説明

ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δリガンドチアゾール化合物及びこれを含有する医薬、化粧品及び健康食品組成物

本発明は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δ(Peroxisome Proliferator Activated Receptorδ、以下、PPARδという)に活性を有するチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩、及び、これを含む医薬組成物、機能性化粧品組成物、健康食品、健康飲料、食品添加物及び動物用飼料に関する。
【代表図】無し

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満、高脂血症、動脈硬化、糖尿病、痴呆及びパーキンソン病の治療及び筋肉強化または記憶力増進に使用できるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δ(Peroxisome Proliferator Activated Receptorδ:PPARδ)活性化リガンドである、下記化学式1の化合物で表されるチアゾール化合物及びこれを含有する医薬組成物、機能性化粧品組成物、健康食品、健康飲料、食品添加物及び動物用飼料に関する発明である。
【化1】

【背景技術】
【0002】
核受容体の中、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor:PPAR)は、3種のsubtypeであるPPARα, PPARγ, PPARδが知られている(Nature, 1990, 347, p645-650., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1994, 91, p7335-7359)。PPARα, PPARγとPPARδは、生体内組織による、区別される機能を有して、発現部位においても差を示す。PPARαは、人間において心臓、腎臓、骨格筋、大腸から主に発現されて(Mol. Pharmacol. 1998, 53, p14-22., Toxicol. Lett. 1999, 110, p119-127, J. Biol. Chem. 1998, 273, p16710-16714)、ペルオキシソーム(peroxisome)とミトコンドリアのβ-酸化と関連がある(Biol. Cell. 1993, 77, p67-76., J. Biol. Chem. 1997, 272, p27307-27312)。PPARγは、骨格筋では弱く発現されるが、脂肪組織では多量に発現されて、脂肪細胞の分化とエネルギーを脂肪形態に貯蔵、そして、インシュリンと糖の恒常性調節に関与をすることが知られている(Moll. Cell. 1999, 4, p585-594., p597-609., p611-617)。PPARδは、人間を含む哺乳類とげっ歯類、ホヤ類のような脊椎動物などにおいて進化的に保存されている。今までの研究によると、PPARδは、生殖細胞の発現過程で重要な役割をすることが知られており(Genes Dev. 1999, 13, p1561-1574.)、中枢神経系(Central Nervous System: CNS)において神経細胞の分化(J. Chem. Neuroanat2000, 19, p225-232)、消炎効果による傷の治癒(Genes Dev. 2001, 15, p3263-3277, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2003, 100, p6295-6296)などの生理的機能を行うことが報告されている。最近の研究によると、PPARδが脂肪細胞分化及び脂肪の代謝作用に関連があることが証明されたが(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2002, 99, p303-308., Mol. Cell. Biol. 2000, 20, p5119-5128)、PPARδを活性化させると、脂肪酸β-oxidationに係わる核心遺伝子とエネルギー代謝に係わる遺伝子であるuncoupling proteins (UCPs)の発現が活性化されて肥満が改善される(Nature 2000, 406, p415-418, Cell 2003, 113, p159-170)。また、PPARδは、高密度リポ蛋白(HDL、High Density Lipoprotein)を高めて、体重変化のない状態で2型糖尿病を改善させて(Proc. Natl. Acad. Sci. USA2001, 98, p5306-5311, 2003, 100, p15924-15929, 2006, 103, p3444-3449)、炎症関連遺伝子を調節して動脈硬化を抑制する(Science, 2003, 302, p453-457)、したがって、PPARδリガンドは、肥満、糖尿、高脂血症及び動脈硬化などの代謝性疾患治療のための薬物としての開発が可能である。
【0003】
PPARδは、ミトコンドリアの生合成を調節する。マウスの筋肉に人為的にPPARδを過多発現させた結果、ミトコンドリア生合成が増加して、また脂肪酸β酸化酵素の発現及びTypeI筋繊維が増加して、一般ラットに比べ、持続的に走れる時間と距離がそれぞれ67%、92%増加した(PLoS Biology, 2004, 2:e294)。このようなミトコンドリアの生合成増加は、脳機能の改善にも効果的である。脳細胞のミトコンドリアが酸化的ストレスにより破壊されると、記憶力が著しく低下するということが知られている(Proc. Natl. Acad. Sci. USA2002, 99, p2356-2361)。痴呆及びパーキンソン病は、代表的な退行性脳疾患であって、学習と記憶力が著しく減退する共通の症状を示す。したがって、本発明で開発したミトコンドリア増殖物質は、記憶力増進剤だけではなく、痴呆及びパーキンソン病の治療剤としての開発が可能である。
【0004】
PPARδの合成リガンドは、他のPPARα,γに比べ、選択性に優れたリガンドの開発が比較的よくなされておらず、初期に開発された選択的リガンドは、Merk社の研究陣が発表したL-631033であって(J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 1997, 63, p1-8)、これは、形態的に天然脂肪酸類の形態に基づき、側鎖を固定できる官能基を導入して作られた。また、同研究陣は、より効果的なL-165041リガンド(J. Med. Chem. 1996, 39, p2629-2654)を発表したが、これは、ロイコトリエン作動剤(leukotriene agonist)として既に知られていた化合物が、人間のPPARδに活性物質としても作用したものであった。この物質は、hPPARδに対して、PPARα,γより10倍の選択性を示し、EC50値も530nMで作用すると明かされた。しかし、げっ歯類に対する実験では、PPARγに対する選択性がほとんどなかった。また他のリガンドであるL-796449とL-783483は、親和度は著しく改善された反面(EC50=7.9 nM)、他のhPPAR subtypeとの選択性がほとんどないことが確認された。
【0005】
GlaxoSmithKline社の研究陣は、PPARδリガンドポケットの結晶構造と類似したY-型リガンドとして、PPARαの活性物質であるGW2433(Chem. Biol. 1997, 4, p909-918)を発表した。このリガンドは、今まで開発されたリガンドとは異なって、ベンゼン環を含むY−型の構造を有しており、PPARδのリガンド-結合ポケットに空間的によく結合するリガンドと報告された。しかし、このリガンドは、hPPARαにも活性を示す二重-活性化リガンドであって、PPARδに対する選択性が劣るとことが確認された。最近GlaxoSmithKline社で開発したPPARδの選択的リガンドGW501516 ([2-メチル-4-[[[4-メチル-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,3-チアゾール-5-イル]メチル]スルファニル]フェノキシ]アセト酸)は、先に開発されたリガンドより優れた生理的効能を示した(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2001, 98, p5306-5311)。
【化2】

