説明

ペンタメチレンジアミンの製造方法及びポリアミド樹脂の製造方法

【課題】植物由来で得られた粗ペンタメチレンジアミン等の粗ペンタメチレンジアミンから蒸留によってペンタメチレンジアミンを得た後の蒸留残渣中になお残留するペンタメチレンジアミンを回収して有効利用する。
【解決手段】粗ペンタメチレンジアミンを蒸留することによりペンタメチレンジアミンと蒸留残渣とに分離し、該蒸留残渣より、更にペンタメチレンジアミンを回収するペンタメチレンジアミンの製造方法。蒸留残渣より回収するペンタメチレンジアミンは、蒸留残渣に対し5重量%以上であることが好ましい。この方法で製造されたペンタメチレンジアミンとジカルボン酸とを単量体成分として重縮合反応するポリアミド樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンタメチレンジアミンの製造方法に関し、詳しくは、粗ペンタメチレンジアミンを蒸留することによりペンタメチレンジアミンを得た後の蒸留残渣からペンタメチレンジアミンを回収するペンタメチレンジアミンの製造方法に関する。
本発明はまた、得られたペンタメチレンジアミンを用いるポリアミド樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラスチック原料としては、その殆どがいわゆる化石原料由来のものが用いられている。再生利用する場合を除き、化石原料由来のプラスチックを廃棄する場合、燃焼等による処理は炭酸ガスの放出を招くことから近年問題となりつつある。そこで、地球温暖化防止及び循環型社会の形成に向けて、プラスチックの製造原料をバイオマス由来の原料に置き換えることが嘱望されている。このようなニーズは、フィルム、自動車部品、電気・電子部品、機械部品等の射出成形品、繊維、モノフィラメント等、多岐にわたる。
【0003】
このような背景の下、リジンから得られたペンタメチレンジアミン(以下、カダベリンと称する場合がある)を原料として用いるポリアミド56やポリアミド56/66等は植物由来ポリマーとしての期待が大きい。ポリアミド樹脂は、機械的強度、耐熱性、耐薬品性等に優れており、所謂エンジニアリングプラスチックスの1つとして多くの分野で使用されている。
【0004】
従来、ペンタメチレンジアミンの製造方法として、以下の報告(特許文献1〜特許文献5)が挙げられる。
【0005】
特許文献1には、リジン溶液のpHが酵素的脱炭酸反応に適したpH4.0〜pH8.0に維持されるように、炭素数4〜炭素数10のジカルボン酸を加えながら、リジンの酵素的脱炭酸反応を行うことにより、カダベリン・ジカルボン酸塩を生成させる方法が記載されている。
【0006】
特許文献2には、L−リジン・ジカルボン酸塩水溶液に、L−リジン脱炭酸酵素遺伝子を導入した大腸菌もしくはL−リジン脱炭酸酵素を細胞表面に局在化させた大腸菌を接触させ、ジカルボン酸によりpHを制御しながら行ったL−リジン発酵液を用い、L−リジン脱炭酸酵素を調製することによりカダベリン・ジカルボン酸塩を製造する方法が記載されている。
【0007】
特許文献3には、高濃度のL−リジン一塩酸塩に、N末端アミノ酸配列に6個のヒスチジンを付与したL−リジン脱炭酸酵素遺伝子を導入した大腸菌の細胞破砕液もしくはL−リジン脱炭酸酵素を細胞表面に局在化させた大腸菌を接触させることにより、pHを制御する必要がなく、カダベリンを高濃度、高反応収率、高生産速度で生成させ、この反応液をpH13以上にし、極性有機溶媒で抽出し、蒸留することによりカダベリンを製造する方法が記載されている。
【0008】
特許文献4には、リジン炭酸塩を基質として、二酸化炭素添加によるpH調整後にリジンの酵素的脱炭酸反応により生成したカダベリン炭酸塩にジカルボン酸塩を添加し、炭酸との塩交換反応後、単離工程を経てカダベリン・ジカルボン酸塩を製造する方法が記載されている。
【0009】
特許文献5には、ペンタメチレンジアミン炭酸塩を熱分解させて特定濃度のペンタメチレンジアミンを得、蒸留精製することにより、高品質のペンタメチレンジアミンを高収率で得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−006650号公報
【特許文献2】特開2004−208646号公報
【特許文献3】特開2004−000114号公報
【特許文献4】国際公開第2006/123778号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2010/002000号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、リジンの酵素的脱炭素反応(以下、LDC反応と称する場合がある。)から得られたペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩は、反応液から公知の方法を組み合わせることによって単離、生成することができる。例えば、ペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩の結晶は、濃縮した反応液を冷却することによりペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩を析出させ、その後、遠心分離等、通常の固液分離方法によって単離される。
しかし、晶析法では、高収率でペンタメチレンジアミン・ジカルボン酸塩を得ることは困難であるだけでなく、不純物の除去が完全に行われないために、これを原料として得られたポリアミドが着色するという問題があった。
【0012】
また、LDC反応により生成したペンタメチレンジアミンを反応液から採取する方法として、反応終了液に水酸化ナトリウム等のアルカリを添加し、液pHを12〜14に調整後、クロロホルム等の極性有機溶媒でペンタメチレンジアミンを抽出する方法が知られている。しかし、有機溶媒は有害性があるものが多く、特に、クロロホルムには急性毒性があるため、その取り扱いは好ましくない。また、抽出に有機溶媒を使用すると、有機溶媒を回収しない場合はコストに大きく影響し、一方で有機溶媒を回収する場合は、回収工程が必要となり、プロセスが複雑になるだけでなく、エネルギー的にも不利になるという問題がある。
【0013】
さらに、ペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液を40℃程度で減圧濃縮し、炭酸イオン等を二酸化炭素として放出することによりペンタメチレンジアミンを得る方法も考えられる。しかし、この方法では、ペンタメチレンジアミン炭酸塩から炭酸イオン等を分離するために長時間を要する場合がある。
【0014】
また、ペンタメチレンジアミン炭酸塩を熱分解した後、蒸留によりペンタメチレンジアミンを得る方法では、高品質のペンタメチレンジアミンが高収率で得られるものの、蒸留残渣にはペンタメチレンジアミンが含有され、この蒸留残渣中のペンタメチレンジアミンが回収されず、ペンタメチレンジアミンの収率低下の原因となる。
【0015】
特に、植物由来の粗ペンタメチレンジアミンを蒸留した場合には、蒸留残渣中のペンタメチンジアミン含有量が多い傾向がある。
その理由は、植物由来の粗ペンタメチレンジアミンは不純物が多く含まれる可能性があり、蒸留によりペンタメチレンジアミンと蒸留残渣との分離が進むにつれて、蒸留残渣に不純物が濃縮され粘調になり、蒸留を行うことが困難となり、結果として、蒸留残渣中に含まれるペンタメチレンジアミン量が多くなることにある。
また、上記蒸留残渣が粘調な状態のまま蒸留を継続すると、突沸等により精製したペンタメチレンジアミンに不純物が混入したり、例えば蒸留を蒸留塔等で行っていた場合には、該蒸留塔の塔底等に高粘度物質が堆積する等のトラブルの原因となるため、蒸留残渣中の少なからぬペンタメチレンジアミンは植物由来の不純物と共に廃棄処分されていた。
【0016】
このようなことから、蒸留残渣中になお残留するペンタメチレンジアミンを回収して有効に利用することは、資源の有効活用の観点からも嘱望されている。
【0017】
本発明は、植物由来で得られた粗ペンタメチレンジアミン等の粗ペンタメチレンジアミンから蒸留によってペンタメチレンジアミンを得た後の蒸留残渣から、ペンタメチレンジアミンを回収するペンタメチレンジアミンの製造方法を提供することを課題とする。
本発明はまた、回収されたペンタメチレンジアミンを用いるポリアミド樹脂の製造方法を提供することを課題とする。
尚、本発明における「粗ペンタメチレンジアミン」とは蒸留前のペンタメチレンジアミンを含有する組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、粗ペンタメチレンジアミンを蒸留することにより分離された蒸留残渣を活性炭や合成吸着樹脂等を用いて精製することにより、この蒸留残渣からペンタメチレンジアミンを効率的に回収することができることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成した。
【0019】
本発明によれば、下記請求項に係るペンタメチレンジアミンの製造方法とポリアミド樹脂の製造方法が提供される。
【0020】
請求項1に係る発明は、粗ペンタメチレンジアミンを蒸留することによりペンタメチレンジアミンと蒸留残渣とに分離し、該蒸留残渣より、更にペンタメチレンジアミンを回収することを特徴とするペンタメチレンジアミンの製造方法、である。
【0021】
請求項2に係る発明は、前記蒸留残渣より回収されたペンタメチレンジアミンが、前記蒸留残渣に対し5重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のペンタメチレンジアミンの製造方法、である。
