説明

ペン型携帯用電話機

【課題】使用環境を選ばずに、表示媒体に表示された電話番号を低消費電力で確実に読み取り可能にして、使い勝手を良くする。
【解決手段】ペンシル形状の電話機本体10を有するペン型携帯用電話機Tにおいて、電話機本体10の先端側に設けられ、表示媒体100に向けて近赤外線を照射する近赤外線照射部44と、近赤外線照射部44に近接して設けられ、近赤外線照射部44から照射されて表示媒体100表面で反射した近赤外線を受光し、受光した近赤外線による像を画像信号に変換する近赤外線イメージセンサー46と、電話機本体10に内蔵され、近赤外線イメージセンサー46によって得られた画像信号が入力され、画像信号に基づいて表示媒体100に表示された文字を認識する文字データベース及び画像認識部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン型携帯用電話機に関し、特に電話番号を入力する際の操作性及び利便性の向上対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ペンシル形状を有する小型で軽量な携帯性に優れたペン型携帯用電話機が提案されている。ペン型携帯用電話機では、小型化に伴って、電話番号を入力する0〜9の数字キーやその他のファンクションキーの配置が困難となる。さりとて、これらのキー自体を小さくすると、キーが押し難くなって操作性が低下する。
【0003】
そこで、電話機本体に設けた文字認識手段によって使用者の筆記動作から数字を認識させることで電話番号などを入力可能なペン型携帯用電話機が種々検討されている。例えば、特許文献1に開示のペン型携帯用電話機では、電話機本体の先端側に設けた加速度センサーにより、使用者の筆記動作による軌跡を検出し、その検出結果に基づいて入力すべき数字を認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−106595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなペン型携帯用電話機は、使用者の筆記動作により電話番号が入力可能であるので、数字キーをなくして良好な小型化を図ることができる一方で、筆記動作に基づいて電話番号を1つずつ入力するため番号入力に比較的時間を要し、忙しい場合や使用者が手の不自由な場合に使い勝手が悪い。
【0006】
そこで、使い勝手を良くすべく、名刺などの表示媒体に表示された電話番号に電話をかける際には、その電話番号を光学読取手段を用いて読み取ることでペン型携帯用電話機に入力可能にすることが考えられる。しかし、光学読取手段として一般的なCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーを採用すると、薄暗い場所など使用環境によっては確実な番号認識ができなくなるおそれがある。電話番号が誤って認識されると間違い電話をかける原因となる。さらに、使用環境によって電話番号を確実に読み取れないのでは、結局は筆記動作による番号入力を余儀なくされるため依然として使い勝手が悪く、利便性に欠ける。
【0007】
また、薄暗い場所において、イメージセンサーで読み取る箇所を可視光で照らし、その反射光を利用して番号を確実に読み取るには、可視光に高い照度が要求されるので、バッテリーを著しく消耗してしまい、長時間に亘る使用が要望される携帯用電話機に適さない。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使用環境を選ばずに、表示媒体に表示された電話番号を低消費電力で確実に読み取り可能にして、使い勝手を良くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、近赤外線を用いて表示媒体に表示された文字を読み取るようにした。
【0010】
具体的には、本発明は、ペンシル形状の電話機本体を有するペン型携帯用電話機を対象とし、以下の解決手段を講じたものである。
【0011】
すなわち、第1の発明は、上記電話機本体の先端側に設けられ、表示媒体に向けて近赤外線を照射する近赤外線照射手段と、上記近赤外線照射手段に近接して設けられ、該近赤外線照射手段から照射されて上記表示媒体の表面で反射した近赤外線を受光し、受光した近赤外線による像を画像信号に変換する近赤外線イメージセンサーと、上記電話機本体に内蔵され、上記近赤外線イメージセンサーによって得られた画像信号が入力され、該画像信号に基づいて上記表示媒体に表示された文字を認識する文字認識手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によると、薄暗い場所で表示媒体に表示された電話番号を読み取る際には、近赤外線照射手段から照射された近赤外線の表示媒体表面での反射光を近赤外線イメージセンサーで受光して画像信号に変換し、該画像信号に基づいて文字認識手段により表示媒体に表示された電話番号を認識することで、薄暗い場所でも電話番号を確実に読み取ることが可能である。