ペンタセン多量体およびその製造方法
【課題】4次以上のペンタセン多量体およびその製造が可能なペンタセン多量体の製造方法を提供する。
【解決手段】原料としてペンタセンを用い、密閉容器内で原料を加熱し、原料を少なくとも液体の状態として、原料を脱水素縮合反応させることにより、ペンタセン多量体を製造する。この製造方法によれば、4次以上の高次のペンタセン多量体を製造できる。
【解決手段】原料としてペンタセンを用い、密閉容器内で原料を加熱し、原料を少なくとも液体の状態として、原料を脱水素縮合反応させることにより、ペンタセン多量体を製造する。この製造方法によれば、4次以上の高次のペンタセン多量体を製造できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンの類似構造を有するペンタセン多量体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、ベンゼン環を二次元平面に敷き詰めた構造であり、優れた機械的強度および電子伝導性を示すことから注目されている。このグラフェンの製造方法としては、スコッチテープを用いてグラファイトを物理的に剥離する方法や、SiC基板を熱分解する方法などが知られている。
【0003】
一方、ペンタセンは、5つのベンゼン環が直線状に縮合した多環芳香族炭化水素である。このペンタセンに関しては、非特許文献1に、ペンタセンの昇華精製を目的として、反応装置内でアルゴンガスを連続的に流しながらペンタセンを加熱したところ、原料の加熱領域に、ペンタセンの2量体と3量体を含む粉末が析出したことが開示されている。このときの加熱条件は、電気炉の温度が320〜375℃であり、アルゴンガスの流量が10〜70mL/minであった。
【0004】
また、非特許文献2には、非特許文献1に関連して、第一原理計算を用いたペンタセン2量体の生成経路の検討結果として、ペンタセンからペンタセン2量体(ペリペンタセン)が生成する過程には、6,13-ジヒドロペンタセンが重要な寄与をすることが指摘されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc. 127, 3069-3075 (2005).
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc. 129, 6536-6546 (2007).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のグラフェンの製造方法では、比較的少量のグラフェンしか得られず、工業的な大量生産には適さないという問題がある。
【0007】
そこで、この問題の解決策として、本発明者は、低分子量の有機分子を出発原料として化学的な重合反応を行う、ボトムアップ的な手法が有効であると考えている。
【0008】
具体的には、ペンタセンを脱水素縮合反応させて、複数のペンタセンが二次元平面状に結合されたペンタセン多量体を合成する方法であれば、工業的な大量生産に適すると考えている。そして、このペンタセン多量体は、グラフェンの類似構造を有するので、グラフェンに類似の特性を有することが期待でき、新たな電子材料、エネルギー材料としての利用が期待できる。
【0009】
しかし、このようなペンタセン多量体としては、非特許文献1、2に開示の通り、3つのペンタセンが結合した3量体、すなわち、3次までの比較的低分子量の多量体しか得られないのが現状であり、4次以上の多量体を製造する方法が存在しなかった。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、4次以上のペンタセン多量体およびその製造が可能なペンタセン多量体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、非特許文献1に記載の方法において、4次以上のペンタセン多量体が得られなかった理由を検討し、その検討結果を踏まえて、4次以上のペンタセン多量体を得るための方法を検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、非特許文献1では、ペンタセンの昇華精製を目的として、ガスフローの条件下でペンタセンの加熱を行っていたため、反応装置内で、原料として仕込んだ固体状態のペンタセンが昇華し、キャリアガスとともに移動してしまうため、長時間の連続的な反応が困難であったと考えられる。また、このように昇華を伴う気相反応では、ペンタセンの分子同士の衝突確率が低いために、高次の多量体を得ることが難しいと考えられる。このような理由から、非特許文献1に記載の方法では、3量体までの比較的低分子量の重合体しか得られなかったと考えられる。
【0013】
そこで、本発明のペンタセン多量体の製造方法は、原料としてペンタセンを用い、密閉容器内で原料を加熱し、原料を少なくとも液体の状態として、原料を脱水素縮合反応させることにより、ペンタセン多量体を製造することを特徴とする。
【0014】
これによれば、密閉容器内で、ペンタセンを液体の状態で脱水素縮合反応させるので、非特許文献1の方法よりも、ペンタセンの移動を抑制でき、長時間にわたって連続的にペンタセンを反応させることができる。また、ペンタセンを液体の状態で脱水素縮合反応させるので、ペンタセンを気相反応させる場合よりも、ペンタセンの分子同士の衝突確率を高くできる。このため、本発明によれば、4次以上の高次のペンタセン多量体を製造することができる。
【0015】
なお、本発明のペンタセン多量体の製造方法は、3次以下のペンタセン多量体を製造することもできる。
【0016】
また、この製造方法は、上記したグラフェンの製造方法に比べて極めて簡単な方法であるので、工業的な大量生産に適していると言える。
【0017】
本発明のペンタセン多量体の製造方法では、例えば、加熱温度を325℃〜375℃とすることが好ましく、加熱前の密閉容器内を真空状態とすることが好ましい。
【0018】
本発明のペンタセン多量体は、一般式(I)で表され、ペンタセンを構成要素とする4次以上のものである。
【0019】
【化1】
一般式(I)中のnは4以上の整数であり、一般式(I)中の破線は共有結合の位置を示している。ただし、一般式(I)には、共有結合が、すべての破線の位置に存在する場合に限らず、一部の破線の位置に存在しない場合も含まれる。また、一般式(I)には、構成要素であるペンタセン同士が、式中の縦方向で正対して結合する場合に限らず、式中の横方向にベンゼン環1つ以上シフトして結合する場合も含まれる。
【0020】
このペンタセン多量体は、一般式(I)に表されるように、グラフェンの類似構造を有するので、グラフェンと同様の特性を有することが期待でき、新たな電子材料、エネルギー材料としての利用が期待できる。
【0021】
また、一般式(I)は、次の一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)のすべてを含むものである。このため、本発明のペンタセン多量体は、次の一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)のそれぞれで表され、ペンタセンを構成要素とする4次以上のものであると言うこともできる。
【0022】
【化2】
一般式(Ia)中のnは4以上の整数であり、一般式(Ia)中のすべての破線の位置に共有結合が存在している。また、一般式(Ia)中の構成要素であるペンタセン同士は、すべて、一般式(Ia)中の縦方向で正対して結合している。
