説明

ペンダント第一カルバメート基を有するアクリルポリマー、前記ポリマーの製造方法及び前記ポリマーを含有する硬化性塗料組成物

本発明は、式:
【化1】


で示されるランダムな繰返し単位を含んでなるアクリルポリマー又はオリゴマー、前記ポリマーの製造方法及び前記ポリマーを含んでなる硬化性塗料組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2002年10月31日出願の10/285,600、10/285,594及び10/285,634の一部継続出願であり、前記出願の全てがこれによって参考により取り入れられる。
【0002】
硬化性塗料組成物、例えば熱硬化性塗料は塗料技術において広範に使用される。それらはしばしば自動車工業及び工業的塗装工業におけるトップコートに使用される。
【0003】
高光沢及びカラー−プラス−クリア(color-plus-clear)のコンポジットコーティングは、異例の光沢、色の深み、画像の明瞭さ(distinctness of image)又は特殊金属効果が望まれる場合にトップコートとして特に有用である。自動車工業は、自動車の車体板のためにこれらのコーティングを広範囲に亘り使用してきた。これらのコーティングは、所望の視覚効果、例えば高い画像の明瞭さ(DOI)を達成するために、コーティングの表面で極端に高い程度の透明さ(clarity)及び低い程度の視覚収差を必要とする。
【0004】
結果として、高光沢及びコンポジットカラー−プラス−クリアコーティングは環境腐食(environmental etch)として公知の現象を受けやすい。環境腐食は斑点として現れるか又はしばしばこすり落とすことができないコーティングの仕上げ塗りの上又は中にしみをつける。高光沢又はカラー−プラス−クリアのコンポジットコーティングが示す環境腐食に対する耐性の程度を予想することはしばしば困難である。屋外用ペイント、例えば高固形分のエナメルにおいて使用される場合の耐久性及び/又は耐候性が公知である多くの塗料組成物は、高光沢コーティング及びカラー−プラス−クリアのコンポジットコーティングにおいて使用される場合の環境腐食に対する耐性の所望のレベルを提供しない。
【0005】
多くの組成物が、カラー−プラス−クリアのコンポジットコーティング、例えばポリウレタン、酸−エポキシ系等のクリヤコートとしての使用のために提案されてきた。しかしながら多くの先行技術の系は、上塗り適合性の問題、顔料着色されたベースコートとの相溶性の問題、溶解度の問題のような欠点に苦しむ。さらに、ごく僅かのワンパック塗料組成物が、特に自動車塗料の要求の厳しい環境において環境腐食に対する満足な耐性を提供することが見出されている。
【0006】
カルバメート官能性ポリマー、例えば米国特許第5,356,669号明細書に記載されているようなものが、著しく改善された環境腐食耐性を示す塗料組成物を提供するのに使用されることができることが見出されている。カルバメート官能性ポリマーは、特にコンポジットカラー−プラス−クリアコーティングにおけるクリヤコートとして、商業的に有利な塗料組成物を提供するのに使用されてきた。
【0007】
残念ながら、先行技術において公知の一部のカルバメート官能性の化合物及び/又はポリマーは、特に環状のカーボネート及びカルバメートの形成に関連して、不安定及び分解を受けやすい。このことは製造及び貯蔵における困難をまねく。
【0008】
また、効率よくかつ費用効果のある方法で熱的に安定なヒドロキシ官能性のモノカルバメート官能性化合物を製造することは困難であった。特に望まれることは、費用効果のある出発化合物、例えばポリオール及びジオールを利用するそのような化合物の商業的に実行できる製造方法である。
【0009】
さらに、カルバメート官能性ポリマーを含有する塗料組成物は一般的に自動車工業により現在要求される性能特性を提供するけれども、連続的な改善は常に望まれる。結果として、固形分又は%不揮発性、たわみ性、耐引っかき性及び耐すり傷性(scratch & mar resistance)、耐寒亀裂性、耐衝撃性(chip resistance)及び/又はその種の他のものの改善を提供することが有利である。同時にそのような改善は、環境腐食耐性又は他の商業的に要求される性能特性をいずれも低下させることなく達成されなければならない。
【0010】
また、多種多様な塗料組成物及び塗装、例えばプライマー、ベースコート、クリヤコート、二成分系、抗衝撃(anti-chip)塗料組成物、水性塗料、溶剤形塗料、フレキシブルな基体用の塗料、粉体塗料、無溶剤の粉末−スラリー塗料、無溶剤の液体塗料等における使用のために適用可能であるそのような技術を提供することが望ましい。
【0011】
最後に、噴霧可能な粘度で増大した%NV(不揮発性)又は低下したVOC(揮発性有機分)を有する改善された腐食耐性の塗料組成物を提供することが有利である。
【0012】
先行技術はこれらの争点を扱うこと及び取り除くことができていなかった。
【0013】
置換プロパンジオールから製造される環状カーボネートのアンモノリシスによるモノカルバメートアルコールの製造は、Some Anticonvulsant Agents Derived from 1,3-Propandiols, Ludwig, B.J.及びPiech, E.C.; J Am. Chem. Soc. (1951) 73 5779-81. CAN 47:3228に開示されている。
【0014】
米国特許第5,719,237号明細書、Rehfuss他は、カルバミル交換(transcarbamylation)反応により製造される複数のカルバメート基を有するカルバメート官能性化合物(a)の使用を開示し、その際にアルコール又はヒドロキシルアルキルカルバメートはアルキルカルバメートと反応される。前記′237特許は化合物(a)中のヒドロキシル基の包含を回避することが望ましいことを教示する、それというのも、そのようなヒドロキシル基は傷つきやすいエーテル橋の形成をまねくからである。
【0015】
米国特許第5,907,024号明細書、Ohrbom他及び米国特許第5,945,499号明細書には、一般構造
−C(OH)−(CH−O−C(O)−NHR
[式中、nは0〜6の整数であり、かつRはH又は炭素1〜4個のアルキル基である]で示されるヒドロキシアルキルカルバメートの使用が開示されている。
【0016】
米国特許第5760127号明細書、Bammel他及び米国特許第6,262,297号明細書、Clements他には、無水アンモニア又は水性の水酸化アンモニウムと6員の環状カーボネートとの反応により製造されるヒドロキシアルキルカルバメート組成物が開示されている。Bammel他は、より良好な性能の結果としてではなく、それらの合成の容易さ及びより大きな程度の商業的入手可能性の結果として、5員環が好ましいことを開示する。Clements他は6員環が増大した安定性のために好ましいことを教示する。しかしながら6員の環状カーボネートの費用及び商業的入手可能性は、方法及び生じる生成物をあまり費用効果があるようにしない。また、出発環状カーボネート上の任意の置換基群の位置に依存してClementsに開示された方法は、反応性及び選択性の変化を伴い構造の混合物を含んでなる化合物である反応生成物を生じる。
【0017】
WO 0156978、Rink他には、位置異性のジエチルオクタンジオールジカルバメート及びジエチルオクタンジオールジアロファネートが開示されている。ジカルバメート及びジアロファネート種は、ヒドロキシル官能性を有さず、かつジエチルオクタンジオールの位置異性体から製造される。
【0018】
先行技術によるこれらの試み及び他の試みにもかかわらず、先行技術は、ポリオール及びジオールからヒドロキシ官能性のモノカルバメート官能性化合物を製造する、費用効果がありかつ効率よい方法を提供することができていない。さらに先行技術は、特に分解及び望ましくない環状のカーボネート及びカルバメートの形成に関して改善された安定性を有するそのようなヒドロキシ官能性のモノカルバメート官能性化合物を提供することができていない。結果として先行技術は、反応物としてそのようなヒドロキシ官能性のモノカルバメート官能性化合物を利用し、ひいてはそれらの利益を得るカルバメート官能性のアクリルポリマー及び/又はオリゴマーを提供することができていない。
【0019】
従って、本発明の対象は、分解及び望ましくない環状のカーボネート及びカルバメートの形成に関して改善された安定性を有する化合物を用いて製造されるカルバメート官能性のアクリルポリマー及び/又はアクリルオリゴマーを提供することである。
【0020】
本発明の別の対象は、ヒドロキシ基、ハロゲン化物基又はそれらの誘導体を有するモノカルバメート官能性化合物と、ヒドロキシ基、ハロゲン化物基又はそれらの誘導体と反応性である1つ又はそれ以上の基を有するエチレン系不飽和モノマーとの反応から製造される第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーの重合反応から製造される第一カルバメート官能性のアクリルポリマー及びアクリルオリゴマーを提供することである。
【0021】
さらに本発明の対象は、先行技術のカルバメートを含有する塗料組成物の全ての利点、特に良好な環境腐食耐性を提供するが、しかしさらに噴霧可能な粘度で増大した%NV(不揮発性)又は低下したVOC(揮発性有機分)及び望ましい塗布された外観を示す、カルバメート官能性材料を含有する硬化性塗料組成物を提供することである。
【0022】
また本発明の対象は、先行技術のカルバメートを含有する塗料組成物の全ての利点、特に良好な環境腐食耐性を提供するが、しかしさらに完成した塗膜の1つ又はそれ以上の性能パラメーター、例えばたわみ性、耐引っかき性及び耐すり傷性及び/又は耐衝撃性の改善を示す、硬化性塗料組成物を提供することである。
【0023】
本発明の別の対象は、多種多様な塗料組成物及び塗装、例えばプライマー、ベースコート、クリヤコート、二成分系、抗衝撃塗料組成物、水性塗料、溶剤形塗料、フレキシブルな基体用の塗料、無溶剤塗料、粉体塗料等において、1つ又はそれ以上の次の性能パラメーター、すなわち%不揮発性固形分、たわみ性、耐引っかき性及び耐すり傷性及び/又は耐衝撃性を改善するための技術を提供することである。
【0024】
発明の要約
本発明のこれらの対象及び他の対象は特定の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーの使用に出会った。本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーは、構造:
【0025】
【化1】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、nは2又はそれ以上の整数であり、n′は1又はそれ以上の整数であり、R、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物であり、少なくとも1つのR又はR基は水素ではなく、かつLはリンキング基である]で示されるものでなければならない。
【0026】
本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーは、(1)官能基Zと反応性であるが、しかし反応性モノマー化合物(2)の第一カルバメート基Xと実質的に非反応性である1つ又はそれ以上の官能基(i)を含んでなるエチレン系飽和モノマーと、(2)式:
【0027】
【化2】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、Zは材料(1)の少なくとも1つの官能基と反応性の官能基であり、かつヒドロキシ基、ハロゲン化物基及びそれらの誘導体からなる群から選択され、nは2又はそれ以上の整数であり、n′は1又はそれ以上の整数であり、かつR、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物である]で示される1つ又はそれ以上の構造を含んでなる反応性モノマー化合物との反応生成物を含んでなるが、但し、(i)少なくとも1つのR又はR基が水素ではなく、かつ(ii)反応性モノマー化合物(2)の実質的に全ての構造中で、第一カルバメート基Xが、官能基Zが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されている。
【0028】
本発明の第一カルバメート官能性のアクリルポリマーは、式:
【0029】
【化3】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、nは2又はそれ以上の整数であり、n′は1又はそれ以上の整数であり、R、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物であり、少なくとも1つのR又はR基は水素ではなく、Lはリンキング基であり、yは、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、2〜100質量%を表し、Aは、1つ又はそれ以上の他のエチレン系不飽和モノマーから誘導される官能性又は非官能性の繰返し単位を表し、zは、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、0%〜98質量%を表すが、但し、実質的に全ての第一カルバメート基Xが、リンキング基Lが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されている]で示されるランダム繰返し単位を含んでなる。
【0030】
本発明の第一カルバメート官能性のアクリルポリマーは、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーを含んでなるモノマー混合物の重合反応生成物である。
【0031】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、式:
【0032】
【化4】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、nは2又はそれ以上の整数であり、n′は1又はそれ以上の整数であり、R、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物であり、少なくとも1つのR又はR基は水素ではなく、Lはリンキング基であり、yは、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、2〜100質量%を表し、Aは、1つ又はそれ以上の他のエチレン系不飽和モノマーから誘導される非官能性又は官能性の繰返し単位を表し、zは、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、0%〜98質量%を表すが、但し、実質的に全ての第一カルバメート基Xが、リンキング基Lが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されている]で示されるランダム繰返し単位を含んでなる第一カルバメート官能性のアクリルポリマーを提供する。
