説明

ペプチド

【課題】医療ならびに環境衛生分野における感染予防ならびに感染症の治療や発生率を低減させるために使用することができるペプチドおよびそれを含む抗菌性組成物ならびに抗菌性医薬を提供する。
【解決手段】ペプチドは、式[I]:Ile-Leu-Arg-X1-X2-X3-X4-X5-X6-Arg-Arg-X7-(X8)n(式中、X1はTrpまたはチオトリプトファン(Ws)、X2はProまたはAla、X3はTrpまたはWs、X4はTrp、WsまたはLys、X5はProまたはAla、X6はTrpまたはWs、X7はLysまたはTrp、X8はAla-X9-Ala-Ala(X9はAlaまたはArg)を意味する。nは0または1で、それぞれのアミノ酸はL体またはD体である。ただし、X1、X3、X4およびX6がTrp、X2およびX5がPro、X7がLysで、かつ、アミノ酸がL-体である場合、nは1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に多様な医療用途ならびに環境衛生用途などに使用できるペプチドに関するものである。更に詳細には、この発明は、特に多様な医療ならびに環境衛生分野における感染予防ならびに感染症の治療や発生率を低減させるためなどに使用することができるペプチド、特に抗菌ペプチドおよびそれを含む抗菌性組成物ならびにそれらを含む抗菌性医薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
細菌、真菌、ウイルスなどによる感染症に対して有効な数多くの抗生物質などの医薬品が開発され、医療分野や環境衛生分野で使用されている。そのように様々な細菌などに有効な抗生物質などが使用されているにも拘わらず、毎年、発展途上国ばかりではなく、先進国においても、数多くの人が様々な細菌、真菌、ウイルスなどを起因菌とする感染症に感染し、感染症によって死亡している。
【0003】
また、医療分野や環境衛生分野などの現場においては、これまで様々な感染症予防対策が取られてきて、医療施設内などでの感染流行を予防する目的のための感染管理の取り組みがなされてきている。しかしながら、かかる現場では、万全な感染症予防対策や感染管理が取られているにも拘わらず、院内感染、日和見感染などによる感染症対策や感染管理の難問に直面しているのも実状である。
【0004】
さらに、医療現場などでは、様々な医療機器や用具などが頻繁に使用されている。現在では、数多くの移植可能なまたは長期間留置可能な医療機器や用具、例えば、縫合具、整形器具、ステント、カテーテル、ガイドワイヤ、シャント、人工心臓弁、人工関節、心臓のペースメーカーなどが使用されている。しかしながら、これらの医療機器や用具などが感染症の主要な原因の一つとなっているのも事実である。
【0005】
このような医療分野や環境衛生分野などにおける現場での上記したような諸問題は、抗生物質などの医薬品の頻繁な使用や多種類の医薬品の多用などによる感染症の起因となる細菌、真菌、ウイルスなどの微生物による薬剤に対する耐性の取得などにより、かかる医薬品の薬剤に対する有効性が減少したり、効果が失われたりしたことが原因の1つと挙げられる。さらに、現在では、単独の微生物が数種類の薬剤に対して同時に耐性を有するいわゆる多剤耐性菌の出現により、感染症対策をより困難にしている。
【0006】
そこで、従来の抗生物質のように既に耐性を有する耐性菌が出現している薬剤とは異なるタイプの薬剤が求められてきた。かかる要望に応えるべくして開発されている薬剤の1つとして、いわゆる抗菌ペプチドが、これまでの抗生物質を補完もしくは代替する物質として注目を浴びている。
【0007】
抗菌ペプチドは、生物が、外界の微生物に対して自らを防御するために本来備えている生体防御機構の一つである。この抗菌ペプチドは、生物が自ら産生しているものであるため、生体に対する副作用や阻害作用は有してないかもしくは極めて小さく、しかも細菌、真菌などに対して広範囲な抗菌スペクトルを有している。
【0008】
かかる抗菌ペプチドとしては、例えば、バクテネシン、ディフェンシン,インドリシジン、シンヒスタチン、ラクトフェリンならびにその分解産物のラクトフリシン、マガイニン、セイクロピン、メリチチン、マキュラチンなどの天然由来の抗菌性ペプチド、およびヒスタチン誘導体などの合成抗菌性ペプチドなどが知られている(例えば、非特許文献1、特許文献1−10参照)。
【0009】
これら抗菌ペプチドのうち、インドリシジンは、ウシ好中球から単離され、その天然形態中のカルボキシ末端でアミデート化された、トリプトファンに富む(トリプトファンリッチな)13アミノ酸からなる広域スペクトル抗菌活性を示すペプチドである(例えば、非特許文献2、特許文献4参照)。しかし、インドリシジン自体は、毒性を有していることから、より毒性が低く、かつ、広域スペクトル抗菌活性を示すインドリシジン類似体の研究がなされてきた(例えば、特許文献3−6参照)。これらのペプチドのうち、現在、インドリシジンの類似体の1つである合成カチオン性抗菌ペプチドであるオミガナン (Ominagan pentahydrochloride) が、カテーテル用局所感染予防薬として開発されている(例えば、非特許文献2、3、4参照)。
【非特許文献1】FEBS Lett., 449, 105-110, 1999
【非特許文献2】Selsted, et al.; J.Biol.Chem.267:4292,1992
【非特許文献3】Sadar, H. S., et al.; Antimicrob. Agents Chemother. 2004 August, 48(8): 3112-3118
【非特許文献4】Melo, M. N., et al.; Recent Patents on Anti-Infective Drug Discovery, Volume 1, Number 2, June 2006, pp. 201-207(7), published by Bentham Science Publishers
【特許文献1】特表平8−508165号公報
【特許文献2】特表平9−509175号公報
【特許文献3】特開2001−172297号公報
【特許文献4】特表2001−500477号公報
【特許文献5】WO−A1−98007745号公報
【特許文献6】特開2002−515403号公報
【特許文献7】特開2002−179698号公報
【特許文献8】特開2003−52365号公報
【特許文献9】特開2005−154338号公報
【特許文献10】米国特許第4543252号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者らは、鋭意研究・検討の結果、既存の抗菌ペプチドのうち、トリプトファンに富む(トリプトファンリッチ)ペプチドであるインドリシジンの類似体の合成ペプチドを更に作成して、その合成ペプチドの細菌、真菌、ウイルスに対する抗菌ならびに抗ウイルス活性などを調べた結果、これらのペプチドが、オミガナンより高いまたは同等の細菌、真菌、ウイルスなどに対して有効な抗菌、抗ウイルス活性などを有していること、かつ、特に院内感染の起因菌でもあるグラム陽性菌などに対しても有効な増殖抑制活性を有していることを見出して、この発明を完成するに至った。
【0011】
したがって、この発明は、細菌、真菌および/またはウイルスなどに対して抗菌および/または抗ウイルス活性などを有する新規ペプチド、その誘導体ならびにその塩を提供することを目的としている。
【0012】
さらに具体的には、この発明は、トリプトファンに富む(トリプトファンリッチ)ペプチドであるインドリシジンの類似体であるペプチドであって、細菌、真菌、ウイルスなどに対して高い抗菌活性、抗ウイルス活性などを有するとともに、特に抗生物質に対する耐性を有するグラム陽性菌などに対しても有効な増殖抑制活性を有しているペプチド、その誘導体ならびにその塩を提供することを目的としている。
【0013】
