ペンタエリトリトール誘導体を用いた配位高分子およびその製造方法
【課題】産業的な利用が可能な新規な配位高分子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の配位高分子は、銅、銀およびカドミウムから選ばれるいずれか1つの金属元素と、以下の式(1)で表される配位子とを含み、配位子がその金属元素を介して連結されている。
[式(1)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子およびアルキル基から選ばれるいずれか1つを示す。]
【解決手段】
本発明の配位高分子は、銅、銀およびカドミウムから選ばれるいずれか1つの金属元素と、以下の式(1)で表される配位子とを含み、配位子がその金属元素を介して連結されている。
[式(1)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子およびアルキル基から選ばれるいずれか1つを示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンタエリトリトール誘導体を用いた配位高分子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な配位高分子は、金属イオンと配位子が交互に結合し、規則的に配置された細孔を有する化合物である。このような配位高分子は、細孔内に取り込んだゲスト分子とフレームワークとの相互作用により、ゲスト分子を特異的に吸着したり、ゲスト分子の変換の触媒として機能することが期待されている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−051112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
触媒作用や特異的な吸蔵特性を発現するためには、金属イオンとゲスト分子との相互作用が重要な役割を示すと考えられる。しかし、配位高分子とゲスト分子との相互作用は、これまで配位子とゲスト分子との相互作用にほぼ限られており、金属イオンとゲスト分子との相互作用は報告されてこなかった。
【0005】
このような状況において、本発明は、産業的な利用が可能な新規な配位高分子を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、検討した結果、発明者らは、新たな配位高分子の合成に成功し、これまでにない配位高分子とゲスト分子との相互作用を見出した。本発明は、この新たな知見に基づく発明である。
【0007】
すなわち、本発明の配位高分子は、銅、銀およびカドミウムから選ばれるいずれか1つの金属元素と、以下の式(1)で表される配位子とを含み、前記配位子が前記金属元素を介して連結されている。
【0008】
【化1】
【0009】
[式(1)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子およびアルキル基から選ばれるいずれか1つを示す。]
【0010】
また、配位高分子を製造するための本発明の方法は、銅、銀およびカドミウムから選ばれるいずれか1つの金属元素と、上記式(1)で表される化合物とを、液体中で反応させる工程を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、産業的な利用が可能な新規な配位高分子が得られる。本発明によれば、ペンタエリトリトールの誘導体を用いて合成が可能された4座配位子と金属イオンとを反応させることによって、金属イオンが細孔の中心に存在する配位高分子を合成できる。これにより、金属イオンの性質を活かした新規な配位高分子が得られる。そのため、本発明によれば、金属イオンとゲスト分子との相互作用を利用した、触媒やクロミズム特性を示す配位高分子、および磁性体などを得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の配位高分子に用いられる配位子の例を示す図である。
【図2】3TPMの合成反応を模式的に示す図である。
【図3】本発明の配位高分子の製造方法を模式的に示す図である。
【図4】CuCl23TPMについて、推測される構造を示す図である。
【図5】Cu(NO3)23TPMについて、推測される構造を示す図である。
【図6】CuCl23TPMおよびCu(NO3)23TPMについて、粉末X線回折のスペクトルを示す図である。
【図7】CuCl23TPMについて、吸着等温曲線を示す図である。
【図8】サイクリックボルタンメトリーの結果の一例を示すグラフである。
【図9】AgNO33TPMについて、推測される構造を示す図である。
【図10】AgNO33TPMについて、推測される他の構造を示す図である。
【図11】CuCl23TPM、Cu(NO3)23TPM、およびAgNO33TPMについて、相対湿度とプロトン伝導度σの対数値との関係を示す図である。
【図12】CuCl23TPM、Cu(NO3)23TPM、およびAgNO33TPMについて、温度Tの逆数とσTの対数値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現する物質として具体的な化合物を例示する場合があるが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0014】
[配位高分子]
本発明の配位高分子は、銅、銀およびカドミウムから選ばれるいずれか1つの金属元素(以下、「金属元素M」という場合がある)と、以下の式(1)で表される配位子(以下、「配位子L」という場合がある)とを含む。そして、配位子Lが金属元素M(金属原子)を介して連結されている。換言すれば、本発明の配位高分子は、配位子Lと金属元素Mとが結合することによって形成された配位高分子である。典型的には、本発明の配位高分子は、配位子Lと金属元素Mとが規則的に配置されることによって形成されている。
【0015】
【化2】
【0016】
[式(1)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子およびアルキル基から選ばれるいずれか1つを示す。]
【0017】
なお、「配位子Lが金属元素(M)を介して連結されている状態」には、隣接する2つの配位子Lのそれぞれが1つの金属元素(M)に結合している場合を含まれる。また、「配位子Lが金属元素(M)を介して連結されている状態」には、隣接する2つの配位子Lを結ぶ経路(原子団)に金属元素(M)が含まれる場合、の両方を含む。
【0018】
本発明の配位高分子では、金属元素Mと配位子Lとの組成比([金属元素M]:[配位子L])が、通常、4:1〜1:4の範囲にあり、たとえば2:1〜1:2の範囲にある。典型的な一例では、金属元素Mと配位子Lとの組成比([金属元素M]:[配位子L])は、[2÷(金属元素Mの原子価)]:1である。たとえば、組成比([金属元素M]:[配位子L])は、1:1または2:1である。
【0019】
配位子Lにおいて、ピリジン環のどの部位にエーテル結合が結合しているかは任意である。また、ピリジン環のどの部位に原子団Xが結合しているかは、任意である。本発明の配位高分子の典型的な一例では、配位子Lに含まれるすべてのピリジン環において、エーテル結合が結合している部位が同じであり且つ原子団Xが結合している部位が同じである。すなわち、一例では、配位子Lの4つの含窒素芳香環は、窒素原子に対するXの置換位置および窒素原子に対する炭素−酸素結合の位置がすべて同じである。配位子Lの例を、図1(a)〜図1(d)に示す。
【0020】
原子団Xの好ましい例としては、水素原子や塩素原子が挙げられる。原子団Xとして用いることができるアルキル基は、炭素数が1〜2の範囲にあるアルキル基であり、たとえば、メチル基およびエチル基である。
【0021】
