説明

ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体リガンドアリール化合物及びこれらの化合物の用途

本発明は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor:PPAR)に活性を有する化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体、その薬学的に許容される塩、これを含む医薬、化粧品組成物、筋肉強化剤、記憶力増進剤、痴呆及びパーキンソン病治療剤、機能性食品及び動物用飼料組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満、高脂血症、動脈硬化及び糖尿病治療に使用できるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor:PPAR)活性化リガンドである下記化学式1の化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体、その薬学的に許容される塩及びこれを含む医薬、化粧品組成物、筋肉強化剤、記憶力増進剤、痴呆及びパーキンソン病治療剤、機能性食品及び動物用飼料組成物に関する。
[化学式1]

【背景技術】
【0002】
核受容体の中、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor:PPAR)は、3種のsubtypeであるPPARα, PPARγ, PPARδが知られている(Nature, 1990, 347, p645-650., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1994, 91, p7335-7359)。PPARα, PPARγとPPARδは、生体内組織による、区別される機能を有して、発現部位においても差を示す。PPARαは、人間において心臓、腎臓、骨格筋、大腸から主に発現されて(Mol. Pharmacol. 1998, 53, p14-22., Toxicol. Lett. 1999, 110, p119-127, J. Biol. Chem. 1998, 273, p16710-16714)、ペルオキシソーム(peroxisome)とミトコンドリアのβ-酸化と関連がある(Biol. Cell. 1993, 77, p67-76., J. Biol. Chem. 1997, 272, p27307-27312)。PPARγは、骨格筋では弱く発現されるが、脂肪組織では多量に発現されて、脂肪細胞の分化とエネルギーを脂肪形態に貯蔵、そして、インシュリンと糖の恒常性調節に関与をすると知られている(Moll. Cell. 1999, 4, p585-594., p597-609., p611-617)。PPARδは、人間を含む哺乳類とげっ歯類、ホヤ類のような脊椎動物などにおいて進化的に保存されている。今まで発見されたものは、Xenopus laevisではPPARβ(Cell 1992, 68, p879-887)、人間では、NUCI (Mol. Endocrinol. 1992, 6, p1634-1641)、PPARδ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1994, 91, p7355-7359)、NUCI(Biochem. Biophys. Res. Commun. 1993, 196, p671-677)、FAAR(J. Bio. Chem. 1995, 270, p2367-2371)などと知られてきたが、最近、PPARδにその名称が統一された。人間におけるPPARδは、chromosome 6p21.1-p21.2に存在すると知られており、ネズミでは、PPARδのmRNAが多様な部位の細胞から発見されるが、その量は、PPARαやPPARγに比べて低く現れる(Endocrinology 1996, 137, p354-366., J. Bio. Chem. 1995, 270, p2367-2371, Endocrinology 1996, 137, p354-366)。今までの研究によると、PPARδは、生殖細胞の発現過程で重要な役割をすると知られており(Genes Dev. 1999, 13, p1561-1574.)、中枢神経系(Central Nervous System: CNS)において神経細胞の分化(J. Chem. Neuroanat 2000, 19, p225-232)、消炎効果による傷の治癒(Genes Dev.2001, 15, p3263-3277, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2003, 100, p6295-6296)などの生理的機能を行うことが報告された。最近の研究によると、PPARδが脂肪細胞分化及び脂肪の代謝作用に関連があることが証明されたが(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2002, 99, p303-308., Mol. Cell. Biol. 2000, 20, p5119-5128)、これは、PPARδが、脂肪酸分解過程においてβ-oxidationに係わる核心遺伝子とエネルギー代謝に係わる遺伝子であるuncoupling proteins (UCPs)の発現を活性化して肥満を改善する(Nature 2000, 406, p415-418, Cell 2003, 113, p159-170, PLoS Biology 2004, 2, p1532-1539)。また、PPARδを活性化すると、HDLを高めて、体重変化のない状態で2型糖尿病を改善させて(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2001, 98, p5306-5311, 2003, 100, p15924-15929, 2006, 103, p3444-3449)、動脈硬化疾患関連遺伝子を抑制し、動脈硬化治療も可能である(Science, 2003, 302, p453-457)。したがって、PPARδを利用した脂肪代謝の調節は、肥満、糖尿、高脂血症及び動脈硬化を治療して解決するに必要な、重要な手掛かりを提供するものである。
【0003】
PPARδは、ミトコンドリア生成及び筋肉における筋繊維変換に影響を与え、持久力を増進させる。筋肉の筋繊維には、持久力を増進させる脂肪酸分解筋繊維(TypeI)と、瞬発力を増進させる糖分解筋繊維(TypeII)がある。持久力を増進させる脂肪酸分解筋繊維(TypeI)は、ミトコンドリアとミオグロビン(myoglobin)を多く有しているため赤色を帯びる反面、瞬発力を増進させる糖分解筋繊維(TypeII)は、相対的に白色を帯びる。ラットの筋肉に人為的にPPARδを過多発現させた結果、TypeI筋繊維が著しく増加した。また、ミオグロビン、電子伝達系酵素(シトクロムc、シトクロムc酸化剤II, IV)と脂肪酸β酸化酵素の発現が増加して、これにより、一般ラットに比べ、持続的に走れる時間と距離がそれぞれ67%、92%増加した(PLoS Biology, 2004, 2:e294)。
【0004】
PPARδの合成リガンドは、他のPPARα,γに比べ、選択性に優れたリガンドの開発が比較的よくなされておらず、初期に開発された選択的リガンドは、Merk社の研究陣が発表したL-631033であって(J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 1997, 63, p1-8)、これは、形態的に天然脂肪酸類の形態に基づき、側鎖を固定できる官能基を導入して作られた。また、同研究陣は、より効果的なL-165041リガンド(J. Med. Chem. 1996, 39, p2629-2654)を発表したが、これは、ロイコトリエン作動剤(leukotriene agonist)として既に知られていた化合物が、人間のPPARδに活性物質としても作用したものであった。この物質は、hPPARδに対して、PPARα,γより10倍の選択性を示し、EC50値も530nMで作用すると明かされた。また他のリガンドであるL-796449とL-783483は、親和度は著しく改善された反面(EC50=7.9 nM)、他のhPPAR subtypeとの選択性がほとんどないことが確認された。
【0005】
GlaxoSmithKline社で開発したPPARδの選択的リガンドGW501516 ([2-メチル-4-[[[4-メチル-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,3-チアゾール-5-イル]メチル]スルファニル]フェノキシ]アセト酸)は、先に開発されたリガンドより優れた生理的効能を示した(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2001, 98, p5306-5311)。
[化6]

【0006】
GW501516は、PPARδに非常によい親和度(1〜10nM)を示しており、PPARαやγに対しても、1000倍以上の選択性を示すことが確認された。
【0007】
一方、Glaxoグループにより出願された国際公開特許2001-00603号及び国際公開特許2002-62774、Eli Lillyにより出願された国際公開特許2003-072100号などには、PPARδの選択活性化剤として、下記化学式Aのチアゾール化合物が公知されている。
[化学式A]

(式中、R'は、CF3, Fなどであり、R''は、H, CH3, Clなどであり、R'''は、H, CH3, CH2CH3であって、R""は、H, アルキル、アリールアルキルである。)
【0008】
しかしながら、今まで開発されたリガンドから得られたPPARδの活性度は、全体リガンド−結合pocketの30〜40%部位と結合して示した結果である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、PPARの選択的活性化度の高い新規な化合物を提供することであり、また本発明による新規な化合物を含む医薬、化粧品組成物、筋肉強化剤、記憶力増進剤、痴呆及びパーキンソン病治療剤、機能性食品及び動物用飼料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor、以下、‘PPAR’という)に活性を有する下記化学式1で表される化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体、その薬学的に許容される塩、これを製造する方法、及びこれを含む医薬、化粧品組成物、筋肉強化剤、記憶力増進剤、痴呆及びパーキンソン病治療剤、機能性食品及び動物用飼料組成物に関する。
【0011】
[化学式1]

(上記化学式1において、Aは、SまたはSeであり、Bは、水素または
[化7]

であり、Rは、下記構造から選択されるアリール基であって、
[化8]

は、水素、C1〜C8のアルキルまたは
[化9]

であり、
は、水素、C1〜C8のアルキルまたはハロゲンであり、
及びRは、互いに独立して、水素、C1〜C8のアルキルであって、
は、水素、C1〜C8のアルキル、C2〜C7のアルケニル、アルカリ金属及びアルカリ土類金属であり、
11及びR12は、互いに独立して、水素、C1〜C8のアルキルまたはハロゲンであり、
21は、水素、ハロゲン、C1〜C7のアルキル、ヘテロ環基またはC1〜C7のアルコキシ基であって、
m及びnは、互いに独立して、1〜4の整数であり、
pは、1〜5の整数であり、
qは、1〜4の整数であり、
rは、1〜3の整数であり、
sは、1〜5の整数であって、
前記R、R、R、R、R、R11、R12及びR21のアルキル及びアルコキシは、一つ以上のハロゲンまたはC1〜C5のアルキルアミンがさらに置換可能である。
但し、Rが水素で且つAがSである場合は除く。)
【0012】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor:PPAR)に活性を有する、特に好ましい化学式1のアリール化合物のRは、下記構造から選択されるアリール基であり、
[化10]

