説明

ペンタフルオロエタン製造用触媒及びこの触媒の製造方法

【課題】クロロエタン化合物を原料としてHFC5を製造する方法において高い転換率と選択率を示すフッ素化触媒とこの触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】水酸化クロム粉末を300℃以下で加熱処理して得た酸化クロム粉末85〜99.5wt%と、マグネシウム、鉄、モリブデン、バナジウム及びアルミニウムの水酸化物の中から選択される金属水酸化物を300℃以下で加熱処理して得た酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化バナジウム及び酸化アルミニウムの中から選択される金属酸化物粉末0.5〜15wt%とを混合して成形したペレットを、窒素ガス中で200〜300℃で焼成した後、300〜320℃ではN+HFの混合ガスで、320〜380℃ではHFガスでフッ素化させることによって、クロロエタン化合物を原料とするペンタフルオロエタン製造用酸化クロム系触媒を製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンタフルオロエタン製造用触媒及びこの触媒の製造方法に係り、より具体的には、ペルクロロエタン(CCl、以下「PCE」という)又は1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン(CHClCF、以下「HCFC−123」という)をHFと反応させてペンタフルオロエタン(CFCHF、以下「HFC−125」という)を製造するのに有用な触媒及びこの触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HFC−125は、分子内に塩素を含有しないため地球温暖化及びオゾン層破壊指数が殆どなく、既存の冷媒、発泡剤、噴射剤などとして使用されてきた塩化フッ化炭素(chloro fluoro carbon)又は塩化フッ化炭化水素(hydrogen chloro fluoro carbon)の代替物質であって、ジフルオロメタン(CH、以下「HFC−32」という)と混合して混合冷媒の原料として用いられている。
【0003】
クロロエタン化合物を原料としてHFC−125を製造するのに使用される触媒は、既に知られており、その代表的な例がクロム酸化物である。
特許文献1では、クロロエタン化合物を原料とするHFC−125製造用触媒として、Cr−BaO−Al、Cr−MgO−Al、Cr−SrO−Al、Cr−CaO−Al、Cr−Fe、Cr−Al、Cr−MgOについて記述している。
ここで、Cr−Al触媒は、Cr(NO・9HOとAl(NO・9HOを共に水に溶解させ、これをアンモニア水中に入れて撹拌することにより、Cr(OH)とAl(OH)の沈殿物を得、この沈殿物を水洗・乾燥させた後、450℃で5時間焼成してCr−Alの粉末を得、この粉末をペレット(pellet)状に成形し、これをNとHFの混合ガスでフッ素化させて製造する。
【0004】
特許文献2では、Cr/Al、Cr/In、Cr/Ga、Cr/CoO、Cr/NiO、Cr/ZnO触媒について記述している。
ここで、Cr/Al触媒は、次の方法で製造される。
アンモニア水をCr(NO水溶液に加えてCr(OH)の沈殿物を得、これを濾過・乾燥させて得た固体状のCr(OH)を粉砕してCr(OH)粉末を得た後、これをAl(NO水溶液に入れて12時間放置した後乾燥させ、ここに少量の黒鉛を添加してペレット状に成形し、これをNガス中で2時間焼成し、N+HFの混合ガスでフッ素化させて製造する。
【0005】
すなわち、従来のCr−Alのような2成分系あるいは3成分系クロム酸化物触媒を製造する方法では、Cr(NOとAl(NOを共に水に溶解させてアンモニア水を用いて共沈させ、Cr(OH−Al(OH)の共沈物(coprecipitate)を焼成してCr−Al触媒を得るか(特許文献1参照)、あるいはCr(OH)粉末をAl(NO水溶液に含浸させた後乾燥させてCr(OH)/Al(OH)の組成物を得、これを焼成してCr/Al触媒を得る(特許文献2参照)。
【0006】
一方、クロム酸化物系触媒の活性は、触媒の結晶構造及びCr原子の原子価(Valence)と密接な関係にあるものと知られている。
特許文献2によれば、クロム酸化物系触媒上のクロムは、+3.5〜+5.0の原子価を有し、無定形状態(amorphous state)のものが触媒の活性点(active site)である。
また、Cr/Alフッ化触媒において、活性度はクロムの原子価と関連しており、アルミナは担体(supporter)機能をするものと知られている。
ところが、前記含浸法又は共沈法で製造された2成分系及び3成分系クロム触媒は、クロロエタンの転換反応で転換率とHFC-125への選択率が低くて工業生産工程への適用に適しないという問題がある。
【0007】
特に、PCEを原料としてHFC−125を製造する工程で転換率と選択率が低く、既存の触媒はフッ素化反応で十分な活性を示していない。
2成分系又は3成分系酸化物を用いて共沈法で製造されたクロム酸化物系触媒(特許文献1)がPCE(パークロロエチレン)を出発物質とする場合の転換率とHFC-125(ペンタフルオロエタン)への選択率は、表1のとおりである。
【0008】
【表1】