また、このように近赤外線の反射光を利用して表示媒体に表示された電話番号を読み取る場合には、可視光の反射光を利用する場合に比べて低い照度で済むため、バッテリーの消耗が抑えられる。したがって、使用環境を選ばずに、表示媒体に表示された電話番号を低消費電力で確実に読み取ることが可能になる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明のペン型携帯用電話機において、上記電話機本体の先端側に設けられ、表示媒体に向けて可視光を照射する可視光照射手段と、上記可視光照射手段に近接して設けられ、該可視光照射手段から照射されて上記表示媒体の表面で反射した可視光を受光し、受光した可視光による像を画像信号に変換する可視光イメージセンサーとをさらに備え、上記文字認識手段には、上記可視光イメージセンサーによって得られた画像信号をも入力され、上記文字認識手段は、該画像信号に基づいて上記表示媒体に表示された文字を認識することを特徴とする。
【0014】
上記の構成によると、比較的明るい場所で表示媒体に表示された電話番号を読み取る際には、可視光照射手段により照射された可視光の表示媒体表面での反射光を可視光イメージセンサーで受光して画像信号に変換し、該画像信号に基づいて文字認識手段により表示媒体の電話番号を認識することで、該電話番号を確実に読み取ることが可能である。このように可視光の反射光を利用して表示媒体の電話番号を読み取る場合には、比較的明るい場所での使用なので薄暗い場所で表示媒体の電話番号を読み取る場合に比べて低い照度で済み、バッテリーの消耗が抑えられる。また、可視光は近赤外線よりも波長が短くイメージセンサーで良好に画像信号に変換されるので、近赤外線の反射光を利用して表示媒体の電話番号を読み取る場合に比べて、表示媒体に表示された文字が正確に認識される。そして、近赤外線の反射光を利用した表示媒体の文字認識と、可視光の反射光を利用した表示媒体の文字認識とを、薄暗い場所と比較的明るい場所とで使い分けることによって、表示媒体に表示された電話番号を低消費電力でよりいっそう正確に読み取ることが可能になる。
【0015】
第3の発明は、第1及び第2の発明のいずれか1つのペン型携帯用電話機において、上記電話機本体の筆記動作による先端側の移動軌跡を検出し、該移動軌跡に基づいて筆記文字を認識する筆記文字認識手段をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によると、電話番号を入力する手段として0〜9の数字キーがなくても、筆記文字認識手段によって筆記動作から数字を認識することで電話番号を入力可能であるので、数字キーをなくして小型化を図りながらも良好な操作性を有するペン型携帯用電話機が実現される。
【0017】
第4の発明は、第3の発明のペン型携帯用電話機において、上記電話機本体の先端側には加速度センサーが内蔵され、該加速度センサーによって上記筆記動作による電話機本体の先端側の移動軌跡を検出することを特徴とする。
【0018】
上記の構成によると、第3の発明の作用効果が具体的に奏される。また、例えば、加速度センサーに代えて、電話機本体の先端部にトラックボールを設け、該トラックボールの回転を検出することによって筆記動作による電話機本体の先端部の移動軌跡を検出して、筆記動作から数字を認識することで電話番号を入力する場合には、トラックボールを平坦面上で転がす必要があるため、空中での筆記動作では電話番号を入力できない。これに対して、上記の構成によると、加速度センサーによって筆記動作による電話機本体の先端部の移動軌跡を検出するので、空中での筆記動作でも電話番号を入力することが可能であり、使用環境を選ばず操作性に優れている。
【0019】
第5の発明は、第1〜第4の発明のいずれか1つのペン型携帯用電話機において、上記電話機本体の側面には、入力された電話番号を表示するディスプレイが設けられていることを特徴とする。
【0020】
上記の構成によると、電話機本体側面のディスプレイに表示された番号をチェックすることで文字認識手段の誤認識や使用者による誤入力があったか否かを簡単に確認することが可能であるので、間違い電話が防止される。
【0021】
第6の発明は、第5の発明のペン型携帯用電話機において、上記ディスプレイは、上記電話機本体に固定された下側表示パネルと、該下側表示パネル上にスライド可能に重なる上側表示パネルとで構成され、これら下側表示パネルと上側表示パネルとが重なり合う一画面状態と、該一画面状態から上記上側表示パネルをスライドさせることにより、上記下側及び上側表示パネルの表示面が互いに並んで外部に露出する二画面状態とを切り替え可能に構成されていることを特徴とする。