【0006】
GW501516は、PPARδに非常によい親和度(1〜10nM)を示しており、PPARαやγに対しても、1000倍以上の選択性を示すことが確認された。
【0007】
しかしながら、今まで開発されたリガンドから得られたPPARδの活性度は、全体リガンド−結合pocketの30〜40%部位と結合して示した結果である。
【0008】
一方、Glaxoグループにより出願された国際公開第2001/00603号パンフレットには、PPARδの選択活性化剤として、前記GW501516を含む下記化学式Aの化合物が記載されているが、前記GW501516のRhesusモデル実験結果の一部のみが含まれているだけである。
【化3】


化学式A
(式中、R'は、CF3, Fなどであり、R''は、H, CH3, Clなどであり、R'''は、H, CH3, CH2CH3である)
【0009】
Glaxoグループにより出願された国際公開第2002/62774号パンフレットには、また他のPPARδの選択活性化剤として、下記構造の化学式Bの化合物を含むチアゾール化合物が記載されている。
【化4】


化学式B
【0010】
一方、Eli Lillyにより出願された国際公開第2003/072100号パンフレットには、下記化学式Cの化合物を含む、PPARδを選択的に調節するための医薬組成物が記載されている。
【化5】


化学式C
【0011】
しかしながら、前記化合物に対して、製造されたことを記載しているだけで、2タイプに存在する光学活性体を製造したものではなく、ラセミ体として製造されたもので、製造されたラセミ体に対し、質量分析スペクトルのM++1値のみを記載しており、1H-NMRで確認したとの記載と、PPARδの選択的活性化剤として作用するという記載のみがあるだけで、PPARδの選択的活性化剤としての定量的な薬理効果の記載が全くない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、上記の国際公開第2003/072100号パンフレットの発明に記載されたチアゾール誘導体のラセミ化合物の中、PPARδの選択的活性化度の高い光学活性化合物を製造するに至った。したがって、本発明の目的は、PPARδの選択的活性化度の高いチアゾール誘導体の光学活性化合物を提供することであり、また、前記チアゾール誘導体の光学活性化合物を含む医薬組成物、化粧品組成物、健康食品及び動物用飼料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、肥満、高脂血症、動脈硬化、糖尿病、痴呆及びパーキンソン病の治療及び筋肉強化または記憶力増進に使用できるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δ(Peroxisome Proliferator Activated Receptorδ:PPARδ)活性化リガンドとして下記化学式1の化合物で表されるチアゾール誘導体、及びこれを含む医薬組成物、化粧品組成物、健康食品及び動物用飼料組成物に関する。
【化6】

【0014】
国際公開第2003/072100号パンフレットには、下記の化学式Cのチアゾール化合物が記載されているが、製造されたラセミ体に対し、質量分析スペクトルのM++1値のみを記載しており、1H-NMRで確認したとの記載と、PPARδの選択的活性化剤として作用するという記載のみがあるだけで、PPARδの選択的活性化剤として薬理効果の定量的な記載が全くない。
【化7】


化学式C
前記化学式Cは、キラル炭素を有しており、その立体異性体が存在する。
【0015】
驚くことに、本発明者らは、前記化学式Cのラセミ化合物の光学活性物質であるR-form異性体の化学式1の化合物が、PPARδの非常に高い選択的活性化度を有するが、S-form異性体である下記化学式2の化合物は、前記化学式1の化合物に比べ、PPARδに対する活性化度が著しく劣ることを確認した。
【化8】

【0016】
したがって、本発明による化合物である化学式1の化合物は、国際公開第2003/072100号パンフレットに対する選択発明とみなされる。
【0017】
本発明による化学式1の化合物は、下記の反応式1の経路を通じて製造できる。
【化9】

