説明

ペンダントシリル基を有するフルオロケミカル化合物

フルオロケミカルシラン化合物及びそれから誘導されるコーティング組成物が記載される。本化合物及び組成物は、撥水性、撥油性、防染み性、防汚性を与えるように、基材、特に、セラミックス又はガラスのような硬質表面を有する基材の処理に使用されてよい。


は式


である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水性、撥油性、防染み性、防汚性を与えるように、基材、特にセラミックス又はガラスのような硬質表面を有する基材の処理に使用してもよい、フルオロケミカルシラン化合物、及びそれから誘導されるコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に撥油性及び撥水性を与える処理のための多数のフッ素化組成物が当技術分野において既知であるが、基材処理、特に、セラミックス、ガラス及び石のような硬質表面を有する基材に撥水性及び撥油性を付与し、容易に洗浄できるようにするために、更に改善された組成物を提供するという要望が引き続き存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特に光学分野において、染み、塵及び埃への耐性を付与するために、硬質表面としてのガラス及びプラスチックを処理する必要性がある。こうした組成物及びそれらを採用する方法が、改善された特性を有するコーティングを生み出し得ることが望ましい。特に、コーティングの摩耗耐性の改善を包含するコーティングの耐久性を改善することが好ましい。更に、より少量の洗剤、水、又はより少ない手作業を使用しながら、こうした基材の洗浄の容易さを向上することは、最終消費者の要望であるだけでなく、環境に対してもプラスの効果を有する。また、コーティングが、特に良好な耐化学性及び耐溶媒性を示すことが望ましい。組成物は、容易で安全な方法で簡便に適用され、既存の製造方法に適合性があるべきである。好ましくは、組成物は、処理すべき基材を作製するために実施される製造プロセスに容易に適合するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、式
【0005】
【化1】

【0006】
のフルオロケミカルシラン化合物を提供し、
式中、
はフッ素含有基であり、
は、共有結合、多価アルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、アルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素又は窒素原子を含有しているか、又は含有しておらず、
は、アミノシランとアクリロイル基とのマイケル反応から誘導されるシラン含有基であり、
x及びyは、それぞれ独立して、少なくとも1であり、zは1又は2である。
【0007】
1つの態様においては、本発明は、少なくとも1つのフッ素含有基と、アミノシランとアクリロイル化合物とのマイケル反応から誘導される少なくとも1つのシラン含有部分とを有する1つ以上の化合物及び化合物の混合物(例えば、少なくとも1つのフッ素含有基を有するアクリレート化ポリオール)を含む化学組成物に関する。
【0008】
特に指定のない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される次の用語は、以下に与えられる意味を有する:
「アルキル」は、1〜約12個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状、環式又は非環式(acyclic)、飽和一価炭化水素ラジカル、例えばメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、ペンチル、及び同類のものを意味する。
【0009】
「アクリロイル」は、アクリレート、チオアクリレート、又はアクリルアミドを意味する。
【0010】
「アルキレン」は、1〜約12個の炭素原子を有する直鎖状飽和二価炭化水素ラジカル又は3〜約12個の炭素原子を有する分枝鎖状飽和二価炭化水素ラジカル、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレン、及び同類のものを意味する。
【0011】
「アルコキシ」は、末端酸素原子を有するアルキル、例えばCH−O−、C−O−、及び同類のものを意味する。
【0012】
「アラルキレン」は、アルキレンラジカルに付着する芳香族基を有する、上記で定義されるアルキレンラジカル、例えばベンジル、1−ナフチルエチル、及び同類のものを意味する。
【0013】
「アルカリーレン」は、アルキル基が付着したアリーレン基を意味する。
【0014】
「アリーレン」は、フェニレン、ナフタレン等のような多価の芳香族ラジカルを意味する。
【0015】
「硬化化学組成物」は、化学組成物が乾燥されること、又は溶媒が、化学組成物から、周辺温度以上から乾燥まで、蒸発されたことを意味する。本組成物は、更に、シラン化合物間に形成されるシロキサン結合の結果、架橋されてもよい。
【0016】
「求核フルオロケミカル化合物」は、ヒドロキシル基又はアミン基のような1つ又は2つの求核官能基、並びにペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロオキシアルキル又はペルフルオロオキシアルキレン基を有する化合物を意味し、例えばCFSON(CH)CHCHOH、CCHCHOH、CO(CO)CFCONHCOH、c−C11CHOH、及び同類のものである。
【0017】
「求電子フルオロケミカル化合物」は、酸、アシルハロゲン化物又はエステルのような1つ又は2つの求電子官能基、並びにペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロオキシアルキル又はペルフルオロオキシアルキレン基を有する化合物を意味し、例えばCCHCHCOCH、CCOH、CO(CO)CFCOCl、c−C11COH、及び同類のものである。
【0018】
「硬質基材」は、その形状を維持するいずれかの剛体材料を意味し、例えば、ガラス、セラミック、コンクリート、天然石、木材、金属、プラスチック、及び同類のものである。
【0019】
「オキシアルコキシ」は、1つ以上の酸素原子がアルキル鎖に存在していてもよく、存在する炭素原子の総数が50個まででもよいことを除いて、アルコキシとして上記で与えられた意味を本質的に有し、例えば、CHCHOCHCHO−、COCHCHOCHCHO−、CHO(CHCHO)1−100H、及び同類のものである。
【0020】
「オキシアルキル」は、1つ以上の酸素へテロ原子がアルキル鎖に存在していてもよいことを除いて、アルキルについて上記で与えられた意味を本質的に有し、これらのへテロ原子は、少なくとも1つの炭素により互いに分離されており、例えば、CHCHOCHCH−、CHCHOCHCHOCH(CH)CH−、CCHOCHCH−、及び同類のものである。
【0021】
「オキシアルキレン」は、1つ以上の酸素へテロ原子がアルキレン鎖に存在していてもよいことを除いて、アルキレンについて上記で与えられた意味を本質的に有し、これらのへテロ原子は、少なくとも1つの炭素により互いに分離されており、例えば、−CHOCHO−、−CHCHOCHCH−、−CHCHOCHCHCH−、及び同類のものである。
【0022】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード、好ましくはフルオロ及びクロロを意味する。
【0023】
「ペルフルオロアルキル」は、アルキルラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が1〜約12個であることを除いて、「アルキル」について上記で与えられた意味を本質的に有し、例えば、ペルフルオロプロピル、ペルフルオロブチル、ペルフルオロオクチル、及び同類のものである。
【0024】
「ペルフルオロアルキレン」は、アルキレンラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられていることを除いて「アルキレン」について上記で与えられた意味を本質的に有し、例えばペルフルオロプロピレン、ペルフルオロブチレン、ペルフルオロオクチレン、及び同類のものである。
【0025】
「ペルフルオロオキシアルキル」は、オキシアルキルラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が3〜約100個であることを除いて、「オキシアルキル」として上記で与えられた意味を本質的に有し、例えば、CFCFOCFCF−、CFCFO(CFCFO)CFCF−、CO(CF(CF)CFO)CF(CF)CF−(式中sは、(例えば)約1〜約50である)、及び同類のものである。
【0026】
「ペルフルオロオキシアルキレン」は、オキシアルキレンラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が3〜約100であることを除いて、「オキシアルキレン」として上記に与えられた意味を本質的に有し、例えば、−CFOCF−、又は−[CF−CF−O]−[CF(CF)−CF−O]−(式中、r及びsは(例えば)1〜50の整数である)である。
【0027】
「ペルフルオロ化された基」は、炭素に結合した水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられている有機基を意味し、例えば、ペルフルオロアルキル及びペルフルオロオキシアルキル、及び同類のものである。
【0028】
「求核性アクリロイル化合物」は、1分子当たり少なくとも1つの一級又は二級の求核基、並びにアクリレート及びアクリルアミド基を包含する少なくとも1つのアクリロイル基を有する、有機化合物を意味する。
【0029】
「マイケル付加」とは、アミノシランのような求核試薬がアクリロイル基に1,4付加をする付加反応を指す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、上記の式Iのフルオロケミカルシラン化合物を提供する。
【0031】
【化2】

【0032】
式中、
は、一価のペルフルオロアルキル含有基若しくはペルフルオロオキシアルキル含有基、又は二価のペルフルオロアルキレン含有基若しくはペルフルオロオキシアルキレン含有基を包含するフッ素含有基であり、
は、共有結合、多価アルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、アルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素又は窒素原子を含有しているか、又は含有しておらず、
は、アミノシランとアクリロイル基とのマイケル反応から誘導されるシラン含有基であり、
は、−O、−S−、又は−NR−であり、式中、Rは、H又はC〜Cアルキルであり、
は、C〜Cアルキル、又は−R−Si(Y)(R3−p又は(R−R−X−C(O)−CHCH−であり、
x及びyは、それぞれ独立して、少なくとも1であり、zは1又は2である。
【0033】
式Iについて、Rは、次式の通り、アミノシランのアクリロイル基へのマイケル付加により誘導される。
【0034】
【化3】

【0035】
式中、
は、−O、−S−、又は−NR−であり、式中、Rは、H又はC〜Cアルキルであり、
は、C〜Cアルキル、又は−R−Si(Y)(R3−p又は(R−R−X−C(O)−CHCH−であり、
は二価アルキレン基であり、アルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素又は窒素原子を含有しているか、又は含有しておらず、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル又はアリール基であり、
pは1、2又は3である。
【0036】
本発明者らは、理論に束縛されることを望まないが、上記式Iの化合物は、基材表面との縮合反応を受け、式IIの加水分解可能な「Y」基の加水分解又は置換を介し、シロキサン層を形成すると考えられる。この文脈において、「シロキサン」は、式Iの化合物に付着される、−Si−O−Si−結合を指す。水の存在下で、「Y」基は、「Si−OH」基への加水分解、更にシロキサンへの縮合を受けるであろう。
【0037】
式Iの化合物を含有するコーティング組成物から調製されるコーティングは、それ自体の化合物を包含し、加えて、予め選択された基材の表面への結合、及びシロキサン形成による分子間架橋から生じたシロキサン誘導体を包含する。コーティングはまた、未反応又は未縮合の「Si−Y」基も包含することができる。組成物は、オリゴマーペルフルオロオキシアルキルモノハイドライド、出発原料、並びにペルフルオロオキシアルキルアルコール及びエステルのような、非シラン系材料を更に含有してよい。
【0038】
一実施形態において、本発明は、式Iの化合物、溶媒、並びに水及び酸を含有しているか、又は含有していない、コーティング組成物を提供する。別の実施形態においては、コーティング組成物は、式Iの化合物の水性懸濁液又は分散物を含む。セラミックスのような多くの基材への良好な耐久性を得るために、本発明の組成物は、好ましくは水を包含する。したがって、本発明は、基材と式Iの化合物及び溶媒を含むコーティング組成物とを接触させる工程を含むコーティング方法を提供する。別の実施形態においては、式Iの化合物は、基材、特に光学的応用において使用される反射防止基材に、化学蒸着方法によって適用されてもよい。
【0039】
式Iに関して、R基は、一価のペルフルオロアルキル含有基若しくはペルフルオロオキシアルキル含有基、又は二価のペルフルオロアルキレン含有基若しくはペルフルオロオキシアルキレン含有基を含んでもよい。より具体的には、Rは、式IIIにより表され得る。
【0040】
【化4】

