説明

ペルフルオロエラストマー組成物のためのビスアミノフェニルベースの硬化剤および硬化促進剤ならびにアミジンベースの硬化剤および硬化促進剤

【課題】ペルフルオロエラストマー、特にシアノ硬化可能なペルフルオロエラストマー中により容易に分散させ、かつペルフルオロエラストマー、特にシア
ノ硬化可能なペルフルオロエラストマーをより迅速に硬化させることが可能な、改良硬化剤を提供すること。
【解決手段】新規のモノアミジン、モノアミドキシムおよびビスアミジンの硬化剤、共硬化剤および硬化促進剤が、ペルフルオロエラストマー組成物を用いた使用ならびに、モノアミジンベースおよびモノアミドキシムベースの硬化剤、共硬化剤および硬化促進剤を作製するための新規合成法のために提供される。硬化剤、共硬化剤および硬化促進剤の融点が、約240℃を超えず、そしてより好ましくは、約230℃を超えないように十分に高い分子量を有するジフェニルベースの硬化剤、共硬化剤および硬化促進剤もまた、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮出願第60/443,718号(2003年1月29日出願)の米国特許法第119条(e)の下で利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
フルオロエラストマー、およびより具体的には、ペルフルオロエラストマーは、それらの高レベルの、化学的耐性、プラズマ耐性、受容可能な圧縮永久歪み耐性、および満足のいく機械的特性で公知の物質である。従って、フルオロエラストマーは、シール、ガスケットおよびライニングとしての使用を見出している。高温または攻撃的環境もしくは過酷な環境(例えば、腐食性の流体、溶媒、潤滑剤、および酸化条件または還元条件)が係わる場合、ペルフルオロエラストマーは、最適な物質である。フルオロエラストマーは、フルオロ化モノマーを使用した種々の経路によって作製される。ペルフルオロエラストマーは、代表的に、ペルフルオロ化(perfluorinated)モノマー(ペルフルオロ化硬化部位モノマーが挙げられる)を使用すること、このモノマーを重合化すること、および組み込まれる硬化部位モノマーと反応して、エラストマー特性を示す物質を形成する硬化剤を使用して、この組成物を硬化(架橋)することによって形成される。適切な硬化部位モノマーとしては、とりわけ、シアノ硬化部位を有する硬化部位モノマーが挙げられる。一級シアノ含有硬化部位モノマーおよび二級シアノ含有硬化部位モノマーの例は、当該分野において公知である。シアノ硬化部位を有する硬化部位モノマーにおいて、特定の硬化剤は、結合してトリアジンを形成するシアノ硬化部位を三量体化させると考えられる。
【0003】
公知の硬化剤としては、有機金属化合物およびそれらの水酸化物、特に、有機スズ化合物(アリルスズ、プロパギルスズ、トリフェニルスズおよびアレニルスズならびにその水酸化物を含む)が挙げられる。このテトラアルキルスズ化合物またはテトラアリールスズ化合物(例えば、テトラフェニルスズ)は、一般的である。しかしながら、これらの硬化剤は、比較的遅い硬化速度を提供し、有毒であり、そして、生じるエラストマーに金属混入物を導入し得る。
【0004】
アミノ基を含む硬化剤もまた、使用されている。ビスアミノフェノール、ビスアミノチオフェノールおよびビスアミドラゾンは、さらなる型の硬化剤である。アミノおよびヒドロキシル、ジアミン、ならびにアミノおよびチオの各フェニル環上に置換基を有するジフェニル構造を含むこれらの硬化剤は、概して、当該分野で、以下を含む構造に結合されているとして公知である:−SO−、−O−、−CO−、1〜6個の炭素原子のアルキル基、および炭素−炭素二重結合。1〜10個の炭素原子のペルフルオロアルキル基は、大まかに記載されているが、硬化剤としてこのような化合物の実際の合成および使用は、実証されていない。使用され、かつ合成が公知であるこれらのジフェニル構造型の物質は、3個の炭素アルキル基を含み、かつフェニル基が、ビス位の中央(第二)の炭素に結合されている主要化合物である。例えば、この型の最も周知である硬化剤は、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン(ジアミノビスフェノールAFまたはBOAPとしてもまた公知)である。
【0005】
BOAPは、約245〜248℃の融点を有する結晶性固体である。BOAPは、ペルフルオロエラストマーとあまり適合性がなく、ペルフルオロエラストマーと急速かつ均一に分散させることが難しく、従って、比較的遅効性の硬化剤である。
【0006】
R.C.Evers,非特許文献1では、フルオロカーボンエーテル−ジベンゾオキサゾールポリマーを作製するためのモノマーとしてフルオロカーボンエーテルビスアミノフェノールの使用を記載している。Eversは、中間体としてα,ω−ジヨードフルオロカーボンエーテルを用いたフルオロカーボンエーテルビスアミノフェノールのための合成経路を略述した。Hustedの米国特許第2,676,985号、JACS 78:6032(1956)中のReillyおよびBrown、GrigasおよびTaurins,Can.J.Chem.,第39巻,414−419(1961)ならびにGrigasおよびA.Taurins,Can.J.Chem.,第39巻,761−764(1961)では、アミジン形成のための以前から公知の合成経路を記載している。
緩徐な硬化剤(例えば、BOAP)を速める方法に関して、有機アンモニウム塩または無機アンモニウム塩を含む当該分野で使用される慣用的な促進剤(例えば、ペルフルオロオクタノエート、アンモニウムペルフルオロアセテート、アンモニウムチオシアネートおよびアンモニウムサルファメート;尿素;t−ブチルカルバメート;アセトアルデヒドアンモニア;テトラアルキルホスホニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、およびトリアルキルスルホニウム塩(例えば、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩化物、ベンジルトリフェニルホスホニウム臭化物、ビスフェノールAFのベンジルトリフェニルホスホニウムフェノラート、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、およびテトラブチルアンモニウム臭化物))もまた存在する。しかしながら、このような化合物は、望ましくない副生成物を生じ得る副反応を有する傾向がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Polym.Sci.16,2833−2848(1978)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当該分野において、ペルフルオロエラストマー、特にシアノ硬化可能なペルフルオロエラストマー中により容易に分散させ、かつペルフルオロエラストマー、特にシアノ硬化可能なペルフルオロエラストマーをより迅速に硬化させることが可能な、改良硬化剤の必要性が、残っている。当該分野において、ペルフルオロエラストマーの硬化速度を加速し、そしてペルフルオロエラストマーの有益な特性を維持するペルフルオロエラストマー硬化剤のための硬化促進剤の必要性が、さらに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、ペルフルオロエラストマー組成物のためのモノアミジンベースおよびアミドキシムベースの硬化剤、共硬化剤および硬化促進剤を含む。本発明は、一般式(I)を有する硬化剤のような物質をさらに含み:
【0010】
【化9】


ここで、Yは、1〜約22個の炭素原子の置換された、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基またはアラルコキシ基;約1〜約22個の炭素原子の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基またはハロゲン化アラルコキシ基、および1〜約22個の炭素原子のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、ペルフルオロアリール基、ペルフルオロアラルキル基またはペルフルオロアラルコキシ基からなる群より選択され;そしてRは、水素;1〜約6個の炭素原子の置換もしくは非置換の低級アルキル基または低級アルコキシ基;およびアミノ基であり;そしてRは、Rまたはヒドロキシルである。
【0011】
本発明はまた、ペルフルオロエラストマー組成物のためのビスアミジンベースの硬化剤、共硬化剤および硬化促進剤を含む。本発明は、一般式(II)によって表されるような化合物をさらに含み:
【0012】
【化10】


ここで、Dは、約1〜約22個の炭素原子を有する非置換または置換された、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基またはハロゲン化アラルコキシ基;および1〜約22個の炭素原子のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、ペルフルオロアリール基、ペルフルオロアラルキル基またはペルフルオロアラルコキシ基からなる群より選択され;そしてRおよびRは、それぞれ独立に選択されて水素;1〜約6個の炭素原子の置換もしくは非置換の低級アルキル基または低級アルコキシ基およびアミノ基である。
【0013】
本発明は、以下を含有する硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物を含む:(a)シアノ官能基を含む少なくとも1個の硬化部位モノマーを有するペルフルオロポリマー;および(b)少なくとも1個のモノアミジンベースまたはモノアミドキシムベースの硬化剤。
【0014】
以下を含む硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物はまた、本発明の範囲内にある:(a)シアノ官能基を含む少なくとも1個の硬化部位モノマーを有するペルフルオロポリマー;(b)官能性ジフェニルベースの硬化剤;および(c)少なくとも1個のモノアミジンベースの硬化促進剤、少なくとも1個のモノアミドキシムベースの硬化促進剤、少なくとも1個のビスアミジンベースの硬化促進剤およびこれらの組み合わせからなる群より選択される硬化促進剤。好ましい硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物はまた、本発明内に含まれ、官能性ジフェニルベースの硬化剤が、以下の式(III)を有する:
【0015】
【化11】


ここで、rは、0または1であり;
およびRは、炭素原子;アルキル基、ハロゲン化アルキル基、およびペルフルオロ化アルキル基(これらのそれぞれが、少なくとも1個の酸素原子により割り込まれ得る)からなる群より選択される、約2〜約22個の炭素原子の置換および非置換ならびに分枝および直鎖の炭素の基からなる群よりそれぞれ独立に選択され;
各Zは、アミノ基、メルカプト基、スルフヒドリル基またはヒドロキシル基からなる群より独立に選択され;
各Jは、独立に選択されて式(IV):
【0016】
【化12】


またはAであり;そして
各Aは、式(IV);フッ素原子;および1〜約22個の炭素原子のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、およびペルフルオロアルキル基からなる群より選択される非置換および置換ならびに分枝および直鎖の炭素ベースの基からなる群より独立に選択され;これらのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、およびペルフルオロ化アルキル基のそれぞれが、少なくとも1個の酸素原子により割り込まれ得;ここで、rが0であり、かつRが炭素原子である場合、Jおよび各Aのうちの少なくとも1個は、式(IV)ではない。
【0017】
本発明は、ペルフルオロエラストマー組成物のための硬化剤をさらに含み、ここで、この硬化剤は、上記のような式(III)を有する。
【0018】
本発明は、ペルフルオロエラストマー組成物のための硬化剤を含み、この組成物は、融点が約240℃を超えないように、そして特定の好ましい実施形態においては、約230℃を超えないように十分に高い分子量を有する官能性ジフェニルベースの硬化剤を含有する。
【0019】
以下の式(I)を有する化合物を使用するための方法がまた、本発明内に含まれ:
【0020】
【化13】


