説明

ペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法

【課題】 塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体との混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で重合を行うに際して、重合時間を大幅に短縮し、塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体の反応性比が高いペースト塩ビの製造方法を提供する。
【解決手段】 塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体との混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で重合を行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を製造するに際し、重合開始前に塩化ビニル単量体又は該混合単量体の全仕込み量に対して15重量%〜45重量%の塩化ビニル単量体又は該混合単量体(1段目仕込み単量体)を仕込み、重合を開始後、残りの単量体を2段階以上に分割して、追加仕込みし、それぞれの追加仕込みは、仕込まれた単量体の重合転化率が80%を超えて95%に達するまでの期間に開始することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂(以下、ペースト塩ビと略記する)を製造する方法としては、一般に、重合缶に塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体との混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で重合を行い、重合缶内温を所定温度に維持しながら、重合反応を進め、重合転化率の増加と共に、仕込み単量体の未反応分が減少し、重合缶内圧力が降下し始めるので、所望の重合転化率に相当する重合缶内圧力になった時点で、重合反応を終了し、ペースト塩ビラテックスを製造し、これを乾燥することによって、ペースト塩ビを得る製造方法が挙げられる。
【0003】
このようなペースト塩ビの製造方法において、生産性を向上するためには、重合開始剤の添加量を増加し、重合時間を短縮する必要がある。しかし、重合開始剤の添加量を増加すると、重合末期における発熱量が増大し、重合缶内温制御が困難になるという問題があった。
【0004】
単位時間当たりの塩化ビニル系重合体収率を向上する方法として、重合転化率が20%以上で重合器内圧が降下し始める前に、初期仕込み量に対して5〜30重量%の割合で単量体を追加する製造方法が報告されている(特許文献1)。
【0005】
しかし、この方法では重合器内圧が降下し始める前に単量体を追加するために、単量体の追加を行わなかった場合と比較して、1割程度の生産性向上にとどまっていた。
【0006】
また、還流凝縮器に付設した重合反応器を用いて塩化ビニル単独又は塩化ビニルとこれに共重合可能な単量体との混合物を重合するに際して、重合転化率が80%を超えて95%までの時期に初期仕込み全単量体の0.5〜8重量%の量の単量体を重合缶に一括または分割してもしくは連続して仕込むことにより、反応後期に還流凝縮器の除熱量を低下させることなく運転することで、重合生産性が向上することが報告されている(特許文献2)。
【0007】
しかし、この製造方法ではあくまでも還流凝縮器による除熱効率を向上することで、重合時間の短縮、生産性の向上が可能であり、還流凝縮器を使用しない場合には重合時間の短縮、生産性の向上が得られないという問題があった。
【0008】
さらに、重合途中に単量体を追加仕込みする製造方法については、重合時間をより長くすることなく付着物の形成量を減少することができることが、報告されている(特許文献3)。
【0009】
しかし、この製造方法では水性媒体中に存在する塩化ビニル単量体が使用する塩化ビニルの30%以下を占めるように単量体を添加するのみであって、単量体添加の時期と重合転化率の関係について記載がされておらず、重合時間短縮という観点からは十分な製造方法ではなかった。
【0010】
以上のようにこれまでに検討されている製造方法は、重合時間の大幅な短縮に有効であるとは言えず、より重合時間を短縮し、生産性向上が可能となる、製造方法の開発が望まれていた。
【0011】
また、塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体を共重合してなる重合体を得る際には、塩化ビニルに共重合し得る単量体の一部が重合せずに残存するが、VOC排出量の削減について2001年に施行されたPRTR法の観点から、単量体反応性比を向上し、塩化ビニルに共重合し得る単量体の未反応量を削減することが求められていた。
【0012】
【特許文献1】特開平10−306105号公報
【特許文献2】特開平7−258303号公報
【特許文献3】特開昭63−137905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体との混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で重合を行うに際して、重合時間を大幅に短縮し、塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体の反応性比が高いペースト塩ビの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体との混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で重合を行うに際し、全仕込み単量体量に対して、特定重量比の単量体を仕込み重合を開始後、残りの単量体を2段階以上に分割して追加仕込みし、それぞれの追加仕込みは、仕込まれた単量体の重合転化率が特定の重合転化率となった時期に開始することによって、大幅な重合時間短縮が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体との混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で重合を行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を製造するに際し、重合開始前に塩化ビニル単量体又は該混合単量体の全仕込み量に対して15重量%〜45重量%の塩化ビニル単量体又は該混合単量体(1段目仕込み単量体)を仕込み、重合を開始後、残りの単量体を2段階以上に分割して、追加仕込みし、それぞれの追加仕込みは、仕込まれた単量体の重合転化率が80%を超えて95%に達するまでの期間に開始することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法である。