は、ハロゲン置換または非置換のC1〜C8のアルキルまたは
[化11]

であり、
は、ハロゲン置換または非置換のC1〜C5のアルキルまたはハロゲンであり、R及びRは、互いに独立して、水素、ハロゲン置換または非置換のC1〜C5のアルキルであって、Rは、水素、C1〜C7のアルキル、アルカリ金属及びアルカリ土類金属であり、R11及びR12は、互いに独立して、水素、一つ以上のフルオルが置換されたC1〜C5のアルキルまたはハロゲンであり、R21は、水素、ハロゲン、ハロゲン置換または非置換のC1〜C5のアルキル、またはハロゲン置換または非置換のC1〜C5のアルコキシ基であって、pは、1〜5の整数であり、qは、1〜4の整数であって、sは、1〜5の整数であることが好ましい。
【0013】
本発明による化学式1化合物の範囲を例示すると、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチルまたはt−ブチル基とRのベンジル基は、フルオル、塩素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、t−ブチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、ペンタフルオロエチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−フルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシがさらに置換可能であり、
は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−エチルヘキシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、ペンタフルオロエチル、フルオル、塩素であり、
及びRは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−エチルヘキシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、ペンタフルオロエチルであり、
は、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−エチルヘキシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、ペンタフルオロエチル、エテニル、2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、Li、Na、K、Ca2+、Mg2+であって、
11及びR12は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−エチルヘキシル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、ペンタフルオロエチル、フルオル、塩素である。
【0014】
本発明による新規化合物は、下記の反応式の経路を通じて製造できる。
[反応式1]

(上記式中、Aは、SまたはSeであり、Bは、水素または
[化12]

であり、
は、下記構造から選択されるアリール基であって、
[化13]

は、水素、C1〜C8のアルキルまたは
[化14]