配位子Lにおいて、原子団Xの代わりに又は原子団Xに加えて、他の置換基がピリジン環に結合していてもよい。そのような他の置換基としては、カルボキシル基が挙げられる。また、ピリジン環をベンゼン環に置き換えてもよく、さらにそのベンゼン環に原子団Xまたはカルボキシル基が結合していてもよい。
【0022】
本発明の配位高分子の一例は、以下の式(2)で示される構成単位によって構成される。
【0023】
【化3】
【0024】
配位子Lおよび金属元素Mについては上述したため、重複する説明を省略する。aは、0.25〜4の範囲にあり、たとえば0.25、0.5、1、2または4であり、典型的には0.5または1である。Eは、その陰イオンが金属元素Mの陽イオンと塩を構成する原子団である。原子団Eの陰イオンの例としては、塩化物イオンなどのハロゲンイオン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、硫酸イオン、および硫酸水素イオンが挙げられる。eは、金属元素Mと原子団Eとの間の化学量論比に基づく自然数である。原子団Eの陰イオンが1価の陰イオンである場合、通常、eは金属元素Mの原子価に等しい。
【0025】
本発明の配位高分子では、配位子Lが金属元素Mに配位結合することによって骨格が形成されていると考えられる。配位子Lと金属元素Mとが規則正しく結合することによって、結晶性を有する配位高分子が得られる。本発明の配位高分子において、金属元素Mは塩の状態(別の観点ではイオンの状態)で存在していてもよい。たとえば、配位高分子中において、金属元素Mは、塩化物や硝酸塩の形態で存在していてもよい。そのような塩の例には、塩化銅(I)、塩化銅(II)、硝酸銅(II)、硝酸銀、および硝酸カドミウムが含まれる。
【0026】
バルクとしての本発明の配位高分子は、配位子Lおよび金属元素M(またはその塩)以外の物質を含んでもよい。たとえば、バルクとしての配位高分子は、結晶水やゲスト分子を含むことが可能である。
【0027】
[配位高分子の製造方法]
以下、本発明の配位高分子の製造方法の一例について説明する。この製造方法によれば、本発明の配位高分子が得られる。なお、上述した事項と重複する事項については、説明を省略する場合がある。
【0028】
本発明の製造方法は、上述した金属元素Mと、上記式(1)で表される化合物(配位子L)とを、液体中で反応させる工程を含む。この工程によって、本発明の配位高分子が得られる。
【0029】
上記の反応させる工程は、金属元素Mが溶解している第1の溶液と、配位子Lが溶解している第2の溶液とを調製する工程(i)と、第1および第2の溶液を、金属元素Mおよび配位子Lが溶解可能な溶媒に接触させる工程(ii)とを含んでもよい。
【0030】
本発明の製造方法の一例では、まず、金属元素Mの塩が溶解している混合液S1(溶媒:水と有機溶媒との混合液)と、配位子Lが溶解している有機溶媒S2と、水と有機溶媒との混合液S3とを調製する。次に、混合液S1と有機溶媒S2とを、混合液S3を介して連結させる。この方法では、金属元素Mの塩と配位子Lとの反応が、混合液S3中でゆっくり進行する。その結果、結晶性がよい配位高分子を得ることが可能になる。なお、混合液S1の溶媒を水としてもよい。また、有機溶媒S2に水を添加してもよい。
【0031】
本発明の配位高分子を製造できる限り有機溶媒に限定はない。有機溶媒としては、たとえば、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノールなどを用いることができる。
【実施例】
【0032】
本発明の実施例について、以下に説明する。以下の実施例では、配位子Lとして、図1(a)に示すテトラキス(3−ピリジルオキシメチレン)メタン(以下、「3TPM」という場合がある)と、図1(b)に示すテトラキス(4−ピリジルオキシメチレン)メタン(以下、「4TPM」という場合がある)を用いた。3TPMおよび4TPMの合成方法を以下に説明する。
【0033】
[3TPMおよび4TPMの合成]
(1)ペンタエリトリトールテトラトシレート(C(CH2OTs)4)の合成
0.13ミリモルの塩化トシル(塩化パラトルエンスルホニル:TsCl)をピリジン35mlに溶かして、塩化トシルの溶液を得た。また、0.029ミリモルのペンタエリトリトール(C(CH2OH)4)をピリジン10mlに溶かして、ペンタエリトリトールの溶液を得た。次に、嫌気下、0℃でペンタエリトリトールの溶液を攪拌しながら、これに、塩化トシルの溶液を加えていった。その状態のまま、1時間攪拌した。最初、ややピンク色だった溶液の色が濃くなっていった。次に、反応液を0℃から室温に戻し、2日間、攪拌した。溶液は、ピンク色からやや緑色に変化した。2日後、反応液に、氷冷水を加え、次に水を加えた。その後、反応液をろ過して目的物であるC(CH2OTs)4を得た。収量は21.3g(収率99.5%)であった。
【0034】
(2)3TPMおよび4TPMの合成
6.65ミリモルのC(CH2OTs)4、26.6ミリモルのK2CO3、および26.6ミリモルの3−ヒドロキシピリジンまたは4−ヒドロキシピリジンを、乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)25mlに溶かして、嫌気下で、24時間還流した。その後、減圧乾固させ、1リットルの水を加え、ろ過した。最後に、水とメタノールを用いて再結晶化させた。このようにして、3TPMおよび4TPMの単結晶を得た。3TPMの収量は、2.281g(収率67.6%)であった。4TPMの収量は、1.362g(収率46.1%)であった。2段階反応のトータルの収率は、3TPMで67.2%であり、4TPMで45.9%であった。3TPMの合成反応を、図2に模式的に示す。
【0035】
(3)3TPMおよび4TPMの同定
得られた3TPMおよび4TPMの同定は、元素分析、NMR、およびIRによって行った。また、単結晶X線構造解析により、3TPMの構造を確認した。元素分析の結果では、含有水分子数は3.5分子であった。しかし、単結晶X線構造解析から推測される含有水分子数は6分子であり、元素分析の結果と異なっていた。3TPMの単結晶は、しばらく空気中に放置しておくと結晶光沢がなくなっていき、粉状に変化していった。これは、結晶中に存在していた結晶水の脱水による変化であると考えられる。そのため、元素分析と単結晶構造解析の含有水分子の不一致は、これが原因であると考えられる。
【0036】
4TPMの構造も、単結晶X線構造解析によって確認した。含有水分子数は、配位子1つにつき3分子であり、元素分析の結果から推測される水分子数と一致していた。4TPMの結晶構造をある方向から見てみると、ピリジン環が1次元状に3.749オングストロームの長さでπスタックしていることがわかった。4TPMは四面体骨格であり、ねじれている。そのため、πスタックしたピリジン環以外の残りのピリジン環は、πスタックの方向とは垂直に並んでおり、らせん構造となっていた。3TPMの空間群が正方晶(Tetragonal)のP42/n(#86)であったのに対して、4TPMの空間群は、単斜晶(monoclinic)のCc(#9)であった。このように、正方晶(Tetragonal)から単斜晶(monoclinic)へ対称性が大きく下がったのは、この1次元鎖πスタックの方が安定であり、対称性が高い正方晶(Tetragonal)の方に働かなかったためであると考えられる。
【0037】
なお、3−ヒドロキシピリジンまたは4−ヒドロキシピリジンの代わりに、ハロゲン(たとえば塩素)やアルキル基が導入されたヒドロキシピリジンを用いてもよい。3−ヒドロキシピリジンまたは4−ヒドロキシピリジンの代わりに、2−クロロ−4−ヒドロキシピリジンや2−クロロ−3−ヒドロキシピリジンを用いることによって、図1(c)および(d)に示す配位子Lを合成できる。
【0038】
[配位高分子の合成例(1)]