なお、本明細書において単に「ペプチド」と記載した場合でも、特記ない場合には、その「ペプチド」という用語は、そのペプチドの誘導体ならびに塩をも包含した意味で使用しているものと理解することができる。
【0014】
この発明は、上記ペプチドと、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤および/または抗寄生虫剤などとからなる抗菌性組成物および上記ペプチドならびに/または上記抗菌性組成物を少なくとも1種含有する抗菌性医薬を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、この発明は、一般式 [I]:
Ile-Leu-Arg-X1-X2-X3-X4-X5-X6-Arg-Arg-X7-(X8)n [I](配列番号1)
(式中、X1 はトリプトファン (Trp) または化学式 [II]:
【0016】
【化2】

で表されるチオトリプトファン (Ws) を意味し;
X2 はプロリン (Pro) またはアラニン (Ala) を意味し;
X3 はトリプトファン (Trp) またはチオトリプトファン (Ws) を意味し;
X4 はトリプトファン (Trp)、チオトリプトファン (Ws) またはリジン (Lys) を意味し;
X5 はプロリン (Pro) またはアラニン (Ala) を意味し;
X6 はトリプトファン (Trp) またはチオトリプトファン (Ws) を意味し;
X7 はリジン (Lys) またはトリプトファン(Trp) を意味し;
X8 は Ala - X9 - Ala - Ala(式中、X9 は Ala または Arg を意味する)(配列番号2)を意味し;
n は0または1を意味し;および
それぞれのアミノ酸が L− 体または D− 体である)を意味し;
ただし、X1、X3、X4 および X6 がそれぞれトリプトファン (Trp) を意味し;X2 および X5 がそれぞれプロリン(Pro) を意味し;X7 がリジン (Lys) を意味し、かつ、それぞれのアミノ酸が L− 体である場合は、n は1を意味する)
で表されるペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を提供する。
【0017】
この発明は、下記式[III]〜[VIII]で表されるいずれかのアミノ配列を有するペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩を提供する。
Ile-Leu-Arg-Ws-Pro-Ws-Ws-Pro-Ws-Arg-Arg-Lys [III](配列番号3)
Ile-Leu-Arg-Trp-Pro-Trp-Trp-Pro-Trp-Arg-Arg-Lys-Ala-Ala-Ala-Ala
[IV](配列番号4)
Ile-Leu-Arg-Trp-Ala-Trp-Lys-Ala-Trp-Arg-Arg-Trp-Ala-Ala-Ala-Ala
[V] (配列番号5)
Ile-Leu-Arg-Ws-Pro-Ws-Ws-Pro-Ws-Arg-Arg-Lys-Ala-Ala-Ala-Ala
[VI](配列番号6)
Ile-Leu-Arg-Trp-Ala-Trp-Lys-Ala-Trp-Arg-Arg-Trp-Ala-Arg-Ala-Ala
[VII](配列番号7)
Ile-Leu-Arg-Trp-Pro-Trp-Trp-Pro-Trp-Arg-Arg-Lys (全てD− 体)
[VIII] (配列番号8)
(式中、Wsは上記と同じ意味を有する)。
【0018】
この発明は、上記ペプチドのアミノ酸配列を含む12個〜40個、好ましくは12個〜30個、より好ましくは12個〜20個、特に好ましくは12個〜16個のアミノ酸配列からなるペプチド、もしくはその誘導体またはそれらの塩を提供する。
【0019】
この発明は、より好ましい態様として、上記ペプチドが、細菌、真菌および/またはウイルスに対して抗菌活性、抗ウイルス活性、または、特にグラム陽性菌に対する増殖抑制活性、あるいはこれらの組合せの活性を有するペプチドを提供する。
【0020】
この発明は、その別の形態として、上記ペプチドと、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤および/または抗寄生虫剤などとからなる抗菌性組成物を提供する。
【0021】
この発明は、その別の形態として、上記ペプチドおよび/または上記抗菌性組成物を少なくとも1種含有する抗菌性医薬を提供する。
【発明の効果】
【0022】
この発明に係るペプチドは、細菌、真菌および/またはウイルスなどに対して抗菌活性、抗ウイルス活性、または、特にグラム陽性菌に対する増殖抑制活性、あるいはこれらの組合せの活性を有するので、細菌、真菌および/またはウイルスなどによる感染に対して極めて有効であり、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤および/または抗寄生虫剤などと併用することにより、様々な感染症の予防ならびに治療に有効に適用することができる。さらに、この発明のペプチドは、従来の抗生物質とは異なるタイプの抗菌ペプチドであるところから、従来の抗生物質に対して耐性を持つ細菌、真菌などに対しても有効であるという大きな利点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明は、細菌、真菌および/またはウイルスなどに対して抗菌ならびに/もしくは抗ウイルス活性または、特にグラム陽性菌に対する増殖抑制活性を有する、細菌、真菌および/またはウイルスなどによる感染に対して極めて有効な抗菌ペプチド;また抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤および/または抗寄生虫剤などと併用することにより、様々な感染症の予防ならびに治療に有効に適用することができる抗菌ペプチド含有抗菌性組成物;および上記抗菌ペプチドまたは上記抗菌性組成物を含む抗菌性医薬に関するものである。さらに、この発明のペプチドは、従来の抗生物質とは異なるタイプの抗菌ペプチドであるところから、従来の抗生物質に対して耐性を持つ細菌、真菌などに対しても有効であるという大きな利点を有している。
【0024】
この発明に係るペプチドは、一般式 [I]:
Ile-Leu-Arg-X1-X2-X3-X4-X5-X6-Arg-Arg-X7-(X8)n [I] (配列番号1)
(式中、X1 はトリプトファン (Trp) または化学式 [II]:
【化3】

で表されるチオトリプトファン (Ws) を意味し;
X2 はプロリン (Pro) またはアラニン (Ala) を意味し;
X3 はトリプトファン (Trp) またはチオトリプトファン (Ws) を意味し;
X4 はトリプトファン (Trp)、チオトリプトファン (Ws) またはリジン (Lys) を意味し;
X5 はプロリン (Pro) またはアラニン (Ala) を意味し;
X6 はトリプトファン (Trp) またはチオトリプトファン (Ws) を意味し;
X7 はリジン (Lys) またはトリプトファン(Trp) を意味し;
X8 は Ala - X9 - Ala - Ala (式中、X9 は Ala または Arg を意味する)(配列番号2)を意味し;
n は0または1を意味し;および
それぞれのアミノ酸が L− 体または D− 体である)を意味し;
ただし、X1、X3、X4 および X6 がそれぞれトリプトファン (Trp) を意味し;X2 および X5 がそれぞれプロリン(Pro) を意味し;X7 がリジン (Lys) を意味し、かつ、それぞれのアミノ酸が L− 体である場合は、n は1を意味する)
で表されるペプチドまたはその誘導体もしくはその塩からなるペプチドである。
【0025】
より具体的には、この発明のペプチドは、下記式[III]〜[VIII]で表されるいずれかのアミノ配列を有するペプチド、その誘導体もしくはその塩からなっている。
Ile-Leu-Arg-Ws-Pro-Ws-Ws-Pro-Ws-Arg-Arg-Lys [III](配列番号3)
