説明

ペレット及びそれからなるフィルム

【課題】本発明の目的は、ハウス材又トンネル材等農業用フィルムや食品等の包装材料等に要求される長期防曇性が安定して得ることができるペレットを提供することに関する。
【解決手段】オレフィン系樹脂(A)が70〜99.995重量%、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤0.005〜30重量%からなる樹脂組成物(B)を水と接触せずに製造されたことを特徴とするペレットを得、これからなるフィルムを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペレットに関するものである。更に詳しくは、ポリオレフィンと特定のカップリング剤からなり、特定の方法で製造されたペレット、及び該ペレットを用いて成形されたフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
農業用作物の促成栽培などを目的に、ハウス栽培やトンネル栽培が行われている。ハウス材やトンネル材に用いられるフィルムは、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィンやポリ塩化ビニルが用いられているが、焼却時に有害ガスが発生するといわれているポリ塩化ビニル系フィルムに対し、ポリエチレン系フィルムやエチレン・酢酸ビニル共重合体系フィルムが盛んに使用されるようになってきている。
【0003】
ハウス材やトンネル材に使用されるフィルムには、フィルム内面に付着した水分を水滴状に凝集させず、栽培作物に落下させることなく流下させるという、所謂防曇性が要求されるが、ポリエチレンやエチレン・酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィンは水をはじき易いため、フィルム内面に付着した水分が水滴状となり、防曇性に劣る。そのため、各種改善方法が提案されている。
【0004】
ポリオレフィン系フィルムの防曇性を改善する方法としては、以下の2タイプに大別される。
【0005】
まず第1に、オレフィン系樹脂に防曇剤と呼ばれる界面活性剤を練りこみ、フィルム成形後ポリオレフィンフィルム表面に界面活性剤が滲出し、防曇性を発現するものであり、練りこみ型と呼ばれているものである。界面活性剤として脂肪酸エステル系界面活性剤が頻繁に使用されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、通常のフィルム製造装置によりフィルム化することが可能であり、コスト面で優れている。
【0006】
第2の方法は、オレフィン系樹脂をフィルム化した後、液状の界面活性剤、或いはシリカやアルミナ等のゾルを、バインダーを介しコーティングまたは噴霧し、防曇性を発現させるものであり、塗布型と呼ばれているものである(例えば、特許文献2参照)。この方法は、一般的に防曇性の持続性に優れている。
【0007】
しかしながら、防曇性を改良する第1の方法によれば、滲出した界面活性剤はハウス内面の付着水分により流出し、防曇性が持続しないといった問題があり、これらの改善のため多量の界面活性剤をポリオレフィン樹脂に配合しなければならず、結局のところフィルム費用は高いものになる。
【0008】
また防曇性を改良する第2の方法では、コーティング設備などの費用が高いといった問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開平2−209940号公報(3頁)
【特許文献2】特開平7−266518号公報(3−5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、安定した長期防曇性を発現するフィルムを製造することが出来るペレットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、オレフィン樹脂と、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤からなる樹脂組成物を水と接触せずに製造されたペレットが、フィルム成形に供した際に得られるフィルムの防曇性の安定性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、オレフィン系樹脂(A)が70〜99.995重量%、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤0.005〜30重量%からなる樹脂組成物(B)を水と接触せずに製造されたことを特徴とするペレットに関するものである。
【0013】
また本発明は、上記のペレットから成形されたことを特徴とするフィルム及び該フィルムを少なくとも1層以上含むことを特徴とする多層フィルムに関するものである。
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明のペレットを構成するオレフィン系樹脂(A)は、エチレン、プロピレン、1−ブテンなど炭素数2〜12のα−オレフィンの単独重合体もしくは共重合体を示す。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体である。これらのオレフィン系樹脂は単独で用いても構わないが、2種類以上混合して用いてもよい。