【0033】
本発明の第一カルバメート官能性のアクリルポリマーは、構造:
【0034】
【化5】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、nは2又はそれ以上の整数であり、n′は1又はそれ以上の整数であり、R、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物であり、少なくとも1つのR又はR基は水素ではなく、かつLはリンキング基である]で示される第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーを含んでなるモノマー混合物の重合から生じる。
【0035】
本発明のエチレン系不飽和モノマー中でXは第一カルバメート基である。本明細書において使用されるように、“第一カルバメート基”は、構造
【0036】
【化6】

を有する官能基にあてはまる。故に、エチレン系不飽和モノマー及び本発明のアクリルポリマーの第一カルバメート基は、末端又はペンダントカルバメート基として定義されることができる。
【0037】
一般的にR、R、R、R、R及びRはH又はアルキル基、芳香族基又はそれらの混合物であってよい。実例となるアルキル基は脂肪族基及び脂環式基である。適しているアルキル及び芳香族を有する基は、一般的に炭素原子1〜16個を有し、かつ線状又は分枝鎖状であってよい。本明細書において使用されるように、“分枝鎖状(の)”という用語は、ラテラル分枝鎖及びフォークド分枝鎖の双方にあてはまる。ラテラルは、炭素鎖の末端原子での2つの小さな鎖の分枝鎖にあてはまる。フォークドは、炭素鎖の中央での2つの小さな鎖の分枝鎖にあてはまる。任意の個々の置換基は、それらの中で分枝状及びフォーク状の双方で有していてよい。そのうえ、本発明の範囲内で2又はそれ以上の多様なR置換基は互いに結合されうる。上記で言及したようにRは、H又はアルキルもしくは芳香族基を有する置換基であってよい。
【0038】
最も好ましい実施態様においてRはHであるので、リンキング基Lは第二級官能基である。Rが水素ではない場合には、適している基は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択される基である。脂肪族及び脂環式基がRとしての使用のために好ましく、その際に脂肪族基はRとしての使用のために最も好ましい。Rとしての使用のために特に適している基は炭素原子1〜16個を有する脂肪族基及び脂環式基であり、その際にRがアルキル基である場合に炭素原子1〜12個を有する脂肪族基は好ましく、かつRがアルキル基である場合に炭素原子1〜8個を有する脂肪族基は最も好ましい。最後に、本発明の範囲内でRは他のR1〜5置換基のいずれかと結合されているアルキル又は芳香族基でありうる。
【0039】
、R、R、R及びRは、H、又はRについて上記で定義されたような基であってよい。
【0040】
しかしながら、本発明の態様は、少なくとも1つのR又はR基が、脂肪族基、脂環式基、芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択されなければならないことである。すなわち、R及びR置換基の少なくとも1つは、第一カルバメート基Xが、リンキング基Lが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されている限り、水素以外でなければならない。水素ではないR又はR基としての使用のために適している実例となる基は、Rについて上記で定義されたようなものである。脂肪族及び脂環式の基はR及びRとしての使用のために好ましく、その際にそれらが水素ではない場合に脂肪族基はR又はRとしての使用のために最も好ましい。R及びRとしての使用のために特に適している非水素基は炭素原子1〜16個を有する脂肪族基及び脂環式基であり、その際にR又はRがアルキル基である場合に炭素原子1〜12個を有する脂肪族基は好ましく、かつR又はRがアルキル基である場合に炭素原子1〜8個を有する脂肪族基は最も好ましい。最後に、本発明の範囲内でR又はRは他のR0、3〜5置換基のいずれかに結合されているアルキル又は芳香族基でありうる。
【0041】
上記で言及したように、第一カルバメート基Xは、リンキング基Lが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されていなければならないので、置換基R及びRの少なくとも1つは、Xが結合されている炭素について水素でなければならない。この要件は、少なくとも1つのR又はR基が脂肪族基、脂環式基、芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択されなければならない要件と矛盾しない。nが2であり、かつRが水素ではない場合に、水素ではない少なくとも1つのR又はR基は、第一カルバメート基Xに結合されている炭素に直接隣接している炭素の置換基であってよい。すなわち、カルバメート基が結合されている炭素は、第一又は第二級の置換度を有していてよい。nが2よりも大きく、かつRが水素ではない場合には、水素ではない少なくとも1つのR又はR基は、カルバメート基が結合されている炭素、又は第一カルバメート基Xに結合されている炭素と、リンキング基Lに結合されている炭素との間のいずれかの炭素、すなわち、C炭素の置換基であってよい。
【0042】
しかしながら、水素ではない少なくとも1つのR又はR基が、カルバメート基Xに直接結合されていない炭素に結合されていることが好ましい。より好ましくは、水素ではない少なくとも1つのR又はR基は好ましくは官能性Xよりもむしろリンキング基Lに近接した位置にある炭素原子に結合されている。nが2である場合には、水素ではない少なくとも1つのR又はR基が最も好ましくは、官能基Xが結合されている炭素とリンキング基Lが結合されている炭素との間で等しい距離に位置している炭素原子に結合されていることが認識される。nが3又はそれ以上である場合には、水素ではない少なくとも1つのR又はR基は最も好ましくは、リンキング基Lが結合されている炭素原子に隣接している炭素原子に結合されているか、又はそれに官能基Xが結合されている炭素原子よりも近接している。
【0043】
本発明の別の態様は、nが2又はそれ以上の整数であってよいので、官能基X及びリンキング基Lが、官能基X及びリンキング基Lが結合されている炭素原子を含めて少なくとも3個の炭素原子により隔てられることである。本発明の好ましい一実施態様において、nは2〜12、より好ましくは2〜8、最も好ましくは2〜4の整数である。本発明の他の実施態様において、nは少なくとも3、より好ましくは3〜12、最も好ましくは3〜4の整数である。
【0044】
本明細書において使用される第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマー中で、n′は1又はそれ以上の整数でなければならず、かつ0ではない。本発明の好ましい実施態様において、n′は1〜16、より好ましくは1〜12の整数であり、かつ最も好ましくはn′は1〜8の整数である。
【0045】
上記で言及したように、R、R及びRはH、C〜C16脂肪族基、脂環式基、芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択される。本発明の好ましい実施態様において、R、R及びRはH、脂肪族基、脂環式基及びそれらの混合物からなる群から選択されることができる。最も好ましい実施態様において、R、R及びRはH、脂肪族基及びそれらの混合物からなる群から選択される。本発明による一実施態様において、R、R及びRはCn′、R、R又はRに結合されて環(cyclic ring)を形成することができる。
【0046】
本発明の別の態様は一般的に、n′が1よりも大きい場合に、R、R及びRの少なくとも1つが水素以外の基であることが好ましいことである。好ましい実施態様において、n′が1より大きい場合に、R、R及びRの少なくとも2つは、水素以外である、すなわちC〜C16脂肪族基、脂環式基、芳香族基及びそれらの混合物である。本発明の最も好ましい実施態様において、n′が1より大きい場合に、R、R及びRの少なくとも3つは、C〜C16脂肪族基、脂環式基、芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
Lは、以下に論じるようなエチレン系不飽和モノマー(1)と反応性モノマー化合物(2)との間の反応からの反応残基を含んでなる多価のリンキング基である。多価のリンキング基Lの実例となる例はエステル、エーテル、ウレタン、尿素、シラン等を含む。好ましいリンキング基はウレタン、尿素及びエステルであり、その際にウレタン及びエステルはリンキング基Lとして最も好ましい。
【0048】
リンキング基Lが、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーにぶら下がっている官能基を含んでなることができることが認識される。実例となる、リンキング基Lの一部であってよい官能基は、ヒドロキシ基、第一カルバメート基、酸基、シラン基、アミド基、イソシアナート基、エポキシ基等を含む。例えば、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーは、反応性モノマー化合物(2)と環状酸無水物との間の反応の反応生成物であってよく、これはついでグリシジルメタクリレートと反応される。生じる最終的なモノマーは、第一カルバメート基X及びリンキング基L内のペンダントヒドロキシ基を有する。
【0049】
本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーは多様な方法で製造されることができる。
【0050】
例えば、第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーは、Zがハロゲン化物、例えば塩化物である場合に、有機金属アクリレート、例えばナトリウムメタクリレートと反応性モノマー化合物(2)との反応により製造されることができる。Zがヒドロキシ基である場合には、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーは、イソシアナート官能性材料、例えばイソシアナートエチルアクリレートとの反応によるか、又は無水物、例えばメタクリル酸無水物との反応によるか、又はアクリル酸又はt−ブチルアクリレートのような材料とのエステル化/エステル交換反応により製造されることができる。
【0051】
最も好ましい実施態様において、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーは、(1)官能基Zと反応性であるが、しかし反応性モノマー化合物(2)の第一カルバメート基Xと実質的に非反応性である1つ又はそれ以上の官能基(i)を含んでなるエチレン系不飽和モノマーと、反応性モノマー化合物(2)との反応生成物を含んでなる。
【0052】
反応性モノマー化合物(2)は、式:
【0053】
【化7】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、Zは、材料Pの少なくとも1つの官能基と反応性の官能基であり、かつヒドロキシ基、ハロゲン化物基及びそれらの誘導体からなる群から選択され、nは2又はそれ以上の整数であり、n′は1又はそれ以上の整数であり、かつR、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物である]で示される1つ又はそれ以上の構造を含んでなる。そのうえ、本発明の必要な態様は、(i)少なくとも1つのR又はR基が水素ではなく、かつ(ii)実質的に全ての構造中で、第一カルバメート基Xが、官能基Zが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されていることである。
【0054】
本明細書において使用されるような“構造”という用語は、本発明の要件を満足する異性体にあてはまる。本明細書で使用されるような“異性体”は、同じ実験化学式を有する構造異性体及び位置異性体にあてはまる。本明細書において使用されるような構造は、同じ実験化学式を有するが、しかし当該の式の要件を満たす異性体にあてはまる。本発明のためには、単一の化合物が1つ又は1つを上回る構造を含むことができることが認識される。構造異性体の実例となる例は2−エチル−1,3−ヘキサンジオール及び2−プロピル−1,3−ペンタンジオールである。位置異性体の実例となる例は2−エチル−1,3−ヘキサンジオール及び2−エチル−1,4−ヘキサンジオールである。構造異性体及び位置異性体の双方である異性体の実例となる例は2−エチル−1,3−ヘキサンジオール及び2−プロピル−1,4−ペンタンジオールである。しかしながら、本発明の要件を満足する異性体のみが本発明の反応性化合物の構造であってよい、すなわち、それらは(1)式:
【0055】
【化8】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、Zはヒドロキシ基、ハロゲン化物基又はそれらの誘導体のいずれかであり、nは2又はそれ以上の整数であり、n′は1又はそれ以上の整数であり、かつR、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物である]で示されるものでなければならず、(2)この式中で少なくとも1つのR又はR基は水素であってはならず、かつ(3)最も重要には、第一カルバメート基Xは、官能基Zが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されていなければならないことが認識される。
【0056】
一般的に、本発明の反応性モノマー化合物(2)は、上記の要件を満足する1つ又はそれ以上の構造を含むことができる。好ましい実施態様において、反応性モノマー化合物(2)は、上記で定義されたように異性体的に異なるが、しかしそれぞれ本発明の上記で言及した要件を満足する少なくとも2つの構造を含んでなる。本発明の最も好ましい実施態様において、本発明の反応性化合物は、少なくとも4つの構造を含んでなる。
【0057】