【0022】
請求項3に係る発明は、前記粗ペンタメチレンジアミンが、リジン脱炭酸酵素、リジン脱炭酸酵素活性の向上した組み換え微生物、リジン脱炭酸酵素を産生する細胞もしくは当該細胞の処理物からなる群の少なくとも1つを使用して、リジンから産出されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のペンタメチレンジアミンの製造方法、である。
【0023】
請求項4に係る発明は、前記粗ペンタメチレンジアミンの蒸留及び/又は前記蒸留残渣からのペンタメチレンジアミンの回収に使用した設備を、水及びアルコール系溶媒からなる群より選ばれた少なくとも1種で洗浄することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のペンタメチレンジアミンの製造方法、である。
【0024】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたペンタメチレンジアミンとジカルボン酸とを単量体成分として重縮合反応することを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法、である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、粗ペンタメチレンジアミンから蒸留によってペンタメチレンジアミンを得た後の蒸留残渣から、ペンタメチレンジアミンを回収することにより、粗ペンタメチレンジアミンからペンタメチレンジアミンを高収率で回収することができ、回収したペンタメチレンジアミンを各種用途に有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】自動滴定装置による測定結果の一例を示すチャートである。
【図2】自動滴定装置による測定結果の一例を示すチャートである。
【図3】cadAのクローニングの手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0028】
なお、本発明において、「全ペンタメチレンジアミン」とは、「ペンタメチレンジアミンとペンタメチレンジアミン炭酸塩中のペンタメチレンジアミン成分の両方を含むペンタメチレンジアミン」を表す。また、通常「ペンタメチレンジアミン」と表記した場合は、「遊離のペンタメチレンジアミン」を表し、「全ペンタメチレンジアミン」とは区別して使用する。
【0029】
[ペンタメチレンジアミンの製造方法]
{ペンタメチレンジアミン}
本実施の形態で使用するペンタメチレンジアミンは、好ましくはリジンの酵素的脱炭素反応(LDC反応)により得られるものである。リジンのLDC反応は、リジン又はリジン塩と、リジン脱炭酸酵素、リジン脱炭酸酵素活性の向上した組み換え微生物、リジン脱炭酸酵素を産生する細胞もしくは当該細胞の処理物からなる群の少なくとも1つを使用して行われる。
【0030】
<リジンの酵素的脱炭酸反応>
まず、本実施の形態において蒸留に供するペンタメチレンジアミンを調製するためのリジンの酵素的脱炭酸反応について説明する。
本実施の形態において、リジンの酵素的脱炭酸反応は、例えば、リジンを水に溶解したリジン溶液に、同溶液のpHがリジンの酵素的脱炭酸反応(LDC反応)に適したpHに維持されるように酸を加えながら行われる。
【0031】
原料として使用するリジンは、通常遊離塩基(リジンベース、即ち、遊離リジン)であることが好ましい。また、リジン塩であってもよい。リジンは、L−リジン、D−リジンが挙げられる。通常入手の容易性からL−リジンが好ましい。また、リジンは、精製されたリジンであってもよく、リジンを含む発酵液であってもよい。
リジン溶液を調製する溶媒は、好適には水が使用される。LDC反応が行われる反応液のpHは、酸によって調節され、通常他のpH調節剤や緩衝剤は使用されない。尚、リジンを溶解する溶媒に、例えば酢酸ナトリウム緩衝液等を使用する場合、ペンタメチレンジアミン塩を形成させるという点から、リジン濃度は低濃度に抑えることが好ましい。
【0032】
遊離リジンを使用する場合、例えば水に溶解したリジン溶液に酸を加えながら、反応液のpHをLDC反応に適したpHとなるように調節する。具体的なpHは、通常4.0以上、好ましくは5.0以上であり、通常12.0以下、好ましくは9.0以下である。以下、このように、反応液のpHをLDC反応に適したpHに調節することを「中和」と称する場合がある。
【0033】
LDC反応の際、生産速度及び反応収率向上のため、ビタミンB6を添加することが好ましい。ビタミンB6としては、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、ピリドキサルリン酸等が挙げられる。中でもピリドキサルリン酸が好ましい。ビタミンB6の添加方法、添加時期は特に制限されず、LDC反応中に適宜添加すればよい。
【0034】
LDC反応は、上述したように中和されたリジン溶液にリジン脱炭酸酵素(LDC)を添加することによって行われる。LDCとしては、リジンに作用しペンタメチレンジアミンを生成させるものであれば特に制限はない。LDCとしては、精製酵素、LDCを産生する微生物、植物細胞又は動物細胞等の細胞が挙げられる。LDC又はLDCを産生する細胞は2種以上を併用してもよい。また、細胞をそのまま使用してもよく、LDCを含む細胞処理物を使用してもよい。細胞処理物としては、細胞破砕液やその分画物が挙げられる。
【0035】
LDCを産生する微生物としては、エシェリヒア・コリ(E.coli)等のエシェリヒア属細菌、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)等のコリネ型細菌、バチルス・サチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属細菌、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)等のセラチア属細菌等の細菌、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の真核細胞が挙げられる。これらの中では細菌が好ましく、E.coliが特に好ましい。
【0036】
前記の微生物は、LDCを産生する限り、野生株でもよく、変異株であってもよい。また、LDC活性が上昇するように改変された組換え株であってもよい。植物細胞又は動物細胞も、LDC活性が上昇するように改変された組換え細胞を使用することができる。詳細については、例えば、特開2008−189661号公報に記載されている。
【0037】
LDC反応は、リジン溶液にLDCを添加して反応を開始する。反応開始後は、反応の進行に伴い、リジンから遊離される二酸化炭素が反応液から放出されpHが上昇する。このため、反応液のpHがLDC反応に適したpHの範囲となるように、二酸化炭素や塩酸等の酸を反応液に添加する。酸は反応液中に連続的に添加してもよく、分割添加してもよい。また、二酸化炭素雰囲気下や密閉系にする等して、リジンから遊離される二酸化炭素をpH調整に使用してもよい。LDC反応の反応温度は特に制限されず、通常20℃以上、好ましくは30℃以上であり、通常60℃以下、好ましくは40℃以下である。
尚、原料のリジンは、反応開始時に反応液に全量添加してもよく、LDC反応の進行に応じ、分割して添加してもよい。
【0038】
LDC反応がバッチ式により行われる場合、反応液中に酸を容易に添加することができる。また、LDC、LDCを産生する細胞又はその処理物を固定化した担体を含む移動床カラムクロマトグラフィーにより反応を行うこともできる。その場合、反応系のpHが予め定めた範囲に維持されたまま反応が進行するように、リジン及び酸をカラムの適当な部位に注入する。
【0039】
また、酸の添加を行わず、LDC反応により放出される二酸化炭素の全量若しくは一部を中和のために使用しても良い。
【0040】
LDC反応は、上述したようにペンタメチレンジアミンの生成に伴って上昇するpHを、酸を使用して逐次中和することにより、良好に進行する。LDC反応により生成したペンタメチレンジアミンはペンタメチレンジアミン塩として反応液中に蓄積し、その水溶液として分離回収される。二酸化炭素を用いて中和を行った場合は、ペンタメチレンジアミン炭酸塩の水溶液が得られる。
尚、該二酸化炭素として、前記リジンから遊離された二酸化炭素を用いた場合は二酸化炭素の排出低減になり、好ましい。
【0041】
<不純物>
リジンのLDC反応により得られた粗ペンタメチレンジアミンは、通常3個以上の官能基を有する有機物やタンパク質等の高分子物質を含む不純物が含まれている。
ここで、3個以上の官能基を有する有機物とは、分子内に架橋ゲルの原因となり得る官能基を3個以上有する有機物が挙げられる。このような官能基としては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基、水酸基、ヒドラジド基、エポキシ基、メルカプト基、ニトロ基、アルコキシル基等が挙げられる。
3個以上の官能基を有する有機物としては、アミノ酸、オリゴ糖、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられる。アミノ酸の具体例としては、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、オルニチン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒスチジン等が挙げられる。中でもリジンが多く存在する。尚、これらのアミノ酸はL体でもD体でも構わない。
