説明

ペンタメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート組成物、ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法、および、ポリウレタン樹脂

【課題】優れた性質を備えるイソシアネート変性体およびポリウレタン樹脂を効率良く製造することのできるペンタメチレンジイソシアネート、そのペンタメチレンジイソシアネートを用いて得られるポリイソシアネート組成物、および、そのようなペンタメチレンジイソシアネートを製造できるペンタメチレンジイソシアネートの製造方法、さらには、それらペンタメチレンジイソシアネートまたはポリイソシアネート組成物を用いて得られるポリウレタン樹脂を提供すること。
【解決手段】C=N結合を有する含窒素六員環化合物の含有量が、2質量%以下であるペンタメチレンジアミンまたはその塩から合成されるペンタメチレンジイソシアネートを合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンタメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート組成物、ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法、および、ポリウレタン樹脂に関し、詳しくは、ペンタメチレンジイソシアネート、そのペンタメチレンジイソシアネートから得られるポリイソシアネート組成物、ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法、および、それらペンタメチレンジイソシアネートまたはポリイソシアネート組成物から得られるポリウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、通常、ポリイソシアネートと活性水素化合物との反応により製造されており、例えば、塗料、接着剤、エラストマーなどとして、各種産業分野において広範に使用されている。
【0003】
ポリウレタン樹脂の製造に用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートが知られている。また、このような1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法としては、例えば、リシン(別名:リジン)から1,5−ジアミノペンタンを得た後、1,5−ジアミノペンタンを1,5−ペンタメチレンジイソシアネートへと変換することが、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、特許文献1には、このようにして得られる1,5−ペンタメチレンジイソシアネートが、イソシアネート変性体、より具体的には、例えば、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジンジオン基などを有するポリイソシアネート(トリマー体)、アロファネート基を有するポリイソシアネート(アロファネート体)などの製造に用いられることが、記載されている。
【0005】
一方、リシンから1,5−ジアミノペンタンを得る方法としては、例えば、リシン塩酸塩水溶液に、リシン脱炭酸酵素を作用させ、リシンを1,5−ジアミノペンタンへと変換した後、得られた反応液にクロロホルムを添加し、1,5−ジアミノペンタンをクロロホルム相に抽出する方法が、提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−545553号公報
【特許文献2】特開2003−292612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、特許文献2に記載の方法では、得られる1,5−ジアミノペンタン中には、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンなどの不純物が含有される(特許文献2、参考例2参照。)。
【0008】
不純物を含む1,5−ジアミノペンタンを用いて、特許文献1に記載されるように、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを製造し、さらに、その1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを反応させ、イソシアネート変性体を製造する場合には、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの反応速度が十分ではなく、多量の触媒を必要とするなど、生産性に劣る場合があり、また、得られるイソシアネート変性体の物性(例えば、貯蔵安定性など)を、十分に確保することができない場合がある。
【0009】
また、特許文献1および2に記載の方法により得られた1,5−ペンタメチレンジイソシアネートや、その1,5−ペンタメチレンジイソシアネートから得られたイソシアネート変性体と、活性水素化合物とを反応させ、ポリウレタン樹脂を製造する場合にも、やはり、得られるポリウレタン樹脂の物性(例えば、機械強度、耐薬品性など)を十分に確保することができない場合がある。
【0010】
本発明の目的は、優れた性質を備えるイソシアネート変性体およびポリウレタン樹脂を効率良く製造することのできるペンタメチレンジイソシアネート、そのペンタメチレンジイソシアネートを用いて得られるポリイソシアネート組成物、および、そのようなペンタメチレンジイソシアネートを製造できるペンタメチレンジイソシアネートの製造方法、さらには、それらペンタメチレンジイソシアネートまたはポリイソシアネート組成物を用いて得られるポリウレタン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のペンタメチレンジイソシアネートは、ペンタメチレンジアミンまたはその塩から合成されるペンタメチレンジイソシアネートであって、ペンタメチレンジアミンまたはその塩の総量に対する、C=N結合を有する含窒素六員環化合物の含有量が、2質量%以下であることを特徴としている。
【0012】
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートでは、ペンタメチレンジアミンまたはその塩の総量に対する、アミノ基とC=N結合とを有する含窒素六員環化合物の含有量が、1.5質量%以下であることが好適である。
【0013】
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートでは、アミノ基とC=N結合とを有する含窒素六員環化合物が、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジンであることが好適である。
【0014】
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートは、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を、ホスゲン化することにより得られることが好適である。
【0015】
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートは、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を、カルバメート化および熱分解することにより得られ、酸化防止剤と、酸性化合物および/またはスルホンアミド基を有する化合物とを含有することが好適である。
【0016】
また、本発明のポリイソシアネート組成物は、上記のペンタメチレンジイソシアネートを変性することにより得られ、下記(a)〜(e)の官能基を少なくとも1種含有することを特徴としている。
(a)イソシアヌレート基
(b)アロファネート基
(c)ビウレット基
(d)ウレタン基
(e)ウレア基
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法は、上記のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法であって、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を、非ハロゲン脂肪族系有機溶剤により抽出した後、イソシアネート化することを特徴としている。
【0017】
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、非ハロゲン脂肪族系有機溶剤が、炭素数4〜7の直鎖状1価アルコールであることが好適である。
【0018】
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有する水溶液から抽出することが好適である。
【0019】
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有する水溶液を、リシンまたはその塩の脱炭酸酵素反応により得ることが好適である。
【0020】
また、本発明のポリウレタン樹脂は、上記のペンタメチレンジイソシアネートと、活性水素化合物とを反応させることにより得られることを特徴としている。
【0021】
また、本発明のポリウレタン樹脂は、上記のポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物とを反応させることにより得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明のペンタメチレンジイソシアネートは、C=N結合を有する含窒素六員環化合物を含有しないか、または、その含有量が低減されたペンタメチレンジアミンまたはその塩から合成される。
【0023】
そのため、本発明のペンタメチレンジイソシアネートによれば、効率良く、優れた性質を備えるイソシアネート変性体を製造することができる。
【0024】
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートによれば、優れた性質を備えるポリウレタン樹脂を製造することもできる。
【0025】
また、本発明のポリイソシアネート組成物は、上記のペンタメチレンジイソシアネートをトリマー化することにより得られる。そのため、本発明のポリイソシアネート組成物は、効率良く製造され、また、優れた貯蔵安定性を備えることができる。
【0026】
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、ペンタメチレンジアミンまたはその塩が、非ハロゲン脂肪族系有機溶剤により抽出される。
【0027】
そのため、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法によれば、ペンタメチレンジアミンまたはその塩におけるC=N結合を有する含窒素六員環化合物の含有割合を低減することができる。
【0028】
その結果、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法によれば、優れた性質を備えるイソシアネート変性体や、優れた性質を備えるポリウレタン樹脂を効率良く製造することができるペンタメチレンジイソシアネートを、製造することができる。
【0029】
また、本発明のポリウレタン樹脂は、本発明のペンタメチレンジイソシアネートや、本発明のポリイソシアネート組成物を用いて製造されるため、優れた性質を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】未知物質の構造解析におけるGC−MS分析1のクロマトグラムを示す。
【図2】未知物質の構造解析におけるGC−MS分析1のスペクトルを示す。
【図3】未知物質の構造解析におけるGC−MS分析2のクロマトグラムを示す。
【図4】未知物質の構造解析におけるH−NMRの結果を示す。
【図5】未知物質の構造解析における13C−NMRの結果を示す。
【図6】未知物質の構造解析におけるCOSYの結果を示す。
【図7】未知物質の構造解析におけるHMQCの結果を示す。
【図8】未知物質の構造解析におけるHMBCの結果を示す。
【図9】未知物質の構造解析におけるHMBCの結果(拡大図)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のペンタメチレンジイソシアネート(PDI)は、ペンタメチレンジアミン(PDA)またはその塩から合成され、例えば、以下に示すペンタメチレンジイソシアネートの製造方法により、製造される。
【0032】
すなわち、この方法では、まず、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を、製造する。
【0033】
ペンタメチレンジアミンとしては、例えば、1,5−ペンタメチレンジアミン(別名:カダベリン、1,5−ジアミノペンタン)、1,4−ペンタメチレンジアミン、1,3−ペンタメチレンジアミン、2,5−ペンタメチレンジアミン、または、これらの混合物が挙げられる。
【0034】
これらペンタメチレンジアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0035】
ペンタメチレンジアミンとして、好ましくは、1,5−ペンタメチレンジアミンが挙げられる。
【0036】
また、ペンタメチレンジアミンの塩としては、例えば、上記ペンタメチレンジアミンの、例えば、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、シュウ酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、ステアリン酸塩など)、スルホン酸塩などの有機酸塩、例えば、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機酸塩などが挙げられる。
【0037】
ペンタメチレンジアミンの塩として、好ましくは、上記ペンタメチレンジアミンの塩酸塩が挙げられる。
【0038】
このようなペンタメチレンジアミンまたはその塩は、例えば、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有する水溶液(以下、ペンタメチレンジアミン水溶液とする。)から抽出される。
【0039】
このようなペンタメチレンジアミンまたはその塩として、好ましくは、ペンタメチレンジアミンが挙げられる。
【0040】
ペンタメチレンジアミン水溶液は、特に制限されないが、例えば、水中におけるリシンの脱炭酸酵素反応により、得ることができる。
【0041】
以下において、リシンの脱炭酸酵素反応について詳述する。
【0042】
リシンの脱炭酸酵素反応では、リシン(化学式:NH(CHCH(NH)COOH、別名:1,5−ペンタメチレンジアミン−1−カルボン酸)に、リシン脱炭酸酵素を作用させる。
【0043】
リシンとしては、例えば、L−リシンなどが挙げられる。
【0044】
また、リシンとしては、リシンの塩を用いることもできる。
【0045】
リシンの塩としては、例えば、カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、シュウ酸塩、2−エチルヘキサン酸塩、ステアリン酸塩など)、スルホン酸塩などの有機酸塩、例えば、硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩などの無機酸塩などが挙げられる。
【0046】
リシンの塩として、好ましくは、リシン塩酸塩が挙げられる。
【0047】
このようなリシン塩酸塩としては、例えば、L−リシン・一塩酸塩などが挙げられる。
【0048】
リシン(またはその塩)の濃度は、特に制限はされないが、例えば、10〜700g/L、好ましくは、20〜500g/Lである。
【0049】
リシン脱炭酸酵素は、リシン(またはその塩)をペンタメチレンジアミン(またはその塩)に転換させる酵素であって、特に制限されないが、例えば、公知の生物に由来するものが挙げられる。リシン脱炭酸酵素として、より具体的には、例えば、バシラス・ハロドゥランス(Bacillus halodurans)、バシラス・サブチリス(Bacillus subtilis)、エシェリシア・コリ(Escherichia coli)、セレノモナス・ルミナンチウム(Selenomonas ruminantium)、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)、ビブリオ・パラヘモリティカス(Vibrio parahaemolyticus)、ストレプトマイセス・コエリカーラ(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・ピロサス(Streptomyces pilosus)、エイケネラ・コロデンス(Eikenella corrodens)、イユバクテリウム・アシダミノフィルム(Eubacterium acidaminophilum)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ハフニア・アルベイ(Hafnia alvei)、ナイセリア・メニンギチデス(Neisseria meningitidis)、テルモプラズマ・アシドフィルム(Thermoplasma acidophilum)、ピロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)またはコリネバクテリウム・グルタミカス(Corynebacterium glutamicum)などの微生物に由来するものが挙げられる。安全性の観点から、好ましくは、Escherichia coliに由来するものが挙げられる。
【0050】
リシン脱炭酸酵素は、例えば、特開2004−114号公報(例えば、段落番号[0015]〜[0042]など)の記載に準拠するなど、公知の方法により製造することができる。
【0051】
リシン脱炭酸酵素を製造する方法として、より具体的には、例えば、リシン脱炭酸酵素が細胞内で高発現した組換え細胞(以下、内部発現細胞)を公知の培地で培養し、その後、増殖した内部発現細胞を回収および破砕する方法や、例えば、リシン脱炭酸酵素が細胞表面で局在化した組換え細胞(以下、表面発現細胞)を公知の培地で培養し、その後、増殖した表面発現細胞を回収および必要により破砕する方法などが挙げられる。
【0052】
このような方法において、組換え細胞としては、特に制限されず、微生物、動物、植物または昆虫由来のものが挙げられる。より具体的には、例えば、動物を用いる場合には、マウス、ラットやそれらの培養細胞などが挙げられ、また、植物を用いる場合には、例えば、シロイヌナズナ、タバコやそれらの培養細胞などが挙げられ、また、昆虫を用いる場合には、例えば、カイコやその培養細胞などが挙げられ、微生物を用いる場合には、例えば、大腸菌などが挙げられる。
【0053】
これら組換え細胞は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0054】
組換え細胞の表面にリシン脱炭酸酵素を局在化させる方法としては、特に制限されず、例えば、分泌シグナル配列の一部、細胞表面局在タンパク質の一部をコードする遺伝子配列、および、リシン脱炭酸酵素の構造遺伝子配列をこの順で有するDNAを、大腸菌に導入する方法など、公知の方法を採用することができる。
【0055】
分泌シグナル配列の一部としては、宿主においてタンパク質を分泌するために必要な配列であれば、特に制限されず、例えば、大腸菌においては、例えば、リポプロテインの配列の一部、より具体的には、例えば、アミノ酸配列としてMKATKLVLGAVILGSTLLAGCSSNAKIDQ(アミノ酸の一文字表記)と翻訳される遺伝子配列などが挙げられる。
【0056】
細胞表面局在タンパク質の一部をコードする遺伝子配列としては、特に制限されないが、大腸菌においては、例えば、外膜結合タンパク質の配列の一部が挙げられ、より具体的には、例えば、OmpA(外膜結合タンパク質)の46番目のアミノ酸から159番目のアミノ酸までの配列の一部などが挙げられる。
【0057】
リシン脱炭酸酵素遺伝子、リポプロテイン遺伝子およびOmpA遺伝子をクローニングする方法としては、特に制限されないが、例えば、既知の遺伝子情報に基づき、PCR(polymerase chain reaction)法を用いて必要な遺伝領域を増幅取得する方法、例えば、既知の遺伝子情報に基づき、ゲノムライブラリーやcDNAライブラリーより相同性や酵素活性を指標としてクローニングする方法などが挙げられる。
【0058】
なお、これらの遺伝子は、遺伝的多形性(遺伝子上の自然突然変異により遺伝子の塩基配列が一部変化しているもの)などによる変異型の遺伝子も含む。
【0059】
このような方法として、より具体的には、例えば、Escherichia coli K12の染色体DNAより、PCR法を用いて、リシン脱炭酸酵素をコードする遺伝子であるcadA遺伝子またはldc遺伝子を、クローニングする。なお、このとき採用する染色体DNAは、Escherichia coli由来であれば、制限されず、任意の菌株由来のものを採用することができる。
【0060】
また、このようにして得られる表面発現細胞の表面にリシン脱炭酸酵素が局在化していることは、例えば、リシン脱炭酸酵素を抗原として作製した抗体により、表面発現細胞を免疫反応させた後、包埋および薄切りし、例えば、電子顕微鏡(免疫電顕法)により観察することによって、確認することができる。
【0061】
なお、表面発現細胞は、リシン脱炭酸酵素が細胞表面に局在化していればよく、例えば、リシン脱炭酸酵素が細胞表面に局在化するとともに、細胞内部に発現していてもよい。
【0062】
また、リシン脱炭酸酵素としては、例えば、リシン脱炭酸酵素の細胞内および/または細胞表面での活性が上昇した組換え細胞から調製されるものも挙げられる。
【0063】
細胞内および/または細胞表面でリシン脱炭酸酵素の活性を上昇させる方法としては、特に制限されず、例えば、リシン脱炭酸酵素の酵素量を増加させる方法、例えば、リシン脱炭酸酵素の細胞内および/または細胞表面での活性を上昇させる方法などが挙げられる。
【0064】
細胞内もしくは細胞表面の酵素量を増加させる手段としては、例えば、遺伝子の転写調節領域の改良、遺伝子のコピー数の増加、蛋白への翻訳の効率化などが挙げられる。
【0065】
転写調節領域の改良とは、遺伝子の転写量を増加させる改変を加えることであって、例えば、プロモーターに変異を導入することによってプロモーターを強化し、下流にある遺伝子の転写量を増加させることができる。プロモーターに変異を導入する以外にも、宿主内で強力に発現するプロモーターを導入することもできる。プロモーターとして、より具体的には、例えば、大腸菌においては、lac、tac、trpなどが挙げられる。また、エンハンサーを新たに導入することによって遺伝子の転写量を増加させることができる。なお、染色体DNAのプロモーターなどの遺伝子導入については、例えば、特開平1−215280号公報の記載に準拠することができる。
【0066】
遺伝子のコピー数の上昇は、具体的には、遺伝子を多コピー型のベクターに接続して組換えDNAを作製し、その組換えDNAを宿主細胞に保持させることにより達成することができる。ベクターとは、プラスミドやファージなど、広く用いられているものを含むが、これら以外にも、例えば、トランソポゾン(Berg,D.E and Berg.C.M., Bio/Technol.,vol.1,P.417(1983))やMuファージ(特開平2−109985号公報)なども挙げられる。さらには、遺伝子を相同組換え用プラスミドなどを用いた方法で染色体に組み込んで、コピー数を上昇させることもできる。
【0067】
蛋白の翻訳効率を上昇させる方法としては、例えば、原核生物においては、SD配列(Shine, J. and Dalgarno, L., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 71, 1342−1346 (1974))、真核生物では、Kozakのコンセンサス配列(Kozak, M., Nuc. Acids Res., Vol.15,p.8125−8148(1987))を導入、改変する方法や、使用コドンの最適化(特開昭59−125895)などが挙げられる。
【0068】
リシン脱炭酸酵素の細胞内および/または細胞表面での活性を上昇させる方法としては、リシン脱炭酸酵素の構造遺伝子自体に変異を導入して、リシン脱炭酸酵素そのものの活性を上昇させることも挙げられる。
【0069】
遺伝子に変異を生じさせる方法としては、例えば、部位特異的変異法(Kramer,W. and frita,H.J., Methods in Enzymology,vol.154,P.350(1987))、リコンビナントPCR法(PCR Technology,Stockton Press(1989)、特定の部分のDNAを化学合成する方法、遺伝子をヒドロキシアミン処理する方法、遺伝子を保有する菌株を紫外線照射処理、または、ニトロソグアニジンや亜硝酸などの化学薬剤で処理する方法などが挙げられる。
【0070】
また、このような組換え細胞(内部発現細胞、表面発現細胞など)を培養する方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。より具体的には、例えば、微生物を培養する場合には、培地として、例えば、炭素源、窒素源および無機イオンを含有する培地が用いられる。
【0071】
炭素源としては、例えば、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フラクトース、アラビノース、マルトース、キシロース、トレハロース、リボースや澱粉の加水分解物などの糖類、例えば、グリセロール、マンニトールやソルビトールなどのアルコール類、例えば、グルコン酸、フマル酸、クエン酸やコハク酸などの有機酸類などが挙げられる。
【0072】
これら炭素源は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0073】
窒素源としては、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機アンモニウム塩、例えば、大豆加水分解物などの有機窒素、例えば、アンモニアガス、アンモニア水などが挙げられる。
【0074】
これら窒素源は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0075】
無機イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、塩素イオン、マンガンイオン、鉄イオン、リン酸イオン、硫酸イオンなどが挙げられる。
【0076】
これら無機イオンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0077】
また、培地には、必要に応じて、その他の有機成分(有機微量栄養素)を添加することもでき、そのような有機成分としては、例えば、各種アミノ酸、例えば、ビタミンBなどのビタミン類、例えば、RNAなどの核酸類などの要求物質、さらには、例えば、酵母エキスなどが挙げられる。
【0078】
このような培地として、より具体的には、LB培地が挙げられる。
【0079】
培養条件としては、特に制限されないが、例えば、大腸菌を培養する場合には、好気条件下において、培養温度が、例えば、30〜45℃、好ましくは、30〜40℃であり、培養pHが、例えば、5〜8、好ましくは、6.5〜7.5であり、培養時間が、例えば、16〜72時間、好ましくは、24〜48時間である。なお、pHの調整には、例えば、無機または有機の酸性またはアルカリ性物質や、アンモニアガスなどを用いることができる。
【0080】
そして、このような培地において増殖した組換え細胞(内部発現細胞、表面発現細胞)は、例えば、遠心分離などにより回収することができる。
【0081】
また、この方法では、回収された細胞を、例えば、休止細胞として用いることもできるが、必要により、破砕し、その細胞破砕液(菌体破砕液)として用いることができる。
【0082】
細胞破砕液(菌体破砕液)の調製においては、公知の方法を採用することができる。より具体的には、例えば、まず、得られた内部発現細胞および/または表面発現細胞を、例えば、超音波処理、ダイノミル、フレンチプレスなどの方法により破砕し、その後、遠心分離により細胞残渣を除去する。
【0083】
また、この方法では、必要により、得られた細胞破砕液からリシン脱炭酸酵素を精製することができる。
【0084】