上記で言及したように、本発明の態様は、第一カルバメート基Xが、官能基Zが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されていることである。“より低い置換度”という用語は以下の言明によって理解されうる。Xが第一級炭素原子に結合されている第一カルバメート基である(すなわちX−CH−)場合には、Zは、第二級炭素原子(すなわち−Cn−CH(Z)−Cn′−)又は第三級炭素原子(すなわち−Cn−CR(Z)−Cn′−、ここでRは水素ではなく、かつ本明細書においてさらに定義されるようなアルキル又は芳香族を有する基である)に結合されている官能基である。Xが第二級炭素原子に結合されている第一カルバメート基である、すなわち(X−CHR−、ここでRは上記で定義されたようなR又はRのいずれかであるがしかし水素ではない)場合には、Zは第三級炭素に結合されている官能基(すなわち−Cn−CR(Z)−Cn′−、ここでRは上記で定義されたようなものであるが、しかし水素ではない)でなければならない。第一カルバメート基Xが、官能基Zが結合されている炭素原子の非水素の置換基よりも少なくとも1つのより少数の非水素の置換基を有する炭素原子に結合されていなければならないので、置換基R及びRの少なくとも1つはXが結合されている炭素について水素でなければならないことが認識されることができる。
【0058】
反応性モノマー化合物(2)は、上記で定義されたような第一カルバメート基1つ及び1つのみを有する。すなわち、第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーを製造する本方法において使用される反応性化合物(2)は、第二級又は第三級のいずれかである少なくとも1つの付加的な官能基を有するモノカルバメート官能性の化合物に限定される。
【0059】
本明細書における使用に適している反応性モノマー化合物(2)はへテロ原子を実質的に含まない。本明細書において使用されるような“へテロ原子”は炭素又は水素以外の原子にあてはまる。本明細書において使用されるような“実質的に含まない”という語句は、第一カルバメート基X又は第二級もしくは第三級の官能基Zを含まない反応性モノマー化合物(2)の一部が一般的に、炭素又は水素以外である、すなわちN、O、Si、それらの混合物等のような原子である原子を2個以下有することを意味する。より好ましくは、第一カルバメート基X又は第三級もしくは第二級の官能基Zを含まない反応性モノマー化合物(2)のその部分は、炭素又は水素以外である原子を1個以下有する。最も好ましい実施態様において官能基X及びZを含まない反応性モノマー化合物(2)のその部分はへテロ原子を有しない、すなわち専ら炭素原子及び水素原子からなる。従って本発明の最も好ましい態様において、反応性モノマー化合物(2)中のへテロ原子は単に官能基X及びZ中に存在する。
【0060】
官能基Zは、ヒドロキシル基、ハロゲン化物基又はヒドロキシ基又はハロゲン化物基の官能性誘導体である。“ヒドロキシ基又はハロゲン化物基の官能性誘導体”は、以下に論じるように、ヒドロキシ又はハロゲン化物官能基Yと別の官能基との反応から生じる反応性官能基に当てはまる。“反応性官能基”は、エチレン系不飽和モノマー(1)の官能基(i)と反応性である官能基である。ヒドロキシ又はハロゲン化物基の実例となる官能性誘導体は、酸基、エポキシ基、環状カーボネート基、シラン基、イソシアナート基、第一アミン基、第二アミン基、水素化ケイ素、アルケン、有機金属基、それらの混合物等を含む。ヒドロキシル基は官能基Zとしての使用のために最も好ましい。
【0061】
官能基Zが上記式中の第一炭素原子上に位置していないことが認識される。むしろ官能基Zは、RがHである場合には第二級官能基であり、かつRがアルキル又は芳香族を有する基、すなわち、脂肪族基、脂環式基、芳香族基又はそれらの混合物である場合には第三級官能基である。最も好ましい実施態様においてZは第二級官能基であり、かつRは水素である。
【0062】
一般的にR、R、R、R、R及びRは、第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーについて上記で定義されたようなものである。
【0063】
上記で言及したように、第一カルバメート基Xは、官能基Zが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されていなければならないので、置換基R及びRの少なくとも1つは、Xが結合されている炭素について水素でなければならない。この要件は、少なくとも1つのR又はR基が脂肪族基、脂環式基、芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択されなければならない要件と矛盾しない。nが2であり、かつRが水素ではない場合には、水素ではない少なくとも1つのR又はR基は、第一カルバメート基Xに結合されている炭素に直接隣接している炭素の置換基であってよい。すなわちカルバメート基が結合されている炭素は第一級又は第二級の置換度を有していてよい。nが2を上回り、かつRが水素ではない場合には、水素ではない少なくとも1つのR又はR基は、カルバメート基が結合されている炭素、又は第一カルバメート基Xに結合されている炭素と官能基Zに結合されている炭素との間のいずれかの炭素、すなわちC炭素の置換基であってよい。
【0064】
しかしながら、水素ではない少なくとも1つのR又はR基が、カルバメート基Xに直接結合されていない炭素に結合されていることが好ましい。より好ましくは、水素ではない少なくとも1つのR又はR基は好ましくは、官能性Xよりもむしろ官能基Zにより近接した位置にある炭素原子に結合されている。nが2である場合には、水素ではない少なくとも1つのR又はR基が最も好ましくは、官能基Xが結合されている炭素と官能基Zが結合されている炭素の間で等距離に位置している炭素原子に結合されていることが認識される。nが3又はそれ以上である場合には、水素ではない少なくとも1つのR又はR基は最も好ましくは、官能基Zが結合されている炭素原子に隣接している炭素原子に結合されているか、又は官能基Xが結合されている炭素原子よりも、それにより近接している。
【0065】
n及びn′は、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーに関して上記で定義されたようなものである。
【0066】
最も好ましい実施態様において、本明細書において使用される反応性モノマー化合物(2)は特定の方法により製造される。反応性モノマー化合物(2)を製造するのに使用される本発明の方法の特定の利点は、生じる反応生成物中でそれらの中の実質的に全ての構造が、官能基Zが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されている第一カルバメート基Xを有することである。先行技術の方法の特定の欠点は、それらがそのような反応生成物を提供することができていないことである。さらに本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーを製造する目下開示された方法の最も好ましい態様は、この特定の方法により製造された反応性モノマー化合物(2)のみが利用されることである。
【0067】
本明細書において使用されるように、“実質的に”は、生じるモノカルバメート官能性の反応生成物、すなわちZ官能基が結合されている炭素原子の置換度に等しいか又はそれより高い置換度を有する炭素原子に結合されている第一カルバメート基を有する反応性モノマー化合物(2)の10%以下、好ましくは7%以下及び最も好ましくは3%以下にあてはまる。未反応の出発物質の量がこの計算の一部ではないことが認識される。
【0068】
本発明の方法は、本発明の反応性モノマー化合物(2)が化合物(a)及び化合物(b)を反応させることにより製造されることを必要とする。
【0069】
化合物(a)は、少なくとも3個の炭素原子により隔てられた官能基F及び官能基Fiiを有していなければならず、その際に前記の官能基F及びFiiは独立して、第一カルバメート基へ変換可能な官能基からなる群から選択され、かつ官能基Fは、官能基Fiiが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されている。
【0070】
官能基F及びFiiはそれぞれ独立して、第一カルバメート基へ変換可能な官能基からなる群から選択される。第一カルバメート基へ変換可能な官能基F及びFiiの好ましい例はヒドロキシ基及びハロゲン化物基である。適しているハロゲン化物基は塩化物、臭化物及びヨウ化物を含み、その際に塩化物が最も好まれるハロゲン化物である。最も好ましくは官能基F及びFiiはヒドロキシル基である。
【0071】
適している化合物(a)はポリオール、ジオール、ポリハロゲン化物及びジハロゲン化物を含んでいてよい。しかしながら化合物(a)としてのジオール及びジハロゲン化物の使用は特に好ましい、それというのも、それらは最も商業的に入手可能であり、かつ経済的に実行可能だからである。ジオールは化合物(a)としての使用に最も好ましい。それどころか、本発明の特別な利益は、ジハロゲン化物及びジオールからなる群から選択される化合物(a)出発物質からの少なくとも1つの官能基を有する熱的に安定なモノカルバメート化合物を製造する経済的でかつ商業的に実行可能な方法を提供することである。
【0072】
最も好ましい実施態様において、化合物(a)は、次の式:
【0073】
【化9】

[式中、F及びFiiはヒドロキシ又はハロゲン化物官能基であり、nは2又はそれ以上の整数であり、n′は1又はそれ以上の整数であり、かつR、R、R、R、R及びRは個々にH又はC〜C16脂肪族基、脂環式基、芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択される基であってよい]で示されるジオール及びジハロゲン化物の群から選択される。しかしながら本発明の態様は、少なくとも1つのR又はR基が、C〜C16脂肪族基、脂環式基、芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択されることである。官能基Fは、官能基Fiiが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されていなければならない。
【0074】
故に、本発明の方法の重要な態様は、化合物(a)中で官能基Fが、官能基Fiiが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されていることである。例えば、Fが、第一炭素原子が結合されている第一級官能基である場合には(すなわちX−CH−)、Fiiは、第二級炭素原子(すなわち−C−CH(Fii)−Cn′−)又は第三級炭素原子(すなわち−C−CR(Fii)−Cn′−、ここでRは水素ではなく、かつ上記で定義されたようなものである)のいずれかに結合されている官能基である。Fが、第二級炭素原子に結合されている第一級官能基、すなわち(X−CHR−、ここでRは上記で定義されたようなR又はRのいずれかであるが、しかし水素ではない)である場合には、Fiiは、第三級炭素に結合されている官能基でなければならない(すなわち−C−CR(Fii)−C−、ここでRは水素ではなく、かつ上記で定義されたようなものである)。官能基Fが、官能基Fiiが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されていなければならないので、Fが結合されている炭素上の置換基R及びRの少なくとも1つが水素でなければならないことが認識されうる。
【0075】
最も好ましい化合物(a)はへテロ原子を実質的に含まない。本明細書において使用されるような“へテロ原子”は炭素又は水素以外の原子にあてはまる。本明細書において使用されるような“実質的に含まない”という語句は、官能基F及びFiiを含まない化合物(a)の一部が一般的に、炭素又は水素以外、すなわちN、O、Si、それらの混合物等のような原子である2個以下の原子を有することを意味する。より好ましくは、官能基F及びFiiを含まない化合物(a)のその一部は、炭素又は水素以外である1個以下の原子を有する。最も好ましい実施態様において、官能基F及びFiiを含まない化合物(a)のその一部はへテロ原子を有しない、すなわち専ら炭素及び水素原子からなる。故に本発明の最も好ましい態様において、化合物(a)中のへテロ原子のみが官能基F及びFii中に存在する。
【0076】
官能基Fiiが上記式中で第一炭素原子上に位置していないことが認識される。むしろ官能基Fiiは、RがHである場合に第二級官能基であり、並びにRが水素ではなく、かつ脂肪族基、脂環式基、芳香族基又はそれらの混合物の群から選択される場合に第三級官能基である。最も好ましい実施態様においてFiiは第二級官能基であり、かつRは水素である。
【0077】
一般的に、R、R、R、R、R及びRは、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーに関して上記で定義されたようなものである。
【0078】
上記で言及したようにRはH又はアルキル又は芳香族を有する基又はそれらの混合物であってよい。最も好ましい実施態様においてRはHであるので、官能基Fiiは第二級官能基である。Rが水素ではない場合には、適している基は、脂肪族基、脂環式基、芳香族基及びそれらの混合物の群から選択されるそれらの基である。脂肪族及び脂環式の基がRとしての使用のために好ましく、その際に脂肪族基がRとしての使用のために最も好ましい。Rとしての使用のために特に適している基は炭素原子1〜16個を有する脂肪族基及び脂環式基であり、その際に炭素原子1〜12個を有する脂肪族基は、Rがアルキル基である場合に好ましく、かつ炭素原子1〜8個を有する脂肪族基は、Rがアルキル基である場合に最も好ましい。最後に、本発明の範囲内でRは他のR1−5置換基のいずれかに結合されているアルキル又は芳香族基でありうる。
【0079】
本発明の態様は、少なくとも1つのR又はR基が、脂肪族基、脂環式基及び芳香族基からなる群から選択されなければならないことである。すなわちR及びR置換基の少なくとも1つは、官能基Fが、官能基Fiiが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されている限り、水素以外でなければならない。水素ではないR又はR基としての使用のために適している実例となる基は、Rについて上記で定義されたようなものである。脂肪族及び脂環式の基はR及びRとしての使用のために好ましく、その際に脂肪族基は、R又はRが水素ではない場合にR又はRとしての使用のために最も好ましい。R及びRとしての使用のために特に適している非水素基は炭素原子1〜16個を有する脂肪族基及び脂環式基であり、その際に炭素原子1〜12個を有する脂肪族基は、R又はRがアルキル基である場合に好ましく、かつ炭素原子1〜8個を有する脂肪族基は、R又はRがアルキル基である場合に最も好ましい。最後に、本発明の範囲内でR又はRは他のR0、3〜5置換基のいずれかに結合されているアルキル又は芳香族基でありうる。
【0080】