【0041】
式中、
は、一価のペルフルオロアルキル基又はペルフルオロオキシアルキル基、若しくは二価のペルフルオロアルキレン基又はペルフルオロオキシアルキレン基であり、
Qは、共有結合、又はアルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルカリーレンのような二価結合基であることができ、O、N、及びS、及びこれらの組み合わせのようなカテナリーへテロ原子を包含するか、又は包含しない。またQは、スルホンアミド、カルボキシアミド、又はエステルのようなカルボニル又はスルホニル、及びこれらの組み合わせのようなヘテロ原子含有官能基を包含しているか、又は包含しておらず、Qは、「Q−CO−X−」部分がカルバメート、尿素、又は炭酸塩基でない、すなわちカルボニルに隣接する原子がヘテロ原子でないように更に選択され;
は、−O−、−NR−、又は−S−、であり、式中、Rは、H又はC〜Cのアルキルであり、
zは1又は2であり、
vは0又は1である。
【0042】
式IIIのR基は、直鎖状、分枝鎖状、又は環式フルオロケミカル基又はこれらのいずれかの組み合わせを含有することができる。R基は、一価又は二価であることができ、炭素−酸素−炭素鎖(すなわち、ペルフルオロオキシアルキレン基)を形成するように、炭素−炭素鎖中に1つ以上のカテナリー酸素原子を含有しているか、又は含有していない。完全にフッ素化された基が、一般に好ましいが、2つの炭素原子毎に1つ以下の水素又は他のハロ原子が存在するという条件で、置換基として水素又は他のハロ原子も存在できる。
【0043】
いずれかのR基が、少なくとも約40重量%のフッ素、より好ましくは少なくとも約50重量%のフッ素を含有するのが更に好ましい。一価のR基の末端部分は、一般に完全にフッ素化されており、好ましくは、少なくとも3個のフッ素原子を含有する、例えば、CF−、CFCF−、CFCFCF−、(CFN−、(CFCF−、SFCF−である。特定の実施形態において、nが2〜12まである、一価のペルフルオロアルキル基(すなわち、式C2n+1−のもの)、又は二価のペルフルオロアルキレン基(すなわち、式−C2n−のもの)が、好ましいR基であり、n=3〜5がより好ましく、n=4が最も好ましい。
【0044】
有用なペルフルオロオキシアルキル及びペルフルオロオキシアルキレンR基は、次式に相当する:
W−R−O−R−(R− (IV)
式中、
Wは、一価のペルフルオロオキシアルキルについてはFであり、二価のペルフルオロオキシアルキレンについてはオープン結合価(open valence)(「−」)であり、
は、ペルフルオロアルキレン基を表し、Rは、1、2、3、又は4つの炭素原子を有するペルフルオロアルキレンオキシ基、又はこうしたペルフルオロアルキレンオキシ基の混合物からなるペルフルオロアルキレンオキシ基を表し、Rは、ペルフルオロアルキレン基を表し、qは0又は1である。式(IV)のペルフルオロアルキレン基R及びRは、直鎖状又は分枝鎖状であってもよく、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を含んでもよい。典型的な一価のペルフルオロアルキル基は、CF−CF−CF−であり、典型的な二価のペルフルオロアルキレンは、−CF−CF−CF−、−CF−、又は−CF(CF)CF−である。ペルフルオロアルキレンオキシ基Rの例としては、−CF−CF−O−、−CF(CF)−CF−O−、−CF−CF(CF)−O−、−CF−CF−CF−O−、−CF−O−、−CF(CF)−O−、及び−CF−CF−CF−CF−Oが挙げられる。
【0045】
ペルフルオロアルキレンオキシ基Rは、同一のペルフルオロオキシアルキレン単位、又は異なるペルフルオロオキシアルキレン単位の混合物から構成されてもよい。ペルフルオロオキシアルキレン基が、異なるペルフルオロアルキレンオキシ単位からなる場合、それらは、ランダム構成、交互構成で存在することができ、又はブロックとして存在することができる。ペルフルオロ化されたポリ(オキシアルキレン)基の典型的な例としては:
−[CF−CF−O]−;−[CF(CF)−CF−O]−;−[CFCF−O]−[CFO]−、−[CFCFCFCF−O]及び−[CF−CF−O]−[CF(CF)−CF−O]−が挙げられ;式中、r、s、t及びuはそれぞれ1〜50、好ましくは2〜25の整数である。式(V)に対応する好ましいペルフルオロオキシアルキル基は、CF−CF−CF−O−[CF(CF)−CFO]−CF(CF)CF−であり、式中、sは2〜25の整数である。
【0046】
ペルフルオロオキシアルキル及びペルフルオロオキシアルキレン化合物は、末端フッ化カルボニル基をもたらす、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化により、得ることができる。このフッ化カルボニルを、当業者に周知の反応によって、酸、エテスル、又はアルコールに変換させてもよい。その後、フッ化カルボニル若しくは酸、エステル又はそれから誘導されたアルコールを更に反応させ、既知の手順に従って、所望の基を導入してよい。
【0047】
y又はzが1である式IのR基又は式IIIのR基に関して、フルオロケミカル一官能性化合物、好ましくはモノアルコール及びモノアミンが意図される。有用なフルオロケミカル一官能性化合物の代表的な例としては、次のものが挙げられる。
【0048】
CF(CFSON(CH)CHCHOH、CF(CFSON(CH)CH(CH)CHOH、
CF(CFSON(CH)CHCH(CH)NH、CF(CFSON(CHCH)CHCHSH、
CF(CFSON(CH)CHCHSCHCHOH、C13SON(CH)(CHOH、
CF(CFSON(H)(CHOH、CSON(CH)CHCHOH、
CF(CFSON(CH)(CHNH、CSON(CH)(CH11OH、
CF(CFSON(CHCH)CHCHOH、CF(CFSON(C)(CHOH、
CF(CFSON(C)(CHOH、CF(CFSON(C)CHOCHCHCHOH、
CF(CFSON(CHCHCH)CHCHOH、
CF(CFSON(CHCHCH)CHCHNHCH
CF(CFSON(C)CHCHNH、CF(CFSON(C)(CHSH、
CF(CFCHCHOH、COCOCFCHOCHCHOH;
n−C13CF(CF)CON(H)CHCHOH;C13CF(CF)COCH(CH)OH;
CON(H)CHCHOH;CO(CF(CF)CFO)1−36CF(CF)CHOH;及び
O(CF(CF)CFO)1−36CF(CF)C(O)N(H)CHCHOH、及び同類のもの、並びにこれらの混合物。
【0049】
y又はzが2である式IのR基又は式IIIのR基に関して、フッ素化ポリオール及びポリアミンが意図される。好適なフッ素化ポリオールの代表的な例としては、RSON(CHCHOH)、例えばN−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;ROCSON(CHCHOH);RSON(R)CHCH(OH)CHOH、例えばC13SON(C)CHCH(OH)CHOH;RCHCON(CHCHOH);CFCF(OCFCFOCFCON(CH)CHCH(OH)CHOH;
OCHCH(OH)CHOH、例えばCOCHCH(OH)CHOH;
CHCHSCOCHCH(OH)CHOH;RCHCHSCCH(CHOH)
CHCHSCHCH(OH)CHOH;RCHCHSCH(CHOH)CHCHOH;
CHCHCHSCHCH(OH)CHOH、例えばC11(CHSCHCH(OH)CHOH;
CHCHCHOCHCH(OH)CHOH、例えばC11(CHOCHCH(OH)CHOH;
CHCHCHOCOCHCH(OH)CHOH;RCHCH(CH)OCHCH(OH)CHOH;
(CHSCCH(CHOH)CHOH;R(CHSCHCH(CHOH)
(CHSCOCHCH(OH)CHOH;RCHCH(C)SCHCH(OH)CHOH;
CHOCHCH(OH)CHOH;RCH2CH(OH)CHSCHCHOH;
CHCH(OH)CHSCHCHOH;RCHCH(OH)CHOCHCHOH;
CHCH(OH)CHOH;RR’’SCH(R’’’OH)CH(R’’’OH)SR
(RCHCHSCHCHSCHC(CHOH);[(CFCFO(CF(CHSCHC(CHOH)
(RR’’SCHC(CHOH);1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFOCO(CFOCOCFCHOH);1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFCFO(CFOCFCFCHOH);フッ素化オキセタンの開環重合により作製されるフッ素化オキセタンポリオール、例えば、ポリ−3−フォックス(Poly-3-Fox)(商標)(オムノバ・ソリューションズ社(Omnova Solutions, Inc.)、オハイオ州、アクロン(Akron)から入手可能);米国特許第4,508,916号(ニューウェル(Newell)ら)に記載されるような、フッ素化有機基置換エポキシドの少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物による開環付加重合により調製されたポリエーテルアルコール;ソルベイ(Solvay)、ニュージャージー州、ソロホール(Thorofore)から入手可能なフォンブリン(Fomblin)(商標)ZDOL(HOCHCFO(CFO)8−12(CFCFO)8−12CFCHOH)のようなペルフルオロポリエーテルジオールが挙げられ;式中、Rは、1〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、又は3〜約50個の炭素原子を有するペルフルオロオキシアルキル基(存在する全てのペルフルオロカーボン鎖が6個以下の炭素原子を有する)、又はこれらの混合物であり;R’は炭素原子1〜4個のアルキル;R’’は炭素原子1〜12個の分岐鎖状若しくは直鎖状アルキレン、炭素原子2〜12個のアルキレンチオ−アルキレン、炭素原子2〜12個のアルキレン−オキシアルキレン、又は炭素原子2〜12個のアルキレンイミノアルキレンであり、窒素原子は第三置換基水素又は1〜6個の炭素原子のアルキルを含有し;R’’’は炭素原子1〜12個の直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン、又は式C2r(OC2Sのアルキレン−ポリオキシアルキレンであり、式中、rは1〜12であり、sは2〜6であり、tは1〜40である。
【0050】
好ましいフッ素化ポリオールとしては、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;ポリ−3−フォックス(Poly-3-Fox)(商標)(オムノバ・ソリューションズ社(Omnova Solutions, Inc.)、オハイオ州、アクロン(Akron)から入手可能)のようなフッ素化オキセタンの開環重合により作製されるフッ素化オキセタンポリオール;米国特許第4,508,916号(ニューウェル(Newell)ら)に記載されるような少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物によるフッ素化有機基置換エポキシドの開環付加重合により調製されるポリエーテルアルコール;ソルベイ(Solvay)(ニュージャージー州,ソロホール(Thorofore))から入手可能なフォンブリン(Fomblin)(商標)ZDOL(HOCHCFO(CFO)8−12(CFCFO)8−12CFCHOH)のようなペルフルオロポリエーテルジオール);1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFOCO(CFOCOCFCHOH);及び1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFCFO(CFOCFCFCHOH)が挙げられる。
【0051】
少なくとも1つのフッ素含有基を含むより好ましいポリオールとしては、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFCFO(CFOCFCFCHOH)、及びCFCFCF−O−[CF(CF)CFO]−CF(CF)−(式中、nは3〜25の整数である)が挙げられる。このペルフルオロ化ポリエーテル基は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化から誘導され得る。そのようなペルフルオロ化ポリエーテル基は、特にそれらの良性の環境特性により、好ましい。
【0052】
基とRアクリロイル基の間の式IのR部分としては、アルキレン、アリーレン、又はこれらの組み合わせから選択される多価基、並びに任意のカテナリー酸素、又は窒素へテロ原子、又はこれらの組み合わせが挙げられる。Rは、非置換であることができ、又はアルキル、アリール、ハロ、若しくはこれらの組み合わせで置換されることができる。R基は、典型的に30個以下の炭素原子を有する。いくつかの化合物においては、R基は、20個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を有する。例えば、Rは、アルキレン、アリール基で置換されたアルキレン、又はアリーレンと組み合わせられたアルキレンであることができる。
【0053】
式IのR部分は、少なくとも2つの求核官能基を有する脂肪族又は芳香族化合物から誘導されてもよい。こうした化合物は、式
(XH)y+x
であってよく、式中、Rは、共有結合、多価アルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、前記アルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素又は窒素原子を含有しているか、又は含有しておらず、各Xは、独立して−O、−S−、又は−NR−であり、式中、RはH又はC〜Cアルキルであり、x+yは少なくとも2である。こうした化合物としては、ポリオール、ポリアミン、及びヒドロキシアミンが挙げられる。
【0054】
一実施形態においては、式Iのフルオロケミカル化合物は、特に、一官能性又は二官能性のペルフルオロ化された基、及び少なくとも1つの求電子官能基を有するフルオロケミカル化合物と、求電子フルオロケミカル化合物との反応生成物を一部分含んでもよい。このような化合物としては、次式のものが挙げられる:
−[Q−CO−X (V)
式中、R、Q、及びzは、式IIIについて記載されたとおりであり、Xは、−OH、ハロゲン原子、又はORであり、RはH若しくはC〜Cアルキルであり、又は、すなわち式Vの化合物は、エステル、酸又はアシルハロゲン化物である。式Vの化合物は、Rはが共有結合でなく、例えばRは、ポリオール、又はポリアミンの残基である、化合物又は式Iの調製に特に有用である。
【0055】
請求項1のフルオロケミカル化合物は、一部分において、a)求核官能基及び少なくとも1つのアクリロイル基を有する式VIの求核アクリロイル化合物(後記)、並びにb)フッ素含有基及び求電子基を有する式Vの化合物(前記)の反応生成物を含んでもよい。アクリロイル部分は、アクリレート又はアクリルアミドであってよく、求核官能基は、アミノ、チオール又はヒドロキシ基であってもよい。好ましくは、求核性アクリロイル化合物は、ヒドロキシル基及び少なくとも2つのアクリロイル基を有するポリアクリル化合物である。
【0056】
こうした求核アクリロイル化合物としては、式:
【0057】
【化5】