(式中、Rは、フェノール保護基であって、炭素数1〜4の低級アルキル基、アリル基、アルキルシリルやアルキルアリールシリル基またテトラヒドロピラニル基であり、Rは、炭素数1〜4のアルキル基またはアリル基を有するカルボン酸保護基であり、Xは、臭素原子、ヨード原子を示し、X及びXは、塩素原子、臭素原子、ヨード原子または親核置換反応に反応性がよい離脱基を意味する。)
【0018】
以下、本発明による化合物の製造方法を具体的に説明するが、下記の記載が本発明の範囲を限定するものではない。
【0019】
[工程A]化学式8の化合物の製造
化学式8の化合物を得るためには、化学式3の化合物である4−ハロ−2−メチルフェノールを、グリニャール(Grignard reagent)試薬でフェノール基を保護して、分離過程無しに順に有機金属試薬と硫黄(S)を反応させた後、化学式7の化合物を反応させて得ることが好ましい。本工程は、細部的に4段階の反応を連続に経るようになる。
【0020】
以下、細部工程を説明する。
【0021】
[工程A-1]
この工程に使用される無水溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタンなどの単一溶媒や、二種以上のこれら溶媒を配合した混合溶媒を使用する。この中でも、好ましい溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジエチルエーテルとテトラヒドロフランの混合溶媒である。
【0022】
使用されるグリニャール試薬は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチルマグネシウムクロライド(R2MgCl)またはアルキルマグネシウムブロマイド(R2MgBr)である。この中でも最も好ましくは、iso−プロピルマグネシウムクロライド((CH3)2CHMgCl)である。
【0023】
反応温度は、使用される溶媒によって異なってくるが、通常−20〜40℃であり、好ましくは、0℃から室温(25℃)で反応する。反応時間は、反応温度と使用する溶媒によって異なってくるが、通常10〜60分、好ましくは、10〜30分間反応する。
【0024】
[工程A-2とA-3]
ハロゲン−金属置換反応で使用される有機金属試薬としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどが挙げられる。この中でも、好ましくは、tert−ブチルリチウムである。
【0025】
硫黄(S)は、粒子の細かい粉末形態のものが好ましく、これを溶媒に直接加えて反応させる。
【0026】
反応温度は、使用される溶媒によって異なってくるが、通常は、−78〜25℃であり、好ましくは、ハロゲン−金属置換反応は、−75℃で行って、硫黄(S)導入反応は、−75℃から出発して、室温(25℃)で反応する。反応時間は、反応段階によって、ハロゲン−金属置換反応は10〜30分間、硫黄(S)導入反応は、30〜90分間反応する。
【0027】
[工程A-4]
この工程で使用される化学式7の5−ハロゲンメチル−4−メチル−2−[4−(トリフルオロメチル)フェニル]チアゾールは、公知の方法(国際公開第2003/106442号パンフレット)によって合成する。化学式7のハロゲンは、塩素、臭素、ヨード元素が使用されて、この中でも塩素元素の化合物が好ましい。
【0028】
反応温度は、使用される溶媒によって異なってくるが、通常−78〜25℃で行って、好ましくは、0〜10℃で反応する。反応時間は、通常10〜120分間行って、好ましくは、10〜60分間以下とする。
【0029】
[工程B]化学式9の化合物の製造
化学式9の化合物を得るためには、化学式8の化合物と、フェノール保護基として通常使用されている化合物とを塩基存在下で反応させればよい。
【0030】
この工程において使用される非プロトン性極性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン、エチルアセテート、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。この中でも、使用される溶媒としては、非プロトン性極性溶媒が好ましく、さらに好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタンである。
【0031】
使用される塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、イミダゾール、N,N−ジメチルアミノピリジンなどのアミン類塩基を使用して、アルキルまたはアリルエーテル化保護基の反応は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどを塩基として使用する。この中でも好ましい塩基としては、イミダゾールと炭酸カリウムである。
【0032】
シリル保護基は、アルキルシリルハライドやアルキルアリールシリルハライドを使用して、テトラヒドロピラニル保護基は、3,4−ジヒドロ−2H−ピランを使用する。
【0033】
反応温度は、使用される溶媒によって異なってくるが、通常は−10〜80℃であり、好ましくは、0℃から室温(25℃)で反応する。反応時間は、反応温度と使用する溶媒によって異なってくるが、通常1時間〜1日間、好ましくは、4時間以内で反応することが好ましい。
【0034】
[工程C]化学式10の化合物の製造
化学式10の化合物は、化学式9の化合物からチオエーテルのα−水素(α−proton)を強塩基で処理して、親核反応物(nucleophile)を製造した後、多種な親電子化合物を反応させて得る。
【0035】
この工程で使用される無水溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタンなどの単一溶媒や、二種以上のこれら溶媒を配合した混合溶媒を使用する。この中でも、最も好ましい溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルとテトラヒドロフランの混合溶媒である。
【0036】
α−水素引抜反応に使用される強塩基試薬としては、カリウムtert−ブトキシド(t-BuOK)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム及びtert−ブチルリチウムなどが使用されて、この中でも、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)が最も好ましい。
【0037】
チオエーテルの親核化合物と反応する親電子化合物(electrophile)は、ベンジルハライドを使用する。
【0038】
反応温度は、使用される溶媒によって異なってくるが、通常は−78〜25℃であり、好ましくは、強塩基によるα−水素引抜反応は、−75℃で行って、親電子化合物は、−75℃で付加して、室温(25℃)まで徐々に温度を上げながら反応する。反応時間は、反応段階によって異なるが、強塩基によるα−水素引抜反応は、10〜30分間間、親電子化合物との反応は、30〜90分間行う。
【0039】
[工程D]化学式11の化合物の製造
化学式11の化合物は、化学式10の化合物からフェノール保護基の除去反応により得られる。
【0040】
この工程で使用される極性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン、エチルアセテート、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノールなどが挙げられる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。この中でも、使用される溶媒としては、極性溶媒がよく、最も好ましくは、テトラヒドロフランである。
【0041】
フェノール保護基の脱保護方法としては、メチル、エチル、tert−ブチル、ベンジル、アリルエーテル保護基の場合、トリメチルシリルヨード、エタンチオアルコールナトリウム塩、リチウムヨード、アルミニウムハロゲン化物、ホウ素ハロゲン化物、トリフルオロ酢酸などのルイス酸類が使用されて、トリメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリルなどのシリル化保護基は、テトラブチルアンモニウムフッ素(Bu4N+F-)、ハロゲン酸(フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸)、フッ化カリウムなどのフッ素化物などを使用する。この中でも、シリル化基の脱保護基反応の方法としては、フッ素化物が好ましく、さらに好ましくは、テトラブチルアンモニウムフッ素を使用することが好ましい。
【0042】
反応温度は、使用する方法と溶媒によって異なってくるが、通常は0〜120℃であり、好ましくは、10℃〜25℃で反応をする。反応時間は、反応温度によって異なってくるが、通常30分〜1日間、好ましくは、2時間以内で反応することが好ましい。
【0043】
[工程E]化学式12の化合物の製造
化学式11のラセミ化合物から、化学式12の化合物であるR−異性体と、また他の異性体であるS−異性体とをそれぞれ分離することにより製造される。この工程は、キラル順相カラムを適用した高性能液体クロマトグラフィーを利用することができ、溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、ペンタンなどの非極性溶媒と、エタノール、イソプロピルアルコールなどの極性溶媒との混合溶媒を使用する。
【0044】
[工程F]化学式13の化合物の製造
化学式13の化合物は、化学式12の化合物と、ハロゲン酢酸アルキルエステルまたはハロゲン酢酸アリルエステルとを、塩基存在下で反応させることにより製造される。
【0045】
ハロゲン酢酸アルキルエステルまたはハロゲン酢酸アリルエステルは、公知の化合物として容易に入手可能なものであり、ハロゲンは、塩素原子、臭素原子、ヨード原子などである。使用されたハロゲン酢酸アルキルエステルの中、最も好ましくは、ブロモ酢酸メチルエステル、ブロモ酢酸アリルエステル、またはブロモ酢酸エチルエステルである。
【0046】
この工程で使用される溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン、エタノール、メタノールなどの水溶性単一溶媒を使用するか、1〜10%の水を混合した溶媒を使用する。この中でも、使用される溶媒として最も好ましいものは、1〜5%水を混合したアセトンまたはジメチルスルホキシドである。
【0047】
使用される塩基としては、反応に悪影響を与えないものであれば、弱塩基でも強塩基でも特に制限はなく、水素化ナトリウム、水素化リチウムなどのアルカリ金属水素化物、水素化カリウムなどのアルカリ土類金属水素化物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物などの強塩基、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素化カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩が挙げられる。使用される塩基としては、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、さらに好ましくは、炭酸カリウムである。
【0048】
反応温度は、使用する溶媒の沸点までであれば特に制限はないが、副反応を抑制するために、比較的高温の反応は好ましくない。通常は、0〜60℃で反応する。反応時間は、反応温度によって異なってくるが、通常30分〜1日間、好ましくは、30〜90分間反応する。
【0049】
[工程G]化学式1の化合物の製造
化学式1の化合物は、化学式13の化合物から、水溶性無機塩とアルコール溶液でカルボン酸エステルの加水分解を通じて製造するか、アリルエステルの場合、パラジウム触媒下で塩を製造する。
【0050】
この工程で使用される溶媒としては、メタノール、エタノールのようなアルコール類であって、水と混合される水溶性溶媒を使用して、無機塩としては、カルボン酸アルカリ塩の形態によって、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を、0.1〜3N程度の水溶液を調製して使用する。化学式13の化合物をカルボン酸の形態に得るために使用される酸としては、酢酸または0.1〜3N塩酸水溶液を使用することが好ましい。
【0051】
反応温度は、副反応を抑制するために、比較的低温で反応することが好ましく、通常は、0℃〜室温で反応する。反応時間は、反応温度によって異なってくるが、通常10分〜3時間、好ましくは、30分〜1時間反応する。
【0052】
本発明による化学式1の化合物の薬学的に許容される塩の製造は、下記反応式2に示したように、前記反応式1の化学式13の化合物は、有機溶媒の中で、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン触媒と金属塩を利用したアリルエステルの塩置換反応をして容易に製造できる。使用される溶媒としては、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルなどを使用して、使用される触媒としては、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィンが可能であって、塩交換反応のための塩としては、カリウム2−エチルヘキサノエート、ナトリウム2−エチルヘキサノエートが好ましい。
【0053】
【化10】