リシン脱炭酸酵素の精製方法としては、特に制限されず、酵素の精製に通常用いられる公知の方法(例えば、硫安分画、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、等電点沈殿、熱処理、pH処理など)を、必要により適宜組み合わせて採用することができる。
【0085】
そして、リシン(またはその塩)の脱炭酸酵素反応では、このようにして得られた休止細胞および/またはその細胞破砕液と、リシン(またはその塩)の水溶液とを配合し、水中でリシン脱炭酸酵素をリシン(またはその塩)に作用させる。
【0086】
反応に使用するリシン(またはその塩)の総質量に対する、反応に使用する菌体(細胞)の乾燥菌体換算質量の比率は、リシン(またはその塩)をペンタメチレンジアミン(またはその塩)に転換させるのに十分な量であれば、特に制限されないが、例えば、0.01以下、好ましくは、0.007以下である。
【0087】
なお、反応に使用するリシン(またはその塩)の総質量とは、反応開始時に反応系内に存在するリシン(またはその塩)の質量(反応中に反応系にリシン(またはその塩)を加える場合には、それらリシン(またはその塩)の総量)である。
【0088】
また、菌体の乾燥菌体換算質量とは、乾燥して水分を含まない菌体の質量である。菌体の乾燥菌体換算質量は、例えば、菌体を含む液(菌体液)から、遠心分離や濾過等の方法で菌体を分離し、質量が一定になるまで乾燥し、その質量を測定することにより求めることができる。
【0089】
リシン(またはその塩)の脱炭酸酵素反応における反応温度は、例えば、28〜55℃、好ましくは、35〜45℃であり、反応時間は、採用されるリシン脱炭酸酵素の種類などにより異なるが、例えば、1〜72時間、好ましくは、12〜36時間である。また、反応pHは、例えば、5.0〜8.0、好ましくは、5.5〜6.5である。
【0090】
これにより、リシン(またはその塩)が脱炭酸酵素反応して、ペンタメチレンジアミンに転換され、その結果、ペンタメチレンジアミン水溶液が得られる。
【0091】
ペンタメチレンジアミンまたはその塩の反応収率は、リシン(またはその塩)を基準として、例えば、10〜100モル%、好ましくは、70〜100モル%、より好ましくは、80〜100モル%である。
【0092】
また、ペンタメチレンジアミン水溶液におけるペンタメチレンジアミンまたはその塩の濃度(ペンタメチレンジアミン塩の場合はペンタメチレンジアミン換算濃度)は、例えば、1〜70質量%、好ましくは、2〜50質量%、より好ましくは、5〜40質量%である。
【0093】
なお、この反応では,得られるペンタメチレンジアミンがアルカリ性であるため、リシン(またはその塩)がペンタメチレンジアミン(またはその塩)に転換されるに伴って反応液のpHが増加する場合がある。このような場合には、必要により、酸性物質(例えば、有機酸、例えば、塩酸などの無機酸など)などを添加し、pHを調整することができる。
【0094】
また、この反応では、必要により、例えば、ビタミンBおよび/またはその誘導体を反応液中に添加することもできる。
【0095】
ビタミンBおよび/またはその誘導体としては、例えば、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、ピリドキサールリン酸などが挙げられる。
【0096】
これらビタミンBおよび/またはその誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0097】
ビタミンBおよび/またはその誘導体として、好ましくは、ピリドキサールリン酸が挙げられる。
【0098】
ビタミンBおよび/またはその誘導体を添加することにより、ペンタメチレンジアミンの生産速度および反応収率を向上することができる。
【0099】
そして、この方法では、得られたペンタメチレンジアミン水溶液から、必要により、水の一部を留去させた後、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を抽出する。また、抽出では、例えば、液−液抽出法が採用される。
【0100】
より具体的には、例えば、連続多段蒸留塔、回分多段蒸留塔などを備えた蒸留装置などにより、0.1kPa〜常圧下、ペンタメチレンジアミン水溶液を加熱(熱処理)し、蒸留することにより、水の一部が留去されたペンタメチレンジアミン水溶液を得る。
【0101】
加熱温度としては、例えば、25℃以上、90℃未満、好ましくは、25℃以上、85℃以下、より好ましくは、25℃以上、80℃未満、さらに好ましくは、30℃以上、70℃以下である。
【0102】
ペンタメチレンジアミン水溶液を、90℃以上で加熱(熱処理)すると、ペンタメチレンジアミンまたはその塩の総量に対する、C=N結合を有する含窒素六員環化合物(後述)の含有量が増加する場合や、ペンタメチレンジアミンまたはその塩の抽出率が低下する場合がある。
【0103】
そのため、好ましくは、ペンタメチレンジアミン水溶液を、90℃以上で加熱(熱処理)することなく、より好ましくは、80℃以上で加熱することなく、さらに好ましくは、ペンタメチレンジアミン水溶液を加熱(熱処理)することなく、後述するように、その水溶液からそのままペンタメチレンジアミンまたはその塩を抽出する。
【0104】
ペンタメチレンジアミン水溶液において、ペンタメチレンジアミンの濃度は、ペンタメチレンジアミン水溶液の総量に対して、例えば、5〜80質量%、好ましくは、15〜60質量%である。
【0105】
液−液抽出法では、ペンタメチレンジアミン水溶液に、抽出溶媒(後述)を接触させ、混合および攪拌することにより、ペンタメチレンジアミン水溶液中のペンタメチレンジアミンまたはその塩を、抽出溶媒(後述)へと抽出する。
【0106】
液−液抽出におけるペンタメチレンジアミン水溶液と抽出溶媒(後述)との配合割合は、ペンタメチレンジアミン水溶液100質量部に対して、抽出溶媒(後述)が、例えば、30〜300質量部、好ましくは、50〜200質量部、より好ましくは60〜150質量、とりわけ好ましくは、80〜120質量部である。
【0107】
また、液−液抽出では、ペンタメチレンジアミン水溶液と抽出溶媒(後述)とを、例えば、常圧(大気圧)下、例えば、5〜60℃、好ましくは、10〜50℃、より好ましくは、15〜40℃において、例えば、1〜120分間、好ましくは、5〜90分間、より好ましくは、5〜60分間混合する。
【0108】
これにより、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を、抽出溶媒(後述)中へと抽出する。
【0109】
次いで、この方法では、ペンタメチレンジアミンまたはその塩と抽出溶媒(後述)との混合物を、例えば、5〜300分間静置し、その後、ペンタメチレンジアミンまたはその塩が抽出された抽出溶媒(すなわち、抽出溶媒(後述)とペンタメチレンジアミンまたはその塩との混合物)を、公知の方法により取り出す。
【0110】
なお、1回の液−液抽出によりペンタメチレンジアミンまたはその塩を十分に抽出できない場合には、複数回(例えば、2〜5回)繰り返し液−液抽出することもできる。
【0111】
また、液−液抽出法では、例えば、抽出塔などを用いて、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を、連続的に抽出することもできる。このような抽出塔としては、例えば、塔内部に棚板が数十段組み込まれた抽出塔や、棚板が回転円盤型の抽出塔などが挙げられる。
【0112】
これにより、ペンタメチレンジアミン水溶液中のペンタメチレンジアミンまたはその塩を、抽出溶媒(後述)に抽出することができる。
【0113】
このようにして得られる抽出溶媒(抽出溶媒(後述)とペンタメチレンジアミンまたはその塩との混合物)において、ペンタメチレンジアミンまたはその塩の濃度は、例えば、0.2〜40質量%、好ましくは、0.3〜35質量%、より好ましくは、0.4〜30質量%、とりわけ好ましくは、0.8〜25質量%である。
【0114】
また、抽出後におけるペンタメチレンジアミンまたはその塩の収率(抽出率)は、リシン(またはその塩)を基準として、例えば、65〜100モル%、好ましくは、70〜100モル%、より好ましくは、80〜100モル%、とりわけ好ましくは、90〜100モル%である。
【0115】
なお、この方法では、必要により、得られた抽出溶媒(後述)とペンタメチレンジアミンまたはその塩との混合物から、例えば、減圧蒸留などの公知の方法により抽出溶媒(後述)を除去し、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を単離することもできる。
【0116】
このような抽出において、抽出溶媒としては、例えば、非ハロゲン系有機溶剤が挙げられる。
【0117】
非ハロゲン系有機溶剤は、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)を分子中に含有しない有機溶剤であって、例えば、非ハロゲン脂肪族系有機溶剤、非ハロゲン脂環族系有機溶剤、非ハロゲン芳香族系有機溶剤などが挙げられる。
【0118】
非ハロゲン脂肪族系有機溶剤としては、例えば、直鎖状の非ハロゲン脂肪族系有機溶剤、分岐状の非ハロゲン脂肪族系有機溶剤などが挙げられる。
【0119】
直鎖状の非ハロゲン脂肪族系有機溶剤としては、例えば、直鎖状の非ハロゲン脂肪族炭化水素類、直鎖状の非ハロゲン脂肪族エーテル類、直鎖状の非ハロゲン脂肪族アルコール類などが挙げられる。
【0120】
直鎖状の非ハロゲン脂肪族炭化水素類としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカンなどが挙げられる。
【0121】
直鎖状の非ハロゲン脂肪族エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテルなどが挙げられる。
【0122】
直鎖状の非ハロゲン脂肪族アルコール類としては、例えば、直鎖状の炭素数1〜3の1価アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなど)、直鎖状の炭素数4〜7の1価アルコール(例えば、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノールなど)、直鎖状の炭素数8以上の1価アルコール(例えば、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノールなど)などが挙げられる。
【0123】
分岐状の非ハロゲン脂肪族系有機溶剤としては、例えば、分岐状の非ハロゲン脂肪族炭化水素類、分岐状の非ハロゲン脂肪族エーテル類、分岐状の非ハロゲン脂肪族1価アルコール類、分岐状の非ハロゲン脂肪族多価アルコール類などが挙げられる。
【0124】
分岐状の非ハロゲン脂肪族炭化水素類としては、例えば、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、n−オクタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、3−エチルへキサン、2,2−ジメチルへキサン、2,3−ジメチルへキサン、2,4−ジメチルへキサン、2,5−ジメチルへキサン、3,3−ジメチルへキサン、3,4−ジメチルへキサン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,2,3,3−テトラメチルブタン、2,2,5−トリメチルヘキサンなどが挙げられる。
【0125】
分岐状の非ハロゲン脂肪族エーテル類としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0126】
分岐状の非ハロゲン脂肪族1価アルコール類としては、例えば、分岐状の炭素数4〜7の1価アルコール(例えば、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−3−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、tert−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、イソヘキサノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、5−メチル−1−ヘキサノール、4−メチル−1−ヘキサノール、3−メチル−1−ヘキサノール、2−エチル−2−メチル−1−ブタノールなど)、分岐状の炭素数8以上の1価アルコール(例えば、イソオクタノール、イソノナノール、イソデカノール、5−エチル−2−ノナノール、トリメチルノニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、3,9−ジエチル−6−トリデカノール、2−イソヘプチルイソウンデカノール、2−オクチルドデカノールなど)が挙げられる。
【0127】
分岐状の非ハロゲン脂肪族多価アルコール類としては、例えば、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0128】
これら非ハロゲン脂肪族系有機溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0129】
非ハロゲン脂肪族系有機溶剤として、好ましくは、直鎖状の非ハロゲン脂肪族系有機溶剤、より好ましくは、直鎖状の非ハロゲン脂肪族アルコール類が挙げられる。
【0130】
直鎖状の非ハロゲン脂肪族アルコール類を用いると、ペンタメチレンジアミンを、高収率で抽出することができる。
【0131】
また、非ハロゲン脂肪族系有機溶剤として、好ましくは、炭素数4〜7の1価アルコール(直鎖状の炭素数4〜7の1価アルコール、分岐状の炭素数4〜7の1価アルコール)が挙げられる。
【0132】
炭素数4〜7の1価アルコールを用いると、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を効率良く抽出することができ、さらには、ペンタメチレンジアミンまたはその塩の不純物(C=N結合を有する含窒素六員環化合物(後述)など)の含有割合を、低減することができる。
【0133】
非ハロゲン脂環族系有機溶剤としては、例えば、非ハロゲン脂環族炭化水素類(例えば、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ビシクロヘキシルなど)が挙げられる。
【0134】
これら非ハロゲン脂環族系有機溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0135】
非ハロゲン芳香族系有機溶剤としては、例えば、非ハロゲン芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、エチルベンゼンなど)、フェノール類(例えば、フェノール、クレゾールなど)などが挙げられる。
【0136】
これら非ハロゲン芳香族系有機溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0137】
また、非ハロゲン系有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類と芳香族炭化水素類との混合物なども挙げられ、そのような混合物としては、例えば、石油エーテル、石油ベンジンなどが挙げられる。
【0138】
これら非ハロゲン系有機溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0139】
なお、抽出溶媒としては、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、例えば、ハロゲン系有機溶剤(ハロゲン原子を分子中に含有する有機溶剤)を用いることもできる。
【0140】
ハロゲン系有機溶剤としては、例えば、ハロゲン系脂肪族炭化水素類(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、テトラクロロエチレンなど)、ハロゲン系芳香族炭化水素類(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)などが挙げられる。
【0141】
これらハロゲン系有機溶剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0142】
一方、抽出溶媒として、ハロゲン系有機溶剤を用いると、得られるペンタメチレンジアミンまたはその塩の総量に対する、C=N結合を有する含窒素六員環化合物(後述)の含有量が増加する場合がある。
【0143】
このような場合には、詳しくは後述するが、そのペンタメチレンジアミンまたはその塩を用いてペンタメチレンジイソシアネート(後述)を製造し、さらに、そのペンタメチレンジイソシアネート(後述)を反応させて、イソシアネート変性体(後述)や、ポリウレタン樹脂(後述)を製造する場合において、イソシアネート変性体(後述)の生産性や物性(例えば、耐黄変性など)に劣る場合がある。
【0144】
また、そのようなペンタメチレンジイソシアネート(後述)やイソシアネート変性体(後述)と、活性水素化合物(後述)とを反応させ、ポリウレタン樹脂を製造する場合にも、やはり、得られるポリウレタン樹脂の物性(例えば、機械強度、耐薬品性など)に劣る場合がある。
【0145】
そのため、抽出溶媒として、好ましくは、非ハロゲン系有機溶剤、より好ましくは、非ハロゲン脂肪族系有機溶剤が挙げられる。
【0146】
ペンタメチレンジアミンまたはその塩を、非ハロゲン脂肪族系有機溶剤により抽出する場合には、ペンタメチレンジアミンまたはその塩におけるC=N結合を有する含窒素六員環化合物(後述)の含有割合を低減することができる。
【0147】
そのため、このようなペンタメチレンジアミンまたはその塩を用いて、ペンタメチレンジイソシアネートを製造する場合には、優れた性質を備えるイソシアネート変性体や、優れた性質を備えるポリウレタン樹脂を効率良く製造することができるペンタメチレンジイソシアネートを、製造することができる。
【0148】
また、本発明において、抽出溶媒の沸点は、例えば、60〜250℃、好ましくは、80〜200℃、より好ましくは、90〜150℃である。
【0149】
抽出溶媒の沸点が、上記下限未満であると、ペンタメチレンジアミン水溶液から抽出により、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を得る際に、抽出溶媒との分離が困難となる場合がある。
【0150】
一方、抽出溶媒の沸点が、上記上限を超過すると、抽出溶媒とペンタメチレンジアミンまたはその塩との混合物からペンタメチレンジアミンまたはその塩を得る際に、分離工程での消費エネルギーが増大する場合がある。
【0151】
また、ペンタメチレンジアミン水溶液からペンタメチレンジアミンまたはその塩を得る方法としては、上記の抽出に限定されず、例えば、蒸留など、公知の単離精製方法を採用することもできる。
【0152】
そして、このようにして得られるペンタメチレンジアミンまたはその塩は、C=N結合を有する含窒素六員環化合物(以下、C=N六員環化合物と称する場合がある。)を含有しないか、または、その含有量が低減されている。
【0153】
C=N六員環化合物としては、例えば、アミノ基とC=N結合とを有する含窒素六員環化合物(以下、アミノ基含有C=N六員環化合物と称する場合がある。)、C=N結合を有し、アミノ基を有さない含窒素六員環化合物(以下、アミノ基不含C=N六員環化合物と称する場合がある。)などが挙げられる。
【0154】
アミノ基含有C=N六員環化合物としては、例えば、下記式(1)で示される化合物などが挙げられる。
【0155】
【化1】

【0156】
(式中、Xは、アミノメチル基を示す。)
上記式(1)で示される化合物として、より具体的には、例えば、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジンなどが挙げられる。
【0157】
アミノ基不含C=N六員環化合物としては、例えば、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンなどが挙げられる。
【0158】
本発明において、ペンタメチレンジアミンまたはその塩の総量(ペンタメチレンジアミンまたはその塩と、不純物(アミノ基含有C=N六員環化合物およびアミノ基不含C=N六員環化合物を含む)との合計量)に対する、これらC=N六員環化合物の含有量(アミノ基含有C=N六員環化合物とアミノ基不含C=N六員環化合物との総量)は、2質量%以下、好ましくは、1.8質量%以下、より好ましくは、1.5質量%以下、とりわけ好ましくは、1.2質量%以下である。
【0159】
C=N六員環化合物の含有量が上記上限を超過する場合には、そのペンタメチレンジアミンまたはその塩を用いてペンタメチレンジイソシアネート(後述)を製造し、さらに、そのペンタメチレンジイソシアネート(後述)を反応させ、イソシアネート変性体(後述)を製造する場合において、ペンタメチレンジイソシアネート(後述)の反応速度が十分ではなく、多量の触媒を必要とするなど、生産性に劣る場合があり、また、得られるイソシアネート変性体(後述)の物性(例えば、貯蔵安定性など)を、十分に確保することができない場合がある。
【0160】
また、そのペンタメチレンジイソシアネート(後述)やイソシアネート変性体(後述)と、活性水素化合物とを反応させ、ポリウレタン樹脂(後述)を製造する場合にも、やはり、得られるポリウレタン樹脂(後述)の物性(例えば、機械強度、耐薬品性など)を十分に確保することができない場合がある。
【0161】
これに対して、C=N六員環化合物の含有量が上記上限以下であれば、効率良く、優れた性質を備えるイソシアネート変性体(後述)や、ポリウレタン樹脂(後述)を製造することができる。
【0162】
また、ペンタメチレンジアミンまたはその塩の総量に対する、アミノ基含有C=N六員環化合物の含有量は、例えば、1.5質量%以下、好ましくは、1.2質量%以下、より好ましくは、1質量%以下、とりわけ好ましくは、0.8質量%以下である。
【0163】
アミノ基含有C=N六員環化合物の含有量が上記上限を超過する場合にも、やはり、上記と同様に、そのペンタメチレンジアミンまたはその塩を用いてペンタメチレンジイソシアネート(後述)を製造し、さらに、そのペンタメチレンジイソシアネート(後述)を反応させ、イソシアネート変性体(後述)を製造する場合において、ペンタメチレンジイソシアネート(後述)の反応速度が十分ではなく、多量の触媒を必要とするなど、生産性に劣る場合があり、また、得られるイソシアネート変性体(後述)の物性(例えば、貯蔵安定性など)を、十分に確保することができない場合がある。
【0164】
また、そのペンタメチレンジイソシアネート(後述)やイソシアネート変性体(後述)と、活性水素化合物とを反応させ、ポリウレタン樹脂(後述)を製造する場合にも、やはり、得られるポリウレタン樹脂(後述)の物性(例えば、機械強度、耐薬品性など)を十分に確保することができない場合がある。
【0165】
これに対して、アミノ基含有C=N六員環化合物の含有量が上記上限以下であれば、詳しくは後述するが、効率良く、優れた性質を備えるイソシアネート変性体(後述)や、ポリウレタン樹脂(後述)を製造することができる。
【0166】
また、ペンタメチレンジアミンまたはその塩の総量に対する、アミノ基不含C=N六員環化合物の含有量は、例えば、0.5質量%以下、好ましくは、0.4質量%以下、より好ましくは、0.3質量%以下、とりわけ好ましくは、0.2質量%以下である。
【0167】
アミノ基不含C=N六員環化合物の含有量が上記上限を超過する場合には、そのペンタメチレンジアミンまたはその塩を用いて製造するペンタメチレンジイソシアネート(後述)や、そのペンタメチレンジイソシアネート(後述)を反応させ、得られるイソシアネート変性体(後述)と、活性水素化合物とを反応させたポリウレタン樹脂(後述)の物性(例えば、機械強度、耐薬品性など)を十分に確保することができない場合がある。
【0168】
そして、この方法では、上記により得られるペンタメチレンジアミンまたはその塩から、ペンタメチレンジイソシアネートが合成される。
【0169】
ペンタメチレンジイソシアネートを合成する方法としては、例えば、ペンタメチレンジアミンまたはその塩をホスゲン化する方法(以下、ホスゲン化法と称する場合がある。)や、ペンタメチレンジアミンまたはその塩をカルバメート化し、その後、熱分解する方法(以下、カルバメート化法と称する場合がある。)などが挙げられる。
【0170】
ホスゲン化法として、より具体的には、例えば、ペンタメチレンジアミンを直接ホスゲンと反応させる方法(以下、冷熱二段ホスゲン化法と称する場合がある。)や、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を不活性溶媒(後述)中に懸濁させてホスゲンと反応させる方法(以下、アミン塩酸塩のホスゲン化法と称する場合がある。)などが挙げられる。
【0171】
冷熱二段ホスゲン化法では、例えば、まず、撹拌可能とされ、かつ、ホスゲン導入管を備えた反応器に、不活性溶媒を装入し、反応系内の圧力を、例えば、常圧〜1.0MPa、好ましくは、常圧〜0.5MPaとし、また、温度を、例えば、0〜80℃、好ましくは、0〜60℃とする。
【0172】
不活性溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどの脂肪酸エステル類、例えば、サリチル酸メチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、安息香酸メチルなどの芳香族カルボン酸エステル類、例えば、モノジクロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどの塩素化芳香族炭化水素類、例えば、クロロホルム、四塩化炭素などの塩素化炭化水素類などが挙げられる。
【0173】
これら不活性溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0174】
不活性溶媒の配合量(総量)は、原料であるペンタメチレンジアミン100質量部に対して、例えば、400〜3000質量部、好ましくは、500〜2000質量部である。
【0175】
次いで、この方法では、ホスゲンを、ペンタメチレンジアミンのアミノ基1つに対して、例えば、1〜10倍モル、好ましくは、1〜6倍モル導入し、上記の不活性溶媒に溶解したペンタメチレンジアミンを添加する。また、この間、反応液を、例えば、0〜80℃、好ましくは、0〜60℃に維持するとともに、発生する塩化水素を、還流冷却器を通じて反応系外に放出する(冷ホスゲン化反応)。これにより、反応器の内容物をスラリー状とする。
【0176】
そして、この冷ホスゲン化反応では、ペンタメチレンジカルバモイルクロリドおよびアミン塩酸塩が生成される。
【0177】
次いで、この方法では、反応系内の圧力を、例えば、常圧〜1.0MPa、好ましくは、0.05〜0.5MPaとし、例えば、30分〜5時間で、例えば、80〜180℃の温度範囲に昇温する。昇温後、例えば、30分〜8時間反応を継続して、スラリー液を完全に溶解させる(熱ホスゲン化反応)。
【0178】
なお、熱ホスゲン化反応において、昇温時および高温反応時には、溶解ホスゲンが気化して還流冷却器を通じて反応系外に逃げるため、還流冷却器からの還流量が確認できるまでホスゲンを適宜導入する。
【0179】
なお、熱ホスゲン化反応終了後、反応系内を、例えば、80〜180℃、好ましくは、90〜160℃において、窒素ガスなどの不活性ガスを導入し、溶解している過剰のホスゲンおよび塩化水素をパージする。
【0180】
この熱ホスゲン化反応では、冷ホスゲン化反応で生成したペンタメチレンジカルバモイルクロリドが熱分解され、ペンタメチレンジイソシアネートが生成され、さらに、ペンタメチレンジアミンのアミン塩酸塩がホスゲン化され、ペンタメチレンジイソシアネートが生成される。
【0181】
一方、アミン塩酸塩のホスゲン化法では、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を十分に乾燥し、微粉砕した後、上記の冷熱二段ホスゲン化法と同様の反応器内で、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を、上記の不活性溶媒中で撹拌し、分散させて、スラリーとする。
【0182】
次いで、この方法では、反応温度を、例えば、80〜180℃、好ましくは、90〜160℃、反応圧力を、例えば、常圧〜1.0MPa、好ましくは、0.05〜0.5MPaに維持し、ホスゲンを1〜10時間かけて、ホスゲン総量が化学量論の1〜10倍になるように導入する。