ここで、Yは、1〜約22個の炭素原子の置換された、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基またはアラルコキシ基;約1〜約22個の炭素原子の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基またはハロゲン化アラルコキシ基、および1〜約22個の炭素原子のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、ペルフルオロアリール基、ペルフルオロアラルキル基またはペルフルオロアラルコキシ基からなる群より選択され;そしてRは、水素;1〜約6個の炭素原子の置換もしくは非置換の低級アルキル基または低級アルコキシ基;およびアミノ基であり;そしてRは、Rまたはヒドロキシルであり、ここで、この化合物は、ペルフルオロエラストマー組成物のための硬化剤として使用される。
【0021】
(i)モノアミジンベースの化合物、モノアミドキシムベースの化合物、およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物、ならびに(ii)ペルフルオロエラストマー組成物のための共硬化剤のような少なくとも1つのビスアミジンベースの化合物の混合物を使用する工程を包含する、ペルフルオロエラストマー組成物を硬化するための方法もまた、含まれる。
【0022】
ペルフルオロエラストマー組成物の硬化を促進するための方法は、本発明の範囲内であって、この方法は硬化剤のための硬化促進剤を使用することを包含し、ここで、この硬化促進剤は、モノアミジンベースの化合物、モノアミドキシムベースの化合物、ビスアミジンベースの化合物およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0023】
本発明はまた、ペルフルオロエラストマー組成物のための硬化剤として官能性ジフェニルベースの硬化剤を使用してペルフルオロエラストマー組成物を硬化するための方法を含み、この官能性ジフェニルベースの硬化剤は、融点が約240℃を超えないように、そして特定の好ましい実施形態においては、融点が約230℃を超えないように十分に高い分子量を有する。
【0024】
本発明内に含まれるものはまた、硬化剤を作製するための方法である。この方法は、以下の工程:(a)有機アルキル酸をアルコールと反応させてアルキルエステルを形成する工程;(b)アルキルエステルをアンモニアと反応させてアルキルカルボキシアミドを形成する工程;(c)アルキルカルボキシアミドを脱水剤と反応させてアルキルニトリルを形成する工程;および(d)アルキルニトリルを、アンモニアまたはアミンのうちの少なくとも1つと反応させて硬化剤を形成する工程を包含し、ここで、この硬化剤は、ペルフルオロエラストマー組成物を硬化可能であるか、またはペルフルオロエラストマー組成物の硬化を促進可能である。
【0025】
上記の方法に加えて、本発明は、ビスアミノフェノールベースの硬化剤を作製するための方法を含む。その方法は、以下:(a)ペルフルオロアシルフッ化物をフッ化カリウムと反応させてカリウムアルコラート反応生成物を形成する工程;(b)カリウムアルコラート反応生成物をペルフルオロアリルフルオロサルフェートと反応させてペルフルオロアリルエーテルを形成する工程;(c)ペルフルオロアリルエーテルを酸化剤と反応させてペルフルオログリシジルエーテルを形成する工程;(d)フルオロ化(fluorinated)溶媒中でペルフルオログリシジルエーテルを塩化アルミニウムと反応させて、ペルフルオログリシジルエーテル上のエポキシド基をケトンに異性化する工程;(e)フッ化水素の存在下で、ケトン基をフェノールと反応させてビスフェノールベースの化合物を形成する工程;(f)ビスフェノールベースの化合物のニトロ化によりビスニトロフェノールベースの化合物を生成する工程;および(g)ビスニトロフェノールベースの化合物の還元によりビスアミノフェノール硬化剤を形成する工程を包含し、ここで、このビスアミノフェノールベースの硬化剤は、ペルフルオロエラストマー組成物を硬化可能である。
【0026】
硬化部位モノマーを含むシアノ基を有するペルフルオロエラストマーのための置換されたビスアミノフェノールベースの硬化剤は、本発明内に含まれる。このビスアミノフェノールベースの硬化剤は、以下の式(IIIa)を有する置換されたビスアミノフェノールベースの硬化剤であって:
【0027】
【化14】


ここで、Rは、炭素原子であり;Zは、アミノ基、スルフヒドリル基、またはヒドロキシル基であり;Jは、式(IV)であり:
【0028】
【化15】


そしてAは、非置換および置換ならびに分枝および直鎖の炭素ベースの基からなる群より選択され、ここで、この炭素ベースの基は、1〜約22個の炭素原子のペルフルオロアルキル基およびペルフルオロアルコキシ基からなる群より選択される。
【0029】
本発明は、硬化部位モノマーを含むシアノ基を有するペルフルオロエラストマーのためのビスアミノフェノールベースの硬化剤を含有するペルフルオロエラストマー組成物をさらに含み、ここで、この硬化剤は、以下の式(III)を有する置換されたビスアミノフェニルベースの硬化剤であって:
【0030】
【化16】


ここで、Rは、炭素原子であり;Zは、アミノ基、スルフヒドリル基、またはヒドロキシル基であり;Jは、式(IV)であり:
【0031】
【化17】


そしてAは、非置換および置換ならびに分枝および直鎖の炭素ベースの基からなる群より選択され、ここで、この炭素ベースの基は、1〜約22個の炭素原子のペルフルオロアルキル基およびペルフルオロアルコキシ基からなる群より選択される。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
式(I):
【化1】


を有するペルフルオロエラストマー組成物のための硬化剤であって、ここで、Yが、1〜約22個の炭素原子の置換された、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基またはアラルコキシ基;約1〜約22個の炭素原子の置換または非置換の、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基またはハロゲン化アラルコキシ基、および1〜約22個の炭素原子のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、ペルフルオロアリール基、ペルフルオロアラルキル基またはペルフルオロアラルコキシ基からなる群より選択され;そしてRが、水素;1〜約6個の炭素原子の置換もしくは非置換の低級アルキル基または低級アルコキシ基;およびアミノ基であり;そしてRが、Rまたはヒドロキシルである、硬化剤。
(項目2)
Yが、約1〜約9個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基である、項目1に記載の硬化剤。
(項目3)
Yが、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、置換アリール基および非置換アリール基、ならびに置換ハロゲン化アリール基および非置換ハロゲン化アリール基からなる群より選択される、項目1に記載の硬化剤。
(項目4)
前記硬化剤が、ペルフルオロオクタンアミジン、ヘプタフルオロブチリルアミジン、ベンズアミジン、トリフルオロメチルベンズアミドキシム、トリフルオロメトキシルベンズアミドキシム、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載の硬化剤。
(項目5)
前記硬化剤が、少なくとも1個のシアノ硬化部位モノマーを含有するペルフルオロエラストマー組成物を硬化可能である、項目1に記載の硬化剤。
(項目6)
が、ヒドロキシル基、水素、または1〜約6個の炭素原子の置換もしくは非置換のアルキル基である、項目1に記載の硬化剤。
(項目7)
が、ヒドロキシル基または水素である、項目6に記載の硬化剤。
(項目8)
が、水素、または1〜約6個の炭素原子の置換または非置換の低級アルキルであり、そしてRがヒドロキシルまたは水素である、項目1に記載の硬化剤。
(項目9)
が、水素である、項目8に記載の硬化剤。
(項目10)
前記硬化剤が、ペルフルオロアルキルアミジンである、項目1に記載の硬化剤。
(項目11)
前記硬化剤が、アリールアミジンである、項目1に記載の硬化剤。
(項目12)
前記硬化剤が、アリールアミドキシムである、項目1に記載の硬化剤。
(項目13)
式(I):
【化2】


を有するペルフルオロエラストマー組成物のための硬化促進剤であって、ここで、Yが、1〜約22個の炭素原子の置換された、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基またはアラルコキシ基;約1〜約22個の炭素原子の置換または非置換のハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基またはハロゲン化アラルコキシ基、および1〜約22個の炭素原子のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、ペルフルオロアリール基、ペルフルオロアラルキル基またはペルフルオロアラルコキシ基からなる群より選択され;そして、Rが、水素;1〜約6個の炭素原子の置換もしくは非置換の低級アルキル基または低級アルコキシ基;およびアミノ基であり;そしてRが、Rまたはヒドロキシルである、硬化促進剤。
(項目14)
Yが、約1〜約9個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基である、項目13に記載の硬化促進剤。
(項目15)
前記硬化促進剤が、ペルフルオロオクタンアミジン、ヘプタフルオロブチリルアミジン、ベンズアミジン、トリフルオロメチルベンズアミドキシム、トリフルオロメトキシルベンズアミドキシム、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目13に記載の硬化促進剤。
(項目16)
前記硬化促進剤が、少なくとも1個のシアノ硬化部位モノマーを含有するペルフルオロエラストマー組成物の硬化を促進可能である、項目13に記載のモノアミジンベースの硬化促進剤。
(項目17)
前記硬化促進剤が、ビスアミノフェノールおよびその誘導体を含有するペルフルオロエラストマー組成物の硬化を促進可能である、項目13に記載のモノアミジンベースの硬化促進剤。
(項目18)
式(II):
【化3】


によって表されるペルフルオロエラストマー組成物のためのビスアミジンベースの硬化促進剤であって、ここで、Dが、約1〜約22個の炭素原子を有する非置換または置換された、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基またはハロゲン化アラルコキシ基;および1〜約22個の炭素原子のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、ペルフルオロアリール基、ペルフルオロアラルキル基またはペルフルオロアラルコキシ基からなる群より選択され;そしてRおよびRが、各々、水素であるように独立に選択され;1〜約6個の炭素原子の置換もしくは非置換の低級アルキル基または低級アルコキシ基およびアミノ基である、ビスアミジンベースの硬化促進剤。
(項目19)
およびRが、両方とも水素である、項目18に記載のビスアミジンベースの硬化促進剤。
(項目20)
前記硬化促進剤が、少なくとも1個のシアノ硬化部位モノマーを含有するペルフルオロエラストマーの硬化を促進可能である、項目18に記載のビスアミジンベースの硬化促進剤。
(項目21)
前記硬化促進剤が、ペルフルオロスベラアミジンおよびペルフルオロセバカミジンからなる群より選択される、項目18に記載のビスアミジンベースの硬化促進剤。
(項目22)
硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物であって、以下:
(a)シアノ官能基を含む少なくとも1個の硬化部位モノマーを有するペルフルオロポリマー;
(b)少なくとも1個の、モノアミジンベースまたはモノアミドキシムベースの硬化剤
を含有する、ペルフルオロエラストマー組成物。
(項目23)
前記ペルフルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、一級シアノ硬化部位モノマーおよび二級シアノ硬化部位モノマーのテトラポリマーである、項目22に記載の硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
(項目24)
ビスアミジンベースの硬化促進剤をさらに含有する、項目22に記載の硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
(項目25)
ビスアミノフェノールおよびその誘導体をさらに含有する、項目22に記載の硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
(項目26)
硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物であって、以下:
(a)シアノ官能基を含む少なくとも1個の硬化部位モノマーを有するペルフルオロポリマー;
(b)官能性ジフェニルベースの硬化剤;および
(c)少なくとも1個のモノアミジンベースの硬化促進剤、少なくとも1個のモノアミドキシムベースの硬化促進剤、少なくとも1個のビスアミジンベースの硬化促進剤および
これらの組み合わせからなる群より選択される硬化促進剤
を含有する、硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
(項目27)
前記ペルフルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、一級シアノ硬化部位モノマーおよび二級シアノ硬化部位モノマーのテトラポリマーである、項目26に記載の硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
(項目28)
前記ジフェニルベースの硬化剤が、この融点が約240℃を超えないように十分に高い分子量を有する、項目26に記載の硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
(項目29)
前記融点が、約230℃を超えない、項目28に記載の硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
(項目30)
前記融点が、約225℃を超えない、項目29に記載の硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
(項目31)
項目26に記載の硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物であって、ここで、前記官能性ジフェニルベースの硬化剤が、式(III):
【化4】


を有し、rが、0または1であり;
およびRが、炭素原子および約2〜約22個の炭素原子の置換および非置換ならびに分枝および直鎖の炭素の基からなる群より各々独立に選択され;該炭素の基の各々が、少なくとも1個の酸素原子により割り込まれ得る、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、およびペルフルオロ化アルキル基からなる群より選択され;
各Zが、アミノ基、メルカプト基、スルフヒドリル基またはヒドロキシル基からなる群より独立に選択され;
各Jが、独立に選択されて式(IV):
【化5】