【0058】
のものが挙げられ、式中、
は、−O、−S−、又は−NR−、好ましくは−O−であり、式中、Rは、H、又はC〜Cのアルキルであり、
は、多価アルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、前記アルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素又は窒素原子を含有しているか、又は含有しておらず、qは1〜5である。末端アミンは、マイケル付加により重合されてもよいので、末端「HX」基は、好ましくは−NRHでないことが、理解されるであろう。こうした末端アミンの使用は、アクリロイル基がアミノシランによって官能化されるまで、こうしたマイケル重合を防止するために保護基を必要とする可能性がある。
【0059】
好ましくは、qは1を超える。得られる複数のアクリロイル基は、複数のシラン基を有する式Iの化合物の調製を可能にする。シラン基とR基とのモル比は、1:1を超える、又は2:1を超えてもよい。
【0060】
式VIの有用な求核性アクリロイル化合物としては、例えば、(a)ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノアクリレート1,3−ブチレングリコールモノアクリレート、1,4−ブタンジオールモノアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、アルコキシル化脂肪族モノアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールモノアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールモノアクリレート、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートアクリレート、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートモノアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、エトキシル化ビスフェノール−Aモノアクリレート、ヒドロキシピバラルデヒド修飾トリメチロールプロパンモノアクリレート、ネオペンチルグリコールモノアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、トリシクロデカンジメタノールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレートのようなモノアクリロイル含有化合物;(b)グリセロールジアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化トリメチロールプロパンジアクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化ジアクリレート(例えば、プロポキシル化(3)グリセリルジアクリレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルジアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパンジアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパンジアクリレート)、トリメチロールプロパンジアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレートのような高官能性(メタ)アクリル含有化合物、並びにジペンタエリスリトールペンタアクリレートのような多価アクリロイル含有化合物からなる群から選択されるアクリレート化合物が挙げられる。
【0061】
こうした化合物は、例えば、サートマー社(Sartomer Company)(ペンシルバニア州、エクストン(Exton))、UCBケミカルズ社(UCB Chemicals Corporation)(ジョージア州、スミルナ(Smyrna))、及びアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州、ミルウォーキー(Milwaukee))のような供給業者から広く入手可能である。更に有用なアクリレート材料としては、例えば米国特許第4,262,072号(ウェンドリング(Wendling)ら)に記載のもののような、ジヒドロキシヒダントイン部分含有ポリアクリレートが挙げられる。
【0062】
例示的な求核性アクリロイル化合物について、相当するアクリルアミド及びチオアクリレートを使用してもよいことが理解されるであろう。更に、指示されたヒドロキシル基は、相当するチオール基により置換されてもよい。
【0063】
別の実施形態においては、式Iのフルオロケミカル化合物は、一官能性又は二官能性ペルフルオロ化基、及び少なくとも1つの求核官能基を有する求核フルオロケミカル化合物と、求電子アクリロイル化合物との反応生成物を、部分的に含んでよい。こうした求核フルオロケミカル化合物としては、式:
−[Q(XH) (VII)
のものが挙げられ、式中、R、Q、X、y及びzは、式IIIで記載されたものである。式VIIの化合物は、式中、Rが共有結合である、式Iの化合物の調製に特に有用であり、ハロゲン化アクリロイル又は官能的同等物との反応によりアクリロイル基で官能化されてもよい。
【0064】
したがって、式Iの化合物は、式
【0065】
【化6】

【0066】
の中間ポリアクリロイル化合物を経由して調製されてもよく、式中、
、R、X、y及びzは式Iについて前記のとおりである。その後、式VIIIのポリアクリロイル化合物は、アミノシランのマイケル付加によりシラン基で官能化されてもよい。
【0067】
好ましいアミノシランは、一般式
【0068】
【化7】