このような不純物が残存した状態で、粗ペンタメチレンジアミンの蒸留操作を行うと、例えば、蒸留を蒸留塔等で行った場合には、該蒸留塔の塔底等に不純物が原因と考えられる高粘度物質が堆積する等のトラブル原因となる。
また、高分子不純物としては、例えば、タンパク質、核酸、多糖類等が含まれる。このような高分子不純物が粗ペンタメチレンジアミン中に含まれた状態で加熱処理を行うと、加熱処理装置の伝熱効率低下等の原因になり得る。
【0042】
このようなことから、粗ペンタメチレンジアミン中の3個以上の官能基を有する有機物やタンパク質等の高分子物質を含む不純物は、蒸留工程に先立ち、予めその含有量を低減させておくことが好ましい。
【0043】
(3個以上の官能基を有する有機物の低減方法)
粗ペンタメチレンジアミン中に存在する3個以上の官能基を有する有機物のなかでも、リジン等のアミノ酸は、リジン脱炭酸酵素(LDC)の使用に伴う微生物(菌体)に由来する。このため、リジンのLDC反応時に使用する菌体の量を所定範囲内に抑えることにより、得られる粗ペンタメチレンジアミン中のリジン等のアミノ酸量を低減することができる。さらにリジンは、LDC反応の転化率が約100%になるまでLDC反応を行うことにより、粗ペンタメチレンジアミン中のリジン濃度を検出限界以下にすることが可能である。
【0044】
(高分子不純物の除去処理)
粗ペンタメチレンジアミン中の高分子不純物を除去する方法は、通常該粗ペンタメチレンジアミン中に添加した吸着剤に高分子不純物を吸着させる方法、粗ペンタメチレンジアミンを予め定めたサイズの膜により濾過する方法等が挙げられる。中でも簡便性と除去効果の観点から、粗ペンタメチレンジアミンを限外濾過膜(UF膜)を用いて処理する方法が好ましい。
【0045】
本実施の形態では、粗ペンタメチレンジアミンを、UF膜を用いて処理することにより、粗ペンタメチレンジアミン中に含まれる分子量12,000以上、好ましくは分子量5,000以上、特に好ましくは分子量1,000以上の高分子不純物を除去する。
用いるUF膜の材質としては、例えば、酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、アクリロニトリル共重合体、ポリアミド12等が挙げられる。
中でもアクリロニトリル共重合体が好ましい。
UF膜の膜形状は、平膜、中空糸、板、管、スパイラル巻き等が挙げられる。中でも中空糸膜が好ましい。また、種々のUF膜モジュールが各社から販売されており、操作のしやすさからモジュール化したものが好ましい。
【0046】
(他の不純物除去処理)
本発明では、粗ペンタメチレンジアミンから蒸留によりペンタメチレンジアミンを分離した後の、不純物が高濃縮された蒸留残渣から更にペンタメチレンジアミンを回収するため、この蒸留残渣中の不純物量を低減するために、上記の処理とは別に、粗ペンタメチレンジアミン中に残留する不純物を蒸留工程に先立ち除去しておいてもよい。
この場合の不純物の除去方法としては特に制限はないが、後述の蒸留残渣からのペンタメチレンジアミンの回収方法における活性炭法、合成吸着樹脂法、イオン交換樹脂法、溶媒抽出法、蒸留法等の各種の処理操作が挙げられる。
【0047】
{熱分解工程}
不純物を除去した粗ペンタメチレンジアミンは、そのまま蒸留工程に供しても、例えば、粗ペンタメチレンジアミン中のペンタメチレンジアミン塩であるペンタメチレンジアミン炭酸塩は、蒸留工程の加熱条件下でペンタメチレンジアミンと二酸化炭素とに熱分解されるため、生成したペンタメチレンジアミンを回収することができるが、好ましくは、蒸留工程に先立ち、ペンタメチレンジアミン塩を分解してペンタメチレンジアミン塩の少ない粗ペンタメチレンジアミンを得る熱分解工程を行う。
【0048】
以下に、この熱分解工程を粗ペンタメチレンジアミンとしてのペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液の熱分解を例示して説明する。
この熱分解工程では、リジンのLDC反応等により得られたペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液を加熱し、予め定めた温度及び圧力により粗ペンタメチレンジアミンと二酸化炭素とに熱分解する。
【0049】
前述したように、リジンのLDC反応により得られたペンタメチレンジアミン炭酸塩は、通常水溶液として得られる。この場合、加熱処理により蒸発する水の蒸発潜熱のため、そのまま加熱した場合、水溶液の温度が上昇しにくいために、ペンタメチレンジアミン炭酸塩の熱分解が進行せずに、脱水後にペンタメチレンジアミン炭酸塩が析出する可能性がある。
【0050】
このため、本実施の形態では、リジンのLDC反応等により得られたペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液を、必要に応じて濃縮操作や還流操作を施し、予め定めたペンタメチレン炭酸塩水溶液濃度に調製した後、熱分解工程によりペンタメチレンジアミン炭酸塩を粗ペンタメチレンジアミンと二酸化炭素に分解することが好ましい。
熱分解に供するペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液中のペンタメチレンジアミン炭酸塩濃度は、通常10重量%〜70重量%、好ましくは20重量%〜60重量%であるので、リジンのLDC反応後、得られたペンタメチレンジアミン炭酸塩の濃度がこの範囲より低い場合は、必要に応じて濃縮操作や還流操作により濃度調整を行うことが好ましい。
【0051】
熱分解工程では、留出液を系外へ除去しながら、ペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液をペンタメチレンジアミンと二酸化炭素に分解する。
【0052】
熱分解工程における圧力は、通常0.1MPa以上、好ましくは0.2MPa以上、さらに好ましくは0.25MPa以上、特に好ましくは0.3MPa以上である。また、通常1.3MPa以下、好ましくは1.1MPa以下、さらに好ましくは1.0MPa以下、特に好ましくは0.9MPa以下である。
熱分解工程における圧力が過度に低いと熱分解中にペンタメチレンジアミンと、ペンタメチレンジアミン炭酸塩が分解して生成した二酸化炭素が留出液中に含有されやすくなり、両者が反応してペンタメチレンジアミン炭酸塩を生成し、生成したペンタメチレンジアミン炭酸塩が析出する可能性がある。また、圧力が過度に高いと熱分解速度が遅くなるため好ましくない。なお、本発明における圧力とは絶対圧力である。
【0053】
また、熱分解温度の最高温度は、通常110℃以上、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上である。また、通常270℃以下、好ましくは260℃以下、より好ましくは250℃以下、特に好ましくは210℃以下ある。
前記最高温度が過度に低いと、ペンタメチレンジアミン炭酸塩の分解の進行が遅くなり、その後に行われる蒸留操作による収率が低下したり、ペンタメチレンジアミン炭酸塩の析出が起こる傾向がある。また、前記最高温度が過度に高いと、ペンタメチレンジアミンそのものが分解し、別の化合物に変化する可能性がある。
【0054】
ペンタメチレンジアミン炭酸塩の熱分解のための加熱時間は、特に限定されないが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上である。
なお、熱分解工程においては、ペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液に水を添加しながら熱分解を行うことも好ましい。とりわけ、ペンタメチレンジアミン炭酸塩の分解率が高い段階で、水添加を行うことが更に好ましい。添加する水の形態は、スチーム、温水、冷水等のいずれであっても良い。
【0055】
また、熱分解工程では、ペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液にガスを吹き込ながらペンタメチレンジアミン炭酸塩の分解を行ってもよい。この場合のガスの種類としては不活性ガスが好ましく、通常窒素やアルゴンが好ましく使用される。ガスを吹き込むことにより二酸化炭素の分圧が低下し、より分解が進行しやすくなる。
【0056】
熱分解工程において得られる粗ペンタメチレンジアミン中には、ペンタメチレンジアミンの他、ペンタメチレンジアミン炭酸塩、水、更にはリジン由来の不純物、酵素的脱炭酸反応で生成した不純物等が含まれている。使用するリジンの種類には、精製された医薬グレードのリジンや、グルコースの醗酵により得られたリジン水溶液があり、含まれる不純物量が異なる。そのため、使用するリジンの種類により熱分解で得られる粗ペンタメチレンジアミン中に含まれる不純物量が異なり、粗ペンタメチレンジアミン中の全ペンタメチレンジアミン濃度は通常10重量%以上であるが、通常99重量%以下であり、リジンの種類によっては不純物量が多いため、95重量%以下の場合もある。
【0057】
{蒸留工程}
次に、本発明に係る蒸留工程について説明する。
蒸留工程では、好ましくは前述の不純物除去処理、更に必要に応じて上述の熱分解工程を経て得られた粗ペンタメチレンジアミン(ペンタメチレンジアミンと不純物を含む)を蒸留することにより、粗ペンタメチレンジアミンに含まれるペンタメチレンジアミンを分離回収する。