【0023】
【化3】
一般式(Ib)中のnは4以上の整数であり、一般式(Ib)中の破線は共有結合の位置を示している。ただし、一般式(Ib)中の一部の破線の位置では、供給結合が存在せず、水素で終端している。また、一般式(Ib)中の構成要素であるペンタセン同士は、すべて、式中の縦方向で正対して結合している。
【0024】
【化4】
一般式(Ic)中のnは4以上の整数であり、一般式(Ic)中の構成要素であるペンタセンのうち、1つ以上のペンタセンが、他のペンタセンに対して、式中の横方向にベンゼン環1つ以上シフトしている。また、一般式(Ic)中の破線は共有結合の位置を示しており、結合するペンタセン同士における一般式(Ic)中のすべての破線の位置に、共有結合が存在している。
【0025】
【化5】
一般式(Id)中のnは4以上の整数であり、一般式(Id)中の構成要素であるペンタセンのうち、1つ以上のペンタセンが、他のペンタセンに対して、式中の横方向にベンゼン環1つ以上シフトしている。また、一般式(Id)中の破線は共有結合の位置を示しており、結合するペンタセン同士における一般式(Id)中の一部の破線の位置では、供給結合が存在せず、水素で終端している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1で合成された物質のマススペクトルである。
【図2】図1中の2量体付近の拡大図である。
【図3】図1中の3量体付近の拡大図である。
【図4】図1中の4量体付近の拡大図である。
【図5】図1中の5量体付近の拡大図である。
【図6】図1中の6量体付近の拡大図である。
【図7】図1中の7量体付近の拡大図である。
【図8】図1中の8量体付近の拡大図である。
【図9】実施例2で合成された物質のマススペクトルである。
【図10】図9中の2量体付近の拡大図である。
【図11】図9中の3量体付近の拡大図である。
【図12】実施例3で合成された物質のマススペクトルである。
【図13】実施例4で合成された物質のマススペクトルである。
【図14】実施例5で合成された物質のマススペクトルである。
【図15】実施例6で合成された物質のマススペクトルである。
【図16】比較例1で回収された物質のマススペクトルである。
【図17】比較例2で回収された物質のマススペクトルである。
【図18】比較例3で回収された物質のマススペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(ペンタセン多量体)
ペンタセンは、下記の式(II)で表されるものであり、本発明のペンタセン多量体は、このペンタセンを構成要素とする4次以上の高次の多量体であり、下記の一般式(I)で表される。
【0028】
【化6】
【0029】
【化7】
一般式(I)中のnは4以上の整数であり、一般式(I)中の破線はペンタセン同士の共有結合の位置を示している。
【0030】
ただし、一般式(I)において、破線の位置すべてが共有結合である必要は無い。具体的には、下記の式(IV)に示されるように、一般式(I)中の破線個所の一部で共有結合が存在せず、水素で終端されていても良い。
【0031】
また、一般式(I)において、構成要素であるペンタセン同士は、縦方向にまっすぐと結合している必要は無く、下記の式(V)のように、横方向にシフトしていても良い。
【0032】
この一般式(I)の具体例として、n=4のときの構造例を式(III)、式(IV)、式(V)に示す。
【0033】
【化8】
式(III)で表されるペンタセン4量体は、構成要素であるペンタセン同士がすべて正対しており、一般式(I)中の破線の位置のすべてが共有結合である。すなわち、式(III)中の上下に隣り合うペンタセン同士では、一方のペンタセンの4、5、6、7、8位と、他方のペンタセンの1、14、13、12、11位との間に、それぞれ、共有結合が存在している。
【0034】
【化9】
式(IV)で表されるペンタセン4量体は、構成要素であるペンタセン同士がすべて正対しているが、上から1段目と2段目のペンタセン同士では、4位と1位との間、5位と14位との間には、供給結合が存在していない。また、上から3段目と4段目のペンタセン同士では、7位と12位との間、8位と11位との間には、共有結合が存在していない。
【0035】
【化10】
式(V)で表されるペンタセン4量体は、上から2段目のペンタセンが、1段目のペンタセンに対して、ベンゼン環1つ分横方向にシフトしており、1段目のペンタセンの4、5、6、7位の位置と、それに対向する2段目のペンタセンの14、13、12、11位の位置との間に、それぞれ、共有結合が存在している。
【0036】
なお、式(V)では、1つのペンタセン(上から2段目のペンタセン)が、他のペンタセン(上から1段目のペンタセン)に対して、ベンゼン環1つ分、横方向にシフトしているが、1つ以上のペンタセンが、他のペンタセンに対して、横方向にシフトしていても良く、結合するペンタセン同士において、ベンゼン環2つ分以上横方向にシフトしていても良い。
【0037】
また、式(V)では、結合するペンタセン同士において、対向するベンゼン環同士のすべてが共有結合しているが、対向するベンゼン環同士の一部において共有結合が存在せず、水素で終端していても良い。
【0038】
(ペンタセン多量体の製造方法)
本発明のペンタセン多量体の製造方法は、原料としてペンタセンを用い、この原料を密閉容器内で加熱することにより、ペンタセン多量体を製造するものである。
【0039】
具体的には、ペンタセン粉末を密閉容器に入れ、密閉容器内部を真空状態とし、この状態で、密閉容器内の原料を加熱する。ここでいう真空状態とは、原料と反応する酸素等の物質が実質的に含まれていない状態を意味する。密閉容器内を真空状態として密閉することで、酸素等の物質と反応することなく、原料を脱水素縮合反応させることができる。
【0040】
なお、酸素等の物質と反応することなく、原料を脱水素縮合反応させることができれば、真空状態に限らず、密閉容器内を不活性ガス雰囲気としても良い。
【0041】
原料の加熱のときでは、原料を少なくとも液体の状態とし、原料をこの状態で脱水素縮合反応させる。「少なくとも液体の状態」には、原料全部が液体の場合や、原料の大部分が液体で、原料の一部が固体として残っている場合や、原料の大部分が液体で、原料の一部が気化した場合等が含まれる。このときでは、原料の大部分が液体の状態(原料が主に液体の状態)であることが好ましい。
【0042】
したがって、加熱温度は、原料が融解するとともに脱水素縮合反応して、高分子量化した多量体が得られる温度である。この温度としては、具体的には、325℃〜375℃が挙げられる。これは、後述の実施例からわかるように、325℃よりも低温(例えば、310℃)では、加熱しても原料のペンタセンのままであり、375℃よりも高温(例えば、425℃)では、多量体以外の副生成物が多量に生成してしまい、高次の多量体が得られないからである。
【0043】
このペンタセン多量体の製造方法によれば、4次以上の高次のペンタセン多量体を製造することができる。この理由としては、次のことが考えられる。
【0044】
すなわち、密閉空間内で原料を加熱し、原料を少なくとも液相として、原料の昇華を抑制しながら、原料を脱水素縮合反応させているので、加熱位置で原料を長時間にわたって連続的に反応させることができる。また、原料を少なくとも液相とすることで、原料を気相とした場合と比較して、ペンタセンの分子同士の衝突確率を高くできる。また、密閉容器内で原料を加熱するので、原料の一部が気相となっても、原料の液相と気相との相平衡を保つことができ、原料を液相に維持することが容易となる。したがって、原料をもっぱら液相に維持するためには、密閉容器の容積が小さい方が好ましい。