【0183】
これにより、ペンタメチレンジイソシアネートを合成することができる。
【0184】
なお、反応の進行は、発生する塩化水素ガスの量と、上記の不活性溶媒に不溶のスラリーが消失し、反応液が澄明均一になることより推測できる。また、発生する塩化水素は、例えば、還流冷却器を通じて反応系外に放出する。また、反応の終了時には、上記の方法で溶解している過剰のホスゲンおよび塩化水素をパージする。その後、冷却し、減圧下において、不活性溶媒を留去する。
【0185】
ペンタメチレンジイソシアネートは、加水分解性塩素の濃度(HC)が上昇しやすい傾向にあるため、ホスゲン化法を採用する場合において、HCを低減する必要がある場合には、例えば、ホスゲン化反応させ、脱溶剤させた後、留去させたペンタメチレンジイソシアネートを、例えば、窒素などの不活性ガスを通気しながら、例えば、150℃〜200℃、好ましくは、160〜190℃で、例えば、1〜8時間、好ましくは、3〜6時間加熱処理する。その後、精留処理することによって、ペンタメチレンジイソシアネートのHCを著しく低減することができる。
【0186】
本発明において、ペンタメチレンジイソシアネートの加水分解性塩素の濃度は、例えば、100ppm以下、好ましくは、80ppm以下、より好ましくは、60ppm以下、さらに好ましくは、50ppm以下である。
【0187】
なお、加水分解性塩素の濃度は、例えば、JIS K−1556(2000)の附属書3に記載されている加水分解性塩素の試験方法に準拠して測定することができる。
【0188】
加水分解性塩素の濃度が100ppmを超過すると、トリマー化(後述)の反応速度が低下し、多量のトリマー化触媒(後述)を必要とする場合があり、トリマー化触媒(後述)を多量に用いると、得られるポリイソシアネート組成物(後述)の黄変度が高くなる場合や、数平均分子量が高くなり、粘度が高くなる場合がある。
【0189】
また、加水分解性塩素の濃度が100ppmを超過すると、ポリイソシアネート組成物(後述)の貯蔵工程、および、ポリウレタン樹脂(後述)の製造工程において、粘度、色相が大きく変化する場合がある。
【0190】
カルバメート化法としては、例えば、尿素法などが挙げられる。
【0191】
尿素法では、例えば、まず、ペンタメチレンジアミンをカルバメート化し、ペンタメチレンジカルバメート(PDC)を生成させる。
【0192】
より具体的には、ペンタメチレンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを反応させる。
【0193】
N−無置換カルバミン酸エステルとしては、例えば、N−無置換カルバミン酸脂肪族エステル類(例えば、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、カルバミン酸プロピル、カルバミン酸iso−プロピル、カルバミン酸ブチル、カルバミン酸iso−ブチル、カルバミン酸sec−ブチル、カルバミン酸tert−ブチル、カルバミン酸ペンチル、カルバミン酸iso−ペンチル、カルバミン酸sec−ペンチル、カルバミン酸ヘキシル、カルバミン酸ヘプチル、カルバミン酸オクチル、カルバミン酸2−エチルヘキシル、カルバミン酸ノニル、カルバミン酸デシル、カルバミン酸イソデシル、カルバミン酸ドデシル、カルバミン酸テトラデシル、カルバミン酸ヘキサデシルなど)、N−無置換カルバミン酸芳香族エステル類(例えば、カルバミン酸フェニル、カルバミン酸トリル、カルバミン酸キシリル、カルバミン酸ビフェニル、カルバミン酸ナフチル、カルバミン酸アントリル、カルバミン酸フェナントリルなど)などが挙げられる。
【0194】
これらN−無置換カルバミン酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0195】
N−無置換カルバミン酸エステルとして、好ましくは、N−無置換カルバミン酸脂肪族エステル類が挙げられる。
【0196】
アルコールとしては、例えば、1〜3級の1価のアルコールが挙げられ、より具体的には、例えば、脂肪族アルコール類、芳香族アルコール類などが挙げられる。
【0197】
脂肪族アルコール類としては、例えば、直鎖状の脂肪族アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール(1−ブタノール)、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール(1−オクタノール)、n−ノナノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノールなど)、分岐状の脂肪族アルコール類(例えば、iso−プロパノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ペンタノール、sec−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、iso−デカノールなど)などが挙げられる。
【0198】
芳香族アルコール類としては、例えば、フェノール、ヒドロキシトルエン、ヒドロキシキシレン、ビフェニルアルコール、ナフタレノール、アントラセノール、フェナントレノールなどが挙げられる。
【0199】
これらアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0200】
アルコールとして、好ましくは、脂肪族アルコール類、より好ましくは、直鎖状の脂肪族アルコール類が挙げられる。
【0201】
また、アルコールとして、好ましくは、上記した炭素数4〜7の1価アルコール(直鎖状の炭素数4〜7の1価アルコール、分岐状の炭素数4〜7の1価アルコール)が挙げられる。
【0202】
さらには、上記した抽出において抽出溶媒としてアルコール(炭素数4〜7の1価アルコールなど)が用いられる場合には、好ましくは、そのアルコールを、反応原料アルコールとして用いる。
【0203】
そして、この方法では、ペンタメチレンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを配合し、好ましくは、液相で反応させる。
【0204】
ペンタメチレンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの配合割合は、特に制限はなく、比較的広範囲において適宜選択することができる。
【0205】
通常は、尿素およびN−無置換カルバミン酸エステルの配合量、および、アルコールの配合量が、ペンタメチレンジアミンのアミノ基に対して等モル以上あればよく、そのため、尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルや、アルコールそのものを、この反応における反応溶媒として用いることもできる。
【0206】
また、上記した抽出において抽出溶媒としてアルコール(炭素数4〜7の1価アルコールなど)が用いられる場合には、好ましくは、そのアルコールをそのまま、反応原料および反応溶媒として用いる。
【0207】
なお、尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルや、アルコールを反応溶媒として兼用する場合には、必要に応じて過剰量の尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルやアルコールが用いられるが、過剰量が多いと、反応後の分離工程での消費エネルギーが増大するので、工業生産上、不適となる。
【0208】
そのため、尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルの配合量は、カルバメートの収率を向上させる観点から、ペンタメチレンジアミンのアミノ基1つに対して、0.5〜20倍モル、好ましくは、1〜10倍モル、さらに好ましくは、1〜5倍モルであり、アルコールの配合量は、ペンタメチレンジアミンのアミノ基1つに対して、0.5〜100倍モル、好ましくは、1〜20倍モル、さらに好ましくは、1〜10倍モルである。
【0209】
また、この方法においては、触媒を用いることもできる。
【0210】
触媒としては、特に制限されないが、例えば、周期律表第1族(IUPAC Periodic Table of the Elements(version date 22 June 2007)に従う。以下同じ。)金属化合物(例えば、リチウムメタノラート、リチウムエタノラート、リチウムプロパノラート、リチウムブタノラート、ナトリウムメタノラート、カリウム−tert−ブタノラートなど)、第2族金属化合物(例えば、マグネシウムメタノラート、カルシウムメタノラートなど)、第3族金属化合物(例えば、酸化セリウム(IV)、酢酸ウラニルなど)、第4族金属化合物(チタンテトライソプロパノラート、チタンテトラブタノラート、四塩化チタン、チタンテトラフェノラート、ナフテン酸チタンなど)、第5族金属化合物(例えば、塩化バナジウム(III)、バナジウムアセチルアセトナートなど)、第6族金属化合物(例えば、塩化クロム(III)、酸化モリブデン(VI)、モリブデンアセチルアセトナート、酸化タングステン(VI)など)、第7族金属化合物(例えば、塩化マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)など)、第8族金属化合物(例えば、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、リン酸鉄、シュウ酸鉄、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)など)、第9族金属化合物(例えば、酢酸コバルト、塩化コバルト、硫酸コバルト、ナフテン酸コバルトなど)、第10族金属化合物(例えば、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、ナフテン酸ニッケルなど)、第11族金属化合物(例えば、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、ビス−(トリフェニル−ホスフィンオキシド)−塩化銅(II)、モリブデン酸銅、酢酸銀、酢酸金など)、第12族金属化合物(例えば、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセトニルアセタート、オクタン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、ヘキシル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、ウンデシル酸亜鉛など)、第13族金属化合物(例えば、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウム−イソブチラート、三塩化アルミニウムなど)、第14族金属化合物(例えば、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸鉛、リン酸鉛など)、第15族金属化合物(例えば、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、塩化ビスマス(III)など)などが挙げられる。
【0211】
さらに、触媒としては、例えば、Zn(OSOCF(別表記:Zn(OTf)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO、Zn(OSO、Zn(OSO、Zn(OSOCH(p−トルエンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO、Zn(BF、Zn(PF、Hf(OTf)(トリフルオロメタンスルホン酸ハフニウム)、Sn(OTf)、Al(OTf)、Cu(OTf)なども挙げられる。
【0212】
これら触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0213】
また、触媒の配合量は、ペンタメチレンジアミン1モルに対して、例えば、0.000001〜0.1モル、好ましくは、0.00005〜0.05モルである。触媒の配合量がこれより多くても、それ以上の顕著な反応促進効果が見られない反面、配合量の増大によりコストが上昇する場合がある。一方、配合量がこれより少ないと、反応促進効果が得られない場合がある。
【0214】
なお、触媒の添加方法は、一括添加、連続添加および複数回の断続分割添加のいずれの添加方法でも、反応活性に影響を与えることがなく、特に制限されることはない。
【0215】
また、この反応において、反応溶媒は必ずしも必要ではないが、例えば、反応原料が固体の場合や反応生成物が析出する場合には、溶媒を配合することにより操作性を向上させることができる。
【0216】
溶媒としては、反応原料であるペンタメチレンジアミン、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、および、アルコールと、反応生成物であるウレタン化合物などに対して不活性であるか反応性に乏しいものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、ペンタン、石油エーテル、リグロイン、シクロドデカン、デカリン類など)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、メチルナフタレン、クロロナフタレン、ジベンジルトルエン、トリフェニルメタン、フェニルナフタレン、ビフェニル、ジエチルビフェニル、トリエチルビフェニルなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなど)、カーボネート類(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリルなど)、脂肪族ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,4−ジクロロブタンなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ニトロ化合物類(例えば、ニトロメタン、ニトロベンゼンなど)や、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0217】
さらに、反応溶媒として、例えば、上記した抽出における抽出溶媒も挙げられる。
【0218】
これら反応溶媒のなかでは、経済性、操作性などを考慮すると、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類が好ましく用いられる。
【0219】
また、反応溶媒として、好ましくは、上記した抽出における抽出溶媒が挙げられる。
【0220】
抽出溶媒を反応溶媒として用いることにより、抽出されたペンタメチレンジイソシアネートをそのままカルバメート化反応に供することができ、操作性の向上を図ることができる。
【0221】
また、このような反応溶媒は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0222】
また、反応溶媒の配合量は、目的生成物のペンタメチレンジカルバメートが溶解する程度の量であれば特に制限されないが、工業的には、反応液から反応溶媒を回収する必要があるため、その回収に消費されるエネルギーをできる限り低減し、かつ、配合量が多いと、反応基質濃度が低下して反応速度が遅くなるため、できるだけ少ない方が好ましい。より具体的には、ペンタメチレンジアミン1質量部に対して、通常、0.1〜500質量部、好ましくは、1〜100質量部の範囲で用いられる。
【0223】
また、この反応においては、反応温度は、例えば、100〜350℃、好ましくは、150〜300℃の範囲において適宜選択される。反応温度がこれより低いと、反応速度が低下する場合があり、一方、これより高いと、副反応が増大して目的生成物であるペンタメチレンジカルバメートの収率が低下する場合がある。
【0224】
また、反応圧力は、通常、大気圧であるが、反応液中の成分の沸点が反応温度よりも低い場合には加圧してもよく、さらには、必要により減圧してもよい。
【0225】
また、反応時間は、例えば、0.1〜20時間、好ましくは、0.5〜10時間である。反応時間がこれより短いと、目的生成物であるペンタメチレンジカルバメートの収率が低下する場合がある。一方、これより長いと、工業生産上、不適となる。
【0226】
そして、この反応は、上記した条件で、例えば、反応容器内に、ペンタメチレンジアミン、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、アルコール、および、必要により触媒、反応溶媒を仕込み、攪拌あるいは混合すればよい。そうすると、温和な条件下において、短時間、低コストかつ高収率で、ペンタメチレンジカルバメートが生成する。
【0227】
なお、得られるペンタメチレンジカルバメートは、通常、原料成分として用いられる上記のペンタメチレンジアミンに対応し、より具体的には、1,5−ペンタメチレンジカルバメート、1,4−ペンタメチレンジカルバメート、1,3−ペンタメチレンジカルバメート、2,5−ペンタメチレンジカルバメート、または、これらの混合物が挙げられる。
【0228】
すなわち、原料成分としてリシン(またはその塩)の脱炭酸酵素反応により得られる1,5−ペンタメチレンジアミンを採用する場合には、カルバメート化により、1,5−ペンタメチレンジカルバメートが得られる。
【0229】
また、この反応においては、アンモニアが副生される。
【0230】
また、この反応において、N−無置換カルバミン酸エステルを配合する場合には、そのエステルに対応するアルコールが副生される。
【0231】
なお、この反応において、反応型式としては、回分式、連続式いずれの型式も採用することができる。
【0232】
また、この反応は、好ましくは、副生するアンモニアを系外に流出させながら反応させる。さらには、N−無置換カルバミン酸エステルを配合する場合には、副生するアルコールを系外に留出させながら反応させる。
【0233】
これにより、目的生成物であるペンタメチレンジカルバメートの生成を促進し、その収率を、より一層向上することができる。
【0234】
また、得られたペンタメチレンジカルバメートを単離する場合には、例えば、過剰(未反応)の尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、過剰(未反応)のアルコール、触媒、ペンタメチレンジカルバメート、反応溶媒、副生するアンモニア、場合により副生するアルコールなどを含む反応液から、公知の分離精製方法によって、ペンタメチレンジカルバメートを分離すればよい。
【0235】
次いで、このペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、得られたペンタメチレンジカルバメートを熱分解して、ペンタメチレンジイソシアネートを製造する。
【0236】
すなわち、このようなイソシアネートの製造方法では、上記によって得られたペンタメチレンジカルバメートを熱分解し、ペンタメチレンジイソシアネート、および、副生物であるアルコールを生成させる。
【0237】
なお、得られるペンタメチレンジイソシアネートは、通常、原料成分として用いられる上記のペンタメチレンジアミンに対応し、より具体的には、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,4−ペンタメチレンジイソシアネート、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、2,5−ペンタメチレンジイソシアネート、または、これらの混合物が挙げられる。
【0238】
すなわち、原料成分としてリシン(またはその塩)の脱炭酸酵素反応により得られる1,5−ペンタメチレンジアミン(またはその塩)を採用する場合には、熱分解により、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートが得られる。
【0239】
また、アルコールとしては、通常、原料成分として用いられるアルコールと同種のアルコールが、副生する。
【0240】
この熱分解は、特に限定されず、例えば、液相法、気相法などの公知の分解法を用いることができる。
【0241】
気相法では、熱分解により生成するペンタメチレンジイソシアネートおよびアルコールは、気体状の生成混合物から、分別凝縮によって分離することができる。また、液相法では、熱分解により生成するペンタメチレンジイソシアネートおよびアルコールは、例えば、蒸留や、担持物質としての溶剤および/または不活性ガスを用いて、分離することができる。
【0242】
熱分解として、好ましくは、作業性の観点から、液相法が挙げられる。
【0243】
液相法におけるペンタメチレンジカルバメートの熱分解反応は、可逆反応であるため、好ましくは、熱分解反応の逆反応(ペンタメチレンジイソシアネートとアルコールとのウレタン化反応)を抑制するため、ペンタメチレンジカルバメートを熱分解するとともに、反応混合物からペンタメチレンジイソシアネート、および/または、副生するアルコールを、例えば、気体として抜き出し、それらを分離する。
【0244】
熱分解反応の反応条件として、好ましくは、ペンタメチレンジカルバメートを良好に熱分解できるとともに、熱分解において生成したペンタメチレンジイソシアネートおよびアルコールが蒸発し、これによりペンタメチレンジカルバメートとペンタメチレンジイソシアネートとが平衡状態とならず、さらには、ペンタメチレンジイソシアネートの重合などの副反応が抑制される条件が挙げられる。
【0245】
このような反応条件として、より具体的には、熱分解温度は、通常、350℃以下であり、好ましくは、80〜350℃、より好ましくは、100〜300℃である。80℃よりも低いと、実用的な反応速度が得られない場合があり、また、350℃を超えると、ペンタメチレンジイソシアネートの重合など、好ましくない副反応を生じる場合がある。また、熱分解反応時の圧力は、上記の熱分解反応温度に対して、生成するアルコールが気化し得る圧力であることが好ましく、設備面および用役面から実用的には、0.133〜90kPaであることが好ましい。
【0246】
また、この熱分解に用いられるペンタメチレンジカルバメートは、精製したものでもよいが、上記反応(すなわち、ペンタメチレンジアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応)の終了後に、過剰(未反応)の尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、過剰(未反応)のアルコール、触媒、反応溶媒、副生するアンモニア、場合により副生するアルコールを回収して分離されたペンタメチレンジカルバメートの粗原料を用いて、引き続き熱分解してもよい。
【0247】
さらに、必要により、触媒および不活性溶媒を添加してもよい。これら触媒および不活性溶媒は、それらの種類により異なるが、上記反応時、反応後の蒸留分離の前後、ペンタメチレンジカルバメートの分離の前後の、いずれかに添加すればよい。
【0248】
熱分解に用いられる触媒としては、イソシアネートと水酸基とのウレタン化反応に用いられる、Sn、Sb、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cr、Ti、Pb、Mo、Mnなどから選ばれる1種以上の金属単体またはその酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、リン酸塩、有機金属化合物などの金属化合物が用いられる。これらのうち、この熱分解においては、Fe、Sn、Co、Sb、Mnが副生成物を生じにくくする効果を発現するため、好ましく用いられる。
【0249】
Snの金属触媒としては、例えば、酸化スズ、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、ギ酸スズ、酢酸スズ、シュウ酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、オレイン酸スズ、リン酸スズ、二塩化ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシジスタノキサンなどが挙げられる。
【0250】
Fe、Co、Sb、Mnの金属触媒としては、例えば、それらの酢酸塩、安息香酸塩、ナフテン酸塩、アセチルアセトナート塩などが挙げられる。
【0251】
なお、触媒の配合量は、金属単体またはその化合物として、反応液に対して0.0001〜5質量%の範囲、好ましくは、0.001〜1質量%の範囲である。
【0252】
また、不活性溶媒は、少なくとも、ペンタメチレンジカルバメートを溶解し、ペンタメチレンジカルバメートおよびイソシアネートに対して不活性であり、かつ、熱分解における温度において安定であれば、特に制限されないが、熱分解反応を効率よく実施するには、生成するイソシアネートよりも高沸点であることが好ましい。このような不活性溶媒としては、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシルなどのエステル類、例えば、ジベンジルトルエン、トリフェニルメタン、フェニルナフタレン、ビフェニル、ジエチルビフェニル、トリエチルビフェニルなどの熱媒体として常用される芳香族系炭化水素や脂肪族系炭化水素などが挙げられる。
【0253】
また、不活性溶媒は、市販品としても入手可能であり、例えば、バーレルプロセス油B−01(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、バーレルプロセス油B−03(芳香族炭化水素類、沸点:280℃)、バーレルプロセス油B−04AB(芳香族炭化水素類、沸点:294℃)、バーレルプロセス油B−05(芳香族炭化水素類、沸点:302℃)、バーレルプロセス油B−27(芳香族炭化水素類、沸点:380℃)、バーレルプロセス油B−28AN(芳香族炭化水素類、沸点:430℃)、バーレルプロセス油B−30(芳香族炭化水素類、沸点:380℃)、バーレルサーム200(芳香族炭化水素類、沸点:382℃)、バーレルサーム300(芳香族炭化水素類、沸点:344℃)、バーレルサーム400(芳香族炭化水素類、沸点:390℃)、バーレルサーム1H(芳香族炭化水素類、沸点:215℃)、バーレルサーム2H(芳香族炭化水素類、沸点:294℃)、バーレルサーム350(芳香族炭化水素類、沸点:302℃)、バーレルサーム470(芳香族炭化水素類、沸点:310℃)、バーレルサームPA(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、バーレルサーム330(芳香族炭化水素類、沸点:257℃)、バーレルサーム430(芳香族炭化水素類、沸点:291℃)、(以上、松村石油社製)、NeoSK−OIL1400(芳香族炭化水素類、沸点:391℃)、NeoSK−OIL1300(芳香族炭化水素類、沸点:291℃)、NeoSK−OIL330(芳香族炭化水素類、沸点:331℃)、NeoSK−OIL170(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、NeoSK−OIL240(芳香族炭化水素類、沸点:244℃)、KSK−OIL260(芳香族炭化水素類、沸点:266℃)、KSK−OIL280(芳香族炭化水素類、沸点:303℃)、(以上、綜研テクニックス社製)などが挙げられる。
【0254】
不活性溶媒の配合量は、ペンタメチレンジカルバメート1質量部に対して0.001〜100質量部の範囲、好ましくは、0.01〜80質量部、より好ましくは、0.1〜50質量部の範囲である。
【0255】
また、この熱分解反応は、ペンタメチレンジカルバメート、触媒および不活性溶媒を一括で仕込む回分反応、また、触媒を含む不活性溶媒中に、減圧下でペンタメチレンジカルバメートを仕込んでいく連続反応のいずれでも実施することができる。
【0256】
また、熱分解では、ペンタメチレンジイソシアネートおよびアルコールが生成するとともに、副反応によって、例えば、アロファネート、アミン類、尿素、炭酸塩、カルバミン酸塩、二酸化炭素などが生成する場合があるため、必要により、得られたペンタメチレンジイソシアネートは、公知の方法により精製される。
【0257】
また、カルバメート法としては、詳しくは述べないが、上記した尿素法の他、公知のカーボネート法、すなわち、ペンタメチレンジアミンと、炭酸ジアルキルあるいは炭酸ジアリールとからペンタメチレンジカルバメートを合成し、そのペンタメチレンジカルバメートを、上記と同様に熱分解して、ペンタメチレンジイソシアネートを得る方法などを採用することもできる。
【0258】