またはAであり;そして
各Aが、式(IV);フッ素原子;および非置換および置換ならびに分枝および直鎖の炭素ベースの基からなる群より独立に選択され、ここで、該炭素ベースの基は、1〜約22個の炭素原子のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、およびペルフルオロアルキル基からなる群より選択され;これらのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、およびペルフルオロ化アルキル基の各々が、少なくとも1個の酸素原子により割り込まれ得;ここで、rが0であり、かつRが炭素原子である場合、Jおよび各Aのうちの少なくとも1個が、式(IV)ではない、
硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
(項目32)
項目31に記載の硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物であって、前記ジフェニルベースの式が、式IIIを含有し、ここで、rが0であり、Rが炭素原子であり、Jが式IVであり、一方のAがトリフルオロメチルであり、他方のAが、2〜22個の炭素原子の直鎖および分枝鎖の、ペルフルオロアルキル基およびペルフルオロアルキルエーテル基からなる群より選択される、硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
(項目33)
項目31に記載の硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物であって、rが1であり、各Aおよび各Jが、フッ素原子であり、Rが、炭素原子であり、かつRが、2〜22個の炭素原子の直鎖および分枝鎖のペルフルオロアルキレン基およびペルフルオロアルキルエーテル基からなる群より選択され、そしてここで、一方のAおよび一方のJは両方とも、Rの末端炭素原子に結合される、硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
(項目34)
上のZが置換されたアミノフェニル基はまた、前記Aおよび前記Jを有するRの末端炭素に結合される、項目32に記載の硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
(項目35)
ペルフルオロエラストマー組成物のための硬化剤であって、該硬化剤は、式(III):
【化6】


を有し、ここで、rが、0または1であり;
およびRが、炭素原子および約2〜約22個の炭素原子の置換および非置換ならびに分枝および直鎖の炭素の基からなる群より各々独立に選択され;該炭素の基の各々が、少なくとも1個の酸素原子により割り込まれ得る、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、およびペルフルオロ化アルキル基からなる群より選択され;
各Zが、アミノ基、メルカプト基、スルフヒドリル基またはヒドロキシル基からなる群より独立に選択され;
各Jが、独立に選択されて式(IV):
【化7】


またはAであり;そして
各Aが、式(IV);フッ素原子;および非置換および置換ならびに分枝および直鎖の炭素ベースの基からなる群より独立に選択され、該炭素ベースの基は、1〜約22個の炭素原子のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、およびペルフルオロアルキル基からなる群より選択され;これらのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、およびペルフルオロ化アルキル基の各々が、少なくとも1個の酸素原子により割り込まれ得;ここで、rが0であり、かつRが炭素原子である場合、Jおよび各Aのうちの少なくとも1個が、式(IV)ではない、硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
(項目36)
融点が約240℃を超えないように十分に高い分子量を有する官能性ジフェニルベースの硬化剤を含有する、ペルフルオロエラストマー組成物のための硬化剤。
(項目37)
前記融点が、約230℃を超えない、項目36に記載の硬化剤。
(項目38)
前記融点が、約225℃を超えない、項目37に記載の硬化剤。
(項目39)
前記ペルフルオロエラストマー組成物が、硬化部位モノマーを含む少なくとも1個のシアノ基を有するペルフルオロポリマーを含有する、項目36に記載の硬化剤。
(項目40)
式(I):
【化8】


を有する化合物を使用するための方法であって、ここで、Yが、1〜約22個の炭素原子の置換された、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基またはアラルコキシ基;約1〜約22個の炭素原子の置換または非置換の、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基またはハロゲン化アラルコキシ基、および1〜約22個の炭素原子の、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、ペルフルオロアリール基、ペルフルオロアラルキル基またはペルフルオロアラルコキシ基からなる群より選択され;そしてRが、水素;1〜約6個の炭素原子の置換もしくは非置換の低級アルキル基または低級アルコキシ基;およびアミノ基であり;そしてRが、Rまたはヒドロキシルであり、ここで、該化合物が、ペルフルオロエラストマー組成物のための硬化剤として使用される、方法。
(項目41)
前記ペルフルオロエラストマー組成物が、硬化部位モノマーを含む少なくとも1個のシアノ基を有するペルフルオロポリマーを含有する、項目40に記載の方法。
(項目42)
ペルフルオロエラストマー組成物を硬化するための方法であって、該方法が、(i)モノアミジンベースの化合物、モノアミドキシムベースの化合物、およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1個の化合物、ならびに(ii)ペルフルオロエラストマー組成物のための共硬化剤のような少なくとも1個のビスアミジンベースの化合物の混合物を使用する工程を包含する、方法。
(項目43)
硬化剤のための硬化促進剤を使用する工程を包含するペルフルオロエラストマー組成物の硬化を促進するための方法であって、ここで、該硬化促進剤が、モノアミジンベースの化合物、モノアミドキシムベースの化合物、ビスアミジンベースの化合物およびこれらの組み合わせからなる群からより選択される、方法。
(項目44)
融点が、ペルフルオロエラストマー組成物のための硬化剤として約240℃を超えないように、十分に高い分子量を有する官能性ジフェニルベースの硬化剤を使用する工程を包含する、該ペルフルオロエラストマー組成物を硬化するための方法。
(項目45)
前記融点が、約230℃を超えない、項目44に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ペルフルオロエラストマー組成物のための低融点のジフェニルベース、好ましくはジアミノフェニルベース、そしてより好ましくはペルフルオロ化ジアミノフェノールベースの硬化剤および共硬化剤ならびに好ましい官能性ジフェニルベースの硬化剤の新規合成法に関する。本発明はさらに、ペルフルオロエラストマーのためのアミジンベースの硬化促進剤、硬化剤および共硬化剤に関する。本発明の硬化剤および共硬化剤は、ペルフルオロエラストマー組成物との改善された混合を示し、そして硬化剤、共硬化剤および促進剤はさらに、従来の硬化剤(例えば、BOAP)と比較してより速い硬化速度を実証する。さらに、このアミジンベースの硬化剤および促進剤は、より速い硬化を提供する。
【0033】
本明細書中で使用される場合、ペルフルオロエラストマーは、任意の硬化されたエラストマー物質であり得、この硬化されたエラストマー物質は、硬化を可能にするための官能基を有する硬化可能なペルフルオロポリマーを含有する(本明細書中で規定されるような)ペルフルオロエラストマー組成物を硬化することによって誘導される。ペルフルオロエラストマーは、ペルフルオロポリマーの炭素原子について実質的に完全にフルオロ化される。これにより、本明細書に基づき理解されるように、いくつかの残留水素が、本開示に従ういくつかのペルフルオロエラストマー組成物において官能性架橋基に存在し得ることが意図される。このペルフルオロポリマー(ペルフルオロエラストマー組成物において使用されて硬化の際にペルフルオロエラストマーを形成する)は、1つ以上のペルフルオロ化モノマーを重合化することによって形成され、このペルフルオロ化モノマーの1つは、好ましくは、硬化を可能にするための官能基を有するペルフルオロ化硬化部位モノマーを有する。
【0034】
本明細書中で使用される場合、ペルフルオロエラストマー組成物は、硬化可能なペルフルオロポリマーを含むポリマー組成物である。上記のようなペルフルオロポリマーは、2個以上のペルフルオロ化モノマー、さらに硬化を可能にするための少なくとも1つの官能基を有する、少なくとも1個のペルフルオロ化モノマー(すなわち、少なくとも1つのペルフルオロポリマー硬化部位モノマー)を重合化することによって形成される。このような物質はまた、the American Society for Testing and Materials(ASTM)定義(ASTM−D−1418−01a)(本明細書中でその全体が参考として援用される)に従って一般的にFFKM(ペルフルオロエラストマー)と呼ばれ、また本明細書中でさらに記載される。この定義は、ペルフルオロエラストマーが、ポリマー鎖上の全てのフルオロ置換基、ペルフルオロアルキル置換基、またはペルフルオロアルコキシ置換基を有するポリメチレン型のペルフルオロ化ゴムであることを提供する;少しの部分のこれらの基は、官能性を含み加硫を容易にし得る。ペルフルオロエラストマー組成物は、硬化されてペルフルオロエラストマーを形成し得る任意の適切な硬化可能ペルフルオロポリマー(FFKM)、および本明細書中で記載されるような1個以上の硬化剤を含み得る。
【0035】
このようなペルフルオロエラストマー組成物は、好ましくは、少なくとも1個のフッ素含有エチレン不飽和モノマー(例えば、テトラフルオロエチレン(TFE));ペルフルオロ化オレフィン(例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP));およびペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)(これは、直鎖または分枝のアルキル基を含み、かつ1個以上のエーテル結合を含む(例えば、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)および類似化合物))の2個以上の種々のペルフルオロ化コポリマーを含み得る。好ましいPAVEの例としては、米国特許第5,001,278号およびWO 00/08076(本明細書中で参考として援用される)に記載されるものが挙げられる。他の適切なPAVEは、例えば、米国特許第5,696,189号および同第4,983,697号(これらもまた、本明細書中で参考として援用される)に記載される。
【0036】
好ましいペルフルオロポリマーは、TFE、PAVE、およびターポリマー(このうちの少なくとも1個は、本発明の硬化剤および共硬化剤によって硬化され得る硬化部位である)を架橋させ得る官能基を組み込んだ少なくとも1個のペルフルオロ化硬化部位モノマーの、ターポリマーまたはテトラポリマーである。一実施形態において、硬化部位モノマーは、本発明の硬化剤もしくは本発明の共硬化剤のいずれかを用いてか、または本発明の範囲ではない他の硬化剤(しかしこれは、本発明の硬化促進剤によって作用されるときに促進された硬化を有し得る)によって、硬化され得る硬化部位を提供する。
【0037】
最も好ましい硬化部位モノマーは、シアノ基の位置は関係なく、シアノ硬化部位を有するもの(例えば、一級シアノ基硬化部位モノマーおよび二級シアノ基硬化部位モノマー)を含む。シアノ硬化部位モノマーの例は、本明細書中に詳細に記載され、例えば、米国特許第4,281,092号において見出され得る。硬化部位モノマーを含むこのようなシアノ基は、当該分野で周知である。1個以上のこれらの硬化部位モノマーと互いの、または他の周知の硬化部位モノマーとの組み合わせもまた、本発明の範囲内で使用され得る。
【0038】
有用なシアノ硬化部位モノマーとしては、フルオロ化オレフィンおよびフルオロ化ビニルエーテルが挙げられ、これらのそれぞれが、以下が一般的な例であるシアノ基を有する:
CF=CF−O−[CF−CN、ここで、nは、約2〜約12であり、好ましくは約2〜約6である;
CF=CF−O−[CF−CF(CF)−O]−CF−CF(CF)−CN、ここで、nは、0〜約4であり、好ましくは0〜約2である;
CF=CF−[OCFCF(CF)]−O−[CF−CN、ここで、mは、約1〜約2であり、そしてnは、約1〜約4である;そして
CF=CF−O−[CF−O−CF(CF)−CN、ここで、nは、2〜約4である。
【0039】
特別な例としては、一級硬化部位モノマー(例えば、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN(一般的に8−CNVEと呼ばれる))および二級硬化部位モノマー(例えば、CF=CF−O[CF−O−CF[CF]−CN)が挙げられる。このような硬化部位モノマーは、単独かまたは組み合わせて使用され得る。特に好ましいのは、以下のようなフルオロポリマー鎖またはペルフルオロポリマー鎖において以下に示されるような硬化部位モノマーの組み合わせ、または以下のようなペルフルオロポリマー鎖であって:
【0040】
【化18】