であり、
は、水素、C1〜C8のアルキルまたはハロゲンであり、
及びRは、互いに独立して、水素、C1〜C8のアルキルであって、
は、水素、C1〜C8のアルキル、C2〜C7のアルケニル、アルカリ金属(Li、Na、K)及びアルカリ土類金属(Ca2+、Mg2+)であり、
11及びR12は、互いに独立して、水素、C1〜C8のアルキルまたはハロゲンであり、
21は、水素、ハロゲン、C1〜C7のアルキル、ヘテロ環基またはC1〜C7のアルコキシ基であって、
Protは、フェノール保護基であって、炭素数1〜4の低級アルキル基、アリール基、アルキルシリルやアルキルアリールシリル基またはテトラヒドロピラニル基であり、
前記R、R、R、R、R、R11、R12及びR21のアルキル及びアルコキシは、一つ以上のハロゲンまたはC1〜C5のアルキルアミンがさらに置換可能であって、
m及びnは、互いに独立して、1〜4の整数であり、
pは、1〜5の整数であり、
qは、1〜4の整数であり、
rは、1〜3の整数であり、
sは、1〜5の整数であって、
は、臭素原子、ヨード原子を示し、
及びXは、互いに独立して、塩素原子、臭素原子、ヨード原子または親核置換反応に反応性がよい離脱基である 。
但し、Rが水素で且つAがSである場合は除く。)
【0015】
以下、本発明の製造法について詳細に説明する。
【0016】
[工程A]化学式4で表される化合物の製造
化学式4で表される化合物を得るためには、化学式2で表される化合物を、分離過程無しにグリニャール(Grignard reagent)試薬でフェノール基を保護して、順に有機金属試薬と硫黄(S)またはセレニウム(Se)を反応させた後、化学式3の化合物と反応させる。本工程は、細部的に4段階の反応を連続に経るようになる。
【0017】
以下、細部工程を説明する。
【0018】
[グリニャール試薬でフェノール基保護反応]
この工程に使用される無水溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタンなどの単一溶媒と二種以上の溶媒を配合した混合溶媒である。この中でも、最も好ましい溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジエチルエーテルとテトラヒドロフランの混合溶媒である。この中でも、使用される溶媒としては極性溶媒がよく、最も好ましくは、テトラヒドロフランである。
【0019】
使用されるグリニャール試薬は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチルマグネシウムクロライド(R2MgCl)またはアルキルマグネシウムブロマイド(R2MgBr)である。この中でも最も好ましくは、iso−プロピルマグネシウムクロライド((CH3)2CHMgCl)である。
【0020】
反応温度は、使用される溶媒によって異なってくるが、通常−20〜40℃であり、好ましくは、0℃から室温(25℃)である。反応時間は、反応温度と使用する溶媒によって異なってくるが、通常10〜60分、好ましくは、10〜30分間である。
【0021】
[ハロゲン−リチウム置換反応及び硫黄(S)またはセレニウム(Se)導入反応]
ハロゲン−リチウム置換反応で使用される有機金属試薬としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどが挙げられる。この中でも、好ましくは、tert−ブチルリチウムである。
【0022】
硫黄(S)またはセレニウム(Se)は、粒子の細かい粉末形態のものが好ましく、これを無水テトラヒドロフラン溶媒に溶かして加えるか、直接加えて反応させる。
【0023】
反応温度は、使用される溶媒によって異なってくるが、通常は、−78〜25℃であり、好ましくは、ハロゲン−金属置換反応は、−75℃で行って、硫黄(S)またはセレニウム(Se)導入反応は、−75℃から出発して、室温(25℃)で反応する。反応時間は、反応段階によって、ハロゲン−金属置換反応は10〜30分間、硫黄(S)またはセレニウム(Se)導入反応は、30〜120分間である。
【0024】
[化学式3化合物付加反応]
この工程で使用される化学式3の製造方法は、一般に広く使用されるパラジウム触媒を使用するスズキカップリング反応後、ハロゲン化反応によって合成する。化学式3のハロゲンは、塩素、臭素、ヨード元素が使用されて、この中でも塩素元素の化合物が好ましい。
【0025】
反応温度は、使用される溶媒によって異なってくるが、通常−78〜25℃であり、好ましくは、0〜10℃である。反応時間は、通常10〜120分間、好ましくは、10〜60分間以下とする。
【0026】
[工程B]化学式5で表される化合物の製造
化学式5で表される化合物を得るためには、化学式4で表される化合物と、フェノール保護基として通常使用されている化合物とを塩基存在下で反応させればよい。
【0027】
炭素数1〜4の低級アルキル基、アリル基、トリメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリルなどのアルキルシリルやアルキルアリールシリル基またはテトラヒドロピラニル基などのフェノール保護基などが挙げられる。これらの保護基の中、tert−ブチル基、テトラヒドロピラニル基、シリル化保護基が好ましい。
【0028】
この工程において使用される非プロトン性極性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン、エチルアセテート、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。この中でも、使用される溶媒としては、非プロトン性極性溶媒が好ましく、さらに好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタンである。
【0029】
使用される塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、イミダゾール、N,N−ジメチルアミノピリジンなどのアミン類塩基を使用して、アルキルまたはアリルエーテル化保護基の反応は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどを塩基として使用する。この中でも好ましい塩基は、イミダゾールと炭酸カリウムである。
【0030】
テトラヒドロピラニル保護基は、3,4−ジヒドロ−2H−ピランを、アルキルまたはアリルトリフェニルホスホニウムブロマイドと触媒反応させて得る。
【0031】
反応温度は、使用される溶媒によって異なってくるが、通常は−10〜80℃であり、好ましくは、0℃から室温(25℃)である。反応時間は、反応温度と使用する溶媒によって異なってくるが、通常1時間〜1日間、好ましくは、4時間以内であることが好ましい。
【0032】
[工程C]化学式7で表される化合物の製造
化学式7で表される化合物は、化学式5化合物からチオまたはセレノエーテルのα−水素(α−proton)を強塩基で処理して、親核反応物(nucleophile)を製造した後、多様な親電子化合物を反応させて得る。
【0033】
この工程で使用される無水溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ヘプタンなどの単一溶媒と二種以上の溶媒を配合した混合溶媒がある。この中でも、最も好ましい溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルとテトラヒドロフランの混合溶媒である。
【0034】
α−水素抽出反応に使用される強塩基試薬としては、カリウムtert−ブトキシド(t-BuOK)、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム及びtert−ブチルリチウムなどが使用されて、この中でも、ジイソプロピルアミド(LDA)が最も好ましい。
【0035】
チオまたはセレノエーテルの親核化合物と反応する親電子化合物(electrophile)は、公知の化合物として容易に入手可能なものまたは文献によって容易に製造可能な化合物であり、反応性のよいハロゲン、アルデヒド、ケトン基を含む化合物であって、これを無水溶媒に溶かして加えるか直接加えて反応させる。
【0036】
反応温度は、使用される溶媒によって異なってくるが、通常は−78〜25℃であり、好ましくは、強塩基によるα−水素抽出反応は、−75℃であり、親電子化合物は、−75℃で付加して、室温(25℃)まで徐々に温度を上げながら反応する。反応時間は、反応段階によって異なるが、強塩基によるα−水素抽出反応は、10〜30分間、親電子化合物との反応は、30〜90分間である。
【0037】
[工程D]化学式8で表される化合物の製造
化学式8の化合物は、化学式7の化合物からフェノール保護基の除去反応により得られる。
【0038】
この工程で使用される極性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン、エチルアセテート、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノールなどが挙げられる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。この中でも、使用される溶媒としては、極性溶媒がよく、最も好ましくは、テトラヒドロフランである。
【0039】
フェノール保護基の脱保護方法としては、メチル、エチル、tert−ブチル、ベンジル、アリルエーテル保護基の場合、トリメチルシリルヨード、エタンチオアルコールナトリウム塩、リチウムヨード、アルミニウムハロゲン化物、ホウ素ハロゲン化物、トリフルオロアセト酸などのルイス酸類が使用されて、トリメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、トリイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリルなどのシリル化保護基は、テトラブチルアンモニウムフッ素(Bu4N+F-)、ハロゲン酸(フッ素酸、塩酸、ブロム酸、ヨード酸)、フッ素化カリウムなどのフッ素化物などを使用する。この中でも、シリル化基の脱保護基反応の方法としては、フッ素化物が好ましく、さらに好ましくは、テトラブチルアンモニウムフッ素を使用することが好ましい。
【0040】
反応温度は、使用する方法と溶媒によって異なってくるが、通常は0〜120℃であり、好ましくは、10℃〜25℃である。反応時間は、反応温度によって異なってくるが、通常30分〜1日間、好ましくは、2時間以内である。
【0041】
[工程E]化学式9で表される化合物の製造
化学式9で表される化合物を得るためには、化学式8で表される化合物と、ハロゲンアセト酸アルキルエステルまたはアルキルハロゲンアセト酸アルキルエステルとを塩基存在下で反応させればよい。
【0042】
ハロゲンアセト酸アルキルエステルまたはアルキルハロゲンアセト酸アルキルエステルは、公知の化合物として容易に入手可能なものであり、アルキルハロゲンアセト酸アルキルエステルの中、入手が不可能なものは、アルキルアセト酸アルキルエステルの臭化反応によって得られる。ハロゲンは、塩素原子、臭素原子、ヨード原子などである。
【0043】
この工程で使用される溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、アセトン、エタノール、メタノールなどの水溶性単一溶媒か、1〜10%の水を混合した溶媒である。この中でも、使用される溶媒として最も好ましいものは、1〜5%水を混合したアセトンまたはジメチルスルホキシドである。
【0044】
使用される塩基としては、反応に悪影響を与えないものであれば、弱塩基でも強塩基でも特に制限はなく、水素化ナトリウム、水素化リチウムなどのアルカリ金属水素化物、水素化カリウムなどのアルカリ土類金属水素化物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物などの強塩基、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸水素化カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩が挙げられる。使用される塩基としては、アルカリ金属炭酸塩が好ましく、さらに好ましくは、炭酸カリウムである。
【0045】
反応温度は、使用する溶媒の沸点までであれば特に制限はないが、副反応を抑制するために、比較的高温は好ましくない。通常は、0〜90℃で反応する。反応時間は、反応温度によって異なってくるが、通常30分〜1日間、好ましくは、30〜120分間である。
【0046】
[工程F−1]化学式10で表される化合物の製造
化学式10で表される化合物は、化学式9の化合物から、水溶性無機塩とアルコール溶液でカルボキシル酸エステルの加水分解を通じて製造するか、化学式9の化合物と2.0M水酸化リチウムを、THFと水を混合した溶液下で反応して、エステルを加水分解する。
【0047】
この工程で使用される溶媒としては、メタノール、エタノールのようなアルコール類であって、水と混合される水溶性溶媒を使用する。
【0048】
使用される塩基としては、カルボキシル酸アルカリ塩の形態によって、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を0.1〜3N程度の水溶液を製造して使用する。一般式Xの化合物をカルボキシル酸形態に得るために使用される酸は、酢酸、硫酸水素ナトリウム(NaHSO4)または0.1〜3N塩酸水溶液であることが好ましい。一般式Xの化合物をカルボキシル酸形態に得るために、一般に0.5M NaHSOを使用することが好ましい。
【0049】
反応温度は、副反応を抑制するために、比較的低温であることが好ましく、通常は、0℃〜室温である。反応時間は、反応温度によって異なってくるが、通常10分〜3時間、好ましくは、30分〜1時間である。2.0M水酸化リチウムを、THFと水を混合した溶液下で反応させる場合、反応温度は、通常0℃であり、反応時間は、好ましくは1〜2時間である。
【0050】
[工程F−2]化学式10で表される化合物の製造
化学式10で表される化合物は、化学式9の化合物から、有機溶媒下で金属触媒と2−エチルヘキサノエートのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を利用したアリルエステルの塩置換反応を通じて製造する。
【0051】
この工程で使用される溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、エチルアセテートなどの無水有機溶媒である。
【0052】
使用される金属触媒としては、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィンを使用して、使用される金属触媒の量は、0.01当量〜0.1当量の範囲であることが好ましい。
【0053】
反応温度は、副反応を抑制するために、比較的低温であることが好ましく、通常は、0℃〜室温である。反応時間は、反応温度によって異なってくるが、通常10分間〜3時間、好ましくは、30分間〜1時間である。
【0054】
このような塩の化合物は、遠心分離を利用するか、あるいはイオン交換レジンを利用して純粋に分離する。上記得られた化学式10の金属塩形態の化合物は、工程F−1(加水分解工程)を利用して製造された塩形態の化合物に比べ、分離が容易である。
【0055】
このように得られた化学式1のY型化合物は、PPAR型タンパク質のリガンドとして重要な物質である。また、この化合物は、キラル炭素を有しており、その立体異性体が存在する。本発明の範囲は、化学式1のアリール化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体、及びその薬学的に許容される塩を含む。
【0056】
本発明による化学式1で表されるアリール化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体及びその薬学的に許容される塩は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor:PPAR)の活性化剤組成物として有用である。また、本発明による化学式1のアリール化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体及びその薬学的に許容される塩は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor:PPAR)を活性化させることにより、動脈硬化症または高脂血症治療及び予防用、コレステロール降下用、糖尿病治療及び予防用、肥満治療及び予防用、筋肉強化用、持久力増進用、記憶力増進用、痴呆またはパーキンソン病治療及び予防用医薬組成物と、機能性食品補助剤、機能性飲料、食品添加物、機能性化粧品及び動物用飼料組成物として有用である。また、本発明による化学式1のアリール化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体及びその薬学的に許容される塩は、肥満予防及び肥満改善、筋肉強化及び持久力増進のための機能性化粧品組成物として有用であり、筋肉強化及び持久力増進のために、上記機能性化粧品組成物は、軟膏剤形やローションまたはクリーム剤形として、運動前・後、所望の身体部位に塗布することができて、所望の効果を達成するために長期間使用することもできる。また、本発明による化学式1のアリール化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体及びその薬学的に許容される塩は、糖尿病またはdiabetic ulcerと呼ばれる糖尿による足部潰瘍を予防または治療するために、軟膏剤形に剤形化されて、身体の各部位に塗布できる。
【0057】
本発明は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor:PPAR)の活性化剤を有効成分とする、動脈硬化予防及び治療用、筋肉強化用、持久力増進用、記憶力増進用、痴呆またはパーキンソン病治療及び予防用医薬組成物と機能性食品補助剤、機能性飲料、食品添加物及び動物用飼料用組成物を提供する。
【0058】
また、本発明は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor:PPAR)に、前記受容体を活性化させる候補物質を添加する段階と、前記ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体の活性を測定する段階とを含む、候補物質から動脈硬化予防及び治療用、筋肉強化用、持久力増進用、記憶力増進用、痴呆またはパーキンソン病治療及び予防用活性物質のスクリーニング方法を提供する。
【0059】
前記薬学的に許容する塩は、上記一般式I化合物のカルボキシル酸と塩をなすことができて、薬学的に許容される有機塩を全て含み、無機塩としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属イオンとしてLi、Na、K、Ca2+、Mg2+などが好ましい。
【0060】
本発明による治療学的効果を達成するに使用される化学式1の化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体及びその薬学的に許容される塩の量は、特定化合物、投与方法、治療対象、及び治療する疾患によって異なってくるが、通常的な医薬の投与量に依存すればよく、より好ましくは、上記化学式1化合物の有効投入量は、1〜100mg/kg(体重)/1日範囲内である。そして、1日有効投入量の範囲内で、一日一回または一日数回に分けて投入する。また、剤形によって経口投与または局所投与、いずれも可能である。本発明による薬剤学的組成物の経口投与の場合、既存のあらゆる多様な形態に製造可能であって、例えば、錠剤、粉末剤、乾燥シロップ、チュアブル錠剤、顆粒剤、チューイン錠、カプセル剤、軟質カプセル剤、丸剤、ドリンク剤、舌下錠(sublingual tablet)などの様々な形態が可能である。本発明による錠剤は、有効量で生体利用性のある任意の形態または方式、即ち、経口経路で患者に投与でき、治療または予防しようとする疾病状態の特性、疾病の段階、及びその他の関連事情によって、適した投与形態または方式を容易に選択することができて、本発明による組成物が錠剤である場合、一つ以上の薬剤学的に許容される賦形剤を含むことができ、このような賦形剤の比率及び性質は、選択された錠剤の溶解度及び化学的特性、選択された投与経路及び標準薬剤実務によって決定できる。
【発明を実施するための形態】
【0061】
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明の方法を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0062】
(実施例1)化合物S1の製造
[化15]