このようにして得られる本発明のペンタメチレンジイソシアネートの純度は、例えば、95〜100質量%、好ましくは、97〜100質量%、より好ましくは98〜100質量%、とりわけ好ましくは、99〜100質量%、最も好ましくは、99.5〜100質量%である。
【0259】
また、ペンタメチレンジイソシアネートには、例えば、安定剤などを添加することができる。
【0260】
安定剤としては、例えば、酸化防止剤、酸性化合物、スルホンアミド基を含有する化合物、有機亜リン酸エステルなどが挙げられる。
【0261】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、具体的には、例えば、2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオ−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−メチリデン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−[4−メチル−6−(1−メチルシクロヘキシル)−フェノール]、テトラキス−[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニル]−メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオニル−メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン、N,N’−ヘキサメチレン−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸アミド、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−ブタン、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−メシチレン、エチレングリコール−ビス−[3,3−ビス−(3’−t−ブチルー4’−ヒドロキシフェニル)−ブチレート、2,2’−チオジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、ジ−(3−t−ブチル−4’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−ジシクロペンタジエン、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ジエチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベジルホスホネート、トリエチレングリコール−ビス−3−(t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオネート、さらには、例えば、IRGANOX1010、IRGANOX1076、IRGANOX1098、IRGANOX1135、IRGANOX1726、IRGANOX245、IRGANOX3114、IRGANOX3790(以上、BASFジャパン社製、商品名)などが挙げられる。
【0262】
これら酸化防止剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0263】
酸性化合物としては、例えば、有機酸性化合物が挙げられ、具体的には、例えば、リン酸エステル、亜リン酸エステル、次亜リン酸エステル、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシ酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、スルホン酸、スルホン酸エステル、フェノール、エノール、イミド、オキシムなどが挙げられる。
【0264】
これら酸性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0265】
スルホンアミド基を含有する化合物としては、例えば、芳香族スルホンアミド類、脂肪族スルホンアミド類などが挙げられる。
【0266】
芳香族スルホンアミド類としては、例えば、ベンゼンスルホンアミド、ジメチルベンゼンスルホンアミド、スルファニルアミド、o−およびp−トルエンスルホンアミド、ヒドロキシナフタレンスルホンアミド、ナフタレン−1−スルホンアミド、ナフタレン−2−スルホンアミド、m−ニトロベンゼンスルホンアミド、p−クロロベンゼンスルホンアミドなどが挙げられる。
【0267】
脂肪族スルホンアミド類としては、例えば、メタンスルホンアミド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジメチルエタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、N−メトキシメタンスルホンアミド、N−ドデシルメタンスルホンアミド、N−シクロヘキシル−1−ブタンスルホンアミド、2−アミノエタンスルホンアミドなどが挙げられる。
【0268】
これらスルホンアミド基を含有する化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0269】
有機亜リン酸エステルとしては、例えば、有機亜リン酸ジエステル、有機亜リン酸トリエステルなどが挙げられ、より具体的には、例えば、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイトなどのモノフォスファイト類、例えば、ジステアリル・ペンタエリスリチル・ジホスファイト、ジ・ドデシル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ジ・トリデシル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ジノニルフェニル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、テトラフェニル・テトラ・トリデシル・ペンタエリスリチル・テトラホスファイト、テトラフェニル・ジプロピレングリコール・ジホスファイト、トリペンタエリスリトール・トリホスファイトなどの多価アルコールから誘導されたジ、トリあるいはテトラホスファイト類、さらに、例えば、炭素数が1〜20のジ・アルキル・ビスフェノールA・ジホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ・トリデシル)ホスファイトなどのビスフェノール系化合物から誘導されたジホスファイト類、水添ビスフェノールAホスファイトポリマー(分子量2400〜3000)などのポリホスファイト類、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスファイトなどが挙げられる。
【0270】
これら有機亜リン酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0271】
安定剤として、好ましくは、酸化防止剤、酸性化合物、スルホンアミド基を含有する化合物が挙げられる。より好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートに、酸化防止剤と、酸性化合物および/またはスルホンアミド基を含有する化合物とを配合し、含有させる。
【0272】
これら安定剤を添加することにより、そのペンタメチレンジイソシアネートの貯蔵安定性、活性水素化合物(後述)との反応性、および、ペンタメチレンジイソシアネートを用いてイソシアネート変性体(後述)を製造する場合の反応性、さらには、得られるイソシアネート変性体(後述)の貯蔵安定性を向上させることができる。
【0273】
なお、安定剤の配合割合は、特に制限されず、必要および用途に応じて、適宜設定される。
【0274】
具体的には、酸化防止剤の配合割合は、ペンタメチレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.0005〜0.05質量部である。
【0275】
また、酸性化合物および/またはスルホンアンド基を含有する化合物の配合割合(併用される場合には、それらの総量)は、ペンタメチレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.0005〜0.02質量部である。
【0276】
そして、このようにして得られる本発明のペンタメチレンジイソシアネートは、C=N結合を有する含窒素六員環化合物を含有しないか、または、その含有量が低減されたペンタメチレンジアミンまたはその塩から合成される。
【0277】
そのため、本発明のペンタメチレンジイソシアネートによれば、効率良く、優れた性質を備えるイソシアネート変性体を製造することができる。
【0278】
また、本発明のペンタメチレンジイソシアネートによれば、優れた性質を備えるポリウレタン樹脂を製造することもできる。
【0279】
そして、本発明のペンタメチレンジイソシアネートは、イソシアネート変性体(ポリイソシアネート組成物)の製造において、好適に用いられる。
【0280】
ポリイソシアネート組成物は、より具体的には、ペンタメチレンジイソシアネートを変性することにより得られ、下記(a)〜(e)の官能基を少なくとも1種含有している。
(a)イソシアヌレート基
(b)アロファネート基
(c)ビウレット基
(d)ウレタン基
(e)ウレア基
上記(a)の官能基(イソシアヌレート基)を含有するポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネートのトリマー(三量体)であって、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートを公知のイソシアヌレート化触媒の存在下において反応させ、三量化することにより、得ることができる。
【0281】
上記(b)の官能基(アロファネート基)を含有するポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネートのアロファネート変性体であって、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートとモノアルコールとを反応させた後、公知のアロファネート化触媒の存在下でさらに反応させることにより、得ることができる。
【0282】
上記(c)の官能基(ビウレット基)を含有するポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネートのビウレット変性体であって、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートと、例えば、水、第三級アルコール(例えば、t−ブチルアルコールなど)、第二級アミン(例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミンなど)などとを反応させた後、公知のビウレット化触媒の存在下でさらに反応させることにより、得ることができる。
【0283】
上記(b)の官能基(ウレタン基)を含有するポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネートのポリオール変性体であって、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートとポリオール成分(例えば、トリメチロールプロパンなど。詳しくは後述)との反応により、得ることができる。
【0284】
上記(e)の官能基(ウレア基)を含有するポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネートのポリアミン変性体であって、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートと水、ポリアミン成分(後述)などとの反応により、得ることができる。
【0285】
なお、ポリイソシアネート組成物は、上記(a)〜(e)の官能基を少なくとも1種含有していればよく、2種以上含有することもできる。そのようなポリイソシアネート組成物は、上記の反応を適宜併用することにより、生成される。
【0286】
ポリイソシアネート組成物として、好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートのトリマー(イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネート組成物)が挙げられる。
【0287】
なお、ペンタメチレンジイソシアネートのトリマーは、イソシアヌレート基の他、さらに、イミノオキサジアジンジオン基などを有するポリイソシアネートを、含んでいる。
【0288】
ペンタメチレンジイソシアネートをトリマー化する方法としては、ペンタメチレンジイソシアネートとアルコール類とを反応させ、次いでトリマー化触媒の存在下にトリマー化反応させた後、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去する方法、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートのみをトリマー化反応させた後、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去し、得られたトリマーとアルコール類とを反応させる方法などが挙げられる。
【0289】
好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートとアルコールとを反応させ、次いでトリマー化触媒の存在下にトリマー化反応させた後、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去する方法により、ポリイソシアネート組成物を得る。
【0290】
本発明において、アルコール類としては、例えば、1価アルコール、2価アルコール、3価アルコール、4価以上のアルコールなどが挙げられる。
【0291】
1価アルコールとしては、例えば、直鎖状の1価アルコール、分岐状の1価アルコールなどが挙げられる。
【0292】
直鎖状の1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール(ラウリルアルコール)、n−トリデカノール、n−テトラデカノール、n−ペンタデカノール、n−ヘキサデカノール、n−ヘプタデカノール、n−オクタデカノール(ステアリルアルコール)、n−ノナデカノール、エイコサノールなどが挙げられる。
【0293】
分岐状の1価アルコールとしては、例えば、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イソペンタノール、イソヘキサノール、イソヘプタノール、イソオクタノール、2−エチルへキサン−1−オール、イソノナノール、イソデカノール、5−エチル−2−ノナノール、トリメチルノニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、3,9−ジエチル−6−トリデカノール、2−イソヘプチルイソウンデカノール、2−オクチルドデカノール、その他の分岐状アルカノール(C(炭素数、以下同様)5〜20)などが挙げられる。
【0294】
2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、その他の直鎖状のアルカン(C7〜20)ジオールなどの直鎖状の2価アルコール、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,2−トリメチルペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、その他の分岐状のアルカン(C7〜20)ジオールなどの分岐状の2価アルコール、例えば、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAなどが挙げられる。
【0295】
3価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0296】
4価以上のアルコールとしては、例えば、テトラメチロールメタン、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトールなどが挙げられる。
【0297】
また、これらアルコール類は、分子中に1つ以上のヒドロキシ基を有していれば、それ以外の分子構造は、本発明の優れた効果を阻害しない限り、特に制限されず、例えば、分子中に、エステル基、エーテル基、シクロヘキサン環、芳香環などを有することもできる。このようなアルコール類としては、例えば、上記1価アルコールとアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなど)との付加重合物(2種類以上のアルキレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック重合物)であるエーテル基含有1価アルコール、上記1価アルコールとラクトン(例えば、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンなど)との付加重合物であるエステル基含有1価アルコールなどが挙げられる。
【0298】
これらアルコール類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0299】
アルコール類として、好ましくは、1価および2価アルコールが挙げられ、1価および2価アルコールとして、好ましくは、炭素数が1〜20の1価および2価アルコール、より好ましくは、炭素数が1〜15の1価および2価アルコール、さらに好ましくは、炭素数が1〜10の1価および2価アルコール、とりわけ好ましくは、炭素数が2〜6の1価および2価アルコールが挙げられる。また、1価および2価アルコールとして、好ましくは、分岐状の1価および2価アルコールが挙げられる。ポリイソシアネート組成物の粘度をより下げるために、最も好ましくは、1価アルコールが挙げられる。
【0300】
アルコール類は、得られるポリイソシアネート組成物において、その平均官能基数が2以上となるように使用され、その配合割合は、ペンタメチレンジイソシアネート100質量部に対して、アルコール類が、例えば、0.1〜5質量部、好ましくは、0.2〜3質量部である。
【0301】
また、ペンタメチレンジイソシアネートのトリマー化反応においては、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、必要に応じて、上記したアルコール類と、例えば、チオール類、オキシム類、ラクタム類、フェノール類、βジケトン類などの活性水素化合物とを併用することができる。
【0302】
そして、本発明においては、ペンタメチレンジイソシアネートとアルコール類とを、得られるポリイソシアネート組成物において、そのイソシアネート基濃度が、例えば、10〜28質量%となるように反応させる。
【0303】
イソシアネート基濃度が上記範囲となるように、ペンタメチレンジイソシアネートとアルコール類とを反応させるには、ペンタメチレンジイソシアネートとアルコール類とを反応させた後、トリマー化触媒の存在下において、所定の反応条件でトリマー化反応させる。
【0304】
かかるトリマー化触媒としては、トリマー化に有効な触媒であれば、特に限定されず、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドやその有機弱酸塩、例えば、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウムなどのトリアルキルヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドやその有機弱酸塩、例えば、酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸などのアルキルカルボン酸のアルカリ金属塩、例えば、上記アルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛などの金属塩、例えば、アルミニウムアセチルアセトン、リチウムアセチルアセトンなどのβ−ジケトンの金属キレート化合物、例えば、塩化アルミニウム、三フッ化硼素などのフリーデル・クラフツ触媒、例えば、チタンテトラブチレート、トリブチルアンチモン酸化物などの種々の有機金属化合物、例えば、ヘキサメチルシラザンなどのアミノシリル基含有化合物などが挙げられる。
【0305】
具体的には、例えば、Zwitter ion型のヒドロキシアルキル第4級アンモニウム化合物などが挙げられ、より具体的には、例えば、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエート、N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・ヘキサノエート、トリエチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・ヘキサデカノエート、トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・フェニルカーボネート、トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム・フォーメートなどが挙げられる。
【0306】
これらトリマー化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0307】
トリマー化触媒として、好ましくは、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートが挙げられる。
【0308】
トリマー化触媒の添加割合は、ペンタメチレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.0005〜0.3質量部、好ましくは、0.001〜0.1質量部、より好ましくは、0.001〜0.05質量部である。
【0309】
また、トリマー化を調節するために、例えば、特開昭61−129173号公報に記載されているような有機亜リン酸エステルなどを、助触媒として使用することもできる。
【0310】
有機亜リン酸エステルとしては、例えば、有機亜リン酸ジエステル、有機亜リン酸トリエステルなどが挙げられ、より具体的には、例えば、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイトなどのモノフォスファイト類、例えば、ジステアリル・ペンタエリスリチル・ジホスファイト、ジ・ドデシル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ジ・トリデシル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ジノニルフェニル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、テトラフェニル・テトラ・トリデシル・ペンタエリスリチル・テトラホスファイト、テトラフェニル・ジプロピレングリコール・ジホスファイト、トリペンタエリスリトール・トリホスファイトなどの多価アルコールから誘導されたジ、トリあるいはテトラホスファイト類、さらに、例えば、炭素数が1〜20のジ・アルキル・ビスフエノールA・ジホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ・トリデシル)ホスファイトなどのビスフェノール系化合物から誘導されたジホスファイト類、水添ビスフェノールAホスファイトポリマー(分子量2400〜3000)などのポリホスファイト類、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスファイトなどが挙げられる。
【0311】
また、この反応では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、例えば、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノール、イルガノックス1010、イルガノックス1076、イルガノックス1135、イルガノックス245(以上、チバ・ジャパン社製、商品名)などの安定剤を添加することもできる。
【0312】
所定の反応条件としては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気、常圧(大気圧)下において、反応温度が、例えば、30〜100℃、好ましくは、40〜80℃であり、反応時間が、例えば、0.5〜10時間、好ましくは、1〜5時間である。
【0313】
また、この反応において、ペンタメチレンジイソシアネートとアルコール類とは、アルコール類のヒドロキシ基に対する、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、20以上、好ましくは、30以上、より好ましくは、40以上、とりわけ好ましくは、60以上、通常、1000以下となる配合割合にて、配合される。
【0314】
所定のイソシアネート基濃度に到達した後、上記したトリマー化触媒を添加して、トリマー化反応させる。
【0315】
この反応における、イソシアネート基の転化率は、例えば、5〜35質量%、好ましくは、5〜30質量%、より好ましくは、5〜25質量%である。
【0316】
転化率が35質量%を超過すると、得られるポリイソシアネート組成物の数平均分子量が高くなり、溶解性、相溶性、NCO含量(イソシアネート基濃度)が低下し、粘度が高くなる場合がある。一方、転化率が5%未満であると、ポリイソシアネート組成物の生産性が十分ではない場合がある。
【0317】
なお、イソシアネート基の転化率は、例えば、高速GPC、NMR、イソシアネート基濃度、屈折率、密度、赤外線スペクトルなどを基準として、測定することができる。
【0318】
また、この反応では、必要により、公知の反応溶媒を配合してもよく、さらに、任意のタイミングで公知の触媒失活剤(例えば、リン酸、モノクロル酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゾイルクロリドなど)を添加することもできる。
【0319】
そして、反応終了後、未反応のペンタメチレンジイソシアネートは、必要により、蒸留などの公知の除去方法により、除去する。
【0320】
また、ポリイソシアネート組成物を得る方法として、ペンタメチレンジイソシアネートのみをトリマー化した後、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去し、得られたトリマーとアルコール類とを反応させる方法(上記の後者の方法)を採用する場合においては、トリマーとアルコール類との反応は、一般的なウレタン化反応である。このようなウレタン化反応の反応条件は、例えば、室温〜100℃、好ましくは、40〜90℃である。
【0321】
また、上記ウレタン化反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒を添加してもよい。
【0322】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0323】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫系化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
【0324】
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
【0325】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0326】
また、ポリイソシアネート組成物を得る方法としては、上記の方法に限定されず、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートを、アルコール類を用いることなく、上記のトリマー化触媒の存在下において、上記と同様にして、トリマー化反応させることもできる。
【0327】
また、本発明のポリイソシアネート組成物には、例えば、スルホンアミド基を含有する化合物を含有させることもできる。
【0328】
本発明において、スルホンアミド基を含有する化合物としては、例えば、芳香族スルホンアミド類、脂肪族スルホンアミド類などが挙げられる。
【0329】