Ile-Leu-Arg-Trp-Pro-Trp-Trp-Pro-Trp-Arg-Arg-Lys-Ala-Ala-Ala-Ala
[IV](配列番号4)
Ile-Leu-Arg-Trp-Ala-Trp-Lys-Ala-Trp-Arg-Arg-Trp-Ala-Ala-Ala-Ala
[V] (配列番号5)
Ile-Leu-Arg-Ws-Pro-Ws-Ws-Pro-Ws-Arg-Arg-Lys-Ala-Ala-Ala-Ala
[VI](配列番号6)
Ile-Leu-Arg-Trp-Ala-Trp-Lys-Ala-Trp-Arg-Arg-Trp-Ala-Arg-Ala-Ala
[VII](配列番号7)
Ile-Leu-Arg-Trp-Pro-Trp-Trp-Pro-Trp-Arg-Arg-Lys (全てD− 体)
[VIII] (配列番号8)
(式中、Wsは上記と同じ意味を有する)。
【0026】
なお、この発明に係るペプチドにおいて、上記のように、Wsで表されるチオトリプトファン[II]は、トリプトファンのインドール環の窒素原子が硫黄原子に置換された非天然アミノ酸である。
【0027】
また、この発明のペプチドは、そのアミノ配列のアミノ酸が、12個〜40個、好ましくは12個〜30個、より好ましくは12個〜20個、特に好ましくは12個〜16個であるのがよい。本発明のペプチドは、上記一般式で表される12個〜16個のアミノ酸からなるアミノ酸配列を有し、かつ、この発明の目的である抗菌活性や抗ウイルス活性などの抗微生物活性を有する限り、その他のアミノ酸の種類については特に限定されるものではなく、任意のアミノ酸から選択することができる。
【0028】
この発明に係るペプチドは、一般に、当該技術分野で慣用されているペプチド化学合成法などに従って製造することができる。また、このペプチド化学合成法には、固相合成法と液相合成法とがあるが(例えば、固相合成法や液相合成法等;泉屋信夫、加藤哲夫、青柳東彦、脇 道典、「ペプチド合成の基礎と実験」1985、丸善(株)参照)、現在では固相合成法が通常使用されている。また、市販のペプチド合成装置(例えば、自動ペプチド合成機(PTI−PS3:アロカ株式会社製;PSSM-8:島津製作所製)などを使用してもよい。
【0029】
このペプチド固相合成の一般的な法は、簡単に説明すると、アミノ酸のカルボキシル末端を不溶性固体樹脂に固定し、アミノ酸を1つずつ、活性エステル化法などにより順次縮合してペプチド鎖を伸長させた後に樹脂から脱離させて目的ペプチドを合成する方法である。
【0030】
より詳細には、この発明のペプチドは、例えば、目的とするペプチドの末端となるアミノ酸のN末端α−アミノ基(Nα基)を9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)やt−ブチルオキシカルボニル基(Boc基)などの保護基で保護するとともに、そのアミノ酸のカルボキシル基を1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)などでエステル化などして活性化させて、直接あるいは、場合に応じて、スペーサーを介して、クロロメチル基あるいはオキシメチル基を有するクロロメチル樹脂(クロロメチル化スチレン−ジビニルベンゼン共重合体)、スーパーアシッドラベイルポリエチレングリコール (Fmoc-NH-SAL (super acid-labile) 樹脂、スーパーアシッドラベイルポリエチレングリコール (Fmoc-NH-SAL-PEG (polyethyleneglycol) 樹脂などの不溶性固体樹脂に固定した後、固定した保護アミノ酸からピペリジンなどの塩基を用いてNα-保護基を除去し、固定した保護アミノ酸のアミノ基と、隣接する第2の保護アミノ酸(Nα-アミノ基及び側鎖官能基を保護基で同様に保護したアミノ酸)のカルボキシル基とを縮合してペプチド結合し、得られた第2の保護アミノ酸のNα-保護基を脱離し、同様にその他のアミノ酸を順次縮合して目的のペプチド鎖を作成し、次いで不溶性樹脂およびアミノ酸のNα-アミノ基及び側鎖官能基の保護基を脱離させて合成することができる。
【0031】
この発明のペプチドは、上記活性エステル法に加えて、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、DCC法、酸化還元法等などの方法によっても化学合成することができる。
【0032】
この発明のペプチドは、そのアミノ酸配列の一部が化学修飾された誘導体であってもよく、また非天然のアミノ酸を含むその他のアミノ酸によって置換された誘導体であってもよい。ここで、本明細書で用いる「化学修飾」とは、化学試薬をペプチドに反応させ、主にアミノ酸残基の側鎖の化学構造を変えることをいう(大野素徳・金岡祐一・崎山文夫・前田浩 著、生物化学実験法 12、蛋白質の化学修飾(上)、学会出版センター)。この発明において、アミノ酸配列の一部を化学修飾された誘導体としては、例えば、アミノ酸のα炭素をメチル化したもの、またはアミノ酸のC末端をエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミンなどのアルキルアミンによってアミデート化したもの、アミノ酸側鎖の修飾したもの、例えばリジンのεアミノ基をアシル化したものなどが含まれる。さらに、この発明のペプチド誘導体は、特に医薬用途として有用であることから、薬理学的に許容される誘導体であることが好ましい。なお、化学修飾されたアミノ酸配列を含むペプチドの修飾部分は、ペプチド本来の活性には影響せず、他の効果として作用する(Yamaguchi, H. et al., Biosci. Biotechnol. Biochem., 67 (10), 2269-2272, 2003)。
【0033】
また、この発明のペプチドには塩の形態も包含される。その塩としては、生理学的に許容される酸付加塩または塩基性塩が好ましい。酸付加塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸等の無機酸との塩、あるいは酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸との塩などが挙げられる。塩基性塩としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム等の無機塩基との塩、あるいはカフェイン、ピペリジン、トリメチルアミン、ピリジン等の有機塩基との塩が挙げられる。これらの塩のうち薬学的に許容される塩が好ましい。これらの塩は、塩酸などの適切な酸、あるいは水酸化ナトリウムなどの適切な塩基を用いて調製することができる。例えば、水中、またはメタノール、エタノールもしくはジオキサンなどの不活性な水混和性有機溶媒を含む液体中で、標準的なプロトコルを用いて処理することにより調製することができる。
【0034】
この発明に係るペプチド、その誘導体ならびにその塩は、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫などに対して抗菌活性、抗ウイルス活性、または抗寄生虫活性、あるいはこれらの組合せの活性を有している。
【0035】
この発明のペプチドの適用対象となる細菌としては、例えば、種々のグラム陽性菌、グラム陰性菌などが挙げられる。かかる細菌としては、例えば以下のものが挙げられる。