ここで、pは、約0.1〜約12mol%(好ましくは、約1〜約4mol%)の量でフルオロポリマーまたはペルフルオロポリマーに存在する二級硬化部位モノマーを示し、そしてαは、約0.1〜約12mol%(好ましくは、約1〜約7mol%)の量で存在する一級硬化部位モノマーを示す。コポリマーにおける一級硬化部位モノマーと二級硬化部位との比は、約1:1〜約10:1(好ましくは、9:1)である。
【0041】
硬化部位としてシアノ基を含むさらなる型の硬化部位モノマーおよびシアノ基を含まない、さらなる型の硬化部位モノマーは、上記の好ましい硬化部位モノマーに加えて使用されてもまたは、特定の場合には、上記の好ましい硬化部位モノマーの代わりに使用されてもよいことが、本明細書中に基づき理解される。但し、上記の硬化部位モノマーは、本明細書中で記載されるような本発明の硬化促進剤を使用した場合、好ましい硬化剤および共硬化剤によって硬化され得、そして/または促進された硬化反応を受け得る。他の型の硬化部位モノマーの一般的な例としては、部分的または完全にハロゲン化されたオレフィン(例えば、エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、ブロモテトラフルオロブテン、ブロモトリフルオロエチレン、1−ヒドロペンタフルオロプロペンおよび2−ヒドロペンタフルオロプロペン)を含むオレフィンが挙げられる。このようなさらなる硬化部位モノマーは、上記のような範囲に存在し得、一般的に、好ましくは約0.1〜約5モル%、より好ましくは約0.1〜約2.5モル%、そして最も好ましくは0.3〜約1.5モル%の量で存在する。
【0042】
本発明のもの以外の他の添加剤(例えば、共硬化剤、硬化剤または促進剤);加工助剤;充填剤などはまた、本発明のペルフルオロエラストマー組成物の任意の成分として含まれ得る。このような添加剤としては、充填剤(例えば、グラファイト、カーボンブラック、粘土、二酸化ケイ素、フルオロポリマー微粒子(例えば、TFEホモポリマーおよびコポリマー粉末)、硫酸バリウム、シリカ、二酸化チタニウム、酸受容体、硬化促進剤、ガラス繊維、またはポリアラミド繊維(例えば、Kevlar、他の硬化剤および/または可塑剤))またはフルオロエラストマー分野またはペルフルオロエラストマー分野において公知もしくは開発される他の添加剤が挙げられる。好ましいペルフルオロポリマー/ペルフルオロエラストマーとしては、Simriz(登録商標)(ドイツのFreudenbergから市販)、Dyneon(登録商標)(ミネソタのMinnesota Mining & Manufacturingから市販)、Daiel−Perfluor(登録商標)(日本の大阪のDaikin Industries,Ltd.から市販)が挙げられる。類似の物質もまた、イタリアのAusimont S.p.A.およびロシアのFederal State Unitary Enterprise S.V.Lebedev Instituteから市販されている。
【0043】
本発明のフルオロエラストマー組成物またはペルフルオロエラストマー組成物における使用のための好ましい硬化剤および共硬化剤は、分枝または直鎖のアルキル型化合物、ハロゲン化アルキル型化合物、ペルハロゲン化アルキル型化合物、および好ましくはペルフルオロアルキル型化合物を含む官能性ジフェニル化合物を含むものである。これらのアルキル型化合物、ハロゲン化アルキル型化合物、ペルハロゲン化アルキル型化合物、およびペルフルオロアルキル型化合物は、1個以上の酸素原子を有しても、有さなくてもよく、そして置換されても、されなくてもよく、そして少なくとも2個のアミノフェニル基(好ましくは、2個のアミノフェノール基)を有するが、十分に高い分子量(拡大連鎖)を有して融点が、好ましくは約240℃を超えず、より好ましくは約230℃を超えず、そして最も好ましくは約225℃であり、ゆえに適合性を向上し、そしてペルフルオロエラストマー組成物(特に、シアノ型硬化部位モノマーを有する好ましいペルフルオロエラストマー)の速い硬化反応を提供する。
【0044】
このような硬化剤は、好ましくは、式(III)のジフェニルベースの硬化剤である:
【0045】
【化19】


。式(III)において、rは、0または1であり得る。式(III)において、さらにRおよびRは独立に選択されて、炭素原子または任意のこのような鎖(直鎖または分枝のいずれにせよ)における約2〜約22個の炭素原子の(さらに置換または非置換であり得る)分枝または直鎖の炭素ベースの基であり、より好ましくは、このような鎖は、10〜22個の炭素原子であり、そしてこれらの基は、以下の例示的な基から選択される:アルキル基、完全または部分的にハロゲン化されたアルキル基、そして好ましくは、ペルフルオロ化アルキル基(これらの基の各々は、少なくとも1個の酸素原子によって割り込まれ得、そして、分枝鎖としては、例えば、ハロアルキル、フルオロアルキルおよびトリフルオロアルキルのような基が挙げられ得る)。式(III)および置換可能な基を含むような本明細書中で記載される他の式(以下に記載される式(III)に従う好ましい処方物を含む)における使用にとって受容可能な置換は、置換が、所定の硬化反応にとって所望され得る程度まで、式(I)および式(II)について本明細書中に記載されるのと同一物であり得る。Zは、好ましくは、アミノ基、メルカプト基、チオフェノール(thiphenol)基、スルフヒドリル基またはヒドロキシル基であり、このヒドロキシル基が最も好ましい。
【0046】
各Jは、独立に選択されて式(IV)であり:
【0047】
【化20】


またはAと同一物であり、そしてAは、式(III)におけるRのいずれかの側で独立に選択されて式(IV)、水素原子、フッ素原子、または分枝もしくは直鎖(置換または非置換)の炭素ベースの基(この炭素ベースの基は、以下から選択される:1〜約22個の炭素原子のアルキル基、部分的または完全にハロゲン化されたアルキル基、またはペルフルオロアルキル基、より好ましくは、ペルフルオロアルキル基;これらの基の各々は、少なくとも1個の酸素原子で割り込まれ得、そして分枝鎖としては、例えば、ハロアルキル、フルオロアルキルおよびトリフルオロアルキルのような基が挙げられ得る)であり得る。rが0でありかつRが炭素原子である場合、Jおよび各Aのうちの少なくとも1個は、式(IV)ではない。A基が式(IV)であることは、本発明の範囲内であるが、2個のみのこのような基が、式(III)の硬化剤において見られることが好ましく、よってr=0でありかつJが上記の式(IV)である場合、いずれのA基も、式(IV)ではないことが好ましい。
【0048】
式(III)においてr=0でありJが上記の式IVと合致する場合、好ましい構造は、Rが炭素原子である構造を含み、ここで、Rは、酸素を含んでも含まなくてもよい直鎖または分枝のアルキル基もしくはペルフルオロ化アルキル基である。さらに好ましいものは、rが0である場合、Rは、炭素原子であり、Jは、式(IV)であり、一方のAは、トリフルオロメチル基であり、そして他方のAは、2〜22個の炭素原子の直鎖および分枝鎖のペルフルオロアルキル基およびペルフルオロアルキルエーテル基からなる群より選択される構造である。
【0049】
rが0であり、Jが式IVと合致し、かつRが炭素原子である場合、好ましい構造は、以下の構造(V)〜(VII)を含み、ここで、qは、好ましくは、0〜6の範囲であるが、6を超えるqもまた、本発明の範囲内である。
【0050】
【化21】

【0051】
【化22】


および
【0052】
【化23】


rが0であり、Rが炭素原子であり、AがRの一方の側でCFであり、かつAがRの他方の側でさまざまな長さの鎖である場合の式(III)のさらに好ましい例としては、CFであるAと反対側のA基によって表される鎖の構造に従って表1に示されるような以下の物質が挙げられる。表1から分かり得るように、好ましい化合物は、色および外見上は類似しているが、融点が異なり、それによってフルオロエラストマー組成物およびペルフルオロエラストマー組成物における適合性および硬化速度の点で、硬化剤に対し、より広範な選択肢を提供する。
【0053】
【表1】


rが式(III)において0であり、Jが上記の式IVであり、かつRが、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、および好ましくはペルフルオロ化アルキル基(これらは、酸素を含んでも含まなくてもよい)のような直鎖または分枝鎖の基である場合、好ましい例示的な構造としては、以下の(VIII)および(IX)のような構造が挙げられる。以下の(VIII)および(IX)においては、二アミノフェニル基は、上記で示される構造のようなビス位にあるのではなく、鎖によって分離される末端位にあり、これにより、約240℃を超えない、より好ましくは約230℃を超えない、そして最も好ましくは、225℃を超えない融点を提供するために十分な分子量を提供する。このような構造においては、Aは、上記のとおりであり得る。A基が式(IV)であることは、本発明の範囲内であるが、Jが式(IV)である場合、このようなたった2個の基が、式(III)の硬化剤に見られることが好ましく、そしていずれのAも式(IV)でないことが、このような構造において好ましい:
【0054】
【化24】


ここで、x、yおよびzは、各々独立に選択されて、0〜約20、好ましくは0〜10であり、好ましくはx+y+zの合計は、約20以下であり、好ましくは、約9〜約20であり、そしてLは、水素、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素)、アルキル、ハロゲン化アルキルおよび好ましくは、ペルフルオロ化アルキル(例えば、トリフルオロメチル)であり、最も好ましくは、Lは、フッ素またはトリフルオロメチルである。さらなる例としては、以下が挙げられる:
【0055】
【化25】


ここで、L、x、zは、上記のとおりであるが、xおよびzは、好ましくは、各々独立に0〜約10であり、そしてx+yは、合計で好ましくは、約20以下、好ましくは、約9〜約20である。rが0でありかつRが、酸素を含んでも含まなくてもよい、直鎖または分枝のアルキル基またはペルフルオロ化アルキル基である、式(III)に従う構造としては、フッ素原子が置換され得、そして/またはLが、以下(例えば、式X〜式XII)に示されるようなより長い構造に分枝され得る、式VIIIおよび式IXの改変体が挙げられることが、理解されるべきである:
【0056】
【化26】

【0057】
【化27】


および
【0058】
【化28】


ここで、sは、好ましくは、1〜約6であり、そしてx、sおよびzは、先に規定したとおりであり、x+s+zは、合計で好ましくは、約20以下であり、そしてより好ましくは、最小値(sは1であり、そしてxおよびzは0である)である。
【0059】
rが、式(III)において0ではない場合、構造は、少なくとも2個のアミノフェニル基を有する本発明の範囲内に含まれるが、ここで、このアミノフェニル基は、ビス位ではなく、そして/または必ず末端位である。このような構造においては、少なくとも1個のアミノフェニル基が、これらの鎖の各々に沿った位置でのRおよびRに位置し、JおよびAは、上記のとおりである。しかし、好ましい実施形態では、このようなたった2個のアミノフェニル基が、全体として化合物内に存在し、よって、このような2個の基が既に存在する場合、たとえこのような化合物が、本発明の範囲内にあるように明白に企図されるとしても、JおよびAは、式(IV)でないことが、好ましい。このような例示的なビスアミノフェノール構造は、以下のとおりであるが、このような構造の改変体もまた、式(III)に従う本発明内に含まれることが、理解されるべきである。
【0060】
【化29】


例えば、上記の式XIIIにおいて、Aは両方ともに、CFであり、Rは、
【0061】
【化30】


であり、
は、
【0062】
【化31】


であり、R上のJ基は、Fであり、R上のJ基は、Lであり、そしてxおよびzは、以下に記載したとおりである。さらなる例としては、以下が挙げられる:
【0063】
【化32】