芳香族スルホンアミド類としては、例えば、ベンゼンスルホンアミド、ジメチルベンゼンスルホンアミド、スルファニルアミド、o−およびp−トルエンスルホンアミド、ヒドロキシナフタレンスルホンアミド、ナフタレン−1−スルホンアミド、ナフタレン−2−スルホンアミド、m−ニトロベンゼンスルホンアミド、p−クロロベンゼンスルホンアミドなどが挙げられる。
【0330】
脂肪族スルホンアミド類としては、例えば、メタンスルホンアミド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジメチルエタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、N−メトキシメタンスルホンアミド、N−ドデシルメタンスルホンアミド、N−シクロヘキシル−1−ブタンスルホンアミド、2−アミノエタンスルホンアミドなどが挙げられる。
【0331】
これらスルホンアミド基を含有する化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0332】
スルホンアミド基を含有する化合物として、好ましくは、芳香族スルホンアミド類が挙げられ、より好ましくは、o−またはp−トルエンスルホンアミドが挙げられる。
【0333】
また、ポリイソシアネート組成物に、スルホンアミド基を含有する化合物を含有させる場合には、スルホンアミド基を含有する化合物を、ポリイソシアネート組成物に対して、例えば、10〜5000ppm、好ましくは、50〜4000ppm、より好ましくは、100〜3000ppm含有させる。
【0334】
スルホンアミド基を含有する化合物の含有量が5000ppmより多いと、ポリイソシアネート組成物の貯蔵工程、および、ポリウレタン樹脂の製造工程において、イソシアネート基濃度が変化する場合がある。一方、スルホンアミド基を含有する化合物の含有量が10ppm未満であると、ポリイソシアネート組成物の貯蔵工程、および、ポリウレタン樹脂の製造工程において、粘度、色相が大きく変化する場合がある。
【0335】
スルホンアミド基を含有する化合物を、ポリイソシアネート組成物に含有させる方法としては、特に制限されず、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートのトリマー化反応において、ペンタメチレンジイソシアネートおよびアルコール類とともに、スルホンアミド基を含有する化合物を添加する方法、ペンタメチレンジイソシアネートのトリマー化反応により得られるポリイソシアネート組成物に、スルホンアミド基を含有する化合物を添加する方法などが挙げられる。
【0336】
このようにして得られるポリイソシアネート組成物は、イソシアネート基濃度が、例えば、10〜28質量%、好ましくは、15〜28質量%、さらに好ましくは、20〜28質量%である。
【0337】
また、このようにして得られるポリイソシアネート組成物においては、イソシアネート3量体(イソシアヌレート基(および、場合によりイミノオキサジアジンジオン基)を有し、分子量がイソシアネートモノマーの3倍であるイソシアネート変性体)の濃度(未反応のペンタメチレンジイソシアネートなど、不純物を除く濃度)が、例えば、35〜95質量%、好ましくは、40〜95質量%、より好ましくは、50〜95質量%である。
【0338】
イソシアネート3量体の濃度が35質量%未満であると、ポリイソシアネート組成物の粘土が増加し、架橋性が低下するなどの不具合を生じる場合がある。
【0339】
また、このようにして得られるポリイソシアネート組成物においては、イソシアネートモノマー濃度(未反応のペンタメチレンジイソシアネートの濃度)が、例えば、3質量%以下、好ましくは、1.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0340】
また、このようにして得られるポリイソシアネート組成物は、イソシアヌレート結合および/またはイミノオキサジアジンジオン結合の他、アロファネート結合を含有する場合がある。このような場合において、ポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート基およびイミノオキサジアジンジオン基と、アロファネート基とのモル比((イソシアヌレート基(モル数)+イミノオキサジアジンジオン基(モル数))/アロファネート基(モル数))は、例えば、1〜3500、好ましくは、1〜3000、より好ましくは、1〜1000である。
【0341】
なお、ポリイソシアネート組成物中のイソシアヌレート基およびイミノオキサジアジンジオン基と、アロファネート基とのモル比は、公知の方法により測定することができ、より具体的には、例えば、示差屈折率検出器(RID)を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)のクロマトグラム(チャート)において、ピークの比率(面積比率)を求める方法、NMR法などにより、算出することができる。
【0342】
また、このようにして得られるポリイソシアネート組成物の、25℃における粘度は、例えば、100〜5000mPa・s、好ましくは、200〜4000mPa・s、より好ましくは、200〜3000mPa・s、さらに好ましくは、200〜2000mPa・sである。
【0343】
そして、本発明のポリイソシアネート組成物は、上記のペンタメチレンジイソシアネートをトリマー化することにより得られる。そのため、本発明のポリイソシアネート組成物は、効率良く製造され、また、優れた貯蔵安定性を備えることができる。
【0344】
そして、このようにして得られるポリイソシアネート組成物は、溶剤で希釈することなく、塗料、接着剤、その他、数多くの工業的用途に使用できるが、必要であれば、各種有機溶剤に溶解させて使用することもできる。
【0345】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。
【0346】
さらに、有機溶剤としては、例えば、非極性溶剤(非極性有機溶剤)が挙げられ、これら非極性溶剤としては、脂肪族、ナフテン系炭化水素系有機溶剤を含む、アニリン点が、例えば、10〜70℃、好ましくは、12〜65℃の、低毒性で溶解力の弱い非極性有機溶剤や、ターペン油に代表される植物性油などが挙げられる。
【0347】
かかる非極性有機溶剤は、市販品として入手可能であり、そのような市販品としては、例えば、ハウス(シェル化学製、アニリン点15℃)、スワゾール310(丸善石油製、アニリン点16℃)、エッソナフサNo.6(エクソン化学製、アニリン点43℃)、ロウス(シェル化学製、アニリン点43℃)、エッソナフサNo.5(エクソン製、アニリン点55℃)、ペガゾール3040(モービル石油製、アニリン点55℃)などの石油炭化水素系有機溶剤、その他、メチルシクロヘキサン(アニリン点40℃)、エチルシクロヘキサン(アニリン点44℃)、ガムテレピンN(安原油脂製、アニリン点27℃)などのターペン油類などが挙げられる。
【0348】
本発明のポリイソシアネート組成物は、これら有機溶剤と、任意の割合で混合することができる。
【0349】
また、本発明のポリイソシアネート組成物は、分子中に含有する遊離のイソシアネート基がブロック剤によりブロックされたブロックイソシアネートとして用いることもできる。
【0350】
ブロックイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネート組成物とブロック剤とを反応させることにより、製造することができる。
【0351】
ブロック剤としては、例えば、オキシム系、フェノール系、アルコール系、イミン系、アミン系、カルバミン酸系、尿素系、イミダゾール系、イミド系、メルカプタン系、活性メチレン系、酸アミド系(ラクタム系)、重亜硫酸塩類などのブロック剤が挙げられる。
【0352】
オキシム系ブロック剤としては、例えば、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトキシム、ジアセチルモノオキシム、ペンゾフェノオキシム、2,2,6,6−テトラメチルシクロヘキサノンオキシム、ジイソプロピルケトンオキシム、メチルtert−ブチルケトンオキシム、ジイソブチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、メチルイソプロピルケトンオキシム、メチル2,4−ジメチルペンチルケトンオキシム、メチル3−エチルへプチルケトンオキシム、メチルイソアミルケトンオキシム、n−アミルケトンオキシム、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオンモノオキシム、4,4’−ジメトキシベンゾフェノンオキシム、2−ヘプタノンオキシムなどが挙げられる。
【0353】
フェノール系ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−tert−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール、ニトロフェノール、ブロモフェノール、クロロフェノール、フルオロフェノール、ジメチルフェノール、スチレン化フェノール、メチルサリチラート、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル、4−[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4−[(ジメチルアミノ)メチル]ノニルフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ピリジノール、2−または8−ヒドロキシキノリン、2−クロロ−3−ピリジノール、ピリジン−2−チオールなどが挙げられる。
【0354】
アルコール系ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、1−または2−オクタノール、シクロへキシルアルコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,2−トリクロロエタノール、2−(ヒドロキシメチル)フラン、2−メトキシエタノール、メトキシプロパノール、2−エトキシエタノール、n−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエトキシエタノール、2−エトキシブトキシエタノール、ブトキシエトキシエタノール、2−エチルヘキシルオキシエタノール、2−ブトキシエチルエタノール、2−ブトキシエトキシエタノール、N,N−ジブチル−2−ヒドロキシアセトアミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−モルホリンエタノール、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール、3−オキサゾリジンエタノール、2−ヒドロキシメチルピリジン、フルフリルアルコール、12−ヒドロキシステアリン酸、トリフェニルシラノール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。
【0355】
イミン系ブロック剤としては、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、グアニジンなどが挙げられる。
【0356】
アミン系ブロック剤としては、例えば、ジブチルアミン、ジフェニルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、カルバゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル)アミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン、2,2,4−、または、2,2,5−トリメチルヘキサメチレンアミン、N−イソプロピルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ビス(3,5,5−トリメチルシクロヘキシル)アミン、ピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、(ジメチルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン、6−メチル−2−ピペリジン、6−アミノカプロン酸などが挙げられる。
【0357】
カルバミン酸系ブロック剤としては、例えば、N−フェニルカルバミン酸フェニルなどが挙げられる。
【0358】
尿素系ブロック剤としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素などが挙げられる。
【0359】
イミダゾール系ブロック剤としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0360】
イミド系ブロック剤としては、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミドなどを挙げられる。
【0361】
メルカプタン系ブロック剤としては、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどが挙げられる。
【0362】
活性メチレン系ブロック剤としては、例えば、メルドラム酸、マロン酸ジメチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジ−tert−ブチル、マロン酸1−tert−ブチル3−メチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸tert−ブチル、2−アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセチルアセトン、シアノ酢酸エチルなどが挙げられる。
【0363】
酸アミド系(ラクタム系)ブロック剤としては、例えば、アセトアニリド、N−メチルアセトアミド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、ピロリドン、2,5−ピペラジンジオン、ラウロラクタムなどが挙げられる。
【0364】
また、ブロック剤としては、上記に限定されず、例えば、ベンゾオキサゾロン、無水イサト酸、テトラブチルホスホニウム・アセタートなどのその他のブロック剤も挙げられる。
【0365】
これらブロック剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0366】
ブロック剤として、好ましくは、200℃以下、好ましくは、100〜180℃で解離するブロック剤が挙げられ、より具体的には、例えば、アセト酢酸エチルなどの活性メチレン化合物類、例えば、メチルエチルケトオキシムなどのオキシム類などが挙げられる。
【0367】
そして、ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネート組成物とブロック剤とを、ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基に対してブロック剤が過剰となる割合で配合し、公知の条件で反応させることにより、得ることができる。
【0368】
また、本発明のポリイソシアネート組成物は、分子中に含有する遊離のイソシアネート基がブロック剤によりブロックされるとともに、水に分散または溶解された水性ブロックイソシアネートとして用いることもできる。
【0369】
水性ブロックイソシアネートを製造する方法としては、特に制限されないが、例えば、まず、ポリイソシアネート組成物における遊離のイソシアネート基の一部がブロック剤によりブロックされたポリイソシアネート組成物(以下、部分ブロックイソシアネート)を製造し、その後、部分ブロックイソシアネートの遊離のイソシアネート基(ブロック剤によりブロックされずに残るイソシアネート基)と、親水基および活性水素基を併有する化合物(以下、親水基含有活性水素化合物)とを反応させる方法が挙げられる。
【0370】
この方法では、まず、ポリイソシアネート組成物の遊離のイソシアネート基の一部とブロック剤とを反応させ、部分ブロックイソシアネートを製造する。
【0371】
ブロック剤としては、例えば、上記したブロック剤と同様のブロック剤が挙げられる。
【0372】
そして、部分ブロックイソシアネートは、ポリイソシアネート組成物とブロック剤とを、ブロック剤に対してポリイソシアネート組成物のイソシアネート基が過剰となる割合で配合し、公知の条件で反応させることにより、得ることができる。
【0373】
次いで、この方法では、部分ブロックイソシアネートの遊離のイソシアネート基(イソシアネート基の残部)と、親水基含有活性水素化合物とを反応させる。
【0374】
親水基含有活性水素化合物は、少なくとも1つの親水基と、少なくともの1つの活性水素基とを併有する化合物であって、親水基としては、例えば、アニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基が挙げられる。活性水素基としては、イソシアネート基と反応する基であって、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基などが挙げられる。
【0375】
親水基含有活性水素化合物として、より具体的には、カルボン酸基含有活性水素化合物、スルホン酸基含有活性水素化合物、水酸基含有活性水素化合物、親水基含有多塩基酸、ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物などが挙げられる。
【0376】
カルボン酸基含有活性水素化合物としては、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2−ジメチロールブタン酸(DMBA)、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸、例えば、リジン、アルギニンなどのジアミノカルボン酸、または、それらの金属塩類やアンモニウム塩類などが挙げられる。好ましくは、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA),2,2−ジメチロールブタン酸(DMBA)が挙げられる。
【0377】
スルホン酸基含有活性水素化合物としては、例えば、エポキシ基含有化合物と酸性亜硫酸塩との合成反応から得られる、ジヒドロキシブタンスルホン酸、ジヒドロキシプロパンスルホン酸が挙げられる。また、例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノブタンスルホン酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、ジアミノブタンスルホン酸、ジアミノプロパンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,4−ジアミノ−5−トルエンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸、2−アミノエタンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノブタンスルホン酸、または、それらスルホン酸の金属塩類やアンモニウム塩類などが挙げられる。
【0378】
水酸基含有活性水素化合物としては、例えば、N−(2−アミノエチル)エタノールアミンが挙げられる。
【0379】
親水基含有多塩基酸としては、例えば、スルホン酸を含有する多塩基酸、より具体的には、5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5−(p−スルホフェノキシ)イソフタル酸、5−(スルホプロポキシ)イソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、スルホプロピルマロン酸、スルホコハク酸、2−スルホ安息香酸、2,3−スルホ安息香酸、5−スルホサリチル酸、および、それらカルボン酸のアルキルエステル、さらには、それらスルホン酸の金属塩類やアンモニウム塩類などが挙げられる。好ましくは、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ジメチルのナトリウム塩が挙げられる。
【0380】
ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物は、主鎖または側鎖にポリオキシエチレン基を含み、少なくとも1つの活性水素基を有する化合物である。
【0381】
ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール(例えば、数平均分子量200〜6000、好ましくは300〜3000)、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールが挙げられる。
【0382】
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールは、側鎖にポリオキシエチレン基を含み、2つ以上の活性水素基を有する化合物であって、次のように合成することができる。
【0383】
すなわち、まず、ジイソシアネート(後述)と片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(例えば、炭素数1〜4のアルキル基で片末端封止したアルコキシエチレングリコールであって、数平均分子量200〜6000、好ましくは300〜3000)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対して、ジイソシアネート(後述)のイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させ、必要により未反応のジイソシアネート(後述)を除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得る。
【0384】
次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミンなど)とを、ジアルカノールアミンの2級アミノ基に対して、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートのイソシアネート基がほぼ等量となる割合でウレア化反応させる。
【0385】
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールを得るためのジイソシアネートとしては、特に制限されず、公知のジイソシアネートを用いることができる。ジイソシアネートとして、より具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、1,4−または1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート(IPDI))、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボナン(NBDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0386】
また、ポリオキシエチレン基含有活性水素化合物として、さらに、例えば、エチレンオキサイドが付加した1価アルコール(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなど)、ポリオキシエチレン含有ソルビタンエステル類(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンリシノレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエートなど)、ポリオキシエチレン含有アルキルフェノール類(例えば、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなど)、ポリエチレングリコール含有高級脂肪酸エステル類(例えば、ポリエチレングリコールラウレート、ポリエチレングリコールオレエート、ポリエチレングリコールステアレートなど)なども挙げられる。
【0387】
そして、水性ブロックイソシアネートは、部分ブロックイソシアネートと親水基含有活性水素化合物とを、部分ブロックイソシアネートの遊離のイソシアネート基に対して親水基含有活性水素化合物が過剰となる割合で配合し、公知の条件で反応させることにより、得ることができる。
【0388】
そして、本発明は、上記のペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物との反応により得られるポリウレタン樹脂を含んでいる。
【0389】
活性水素化合物としては、例えば、ポリオールが挙げられる。ポリオールは、水酸基を2つ以上有する有機化合物であって、例えば、低分子量ポリオールおよびマクロポリオールが挙げられる。
【0390】
低分子量ポリオールとしては、例えば、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400未満の有機化合物であって、低分子量ジオール、低分子量トリオール、水酸基を4つ以上有する低分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0391】
低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール(以下、NPGと省略する)、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールなどのC2−22アルカンジオール、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオールなどのアルケンジオールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。また、低分子量ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAまたはそのC2−4アルキレンオキサイド付加体などの脂環族ジオールが挙げられる。また、低分子量ジオールとしては、例えば、レゾルシン、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、上記ビスフェノール類のC2−4アルキレンオキサイド付加体などの芳香族ジオールが挙げられる。また、低分子量ジオールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテルジオールなどが挙げられる。
【0392】
低分子量トリオールとしては、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ペンタン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールおよびその他の脂肪族トリオール(炭素数8〜24)などが挙げられる。
【0393】
水酸基を4つ以上有する低分子量ポリオールとしては、例えば、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどが挙げられる。
【0394】
マクロポリオールとしては、例えば、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上の有機化合物であって、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。
【0395】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリアルキレンオキサイドであって、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって得られる、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)が挙げられる。また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合などによって得られるポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0396】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールの1種または2種以上から選択される多価アルコールと、多塩基酸、そのアルキルエステル、その酸無水物、および、その酸ハライドとの縮合反応またはエステル交換反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0397】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などが挙げられる。