【0058】
蒸留の際、蒸留温度は、通常40℃〜300℃、好ましくは50℃〜200℃、より好ましくは60℃〜180℃、さらに好ましくは70℃〜150℃、特に好ましくは70℃〜120℃である。また、蒸留圧力は、通常0.2kPa〜1.2MPa、好ましくは0.4kPa〜0.8MPa、さらに好ましくは1.0kPa〜0.4MPaである。
【0059】
また、蒸留で得られる精製ペンタメチレンジアミンの重量は、LDC反応で使用するリジンの種類によるが、バッチ式の場合は粗ペンタメチレンジアミンの重量に対して、連続式の場合は単位時間当たりに蒸留装置に供給される粗ペンタメチレンジアミンの重量に対して、通常99重量%以下、好ましくは97重量%以下、さらに好ましくは95重量%以下である。また通常40重量%以上、好ましくは45重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上である。蒸留による精製ペンタメチレンジアミンの回収量が少な過ぎると収率の低下につながるが、過度に多いと、突沸等により精製したペンタメチレンジアミンに不純物が混入したり、例えば、蒸留を蒸留塔等で行った場合には、該蒸留塔の塔底等に高粘度物質が堆積したりして、トラブルを招く原因となる。そのため、少なからぬペンタメチレンジアミンは蒸留残渣として塔底に残る。
【0060】
蒸留残渣のうちペンタメチレンジアミン以外の物質としては、LDC反応で使用するリジンの種類によるが、リジン生成の原料である糖類に含まれる不純物、反応後に残存する糖類、リジン生成の際に副生する他のアミノ酸類、糖とアミノ酸が反応したメラノイジン等の赤褐色物質、LDC反応工程で残存したリジン等が挙げられる。
発酵により得られたリジンを使用してLDC反応によりペンタメチレンジアミンを生成した場合、上記物質が大量に不純物として混在する。そのため、蒸留残渣として塔底に残るペンタメチレンジアミン量が多くなり、収率低下の原因となる。
【0061】
{蒸留残渣からのペンタメチレンジアミンの回収}
次に、上述の蒸留残渣からのペンタメチレンジアミンの回収方法について説明する。
この回収方法は、蒸留残渣からペンタメチレンジアミンが回収できれば特に制限されないが、蒸留残渣からのペンタメチレンジアミンの回収率は前記蒸留残渣に対して通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上、特に好ましくは25重量%以上である。この回収率が少な過ぎるとこのような回収工程を設けることの効果を十分に得られない。ただし、この回収率を過度に高くすることは、技術上困難な場合が多く、通常95重量%以下である。
【0062】
具体的な回収方法としては、活性炭法、合成吸着樹脂法、イオン交換樹脂法、溶媒抽出法、蒸留法などが挙げられる。
【0063】
活性炭法では、必要に応じて蒸留残渣を水等で希釈し、蒸留残渣液あるいは希釈液を、活性炭を充填した塔に通して、不純物を活性炭に吸着させる。活性炭層通液後の液は不純物量が低減されたペンタメチレンジアミン水溶液であり、このペンタメチレンジアミン水溶液から蒸留等の通常の分離技術を用いてペンタメチレンジアミンを単離する。
不純物が吸着した活性炭は、適宜、該不純物を加熱分解し活性炭から除去したり、溶媒に溶解し活性炭から除去し、活性炭を再生、再利用することが好ましい。
【0064】
合成吸着樹脂法では、必要に応じて蒸留残渣を水等で希釈し、蒸留残渣液あるいは希釈液を所定のpHに調整し、合成吸着樹脂を充填した塔に通して、不純物を合成吸着樹脂に吸着させる。合成吸着樹脂層通液後の液は不純物量が低減されたペンタメチレンジアミン水溶液であり、このペンタメチレンジアミン水溶液から蒸留等の通常の分離技術を用いてペンタメチレンジアミンを単離する。
不純物が吸着した合成吸着樹脂は、適宜、該不純物を分解し合成吸着樹脂から除去し、合成吸着樹脂を再生、再利用することが好ましい。
【0065】
イオン交換樹脂法では、必要に応じて蒸留残渣を水等で希釈し、蒸留残渣液あるいは希釈液をカチオン交換樹脂層に通して、ペンタメチレンジアミンをカチオン交換樹脂に吸着させる。必要に応じてカチオン交換樹脂層に水を通して水洗浄を行い、その後、適切な濃度のアンモニア水等を通して吸着されているペンタメチレンジアミンを溶離脱着させる。得られた溶離液には、ペンタメチレンジアミンと共に、アンモニア等が含まれるため、蒸留等の通常の分離技術を用いてペンタメチレンジアミンを単離する。
不純物が吸着したイオン交換樹脂は、適宜、該不純物をイオン交換樹脂から除去し、イオン交換樹脂を再生、再利用することが好ましい。具体的には、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム水溶液を、イオン交換樹脂を充填した塔に通液して再生する方法がある。
【0066】
溶媒抽出法では、必要に応じて蒸留残渣を水等で希釈し、蒸留残渣液あるいは希釈液にクロロホルム等の溶媒を適量加え、蒸留残渣中のペンタメチレンジアミンを溶媒に抽出する。溶媒相を分離した後、ペンタメチレンジアミンを含む溶媒相を蒸留等の通常の分離技術を用いてペンタメチレンジアミンを単離する。
【0067】
蒸留法では、水を添加しながらペンタメチレンジアミンを蒸留することで水と共にペンタメチレンジアミンを回収する。水の添加がない場合は、蒸留残渣の粘度が上昇、もしくは固化してしまい閉塞等の原因となるが、水を添加しながら蒸留することでこれらの問題を解決することができる。この方法により得られたペンタメチレンジアミンは希薄な水溶液であるため、再度蒸留を行いペンタメチレンジアミンと水を分離する必要がある。
【0068】
また、押出機のような高トルク、高真空に対応できる蒸発装置を用いて、ペンタメチレンジアミンを直接的に蒸留して回収する方法でもよい。この場合、高濃度の不純物を含む蒸留残渣中からペンタメチレンジアミンを回収するため、高真空、高温度が必要となる。また、蒸留に伴いさらに不純物濃度が高くなり、残存する不純物の粘度が高まるが、高トルクで押し出すため、容易に蒸留が可能となる。この方法により回収したペンタメチレンジアミン中には、高真空、高温度で蒸留するため、ペンタメチレンジアミン以外の不純物が含まれる場合もあるが、その場合は蒸留等の通常の分離技術を用いてペンタメチレンジアミンを単離する。
【0069】
工業的には、上記の回収方法により回収されたペンタメチレンジアミンは前述の粗ペンタメチレンジアミンの蒸留工程に戻して蒸留することが望ましい。もしくは、LDC反応工程に戻してもよい。
また、上記の回収方法を行わずに蒸留残渣を前述の粗ペンタメチレンジアミンの蒸留工程、もしくはLDC反応工程に戻してもよく、この態様も蒸留残渣からペンタメチレンジアミンを回収する本発明のペンタメチレンジアミンの製造方法に含まれる。
【0070】
{蒸留残渣からのリジンの回収方法}
本発明における粗ペンタメチレンジアミンにはリジン成分を含有している可能性があり、該リジン成分は蒸留残渣中にも含まれる場合がある。ついで、前記蒸留残渣からのリジンの回収方法について説明する。
この回収方法は、回収されたリジンからLDC反応工程を介してペンタメチレンジアミンを生成することができる方法であれば、特に制限されない。蒸留残渣からのリジンの回収率は蒸留残渣中のリジン成分を100重量%として、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上、特に好ましくは25重量%以上である。この回収率が少な過ぎるとこのような回収工程を設けることの効果を十分に得ることができない。ただし、この回収率を過度に高くすることは、技術上困難な場合が多く、通常95重量%以下である。
【0071】
前記リジン成分は、遊離のリジンと、ペプチド結合でつながったリジン(以下「ポリリジン様物質」と記載する。)とを含む。遊離のリジンはLDC反応工程での原料であり、LDC反応後に残存した該遊離のリジンが蒸留残渣中に残存したものである。ポリリジン様物質はLDC反応工程後の熱分解工程又は蒸留工程等にて、遊離のリジンが加熱、もしくは減圧下で加熱処理されることにより生成したものである。
【0072】
LDC反応では、遊離のリジンを原料としてペンタメチレンジアミンを生成するが、ポリリジン様物質はLDC反応によりペンタメチレンジアミンを生成することは難しく、通常遊離のリジンに分解する必要がある。そのため蒸留残渣、もしくは蒸留残渣からペンタメチレンジアミンを回収した後の液あるいは固形分からリジンを回収する場合は、これらポリリジン様物質を遊離のリジンに分解する工程が必要である。
【0073】
ポリリジン様物質を遊離のリジンに分解する方法としては、ポリリジン様物質を遊離のリジンに分解できる方法であれば特に制限されないが、通常、塩酸等の酸や水酸化ナトリウム等の塩基による分解、トリプシン等の酵素による分解、熱水による分解、イオン交換樹脂による処理等が挙げられる。その中でもコストや操作性の面からは酵素での分解が好ましい。
【0074】
酵素によりポリリジン様物質を遊離のリジンに分解する場合、蒸留残渣やペンタメチレンジアミンを回収した後の液あるいは固形分に含まれるポリリジン様物質をそのまま酵素で分解してもよいが、通常、蒸留残渣は塩基性であるため、酵素による分解活性が低くなる場合がある。その場合、例えばリジンからペンタメチレンジアミン炭酸塩を生成しペンタメチレンジアミン炭酸塩を分解、蒸留してペンタメチレンジアミンを製造する方法においては、蒸留残渣等を炭酸で中和した後に、酵素により、前記蒸留残渣等に含まれるポリリジン様物質を分解する方法が好ましい。炭酸で中和することにより、ポリリジン様物質の分解後の遊離リジンから、LDC反応工程にてペンタメチレンジアミン炭酸塩が生成し、ペンタメチレンジアミン炭酸塩を分解、蒸留することでペンタメチレンジアミンを製造することができる。