【0022】
上記の構成によると、2枚の表示パネルが互いに重なり合う一画面状態から、2枚の表示パネルの表示面が互いに並んで外部に露出する二画面状態へと切り替えることで、小型で携帯性に優れたペン型携帯用電話機において、比較的大画面のディスプレイを実現することが可能である。これによって、例えば、当該ペン型携帯用電話機がカメラを備えている場合には、該カメラでの撮影範囲を二画面状態のディスプレイに映すことよって撮影する被写体を捉えやすく、さらに撮影した画像を二画面状態のディスプレイに映すことによって容易に確認できて、利便性が向上する。
【0023】
第7の発明は、第1〜第6の発明のいずれか1つのペン型携帯用電話機において、上記近赤外線照射手段及び近赤外線イメージセンサーは、撮影手段を兼ねていることを特徴とする。
【0024】
上記の構成によると、薄暗い場所や暗闇で、例えば蛍などの被写体を可視光で照らし出さずに良好に撮影することが可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、近赤外線照射手段から照射された近赤外線の表示媒体表面での反射光を近赤外線イメージセンサーで受光して画像信号に変換し、該画像信号に基づいて文字認識手段により表示媒体に表示された電話番号を認識することで、薄暗い場所でも電話番号を確実に読み取ることができるので、使用環境を選ばずに、表示媒体に表示された電話番号を低消費電力で確実に読み取り可能にして、使い勝手を良くできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態に係るペン型携帯用電話機の外観図であり、(a)は放音部22取付け状態を示し、(b)は放音部22取外し状態を示している。
【図2】実施形態に係るペン型携帯用電話機の概略構成を示すブロック図である。
【図3】名刺に表示された電話番号を読み取る際のペン型携帯用電話機を示す動作図である。
【図4】筆記動作によって電話番号を入力する際のペン型携帯用電話機を示す動作図である。
【図5】(a)は実施形態の変形例に係るペン型携帯用電話機の外観図であり、(b)は変形例に係るペン型携帯用電話機のディスプレイを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0028】
《発明の実施形態》
図1は、この実施形態に係るペン型携帯用電話機Tの外観図であり、図1(a)は放音部22取付け状態を、図1(b)は放音部22取外し状態をそれぞれ示している。
【0029】
本実施形態のペン型携帯用電話機Tは、ペンシル形状の電話機本体10を備え、該電話機本体10の後端側側面にCCDイメージセンサーなどからなるカメラ12が設けられたカメラ付き携帯用電話機である。電話機本体10の側面には、後端側部分に無線アンテナ14が突設されると共に、中央部分にディスプレイ16が設けられている。
【0030】
上記無線アンテナ14は、略L字状に形成されて、電話機本体10の後端側部分から中央部分にまで沿って延びており、該電話機本体10との間でペン型携帯用電話機Tの留め先を挟むクリップを構成している。この無線アンテナ14がなすクリップによりペン型携帯用電話機Tを、例えば携帯者のポケットの縁などに留めて固定することが可能になっている。上記ディスプレイ16は、電話機本体10の長手方向に延びる長方形をなしており、入力された電話番号やカメラ12で撮影した画像を表示するように構成されている。このディスプレイ16には、例えば消費電力が少ない液晶表示パネルが採用される。
【0031】
また、電話機本体10の後端部は、外部音声を集音して音声信号に変換するマイクロフォン18を構成している。当該後端部は円筒状のキャップ20を被っており、該キャップ20の外側開口部分に通話時の音声を外部に放音する放音部22が一部嵌入した状態で着脱可能に取り付けられている。この放音部22は、イヤホン型の形状を有し、ペン型携帯用電話機Tで通話する際には通話者の耳に装着して使用される。電話機本体10には、図1では図示しないが、上記放音部22に人の可聴域を超える超音波周波数領域の超音波振動を送信する超音波スピーカー60が設けられている。
【0032】
さらに、電話機本体10の先端側には、図1では図示しないが加速度センサー28が内蔵されている。この加速度センサー28は、例えば、電話機本体10の軸方向とこれに直交し且つ互いに直角をなす2軸方向との3方向の加速度を検出する3軸加速度センサーである。また、電話機本体10の先端部には、対向する位置の画像を読み取る光学読取部24が設けられている。これら加速度センサー28及び光学読取部24は電話番号を入力する手段を構成し、本実施形態のペン型携帯用電話機Tは、後に詳述するが、加速度センサー28が検出した加速度に基づき筆記動作から数字を認識して電話番号を入力することが可能であると共に、光学読取部24で読み取った画像から数字を認識して電話番号を入力することも可能となっている。
