導体SS8225−27の皮下投与により、用量依存的かつ有意な抗侵害作用が発現した。作用ピーク時間である皮下投与後90分におけるED50値は0.20mg/kgで、95%信頼限界は0.11−0.37mg/kgであり、0.5mg/kgおよび0.25mg/kg皮下投与による持続時間は8時間以上であった。
【0159】
図5及び図6は、実施例(SS8225−27)を経口投与した場合の抗侵害作用試験の結果を示す。ペプチド誘導体SS8225−27の経口投与により、用量依存的かつ有意な抗侵害作用が発現した。作用ピーク時間である皮下投与後180分におけるED50値は3.2mg/kgで、95%信頼限界は0.25−40.3mg/kgであり、10mg/kgおよび5.0mg/kg皮下投与による持続時間は9時間以上であった。
また、経口投与でのED50値と皮下投与とのED50値との比は1:15.5出会った。
【0160】
<比較例>
図7及び図8は、比較例(モルヒネ)を皮下投与した場合の抗侵害作用試験の結果を示す。モルヒネの皮下投与により、用量依存的かつ有意な抗侵害作用が発現した。作用ピーク時間である皮下投与後30分におけるED50値は1.67mg/kgで、95%信頼限界は0.97−2.9mg/kgであり、5mg/kg皮下投与による持続時間は90分であった。図9及び図10は、比較例(モルヒネ)を経口投与した場合の抗侵害作用試験の結果を示す。経口投与時においても、用量依存的かつ有意な抗侵害作用が発現した。作用ピーク時間である経口投与後60分におけるED50値は32.5mg/kgで、95%信頼限界は22.0−47.9mg/kgであり、67.5mg/kg経口投与による持続時間は5時間であった。
【0161】
また、経口投与でのED50値と皮下投与とのED50値との比は1:19.4であった。
【0162】
これら投与薬剤における経口投与、及び、皮下投与での結果より、本発明にかかるペプチド誘導体によれば、経口投与及び皮下投与ともにモルヒネに比べ高い抗侵害作用を得られること、また、作用時間もモルヒネに比べ著しく長いこと、さらに、本発明にかかるペプチド誘導体経口投与による抗侵害作用は、皮下投与による抗侵害作用に比べより多くの投与を必要とするものの、その比率は、モルヒネに比して小さくなることが判る。
【0163】
<ラットでの効果確認>
ラットに対して皮下投与を行い、鎮痛効力の発言の有無を見た。
上記のとおり合成されたSS8225−27をラットに対し、1mg/kgとなるように、皮下投与を行い、マウスと同様に抗侵害作用試験を行った。
【0164】
投与120分後から最大秒数15秒としても反応はみられず、投与180分後まで、この作用は持続した。投与480分後には投与を行わないレベルである3.8秒に戻った。
【0165】
また1mg/kgとなるように、皮下投与を行った例では投与60分後から最大秒数15秒としても反応はみられず、240分後には4.4秒の反応を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)

N=C(R)−AA−AA−AA−AA−Y
(1)

で表される化合物又はその薬学的に許容できる塩であって、
上記Rは、水素原子、ヒドロキシル基、低級アルキル基、及び、低級アルコキシル基から選ばれる1つであり、上記Rは、低級アルキル基であり、上記Yは、下記の化学式(2)で表されるヒドロキシル基である。
−OH
(2)
上記AAは下記の化学式(3)
【化1】

で表されるα−アミノ酸残基であり、
化学式(3)において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、及び、ハロゲン化低級アルキル基から選ばれる1つであり、
化学式(3)において、Xは、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、下記の化学式(4)で表される基、及び、下記の化学式(5)で表される基

−O−CO−R
(4)

−O−CO−O−R
(5)

から選ばれる1つであり、化学式(4)のR、及び、化学式(5)のRは、それぞれ独立に、C1−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノC1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、複素環基、アリール基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つであり、
上記AAは下記の化学式(6)
【化2】

で表されるD−α−アミノ酸残基であり、化学式(6)において、Rは、アミノ基、(モノ低級アルキル)アミノ基、低級アシルアミノ基、グアニジノ基、低級アルキル基置換グアニジノ基、イミノ低級アルキル基、ウレイド基、低級アルキル基置換ウレイド基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アシル基、及び、ヒドロキシ低級アルキル基から選ばれる1つであり、nは1〜4の整数であり、AAは非置換フェニルアラニン残基、置換フェニルアラニン残基、非置換D−フェニルアラニン残基、及び、置換D−フェニルアラニン残基から選ばれる1つであり、
上記AAは、下記の化学式(7)
−N(R)−CH(R)−CH(R10)−(−CH(R11)−)−CO−
(7)

で表されるβ−アミノ酸残基(式中mは正の整数)であり、
化学式(7)において、R、R10、及び、R11は、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルキニル基、アリール基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つであり、
上記Rは、水素原子、または、下記の化学式(8)

−Z−N(R12)−R13
(8)