上記で言及したように、官能基Fが、官能基Fiiが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されていなければならないので、置換基R及びRの少なくとも1つは、Fが結合されている炭素について水素でなければならない。この要件は、少なくとも1つのR又はR基が脂肪族基、脂環式基、芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択されなければならない要件と矛盾しない。nが2であり、かつRが水素ではない場合には、水素ではない少なくとも1つのR又はR基は、第一カルバメート基Xに結合されている炭素に直接隣接している炭素の置換基であってよい。すなわちカルバメート基が結合されている炭素は第一級又は第二級の置換度を有していてよい。nが2より大きく、かつRが水素ではない場合には、水素ではない少なくとも1つのR又はR基は、カルバメート基が結合されている炭素、又は官能基Fに結合されている炭素と官能基Fiiに結合されている炭素との間のいずれかの炭素、すなわちC炭素の置換基であってよい。
【0081】
しかしながら、水素ではない少なくとも1つのR又はR基が、官能基Fに直接結合されていない炭素に結合していることが好ましい。より好ましくは、水素ではない少なくとも1つのR又はR基は好ましくは、官能基Fよりむしろ官能基Fiiに近接した位置にある炭素原子に結合されている。nが2である場合には、水素ではない少なくとも1つのR又はR基は最も好ましくは、官能基Fが結合されている炭素とFiiが結合されている炭素との間で等距離に位置している炭素原子に結合されていることが認識される。nが3又はそれ以上である場合には、水素ではない少なくとも1つのR又はR基は最も好ましくは、官能基Fiiが結合されている炭素原子に隣接している炭素原子に結合されているか、又は官能基Fが結合されている炭素原子よりも、それに近接している。
【0082】
n及びn′は、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーについて上記で定義されたようなものである。
【0083】
本発明の方法の好ましい実施態様における使用のための実例となる化合物(a)は、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−オクタンジオール、1−ヒドロキシメチルシクロヘキサン−4−オール及び化合物(a)についての好ましい式の上記の要件を満足するその全てのそれらの異性体を含む。
【0084】
本明細書において使用されるような“異性体”は、同じ実験化学式を有する構造異性体及び位置異性体にあてはまる。一部の構造異性体の実例となる例は、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール及び2−プロピル−1,3−ペンタンジオールである。位置異性体の実例となる例は、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール及び2−エチル−1,4−ヘキサンジオールである。構造異性体及び位置異性体の両方である異性体の実例となる例は2−エチル−1,3−ヘキサンジオール及び2−プロピル−1,4−ペンタンジオールであるが。しかしながら、本発明の要件を満足するそれらの異性体のみが適している、すなわち、それらは(1)式:
【0085】
【化10】

[式中、F及びFiiはヒドロキシ基又はハロゲン化物基のいずれかであり、nは2又はそれ以上の整数であり、n′は1又はそれ以上の整数であり、かつR、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物である]で示されるものでなければならず、(2)この式中で少なくとも1つのR又はR基は水素であってはならず、かつ(3)最も重要には、官能基Fは、官能基Fiiが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されなければならないことが認識される。
【0086】
好ましい一実施態様において、化合物(a)は、特に好ましい異性体分布を有する化合物(a)についての好ましい式のそれらの構成員から選択される。本明細書において使用されるような‘異性体分布’は、材料を構成する個々の異性体の数にあてはまる。特に好ましい異性体分布は、化合物(a)が少なくとも4個又はそれ以上の個々の異性体又は構造を有する異性体の混合物であるものである。これらの材料から本発明により製造された生じる生成物は、本質において非晶質であるより大きな傾向を有する。このことは、低VOC硬化性塗料組成物を提供するという使用に適している第一カルバメート官能性アクリルポリマーを得ることに有利である。
【0087】
しかしながら、1つの構造又は異性体からなる化合物(a)でさえ、低VOC塗料に関する性能の受け入れることができるレベルを提供することが認識される。特別な理論に結びつけられることは望んでいないにしても、このことは、特に化合物(a)、ひいては本発明において使用される反応性モノマー化合物(2)において見出された対称性の低い程度に帰するものと思われる。
【0088】
化合物(b)の選択が多少、化合物(a)の官能基F及びFiiの選択に依存することが認識される。一般的に、官能基(F)がヒドロキシル基である場合には、アルキルカルバメート、シクロアルキルカルバメート、エーテルカルバメート、β−ヒドロキシアルキルカルバメート、アリールカルバメート、例えば尿素の分解により製造されるシアン酸、及びアンモニアとの反応が続けられるホスゲンからなる群から選択される化合物(b)との反応により、第一カルバメートへ変換される。官能基(F)がハロゲン化物基である場合には、金属カルバメート、例えば銀カルバメートとの反応により、P.Adams & F.Baron, “Esters of Carbamic Acid”, Chemical Review, v.65, 1965に論じられているように、第一カルバメート基へ変換されることができる。好ましい実施態様において、化合物(b)はアルキルカルバメート、シクロアルキルカルバメート、エーテルカルバメート及びアリールカルバメート及びそれらの混合物の群から選択され、その際にアルキルカルバメートは化合物(b)として最も好ましい。
【0089】
実例となるアルキルカルバメート、シクロアルキルカルバメート及びアリールカルバメートは、メチルカルバメート、プロピルカルバメート、n−ブチルカルバメート、シクロヘキシルカルバメート、t−ブチルカルバメート、イソプロピルカルバメート及びフェニルカルバメートを含む。ヒドロキシアルキルカルバメートの例はヒドロキシエチルカルバメートである。エーテルカルバメートの例は2−メトキシエチルカルバメートである。(b)がこれらの化合物から選択される場合には、適している化合物(a)との反応が、アルコール、フェノール類、エーテルアルコール及び副生物としての関連材料を生じることが認識される。化合物(b)としての使用のための最も好ましいアルキルカルバメートの例はメチルカルバメート、イソプロピルカルバメート及びn−ブチルカルバメートを含む。
【0090】
化合物(a)及び化合物(b)は、カルバメート基への官能基(Fii)の形成を最小限にすることが意図される条件下で反応される。一般的に化合物(a)及び(b)は、化合物(a)の出発量に対して、官能基(ii)の10%以下がカルバメート基に変換されるような条件下で反応される。より好ましくは、化合物(a)及び(b)は、全て化合物(a)の出発量に対して、官能基(Fii)の5%以下がカルバメート基に変換され、かつ最も好ましくは官能基(Fii)の4%以下がカルバメート基に変換されるような条件下で反応される。
【0091】
従ってジカルバメート種の形成は本発明において大いに好まれない。ジカルバメートの形成を嫌う1つの技法は、不足量の化合物(b)を使用することである、すなわち、化合物(b)の官能基の当量は、化合物(a)の出発量に基づく官能基Fの当量より少ない。この場合に、官能基Fに関係して使用される化合物(b)の当量は0.99:1〜0.25:1の範囲であってよい。化合物(b)の1当量又は1当量以上が、化合物(a)上の官能基Fに比較して使用される場合に、ジカルバメートの形成を嫌うために使用されることができる選択的な技法は、官能性Fの全てが第一カルバメートに変換される前に反応を停止させることである。この二番目の技法は、カルバメート交換反応(transcarbamation reactions)のような選択性の高い程度を有する反応条件について最良の形になる。比較して、この技法は、ヒドロキシ基とシアン酸との間のようなより非選択的な反応において好まれない。
【0092】
特別な理論に結びつけられることは望んでいないにしても、これらの2つのアプローチの有効性は、化合物(a)上の官能基F及びFiiを取り囲む立体障害の相対的な程度を増大させることにより増大されることができると思われる。すなわち、一般的に、ジカルバメート形成は、官能基Fiiを取り囲む立体障害の程度が、官能基F上の立体障害の程度より大きい場合に減少されることができる。この関係は、選択される反応の方法にかかわらず有効であると思われる。
【0093】
官能基Fの必ずしも全てが第一カルバメートへ変換されていない場合には、未反応の出発物質(a)の過剰量は、公知の技術、例えば真空蒸留、抽出又はろ過により除去されることができるか、又は以下に論じるように放置したままであってよい。
【0094】
一部の場合に、反応性モノマー化合物(2)中の未反応の(a)の存在は、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーを製造するのに使用される反応プロセスにおいて望まれうる。例えば、未反応の反応性モノマー化合物(2)はジ又はポリアクリレートモノマーの形成において利用されることができる。しかしながら、未反応の(a)の任意の過剰量は、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーの形成の前に除去されることが好ましい。
【0095】
化合物(a)及び(b)の反応は、式:
【0096】
【化11】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、Yはヒドロキシ又はハロゲン化物基であり、nは2又はそれ以上の整数であり、n′は1又はそれ以上の整数であり、かつR、R、R、R、R及びRは独立してH又は脂肪族基、脂環式基、芳香族基及びそれらの混合物から選択される基であってよく、但し、(i)R及びR基の少なくとも1つが水素ではなく、かつ(ii)第一カルバメート基Xが、官能基Yが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されている]で示される反応性化合物を生じることが認識される。
【0097】
官能基Yを有するこの反応性化合物が、本発明の反応性モノマー化合物(2)として直接に使用されることができる一方で、これは前駆物質として使用されて、官能基Zを有する反応性モノマー化合物(2)を形成させることもできる。官能基Z及び官能基Yの双方がヒドロキシ基又はハロゲン化物基のいずれかであってよい一方で、官能基Zもヒドロキシ基及びハロゲン化物基の官能性誘導体からなる群から選択されてもよい。上記で論じたように、ヒドロキシ基及びハロゲン化物基の官能性誘導体は、ヒドロキシ又はハロゲン化物基と1つ又はそれ以上の官能基との一段反応又は多段反応から生じるそれらの反応性官能基である。ヒドロキシ又はハロゲン化物基の実例となる誘導体は、酸基、エポキシ基、環状カーボネート基、シラン基、イソシアナート基、アミン基、特に第一及び第二のアミン、水素化ケイ素、アルケン、有機金属、それらの混合物等を含む。
【0098】
ヒドロキシ基又はハロゲン化物基のいずれかの個々の官能性誘導体を得るのに使用される適している官能基反応物の例は以下の表に説明される。1つを上回る反応物の列挙が多段反応プロセスに当てはまり、その際にYの最初の官能性誘導体は、その後に次の反応物と反応されて、Yの次の又は所望の官能性誘導体を形成することに注意されるべきである。本発明の範囲内で、ZへのYの変換において使用される適している官能基は、本発明において使用されるエチレン系不飽和モノマー(1)の一部でありうる。それどころか、以下に論じるように、一実施態様において、本明細書において及び以下の表中で論じるような適切な官能性を有するエチレン系不飽和モノマー(1)は、以下の表の“反応物”として使用されて、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーを提供することができる。
【0099】
【表1】

【0100】
ヒドロキシ基又はハロゲン化物基が、最初の官能基Yであってよいか又は1つ又はそれ以上の誘導体反応から生じる誘導体であってよいことが認識される。例えば、ハロゲン化物基Yは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属と最初の反応によりヒドロキシ基へ変換されて、有機金属を生じ、引き続き有機金属とケトンとのその後の反応によりヒドロキシ基を提供することができる。しかしながら、当業者には、‘誘導体の’ヒドロキシ基は構造が‘最初の’ヒドロキシ基とは異なることが認識される。特に‘誘導体の’ヒドロキシ基は目下、誘導体化反応プロセスからの反応生成物残基を含有する、すなわち、この場合に、ケトン骨格は残留する。そのような反応生成物残基は、その後の変換又は反応に適している付加的な官能性を有してよく、又は有していなくてよい。そのような付加的な反応性官能基が反応生成物残基中に存在する場合には、それらは、ヒドロキシ又はハロゲン化物基の官能性誘導体基の定義内であるとみなされる。
【0101】
一般的に、Zがヒドロキシ又はハロゲン化物である場合に、最初のヒドロキシ基又はハロゲン化物基Yが官能基Zとして使用されることが好ましい。
【0102】
前記の例が実例となるに過ぎないこと及び反応物及び反応プロセスの多くの他の変形が特に多段反応プロセスに関して、ハロゲン化物又はヒドロキシ基の望ましい官能性誘導体を得るために使用されることができることが認識される。さらに、前記の反応プロセスにおける多様な触媒、後処理試薬、開始剤及び反応条件の使用は、技術における通常の技術を有する者の知識及び経験内にあるように維持される。
【0103】
エチレン系不飽和モノマー(1)は、上記で定義されたような官能基Zと反応性であるが、しかし反応性モノマー化合物(2)の第一カルバメート基Xと実質的に非反応性である1つ又はそれ以上の官能基(i)を含んでなければならない。
【0104】
一般的に、エチレン系不飽和モノマー(1)は、リンキング基L、官能基(i)及び任意の場合による官能基を含まないモノマー(1)のそれらの部分中にへテロ原子を有していてよいか、又は有していなくてよいが、しかし好ましくは有していない、炭化水素をベースとする材料である。本明細書において使用されるような“へテロ原子”は、炭素又は水素以外の原子にあてはまる。好ましいへテロ原子はO、N、Si及びそれらの混合物である。
【0105】