【0054】
このようにして得られた、本発明による化学式1の硫黄を含有した化合物は、PPARδ型タンパク質のリガンドとして重要な物質である。
【0055】
本発明の範囲は、化学式1の化合物、その溶媒化物及びその塩を含み、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δ(Peroxisome Proliferator Activated Receptorδ:PPARδ)の活性化剤組成物として有用である。また、本発明による化学式1の化合物または前記化合物の薬学的に許容される塩は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δ(Peroxisome Proliferator Activated Receptorδ:PPARδ)を活性化させることにより、動脈硬化症または高脂血症治療及び予防、高密度リポ蛋白の増進、糖尿病の治療及び予防、肥満治療及び予防、筋肉強化または持久力増進、記憶力増進、痴呆またはパーキンソン病の治療及び予防のための医薬組成物と、健康食品補助剤、健康飲料、食品添加物、及び動物用飼料組成物として有用である。また、本発明による化学式1の化合物または前記化合物の薬学的に許容される塩は、肥満予防及び肥満改善、筋肉強化及び持久力増進のための機能性化粧品組成物として有用であり、筋肉強化及び持久力増進のために、上記機能性化粧品組成物は、軟膏剤形や、ローション、流動性クリーム、クリームまたはゲルに剤形化されて、運動前・後、所望の身体部位に塗布することができて、所望の効果を達成するために長期間使用することもできる。また、本発明による化学式1の化合物または前記化合物の薬学的に許容される塩は、糖尿病またはdiabetic ulcerと呼ばれる糖尿による足部潰瘍を予防または治療するために、軟膏剤形に製剤化されて、身体の各部位に塗布できる。
【0056】
また、本発明は、前記化学式1のチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δ(Peroxisome Proliferator Activated Receptorδ:PPARδ)の活性化剤組成物を提供する。
【0057】
前記薬学的に許容する塩は、上記化学式1の化合物のカルボキシル酸と塩をなすことができて、薬学的に許容される塩を全て含み、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属としてLi、Na、K、Ca2+などが好ましい。
【0058】
本発明による治療学的効果を達成するに使用される化学式1の化合物またはその薬学的に許容される塩の量は 、特定化合物、投与方法、治療対象、及び治療する疾患によって異なってくるが、通常的な医薬の投与量に依存すればよく、より好ましくは、上記化学式1の化合物の有効投入量は、1〜100mg/kg(体重)/1日範囲内で投与される。そして、1日有効投入量の範囲内で、一日一回または一日数回に分けて投入する。また、剤形によって経口投与または局所投与、いずれも可能である。本発明による薬剤学的組成物の経口投与の場合、既存のあらゆる多様な形態に製造可能であって、例えば、錠剤、粉末剤、乾燥シロップ、チュアブル錠剤、顆粒剤、チューイン錠、カプセル剤、軟質カプセル剤、丸剤、ドリンク剤、舌下錠(sublingual tablet)などの様々な形態が可能である。本発明による錠剤は、有効量で生物学的利用能のある任意の形態または方式、即ち、経口経路で患者に投与でき、治療または予防しようとする疾病状態の特性、疾病の段階、及びその他の関連事情によって、適した投与形態または方式を容易に選択することができて、本発明による組成物が錠剤である場合、一つ以上の薬剤学的に許容される賦形剤を含むことができ、このような賦形剤の比率及び性質は、選択された錠剤の溶解度及び化学的特性、選択された投与経路及び標準薬剤実務によって決定できる。
【0059】
本発明による化学式1の化合物は、高脂血症改善及び予防、高密度リポ蛋白の増進、糖尿病の改善及び予防、肥満改善及び予防、筋肉強化または持久力増進、記憶力増進、痴呆またはパーキンソン病の改善及び予防のための目的で、健康食品補助剤または健康飲料に添加することができる。この際、食品または飲料への前記化合物の添加量は、用途及び目的によって調節することができ、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
[実施例]
(実施例1)化学式8の化合物の製造(工程A)
窒素条件下で4−ヨード−2−メチルフェノール500mg(2.14mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を0℃に維持する。イソプロピルマグネシウムクロライド1.1ml(2M-エーテル溶液、2.16mmol)を徐々に付加して、10分間反応させる。反応溶液を−78℃に十分冷却後、tert-ブチルリチウム2.77ml(1.7M-ヘプタン溶液、4.70mmol)を徐々に滴加して、20分間さらに反応する。硫黄69mg(2.14mmol)を徐々に付加して、この反応物の温度が15℃になるまで反応させる。40分後、同じ温度で化学式7の化合物である5-クロロメチル−4-メチル−2−[(4−トリフルオロメチル)フェニル]−チアゾール624mg(2.14mmol)を無水THF 2mlに溶かして徐々に加える。さらに1時間程度反応させた後、塩化アンモニウム水溶液20mlを加えて反応を終了する。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで水分を除去して、ろ過後、溶媒を減圧蒸留して除去する。残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=3/1)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物728mg(収率:86%)を得た。
1H NMR(300 MHz, CDCl3) δ 7.96 (d, 2H, J = 8.1 Hz), 7.65(d, 2H, J = 8.3 Hz), 7.19 (d, 1H, J = 1.5 Hz), 7.01 (dd, 1H, J= 8.2, 2.0 Hz), 6.62 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 5.86 (brs, 1H), 4.07 (s, 2H), 2.19 (s, 3H), 2.12(s, 3H)
13C NMR(75.5 MHz, CDCl3) δ 163.9, 155.5, 151.7, 137.4, 136.9, 133.5. 131.9 (q, J = 32.6 Hz), 131.7, 126.8, 126.3, (q, J = 3.9 Hz), 125.8, 123.8, 115.7, 33.2, 16.2, 14.8
【0061】
(実施例2)化学式9の化合物(R1=t-Bu(CH3)2Si-、工程B)
化学式8の化合物500mg(1.26mmol)とイミダゾール171mg(2.52mmol)をジメチルホルムアミド5mlに完全に溶かす。tert-ブチルジメチルシリルクロライド209mg(1.38mmol)を徐々に加えて、室温で4時間攪拌する。反応終結後、塩化アンモニウム水溶液とエチルアセテートを利用して抽出し、有機層において硫酸マグネシウムで水分を除去して、ろ過後、溶媒を減圧蒸留して除去する。残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=10/1)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物610mg(収率:95%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): 7.97 (d, 2H, J = 8.1 Hz), 7.65 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.19 (d, 1H, J= 1.9 Hz) 7.07 (m, 1H), 6.69 (d, 1H, J = 8.3 Hz), 4.11 (s, 2H), 2.21 (s, 3H), 2.11 (s, 3H), 1.01 (s, 9H), 0.21 (s, 6H) 13C NMR (75.5 MHz, CDCl3): δ 163.2, 154.7, 151.5, 137.1, 136.6, 133.3, 132.4, 131.7, 131.2, 131.0, 130.2, 129.2, 126.6, 126.1, 126.06, 126.01, 125.9, 124.9, 119.4, 32.8, 25.9, 18.5, 16.9, 15.0, -4.0
【0062】
(実施例3)化学式10の化合物の製造(R1=t-Bu(CH3)2Si-、工程C)