【0016】
これらの中で、低密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体が、コスト、フィルム強度等の点で、ハウス材、トンネル材、包装材料等として好適であり、中でもエチレン・酢酸ビニル共重合体が最も好適である。さらに酢酸ビニル含量が2〜30wt%の範囲にあると、防曇持続性に優れるため、好適であり、5〜25wt%の範囲が最も好ましい。
【0017】
本発明にて用いられるオレフィン系樹脂(A)は、フィルムを成形する際の成形性に優れることから、JIS K6922−1(1997年)によるメルトマスフローレート(以下、MFRと記す)が0.1〜100g/10分の範囲にあることが好ましい。
【0018】
本発明にて用いられるオレフィン系樹脂(A)とは、一般に市販されているオレフィン樹脂でよく、そのようなオレフィン樹脂の重合方法は、特に限定するものではない。高圧法低密度ポリエチレンやエチレン・酢酸ビニル共重合体等の場合、例えば高圧法によるラジカル重合法を挙げることができ、エチレン・1−ブテン共重合体やエチレン・1−へキセン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、ポリ1−ブテン等の場合、チーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒を用いた気相法、溶液法、高圧法等の重合法を挙げることができる。
【0019】
本発明を構成する樹脂組成物(B)は、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤を含む。チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジアクリロイルイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリロイルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ドデシルベンゼンスルホニル)チタネート、イソプロピルトリス(p−クミルフェニル)チタネート、イソプロピルトリス[2−N−(2−アミノエチル)アミノエチル]チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスホノチタネート)、イソプロピルトリス(ジオクチルピロホスホノ)チタネート、ビス(p−クミルフェニル)カルボニルメチレンチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネートなどが挙げられ、味の素ファインテック株式会社より商品名「プレンアクト」が市販されている。アルミニウムカップリング剤としては、ジイソプロピレートアルミニウムオレイルアセトアセテート、イソプロピレート(アクリレート)アルミニウムオレイルアセトアセテート、イソプロピレート(アセトアセテート)アルミニウムオレイルアセトアセテート、イソプロピレート(ジブチルホスフェート)アルミニウムオレイルアセトアセレート、イソプロピレート(ジブチルピロホスフェート)アルミニウムオレイルアセトアセテート、イソプロピレート(ドデシルベンゼンスルホネート)アルミニウムオレイルアセトアセテート、イソプロピレート(ラウリルサルフェート)アルミニウムオレイルアセトアセテートなどが挙げられ、味の素ファインテック株式会社より「プレンアクトAL−M」、川研ファインケミカル株式会社より「アルミキレート」が市販されている。シランカップリング剤としては、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4―エポキシ)シクロへキシルエチルトリメトキシシランなどが挙げられ、特にケイ素を含有するシランカップリング剤が反応性や安定性が高く、安定した防曇性を発現させることができ、好ましい。アルコキシ基のアルキル基鎖数は特に限定するものではないが、炭素数が1から10までが防曇の持続性に優れるため好ましく、メチル基及び/またはエチル基が好適であり、メチル基が好ましい。
【0020】
またカップリング剤は、その分子中に様々な有機官能性基を有してもよい。例えば、アミノ基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、ウレイド基、(メタ)アクロイロキシ基、シアノ基、イミダゾリル基などが挙げられる。特にアミノ基及び/又はエポキシ基を有するカップリング剤は安定した防曇性を発現させることが出来るため好ましく、アミノ基を有するカップリング剤が好適であり、最も好ましい形態としては、アミノ基及び/又はエポキシ基を有するシランカップリング剤である。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩が挙げられ、信越化学工業株式会社より「KBM−602」、「KBM−603」、「KBM−903」、「KBE−903」、「KBM−573」などが市販されている。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられ、信越化学工業株式会社より「KBM−303」、「KBM−403」、「KBE−402」、「KBE−403」などが市販されている。