レンサ球菌(Streptococcus sp.)、例えば肺炎球菌(S. pneumoniae)、A 群 B 溶血性レンサ球菌(S. pyogenes)、B 群レンサ球菌(S. agalactiae)、S. milleri グループ、緑色レンサ球菌(viridans streptococci)、口腔レンサ球菌(oral streptococci)等;ブドウ球菌(Staphylococcus sp.)、例えば、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase negative streptococcus;例えば、S. haemolyticus、S. saprophyticus、S. capitis、S. caprae、S. lugdunensis、S. saccharolyticus、S. warneri、S. homini、S. cohnii; S. xylosus、S. simulans、S. schleiferi)等;コリネバクテリウム(Corynebacterium sp.)、例えば、ジフテリア菌(C. diphtheriae)等;腸球菌(Enterococcus sp.)、例えば、E. faecalis、E. faecium 等;アシネトバクター(Acinetobacter sp.)、例えばアシネトバクター・バウマニ(A. baumanii)、アシネトバクター・カルコアエチクス(A. calcoaeticus)等;シトロバクター(Citrobacter sp.);エンテロバクター(Enterobacter sp.);大腸菌(Escherichia sp.)、例えば大腸菌(E. coli)等;クレブシエラ(Klebsiella sp.);
モルガネラ(Morganelia sp.);プロテウス(Proteus sp.);プロビデンシア(Providencia sp.);サルモネラ(Salmonella sp.)、例えばチフス菌(S. typhi)、ネズミチフス菌(S. typhimurium);セラチア(Serratia sp.);赤痢菌(Shigella sp.);シュードモナス(Pseudomonas sp.)、例えば、緑膿菌(P. aeruginosa)、シュードモナス・アクネス(P. acnes);エルシニア(Yersinia sp.)、例えばペスト菌(Y. pestis)、偽結核エルシニア菌(Y. pseudotuberculosis)、エルシニア・エンテロコリチカ(Y. enterocolitica);フランシセラ(Franciscella sp.);パスツレラ(Pasturella sp.);ビブリオ(Vibrio sp.)、例えばビブリオコレラ菌(V. cholerae)、腸炎ビブリオ菌(V. parahemolyticus);カンピロバクター(Campylobacter sp.)、例えばカンピロバクター・ジェジュニ(C. jejuni);ヘモフィルス(Haemophilus sp.)、例えばインフルエンザ菌(H. influenzae)、ヘモフィルス・デュクレイ(H. ducreyi);ボルデテラ(Bordetella sp.)、例えば、百日咳菌(B. pertussis)、気管支敗血症菌(B. bronchiseptica)、パラ百日咳菌(B. parapertussis);ブルセラ(Brucella sp.);ナイセリア(Neisseria sp.)、例えば淋菌(N. gonorrhoeae)、髄膜炎菌(N. meningitidis)等;レジオネラ(Legionella sp.)、例えば、レジオネラ・ニューモフィラ(L. pneumophila);リステリア(Listeria sp.)、例えば、リステリア菌(L. monocytogenes);マイコプラズマ(Mycoplasma sp.)、例えば、マイコプラズマ・ホミニス(M. hominis)、肺炎マイコプラズマ(M. pneumoniae);マイコバクテリウム(Mycobacterium sp.)、例えば、結核菌(M. tuberculosis)、らい菌(M. leprae);トレポネーマ(Treponema sp.)、例えば梅毒トレポネーマ(T. parallidum);ボレリア(Borrella sp.)、例えば、ボレリア・ブルグドルフェリ(B. burgdorferi);レプトスピラ(Leptospirae sp.);リケッチア(Richettsia sp.)、例えば、斑点熱リケッチア(R. rickettsii)、発疹熱リケッチア(R. typhi);クラミジア(Chlamydia sp.)、例えば、トラコーマクラミジア(C. trachomatis)、肺炎クラミジア(C. pneumoniae)、オウム病クラミジア(C. psittaci);ヘリコバクター(Helicobacter sp.)、例えばピロリ菌(H. pylori)等;プラスモジウム(Plasmodia sp.)、例えば、熱帯熱マラリア(P. felciparum)、トリパノソーマ(Trypanosoma sp.)、例えば、トリパノソーマ・ブルサー(T. brucer);シストソーム(Schistosomes);体内寄生性アメーバ(Entaemoeba sp.)、クリプトコッカス種(Cryptococcus sp.)、カンジダ(Candida sp.)、例えばカンジダ・アルビカンス(C. albicans)、カンジダ・ジェイケウム(Candida jeikeium)、カンジダ・アフェルメンタス(C. afermentas)などが挙げられる。
【0036】
また、この発明に係るペプチドは、上記細菌のうち、ヒトの健常皮膚に常在しているグラム陽性球菌である表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)などのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative staphylococci:CNS)やグラム陽性桿菌であるCorynebacterium spp.(コリネバクテリウム属)など、またグラム陰性桿菌であるアシネトバクター属(Acinetobacter spp.)に対しても上記活性を示す。これらの細菌は、平素は無害であるが、特に易感染患者において、例えば、心臓の人工置換弁、中枢神経系シャント、血管カテーテルなどの体内挿入人工物などに関連する血流感染などを起因することがある。血管カテーテル関連感染において CNS は主要な起因菌であり、時に心内膜炎や髄膜炎に進展することもある。病原性を持つ株の多くはα溶血毒、DNA 分解酵素、血清中のプラスミノーゲンを活性化させプラスミンを生じさせるスタフィロキナーゼを産生する。バイオフィルムの形成も病原性に関連しており、表皮ブドウ球菌はカテーテルなどのプラスチック表面に付着し、バイオフィルムを形成することがあり、このようなバイオフィルムに対してもこの発明のペプチドは有効である。
【0037】
さらに、この発明に係るペプチドは、上記グラム陽性菌やグラム陰性菌のうち、例えば、多剤耐性グラム陽性菌(例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus: MRSA)、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌 (Methicillin- Sensitive Staphylococcus aureus: MSSA)、(Vancomycin-Intermediate Staphylococcus aureus: VISA)、(Vancomycin-Resistance Staphylococcus aureus: VRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌 (Vancomycin-Resistant Enterobacter)、等)や多剤耐性グラム陰性菌(例えば、多剤耐性ヘリコバクター、赤痢菌、サルモネラ菌等)などに対しても有効である。
【0038】
この発明に係るペプチドは、カンジダ (Candida)、アスペルギルス (Aspergillus)、クリプトコツカス (Cryptococcus)、ムコール (Mucor) ならびにその他の多くの真菌に対しても抗真菌活性を持っている。
【0039】