【0045】
このペンタセン多量体の製造方法では、後述の実施例1、2の結果からわかるように、密閉容器内への原料の仕込み量を変えることで、生成する多量体の次数(分子量)およびその分布をコントロールすることが可能である。
【0046】
なお、下記の実施例では、次数が2〜8の多量体(2量体〜8量体)が製造された例を示しているが、このペンタセン多量体の製造方法によれば、次数が9以上の多量体の製造も可能である。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明の実施例および比較例を示す。
【0048】
なお、実施例および比較例で用いたペンタセン粉末、6,13-ジヒドロペンタセン粉末は、黒金化成株式会社製のペンタセン粉末(示差走査熱量測定(DSC)の吸熱ピークトップ値: 416℃)、黒金化成株式会社製の6,13-ジヒドロペンタセン粉末(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定の純度:99%)である。
【0049】
また、実施例および比較例で行ったマススペクトル(LDI-TOF-MS)の測定条件は次の通りである。
・装置名: JMS-S3000
・メーカー名: JEOL
・マトリックス: 使用しない
・レーザー波長: 349 nm
・検出モード: ポジティブイオンモード
(実施例1)
原料であるペンタセン粉末30 mgを、2 Pa以下の真空条件下で、内径8 mm、長さ150 mm、容積が7.54×10-6 m3の円筒状の石英管に封入した。そして、石英管内の原料を325℃で10時間加熱した。
【0050】
この加熱の間、原料は融解した状態で、石英管内に存在していることを目視により確認した。したがって、この加熱時では、原料は加熱場所から移動していなかったと言える。
【0051】
加熱終了後、石英管を室温まで冷却し、石英管内に存在する固形物を回収した。そして、この固形物のトルエンでの洗浄‐濾過の過程を、洗液の色が無色透明となるまで繰り返した。これにより、回収した固形物のうちトルエンに溶けない固形分を生成物として回収した。
【0052】
続いて、回収した生成物について、マススペクトル(LDI-TOF-MS)の測定を行った。図1に実施例1の生成物のマススペクトを示す。
【0053】
図1より、実施例1の生成物には、ペンタセンの2量体から8量体までのすべてが含まれていることが確認された。
【0054】
図2に、図1中の2量体付近の拡大図を示す。図2中の下段は実測値であり、上段はC44H14:C44H16:C44H18:C44H20:C44H22:C44H24:C44H26:C44H28:C45H21=15:4:100:30:12:9:2:5:17の条件で算出した理論スペクトルである。
【0055】
図2に示されるように、実測値は理論スペクトルと一致していることから、実施例1の生成物に含まれる2量体の分子式としては、C44H14、C44H16、C44H18、C44H20、C44H22、C44H24、C44H26、C44H28、C45H21が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0056】
【化11】
【0057】
【化12】
【0058】
【化13】
【0059】
【化14】
図3に、図1中の3量体付近の拡大図を示す。図3中の下段は実測値であり、上段はC66H16:C66H18:C66H20:C66H22:C66H24:C66H26:C66H28:C66H30:C66H32:C66H34:C66H36:C66H38:C66H40:C66H42=11:14:35:67:100:70:44:21:12:13:4:8:7:7の条件で算出した理論スペクトルである。
【0060】
図3に示されるように、実測値は理論スペクトルと一致していることから、実施例1の生成物に含まれる3量体の分子式としては、C66H16、C66H18、C66H20、C66H22、C66H24、C66H26、C66H28、C66H30、C66H32、C66H34、C66H36、C66H38、C66H40、C66H42が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0061】
【化15】
【0062】
【化16】
【0063】
【化17】
【0064】
【化18】
【0065】
【化19】
【0066】
【化20】
図4に、図1中の4量体付近の拡大図を示す。図4中の下段は実測値であり、上段はC88H20:C88H22:C88H24:C88H26:C88H28:C88H30:C88H32:C88H34:C88H36:C88H38:C88H40:C88H42:C88H44:C88H46:C88H48:C88H50:C88H52:C88H54:C88H56=22:18:46:58:86:100:96:68:50:22:21:9:18:2:8:8:5:5:3の条件で算出した理論スペクトルである。
【0067】
図4に示されるように、実測値は理論スペクトルと一致していることから、実施例1の生成物に含まれる4量体の分子式としては、C88H20、C88H22、C88H24、C88H26、C88H28、C88H30、C88H32、C88H34、C88H36、C88H38、C88H40、C88H42、C88H44、C88H46、C88H48、C88H50、C88H52、C88H54、C88H56が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0068】
【化21】
【0069】
【化22】
【0070】
【化23】
【0071】
【化24】
【0072】
【化25】
【0073】
【化26】
【0074】
【化27】
図5に、図1中の5量体付近の拡大図を示す。図5中の分子量の一例より、実施例1の生成物に含まれる5量体の分子式としては、例えば、C110H30、C110H36が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0075】
【化28】
【0076】
【化29】
図6に、図1中の6量体付近の拡大図を示す。図6中の分子量の一例より、実施例1の生成物に含まれる6量体の分子式としては、例えば、C132H34、C132H42、C132H44、C132H46が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0077】
【化30】
【0078】
【化31】
【0079】
【化32】
図7に、図1中の7量体付近の拡大図を示す。図7中の分子量の一例より、実施例1の生成物に含まれる7量体の分子式としては、例えば、C154H38、C154H40、C154H42が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0080】
【化33】
【0081】
【化34】
図8に、図1中の8量体付近の拡大図を示す。図7中の分子量の一例より、実施例1の生成物に含まれる8量体の分子式としては、例えば、C176H42、C176H52が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0082】
【化35】
