説明

ペン入力装置用表面材

【課題】 反射防止性が良く、視認性を維持しつつ、復元性が良好で筆記感に優れるペン入力装置用表面材を提供する。
【解決手段】 ペン入力装置用表面材23は、樹脂フィルムよりなる基材16上に自己修復性を有する軟質樹脂層19を設け、その上に含フッ素樹脂硬化被膜よりなる反射防止層25が形成されて構成されている。そして、反射防止層25の表面を、入力ペン21を用いて、20℃、50%相対湿度の雰囲気下で荷重200g、速度10cm/秒の速度で移動させたときに発生するへこみが0.2〜20秒の時間内に復元するように構成されている。軟質樹脂層19は、特定の繰り返し単位を10〜70質量%含む硬化性組成物を基材16上に塗布し、紫外線を照射することにより硬化して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等の前面に設けられ、反射防止性が良く、視認性を維持しつつ、復元性が良好で筆記感に優れるペン入力装置用表面材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の各種ディスプレイの前面に設けられ、その表面を入力ペンで接触することによって発生する接触位置信号により入力操作を行うペン入力装置は、入力ペンによる細かな操作、そして曲線や直線等の連続した線状の入力が可能である。そのため、比較的小さな画面においても多くの情報の入力が可能であり、更に入力ペンでディスプレイ上に文字を書くという紙感覚で入力操作が行える利点を生かして、ペン入力装置は携帯情報端末、電子手帳及びマルチメディア機器等その利用範囲が幅広く急速に拡大している。
【0003】
一方、液晶ディスプレイ等の各種ディスプレイに用いられている表面材としては、ガラス板や、表面にハードコート層を形成した樹脂板が一般的である。しかし、近年は表面材として反射防止性を有するものが一般的になってきている。その反射防止の原理は、フィルムの最表面層に下層よりも低屈折率の物質から成る反射防止層を、可視光波長の1/4の膜厚(約100nm)で形成すると、干渉効果により表面反射の低減がなされるというものである。そして、反射防止性を有することにより、表面材への像の映りこみ防止、防眩性付与、眼精疲労の低減等の効果がもたらされる。このような事情から、表面材として反射防止性を有するハードコート層が形成された樹脂板の普及が近年著しくなっている。
【0004】
しかし、それら表面材ではペン入力時に硬質な感触や、滑る感触等があるため、通常の紙に対してペンで書く場合とは大きな隔たりがあり、筆記感が極めて悪かった。それら表面材において、反射防止性を有しながら、筆記感を改善するために幾つかの提案がなされている。例えば、透明硬質基板上にペン入力タッチ面の動摩擦係数が特定の範囲にあり、自己修復性を有する軟質樹脂層が設けられ、その上に反射防止層が設けられたペン入力タッチパネルが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2003−15822号公報(第7〜8頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、透明硬質基板として具体的には化学強化ガラスが用いられていることから、入力ペンで反射防止層の表面を押圧したとき硬い感じを与え、筆記感が悪く、不満足なものであった。
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、反射防止性が良く、視認性を維持しつつ、復元性が良好で筆記感に優れるペン入力装置用表面材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成した。即ち、第1の発明のペン入力装置用表面材は、樹脂フィルムよりなる基材上に自己修復性を有する軟質樹脂層を設け、その上に含フッ素樹脂硬化被膜よりなる反射防止層が形成されたペン入力装置用表面材において、反射防止層の表面を、入力ペンを用いて、20℃、50%相対湿度の雰囲気下で荷重200g、速度10cm/秒の速度で移動させたときに発生するへこみが0.2〜20秒の時間内に復元するように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
第2の発明のペン入力装置用表面材は、第1の発明において、軟質樹脂層が下記の化学式(1)、(2)又は(3)に示す繰り返し単位を10〜70質量%含む硬化性組成物を基材上に塗布、硬化して形成されるものである。
【0009】
−O−〔(CH2j−O〕k− ・・・(1)
但し、j=2〜4及びk=2〜30である。
【0010】
【化2】

但し、m=3〜12及びn=1〜15である。
【0011】
−(CH2p− ・・・(3)
但し、p=10〜24である。
第3の発明のペン入力装置用表面材は、第1又は第2の発明において、反射防止層が、A成分として含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルと、B成分として(メタ)アクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤及びフッ素基含有シランカップリング剤の少なくとも一方によって変性されたコロイダルシリカとを含む含フッ素硬化性塗液を、重合硬化して得られる含フッ素樹脂硬化被膜である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
第1の発明のペン入力装置用表面材では、基材は樹脂フィルムより構成され、その上には軟質樹脂層が設けられ、更にその上に設けられる反射防止層が含フッ素樹脂硬化被膜より構成されている。このため、基材が従来のガラスである場合に比べ、基材に対する軟質樹脂層の密着性が良く、反射防止層がその軟質樹脂層上に安定して保持される。従って、反射防止層の表面の反射防止性が良く、視認性を維持することができる。
【0013】
また、反射防止層の表面を、入力ペンを用いて、20℃、50%相対湿度の雰囲気下で荷重200g、速度10cm/秒の速度で移動させたときに発生するへこみが0.2〜20秒の時間内に復元するように構成されている。このため、へこみの復元時間が適切な範囲に設定され、良好な弾力性を有している。従って、反射防止層の表面におけるへこみの復元性が良好で筆記感に優れている。
【0014】
第2の発明のペン入力装置用表面材では、軟質樹脂層が前記化学式(1)、(2)又は(3)に示す繰り返し単位を10〜70質量%含む硬化性組成物を基材上に塗布、硬化して形成されるものである。これらの繰り返し単位は軟質樹脂層に柔軟性や弾力性を付与することができる。このため、反射防止層の表面におけるへこみの復元性がより良好になり、筆記感を一層向上させることができる。
【0015】
第3の発明のペン入力装置用表面材では、反射防止層が特定の含フッ素樹脂硬化被膜で構成されている。即ち、含フッ素樹脂硬化被膜は、A成分として含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルと、B成分として(メタ)アクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤及びフッ素基含有シランカップリング剤の少なくとも一方によって変性されたコロイダルシリカとを含む含フッ素硬化性塗液を、重合硬化して得られるものである。このため、A成分として含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルとB成分のコロイダルシリカとが相乗的に作用して反射防止と反射防止層の表面強度等の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
ペン入力装置は、パネルの表面に鉛筆やボールペン等に似せたペン形状の器具を用いて描画する動作を行うことにより入力操作を行う装置であり、かつパネル及びペン形状の器具の少なくとも一方に電気や電磁波等による信号出力回路又は信号記録回路を持つ装置であれば特に限定されない。例えば、各種ディスプレイの前面に設けられるペン入力タッチパネル装置や、ディスプレイの前面に設けられずにコンピューターに接続されて使用されるタブレット式ペン入力装置や、電子ペーパー等を挙げることができる。
【0017】
ペン入力装置は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセント(EL)ディスプレイ、ブラウン管(CRT)ディスプレイ等の表示面上にペン入力タッチパネルが配置され、その表面を入力ペンで接触することにより発生する接触位置信号で入力操作を行う装置である。即ち、図5に示すように、ペン入力装置10は、上記のようなディスプレイ11上にペン入力タッチパネル12が組付けられて構成されている。
【0018】
そして、ペン入力タッチパネルは上記のような各種ディスプレイに組み込まれた一体型の場合や、各種ディスプレイ装置表示面上に配置されるセパレート型がある。ペン入力タッチパネルの方式としては公知の方式が何れも使用可能であり、特に限定されない。具体的に例示すると超音波方式、抵抗膜方式、静電容量方式、電気歪み方式、磁気歪み方式、赤外線方式及び電磁誘導方式等の方式が挙げられる。これらの中でも、消費電力、価格の観点からは抵抗膜方式のペン入力タッチパネルが好ましく、分解能の観点からは電磁誘導方式のペン入力タッチパネルが好ましい。
【0019】
抵抗膜方式のペン入力タッチパネル12は、次のように構成されている。即ち、図3(a)に示すように、片面に透明導電性薄膜13、14が設けられた固定側(図中下側)及び可動側(図中上側)の透明樹脂フィルムよりなる基材15、16を透明導電性薄膜13,14同士が対向するように配置し、周囲を接着用補強材17で接着して一定間隔を保持できるようになっている。一方の透明導電性薄膜13上には多数の絶縁スペーサ18が点状に設けられ、対向する透明導電性薄膜13、14間が絶縁される構造となっている。上記基材15、透明導電性薄膜13,14、絶縁スペーサ18等によりタッチパネル本体が構成されている。可動側の基材16上には図1に示すように、軟質樹脂よりなる軟質樹脂層19が形成されると共に、その上には反射防止層25が設けられている。或いは、図3(b)及び図2に示すように、可動側の基材16表面に軟質樹脂層19が設けられ、その上には反射防止層25が設けられると共に、裏面には透明粘着剤層20が設けられ、透明樹脂基材22を介して透明導電性薄膜14に接着されるようになっている。そして、入力ペン21で反射防止層25を押圧することにより、可動側の透明導電性薄膜14を固定側の透明導電性薄膜13に接触させ電気的に導通させて入力できるように構成されている。
【0020】