配位子として3TPMを用いた配位高分子を、拡散法によって作製した。まず、金属イオン(金属塩)を4ミリリットルのメタノール−水混合液(重量比でメタノール/水=1/9)に溶かし、H字管の一方の足に入れた。また、3TPMを4ミリリットルのメタノールに溶かし、H字管の他方の足に入れた。次に、H字管の上から、8ミリリットルのメタノール−水混合液(重量比でメタノール/水=1/1)を静かに入れた。このときの状態を、図3に模式的に示す。この状態で、金属イオンおよび配位子を拡散させることによって単結晶を作製した。実験の結果、CuCl2、Cu(NO3)2、およびAgNO3から選ばれる1つと、3TPMとの組み合わせで単結晶を得ることができた。単結晶が得られたときの金属塩および配位子の量を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
以下、CuCl2と3TPMとの組み合わせで得られる配位高分子を「CuCl23TPM」という場合がある。また、Cu(NO3)2と3TPMとの組み合わせで得られる配位高分子を「Cu(NO3)23TPM」という場合がある。また、AgNO3と3TPMとの組み合わせで得られる配位高分子を「AgNO33TPM」という場合がある。以下に、それらの測定結果について説明する。
【0041】
[CuCl23TPM]
元素分析の結果(実測値)および組成式から計算される計算値を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2に示すように、元素分析の実測値は計算値とよい一致を示した。このことから、Cu(C25H24N4O4)Cl2(H2O)6の配位高分子が合成できていることが確認された。
【0044】
単結晶X線構造解析から得られたCuCl23TPMの結晶学的パラメータを表3に示す。なお、単結晶X線構造解析は、ゲストの水分子を保護するため、流動パラフィンを用いて行った(以下の単結晶X線構造解析でも同様である)。
【0045】
【表3】
【0046】
CuCl23TPMにおける原子配置を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
単結晶X線構造解析から推測されるCuCl23TPMの構造を、図4に示す。この結果から、複数の3TPMが銅原子を介して連結されており、複数の3TPMと複数の銅原子とが規則的に配置されていることが確認された。
【0049】
構造解析の結果から、CuCl23TPMは、5.5オングストロームおよび8.0オングストローム程度の2種類の細孔を有することが分かった。小さい細孔は4つのPyAで構成され、大きい細孔は、4つのPyAおよび4つのPyBからなる八角形構造であった。銅イオンには、4つのピリジン環が平面4配位を形成しており、軸位には水分子が配位していた。
【0050】
[Cu(NO3)23TPM]
元素分析の結果(実測値)および組成式から計算される計算値を表5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
表5に示すように、元素分析の実測値は計算値とよい一致を示した。このことから、Cu(C25H24N4O4)(NO3)2(H2O)10の配位高分子が合成されたことが確認された。
【0053】
単結晶X線構造解析から得られた、Cu(NO3)23TPMにおける原子位置を表6に示す。
【0054】
【表6】
【0055】
なお、Cu(NO3)23TPMについては、硝酸銅の仕込み量によって構造が変化することが確認された。硝酸銅の仕込み量が0.03ミリモル未満(たとえば0.02ミリモル)であると空間群がP42212(#94)である構造となった。一方、硝酸銅の仕込み量が0.03ミリモル以上(たとえば0.04ミリモル以上)と、空間群がP−4n2(#118)である構造となった。いずれの場合も、結晶系は、正方晶(Tetragonal)であった。単結晶X線構造解析から推測されるCu(NO3)23TPMの構造について、硝酸銅の仕込み量が0.02ミリモルの場合を図5(a)に示し、硝酸銅の仕込み量が0.03ミリモルの場合を図5(b)に示す。これらの結果から、複数の3TPMが銅原子を介して連結されており、複数の3TPMと複数の銅原子とが規則的に配置されていることが確認された。
【0056】
得られたCuCl23TPMについて、配位高分子に含まれる溶媒を除去したのちに粉末X線回折測定を行った。また、溶媒を除去したCuCl23TPMについて、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)を加えたのちに、再度、粉末X線回折測定を行った。測定結果を図6(a)に示す。また、図6(a)には、シミュレーションから予測されるCuCl23TPMの結晶のピークを示す。
【0057】
図6(a)に示すように、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)を加える前は結晶状態を示すピークが見られなかった。これに対して、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)を加えると、結晶状態を示すピークが見られた。また、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)を添加した後にそれらを除去したCuCl23TPMの回折スペクトルは、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)を添加する前のスペクトルとほぼ同じであった。これらのことから、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)によって、アモルファス状態と結晶状態との間の可逆的な変化を起こせることが分かった。
【0058】
Cu(NO3)23TPMについて、CuCl23TPMと同様の方法で粉末X線回折測定を行った。得られた粉末X線回折スペクトルを、図6(b)に示す。Cu(NO3)23TPMでも、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)によって、アモルファス状態と結晶状態との間の可逆的な変化を起こせることが分かった。
【0059】
[吸着等温曲線測定]
CuCl23TPMについて、水(H2O)、メタノール(CH3OH)、およびエタノール(C2H5OH)の吸着等温曲線を測定した。測定結果を図7に示す。図7に示すように、メタノールは特異的な吸着特性を示した。
【0060】
[ESR測定]
CuCl23TPMおよびCu(NO3)23TPMについて、電子スピン共鳴(ESR)の測定を行った。それぞれ、溶媒なし、水(H2O)添加、またはメタノール(CH3OH)添加の状態で測定を行った。また、参考として、銅(ピリジン)4錯体についても測定を行った。測定結果を表7に示す。
【0061】
【表7】
【0062】
表7に示すように、ゲスト分子(溶媒)の有無によってESRの測定値が変化した。このことは、CuCl23TPMおよびCu(NO3)23TPMが、ゲスト分子との相互作用が強い配位高分子であることを示している。
【0063】
[サイクリックボルタンメトリー]
CuCl23TPMおよびCu(NO3)23TPMについて、サイクリックボルタンメトリーの測定を行った。CuCl23TPMについての測定結果を図8に示す。図8に示すように、可逆的に酸化・還元が生じた。また、酸化還元を500サイクル繰り返しても、サイクリックボルタモグラムに大きな変化はなかった。このことは、Cu2+(平面型)とCu+(四面体型)との間の構造変化が、可逆的に起こることを示唆しており、配位高分子の構造の柔軟性が高いことを示している。
【0064】
また、Cu(NO3)23TPMのサイクリックボルタンメトリーの測定において、測定前後でバックグラウンドがほとんど変化しなかった。このことも、酸化還元によって配位高分子が壊れていないことを示唆している。
【0065】
配位高分子に0.1M−KCl水溶液を加えたときと、配位高分子にKCl濃度が0.1Mである65%メタノール水(重量比でメタノール/水=65/35)を加えたときとで、サイクリックボルタンメトリーの測定を行った。それぞれについて、銅が1価と2価との間で変化するときの酸化還元電位を、表8に示す。