【0064】
【化33】


および
【0065】
【化34】


ここで、L、xおよびzは、上記のとおりであるが、式XIII、式XIV、式XVおよび式XVIにおいて、xおよびzは、合計で19以下であることが、好ましい。上記に記載された全ての式において、Lは、フルオロ、ペルフルオロアルキルまたはペルフルオロアルコキシであることがまた、好ましい。
【0066】
他の好ましい式としては、式(III)が挙げられ、ここで、rが1である場合、各Aおよび各Jは、フッ素であり、Rは、炭素原子であり、そしてRは、2〜22個の炭素原子の直鎖および分枝鎖のペルフルオロアルキレン基およびペルフルオロアルキルエーテル基からなる群より選択され、ここで、一方のAおよび一方のJは、両方とも、Rの末端炭素原子に結合される。
【0067】
種々の合成経路が、式(III)に従う種々の好ましい硬化剤を作製するために存在し、そして/または、開発され得る。この硬化剤は、どの化学的経路が、それらを得るために使用されるかに関係なく、本発明の範囲内である。存在する経路は、R.C.Evers,J.Polym.Sci.16,2833−2848(1978)(本明細書中で参考として援用される)において記載されるように、式(III)に従ういくつかの化合物を作製するために記載される。さらに、本発明は、式(III)に従う好ましい化合物を調製するためのいくつかの新規経路を含む。1つの経路は、さらに以下に記載されるようなエポキシド−ケトン反応を使用することを包含し、別の経路は、またさらに本明細書中に記載されるような、有機マグネシウム経路を含む。しかしながら、新規方法は、本明細書中に存在するが、任意の合成法が、本発明の新規の硬化剤および共硬化剤を作製するために使用され得ること、および十分に高い分子量を有することによって、約240℃を超えない、より好ましくは、約230℃を超えない、または最も好ましくは、225℃を超えない、融点を提供する官能性ジフェニルベースの硬化剤および共硬化剤を提供する本発明は、これらの合成法に関係なく、式(III)を有するものを含む本発明の範囲内に含まれることは、理解されるべきである。
【0068】
好ましい反応としては、ペルフルオロアルキル酸ハロゲン化物、好ましくは、ペルフルオロアルキル酸フッ化物(すなわち、アシル基化合物、好ましくは、ペルフロオロアシルフッ化物)をフッ化カリウムと反応させて開始化合物のアルコラートを形成することを含む。次いで、このカリウムアルコラート反応生成物を、ペルフルオロアリルフルオロサルフェートと反応させてその物質のペルフルオロアリルエーテルを形成する。
【0069】
次いで、ペルフルオロアリルエーテル反応生成物を、さらに酸化剤と反応させて(すなわち、酸化させるのであって、ここで、この酸化剤は、好ましくは、酸素であるが、これに限定されない)ペルフルオログリシジルエーテルを形成する。このペルフルオログリシジルエーテルは、次いでフルオロ化溶媒中で塩化アルミニウムと反応させられ、ペルフルオログリシジルエーテル上のエポキシド基をケトンに異性化する。次いで、このケトン化合物を、フッ化水素存在下で官能基Zを有するフェニル(好ましくは、ZはOHであり、そしてフェニルはフェノールである)と反応させてビスフェニルベースの化合物、好ましくは、ビスフェノール化合物を形成する。
【0070】
次いで、このようなビスフェニルベースまたはビスフェノールベースの化合物を、硝酸(または類似の有用なニトロ化化合物)でニトロ化して各フェニル基にNO基を提供し、そしてビスニトロフェニルベースまたはビスニトロフェノールベースの化合物を形成する。次いで、この化合物を、適切な還元剤を使用して還元させ、ビスアミノフェニル基、好ましくは、ビスアミノフェノール基(各々が、ペルフルオロエラストマー組成物を硬化可能な式IVのZラジカル(好ましくは、ビスアミノフェノール基)を有する)を有する所望の化合物を形成する。
【0071】
本発明に従う新規の硬化剤および共硬化剤を形成するためのこのような例示的な合成経路は、このような式Vおよび式VIの構造を参照して例示され得、そして、式IIIにおける一方のAがCFであり、Rが炭素原子であり、Jが式IVでありそしてrが0である、類似の化合物は、R’が、CFであるAの反対側に伸長するA基の一部(CF−O−CF−R’)である鎖の部分を言及する以下の基本反応スキームを含むのであって:
【0072】
【化35】


が炭素原子であり、rが0であり、Jが式(IV)であり、一方のA基がCFであり、そして他方のA基(A’として以下の機構において言及される)がCFO(CFO)CF−(例えば、式(VII)における化合物および類似化合物)である場合、式(III)に従う化合物を形成するためのさらなる例示的な反応スキームは、有機マグネシウム化合物を使用する方法を含む。この合成経路において、アルキルマグネシウムハロゲン化物、ハロゲン化アルキルマグネシウムハロゲン化物またはペルフルオロアルキルマグネシウムハロゲン化物、および好ましくは、ペルフルオロマグネシウムヨウ化物(例えば、トリフルオロメチルマグネシウムヨウ化物)を、アルキル、ハロゲン化アルキルまたはペルフルオロ化アシルハロゲン化物(例えば、式(III)におけるA鎖)(ここで、アシルハロゲン化物は、ハロゲン化ケトン基を含む)と反応させる。生じる化合物は、マグネシウムハロゲン化物を放出して、アシルハロゲン化物上にケトン基を残す。次いで、このケトン基を、Z官能基(好ましくはヒドロキシル基)を有する置換されたフェニル化合物とさらに反応させてケトン位にビスフェニル官能基(好ましくはビスフェノール基)を形成させ、次いでこれを、ニトロ化し、続いて、上記の様式で還元させる。このような機構のサンプルは、以下に示される:
【0073】
【化36】


あるいは、2個のフェニル基の各々が、公知の化学的置換技術および化学的置換経路を使用することによって、異なる位置および/または末端の位置でRまたはRに提供されて、式(III)に従う種々の他の式を達成し得る。このような1つの置換経路は、本明細書中の上記のEversに示され、これは、ジヨードペルフルオロアルカン中間体をヨードフェニル酢酸と反応させる工程、この生成物を加水分解してビスフェノールを得る工程、このジニトロビスフェノールをニトロ化し、次いで還元させてビスアミノフェノールを得る工程によって、フルオロカーボンビスアミノフェノール(これらのいくつかは、式(III)によって表される)を得る。
【0074】
存在する硬化部位モノマー(例えば、有機ペルオキシド、有機金属化合物(例えば、有機スズ)、ジアミン、アミジン、慣用的なビスアミノフェノールおよび/もしくはビスアミノチオフェノールなど、またはこれらの混合物)に依存して、他の硬化剤または1個より多くの硬化剤を使用することもまた、可能である。さらに、ペルフルオロポリマーは、補助としてか、または本発明の硬化剤または共硬化剤によって硬化されない他の硬化部位を硬化するために放射線硬化技術を使用して硬化され得る。
【0075】
使用されるべき本発明に従った硬化剤および共硬化剤の量および型は、硬化されるフルオロエラストマーまたはペルフルオロエラストマーの所望の特性(その化学的作用に対する耐性、特定の破壊点伸長(elongation−at−break)、圧縮永久歪みに対する耐性、曲げ率、引裂強度、硬度などが挙げられる)を最適化するように選択されるべきである。使用量は、所望の架橋度、本発明の硬化剤によって硬化される硬化部位の型および数、本発明の範囲内ではない他の硬化剤によって硬化される他の硬化部位の数、および所望の硬化速度に依存する。硬化剤の好ましい量は、本発明の硬化剤および共硬化剤と反応可能なフルオロエラストマー組成物またはペルフルオロエラストマー組成物に存在するそれらの硬化剤と反応させるために必要とされるわずかに過剰な量における量と同量である。好ましくは、約100部のフルオロポリマーまたはペルフルオロポリマー当たり約0.1〜約10重量部の硬化剤が使用され、より好ましくは、約1〜約4重量部の硬化剤が使用される。共硬化剤として使用される場合、他の硬化反応が起きるので、この量は、上記の部位の数および他のパラメータに非常に依存するが、好ましくは、より少ない。
【0076】
本発明は、アミジンベースまたはアミドシキムベースの硬化剤を含む。このアミジンベースまたはアミドシキムベースの硬化剤は、硬化剤または共硬化剤、そしてまた、硬化促進剤としても機能し得、そして、単独または本明細書中に記載されるような本発明のビフェニル−ベースの硬化剤および共硬化剤もしくは本発明の範囲内ではない他の硬化剤とのいずれかと一緒に使用され得るか、またはペルフルオロエラストマー組成物の中で、本発明の範囲外の他の硬化剤ではない本発明のビフェニルベースの硬化剤および共硬化剤の硬化速度をさらに促進するために使用され得る。
【0077】
適切なアミジン硬化剤およびアミジン促進剤ならびにアミドキシム硬化剤およびアミドキシム促進剤としては、本明細書中に記載されるようなモノアミジン、モノアミドキシムおよびビスアミジンが挙げられる。当該分野で公知の他の硬化促進剤(例えば、有機アンモニウム塩または無機アンモニウム塩(例えば、ペルフルオロオクタノエート(perfluoroctonaoate)、アンモニウムペルフルオロアセテート、アンモニウムチオシアネートおよびアンモニウムサルファメート;尿素;t−ブチルカルバメート;アセトアルデヒドアンモニア;テトラアルキルホスホニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、およびトリアルキルスルホニウム塩(例えば、ベンジルトリフェニルホスホニウム塩化物、ベンジルトリフェニルホスホニウム臭化物、ビスフェノールAFのベンジルトリフェニルホスホニウムフェノラート、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、およびテトラブチルアンモニウム臭化物))もまた、所望される場合、本発明の新規のビフェニルベースの硬化剤および共硬化剤と併せて使用され得る。しかしながら、この新規のビフェニルベースの硬化剤および本発明の共硬化剤のために所望される促進剤の中で、本明細書中に記載されるアミジンベースおよびアミドキシムベースの硬化促進剤が、本発明のビフェニルベースの硬化剤および共硬化剤の硬化を促進するために使用されることが好ましい。
【0078】
本発明のビフェニルベースの硬化剤および共硬化剤のための好ましい促進剤は、アミジンベースおよびアミドキシムベースの硬化促進剤であり、これらのアミジンベースおよびアミドキシムベースの硬化促進剤はまた、ペルフルオロエラストマー組成物における独立の硬化剤または共硬化剤として、それら自体で、機能し得る。これらのアミジンベースおよびアミドキシムベースの物質としては、以下の式(I)のモノアミジンおよびモノアミドキシムならびにさらに以下に記載される式(II)のビスアミジンが挙げられる。このモノアミジンおよびモノアミドキシムは、式(I):
【0079】
【化37】