【0021】
本発明のペレットを構成する樹脂組成物(B)に用いられるオレフィン系樹脂(A)、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤の配合割合は、オレフィン系樹脂(A)70〜99.995重量%、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤0.005〜30重量%であり、好ましくは、オレフィン系樹脂(A)75〜99.99重量%、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤0.01〜25重量%である。さらに好ましくは、オレフィン系樹脂80〜99.9重量%、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤0.1〜20重量%である。チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤の配合割合が0.005重量%未満の場合、防曇性の持続性が劣り、30重量%を超える場合、防曇性が発現しないため好ましくない。
また、本発明のペレットには、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤等、通常ポリオレフィンに使用される添加剤、農業用ハウス材やトンネル材に使用される保温剤、防霧剤などを添加したものでもかまわない。
【0022】
保温剤としては、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等が例示され、防霧剤としては、フッ素化多価アルコール類やフッ素化ポリエステルオリゴマー等のフッ素系化合物等が例示される。
【0023】
本発明の樹脂組成物(B)は、通常公知の溶融混練する装置で混練することが可能である。このような溶融混練装置として、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサーなどを例示する。
【0024】
溶融混練した樹脂をペレット状とする方法としては、樹脂が溶融した状態で裁断する方法(ホットカット法)、樹脂を水等で冷却しならが裁断する方法(アンダーウォーターカット法)、樹脂を水等で冷却した後に裁断する方法が挙げられる。
【0025】
本発明の樹脂組成物(B)は、ペレット製造時に水と接触することで安定した長期防曇性を発現することできない。また樹脂組成物(B)を水と接触してペレットとしたものは、フィルム製膜した際に、未溶融物を多く発生し、フィルムの外観不良の原因となる。このことから、樹脂組成物(B)をペレット状とする際は、樹脂組成物(B)を直接、水で冷却しないで裁断する方法が好ましい。このため本発明の樹脂組成物(B)をペレット状とする方法としては、溶融した樹脂組成物(B)を大気下で冷却し、その後ストランドカッター、シートカッターなどを用いて細かく粉砕したものでよい。
【0026】
またオレフィン系樹脂(A)からなる鞘部分と、樹脂組成物(B)からなる芯部分から形成され、芯部分が鞘部分で覆われて多層となるように溶融混練装置から樹脂を押出し、水で冷却した後に裁断することで、芯部分を水と接触せずにペレットとしたもの(以下、多層ペレットと記す。)でもかまわない。この多層ペレットの鞘部分と芯部分との重量比率は、鞘部分が10重量%未満の場合、芯部分に含まれるカップリング剤が多層ペレットの表面に析出し、べとつくことにより多層ペレットが凝集してしまう、50重量%を超える場合、防曇性が悪化することにより、鞘部分が10〜50重量%、芯部分が50〜90重量%であることが好ましい。これら多層ペレットは、芯部分を供給する二軸押出機と鞘部分を供給する単軸押出機から、芯部分と鞘部分の溶融物をそれぞれ供給して、芯鞘型複合押出ダイを介してストランドを押出し、押出されたストランドを水などの冷媒で冷却後、カッティングする方法により製造することができる(特開平7−171828号公報(4頁、特開2003−48991号公報(11頁))
本発明のペレットと一分子中に水酸基を2個以上有しかつ分子量が100〜10000である脂肪酸エステル型界面活性剤とを混合し、防曇性に優れたフィルムを得ることができる。該脂肪酸エステル型界面活性剤は、一分子中に水酸基が2個以上であると防曇性に優れるため好ましい。該脂肪酸エステル型界面活性剤の分子量は100〜10000の範囲にあると防曇性に優れるため好ましい。また、この脂肪酸エステル型界面活性剤の脂肪酸の炭素数は8〜30であると防曇性に優れるため好ましく、12〜22が最も好ましい。
【0027】
このような該脂肪酸エステル型界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド等のモノグリセリン脂肪酸エステル類;ステアリン酸ジグリセライド、オレイン酸ジグリセライド等のジグリセリン脂肪酸エステル類;ポリグリセリン脂肪酸エステル類;ソルビトール類;N,Nージヒドロキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシプロピレンステアリルアミン等のアルキルアミン類;ポリオキシエチレンステアリルアマイド、ポリオキシプロピレンステアリルアマイド等のアルキルアマイド類、等が例示され、特にジグリセリン脂肪酸エステル類、アルキルアミンは、防曇性の持続に優れることから、好ましい。これらは一種もしくは二種以上の混合物として使用してもよい。