(注)HFC―125:ペンタフルオロエタン
HFC―124:テトラフルオロエタン
HFC―123:トリフルオロエタン
HFC―122:ジフルオロエタン
【0009】
一方、2成分系あるいは3成分系酸化物を用いて含浸法で製造されたクロム酸化物系触媒(特許文献2)がHCFC−123(ジクロロトリフルオエロエタン)を出発物質とする場合のHFC-125への選択率は、表2のとおりである。
【0010】
【表2】

(注)HFC―125 :ペンタフルオロエタン
HCFC―124:クロロテトラフルオロエタン
HCFC―123:1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン
HCFC―115:クロロペンタフルオロエタン
すなわち、出発物質がPCEの場合には、HFC−125に対する選択率が20%未満であり、出発物質がHCFC−123の場合にも、HFC−125選択率は70%を超えていない。
したがって、この分野では、クロロエタン化合物のフッ素化においてより高い転換率と特にHFC−125に対する選択率が高い触媒の開発が必要な実情にある。
【0011】
【特許文献1】特開平02−178237号公報
【特許文献2】米国特許第6,433,233号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、2成分系又は3成分系酸化物を用いて従来の共沈法又は含浸法で製造されたクロム酸化物系触媒が十分な活性を示さない理由が、クロムに混合された異種の金属成分やその組成比などが触媒の活性点の実現又は持続に役立たないか、あるいは適切に選択した金属成分であっても、製造方法及びフッ素化方法によってクロムの活性点が活性化されるか、あるいは焼結(sintering)などで容易に消滅できるという点を考慮して2成分系クロム酸化物を製造するとき、クロム酸化物と金属酸化物とが混合される前にクロム酸化物が無定形状態(amorphous state)を保つことが可能な温度範囲内でCr(OH)を熱処理してCrに形成させた後、これを選択された異種の金属酸化物と単に機械的に混合した後、フッ素化させることにより、酸化クロム系触媒の活性を高めることができることを確認し、本発明の完成に至った。
本発明の目的は、クロロエタン化合物を原料としてHFC−125を製造する方法において、高い転換率と選択率を示すフッ素化触媒とこの触媒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を解決するための本発明は、PCE又はHCFC−123のようなクロロエタン化合物をフッ素化してHFC−125を製造するのに有用なフッ素化触媒とこの触媒の製造方法を提供する。
本発明の触媒は、無定形であり、主成分のクロム酸化物にマグネシウム、鉄、モリブデン、バナジウム及びアルミニウムの中から選択された金属の酸化物を含有する酸化クロム系混合触媒である。
【0014】
本発明の触媒製造方法は、クロム水酸化物を加熱処理してクロム酸化物に転換させ、これをマグネシウム、鉄、モリブデン、バナジウム又はアルミニウムの酸化物と混合した後、フッ素化過程を経ることにより、クロム平均原子価3〜5価の無定形状態に保ち、比表面積10〜30m/gのクロム系混合触媒を製造する方法であり、この触媒は、PCE及びHCFC−123の高い転換率とHFC−125への選択性を向上させる効果をもたらした。触媒の製造の際に触媒のフッ素化工程の条件によって触媒活性が変化するので、最適条件のフッ素化処理が必須的である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の方法で製造されたフッ素化触媒は、クロロエタン化合物を原料として高収率でペンタフルオロエタンを製造することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の触媒製造方法について説明する。