【0066】
【表8】
【0067】
表8に示すように、銅イオンの1電子酸化還元に帰属される酸化還元電位が、ゲスト分子によって0.1V以上も変化した。これらのことは、ゲスト分子と銅イオンとが直接相互作用をしていることを強く示唆しており、本発明の配位高分子が、燃料電池の電極触媒として有用であることが確かめられた。
【0068】
[AgNO33TPM]
元素分析の結果(実測値)および組成式から計算される計算値を表9に示す。
【0069】
【表9】
【0070】
表9に示すように、元素分析の実測値は計算値とよい一致を示した。このことから、Ag2(C25H24N4O4)(H2O)3の配位高分子が合成されたことが確認された。
【0071】
単結晶X線構造解析から得られたAgNO33TPMの結晶学的パラメータを表10に示す。
【0072】
【表10】
【0073】
単結晶X線構造解析から得られた、AgNO33TPMにおける原子位置を表11に示す。
【0074】
【表11】
【0075】
単結晶X線構造解析から推測されるAgNO33TPMの構造を、図9に示す。AgNO33TPMの構造の一部を図10に示す。この結果から、複数の3TPMが銀原子を介して連結されており、複数の3TPMと複数の銀原子とが規則的に配置されていることが確認された。
【0076】
[プロトン伝導度]
CuCl23TPM、Cu(NO3)23TPM、およびAgNO33TPMについて、相対湿度とプロトン伝導度σ(S・cm-1)の対数値との関係を図11に示す。また、それらについて、温度T(K)の逆数とσT(S・K・cm-1)の対数値との関係を図12に示す。
【0077】
図11に示すように、相対湿度の増加に伴ってプロトン伝導度が上昇した。また、図12のグラフから、それぞれの配位高分子について、プロトン伝導の活性化エネルギーEaを算出した。その結果、CuCl23TPMの活性化エネルギーは0.18eVであり、Cu(NO3)23TPMの活性化エネルギーは0.045eVであり、AgNO33TPMの活性化エネルギーは0.55eVであった。
【0078】
[配位高分子の合成例(2)]
配位子として3TPMを用い、金属塩としてCuClを用いて、拡散法によって配位高分子を作製した。まず、0.12ミリモルのCuClを4ミリリットルのメタノール−アセトニトリル混合液(重量比でメタノール/アセトニトリル=1/9)に溶かし、H字管の一方の足に入れた。また、0.12ミリモルの3TPMを4ミリリットルのメタノールに溶かし、H字管の他方の足に入れた。次に、H字管の上から、8ミリリットルのメタノール−アセトニトリル混合液(重量比でメタノール/アセトニトリル=1/1)を静かに入れた。このときの状態は、混合液の種類が異なることを除いて図3に示す状態と同様である。この状態で、CuClおよび配位子を拡散させることによって結晶を作製した。以下、CuClと3TPMとの組み合わせで得られる配位高分子を「CuCl3TPM」という場合がある。
【0079】
作製された結晶について、単結晶X線構造解析を行った結果、CuCl3TPMの配位高分子を合成できたことが確認された。単結晶X線構造解析から得られた結晶構造のパラメータを以下の表12に示す。
【0080】
【表12】
【0081】
単結晶X線構造解析から、CuCl3TPMの配位高分子は、2次元層状構造を形成していることが分かった。単結晶X線構造解析の結果から、複数の3TPMが銅原子を介して連結されており、複数の3TPMと複数の銅原子とが規則的に配置されていることが確認された。
【0082】
[配位高分子の合成例(3)]
配位子として4TPMを用い、金属塩としてCd(NO3)2を用いて、拡散法によって配位高分子を作製した。まず、0.14ミリモルのCd(NO3)2を4ミリリットルのメタノール−水混合液(重量比でメタノール/水=1/9)に溶かし、H字管の一方の足に入れた。また、0.14ミリモルの4TPMを4ミリリットルのメタノールに溶かし、H字管の他方の足に入れた。次に、H字管の上から、8ミリリットルのメタノール−水混合液(重量比でメタノール/水=1/1)を静かに入れた。このときの状態は、混合液の種類が異なることを除いて図3に示す状態と同様である。この状態で、Cd(NO3)2および配位子を拡散させることによって結晶を作製した。以下、Cd(NO3)2と4TPMとの組み合わせで得られる配位高分子を「Cd(NO3)24TPM」という場合がある。
【0083】
作製された結晶について、単結晶X線構造解析を行った結果、Cd(NO3)24TPMの配位高分子が合成されたことが確認された。単結晶X線構造解析から得られた結晶構造のパラメータを以下の表13に示す。
【0084】
【表13】
【0085】
単結晶X線構造解析の結果から、複数の4TPMがカドミウム原子を介して連結されており、複数の4TPMと複数のカドミウム原子とが規則的に配置されていることが確認された。
【0086】
以上、本発明の実施形態について例を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の技術的思想に基づいて他の実施形態に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、配位高分子およびその製造方法に利用できる。この配位高分子は、様々な分野に利用でき、たとえば、燃料電池の電極触媒などの触媒に利用できる。また、この配位高分子は、気体分子(水分子を含む)を吸着する分子吸着剤としても利用できる。また、ゲスト分子を吸着することによる色の変化を利用して、ゲスト分子を検知するセンサーとして用いることも可能である。また、本発明の配位高分子は、プロトン伝導膜として用いることができる。また、相対湿度の変化に伴うプロトン伝導度の変化を利用して、本発明の配位高分子を湿度センサーに用いることも可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンタエリトリトール誘導体を用いた配位高分子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な配位高分子は、金属イオンと配位子が交互に結合し、規則的に配置された細孔を有する化合物である。このような配位高分子は、細孔内に取り込んだゲスト分子とフレームワークとの相互作用により、ゲスト分子を特異的に吸着したり、ゲスト分子の変換の触媒として機能することが期待されている(たとえば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−051112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
触媒作用や特異的な吸蔵特性を発現するためには、金属イオンとゲスト分子との相互作用が重要な役割を示すと考えられる。しかし、配位高分子とゲスト分子との相互作用は、これまで配位子とゲスト分子との相互作用にほぼ限られており、金属イオンとゲスト分子との相互作用は報告されてこなかった。
【0005】
このような状況において、本発明は、産業的な利用が可能な新規な配位高分子を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、検討した結果、発明者らは、新たな配位高分子の合成に成功し、これまでにない配位高分子とゲスト分子との相互作用を見出した。本発明は、この新たな知見に基づく発明である。
【0007】
すなわち、本発明の配位高分子は、銅、銀およびカドミウムから選ばれるいずれか1つの金属元素と、以下の式(1)で表される配位子とを含み、前記配位子が前記金属元素を介して連結されている。
【0008】
【化1】
【0009】
[式(1)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子およびアルキル基から選ばれるいずれか1つを示す。]
【0010】