【0028】
脂肪酸エステル型界面活性剤の配合割合は、樹脂組成物(B)100重量部に対して0.01〜10重量部であると防曇性に優れるため好ましい。また樹脂組成物(B)に含まれるカップリング剤と脂肪酸エステル型界面活性剤の配合割合は、1:0.001〜1:200の範囲にあると防曇性に優れるため好ましく、1:0.002〜1:100の範囲が最も好ましい。
【0029】
本発明のペレットと脂肪酸エステル型界面活性剤とを混合する方法は、特に限定されるものではないが、フィルム製造の際に該ペレットと脂肪酸エステル型界面活性剤を混合する方法、樹脂組成物(B)からなるペレットを製造する際に脂肪酸エステル型界面活性剤を混合する方法が例示される。
【0030】
また該フィルムを少なくとも1層以上含む多層フィルムとしてもよい。
【0031】
上記の多層フィルムに供されるその他の層に関する樹脂としては、特に限定されるものではないが、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体等を例示することが出来る。
【0032】
本発明のフィルムは、インフレーション成形機、Tダイキャスト成形機、カレンダー成形機、プレス成形機等のフィルム製造装置を用いて得ることが可能である。インフレーション成形やTダイキャスト成形においては共押出法により、またこれら成形法により得られた防曇性フィルムを、サンドウィッチラミネート法、ドライラミネート法、サーマルラミネート法等の貼り合わせにより、多層フィルムとすることも可能である。
【0033】
本発明のフィルムは、フィルム表面の防曇性を持続させるためにその表面の少なくとも片面が酸化処理されていると防曇性に優れるため好ましい。
【0034】
フィルム表面を酸化する際の酸化処理方法としては、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、クロム酸処理、硫酸処理、空気酸化、フレーム処理等が挙げられる。特にコロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理は、プラスチックフィルムやシート表面の連続処理技術として広く使用されているものであり好ましい。
【0035】
コロナ放電処理は、コロナ放電処理機により発生したコロナ雰囲気にフィルムを通過させることにより行われる。コロナ放電密度として、1〜100W・分/mであることが防曇持続性に優れ好ましい。
【0036】
オゾン処理は、オゾン発生装置により発生したオゾン雰囲気にフィルムを通過させることにより行なわれる。
【0037】
プラズマ処理は、アルゴン、ヘリウム、ネオン、水素、酸素、空気等の単体又は混合気体をプラズマジェットで電子的に励起せしめた後、帯電粒子を除去し、電気的に中性とした励起不活性ガスをフィルム表面に吹き付けることにより行われる。
【0038】
酸化処理量としては、酸化処理されたフィルム表面のJIS K6768(1998年)で測定される濡れ指数が330〜700μN/cmであることが、防曇性の持続性に優れるため好ましい。
【0039】
本発明のフィルムの厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、柔軟性に優れ、破損などの問題が小さいことから、1μm〜1mmの厚みであることが好ましい。
【0040】
本発明のフィルムは、ハウス材やトンネル材等の農業用フィルム、粉末食品包装、粉末や顆粒状の医薬品包装、青果等の包装、プリン、ゼリー、茶碗蒸等容器の蓋材、ラップ等、防曇性の要求される用途に使用することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明のペレットは、ハウス材やトンネル材等の農業用フィルム、粉末食品包装、粉末や顆粒状の医薬品包装、青果等の包装、プリン、ゼリー、茶碗蒸等容器の蓋材、ラップ等、防曇性の要求されるフィルムを成形する際に使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
以下に、物性、加工性の測定方法と評価方法を示す。
(イ)メルトフローレート
JIS K7210(1997年)の試験条件4に準拠。
(ロ)酢酸ビニル含量
JIS K6924−17210(1997年)に準拠。
(ハ)防曇性
気温5℃に保たれた室内に水温40℃の水槽を設置し、実施例により得られたフィルムが水槽の内面になるように、水槽上部をフィルムで覆った。フィルム表面に水滴が付着しなければ防曇性が良好であり、付着した場合は防曇性が不良である。また、フィルム表面に水滴が発生するまでの日数を防曇性の持続性とした。
(ニ)透明性
成形したフィルムの透明性について、ヘイズ値(JIS K7105に準拠)を測定した。ヘイズ値が10%以下であれば透明性良好であり、ヘイズ値が10%よりも大きい場合は透明性不良とした。
【0044】
実施例1