窒素条件下で4−ヨード−2−メチルフェノール468mg(2mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を0℃に維持する。イソプロピルマグネシウムクロライド(2M)1.5mlを徐々に付加して、10分間反応させる。反応溶液を−75℃に十分冷却後、tert-ブチルリチウム2.00ml(1.7M-ヘキサン溶液、1.0当量)を徐々に付加する。10分間さらに攪拌後、同じ温度で固体状の硫黄(S)64mg(2mmol,1.0当量)を一遍に付加する。反応物の温度が15℃になるまで40分間反応後、同じ温度で一般式IIIの4-クロロメチル−4’-トリフルオロメチル−ビフェニル541mg(2mmol、1.0当量)を無水THF 10mlに溶かして徐々に加える。さらに1時間程度反応させた後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物630mg(収率:84%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.50 (d, 2H), δ7.28 (t, 2H), δ7.13 (s, 1H), δ7.07 (q, 1H), δ6.68 (d, 1H) δ5.20 (s, 1H), δ4.02 (s, 2H), δ2.17 (s, 3H)
【0063】
(実施例2)化合物S2の製造
[化16]

化合物S1 748mg(2mmol)とイミダゾール290mg(2.0当量)をジメチルホルムアミド20mlに完全に溶かす。tert-ブチルジメチルシリルクロライド165mg(1.1当量)を徐々に加えて、室温で4時間攪拌する。反応終結後、塩化アンモニウム水溶液とエチルアセテートを利用して抽出し、有機層の水分を硫酸マグネシウムで除去する。シリカゲルカラムを利用した精製後、溶媒を減圧蒸留して、表題化合物928mg(収率95%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.50 (d, 2H), δ7.27 (t, 2H), δ7.13 (s, 1H), δ7.05 (q, 1H), δ6.66 (d, 1H), δ4.04 (s, 2H), δ2.15 (s, 3H), δ1.01 (s, 9H), δ0.20 (s, 6H).
【0064】
(実施例3)化合物S3の製造
[化17]

化合物S2 977mg(2mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を−78℃に下げる。これにリチウムジイソプロピルアミド(LDA)3.6ml(1.8M, 2.0当量)を徐々に付加する。その後、反応溶液にベンジルブロマイド274μl(2.0mmol)を入れて、反応温度を徐々に室温に上げる。30分間さらに反応した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物961mg(収率:83%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.47~7.05 (m, 11H), δ6.63 (d, 1H), δ4.30 (m, 1H), δ3.54 (m, 1H), δ3.24 (m, 1H), δ2.12 (s, 3H), δ1.01 (s, 9H), δ0.21 (s, 6H).
【0065】
(実施例4)化合物S4の製造
[化18]

化合物S2 489mg(1mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を−78℃に下げる。これにリチウムジイソプロピルアミド(LDA)1.8ml(1.8M, 2.0当量)を徐々に付加する。その後、反応溶液に2−クロロ−5−フルオロベンジルブロマイド270μl(2.0mmol)を入れて、反応温度を徐々に室温に上げる。30分間さらに反応した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物523mg(収率:83%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.66 (s, 4H), δ7.45 (d, 2H), δ7.31 (d, 2H), δ7.08 (m, 4H), δ6.85 (m, 1H), δ6.60 (d, 1H), δ4.50 (t, 1H), δ3.41 (d, 2H), δ2.11 (s, 3H),δ1.01 (s, 9H), δ0.20 (s, 6H).
【0066】
(実施例5)化合物S5の製造
[化19]

化合物S2 489mg(1mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を−78℃に下げる。これにリチウムジイソプロピルアミド(LDA)1.8ml(1.8M, 2.0当量)を徐々に付加する。その後、反応溶液に3,4,5−トリフルオロベンジルブロマイド282μl(2.0mmol)を入れて、反応温度を徐々に室温に上げる。30分間さらに反応した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物518mg(収率:82%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.74 (q, 2H), δ7.14 (m, 4H), δ7.03 (d, 1H), δ6.79 (t, 4H), δ6.61 (q, 1H), δ6.41 (d, 1H), δ4.39 (t, 1H), δ3.26 (d, 2H), δ2.14 (s, 3H),δ1.01 (s, 9H), δ0.20 (s, 6H)
【0067】
(実施例6)化合物S6の製造
[化20]

化合物S2 489mg(1mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を−78℃に下げる。これにリチウムジイソプロピルアミド(LDA)1.8ml(1.8M, 2.0当量)を徐々に付加する。その後、反応溶液に2,5−ジフルオロベンジルブロマイド259μl(2.0mmol)を入れて、反応温度を徐々に室温に上げる。30分間さらに反応した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物503mg(収率:82%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.45 (d, 2H), δ7.30 (d, 2H), δ7.09 (m, 4H), δ6.75 (m, 1H), δ6.54 (m, 1H), δ4.44 (t, 1H), δ3.35 (m, 2H),δ2.19 (s, 3H),1.01 (s, 9H), δ0.20 (s, 6H).
【0068】
(実施例7)化合物S7の製造
[化21]

化合物S2 489mg(1mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を−78℃に下げる。これにリチウムジイソプロピルアミド(LDA)1.8ml(1.8M, 2.0当量)を徐々に付加する。その後、反応溶液に2,5−ジクロロベンジルブロマイド300μl(2.0mmol)を入れて、反応温度を徐々に室温に上げる。30分間さらに反応した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物531mg(収率:82%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.66 (s, 4H), δ7.45 (d, 2H), δ7.33 (d, 2H), δ7.08 (m, 2H), δ7.05 (m, 3H), δ6.52 (d, 1H), δ4.61 (q, 1H), δ3.58 (m, 2H),δ2.19 (s, 3H),1.01 (s, 9H), δ0.20 (s, 6H).
【0069】
(実施例8)化合物S8の製造
[化22]

化合物S2 489mg(1mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を−78℃に下げる。これにリチウムジイソプロピルアミド(LDA)1.8ml(1.8M, 2.0当量)を徐々に付加する。その後、反応溶液に2−クロロ−5−トリフルオロメチルベンジルブロマイド514mg(2.0mmol)を入れて、反応温度を徐々に室温に上げる。30分間さらに反応した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物538mg(収率:81%)を得た(EIMS: 665.2[M+H]+)。
【0070】
(実施例9)化合物S9の製造
[化23]

上記実施例3で製造されたS3 1131mg(2mmol)をテトラヒドロフラン20mlに完全に溶かす。室温でテトラブチルアンモニウムフロライド(TBAF)5ml(1M−テトラヒドロフラン溶液、2.5当量)を徐々に付加する。30分間反応後、塩化アンモニウム水溶液とエチルアセテートを利用して抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物873mg(収率:94%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.47~7.05 (m, 11H), δ6.63 (d, 1H), δ4.30 (m, 1H), δ3.54 (m, 1H), δ3.24 (m, 1H), δ2.14 (s, 3H).
【0071】
(実施例10)化合物S10の製造
[化24]

上記実施例9で製造されたS9 465mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。ブロモアセト酸エチルエステル134μl(1.2mmol、1.2当量)を付加して、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物512mg(収率:93%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.45 (d, 2H), δ7.22 (m, 5H), δ7.05 (m, 4H), δ6.54 (d, 1H), δ4.59 (s, 2H), δ4.26 (m, 3H), δ3.24 (m, 2H), δ2.18 (s, 3H), δ1.27 (t, 3H).
【0072】
(実施例11)化合物S11の製造
[化25]