【0033】
その他、電話機本体10先端側のグリップ部分側面には、電話の発信や受信、入力番号の削除、電源のオンオフ、各種モードの切り替えなどの各動作を操作するための数点(図示する例では4つ)のファンクションキー26が配列されている。これら各ファンクションキー26はプッシュボタンとして構成されている。なお、ペン型携帯用電話機Tには0〜9の数字キーは付いておらず、スレンダーなペンシル形状で良好な小型化が実現されている。
【0034】
図2は、ペン型携帯用電話機Tの概略構成を示すブロック図である。
【0035】
ペン型携帯用電話機Tは、上記無線アンテナ14を介して所定の周波数帯域による電波の送受信を行う無線部54と、上記ファンクションキー26から入力された操作信号に応じて該無線部54における通信プロトコル制御や上記カメラ12、ディスプレイ16及び光学読取部24などの各種構成を制御するCPU(Central Processing Unit)56と、該CPU56による通信プロトコル制御によって通話相手側との通信経路を確立する通信制御部58と、これらを含む内部回路に電力を供給するバッテリー(不図示)とを内蔵している。そして、ペン型携帯用電話機Tは、該通信制御部58によって確立された通信経路にマイクロフォン18によって集音変換した音声信号を送信すると共に、その通信経路から受信した音声信号を超音波スピーカー60で超音波振動に変換して通話者の耳に装着された放音部22に送信し、該放音部22において、受信した超音波振動を超音波マイクロフォン62で受けて音声信号に変換した後にスピーカー64に出力することで、相手側と音声を伝達し合って通話することが可能になっている。
【0036】
このペン型携帯用電話機Tは、電話番号を入力する第1の手段として、上記加速度センサー28と、電話機本体10の筆記動作から筆記文字を認識する筆記文字認識部30と、筆記文字の候補となる少なくとも0〜9の数字を含む文字の筆順や筆跡などの文字データが蓄積された文字データベース38とを内蔵している。
【0037】
筆記文字認識部30は、加速度センサー28からの加速度信号が加速度信号インタフェース(I/F)29を介して入力される移動軌跡検出部32を有する。この移動軌跡検出部32は、加速度信号から電話機本体10先端部の移動方向を識別する方向識別部34と、加速度信号を速度信号へ変換する積分回路からなる速度検出部36とを有し、これらにより得られた電話機本体10の移動方向及び移動速度から電話機本体10の筆記動作による先端部の移動軌跡を検出するように構成されている。そして、筆記文字認識部30は、移動軌跡検出部32により得られた電話機本体10先端部の移動軌跡と、文字データベース38に蓄積された文字データとをパターンマッチングなどで照合することにより、筆記文字を認識するようになっている。この筆記文字認識部30によって筆記動作から数字を認識することでペン型携帯用電話機Tに電話番号が入力可能である。
【0038】
このように本実施形態では、加速度センサー28によって検出した筆記動作による電話機本体10先端部の移動軌跡に基づいて筆記文字を認識するので、トラックボールなどの他の電話機本体10先端部の移動軌跡を検出する手段では不可能な空中での筆記動作でも数字を認識させて電話番号を入力することが可能であり、使用環境を選ばず操作性に優れている。ここで、加速度センサー28、加速度信号インターフェース(I/F)29、筆記文字認識部30及び文字データベース38により、本発明の筆記文字認識手段が構成されている。
【0039】
さらに、ペン型携帯用電話機Tは、電話番号を入力する第2の手段として、上記文字データベース38に加え、上記光学読取部24と、該光学読取部24で読み取った画像から文字を認識する画像認識部48をも内蔵している。
【0040】
光学読取部24は、電話機本体10の先端部対向位置に可視光を照射する可視光照射手段である可視光照射部40と、該可視光照射部40に近接して設けられた可視光イメージセンサー42と、電話機本体10の先端部対向位置に近赤外線を照射する近赤外線照射手段である近赤外線照射部44と、該近赤外線照射部44に近接して設けられた近赤外線イメージセンサー46とを備えている。可視光イメージセンサー42は、可視光照射部40から照射されて照射対象物の表面で反射した可視光を受光し、受光した可視光による像を画像信号に変換して画像認識部48に送るようになっている。また、近赤外線イメージセンサー46は、近赤外線照射部44から照射されて照射対象物の表面で反射した近赤外線を受光し、受光した近赤外線による像を画像信号に変換して同じく画像認識部48に送るようになっている。これら両イメージセンサー42,46は、例えばCCDイメージセンサーやCMOS(Complementary Mental Oxide Semiconductor Device)イメージセンサーにより構成されている。