窒素条件下で、実施例2で得た化学式9の化合物(R1=t-Bu(CH3)2-)300mg(0.59mmol)を無水テトラヒドロフラン5mlに溶かして、温度を−78℃に維持する。この溶液にリチウムジイソプロピルアミド619μl(2.0M エーテル溶液、1.24mmol)を徐々に付加し、10分間反応する。反応溶液を−78℃に維持しながらベンジルブロマイド77μl(0.65mmol)を徐々に付加して、同じ温度で30分間攪拌する。塩化アンモニウム水溶液5mlを加えて反応を終了する。有機層を分離し、硫酸マグネシウムで水分を除去して、ろ過後、溶媒を減圧蒸留して除去する。残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=10/1)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物265mg(収率:75%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 7.97 (d, 2H, J = 8.1 Hz), 7.65 (d, 2H, J = 8.2Hz), 7.03-7.26 (m, 7H) 6.63 (d, 1H, J = 8.3 Hz), 4.51 (dd, 1H, J = 9.8, 5.3 Hz), 3.37 (dd, 1H, J = 9.8, 5.3 Hz), 3.05 (dd, 1H, J = 13.6, 9.9 Hz), 2.10 (s, 3H), 1.83 (s, 3H), 0.98 (s, 9H), 0.18 (s, 6H) 13C NMR (75 MHz, CDCl3): δ 163.5, 155.1, 151.8, 138.4, 137.7, 136.5, 133.5, 130.3, 129.3, 128.9, 127.2, 126.8, 126.7, 126.2, 126.1, 124.5, 119.4, 49.2, 44.4, 26.1, 18.7, 17.1, 15.1, -3.81, -3.84
【0063】
(実施例4)化学式11の化合物の製造(工程D)
窒素条件下で、実施例3で得た化学式10の化合物(R1=t-Bu(CH3)2Si-)200mg(0.33mmol)を無水テトラヒドロフラン5mlに溶かして、常温を維持しながらテトラブチルアンモニウムフロライド1Mテトラヒドロフラン溶液660μl(0.66mmol)を加えて、1時間攪拌する。反応終了後、エチルアセテート、水を加えて有機層を抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して除去する。残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5/1)でシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物146mg(収率:91%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.92 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.50 (s, 1H), 7.59 (d, 2H, J = 8.2Hz), 7.07-7.22 (m, 6H), 6.85(m, 1H), 6.44 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 4.47 (dd, 1H, J = 9.7, 5.4 Hz), 3.39 (dd, 1H, J = 13.8, 5.4 Hz), 3.06 (dd, 1H, J = 13.8, 9.8 Hz), 2.12 (s, 3H), 1.73 (s, 3H) 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 164.1, 155.7, 151.2, 138.0, 137.9, 137.0, 136.4, 133.8, 131.8, 131.5, 129.0, 128.6, 127.2, 127.0, 126.6, 126.14, 126.11, 125.7, 125.0, 122.9, 122.7, 115.2, 60.8, 49.1, 43.7, 21.2, 15.9, 14.3, 14.2
【0064】
(実施例5)化学式12の化合物の製造(工程E)
実施例4で得られた化学式11の化合物90mgをsemiprepキラルHPLCカラム(chiralpack AD-E)を通じて、表題化合物であるR-formの化学式12の化合物と、相応するまた他の異性体であるS-formの化合物とをそれぞれ45mgずつ得た。
移動相:ヘキサン/イソプロピルアルコール:90/10
flow rate:3ml/min
【0065】
(実施例6)化学式13の化合物の製造(工程F)
実施例5で得られた化学式12の化合物20mg(0.04mmol)を、5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム127mg(0.9mmol、2.3当量)を室温でよく混ぜる。ブロモアセト酸エチルエステル67μl(0.6mmol、1.5当量)を付加して、4時間強烈に攪拌する。反応終了後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物である化学式13の化合物を22mg(収率:95%)得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) : 7.98 (d, 2H, J = 8.1 Hz), 7.65 (d, 2H, J = 8.3 Hz), 7.06-7.27 (m, 7H), 6.55 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 4.59 (s, 2H), 4.53 (dd, 1H, J = 9.7, 5.3 Hz), 4.22 (q, 2H, J = 7.1 Hz), 3.37 (dd, 1H, J= 13.7, 5.3 Hz), 3.17 (m, 1H) 2.20 (s, 3H), 1.83 (s, 3H), 1.26 (t, 3H, J= 7.2 Hz) 13C NMR (75 MHz, CDCl3) : 169.1, 163.6, 156.9, 151.8, 138.3, 137.4, 137.3, 136.4, 133.4, 129.3, 128.9, 128.6, 127.2, 126.8, 126.3, 126.2, 126.1, 125.1, 111.8, 65.9, 61.7, 49.1, 44.4, 16.5, 15.1, 14.5
【0066】
(実施例7)化学式1の化合物の製造(工程G)
実施例6で得られた化学式13の化合物20mg(0.03mmol)とエタノール15mlをよく混ぜた後、3N−水酸化ナトリウム水溶液15μlを付加する。室温で20分間攪拌後、反応が終了すると、2N−HClでpHを2.0に合わせる。エタノールを減圧蒸留して80%程度除去し、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出した後、ろ過し、溶媒を減圧蒸留して、LH−20カラムクロマトグラフィーで精製し、本発明による化合物である化学式1の化合物を16mg(収率:98%)得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 7.92 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.50 (s, 1H), 7.59 (d, 2H, J = 8.2Hz), 7.07-7.22 (m, 6H), 6.85(m, 1H), 6.44 (d, 1H, J = 8.2 Hz), 4.47 (dd, 1H, J = 9.7, 5.4 Hz), 3.39 (dd, 1H, J = 13.8, 5.4 Hz), 3.06 (dd, 1H, J = 13.8, 9.8 Hz), 2.12 (s, 3H), 1.73 (s, 3H) 13C NMR (125 MHz, CDCl3): δ 164.1, 155.7, 151.2, 138.0, 137.9, 137.0, 136.4, 133.8, 131.8, 131.5, 129.0, 128.6, 127.2, 127.0, 126.6, 126.14, 126.11, 125.7, 125.0, 122.9, 122.7, 115.2, 60.8, 49.1, 43.7, 21.2, 15.9, 14.3, 14.2
【0067】
(試験例1)活性及び毒性試験
Transfection assayを通じて、本発明による化学式1の化合物であるR−Form化合物と、比較例として化学式2の化合物であるS−Form化合物のPPARδ活性を確認して、追加的にPPARsのsubtypeであるPPARαとPPARγに対する選択性実験と、MTT assayによる毒性実験、マウスを利用したin vivo活性及び毒性実験を行った。
【0068】
[Transfection assay]
CV-1細胞を利用してassayを行って、細胞培養は、5%の二酸化炭素が含まれた37℃培養器で、10% FBS, DBS(delipidated)と1%ペニシリン/ストレプトマイシンを入れたDMEM培地を利用して96ウェルプレートで行った。実験は、細胞接種、Transfection、開発物質処理、結果確認の4段階に分けて行った。CV-1細胞を96ウェルプレートに5,000 cell/wellとして接種し、24時間後に Transfection した。full lengthのPPARsプラスミドDNAとルシフェラーゼ活性(Luciferase activity)を有していてPPARsの活性が確認できるReporter DNA、Transfection効率情報を提供するβ-galactosidase DNAを、Transfection Reagentを利用して行った。化学式1の化合物と化学式2の化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かして、mediaを利用して多様な濃度で細胞に処理した。24時間インキュベータで培養した後、lysis bufferを利用して細胞を溶解し、Luminometerとmicroplate readerを利用してluciferaseとβ-galactosidase活性を測定した。測定されたluciferase値は、β-galactosidase値を利用して補正し、この値を利用してグラフを書いて、EC50値を求めた。
【0069】
【表1】