上記実施例9で製造されたS9 465mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。エチル−2−ブロモ−2−プロパン酸メチル210μl(1.2mmol、1.2当量)を付加して、アセトンを補充しながら60〜90℃の熱を加えて、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物463mg(収率:80%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.66 (s, 4H), δ7.43 (d, 2H), δ7.22 (m, 5H), δ7.03 (m, 4H), δ6.50 (d, 1H), δ4.28 (q, 1H), δ4.19 (m, 2H), δ2.12 (s, 3H), δ1.54 (s, 6H), δ1.19 (t, 3H).
【0073】
(実施例12)化合物S12の製造
[化26]

上記実施例9で製造されたS9 465mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。エチル−2−ブロモブチレート146μl(1.2mmol、1.2当量)を付加して、アセトンを補充しながら60〜90℃の熱を加えて、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物470mg(収率:83%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.46 (d, 2H), δ7.23 (m, 5H), δ7.03 (m, 4H), δ6.51 (d, 1H), δ4.53 (t, 1H), δ4.21 (m, 3H), δ3.27 (m, 2H), δ2.19 (s, 3H), δ1.99 (m, 2H), δ1.28 (t, 3H), δ1.09 (t, 3H).
【0074】
(実施例13)化合物S13の製造
[化27]

上記実施例9で製造されたS9 465mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。エチル−2−ブロモ−2−メチルブチレート193μl(1.2mmol、1.2当量)を付加して、アセトンを補充しながら60〜90℃の熱を加えて、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物474mg(収率:80%)を得た(EIMS: 593.2[M+H]+)。
【0075】
(実施例14)化合物S14の製造
[化28]

上記実施例10で製造されたS10 550mg(1mmol)をTHF15ml及び水10mlによく混ぜた後、0℃で2.0M水酸化リチウム水溶液0.6mlを徐々に付加する。0℃で60分間さらに攪拌後、反応が終結すると、0.5M NaHSO 2.5mlを加えた後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、ろ過した後、溶媒を減圧蒸留して、LH−20カラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物512mg(収率:98%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.45 (d, 2H), δ7.22 (m, 5H), δ7.05 (m, 4H), δ6.54 (d, 1H), δ4.59 (s, 2H), δ4.24 (m, 1H), δ3.24 (m, 2H), δ2.18 (s, 3H).
【0076】
(実施例15)化合物S15の製造
[化29]

上記実施例9で製造されたS9 465mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。ブロモアセト酸アリルエステル219mg(1.2mmol、1.1当量)を付加して、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物529mg(収率:94%)を得た(EIMS: 563.1[M+H]+)。
【0077】
(実施例16)化合物S16の製造
[化30]

上記実施例15で製造されたS15 504mg(1mmol)とパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン56mg(0.05mmol、0.05当量)を無水ジクロロメタン20mlに溶かした後、常温で攪拌する。2−エチルヘキサノエートカリウム塩174mg(1mmol、1.0当量)を無水ジクロロメタン2mlに溶かした後、これを反応溶液に徐々に付加する。常温で1時間攪拌した後、遠心分離して溶媒を除去する。ジクロロメタン20ml、ノルマルへキサン20mlで生成された固体を洗浄して乾燥し、表題化合物509mg(収率:91%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.45 (d, 2H), δ7.22 (m, 5H), δ7.05 (m, 4H), δ6.54 (d, 1H), δ4.59 (s, 2H), δ4.24 (m, 1H), δ3.24 (m, 2H), δ2.18 (s, 3H).
【0078】
(実施例17〜150)
上記実施例1〜16の方法を使用して表1の化合物を製造し、製造された化合物のNMRを表2に示した。
【0079】
【表1】












【0080】
【表2】





【0081】
(実施例151)化合物S151の製造
[化31]

窒素条件下で4−ヨード−2−メチルフェノール590mgを無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を0℃に維持する。イソプロピルマグネシウムクロライド(2.0M)1.5mlを徐々に付加して、10分間反応させる。反応溶液を−75℃に十分冷却後、tert-ブチルリチウム2.00ml(1.7M-ヘキサン溶液、1.0当量)を徐々に付加する。10分間さらに攪拌後、同じ温度で固体状のセレニウム(Se)158mg(2mmol,1.0当量)を一遍に付加する。反応物の温度が15℃になるまで40分間反応後、同じ温度で一般式Iの4-クロロメチル−4’-トリフルオロメチル−ビフェニル541mg(2mmol、1.0当量)を無水THF 10mlに溶かして徐々に加える。さらに1時間程度反応させた後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物712mg(収率:84%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.50 (d, 2H), δ7.28 (t, 2H), δ7.13 (s, 1H), δ7.07 (q, 1H), δ6.68 (d, 1H) δ5.20 (s, 1H), δ4.02 (s, 2H), δ2.17 (s, 3H)
【0082】
(実施例152)化合物S152の製造
[化32]

化合物S151 842mg(2mmol)とイミダゾール290mg(2.0当量)をジメチルホルムアミド20mlに完全に溶かす。tert-ブチルジメチルシリルクロライド165mg(1.1当量)を徐々に加えて、室温で4時間攪拌する。反応終結後、塩化アンモニウム水溶液とエチルアセテートを利用して抽出し、有機層の水分を硫酸マグネシウムで除去する。シリカゲルカラムを利用した精製後、溶媒を減圧蒸留して、表題化合物1018mg(収率95%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.50 (d, 2H), δ7.27 (t, 2H), δ7.13 (s, 1H), δ7.05 (q, 1H), δ6.66 (d, 1H), δ4.04 (s, 2H), δ2.15 (s, 3H), δ1.01 (s, 9H), δ0.20 (s, 6H).
【0083】
(実施例153)化合物S153の製造
[化33]

化合物S152 1071mg(2mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を−78℃に下げる。これにリチウムジイソプロピルアミド(LDA)3.6ml(1.8M, 2.0当量)を徐々に付加する。その後、反応溶液にベンジルブロマイド301μl(2.2mmol)を入れて、反応温度を徐々に室温に上げる。30分間さらに反応した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物938mg(収率:75%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.47~7.05 (m, 11H), δ6.63 (d, 1H), δ4.30 (m, 1H), δ3.54 (m, 1H), δ3.24 (m, 1H), δ2.12 (s, 3H), δ1.01 (s, 9H), δ0.21 (s, 6H).
【0084】
(実施例154)化合物S154の製造
[化34]

化合物S152 1071mg(2mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を−78℃に下げる。これにリチウムジイソプロピルアミド(LDA)3.6ml(1.8M, 2.0当量)を徐々に付加する。その後、反応溶液に2−クロロ−5−フルオロベンジルブロマイド297μl(2.2mmol)を入れて、反応温度を徐々に室温に上げる。30分間さらに反応した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物1017mg(収率:75%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.66 (s, 4H), δ7.45 (d, 2H), δ7.31 (d, 2H), δ7.08 (m, 4H), δ6.85 (m, 1H), δ6.60 (d, 1H), δ4.50 (t, 1H), δ3.41 (d, 2H), δ2.11 (s, 3H),δ1.01 (s, 9H), δ0.20 (s, 6H).
【0085】
(実施例155)化合物S155の製造
[化35]

化合物S152 1071mg(2mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を−78℃に下げる。これにリチウムジイソプロピルアミド(LDA)3.6ml(1.8M, 2.0当量)を徐々に付加する。その後、反応溶液に3,4,5−トリフルオロベンジルブロマイド310μl(2.2mmol)を入れて、反応温度を徐々に室温に上げる。30分間さらに反応した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物1020mg(収率:75%)を得た(EIMS: 681.1[M+H]+)。
【0086】
(実施例156)化合物S156の製造
[化36]

化合物S152 1071mg(2mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を−78℃に下げる。これにリチウムジイソプロピルアミド(LDA)3.6ml(1.8M, 2.0当量)を徐々に付加する。その後、反応溶液に2,5−ジフルオロベンジルブロマイド285μl(2.2mmol)を入れて、反応温度を徐々に室温に上げる。30分間さらに反応した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物992mg(収率:75%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.45 (d, 2H), δ7.30 (d, 2H), δ7.09 (m, 4H), δ6.75 (m, 1H), δ6.54 (m, 1H), δ4.44 (t, 1H), δ3.35 (m, 2H),δ2.19 (s, 3H),1.01 (s, 9H), δ0.20 (s, 6H).
【0087】
(実施例157)化合物S157の製造
[化37]