【0041】
上記画像認識部48は、例えば、可視光イメージセンサー42又は近赤外線イメージセンサー46によって得られた画像信号が入力され、該画像信号からなる画像データに対し、文字の認識精度を向上させるために、二値化やコントラストの強調、マスク処理などの画像処理を行い、当該画像処理後のデータと上記文字データベース38に蓄積された文字データとをパターンマッチングなどで照合することにより、名刺などの表示媒体に表示された電話番号を含む画像信号が入力された場合に、該画像信号に基づいて番号を認識するようになっている。ここで、文字データベース38及び画像認識部48により、本発明の文字認識手段が構成されている。
【0042】
上記可視光照射部40及び可視光イメージセンサー42により積極的に照射した可視光の反射光を利用して表示媒体の文字を認識する可視光読取モードと、上記近赤外線照射部44及び近赤外線イメージセンサー46により積極的に照射した近赤外線の反射光を利用して表示媒体の文字を認識する近赤外線読取モードとは、ファンクションキー26によって手動で切り替え可能になっている。そして、これら可視光読取モードと近赤外線読取モードとを、比較的明るい場所と薄暗い場所とで使い分けることにより、表示媒体に表示された電話番号を低消費電力で正確に読み取ることができる。
【0043】
つまり、比較的明るい場所で表示媒体に表示された電話番号を読み取る場合には、可視光読取モードで番号を認識すれば、可視光は近赤外線よりも波長が短くイメージセンサーで良好に画像信号に変換されるので、近赤外線の反射光を利用して表示媒体の電話番号を読み取る場合(近赤外線読取モード)に比べて、表示媒体に表示された番号を正確に認識できる。それでいて、比較的明るい場所での使用なので薄暗い場所で表示媒体の番号を読み取る場合に比べて低い照度で済み、バッテリーの消耗を抑えることができる。一方、薄暗い場所で表示媒体に表示された電話番号を読み取る場合には、近赤外線読取モードで文字を認識すれば、可視光の反射光を利用する場合に比べて低い照度で済むため、バッテリーの消耗を抑えることができる。このように両モードを使用環境によって使い分ければ、表示媒体に表示された電話番号を低消費電力で正確に読み取り可能である。
【0044】
なお、本実施形態では、可視光読取モードと近赤外線読取モードとをファンクションキー26で切り替えるとしているが、これに限らず、例えば、ペン型携帯用電話機Tが照度計を備え、該照度計による環境光の測定によって使用環境の明るさ度合を判断し、該明るさ度合に基づき可視光読取モードと近赤外線読取モードとを自動で切り替えるように構成されていても構わない。
【0045】
上述したように筆記文字認識部30及び画像認識部48で認識された番号は、電話機本体10に入力された番号として該番号データが表示部50に送られ、ドライバ52を介してディスプレイ16に随時表示されるようになっている。これにより、ディスプレイ16に表示された番号をチェックすることで筆記文字認識部30又は画像認識部48の誤認識や使用者による誤入力があったか否かを簡単に確認することが可能であるので、間違い電話を防止することができる。
【0046】
また、上記近赤外線照射部44及び近赤外線イメージセンサー46は、撮影手段を兼ねており、これらの駆動によって読み込んだ画像信号からなるデータを画像として保存可能に構成されている。これにより、薄暗い場所や暗闇で、例えば蛍などの被写体を可視光で照らし出さずに良好に撮影することができる。
【0047】
図3及び図4は、ペン型携帯用電話機Tの使用方法を示す図である。図3は、名刺100に記載された電話番号の読み取っている状態のペン型携帯用電話機Tを示し、図4(a)〜(c)は、筆記動作によって電話番号を順に入力している状態のペン型携帯用電話機Tを示している。なお、図3中の矢印はペン型携帯用電話機Tのスライド方向を示している。また、図4(a)〜(c)において、線形の矢印は電話機本体10の筆記動作による先端部の移動軌跡を示し、白抜き矢印先の数字はその筆記動作によって認識された番号を示している。
【0048】
上記構成のペン型携帯用電話機Tを用いて使用者が電話を掛ける場合には、まず、当該電話機Tを持って、放音部22を耳に装着する。そして、相手方の電話番号が表示された名刺などの表示媒体100があれば、ファンクションキー26により使用環境に応じて可視光読取モードと近赤外線読取モードとを切り替え、図3に示すように、表示媒体100の電話番号記載部分の画像を電話機本体10をスライドさせながら光学読取部24で読み取ることで、読み取った画像から画像認識部48により電話番号を認識させて電話機本体10に入力する。