また、配位高分子を製造するための本発明の方法は、銅、銀およびカドミウムから選ばれるいずれか1つの金属元素と、上記式(1)で表される化合物とを、液体中で反応させる工程を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、産業的な利用が可能な新規な配位高分子が得られる。本発明によれば、ペンタエリトリトールの誘導体を用いて合成が可能された4座配位子と金属イオンとを反応させることによって、金属イオンが細孔の中心に存在する配位高分子を合成できる。これにより、金属イオンの性質を活かした新規な配位高分子が得られる。そのため、本発明によれば、金属イオンとゲスト分子との相互作用を利用した、触媒やクロミズム特性を示す配位高分子、および磁性体などを得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の配位高分子に用いられる配位子の例を示す図である。
【図2】3TPMの合成反応を模式的に示す図である。
【図3】本発明の配位高分子の製造方法を模式的に示す図である。
【図4】CuCl23TPMについて、推測される構造を示す図である。
【図5】Cu(NO3)23TPMについて、推測される構造を示す図である。
【図6】CuCl23TPMおよびCu(NO3)23TPMについて、粉末X線回折のスペクトルを示す図である。
【図7】CuCl23TPMについて、吸着等温曲線を示す図である。
【図8】サイクリックボルタンメトリーの結果の一例を示すグラフである。
【図9】AgNO33TPMについて、推測される構造を示す図である。
【図10】AgNO33TPMについて、推測される他の構造を示す図である。
【図11】CuCl23TPM、Cu(NO3)23TPM、およびAgNO33TPMについて、相対湿度とプロトン伝導度σの対数値との関係を示す図である。
【図12】CuCl23TPM、Cu(NO3)23TPM、およびAgNO33TPMについて、温度Tの逆数とσTの対数値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現する物質として具体的な化合物を例示する場合があるが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0014】
[配位高分子]
本発明の配位高分子は、銅、銀およびカドミウムから選ばれるいずれか1つの金属元素(以下、「金属元素M」という場合がある)と、以下の式(1)で表される配位子(以下、「配位子L」という場合がある)とを含む。そして、配位子Lが金属元素M(金属原子)を介して連結されている。換言すれば、本発明の配位高分子は、配位子Lと金属元素Mとが結合することによって形成された配位高分子である。典型的には、本発明の配位高分子は、配位子Lと金属元素Mとが規則的に配置されることによって形成されている。
【0015】
【化2】
【0016】
[式(1)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子およびアルキル基から選ばれるいずれか1つを示す。]
【0017】
なお、「配位子Lが金属元素(M)を介して連結されている状態」には、隣接する2つの配位子Lのそれぞれが1つの金属元素(M)に結合している場合を含まれる。また、「配位子Lが金属元素(M)を介して連結されている状態」には、隣接する2つの配位子Lを結ぶ経路(原子団)に金属元素(M)が含まれる場合、の両方を含む。
【0018】
本発明の配位高分子では、金属元素Mと配位子Lとの組成比([金属元素M]:[配位子L])が、通常、4:1〜1:4の範囲にあり、たとえば2:1〜1:2の範囲にある。典型的な一例では、金属元素Mと配位子Lとの組成比([金属元素M]:[配位子L])は、[2÷(金属元素Mの原子価)]:1である。たとえば、組成比([金属元素M]:[配位子L])は、1:1または2:1である。
【0019】
配位子Lにおいて、ピリジン環のどの部位にエーテル結合が結合しているかは任意である。また、ピリジン環のどの部位に原子団Xが結合しているかは、任意である。本発明の配位高分子の典型的な一例では、配位子Lに含まれるすべてのピリジン環において、エーテル結合が結合している部位が同じであり且つ原子団Xが結合している部位が同じである。すなわち、一例では、配位子Lの4つの含窒素芳香環は、窒素原子に対するXの置換位置および窒素原子に対する炭素−酸素結合の位置がすべて同じである。配位子Lの例を、図1(a)〜図1(d)に示す。
【0020】
原子団Xの好ましい例としては、水素原子や塩素原子が挙げられる。原子団Xとして用いることができるアルキル基は、炭素数が1〜2の範囲にあるアルキル基であり、たとえば、メチル基およびエチル基である。
【0021】
配位子Lにおいて、原子団Xの代わりに又は原子団Xに加えて、他の置換基がピリジン環に結合していてもよい。そのような他の置換基としては、カルボキシル基が挙げられる。また、ピリジン環をベンゼン環に置き換えてもよく、さらにそのベンゼン環に原子団Xまたはカルボキシル基が結合していてもよい。
【0022】
本発明の配位高分子の一例は、以下の式(2)で示される構成単位によって構成される。
【0023】
【化3】
【0024】
配位子Lおよび金属元素Mについては上述したため、重複する説明を省略する。aは、0.25〜4の範囲にあり、たとえば0.25、0.5、1、2または4であり、典型的には0.5または1である。Eは、その陰イオンが金属元素Mの陽イオンと塩を構成する原子団である。原子団Eの陰イオンの例としては、塩化物イオンなどのハロゲンイオン、亜硝酸イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、硫酸イオン、および硫酸水素イオンが挙げられる。eは、金属元素Mと原子団Eとの間の化学量論比に基づく自然数である。原子団Eの陰イオンが1価の陰イオンである場合、通常、eは金属元素Mの原子価に等しい。
【0025】
本発明の配位高分子では、配位子Lが金属元素Mに配位結合することによって骨格が形成されていると考えられる。配位子Lと金属元素Mとが規則正しく結合することによって、結晶性を有する配位高分子が得られる。本発明の配位高分子において、金属元素Mは塩の状態(別の観点ではイオンの状態)で存在していてもよい。たとえば、配位高分子中において、金属元素Mは、塩化物や硝酸塩の形態で存在していてもよい。そのような塩の例には、塩化銅(I)、塩化銅(II)、硝酸銅(II)、硝酸銀、および硝酸カドミウムが含まれる。
【0026】
バルクとしての本発明の配位高分子は、配位子Lおよび金属元素M(またはその塩)以外の物質を含んでもよい。たとえば、バルクとしての配位高分子は、結晶水やゲスト分子を含むことが可能である。
【0027】
[配位高分子の製造方法]
以下、本発明の配位高分子の製造方法の一例について説明する。この製造方法によれば、本発明の配位高分子が得られる。なお、上述した事項と重複する事項については、説明を省略する場合がある。
【0028】
本発明の製造方法は、上述した金属元素Mと、上記式(1)で表される化合物(配位子L)とを、液体中で反応させる工程を含む。この工程によって、本発明の配位高分子が得られる。
【0029】
上記の反応させる工程は、金属元素Mが溶解している第1の溶液と、配位子Lが溶解している第2の溶液とを調製する工程(i)と、第1および第2の溶液を、金属元素Mおよび配位子Lが溶解可能な溶媒に接触させる工程(ii)とを含んでもよい。
【0030】
本発明の製造方法の一例では、まず、金属元素Mの塩が溶解している混合液S1(溶媒:水と有機溶媒との混合液)と、配位子Lが溶解している有機溶媒S2と、水と有機溶媒との混合液S3とを調製する。次に、混合液S1と有機溶媒S2とを、混合液S3を介して連結させる。この方法では、金属元素Mの塩と配位子Lとの反応が、混合液S3中でゆっくり進行する。その結果、結晶性がよい配位高分子を得ることが可能になる。なお、混合液S1の溶媒を水としてもよい。また、有機溶媒S2に水を添加してもよい。