本明細書において使用されるように、“エチレン系不飽和モノマー”という用語は、2又はそれ以上の同じ繰返し単位を含有しない材料に当てはまる。本明細書において定義されるような“繰返し単位”という用語は、2又はそれ以上のモノマーの反応の反応生成物の結果又は残基である原子の群にあてはまる。一般的に、本発明における使用に適しているエチレン系不飽和モノマー(1)は、55〜2000Daの範囲内、より好ましくは55〜750Daの範囲内及び最も好ましくは128〜750Daの範囲内の数平均分子量を有する。
【0106】
エチレン系不飽和モノマー(1)は、官能基Zと反応性であるが、しかし反応性モノマー化合物(2)の第一カルバメート基Xと実質的に非反応性である1つ又はそれ以上の官能基(i)を含んでなければならない。
【0107】
本明細書において使用されるような“実質的に非反応性”は、エチレン系不飽和モノマー(1)が反応性モノマー化合物(2)と反応される条件下で第一カルバメート基と反応しない反応性官能基(i)にあてはまる。一般的に、反応性モノマー化合物(2)の出発量に基づいて、第一カルバメート基Xの7%以下が反応され、好ましくは5%以下及び最も好ましくは第一カルバメート基Xの3%以下が反応される。
【0108】
一般的に、官能基(i)は、上記で定義されたような官能基Zと反応性であるそれらの官能基である。従って適している官能基(i)はヒドロキシ基、ハロゲン化物基又は上記で定義されたようなそれらの任意の誘導体のいずれかと反応性の全ての官能基を含む。実例となる官能基(i)は、ヒドロキシ基、環状酸無水物、無水物基、カルボン酸基、エポキシ基、環状カーボネート基、有機金属材料、例えばナトリウム又はリチウムアルカン、金属アルコキシド、シラン基、イソシアナート基、第一アミン基、第二アミン基、水素化ケイ素、アルケン、それらの混合物等を含む。好ましい官能基(i)は、カルボン酸基、イソシアナート、環状酸無水物、無水物、エポキシ基、有機金属基、ヒドロキシ基及びそれらの混合物である。最も好ましい官能基(i)はイソシアナート基、無水物基、酸基及びそれらの混合物である。
【0109】
必要とされる官能基(i)に加えて、エチレン系不飽和モノマー(1)は場合により、必要とされる官能基(i)とは異なる、1つ又はそれ以上の付加的な官能基(ii)を含んでいてよい。一般的に場合による官能基(ii)は、硬化剤(B)の反応性官能基と反応性の任意の反応性官能基として定義されることができる。実例となる例は、官能基Z及び官能基(i)に関して上記で論じたそれらの反応性官能基の全てを含む。
【0110】
モノマー(1)としての使用に適している適当なエチレン系不飽和モノマーの例は、前記のような官能基Y又はZと反応させるのに使用されることができる官能基(i)を含んでなる全てのエチレン系不飽和モノマーを含む。
【0111】
例えば、イソシアナート、エポキシ、環状カーボネート又は無水物のような実例となる官能基(i)は、アクリルモノマーのエステル部分中へ導入されることができる。例えば、反応性モノマー化合物(2)と反応させるのに使用されることができるイソシアナート官能性アクリルモノマーは、イソシアナトエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルメタクリレート等を含む。モノマーのエステル部分中の官能基(i)を有する他のアクリルモノマーは当該技術の範囲内でもある。適しているエチレン系不飽和モノマー(1)の他の実例となる例は、(メチル)アクリル酸及びその無水物、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルメタクリレート、イソシアナトエチルアクリレート及び無水マレイン酸を含む。(メタ)アクリル酸の有機金属錯体、例えばナトリウムメタクリレートは官能基(i)がアルカリ金属又はアルカリ土類金属である場合に使用されることができる。
【0112】
エチレン系不飽和モノマー(1)及び反応性モノマー化合物(2)は、上記で論じた本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーを製造するために本発明の方法において一緒に反応される。一般的に、本明細書における使用に適している反応条件は公知であり、かつ技術における通常の技術を有する者に理解される。
【0113】
これに逆らうことなく、本発明の方法の利点は、反応性モノマー化合物(2)を、先行技術の他のモノカルバメート官能性の反応性化合物で用いられるよりも過酷な反応条件にかけることができることであることが認識されるべきである。例えば、140℃より高い反応温度が、反応性モノマー化合物(2)の任意の目に見える分解が起こることなく使用されることができる。そのうえ、本発明の方法において使用される反応性モノマー化合物(2)は強酸又は塩基性反応条件にかけることができる。
【0114】
最も好ましい実施態様において、本発明の方法は、上記で開示された反応性モノマー化合物(2)を製造する方法により製造された反応性モノマー化合物(2)を利用する。
【0115】
本発明の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー及び/又はオリゴマーは、上記で論じた本発明の特別な第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーを含んでなるモノマー混合物の重合から生じる。
【0116】
一般的に、重合されるべきモノマー混合物は、全ての重合されるべきモノマー混合物の全質量に対して、本発明の特別な第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマー2〜100質量%、より好ましくは40〜100質量%及び最も好ましくは80〜100質量%を含んでなる。
【0117】
故に重合されるべきモノマー混合物が、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマー以外のエチレン系不飽和モノマーを含んでいてよいことが認識される。これらの“他の”エチレン系不飽和モノマーは、官能性又は非官能性のエチレン系不飽和モノマーであってよい。例えば、重合されるべきモノマー混合物中で使用されることができる他のエチレン系不飽和モノマーは、アクリル重合において典型的に使用されるそのような全てのエチレン系不飽和モノマーを含む。
【0118】
反応性官能基を有しない他のエチレン系不飽和モノマーの実例となる例は、アルキルビニル材料、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、脂環式ビニル材料、例えばシクロヘキシルメタクリレート、芳香族ビニル材料、例えばスチレン及びα−メチルスチレン等のようなモノマーを含む。
【0119】
そのような非官能性のエチレン系不飽和モノマーは、全て重合されるべきモノマー混合物の全質量に対して、0〜98質量%、より好ましくは0〜60質量%及び最も好ましくは0〜20質量%の量でモノマー混合物中で使用されることができる。
【0120】
反応性官能基を含んでなるエチレン系不飽和モノマーの実例となる例は、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの官能性エステル、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート等を含めたヒドロキシ官能性アクリルモノマー及びエポキシ官能性エステル、例えばグリシジルメタクリレート等を含む。アミノ官能性アクリルモノマーはt−ブチルアミノエチルメタクリレート及びt−ブチルアミノ−エチルアクリレートを含む。ラクトン延長(extended)モノマー、例えばヒドロキシエチルアクリレートとε−カプロラクトンとの反応生成物も、“他の”エチレン系不飽和モノマーとしてモノマー混合物中での使用に適している。モノマーのエステル部分中に活性水素官能基を有する他のアクリルモノマーも当該技術の範囲内である。
【0121】
そのような官能性に反応性のエチレン系不飽和モノマーは、全て重合されるべきモノマー混合物の全質量に対して、0〜98質量%、より好ましくは0〜60質量%及び最も好ましくは0〜20質量%の量で重合されるべきモノマー混合物中で使用されることができる。
【0122】
重合されるべきモノマー混合物は、反応性中間体が破壊されるか又は不活性にされる場合に鎖が停止する常用の重合技術、例えばフリーラジカル重合、カチオン重合又はアニオン重合を用いて、例えば、バッチ又はセミバッチ法において重合されることができる。フリーラジカル重合法が最も好ましい。例えば重合は、フリーラジカル源、例えば有機過酸化物又はアゾ化合物及び場合によりバッチ法のための連鎖移動剤の存在で、バルクで又は有機溶液又は水性分散液中でエチレン系不飽和モノマーを加熱することにより実施されることができる;又は、選択的に、モノマー及び開始剤はセミバッチ法において制御された速度で加熱された反応器中へ供給されることができる。
【0123】
典型的なフリーラジカル源は、有機過酸化物、例えばジアルキルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、ジアシルペルオキシド、ヒドロペルオキシド及びペルオキシケタール;及びアゾ化合物、例えば2,2′−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)及び1,1′−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)である。典型的な連鎖移動剤は、メルカプタン、例えばオクチルメルカプタン、n−又はt−ドデシルメルカプタン、チオサリチル酸、メルカプト酢酸及びメルカプトエタノール;ハロゲン化された化合物及び二量体α−メチルスチレンである。
【0124】
フリーラジカル重合は通常、約20℃〜約200℃、好ましくは90℃〜170℃の温度で実施される。反応は好都合には溶剤又は溶剤混合物が還流する温度で行われてよいけれども、還流は反応に必要ではなない。開始剤は、反応が実施される温度に合わせるように選択されるべきであるので、反応温度での開始剤の半減期は好ましくは30分以下であるべきである。
【0125】
溶剤が重合反応において使用される場合には、使用される溶剤は好ましくは助溶剤として機能することができる水又は水溶性有機溶剤又は水混和性有機溶剤である。助溶剤は、成分の分散及び組成物の硬化の間の流動を助けるのに有用である。有用な溶剤の例はメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、酢酸n−アミル;及び助溶剤、例えばN−メチルピロリドン及びエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテル及びジプロピレングリコールブチルエーテルのようなグリコールエーテルを含む。
【0126】
溶剤又は溶剤混合物は一般的に反応温度に加熱され、かつ安定化樹脂(P1)を製造するのに使用されるモノマー及び開始剤は、通常2〜6時間の期間に亘り制御された速度で添加される。連鎖移動剤又は付加的な溶剤は、モノマー及び開始剤と同時に添加されることができる。混合物は添加後に反応が完了するまでの期間に亘り反応温度で通常保持される。場合により、付加的な開始剤は、完全な変換を保証するために、添加の後の方の段階の間に又は添加が完了した後に、通常1〜60分の期間に亘り添加されることができる。
【0127】
選択的に、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーを含んでなるモノマー混合物は、Matyjaszewski及びKrysztof、Chem. Reviews, Vol. 101 pg 2921-2990 (2001)に記載されたような制御された又はリビングラジカル重合法を用いて、又はKuchanov、J. of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry Vol 32 pg 1557-1568 (1994)、及びGaofenzi Xuebao Vol 2 pg 127-136 (2002)に記載されたようなイニフェルター(iniferter)法、Zaremski、Russian Polymer News Vol 4 pg 17-21 (1999)及びWang、Abstracts of Papers, 224th ACS National Meeting, Boston, MA, United States, August 18-22, 2002 (2002)に記載されているようなニトロキシド−媒介重合により重合されることができ、これらの全てが本明細書において参考により取り入れられる。
【0128】
通常のサーモ法に加えて、本発明の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーを含んでなるモノマー混合物は、Orszulik、Polymer Vol 34, pg 1320-1 (1993)により記載されたような超音波の助けを用いて、又は紫外線により重合されることができる。
【0129】
モノマー混合物の重合から生じる本発明の第一カルバメート官能性のアクリルポリマーは、式:
【0130】
【化12】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、nは2又はそれ以上の整数であり、n′は1又はそれ以上の整数であり、R、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物であり、少なくとも1つのR又はR基は水素ではなく、Lはリンキング基であり、yは、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、2〜100質量%を表し、Aは1つ又はそれ以上の他のエチレン系不飽和モノマーから誘導される官能性又は非官能性の繰返し単位を表し、zは、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、0%〜98質量%を表すが、但し実質的に全ての第一カルバメート基Xが、リンキング基Lが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されている]で示されるランダム繰返し単位を含んでなる。
【0131】
Lは、エチレン系不飽和モノマー(1)及び反応性モノマー化合物(2)の官能基(i)の間の反応からの反応残基を含んでなる多価のリンキング基である。故に、反応性モノマー化合物(2)が官能基Zとしてヒドロキシ又はハロゲン化物誘導体を含んでいた場合には、リンキング基Lは、ヒドロキシ又はハロゲン化物基Yをヒドロキシ又はハロゲン化物誘導体基Zへ変換する誘導体化反応からの任意の反応残基も含んでいてよいことが認識される。
【0132】