によって表され得、ここで、Yは、約1〜約22個の炭素原子を有する、置換された、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基もしくはアラルコキシ基または非置換もしくは置換された、完全もしくは部分的にハロゲン化された、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基またはアラルコキシ基であり得る。Yはまた、好ましくは、1〜約22個の炭素原子のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、ペルフルオロアリール基、ペルフルオロアラルキル基またはペルフルオロアラルコキシ基であり、より好ましくは、約1〜約12個の炭素原子(より好ましくは、1〜9個の炭素原子)のペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基であり;そしてRは、水素もしくは1〜約6個の炭素原子の置換もしくは非置換の低級アルキル基または低級アルコキシ基、またはアミノ基であり得る。Rは、独立に、Rまたはヒドロキシルについて上に列挙された任意の基であり得る。Y、RまたはRについて置換される基としては、ハロゲン化アルキル、ペルハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルコキシ、ペルハロゲン化アルコキシ、チオ、アミン、イミン、アミド、イミド、ハロゲン、カルボキシル、スルホニル、ヒドロキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態は、Rが、ヒドロキシル、水素または1〜6個の炭素原子の置換もしくは非置換のアルキル基もしくはアルコキシ基であり、より好ましくは、ヒドロキシルまたは水素であるものが挙げられる。またRが、水素、アミノまたは1〜6個の炭素原子の置換もしくは非置換の低級アルキルであり、一方でRが、水素またはヒドロキシルである実施形態が、好ましい。Rが、水素である実施形態が最も好ましい。さらに好ましい実施形態としては、Yが、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、上記のような鎖長を有する、置換もしくは非置換のアリール基および置換もしくは非置換のハロゲン化アリール基であるものが挙げられる。
【0080】
式(I)に従う例示的なモノアミジンベースおよびモノアミドキシムベースの硬化剤としては、ペルフルオロアルキルアミジン、アリールアミジン、ペルフルオロアルキルアミドキシム、アリールアミドキシムおよびペルフルオロアルキルアミドラゾンが挙げられる。特定の例としては、ペルフルオロオクタンアミジン、ヘプタフルオロブチリルアミジン、ベンズアミジン、トリフルオロメチルベンズアミドキシム、およびトリフルオロメトキシルベンズアミドキシムが挙げられる。式(I)に従って記載される硬化剤は、単独または組み合わせ(例えば、前述の例示的な化合物の組み合わせ)で使用され得る。
【0081】
式(I)に従う硬化剤は、好ましくは、ペルフルオロエラストマー組成物(好ましくは、少なくとも1個のシアノ硬化部位モノマーを有するもの)を硬化可能である。本発明の式(I)に従う硬化剤はまた、少なくとも1個のシアノ硬化部位モノマーを含むペルフルオロエラストマー組成物およびより好ましくは、(本発明の新規ジフェニルベースの硬化剤を含む)ジフェニルベースの硬化剤をまた含む組成物(例えば、ビスアミノフェノールおよびその誘導体)の硬化を促進可能なモノアミジンベースおよびモノアミドキシムベースの硬化促進剤である。モノアミジンの適切な例としては、ベンズアミジンおよびペルフルオロアルキルアミジンが挙げられる。特に適切な例は、ペルフルオロオクタンアミジンおよびペルフルオロヘプタンアミジンである。
【0082】
本発明はまた、式(II):
【0083】
【化38】


によって表されるフルオロエラストマー組成物およびペルフルオロエラストマー組成物のためのビスアミジンベースの硬化剤および硬化促進剤を含み、ここで、Dは、約1〜約22個の炭素原子を有する非置換または置換され、完全または部分的にハロゲン化されたアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基またはアラルコキシ基、またはより好ましくは、1〜約22個の炭素原子のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、ペルフルオロアリール基、ペルフルオロアラルキル基またはペルフルオロアラルコキシ基であり得、そしてより好ましくは、約1〜約12個の炭素原子のペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアラルコキシ基であり得る。RおよびRは、式(I)に関しては上に規定されるとおりであるが、式(II)については、Rは、ヒドロキシルではなく、Rは、独立に選択され、上に記載されたRと同一物である。さらに、D、RおよびRは、式(I)に関して上に記載された1個以上の基によって各々置換され得る。本明細書中で、式(II)において最も好ましくは、RおよびRの両方が、水素である。
【0084】
酸素原子は、好ましくは、Y、RおよびR中のエーテル結合の形式で含まれる。Yは、直鎖または分枝であることが好ましく、一方でYが、上記のように置換され得る、環式または芳香族構造であり得ることはまた、本発明の範囲内である。
【0085】
式(II)のビスアミジンに関して、Dが、フルオロ化、より好ましくは、ペルフルオロ化されることが好ましい。しかしながら、Dが部分的にしかハロゲン化されない場合、アミジン基に隣接する炭素原子が、2個の水素置換基を各々有して、化合物を安定化することが、好ましい。Dにおける酸素原子はまた、好ましくは、エーテル結合の形式である。Dは、直鎖または分枝鎖であることが好ましく、一方でDが、さらに置換され得る、環式または芳香族構造であることはまた、本発明の範囲内である。このようなビスアミジンの特に適切な例としては、ペルフルオロスベラミジンおよびペルフルオロセバカミジンが挙げられる。適切なペルフルオロアルキルモノアミジンおよびペルフルオロアルキルビスアミジンは、Alachua,FloridaのSynQuest Laboratoriesから購入し得る。このような物質は、ロシアのFederal State Unitary Enterprise S.V.Lebedev Institute of Synthetic Rubberから市販されている。
【0086】
本発明のビスアミジンは、特にペルフルオロエラストマー組成物が、少なくとも1個のシアノ硬化部位モノマーを含む場合に、ペルフルオロエラストマーの硬化を促進可能な硬化促進剤として使用され得る。本発明に従う好ましい例示的なビスアミジンとしては、ペルフルオロスベラミジンおよびペルフルオロセバカミジンが挙げられる。
【0087】
上記のアミジン物質、アミドキシム物質が、促進剤として使用される場合、この量は、選択され、選択される特定のペルフルオロエラストマー、選択される硬化剤および/または共硬化剤ならびに所望の硬化特性(例えば、最小の特定のムーニー粘度を発生するために必要な時間、変形に耐える組成物の能力、および移動ダイレオメーター(moving die rheometer)によって測定される最大の特定のトルク)に基づき得ることが、理解される。適切な量としては、約100部のペルフルオロポリマー当たり約0.1〜約5部の促進剤が挙げられる。
【0088】
モノアミジン、モノアミドキシムおよびビスアミジンの調製において、本発明は、これらの化合物を作製するための任意の特定の合成法に関して制限されない。任意の化学合成および/または市販されているモノアミジン、モノアミドキシムおよびビスアミジンの使用が、利用可能である。しかしながら、本発明は、本明細書中に記載されるような新規合成法を含む。本発明の範囲内で有用なモノアミジンの調製に関しては、アルキル酸(すなわち、化合物を含むカルボン酸のような有機酸)、ハロゲン化アルキル酸および好ましくは、ペルフルオロ化アルキル酸を、アルキル酸(または記載されるような類似の化合物)とアルコール(例えば、アルカノール(例えば、硫酸のような無機酸の存在下でメタノールまたはエタノール))とを組み合わせることによって、最初に、ニトリル形式に変換する。この混合物を、煮沸し、水で洗浄し、そして好ましくは、適切な物質(例えば、MgSO)を使用して乾燥する。生じる生成物は、アルキルエステル、ハロゲン化アルキルエステルまたはペルフルオロアルキルエステルであり、これらを、次いで、アンモニア(好ましくは、アンモニアガス)のような反応物を含む窒素と反応させる。反応を、反応温度を制御して進ませ、カルボキシアミド構造(例えば、アルキルカルボキシアミド)を生成する。次いで、この反応生成物を、脱水剤(例えば、五酸化リンなど)と組み合わせ、混合し、そして加熱下で還流し、そしてこの生成物を、アルキルニトリル(例えば、アルキルシアノ化合物、ハロゲン化シアノ化合物またはペルフルオロアルキルシアノ化合物を含むシアノ官能性アルキル)に転換する。次いで、このアルキルニトリル化合物を、少なくとも1個の窒素含有化合物(例えば、好ましくは、アミン化合物または液体形態もしくは気体形態(好ましくは、液体形態)におけるアンモニア)で充填した反応チャンバーに添加する。窒素含有化合物(例えば、アンモニア)が、添加したアルキルニトリル(好ましくは、シアノ官能性)化合物に対して過剰に(好ましくは、約10倍過剰)存在することが、好ましい。アルキルニトリル化合物を、窒素含有化合物を含むチャンバーに添加した後、温度は、約周囲温度まで、好ましくは、ゆっくりと上昇し、過剰の窒素含有化合物(例えば、アンモニア)を、除去する。固体の白色生成物は、代表的に、モノアミジン構造を有する、アルキル基、ハロゲン化アルキル基またはペルフルオロ化アルキル基である、生じる化合物である。前記のものは、本発明に従うモノアミジンを作製するための好ましい合成経路を表し、一方で公知のまたは開発される任意の方法が、本発明の範囲内から逸脱することなく、本発明のビスアミジン、モノアミジンまたはモノアミドキシムを作製する際に使用され得る。本発明の生じるモノアミジンおよびモノアミドキシムは、硬化剤として有用であり、そして上記のようなペルフルオロエラストマー組成物を硬化またはその硬化を促進可能である。上記の方法に従って作製される好ましい化合物としては、ペルフルオロヘプタンアミジンが挙げられる。
【0089】
このペルフルオロエラストマー組成物を、慣用的な手段または装置(二本ロール製粉機および密閉式混合機が挙げられる)のいずれかによって任意の上記の添加物のいずれかと混合またはブレンドする。例えば、この組成物を、密閉式混合機(例えば、Hackensack,New JerseyのBanbury,C.W.Bradender Instruments,Inc.およびFarmingdale,New YorkのMorijamaから市販されているもの)を使用してブレンドし得る。好ましくは、本発明の硬化剤および共硬化剤ならびに/または本発明の硬化促進剤を、一旦添加し、全ての所望の他の成分をブレンドする。しかしながら、このような物質を提供する順序は、本発明の範囲を限定しないことが、理解されるべきである。次いで、硬化可能な組成物を、処理し、そして加熱および/または圧力の適用により硬化/架橋して、エラストマー部分(例えば、シール)を形成し得る。硬化した後、ポストキュア(postcuring)は、物理的特性を増強するために望ましくあり得、そしてまた本発明の範囲内である。
【0090】
好ましいモノアミジン硬化促進剤(直接的な硬化剤または共硬化剤としても使用され得る)のさらなる特定の例は、表2に見出され、ここで、RおよびRは、両方とも水素であり、そしてこれらの化合物は、上記の式(I)のYの組成物によって分類される。
【0091】
【表2】

【実施例】
【0092】
本発明は、ここで、以下の非限定的な実施例を参照して記載される。
【0093】
(実施例1)
式(III)に従うビスアミノフェノール誘導体(2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]4,7,9,11テトラオキサ−1,1,1,3,3,5,5,6,6,8,8,10,10,12,12,12−ヘキサデカフルオロドデカン)を調製した。ここで、Rが炭素原子であり、rが0であり、Jが式(IV)のような構造であり、一方のAが−CFであり、そして他方のAが−CFOCFCF(OCFOCFである。このような構造は、式(V)における代表的な形式で上記に示される。このような化合物の調製において、ペルフルオロ化ポリエーテルケトンを、本明細書中で記載されるようなエポキシド−ケトン経路に従って、最初に形成した。乾燥窒素ガスの連続フローによって保護したフラスコに、11.6g(0.2モル)の量のフッ化カリウム、およびCaHから蒸留によって既に乾燥させた100mlのジグライム(Diglyme)を入れた。この混合物を15分間撹拌した。この混合物に、60g(0.19モル)の3,5,7−トリオキサ−2,2,4,4,6,6,8,8,8−ノナフルオロオクタノイルフッ化物を、十分に撹拌しながら室温で添加した(室温で、適切に撹拌しながら、1〜1.5時間にわたって添加した)。添加が完了した後、この混合物を、全てのフッ化カリウムが、溶解し、カリウムアルコラート塩(CFO(CFO)CFCFOK)を形成するまで、さらに2時間撹拌した。アルコラートの存在および反応の完了を、赤外スペクトルにおける1890cm−1での酸性フロリドのバンドの消失によって確認した。このライン、1890cm−1は、以下に対応する:
【0094】
【化39】