【0049】
また、相手方の電話番号が表示された表示媒体100がなくても、当該電話機Tを持って、図4(a)〜(c)に示すように、相手方の電話番号を順に筆記することにより、その筆記動作から筆記文字認識部30により電話番号を認識させて電話機本体10に入力する。
【0050】
このように光学読取部24による読み取りや電話機本体10の筆記動作によって電話番号を入力するときに、使用者が意図した番号と異なる誤った番号の入力がディスプレイ16の表示により確認された際には、その誤った番号をファンクションキー26を操作することで適宜削除して、正しい番号に入力し直す。そして、電話番号の入力が完了した状態でファンクションキー26を操作して、電話を発信し相手先を呼び出す。
【0051】
以上のようにして、ペン型携帯用電話機Tを用いて電話をかけることができる。そして、相手先が電話に出た後は、電話機本体10の後端部にマイクロフォン18があるので、電話機本体10を使用者の胸ポケットなどに差し込んだままでも、ハンドフリーで通話を楽しむことができる。また、ペン型携帯用電話機Tに電話の着信があった場合には、ファンクションキー26を操作することで、その電話を受けることができる。
【0052】
−実施形態の効果−
この実施形態によると、可視光照射部40により照射された可視光の表示媒体100表面での反射光を可視光イメージセンサー42で受光して画像信号に変換し、該画像信号に基づいて表示媒体100の電話番号を認識することで、バッテリーの消耗を抑えながら比較的明るい場所で電話番号を正確に読み取ることができる。また、近赤外線照射部44から照射された近赤外線の表示媒体100表面での反射光を近赤外線イメージセンサー46で画像信号に変換し、該画像信号に基づいて表示媒体に表示された電話番号を認識することで、薄暗い場所でも電話番号を確実に読み取ることができる。したがって、使用環境を選ばずに、表示媒体100に表示された電話番号を低消費電力で確実に読み取り可能にして、使い勝手を良くできる。しかも、相手方の電話番号が表示された表示媒体100がなくても、筆記動作から電話番号を認識して入力可能であるので、ペン型携帯用電話機Tにおいて、電話番号を入力する手段として0〜9の数字キーをなくして小型化を図りながらも、良好な操作性を実現することができる。
【0053】
<変形例>
図5(a)は、実施形態の変形例に係るペン型携帯用電話機Tの外観図であり、図5(b)は、この変形例に係るペン型携帯用電話機Tのディスプレイ16を示す側面図である。本変形例では、ディスプレイ16の構成が上記実施形態と異なる他は上記実施形態と同様に構成されているので、構成の異なるディスプレイ16についてのみ説明し、図1〜図4と同一の構成箇所については、同一符合を付して上記実施形態1の説明に譲ることにし、その詳細な説明を省略する。
【0054】
本変形例のディスプレイ16は、電話機本体10に固定された下側表示パネル16aと、該下側表示パネル16a上にスライド可能に重なる上側表示パネル16bとで構成され、下側表示パネル16aと上側表示パネル16bとが重なり合う一画面状態と、該一画面状態から図5(a),(b)に示すように上側表示パネル16bをスライドさせることにより、下側及び上側表示パネル16a,16bの表示面が互いに並んで外部に露出する二画面状態とを切り替え可能になっている。これら下側及び上側表示パネル16a,16bは、例えば消費電力の少ない液晶表示パネルからなる。
【0055】
このような構成によると、2枚の表示パネル16a,16bが互いに重なり合う一画面状態から、2枚の表示パネル16a,16bの表示面が互いに並んで外部に露出する二画面状態へと切り替えることで、小型で携帯性に優れたペン型携帯用電話機Tにおいて、比較的大画面のディスプレイ16を実現することができる。これにより、カメラ12での撮影範囲を二画面状態のディスプレイ16に映すことよって撮影する被写体を捉えやすく、さらに撮影した画像を二画面状態のディスプレイ16に映すことによって容易に確認できて、利便性を向上させることができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、ペン型携帯用電話機Tは可視光イメージセンサー42と近赤外線イメージセンサー46とを別個に備えるとしたが、本発明はこれに限らず、可視光読取モードでは可視光照射部40から照射された照射対象物の表面で反射した可視光を、近赤外線読取モードでは近赤外線照射部44から照射された照射対象物の表面で反射した近赤外線を受光し、受光した光による像を画像信号に変換して画像認識部48に送る兼用のイメージセンサーを備える構成であってもよい。