この発明に係るペプチドは、ウイルス、例えば、アルファウイルス、アレナウイルス、ブンヤウイルス、コロナウイルス、エンテロウイルス、フィロウイルス、フラビウイルス、ハンタウイルス、HLTV−BLV、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、レンチウイルス、ラッサウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、ライノウイルス、ロタウイルス、SARSウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなどのRNAウイルス;アデノウイルス、サイトメガロウイルス、ヘパドナウイルス、モルシポックスウイルス、オルソポックスウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ポリオーマウイルス、シンプレックスウイルス、水痘−帯状疱疹ウイルスなどのDNAウイルスなどに対して抗ウイルス活性を持っている。
【0040】
さらに、この発明のペプチドは、原虫や寄生虫などに対しても活性を有している。ここで原虫とは、例えば、アメーバ、マラリア、トキソプラズマ、クリプトスポリジウム、バベシア原虫などが挙げられる。また、寄生虫としては、例えば、回虫、蟯虫、鉤虫、糞線虫、フィラリア、アニサキス、顎口虫等の線虫、住血吸虫、肝吸虫、横川吸虫、肺吸虫等の吸虫、有鉤条虫、無鉤条虫等の条虫などが挙げられる。
【0041】
したがって、この発明に係るペプチドは、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫などによる感染症に対して有効に適用することができる。
細菌による感染症の代表的な例としては、放線菌症、炭疽、トレポネーマ症、カンピロバクター症、コレラ、ガス壊疽、腸内細菌感染症、ヘモフィルス感染症、マイコバクテリウム感染症、レプトスピラ症、リステリア症、ライム病、ペスト、肺炎球菌感染症、シュードモナス感染症、サルモネラ感染症、細菌性赤痢、ブドウ球菌感染症、連鎖球菌感染症、破傷風、毒素性ショック症候群、野兎病、腸チフス、性感染症(梅毒、淋菌感染症、非淋菌感染症、クラミジア子宮頸管炎、トリコモナス症等)などが挙げられる。
【0042】
真菌による感染症の代表的な例としては、アスペルギルス症、ブラストミセス症、カンジタ症、コクシジオイデス症、クリプトコッカス症、ヒストブラスマ症、ムコール症、バラコクシジオイデス症、スポロトリウム症などが挙げられる。
【0043】
ウイルスによる感染症の代表的な例としては、風邪、インフルエンザ、単純ヘルペスウイルス感染症、帯状疱疹、エプシュタイン・バーウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症、出血熱、ハンタウイルス感染症、黄熱、デング熱、重症急性呼吸器症候群、ヒト免疫不全ウイルス (HIV) 感染症などが挙げられる。
【0044】
代表的な寄生虫による感染症としては、例えば、アメーバ症、回虫症、バベシア症、クリプトスポリジウム症、ジアルジア症、鉤虫症、マラリア、蟯虫症、住血吸虫症、条虫感染症、トキソカラ症、トキソプラズマ症、旋毛虫症、鞭虫症などが挙げられる。
【0045】
さらに、この発明に係るペプチドは、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤および/または抗寄生虫剤などと組み合わせた抗菌性組成物ならびに抗菌性医薬としても使用することができる。この発明のペプチドを、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤および/または抗寄生虫剤などと組み合わせることによって、相互の薬効を補完または増強することができるという大きな利点を得ることができる。
【0046】
この発明において使用することができる抗生物質は、いずれも使用することができ、特に限定されるものではなく、例えば、ペニシリン系抗生物質、セファロスポリン系抗生物質、セファマイシン系抗生物質、オキサセフェム系抗生物質、カルバセフェム系抗生物質、カルバペネム系抗生物質およびモノバクタム系抗生物質からなる群より選択されるβラクタム系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、オキサゾリジノン系抗生物質、グリコペプチド系抗生物質、ポリペプチド系抗生物質、クロラムフェニコール系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、マクロライド系抗生物質、リンコマイシン系抗生物質、キノロン系抗生物質、ケトライド系抗生物質、グリシルサイクリン系抗生物質ならびにその他の抗生物質、サルファー剤などからなる群より少なくとも1種を適宜選択するのがよい。なお、上記以外の抗生物質であっても有効に適用できることは当然のことである。
【0047】
かかる抗生物質としては、例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メズロシリン、ピペラシリン、チカルシンなど;セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファロチン、セファピリン、セフラジンなど;セファクロル、セファマンドール、セフォテタン、セフォキシノン、セフメタゾール、セフォニシド、セフプロジル、セフロキシムなど;セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソンなど;セフェピム、セフピロムなど;セフォキシチン、セフォテタン、セフブペラゾン、セフミノクス、セフメタゾールなど;ラタモキセフ、フロキモセフなど;イミペネム/シラスタチン、エルタベネム、メロペネム、ファロペネム、パニペネムなど;ロラカルベフなど;アズトレオナム、カルモナムナトリウムなど;アミカシン、アルベカシン、イセバマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ジベカシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、ネオマイシン(フラジオマイシン)など; バンコマイシン、テイコプラニンなど; リネゾリドなど;クロラムフェニコール、チアンフェニコールなど;オキシテトラサイクリン、 テトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど;エリスロマイシン、クラリスロマイシン、トロレアンドマイシン、ロキシスロマイシン、アジスロマイシン、ジリスロマイシン、アセチルスピラマイシン、キタサマイシン、ジョサマイシン、ミデカマイシン、ロキタマイシン、酢酸ミデカマイシンなど;キノロン、ナリジクス酸、エノキサシン、オフロキサシン、ガチフロキサシン、ガレノキサシン、シプロフロキサシン、スパルフロキサシン、トスフロキサシン、トロバフロキサシン、ノルフロキサシン、フレロキサシン、モキシフロキサシン、 レボフロキサシン、ロメフロキサシンなど;リンコマイシン、クリンダマイシンなど;バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンBなど;テリスロマイシンなど;スルファクロルピリダジン、スルファサラジン、スルファジアジン、スルファジメトキシン、スルファセタミド、スルファドキシン、スルファメチゾール、ファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、トリメトプリム−スル、マフェニドなど;チゲサンクリンなど;イソニアジドなど;バージニアマイシン、キヌプリスチン・ダルホプリスチン、エタンブトール、ホスホマイブリスチン・ダルホブリスチン、リファンピシン、スベクチノマイシンが挙げられる。
【0048】
この発明で使用できる抗真菌剤としては、例えば、アンフォテリシン、ナイスタチン等のポリエンマクロライド系、フルシトシン等のピリミジン系、ミコンゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、イソコナゾール、スルコナゾール、オキシコナゾール、クロコナゾール、ビボナゾール、ネチコナゾール、ラノコナゾール等のイミダゾール系、フルコナゾール、イトラコナゾール、ボリコナゾール等のトリアゾール系、ミカファンギン等のキャンディン系、塩酸テルビナフィン等のアリルアミン系、リラナフタート等のチオカルバメート系、ブテナフィン等のベンジルアミン系、アモロルフィン等のモルホミン系、グリセオフルビン等の抗生物質などが挙げられる。