【0070】
上記表1から分かるように、本発明による化学式1の有機硫黄化合物は、EC50 PPARδに非常に選択的である。本発明による化学式1のチアゾール化合物は、PPARα、PPARγに対して100,000倍以上の選択性を示し、EC50は、PPARδに対して0.6nM、5.1nMの活性を示し、特に、本発明による化学式1の化合物であるR-異性質体は、化学式2のS-異性質体に比べ、約10倍の強い活性を示して、これは、本発明による化合物である化学式1の化合物が選択的意義を有するものであることを立証する。
【0071】
[MTT assay]
本発明による物質に対する毒性テストは、MTT assayを利用して行った。MTTは、水に溶解される黄色の物質であるが、生きている細胞に導入される場合、ミトコンドリアに存在する脱水素酵素により、水に溶解されない紫色の結晶に変わる。この物質をジメチルスルホキシドに溶解した後、550nmで吸光度を測定すれば、細胞毒性を確認することができる。実験方法は、以下のようである。
【0072】
まず、CV-1細胞を96ウェルプレートに5,000cell/wellとして接種した。24時間5%の二酸化炭素が含有された加湿された37℃培養器で培養した後、本発明による化合物である化学式1の化合物と化学式2の化合物を、多様な濃度で処理した。24時間培養をして、MTT試薬を入れた。15分間程度培養した後、生成された紫色の結晶をジメチルスルホキシドに溶解した後、microplate readerを使用して吸光度を測定し、これから細胞毒性を確認した。実験結果、本発明による化合物である化学式1の化合物とまた他の光学異性体である化学式2の化合物とのいずれも、EC50値の100,000倍に該当する濃度でも毒性が現れなかった。
【0073】
[毒性実験]
本発明による物質の毒性を評価するために、マウスを利用した急性毒性及び生殖毒性実験を進行した。6週齢のICRマウスに、化学式1の化合物を50mg/kg、300mg/kg、2000mg/kg容量で経口投与した後、14日間急性毒性について観察した。その結果、化学式1の化合物は、2000mg/kg容量においても死亡例が全く観察されず、体重変化、飼料摂取及び剖検結果においても、有意な異常を全く発見されなかった。また、C57BL/6マウスを利用した生殖毒性実験においても、化学式1の化合物による毒性が観察されなかった。妊娠が確認された雌性マウスに開発物質を経口投与した後、胎児の体重及び成長速度を比較した結果、有意な差が全く観察されず、骨発生及び疾患などの問題も現れなかった。
【0074】
(動物実験)
(肥満抑制効果の検証)
本発明による物質の肥満抑制効果を検定するために、マウスを利用したin vivo実験を行った。マウスは、14週齢のC57BL/6 (SLC Co.)を利用して、肥満を誘導するために、35%の脂肪が含有された飼料を使用した。35日間高脂肪を摂取させながら、vehicle、GW501516 (10mg/Kg/day)、本発明による化合物である化学式1の化合物(10mg/Kg/day)を経口投与した。実験結果、vehicleを投与したマウスは、体重が58.9%増加したが、GW501516と本発明による化合物である化学式1の化合物を投与したマウスの場合は、26.5%と23.1%のみが増加した。これは、vehicleを投与したマウスの体重増加の1/2に該当するもので、本発明による化合物である化学式1の化合物が肥満に対する強力な抑制効果を有することを確認することができて、その効果は、GW501516に比べて優れていた。
【0075】
(糖尿改善効果の検証)
本発明による物質の糖尿改善効果を検証するために、GTT(Glucose Tolerance Test)を行った。78日間薬物を経口投与したマウスに、グルコース(1.5g/Kg)を腹腔投与した後、時間別に血糖濃度変化を確認した。その結果、本発明による化合物である化学式1の化合物を経口投与したグループが、vehicleとGW501516を投与したマウスのグループに比べ、空腹血糖が低いことを確認した。また、本発明による化合物である化学式1の化合物を投与したグループでは、20〜40分の間に血糖が急速に減少して、100分後には、glucose clearanceが完璧に起こった。しかし、vehicleを投与したマウスのグループは、120分後にも正常血糖が維持できず、GW501516を投与したグループも、vehicleに比べ血糖は低かったが、正常に回復することができなかった。このような結果から、本発明による化学式1の化合物は、卓越な糖尿改善効果があることを確認した。
【0076】
(高脂血症改善効果の検証)
本発明による物質の高脂血症改善効果を検証するために、6週齢のC57BL/6 (SLC Co.)を利用したin vivo動物実験を行った。高脂肪飼料を摂取させながら、GW501516と本発明による化合物である化学式1の化合物を10mg/Kg/dayの濃度で経口投与した。6週後、眼窩採血を利用して血液を採取し、血清のみを分離して、血中HDL濃度を生化学的方法により測定した。その結果、GW501516を投与したグループでは、対照群に比べて36.3%のHDLが増加して、本発明による化合物である化学式1の化合物を投与したグループでは44.6%が増加した。 本発明による化合物である化学式1の化合物は、GW501516よりさらに効果的に血中HDLを増加させることを確認した。
【0077】
[動脈硬化抑制効果の検証]
本発明による物質の動脈硬化抑制効果を検証するために、動脈硬化疾患動物モデルであるApoE-/-マウスを利用したin vivo動物実験を行った。高脂肪コレステロール餌(20%脂肪、1.25%コレステロール;AIN-93G diet)を摂取させながら、本発明による化合物である化学式1の化合物を2mg/Kg/dayの濃度で経口投与した。28日後、Sudan IVを利用した動脈全領域plaque染色を行って、対照群との比較を通じて動脈硬化抑制効果を分析した。その結果、本発明による化合物である化学式1の化合物を投与したApoE-/-マウスの場合は、対照群に比べ、30%の動脈硬化抑制効果が確認された。
【0078】
(筋持久力強化及び筋機能増進効果の検証)
本発明による物質の筋持久力強化及び筋機能増進効果を検証するために、動物実験を行った。筋肉の生成は、大部分発生段階でなされるため、妊娠したマウスに、妊娠期間、授乳期間、または妊娠期間+授乳期間に化学式1の化合物を10mg/Kg/day濃度で経口投与した。対照群と処理群の胎児の体重や成長速度には差がなく、皮膚除去後、筋肉を観察した結果、処理群が、対照群に比べてさらに赤いことが観察された。ATPase染色と免疫染色結果においても、処理群でTypeI筋繊維が増加したことが確認された。このような筋繊維の変化が筋持久力及び筋機能改善効果に及ぼす影響を確認するために、Treadmillを利用した実験を行った。その結果、化学式1の化合物を投与したマウスの筋持久力が著しく強化された。
【0079】
【表2】