化合物S152 1071mg(2mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を−78℃に下げる。これにリチウムジイソプロピルアミド(LDA)3.6ml(1.8M, 2.0当量)を徐々に付加する。その後、反応溶液に2,5−ジクロロベンジルブロマイド330μl(2.2mmol)を入れて、反応温度を徐々に室温に上げる。30分間さらに反応した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物1042mg(収率:75%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.66 (s, 4H), δ7.45 (d, 2H), δ7.33 (d, 2H), δ7.08 (m, 2H), δ7.05 (m, 3H), δ6.52 (d, 1H), δ4.61 (q, 1H), δ3.58 (m, 2H),δ2.19 (s, 3H),1.01 (s, 9H), δ0.20 (s, 6H).
【0088】
(実施例158)化合物S158の製造
[化38]

化合物S152 1071mg(2mmol)を無水テトラヒドロフラン20mlに溶かして、温度を−78℃に下げる。これにリチウムジイソプロピルアミド(LDA)3.6ml(1.8M, 2.0当量)を徐々に付加する。その後、反応溶液に2−クロロ−5−トリフルオロメチルベンジルブロマイド561mg(2.2mmol)を入れて、反応温度を徐々に室温に上げる。30分間さらに反応した後、塩化アンモニウム水溶液で反応を終結し、エチルアセテートと塩水溶液を使用して有機溶媒を抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物1068mg(収率:75%)を得た(EIMS: 713.1[M+H]+).
【0089】
(実施例159)化合物S159の製造
[化39]

上記実施例153で製造されたS153 1251mg(2mmol)をテトラヒドロフラン20mlに完全に溶かす。室温でテトラブチルアンモニウムフロライド(TBAF)5ml(1M−テトラヒドロフラン溶液、2.5当量)を徐々に付加する。30分間反応後、塩化アンモニウム水溶液とエチルアセテートを利用して抽出し、硫酸マグネシウムで有機層の水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物940mg(収率:92%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.47~7.05 (m, 11H), δ6.63 (d, 1H), δ4.30 (m, 1H), δ3.54 (m, 1H), δ3.24 (m, 1H), δ2.14 (s, 3H).
【0090】
(実施例160)化合物S160の製造
[化40]

上記実施例159で製造されたS159 511mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。ブロモアセト酸エチルエステル134μl(1.2mmol、1.2当量)を付加して、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物556mg(収率:93%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.45 (d, 2H), δ7.22 (m, 5H), δ7.05 (m, 4H), δ6.54 (d, 1H), δ4.59 (s, 2H), δ4.26 (m, 3H), δ3.24 (m, 2H), δ2.18 (s, 3H), δ1.27 (t, 3H).
【0091】
(実施例161)化合物S161の製造
[化41]

上記実施例159で製造されたS159 511mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。エチル−2−ブロモ−2−プロパン酸メチル210μl(1.2mmol、1.2当量)を付加して、アセトンを補充しながら60〜90℃の熱を加えて、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物500mg(収率:80%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.66 (s, 4H), δ7.43 (d, 2H), δ7.22 (m, 5H), δ7.03 (m, 4H), δ6.50 (d, 1H), δ4.28 (q, 1H), δ4.19 (m, 2H), δ2.12 (s, 3H), δ1.54 (s, 6H), δ1.19 (t, 3H).
【0092】
(実施例162)化合物S162の製造
[化42]

上記実施例159で製造されたS159 511mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。エチル−2−ブロモブチレート146μl(1.2mmol、1.2当量)を付加して、アセトンを補充しながら60〜90℃の熱を加えて、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物519mg(収率:83%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.46 (d, 2H), δ7.23 (m, 5H), δ7.03 (m, 4H), δ6.51 (d, 1H), δ4.53 (t, 1H), δ4.21 (m, 3H), δ3.27 (m, 2H), δ2.19 (s, 3H), δ1.99 (m, 2H), δ1.28 (t, 3H), δ1.09 (t, 3H).
【0093】
(実施例163)化合物S163の製造
[化43]

上記実施例159で製造されたS159 511mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。エチル−2−ブロモ−2−メチルブチレート193μl(1.2mmol、1.2当量)を付加して、アセトンを補充しながら60〜90℃の熱を加えて、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物512mg(収率:80%)を得た(EIMS: 641.1[M+H]+)。
【0094】
(実施例164)化合物S164の製造
[化44]

上記実施例160で製造されたS160 597mg(1mmol)をTHF15ml及び水10mlによく混ぜた後、0℃で2.0M水酸化リチウム水溶液0.6mlを徐々に付加する。0℃で60分間さらに攪拌後、反応が終結すると、0.5M NaHSO 2.5mlを加えた後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、ろ過した後、溶媒を減圧蒸留して、LH−20カラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物517mg(収率:93%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.45 (d, 2H), δ7.22 (m, 5H), δ7.05 (m, 4H), δ6.54 (d, 1H), δ4.59 (s, 2H), δ4.24 (m, 1H), δ3.24 (m, 2H), δ2.18 (s, 3H).
【0095】
(実施例165)化合物S165の製造
[化45]

上記実施例159で製造されたS159 511mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。ブロモアセト酸アリルエステル219mg(1.2mmol、1.1当量)を付加して、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物572mg(収率:94%)を得た(EIMS: 611.1[M+H]+)。
【0096】
(実施例166)化合物S166の製造
[化46]

上記実施例165で製造されたS165 504mg(1mmol)とパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン56mg(0.05mmol、0.05当量)を無水ジクロロメタン20mlに溶かした後、常温で攪拌する。2−エチルヘキサノエートカリウム塩174mg(1mmol、1.0当量)を無水ジクロロメタン2mlに溶かした後、これを反応溶液に徐々に付加する。常温で1時間攪拌した後、遠心分離して溶媒を除去する。ジクロロメタン20ml、ノルマルへキサン20mlで生成された固体を洗浄して乾燥し、表題化合物547mg(収率:90%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.67 (s, 4H), δ7.45 (d, 2H), δ7.22 (m, 5H), δ7.05 (m, 4H), δ6.54 (d, 1H), δ4.59 (s, 2H), δ4.24 (m, 1H), δ3.24 (m, 2H), δ2.18 (s, 3H).
【0097】
(実施例167〜301)
上記実施例151〜166の方法を使用して表3の化合物を製造し、製造された化合物のNMRは、実施例17〜149の実施例に該当する化合物と同一である。
【0098】
【表3】












【0099】
(実施例302)化合物S302の製造
[化47]

上記実施例151で製造されたS151 421mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。ブロモアセト酸エチルエステル134μl(1.2mmol、1.2当量)を付加して、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物472mg(収率:93%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.66 (d, 4H), δ7.46 (d, 2H), δ7.23 (m, 4H), δ6.57 (d, 1H), δ4.61 (s, 2H), δ4.25 (q, 2H), δ4.04 (s, 2H), δ2.23 (s, 3H), δ1.28 (s, 3H).
【0100】
(実施例303)化合物S303の製造
[化48]

上記実施例151で製造されたS151 421mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。エチル−2−ブロモ−2−プロパン酸メチル210μl(1.2mmol、1.2当量)を付加して、アセトンを補充しながら60〜90℃の熱を加えて、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物428mg(収率:80%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.66 (d, 4H), δ7.46 (d, 2H), δ7.23 (m, 4H), δ6.57 (d, 1H), δ4.25 (q, 2H), δ4.04 (s, 2H), δ2.23 (s, 3H), δ1.56 (s, 6H), δ1.28 (s, 3H).
【0101】
(実施例304)化合物S304の製造
[化49]

上記実施例151で製造されたS151 421mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。エチル−2−ブロモブチレート146μl(1.2mmol、1.2当量)を付加して、アセトンを補充しながら60〜90℃の熱を加えて、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物444mg(収率:83%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.66 (d, 4H), δ7.46 (d, 2H), δ7.23 (m, 4H), δ6.57 (d, 1H), δ4.33 (t, 1H), δ4.25 (q, 2H), δ4.04 (s, 2H), δ2.23 (s, 3H), δ2.00 (m, 2H), δ1.56 (s, 6H), δ1.28 (s, 3H), δ1.25 (m, 3H).
【0102】
(実施例305)化合物S305の製造
[化50]

上記実施例151で製造されたS151 421mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。エチル−2−ブロモ−2−メチルブチレート193μl(1.2mmol、1.2当量)を付加して、アセトンを補充しながら60〜90℃の熱を加えて、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物440mg(収率:80%)を得た(EIMS: 551.1[M+H]+)。
【0103】
(実施例306)化合物S306の製造
[化51]

上記実施例302で製造されたS302 460mg(1mmol)をTHF15ml及び水10mlによく混ぜた後、0℃で2.0M水酸化リチウム水溶液0.6mlを徐々に付加する。0℃で60分間さらに攪拌後、反応が終結すると、0.5M NaHSO 2.5mlを加えた後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、ろ過した後、溶媒を減圧蒸留して、LH−20カラムクロマトグラフィーで精製し、表題化合物472mg(収率:93%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.66 (d, 4H), δ7.46 (d, 2H), δ7.23 (m, 4H), δ6.57 (d, 1H), δ4.61 (s, 2H), δ4.04 (s, 2H), δ2.22(s, 3H).
【0104】
(実施例307)化合物S307の製造
[化52]