多価のリンキング基Lの実例となる例はエステル、エーテル、ウレタン、尿素、シラン等を含む。好ましいリンキング基はウレタン、尿素及びエステルであり、その際にウレタン及びエステルがリンキング基Lとして最も好ましい。
【0133】
上記で言及したように、リンキング基Lはペンダント官能基を含んでいてよい。リンキング基Lの一部であってよい実例となる官能基は、ヒドロキシ基、第一カルバメート基、酸基、シラン基、アミド基、イソシアナート基、エポキシ基等を含む。
【0134】
yは、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して2〜100質量%、全てモノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、より好ましくは40〜100質量%及び最も好ましくは80〜100質量%を表す。
【0135】
Aは、本発明の第一カルバメート官能性モノマーとは異なる1つ又はそれ以上の官能性又は非官能性のエチレン系不飽和モノマーから誘導される繰返し単位を表す。そのような他のエチレン系不飽和モノマーは上記で論じたようなものである。
【0136】
故に、zが、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して0〜98質量%、全てモノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、より好ましくは0〜60質量%及び最も好ましくは0〜20質量%を表すことが認識される。
【0137】
最後に、実質的に全ての第一カルバメート基Xが、リンキング基Lが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されていることが認識される。この関係は、第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマー、反応性モノマー化合物(2)及び化合物(a)に関して上記で定義されたものと同じである。
【0138】
本発明の第一カルバメート官能性アクリルがポリマー又はオリゴマーであってよいことが認識される。本発明のためには“オリゴマー”という用語は2〜9個の繰返し単位又は繰返し単位の混合物を有するそのような材料にあてはまる。一般的に本発明の実例となるアクリルオリゴマーは200〜1499Daの範囲内の数平均分子量を有する。本明細書において使用されるような“ポリマー”は少なくとも10個の繰返し単位、より好ましくは10個より大きい繰返し単位を有する材料に当てはまる。一般的に本発明のアクリルポリマーは、1500〜1,000,000Da、好ましくは1500〜50,000Da、最も好ましくは1500〜15,000Daの範囲内の数平均分子量を有する。
【0139】
本発明の硬化性塗料組成物は、塗膜形成成分として本発明の第一カルバメート官能性のアクリルオリゴマー及びポリマーを含んでなる。好ましい実施態様において、本発明の硬化性塗料組成物は、結合剤(A)として第一カルバメート官能性のアクリルポリマー及び/又はオリゴマーを含んでなる。
【0140】
本発明の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー及び/又はオリゴマーは、全NV塗膜形成成分に対して1〜99質量%、全NV塗膜形成成分に対して、より好ましくは1〜70質量%及び最も好ましくは5〜50質量%を含んでいてよい。
【0141】
本発明の硬化性塗料組成物は、本発明の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー及びオリゴマーとは異なり、かつ1つ又はそれ以上の活性水素を有する基又はUV又はフリーラジカル硬化に適している基を含んでなる付加的な結合剤(A)、本発明の第一カルバメート官能性のポリマー及び/又はオリゴマー又は他の結合剤(A)と反応性である1つ又はそれ以上の官能基を有する硬化剤(B)も含んでいてよい。
【0142】
ポリマー樹脂上に活性水素を有する官能基を有する適している付加的な結合剤又はポリマー樹脂(A)の例は当工業界に十分公知である。そのような基は、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、ヒドラジド基、活性化メチレン基及びそれらの混合物を含む。ヒドロキシル基及びそれらの混合物は、最も好ましい水素を有する官能基である。
【0143】
適しているポリマー樹脂は、例えば、アクリルポリマー、変性アクリルポリマー、ポリエステル、ポリエポキシド、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド及びポリシロキサンを含み、これらの全てが当工業界に十分公知である。好ましくはポリマーはアクリル、変性アクリル又はポリエステルである。より好ましくはポリマーはアクリルポリマーである。
【0144】
本発明の一実施態様において、前記ポリマーは本発明のアクリルポリマーとは異なるアクリルである。アクリルポリマーは好ましくは500〜1,000,000及びより好ましくは1500〜50,000の分子量を有する。本明細書において使用されるように、“分子量”はポリスチレン標準を用いるGPC法により決定されることができる数平均分子量にあてはまる。
【0145】
アクリルポリマーは、当工業界に十分公知であり、かつメチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のようなモノマーから製造されることができる。活性水素を有する官能基は、適しているエチレン系不飽和官能性モノマーの選択を介してアクリルモノマーのエステル部分へ導入されることができる。例えば、そのようなポリマーを形成するのに使用されることができるヒドロキシ官能性のアクリルモノマーは、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート等を含む。アミノ官能性のアクリルモノマーはt−ブチルアミノエチルメタクリレート及びt−ブチルアミノ−エチルアクリレートを含む。モノマーのエステル部分中に活性水素官能基を有する他のアクリルモノマーも当該技術の範囲内である。
【0146】
変性アクリルは本発明の硬化性塗料組成物におけるポリマー又は結合剤(A)として使用されることもできる。そのようなアクリルは、当工業界に十分公知であるような、ポリエステル変性アクリル又はポリウレタン変性アクリルであってよい。ε−カプロラクトンで変性されたポリエステル変性アクリルはEtzell他の米国特許第4,546,046号明細書に記載されており、その開示は本明細書において参考により取り入れられる。ポリウレタン変性アクリルも当工業界において十分公知である。それらは、例えば米国特許第4,584,354号明細書に記載されており、その開示は本明細書において参考により取り入れられる。
【0147】
活性水素基、例えばヒドロキシル基を有するポリエステルも、本発明による硬化性塗料組成物における結合剤(A)として使用されることができる。そのようなポリエステルは、当工業界において十分公知であり、かつ第一又は第二のヒドロキシル基を有する有機ポリオール(例えばエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール)での有機ポリカルボン酸(例えばフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、マレイン酸)又はそれらの無水物のポリエステル化により製造されることができる。
【0148】
活性水素官能基を有するポリウレタンも当工業界に十分公知である。それらはポリイソシアナート(例えばヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、MDI等)及びポリオール(例えば1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン)の鎖長延長反応により製造される。それらは、過剰のジオール、ポリアミン、アミノアルコール等でポリウレタン鎖をキャップすることにより活性水素官能基を備えることができる。
【0149】
本発明の硬化性塗料組成物は最も好ましくは1つ又はそれ以上の硬化剤(B)を含む。本発明の第一カルバメート官能性ポリマー及び任意の場合による結合剤(A)は、本発明の材料の第一カルバメート基及び結合剤(A)上の任意の反応性官能基と反応性である複数の官能基を有する成分(B)との反応を通じて硬化される。そのような反応性基は、アミノプラスト架橋剤又は他の化合物、例えばフェノール/ホルムアルデヒド付加物上の活性メチロール又はメチルアルコキシ基、イソシアナート基、シロキサン基、環状カーボネート基及び無水物基を含む。
【0150】
硬化剤(B)としての使用のために適している化合物の例は、メラミンホルムアルデヒド樹脂(モノマー又はポリマーのメラミン樹脂及び部分的にか又は完全にアルキル化されたメラミン樹脂を含め)、ブロックされた又はブロックされていないポリイソシアナート(例えば、TDI、MDI、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート及びこれらのイソシアヌレート三量体、これらは例えばアルコール又はオキシムでブロックされていてよい)、尿素樹脂(例えばメチロール尿素、例えば尿素ホルムアルデヒド樹脂、アルコキシ尿素、例えばブチル化尿素ホルムアルデヒド樹脂)、ポリ無水物(例えばポリ無水コハク酸)及びポリシロキサン(例えばトリメトキシシロキサン)を含む。アミノプラスト樹脂、例えばメラミンホルムアルデヒド樹脂又は尿素ホルムアルデヒド樹脂が特に好ましい。
【0151】
溶剤は場合により本発明の硬化性塗料組成物中で利用されることができる。本発明により使用される組成物は、例えば実質的に固体の粉末又は分散液の形で利用されることができるけれども、組成物が、溶剤の使用で達成されることができる実質的に液体状態であることがしばしば望ましい。この溶剤は全てのポリマー成分及び/又はオリゴマー成分に関して溶剤として作用すべきである。一般的に、ポリマー成分の溶解度特性に依存して、溶剤は任意の有機溶剤及び/又は水であってよい。好ましい一実施態様において、溶剤は極性有機溶剤である。より好ましくは溶剤は極性脂肪族溶剤又は極性芳香族溶剤である。さらにより好ましくは溶剤はケトン、エステル、アセテート、非プロトン性アミド、非プロトン性スルホキシド又は非プロトン性アミンである。有用な溶剤の例はメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸n−アミル、エチレングリコールブチルエーテル−アセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、キシレン、N−メチルピロリドン又は芳香族炭化水素のブレンドを含む。別の好ましい実施態様において、溶剤は水又は水と少量の助溶剤との混合物である。
【0152】
本発明の硬化性塗料組成物は、硬化反応を増強するための触媒を含んでいてよい。例えば、アミノプラスト化合物、特にモノマーメラミンが硬化剤(B)として使用される場合には、強酸触媒は硬化反応を増強するために利用されることができる。そのような触媒は、当工業界において十分公知であり、かつ例えばp−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェニル酸ホスフェート、マレイン酸モノブチル、ブチルホスフェート及びヒドロキシホスフェートエステルを含む。強酸触媒はしばしば、例えばアミンでブロックされている。本発明の組成物において有用でありうる他の触媒は、ルイス酸酸、亜鉛塩及びスズ塩を含む。
【0153】
本発明の好ましい実施態様において、溶剤は、塗料組成物中に約0.01質量%〜約99質量%、好ましくは約10質量%〜約60質量%及びより好ましくは約30質量%〜約50質量%の量で存在する。
【0154】
使用される任意の付加的な薬剤、例えば界面活性剤、充てん剤、安定剤、湿潤剤、分散剤、接着促進剤、UV吸収剤、HALS等は本発明の塗料組成物中へ配合されることができる。薬剤は先行技術において十分公知である一方で、使用される量はコーティング特性に不利な影響を及ぼすのを回避するように制御されなければならない。
【0155】
本発明の硬化性塗料組成物は、多種多様な塗装、例えばプライマー、ベースコート、クリヤコート、二成分系、抗衝撃塗料組成物、水性塗料、溶剤形塗料、フレキシブルな基体用の塗料、無溶剤塗料、粉体塗料等に使用されることができる。好ましい実施態様において、本発明の硬化性塗料組成物は好ましくは、高光沢コーティングにおいて及び/又はコンポジットカラー−プラス−クリアのコーティングのクリヤコートとして利用される。本明細書において使用されるような高光沢コーティングは、20°光沢(ASTM D523-89)又は少なくとも80のDOI(ASTM E430-91)を有するコーティングである。
【0156】
本発明の塗料組成物が、高光沢の顔料着色されたペイントコーティングとして使用される場合には、顔料は、任意の有機又は無機の化合物又は着色された材料、充てん剤、金属又は他の無機のフレーク材料、例えば雲母又はアルミニウムフレーク及び当工業界が通常顔料と呼ぶ種類の他の材料であってよい。顔料は通常、成分A、B及びCの全固体質量に対して1%〜100%の量で組成物中で使用される(すなわち0.1〜1のP:B比)。
【0157】
本発明による塗料組成物が、コンポジットカラー−プラス−クリアコーティングのクリヤコートとして使用される場合に、顔料着色されたベースコート組成物は当工業界において十分公知の多数のタイプのいずれであってもよく、かつ本明細書において詳細な説明を必要としない。ベースコート組成物において有用であるべき当工業界において公知のポリマーはアクリル、ビニル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル、アルキド及びポリシロキサンを含む。好ましいポリマーはアクリル及びポリウレタンを含む。本発明の好ましい一実施態様において、ベースコート組成物もカルバメート官能性アクリルポリマーを利用する。ベースコートポリマーは熱可塑性であってよいが、しかし好ましくは架橋可能であり、かつ1つ又はそれ以上のタイプの架橋可能な官能基を含んでなる。そのような基は、例えばヒドロキシ、イソシアナート、アミン、エポキシ、アクリレート、ビニル、シラン及びアセトアセテート基を含む。これらの基は、それらが所望の硬化条件、一般的に高められた温度下での架橋反応のためにブロックされておらずかつ入手可能であるようにして、マスク又はブロックされていてよい。有用な架橋可能な官能基はヒドロキシ、エポキシ、酸、無水物、シラン及びアセトアセテート基を含む。好ましい架橋可能な官能基はヒドロキシ官能基及びアミノ官能基を含む。
【0158】
ベースコートポリマーは熱可塑性であってよいか、自己架橋可能であってよいか、又はポリマーの官能基と反応性である別個の架橋剤を必要としうる。ポリマーがヒドロキシ官能基を含んでなる場合に、例えば、架橋剤はアミノプラスト樹脂、イソシアナート及びブロックイソシアナート(イソシアヌレートを含め)及び酸又は無水物官能性の架橋剤であってよい。