【0083】
【化36】
(実施例2)
ペンタセン粉末の仕込み量を30 m から100 mgに変更した点を除いて、実施例1と同様に生成物を合成し、マススペクトルの測定を行った。図9に実施例2の生成物のマススペクトを示す。
【0084】
図9より、実施例2の生成物には、ペンタセンの2量体から5量体までのすべてが含まれていることが確認された。
【0085】
実施例1、2の結果より、より高次の多量体を得たい場合は、原料の仕込み量を少なくすれば良く、その反対に、生成物全体を占める2量体の割合を大きくしたい場合は、原料の仕込み量を多くすれば良いことがわかる。
【0086】
図10に、図9中の2量体付近の拡大図を示す。図10中の下段は実測値であり、上段はC44H14:C44H16:C44H18:C44H20:C44H22:C44H24:C44H26:C44H28:C45H21=3:9:100:41:27:3:4:2:5の条件で算出した理論スペクトルである。
【0087】
図10に示されるように、実測値は理論スペクトルと一致していることから、実施例2の生成物に含まれる2量体の分子式としては、例えば、C44H14、C44H16、C44H18、C44H20、C44H22、C44H24、C44H26、C44H28、C45H21が挙げられる。これらの構造例は実施例1と同様である。
【0088】
図11に、図9中の3量体付近の拡大図を示す。図11中の下段は実測値であり、上段はC66H16:C66H18:C66H20:C66H22:C66H24:C66H26:C66H28:C66H30:C66H32:C66H34:C66H36:C66H38:C66H40:C66H42=22:36:43:78:96:85:100:61:41:46:21:27:15:3の条件で算出した理論スペクトルである。
【0089】
図11に示されるように、実測値は理論スペクトルと一致していることから、実施例2の生成物に含まれる3量体の分子式としては、例えば、C66H16、C66H18、C66H20、C66H22、C66H24、C66H26、C66H28、C66H30、C66H32、C66H34、C66H36、C66H38、C66H40、C66H42が挙げられる。これらの構造例は実施例1と同様である。
(実施例3)
原料として、ペンタセン粉末15mg と下記式(VI)で表される6,13-ジヒドロペンタセン粉末15 mgとを併用した点を除いて、実施例1と同様に生成物を合成し、マススペクトルの測定を行った。
【0090】
【化37】
図12に実施例3の生成物のマススペクトを示す。図12より、実施例3の生成物には、ペンタセンの2量体から6量体までのすべてが含まれていることが確認された。
【0091】
実施例1、3を比較すると、原料の総仕込み量を変えずに、6,13-ジヒドロペンタセンを混ぜると、得られた多量体の次数が低下することがわかる。
【0092】
したがって、ペンタセン粉末に、6,13-ジヒドロペンタセンを混ぜることにより、得られる多量体の分子量(多量体の次数)をコントロールでき、6,13-ジヒドロペンタセンを混ぜることは、特に、多量体の次数を低く抑えたい場合に有効であると言える。
(実施例4)
加熱温度を340℃に変更した点を除いて、実施例1と同様に生成物を合成し、マススペクトルの測定を行った。図13に実施例4の生成物のマススペクトを示す。図13より、実施例4の生成物には、ペンタセンの2量体から5量体までのすべてが含まれていることが確認された。
(実施例5)
加熱温度を350℃に変更した点を除いて、実施例1と同様に生成物を合成し、マススペクトルの測定を行った。図14に実施例5の生成物のマススペクトを示す。図14より、実施例5の生成物には、ペンタセンの2量体から5量体までのすべてが含まれていることが確認された。
(実施例6)
加熱温度を375℃に変更した点を除いて、実施例1と同様に生成物を合成し、マススペクトルの測定を行った。図15に実施例6の生成物のマススペクトを示す。図15より、実施例6の生成物には、ペンタセンの2量体から4量体までのすべてが含まれていることが確認された。
(比較例1)
ペンタセン粉末から6,13-ジヒドロペンタセン粉末30 mgに原料を変更した点を除いて、実施例1と同様に原料を加熱した後、回収した物質のマススペクトルの測定を行った。図16に、このマススペクトを示す。
【0093】
図16より、比較例1の生成物には、ペンタセン2量体しか含まれていないことが確認された。このことから、原料にペンタセンを全く含んでいない場合では、2量体以外のペンタセン多量体が得られないことがわかる。また、比較例1では生成物が少なく、原料が多く残っていることが確認された。
(比較例2)
加熱温度を310℃に変更した点を除いて、実施例1と同様に原料を加熱した後、回収した物質のマススペクトルの測定を行った。図17に、このマススペクトを示す。
【0094】
図17より、比較例2の場合では、原料の重合反応が起こらないことが確認された。このことから、加熱温度が310℃以下の場合では、ペンタセン多量体が得られないことがわかる。
(比較例3)
加熱温度を425℃に変更した点を除いて、実施例1と同様に原料を加熱した後、回収した物質のマススペクトルの測定を行った。図18に、このマススペクトを示す。
【0095】
図18より、比較例3の生成物には、ペンタセン2量体と3量体しか含まれていないことが確認された。このことから、加熱温度が425℃以上の場合では4次以上のペンタセン多量体が得られないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のペンタセン多量体は、グラフェンの類似構造を有するので、グラフェンと同様の物性を有することが期待でき、例えば、リチウムイオン二次電池の負極活物質、電極材料の導電補助剤、透明導電膜、電界効果トランジスタ、有機薄膜太陽電池、ポリマーに添加して機械的強度を向上させる補強材、水素等を貯蔵するためのガス貯蔵材料等への利用が可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンの類似構造を有するペンタセン多量体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、ベンゼン環を二次元平面に敷き詰めた構造であり、優れた機械的強度および電子伝導性を示すことから注目されている。このグラフェンの製造方法としては、スコッチテープを用いてグラファイトを物理的に剥離する方法や、SiC基板を熱分解する方法などが知られている。
【0003】
一方、ペンタセンは、5つのベンゼン環が直線状に縮合した多環芳香族炭化水素である。このペンタセンに関しては、非特許文献1に、ペンタセンの昇華精製を目的として、反応装置内でアルゴンガスを連続的に流しながらペンタセンを加熱したところ、原料の加熱領域に、ペンタセンの2量体と3量体を含む粉末が析出したことが開示されている。このときの加熱条件は、電気炉の温度が320〜375℃であり、アルゴンガスの流量が10〜70mL/minであった。
【0004】
また、非特許文献2には、非特許文献1に関連して、第一原理計算を用いたペンタセン2量体の生成経路の検討結果として、ペンタセンからペンタセン2量体(ペリペンタセン)が生成する過程には、6,13-ジヒドロペンタセンが重要な寄与をすることが指摘されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc. 127, 3069-3075 (2005).