【0080】
また、本発明による物質を成体に投与した場合も、筋持久力強化及び筋機能増進効果が立証された。10週齢のC57BL/6マウスに、化学式1の化合物を10mg/Kgの濃度で経口投与しながら運動をさせた。運動は、30日間、一日一回、30分間ずつTreadmillを利用して運動させた。運動条件は、2meter/min速度で5分間、5meter/min速度で5分間、8meter/min速度で5分間、20meter/min速度で5分間運動させた。実験終了時点でTreadmillを利用して筋持久力強化及び筋機能増進効果をテストした。その結果、対照群に比べて、処理群の運動時間(1.5倍)及び運動距離(1.6倍)が同時に増加した。
【0081】
(記憶力増進実験)
本発明による物質に対して、記憶力増進による痴呆及びパーキンソン病治療効果を検証するために、動物実験を行った。妊娠したマウスに、妊娠期間及び授乳期間に開発物質を10mg/Kg濃度で経口投与した。対照群と処理群間の脳機能の差異を確認するために、モリス水迷路(Morris water maze)テストを行った。実験結果、化学式1の化合物を投与した処理群の場合、プラットフォームに到達するまで平均6.8秒がかかったが、対照群の場合は、24.2秒がかかった。したがって、化学式1の化合物は、記憶力増進に卓越な効果を示した。
【0082】
また、10週齢の成体C57BL/6マウスを利用して、脳疾患モデルにおいて記憶力増進による痴呆及びパーキンソン病治療効果を確認してみた。実験前、LPSをマウスの脳に注射して、脳疾患動物モデルを製作した。実験は、本発明による物質である化学式1の化合物投与有無及び運動有無によって四つのグループに分けて行って、運動条件は、2meter/min速度で5分間、5meter/min速度で5分間、8meter/min速度で5分間、20meter/min速度で5分間運動をさせた。実験終了後、モリス水迷路(Morris water maze)テストを行って、その結果を表3に示し、化学式1の化合物と運動による、脳疾患モデルにおいて記憶力増進による痴呆及びパーキンソン病の治療効果が立証された。
【0083】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によるチアゾール誘導体化合物は、先行発明から選択的意義を有するPPARδ活性化リガンドの特性があるものであって、動脈硬化症または高脂血症の治療及び予防、高密度リポ蛋白の増進、糖尿病の治療及び予防、肥満治療及び予防、筋肉強化または持久力増進、記憶力増進、痴呆またはパーキンソン病の治療及び予防のための医薬組成物と健康食品補助剤、健康飲料、食品添加物、機能性化粧品及び動物用飼料組成物として利用される可能性が非常に高い化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1のチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩。
【化1】