上記の反応は、以下により特徴付けられる:
【0095】
【化40】


上記のアルコラートの形成後、上記のカリウムアルコラート溶液を含むフラスコを、10℃まで冷却し、滴下漏斗を装着した。次いで、48g(0.21mol)の量のペルフルオロアリルフルオロサルフェートを、10〜15℃の温度を維持しながら、滴下漏斗を通じて、ゆっくりと(一滴ずつ)添加した。さらに2時間撹拌した後、2つの液体層が形成した。この層を分離し、そして上層を、0.5mm Hgの減圧下、60℃の温度で蒸留した。この蒸留物を、下層と組み合わせた。この粗生成物を、水で洗浄し、KOSOF塩を除去し、分離し、そして上の水層を廃棄した。下層を、Pから蒸留によって乾燥させ、粗ペルフルオロアリルエーテル(4,7,9,11−テトラオキサ−1,1,2,3,3,5,5,8,8,10,10,12,12,12−ヘキサデカフルオロドデセン)を、95%の収率で得た。この粗ペルフルオロアリルエーテルを、分留し、そして88℃での沸騰する画分を回収し、F19NMR、IR分光法(−CF=CFに対応する1795cm−1での吸収バンド)および元素分析によって同定した。元素分析は、以下のとおりである:
16について計算すると:C,20.68%;F,65.51%
実験的検出値:C,20.24%;F,65.63%
上記の反応は、以下に代表的に示される:
【0096】
【化41】


上記のペルフルオロアリルエーテルを、十分に撹拌される1リットルステンレス鋼反応器内で酸化した。この反応を、80〜120℃の温度および12〜20atmゲージ(150〜300psig)の酸素圧で12時間行った。この反応混合物を、90℃および100mm Hgの圧力で蒸留して、ペルフルオログリシジルエーテル(4,7,9,11−テトラオキサ−1,1,2,3,3,5,5,6,6,8,8,10,10,12,12,12−ヘキサデカフルオロドデカン−1,2−オキシラン)を85%の収率で生成した。この構造を、F19NMR、エポキシド
【0097】
【化42】


に対応する1530cm−1でのIRバンド(エポキシド)の存在および1795cm−1でのIRバンドの欠如(−CF=CF−の欠如)によって確認した。上記の反応は、以下に代表的に示される:
【0098】
【化43】



【0099】
フラスコに、3gのAlClおよび10mlのフレオン(Freon)113を入れ、この混合物を、室温で40分間撹拌した。大部分のフレオン113を、減圧して除去し、粘り気のある(pasty)残留物が残った。これに30gの上記のペルフルオログリシジルエーテルを、撹拌しながら、10〜15分の期間にわたって滴下した。次いで、この混合物を、50℃で2時間撹拌した。異性化の過程を、赤外分光法によってモニタリングした。1530cm−1でのエポキシドバンドを、1796cm−1でのケトンバンドによって置き換わった。粗ペルフルオロケトンを、60℃および100mm Hgでの蒸留によって90%の収率で単離した。純粋なペルフルオロケトン(4,7,9,11−テトラオキサ−1,1,1,3,3,5,5,6,6,8,8,10,10,12,12,12−ヘキサデカフルオロドデカン−2−オン)を、114℃の沸点での分留によって得た。その同一性を、F19NMRにより確認し、そしてその純度を、ガス−液体クロマトグラフィーにより確認した。ペルフルオロケトンを形成するための最終的な反応が、以下に代表的に示される:
【0100】
【化44】


金属製アンプルに、94gのフェノール、240gのペルフルオロケトンおよび100gのフッ化水素を入れ、シールし、そして95℃の温度で10時間加熱した。フッ化水素を、蒸留により除去し、そして固体のビス−フェノールを、トルエンおよびクロロホルムからの再結晶化により精製した。生成物は、89%純粋なビスフェノール(2,2−ビス[4−ヒドロキシフェニル]4,7,9,11−テトラオキサ−1,1,1,3,3,5,5,6,6,8,8,10,10,12,12,12−ヘキサデカフルオロドデカン)であった。この構造を、F19NMRにより確認した。
【0101】
四口フラスコに、アジテーター、還流凝縮器、滴下漏斗および温度計を装着した。130mlの氷酢酸中の39.2gの上記のビスフェノール生成物と0.1gのNaNOとの溶液を、フラスコ内で調製した。この溶液を40〜45℃に維持しながら、硝酸および20mlの氷酢酸の溶液を添加した。添加が完了した場合に、反応混合物を、60℃の温度で2時間加熱し、次いで80℃の温度で3時間加熱した。水を添加し、生じた黄色〜赤色の油を、分離し、トルエン中に溶解し、そしてMgSO上で乾燥させた。トルエン溶媒を、水流ポンプを使用して200〜300mmHgで、蒸留して取り除いた。残留のビスアミノフェノール生成物(2,2−ビス[3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル]4,7,9,11−テトラオキサ−1,1,1,3,3,5,5,6,6,8,8,10,10,12,12,12−ヘキサデカフルオロドデカン)を、81.1%の収率で54.7gの量で得た。
【0102】
四口フラスコに、アジテーター、還流凝縮器、滴下漏斗および温度計を装着した。100mlのエタノール中上記のビスフェノールの溶液を、フラスコ内で調製し、1.5gの触媒を添加した(炭素上の5%のPt)。撹拌しながら、12gの100%過酸化水素を添加し、この混合物を4時間還流した。この混合物を、冷却し、濾過して触媒を除去し、そして3体積分の水で希釈した。この水性混合物を、pH6未満まで酢酸で酸性化した。沈殿した生成物を、濾過によって回収し、風乾し、そして酢酸エチルから再結晶化した。142℃で融解する純粋なビスアミノフェノール(2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]4,7,9,11−テトラオキサ−1,1,1,3,3,5,5,6,6,8,8,10,10,12,12,12−ヘキサデカフルオロドデカン)生成物を、91.0%の収率(45.7g)で得た。この構造を、F19NMRにより確認した。
【0103】
(実施例2)
実施例1のものと同一のビスアミノフェノール誘導体生成物の生成において、トリフルオロメチルマグネシウムヨウ化物のペルフルオロアルカノイルハロゲン化物との重合を含む有機マグネシウム合成を使用してペルフルオロケトンを調製するために、代替の経路を、用いた。この合成は、J.Am.Chem.Soc.,1273−77頁(1954)に記載される:
【0104】
【化45】


28.8gのMgおよび少量のヨウ素の結晶を含むフラスコを、ヨウ素の色が消失するまで、撹拌しながら60℃まで加熱した。このフラスコを、室温まで冷却し、300mlのジエチルエーテルを添加した。このフラスコを−40℃まで冷却し、そして19.0gのCFIを、3時間の期間にわたってゆっくり滴下して8.8g(40%収率)のCFMgIを含む溶液を生成した。温度を30℃まで上昇させ、そして3,5,7−トリオキサ−2,2,4,4,6,6,8,8,8−ノナフルオロオクタノイル塩化物を、撹拌しながら、1時間にわたって添加した。室温でさらに7時間撹拌した後、ペルフルオロケトン生成物(4,6,8−トリオキサ−1,1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,9−ドデカフルオロノナン−2オン)を、減圧(15mmHgで1℃の沸点)での蒸留により単離した。この構造を、F19NMRを使用して確認した。このペルフルオロケトンを、実施例1に記載された手順を介して転換して、融点115℃を有するビスアミノフェノール(2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]4,6,8−テトラオキサ−1,1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,9−ドデカフルオロノナン)を形成し得る。
【0105】
(実施例3)
モノアミジンを、以下のような本発明の方法に従って合成した。混合機、温度計、逆流凝縮器および滴下漏斗を備えた四口フラスコに、41.1g(0.01モル)の乾燥C15COOHを添加し、32.0gのメタノールおよび19.0mlの濃縮HSOとブレンドした。この混合物を、6時間煮沸し、次いで水で洗浄し、そしてMgSOで乾燥した。生成物(エステル)を、蒸留した(158℃の沸点)。収率は、米国特許第2,570,116号(1951)に記載されるような手順を使用して90〜95%(39.2g)であった。混合機、温度計、凝縮器およびガス導入菅を備えた四口フラスコに、39.2gのC15COOCHおよび100mlのジエチルエーテルを添加した。さらに、アンモニアガスを供給し、そして氷を、フラスコを冷却する必要があるときに使用した。反応の完了を、エーテル溶液中のC15COOCHの欠如に注意することで、ガス−液体クロマトグラフィーにより調べた。このエーテルを、蒸留して取り除き、固体生成物を風乾した。37.0gのC15CONHを得(97.9%の収率)、この生成物は、90℃の沸点を有した。丸底フラスコに、細末へと細かくした37.0gのC15CONH(0.0896mol)および63.6gのPを添加した。この物質を、徹底的に混合し、そして還流凝縮器を、フラスコに設置し、100〜200℃に加熱した。生成物C15−CNを、30.1gの量(85%の収率)で得、この生成物は、90℃の沸点を有していた。上記のような反応スキームが、以下に代表的に示される:
【0106】
【化46】


次いで、このようなシアノ末端化合物を、以下の実施例4において使用されるような技術を使用して式C15CNを有するモノアミジン形態に転換した。
【0107】
(実施例4)
10倍過剰(50ml)の無水アンモニアガスを、撹拌器、還流凝縮器、滴下漏斗、温度計、およびドライアイス/エタノール槽内で冷却した乾燥菅(固体KOHを充填する)を装着した四口フラスコ内に圧縮した。このアンモニアは、乾燥菅を介してフラスコ内で圧縮された。十分に撹拌し、かつ冷却しながら、60gの反応生成物(ペルフルオロヘプタノニトリル)(ペルフルオロ酸のニトリルへの転換について、実施例4において記載された技術に従って作製され、構造C13CNを有する)を、ゆっくり添加した。添加が完了した後、温度を、周囲温度までゆっくりと上昇させ、余分なアンモニアを蒸発させた。生じた白色固体生成物を風乾して、以下の式を有する62.0gのペルフルオロヘプタンアミドを得た(75〜76℃の融点を有し、98.5%の収率)。
【0108】
【化47】