【0075】
{使用した設備の洗浄方法}
植物由来の粗ペンタメチレンジアミンから精製ペンタメチレンジアミンを蒸留した後の残渣を、塔底から抜き出した後の設備や、上述の蒸留残渣からペンタメチレンジアミンの回収に使用した設備の洗浄方法について説明する。
いずれの設備にも植物由来の不純物が付着するが、これらの不純物は温水やアルコール系溶媒に可溶であるため、洗浄の際には、温水、沸水、蒸気、アルコール系溶媒を使用することが好ましい。また、温水にて洗浄後、洗浄液を抜き出し、さらにアルコール系溶媒にて洗浄する等、これらを複数使用して洗浄しても良い。
ここで、洗浄用のアルコール系溶媒としては、エタノール等の炭素数1〜6のアルコールの1種又は2種以上を用いることができる。
また、温水の温度は60℃以上、特に80℃以上であることが好ましい。
【0076】
[ポリアミド樹脂の製造方法]
{製造方法}
本発明のポリアミド樹脂の製造方法は、本発明のペンタメチレンジアミンの製造方法により得られたペンタメチレンジアミンとジカルボン酸とを単量体成分とする重縮合反応によりポリアミド樹脂を製造する方法である。
【0077】
<ジカルボン酸>
ペンタメチレンジアミンとの重縮合反応に用いる、単量体成分としてのジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのジカルボン酸の中でも、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸が特に好ましい。また、ジカルボン酸としてアジピン酸を用いる場合、ジカルボン酸中のアジピン酸の濃度は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは100重量%である。
【0078】
<他の単量体成分>
さらに、本発明により得られる効果を損なわない程度において、他の単量体成分を用いることができる。このような他の単量体成分としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等のアミノ酸;ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタム;エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン;キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。これらの単量体成分は2種以上を併用しても良い。
【0079】
<重縮合反応方法>
本実施の形態において、ペンタメチレンジアミンとジカルボン酸との重縮合反応方法は特に限定されず、従来公知の方法から適宜選択することができる。また、重縮合触媒は、従来公知のものの中から適宜選択して使用することができ、特に限定されない。一般的なポリアミド樹脂の製造方法としては、例えば、「ポリアミド樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社:福本修編、昭和63年1月30日初版)等に開示されている。
【0080】
重縮合反応方法の一例としては、例えば、ペンタメチレンジアミン及びジカルボン酸を含む水溶液を高温高圧下で、脱水反応を進行させる加熱重縮合法が挙げられる。ここで、加熱重縮合法において、重縮合反応の最高温度は通常200℃以上、好ましくは220℃以上で、通常300℃以下である。重縮合方式には、特に制限は無く、バッチ式又は連続方式が採用できる。
【0081】
なお、加熱重縮合法により得られたポリアミド樹脂を、例えば、真空中又は不活性ガス中で100℃以上、融点以下の温度で加熱することにより、ポリアミド樹脂の分子量を高くすることができる(固相重合)。
【0082】
また、ペンタメチレンジアミン及びジカルボン酸を高温高圧下で重縮合して得られた低次縮合物(オリゴマー)を高分子量化する方法、ペンタメチレンジアミンを溶解した水溶液と、ジカルボン酸塩やジカルボン酸ジハライドを水性溶媒又は有機溶媒に溶解させた溶液とを接触させ、これらの界面で重縮合反応させる界面重縮合法等を採用することもできる。
【0083】
なお、本実施の形態では、重縮合反応に先立ち、ペンタメチレンジアミン及びジカルボン酸を含む水溶液の濃縮工程を組み入れても良い。濃縮工程を組み入れることにより、前記重縮合反応時間の短縮を図ることができる。濃縮工程では、ペンタメチレンジアミンとジカルボン酸の塩が析出しないように通常140℃〜160℃、好ましくは加圧下で、ペンタメチレンジアミンとジカルボン酸の塩の濃度が70重量%〜90重量%になるまで濃縮する。
【0084】
本実施の形態において、ペンタメチレンジアミン及びジカルボン酸の重縮合により得られるポリアミド樹脂の分子量は特に限定されず、目的に応じて適宜選択される。実用性の観点から、通常ポリアミド樹脂の25℃における98%硫酸溶液(ポリアミド樹脂濃度:0.01g/mL)の相対粘度の下限が、通常1.5、好ましくは1.8、特に好ましくは2.2であり、上限は、通常8.0、好ましくは5.5、特に好ましくは3.5である。相対粘度が過度に小さいと実用的強度が得られない傾向がある。相対粘度が過度に大きいと、ポリアミド樹脂の流動性が低下し、成形加工性が損なわれる傾向がある。
【0085】
{ポリアミド樹脂の添加剤}
本実施の形態が適用されるポリアミド樹脂には、必要に応じて、各種の添加剤が配合される。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、離型剤、滑剤、顔料、染料、結晶核剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、他の重縮合体等が挙げられる。
【0086】
具体的には、酸化防止剤又は熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物、ホスファイト系化合物及びこれらの置換体等が挙げられる。耐候剤としては、レゾルシノール系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。離型剤又は滑剤としては、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、ビス尿素、ポリエチレンワックス等が挙げられる。顔料としては、硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等が挙げられる。染料としては、ニグロシン、アニリンブラック等が挙げられる。結晶核剤としては、タルク、シリカ、カオリン、クレー等が挙げられる。可塑剤としては、p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。
【0087】
帯電防止剤としては、アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等の非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等が挙げられる。難燃剤としては、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等が挙げられる。
【0088】
充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、硫化亜鉛、亜鉛、鉛、ニッケル、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス、ベントナイト、モンモリロナイト、合成雲母等の粒子状、針状、板状充填材が挙げられる。
【0089】
他の重合体としては、他のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン等が挙げられる。
【0090】
これらは、ポリアミド樹脂を製造する工程において、添加量、添加工程等が適宜選択され、添加すればよい。
【0091】
また、本実施の形態において、ポリアミド樹脂の重縮合から成形までの任意の段階で、ポリアミド樹脂に上記の添加剤を配合することができる。中でも、ポリアミド樹脂と添加剤とを押出機中に投入し、これらを溶融混練することにより、ポリアミド樹脂組成物を調製することが好ましい。
【0092】
{ポリアミド樹脂の用途}
本実施の形態のポリアミド樹脂は、射出成形、フィルム成形、溶融紡糸、ブロー成形、真空成形等の任意の成形方法により、所望の形状に成形することができる。成形品としては、例えば、射出成形品、フィルム、シート、フィラメント、テーパードフィラメント、繊維等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂は、接着剤、塗料等にも使用することができる。
【0093】
さらに、本実施の形態のポリアミド樹脂の具体的な用途例としては、自動車・車両関連部品として、例えば、インテークマニホールド、ヒンジ付きクリップ(ヒンジ付き成形品)、結束バンド、レゾネーター、エアークリーナー、エンジンカバー、ロッカーカバー、シリンダーヘッドカバー、タイミングベルトカバー、ガソリンタンク、ガソリンサブタンク、ラジエータータンク、インタークーラータンク、オイルリザーバータンク、オイルパン、電動パワステギヤ、オイルストレーナー、キャニスター、エンジンマウント、ジャンクションブロック、リレーブロック、コネクタ、コルゲートチューブ、プロテクター等の自動車用アンダーフード部品;ドアハンドル、フェンダー、フードバルジ、ルーフレールレグ、ドアミラーステー、バンパー、スポイラー、ホイールカバー等の自動車用外装部品;カップホルダー、コンソールボックス、アクセルペダル、クラッチペダル、シフトレバー台座、シフトレバーノブ等の自動車用内装部品が挙げられる。