【0069】
によって表わすことができ、式中、
は、H、C〜Cのアルキル、又は−R−Si(Y)(R3−pであり、
は、二価のアルキレン基であり、アルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素原子を含有しているか、又は含有しておらず、
Yが、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル若しくはアリール基であり、
pは、1、2、又は3、好ましくは、3である。
【0070】
水の存在下で、Y基は−OH基に加水分解する可能性があり、基材表面との反応をもたらし、シロキサン連鎖を形成し、したがって形成された結合、特にSi−O−Si結合は、耐水性があり、本発明の化学組成物により付与された染み剥離特性の強化された耐久性を提供し得ることが理解されるであろう。
【0071】
式IXのアミノシランに関して、RがHである一級アミンは、マイケル付加により2つのアクリロイル基と反応することが可能であり、これは、式Iのフルオロケミカル化合物の架橋を導く可能性があることは、注目すべきである。こうした化合物は、R基が、(R−R−X−C(O)−CHCH−である、式IIにより表され得る。
【0072】
本発明の実行に有用ないくつかのアミノシランは、米国特許第4、378、250号に記載され、アミノエチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、β−アミノエチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリブトキシシラン、β−アミノエチルトリプロポキシシラン、α−アミノ−エチルトリメトキシシラン、α−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、
γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、
β−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−アミノプロピルトリエトキシシラン、
β−アミノプロピルトリプロポキシシラン、β−アミノプロピルトリブトキシシラン、
α−アミノプロピルトリメトキシシラン、α−アミノプロピルトリエトキシシラン、
α−アミノプロピルトリブトキシシラン、及びα−アミノプロピルトリプロポキシシランが挙げられる。
【0073】
米国特許第4,378,250号に記載されるものを包含する、少量(<20モルパーセント)のカテナリー窒素含有アミノシランも使用されてもよい。N−(β−アミノエチル)−β−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(β−アミノエチル)−α−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−α−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−α−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(γ−アミノプロピル)−β−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(γ−アミノプロピル)−β−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(γ−アミノプロピル)−β−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、β−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、及びγ−ジエチレントリアミンプロピルトリエトキシシラン。
【0074】
式Iのフルオロケミカル化合物は、3工程プロセスにより調製され得る。第1工程は、CC(O)OCHのような式Vの求電子フルオロケミカル化合物と、アルコール又は一級若しくは二級アミノ基のような少なくとも2つの求核基を含有する式R(XH)y+xの化合物との反応によるものであり、混合アミン及びアルコール基を持つ対応するフルオロケミカルアミド−ポリオール若しくはポリアミン、エステル−ポリオール若しくはポリアミン、又はアミド、又はエステルを製造する。第2工程は、(R(XH)y+xの)残りのアルコール及び/又はアミン基の、ハロゲン化アクリロイル、エステル、無水物又はアクリル酸でのアクリル化であり、式VIIIの中間体を製造する。その後、第3工程は、ペンダントアクリロイル基にアミノシランのマイケル付加をもたらす。好ましくは、式R(XH)y+xの化合物は、1つの一級アミノ基及び少なくとも2つのヒドロキシ基を有する一級アミノポリオールである。
【0075】
一般に、反応構成要素及び溶媒は、即時に連続して、又は予め作製された混合物として、乾燥反応容器に充填される。均質な混合物又は溶液が得られると、触媒が添加されるか、又は添加されずに、反応混合物が、ある温度で、反応が発生するのに十分な間加熱される。反応の進行は、IRを監視することによって決定できる。
【0076】
式Vのフッ素化化合物は、化合物R(XH)y+xの入手可能なアミン又はアルコール官能基の平均5〜50モル・パーセントと反応するのに十分な量で使用される。好ましくは、式Vの化合物は、平均10〜30モルパーセントの基と反応するために使用される。残りの基、平均約50〜95モル・パーセント、好ましくは70〜90モル・パーセントは、アクリル酸エステルのようなアクリロイル化合物により官能化され、アミノシラン(IX)のマイケル付加が後続し、ペンダントフルオロケミカル基及びペンダントシラン基を共に有する化合物が得られる。
【0077】
3工程プロセスの代わりに、式VIIの求核フルオロケミカル化合物は、アクリル酸エステル(又は同等物)と反応してよく、アミノシラン(IX)のマイケル付加が後続し、次式の化合物が製造される:
【0078】
【化8】

【0079】
式中、
はフッ素含有基であり;
は、−O、−S−、又は−NR−であり、式中、Rは、H又はC〜Cアルキルであり、
は、C〜Cアルキル、又は−R−Si(Y)(R3−p若しくは(R−X−C(O)−CHCH−であり、
は、二価のアルキレン基であり、アルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素原子を含有しているか、又は含有しておらず、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル又はアリール基であり、
pは、1、2、又は3であり、
zは1又は2である。
【0080】
あるいは、アミノシラン(IX)及び求核アクリロイル化合物(VI)は、予備反応してよく、その後、次式XIのこのマイケル付加物は、式Vのフルオロケミカルと反応する。
【0081】
【化9】