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc. 129, 6536-6546 (2007).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のグラフェンの製造方法では、比較的少量のグラフェンしか得られず、工業的な大量生産には適さないという問題がある。
【0007】
そこで、この問題の解決策として、本発明者は、低分子量の有機分子を出発原料として化学的な重合反応を行う、ボトムアップ的な手法が有効であると考えている。
【0008】
具体的には、ペンタセンを脱水素縮合反応させて、複数のペンタセンが二次元平面状に結合されたペンタセン多量体を合成する方法であれば、工業的な大量生産に適すると考えている。そして、このペンタセン多量体は、グラフェンの類似構造を有するので、グラフェンに類似の特性を有することが期待でき、新たな電子材料、エネルギー材料としての利用が期待できる。
【0009】
しかし、このようなペンタセン多量体としては、非特許文献1、2に開示の通り、3つのペンタセンが結合した3量体、すなわち、3次までの比較的低分子量の多量体しか得られないのが現状であり、4次以上の多量体を製造する方法が存在しなかった。
【0010】
本発明は上記点に鑑みて、4次以上のペンタセン多量体およびその製造が可能なペンタセン多量体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、非特許文献1に記載の方法において、4次以上のペンタセン多量体が得られなかった理由を検討し、その検討結果を踏まえて、4次以上のペンタセン多量体を得るための方法を検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、非特許文献1では、ペンタセンの昇華精製を目的として、ガスフローの条件下でペンタセンの加熱を行っていたため、反応装置内で、原料として仕込んだ固体状態のペンタセンが昇華し、キャリアガスとともに移動してしまうため、長時間の連続的な反応が困難であったと考えられる。また、このように昇華を伴う気相反応では、ペンタセンの分子同士の衝突確率が低いために、高次の多量体を得ることが難しいと考えられる。このような理由から、非特許文献1に記載の方法では、3量体までの比較的低分子量の重合体しか得られなかったと考えられる。
【0013】
そこで、本発明のペンタセン多量体の製造方法は、原料としてペンタセンを用い、密閉容器内で原料を加熱し、原料を少なくとも液体の状態として、原料を脱水素縮合反応させることにより、ペンタセン多量体を製造することを特徴とする。
【0014】
これによれば、密閉容器内で、ペンタセンを液体の状態で脱水素縮合反応させるので、非特許文献1の方法よりも、ペンタセンの移動を抑制でき、長時間にわたって連続的にペンタセンを反応させることができる。また、ペンタセンを液体の状態で脱水素縮合反応させるので、ペンタセンを気相反応させる場合よりも、ペンタセンの分子同士の衝突確率を高くできる。このため、本発明によれば、4次以上の高次のペンタセン多量体を製造することができる。
【0015】
なお、本発明のペンタセン多量体の製造方法は、3次以下のペンタセン多量体を製造することもできる。
【0016】
また、この製造方法は、上記したグラフェンの製造方法に比べて極めて簡単な方法であるので、工業的な大量生産に適していると言える。
【0017】
本発明のペンタセン多量体の製造方法では、例えば、加熱温度を325℃〜375℃とすることが好ましく、加熱前の密閉容器内を真空状態とすることが好ましい。
【0018】
本発明のペンタセン多量体は、一般式(I)で表され、ペンタセンを構成要素とする4次以上のものである。
【0019】
【化1】
一般式(I)中のnは4以上の整数であり、一般式(I)中の破線は共有結合の位置を示している。ただし、一般式(I)には、共有結合が、すべての破線の位置に存在する場合に限らず、一部の破線の位置に存在しない場合も含まれる。また、一般式(I)には、構成要素であるペンタセン同士が、式中の縦方向で正対して結合する場合に限らず、式中の横方向にベンゼン環1つ以上シフトして結合する場合も含まれる。
【0020】
このペンタセン多量体は、一般式(I)に表されるように、グラフェンの類似構造を有するので、グラフェンと同様の特性を有することが期待でき、新たな電子材料、エネルギー材料としての利用が期待できる。
【0021】
また、一般式(I)は、次の一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)のすべてを含むものである。このため、本発明のペンタセン多量体は、次の一般式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)のそれぞれで表され、ペンタセンを構成要素とする4次以上のものであると言うこともできる。
【0022】
【化2】
一般式(Ia)中のnは4以上の整数であり、一般式(Ia)中のすべての破線の位置に共有結合が存在している。また、一般式(Ia)中の構成要素であるペンタセン同士は、すべて、一般式(Ia)中の縦方向で正対して結合している。
【0023】
【化3】
一般式(Ib)中のnは4以上の整数であり、一般式(Ib)中の破線は共有結合の位置を示している。ただし、一般式(Ib)中の一部の破線の位置では、供給結合が存在せず、水素で終端している。また、一般式(Ib)中の構成要素であるペンタセン同士は、すべて、式中の縦方向で正対して結合している。
【0024】
【化4】
一般式(Ic)中のnは4以上の整数であり、一般式(Ic)中の構成要素であるペンタセンのうち、1つ以上のペンタセンが、他のペンタセンに対して、式中の横方向にベンゼン環1つ以上シフトしている。また、一般式(Ic)中の破線は共有結合の位置を示しており、結合するペンタセン同士における一般式(Ic)中のすべての破線の位置に、共有結合が存在している。
【0025】
【化5】
一般式(Id)中のnは4以上の整数であり、一般式(Id)中の構成要素であるペンタセンのうち、1つ以上のペンタセンが、他のペンタセンに対して、式中の横方向にベンゼン環1つ以上シフトしている。また、一般式(Id)中の破線は共有結合の位置を示しており、結合するペンタセン同士における一般式(Id)中の一部の破線の位置では、供給結合が存在せず、水素で終端している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1で合成された物質のマススペクトルである。
【図2】図1中の2量体付近の拡大図である。
【図3】図1中の3量体付近の拡大図である。
【図4】図1中の4量体付近の拡大図である。
【図5】図1中の5量体付近の拡大図である。
【図6】図1中の6量体付近の拡大図である。
【図7】図1中の7量体付近の拡大図である。
【図8】図1中の8量体付近の拡大図である。
【図9】実施例2で合成された物質のマススペクトルである。
【図10】図9中の2量体付近の拡大図である。
【図11】図9中の3量体付近の拡大図である。
【図12】実施例3で合成された物質のマススペクトルである。
【図13】実施例4で合成された物質のマススペクトルである。
【図14】実施例5で合成された物質のマススペクトルである。
【図15】実施例6で合成された物質のマススペクトルである。
【図16】比較例1で回収された物質のマススペクトルである。
【図17】比較例2で回収された物質のマススペクトルである。
【図18】比較例3で回収された物質のマススペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(ペンタセン多量体)
ペンタセンは、下記の式(II)で表されるものであり、本発明のペンタセン多量体は、このペンタセンを構成要素とする4次以上の高次の多量体であり、下記の一般式(I)で表される。
【0028】
【化6】
【0029】
【化7】
一般式(I)中のnは4以上の整数であり、一般式(I)中の破線はペンタセン同士の共有結合の位置を示している。
【0030】
ただし、一般式(I)において、破線の位置すべてが共有結合である必要は無い。具体的には、下記の式(IV)に示されるように、一般式(I)中の破線個所の一部で共有結合が存在せず、水素で終端されていても良い。