【0094】
また、本実施の形態のポリアミド樹脂は、釣り糸、漁網等の漁業関連資材、スイッチ類、超小型スライドスイッチ、DIPスイッチ、スイッチのハウジング、ランプソケット、結束バンド、コネクタ、コネクタのハウジング、コネクタのシェル、ICソケット類、コイルボビン、ボビンカバー、リレー、リレーボックス、コンデンサーケース、モーターの内部部品、小型モーターケース、ギヤ・カム、ダンシングプーリー、スペーサー、インシュレーター、キャスター、端子台、電動工具のハウジング、スターターの絶縁部分、ヒューズボックス、ターミナルのハウジング、ベアリングリテーナー、スピーカー振動板、耐熱容器、電子レンジ部品、炊飯器部品、プリンタリボンガイド等に代表される電気・電子関連部品、家庭・事務電気製品部品、コンピューター関連部品、ファクシミリ・複写機関連部品、機械関連部品等各種用途に使用することができる。
【実施例】
【0095】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例において使用する試料等の物性測定ないし評価方法、試料の調製方法は下記の通りである。
【0096】
(1)ペンタメチレンジアミン濃度の測定方法
各試料中の全ペンタメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン炭酸塩の各濃度は、自動滴定装置(三菱化学株式会社製GT−100)を使用し、滴定により測定した。
測定に際し、試料中の全ペンタメチレンジアミンの量が0.2g〜1.0gになるように試料を測りとり、脱塩水で希釈した後、1mol/L HCl水溶液(キシダ化学株式会社製)にて滴定を行った。
測定結果に基づき、以下の計算方法によりペンタメチレンジアミン濃度を求めた。
【0097】
滴定測定の結果、当量点が3点存在する場合(図1参照)、この当量点は表1に示したイオンの中和、塩交換による当量点である。2番目の当量点でのHClの滴定量をxmL、3番目の当量点でのHClの滴定量をymLとすると、それぞれのイオン濃度は(式1)〜(式3)のように表される。なお、ペンタメチレンジアミンの分子量を102.18、ペンタメチレンジアミン炭酸塩の分子量を164.21、試料の重量をag、1mol/L HCl水溶液のファクターをfとする。ここで、HClは和光純薬工業株式会社製容量分析用試薬を用いた。又はクターfは、試薬に記載された補正値であって、試薬調製時の重量から算出した規定度に対する逆滴定等により算出した真の規定度の比である。
【0098】
全ペンタメチレンジアミン濃度(重量%)
{y÷1000×f}÷2×102.18÷a×100 (式1)
ペンタメチレンジアミン濃度(重量%)
[{x−(y−x)}÷1000×f]÷2×102.18÷a×100 (式2)
ペンタメチレンジアミン炭酸塩濃度(重量%):
{(y−x)÷1000×f}×164.21÷a×100 (式3)
【0099】
【表1】

【0100】
滴定測定の結果、当量点が1点である場合(図2参照)、この当量点はペンタメチレンジアミンによるものであり、試料中に炭酸塩は含まれていない。当量点におけるHClの滴定量をzmLとすると、ペンタメチレンジアミン濃度は(式4)のように表される。なお、ペンタメチレンジアミンの分子量を102.18、試料の重量をag、1mol/L HClのファクターをfとした。
全ペンタメチレンジアミン濃度(重量%):
{z÷1000×f}÷2×102.18÷a×100 (式4)
【0101】
(2)蒸留残渣のペンタメチレンジアミン濃度の測定方法
イオンクロマトグラフィーを使用し、1〜20mg/Lの濃度範囲の検量線に基づいてペンタメチレンジアミン濃度を求めた。
イオンクロマトグラフィーの条件は下記表2の通りである。
【0102】
【表2】

【0103】
(3)吸光度測定
島津製作所製分光光度計UV−1600を使用して波長475nmで吸光度測定を行った。測定試料は0.5N酢酸水溶液で10倍に希釈して測定を行った。その際、脱塩水を対照として使用した。吸光度は試料中に含まれている不純物量の指標となる。吸光度が高いほど不純物量は多く、吸光度が0の場合は不純物がほとんどないことを表す。
【0104】
(4)ポリアミド樹脂の相対粘度(ηrel)の測定方法
ペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液から回収したペンタメチレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応により得られたポリアミド樹脂の試料を98重量%濃硫酸に溶解し、濃度0.01g/mLの試料溶液を調製した。次に、オストワルド式粘度計を使用し、25℃における試料溶液の落下時間tと濃硫酸の落下時間tとをそれぞれ測定し、(t/t)を相対粘度(ηrel)とした。
【0105】
(5)ポリアミド樹脂の融点(Tm)の測定方法
ポリアミド樹脂の融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC:セイコー電子工業株式会社製ロボットDSC)を使用して、窒素雰囲気下にて測定した。ポリアミド樹脂試料約5mgを完全に融解させ3分間保持した後、降温速度20℃/分で30℃まで降温した。続いて、ポリアミド樹脂試料を30℃で3分間保持した後、30℃から昇温速度20℃/分で昇温したときに観測される吸熱ピークの温度を融点Tmとして測定した。吸熱ピークが複数の場合は、最も高い温度を融点Tmとした。
【0106】
(6)ペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液の調製
(A)LDC遺伝子(cadA)増強株の作製
(a)大腸菌DNA抽出:
LB(Luria−Bertani)培地(組成:トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5gを蒸留水1Lに溶解)10mLに、大腸菌(Eschericia coli)JM109株を対数増殖期後期まで培養し、得られた菌体を、10mg/mLのリゾチームを含む10mM NaCl/20mM トリス緩衝液(pH8.0)/1mM EDTA・2Na溶液0.15mLに懸濁した。
【0107】
次いで、上記の懸濁液にプロテナーゼKを最終濃度が100μg/mLになるように添加し、37℃で1時間保温した。さらに、ドデシル硫酸ナトリウムを最終濃度が0.5重量%になるように添加し、50℃で6時間保温して溶菌液を調製した。
次に、この溶菌液に等量の(フェノール/クロロホルム)溶液を添加し、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全量を遠心分離(5,000×g、20分間、10〜12℃)し、上清画分を分取し、酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように添加した後、2倍量のエタノールを加えて混合した。次いで、遠心分離(15,000×g、2分間)により回収した沈殿物は70%エタノールで洗浄後、風乾した。得られたDNAに、10mMトリス緩衝液(pH7.5)/1mM EDTA・2Na溶液5mLを加え、4℃で一晩静置し、以後に述べるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の鋳型DNAに使用した。
【0108】
(b)cadAのクローニング:
大腸菌cadAの取得は、上記(a)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されている大腸菌K12−MG1655株の当該遺伝子の配列(Genbank Database Accession No.U00096)を基に設計した合成DNA(配列番号1(配列;GTTGCGTGTTCTGCTTCATCGCGCTGATG)及び配列番号2(配列;ACCAAGCTGAT蒸留残渣TGAGATAGAGAATGAGTAAG))を用いたPCRによって行った。
【0109】
(反応液組成)
鋳型DNAの1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン株式会社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μMの前記合成DNA、1mM MgSO及び0.25μMのデオキシヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を混合し、全量を20μLとした。
【0110】
(反応温度条件)
DNAサーマルサイクラーとして、MJ Research株式会社製「PTC−200」を使用し、94℃で20秒間、60℃で20秒間、72℃で2.5分間からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒間、最終サイクルの72℃での保温は10分間とした。
【0111】
図3は、cadAのクローニングの手順を説明する図である。