【0031】
本発明の配位高分子を製造できる限り有機溶媒に限定はない。有機溶媒としては、たとえば、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノールなどを用いることができる。
【実施例】
【0032】
本発明の実施例について、以下に説明する。以下の実施例では、配位子Lとして、図1(a)に示すテトラキス(3−ピリジルオキシメチレン)メタン(以下、「3TPM」という場合がある)と、図1(b)に示すテトラキス(4−ピリジルオキシメチレン)メタン(以下、「4TPM」という場合がある)を用いた。3TPMおよび4TPMの合成方法を以下に説明する。
【0033】
[3TPMおよび4TPMの合成]
(1)ペンタエリトリトールテトラトシレート(C(CH2OTs)4)の合成
0.13ミリモルの塩化トシル(塩化パラトルエンスルホニル:TsCl)をピリジン35mlに溶かして、塩化トシルの溶液を得た。また、0.029ミリモルのペンタエリトリトール(C(CH2OH)4)をピリジン10mlに溶かして、ペンタエリトリトールの溶液を得た。次に、嫌気下、0℃でペンタエリトリトールの溶液を攪拌しながら、これに、塩化トシルの溶液を加えていった。その状態のまま、1時間攪拌した。最初、ややピンク色だった溶液の色が濃くなっていった。次に、反応液を0℃から室温に戻し、2日間、攪拌した。溶液は、ピンク色からやや緑色に変化した。2日後、反応液に、氷冷水を加え、次に水を加えた。その後、反応液をろ過して目的物であるC(CH2OTs)4を得た。収量は21.3g(収率99.5%)であった。
【0034】
(2)3TPMおよび4TPMの合成
6.65ミリモルのC(CH2OTs)4、26.6ミリモルのK2CO3、および26.6ミリモルの3−ヒドロキシピリジンまたは4−ヒドロキシピリジンを、乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)25mlに溶かして、嫌気下で、24時間還流した。その後、減圧乾固させ、1リットルの水を加え、ろ過した。最後に、水とメタノールを用いて再結晶化させた。このようにして、3TPMおよび4TPMの単結晶を得た。3TPMの収量は、2.281g(収率67.6%)であった。4TPMの収量は、1.362g(収率46.1%)であった。2段階反応のトータルの収率は、3TPMで67.2%であり、4TPMで45.9%であった。3TPMの合成反応を、図2に模式的に示す。
【0035】
(3)3TPMおよび4TPMの同定
得られた3TPMおよび4TPMの同定は、元素分析、NMR、およびIRによって行った。また、単結晶X線構造解析により、3TPMの構造を確認した。元素分析の結果では、含有水分子数は3.5分子であった。しかし、単結晶X線構造解析から推測される含有水分子数は6分子であり、元素分析の結果と異なっていた。3TPMの単結晶は、しばらく空気中に放置しておくと結晶光沢がなくなっていき、粉状に変化していった。これは、結晶中に存在していた結晶水の脱水による変化であると考えられる。そのため、元素分析と単結晶構造解析の含有水分子の不一致は、これが原因であると考えられる。
【0036】
4TPMの構造も、単結晶X線構造解析によって確認した。含有水分子数は、配位子1つにつき3分子であり、元素分析の結果から推測される水分子数と一致していた。4TPMの結晶構造をある方向から見てみると、ピリジン環が1次元状に3.749オングストロームの長さでπスタックしていることがわかった。4TPMは四面体骨格であり、ねじれている。そのため、πスタックしたピリジン環以外の残りのピリジン環は、πスタックの方向とは垂直に並んでおり、らせん構造となっていた。3TPMの空間群が正方晶(Tetragonal)のP42/n(#86)であったのに対して、4TPMの空間群は、単斜晶(monoclinic)のCc(#9)であった。このように、正方晶(Tetragonal)から単斜晶(monoclinic)へ対称性が大きく下がったのは、この1次元鎖πスタックの方が安定であり、対称性が高い正方晶(Tetragonal)の方に働かなかったためであると考えられる。
【0037】
なお、3−ヒドロキシピリジンまたは4−ヒドロキシピリジンの代わりに、ハロゲン(たとえば塩素)やアルキル基が導入されたヒドロキシピリジンを用いてもよい。3−ヒドロキシピリジンまたは4−ヒドロキシピリジンの代わりに、2−クロロ−4−ヒドロキシピリジンや2−クロロ−3−ヒドロキシピリジンを用いることによって、図1(c)および(d)に示す配位子Lを合成できる。
【0038】
[配位高分子の合成例(1)]
配位子として3TPMを用いた配位高分子を、拡散法によって作製した。まず、金属イオン(金属塩)を4ミリリットルのメタノール−水混合液(重量比でメタノール/水=1/9)に溶かし、H字管の一方の足に入れた。また、3TPMを4ミリリットルのメタノールに溶かし、H字管の他方の足に入れた。次に、H字管の上から、8ミリリットルのメタノール−水混合液(重量比でメタノール/水=1/1)を静かに入れた。このときの状態を、図3に模式的に示す。この状態で、金属イオンおよび配位子を拡散させることによって単結晶を作製した。実験の結果、CuCl2、Cu(NO3)2、およびAgNO3から選ばれる1つと、3TPMとの組み合わせで単結晶を得ることができた。単結晶が得られたときの金属塩および配位子の量を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
以下、CuCl2と3TPMとの組み合わせで得られる配位高分子を「CuCl23TPM」という場合がある。また、Cu(NO3)2と3TPMとの組み合わせで得られる配位高分子を「Cu(NO3)23TPM」という場合がある。また、AgNO3と3TPMとの組み合わせで得られる配位高分子を「AgNO33TPM」という場合がある。以下に、それらの測定結果について説明する。
【0041】
[CuCl23TPM]
元素分析の結果(実測値)および組成式から計算される計算値を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2に示すように、元素分析の実測値は計算値とよい一致を示した。このことから、Cu(C25H24N4O4)Cl2(H2O)6の配位高分子が合成できていることが確認された。
【0044】
単結晶X線構造解析から得られたCuCl23TPMの結晶学的パラメータを表3に示す。なお、単結晶X線構造解析は、ゲストの水分子を保護するため、流動パラフィンを用いて行った(以下の単結晶X線構造解析でも同様である)。
【0045】
【表3】
【0046】
CuCl23TPMにおける原子配置を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
単結晶X線構造解析から推測されるCuCl23TPMの構造を、図4に示す。この結果から、複数の3TPMが銅原子を介して連結されており、複数の3TPMと複数の銅原子とが規則的に配置されていることが確認された。
【0049】
構造解析の結果から、CuCl23TPMは、5.5オングストロームおよび8.0オングストローム程度の2種類の細孔を有することが分かった。小さい細孔は4つのPyAで構成され、大きい細孔は、4つのPyAおよび4つのPyBからなる八角形構造であった。銅イオンには、4つのピリジン環が平面4配位を形成しており、軸位には水分子が配位していた。
【0050】
[Cu(NO3)23TPM]
元素分析の結果(実測値)および組成式から計算される計算値を表5に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
表5に示すように、元素分析の実測値は計算値とよい一致を示した。このことから、Cu(C25H24N4O4)(NO3)2(H2O)10の配位高分子が合成されたことが確認された。
【0053】