【0398】
多塩基酸のアルキルエステルとしては、上記した多塩基酸のメチルエステル、エチルエステルなどが挙げられる。
【0399】
酸無水物としては、上記した多塩基酸から誘導される酸無水物が挙げられ、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(炭素数12〜18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸などが挙げられる。
【0400】
酸ハライドとしては、上記した多塩基酸から誘導される酸ハライドが挙げられ、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバチン酸ジクロライドなどが挙げられる。
【0401】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12−ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸、乳酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0402】
さらに、ポリエステルポリオールには、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類や、例えば、L−ラクチド、D−ラクチドなどのラクチド類などを開環重合により得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどのポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0403】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどのカーボネート類を用いて得られる、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの共重合体からなる非晶性ポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの共重合体からなる非晶性ポリカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる非晶性ポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0404】
アクリルポリオールとしては、例えば、1つ以上の水酸基を有する重合性単量体と、それに共重合可能な別の単量体とを共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。
【0405】
水酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。
【0406】
また、それらと共重合可能な別の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜12)、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、フマル酸アルキル、イタコン酸、イタコン酸アルキル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、3−(2−イソシアネート−2−プロピル)−α−メチルスチレン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0407】
そして、アクリルポリオールは、それら単量体を適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることによって得ることができる。
【0408】
エポキシポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと、例えば、エピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンなどの多官能ハロヒドリンとを反応させることよって得られるエポキシポリオールが挙げられる。
【0409】
天然油ポリオールとしては、例えば、ひまし油、やし油などの水酸基含有天然油などが挙げられる。
【0410】
シリコーンポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体として、ビニル基含有のシリコーン化合物、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが用いられる共重合体、および、末端アルコール変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0411】
フッ素ポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体としてビニル基含有のフッ素化合物、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどが用いられる共重合体などが挙げられる。
【0412】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、部分ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0413】
これらポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0414】
そして、本発明のポリウレタン樹脂は、例えば、バルク重合や溶液重合などの重合方法により、製造することができる。
【0415】
バルク重合では、例えば、窒素気流下において、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート組成物を撹拌しつつ、これに、活性水素化合物を加えて、反応温度50〜250℃、さらに好ましくは50〜200℃で、0.5〜15時間程度反応させる。
【0416】
溶液重合では、有機溶媒に、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物とを加えて、反応温度50〜120℃、好ましくは50〜100℃で、0.5〜15時間程度反応させる。
【0417】
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。
【0418】
さらに、上記重合反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから遊離の(未反応の)ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート組成物を、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により除去してもよい。
【0419】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0420】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫系化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
【0421】
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
【0422】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0423】
バルク重合および溶液重合では、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートと活性水素化合物とを、活性水素化合物中の活性水素基(水酸基、メルカプト基、アミノ基)に対するペンタメチレンジイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、0.75〜1.3、好ましくは、0.9〜1.1となるように配合する。
【0424】
また、上記重合反応をより工業的に実施する場合には、ポリウレタン樹脂は、例えば、ワンショット法およびプレポリマー法などの公知の方法により、得ることができる。
【0425】
ワンショット法では、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート組成物と活性水素化合物とを、活性水素化合物中の活性水素基(水酸基、メルカプト基、アミノ基)に対するペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、0.75〜1.3、好ましくは、0.9〜1.1となるように処方(混合)した後、例えば、室温〜250℃、好ましくは、室温〜200℃で、例えば、5分〜72時間、好ましくは、4〜24時間硬化反応させる。なお、硬化温度は、一定温度であってもよく、あるいは、段階的に昇温または冷却することもできる。
【0426】
また、プレポリマー法では、例えば、まず、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物の一部(好ましくは、高分子量ポリオール)とを反応させて、分子末端にイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを合成する。次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素化合物の残部(好ましくは、低分子量ポリオールおよび/またはポリアミン成分)とを反応させて、硬化反応させる。なお、プレポリマー法において、活性水素化合物の残部は、鎖伸長剤として用いられる。
【0427】
イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、ペンタメチレンジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物の一部とを、活性水素化合物の一部中の活性水素基に対するペンタメチレンジイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、1.1〜20、好ましくは、1.3〜10、さらに好ましくは、1.3〜6となるように処方(混合)し、反応容器中にて、例えば、室温〜150℃、好ましくは、50〜120℃で、例えば、0.5〜18時間、好ましくは、2〜10時間反応させる。なお、この反応においては、必要に応じて、上記したウレタン化触媒を添加してもよく、また、反応終了後には、必要に応じて、未反応のペンタメチレンジイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により、除去することもできる。
【0428】
次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素化合物の残部とを反応させるには、イソシアネート基末端プレポリマーと、活性水素化合物の残部とを、活性水素化合物の残部中の活性水素基に対するイソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、0.75〜1.3、好ましくは、0.9〜1.1となるように処方(混合)し、例えば、室温〜250℃、好ましくは、室温〜200℃で、例えば、5分〜72時間、好ましくは、1〜24時間硬化反応させる。
【0429】
これにより、ポリウレタン樹脂を得ることができる。
【0430】
なお、本発明のポリウレタン樹脂を製造する場合においては、必要に応じて、さらに、公知の添加剤、例えば、可塑剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤、離型剤、触媒、さらには、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤などを、適宜の割合で配合することができる。これら添加剤は、各成分の合成時に添加してもよく、あるいは、各成分の混合・溶解時に添加してもよく、さらには、合成後に添加することもできる。
【0431】
そして、このようなポリウレタン樹脂は、本発明のペンタメチレンジイソシアネートや、本発明のポリイソシアネート組成物を用いて製造されるため、優れた性質を備えることができる。
【0432】
そのため、このようなポリウレタン樹脂は、例えば、塗料、接着剤、エラストマー、シーラント、フォームなどとして、各種産業分野において広範に使用することができる。とりわけ、筐体コート、四輪、二輪車、航空機などの部品、補修用塗料などに好適に使用することができる。
【実施例】
【0433】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0434】
製造例などに用いられる測定方法を、以下に示す。
<ペンタメチレンジアミンの反応収率(単位:mol%)>
L−リシン一塩酸塩(和光純薬工業社製)、および、後述する(ペンタメチレンジアミンの蒸留)で得られた精製ペンタメチレンジアミンを用い、以下のHPLC(高速液体クロマトグラフ)分析条件下で得られたクロマトグラフの面積値から作成した検量線により、ペンタメチレンジアミンの濃度を算出し、L−リシン一塩酸塩およびペンタメチレンジアミンの合計濃度に対するペンタメチレンジアミンの濃度の割合を、ペンタメチレンジアミンの反応収率とした。
【0435】
カラム;Asahipak ODP−50 4E(昭和電工社製)
カラム温度;40℃
溶離液;0.2mol/L リン酸ナトリウム(pH7.7)+2.3mmol/L 1−オクタンスルホン酸ナトリウム
流量;0.5mL/min
L−リシン一塩酸塩およびペンタメチレンジアミンの検出には、オルトフタルアルデヒドを用いたポストカラム誘導体化法〔J.Chromatogr.,83,353−355(1973)〕を採用した。
<ペンタメチレンジアミンの純度(単位:質量%)>
後述する(ペンタメチレンジアミンの蒸留)で得られた精製ペンタメチレンジアミンを用い、以下のガスクロマトグラフ分析条件で得られたガスクロマトグラムの面積値から作成した検量線により、ペンタメチレンジアミンの純度を算出した。
【0436】
装置;GC−6890(アジレント・テクノロジー社製)
カラム;WCOT FUSED SILICA CP−SIL 8CB FOR AMINES(VARIAN社製)
オーブン温度;40℃で3分間保持、40℃から300℃まで、10℃/minで昇温、300℃で11分間保持
注入口温度;250℃
検出器温度;280℃
キャリアガス;ヘリウム
検出法;FID
<抽出率(単位:質量%)>
抽出溶媒によるペンタメチレンジアミンの抽出率を求めるため、上記(ペンタメチレンジアミンの純度)と同様の測定を行い、抽出操作前のペンタメチレンジアミン水溶液中のペンタメチレンジアミン濃度と、抽出操作後の抽出溶媒中のペンタメチレンジアミン濃度とを測定した。
【0437】
そして、以下の式により、抽出率を算出した。
(a)抽出溶媒中のペンタメチレンジアミンの質量=抽出溶媒中のペンタメチレンジアミン濃度×抽出溶媒の質量/100
(b)仕込んだペンタメチレンジアミン水溶液中のペンタメチレンジアミンの質量=抽出操作前のペンタメチレンジアミン水溶液のジアミノペンタン濃度×仕込んだペンタメチレンジアミン水溶液の質量/100
抽出率(質量%)=(a)/(b)×100
<C=N結合を含む環状構造を有した化合物の総含有量(単位:質量%)>
後述する(2,3,4,5−テトラヒドロピリジン濃度)と(2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度)との合計値により求めた。
<2,3,4,5−テトラヒドロピリジン濃度(単位:質量%)>
後述する(未知物質の構造解析)で得られた、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンを用い、(ペンタメチレンジアミンの純度)に記載と同条件の測定により得られたガスクロマトグラムの面積値から作成した検量線により、2,3,4,5−テトラヒドロピリジン濃度を算出した。
<2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度(単位:質量%)>
後述する(未知物質の構造解析)で得られた、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジンを用い、(ペンタメチレンジアミンの純度)に記載と同条件の測定により得られたガスクロマトグラムの面積値から作成した検量線により、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度を算出した。
<ペンタメチレンジイソシアネートの純度(単位:質量%)>
ペンタメチレンジイソシアネートの純度は、電位差滴定装置を用いて、JIS K−1556に準拠し、n−ジブチルアミン法により測定したイソシアネート基濃度から、算出した。
<ペンタメチレンジイソシアネート濃度(単位:質量%)>
後述する実施例1で得られたペンタメチレンジイソシアネート(a)を用い、以下のHPLC分析条件下で得られたクロマトグラムの面積値から作成した検量線により、ポリイソシアネート組成物中のペンタメチレンジイソシアネートの濃度を算出した。
【0438】
装置;Prominence(島津製作所社製)
1) ポンプ LC−20AT
2) デガッサ DGU−20A3
3) オートサンプラ SIL−20A
4) カラム恒温槽 COT−20A
5) 検出器 SPD−20A
カラム;SHISEIDO SILICA SG−120
カラム温度;40℃
溶離液;n−ヘキサン/メタノール/1,2−ジクロロエタン=90/5/5(体積比)
流量;0.2mL/min
検出方法;UV 225nm
<ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタンの純度(単位:質量%)>
以下のHPLC分析条件下で得られたクロマトグラムの面積値から作成した検量線により、ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタンの純度を算出した。
【0439】
装置;alliance 2695 separation module (Waters社製)
検出器 2414 RI検出器
カラム;Imtakt社製 Unison UK C−18
カラム温度;40℃
溶離液;アセトニトリル/蒸留水=45/55(体積比)
流量;1.0mL/min
検出方法;RI
<ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタンの収率(単位:質量%>
ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタンの収率は以下の式を用いて算出した。
【0440】
(W×C/100)/(W×C/100×M/M)×100
:ペンタメチレンジアミンの分子量
:ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタンの分子量
:ペンタメチレンジアミンのn−ブタノール溶液の濃度
:ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタンの純度
:ペンタメチレンジアミンのn−ブタノール溶液の仕込質量部
:得られたビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタンの質量部
<ペンタメチレンジイソシアネートの純度(単位:質量%)>
ペンタメチレンジイソシアネートの純度は、電位差滴定装置を用いて、JIS K−1603−1に準拠したn−ジブチルアミン法により、測定した。
<熱分解反応の収率(単位:質量%)>
熱分解反応の収率は以下の式を用いて算出した。
【0441】
(W×C/100)/(W×C/100×M/M)×100
:ペンタメチレンジイソシアネートの分子量
:ペンタメチレンジイソシアネートの純度
:ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタンの仕込質量部
:得られたペンタメチレンジイソシアネートの質量部
<ペンタメチレンジイソシアネートの収率(単位:質量%)>
ペンタメチレンジイソシアネートの収率は以下の式を用いて算出した。
【0442】
A×B/100
A:ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタンの収率
B:熱分解反応の収率
<イソシアネート基の転化率(単位:%)>
イソシアネート基の転化率は、以下のGPC測定条件において得られたクロマトグラムにより、全ピーク面積に対するペンタメチレンジイソシアネートのピークよりも高分子量側にあるピークの面積の割合を、イソシアネート基の転化率とした。
【0443】
装置;HLC−8020(東ソー社製)
カラム;G1000HXL、G2000HXLおよびG3000HXL(以上、東ソー製商品名)を直列に連結
カラム温度;40℃
溶離液;テトラヒドロフラン
流量;0.8mL/min
検出方法;示差屈折率
標準物質;ポリエチレンオキシド(東ソー社製、商品名:TSK標準ポリエチレンオキシド)
<イソシアネート3量体濃度(単位:質量%)>
上記した(イソシアネート基の転化率)と同様の測定を行い、ペンタメチレンジイソシアネートの3倍の分子量に相当するピーク面積比率を、イソシアネート3量体濃度とした。
<イソシアネート基濃度(単位:質量%)>
ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基濃度は、電位差滴定装置を用いて、JIS K−1556に準拠したn−ジブチルアミン法により、測定した。
<粘度(単位:mPa・s)>
東機産業社製のE型粘度計TV−30を用いて、ポリイソシアネート組成物の25℃における粘度を測定した。
<色相(単位:APHA)>
JIS K−0071に準拠した方法により、ポリイソシアネート組成物の色相を測定した。
(ペンタメチレンジアミンの蒸留)
温度計、蒸留塔、冷却管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ペンタメチレンジアミン(東京化成社製)を仕込み、塔頂温度が111〜115℃、10KPaの条件下、さらに還流しながら精留し、精製ペンタメチレンジアミンを得た。蒸留精製したペンタメチレンジアミンは、ガスクロマトグラフィーの面積比が100%であった。
【0444】
調製例1(菌体破砕液の調製)
(リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)のクローニング)
Escherichia coli W3110株(ATCC27325)から常法に従い調製したゲノムDNAをPCRの鋳型に用いた。
【0445】
PCR用のプライマーには、リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)(GenBank Accession No.AP009048)の塩基配列に基づいて設計した配列番号1および2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(インビトロジェン社に委託して合成した)を用いた。これらのプライマーは、5’末端付近にそれぞれKpnIおよびXbaIの制限酵素認識配列を有する。
【0446】
上記のゲノムDNA1ng/μLおよび各プライマー0.5pmol/μLを含む25μLのPCR反応液を用いて、変性:94℃、30秒間、アニーリング:55℃、30秒間、伸長反応:68℃、2分間からなる反応サイクルを30サイクルの条件で、PCRを行った。
【0447】
PCR反応産物およびプラスミドpUC18(宝酒造社製)をKpnIおよびXbaIで消化し、ライゲーション・ハイ(東洋紡社製)を用いて連結した後、得られた組換えプラスミドを用いて、Eschrichia coli DH5α(東洋紡社製)を形質転換した。形質転換体を、アンピシリン(Am)100μg/mLおよびX−Gal(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド)を含むLB寒天培地で培養し、Am耐性でかつ白色コロニーとなった形質転換体を得た。このようにして得られた形質転換体よりプラスミドを抽出した。
【0448】
通常の塩基配列の決定法に従い、プラスミドに導入されたDNA断片の塩基配列が配列番号3に示す塩基配列であることを確認した。
【0449】
得られたリシン脱炭酸酵素をコードするDNAを持つプラスミドをpCADAと命名した。pCADAを用いて形質転換した大腸菌を培養することで、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するリシン脱炭酸酵素を生産することができた。
(形質転換体の作製)
pCADAを用いてEscherichia coli W3110株を通常の方法で形質転換し、得られた形質転換体をW/pCADAと命名した。
【0450】
この形質転換体をバッフル付き三角フラスコ中のAm100μg/mLを含むLB培地500mlに接種し、30℃にてOD(660nm)が0.5になるまで振盪培養した後、IPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)が0.1mmol/Lとなるように添加し、さらに14時間振盪培養した。培養液を8000rpmで20分間遠心分離し、菌体を得た。この菌体を20mmol/L リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に懸濁した後、超音波破砕を行い、菌体破砕液を調製した。
【0451】
調製例2(ペンタメチレンジアミン水溶液の製造)
フラスコに、L−リシン一塩酸塩(和光純薬製)を、終濃度が45質量%となるように、および、ピリドキサールリン酸(和光純薬製)を、終濃度が0.15mmol/Lとなるように調製した基質溶液120質量部を加えた。次に、上記のW/pCADA菌体破砕液(仕込み乾燥菌体換算重量0.3g)を添加し反応を開始した。反応条件は37℃、200rpmとした。反応液のpHは6mol/Lの塩酸にてpH6に調整した。24時間後のペンタメチレンジアミンの反応収率は99%に達していた。上記の反応24時間後の反応液を、6mol/Lの塩酸にてpH2に調整し、0.6質量部の活性炭(三倉化成社製 粉末活性炭PM−SX)を添加し、25℃で1時間攪拌を行った後、濾紙(ADVANTEC社製 5C)にて濾過を行った。次に、この濾液を水酸化ナトリウムにてpH12に調整し、ペンタメチレンジアミン水溶液(17.0質量%水溶液)を得た。
【0452】
製造例1(ペンタメチレンジアミン(a)の調製)
分液ロートにペンタメチレンジアミン水溶液100質量部とn−ブタノール100質量部とを仕込み、10分間混合し、その後30分間静置した。水層である下層を抜き出し、次いで有機層である上層を抜き出した。抽出率を測定した結果、91.8%であった。
【0453】
次いで、温度計、蒸留塔、冷却管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに有機層の抽出液80質量部を仕込み、オイルバス温度を120℃とし、10kPaの減圧下でn−ブタノールを留去させ、純度99.9質量%のペンタメチレンジアミン(a)を得た。
【0454】
すなわち、ペンタメチレンジアミン(a)は、ペンタメチレンジアミン水溶液をn−ブタノールにより溶媒抽出し、さらにn−ブタノールを留去させることにより、調製することができた。
【0455】
得られたペンタメチレンジアミン(a)には、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンを含む不純物が含有されていた。
【0456】
製造例2(ペンタメチレンジアミン(b)の調製)
n−ブタノール100質量部に代えて、クロロホルム100質量部を仕込んだ以外は、上記の製造例1と同様にして溶媒抽出を行った。抽出率を測定した結果、62.0%であった。
【0457】
次いで、製造例1と同様にして、クロロホルムを留去させ、純度97.8質量%のペンタメチレンジアミン(b)を得た。
【0458】
すなわち、ペンタメチレンジアミン(b)は、ペンタメチレンジアミン水溶液をクロロホルムにより溶媒抽出し、さらにクロロホルムを留去させることにより、調製することができた。
【0459】
得られたペンタメチレンジアミン(b)には、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンおよび未知物質を含む不純物が含有されていた。
【0460】
製造例3(ペンタメチレンジアミン(c)の調製)