上記実施例151で製造されたS151 421mg(1mmol)と5%水を含むアセトン10ml、炭酸カリウム346mg(2.5mmol、2.5当量)を室温でよく混ぜる。ブロモアセト酸アリルエステル219mg(1.2mmol、1.2当量)を付加して、4時間強烈に攪拌する。反応終結後、塩水溶液とエチルアセテートを使用して抽出し、硫酸マグネシウムで水分を除去する。ろ過後、溶媒を減圧蒸留して、残渣をヘキサン/エチルアセテート(v/v=5:1)溶媒でシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製をし、表題化合物467mg(収率:90%)を得た(EIMS: 521.1[M+H]+)。
【0105】
(実施例308)化合物S308の製造
[化53]

上記実施例307で製造されたS307 519mg(1mmol)とパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン56mg(0.05mmol、0.05当量)を無水ジクロロメタン20mlに溶かした後、常温で攪拌する。2−エチルヘキサノエートカリウム塩174mg(1mmol、1.0当量)を無水ジクロロメタン2mlに溶かした後、これを反応溶液に徐々に付加する。常温で1時間攪拌した後、遠心分離して溶媒を除去する。ジクロロメタン20ml、ノルマルへキサン20mlで生成された固体を洗浄して乾燥し、表題化合物471mg(収率:91%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ7.66 (d, 4H), δ7.46 (d, 2H), δ7.23 (m, 4H), δ6.57 (d, 1H), δ4.61 (s, 2H), δ4.04 (s, 2H), δ2.22(s, 3H).
【0106】
(実施例309〜348)
上記実施例302〜308の方法を使用して表4の化合物を製造し、製造された化合物のNMRを表5に示した。
【0107】
【表4】



【0108】
【表5】

【0109】
(試験例1)活性及び毒性試験
Transfection assayを通じて、本発明による化学式(I)の化合物のPPARδ活性を確認して、追加的にPPARsのsubtypeであるPPARαとPPARγに対する選択性実験と、MTT assayによる毒性実験、及び動物実験によるin vivo 活性検証を行った。
【0110】
[Transfection assay]
CV-1細胞を利用してassayを行って、細胞培養は、5%の二酸化炭素が含まれた37℃培養器で、10% FBS, DBS(delipidated)と1%ペニシリン/ストレプトマイシンを入れたDMEM培地を利用して96ウェルプレートで行った。実験は、細胞接種、Transfection、開発物質処理、結果確認の4段階に分けて行った。CV-1細胞を96ウェルプレートに5,000 cell/wellとして接種し、24時間後に Transfection した。full lengthのPPARsプラスミドDNAとルシフェラーゼ活性(Luciferase activity)を有していてPPARsの活性が確認できるReporter DNA、Transfection効率情報を提供するβ-galactosidase DNAを、Transfection Reagentを利用して行った。開発した物質をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かして、mediaを利用して多様な濃度で細胞に処理した。24時間インキュベータで培養した後、lysis bufferを利用して細胞を溶解し、Luminometerとmicroplate readerを利用してluciferaseとβ-galactosidase活性を測定した。測定されたluciferase値は、β-galactosidase値を利用して補正し、この値を利用してグラフを書いて、EC50値を求めた。
【0111】
【表6】

EC50データ
【0112】
上記表6から分かるように、本発明による化合物は、PPARδに非常に選択的である。
【0113】
本発明による化合物は、PPARδに対して2nM〜200nMの活性を示した。
【0114】
[MTT assay]
本発明による化学式1化合物に対する毒性テストは、MTT assayを利用して行った。MTTは、水に溶解される黄色の物質であるが、生きている細胞に流入される場合、ミトコンドリアに存在する脱水素酵素により、水に溶解されない紫色の結晶に変わる。この物質をジメチルスルホキシドに溶解した後、550nmで吸光度を測定すれば、細胞毒性を確認することができる。実験方法は、以下のようである。
【0115】
まず、CV-1細胞を96ウェルプレートに5,000cell/wellとして接種した。24時間5%の二酸化炭素が含有された加湿された37℃培養器で培養した後、開発物質を、多様な濃度で培養したCV-1細胞に入れた。再び24時間培養をして、MTT試薬を入れた。15分間程度培養した後、生成された紫色の結晶をジメチルスルホキシドに溶解した後、microplate readerを使用して吸光度を測定し、これから細胞毒性を確認した。
【0116】
実験結果、化学式I化合物は、PPARに対するEC50濃度より100-1000倍以上の濃度でも毒性が現れなかった。
【0117】
(動物実験)
(肥満抑制効果の検証)
本発明による物質に対するin vivo効果を検定するために、マウスを利用した実験を行った。マウスは、8週齢のC57BL/6 (SLC Co.)を利用して、肥満を誘導するために、35%の脂肪が含有された飼料を使用した。60日間高脂肪を摂取させながら、vehicleとS14、S46、S106(10mg/Kg/day)を経口投与した。実験結果、S14グループは、vehicleグループの体重増加に対し、31%の体重が増加して、S46グループは43%、S106グループは、37%が増加した。
【0118】
(糖尿改善効果の検証)
本発明による物質に対する糖尿改善効果を検証するために、GTT(Glucose Tolerance Test)を行った。57日間薬物を経口投与したマウスに、グルコース(1.5g/Kg)を腹腔投与した後、時間別に血糖濃度変化を確認した。S14、S46、S106(10mg/Kg/day)を投与したグループのいずれも、対照群に比べて空腹血糖が低かった。また、発明の物質を投与したグループでは、20〜40分の間に血糖が急速に減少して、100分後には、glucose clearanceが完璧に起こった。しかし、vehicleを投与したマウスのグループは、120分後にも正常血糖が維持できなかった。このような結果から、開発物質S14、S46、S106は糖尿改善効果があることを確認することができた。
【0119】
(筋持久力強化及び筋機能増進効果の検証)
本発明による物質に対する筋持久力強化及び筋機能増進効果を検証するために、動物実験を行った。筋肉の生成は、大部分発生段階でなされるため、妊娠したマウスに、妊娠期間、授乳期間、または妊娠期間+授乳期間にS14、S46、S106(10mg/Kg/day)濃度で経口投与した。対照群と処理群の胎児の体重や成長速度には差がなく、皮膚除去後、筋肉を観察した結果、処理群が、対照群に比べてさらに赤いことが観察された。ATPase染色と免疫染色結果においても、処理群でTypeI筋繊維が増加したことが確認された。このような筋繊維の変化が筋持久力及び筋機能改善効果に及ぼす影響を確認するために、Treadmillを利用した実験を行った。その結果、処理群が対照群に比べて、走った時間が著しく増加した。
【0120】
【表7】

【0121】
また、開発物質を成体に投与した場合も、筋持久力強化及び筋機能増進効果が立証された。10週齢のC57BL/6マウスに、開発物質S14、S46、S106を10mg/Kgの濃度で経口投与しながら運動をさせた。運動は、30日間、一日一回、30分間ずつTreadmillを利用して運動させた。運動条件は、2meter/min速度で5分間、5meter/min速度で5分間、8meter/min速度で5分間、20meter/min速度で5分間運動させた。実験終了時点でTreadmillを利用して筋持久力強化及び筋機能増進効果をテストした。その結果、対照群に比べて、処理群の運動時間(S14:1.5倍、S46:1.3倍、S106:1.4倍)及び運動距離(S14:1.5倍、S46:1.3倍、S106:1.4倍)が同時に増加した。
【0122】
(記憶増進実験)
本発明による物質に対して、記憶力増進による痴呆及びパーキンソン病治療効果を検証するために、動物実験を行った。脳の生成段階で発明物質の効能を立証するために、妊娠したマウスに、妊娠期間及び授乳期間に開発物質を10mg/Kg濃度で経口投与した。対照群と投与群間の脳機能の差異を確認するために、モリス水迷路(Morris water maze)テストを行った。この方法は、空間学習及び記憶を確認できるテスト方法であって、脳中において主に海馬依存的な方法である。実験結果、プラットフォームに到達するまでの平均時間が、対照群(24.2秒)に比べて、処理群(S14:5.2秒、S46:7.8秒、S106: 6.1秒)は5.2秒がかかり、開発物質により記憶力が著しく向上されたことが分かる。
【0123】
また、10週齢の成体C57BL/6マウスを利用して、脳疾患モデルにおいて記憶力増進による痴呆及びパーキンソン病治療効果を確認してみた。実験前、LPSをマウスの脳に注射して、脳疾患動物モデルを製作した。実験は、開発物質の投与有無及び運動有無によって四つのグループに分けて行って、運動条件は、2meter/min速度で5分間、5meter/min速度で5分間、8meter/min速度で5分間、20meter/min速度で5分間運動をさせた。実験終了後、モリス水迷路(Morris water maze)テストを行って、その結果を表8に示し、開発物質と運動による、脳疾患モデルにおいて記憶力増進による痴呆及びパーキンソン病の治療効果が立証された。
【0124】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明による新規な化合物は、PPAR活性化リガンドの特性があるものであって、心血管治療及び予防用、コレステロール降下用、糖尿病治療及び予防用、肥満治療及び予防用、筋肉強化用、記憶力増進用、痴呆またはパーキンソン病治療及び予防用医薬組成物と機能性食品補助剤、機能性飲料、食品添加物、機能性化粧品及び動物用飼料組成物に利用される可能性が非常に高い化合物である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1のアリール化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体、その薬学的に許容される塩。
[化学式1]