【0159】
本発明の塗料組成物は、当工業界に十分公知の多数の技術のいずれかにより物品又は表面上にコーティングされることができる。これらは、例えば吹付け塗、浸し塗、ローラー塗、カーテンコーティング等を含む。自動車の車体板のためには吹付け塗が好ましい。
【0160】
本明細書に記載された塗料組成物は好ましくはコーティング層を硬化させるための条件にかけられる。多様な硬化法が使用されることができるけれども、熱硬化が好ましい。一般的に、熱硬化はコーティングされた物品を、放射熱源により主に供給される高められた温度にさらすことにより行われる。硬化温度は架橋剤中で使用される個々のブロッキング基に依存して変換するが、しかしながらそれらは一般的に93℃〜177℃の範囲である。本発明による化合物(C)は、相対的に低い硬化温度ででさえ反応性である。従って好ましい実施態様において、硬化温度は、ブロックされた酸で触媒される系のためは好ましくは115℃〜150℃及びより好ましくは115℃〜138℃の温度である。ブロックされていない酸で触媒される系のためには、硬化温度は好ましくは82℃〜99℃である。硬化時間は、使用される個々の成分及び物理パラメーター、例えば層の厚さに依存して変化するが、しかしながら典型的な硬化時間は、ブロックされた酸で触媒される系については15〜60分及び好ましくは15〜25分及びブロックされていない酸で触媒される系については10〜20分の範囲である。
【0161】
本発明は次の例においてさらに記載される。全ての部及び百分率は、他に特記されていない限り質量による。
【実施例】
【0162】
例1
反応性モノマー化合物(2)の製造
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール45.52部、メチルカルバメート23.4部、ブチルスズ水酸化物酸化物0.08部及びトルエン30.4部の混合物を、メタノールを除去することができるがトルエンを反応混合物に返送する抽出器を備えた反応器中で、不活性雰囲気下に還流で頭部で加熱した。還流になったら不活性雰囲気を止めた。モノカルバメート生成物の理論量のほぼ半分が形成された際に反応を停止させた。ついでオクタンチオール0.6部を添加し、反応混合物を100℃で1.5時間保持した。遊離メチルカルバメート、トルエン、オクタンチオール及び一部の未変換の2−エチル−1,3−ヘキサンジオールをついで真空蒸留により除去した。最終生成物は、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール43.0%及び3−ヒドロキシ−2−エチルヘキサンカルバメート53.2%及び2−エチル−1,3−ヘキサンジカルバメート3.7%の混合物であった。
【0163】
例2a
本発明による第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーの推測に基づく製造
97%純度の3−クロロ−2−エチルヘキサンカルバメート100部及び無水酢酸ブチル100部の混合物を乾燥空気雰囲気下に60℃に加熱する。ついでナトリウムメタクリレート52部及びモノメチルエーテルヒドロキノン0.04部をゆっくりと添加する。反応を完了まで60℃で保持する。塩化ナトリウムをろ過により除去し、引き続き水及びブライン溶液で洗浄する。酢酸ブチルを留去して、2−エチル−3−メタクリレートヘキシルカルバメートが生じる。
【0164】
例2b
本発明による第一カルバメート官能性のアクリルポリマーの推測に基づく製造
酢酸アミル30部を不活性雰囲気下に140℃に温める。ついで例2aからの上記のアクリルモノマー26部、シクロヘキシルメタクリレート6.5部、エチルヘキシルアクリレート13部及びメチルメタクリレート6.5部及び2,2′−ジメチル−2,2′−アゾジブチロニトリル4.5部の混合物を4時間の期間に亘り添加する。反応混合物をついで140℃で1時間保持する。反応混合物をついで110℃に冷却し、酢酸アミル10部中の2,2′−ジメチル−2,2′−アゾジブチロニトリル1部の混合物を30分に亘り添加する。反応混合物を110℃で1時間保持した後に、温度を140℃に上昇させ、140℃で30分間保持する。最終的な樹脂は、樹脂NVで〜670g/equのカルバメート当量を有する〜68%のNVを有する。
【0165】
例3a
本発明による第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーの推測に基づく製造
3−ヒドロキシ−2−エチルヘキサンカルバメート100部及び無水酢酸アミル100部の混合物を乾燥空気雰囲気下に90℃に加熱する。ついで2−メチル−6−t−ブチル−p−クレゾール2000ppmで安定化させたメタクリル酸無水物81.5部をゆっくりと添加する。反応を赤外分光測定により追跡する。最終生成物はメタクリル酸16.2%及び2−エチル−3−メタクリレートヘキシルカルバメート48.3%を含有する酢酸アミル溶液である。
【0166】
例3b
本発明による第一カルバメート官能性のアクリルポリマーの推測に基づく製造
酢酸アミル9部及びグリシジルネオデカノエート25.6部を不活性雰囲気下に140℃に加熱する。ついで例3aからの上記の溶液53.8部及び2,2′−ジメチル−2,2′−アゾジブチロニトリル6.3部の混合物を4時間に亘り添加する。添加が完了したら、2,2′−ジメチル−2,2′−アゾジブチロニトリル1部及び酢酸アミル4.3部の混合物を15分に亘り添加する。反応混合物のエポキシ当量が42,000g/equ(溶液で)より少なくなるまで反応混合物を140℃で保持する。最終生成物は〜627g/equのカルバメート当量及び〜627g/equのヒドロキシ当量を有する〜63.4%のNVを有する。
【0167】
例4a
本発明による第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーの推測に基づく製造
無水酢酸ブチル100部中の上記の例1からの2−エチル−1,3−ヘキサンジオール43.0%及び3−ヒドロキシ−2−エチル−1,3−ヘキサンカルバメート53.2%及び2−エチル−1,3−ヘキサンジカルバメート3.7%の混合物100部を乾燥空気雰囲気下に60℃に加熱する。ついでジブチルスズジラウレート0.2部を添加する。2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン500ppmで安定化させた2−イソシアナトエチルメタクリレート135部の混合物をゆっくりと添加する。完了したら、反応混合物を、反応が完了するまで60℃で保持する。ついでメタノール10部を添加し、反応混合物を60℃で付加的な1時間保持する。酢酸ブチルをついで慎重に留去して、1,3−ビス(イソシアナトエチルメタクリレートウレタン)−2−エチルヘキサン57%、2−エチル−3−メタクリレートヘキシルカルバメート41%及び2−エチル−1,3−ヘキサンジカルバメート2%の混合物が生じる。
【0168】
例4b
本発明による第一カルバメート官能性のアクリルポリマーの推測に基づく製造
脱イオン(DI)水21.1部及びABEX EP-110 4.0部(Rhodia Inc., Cranbury, NTから)の混合物を不活性雰囲気下に還流加熱した。反応混合物をついで82℃に冷却し、かつ脱イオン水16.7部、過硫酸アンモニウム0.08部、ABEX EP-110 1.7部、ブチルアクリレート15.9部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.6部、スチレン2.0部の混合物を約1時間に亘って添加する。ついで脱イオン水0.6部を添加し、反応混合物を82℃で1時間保持する。ついで2つの別個のフィードを82℃で1時間に亘り反応混合物に同時に添加する。第一フィードは例4aからの上記のモノマー混合物12.1部及びメタクリル酸0.5部から構成されている。第二フィードは脱イオン水5.0部及び過硫酸アンモニウム0.02部から構成されている。これら2つの添加が完了したら、脱イオン水9.9部を添加し、反応混合物を82℃で2時間保持する。混合物をついで40℃未満に冷却し、脱イオン水中の20%アミノプロパノール溶液9.8部を添加する。最終的な樹脂は〜41%のNVを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、
nは2又はそれ以上の整数であり、
n′は1又はそれ以上の整数であり、
、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物であり、
少なくとも1つのR又はR基は水素ではなく、
Lはリンキング基であり、
yは、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、2〜100質量%を表し、
Aは、1つ又はそれ以上のエチレン系不飽和モノマーから誘導される官能性又は非官能性の繰返し単位を表し、
zは、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、0〜98質量%を表し、かつ
実質的に全ての第一カルバメート基Xは、リンキング基Lが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されている]で示されるランダム繰返し単位を含んでなる第一カルバメート官能性のアクリルポリマーにおいて、
第一カルバメート官能性のアクリルポリマーが、構造:
【化2】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、
nは2又はそれ以上の整数であり、
n′は1又はそれ以上の整数であり、
、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物であり、
少なくとも1つのR又はR基は水素ではなく、
Lはリンキング基である]で示される第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーを含んでなるモノマー混合物の重合反応生成物であることを特徴とする、第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項2】
第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーが、
(1)官能基Zと反応性であるが、しかし反応性モノマー化合物(2)の第一カルバメート基Xと実質的に非反応性である1つ又はそれ以上の官能基(i)を含んでなるエチレン系飽和モノマーと、
(2)式:
【化3】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、
Zは材料(1)の少なくとも1つの官能基と反応性の官能基であり、かつヒドロキシ基、ハロゲン化物基及びそれらの誘導体からなる群から選択され、
nは2又はそれ以上の整数であり、
n′は1又はそれ以上の整数であり、かつ
、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物である]で示される1つ又はそれ以上の構造を含んでなるが、
但し、(i)少なくとも1つのR又はR基は水素ではなく、かつ
(ii)反応性モノマー化合物(2)の実質的に全ての構造中で、第一カルバメート基Xが、官能基Zが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されている、
反応性モノマー化合物との反応生成物を含んでなる、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項3】
リンキング基Lが、エチレン系不飽和モノマーの官能基(i)及び反応性モノマー化合物(2)の官能基Zの反応生成物である、請求項2記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項4】
リンキング基Lがさらに、ヒドロキシ基をヒドロキシ基の誘導体基へ変換する反応の反応生成物を含んでなる、請求項3記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項5】
リンキング基Lがさらに、ハロゲン化物基をハロゲン化物基の誘導体基へ変換する反応の反応生成物を含んでなる、請求項3記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項6】
リンキング基Lが、エステル、エーテル、ウレタン、尿素及びシランからなる群から選択されている、請求項3記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項7】
リンキング基Lが、エステル及びウレタンからなる群から選択されている、請求項6記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項8】
Zがヒドロキシ基又はハロゲン化物基の官能性誘導体である、請求項2記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項9】
Zが、酸基、エポキシ基、環状カーボネート基、シラン基、イソシアナート基、アミン 基、特に第一アミン及び第二アミン、水素化ケイ素、アルケン、有機金属及びそれらの混合物からなる群から選択されるヒドロキシ基又はハロゲン化物基の官能性誘導体である、請求項8記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項10】
yが、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、40〜100質量%である、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項11】
yが、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、80〜100質量%である、請求項10記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項12】
zが、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、0〜60質量%である、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項13】
zが、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、0〜20質量%である、請求項14記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項14】
zが、モノマー混合物中の全てのエチレン系不飽和モノマーの全質量に対して、0〜20質量%である、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項15】