で表される基であり、
化学式(8)において、Zは、低級アルキレン基、低級アルケニレン基、及び、低級アルキニレン基から選ばれる1つであり、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、低級アルキル基、アリール基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つ、または、R12及びR13はこれらが結合する窒素原子と一緒になった5員又は6員の含窒素複素環基である、化学式(1)で表される化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
上記Rが、水素原子である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項3】
上記Rはメチル基又はエチル基である、請求項1又は2に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項4】
上記AAは、下記の化学式(9)
【化3】

で表されるα−アミノ酸残基、または、化学式(10)
【化4】

で表されるD−α−アミノ酸残基であり、上記化学式(9)及び(10)において、R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基、及び、ハロゲン化低級アルキル基から選ばれる1つである、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項5】
上記AAは、フェニルアラニン残基、D−フェニルアラニン残基、p−フルオロフェニルアラニン残基、D−p−フルオロフェニルアラニン残基、o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基、D−o−トリフルオロメチルフェニルアラニン残基、及び、2,6−ジメチルフェニルアラニン残基からなる群から選ばれるアミノ酸残基である、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項6】
上記AAはγ−アミノ酪酸残基、または、δ−アミノバレリン酸残基である、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項7】
上記化学式(3)において、Xが、ヒドロキシル基である、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項8】
上記化学式(3)において、Xは、水素原子、または、ハロゲン原子である、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項9】
上記化学式(3)において、Xは、化学式(4)、または、化学式(5)で表され、化学式(4)におけるR、および、化学式(5)におけるRは、それぞれ独立に、C1−16アルキル基、ヒドロキシC1−16アルキル基、アミノC1−16アルキル基、(モノ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、(ジ低級アルキル)アミノC1−16アルキル基、C3−10シクロアルキル基、C3−10シクロアルキル置換低級アルキル基、C2−16アルケニル基、C2−16アルキニル基、アリール基、複素環基、及び、アリール置換低級アルキル基から選ばれる1つである、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項10】
上記AAは、チロシン残基、2,6−ジメチル−チロシン残基、o−アシル−チロシン残基、o−アルコキシカルボニル−チロシン残基、o−フェノキシカルボニル−チロシン残基、o−アセチルチロシン残基、及び、2,6−ジメチル−フェニルアラニン残基から選ばれる1つである、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項11】
上記AAは、D−メチオニンスルホキシド残基、D−アルギニン残基、及び、D−シトルリン残基から選ばれる1つである、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項12】
上記AAは、D−N−アセチルオルニチン残基、D−5−オキソノルロイシン残基、及び、D−5−ヒドロキシノルロイシン残基から選ばれる1つである、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項13】
上記Rは水素原子であり、上記Rはメチル基であり、上記AAはo−アセチルチロシン残基であり、上記AAはD−メチオニンスルホキシド残基又はD−アルギニン残基であり、上記AAはフェニルアラニン残基であり、上記AAはγ−アミノ酪酸残基、または、δ−アミノバレリン酸残基であり、上記Yはヒドロキシル基である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項14】
上記Rは水素原子であり、上記Rはメチル基であり、上記AAはチロシン残基であり、上記AAはD−メチオニンスルホキシド残基又はD−アルギニン残基であり、上記AAはフェニルアラニン残基であり、上記AAはγ−アミノ酪酸残基、または、δ−アミノバレリン酸残基であり、上記Yはヒドロキシル基である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項15】
上記Rは水素原子であり、上記Rはメチル基であり、上記AAはチロシン残基であり、上記AAはD−5−ヒドロキシノルロイシン残基であり、上記AAはフェニルアラニン残基であり、上記AAはγ−アミノ酪酸残基、または、δ−アミノバレリン酸残基であり、上記Yはヒドロキシル基である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項16】
上記Rは水素原子であり、上記Rはメチル基であり、上記AAは2,6−ジメチル−チロシン残基であり、上記AAはD−メチオニルスルホキシド残基あるいはD−アルギニン残基であり、上記AAはフェニルアラニン残基であり、上記AAはγ−アミノ酪酸残基、または、δ−アミノバレリン酸残基であり、上記Yはヒドロキシル基である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項17】
請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩の少なくとも1つを有効成分として含む医薬物組成物。
【請求項18】
請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載の化合物またはその薬学的に許容できる塩の少なくとも1つと、薬学的に許容できる担体と、を含む医薬品組成物。
【請求項19】
疼痛の予防及び/又は治療に用いる、請求項17又は請求項18に記載の医薬品組成物。
【請求項20】
上記疼痛が癌性疼痛であることを特徴とする請求項19に記載の医薬品組成物。
【請求項21】
上記疼痛が神経因性疼痛であることを特徴とする請求項19に記載の医薬品組成物。
【請求項22】
上記疼痛が変形性膝関節症による疼痛であることを特徴とする請求項19に記載の医薬品組成物。
【請求項23】
上記疼痛が関節リウマチによる疼痛であることを特徴とする請求項19に記載の医薬品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−248153(P2010−248153A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101184(P2009−101184)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(306008584)
【出願人】(503118930)株式会社ヴェクソン (2)
【Fターム(参考)】