上記により得られたペンタメチレンジアミン(a)100質量部と、ペンタメチレンジアミン(b)100質量部とを配合および混合し、ペンタメチレンジアミン(c)を製造した。
【0461】
得られたペンタメチレンジアミン(c)には、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンおよび未知物質を含む不純物が含有されていた。
【0462】
製造例4(ペンタメチレンジアミン(d)の調製)
上記により得られたペンタメチレンジアミン(a)100質量部と、ペンタメチレンジアミン(b)200質量部とを配合および混合し、ペンタメチレンジアミン(d)を製造した。
【0463】
得られたペンタメチレンジアミン(d)には、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンおよび未知物質を含む不純物が含有されていた。
【0464】
製造例5(ペンタメチレンジアミン(e)(1,5−ペンタメチレンジアミンのn−ブタノール溶液)の調製)
分液ロートにペンタメチレンジアミン水溶液100質量部とn−ブタノール100質量部とを仕込み、10分間混合し、その後30分間静置した。水層である下層を抜き出し、次いで有機層である上層を抜き出した。抽出率を測定した結果、製造例1とほぼ同様の91.7%であった。
【0465】
次いで、温度計、蒸留塔、冷却管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに有機層の抽出液80質量部を仕込み、常圧にて、液温が139℃に達するまで加熱し、水およびn−ブタノールを留去させ、1,5−ペンタメチレンジアミンのn−ブタノール溶液を17質量部得た。次いで、温度計、蒸留塔、冷却管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに1,5−ペンタメチレンジアミンのn−ブタノール溶液を17質量部仕込み、1.7kPaにて、液温が65℃に達するまで加熱し、留出液としてペンタメチレンジアミン(e)(1,5−ペンタメチレンジアミンのn−ブタノール溶液)を得た。ペンタメチレンジアミン(e)のペンタメチレンジアミンの純度は、33.5%であった。
【0466】
製造例6(ペンタメチレンジアミン(f)(1,5−ペンタメチレンジアミンのイソブタノール溶液)の調製)
分液ロートにペンタメチレンジアミン水溶液100質量部とイソブタノール100質量部とを仕込み、10分間混合し、その後30分間静置した。水層である下層を抜き出し、次いで有機層である上層を抜き出した。抽出率を測定した結果、85.8%であった。
【0467】
次いで、温度計、蒸留塔、冷却管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに有機層の抽出液80質量部を仕込み、常圧にて、液温が130℃に達するまで加熱し、水およびイソブタノールを留去させ、1,5−ペンタメチレンジアミンのイソブタノール溶液を16質量部得た。次いで、温度計、蒸留塔、冷却管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに1,5−ペンタメチレンジアミンのイソブタノール溶液を16質量部仕込み、1.7kPaにて、液温が65℃に達するまで加熱し、留出液としてペンタメチレンジアミン(f)(1,5−ペンタメチレンジアミンのイソブタノール溶液)を得たペンタメチレンジアミン(f)のペンタメチレンジアミンの純度は、33.9%であった。
【0468】
試験例1(ペンタメチレンジアミンに含有される未知物質の構造解析)
固相抽出カートリッジ(VARIAN社製、型式1225−6067)を用いて、ペンタメチレンジアミンに含まれる不純物の分取を行い、GC−MS分析およびNMR分析により構造解析を行った。
【0469】
固相抽出カートリッジをコンディショニングするため、メタノール50mLとクロロホルム450mLの混合溶液を通液した。ペンタメチレンジアミン(b)500mgをメタノール50mLとクロロホルム450mLの混合溶液に溶解させた後、固相抽出カートリッジに通液し、流出液を得た。次いで、5回に分けて以下に示した割合のメタノールとクロロホルムの混合溶液を通液し、固相抽出カートリッジからの流出液を分取した。
【0470】
1回目;メタノール100mLとクロロホルム900mLの混合溶液
2回目;メタノール50mLとクロロホルム450mLの混合溶液
3回目;メタノール100mLとクロロホルム400mLの混合溶液
4回目;メタノール100mLとクロロホルム400mLの混合溶液
5回目;メタノール100mLとクロロホルム400mLの混合溶液
1、2回目の流出液を窒素パージにより溶媒除去し、得られた化合物を、下記GC−MS分析1の条件で測定した。その結果、ペンタメチレンジアミンは検出されず、面積比99%の2,3,4,5−テトラヒドロピリジンが検出された。
【0471】
1、2回目の流出液と同様の操作により、3回目から得られた化合物を、GC−MS分析1で測定した。その結果、ペンタメチレンジアミンは検出されず、2,3,4,5−テトラヒドロピリジンと未知物質が検出された。
【0472】
1、2回目の流出液と同様の操作により、4、5回目から得られた化合物を、GC−MS分析1で測定した。その結果、ペンタメチレンジアミンと2,3,4,5−テトラヒドロピリジンとは検出されず、面積比99%の未知物質が検出された。
【0473】
4、5回目の化合物のGC−MS分析1のクロマトグラムを図1に示す。
【0474】
なお、図1において、4:08のピークがクロロホルムであり、13:26のピークが未知物質である。
【0475】
また、4、5回目の化合物のGC−MS分析1のスペクトルを図2に示す。
【0476】
次いで、未知物質の化学式を決定するために、4、5回目の化合物に標準物質として前述の(ペンタメチレンジアミンの蒸留)で得られた蒸留精製したペンタメチレンジアミンを加え、下記GC−MS分析2の条件で測定した。得られたクロマトグラムを図3に示す。
【0477】
なお、図3において、11:61のピークがペンタメチレンジアミンであり、13:34のピークが未知物質である。
【0478】
GC−MS分析2の結果から、未知物質の化学式は、C12であることが確認された。
【0479】
次いで、未知物質の構造解析を行うため、4、5回目の化合物を下記NMR分析の条件で測定を行った。
【0480】
未知物質のH−NMRの結果を図4に、13C−NMRの結果を図5に、COSYの結果を図6に、HMQCの結果を図7に、HMBCの結果を図8および図9に示す。なお、図9には、図8に示す結果の拡大図を示す。
【0481】
GC−MS分析およびNMR分析の結果から、未知物質は、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジンであることが確認された。
【0482】
なお、GC−MS分析およびNMR分析の装置および条件を以下に示す。
<GC−MS分析1>
装置;Q1000GC K9(日本電子社製)
イオン化法;EI
カラム;WCOT FUSED SILICA CP−SIL 8CB FOR AMINES(VARIAN社製)、0.25mmφ×30m
オーブン温度;40℃で3分間保持、40℃から300℃まで、10℃/minで昇温、300℃で11分間保持
注入口温度;250℃
He流量 ; 0.7mL/min
注入モード ; スプリット
<GC−MS分析2>
装置;JMS−T100GC(日本電子製)
イオン化法;FI
カラム;WCOT FUSED SILICA CP−SIL 8CB FOR AMINES(VARIAN製)、0.25mmφ×30m
オーブン温度;40℃で3分間保持、40℃から300℃まで、10℃/minで昇温、300℃で11分間保持
注入口温度;250℃
He流量 ; 0.7mL/min
注入モード ; スプリット
<NMR分析>
装置;核磁気共鳴装置 ECA500(日本電子製)
測定法;H−NMR、13C−NMR、COSY、HMQC、HMBC
試験例2(不純物濃度の測定)
各製造例により得られたペンタメチレンジアミンに含まれる不純物(2,3,4,5−テトラヒドロピリジン、および、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン)の濃度を、以下に示す手法により、算出した。
【0483】
すなわち、2,3,4,5−テトラヒドロピリジン濃度が2質量%、0.5質量%、0.05質量%となるように、前述の(ペンタメチレンジアミンの蒸留)で得られた精製ペンタメチレンジアミンと試験例1で得られた2,3,4,5−テトラヒドロピリジンを混合した。次いで、内部標準物質として、一定量のo−ジクロロベンゼン(以下、ODCBと略する場合がある。)、および、溶剤のメタノールを加えた溶液を、それぞれ3回、(ペンタメチレンジアミンの純度)に記載と同条件の測定を行い、横軸をODCBと2,3,4,5−テトラヒドロピリジンの面積比、縦軸をODCBと2,3,4,5−テトラヒドロピリジンの濃度比とした検量線を作成した。
【0484】
各製造例で得られたペンタメチレンジアミンに、一定量のODCB、および、溶剤のメタノールを加え、(ペンタメチレンジアミンの純度)に記載と同条件の測定を行い、検量線から2,3,4,5−テトラヒドロピリジン濃度を算出した。
【0485】
2,3,4,5−テトラヒドロピリジン濃度の算出手法と同様にして、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジンの濃度を算出した。
【0486】
その結果、ペンタメチレンジアミン(a)の2,3,4,5−テトラヒドロピリジン濃度は、0.1質量%、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度は、検出限界未満(検出限界:0.0006質量%)であり、それらの総量(検出可能範囲における総量)は、0.1質量%であった。
【0487】
ペンタメチレンジアミン(b)の2,3,4,5−テトラヒドロピリジン濃度は、0.6質量%、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度は、1.6質量%であり、それらの総量は、2.2質量%であった。
【0488】
ペンタメチレンジアミン(c)の2,3,4,5−テトラヒドロピリジン濃度は、0.4質量%、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度は、0.8質量%であり、それらの総量は、1.2質量%であった。
【0489】
ペンタメチレンジアミン(d)の2,3,4,5−テトラヒドロピリジン濃度は、0.4質量%、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度は、1.1質量%であり、それらの総量は、1.5質量%であった。
【0490】
ペンタメチレンジアミン(e)の2,3,4,5−テトラヒドロピリジン濃度は、0.03質量%、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度は検出限界未満であり、それらの総量は、0.03質量%であった。
【0491】
ペンタメチレンジアミン(f)の2,3,4,5−テトラヒドロピリジン濃度は、0.03質量%、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジン濃度は検出限界未満であり、それらの総量は、0.03質量%であった。
【0492】
これら各ペンタメチレンジアミン中の各不純物の濃度を、表1に示す。
【0493】
【表1】

【0494】
実施例1(ペンタメチレンジイソシアネート(a)の製造)
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えたSUS製オートクレーブに、ペンタメチレンジアミン(a)51質量部、尿素72質量部およびn−ブタノール222質量部の混合物を仕込み、窒素ガスを毎分0.3L流通、500rpmで攪拌させながら、反応温度215℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節しながら3時間反応させた。得られた反応液を、0.5KPa、150℃で減圧蒸留して軽沸分をカットし、純度96.1%のビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタン150質量部を得た。
【0495】
次いで、撹拌機、温度計および冷却器を備えた精留塔を備え付けた4つ口フラスコを反応器とし、冷却器には80℃の温水を流し、受器は冷アセトンで冷却したコールドトラップを通して真空ラインに連結した。フラスコにビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタン70質量部、バーレルプロセス油B−30(松村石油社製)70質量部、ジラウリン酸ジブチルスズ0.14質量部を仕込んだ。反応系内を窒素置換した後、3.0kPaに減圧し、反応液を250℃まで昇温させ2時間反応させた。反応終了後、受器に集められた反応液をガスクロマトグラフィーにより定量した結果、純度99.9質量%のペンタメチレンジイソシアネート(a)を得た。
【0496】
ガスクロマトグラフィーの分析条件を、以下に示す。
【0497】
装置;GC−14B(島津製作所製)
カラム;UA−20EX−2.0F、1.2mmφ×20m(フロンティア・ラボ社製)
オーブン温度;100℃で2分間保持、100℃から240℃まで、10℃/minで昇温、240℃で14分間保持
注入口温度;250℃
検出器温度;250℃
キャリアガス;ヘリウム
検出方法;FID
実施例2(ペンタメチレンジイソシアネート(b)の製造)
電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、ホスゲン導入ライン、凝縮器、原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、o−ジクロロベンゼン2000質量部を仕込んだ。次いで、ホスゲン2300質量部をホスゲン導入ラインから加え、撹拌を開始した。反応器のジャケットには冷水を通し、内温を約10℃に保った。そこへ、ペンタメチレンジアミン(a)400質量部をo−ジクロロベンゼン2600質量部に溶解した溶液を、フィードポンプにて60分かけてフィードし、30℃以下、常圧下で冷ホスゲン化を開始した。フィード終了後、加圧反応器内は淡褐白色スラリー状液となった。
【0498】
次いで、反応器の内液を徐々に160℃まで昇温しながら、0.25MPaに加圧し、さらに圧力0.25MPa、反応温度160℃で90分間熱ホスゲン化した。なお、熱ホスゲン化の途中で、ホスゲン1100質量部を、さらに添加した。熱ホスゲン化の過程で、加圧反応器内液は、淡褐色澄明溶液となった。熱ホスゲン化終了後、100〜140℃において、窒素ガスを100L/時で通気し、脱ガスした。
【0499】
次いで、減圧下でo−ジクロルベンゼンを留去した後、同じく減圧下でペンタメチレンジイソシアネートを留去させた。
【0500】
次いで、留去させたペンタメチレンジイソシアネートを、攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに装入し、窒素を導入しながら、常圧下で、200℃、3時間加熱処理を行った。
【0501】
次いで、加熱処理後のペンタメチレンジイソシアネートを、ガラス製フラスコに装入し、充填物(住友重機械工業社製、商品名:住友/スルザーラボパッキングEX型)を4エレメント充填した蒸留管、還流比調節タイマーを装着した蒸留塔(柴田科学社製、商品名:蒸留頭K型)、および、冷却器を装備する精留装置を用いて、127〜132℃、2.7KPaの条件下、さらに還流しながら精留し、純度99.8質量%のペンタメチレンジイソシアネート(b)を450質量部得た。
【0502】
実施例3(ペンタメチレンジイソシアネート(c)の製造)
ペンタメチレンジアミン(a)に代え、ペンタメチレンジアミン(c)を用いた以外は、実施例1と同様の条件および操作にて、純度99.4質量%のペンタメチレンジイソシアネート(c)を得た
実施例4(ペンタメチレンジイソシアネート(d)の製造)
ペンタメチレンジアミン(a)に代え、ペンタメチレンジアミン(d)を用いた以外は、実施例1と同様の条件および操作にて、純度99.3質量%のペンタメチレンジイソシアネート(d)を得た。
【0503】
比較例1(ペンタメチレンジイソシアネート(e)の製造)
ペンタメチレンジアミン(a)に代え、ペンタメチレンジアミン(b)を用いた以外は、実施例1と同様の条件および操作にて、純度98.7質量%のペンタメチレンジイソシアネート(e)を得た。
【0504】
比較例2(ペンタメチレンジイソシアネート(f)の製造)
ペンタメチレンジアミン(a)に代え、ペンタメチレンジアミン(b)を用いた以外は、実施例2と同様の条件および操作にて、純度98.4質量%のペンタメチレンジイソシアネート(f)を得た。
【0505】
実施例5(ペンタメチレンジイソシアネート(g)の製造)
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えたSUS製オートクレーブに、製造例5で得られたペンタメチレンジアミン(e)(1,5−ペンタメチレンジアミンのn−ブタノール溶液)152質量部、尿素72質量部、およびn−ブタノール121質量部の混合物を仕込み、窒素ガスを毎分0.3L流通、500rpmで攪拌させながら、反応温度215℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節しながら3時間反応させた。得られた反応液を、0.5KPa、150℃で減圧蒸留して軽沸分をカットし、純度96.2質量%のビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタン150質量部を、収率95.6質量%で得た。
【0506】
次いで、撹拌機、温度計および冷却器を備えた精留塔を備え付けた4つ口フラスコを反応器とし、冷却器には80℃の温水を流し、受器は冷アセトンで冷却したコールドトラップを通して真空ラインに連結した。フラスコにビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタン150質量部、バーレルプロセス油B−30(松村石油社製)150質量部、ジラウリン酸ジブチルスズ0.3質量部を仕込んだ。反応系内を窒素置換した後、3.0kPaに減圧し、反応液を250℃まで昇温させ2時間熱分解反応を行い、純度99.9質量%のペンタメチレンジイソシアネート(g)を70質量部得た。熱分解反応の収率は95.1質量%、ペンタメチレンジイソシアネート(g)の収率は91.0質量%であった。
【0507】
実施例6(ペンタメチレンジイソシアネート(h)の製造)
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えたSUS製オートクレーブに、製造例6で得られたペンタメチレンジアミン(f)(1,5−ペンタメチレンジアミンのイソブタノール溶液)150質量部、尿素72質量部、およびn−ブタノール123質量部の混合物を仕込み、窒素ガスを毎分0.3L流通、500rpmで攪拌させながら、反応温度215℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節しながら3時間反応させた。得られた反応液を、0.5KPa、150℃で減圧蒸留して軽沸分をカットし、純度89.8質量%のビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタン150質量部を、収率89.3質量%で得た。
【0508】
次いで、撹拌機、温度計および冷却器を備えた精留塔を備え付けた4つ口フラスコを反応器とし、冷却器には80℃の温水を流し、受器は冷アセトンで冷却したコールドトラップを通して真空ラインに連結した。フラスコにビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタン150質量部、バーレルプロセス油B−30(松村石油社製)150質量部、ジラウリン酸ジブチルスズ0.3質量部を仕込んだ。反応系内を窒素置換した後、3.0kPaに減圧し、反応液を250℃まで昇温させ2時間熱分解反応を行い、純度99.9質量%のペンタメチレンジイソシアネート(h)を63質量部得た。熱分解反応の収率は91.9質量%、ペンタメチレンジイソシアネート(h)の収率は82.1質量%であった。
【0509】
実施例7(ペンタメチレンジイソシアネート(i)の製造)
実施例1で得られた反応液100質量部に対し、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノール0.005質量部、p−トルエンスルホンアミド0.001質量部、トリス(トリデシル)ホスファイト0.01質量部を添加し、純度99.9質量%のペンタメチレンジイソシアネート(i)を得た。
【0510】
次いで、サンプル瓶にペンタメチレンジイソシアネート(i)を移し、窒素パージ後、50℃のオーブン中に14日間静置し、貯蔵安定性試験を実施した。試験後のペンタメチレンジイソシアネート(i)の純度は99.8質量%であった。
【0511】
実施例8(ペンタメチレンジイソシアネート(j)の製造)
実施例1で得られた反応液100質量部に対し、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノール0.005質量部を添加し、純度99.9質量%のペンタメチレンジイソシアネート(j)を得た。
【0512】
次いで、サンプル瓶にペンタメチレンジイソシアネート(j)を移し、窒素パージ後、50℃のオーブン中に14日間静置し、貯蔵安定性試験を実施した。試験後のペンタメチレンジイソシアネート(j)の純度は99.4質量%であった。
【0513】
各実施例および各比較例により得られたペンタメチレンジイソシアネートの純度を表2に示す。
【0514】
【表2】

【0515】
実施例9(ポリイソシアネート組成物(A)の製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ペンタメチレンジイソシアネート(a)を500質量部、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノールを0.25質量部、トリス(トリデシル)ホスファイトを0.25質量部装入し、60℃に昇温した。次いで、トリマー化触媒としてN−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートを0.1質量部添加した。1時間反応させた後、o−トルエンスルホンアミドを0.12質量部添加した(イソシアネート基の転化率:10質量%)。得られた反応液を薄膜蒸留装置(真空度0.093KPa、温度150℃)に通液して未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去し、さらに、得られた組成物100質量部に対し、o−トルエンスルホンアミドを0.02質量部添加し、ポリイソシアネート組成物(A)を得た。
【0516】
このポリイソシアネート組成物(A)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.3質量%、イソシアネート3量体濃度は63質量%、イソシアネート基濃度1は25.9質量%、25℃における粘度1は1530mPa・s、色相1はAPHA20であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表3に示す。
【0517】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(A)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は25.5質量%であり、25℃における粘度2は1650mPa・sであり、色相2はAPHA30であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表3に示す。
【0518】
実施例10(ポリイソシアネート組成物(B)の製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ペンタメチレンジイソシアネート(a)を500質量部、1,3−ブタンジオール(以下、1,3−BGと略する場合がある。)を3.9質量部、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノールを0.25質量部、トリス(トリデシル)ホスファイトを0.25質量部装入し、80℃で3時間反応させた。この溶液を60℃に降温した後、トリマー化触媒としてN−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートを0.1質量部添加した。1時間反応させた後、o−トルエンスルホンアミドを0.12質量部添加した(イソシアネート基の転化率:10質量%)。得られた反応液を薄膜蒸留装置(真空度0.093KPa、温度150℃)に通液して未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去し、さらに、得られた組成物100質量部に対し、o−トルエンスルホンアミドを0.02質量部添加し、ポリイソシアネート組成物(B)を得た。
【0519】
このポリイソシアネート組成物(B)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.4質量%、イソシアネート3量体濃度は46質量%、イソシアネート基濃度1は24.0質量%、25℃における粘度1は1930mPa・s、色相1はAPHA20であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表3に示す。
【0520】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(B)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は23.5質量%であり、25℃における粘度2は2100mPa・sであり、色相2はAPHA30であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表3に示す。
【0521】
実施例11(ポリイソシアネート組成物(C)の製造)
ペンタメチレンジイソシアネート(a)に代えて、ペンタメチレンジイソシアネート(b)を用い、実施例10と同様の方法にてポリイソシアネート組成物(C)を得た。
【0522】
このポリイソシアネート組成物(C)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.6質量%、イソシアネート3量体濃度は43質量%、イソシアネート基濃度1は23.5質量%、25℃における粘度1は2120mPa・s、色相1はAPHA30であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表2に示す。
【0523】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(C)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は23.0質量%であり、25℃における粘度2は2370mPa・sであり、色相2はAPHA40であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表3に示す。
【0524】
実施例12(ポリイソシアネート組成物(D)の製造)
ペンタメチレンジイソシアネート(a)に代えて、ペンタメチレンジイソシアネート(c)を用い、実施例10と同様の方法にてポリイソシアネート組成物(D)を得た。
【0525】
このポリイソシアネート組成物(D)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.6質量%、イソシアネート3量体濃度は42質量%、イソシアネート基濃度1は21.8質量%、25℃における粘度1は2350mPa・s、色相1はAPHA40であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表3に示す。
【0526】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(D)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は21.1質量%であり、25℃における粘度2は2830mPa・sであり、色相2はAPHA60であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表3に示す。