電磁誘導方式のタッチパネルは、次のように構成されている。即ち、図4に示すように、透明樹脂基材22の表面にペン入力装置用表面材23が積層接着されると共に、透明樹脂基材22の裏面には液晶素子(LCD)に受信回路が張り巡らされたペン位置検出器24が設けられて構成されている。図2に示すように、ペン入力装置用表面材23は、透明樹脂フィルムよりなる基材16の表面に軟質樹脂層19が設けられ、その上に反射防止層25が設けられると共に、裏面に透明粘着剤層20が設けられて構成されている。更に、図示しない送信コイルが内蔵された電磁型の入力ペン21が備えられている。そして、入力ペン21で反射防止層25を押圧することにより、電磁誘導が引き起こされて発生した電磁波がペン位置検出器24で検出されて入力位置が記録されるように構成されている。
【0021】
このようなペン入力装置10の入力ペン21が直接触れる面にペン入力装置用表面材23が使用される。図1に示すように、ペン入力装置用表面材23は、透明樹脂フィルムからなる基材16と、軟質樹脂層19と、入力ペン21が直接触れる含フッ素樹脂硬化被膜からなる反射防止層25とより構成されている。以下、軟質樹脂層19と反射防止層25の積層体を機能層と称する。また、図2に示すように、基材16の裏面に透明粘着剤層20が設けられている構成であってもよい。軟質樹脂層19及び反射防止層25は単層であってもよいし、複数の層により形成されていてもよい。軟質樹脂層19の厚みは好ましくは5〜200μmであり、より好ましくは5〜100μmであり、特に好ましくは10〜50μmである。この厚みが5μm未満の場合、軟質樹脂層19の弾力性が不足して復元性や筆記感が低下する。一方、200μmを越える場合、軟質樹脂層19が厚くなり過ぎて筆記感が低下する傾向を示す。
【0022】
軟質樹脂層19上に複数の層を設ける場合には、それらの合計膜厚は通常50〜2000nm、好ましくは50〜1000nm、より好ましくは50〜500nmである。合計膜厚が50nm未満の場合には、十分な反射防止効果を得ることができない。一方、合計膜厚が2000nmを越える場合には、機能層のへこみ復元時間を維持することができなくなり、筆記感を低下させる傾向にある。入力ペン21は、ペン入力装置10での入力操作に使用できるペンであれば特に限定されない。公知の入力ペン21としては、例えば、ポリアセタール樹脂を主成分とする材質を用い、ペン先の形状は直径が1.6mm程度の半球状のものが挙げられる。
【0023】
視認性を維持し、筆記感を向上させるために、ペン入力装置用表面材23は以下の要件を考慮して設計される。まず、20℃、50%相対湿度の雰囲気下で入力ペンを用いてペン入力装置用表面材23の表面を荷重200g、速度10cm/秒で移動させたときに発生する機能層のへこみが0.2〜20秒の時間内に復元することが必要であり、0.5〜10秒の時間内に復元することが好ましい。このへこみが0.2秒未満で復元すると表面材23の柔らかさを感じにくくなるため筆記感が適正でなくなり、20秒を越えて復元すると、へこみ跡が長時間残り、視認性を低下させるため好ましくない。また、へこみの深さは好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは2〜30μmである。
【0024】
次に、20℃、50%相対湿度の雰囲気下で超微小硬さ試験装置((株)フィッシャー・インストルメンツ社製、商品名:フィッシャースコープH−100)で測定した機能層のマルテンス硬さが好ましくは0.5〜50N/mm2、より好ましくは1〜10N/mm2である。この場合、ペン入力装置用表面材23は、適度なへこみの深さが得られる点で好ましい。マルテンス硬さは、ビッカース圧子によりフィルム表面を押し込んだときの試験荷重と押し込み表面積から求められる塗膜の硬さであり、物体表面の硬度の指標となる。マルテンス硬さが0.5N/mm2未満のときには、表面材23が柔らかくへこみ過ぎる傾向を示す。逆に、50N/mm2を越えるときには、表面材23が硬くへこみにくい傾向を示す。
【0025】
更に、20℃、50%相対湿度の雰囲気下で超微小硬さ試験装置による弾性エネルギーが好ましくは0.1〜20nJ、より好ましくは0.5〜10nJである。この場合、ペン入力装置用表面材23は、耐久性の点から好ましい。弾性エネルギーはビッカース圧子でのフィルム表面の押し込みから荷重除去までの弾性変形仕事量である。弾性エネルギーが0.1nJ未満の場合、へこみが戻りにくいため、傷付き状態となりやすい。一方、20nJを越える場合、へこみは良く復元するが、表面材23が柔らかくなり過ぎるため、耐久性が低下しやすい。ここで、復元性とは一度生じたへこみが経時的に消失して元の形状に戻ろうとする性質を意味し、一時的に生じるへこみによりへこみ感を得ることができ、また加わった力を吸収するために傷付き防止性能を兼ね備えることができる。
【0026】
視認性を損なわないという観点から、全光線透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。全光線透過率が80%未満であると、暗さを感じ、視認性が悪くなる。また、ヘイズ値が好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。ヘイズ値が5%を越える場合、不透明感を感じて視認性が悪くなる。すべり感は筆記感を満たす入力ペン21のペン先と反射防止層25の表面との摩擦抵抗を測定することにより評価することができる。この摩擦抵抗は、描画動作中のすべり感に相当する動摩擦抵抗と書き始めのすべり感に相当する静摩擦抵抗の2つに分けることができる。筆記感を向上させるという観点から、その両方を制御することが重要である。
【0027】
即ち、入力ペン21に対する摩擦抵抗を表面性試験機(新東科学(株)製、商品名:トライボギア、TYPE:14DR)により測定した値が特定の範囲にあるものである。具体的には、20℃、50%相対湿度雰囲気下で入力ペン21を用いて、反射防止層25の表面上を荷重200g、速度10cm/秒で移動させたとき、動摩擦係数が好ましくは0.02〜0.6、より好ましくは0.1〜0.4であり、かつ静摩擦係数が好ましくは0.3〜2、より好ましくは0.5〜1である。動摩擦係数が0.02未満である場合又は静摩擦係数が0.3未満である場合、いずれの場合も上記入力ペン21がすべり過ぎるため、筆記感が低下する。逆に、動摩擦係数が0.6を越える場合又は静摩擦係数が2を越える場合、いずれの場合も入力ペン21のすべりが悪く、抵抗感を強く感じるため、筆記感が悪化する傾向を示す。
【0028】
ペン入力装置用表面材23は、樹脂フィルムと機能層との間、又は機能層が形成されている樹脂フィルム面の反対側に必要に応じて反射防止層25、透過光制御層、導電性層及び帯電防止層等の機能を有する層を単層又は複数層の形態で形成することができる。樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、再生セルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン3元共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ナイロン、ポリエチレン、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ノルボルネン系樹脂等が挙げられる。これらの中では、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等透明性のあるものが好ましい。
【0029】
また、樹脂フィルムの厚みは通常0.01mm〜3mm、好ましくは0.01〜0.5mm、特に好ましくは0.05mm〜0.2mmである。樹脂フィルムはこのような厚みを有し、一般に樹脂シートと呼ばれる範疇のものを含む。樹脂フィルムの厚みが、0.01mmよりも薄い場合や、3mmよりも厚い場合には、いずれも取扱い性が悪くなって好ましくない。
【0030】
軟質樹脂層19は、樹脂フィルム上に軟質樹脂層形成用の硬化性組成物を塗布後、又は硬化性組成物の粘度が高過ぎる場合等には、希釈溶剤によって希釈された硬化性組成物(液体)を塗布してから溶剤を除去後、いずれも硬化させることにより形成される。そのような硬化性組成物中には、紫外線硬化型又は熱硬化型の不飽和アクリル樹脂組成物、ウレタン変性(メタ)アクリレート等の不飽和ポリウレタン樹脂組成物、不飽和ポリエステル樹脂組成物、ポリアミド樹脂組成物、熱硬化型のシリコーン系、メラミン系及びエポキシ系の樹脂組成物等が含まれている。
【0031】
より具体的には、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等のアクリロイル基、メタクリロイル基を2つ以上含んだ多官能重合性化合物を含む樹脂組成物や、ウレタン変性(メタ)アクリレートを含む樹脂組成物、そしてシリコーン系、メラミン系又はエポキシ系の多官能重合性化合物を含む樹脂組成物等を挙げることができる。これらの中では、耐久性や取扱いの容易さの点で、紫外線、電子線又は加熱により硬化することのできる多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物やウレタン変性(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリロイル基含有化合物を主成分として含む樹脂組成物が優れている。更に、取扱い性や連続生産性の点で、紫外線硬化型のものがより好ましい。軟質樹脂層形成用の硬化性組成物は、これら(メタ)アクリロイル基含有化合物を通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上含有する。
【0032】
前記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2'−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の2価のアルコール;トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン等の3価以上のアルコールが挙げられる。
【0033】
前記ウレタン変性(メタ)アクリレートは、1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体とのウレタン化反応によって得ることができる。1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の1分子中に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートや、それら有機イソシアネートをイソシアヌレート変性、アダクト変性、ビウレット変性した1分子中に3個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート等が挙げられる。
【0034】
水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルのような長鎖部分を有するものが自己修復性の点で好ましい。
【0035】