まず、クロム硝酸塩(Cr(NO・9HO)を水に溶解させた水溶液にアンモニア水(NHOH)を加えて青灰色の水酸化クロム沈殿物を得、熱水を用いて、濾過された沈殿物を十分洗浄し乾燥させる。乾燥過程は、空気中で80〜150℃の温度にて行うことが好ましく、特に約100℃程度が適切である。乾燥時間は、24〜72時間であって、好ましくは72時間である。十分な洗浄と乾燥が行われていない状態で熱処理を行うと、内部に残存している硝酸塩とアンモニウム塩成分により過量のNOが発生し、一部は残存することもある。十分に乾燥した水酸化クロムは、オーブン又はヒーターに入れてゆっくり昇温させて300℃まで温度を上げた後、全2時間の熱処理を施す。この過程で約200℃に到達すると、多量の黄色NOガスが放出され、このガスはガス吸収塔に送って処理する。この際、触媒内部に残存する不純物(硝酸塩、アンモニウム塩、水分など)を除去すると同時に、クロム平均原子価3〜5価のクロム酸化物を作る。特に、残存不純物が十分除去されなければ、触媒フッ素化過程でNOの発生により触媒の強度が弱化されるうえ、多くの副産物が生成されるので、不純物を徹底に除去しなければならない。熱処理済みの水酸化クロムを細かく粉砕し、同じ過程を経て作られた他の金属酸化物を0.5〜15%の重量比で添加した後、少量の水と混合してペレット状に成形する。ここで、少量の水の添加は、ペレットの凝集性と強度を高める重要な役割をする。ペレットは、直径約12mm、高さ12mmの円筒状構造を持つ。ペレット状に製造した触媒は乾燥させる。
【0017】
ペレット状に成形された触媒を反応器に入れて200℃の温度で2時間窒素ガスを通気させた後、温度を300℃に昇温し、次いで、窒素ガスを3時間通気させながら熱処理する。その後、温度を320℃に昇温し、窒素ガスとフッ素化水素ガスを同時に流して触媒のフッ素化反応を開始する。温度を漸次380℃まで昇温しながら窒素ガスを遮断し、純粋なフッ素化水素酸ガスを通気させて触媒を完全にフッ素化させる。温度と圧力が高いほど、フッ素化速度は速いが、あまり急激な温度変化は触媒の破損をもたらすので、ゆっくり温度を昇温することが好ましい。フッ素化触媒は10〜30m/g範囲の比表面積を持つ。
【0018】
本発明の方法によって製造された触媒を使用し、PCEとHCFC−123を出発物質としてHFC−125を合成すると、出発物質の転換率とHFC−125の選択率は、反応物のモル比、反応温度、接触時間、反応圧力及びフッ素化処理方法によって様々に現れる。最適の反応温度は350〜400℃であり、HFとPCE/HCFC−123の最適モル比は8/1〜15/1であった。接触時間は2〜20秒がよく、5秒以上で最大の効率を示した。反応圧力は大気圧のときが最も良い結果を示した。HFC−125の選択率は、反応温度と接触時間を増加させると上昇する傾向を示した。これに対し、反応圧力が大気圧より高くなると、HFC−125への転換率は低くなる傾向を示した。
【0019】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
フッ素化触媒1〜5は図1の順序によって製造される。図1において、触媒1はクロム酸化物とマグネシウム酸化物からなる触媒であり、触媒2はクロム酸化物と鉄酸化物からなる触媒であり、触媒3はクロム酸化物とモリブデン酸化物からなる触媒であり、触媒4はクロム酸化物とバナジウム酸化物からなる触媒であり、触媒5はクロム酸化物とアルミニウム酸化物からなる触媒である。
【0021】
次に、クロム酸化物とマグネシウム酸化物からなる触媒の製造法について述べる。