【0031】
また、一般式(I)において、構成要素であるペンタセン同士は、縦方向にまっすぐと結合している必要は無く、下記の式(V)のように、横方向にシフトしていても良い。
【0032】
この一般式(I)の具体例として、n=4のときの構造例を式(III)、式(IV)、式(V)に示す。
【0033】
【化8】
式(III)で表されるペンタセン4量体は、構成要素であるペンタセン同士がすべて正対しており、一般式(I)中の破線の位置のすべてが共有結合である。すなわち、式(III)中の上下に隣り合うペンタセン同士では、一方のペンタセンの4、5、6、7、8位と、他方のペンタセンの1、14、13、12、11位との間に、それぞれ、共有結合が存在している。
【0034】
【化9】
式(IV)で表されるペンタセン4量体は、構成要素であるペンタセン同士がすべて正対しているが、上から1段目と2段目のペンタセン同士では、4位と1位との間、5位と14位との間には、供給結合が存在していない。また、上から3段目と4段目のペンタセン同士では、7位と12位との間、8位と11位との間には、共有結合が存在していない。
【0035】
【化10】
式(V)で表されるペンタセン4量体は、上から2段目のペンタセンが、1段目のペンタセンに対して、ベンゼン環1つ分横方向にシフトしており、1段目のペンタセンの4、5、6、7位の位置と、それに対向する2段目のペンタセンの14、13、12、11位の位置との間に、それぞれ、共有結合が存在している。
【0036】
なお、式(V)では、1つのペンタセン(上から2段目のペンタセン)が、他のペンタセン(上から1段目のペンタセン)に対して、ベンゼン環1つ分、横方向にシフトしているが、1つ以上のペンタセンが、他のペンタセンに対して、横方向にシフトしていても良く、結合するペンタセン同士において、ベンゼン環2つ分以上横方向にシフトしていても良い。
【0037】
また、式(V)では、結合するペンタセン同士において、対向するベンゼン環同士のすべてが共有結合しているが、対向するベンゼン環同士の一部において共有結合が存在せず、水素で終端していても良い。
【0038】
(ペンタセン多量体の製造方法)
本発明のペンタセン多量体の製造方法は、原料としてペンタセンを用い、この原料を密閉容器内で加熱することにより、ペンタセン多量体を製造するものである。
【0039】
具体的には、ペンタセン粉末を密閉容器に入れ、密閉容器内部を真空状態とし、この状態で、密閉容器内の原料を加熱する。ここでいう真空状態とは、原料と反応する酸素等の物質が実質的に含まれていない状態を意味する。密閉容器内を真空状態として密閉することで、酸素等の物質と反応することなく、原料を脱水素縮合反応させることができる。
【0040】
なお、酸素等の物質と反応することなく、原料を脱水素縮合反応させることができれば、真空状態に限らず、密閉容器内を不活性ガス雰囲気としても良い。
【0041】
原料の加熱のときでは、原料を少なくとも液体の状態とし、原料をこの状態で脱水素縮合反応させる。「少なくとも液体の状態」には、原料全部が液体の場合や、原料の大部分が液体で、原料の一部が固体として残っている場合や、原料の大部分が液体で、原料の一部が気化した場合等が含まれる。このときでは、原料の大部分が液体の状態(原料が主に液体の状態)であることが好ましい。
【0042】
したがって、加熱温度は、原料が融解するとともに脱水素縮合反応して、高分子量化した多量体が得られる温度である。この温度としては、具体的には、325℃〜375℃が挙げられる。これは、後述の実施例からわかるように、325℃よりも低温(例えば、310℃)では、加熱しても原料のペンタセンのままであり、375℃よりも高温(例えば、425℃)では、多量体以外の副生成物が多量に生成してしまい、高次の多量体が得られないからである。
【0043】
このペンタセン多量体の製造方法によれば、4次以上の高次のペンタセン多量体を製造することができる。この理由としては、次のことが考えられる。
【0044】
すなわち、密閉空間内で原料を加熱し、原料を少なくとも液相として、原料の昇華を抑制しながら、原料を脱水素縮合反応させているので、加熱位置で原料を長時間にわたって連続的に反応させることができる。また、原料を少なくとも液相とすることで、原料を気相とした場合と比較して、ペンタセンの分子同士の衝突確率を高くできる。また、密閉容器内で原料を加熱するので、原料の一部が気相となっても、原料の液相と気相との相平衡を保つことができ、原料を液相に維持することが容易となる。したがって、原料をもっぱら液相に維持するためには、密閉容器の容積が小さい方が好ましい。
【0045】
このペンタセン多量体の製造方法では、後述の実施例1、2の結果からわかるように、密閉容器内への原料の仕込み量を変えることで、生成する多量体の次数(分子量)およびその分布をコントロールすることが可能である。
【0046】
なお、下記の実施例では、次数が2〜8の多量体(2量体〜8量体)が製造された例を示しているが、このペンタセン多量体の製造方法によれば、次数が9以上の多量体の製造も可能である。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明の実施例および比較例を示す。
【0048】
なお、実施例および比較例で用いたペンタセン粉末、6,13-ジヒドロペンタセン粉末は、黒金化成株式会社製のペンタセン粉末(示差走査熱量測定(DSC)の吸熱ピークトップ値: 416℃)、黒金化成株式会社製の6,13-ジヒドロペンタセン粉末(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定の純度:99%)である。
【0049】
また、実施例および比較例で行ったマススペクトル(LDI-TOF-MS)の測定条件は次の通りである。
・装置名: JMS-S3000
・メーカー名: JEOL
・マトリックス: 使用しない
・レーザー波長: 349 nm
・検出モード: ポジティブイオンモード
(実施例1)
原料であるペンタセン粉末30 mgを、2 Pa以下の真空条件下で、内径8 mm、長さ150 mm、容積が7.54×10-6 m3の円筒状の石英管に封入した。そして、石英管内の原料を325℃で10時間加熱した。
【0050】
この加熱の間、原料は融解した状態で、石英管内に存在していることを目視により確認した。したがって、この加熱時では、原料は加熱場所から移動していなかったと言える。
【0051】
加熱終了後、石英管を室温まで冷却し、石英管内に存在する固形物を回収した。そして、この固形物のトルエンでの洗浄‐濾過の過程を、洗液の色が無色透明となるまで繰り返した。これにより、回収した固形物のうちトルエンに溶けない固形分を生成物として回収した。
【0052】
続いて、回収した生成物について、マススペクトル(LDI-TOF-MS)の測定を行った。図1に実施例1の生成物のマススペクトを示す。
【0053】
図1より、実施例1の生成物には、ペンタセンの2量体から8量体までのすべてが含まれていることが確認された。
【0054】
図2に、図1中の2量体付近の拡大図を示す。図2中の下段は実測値であり、上段はC44H14:C44H16:C44H18:C44H20:C44H22:C44H24:C44H26:C44H28:C45H21=15:4:100:30:12:9:2:5:17の条件で算出した理論スペクトルである。
【0055】
図2に示されるように、実測値は理論スペクトルと一致していることから、実施例1の生成物に含まれる2量体の分子式としては、C44H14、C44H16、C44H18、C44H20、C44H22、C44H24、C44H26、C44H28、C45H21が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0056】
【化11】
【0057】
【化12】
【0058】
【化13】
【0059】
【化14】
図3に、図1中の3量体付近の拡大図を示す。図3中の下段は実測値であり、上段はC66H16:C66H18:C66H20:C66H22:C66H24:C66H26:C66H28:C66H30:C66H32:C66H34:C66H36:C66H38:C66H40:C66H42=11:14:35:67:100:70:44:21:12:13:4:8:7:7の条件で算出した理論スペクトルである。