【0082】
式中、R、R、R、R、X、Y、p及びqは、式I及びIIについて前記したとおりである。
【0083】
アミノシランのアクリロイル基へのマイケル付加には、触媒は、一般に必要ではないが、マイケル反応に好適な触媒は、その共役酸が、好ましくは12〜14のpKaを有する塩基である。使用される最も好ましい塩基は、有機のものである。こうした塩基の例は、1,4−ジヒドロピリジン、メチルジフェニルホスファン、メチルジ−p−トリルホスファン、2−アリル−N−アルキルイミダゾリン、水酸化テトラ−t−ブチルアンモニウム、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン)及びDBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン)、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム、及び同類のものである。本発明に関連する好ましい触媒は、DBU及びテトラメチルグアニジンである。マイケル付加反応において使用される触媒の量は、固体に対して、好ましくは0.05重量%〜2重量%、より好ましくは0.1重量%〜1.0重量%である。
【0084】
本発明による組成物を基材上にコーティングし、少なくとも部分的に硬化して、コーティングされた物品を提供してもよい。いくつかの実施形態では、重合化コーティングは、耐擦傷性、落書き防止性、耐汚性、接着剥離、低屈折率、及び撥水性のうち少なくとも1つを提供する保護コーティングを形成してもよい。本発明によるコーティングされた物品としては、例えば、眼鏡レンズ、鏡、窓、接着剥離ライナー、及び落書き防止フィルムが挙げられる。
【0085】
好適な基材としては、例えば、ガラス(例えば、窓及び光学素子(例えば、レンズ及び鏡))、セラミック(例えば、セラミックタイル)、セメント、石、塗装面(例えば、自動車のボディパネル、ボート表面)、金属(例えば、建築用柱)、紙(例えば、接着剥離ライナー)、厚紙(例えば、食品容器)、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリスチレン、及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー)並びにこれらの組み合わせが挙げられる。基材は、フィルム、シートであってよく、あるいはいくつかの他の形態であってもよい。基材は、任意にセラマーハードコートをその上に有するか、又は有さない、透明又は半透明の表示素子を含んでもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、フルオロケミカル化合物と溶媒との混合物を含むコーティング組成物が提供される。本発明のコーティング組成物は、本発明のフルオロケミカル化合物の溶媒懸濁液、分散体又は溶液を含む。コーティングとして適用されると、コーティング組成物は、撥油性及び撥水性、並びに/又は染み剥離及び染み抵抗性を、広範囲の基材のうちのいずれかに付与する。
【0087】
フルオロケミカル化合物を様々な溶媒に溶解、懸濁、又は分散して、基材上へのコーティングに使用するのに好適なコーティング組成物を形成することができる。一般に、溶媒溶液は、(固体構成要素の総重量に基づき)約0.1〜約50重量%、又は更に約90重量%までの、不揮発性固体を含有することができる。コーティング組成物は、好ましくは、固体全体に基づき、約0.1〜約10重量%のフルオロケミカルシラン化合物を含有する。好ましくは、コーティングに使用されるフルオロケミカル化合物の量は、固体全体の約0.1〜約5重量%、最も好ましくは約0.2〜約1重量%である。好適な溶媒としては、アルコール、エステル、グリコールエーテル、アミド、ケトン、炭化水素、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、塩化炭化水素、クロロカーボン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0088】
コーティング組成物は、水及び酸を更に含んでもよい。一実施形態では、本方法は、基材を式Iのシラン及び溶媒とを含むコーティング組成物に接触させることと、続いて基材を水性酸と接触させることとを含む。
【0089】
製造の容易さ及び費用上の理由から、本発明の組成物は、式Iの化合物のうちの1つ以上の濃縮物を希釈することにより、使用の少し前に調製することができる。濃縮物は、一般に、有機溶媒中にフルオロケミカルシランの濃縮液を含むであろう。濃縮物は、数週間、好ましくは少なくとも1ヶ月間、より好ましくは少なくとも3ヶ月間、安定であるべきである。化合物は、有機溶媒中に高濃度で容易に溶解され得ることが見出された。
【0090】
本発明のコーティング組成物は、シルセスキオキサン又はオルトシリケートを含有しているか、又は含有していない。シルセスキオキサンをコーティング組成物とブレンドしてもよく、又は別の方法としては、式Iの化合物のコーティングを、既に適用されたシルセスキオキサンのコーティング上に適用してもよい。有用なシルセスキオキサンとしては、式R10Si(OR11のジオルガノオキシシラン(又はそのヒドロシレート(hydrosylate))の、式R10SiO3/2のオルガノシラン(又はそのヒドロシレート)との共縮合物が挙げられ、式中、各R10は、1〜6個の炭素原子のアルキル基又はアリール基であり、R11は、1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルを表す。好ましいシルセスキオキサンは、組成物への添加前には、中性又はアニオン性のシルセスキオキサンである。有用なシルセスキオキサンは、米国特許第3,493,424号(モーロック(Mohrlok)ら)、同第4,351,736号(スタインバーガー(Steinberger)ら)、同第5,073,442号(ノールトン(Knowlton)ら)、同第4,781,844号(コートマン(Kortmann)ら)、及び同第4,781,844号に記載される技術により作製され得る。シルセスキオキサンは、固体全体に対して90〜99.9重量%の量で、添加してもよい。
【0091】
シルセスキオキサンは、酸性又は塩基性条件下で混合物をかき混ぜながら、水、緩衝液、界面活性剤、及び任意に有機溶媒の混合物にシランを添加することにより調製されてもよい。200〜500オングストロームの小さな粒径を得るために、分量のシランを均一にゆっくりと添加することが好ましい。添加され得るシランの正確な量は、置換基R、及び使用される界面活性剤がアニオン性であるかカチオン性であるかに依存する。ユニットがブロック又はランダム分布で存在できる、シルセスキオキサンの共縮合物は、シランの同時加水分解により形成される。存在するテトラアルコキシシラン及びそのヒドロシレート(例えば式Si(OH)の)を包含するテトラオルガノシランの量は、シルセスキオキサンの重量に対して10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満である。
【0092】
以下のシランが本発明のシルセスキオキサンの調製において有用である:メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、2−エチルブチルトリエトキシシラン、及び2−エチルブトキシトリエトキシシラン。
【0093】
組成物は、例えば、噴霧、ナイフコーティング、切欠きコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、ディップコーティング、バーコーティング、フラッドコーティング、ディップコーティング、又はスピンコーティングのような従来の技術により、基材に適用してよい。組成物をいずれかの厚さに適用し、所望のレベルの撥水性、撥油性、防染み性、防汚性を提供することができる。典型的には、組成物は比較的薄い層として基材に適用され、約40nm〜約60nmの範囲の厚さを有する、乾燥した硬化層が得られるが、より薄い又は厚い(例えば100マイクロメートル以上までの厚さを有する)層もまた使用されてもよい。次に、典型的には、いずれかの任意の溶媒が少なくとも部分的に除去され(例えば強制空気オーブンを使用する)、その後、組成物を少なくとも部分的に硬化し、耐久性コーティングを形成する。
【0094】
本発明のフルオロケミカルシランの適用のための好ましいコーティング方法としては、ディップコーティングが挙げられる。典型的には、コーティングされる基材は、室温(典型的に、約20℃〜約25℃)で処理組成物に接触させることができる。別の方法としては、混合物を、例えば60℃〜150℃の温度で予備加熱した基材に適用することができる。これは、例えば、セラミックタイルを生産ラインの終わりにてベーキングオーブン直後に処理できる工業生産にとって、特別な関心事である。適用後、処理された基材を、乾燥させるのに十分な時間にわたり室温又は高温、例えば40℃〜300℃で乾燥及び硬化させることができる。また、プロセスは過剰の材料を除去するための研磨工程を必要とする可能性もある。
【0095】
本発明は、比較的耐久性があり、より汚染に抵抗性があり、基材表面自体よりも洗浄し易い保護コーティングを、基材に提供する。本発明は、一実施形態において、基材、好ましくは硬質基材と、単層を超える(典型的には、厚さ約15オングストロームを超えるその上に付着される防汚コーティングとを含む)コーティングされた物品の調製に使用するための方法及び組成物を提供する。好ましくは、本発明の防汚コーティングは、少なくとも厚さ約20オングストロームであり、より好ましくは少なくとも厚さ約30オングストロームである。一般に、コーティングの厚さは、10マイクロメートル未満、好ましくは5マイクロメートル未満である。コーティング材は、典型的には、物品の外観及び光学特性を実質的に変えない量で存在する。
【0096】
請求項1の化合物は、眼科用レンズにおいて使用されるもののような反射防止基材のための防汚コーティングを調製するのに特に適している。コーティングは、蒸着により、あるいはディップコーティング、フラッドコーティング、カーテンコーティング、スピンコーティング、バーコーティング、又は他の溶媒系若しくは水性系方法により、提供され得る。
【0097】
反射防止コーティングは、ガラス、石英、又はポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリチオウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリイミド、及びポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートが挙げられる有機ポリマー基材のような透明な(すなわち、光透過性)基材上に付着された材料の1つ以上の層を包含してもよい。最も簡単な反射防止コーティングは、それが配置される基材の屈折率よりも小さい屈折率を有する透明な材料の単一層である。多層の反射防止コーティングは、基材上に誘電材料の2つ以上の層を包含し、少なくとも1つの層は、基材の屈折率よりも高い屈折率を有する。それらは、反射防止フィルム積み重ね体と呼ばれることが多い。
【0098】
反射防止コーティングは、広範囲の材料により提供されてもよい。好ましくは、反射防止コーティングは、薄い金属酸化物フィルムにより、より好ましくは薄いスパッタコーティングされた金属酸化物フィルムにより提供される。本明細書において、「金属酸化物」は、単一金属(半金属を包含する)のオキシド、並びに金属合金のオキシドを包含する。好ましい金属酸化物としては、酸化ケイ素が挙げられ、これらは酸素を消耗する可能性がある(すなわち、オキシド中の酸素の量は、化学量論的量未満である)。好ましくは、最外側表面上の金属酸化物フィルムは、酸化ケイ素(SiOx、式中、xは2を超えない)を包含するが、他の好適な材料は、スズ、チタン、ニオビウム、亜鉛、ジルコニウム、タンタル、イットリウム、アルミニウム、セリウム、タングステン、ビスマス、インジウム、及びこれらの混合物の酸化物を包含する。具体例としては、SiO、SnO、TiO、Nb、ZnO、ZrO、Ta、Y、Al、CeO、WO、BiO、In、及びITO(酸化インジウムスズ)、並びにこれらの組み合わせ及び交互層が挙げられる。
【0099】
スパッタコーティングされたフィルムは、熱的に蒸着したフィルムよりもより高い密度を有し、より硬く、より滑らかで、より安定であるという理由で、スパッタコーティングされた金属酸化物フィルムが、熱的に蒸着したフィルムよりも好ましい。こうしたスパッタコーティングされた金属酸化物フィルムは、比較的多孔質であり、原子間力顕微鏡法にて測定して直径およそ約5ナノメートル〜約30ナノメートルを持つ粒子のクラスターからなるが、これらは、それらの機械的、電気的、及び光学的特性を変え得る水及び気体に対し十分に不浸透性である。
【0100】
好適な透明基材としては、ガラス並びにポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリチオウレタン、ポリスチレン;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー及びアクリロニトリル−スチレンコポリマーのようなスチレンコポリマー;セルロースエステル、特にセルロースアセテート及びセルロースアセテート−ブチレートコポリマー;ポリ塩化ビニル;ポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィン;ポリイミド;ポリフェニレンオキサイド;並びにポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートのような透明熱可塑性材料が挙げられる。用語「ポリ(メタ)アクリレート」(又は「アクリル樹脂」)としては、キャストアクリルシート(cast acrylic sheeting)、延伸アクリル樹脂、ポリ(メチルメタクリレート)「PMMA」、ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−コ−エチルアクリレート)と一般に呼ばれる材料、及び同類のものが挙げられる。基材厚さは、変化し得るが、可撓性有機フィルム用は、典型的に、約0.1mm〜約1mmである。更に、有機ポリマー基材を、種々の異なる方法によって製造することができる。例えば、熱可塑性材料を押出加工して、所望の寸法へ切断することができる。これを所望の形状と寸法に成形することができる。また、セルキャスト(cell cast)を行い、続いて加熱及び延伸して、有機ポリマー基材を形成することができる。
【0101】
反射防止コーティングを堆積させる基材は、プライマー処理表面を包含してよい。プライマー処理表面は、アクリル樹脂層のような化学プライマー層を適用することにより、あるいは化学的エッチング、電子ビーム照射、コロナ処理、プラズマエッチング、又は接着促進層との同時押出によって得ることができる。こうしたプライマー処理基材は市販されている。例えば、水性アクリレートラテックスによってプライマー処理したポリエチレンテレフタレート基材は、インペリアル・ケミカル・インダストリーズ・フィルムズ社(Imperial Chemical Industries Films)(ノースカロライナ州ホープウェル)から入手可能である。