クロム硝酸塩(Cr(NO・9HO)1kgを蒸留水に溶解させた水溶液に0.391kgのアンモニア水(NHOH)を滴下すると、水酸化クロム(Cr(OH))の青灰色沈殿物を得ることができる。この沈殿物を熱い蒸留水で十分洗浄した後、濾過し、約100℃で24時間乾燥させて固体状の水酸化クロムを製造する。こうして製造した水酸化クロムをボールミル機(ball mill)又は粉砕機(mortar)を用いて粉砕して粉末にして熱処理する。熱処理は、20℃の間隔で温度を300℃までゆっくり上昇させ、300℃で2時間を保持する。熱処理工程中で、水酸化クロム内に残存している硝酸塩によってNOが発生するが、このガスは吸収塔に送って処理する。熱処理が完了すると、粉砕器を用いて十分に粉砕する。前記の方法でマグネシウム硝酸塩[Mg(NO・6HO]を用いてそれぞれの水酸化物を製造した後、同一の方法で熱処理してマグネシウム酸化物(MgO)の粉末を得る。
重量比2%のマグネシウム酸化物の粉末を重量比98%のクロム酸化物と混合した後、それぞれの2つの酸化物が十分混ぜられる程度の水を添加して混合し、その後錠剤機を用いてペレット状に成形する。ペレットは、直径約12.5mm、高さ12mmの円筒状に成形して反応器に充填する前の約48時間、100℃で乾燥させる。内径1インチ、長さ500mmのシリンダ型反応器に触媒を約150g程度充填し、200℃で2時間、300℃で3時間窒素を通気させながら焼成する。その後、温度を320℃に昇温し、フッ素化水素酸と窒素ガスを同時に供給して触媒のフッ素化反応を始める。約30分間フッ素化水素酸ガスと窒素ガスとの混合物と反応させた後、窒素ガスを遮断して純粋なフッ素化水素酸ガスのみを通気せる。温度は段階的に380℃まで昇温し、持続的にフッ素化水素酸ガスを通過させて触媒を完全にフッ素化させる。フッ素化反応済みの後、窒素ガスを供給して未反応のフッ素化水素酸ガス及び不純物ガスを排出させる。こうして触媒1を製造し、製造された触媒をX線回折装置(x-ray diffractometr)で測定した結果、無定形であることが確認された。BET法による比表面積測定装置で測定した触媒の比表面積は10〜30m/gの間にあった。
【実施例2】
【0022】
<触媒2(クロム酸化物−鉄酸化物の触媒)の製造>
マグネシウム硝酸塩の代わりに鉄硝酸塩[Fe(NO・6HO]を使用する以外は、実施例1と同様の方法で触媒2を製造した。
【実施例3】
【0023】
<触媒3(クロム酸化物−モリブデン酸化物の触媒)の製造>
マグネシウム硝酸塩の代わりにモリブデンアンモニウム塩[(NHMo24]を使用する以外は、実施例1と同様の方法で触媒3を製造した。
【実施例4】
【0024】
<触媒4(クロム酸化物−バナジウム酸化物の触媒)の製造>
マグネシウム硝酸塩の代わりにバナジウムアンモニウム塩(NHVO)を使用する以外は、実施例1と同様の方法で触媒4を製造した。
【実施例5】
【0025】
<触媒5(クロム酸化物−アルミニウム酸化物の触媒)の製造>
マグネシウム硝酸塩の代わりにアルミニウム硝酸塩[Al(NO・9HO]を使用する以外は、実施例1と同様の方法で触媒5を製造した。
実施例2〜4で製造された触媒をX線回折装置とBET法で測定した結果、結晶構造は全て無定形であり、比表面積は全て10〜30m/gの範囲内にあった。
【0026】
(実験例)
<PCEのフッ素化反応>
実施例で得られた触媒1〜5を用いて次の反応条件下でHFによるPCEの気相フッ素化反応を行った。
(反応条件)
触媒量:150g
反応器:25.4mm(ID)、SUS316L
反応ガス:PCE(6.9g/min)、HF(300cm
接触時間:10秒
反応温度:350℃、300℃
反応圧力:大気圧
前記の条件下でPCEをフッ素化反応させた後、得たガスを反応器の外で水酸化カリウム水溶液に通過させ、その後ガスクロマトグラフを用いて反応生成物ガスを分析した。フッ素化反応温度350℃の場合は表3に、フッ素化反応温度300℃の場合は表4に反応結果をそれぞれ示した。
【0027】
【表3】