単結晶X線構造解析から得られた、Cu(NO3)23TPMにおける原子位置を表6に示す。
【0054】
【表6】
【0055】
なお、Cu(NO3)23TPMについては、硝酸銅の仕込み量によって構造が変化することが確認された。硝酸銅の仕込み量が0.03ミリモル未満(たとえば0.02ミリモル)であると空間群がP42212(#94)である構造となった。一方、硝酸銅の仕込み量が0.03ミリモル以上(たとえば0.04ミリモル以上)と、空間群がP−4n2(#118)である構造となった。いずれの場合も、結晶系は、正方晶(Tetragonal)であった。単結晶X線構造解析から推測されるCu(NO3)23TPMの構造について、硝酸銅の仕込み量が0.02ミリモルの場合を図5(a)に示し、硝酸銅の仕込み量が0.03ミリモルの場合を図5(b)に示す。これらの結果から、複数の3TPMが銅原子を介して連結されており、複数の3TPMと複数の銅原子とが規則的に配置されていることが確認された。
【0056】
得られたCuCl23TPMについて、配位高分子に含まれる溶媒を除去したのちに粉末X線回折測定を行った。また、溶媒を除去したCuCl23TPMについて、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)を加えたのちに、再度、粉末X線回折測定を行った。測定結果を図6(a)に示す。また、図6(a)には、シミュレーションから予測されるCuCl23TPMの結晶のピークを示す。
【0057】
図6(a)に示すように、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)を加える前は結晶状態を示すピークが見られなかった。これに対して、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)を加えると、結晶状態を示すピークが見られた。また、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)を添加した後にそれらを除去したCuCl23TPMの回折スペクトルは、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)を添加する前のスペクトルとほぼ同じであった。これらのことから、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)によって、アモルファス状態と結晶状態との間の可逆的な変化を起こせることが分かった。
【0058】
Cu(NO3)23TPMについて、CuCl23TPMと同様の方法で粉末X線回折測定を行った。得られた粉末X線回折スペクトルを、図6(b)に示す。Cu(NO3)23TPMでも、水(H2O)またはメタノール(CH3OH)によって、アモルファス状態と結晶状態との間の可逆的な変化を起こせることが分かった。
【0059】
[吸着等温曲線測定]
CuCl23TPMについて、水(H2O)、メタノール(CH3OH)、およびエタノール(C2H5OH)の吸着等温曲線を測定した。測定結果を図7に示す。図7に示すように、メタノールは特異的な吸着特性を示した。
【0060】
[ESR測定]
CuCl23TPMおよびCu(NO3)23TPMについて、電子スピン共鳴(ESR)の測定を行った。それぞれ、溶媒なし、水(H2O)添加、またはメタノール(CH3OH)添加の状態で測定を行った。また、参考として、銅(ピリジン)4錯体についても測定を行った。測定結果を表7に示す。
【0061】
【表7】
【0062】
表7に示すように、ゲスト分子(溶媒)の有無によってESRの測定値が変化した。このことは、CuCl23TPMおよびCu(NO3)23TPMが、ゲスト分子との相互作用が強い配位高分子であることを示している。
【0063】
[サイクリックボルタンメトリー]
CuCl23TPMおよびCu(NO3)23TPMについて、サイクリックボルタンメトリーの測定を行った。CuCl23TPMについての測定結果を図8に示す。図8に示すように、可逆的に酸化・還元が生じた。また、酸化還元を500サイクル繰り返しても、サイクリックボルタモグラムに大きな変化はなかった。このことは、Cu2+(平面型)とCu+(四面体型)との間の構造変化が、可逆的に起こることを示唆しており、配位高分子の構造の柔軟性が高いことを示している。
【0064】
また、Cu(NO3)23TPMのサイクリックボルタンメトリーの測定において、測定前後でバックグラウンドがほとんど変化しなかった。このことも、酸化還元によって配位高分子が壊れていないことを示唆している。
【0065】
配位高分子に0.1M−KCl水溶液を加えたときと、配位高分子にKCl濃度が0.1Mである65%メタノール水(重量比でメタノール/水=65/35)を加えたときとで、サイクリックボルタンメトリーの測定を行った。それぞれについて、銅が1価と2価との間で変化するときの酸化還元電位を、表8に示す。
【0066】
【表8】
【0067】
表8に示すように、銅イオンの1電子酸化還元に帰属される酸化還元電位が、ゲスト分子によって0.1V以上も変化した。これらのことは、ゲスト分子と銅イオンとが直接相互作用をしていることを強く示唆しており、本発明の配位高分子が、燃料電池の電極触媒として有用であることが確かめられた。
【0068】
[AgNO33TPM]
元素分析の結果(実測値)および組成式から計算される計算値を表9に示す。
【0069】
【表9】
【0070】
表9に示すように、元素分析の実測値は計算値とよい一致を示した。このことから、Ag2(C25H24N4O4)(H2O)3の配位高分子が合成されたことが確認された。
【0071】
単結晶X線構造解析から得られたAgNO33TPMの結晶学的パラメータを表10に示す。
【0072】
【表10】
【0073】
単結晶X線構造解析から得られた、AgNO33TPMにおける原子位置を表11に示す。
【0074】
【表11】
【0075】
単結晶X線構造解析から推測されるAgNO33TPMの構造を、図9に示す。AgNO33TPMの構造の一部を図10に示す。この結果から、複数の3TPMが銀原子を介して連結されており、複数の3TPMと複数の銀原子とが規則的に配置されていることが確認された。
【0076】
[プロトン伝導度]
CuCl23TPM、Cu(NO3)23TPM、およびAgNO33TPMについて、相対湿度とプロトン伝導度σ(S・cm-1)の対数値との関係を図11に示す。また、それらについて、温度T(K)の逆数とσT(S・K・cm-1)の対数値との関係を図12に示す。
【0077】
図11に示すように、相対湿度の増加に伴ってプロトン伝導度が上昇した。また、図12のグラフから、それぞれの配位高分子について、プロトン伝導の活性化エネルギーEaを算出した。その結果、CuCl23TPMの活性化エネルギーは0.18eVであり、Cu(NO3)23TPMの活性化エネルギーは0.045eVであり、AgNO33TPMの活性化エネルギーは0.55eVであった。
【0078】
[配位高分子の合成例(2)]
配位子として3TPMを用い、金属塩としてCuClを用いて、拡散法によって配位高分子を作製した。まず、0.12ミリモルのCuClを4ミリリットルのメタノール−アセトニトリル混合液(重量比でメタノール/アセトニトリル=1/9)に溶かし、H字管の一方の足に入れた。また、0.12ミリモルの3TPMを4ミリリットルのメタノールに溶かし、H字管の他方の足に入れた。次に、H字管の上から、8ミリリットルのメタノール−アセトニトリル混合液(重量比でメタノール/アセトニトリル=1/1)を静かに入れた。このときの状態は、混合液の種類が異なることを除いて図3に示す状態と同様である。この状態で、CuClおよび配位子を拡散させることによって結晶を作製した。以下、CuClと3TPMとの組み合わせで得られる配位高分子を「CuCl3TPM」という場合がある。
【0079】