【0049】
この発明で使用できる抗ウイルス剤としては、例えば、アシクロビル、バラシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、バルガンシクロビル塩酸塩、シドフォビル、トリフルリジン、フォミビルセン、ビダラビン、ザルシタビン、イドクスウリジン、ソリブジン、ブリブジン、スタブジン、ジドブジン、エドクスジン、ガンシクロビルナトリウム、ホスカルネットナトリウム水和物、オセルタミビル、ザナミビル、アマンタジン、リマンタジン、ジダノシン、リバビリン、インターフェロン−αなどが挙げられる。
【0050】
この発明で使用できる抗寄生虫薬としては、例えば、メトロニダゾール、メベンダゾール、アルベンダゾール、バモ酸ビランテル、キニーネ、クリンダマイシン、フラゾリドン、クロロキン、メフロキン、ドキシサイクリン、アトバコン、プログアニル、プラジカンテル、ジエチルカルバマジン、スルファジアジン、ピリメタミン、トリメトプリム−スルファメトキサゾール(ST合剤)、イベルメクチン、ニクロサミド、ビチオノールなどが挙げられる。
【0051】
この発明に係るペプチド、抗菌性組成物および抗菌性医薬は、その処置の目的に応じて、皮下、皮内、静脈内、腹腔内等の非経口または経口による全身または局所投与などの様々な投与経路でそれぞれ投与することができる。また、この発明のペプチド、抗菌性組成物および抗菌性医薬を投与する剤型にしても、医薬品分野などで通常使用されている様々な剤形を適宜選択して適用することができ、かかる剤型としては、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、用時溶解用固形剤等の注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、液剤、シロップ剤、軟膏剤、ゲル剤、外用散剤、スプレー剤、クリーム剤、吸入散剤、点眼剤、眼軟膏剤、座剤などが使用することができる。これらの製剤は、常法にしたがって調製することができる。
【0052】
上記に示したようなこの発明のペプチド、抗菌性組成物および抗菌性医薬の製剤は、このペプチド、抗菌性組成物および抗菌性医薬の活性成分に加えて、その適用分野で使用されている製剤用担体を含有していてもよい。その製剤用担体は、特に限定されるものではなく、使用目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、賦形剤、増量剤、結合剤、潤滑剤、滑沢剤、着色剤、湿潤剤、分散剤、崩壊剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、界面活性剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、溶解補助剤などを用いることができる。
【0053】
また、この発明のペプチド、抗菌性組成物および抗菌性医薬の製剤には、上記担体の他に、医薬的に許容されるその他の担体および/または添加物を含むものであってもよく、かかる担体/添加物としては、例えば、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトースなどが挙げられる。使用される担体/添加物は、この発明の剤型に応じて、上記の中からまたは上記と組み合わせて適宜選択することができる。
【0054】
この発明のペプチドを抗菌剤などの医薬として投与する場合、その投与量は、対象疾患、投与対象の種類や年齢等、投与経路、投与回数などにより広範囲に適宜変えることができる。その活性成分の有効量は、一般的に成人(体重60kgとして)に対して、1日につき約1〜1000 mg、好ましくは約5〜500 mg、より好ましくは約10〜200 mg の範囲であるのがよく、1日1回から数回に分けて1日以上投与することができる。
【0055】
また、この発明のペプチドは、病院施設などで問題となる院内感染や日和見感染などに対しても有効であって、かかる感染の予防ならびに治療には、必要に応じて、特に抗生物質と組み合わせて適用するのが好ましい。さらに、この発明のペプチドを、必要に応じて併用される抗生物質を、院内感染の起因となる医療用デバイスや補綴物、例えば、カテーテル、ステント、チューブ、プローブ、カニューレ、人工心臓バルブ、透析膜、フィルター、フィルム、不織布、手術用縫合糸、針、手術用器具などに適用する場合には、かかる医療用デバイスや補綴物に、溶液、クリーム、軟膏などの形状で、噴霧したり、コ−テイングなどして使用するのがよく、その場合は0.1〜5%、好ましくは0.5〜2%の範囲で適用するのがよい。
【0056】
なお、この発明に係るペプチドと併用できる薬剤の投与量ならびに投与回数は、かかる薬剤を単独で投与する場合と同様に投与することができるが、その併用投与対象などを考慮して、その量を適宜増減するのがよい。例えば、下記薬剤の一般的な投与量は、下記のとおりであるので、下記薬剤を併用する場合には、かかる投与量から適宜選択して投与するのがよい。
【0057】
アンビシリン:250−500mg/8hr
アモキシシリン:250−500mg/8hr
メチシリン:100−300mg/日
セファゾリン:100〜400mg/日
セフトリアキソン:4g/日
セフォタキシム:12g/日
シプロフロキサシン:400〜1500mg/日
ゲンタマイシン:3mg/kg/日
トブラマイシン:3mg/kg/日
イミペネム:1500mg/kg
ピペラシリン:24g/日
バンコマイシン、テイコプラニン:6−30mg/kg/日
ストレプトマイシン:500mgー1g/12hr
メトロニダゾール:2−4g/日
テトラサイクリン:500mg/5hr
リファンビン:600mg/日
フルコナゾール:150−400mg/日
アシクロビル:200−400mg/日
リバピリン:20mg/日
アマンタジン、リマンタジン:200mg/日
クロロキン:800mg/日
【実施例1】
【0058】
化学式 [III] 〜 [VIII] でそれぞれ表されるアミノ酸配列を有するペプチドは、自動ペプチド合成機(PTI−PS3:アロカ株式会社)を用いて固相合成法(Fmoc法)に従って合成した。なお、この固相合成法では、固相担体としてFmoc−NH−SAL−PEG樹脂(渡辺化学工業製)、保護アミノ酸としては、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)−アミノ酸(Fmoc−AA−OH)、縮合剤としてO−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、溶媒としてN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を用いた。
まず、Fmoc−NH−SAL−PEG樹脂 (0.1 mmol) 0.4167 g をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)で30分間程度膨潤させた。この樹脂を容器に入れ、これにHBTU 0.1517 g とHOBT-OH 0.0613 g を添加した。さらに、この容器に、目的ペプチドのアミノ酸誘導体(Fmoc−AA−OH)を下表1に示す量を添加した。なお、Fmoc−AA−OH:HBTU:HOBT:DIEA:H2N−樹脂の反応モル比は3:3:3:6:1に調整した。
このようにそれぞれ調製したアミノ酸誘導体を入れた容器をRVG−9Rの配列順に配置して、自動ペプチド合成機の回転テーブルに装填し、最後に空の容器を1本装填した。
【0059】
【表1】

【0060】
溶媒としては、PRI−SOLV1としてNMP、PRI−SOLV2としてNMP、ACT:0.9M DIPEA(DIPEA78ml+NMP422ml)、DEP:20%ピペリジン(ピペリジン100ml+NMP400ml)をそれぞれ調製して使用した。