(注)HCFC−122;トリクロロジフルオロエタン
CFC−114;ジクロロテトラフルオロエタン
CFC−113;トリクロロトリフルオロエタン
【0028】
【表4】

(注)HCFC−113;クロロトリフルオロエタン
F−1111;フルオロトリクロロエタン(CFCl
【0029】
本発明の方法によって製造された触媒を用いてPCEを出発物質としてHFC−125を合成するとき、反応温度が350℃の場合にはPCEの転換率が94.9%以上であり、反応温度が300℃の場合にはPCEの転換率が80.1%以上であった。そして、HFC−125の選択率はそれぞれ61%、40.2%以上を示した。これは、本発明の触媒がPCEを出発物質としながら従来のHCFC−123を原料とするクロム酸化物系混合触媒と同様の選択率を示すものである。PCEを出発物質とする場合がHCFC−123を出発物質とする場合よりHFC−125への反応が非常に難しい点を考慮すると、本発明の触媒の活性が非常に高いことを認めることができる。
【0030】
本発明の触媒は、高い活性で純粋なクロム酸化物に重量比2%のMg、Fe、Mo、V、Alの酸化物のみを添加しても、反応活性及びHFC125への選択性が向上することが分かる。また、クロム酸化物に対する前記金属酸化物の混合量が0.5重量%程度の少量の場合にも、選択性は向上する。ところが、15%を超過しても、選択性の向上に変化は殆どなかった。よって、クロム酸化物に対する前記金属酸化物の混合量は0.5〜15重量%の範囲で決定されることが適当である。発明された触媒は、純粋クロム酸化物触媒より反応初期に一定の収率と選択性を示す誘導期(induction period)が同じ反応条件で一層短いことが特徴である。添加された金属酸化物の触媒活性の増加はMg>Fe>V>Mo>Alの順である。
【0031】
<触媒のフッ素化処理方法による触媒の活性度の試験>
一方、触媒のフッ素化処理方法による反応活性度の特性を調べるために、触媒2を用いてHFとHCFC−123のフッ素化気相反応を下記の反応条件で行った。
(反応条件)
使用触媒:触媒2
接触時間:5秒
反応器:25.4mm(ID)、SUS316L
反応ガス:HCFC−123(12.5g/min)、HF(590cm
反応温度:350℃
反応圧力:大気圧
【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

試験結果は、次の表7に記載した。
【0034】
【表7】

【0035】
触媒のフッ素化処理方法がクロム酸化物触媒の反応活性と選択性に大きく影響することが分かる。フッ素化過程Aの如く400℃以上の高温で長時間フッ素化処理過程を経た場合、クロム酸化物がCrの結晶化構造に変形されるが、これは触媒の活性及び選択性を大幅減少する結果をもたらす。これに対し、フッ素化過程B、C、Dのように400℃未満の温度で短時間フッ素化処理した触媒の活性がよく、380℃で60〜180分間程度のフッ素化過程を経た触媒は、無定形状態であり、PCE及びHCFC−123の転換率とHFC−125の選択性に優れることが分かる。本試験から分かるように、触媒の活性は、フッ素化過程時の処理温度だけでなく、処理温度だけでなく、処理時間にも影響される。すなわち、成形されたペレットをHFガスでフッ素化させる工程を380℃の温度で3時間以内の範囲で行うことが最も優れた触媒活性を示すことが分かる。
【0036】
次に、触媒2を用いて反応温度による製造された触媒の活性の影響を調べた。
(反応条件)
使用触媒:触媒2
接触時間:10秒
反応器の直径:25.4mm(ID)、SUS316L
反応ガス:PCE(6.9g/min)、HF(300cm
反応温度:300℃、330℃、350℃
反応圧力:大気圧
結果は次の表8に示した。
【0037】
【表8】

上記の結果より、反応温度が高くなるほど生産されるHFC−125への選択性とPCEの転換率が増加することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の触媒製造工程を示すフローシートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロエタン化合物を原料とするペンタフルオロエタン製造用酸化クロム系触媒の製造方法において、
水酸化クロム粉末を300℃以下で加熱処理して得た酸化クロム粉末85〜99.5重量%と、マグネシウム、鉄、モリブデン、バナジウム及びアルミニウムの水酸化物の中から選択される金属水酸化物を300℃以下で加熱処理して得た酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化モリブデン、酸化バナジウム及び酸化アルミニウムの中から選択される金属酸化物粉末0.5〜15重量%とを混合して成形したペレットを、窒素ガス中で200〜300℃で焼成した後、300〜320℃ではN+HFの混合ガスで、320〜380℃ではHFガスでフッ素化させて酸化クロム系触媒を製造する方法。
【請求項2】
クロロエタン化合物がペルクロロエタン又は1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタンであることを特徴とする、請求項1に記載の酸化クロム系触媒を製造する方法。
【請求項3】
金属水酸化物の加熱処理は、大気中でゆっくり昇温させて300℃以下の温度で2時間以内の範囲で行うことを特徴とする、請求項1に記載の酸化クロム系触媒を製造する方法。
【請求項4】
成形されたペレットをHFガスでフッ素化させる工程を380℃以下の温度で3時間以内の範囲で行うことを特徴とする、請求項1に記載の酸化クロム系触媒を製造する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法で製造されたペンタフルオロエタン製造用酸化クロム系触媒。

【図1】
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【公開番号】特開2007−83233(P2007−83233A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257278(P2006−257278)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(505139779)蔚山化學株式会社 (7)
【氏名又は名称原語表記】Ulsan Chemical Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】290 Maeam−dong, Nam−ku, Ulsan, Republic of Korea
【Fターム(参考)】