また、ウレタン変性(メタ)アクリレートには、ポリカプロラクトンジオールやポリテトラメチレンジオール等複数の水酸基を有するオリゴマーや、トリデカノール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、グリセロールモノステアレート等の長鎖アルキルアルコールを含むことで復元性が良好になり、表面滑性を適切にすることができる。これらの成分は単独で用いても良いし、2種類以上併用してもよい。また、優れたへこみ感と適切な復元性を得るために、前記多価アルコールやウレタン変性(メタ)アクリレート等の上記各種樹脂のうち長鎖部分を適度に含むものが好ましい。
【0036】
長鎖部分としては、下記の化学式(1)、(2)又は(3)に示す繰り返し単位を含む連鎖などが挙げられる。
−O−〔(CH2j−O〕k− ・・・(1)
但し、j=2〜4及びk=2〜30である。
【0037】
【化3】

但し、m=3〜12及びn=1〜15である。
【0038】
−(CH2p− ・・・(3)
但し、p=10〜24である。
これら長鎖部分の繰り返し単位が、硬化性組成物中に10〜70質量%含まれることが好ましく、20〜60質量%含まれることが更に好ましい。繰り返し単位は、化学式(1)の場合、2〜30個の連鎖であることが好ましく、2〜20個の連鎖であることが更に好ましい。化学式(1)の繰り返し単位内の炭素数jは、2〜4個であることが好ましい。化学式(2)の場合、1〜15個の連鎖であることが好ましく、1〜10個の連鎖であることが更に好ましい。化学式(2)の繰り返し単位内の炭素数mは、3〜12個であることが好ましく、3〜8個であることが更に好ましい。化学式(3)の場合、炭素数pは10〜24個であることが好ましく、12〜20個であることが更に好ましい。
【0039】
また、樹脂フィルムと軟質樹脂層19との密着性を良好にするために、カルボキシル基と水酸基の少なくとも一方を有する化合物を硬化性組成物に1種又は2種以上を含有させてもよい。カルボキシル基と水酸基の少なくとも一方を有する化合物は限定されないが、具体的には、ヒドロキシコハク酸、サリチル酸、ラクチル酸、2−ヒドロキシブチル酸等の水酸基及びカルボキシル基を併せ有する化合物や、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート等の不飽和結合及びカルボキシル基を併せ有する化合物、及びこれら単量体を含む単量体混合物から形成される共重合体、アリルアルコール、メタリルアルコール、ビニルアルコール、オレイルアルコール、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の不飽和結合と水酸基を併せ有する化合物、及びこれら単量体を含む共重合体等が挙げられる。その含有量は0.01〜30質量%が好ましく、0.1〜15質量%が特に好ましい。これら化合物の含有量が0.01質量%未満では、樹脂フィルムとの密着性が不十分となり、30質量%よりも多くなると、軟質樹脂層19の自己修復性機能が低下するため好ましくない。
【0040】
更に、反応性希釈剤として不飽和結合を1つ持つ成分を併用してもよい。これらは主成分として用いる樹脂との相溶性がよい単量体であれば特に限定されない。例えば、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリルアクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0041】
硬化性組成物の粘度を調整するために、希釈溶媒を用いることができる。希釈溶媒は、非重合性のものであれば特に限定されず、例えばトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチルセルソルブアセテート、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシブタノール等が用いられる。これらの希釈溶媒は、単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。その含有量は、硬化性組成物の組成にもよるが、硬化性組成物溶液中に通常80質量%以下、好ましくは10〜80質量%である。
【0042】
軟質樹脂層19の表面平滑性を向上させるために、硬化性組成物中にポリシロキサン系化合物を添加することが好ましい。ポリシロキサン系化合物としては直鎖状或いは分岐状のポリジオルガノシロキサン系化合物が好ましく、ポリオルガノシロキサン基含有共重合体であっても良い。ポリジオルガノシロキサンの代表例はポリジメチルシロキサンである。更に、主鎖や側差の末端にビニル基や(メタ)アクリロイル基等の反応性基を有していても良い。そのメチル基の一部ないし全てが他の有機基に置換された構造のもの(ただし、そのメチル基が置換される位置は末端であっても連鎖内であってもよい)であってもよい。
【0043】
そのような他の有機基としては、例えば、メチル基以外のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、及びポリオキシアルキレン鎖やポリエステル鎖等の繰り返し単位を有する連鎖等がある。更にこれらの有機基は水酸基、アミノ基、エポキシ基、アシル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、その他の官能基を有することができる。前記繰り返し単位を有する連鎖としては、例えばポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシテトラメチレン鎖、ポリ(オキシエチレンオキシプロピレン)鎖等のポリオキシアルキレン鎖や、ポリカプロラクトン鎖やポリエチレンセバケート鎖、ポリエチレンアジペート鎖等のポリエステル鎖が挙げられる。これら連鎖の末端は水酸基やカルボキシル基、(メタ)アクリロイル基やビニル基であっても、その末端が有機基で封鎖されていてもよい。例えば、アルキルエーテル化、アルキルエステル化等で封鎖されていてもよい。また、この連鎖は通常ジメチレン基やトリメチレン基等のアルキレン基を介して珪素原子と結合しているが、これに限られるものではない。
【0044】
ポリシロキサン系化合物としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが好ましく、市販品としては「BYK−306」、「BYK330」、「BYK−341」、「BYK−344」、「BYK−307」、「BYK−333」(ビックケミー社製)、「VXL4930」(ヴィアノヴァレジンズ社製)等が挙げられる。ポリオルガノシロキサン基含有共重合体は、ポリオルガノシロキサン基含有化合物と他の重合体とから形成されるポリオルガノシロキサン基含有グラフト共重合体、又はポリオルガノシロキサン基含有化合物と他の重合体とから形成されるポリオルガノシロキサン基含有グラフト共重合体セグメントAと他重合体から形成されるポリオルガノシロキサン基を含有しない重合体セグメントBとからなるA−B型ブロック共重合体、又はポリオルガノシロキサン基含有化合物セグメントAと他の重合体から形成されるポリオルガノシロキサン基を含有しない重合体セグメントBとからなるA−B型ブロック共重合体が好ましい。前記共重合体は、市販品としてはモディパーFS700、モディパーFS710、モディパーFS720、モディパーFS730(日本油脂(株)製)等がある。
【0045】
ポリシロキサン系化合物の硬化性組成物中における含有量は、通常0.01〜10質量%であり、0.01〜5質量%が好ましい。この含有量が、10質量%を越える場合には、軟質樹脂層19に対する反射防止層25の密着性が低下する。一方、0.01質量%未満の場合には、十分な表面平滑性が得られなくなる。硬化性組成物は、前記の(メタ)アクリロイル基含有化合物、カルボキシル基及び水酸基の少なくとも一方を有する化合物、ポリシロキサン系化合物、更に後述のその他化合物、溶剤等を配合して得られる。(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと前記(メタ)アクリル酸ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルとのウレタン化反応によって得られるウレタン変性(メタ)アクリレートが好ましい。その際、配合するための機械や配合順序等は特に限定されない。
【0046】
軟質樹脂層19は単層でもよく、複数層から形成されていてもよい。自己修復性を有する軟質樹脂層19の具体例としては、ナトコ(株)製の紫外線(UV)硬化性の特殊変性ウレタンアクリレート塗料「UV自己治癒性クリヤー」等が挙げられる。軟質樹脂層19の厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。軟質樹脂層19の厚みが5μm未満では、へこみの深さが十分ではないため、良好なへこみ感、筆記感を得ることが難しくなる。一方、200μmよりも厚い場合には、へこみが深過ぎるため筆記感が低下する。
【0047】
次に、反射防止層25は前述のように軟質樹脂層19上に設けられ、ペン入力装置用表面材23の最表面に位置し、含フッ素硬化性塗液を硬化させた含フッ素樹脂硬化被膜からなる。含フッ素樹脂硬化被膜は、A成分として含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル、B成分として(メタ)アクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤及びフッ素基含有シランカップリング剤の少なくとも一方によって変性されたコロイダルシリカ(以下、変性コロイダルシリカと称する)を含む含フッ素硬化性塗液を硬化させた硬化被膜であり、三次元網目構造となる。この硬化被膜は低屈折率であるため反射防止層となる。ここで、A成分の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、各種の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルが挙げられるが、好ましくは下記に示す化学式(4)で表わされる2官能ないし4官能の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルである。
【0048】
【化4】

ここで、X1及びX2は、同一若しくは異なる基であって、水素原子又はメチル基を示し、s、tは1又は2であり、Y1は、
(i)水酸基を0〜4個有し、2個〜24個のフッ素原子を有する炭素数1〜14のフルオロアルカン基、
(ii)フッ素原子を4個以上有する炭素数3〜14のフルオロシクロアルキレン基、
(iii)−C(Y2)HCH2−基(但しY2は、フッ素原子を3個以上有する炭素数1〜14のフルオロアルキル基、フッ素原子を4個以上有する炭素数3〜14のフルオロシクロアルキル基を示す。)、又は、
(iv)下記の化学式(5)で表される基である。
【0049】
【化5】

ここでY3、Y4はどちらか一方が水素原子で、かつ他方がフッ素原子3個〜24個を有する炭素数1〜14のフルオロアルキル基、Z1は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、Z2は水素原子又は(メタ)アクリロイル基を示す。
【0050】