図3に示すように、PCR終了後、増幅産物をエタノール沈殿により精製した後、制限酵素Kpn I及び制限酵素Sph Iで切断した。このDNA標品を、0.75重量%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMC BioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することによりcadAを含む約2.6kbの断片を検出し、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を使用して目的DNA断片の回収を行った。
【0112】
回収したDNA断片を、大腸菌プラスミドベクターpUC18(宝酒造株式会社製)を制限酵素Kpn I及び制限酵素Sph Iで切断して調節したDNA断片と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造株式会社製)を使用して連結後、得られたプラスミドDNAを使用し、大腸菌(JM109株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を、50μg/mL アンピシリン、0.2mM IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)及び50μg/mL X−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
【0113】
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素Kpn I及び制限酵素Sph Iで切断することにより、約2.5kbの挿入断片が認められることを確認し、これをpCAD1、pCAD1を含む大腸菌株をJM109/pCAD1とそれぞれ命名した。
【0114】
(B)ペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液の調製
実施例で使用するペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液は、JM109/pCAD1を用い、リジン炭酸塩水溶液を原料とし、以下の方法で調製した。
【0115】
(a)JM109/pCAD1の培養:
JM109/pCAD1をLB培地入りフラスコで前培養した後、3mLの培養液を100mLの2倍濃度のLB培地が入った1L容フラスコに接種し、35℃、250rpmで撹拌培養を行った。培養開始4時間目に、滅菌したIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を、終濃度で0.5mMになるように添加し、その後14時間培養を継続した。
【0116】
(b)菌体の分離及び保存:
培養液を8000rpm、10分間で遠心分離して上清を廃棄し、菌体を回収した。得られた湿菌体は、培養液体積の1/20になるように50mM酢酸ナトリウムバッファーで懸濁して反応に必要となるまで4℃で保存した。
【0117】
(c)ペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液の調製:
50%(w/v)リジン水溶液(協和発酵バイオ株式会社製)48kgと脱塩水30Lを200L容反応槽内に準備し、二酸化炭素を15L/minで通気して加えて、リジン炭酸塩水溶液を調製した。リジン溶液のpHは、最初10.3付近であり、二酸化炭素の供給に伴い酸性側へと低下した。二酸化炭素の供給は、pH変化がほぼなくなったところで停止した。このときのpHは約7.5であった。
ピリドキサルリン酸を0.1mMの濃度となるように上記基質溶液に加え、さらに、JM109/pCAD1の菌体を、OD660(Optical Density 660)が0.5になるように加えて反応を開始した。
【0118】
反応時の条件は、温度37℃、通気なし(0vvm)、撹拌回転数148rpmとした。反応時、反応槽を密閉系とし、発生する二酸化炭素を封じ込め、pHを制御した。反応開始5時間後には、ほぼ100%のリジンがペンタメチレンジアミンに変換された。反応後の溶液(約72L)は、菌体の不活化処理(70℃、20分)を行った。続いてUF膜モジュール(旭化成工業株式会社製ACP−0013)を用いて処理し、分子量12,000以上の高分子量体の不純物が除去されたペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液を調製した。UF膜処理による回収率は99.4%であった。UF膜処理による回収率は全ペンタメチレンジアミンの収率を表す。
【0119】
(C)蒸留残渣の生成
(a)熱分解工程:
前記ペンタメチレンジアミン炭酸塩水溶液5600g(全ペンタメチレンジアミン濃度18.7重量%)をフラスコに入れ、内温102℃(オイルバス温度139℃)、常圧の条件にて、水を回収しながら、粗ペンタメチレンジアミンと二酸化炭素とに分解を開始した。分解開始後、常圧に保ちながら徐々に温度を上げ、最終的に内温が180℃(オイルバス温度191℃)に到達した時点で分解を終了し、粗ペンタメチレンジアミンを得た。尚、熱分解工程の最高温度は180℃であった。得られた粗ペンタメチレンジアミン中の全ペンタメチレンジアミン濃度、ペンタメチレンジアミン濃度、及びペンタメチレンジアミン炭酸塩濃度は、前記した測定方法に準じて測定し、それぞれ95.5重量%、93.5重量%、3.2重量%であった。この測定結果より、粗ペンタメチレンジアミン中におけるペンタメチレンジアミン及びペンタメチレンジアミン炭酸塩に対する、ペンタメチレンジアミンの濃度は98.0モル%であった。
【0120】
(b)蒸留工程
続いて、上記の操作により得られた粗ペンタメチレンジアミンを内温80℃(オイルバス温度110℃)、圧力2.67kPaにて蒸留を行い、精製ペンタメチレンジアミン924g(純度:99.2重量%)を得ると共に、釜残(蒸留残渣)103gを得た。
【0121】
(c)釜残
上記の熱分解工程、蒸留工程により得られた蒸留残渣のペンタメチレンジアミン濃度を、イオンクロマトグラフィーにて測定した。ペンタメチレンジアミン濃度は18.0重量%であった。
【0122】
[実施例1]
<活性炭処理工程>
直径25mmのガラス管に三菱化学カルゴン株式会社製活性炭MM−11を120mL仕込み、脱塩水を1時間通液した。次に、蒸留残渣80gに脱塩水400gを添加した蒸留残渣の希釈水溶液を調製し、そのうち240gを120mL/hrの速度で通液した。初期75mLをパージした後、処理後の水溶液を回収した。最後に120mL脱塩水を120mL/hrで通液し、処理後の水溶液を回収した。回収後の液重量は302g、イオンクロマトグラフィーにてペンタメチレンジアミン濃度を測定した結果、2.0重量%であった。吸光度測定を行った結果、活性炭処理前の蒸留残渣の希釈水溶液の吸光度が26.9に対して、活性炭処理後の蒸留残渣の希釈水溶液の吸光度は9.2であった。
【0123】
<蒸留工程>
活性炭処理後に回収した水溶液を、まず内温50℃、6.67kPaにて脱水蒸留を行った後、内温80℃、圧力2.67kPaにてペンタメチレンジアミンを蒸留し、精製ペンタメチレンジアミン4.7g(ペンタメチレンジアミン濃度79.1重量%)を回収した。ペンタメチレンジアミンのトータル回収率は51%であった。
【0124】
<重縮合反応工程>
得られた精製ペンタメチレンジアミン4.7g(ペンタメチレンジアミン濃度79.1重量%)に脱塩水10gを添加した後、アジピン酸(本州化学工業株式会社製)5.3gを加え、70℃に加温して混合物を溶解させた後、更に精製ペンタメチレンジアミンを少量添加し、水溶液のpHを8.4〜8.5に調整した。次に、この水溶液に、重縮合触媒として予め調製した0.2重量%亜燐酸水溶液0.2g(亜燐酸(和光純薬工業株式会社製試薬特級)を使用)を添加し、攪拌して混合物を溶解させ、重縮合反応に使用する原料水溶液を調製した。
続いて、前述の調製した原料水溶液をオートクレーブに入れ、窒素置換を行った。次に、オートクレーブを温度270℃のオイルバスに浸して重縮合反応を開始した。
重縮合反応を開始後、オートクレーブの内圧を1.57MPaで2時間保持し、次いで、オートクレーブ内の圧力を徐々に放圧した後、さらに、圧力61.3kPaまで減圧し、1時間保持して重縮合反応を終了した。重縮合反応終了後、オートクレーブの内圧を減圧状態のまま放冷し、放冷後に重縮合反応により得られたポリアミド樹脂を取り出した。得られたポリアミド樹脂の相対粘度は3.3、融点は255℃であった。
【0125】
[実施例2]
<合成吸着樹脂処理工程>
三菱化学株式会社製合成吸着樹脂HP20を120mL測り取り、120mLのメタノールを加えて15分間静置した。次に、メタノールをデカンテーションにて除去し、脱塩水120mLで2回洗浄しメタノールを除去した。
蒸留残渣80gに脱塩水400gを添加した蒸留残渣の希釈水溶液を調製し、97重量%硫酸溶液26.5gを添加してpH調整を行い、pH9.6とした。このとき、ペンタメチレンジアミン濃度をイオンクロマトグラフィーにて測定した結果、3.1重量%であった。
上記処理を行った合成吸着樹脂HP20を直径25mmのガラス管に仕込み、0.01重量%NaCO水溶液300mLを300mL/hrの速度で通液した。次に、pH調整後の蒸留残渣の希釈水溶液のうち285gを120mL/hrの速度で通液した。初期54mLをパージした後、処理後の水溶液を回収した。最後に120mLの0.01重量%NaCO水溶液を120mL/hrの速度で通液し、処理後の水溶液を回収した。回収後の液重量は357g、イオンクロマトグラフィーにてペンタメチレンジアミン濃度を測定した結果、2.4重量%であった。吸光度測定を行った結果、合成吸着樹脂処理前の蒸留残渣の希釈水溶液の吸光度が27.7に対して、合成吸着樹脂処理後の蒸留残渣の希釈水溶液の吸光度は0.93であった。