まず、チューブに残存している残液をベントで廃棄し、常圧になって溶媒を補充した。次に、容器を加圧して、プライムでチャーブに液を充満させ、上記自動ペプチド合成機のプログラムに沿って合成を開始した。
【0061】
上記のようにして得られたペプチドの保護基を脱保護するために、ペプチドをナスフラスコに移して、トリフルオロ酢酸(TFA)溶液(TFA 9ml:チオアニソール500μl:m−クレゾール500μl:エタンジオール250μl)を添加し、スターラーバーを入れて1時間攪拌した。この溶液をトールビーカーにひだ折りろ過し、少量のTFAで洗浄した。ろ液に氷冷ジエチルエーテルを適量添加して氷冷した。このようにして発生した白い沈殿を減圧ろ過し、ろ紙上の残渣をトールビーカーに移し、水を添加して、超音波を照射して溶解し、ナスフラスコにひだ折りろ過した。得られたろ液を液体窒素で凍結乾燥した。この凍結乾燥品を粉末状にして−20℃で保存した。
【0062】
上記で得られたペプチドは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製した。粉末状のペプチドをMillQ水に溶解し、大きな不純物がカラムに入らないように 0.44 μl のフィルターに通した後、注射器でHPLCに注入した。検出器で検出された目的とするペプチドのピーク時で分取し、分取した液をスピードフィードバツク遠心装置で乾固し−20℃で保存した。なお、移動相としての溶離液としては、A液として0.1%TFA水溶液、B液としてアセトニトリル+0.1%TFA液、C液として100%メタノールを使用した。また、HPLCにおける溶離液の濃度勾配は下表2に示すプログラムに従って設定した。
【0063】
【表2】

【0064】
上記のように溶離した各ペプチドの分子量をKRATOS質量分析装置(KOMPACT MALDI III:島津製作所)を用いてMALDI−TOF/MS質量分析に基づいて決定した。つまり、粉末状のペプチドサンプルを0.1%TFA水溶液に溶解し、そのサンプル液にα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA:10mg/ml)5μlを添加して混合した。この混合液を試料板上のスポットに滴下した。その結果、目的のペプチドが合成・精製されていることが確認された(表3)。なお、質量分析の条件は下記の通りである。
マトリックス:α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)
測定モード:リニア・リフレクター・モード
【0065】
【表3】

【実施例2】
【0066】
実施例1で合成したペプチドのそれぞれについて、その抗菌活性を微量液体希釈法(日本化学療法学会の方式に準拠)に記載の方法に従って測定した。
プレート上で37℃で5日間培養した後、生存細胞数を測定した。抗菌活性は、最小阻止濃度(MIC50: μg/ml)、HIV感染による細胞傷害を50% 阻止する有効濃度(EC50; 50% effective concentration)、細胞毒性は試験物質による50% 細胞傷害濃度(CC50; 50% cytotoxic concentration)でそれぞれ表現した。また、有効係数(Selectivity Index; SI)はCC50/EC50として計算した。
被験菌株は、Staphylococcus. aureus (MRSA)、 S. aureus (VISA)、S. haemolyticus、S. saprophyticus、S. cohnii、S. epidermidis、Candida jeikeium、C. afermentas、Acinetobacter baumanii、A. calcoaeticus、Pseudomonas aeruginosa ならびに P. acnes を用いた。
【0067】
被験ペプチドのアミノ酸配列は下記の通りである。
ペプチド [III]:IleLeuArgWsProWsWsProWsArgArgLys(配列番号3)
ペプチド [IV]:IleLeuArgTrpProTrpTrpProTrpArgArgLysAlaAlaAlaAla(配列番号4)
ペプチド [V]:IleLeuArgTrpAlaTrpLysAlaTrpArgArgTrpAlaAlaAlaAla(配列番号5)
ペプチド [VI]:Ac - IleLeuArgWsProWsWsProWsArgArgLysAlaAlaAlaAla(配列番号6)
ペプチド [VII]:IleLeuArgTrpAlaTrpLysAlaTrpArgArgTrpAlaArgAlaAla(配列番号7)
ペプチド [VII]:Ile-Leu-Arg-Trp-Pro-Trp-Trp-Pro-Trp-Arg-Arg-Lys-NH2 (配列番号8)
【0068】
MIC50の結果を下表に示す。
【表4】

【実施例3】
【0069】
MBC50の結果を下表に示す。
【表5】

【0070】
上記最小阻止濃度(MIC50)および最小殺菌濃度(MBC50)について、オミガナンを100としたときのそれぞれの低下率(%)をそれぞれ表6と表7に示す。
【表6】

【0071】
【表7】

【実施例4】
【0072】
この発明のペプチドを抗菌薬(錠剤)に製剤化した組成例を示す。
ペプチド [III] :100mg
乳糖:670mg
バレイショデンプン:150mg
結晶セルロース:60mg
軽質無水ケイ酸:50mg
上記成分を混合し、ヒドロキシプロピルセルロース30mgをメタノールに溶解した溶液(ヒドロキシプロピルセルロース10重量%)を加えて混練して造粒し、径0.8mmのスクリーンで押し出して顆粒状にし、乾燥した後、ステアリン酸マグネシウム15mgを加え200mgづつ打錠して錠剤を得た。
【実施例5】
【0073】
この発明のペプチドを細菌感染症治療剤(カプセル剤)に製剤化した組成例を示す。
ペプチド [IV]:100mg
乳糖:80mg
上記成分を均一に混合し、硬カプセルに充填してカプセル剤を得た。
【実施例6】
【0074】
この発明のペプチドを細菌感染症治療剤(注射剤)に製剤化した組成例を示す。
ペプチド [V] :30mg
上記成分を5%マンニトール水溶液2mlに溶解し、これを無菌濾過した後、アンプルに入れて密封した。
【実施例7】
【0075】
この発明のペプチドを細菌感染症治療剤(用時溶解用注射剤)に製剤化した組成例を示す。
(A) ペプチド [V](凍結乾燥品):30mg(アンプルに封入した)
(B) 無菌濾過したPBS 2ml(アンプルに封入した)
上記(A)および(B)を1セットとして、用時溶解用注射剤を製造した。使用時に(A)を(B)で溶解して用いることができる。
【実施例8】
【0076】
この発明のペプチドを抗菌薬(軟膏剤)に製剤化した組成例を示す。
ペプチド [III]:10mg
モノステアリン酸ソルビタン:7mg
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン:7mg
パルミチン酸イソプロピル:37mg
ワセリン:37mg
流動パラフィン:37mg
セタノール:50mg
グリセリン:70mg
ステアリン酸マグネシウム:2mg
上記成分に精製水を加えて、1gのクリームとした。
【実施例9】
【0077】
実施例9と実質的に同様にして、ペプチド [III] に代えてペプチド [IV] ないし [VIII] のそれぞれを使用して、1gのクリームをそれぞれ調製した。
【実施例10】
【0078】
この発明のペプチドを抗菌薬(軟膏剤)に製剤化した組成例を示す。
ペプチド [VIII] :10mg
ペニシリン(アンピシリン):10mg
モノステアリン酸ソルビタン::7mg
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン:7mg
パルミチン酸イソプロピル:37mg
ワセリン:37mg