前記の化学式(4)、(5)において、Y1、Y2、Y3及びY4の炭素数が15以上の場合には製造が困難である。
前記含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルのうち、好ましい含フッ素ジ(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,4−トリフルオロブタン、1,2−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンタン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカン等が挙げられる。
【0051】
これらの含フッ素ジ(メタ)アクリル酸エステルは、使用に際しては単独又は混合物として用いることができる。更に、前記の含フッ素ジ(メタ)アクリル酸エステル以外の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、3官能及び4官能の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0052】
3官能の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、1,2,8−トリス((メタ)アクリロイルオキシ}−7−ヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,2,9−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ}−8−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,2,10−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ}−9−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン等が挙げられる。
【0053】
4官能の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルの好ましい具体例としては、例えば、1,2,7,8−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,2,8,9−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,2,9,10−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,10,11−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン等が挙げられる。
【0054】
使用に際しては、前記の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルは、単独又は混合物として用いることができる。含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルを調製するには、例えば相当する含フッ素エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との通常の開環反応により容易に得ることができる。また、ヒドロキシ含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸とを通常のエステル化反応させる方法、相当する含フッ素1,2−ジオールと(メタ)アクリル酸とを通常のエステル化反応させる方法、或いは相当する含フッ素多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応させる方法、更には相当する含フッ素多価アルコールと(メタ)アクリル酸エステルとの通常のエステル交換反応させる方法等により容易に得ることができる。
【0055】
B成分の変性コロイダルシリカは、反射防止層25の構成成分としては重要な成分である。変性コロイダルシリカをB成分として含まない場合には、反射防止層25の表面強度が大幅に低下し、ペン入力のような一点に大きな荷重がかかるような場合には、耐久性が不十分となる。この変性コロイダルシリカは有機溶剤分散系コロイダルシリカを、加水分解性シリル基を有する(メタ)アクリロイルオキシ基又はフッ素基含有シランカップリング剤のいずれか一方で、又は両方で変性したものである。
【0056】
コロイダルシリカの平均粒径は5〜150nmであることが望ましく、分散安定性と光学特性の点で10〜30nmであることがより好ましい。また、分散溶剤として好適な有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で、又は2種類以上混合して使用することができる。
【0057】
前記(メタ)アクリロイルオキシ基、フッ素基含有シランカップリング剤として好ましい化合物は、下記の化学式(6)又は(7)に示す化合物である。
(Z3−R1gSi(OR24-g ・・・(6)
(CF3−(CF2)n−CH2CH2jSi(OR3)4-j ・・・(7)
ここで、Z3は(メタ)アクリロイルオキシ基を示し、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R3は水素原子、メチル基又はエチル基であり、nは0〜10の整数である。
【0058】
前記(メタ)アクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤としては、例えば、γ−メタアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。前記フッ素基含有シランカップリング剤としては、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0059】
前記(メタ)アクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤とフッ素基含有シランカップリング剤の配合割合は、(メタ)アクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤100モルに対して、フッ素基含有シランカップリング剤が5〜20モルであることが望ましい。この配合量が5モル未満の場合、変性コロイダルシリカとフッ素樹脂との相溶性が悪くなり、20モルを越える場合、変性コロイダルシリカの粘度が高くなり過ぎるので好ましくない。また、前記特定シランカップリング剤とコロイダルシリカの配合割合は、コロイダルシリカの加水分解反応点に対して、シランカップリング剤が等モル量であることが望ましい。変性コロイダルシリカの製造方法としては、前記特定シランカップリング剤とコロイダルシリカとを混合し、この混合物に水を加えて、通常の加水分解及び縮合反応を行う。加水分解及び縮合反応させるための操作としては、常圧下で3〜7時間にわたり撹拌還流を行う。
【0060】
含フッ素樹脂硬化被膜は、A成分として含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して、B成分として変性コロイダルシリカを5〜50質量部含む含フッ素硬化性塗液を硬化させたものが好ましく、B成分の変性コロイダルシリカを10〜25質量部含む塗液を硬化させたものがより好ましい。変性コロイダルシリカの割合が、50質量部を越える場合には、重合硬化した際の屈折率が上昇し、また5質量部未満の場合には、硬化後の表面強度が低下するため、ペン入力に対する耐久性を有する反射防止層25が形成しにくくなるので好ましくない。
【0061】
前記特定の含フッ素硬化性塗液において、塗液の粘度調整や塗布後の表面レベリング性向上のために、反応を阻害しないかぎり、溶媒を含有してもよい。該溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒等が挙げられる。
【0062】
前記の含フッ素硬化性塗液において、塗膜の摩耗性をより向上させるために、ポリシロキサン系添加剤を添加しても良い。ポリシロキサン系添加剤としては、前記軟質樹脂層19を形成するための添加剤として挙げた化合物が用いられる。中でも、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが好ましく、市販品としては「BYK−306」、「BYK330」、「BYK−341」、「BYK−344」、「BYK−307」、「BYK−333」(ビックケミー社製)、「VXL4930」(ヴィアノヴァレジンズ社製)が挙げられる。前記ポリシロキサン系添加剤の配合割合は、塗液の固形分100質量部に対して、添加剤が好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜2質量部である。この添加剤の配合割合が、5質量部を越える場合には、重合硬化した際に屈折率が上昇し、0.1質量部未満の場合には、添加剤の効果が十分に得られない。
【0063】
前記含フッ素硬化性塗液において、必要に応じて活性エネルギー線硬化性の他の硬化性成分を配合することができる。具体的には、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。これら他の硬化性成分は使用に際しては単独又は混合物として用いることができる。他の硬化性成分の配合割合は、前記含フッ素硬化性塗液の固形分100質量部に対して、他の硬化性成分が好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。この配合割合が、50質量部を越える場合には、重合硬化した際に屈折率が上昇し、所望の反射防止層(含フッ素樹脂硬化被膜)が形成されないので好ましくない。
【0064】
また必要に応じて、防汚性効果を更に高めた含フッ素樹脂硬化被膜を得る場合には、下記の化学式(8)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含フッ素硬化性塗液中に添加することが好ましい。これは、末端にトリフルオロメチル基(CF3−)をもつ炭素数10のフルオロアルキル基を有しており、この含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは少量でもトリフルオロメチル基が表面に有効に配向される。従って、得られる含フッ素硬化性塗膜は、防汚性、低屈折率化等の特性を発揮することができる。これに対し、炭素数9以下のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、末端のトリフルオロメチル基が表面に有効に配向されない。炭素数11以上のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、製造や入手が困難である。つまり、炭素数10のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルのみが特異的な機能を発揮できるのである。
【0065】