【0060】
図3に示されるように、実測値は理論スペクトルと一致していることから、実施例1の生成物に含まれる3量体の分子式としては、C66H16、C66H18、C66H20、C66H22、C66H24、C66H26、C66H28、C66H30、C66H32、C66H34、C66H36、C66H38、C66H40、C66H42が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0061】
【化15】
【0062】
【化16】
【0063】
【化17】
【0064】
【化18】
【0065】
【化19】
【0066】
【化20】
図4に、図1中の4量体付近の拡大図を示す。図4中の下段は実測値であり、上段はC88H20:C88H22:C88H24:C88H26:C88H28:C88H30:C88H32:C88H34:C88H36:C88H38:C88H40:C88H42:C88H44:C88H46:C88H48:C88H50:C88H52:C88H54:C88H56=22:18:46:58:86:100:96:68:50:22:21:9:18:2:8:8:5:5:3の条件で算出した理論スペクトルである。
【0067】
図4に示されるように、実測値は理論スペクトルと一致していることから、実施例1の生成物に含まれる4量体の分子式としては、C88H20、C88H22、C88H24、C88H26、C88H28、C88H30、C88H32、C88H34、C88H36、C88H38、C88H40、C88H42、C88H44、C88H46、C88H48、C88H50、C88H52、C88H54、C88H56が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0068】
【化21】
【0069】
【化22】
【0070】
【化23】
【0071】
【化24】
【0072】
【化25】
【0073】
【化26】
【0074】
【化27】
図5に、図1中の5量体付近の拡大図を示す。図5中の分子量の一例より、実施例1の生成物に含まれる5量体の分子式としては、例えば、C110H30、C110H36が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0075】
【化28】
【0076】
【化29】
図6に、図1中の6量体付近の拡大図を示す。図6中の分子量の一例より、実施例1の生成物に含まれる6量体の分子式としては、例えば、C132H34、C132H42、C132H44、C132H46が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0077】
【化30】
【0078】
【化31】
【0079】
【化32】
図7に、図1中の7量体付近の拡大図を示す。図7中の分子量の一例より、実施例1の生成物に含まれる7量体の分子式としては、例えば、C154H38、C154H40、C154H42が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0080】
【化33】
【0081】
【化34】
図8に、図1中の8量体付近の拡大図を示す。図7中の分子量の一例より、実施例1の生成物に含まれる8量体の分子式としては、例えば、C176H42、C176H52が挙げられる。これらの分子式について、考えられる構造例を下記に示す。
【0082】
【化35】
【0083】
【化36】
(実施例2)
ペンタセン粉末の仕込み量を30 m から100 mgに変更した点を除いて、実施例1と同様に生成物を合成し、マススペクトルの測定を行った。図9に実施例2の生成物のマススペクトを示す。
【0084】
図9より、実施例2の生成物には、ペンタセンの2量体から5量体までのすべてが含まれていることが確認された。
【0085】
実施例1、2の結果より、より高次の多量体を得たい場合は、原料の仕込み量を少なくすれば良く、その反対に、生成物全体を占める2量体の割合を大きくしたい場合は、原料の仕込み量を多くすれば良いことがわかる。
【0086】
図10に、図9中の2量体付近の拡大図を示す。図10中の下段は実測値であり、上段はC44H14:C44H16:C44H18:C44H20:C44H22:C44H24:C44H26:C44H28:C45H21=3:9:100:41:27:3:4:2:5の条件で算出した理論スペクトルである。
【0087】
図10に示されるように、実測値は理論スペクトルと一致していることから、実施例2の生成物に含まれる2量体の分子式としては、例えば、C44H14、C44H16、C44H18、C44H20、C44H22、C44H24、C44H26、C44H28、C45H21が挙げられる。これらの構造例は実施例1と同様である。
【0088】
図11に、図9中の3量体付近の拡大図を示す。図11中の下段は実測値であり、上段はC66H16:C66H18:C66H20:C66H22:C66H24:C66H26:C66H28:C66H30:C66H32:C66H34:C66H36:C66H38:C66H40:C66H42=22:36:43:78:96:85:100:61:41:46:21:27:15:3の条件で算出した理論スペクトルである。
【0089】
図11に示されるように、実測値は理論スペクトルと一致していることから、実施例2の生成物に含まれる3量体の分子式としては、例えば、C66H16、C66H18、C66H20、C66H22、C66H24、C66H26、C66H28、C66H30、C66H32、C66H34、C66H36、C66H38、C66H40、C66H42が挙げられる。これらの構造例は実施例1と同様である。
(実施例3)
原料として、ペンタセン粉末15mg と下記式(VI)で表される6,13-ジヒドロペンタセン粉末15 mgとを併用した点を除いて、実施例1と同様に生成物を合成し、マススペクトルの測定を行った。
【0090】
【化37】
図12に実施例3の生成物のマススペクトを示す。図12より、実施例3の生成物には、ペンタセンの2量体から6量体までのすべてが含まれていることが確認された。
【0091】
実施例1、3を比較すると、原料の総仕込み量を変えずに、6,13-ジヒドロペンタセンを混ぜると、得られた多量体の次数が低下することがわかる。
【0092】
したがって、ペンタセン粉末に、6,13-ジヒドロペンタセンを混ぜることにより、得られる多量体の分子量(多量体の次数)をコントロールでき、6,13-ジヒドロペンタセンを混ぜることは、特に、多量体の次数を低く抑えたい場合に有効であると言える。
(実施例4)
加熱温度を340℃に変更した点を除いて、実施例1と同様に生成物を合成し、マススペクトルの測定を行った。図13に実施例4の生成物のマススペクトを示す。図13より、実施例4の生成物には、ペンタセンの2量体から5量体までのすべてが含まれていることが確認された。
(実施例5)
加熱温度を350℃に変更した点を除いて、実施例1と同様に生成物を合成し、マススペクトルの測定を行った。図14に実施例5の生成物のマススペクトを示す。図14より、実施例5の生成物には、ペンタセンの2量体から5量体までのすべてが含まれていることが確認された。
(実施例6)
加熱温度を375℃に変更した点を除いて、実施例1と同様に生成物を合成し、マススペクトルの測定を行った。図15に実施例6の生成物のマススペクトを示す。図15より、実施例6の生成物には、ペンタセンの2量体から4量体までのすべてが含まれていることが確認された。
(比較例1)
ペンタセン粉末から6,13-ジヒドロペンタセン粉末30 mgに原料を変更した点を除いて、実施例1と同様に原料を加熱した後、回収した物質のマススペクトルの測定を行った。図16に、このマススペクトを示す。
【0093】
図16より、比較例1の生成物には、ペンタセン2量体しか含まれていないことが確認された。このことから、原料にペンタセンを全く含んでいない場合では、2量体以外のペンタセン多量体が得られないことがわかる。また、比較例1では生成物が少なく、原料が多く残っていることが確認された。