Aが非官能性のエチレン系不飽和モノマーの重合から生じる繰返し単位を含んでなる、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項16】
Aが、アルキルビニル、脂環式ビニル、芳香族ビニル及びそれらの混合物からなる群から選択される非官能性のエチレン系不飽和モノマーの重合から生じる繰返し単位を含んでなる、請求項15記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項17】
Aが、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン及びそれらの混合物からなる群から選択される非官能性のエチレン系不飽和モノマーの重合から生じる繰返し単位を含んでなる、請求項16記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項18】
Aが、官能性のエチレン系不飽和モノマーの重合から生じる繰返し単位を含んでなる、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項19】
Aが、酸官能性のエチレン系不飽和モノマー、ヒドロキシ官能性のエチレン系不飽和モノマー、エポキシ官能性のエチレン系不飽和モノマー、アミノ官能性のエチレン系不飽和モノマー、ラクトン延長エチレン系不飽和モノマー及びそれらの混合物からなる群から選択される官能性のエチレン系不飽和モノマーの重合から生じる繰返し単位を含んでなる、請求項18記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項20】
Aが、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、グリシジルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノ−エチルアクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される官能性のエチレン系不飽和モノマーの重合から生じる繰返し単位を含んでなる、請求項19記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項21】
Aが、官能性及び非官能性のエチレン系不飽和モノマーの重合から生じる繰返し単位を含んでなる、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項22】
エチレン系不飽和モノマー(1)はさらに、第一カルバメート基Xと実質的に非反応性であるが、官能基(i)とは異なる1つ又はそれ以上の付加的な官能基(ii)を含んでなる、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項23】
反応性モノマー化合物(2)が1つの構造を含んでなる、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項24】
反応性モノマー化合物(2)が少なくとも2つの構造を含んでなる、請求項23記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項25】
反応性モノマー化合物(2)が少なくとも4つの構造を含んでなる、請求項1記載の 第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項26】
Zがヒドロキシ基である、請求項2記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項27】
nが2〜12の整数である、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項28】
nが2〜8の整数である、請求項27記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項29】
nが2〜4の整数である、請求項28記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項30】
nが少なくとも3の整数である、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項31】
nが3〜12の整数である、請求項30記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項32】
nが3〜4の整数である、請求項33記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項33】
n′が1〜16の整数である、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項34】
n′が1〜12である、請求項34記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項35】
n′が1〜8である、請求項34記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項36】
Xが結合されている炭素上の置換基R及びRの少なくとも1つが水素である、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項37】
Xが結合されている炭素上の置換基R及びRの双方が水素である、請求項36記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項38】
がHである、請求項37記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項39】
が水素ではない、請求項37記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項40】
が、C〜C16脂肪族基、C〜C16脂環式基、C〜C16芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択されている、請求項39記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項41】
がC〜C12脂肪族基からなる群から選択されている、請求項40記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項42】
がC〜C脂肪族基からなる群から選択されている、請求項41記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項43】
Xが結合されている炭素上の置換基R及びRの少なくとも1つが水素ではなく、かつRが水素ではない、請求項36記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項44】
Xが結合されている炭素上のR又はR基の少なくとも1つが、C〜C16脂肪族基、C〜C16脂環式基、C〜C16芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択されている、請求項43記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項45】
が、C〜C16脂肪族基、C〜C16脂環式基、C〜C16芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択されている、請求項44記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項46】
がC〜C12脂肪族基からなる群から選択されている、請求項45記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項47】
がC〜C脂肪族基からなる群から選択されている、請求項46記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項48】
水素ではない少なくとも1つのR又はR基が、第一カルバメート基Xが結合されている炭素原子よりも、リンキング基Lが結合されている炭素原子により近接した位置にある炭素原子に結合されている、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項49】
nが2であり、かつ水素ではない少なくとも1つのR又はR基が、リンキング基Lが結合されている炭素原子と第一カルバメート基Xが結合されている炭素原子との間で等しい距離に位置している炭素原子に結合されている、請求項48記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項50】
nが3又はそれより大きく、かつ水素ではない少なくとも1つのR又はR基が、官能基Xが結合されている炭素原子よりも、官能基Yが結合されている炭素原子により近接した位置にある炭素原子に結合されている、請求項48記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項51】
nが3又はそれより大きく、かつ水素ではない少なくとも1つのR又はR基が、官能基Yが結合されている炭素原子に隣接している炭素原子に結合されている、請求項50記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項52】
、R及びRが、H、C〜C16脂肪族基、C〜C16脂環式基、C〜C16芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択されている、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項53】
n′が1よりも大きく、かつR、R及びRの少なくとも1つが、C〜C16脂肪族基、C〜C16脂環式基、C〜C16芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択されている、請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項54】
、R及びRの少なくとも2つが、C〜C16脂肪族基、C〜C16脂環式基、C〜C16芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択されている、請求項53記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項55】
、R及びRの少なくとも3つが、C〜C16脂肪族基、C〜C16脂環式基、C〜C16芳香族基及びそれらの混合物からなる群から選択されている、請求項54記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項56】
反応性モノマー化合物(2)が、式:
【化4】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、
Zは、材料(1)の少なくとも1つの官能基と反応性の官能基であり、かつヒドロキシ基、ハロゲン化物基及びそれらの誘導体からなる群から選択されており、
nは2又はそれ以上の整数であり、
n′は1又はそれ以上の整数であり、かつ
、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物である]で示される構造からなり、但し、
(i)少なくとも1つのR又はR基が水素ではなく、かつ
(ii)第一カルバメート基Xが、官能基Zが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されている、請求項2記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマー。
【請求項57】
第一カルバメート官能性のアクリルポリマーを製造する方法において、構造:
【化5】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、
nは2又はそれ以上の整数であり、
n′は1又はそれ以上の整数であり、
、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物であり、
少なくとも1つのR又はR基は水素ではなく、
Lはリンキング基である]で示される第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーを含んでなるモノマー混合物を重合させることを含んでなり、かつ
前記の第一カルバメート官能性のエチレン系不飽和モノマーが、
(1)官能基Zと反応性であるがしかし反応性モノマー化合物(2)の第一カルバメート基Xと実質的に非反応性である1つ又はそれ以上の官能基(i)を含んでなるエチレン系飽和モノマー、及び
(2)式:
【化6】

[式中、Xは第一カルバメート基であり、
Zは材料(1)の少なくとも1つの官能基と反応性の官能基であり、かつヒドロキシ基、ハロゲン化物基及びそれらの誘導体からなる群から選択されており、
nは2又はそれ以上の整数であり、
n′は1又はそれ以上の整数であり、かつ
、R、R、R、R及びRは独立してH、アルキル基、芳香族基又はそれらの混合物である]で示される1つ又はそれ以上の構造を含んでなるが、
但し、(i)少なくとも1つのR又はR基が水素ではなく、かつ
(ii)反応性モノマー化合物(2)の実質的に全ての構造中で、第一カルバメート基Xが、官能基Zが結合されている炭素原子より低い置換度を有する炭素原子に結合されている、反応性モノマー化合物
の反応生成物を含んでなることを特徴とする、第一カルバメート官能性のアクリルポリマーの製造方法。
【請求項58】
請求項1記載の第一カルバメート官能性のアクリルポリマーを含んでなる硬化性塗料組成物。

【公表番号】特表2006−507392(P2006−507392A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555306(P2004−555306)
【出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/030772
【国際公開番号】WO2004/048423
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(591020700)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (53)
【氏名又は名称原語表記】BASF Corporation
【住所又は居所原語表記】3000 Continental Drive−North,Mount Olive, NJ 07828−1234, U.S.A
【Fターム(参考)】