【化6】

化学式(8)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、1−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン及び1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシ4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン等が挙げられる。
【0066】
前記化学式(8)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、含フッ素硬化性塗液中の全固形分に対して0.5〜30質量%が好ましい。この含有量が0.5質量%未満の場合には含フッ素樹脂硬化被膜表面の防汚性が低下し、30質量%を越える場合には透明かつ均一で良好な含フッ素樹脂硬化被膜を得ることが困難となる傾向にある。含フッ素樹脂硬化被膜は、含フッ素硬化性塗液を重合硬化して得られるものであって、屈折率は1.5以下が好ましく、1.45以下が特に好ましい。膜厚は50〜200nmが好ましく、70〜150nmが特に好ましい。この膜厚が50nm未満又は200nmを越える場合には、反射防止効果が低下する。
【0067】
ペン入力装置用表面材23は、基材16上に軟質樹脂層19を設け、軟質樹脂層19と含フッ素樹脂硬化被膜からなる反射防止層25との間に少なくとも1層の他の層を設けたものであっても良い。他の層としては、反射防止効果を高めるために、高屈折率材料の層を設けるのが良い。高屈折率材料の層は、屈折率が1.55以上のものが好ましく、その膜厚は50〜500nmであることが好ましい。
【0068】
高屈折率を有する材料は特に限定されるものではなく、無機材料又は有機材料を用いることができる。無機材料として、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化シラン、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化インジウム錫(以後、ITOと略記する。)等の微粒子が挙げられる。特に導電性や帯電防止能の観点では、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム錫が好ましく、屈折率の点では酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムが好ましい。
【0069】
また、有機材料としては例えば、屈折率が1.55以上であるような重合性単量体を含む組成物を重合硬化したもの等を用いることができる。無機材料の微粒子と有機材料とを含む場合には、屈折率が1.55以上であるような重合性単量体のみならず、それ以外の重合性単量体及びこれらの重合体を含む組成物をウェットコーティング時のバインダーとして用いることができる。無機材料の微粒子の平均粒径は層の厚みを大きく越えないことが好ましく、具体的には0.03〜0.5μmであることが好ましく、0.08〜0.12μmであることがより好ましい。平均粒径が大きくなると、散乱が生じる等、高屈折率層の光学性能が低下する傾向にある。尚、必要に応じて微粒子表面を各種カップリング剤等により修飾することができる。各種カップリング剤としては例えば、有機置換された珪素化合物や、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモン等の金属アルコキシドや、有機酸塩等が挙げられる。
【0070】
前記含フッ素樹脂硬化被膜からなる反射防止層25及び前記高屈折率材料の層は、軟質樹脂層19上に1層ずつ設けても良いが、それぞれ2層以上設けても良い。2層以上設ける場合、反射防止層25と高屈折率材料の層とを交互に形成し、最外層には反射防止層25を設ける。2層以上の層を設ける場合、反射防止層25及び高屈折率材料のそれぞれの層は、同一の材料からなるものであっても、異なる材料からなるものであっても良い。また、他の層として、高屈折率材料の層のほかに、中屈折率材料(屈折率1.50〜1.55)の層を1層以上設けることもできる。
【0071】
ペン入力装置用表面材23は、優れた筆記感を有しているだけではなく、反射防止処理がされているため、タブレットPC、PDA(Personal Digital Assistant)、電子辞書、ゲーム機、携帯電話、電子ペーパー等に代表されるペン入力デバイスの表面に貼り合わせること等によって、背景からくる蛍光灯等の映り込みを少なくすることができ、防眩性にも優れている。そのため、視認性が著しく向上して、目の疲れを軽減すること等ができる。
【0072】
軟質樹脂層形成用の硬化性組成物を樹脂フィルム上に塗布する方法及び含フッ素硬化性塗液を軟質樹脂層19上に塗布する方法としては、ロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、ハケ塗り法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、グラビアコート法、カーテンフローコート法、リバースコート法、キスコート法、コンマコート法等公知のいかなる方法でもよい。塗布に際しては、必要に応じて層間密着性を向上させるために、あらかじめコロナ放電等の何らかの前処理を施してもよい。
【0073】
上記のようにして樹脂フィルムに塗布され、乾燥された硬化性組成物を硬化する方法、又は軟質樹脂層19上に塗布され、乾燥された含フッ素硬化性塗液を硬化する方法は特に限定されず、公知の方法、例えば紫外線や光等の活性エネルギー線照射や熱による硬化で行うことができる。硬化性組成物及び含フッ素硬化性塗液を紫外線照射により硬化する際に使用する光重合開始剤としては、紫外線照射により重合開始能を有するものであれば良い。具体的には、例えば1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾイン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系開始剤;ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤等が挙げられる。これらは単独もしくは混合物として用いることができる。また、重合開始剤の種類によっては、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等の三級アミンを添加する等の反応促進剤を併用する方法でも良い。
【0074】
硬化性組成物の重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物中の硬化性成分100質量部に対し、0.01〜20質量部であることが望ましい。この配合割合が0.01質量部未満の場合には、硬化性組成物が完全に硬化せず、未硬化となるため好ましくない。また、20質量部を越える場合には、軟質樹脂層19の自己修復性機能が不十分となり、所望の軟質樹脂層19を形成できないため好ましくない。含フッ素硬化性塗液の重合開始剤の配合割合は、含フッ素硬化性塗液中の硬化性成分100質量部に対し、0.01〜20質量部であることが望ましい。重合開始剤の配合割合が0.01質量部未満の場合には硬化後の表面硬度が低下し、20質量部を越える場合には、重合硬化した際に屈折率が上昇し、所望の含フッ素樹脂硬化被膜が形成できないので好ましくない。
【0075】
上記の硬化に用いられるエネルギー線源としては、例えば、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、窒素レーザー、電子線加速装置、放射性元素等の線源が使用される。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算光量として、50〜5000mJ/cm2が好ましい。照射量が、50mJ/cm2未満の場合には、硬化が不十分となるため、軟質樹脂層19又は反射防止層25の耐摩耗性や硬度が低下する。一方、5000mJ/cm2を越える場合には、軟質樹脂層19又は反射防止層25が着色して透明性が低下する。
【0076】
また、硬化性組成物又は含フッ素硬化性塗液を加熱により硬化させる場合、従来公知の熱重合開始剤を硬化性組成物又は含フッ素硬化性塗液中に添加した後に硬化させる。熱重合開始剤の具体例としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。これら熱重合開始剤は1種類で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。硬化性組成物又は含フッ素硬化性塗液中には、性能を損なわない範囲で、必要に応じて、顔料、充填剤、界面活性剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を添加することができる。これらは1種類で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
【0077】
また、前記のように、樹脂フィルムの機能層が形成されている面と反対の面に粘着剤層20又は導電性層を形成することができる。粘着剤層20を形成した場合、ペン入力タッチパネル及びペン入力装置を作製することが容易になる。このような粘着剤層20としては、例えばアクリル系粘着剤やゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を用いることができるが、透明性の点ではアクリル系粘着剤を用いるのが好ましく、また再剥離性の点ではシリコーン系粘着剤を用いるのが好ましい。これら粘着剤中には、粘着性ポリマー成分のほか、可塑剤、粘着付与成分等を含ませることができるが、透明性を損なわないように使用する方がより望ましい。アクリル系粘着剤の主成分である粘着性ポリマーとしては、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル等の炭素数が1〜10のアルキル基のアルコールと(メタ)アクリル酸とのアルキルエステルと、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等の官能基含有不飽和単量体との共重合体が好ましく用いられる。ゴム系粘着剤の主成分である粘着性ポリマ―としては、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレン系ブロツク共重合体、天然ゴム等が好ましく用いられる。これらの成分による粘着剤層20を5〜100μmの厚みで形成するのが好ましい。
【0078】