【0527】
実施例13(ポリイソシアネート組成物(E)の製造)
ペンタメチレンジイソシアネート(a)に代えて、ペンタメチレンジイソシアネート(d)を用い、実施例10と同様の方法にてポリイソシアネート組成物(E)を得た。
【0528】
このポリイソシアネート組成物(E)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.7質量%、イソシアネート3量体濃度は40質量%、イソシアネート基濃度1は20.9質量%、25℃における粘度1は2420mPa・s、色相1はAPHA50であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表3に示す。
【0529】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(E)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は20.1質量%であり、25℃における粘度2は2930mPa・sであり、色相2はAPHA70であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表3に示す。
【0530】
比較例3(ポリイソシアネート組成物(F)の製造)
ペンタメチレンジイソシアネート(a)に代えて、ペンタメチレンジイソシアネート(e)を用い、実施例10と同様の方法にてトリマー化反応を行ったが、イソシアネート基濃度の測定から反応速度が低いことが確認されたため、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートを0.2質量部加え、ポリイソシアネート組成物(F)を得た。
【0531】
このポリイソシアネート組成物(F)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.7質量%、イソシアネート3量体濃度は34質量%、イソシアネート基濃度1は19.1質量%、25℃における粘度1は2870mPa・s、色相1はAPHA100であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表3に示す。
【0532】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(F)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は17.0質量%であり、25℃における粘度2は3790mPa・sであり、色相2はAPHA150であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表3に示す。
【0533】
比較例4(ポリイソシアネート組成物(G)の製造)
ペンタメチレンジイソシアネート(a)に代えて、ペンタメチレンジイソシアネート(f)を用い、実施例10と同様の方法にてトリマー化反応を行ったが、イソシアネート基濃度の測定から反応速度が低いことが確認されたため、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートを0.2質量部加えた。イソシアネート基濃度の測定後、さらにN−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートを0.1質量部加え、ポリイソシアネート組成物(G)を得た。
【0534】
このポリイソシアネート組成物(G)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.8質量%、イソシアネート3量体濃度は32質量%、イソシアネート基濃度1は18.4質量%、25℃における粘度1は3010mPa・s、色相1はAPHA150であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表3に示す。
【0535】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(G)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は15.6質量%であり、25℃における粘度2は4180mPa・sであり、色相2はAPHA200であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表3に示す。
【0536】
実施例14(ポリイソシアネート組成物(H)の製造)
ペンタメチレンジイソシアネート(a)に代えて、ペンタメチレンジイソシアネート(i)を用い、実施例10と同様の方法にてポリイソシアネート組成物(H)を得た。
【0537】
このポリイソシアネート組成物(H)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.3質量%、イソシアネート3量体濃度は45質量%、イソシアネート基濃度1は23.9質量%、25℃における粘度1は2000mPa・s、色相1はAPHA20であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表3に示す。
【0538】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(H)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は23.4質量%であり、25℃における粘度2は2200mPa・sであり、色相2はAPHA30であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表3に示す。
【0539】
実施例15(ポリイソシアネート組成物(I)の製造)
ペンタメチレンジイソシアネート(a)に代えて、ペンタメチレンジイソシアネート(j)を用い、実施例10と同様の方法にてポリイソシアネート組成物(I)を得た。
【0540】
このポリイソシアネート組成物(I)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.5質量%、イソシアネート3量体濃度は42質量%、イソシアネート基濃度1は22.3質量%、25℃における粘度1は2250mPa・s、色相1はAPHA20であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表3に示す。
【0541】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(I)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は21.6質量%であり、25℃における粘度2は2670mPa・sであり、色相2はAPHA30であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表3に示す。
【0542】
【表3】

【0543】
(考察)
実施例14で用いたペンタメチレンジイソシアネート(i)は、酸化防止剤、酸性化合物、および、スルホンアミド基を有する化合物が配合されているため、予め高温下で貯蔵(50℃、14日間)されていても、そのペンタメチレンジイソシアネートを用いて得られるポリイソシアネート組成物は、ペンタメチレンジイソシアネートが貯蔵されていない他のポリイソシアネート組成物と、同程度の貯蔵安定性を確保することができた。
【0544】
実施例16(ポリイソシアネート組成物(J)の製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ペンタメチレンジイソシアネート(a)を500質量部、イソブタノールを24質量部、2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェノールを0.3質量部、トリス(トリデシル)ホスファイトを0.3質量部装入し、85℃に昇温し、3時間ウレタン化反応を行った。次いで、アロファネート化触媒としてオクチル酸鉛を0.02質量部添加し、イソシアネート基濃度が計算値に達するまで反応を行った後、o−トルエンスルホンアミドを0.02質量部添加した。得られた反応液を薄膜蒸留装置(真空度0.093KPa、温度150℃)に通液して未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去し、さらに、得られた組成物100質量部に対し、o−トルエンスルホンアミドを0.02質量部添加し、ポリイソシアネート組成物(J)を得た。
【0545】
このポリイソシアネート組成物(J)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.2質量%、イソシアネート基濃度1は20.4質量%、25℃における粘度1は200mPa・s、色相1はAPHA20であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表4に示す。
【0546】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(J)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は19.9質量%であり、25℃における粘度2は220mPa・sであり、色相2はAPHA30であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表4に示す。
【0547】
比較例5(ポリイソシアネート組成物(K)の製造)
ペンタメチレンジイソシアネート(a)に代えて、ペンタメチレンジイソシアネート(e)を用い、実施例16と同様の方法にてウレタン化、およびアロファネート化反応を行ったが、イソシアネート基濃度の測定から反応速度が低いことが確認されたため、オクチル酸鉛をさらに0.01質量部加え、ポリイソシアネート組成物(K)を得た。
【0548】
このポリイソシアネート組成物(K)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.2質量%、イソシアネート基濃度1は16.5質量%、25℃における粘度1は320mPa・s、色相1はAPHA80であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表4に示す。
【0549】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(K)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は14.5質量%であり、25℃における粘度2は420mPa・sであり、色相2はAPHA120であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表4に示す。
【0550】
実施例17(ポリイソシアネート組成物(L)の製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ペンタメチレンジイソシアネート(a)を500質量部、トリス(トリデシル)ホスファイトを0.2質量部、トリメチル燐酸を8質量部、水を5質量部装入し、130℃に昇温し、イソシアネート基濃度が計算値に達するまで反応を行った。得られた反応液を薄膜蒸留装置(真空度0.093KPa、温度150℃)に通液して未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去し、ポリイソシアネート組成物(L)を得た。
【0551】
このポリイソシアネート組成物(L)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.6質量%、イソシアネート基濃度1は24.8質量%、25℃における粘度1は2810mPa・s、色相1はAPHA30であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表4に示す。
【0552】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(L)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は24.0質量%であり、25℃における粘度2は3200mPa・sであり、色相2はAPHA40であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表4に示す。
【0553】
比較例6(ポリイソシアネート組成物(M)の製造)
ペンタメチレンジイソシアネート(a)に代えて、ペンタメチレンジイソシアネート(e)を用い、実施例17と同様の方法にて反応を行い、ポリイソシアネート組成物(M)を得た。
【0554】
このポリイソシアネート組成物(M)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.7質量%、イソシアネート基濃度1は20.5質量%、25℃における粘度1は3820mPa・s、色相1はAPHA70であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表4に示す。
【0555】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(M)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は18.0質量%であり、25℃における粘度2は4980mPa・sであり、色相2はAPHA100であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表4に示す。
【0556】
実施例18(ポリイソシアネート組成物(N)の製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、製造例のペンタメチレンジイソシアネート(a)を500質量部、および、低分子量ポリオールとしてトリメチロールプロパン(略号:TMP)50質量部を装入した(当量比(NCO/OH)=5.8)。窒素雰囲気下、75℃まで昇温し、トリメチロールプロパンが溶解したことを確認した後、イソシアネート基濃度が計算値に達するまで、83℃で反応させた。
【0557】
次いで、この反応溶液を55℃まで降温した後、混合抽出溶媒(n−ヘキサン/酢酸エチル=90/10(質量比))を350質量部加え、10分間撹拌し、10分間静置した後、抽出溶媒層を除去した。同抽出操作を4回繰り返した。
【0558】
その後、得られた反応液から、減圧下、80℃に加熱して、反応液中に残留する抽出溶媒を除去した。さらに酢酸エチルを加え、ポリイソシアネート組成物の濃度が75質量%となるように調製し、ポリイソシアネート組成物(N)を得た。このポリイソシアネート組成物(N)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.3質量%、イソシアネート基濃度1は20.5質量%であり、25℃における粘度1は、500mPa・sであり、色相1はAPHA20であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表4に示す。
【0559】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(N)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は20.0質量%であり、25℃における粘度2は530mPa・sであり、色相2はAPHA30であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表4に示す。
【0560】
比較例7(ポリイソシアネート組成物(O)の製造)
ペンタメチレンジイソシアネート(a)に代えて、ペンタメチレンジイソシアネート(e)を用い、実施例18と同様の方法にて反応を行い、ポリイソシアネート組成物(O)を得た。
【0561】
このポリイソシアネート組成物(O)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.4質量%、イソシアネート基濃度1は17.0質量%、25℃における粘度1は680mPa・s、色相1はAPHA40であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表4に示す。
【0562】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(O)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は15.4質量%であり、25℃における粘度2は820mPa・sであり、色相2はAPHA70であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表4に示す。
【0563】
実施例19(ポリイソシアネート組成物(P)の製造)
攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ペンタメチレンジイソシアネート(a)を500質量部、2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノールを0.3質量部、トリス(トリデシル)ホスファイトを0.3質量部、平均分子量400のメトキシポリエチレンエーテルグリコールを130質量部装入し、窒素雰囲気下85℃で3時間反応させた。次いで、トリマー化触媒としてN−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートを0.1質量部添加した。1時間反応させた後、o−トルエンスルホンアミドを0.12質量部添加した(イソシアネート基の転化率:10質量%)。得られた反応液を薄膜蒸留装置(真空度0.093KPa、温度150℃)に通液して未反応のペンタメチレンジイソシアネートを除去し、さらに、得られた組成物100質量部に対し、o−トルエンスルホンアミドを0.02質量部添加し、ポリイソシアネート組成物(P)を得た。
【0564】
このポリイソシアネート組成物(P)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.1質量%、イソシアネート基濃度1は13.2質量%、25℃における粘度1は280mPa・s、色相1はAPHA20であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表4に示す。
【0565】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(P)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は12.8質量%であり、25℃における粘度2は310mPa・sであり、色相2はAPHA30であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表4に示す。
【0566】
比較例8(ポリイソシアネート組成物(Q)の製造)
ペンタメチレンジイソシアネート(a)に代えて、ペンタメチレンジイソシアネート(e)を用い、実施例19と同様の方法にてトリマー化反応を行ったが、イソシアネート基濃度の測定から反応速度が低いことが確認されたため、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウム−2−エチルヘキサノエートを0.2質量部加え、反応を2時間継続し、ポリイソシアネート組成物(Q)を得た。
【0567】
このポリイソシアネート組成物(Q)のペンタメチレンジイソシアネート濃度は0.2質量%、イソシアネート基濃度1は10.8質量%、25℃における粘度1は410mPa・s、色相1はAPHA90であった。これらの測定値を、加熱促進試験前の測定値とし、表4に示す。
【0568】
次いで、金属製容器にポリイソシアネート組成物(Q)を移し、窒素パージ後、60℃のオーブン中に4日間静置し、加熱促進試験を実施した。試験後のポリイソシアネート組成物の、イソシアネート基濃度2は9.7質量%であり、25℃における粘度2は540mPa・sであり、色相2はAPHA140であった。これらの測定値を、加熱促進試験後の測定値とし、表4に示す。
【0569】
【表4】

【0570】
実施例20(ポリウレタン樹脂(A)の製造)
実施例5で得られたポリイソシアネート組成物(A)と、アクリルポリオール(三井化学社製、商品名:タケラックUA−702、以下、UA−702と略する。)とを、アクリルポリオール中の水酸基に対するポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が1.0となる割合で配合し、23℃で90秒間攪拌し、反応混合液を得た。次いで、この反応混合液を、JIS G 3303に準拠した標準試験板(種類:電気めっきぶりき、以下、試験板と略する。)に塗布し、その後、80℃で30分、さらに110℃で1時間硬化させ、厚みが約45μmのポリウレタン樹脂(A)を得た。
【0571】
得られたポリウレタン樹脂(A)は、23℃、相対湿度55%の室内にて7日間静置した。
【0572】
実施例21(ポリウレタン樹脂(B)の製造)
ポリイソシアネート組成物(A)に代え、実施例6で得られたポリイソシアネート組成物(B)を用いた以外は、実施例20と同様の条件および操作にて、厚みが約45μmのポリウレタン樹脂(B)を得た。
【0573】
得られたポリウレタン樹脂(B)は、23℃、相対湿度55%の室内にて7日間静置した。
【0574】
実施例22(ポリウレタン樹脂(C)の製造)
ポリイソシアネート組成物(A)に代え、実施例7で得られたポリイソシアネート組成物(C)を用いた以外は、実施例20と同様の条件および操作にて、厚みが約45μmのポリウレタン樹脂(C)を得た。
【0575】
得られたポリウレタン樹脂(C)は、23℃、相対湿度55%の室内にて7日間静置した。
【0576】
比較例9(ポリウレタン樹脂(D)の製造)
ポリイソシアネート組成物(A)に代え、比較例3で得られたポリイソシアネート組成物(F)を用いた以外は、実施例10と同様の条件および操作にて、厚みが約45μmのポリウレタン樹脂(D)を得た。
【0577】
得られたポリウレタン樹脂(D)は、23℃、相対湿度55%の室内にて7日間静置した。
【0578】
実施例23(ポリウレタン樹脂(E)の製造)
ポリイソシアネート組成物(A)に代え、実施例12で得られたポリイソシアネート組成物(D)を用いた以外は、実施例20と同様の条件および操作にて、厚みが約45μmのポリウレタン樹脂(E)を得た。
【0579】
得られたポリウレタン樹脂(E)は、23℃、相対湿度55%の室内にて7日間静置した。
【0580】
実施例24(ポリウレタン樹脂(F)の製造)
ポリイソシアネート組成物(A)に代え、実施例13で得られたポリイソシアネート組成物(E)を用いた以外は、実施例20と同様の条件および操作にて、厚みが約45μmのポリウレタン樹脂(F)を得た。
【0581】
得られたポリウレタン樹脂(F)は、23℃、相対湿度55%の室内にて7日間静置した。
【0582】
物性評価
各実施例および各比較例で得られたポリウレタン樹脂(以下、塗膜と略する。)のマルテンス硬さ、破断強度、耐溶剤性および引っかき硬度を、以下の方法で測定した。その結果を表5に示す。
<マルテンス硬さ(単位:N/mm)>
試験板に密着した状態の塗膜を、超微小硬度計(島津製作所社製、DUH−211)を用いて、圧子の種類:Triangular115、試験モード:負荷−除荷試験、試験力:10.00mN、負荷速度3.0mN/sec、負荷保持時間:10secの条件にてマルテンス硬さ(HMT115)を測定した。
<破断強度(TS)(単位:MPa)>
塗膜を、幅1cm、長さ10cmのサイズにダンベルで打ち抜いた。次いで、この試験サンプルに対して、引張圧縮試験機(インテスコ社製、Model205N)を用いて、23℃、引張速度10mm/min、チャック間距離50mmの条件で引張試験した。これにより、破断強度(TS)を測定した。
<耐溶剤性(単位:回)>
試験液を充分に含浸させた綿棒を、試験板に密着した塗膜上に置き、一定荷重がかかるようにして約1cmの距離を往復させた。この作業を繰返し、塗膜に損傷が観察されたら時点で試験を終了させた。往路、復路をそれぞれ1回とし、塗膜に損傷が観察されるまでの回数を耐溶剤性とした。試験液は、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトンとした。
【0583】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンタメチレンジアミンまたはその塩から合成されるペンタメチレンジイソシアネートであって、
ペンタメチレンジアミンまたはその塩の総量に対する、C=N結合を有する含窒素六員環化合物の含有量が、2質量%以下であることを特徴とする、ペンタメチレンジイソシアネート。
【請求項2】
ペンタメチレンジアミンまたはその塩の総量に対する、アミノ基とC=N結合とを有する含窒素六員環化合物の含有量が、1.5質量%以下であることを特徴とする、ペンタメチレンジイソシアネート。
【請求項3】
アミノ基とC=N結合とを有する含窒素六員環化合物が、2−(アミノメチル)−3,4,5,6−テトラヒドロピリジンであることを特徴とする、請求項2に記載のペンタメチレンジイソシアネート。
【請求項4】
ペンタメチレンジアミンまたはその塩を、ホスゲン化することにより得られることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペンタメチレンジイソシアネート。
【請求項5】
ペンタメチレンジアミンまたはその塩を、カルバメート化および熱分解することにより得られ、
酸化防止剤と、
酸性化合物および/またはスルホンアミド基を有する化合物と
を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペンタメチレンジイソシアネート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のペンタメチレンジイソシアネートを変性することにより得られ、下記(a)〜(e)の官能基を少なくとも1種含有することを特徴とする、ポリイソシアネート組成物。
(a)イソシアヌレート基
(b)アロファネート基
(c)ビウレット基
(d)ウレタン基
(e)ウレア基
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法であって、
ペンタメチレンジアミンまたはその塩を、非ハロゲン脂肪族系有機溶剤により抽出した後、イソシアネート化することを特徴とする、ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法。
【請求項8】
非ハロゲン脂肪族系有機溶剤が、炭素数4〜7の直鎖状1価アルコールであることを特徴とする、請求項7に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法。
【請求項9】
ペンタメチレンジアミンまたはその塩を、ペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有する水溶液から抽出することを特徴とする、請求項7または8に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法。
【請求項10】
ペンタメチレンジアミンまたはその塩を含有する水溶液を、リシンまたはその塩の脱炭酸酵素反応により得ることを特徴とする、請求項9に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載のペンタメチレンジイソシアネートと、活性水素化合物とを反応させることにより得られることを特徴とする、ポリウレタン樹脂。
【請求項12】
請求項6に記載のポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物とを反応させることにより得られることを特徴とする、ポリウレタン樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−201863(P2011−201863A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40809(P2011−40809)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】