オレフィン系樹脂(A)(東ソー(株)製 商品名ウルトラセン513、MFR=1g/10分、酢酸ビニル含量5重量%、以下樹脂aと記す。)80重量%、シランカップリング剤3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 商品名KBE−903、以下カップリング剤aと記す)20重量%からなる配合物を二軸押出機にて溶融混練し、混練物を大気中で室温まで冷却した後、切断しペレットを得た(以下、樹脂組成物aと記す)。
【0045】
オレフィン系樹脂として樹脂aを70重量%、脂肪酸エステル型界面活性剤ジグリセリンモノステアレート(理研ビタミン(株)製、商品名リケマールS−71−D、以下界面活性剤aと記す)を30重量%になるように配合し、二軸押出機にて溶融混練しペレットを得た(以下、界面活性剤配合物aと記す)。
【0046】
フィルムを作成するため、樹脂組成物aが100重量部、脂肪酸エステル型界面活性剤が8重量部となるように、樹脂組成物a、及び界面活性剤配合物aを配合し、3層インフレーションフィルム製膜機(プラコー株式会社製、内層押出機のスクリュー径40mmφ、中間層押出機のスクリュー径55mmφ、外層押出機のスクリュー径40mmφ)の内層押出機に供給した。オレフィン系樹脂(東ソー(株)製 商品名ウルトラセン631、MFR=1g/10分、酢酸ビニル含量20重量%、以下樹脂bと記す)を3層インフレーションフィルム製膜機の中間層に供給した。またオレフィン系樹脂として樹脂aを3層インフレーションフィルム製膜機の外層に供給した。160℃の温度でTダイより押出し、フィルム表面にぬれ指数が300μN/cmとなるようコロナ放電処理を行い、厚さ70μm(各層の押出重量比率が1:1:1となる)のフィルムを得た。
【0047】
得られたフィルムを24時間40℃に保温されたオーブン中に保管した後、防曇性を評価し、その評価結果を表1に示した。
【0048】
実施例2
樹脂aを95重量%、カップリング剤aを5重量%とし(以下樹脂組成物bと記す)、樹脂組成物bが100重量部、脂肪酸エステル型界面活性剤が5重量部となるように、樹脂組成物b、及び界面活性剤配合物aを配合した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0049】
実施例3
樹脂aを99.9重量%、カップリング剤aを0.1重量%とし(以下樹脂組成物cと記す)、樹脂組成物cが100重量部、脂肪酸エステル型界面活性剤が8重量部となるように、樹脂組成物c、及び界面活性剤配合物aを配合した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0050】
実施例4
樹脂組成物cが100重量部、脂肪酸エステル型界面活性剤が0.05重量部となるように、樹脂組成物c、及び界面活性剤配合物aを配合した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
実施例5
樹脂組成物aが100重量部、脂肪酸エステル型界面活性剤が0.05重量部となるように、樹脂組成物a、及び界面活性剤配合物aを配合した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0051】
実施例6
フィルム表面をぬれ指数が450μN/cmとなるようコロナ放電処理を施した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0052】
実施例7
樹脂aを80重量%、カップリング剤aの代わりに、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名KBM−403、以下カップリング剤bと記す)を20重量%(以下樹脂組成物dと記す)用いた以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0053】
実施例8
界面活性剤aの代わりに、アルキルジエタノールアミン(ライオン(株)製 商品名アーモスタッド310、以下界面活性剤bと記す)を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0054】
実施例9
フィルムの作成において、外層に用いた樹脂a、及び中間層に用いた樹脂b代わりに、ポリエチレン樹脂(東ソー(株)製 商品名ニポロンZ TZ240、MFR=1.7g/10分、以下、樹脂cと記す)を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0055】
実施例10
フィルムの作成において、中間層に用いた樹脂bの代わりに、オレフィン系樹脂(東ソー(株)製 商品名ウルトラセン634、MFR=4g/10分、酢酸ビニル含量25重量%、以下樹脂dと記す)を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0056】
実施例11
オレフィン系樹脂(A)として樹脂aを98重量%、シランカップリング剤としてカップリング剤aを2重量%からなる配合物を3層シート成形機(プラスチック工学研究所製、内層押出機のスクリュー径25mmφ、中間層押出機のスクリュー径25mmφ、外層押出機のスクリュー径32mmφ)の中間層押出機に供給した。樹脂bを3層シート成形機の内層押出機と外層押出機に供給した。160℃の温度でTダイより押出し、大気中で室温まで冷却しながら厚さ2mm(各層の押出重量比率が1.5:7:1.5となる)のシートを得た。このシートを切断しペレットを得た(以下、樹脂組成物eと記す)。