【0102】
したがって、本発明は、反射防止基材のための防汚組成物、並びに防汚組成物を蒸発させ、防汚組成物を反射防止基材上に付着することを含む、反射防止基材上に防汚組成物を付着する方法を提供する。反射防止基材は、反射防止フィルム積み重ね体の一部であるいずれかの透明な基材、又は反射防止組成物で全体的に又は部分的に被覆された表面を有するいずれかの透明な基材である。反射防止組成物は、好ましくは反射防止金属酸化物、金属フッ化物、金属窒化物、金属硫化物、又は同類のものである。より好ましくは、反射防止組成物は反射防止金属酸化物であり、最も好ましくは、反射防止組成物はスパッタコーティングされた反射防止金属酸化物フィルム(好ましくは酸化ケイ素を含む)である。本発明の防汚組成物は、表面を、例えば指紋からの皮膚油によるような汚染に対し、より耐性があるようにする。それは、表面を、好ましくは乾燥拭き取りにより、又は水及び洗剤により、きれいにすることをより簡単にする。更に、それは、それが適用される表面、特にフィルム積み重ね体の反射防止表面の光学特性をほとんど又は全く破壊しない。すなわち、本発明の防汚コーティングは、フィルム積み重ね体の反射率を有意に上昇しない。
【0103】
本発明の方法により製造された物品は、任意の接着強化コーティング、反射防止組成物、好ましくは、多層フィルム積み重ね体、及び式Iの化合物を含む防汚組成物が、コーティングされたプライマー処理表面を所望により有するか、又は有さない、ガラス又は有機ポリマー基材のような基材を包含する。
【0104】
防汚組成物の全般的な厚さは、防汚及び耐久特性を強化するための厚いコーティングに対する要求と、反射防止基材の反射防止特性を維持するための薄いコーティングに対する要求とのバランスをとることからもたらされる。典型的に、本発明の防汚組成物の全般的なコーティング厚さは、約20〜500オングストローム、より好ましくは約40〜100オングストロームである。別の態様においては、防汚組成物は、好ましくは単層として付着する。
【0105】
防汚組成物が蒸発する条件は、防汚組成物の構造及び分子量によって変化する可能性がある。本発明の1つの態様においては、蒸発は、約1.3Pa(0.01mmHg)未満の圧力において起こる可能性があることが好ましい。本発明の別の態様においては、蒸発は、少なくとも約80℃の温度で起きてもよい。
【0106】
本発明の別の実施形態においては、蒸発は、防汚組成物及び反射防止基材をチャンバ内に置き、チャンバ(防汚組成物を含有する)を加熱し、チャンバ内の圧力を下げ、当該技術分野において既知の蒸着方法を訴えることを含む。本発明は、防汚組成物及び反射防止基材をチャンバ内に入れる前に、チャンバを加熱する方法も提供する。あるいは、別の方法としては、防汚組成物を第1チャンバに入れ、第1チャンバから蒸発した防汚組成物が、第2チャンバ内で反射防止コーティングされた眼科用レンズに付着できるように、反射防止コーティングされた眼科用レンズを第1チャンバに連結した第2チャンバに入れる。本発明の別の態様では、第1チャンバが加熱されている間、第2チャンバを周囲温度に維持してもよい。有用な真空槽及び装置は当該技術分野において既知である。市販のユニットの1つは、サティス・バキューム(Satis Vacuum)、(米国、オハイオ州、グローブポート(Grove Port))から入手可能な900DLSである。
【実施例】
【0107】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の条件及び詳細と同様に、本発明を不当に制限するものと解釈すべきではない。これらの実施例は、単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0108】
特に記載のない限り、実施例及びこれ以降の明細書に記載されている部、百分率、比率等は全て、重量による。使用される溶媒及び他の試薬は、特に記載のない限り、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))より入手した。
【0109】
試験方法
核磁気共鳴(NMR)
バリアンユニティプラス(Varian UNITYplus)400フーリエ変換NMRスペクトロメーター(バリアンNMRインスツルメンツ社(Varian NMR Instruments)、カルフォルニア州パロアルト(Palo Alto)から入手可能)にて、H及び19F・NMRスペクトルを測定した。
【0110】
赤外線分光分析(IR)
IRスペクトルを、サーモ・ニコレー社(Thermo-Nicolet)製、アバター(Avatar)370FTIR(サーモ・エレクトロン社(マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham))から入手可能)にて測定した。
【0111】
実験
用語リスト:
特に記載のない限り、実施例で使用されるように、「HFPO−」は、メチルエステルF(CF(CF)CFO)CF(CF)C(O)OCHの末端基F(CF(CF)CFO)CF(CF)−を指し、aの平均は4〜20であり、真空分留による精製を伴う米国特許第3,250,808号(ムーア(Moore)ら)に報告される方法に従って調製できる。
【0112】
HFPO−C(O)N(H)CHCHOHは、米国特許第7,094,829号(オードナート(Audenart)ら)に記載の方法と同様の手順により調製された。
【0113】
HFPOジメチルエステル:
CHO(O)CCF(CF)(OCFCF(CFOCFCFCFCFO(CF(CF)CFO)CF(CF)COOCHは、HCO(O)C−HFPO−C(O)OCH又はHFPO−(C(O)OCHとも呼ばれ(式中、b+cは平均約4〜15)、米国特許第3,250,807号(フリッツ(Fritz)ら)において報告される方法にしたがい出発物質として、FC(O)CFCFC(O)Fを使用して調製でき、これは、HFPOオリゴマービス−酸フッ化物を提供し、次にメタノリシス、及び米国特許第6,923,921号(フリン(Flynn)ら)に記載のような真空分留によって、より低沸点の材料を除去することによる精製が続く。HFPO−CONHCHCHOCOCH=CH(HFPO−AEA)は、U.S.2006/0216500(クルン(Klun)ら)の調製31Aに記載されるように調製された。
【0114】
HFPO−CONHCHCHCHNHCHは、U.S.2002/0250921において(FC−1/AM−1)について与えられた手順に従って調製された。
【0115】
CHCHOCOCH=CHは、オークウッド・プロダクト社(Oakwood Products, Inc)、(サウスカロライナ州、ウェストコロンビア(West Columbia))から購入された。
【0116】
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンは、ジェレスト社(Gelest, Inc.)、(ペンシルベニア州、モーリスビル(Morrisville))から入手された。
【0117】
材料HFPO−CHOCOCH=CHの合成は、以前に報告された方法(マッキンタイア,D.K.パテント(McIntyre, D.K. Patent):米国特許第4,873,140号;1989年10月10日)により調整された。
【0118】
NHCHCH−NH−CHCH−NH−CHCH−NHは、VWRインターナショナル社(VWR international, Inc,)(ペンシルベニア州、ウェストチェスター(West Chester))から購入された。
【0119】
LTM(CHOC(O)CH=CHは、式CH=CHC(O)OCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHOC(O)OCH=CHであり、塩化アクリロイルを塩化メタクリロイルに置き換えて、米国特許第3,810,874号、実施例XVと同様の手順を使用して調製された。
【0120】
CH=CHC(O)O(CHSi(OCHは、VWRインターナショナル社(VWR international, Inc,)(ペンシルベニア州、ウェストチェスター(West Chester))から購入された。
【0121】
N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン(MAPTMS)は、ユニオンカーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスティックス社(Union Carbide Chemicals and Plastics Co.)(コネチカット州ダンブリー(Danbury))から入手された。
【0122】
ビス(プロピル−3−トリメトキシシラン)アミンは、ゲレスト(Gelest)(ペンシルバニア州、モーリスビル(Morrisville))から入手された。
【0123】
アミノプロピルトリメトキシシラン、(APTMS)は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(ウィスコンシン州、ミルウォーキー(Milwaukee))から入手された。
【0124】
実施例1.(CCHCHOCOCH−CH−N−(CH−Si(OCH
100mLの3首丸底フラスコに、電磁攪拌棒、N注入口、及び還流冷却器を備え、N雰囲気下で、CCHCHOCOCH=CH(5g,0.0157モル)を充填した。3−アミノプロピルトリメトキシシラン(1.40g,0.00785モル)を15分間でフラスコに滴下して添加した。反応は発熱であり、室温で30分間攪拌した。その後、反応混合物を55℃で12時間加熱した。H NMRにより監視したアクリレートピークが完全に消滅した後、反応を停止した。
【0125】
実施例2
(HFPO−CHOCOCH−CH−N−(CH−Si(OCH
100mLの3首丸底フラスコに、電磁攪拌棒、N注入口、及び還流冷却器を備え、N雰囲気下で、HFPO−CHOCOCH=CH(5g、0.00395モル)を充填した。3−アミノプロピルトリメトキシシラン(0.35g、0.00197モル)を15分間でフラスコに滴下して添加した。反応は発熱であり、室温で30分間攪拌した。その後、反応混合物を55℃で12時間加熱した。
【0126】
実施例3
HFPO−CONHCHCHOCOCH−CH−N−[(CH−Si(OCH
100mLの3首丸底フラスコに、電磁攪拌棒、N注入口、及び還流冷却器を備え、N雰囲気下で、HFPO−CONHCHCHOCOCH=CH(10g、0.00714モル)を充填した。ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン(2.43g、0.00714モル)を15分間でフラスコに滴下して添加した。反応は発熱であり、室温で30分間攪拌した。その後、反応混合物を55℃で12時間加熱した。
【0127】
調整実施例1
HFPO−C(O)NHCHCH(OH)CHOHの合成
電磁攪拌棒及び注入口アダプターを備えた500mLの1首丸底フラスコに、HFPO−C(O)OCH(MW:1266、64g,0.0506モル)及び(±)−3−アミノ−1,2−プロパンジオール(5.99g、0.06557モル)を充填し、窒素下で75℃にて72時間攪拌した。この時点において、FTIR分析により、所望のアミドと相関するピーク(約1710cm−1)の出現とともにHFPO−C(O)OCHと相関するピーク(約1790cm−1)の消滅を確認し、反応は終了した。生成物を70gのメチル第三級−ブチルエーテルに溶解し、16mLの2N(水溶液)HClと共に室温で15分間攪拌し、その後、分液漏斗に入れ、水相を廃棄した(pH=1)。有機相を3つの水のアリコート100gで連続して洗浄し、分離後に毎回水相を廃棄し、中性pHを得た。生成物を10gの硫酸マグネシウムで乾燥し、ブフナー漏斗で濾過した。65℃、3.7kPa(28トール))において、ロータリーエバポレーターで有機層を濃縮した。HFPO−C(O)NHCHCH(OH)CHOHのH−NMRは、所望の生成物に過剰な(±)−3−アミノ−1,2−プロパンジオールがなかったことを示した。
【0128】
調整実施例2
HFPO−C(O)NHCHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CHの合成
電磁攪拌棒及び注入口アダプターを備えた500mLの1首丸底フラスコに、HFPO−C(O)NHCHCH(OH)CHOH(MW:1325、60.88g、0.0459モル、調整実施例1より)、トリエチルアミン(12.09g、0.1195モル)、メチル第三級−ブチルエーテル(82.95g)、及びパラ−メトキシフェノール(0.03g、固体500PPM)を充填し、乾燥空気下で40℃にて10分間攪拌した。塩化アクリロイル(9.98g、0.1103モル)を15分間でフラスコに滴下して添加した。反応は発熱であり、72時間攪拌した。その後、生成物を熱から除去し、50gの2N(水溶液)HClと共に20分間攪拌し、その後、分液漏斗に入れ、水相を除去した(pH=1)。その後、生成物を90gの10%(水溶液)炭酸ナトリウムと共に20分間攪拌し、その後、分液漏斗に入れ、水相を除去した(pH=9)。次に、生成物を、90gの10%(水溶液)塩化ナトリウムと共に20分間攪拌し、その後、分液漏斗に入れ、水相を廃棄した。生成物を10gの硫酸マグネシウムで乾燥し、ブフナー漏斗で濾過した。有機層をロータリーエバポレーター(55℃、3.7kPa(28トール))で濃縮した。HFPO−C(O)NHCHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CHH−NMRは、所望の生成物と一致していた。
【0129】
実施例4
HFPO−C(O)NHCHCH(OC(O)CHCHN(CH)(CHSi(OCH)CHOC(O)CHCHN(CH)(CHSi(OCH
電磁攪拌棒及び注入口アダプターを備えた500mLの1首丸底フラスコに、HFPO−C(O)NHCHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH(MW:1433、10g、0.0070モル、調整実施例3から)を充填し、乾燥空気下にて55℃で10分間攪拌した。CHNH(CHSi(OCH(MW:193、2.69g、0.0140モル)を15分間でフラスコに滴下して添加した。反応を24時間攪拌した。HFPO−C(O)NHCHCH(OC(O)CHCHN(CH)(CHSi(OCH)CHOC(O)CHCHN(CH)(CHSi(OCHH−NMRは、所望の生成物と一致していた。
【0130】
実施例5
HFPO−C(O)NHCHCH(OC(O)CHCHN((CHSi(OCH)CHOC(O)CHCHN(CH)(CHSi(OCH
電磁攪拌棒及び注入口アダプターを備えた500mLの1首丸底フラスコに、HFPO−C(O)NHCHCH(OC(O)CH=CH)CHOC(O)CH=CH(MW:1433、10g、0.0070モル、調整実施例3から)を充填し、乾燥空気下にて55℃で10分間攪拌した。NH((CHSi(OCH(MW:341、4.76g、0.0140モル)を15分間でフラスコに滴下して添加した。反応を24時間攪拌した。HFPO−C(O)NHCHCH(OC(O)CHCHN((CHSi(OCH)CH2OC(O)CHCHN(CH)(CHSi(OCHH−NMRは、所望の生成物と一致していた。