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態及びその変形例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態及び変形例に記載の範囲に限定されない。上記実施形態及び変形例が例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せに、さらにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明は、小型で軽量な携帯性に優れたペン型携帯用電話機について有用であり、特に、使用環境を選ばずに、表示媒体に表示された電話番号を低消費電力で確実に読み取り可能にして、使い勝手を良くすることが要望されるペン型携帯用電話機に適している。
【符号の説明】
【0059】
T ペン型携帯用電話機
10 電話機本体
16 ディスプレイ
16a 下側表示パネル
16b 上側表示パネル
28 加速度センサー
29 加速度信号インターフェース
30 筆記文字認識部
38 文字データベース
40 可視光照射部(可視光照射手段)
42 可視光イメージセンサー
44 近赤外線照射部(近赤外線照射手段)
46 近赤外線イメージセンサー
48 画像認識部
100 表示媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペンシル形状の電話機本体を有するペン型携帯用電話機であって、
上記電話機本体の先端側に設けられ、表示媒体に向けて近赤外線を照射する近赤外線照射手段と、
上記近赤外線照射手段に近接して設けられ、該近赤外線照射手段から照射されて上記表示媒体の表面で反射した近赤外線を受光し、受光した近赤外線による像を画像信号に変換する近赤外線イメージセンサーと、
上記電話機本体に内蔵され、上記近赤外線イメージセンサーによって得られた画像信号が入力され、該画像信号に基づいて上記表示媒体に表示された文字を認識する文字認識手段とを備える
ことを特徴とするペン型携帯用電話機。
【請求項2】
請求項1に記載のペン型携帯用電話機において、
上記電話機本体の先端側に設けられ、表示媒体に向けて可視光を照射する可視光照射手段と、
上記可視光照射手段に近接して設けられ、該可視光照射手段から照射されて上記表示媒体の表面で反射した可視光を受光し、受光した可視光による像を画像信号に変換する可視光イメージセンサーとをさらに備え、
上記文字認識手段には、上記可視光イメージセンサーによって得られた画像信号をも入力され、上記文字認識手段は、該画像信号に基づいて上記表示媒体に表示された文字を認識する
ことを特徴とするペン型携帯用電話機。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載のペン型携帯用電話機において、
上記電話機本体の筆記動作による先端側の移動軌跡を検出し、該移動軌跡に基づいて筆記文字を認識する筆記文字認識手段をさらに備える
ことを特徴とするペン型携帯用電話機。
【請求項4】
請求項3に記載のペン型携帯用電話機において、
上記電話機本体の先端側には加速度センサーが内蔵され、該加速度センサーによって上記筆記動作による電話機本体の先端側の移動軌跡を検出する
ことを特徴とするペン型携帯用電話機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のペン型携帯用電話機において、
上記電話機本体の側面には、入力された電話番号を表示するディスプレイが設けられている
ことを特徴とするペン型携帯用電話機。
【請求項6】
請求項5に記載のペン型携帯用電話機において、
上記ディスプレイは、上記電話機本体に固定された下側表示パネルと、該下側表示パネル上にスライド可能に重なる上側表示パネルとで構成され、これら下側表示パネルと上側表示パネルとが重なり合う一画面状態と、該一画面状態から上記上側表示パネルをスライドさせることにより、上記下側及び上側表示パネルの表示面が互いに並んで外部に露出する二画面状態とを切り替え可能に構成されている
ことを特徴とするペン型携帯用電話機。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のペン型携帯用電話機において、
上記近赤外線照射手段及び近赤外線イメージセンサーは、撮影手段を兼ねている
ことを特徴とするペン型携帯用電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−65199(P2012−65199A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208527(P2010−208527)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】