【0126】
<蒸留工程>
合成吸着樹脂処理後に回収した水溶液を、まず内温50℃、6.67kPaにて脱水蒸留を行った後、内温80℃、圧力2.67kPaにてペンタメチレンジアミンを蒸留し、精製ペンタメチレンジアミン7.9g(ペンタメチレンジアミン濃度82.6重量%)を回収した。ペンタメチレンジアミンのトータル回収率は74%であった。
【0127】
<重縮合反応工程>
得られた精製ペンタメチレンジアミン7.9g(ペンタメチレンジアミン濃度82.6重量%)、脱塩水15g、アジピン酸(本州化学工業株式会社製)9.3g、0.2重量%亜燐酸水溶液0.2gを添加した以外は実施例1と同様な方法により重縮合反応を行った。得られたポリアミド樹脂の相対粘度は3.3、融点は255℃であった。
【0128】
[実施例3]
<合成吸着樹脂処理工程>
三菱化学株式会社製合成吸着樹脂SP825Lを120mL測り取り、120mLのメタノールを加えて15分間静置した。次に、メタノールをデカンテーションにて除去し、脱塩水120mLで2回洗浄しメタノールを除去した。
蒸留残渣80gに脱塩水400gを添加した蒸留残渣の希釈水溶液を調製し、97重量%硫酸溶液26.5gを添加してpH調整を行い、pH9.6とした。このとき、ペンタメチレンジアミン濃度をイオンクロマトグラフィーにて測定した結果、3.2重量%であった。
上記処理を行った合成吸着樹脂SP825Lを直径25mmのガラス管に仕込み、0.01重量%NaCO水溶液300mLを300mL/hrの速度で通液した。次に、pH調整後の蒸留残渣の希釈水溶液のうち475gを120mL/hrの速度で通液した。初期68mLをパージした後、処理後の水溶液を回収した。最後に120mLの0.01重量%NaCO水溶液を120mL/hrの速度で通液し、処理後の水溶液を回収した。回収後の液重量は555g、イオンクロマトグラフィーにてペンタメチレンジアミン濃度を測定した結果、2.7重量%であった。吸光度測定を行った結果、合成吸着樹脂処理前の蒸留残渣の希釈水溶液の吸光度が28.3に対して、合成吸着樹脂処理後の蒸留残渣の希釈水溶液の吸光度は1.8であった。
【0129】
<蒸留工程>
合成吸着樹脂処理後に回収した水溶液を、まず内温50℃、6.67kPaにて脱水蒸留を行った後、内温80℃、圧力2.67kPaにてペンタメチレンジアミンを蒸留し、精製ペンタメチレンジアミン14.1g(ペンタメチレンジアミン濃度95.6重量%)を回収した。ペンタメチレンジアミンのトータル回収率は89%であった。
【0130】
<重縮合反応工程>
得られた精製ペンタメチレンジアミン8.6g(ペンタメチレンジアミン濃度95.6重量%)、脱塩水20g、アジピン酸(本州化学工業株式会社製)11.8g、0.2重量%亜燐酸水溶液0.2gを添加した以外は実施例1と同様な方法により重縮合反応を行った。得られたポリアミド樹脂の相対粘度は3.3、融点は255℃であった。
【0131】
[実施例4]
<イオン交換樹脂処理工程>
直径25mmのガラス管に三菱化学株式会社製イオン交換樹脂SA10Aを120mL測り取り、脱塩水240mLを通水した。
蒸留残渣70gに脱塩水400gを添加した蒸留残渣の希釈水溶液を調製した。次いで上記蒸留残渣の希釈水溶液のうち200gを120mL/hrの速度で通液した。初期67mLをパージした後、処理後の水溶液を回収した。最後に120mLの脱塩水を120mL/hrの速度で通液し、処理後の水溶液を回収した。回収後の液重量は226g、イオンクロマトグラフィーでペンタメチレンジアミン濃度を測定した結果、1.8重量%であった。吸光度測定を行った結果、イオン交換樹脂処理前の蒸留残渣の希釈水溶液の吸光度が24.5に対して、イオン交換樹脂処理後の蒸留残渣の希釈水溶液の吸光度は7.2であった。
【0132】
<蒸留工程>
イオン交換樹脂処理後に回収した水溶液を、まず内温50℃、6.67kPaにて脱水蒸留を行った後、内温80℃、圧力2.67kPaにてペンタメチレンジアミンを蒸留し、精製ペンタメチレンジアミン3.4g(ペンタメチレンジアミン濃度75.6重量%)を回収した。ペンタメチレンジアミンのトータル回収率は48%であった。
【0133】
<重縮合反応工程>
得られた精製ペンタメチレンジアミン3.4g(ペンタメチレンジアミン濃度75.6重量%)、脱塩水10g、アジピン酸(本州化学工業株式会社製)3.7g、0.2重量%亜燐酸水溶液0.2gを添加した以外は実施例1と同様な方法により重縮合反応を行った。得られたポリアミド樹脂の相対粘度は3.3、融点は255℃であった。
【0134】
[実施例5]
<蒸留残渣の再蒸留工程>
蒸留残渣100gを内温80℃、圧力2.67kPaの条件にてペンタメチレンジアミンの蒸留を開始した。留出するペンタメチレンジアミンを回収し、最終的には内温130℃、圧力0.67kPaにて蒸留を終了した。精製ペンタメチレンジアミン10.9g(ペンタメチレンジアミン濃度98.1%)を回収した。ペンタメチレンジアミンのトータル回収率は59%であった。
【0135】
<蒸留残渣の抽出蒸留工程後の後処理>
前記蒸留残渣の抽出蒸留工程終了後の蒸留残渣は粘性が高く、反応釜の底から抜き出せない状態となっていたが、100mLの脱塩水を添加し、100℃で1時間還流することにより、流動性のある水溶液となり反応釜の底から抜き出した。その後、さらに100mLの脱塩水を添加し、100℃で1時間還流し反応釜を洗浄した。
【0136】
<重縮合反応工程>
得られた精製ペンタメチレンジアミン8.4g(ペンタメチレンジアミン濃度98.1重量%)、脱塩水20g、アジピン酸(本州化学工業株式会社製)11.8g、0.2重量%亜燐酸水溶液0.2gを添加した以外は実施例1と同様な方法により重縮合反応を行った。得られたポリアミド樹脂の相対粘度は3.3、融点は255℃であった。
【0137】
[実施例6]
<蒸留残渣の抽出蒸留工程>
蒸留残渣80gに脱塩水200gを添加し、蒸留残渣の希釈水溶液を調製した。調製後の液200gを測り取り、クロロホルム(和光純薬製試薬特級)200gを添加して撹拌混合した。有機相を水相より分離し、常圧にてクロロホルムを蒸留した後、内温80℃、圧力2.67kPaにてペンタメチレンジアミンを蒸留し、精製ペンタメチレンジアミン3.1g(ペンタメチレンジアミン濃度65.0%)を回収した。ペンタメチレンジアミンのトータル回収率は17%であった。
【0138】
<重縮合反応工程>
前記蒸留残渣の抽出蒸留で得られた精製ペンタメチレンジアミン8.4g(ペンタメチレンジアミン濃度98.1重量%)、脱塩水20g、アジピン酸(本州化学工業株式会社製)11.8g、0.2重量%亜燐酸水溶液0.2gを添加した以外は実施例1と同様な方法により重縮合反応を行った。得られたポリアミド樹脂の相対粘度は3.3、融点は255℃であった。
【0139】
[比較例1]
<アルカリ添加処理工程>
蒸留残渣100gに脱塩水100gを添加した蒸留残渣の希釈水溶液を調製した。調製後の液200gに、48重量%水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウムは林純薬工業株式会社製試薬特級、パール状、純度99%を使用)200gを添加して撹拌混合した。混合後、しばらく静置すると、上相がペンタメチレンジアミン相、下相が水相の2相に分離したが、不純物である赤褐色物質はほぼ全量ペンタメチレンジアミン相に含まれており、ペンタメチレンジアミンを回収することはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗ペンタメチレンジアミンを蒸留することによりペンタメチレンジアミンと蒸留残渣とに分離し、該蒸留残渣より、更にペンタメチレンジアミンを回収することを特徴とするペンタメチレンジアミンの製造方法。
【請求項2】
前記蒸留残渣より回収されたペンタメチレンジアミンが、前記蒸留残渣に対し5重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のペンタメチレンジアミンの製造方法。
【請求項3】
前記粗ペンタメチレンジアミンが、リジン脱炭酸酵素、リジン脱炭酸酵素活性の向上した組み換え微生物、リジン脱炭酸酵素を産生する細胞もしくは当該細胞の処理物からなる群の少なくとも1つを使用して、リジンから産出されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のペンタメチレンジアミンの製造方法。
【請求項4】
前記粗ペンタメチレンジアミンの蒸留及び/又は前記蒸留残渣からのペンタメチレンジアミンの回収に使用した設備を、水及びアルコール系溶媒からなる群より選ばれた少なくとも1種で洗浄することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のペンタメチレンジアミンの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたペンタメチレンジアミンとジカルボン酸とを単量体成分として重縮合反応することを特徴とするポリアミド樹脂の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−225554(P2011−225554A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74344(P2011−74344)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】