【0131】
実施例6
LTM(CHOC(O)CHCHN((CHSi(OCH
電磁攪拌棒及び注入口アダプターを備えた100mLの1首丸底フラスコに、LTM(CHOC(O)CH=CH(MW:2142、15g、0.0070モル)及びHN((CHSi(OCH(MW:341、4.78g、0.0140モル)を充填し、乾燥空気下にて65℃で24時間攪拌した。LTM(CHOC(O)CHCHN((CHSi(OCHH−NMRは、生成物に過剰な出発物質が存在しなかったことを示した。
【0132】
実施例7
LTM(CHOC(O)CHCHN(CH)(CHSi(OCH
電磁攪拌棒及び注入口アダプターを備えた100mLの1首丸底フラスコに、LTM(CHOC(O)CH=CH(MW:2142、15g、0.0070モル)及びHN(CH)(CHSi(OCH(MW:193.27、2.71g、0.0140モル)を充填し、乾燥空気下にて55℃で24時間攪拌した。LTM(CHOC(O)CHCHN(CH)(CHSi(OCHH−NMRは、生成物に過剰出発物質が存在しなかったことを示した。
【0133】
調整実施例3
HFPO−(C(O)NHCHCHOH)の合成
電磁攪拌棒及び注入口アダプターを備えた500mLの1首丸底フラスコに、HFPO−(C(O)OCH(MW:2400、150g、0.0625モル)及びエタノールアミン(MW:61.08、9.93g、0.1625モル)を充填し、窒素下で75℃にて24時間攪拌した。FTIR分析により、所望のアミドと相関するピーク(約1710cm−1)の出現とともに、HFPO−(C(O)OCHと相関するピーク(約1790cm−1)の消滅を確認し、反応は終了した。生成物を225gのメチル第三級−ブチルエーテルに溶解し、50mLの2N(水溶液)HClと共に室温で15分間攪拌し、その後、分液漏斗に入れ、水相を廃棄した(pH=1)。次に、生成物を80mLの2%(水溶液)炭酸ナトリウムと共に20分間攪拌し、その後、分液漏斗に入れて水相を廃棄した(pH=8)。次に、生成物を50mLの10%(水溶液)塩化ナトリウムと共に20分間攪拌し、その後、分液漏斗に入れて水相を廃棄した。生成物を10gの硫酸マグネシウムで乾燥し、ブフナー漏斗で濾過した。有機層をロータリーエバポレーターで濃縮した(温度:55℃;真空:3.7kPa(28トール))。
【0134】
調整実施例4
HFPO−(C(O)NHCH−CH−OC(O)CH=CHの合成
電磁攪拌棒及び注入口アダプターを備えた500mLの1首丸底フラスコに、HFPO−(C(O)NHCHCHOH)(MW:2458、50g、0.0203モル)、トリエチルアミン(5.02g、0.0496モル)及びフロリナート(Fluorinert)(商標)FC−77(87.50g、ペルフルオロ化溶媒、3M社から入手可能)を充填し、乾燥空気下で40℃にて10分間攪拌した。塩化アクリロイル(MW:90.51、4.42g、0.0488モル)を15分間でフラスコに滴下して添加した。反応は発熱であり、24時間攪拌した。その後、生成物を熱から除去し、5gの水と共に120分間攪拌し、その後、5gの硫酸マグネシウムと共に30分間攪拌し、その後、5gの10%炭酸カリウムと共に30分間攪拌した。次に、10gのシリカゲルを添加し、60分間攪拌した。その後、生成物をブフナー漏斗で濾過し、その後、これを追加のフロリナートFC77で洗浄した。有機層をロータリーエバポレーター(温度:55℃;真空:3.7kPa(28トール))で濃縮した。HFPO−(C(O)NHCHCHOC(O)CH=CHH−NMRは、所望の生成物と一致していた。
【0135】
実施例8
HFPO−(C(O)NHCHCHOC(O)CHCH−N((CHSi(OCH
電磁攪拌棒及び注入口アダプターを備えた50mLの1首丸底フラスコに、HFPO−(C(O)NHCHCHOC(O)CH=CH(MW:2568、9g、0.0035モル、調整実施例4から)及びHN((CHSi(OCH(MW:341、2.39g、0.0070モル)を充填し、乾燥空気下にて70℃で24時間攪拌した。
【0136】
実施例9
HFPO−(C(O)NHCHCHOC(O)CHCH−N(CH)(CHSi(OCH
電磁攪拌棒及び注入口アダプターを備えた50mLの1首丸底フラスコに、HFPO−(C(O)NHCHCHOC(O)CH=CH(MW:2568、9g、0.0035モル、調整実施例4から)及びHN(CH)(CHSi(OCH(MW:193.27、1.35g、0.0070モル)を充填し、乾燥空気下にて70℃で24時間攪拌した。
【0137】
調整実施例5
HFPO−C(O)NHCHCHN(CH)C(O)CH=CHの合成
電磁攪拌棒及び注入口アダプターを備えた200mLの1首丸底フラスコに、HFPO−C(O)NHCHCHCHNHCH(MW:1267.15、25g、0.0197モル)、トリエチルアミン(MW:101.19、2.60g、0.0256モル)、メチル−第三級−ブチルエーテル(29.74g)、及びp−メトキシフェノール(7.5mg、250PPM)を充填し、乾燥空気下にて40℃で10分間攪拌した。塩化アクリロイル(MW:90.51、2.14g、0.0237モル)を15分間でフラスコに滴下して添加した。反応は発熱であり、室温で24時間攪拌した。生成物を熱から除去し、15mLの2N(水溶液)HClと共に室温で15分間攪拌し、その後、分液漏斗に入れ、水相を廃棄した(pH=1)。その後、生成物を100mLの水と共に室温で15分間攪拌し、その後、分液漏斗に入れ、水相を廃棄した。このプロセスをもう3回繰り返し、pHは4に等しかった。この生成物を5gの硫酸マグネシウムで乾燥し、ブフナー漏斗で濾過した。有機層をロータリーエバポレーター(温度:55℃;真空:3.7kPa(28トール))で濃縮した。HFPO−C(O)NHCHCHCHN(CH)C(O)CH=CHH−NMRは、所望の生成物と一致していた。
【0138】
実施例10
HFPO−(C(O)NHCHCHCHN(CH)C(O)CHCHN((CHSi(OCH
電磁攪拌棒及び注入口アダプターを備えた50mLの1首丸底フラスコに、HFPO−C(O)NHCHCHCHN(CH)C(O)CH=CH(MW:1322、7g、0.0053モル)及びHN((CHSi(OCH(MW:341、1.90g、0.0056モル)を充填し、乾燥空気下にて55℃で24時間攪拌した。HFPO−C(O)NHCHCHCHN(CH)C(O)CHCHN((CHSi(OCHH−NMRは、所望の生成物を示した。
【0139】
実施例11
(HFPO−C(O)NHCHCHOC(O)CHCHN(CHSi(OCH
100mLの3首丸底フラスコに、電磁攪拌棒、N注入口、及び還流冷却器を備え、N雰囲気下で、HFPO−C(O)NHCHCHOC(O)CH=CH(5g、0.00357モル)を充填した。3−アミノプロピルトリメトキシシラン(0.3203g、0.001786モル)を15分間でフラスコに滴下して添加した。反応は発熱であり、室温で30分間攪拌した。その後、反応混合物を55℃で12時間加熱した。得られた透明な粘稠油をNMRで分析した。
【0140】
実施例12
HFPO−C(O)NHCHCHOC(O)CHCHN(CH)(CHSi(OCH
100mLの3首丸底フラスコに、電磁攪拌棒、N注入口、及び還流冷却器を備え、N雰囲気下で、HFPO−CONHCHCHOCOCH=CH(5g、0.00357モル)を充填した。次に、3−(メチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(0.69g、0.00357モル)を15分間でフラスコに滴下して添加した。反応は発熱であり、室温で30分間攪拌した。その後、反応混合物を55℃で12時間加熱した。透明な粘稠油が得られた。
【0141】
ディップコートによる眼科用レンズの処理
選択されたフルオロケミカルシランの0.1%ノベック(Novec)(商標)HFE−7100(3M社から入手可能なハイドロフルオロエーテル)溶液をディップコーターのガラス容器内に入れた。きれいなレンズを15mm/秒の速度で溶液内に浸し、2秒間浸漬したままにした。次に、レンズを溶液から15mm/秒の速度で引き上げた。コーティングしたレンズを30分間空気中で乾燥させ、次に0.1%HCl溶液内に類似の浸漬速度及び引き上げ速度にて浸漬した。いずれかの過剰な酸を、窒素ガスで吹き飛ばした。レンズをアルミニウムパン内に入れ、オーブン内にて60℃で30分間硬化させた。
【0142】
眼科用メガネの化学蒸着(CVD)による処理:
清浄なレンズを、蒸着チャンバ内で、圧力3×10−6トールにて本発明の選択された各フルオロケミカルシランで処理した。シランの蒸発温度は、350〜500℃の範囲である。その後、コーティングを周囲条件下で硬化した。
【0143】
ポリカーボネートエアーウェア・クライザル(AirWear Crizal)(商標)反射防止レンズ半加工品(エシロール(Essilor)USA、(フロリダ州、セントピーターズバーグ(St. Petersburg))から入手)は、引掻き耐性ハードコート、反射防止(AR)コーティング及び疎水性のトップコートを有すると考えられている。ARコーティングは、酸化ジルコニウム/酸化ケイ素/酸化ジルコニウム/酸化ケイ素を含む4層CVDコーティングを含むと考えられている。
【0144】
疎水性のトップコートを除去し、本発明のフルオロケミカルシランを付着させるために、市販レンズ半加工品をイソプロパノールですすぎ、送風機で乾燥し、その後、ハリック(Harrick)PDC−32Gクリーナー(Cleaner)/滅菌器(Sterilizer)(ハリック・サイエンティフィック社(Harrick Scientific Corp.)(ニューヨーク州、プレザントビル(Pleasantville)))にて真空プラズマに3分間曝露した。
【0145】
排出時間試験:
この試験において、処理済み眼科用メガネからの液体排出時間は、ディップコーターを使用して決定した。処理済みレンズを液体(オレイン酸又はイソプロパノール(IPA)のどちらか)中に浸し、続いてそこから引き上げる。試験のための引き上げ速度は、毎秒5cm(2インチ)であった。液体が完全に排出されるために必要な時間を、タイマーにて測定した。
【0146】
表1は、イソプロパノール及びオレイン酸について、選択されたCVDとディップコーティングされたポリカーボネートレンズの比較のために、測定された排出時間を示す。データに従って、一般に、レンズのCVDコーティングは、IPA及びオレイン酸の両方について、ディップコーティングより短い排出時間をもたらす。排出時間は、処理したレンズの滑りやすさを測定するのに使用され、液体を完全に排出するために必要な時間がより短いものは、表面がより滑りやすい。より速い液体の排出は、疎油性表面がより疎水性である徴候でもある。
【0147】
静的及び動的接触角:
静的、前進及び後退接触角試験は、コーティング材料の表面特性についての迅速及び正確な予測を提供する。処理済みレンズの接触角(乾燥及び硬化後)は、クルス(Kruss)G120及びAST VCA 2500XEビデオ接触角システム(ASTプロダクツ社(AST Products, Inc.))(両方とも、制御及びデータプロセスのためのコンピュータを装着する)を使用して測定した。水及びn−ヘキサデカンの両方について、データを収集した。表2は、CVD及びディップコーティングプロセスの両方を使用して、各種シランにて処理したレンズの、静的、前進及び後退接触角についてまとめている。測定した接触角は、全ての処理済みレンズについて大きかったが、一般に、ディップコーティングによって処理したレンズは、わずかにより大きな接触角となる。
【0148】
処理済みレンズのヒステリシス:
最大(前進)と最小(後退)接触角値の差は、接触角ヒステリシスと呼ばれ、表面異質性、粗さ及び機動性を特徴づける。コーティングした表面の容易なクリーニング性能は、接触角ヒステリシスと関連している可能性がある。より高い後退接触角は、処理した表面から染色液体を除去するのを助けるであろう。したがって、接触角ヒステリシスがより小さい場合、性能もより高くなる。表1は、いくつかの処理済みレンズのヒステリシスを示す。
【0149】
耐久性試験:
レンズ上のシラン処理の耐久性を、以下の方法で決定した:処理済みレンズには、レンズ・イレーサー・アブレーション・テスター(Lens Eraser Abrasion Tester)(コルツ・ラボラトリーズ社(Colts Laboratories, Inc.)(フロリダ州クリアウォーター)から入手)及び3M高性能クロス(商標)(スコッチ−ブライト(Scotch-Brite)(商標)マイクロファイバー・ダスティング・クロス(Microfiber Dusting Cloth)、3M社(ミネソタ州セントポール)から入手)を使用して、2.27kg(5ポンド)荷重にて500サイクルの摩耗試験を実施した。次に、摩耗試験に続いて、上記方法を使用して、処理済みレンズの接触角を再度測定した。表2は、磨耗耐性試験後の処理済みレンズの接触角データを示す。表3は、それぞれ磨耗耐性試験前後の、ディップコートにて処理済みレンズについての接触角データを示す。
【0150】
接着及びエッジング試験:
この試験は、切断操作の間、レンズをエッジャーにおいて適所に保つパッドの能力を決定するために行われ、これはレンズの縁又は周辺を機械加工してフレームの所要の寸法に従わせることからなる。リープパッドIII(Leap Pad III)(3M社(ミネソタ州セントポール)から入手可能)の片面から、シーリング紙を剥離し、コーティングされたレンズの中央へ適用した(レンズを、30cm(12 1/4インチ)バーを備えたトルク器具へしっかりと貼り付ける)。
【0151】
レンズが回転する間、レンズを適所に保つ装置であるブロックを、リープパッドIII(Leap Pad III)の反対側に適用した。パッド及びレンズを備えたトルク器具を、エッジャー内へ挿入し(ブロッカー内へのブロックフランジの位置合わせは重要である)、289.6kPa(2.86気圧(42psi))の圧力にてパッド上にしっかりと押し付けた。トルクツールの先端は、トルクス(登録商標)ケールで0度に揃えられた。バネスケールを使用して、0.45キログラム(6ポンド)の水平力を1分間適用し、トルクス(登録商標)ケール上のトルクツールの新しい位置を、ゼロ位置からの角度として記録した。トルク角度が5以下である場合、エッジングプロセスにおいてレンズを保持するための適切な接着及び能力を有すると考えられる。
【0152】
本発明のシラン処理の試験結果を、表2に示す。比較のアライズ(Alize)(商標)レンズ半加工品(米国、エシロール(Essilor)から入手)についてのトルク角度は、15を超え、これは、エッジングプロセスのために特別な一時的コーティングを必要とする(WO 01/68384及びUS2004/0253369を参照)。本発明に記載される新しいシラン処理は全て、このトルク試験に合格する。FCシランのCVDコーティングレンズを、トルク試験前に最初にイソプロパノールで洗浄した場合、接着が向上し、試験に合格した。したがって、本発明のシラン処理は、エッジングプロセスのための特別な一時的コーティングを必要としない。
【0153】
【表1】