また、導電性層を形成した場合も同様に、ペン入力タッチパネル12及びペン入力装置10を作製することが容易になる。この導電性層としては、酸化錫(SnO2等)、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛(ZnO)、酸化カドミウム、インジウム錫酸化物(ITO)等の金属酸化物や、金、銀、銅、アルミニウム、錫、ニッケル等の金属膜が挙げられる。これらの中では、酸化亜鉛、酸化錫等の単一金属からなる酸化物が化学量論比による制御が容易で高性能な薄膜が得られる点で好ましい。前記導電性層の積層方法は特に限定されず、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、低圧プラズマ、塗工法、及び常圧プラズマ化学蒸着(CVD)法等が挙げられる。前記導電性層の厚みは、導電性能や、赤外線及び電磁波の低減性能が発現し、かつ透明性が保たれる厚み、即ち、可視光透過率が60%以上であるためには、膜厚は30〜200nmであることが好ましい。
【0079】
さて、入力ペン21を使用してペン入力装置10のペン入力タッチパネル12に入力操作を行う場合には、入力ペン21を手に持ってそのペン先を表面材23を構成する反射防止層25の表面に当てて滑らせ、文字を描くようにして入力操作を行う。このとき、入力ペン21の荷重により反射防止層25の押圧された部分がへこむ。表面材23を構成する反射防止層25が含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤及びフッ素基含有シランカップリング剤の少なくとも一方によって変性されたコロイダルシリカとを含む含フッ素硬化性塗液を重合硬化してなる含フッ素樹脂硬化被膜で構成されている。更に、表面材23を構成する軟質樹脂層19は、長鎖部分を含む(メタ)アクリロイル基含有化合物の硬化物で構成されている。このため、柔軟性や弾力性が付与される結果、反射防止層25のへこんだ部分が元に戻る復元時間が0.2〜20秒の範囲となる。従って、入力ペン21の操作に当たって、すべり性が良く、操作感が良好となる。
【0080】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態のペン入力装置用表面材23では、基材16が樹脂フィルムより構成され、その上には軟質樹脂層19が設けられ、更にその上に設けられる反射防止層25が含フッ素樹脂硬化被膜より構成されている。このため、基材16が従来のガラスである場合に比べ、基材16に対する軟質樹脂層19の密着性が良く、反射防止層25がその軟質樹脂層19上に安定して保持される。従って、反射防止層25の表面の反射防止性が良く、視認性を維持することができる。
【0081】
また、表面材21は反射防止層25の表面を、入力ペン21を用いて、20℃、50%相対湿度の雰囲気下で荷重200g、速度10cm/秒の速度で移動させたときに発生するへこみが0.2〜20秒の時間内に復元するように構成されている。このため、へこみの復元時間が適切な範囲に設定され、良好な弾力性を有している。従って、反射防止層25の表面におけるへこみの復元性が良好で筆記感に優れている。
【0082】
・ 軟質樹脂層19は、前記化学式(1)、(2)又は(3)に示す繰り返し単位を10〜70質量%含む硬化性組成物を基材16上に塗布、硬化して形成されるものである。これらの繰り返し単位は軟質樹脂層19に柔軟性や弾力性を付与することができる。このため、反射防止層25の表面におけるへこみの復元性がより良好になり、筆記感を一層向上させることができる。
【0083】
・ その上、反射防止層25が特定の含フッ素樹脂硬化被膜で構成されている。即ち、含フッ素樹脂硬化被膜は、A成分として含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルと、B成分としてフッ素基含有シランカップリング剤等で変性されたコロイダルシリカとを含む含フッ素硬化性塗液を、重合硬化して得られるものである。このため、含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルと変性コロイダルシリカとが相乗的に作用して反射防止と反射防止層25の表面強度等の向上を図ることができる。
【0084】
・ 機能層の特にマルテンス硬さを0.5〜50N/mm2とし、弾性エネルギーを0.1〜20nJとしてことにより、ペン入力装置用表面材の耐久性を向上させることができる。更に、基材16として樹脂フィルムを用いたことにより、軟質樹脂層19との間の密着性を向上させることができると共に、連続生産が可能であり、生産性を向上させることができる。
【実施例】
【0085】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
各例における部及び%は特に断りのない限り、部及び%を表し、またペン入力装置用表面材の特性について、下記の方法で測定した。
(1)へこみ復元時間(復元性)
20℃、50%相対湿度の雰囲気下で、入力ペンを用いて機能層の表面を荷重200g、10cm/秒の速度で移動させたときに発生する機能層のへこみが復元する時間を目視で評価した。移動させた入力ペンのペン先を表面材表面から離したときから表面材表面に発生したへこみが復元するまでの時間を評価した。
(2)マルテンス硬さ及び弾性エネルギー
20℃、50%相対湿度の雰囲気下でペン入力装置用表面材の機能層上を超微小硬さ試験装置((株)フィッシャー・インストルメンツ社製、商品名:フィッシャースコープH−100)を用いて、最大荷重2mN、第1クリープ:5秒、第2クリープ:5秒 の条件で測定した。
(3)静摩擦係数及び動摩擦係数
20℃、50%相対湿度の雰囲気下に入力ペン(パーム(palm)社製、商品名:スタイラス)を用いてペン入力装置用表面材の機能層上を荷重200g、10cm/秒の速度で移動させたときにおける動摩擦係数(μs、単位なし)及び静摩擦係数(μk、単位なし)を表面性試験機器(新東科学(株)製、商品名:トライボギア、TYPE:14DR)により測定した。
(4)へこみ感及びすべり感
入力ペンを用いて機能層上を筆記した際におけるへこみ感とすべり感の2つの観点で10人が評価した。10人中6人が良好と判断した場合を○、10人中3〜5人が良好と判断した場合を△及び10人中2人以下が良好判断した場合を×として分類評価した。
(5)全光線透過率及びヘイズ値
直読ヘイズメーター(東洋精機製作所社製、商品名:直読ヘイズメーター(No.206))を使用し、光学特性としての全光線透過率(%)及びヘイズ値(%)を測定した。
(6)分光反射率の測定
測定面の裏面反射を除くため、裏面をサンドペーパーで粗し、5°正反射測定装置のついた分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:U−best50〕を用いて分光反射率を測定し、550nmにおける反射率(%)を読み取った。
(7)総視認性
総視認性には、全光線透過率とヘイズ値だけではなく、反射防止効果やペン入力時のへこみ残りによる視認性阻害も考慮して、次の4段階の基準で目視で評価した。
【0086】
◎:反射防止効果が非常に良好であり、へこみ残りによる阻害が無く、透過性に優れる。○:反射防止効果を有し、へこみ残りによる阻害が無く、透過性に優れる。△:反射防止効果がほとんど無く、へこみ残りによる視認性阻害が無く、透過性に優れる。又は反射防止効果を有し、透過性に優れるがへこみ残りによる視認性阻害が起きる。×:反射防止効果が無く、へこみ残りによる視認性阻害が無く、透過性に優れる。
(8)耐久性
消しゴム磨耗試験機(本光製作所製)の先端にペーパークロス(東レ(株)社製、商品名:トレシー)を取り付け、300gの荷重をかけて、1000往復摩擦したときの表面を、目視で次の基準にて評価した。
【0087】
◎:全く傷がつかない、○:ほとんど傷がつかない、△:少し傷がつく、×:著しい傷がつく、又は剥がれる。
(9)密着性
碁盤目剥離試験をJIS K5600に基づいて評価した。
〔製造例1、変性コロイダルシリカ(1)の製造〕
フラスコにコロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、商品名:XBA−ST、キシレン/ブタノール混合溶媒に分散)500部、γ―アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM5103)85部、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM7803)20部及び蒸留水35部を混合した。その後、5時間加熱還流(反応温度80℃)を行い、加水分解反応及び縮合反応を行った。この操作により変性コロイダルシリカ(1)を得た。
〔製造例2、変性コロイダルシリカ(2)の製造〕
フラスコにコロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、商品名:XBA−ST、キシレン/ブタノール混合溶媒に分散)500部、γ―アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM5103)85部及び蒸留水35部を混合した。その後、5時間加熱還流(反応温度80℃)を行い、加水分解反応及び縮合反応を行った。この操作により変性コロイダルシリカ(2)を得た。
〔製造例3、含フッ素硬化性塗液(1)の製造〕
1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカン(共栄社化学(株)製、商品名:16−FDA、以下16FDAと略す)100部、製造例1で調製した変性コロイダルシリカ(1)を25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルーケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製、商品名「イルガキュア184」、以下イルガキュアと略す)5部及びイソプロピルアルコール3000部を混合し、含フッ素硬化性塗液(1)を調製した。
〔製造例4、含フッ素硬化性塗液(2)の製造〕
16FDA100部、製造例2で調製した変性コロイダルシリカ(2)を25部、光重合開始剤としてイルガキュア5部、ポリシロキサン系化合物(ビックケミー(Byk−Chemie)製、商品名:BYK−306、以下BYKと略す)2部及びイソプロピルアルコール3000部を混合し、含フッ素硬化性塗液(2)を調製した。
〔製造例5、含フッ素硬化性塗液(3)の製造〕
16FDA100部、光重合開始剤としてイルガキュア5部及びイソプロピルアルコール3000部を混合し、含フッ素硬化性塗液(3)を調製した。
〔製造例6、含フッ素硬化性塗液(4)の製造〕
16FDA100部、製造例1で調製した変性コロイダルシリカ(1)を80部、光重合開始剤としてイルガキュア5部及びイソプロピルアルコール3000部を混合し、含フッ素硬化性塗液(4)を調製した。
〔製造例7、高屈折率層塗液の製造〕
30%酸化亜鉛微粒子トルエン分散液(住友大阪セメント(株)社製、商品名:ZN−300)240部、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学(株)社製、商品名:NKエステルA−TMPT)28部、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製、商品名:イルガキュア1173)1部及び溶媒としてトルエン400部を混合し、硬化性塗液を調製した。