【請求項2】
請求項1に記載の化学式1のチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする、動脈硬化症または高脂血症治療及び予防のための医薬組成物。

【請求項3】
請求項1に記載の化学式1のチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする、高密度リポ蛋白(HDL)のレベルを高めるための医薬組成物。

【請求項4】
請求項1に記載の化学式1のチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする、糖尿病治療及び予防のための医薬組成物。

【請求項5】
請求項1に記載の化学式1のチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする、肥満治療及び予防のための医薬組成物。

【請求項6】
請求項1に記載の化学式1のチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする、筋肉強化または持久力増進のための医薬組成物。

【請求項7】
請求項1に記載の化学式1のチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする、記憶力増進、痴呆またはパーキンソン病の治療及び予防のための医薬組成物。

【請求項8】
請求項1に記載の化学式1のチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする健康食品補助剤または健康飲料。

【請求項9】
前記健康食品補助剤または健康飲料は、動脈硬化症または高脂血症の改善及び予防、高密度リポ蛋白の増進、糖尿病の改善及び予防、肥満改善及び予防、筋肉強化または持久力増進、記憶力増進、痴呆またはパーキンソン病の改善及び予防のためのものであることを特徴とする、請求項8に記載の健康食品補助剤または健康飲料。

【請求項10】
請求項1に記載の化学式1のチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする食品添加物。

【請求項11】
前記食品添加物は、動脈硬化症または高脂血症の改善及び予防、高密度リポ蛋白の増進、糖尿病の改善及び予防、肥満改善及び予防、筋肉強化または持久力増進、記憶力増進、痴呆またはパーキンソン病の改善及び予防のためのものであることを特徴とする、請求項10に記載の食品添加物。

【請求項12】
請求項1に記載の化学式1のチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする動物用飼料組成物。

【請求項13】
前記動物用飼料組成物は、動脈硬化症または高脂血症の改善及び予防、高密度リポ蛋白の増進、糖尿病の改善及び予防、肥満改善及び予防、筋肉強化または持久力増進、記憶力増進、痴呆またはパーキンソン病の改善及び予防のためのものであることを特徴とする、請求項12に記載の動物用飼料組成物。

【請求項14】
請求項1に記載の化学式1のチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とする機能性化粧品組成物。

【請求項15】
前記機能性化粧品組成物は、肥満予防及び改善、筋肉強化または持久力増進のためのものであることを特徴とする、請求項14に記載の機能性化粧品組成物。

【請求項16】
請求項1に記載の化学式1のチアゾール化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分とするペルオキシソーム増殖因子活性化受容体δ(Peroxisome Proliferator Activated Receptorδ:PPARδ)の活性化剤組成物。

【公表番号】特表2010−515724(P2010−515724A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545488(P2009−545488)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【国際出願番号】PCT/KR2008/000106
【国際公開番号】WO2008/084962
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(507171856)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファンデーション (14)
【Fターム(参考)】