作製された結晶について、単結晶X線構造解析を行った結果、CuCl3TPMの配位高分子を合成できたことが確認された。単結晶X線構造解析から得られた結晶構造のパラメータを以下の表12に示す。
【0080】
【表12】
【0081】
単結晶X線構造解析から、CuCl3TPMの配位高分子は、2次元層状構造を形成していることが分かった。単結晶X線構造解析の結果から、複数の3TPMが銅原子を介して連結されており、複数の3TPMと複数の銅原子とが規則的に配置されていることが確認された。
【0082】
[配位高分子の合成例(3)]
配位子として4TPMを用い、金属塩としてCd(NO3)2を用いて、拡散法によって配位高分子を作製した。まず、0.14ミリモルのCd(NO3)2を4ミリリットルのメタノール−水混合液(重量比でメタノール/水=1/9)に溶かし、H字管の一方の足に入れた。また、0.14ミリモルの4TPMを4ミリリットルのメタノールに溶かし、H字管の他方の足に入れた。次に、H字管の上から、8ミリリットルのメタノール−水混合液(重量比でメタノール/水=1/1)を静かに入れた。このときの状態は、混合液の種類が異なることを除いて図3に示す状態と同様である。この状態で、Cd(NO3)2および配位子を拡散させることによって結晶を作製した。以下、Cd(NO3)2と4TPMとの組み合わせで得られる配位高分子を「Cd(NO3)24TPM」という場合がある。
【0083】
作製された結晶について、単結晶X線構造解析を行った結果、Cd(NO3)24TPMの配位高分子が合成されたことが確認された。単結晶X線構造解析から得られた結晶構造のパラメータを以下の表13に示す。
【0084】
【表13】
【0085】
単結晶X線構造解析の結果から、複数の4TPMがカドミウム原子を介して連結されており、複数の4TPMと複数のカドミウム原子とが規則的に配置されていることが確認された。
【0086】
以上、本発明の実施形態について例を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の技術的思想に基づいて他の実施形態に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、配位高分子およびその製造方法に利用できる。この配位高分子は、様々な分野に利用でき、たとえば、燃料電池の電極触媒などの触媒に利用できる。また、この配位高分子は、気体分子(水分子を含む)を吸着する分子吸着剤としても利用できる。また、ゲスト分子を吸着することによる色の変化を利用して、ゲスト分子を検知するセンサーとして用いることも可能である。また、本発明の配位高分子は、プロトン伝導膜として用いることができる。また、相対湿度の変化に伴うプロトン伝導度の変化を利用して、本発明の配位高分子を湿度センサーに用いることも可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅、銀およびカドミウムから選ばれるいずれか1つの金属元素と、以下の式(1)で表される配位子とを含み、
前記配位子が前記金属元素を介して連結されている配位高分子。
【化1】
[式(1)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子およびアルキル基から選ばれるいずれか1つを示す。]
【請求項2】
前記Xが水素原子である、請求項1に記載の配位高分子。
【請求項3】
前記配位子の4つの含窒素芳香環は、窒素原子に対する前記Xの置換位置および窒素原子に対する炭素−酸素結合の位置がすべて同じである、請求項1または2に記載の配位高分子。
【請求項4】
前記配位子が、テトラキス(3−ピリジルオキシメチレン)メタンまたはテトラキス(4−ピリジルオキシメチレン)メタンである、請求項1に記載の配位高分子。
【請求項5】
銅、銀およびカドミウムから選ばれるいずれか1つの金属元素と、以下の式(1)で表される化合物とを、液体中で反応させる工程を含む、配位高分子の製造方法。
【化2】
[式(1)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子およびアルキル基から選ばれるいずれか1つを示す。]
【請求項6】
前記Xが水素原子である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記配位子の4つの含窒素芳香環は、窒素原子に対する前記Xの置換位置および窒素原子に対する炭素−酸素結合の位置がすべて同じである、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記配位子が、テトラキス(3−ピリジルオキシメチレン)メタンまたはテトラキス(4−ピリジルオキシメチレン)メタンである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記工程は、
(i)前記金属元素が溶解している第1の溶液と、前記化合物が溶解している第2の溶液とを調製する工程と、
(ii)前記第1および第2の溶液を、前記金属元素および前記化合物が溶解可能な溶媒に接触させる工程とを含む、請求項5〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項1】
銅、銀およびカドミウムから選ばれるいずれか1つの金属元素と、以下の式(1)で表される配位子とを含み、
前記配位子が前記金属元素を介して連結されている配位高分子。
【化1】
[式(1)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子およびアルキル基から選ばれるいずれか1つを示す。]
【請求項2】
前記Xが水素原子である、請求項1に記載の配位高分子。
【請求項3】
前記配位子の4つの含窒素芳香環は、窒素原子に対する前記Xの置換位置および窒素原子に対する炭素−酸素結合の位置がすべて同じである、請求項1または2に記載の配位高分子。
【請求項4】
前記配位子が、テトラキス(3−ピリジルオキシメチレン)メタンまたはテトラキス(4−ピリジルオキシメチレン)メタンである、請求項1に記載の配位高分子。
【請求項5】
銅、銀およびカドミウムから選ばれるいずれか1つの金属元素と、以下の式(1)で表される化合物とを、液体中で反応させる工程を含む、配位高分子の製造方法。
【化2】
[式(1)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子およびアルキル基から選ばれるいずれか1つを示す。]
【請求項6】
前記Xが水素原子である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記配位子の4つの含窒素芳香環は、窒素原子に対する前記Xの置換位置および窒素原子に対する炭素−酸素結合の位置がすべて同じである、請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記配位子が、テトラキス(3−ピリジルオキシメチレン)メタンまたはテトラキス(4−ピリジルオキシメチレン)メタンである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記工程は、
(i)前記金属元素が溶解している第1の溶液と、前記化合物が溶解している第2の溶液とを調製する工程と、
(ii)前記第1および第2の溶液を、前記金属元素および前記化合物が溶解可能な溶媒に接触させる工程とを含む、請求項5〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−242386(P2009−242386A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55166(P2009−55166)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
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