【0057】
次に樹脂組成物eが100重量部、脂肪酸エステル型界面活性剤が8重量部となるように、樹脂組成物e、及び界面活性剤配合物aを配合し、3層インフレーションフィルム製膜機の内層押出機に供給した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1に示した。
【0058】
比較例1
樹脂a80重量%、カップリング剤a20重量%からなる配合物を二軸押出機にて溶融混練し、混練物を水で冷却した後、切断しペレットを得た(以下、樹脂組成物fと記す)以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示したが、水槽にフィルムを張った直後からフィルム表面に水滴が付着し、防曇性に劣った。
【0059】
比較例2
樹脂aを100重量%、カップリング剤aを0重量%とし(以下樹脂組成物gと記す)、樹脂組成物gが100重量部、脂肪酸エステル型界面活性剤が8重量部となるように、樹脂組成物g、及び界面活性剤配合物aを配合した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示したが、水槽にフィルムを張った直後からフィルム表面に水滴が付着し、防曇性に劣った。
【0060】
比較例3
樹脂aを65重量%、カップリング剤aを35重量%とし(以下樹脂組成物hと記す)、樹脂組成物hが100重量部、脂肪酸エステル型界面活性剤が8重量部となるように、樹脂組成物h、及び界面活性剤配合物aを配合した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示したが、防曇性が持続しなかった。
【0061】
比較例4
樹脂bを3層キャストフィルム製膜機の内層押出機に供給した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示したが、水槽にフィルムを張った直後からフィルム表面に水滴が付着し、防曇性に劣った。
【0062】
比較例5
樹脂組成物aが100重量部、脂肪酸エステル型界面活性剤が12重量部となるように、樹脂組成物a、及び界面活性剤配合物aを配合した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示したが、フィルムの透明性に劣った。
【0063】
比較例6
界面活性剤aの代わりに、ステアリルアルコール(花王(株)製 商品名カルコール8098、以下界面活性剤cと記す)を用い、フィルム表面を濡れ指数が450μN/cmとなるようコロナ放電処理を施した以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示したが、防曇性が持続しなかった。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂(A)が70〜99.995重量%、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シランカップリング剤から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤0.005〜30重量%からなる樹脂組成物(B)を水と接触せずに製造されたことを特徴とするペレット。
【請求項2】
カップリング剤がシランカップリング剤であることを特徴とする請求項1に記載のペレット。
【請求項3】
カップリング剤が、アミノ基、エポキシ基のいずれかを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のペレット。
【請求項4】
カップリング剤が、アミノ基を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のペレット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のペレット100重量部と、一分子中に水酸基を2個以上有し、分子量が100〜10000である脂肪酸エステル型界面活性剤0.01〜10重量部からなることを特徴とするフィルム。
【請求項6】
フィルムの少なくとも一方の表面がコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理から選ばれる少なくとも1種の処理方法で酸化されていることを特徴とする請求項5に記載のフィルム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のフィルムを少なくとも1層以上含むことを特徴とする多層フィルム。

【公開番号】特開2009−84506(P2009−84506A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258591(P2007−258591)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】