(実施例1)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートD−170N)20.5部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFA5、カプロラクトン単位の繰り返し数=5)79.5部からなるウレタンアクリレート80部と、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−5400)5部と、イルガキュア3部と、BYK12部と、メチルエチルケトン100部とを混合した軟質樹脂層形成用樹脂液を調製した。
【0088】
それをロールコーターにて厚さ100μmのPETフィルム上に、乾燥膜厚が30μmになるように均一に塗布した。そして、80℃で60秒間乾燥後、120W高圧水銀灯(日本電池(株)製)により紫外線を照射(積算光量400mJ/cm2)し、硬化させて軟質樹脂層を形成した。
【0089】
次に、製造例3で調製した塗液を軟質樹脂層上に、ロールコート法にて乾燥膜厚が0.1μmになるように均一に塗布し、60℃で20秒間乾燥後、窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯(日本電池(株)社製)により紫外線を照射(積算光量400mJ/cm2)し、硬化させて反射防止層を形成した。更に、PETフィルムの機能層面と反対側の面に、アクリル系粘着剤層を形成し、ペン入力装置用表面材を作製した。このペン入力装置用表面材をタッチパネル付液晶ディスプレイの前面部に貼り合わせ、ペン入力装置を作製した。
【0090】
ペン入力装置用表面材について、全光線透過率、ヘイズ値及び分光反射率の評価を行った。また、ペン入力装置を用いて、へこみ復元時間、マルテンス硬さ、弾性エネルギー、静摩擦係数、動摩擦係数、へこみ感、すべり感及び総視認性、耐久性並びに密着性についての評価を行った。その結果を表1に示す。
(実施例2)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートD−170N)20.5部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFA5、カプロラクトン単位の繰り返し数=5)79.5部からなるウレタンアクリレート90部と、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−5400)7部と、イルガキュア3部と、メチルエチルケトン100部とを混合した軟質樹脂層形成用樹脂液を調製した。
【0091】
この軟質樹脂層形成用樹脂液を用い、アクリル系粘着剤層に代えてシリコーン系粘着剤層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表1に示す。
(実施例3)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートD−170N)20.5部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFA5、カプロラクトン単位の繰り返し数=5)79.5部からなるウレタンアクリレート90部と、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:HPA)6.8部と、イルガキュア3部と、BYK0.2部と、メチルエチルケトン100部とを混合した軟質樹脂層形成用樹脂液を調製した。
【0092】
この軟質樹脂層形成用樹脂液を用い、その他は実施例1と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表1に示す。
(実施例4)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートD−170N)20.5部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFA5、カプロラクトン単位の繰り返し数=5)79.5部からなるウレタンアクリレート90部と、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−5400)6.8部と、イルガキュア3部と、BYK0.2部と、メチルエチルケトン100部とを混合した軟質樹脂層形成用樹脂液を調製した。
【0093】
この軟質樹脂層形成用樹脂液を用い、反射防止層として製造例4で調製した塗液を用いたこと以外は実施例2と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表1に示す。
(実施例5)
反射防止層として製造例5で調製した塗液を用い、シリコーン系粘着剤層に代えてアクリル系粘着剤層を用いたこと以外は実施例4と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表1に示す。
(実施例6)
反射防止層として製造例6で調製した塗液を用いたこと以外は実施例5と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表1に示す。
(実施例7)
ヘキサメチレンジイソシアネート(三井武田ケミカル(株)社製、商品名:タケネート700)2.1部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)社製、商品名:プラクセルFA10L、カプロラクトン単位の繰り返し数=10)97.9部からなるウレタンアクリレート90部と、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−5400)6.8部と、イルガキュア3部と、BYK0.2部と、メチルエチルケトン100部とを混合した軟質樹脂層形成用樹脂液を調製した。
【0094】
この軟質樹脂層形成用樹脂液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表1に示す。
(実施例8)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートD−170N)4.1部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFA10L、カプロラクトン単位の繰り返し数=10)95.9部からなるウレタンアクリレート90部と、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−5400)6.8部と、イルガキュア3部と、BYK0.2部と、メチルエチルケトン100部とを混合した軟質樹脂層形成用樹脂液を調製した。
【0095】
この軟質樹脂層形成用樹脂液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表1に示す。
(実施例9)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートD−170N)16.2部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)社製、商品名:プラクセルFA3、カプロラクトン単位の繰り返し数=3)83.8部からなるウレタンアクリレート48.4部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートD−170N)20.5部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFA5、カプロラクトン単位の繰り返し数=5)79.5部からなるウレタンアクリレート48.4部と、イルガキュア3部と、BYK0.2部と、メチルエチルケトン100部とを混合した軟質樹脂層形成用樹脂液を調製した。
【0096】
この軟質樹脂層形成用樹脂液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表2に示す。
(実施例10)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株社製、商品名:タケネートD−170N)27.9部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFA3、カプロラクトン単位の繰り返し数=3)72.1部からなるウレタンアクリレート90部と、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−5400)6.8部と、イルガキュア3部と、BYK0.2部と、メチルエチルケトン100部とを混合した軟質樹脂層形成用樹脂液を調製した。
【0097】
この軟質樹脂層形成用樹脂液を用い、アクリル系粘着剤層に代えてシリコーン系粘着剤層を形成したこと以外は実施例1と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表2に示す。
(実施例11)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートD−170N)34部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFA2、カプロラクトン単位の繰り返し数=2)66.0部からなるウレタンアクリレート90部と、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−5400)6.8部と、イルガキュア3部と、BYK0.2部と、メチルエチルケトン100部とを混合した軟質樹脂層形成用樹脂液を調製した。
【0098】
この軟質樹脂層形成用樹脂液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表2に示す。
(実施例12)
製造例7で調製した塗液を軟質樹脂層の上層にロールコート法にて、乾燥膜厚が0.1μmになるように均一に塗布し、60℃で20秒間乾燥後、窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯(日本電池(株)製)により紫外線を照射(積算光量400mJ/cm2)し、硬化させて高屈折率層を得た。この高屈折率層を、軟質樹脂層と含フッ素樹脂硬化被膜からなる反射防止層との中間層とし、アクリル系粘着剤層に代えてシリコーン系粘着剤層を形成したこと以外は実施例3と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表2に示す。
(実施例13)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートD−170N)4.1部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)社製、商品名:プラクセルFA10L)95.9部からなるウレタンアクリレート90部と、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−5400)2部と、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名:HPA)4.8部と、イルガキュア3部と、BYK0.2部と、メチルエチルケトン100部とを混合した軟質樹脂層形成用樹脂液を調製した。