(上記化学式1において、Aは、SまたはSeであり、Bは、水素または
[化1]

であり、Rは、下記構造から選択されるアリール基であって、
[化2]

は、水素、C1〜C8のアルキルまたは
[化3]

であり、
は、水素、C1〜C8のアルキルまたはハロゲンであり、
及びRは、互いに独立して、水素、C1〜C8のアルキルであって、
は、水素、C1〜C8のアルキル、C2〜C7のアルケニル、アルカリ金属及びアルカリ土類金属であり、
11及びR12は、互いに独立して、水素、C1〜C8のアルキルまたはハロゲンであり、
21は、水素、ハロゲン、C1〜C7のアルキル、ヘテロ環基またはC1〜C7のアルコキシ基であって、
m及びnは、互いに独立して、1〜4の整数であり、
pは、1〜5の整数であり、
qは、1〜4の整数であり、
rは、1〜3の整数であり、
sは、1〜5の整数であって、
前記R、R、R、R、R、R11、R12及びR21のアルキル及びアルコキシは、一つ以上のハロゲンまたはC1〜C5のアルキルアミンがさらに置換可能である。
但し、Rが水素で且つAがSである場合は除く。)
【請求項2】
前記Rは、下記構造から選択されるアリール基であり、
[化4]

は、ハロゲン置換または非置換のC1〜C8のアルキルまたは
[化5]

であり、
は、ハロゲン置換または非置換のC1〜C5のアルキルまたはハロゲンであり、
及びRは、互いに独立して、水素、ハロゲン置換または非置換のC1〜C5のアルキルであって、
は、水素、C1〜C7のアルキル、アルカリ金属及びアルカリ土類金属であり、
11及びR12は、互いに独立して、水素、一つ以上のフルオルが置換されたC1〜C5のアルキルまたはフルオルであり、
21は、水素、ハロゲン、ハロゲン置換または非置換のC1〜C5のアルキル、またはハロゲン置換または非置換のC1〜C5のアルコキシ基であって、
pは、1〜5の整数であり、
qは、1〜4の整数であり、
sは、1〜5の整数を示すことを特徴とする、請求項1に記載のアリール化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体、その薬学的に許容される塩。
【請求項3】
下記化学式4で表されることを特徴とする、請求項1に記載のアリール化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体、その薬学的に許容される塩。
[化学式4]

(上記式中、A、R、R及びmは、請求項1の化学式1における定義と同一である。)
【請求項4】
下記化学式8で表されることを特徴とする、請求項1に記載のアリール化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体、その薬学的に許容される塩。
[化学式8]

(上記式中、A、R、R、R21、m及びsは、請求項1の化学式1における定義と同一である。)
【請求項5】
a)下記化学式2の化合物をグリニャール試薬(Grignard reagent)と反応させた後、次いで有機リチウム化合物と反応させる段階と、
b)a)段階に連続して硫黄(S)またはセレニウム(Se)粉末を付加する段階と、
c)b)段階に連続して化学式3の化合物と反応させて、化学式4の化合物を製造する段階と、
を含むことを特徴とする、請求項1の化学式1のアリール化合物の製造方法。
[化学式2]

[化学式3]

[化学式4]

(式中、A、R、R、及びmは、請求項1の化学式1における定義と同一であり、Xは、臭素原子、ヨード原子を示し、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨード原子または親核置換反応に反応性がよい離脱基である。)
【請求項6】
下記化学式4の化合物とアルキルハロゲンアセテートまたはアルキルハロゲンアセト酸アルキルエステルを反応させて、化学式11のエステル化合物を製造する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載のアリール化合物の製造方法。
[化学式4]

[化学式11]

(式中、A、R、R、R、R及びmは、請求項1の化学式1における定義と同一であり、R6aは、炭素数1〜4のアルキル基を有するカルボキシル酸保護基またはアリール基である。)
【請求項7】
下記化学式11のエステル化合物を加水分解して、化学式12の化合物を製造する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載のアリール化合物の製造方法。
[化学式11]

[化学式12]

(式中、A、R、R、R、R及びmは、請求項1の化学式1における定義と同一であり、R6aは、炭素数1〜4のアルキル基を有するカルボキシル酸保護基またはアリール基であって、R6bは、水素原子またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。)
【請求項8】
下記化学式4のチオまたはセレノエーテル化合物のα−水素を強塩基で処理して、下記化学式6の化合物と反応させて、化学式8の化合物を製造する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載のアリール化合物の製造方法。
[化学式4]

[化学式6]

[化学式8]

(式中、A、R、R、R21、m及びsは、請求項1の化学式1における定義と同一であり、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨード原子または離脱基である。)
【請求項9】
下記化学式4のフェノール基をアルキルシリル基で保護した後、強塩基処理して、下記化学式6の化合物を加えた後、脱保護することを特徴とする、請求項8に記載のアリール化合物の製造方法。
[化学式4]

[化学式6]

(式中、A、R、R、R21、m及びsは、請求項1の化学式1における定義と同一であり、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨード原子または離脱基である。)
【請求項10】
下記化学式8の化合物とアルキルハロゲンアセテートまたはアルキルハロゲンアセト酸アルキルエステルを反応させて、化学式9のエステル化合物を製造する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載のアリール化合物の製造方法。
[化学式8]

[化学式9]

(式中、A、R、R、R、R、R21、m及びsは、請求項1の化学式1における定義と同一であり、R6aは、炭素数1〜4のアルキル基を有するカルボキシル酸保護基またはアリール基である。)
【請求項11】
下記化学式9のエステル化合物を加水分解して化学式10の化合物を製造する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項10に記載のアリール化合物の製造方法。
[化学式9]

[化学式10]

(式中、A、R、R、R、R、R21、m及びsは、請求項1の化学式1における定義と同一であり、R6aは、炭素数1〜4のアルキル基を有するカルボキシル酸保護基またはアリール基であって、R6bは、水素原子、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である。)
【請求項12】
請求項1の化学式1で表されるアリール化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体、その薬学的に許容される塩を有効成分とする、動脈硬化症または高脂血症治療及び予防用、コレステロール降下用、糖尿病治療及び予防用、肥満治療及び予防用、筋肉強化用、持久力増進用、記憶力増進用、痴呆またはパーキンソン病治療及び予防用医薬組成物。
【請求項13】
請求項1の化学式1で表されるアリール化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体、その薬学的に許容される塩を有効成分とする、機能性食品補助剤、機能性飲料、食品添加物及び動物用飼料用組成物。
【請求項14】
請求項1の化学式1で表されるアリール化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体、その薬学的に許容される塩を有効成分とする、肥満予防及び肥満改善、筋肉強化または持久力増進のための機能性化粧品組成物。
【請求項15】
請求項1の化学式1で表されるアリール化合物、その水和物、その溶媒化物、その立体異性体、その薬学的に許容される塩を有効成分とする、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor:PPAR)の活性化剤組成物。
【請求項16】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor:PPAR)の活性化剤を有効成分とする、動脈硬化予防及び治療用、筋肉強化用、持久力増進用、記憶力増進用、痴呆またはパーキンソン病治療及び予防用医薬組成物。
【請求項17】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor:PPAR)の活性化剤を有効成分とする、動脈硬化予防及び治療用、筋肉強化用、持久力増進用、記憶力増進用、痴呆またはパーキンソン病治療及び予防用機能性食品補助剤、機能性飲料、食品添加物及び動物用飼料用組成物。
【請求項18】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(Peroxisome Proliferator Activated Receptor:PPAR)に、前記受容体を活性化させる候補物質を添加する段階と、
前記ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体の活性を測定する段階と、
を含む、候補物質から動脈硬化予防及び治療用、筋肉強化用、持久力増進用、記憶力増進用、痴呆またはパーキンソン病治療及び予防用活性物質のスクリーニング方法。

【公表番号】特表2010−511604(P2010−511604A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539189(P2009−539189)
【出願日】平成19年12月1日(2007.12.1)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006170
【国際公開番号】WO2008/066356
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(507171856)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファンデーション (14)
【Fターム(参考)】