(比較例2)
加熱温度を310℃に変更した点を除いて、実施例1と同様に原料を加熱した後、回収した物質のマススペクトルの測定を行った。図17に、このマススペクトを示す。
【0094】
図17より、比較例2の場合では、原料の重合反応が起こらないことが確認された。このことから、加熱温度が310℃以下の場合では、ペンタセン多量体が得られないことがわかる。
(比較例3)
加熱温度を425℃に変更した点を除いて、実施例1と同様に原料を加熱した後、回収した物質のマススペクトルの測定を行った。図18に、このマススペクトを示す。
【0095】
図18より、比較例3の生成物には、ペンタセン2量体と3量体しか含まれていないことが確認された。このことから、加熱温度が425℃以上の場合では4次以上のペンタセン多量体が得られないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のペンタセン多量体は、グラフェンの類似構造を有するので、グラフェンと同様の物性を有することが期待でき、例えば、リチウムイオン二次電池の負極活物質、電極材料の導電補助剤、透明導電膜、電界効果トランジスタ、有機薄膜太陽電池、ポリマーに添加して機械的強度を向上させる補強材、水素等を貯蔵するためのガス貯蔵材料等への利用が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表され、
ペンタセンを構成要素とする4次以上のペンタセン多量体。
【化1】
(一般式(I)中のnは4以上の整数であり、一般式(I)中の破線は共有結合の位置を示している。ただし、一般式(I)には、共有結合が、すべての破線の位置に存在する場合に限らず、一部の破線の位置に存在しない場合も含まれる。また、一般式(I)には、構成要素であるペンタセン同士が、式中の縦方向で正対して結合する場合に限らず、式中の横方向にベンゼン環1つ以上シフトして結合する場合も含まれる。)
【請求項2】
下記一般式(Ia)で表され、
ペンタセンを構成要素とする4次以上のペンタセン多量体。
【化2】
(一般式(Ia)中のnは4以上の整数であり、一般式(Ia)中のすべての破線の位置に共有結合が存在している。また、一般式(Ia)中の構成要素であるペンタセン同士は、すべて、一般式(Ia)中の縦方向で正対して結合している。)
【請求項3】
下記一般式(Ib)で表され、
ペンタセンを構成要素とする4次以上のペンタセン多量体。
【化3】
(一般式(Ib)中のnは4以上の整数であり、一般式(Ib)中の破線は共有結合の位置を示している。ただし、一般式(Ib)中の一部の破線の位置では、供給結合が存在せず、水素で終端している。また、一般式(Ib)中の構成要素であるペンタセン同士は、すべて、式中の縦方向で正対して結合している。)
【請求項4】
下記一般式(Ic)で表され、
ペンタセンを構成要素とする4次以上のペンタセン多量体。
【化4】
(一般式(Ic)中のnは4以上の整数であり、一般式(Ic)中の構成要素であるペンタセンのうち、1つ以上のペンタセンが、他のペンタセンに対して、式中の横方向にベンゼン環1つ以上シフトしている。また、一般式(Ic)中の破線は共有結合の位置を示しており、結合するペンタセン同士における一般式(Ic)中のすべての破線の位置に、共有結合が存在している。)
【請求項5】
下記一般式(Ib)で表され、
ペンタセンを構成要素とする4次以上のペンタセン多量体。
【化5】
(一般式(Id)中のnは4以上の整数であり、一般式(Id)中の構成要素であるペンタセンのうち、1つ以上のペンタセンが、他のペンタセンに対して、式中の横方向にベンゼン環1つ以上シフトしている。また、一般式(Id)中の破線は共有結合の位置を示しており、結合するペンタセン同士における一般式(Id)中の一部の破線の位置では、供給結合が存在せず、水素で終端している。)
【請求項6】
原料としてペンタセンを用い、
密閉容器内で前記原料を加熱し、前記原料を少なくとも液体の状態として、前記原料を脱水素縮合反応させることにより、ペンタセン多量体を製造することを特徴とするペンタセン多量体の製造方法。
【請求項7】
325℃〜375℃の温度で、前記原料を加熱することを特徴とする請求項6に記載のペンタセン多量体の製造方法。
【請求項8】
加熱前の前記密閉容器内を真空状態とすることを特徴とする請求項6または7に記載のペンタセン多量体の製造方法。
【請求項1】
下記一般式(I)で表され、
ペンタセンを構成要素とする4次以上のペンタセン多量体。
【化1】
(一般式(I)中のnは4以上の整数であり、一般式(I)中の破線は共有結合の位置を示している。ただし、一般式(I)には、共有結合が、すべての破線の位置に存在する場合に限らず、一部の破線の位置に存在しない場合も含まれる。また、一般式(I)には、構成要素であるペンタセン同士が、式中の縦方向で正対して結合する場合に限らず、式中の横方向にベンゼン環1つ以上シフトして結合する場合も含まれる。)
【請求項2】
下記一般式(Ia)で表され、
ペンタセンを構成要素とする4次以上のペンタセン多量体。
【化2】
(一般式(Ia)中のnは4以上の整数であり、一般式(Ia)中のすべての破線の位置に共有結合が存在している。また、一般式(Ia)中の構成要素であるペンタセン同士は、すべて、一般式(Ia)中の縦方向で正対して結合している。)
【請求項3】
下記一般式(Ib)で表され、
ペンタセンを構成要素とする4次以上のペンタセン多量体。
【化3】
(一般式(Ib)中のnは4以上の整数であり、一般式(Ib)中の破線は共有結合の位置を示している。ただし、一般式(Ib)中の一部の破線の位置では、供給結合が存在せず、水素で終端している。また、一般式(Ib)中の構成要素であるペンタセン同士は、すべて、式中の縦方向で正対して結合している。)
【請求項4】
下記一般式(Ic)で表され、
ペンタセンを構成要素とする4次以上のペンタセン多量体。
【化4】
(一般式(Ic)中のnは4以上の整数であり、一般式(Ic)中の構成要素であるペンタセンのうち、1つ以上のペンタセンが、他のペンタセンに対して、式中の横方向にベンゼン環1つ以上シフトしている。また、一般式(Ic)中の破線は共有結合の位置を示しており、結合するペンタセン同士における一般式(Ic)中のすべての破線の位置に、共有結合が存在している。)
【請求項5】
下記一般式(Ib)で表され、
ペンタセンを構成要素とする4次以上のペンタセン多量体。
【化5】
(一般式(Id)中のnは4以上の整数であり、一般式(Id)中の構成要素であるペンタセンのうち、1つ以上のペンタセンが、他のペンタセンに対して、式中の横方向にベンゼン環1つ以上シフトしている。また、一般式(Id)中の破線は共有結合の位置を示しており、結合するペンタセン同士における一般式(Id)中の一部の破線の位置では、供給結合が存在せず、水素で終端している。)
【請求項6】
原料としてペンタセンを用い、
密閉容器内で前記原料を加熱し、前記原料を少なくとも液体の状態として、前記原料を脱水素縮合反応させることにより、ペンタセン多量体を製造することを特徴とするペンタセン多量体の製造方法。
【請求項7】
325℃〜375℃の温度で、前記原料を加熱することを特徴とする請求項6に記載のペンタセン多量体の製造方法。
【請求項8】
加熱前の前記密閉容器内を真空状態とすることを特徴とする請求項6または7に記載のペンタセン多量体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−250931(P2012−250931A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124386(P2011−124386)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(506203475)黒金化成株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(506203475)黒金化成株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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