紫外分光法は、基
【0109】
【化48】


に対する212nmでの特徴的なアミジン吸収バンド、および吸光係数、ε=6098を示した。
【0110】
(実施例5)
本実施例では、種々のペルフルオロエラストマー組成物を、塩基のペルフルオロエラストマーとして、WO 00/08076(本明細書中で参考として援用される)で詳細に記載されるような水性エマルジョン中にバッチ式重合によって調製されるテトラポリマーを使用して、調製した。ターポリマー中のモノマーは、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテルおよび2つの硬化部位モノマー(二級シアノ硬化部位モノマー、CF=CFO(CFOCF(CF)CNおよび一級シアノ硬化部位モノマー、CF=CFOCFCF(CF)O(CFCN)を含んでいた。重合を、過硫酸アンモニウムレドックス開始剤(intiation)または過硫酸アンモニウム/亜硫酸ナトリウムレドックス開始剤を使用した1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタンを含む水性エマルジョン中で、行った。界面活性物質混合物は、アンモニウムペルフルオロヘプタノエートおよびアンモニウムペルフルオロノナノエートを含んでいた。使用緩衝液は、リン酸二カリウムであった。テトラポリマーを、塩化マグネシウムを用いた凝固によって単離し、温水およびアルコールで洗浄し、そして60℃で乾燥させた。この組成物を、F19NMRならびに炭素およびフッ素についての元素分析によって決定した。ムーニー粘度を、TechPro(登録商標)viscTECH TPD−1585粘度計を用いて100℃で測定した。前述の方法に従って作製し、そして前述の組成物を有する以下の4つのテトラポリマーを、本発明に従って作製した調合物に使用した:
ポリマーA:レドックス型、45ムーニー粘度
ポリマーB:非レドックス、65ムーニー粘度
ポリマーC:非レドックス、64ムーニー粘度
ポリマーD:非レドックス、93ムーニー粘度
これらの組成物を使用した、上記のポリマーに、以下を含む種々の硬化剤および硬化剤の組み合わせを添加した:ペルフルオロセバカミジンおよびペルフルオロオクタンアミジン(これらの両方を、SynQuest Laboratories,Inc.,Alachua,Floridaから入手した)ならびにペルフルオロスベラミジンおよびペルフルオロヘプタンアミジン(これらは、ロシアのFederal State Unitary Enterprise S.V.Lebedev Institute of Synthetic Rubberから入手した)。またペルフルオロカーボンエーテル油を、添加物として種々の組成物中に使用し、これは、DuPont Specialty Chemicals,Wilmington,Delawareから市販されている。標準的なBOAP(2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェノール]ヘキサフルオロプロパン)をTCI America,Portland,Oregonから購入した。上記の組成物中で使用したジアミノフェノール硬化剤の両方(硬化剤Aおよび硬化剤B)を、ロシアのFederal State Unitary Enterprise S.V.Lebedev Institute of Synthetic Rubberから入手した。硬化剤Aおよび硬化剤Bは、各々、以下の構造を有していた:(2,2,−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェノール]R)。硬化剤Aにおいて、Rは、−CF(OCFOCFであり、硬化剤Aは、120℃の融点および630ダルトンの分子量を有していた。硬化剤Bにおいては、Rは、−CFOCFCF(OCFOCFであり、硬化剤Bは、約142〜145℃の融点および680ダルトンの分子量を有していた。また本明細書中で例示的な組成物において使用されたものは、カーボンブラック、特にCarbon Black N990である。
【0111】
試験試料を、テトラポリマーと上記の硬化剤とを混合してペルフルオロエラストマー組成物を形成することによって、およびBrabenderの100gまたは600gの密閉式混合機を使用してその組成物にカーボンブラックを添加することによって作製した。混合する際に、この化合物を、O−リングプリフォームに成形し、このプリフォームを硬化するためにシール内に成形し、次いで、以下の表に記載した硬化条件およびポストキュア条件に従ってSize 214 O−リングにポストキュアさせた。このリングを、ASTM−D−412、方法Bを使用して、引張り特性について試験し、そして以下のパラメータを記録した:T(破壊点張力MPa);E(破壊点伸長%);およびM100(100%伸長係数MPa)。O−リングサンプルの圧縮永久歪みを、ASTM−D−395、方法Bに従って決定した。硬化特性を、以下の条件下でMonsanto MDR 2000を使用して測定した:
移動ダイ周波数:1.6667Hz
振動振幅:0.5degアーク
温度:本明細書中の表に示したとおり
サンプルサイズ:直径1.6インチ、厚さ0.17インチおよび重さ9.5gのディスク
および
試験期間:60分
以下の硬化パラメータを記録した:M(最大トルクレベル、単位Nm);M(最小トルクレベル、単位Nm);t2(上記のMを0.23Nm上昇させるまでの分);
およびt90(Mの90%になるまでの分)。
【0112】
表3および表4(サンプル番号1〜12)は、新規硬化剤(硬化剤Aおよび硬化剤B)の使用、およびこれらの新規硬化剤ならびに標準的なBOAPのための硬化促進剤としての新規アミジンおよび新規ビスアミジンの使用に関し、そして比較サンプルとしてBOAP単独での使用を含む(サンプル番号11)。組成物は、テトラポリマー、ポリマーA〜Dのうちの1つ、Carbon Black N990およびFluorogard PCAを含有する。表4において、硬化特性は(記載がなければ)、MDR(160℃で1時間)であった。表3は、上記の調合物を含み、そして表4は、それらの調合物に関連するデータを含む。表5は、硬化剤として本発明のビスアミジンおよびモノアミジンの使用効果を示すデータを含む(サンプル番号13〜19)。これらの組成物の各々は、ポリマーAに基づき、添加物として、Fluorogard PCAおよびCarbon Black N990を含有する。サンプル13〜19の各々においては、ポリマーAの100phrを、25phrのカーボンブラックおよび1.5phrのFluorogard PCAと混合した。種々の量の硬化剤を、各ペルフルオロエラストマー組成物について得られたデータとともに表5に示す。表5において、ポストキュア順序Gが使用される場合、それは、1.5時間にわたる25℃から94℃への温度上昇、次いで1時間にわたる149℃までの温度上昇を表す。次いで、ポストキュアを、149℃で0.5時間維持し、次いで、1時間にわたって204℃までさらに加熱し、そして204℃で18時間維持した。次いで温度を、1時間にわたって260℃まで上昇させて、その温度で18時間維持した。次いでポストキュアを、2時間にわたって25℃まで冷却した。
【0113】
表6および表7は、組成物およびデータを各々含み、これらは、ペルフルオロエラストマー組成物を含むBOAPについての、硬化促進剤としてのビスアミジンおよびモノアミジンの効果に関する。サンプル番号20〜30において、100phrのポリマー、25phrのCarbon Black N990、1.5phrのFluorogard PCAおよび種々の量のBOAPを含有するポリマーA、ポリマーBおよびポリマーDの組成物を、各々、示されるようにアミジンとともに硬化させる。このデータは、本発明のアミジン硬化促進剤の促進効力を実証する。
【0114】
【表3】

【0115】
【表4】

【0116】
【表5】

【0117】
【表6】

【0118】
【表7】


データから見られ得るように、本実施例の新規硬化剤は、BOAPの標準的使用に匹敵する物理的特性を提供するが、硬化剤Aおよび硬化剤Bならびに速効性のアミジン硬化剤およびアミジン促進剤の、低融点およびより高い適合性に起因して、本発明の硬化剤および促進剤は、より速く、より信頼性のある硬化するペルフルオロポリマーを提供して、ペルフルオロエラストマーを形成する。
【0119】
(実施例6)
さらなるサンプルを、実施例5で使用したものと同一のモノマーを有するポリマーを使用して調製したが、本実施例におけるポリマーは、実施例5における上記の2つの異なる分子量の鎖、ポリマーBの混合物であった。この調合物は、以下の表8に示される。このポリマーを、同一の様式で重合し、そしてムーニー粘度を、TechPro(登録商標)viscTECH TPD−1585粘度計を用いて100℃で測定した。これらの組成物において使用した上記のポリマーに、ヘプタフルオロブチリルアミジンを、硬化剤および硬化促進剤として添加した。このヘプタフルオロブチリルアミジンは、SynQuest Laboratories,Inc.,Alachua,Floridaから入手した。全ての他の成分は、実施例5の上記のとおりである。
【0120】
試験試料を、テトラポリマーと硬化剤とを混合してペルフルオロエラストマー組成物を形成すること、およびBrabender密閉式混合機を使用してこの組成物にカーボンブラックを添加することによって生成した。混合する際、この化合物を、O−リングプリフォームに成形し、このプリフォームを硬化するためにシール内に成形し、次いで、以下の表9に記載した硬化条件およびポストキュア条件に従ってSize 214 O−リング中にポストキュアした。このリングを、ASTM−D−412、方法Bを使用して引張り特性について試験し、そして以下のパラメータを記録した:T(破壊点張力MPa);E(破壊点伸長%);およびM100(100%伸長係数MPa)。O−リングサンプルの圧縮永久歪みを、ASTM−D−395、方法Bに従って決定した。硬化特性を、以下の条件下で、Monsanto MDR 2000を使用して測定した:
移動ダイ周波数:1.6667Hz
振動振幅:0.5degアーク
温度:本明細書中の表に示したとおり
サンプルサイズ:直径1.6インチ、厚さ0.17インチおよび重さ9.5gのディスク
および
試験期間:60分
表9は、ペルフルオロエラストマー組成物のための硬化剤およびBOAPを含むペルフルオロエラストマー組成物のための硬化促進剤として記載されるモノアミジンの効果に関するデータを含む。サンプル番号31〜34において、ポリマーBは、各々、100phrのポリマーおよび25phrのCarbon Black N990および表8に記載されるようなBOAP(これらは、示されるようにアミジンによって硬化および/または促進される)を含む。表8における情報は、部分的に百分率で示される。サンプル31は、コントロールを表す。表9において、圧縮永久歪みデータにおいて、百分率の測定は、百分率の歪みを示し、そして物理的特性データは、ポストキュアしたサンプルに基づく。このデータは、本発明のアミジン硬化促進剤の硬化効力および促進効力を実証する。
【0121】
【表8】

【0122】
【表9】


本実施形態の広範な発明の概念から逸脱することなく、上記の実施形態に変更がなされ得ることが、当業者によって理解される。それ故、本発明が、開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の精神および範囲内での改変を網羅することを意図されることが、理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II):
【化3】


によって表されるペルフルオロエラストマー組成物のためのビスアミジンベースの硬化促進剤であって、ここで、Dが、約1〜約22個の炭素原子を有する非置換または置換された、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化アラルキル基またはハロゲン化アラルコキシ基;および1〜約22個の炭素原子のペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、ペルフルオロアリール基、ペルフルオロアラルキル基またはペルフルオロアラルコキシ基からなる群より選択され;そしてRおよびRが、各々、水素であるように独立に選択され;1〜約6個の炭素原子の置換もしくは非置換の低級アルキル基または低級アルコキシ基およびアミノ基である、ビスアミジンベースの硬化促進剤。
【請求項2】
およびRが、両方とも水素である、請求項1に記載のビスアミジンベースの硬化促進剤。
【請求項3】
前記硬化促進剤が、少なくとも1個のシアノ硬化部位モノマーを含有するペルフルオロエラストマーの硬化を促進可能である、請求項1に記載のビスアミジンベースの硬化促進剤。
【請求項4】
前記硬化促進剤が、ペルフルオロスベラアミジンおよびペルフルオロセバカミジンからなる群より選択される、請求項1に記載のビスアミジンベースの硬化促進剤。
【請求項5】
ペルフルオロエラストマー組成物のための硬化剤であって、該硬化剤は、式(III):
【化6】


を有し、ここで、rが、0または1であり;
およびRが、炭素原子および約2〜約22個の炭素原子の置換および非置換ならびに分枝および直鎖の炭素の基からなる群より各々独立に選択され;該炭素の基の各々が、少なくとも1個の酸素原子により割り込まれ得る、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、およびペルフルオロ化アルキル基からなる群より選択され;
各Zが、アミノ基、メルカプト基、スルフヒドリル基またはヒドロキシル基からなる群より独立に選択され;
各Jが、独立に選択されて式(IV):
【化7】


またはAであり;そして
各Aが、式(IV);フッ素原子;および非置換および置換ならびに分枝および直鎖の炭素ベースの基からなる群より独立に選択され、該炭素ベースの基は、1〜約22個の炭素原子のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、およびペルフルオロアルキル基からなる群より選択され;これらのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、およびペルフルオロ化アルキル基の各々が、少なくとも1個の酸素原子により割り込まれ得;ここで、rが0であり、かつRが炭素原子である場合、Jおよび各Aのうちの少なくとも1個が、式(IV)ではない、硬化可能なペルフルオロエラストマー組成物。
【請求項6】
融点が約240℃を超えないように十分に高い分子量を有する官能性ジフェニルベースの硬化剤を含有する、ペルフルオロエラストマー組成物のための硬化剤。
【請求項7】
前記融点が、約230℃を超えない、請求項に記載の硬化剤。
【請求項8】
前記融点が、約225℃を超えない、請求項に記載の硬化剤。
【請求項9】
前記ペルフルオロエラストマー組成物が、硬化部位モノマーを含む少なくとも1個のシアノ基を有するペルフルオロポリマーを含有する、請求項に記載の硬化剤。
【請求項10】
融点が、ペルフルオロエラストマー組成物のための硬化剤として約240℃を超えないように、十分に高い分子量を有する官能性ジフェニルベースの硬化剤を使用する工程を包含する、該ペルフルオロエラストマー組成物を硬化するための方法。
【請求項11】
前記融点が、約230℃を超えない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
本明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2010−235957(P2010−235957A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129447(P2010−129447)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【分割の表示】特願2006−503165(P2006−503165)の分割
【原出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(505283588)グリーン, ツイード オブ デラウェア, インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】