【0099】
この軟質樹脂層形成用樹脂液を用いたこと以外は実施例12と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表2に示す。
(実施例14)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートD−170N)16.2部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFA3、カプロラクトン単位の繰り返し数=3)83.8部からなるウレタンアクリレート48.4部と、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)社製、商品名:タケネートD−170N)20.5部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)社製、商品名:プラクセルFA5、カプロラクトン単位の繰り返し数=5)79.5部からなるウレタンアクリレート48.4部と、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−5400)6.8部と、イルガキュア3部と、BYK0.2部と、メチルエチルケトン100部とを配合した軟質樹脂層形成用樹脂液を調製した。
【0100】
この軟質樹脂層形成用樹脂液を用いたこと以外は実施例12と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表2に示す。
(比較例1)
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性タイプ(三井武田ケミカル(株)製、商品名:タケネートD−170N)20.5部及びポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFA5)79.5部からなるウレタンアクリレート90部と、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M−5400)6.8部と、イルガキュア3部と、BYK0.2部と、メチルエチルケトン100部とを混合した軟質樹脂層形成用樹脂液を調製した。
【0101】
この軟質樹脂層形成用樹脂液を用いて軟質樹脂層を形成し、その上に反射防止層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、ペン入力装置用表面材及びペン入力装置を作製した。その評価結果を表2に示す。
(比較例2)
製造例3で調製した塗液を軟質樹脂層上ではなく、厚さ100μmのPETフィルム上にロールコート法にて乾燥膜厚が0.1μmになるように均一に塗布し、60℃で20秒間乾燥後、窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯(日本電池(株)製)により紫外線を照射(積算光量400mJ/cm2)し、硬化させて反射防止層を形成した。更に、PETフィルムの機能層面と反対側の面に、アクリル系粘着剤層を形成し、ペン入力装置用表面材を作製した。
【0102】
このペン入力装置用表面材をタッチパネル付液晶ディスプレイの前面部に貼り合わせ、ペン入力装置を作製した。その評価結果を表2に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

表1及び表2に示したように、実施例1〜14では、分光反射率を含む視認性が良好であると共に、復元時間が0.4〜18秒で良好であり、へこみ感及びすべり感を含む筆記感に優れている。それに対し、軟質樹脂層上に反射防止層を形成しなかった場合(比較例1)には、分光反射率が高く、視認性が不良であった。更に、基材上に軟質樹脂層を設けることなく、直接反射防止層を設けた場合(比較例2)には、復元時間が速く、へこみ感及びすべり感による筆記感が不良であった。
【0105】
尚、前記実施形態を、次のように変更して実施することも可能である。
・ 反射防止層25を形成する含フッ素硬化性塗液又は軟質樹脂層19を形成する硬化性組成物に、熱可塑性エラストマー等の弾性材料を配合し、反射防止層25又は軟質樹脂層19の復元性を向上させるように構成することもできる。
【0106】
・ 軟質樹脂層19を形成する硬化性組成物に、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤を配合し、(メタ)アクリロイル基含有化合物とポリシロキサン系化合物とを結合させるように構成してもよい。
【0107】
・ 入力ペン21のペン先の形状を、半楕円状、異形曲面状などの形状にしてもよい。
更に、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1) 20℃、50%相対湿度の雰囲気下で、超微小硬さ試験装置により測定した機能層のマルテンス硬さが0.5〜50N/mm2の範囲内であり、かつ弾性エネルギーが0.1〜20nJの範囲内である請求項1に記載のペン入力装置用表面材。この場合、ペン入力装置用表面材の筆記感、自己修復性及び耐久性を向上させることができる。
【0108】
(2) ペン入力装置用表面材の全光線透過率が80%以上であり、かつヘイズ値が5%以下である請求項1又は上記技術的思想(1)に記載のペン入力装置用表面材。この場合、ペン入力装置用表面材の視認性を向上させることができる。
【0109】
(3) 20℃、50%相対湿度の雰囲気下で、入力ペンを用いて、反射防止層の表面を荷重200g、速度10cm/秒で移動させたときの動摩擦係数が0.02〜0.6であり、かつ静摩擦係数が0.3〜2である請求項1技術的思想(1)又は技術的思想(2)に記載のペン入力装置用表面材。この場合、反射防止層表面におけるすべり感を良好にし、筆記感を向上させることができる。
【0110】
(4) 軟質樹脂層が1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートと、ポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを主成分として含有する硬化性組成物を塗布、硬化して形成されるものである請求項1、請求項2、技術的思想(1)、技術的思想(2)又は技術的思想(3)に記載のペン入力装置用表面材。この場合、軟質樹脂層の自己修復性を向上させることができる。
【0111】
(5) 軟質樹脂層が、カルボキシル基及び水酸基の少なくとも一方を有する化合物を0.01〜30%の範囲内で含有する硬化性組成物を塗布、硬化して形成されるものである請求項1から請求項3及び技術的思想(1)から技術的思想(4)のいずれか1項に記載のペン入力装置用表面材。この場合、基材に対する軟質樹脂層の密着性を向上させることができる。
【0112】
(6) 反射防止層が、ポリシロキサン系化合物を0.01〜10%の範囲内で含有する硬化性組成物を塗布、硬化して形成されるものである請求項1から請求項3及び技術的思想(1)から技術的思想(5)のいずれか1項に記載のペン入力装置用表面材。この場合、反射防止層の表面平滑性に優れ、すべり感を良好にし、筆記感を向上させることができる。
【0113】
(7) 反射防止層が、A成分として含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル100部、B成分として(メタ)アクリロイルオキシ基及びフッ素基含有シランカップリング剤の少なくとも一方によって変性されたコロイダルシリカ5〜50質量部含むことを特徴とする技術的思想(6)に記載のペン入力装置用表面材。この場合、反射防止性及び耐久性が優れている。
【0114】
(8) タッチパネル本体上に、請求項1から請求項4及び技術的思想(1)から技術的思想(7)のいずれか1項に記載のペン入力装置用表面材が設けられて構成されていることを特徴とするペン入力タッチパネル。この場合、視認性が維持され、筆記感が良いため、入力操作を繰り返し行なっても疲労感がなく快適である。
【0115】
(9) 技術的思想(8)に記載のペン入力タッチパネルがディスプレイ上に設けられて構成されていることを特徴とするペン入力装置。この場合、視認性が良く、筆記感に優れているため、入力操作を繰り返し行なっても疲労感がなく快適である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】ペン入力装置用表面材を示す断面図。
【図2】裏面に粘着剤層を有するペン入力装置用表面材を示す断面図。
【図3】(a)及び(b)は抵抗膜方式のペン入力タッチパネルを模式的に示す断面図。
【図4】電磁誘導方式のペン入力タッチパネルを示す概略断面図。
【図5】ペン入力装置の概念を示す断面図。
【符号の説明】
【0117】
16…基材、19…軟質樹脂層、21…入力ペン、23…ペン入力装置用表面材、25…反射防止層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムよりなる基材上に自己修復性を有する軟質樹脂層を設け、その上に含フッ素樹脂硬化被膜よりなる反射防止層が形成されたペン入力装置用表面材において、
反射防止層の表面を、入力ペンを用いて、20℃、50%相対湿度の雰囲気下で荷重200g、速度10cm/秒の速度で移動させたときに発生するへこみが0.2〜20秒の時間内に復元するように構成されていることを特徴とするペン入力装置用表面材。
【請求項2】
軟質樹脂層が下記の化学式(1)、(2)又は(3)に示す繰り返し単位を10〜70質量%含む硬化性組成物を基材上に塗布、硬化して形成されるものである請求項1に記載のペン入力装置用表面材。
−O−〔(CH2j−O〕k− ・・・(1)
但し、j=2〜4及びk=2〜30である。
【化1】

但し、m=3〜12及びn=1〜15である。
−(CH2p− ・・・(3)
但し、p=10〜24である。
【請求項3】
反射防止層が、A成分として含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルと、B成分として(メタ)アクリロイルオキシ基含有シランカップリング剤及びフッ素基含有シランカップリング剤の少なくとも一方によって変性されたコロイダルシリカとを含む含フッ素硬化性塗液を、重合硬化して得られる含フッ素樹脂硬化被膜である請求項1又は請求項2に記載のペン入力装置用表面材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−119772(P2006−119772A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304951(P2004−304951)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】