流動パラフィン:37mg
セタノール::50mg
グリセリン:70mg
ステアリン酸マグネシウム:2mg
上記成分に精製水を加えて、1gのクリームとした。
【実施例11】
【0079】
ペプチド [III] :0.5%
ワセリン:26.3%
パラフィン:5.3%
セトステアリルアルコール:2.1%
プロピレングリコール:10.5%
ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン グリコールエーテル:3.2%
精製水:52.1%
上記成分を混合して皮膚外用剤を調製した。
【実施例12】
【0080】
実施例11と実質的に同様にして、ペプチド [III] に代えてペプチド [IV] ないし [VIII] のそれぞれを使用して皮膚外用剤をそれぞれ調製した。
【産業上の利用可能性】
【0081】
この発明に係るペプチドは、特に多様な医療ならびに環境衛生分野における感染予防ならびに感染症の治療や発生率を低減させるためなどに使用することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0082】
配列番号1:合成ペプチド
配列番号1:XaaはTrp又はチオトリプトファンを表す(存在位置:4)。
配列番号1:XaaはPro又はAlaを表す(存在位置:5)。
配列番号1:XaaはTrp又はチオトリプトファンを表す(存在位置:6)。
配列番号1:XaaはTrp、チオトリプトファン又はLysを表す(存在位置:7)。
配列番号1:XaaはPro又はAlaを表す(存在位置:8)。
配列番号1:XaaはTrp又はチオトリプトファンを表す(存在位置:9)。
配列番号1:XaaはLys又はTrpを表す(存在位置:12)。
配列番号1:XaaはAla -(Ala/Arg)- Ala - Alaを表す(存在位置:13)。
配列番号2:合成ペプチド
配列番号2:XaaはAla又はArgを表す(存在位置:2)。
配列番号3:合成ペプチド
配列番号3:Xaaはチオトリプトファンを表す(存在位置:4)。
配列番号3:Xaaはチオトリプトファンを表す(存在位置:6)。
配列番号3:Xaaはチオトリプトファンを表す(存在位置:7)。
配列番号3:Xaaはチオトリプトファンを表す(存在位置:9)。
配列番号4:合成ペプチド
配列番号5:合成ペプチド
配列番号6:合成ペプチド
配列番号6:Xaaはチオトリプトファンを表す(存在位置:4)。
配列番号6:Xaaはチオトリプトファンを表す(存在位置:6)。
配列番号6:Xaaはチオトリプトファンを表す(存在位置:7)。
配列番号6:Xaaはチオトリプトファンを表す(存在位置:9)。
配列番号7:合成ペプチド
配列番号8:合成ペプチド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式 [I]:
Ile-Leu-Arg-X1-X2-X3-X4-X5-X6-Arg-Arg-X7-(X8)n [I]
(式中、X1 はトリプトファン (Trp) または化学式 [II]:
【化1】

で表されるチオトリプトファン (Ws) を意味し;
X2 はプロリン (Pro) またはアラニン (Ala) を意味し;
X3 はトリプトファン (Trp) またはチオトリプトファン (Ws) を意味し;
X4 はトリプトファン (Trp)、チオトリプトファン (Ws) またはリジン (Lys) を意味し;
X5 はプロリン (Pro) またはアラニン (Ala) を意味し;
X6 はトリプトファン (Trp) またはチオトリプトファン (Ws) を意味し;
X7 はリジン (Lys) またはトリプトファン(Trp) を意味し;
X8 は Ala - X9 - Ala - Ala (式中、X9 は Ala または Arg を意味する)を意味し;
n は0または1を意味し;および
それぞれのアミノ酸は L 体または D 体を意味し;
ただし、X1、X3、X4 および X6 がそれぞれトリプトファン (Trp)であり;X2 および X5 がそれぞれプロリン(Pro) であり;X7 がリジン (Lys) であり、かつ、それぞれのアミノ酸が L- 体である場合は、n は1を意味する)
で表されるペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。
【請求項2】
前記ペプチドが下記式[III]〜[VIII]で表されるいずれかのアミノ配列を有するものである、請求項1に記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。

Ile-Leu-Arg-Ws-Pro-Ws-Ws-Pro-Ws-Arg-Arg-Lys [III]
Ile-Leu-Arg-Trp-Pro-Trp-Trp-Pro-Trp-Arg-Arg-Lys-Ala-Ala-Ala-Ala [IV]
Ile-Leu-Arg-Trp-Ala-Trp-Lys-Ala-Trp-Arg-Arg-Trp-Ala-Ala-Ala-Ala [V]
Ile-Leu-Arg-Ws-Pro-Ws-Ws-Pro-Ws-Arg-Arg-Lys-Ala-Ala-Ala-Ala [VI]
Ile-Leu-Arg-Trp-Ala-Trp-Lys-Ala-Trp-Arg-Arg-Trp-Ala-Arg-Ala-Ala [VII]
Ile-Leu-Arg-Trp-Pro-Trp-Trp-Pro-Trp-Arg-Arg-Lys (全てD- 体) [VIII]
(式中、Wsは上記と同じ意味を有する)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のペプチドのアミノ配列を含む12個〜40個のアミノ酸配列からなるペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。
【請求項4】
請求項1または2に記載のペプチドのアミノ配列を含む12個〜30個のアミノ酸配列からなるペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。
【請求項5】
請求項1または2に記載のペプチドのアミノ配列を含む12個〜20個のアミノ酸配列からなるペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。
【請求項6】
請求項1または2に記載のペプチドのアミノ配列を含む12個〜16個のアミノ酸配列からなるペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。
【請求項7】
前記ペプチドが、細菌、真菌および/またはウイルスに対して抗菌活性、抗ウイルス活性および増殖抑制活性からなる群から選ばれる少なくとも1つの活性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。
【請求項8】
前記ペプチドがグラム陽性菌に対して増殖抑制活性を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のペプチドもしくはその誘導体またはそれらの塩と、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤および抗寄生虫剤からなる群から選ばれる少なくとも1つとを含有することを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のペプチドもしくはその誘導体もしくはそれらの塩、および/または請求項9に記載の組成物を含有することを特徴とする医薬。

【公開番号】特開2011−195451(P2011−195451A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162214(P2008−162214)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(598015084)学校法人福岡大学 (114)
【Fターム(参考)】