【0154】
【表2】

【0155】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

の化合物であって、
式中、
はフッ素含有基であり、
は、共有結合、多価アルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、前記アルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素又は窒素原子を含有しているか、又は含有しておらず、
は式:
【化2】

であって、式中、
は、−O、−S−、又は−NR−であり、式中、Rは、H又はC〜Cアルキルであり、
は、C〜Cアルキル、又は−R−Si(Y)(R3−p又は(R−R−X−C(O)−CHCH−であり、
は、二価のアルキレン基であり、前記アルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素原子を含有しているか、又は含有しておらず、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル若しくはアリール基であり、
pは、1、2、又は3であり、並びに
x及びyは、それぞれ独立して、少なくとも1であり、zは、1又は2である、化合物。
【請求項2】
が式:
【化3】

であって、式中、
は、一価のペルフルオロアルキル基又はペルフルオロオキシアルキル基、あるいは二価のペルフルオロアルキレン基又はペルフルオロオキシアルキレン基であり、
Qは、共有結合、又は二価のアルキレン若しくはアリーレン基であり、前記アルキレンは、1つ以上のカテナリーへテロ原子を含有しているか、又は含有しておらず、
は、−O−、−NR−、又は−S−、であり、式中、Rは、H又はC〜Cのアルキルであり、
zは1又は2であり、
vは0又は1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、フッ素含有アクリロイル化合物とアミノシランとの間のマイケル反応から誘導されるシラン含有部分である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、一価のペルフルオロアルキル及びペルフルオロオキシアルキル基、並びに二価のペルフルオロアルキレン及びペルフルオロオキシアルキレン基から選択されるフッ素含有基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が、−(C2nO)−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)C2nO)−、−(C2nCF(Z)O)−、−(CFCF(Z)O)−、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のペルフルオロ化反復単位を含む(式中、nは1〜4であり、Zはペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、又はペルフルオロオキシアルキル基である)、一価のペルフルオロオキシアルキル基、又は二価のペルフルオロオキシアルキレン基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
が、式
W−R−O−R−(R
の基を含み、式中、
Wは、一価のペルフルオロオキシアルキルについてはFであり、二価のペルフルオロオキシアルキレンについては開殻価電子(「−」)であり、
は、ペルフルオロアルキレン基を表し、
は、1、2、3、又は4個の炭素原子を有するペルフルオロオキシアルキレン基、又はこうしたペルフルオロオキシアルキレン基の混合物からなるペルフルオロアルキレンオキシ基を表し、
は、ペルフルオロアルキレン基を表し、
qは、0又は1である、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
前記ペルフルオロオキシアルキレン基が、−[CF−CF−O]−;−[CF(CF)−CF−O]−;−[CFCF−O]−[CFO]−、−[CFCFCFCF−O]及び−[CF−CF−O]−[CF(CF)−CF−O]−(式中、r、s、t及びuはそれぞれ1〜50の整数である)の1つ以上から選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
が一価のペルフルオロオキシアルキレン基を含み、zが2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
が一価のペルフルオロオキシアルキル基であり、zが1である、請求項2に記載の化合物。
【請求項10】
がフッ素化モノオール又はポリオールから誘導される、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
Yが、ハロゲン、C〜Cアルコキシ基、又はC〜Cアシロキシ基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
シラン基のR基に対するモル比が1:1を超える、請求項2に記載の化合物。
【請求項13】

【化4】

であって、式中、
はフッ素含有基であり、
は、共有結合、多価アルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、前記アルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素又は窒素原子を含有するか又は含有しておらず、
は、−O、−S−、又は−NR−であり、式中、Rは、H又はC〜Cアルキルであり、
yは少なくとも1であり、zは1又は2である、
求核アクリロイル化合物から誘導される請求項2の化合物。
【請求項14】
式:
【化5】

であって、式中、
は、C〜Cのアルキル、又は−R−Si(Y)(R3−pであり、
は、二価のアルキレン基であり、前記アルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有しておらず、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル若しくはアリール基であり、
pは、1、2、又は3、好ましくは3である、
アミノシランから誘導される請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物のうちの少なくとも1つと、溶媒とを含むコーティング組成物。
【請求項16】
シルセスキオキサンを更に含む、請求項15に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
アミノシランと、ペンダントアクリレート基を有するフッ素含有化合物とのマイケル付加反応生成物を含む化合物であり、前記フッ素含有化合物が、求電子フルオロケミカル化合物と求核アクリロイル化合物との反応生成物を含む、化合物。
【請求項18】
式:
【化6】

であって、式中、
はフッ素含有基であり、
は、−O、−S−、又は−NR−であり、式中、Rは、H又はC〜Cアルキルであり、
は、C−Cアルキル、又は−R−Si(Y)(R3−p又は(R−X−C(O)−CHCH−であり、
は、二価のアルキレン基であり、前記アルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有しておらず、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル若しくはアリール基であり、
pは、1、2、又は3であり、並びに
zは1又は2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物及び溶媒を含むコーティング組成物。
【請求項20】
基材と請求項19に記載のコーティング組成物とを接触させる工程を含むコーティング方法。
【請求項21】
請求項1に記載のシラン化合物の硬化コーティングを有する基材を含むコーティング物品。
【請求項22】
基材が、1つ以上の金属酸化物を有する金属酸化物フィルムの反射防止表面を含む反射防止基材である、請求項21に記載のコーティング物品。
【請求項23】
反射防止表面が真空蒸着金属酸化物フィルムを含む、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
シラン化合物が蒸着によりコーティングされた、請求項21に記載の物品。
【請求項25】
第1表面及び第2表面を有する透明な基材と、第1表面の少なくとも一部上の反射防止コーティングと、反射防止コーティング上に付着したシランのコーティングと、を含む、請求項21に記載の物品。
【請求項26】
透明な基材が可撓性有機ポリマー物質を含む、請求項25に記載の物品。

【公表番号】特表2010−520296(P2010−520296A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552796(P2009−552796)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/054655
【国際公開番号】WO2008/112400
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】