【0015】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明のペースト塩ビの製造方法は、重合開始前に塩化ビニル単量体、又は塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体との混合単量体(以下、混合単量体と略記する場合がある)の全仕込み量に対して15重量%〜45重量%の塩化ビニル単量体又は混合単量体(1段目仕込み単量体)を仕込むものである。
【0017】
単量体の仕込みが15重量%未満の場合には、1段目重合の水性媒体中における単量体濃度が低くなるために、重合時間が大幅に短縮されないものであり、一方、45重量%を超える場合には、1段目重合以降の水性媒体中における単量体濃度が低くなるために、重合時間が大幅に短縮されないものである。
【0018】
1段目仕込み単量体が混合単量体の場合には、塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体の反応性比を向上させるために、混合単量体の全仕込み量の内、塩化ビニルに共重合し得る単量体の全量と、塩化ビニル単量体の一部を1段目仕込み単量体として仕込み、重合を開始することが好ましい。
【0019】
単量体の追加仕込みは、重合を開始後、残りの単量体(55重量%〜85重量%)を2段階以上に分割して、追加仕込みするものであり、仕込まれた単量体の重合転化率が80%を超えて95%に達する期間に追加仕込みを開始することが必要であり、これらの範囲を外れた場合には、大幅な重合時間短縮は達成されない。
【0020】
1段目仕込み単量体の重合開始後、追加して仕込む塩化ビニル単量体又は混合単量体(2段目仕込み単量体)は、2段目以降の各段における水性媒体中の単量体濃度を高くして、重合時間の短縮幅を大きくするため、塩化ビニル単量体又は混合単量体の全仕込み量に対して15重量%〜45重量%の塩化ビニル単量体又は混合単量体を追加仕込み、重合を継続し、残りの単量体を1段階以上に分割して、追加仕込みすることが好ましい。
【0021】
本発明のペースト塩ビは、塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体との混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で重合を行うことで製造されるものである。
【0022】
本発明で使用される重合方法としては、いかなる重合方法を用いることも可能であり、最も一般的な方法としては、塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体との混合単量体を乳化剤、水溶性重合開始剤の存在下において水性媒体中で、緩やかな攪拌条件下、重合を行う乳化重合法、乳化重合法で得られた粒子をシードとして用い乳化重合を行うシード乳化重合法、塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体との混合単量体を乳化剤、油溶性重合開始剤、必要に応じて乳化補助剤の存在下において水性媒体中で、ホモジナイザー等で混合分散した後、緩やかな攪拌条件下、重合を行うミクロ懸濁重合法、ミクロ懸濁重合法で得られた油溶性重合開始剤を含有するシードを用い重合を行うシードミクロ懸濁重合法等により、重合温度30〜80℃にて重合し、塩化ビニル系樹脂ラテックスを得ることが挙げられる。
【0023】
塩化ビニル単量体に共重合し得る単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物類;アクリル酸のメチル,エチル,ブチル等のエステル、メタクリル酸のメチル,エチル,ブチル等のエステル類、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、桂皮酸エステル等の不飽和カルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルアミルエーテル、ビニルフェニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のモノオレフィン類;塩化ビニリデン、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができ、これらは2種以上でも用いることができる。
【0024】
本発明の製造方法に使用される乳化剤は、例えば、ラウリル硫酸エステルナトリウム、ミリスチル硫酸エステルの如きアルキル硫酸エステル塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウムの如きアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウムの如きスルホコハク酸塩類、ラウリン酸アンモニウム、ステアリン酸カリウムの如き脂肪酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類などのアニオン系界面活性剤、ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートの如きソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類などのノニオン系界面活性剤などの従来より知られているものを1種類または2種類以上用いることができる。
【0025】
本発明の製造方法に使用される重合開始剤は、乳化重合系であれば、通常これらの重合に用いられる過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性開始剤、ミクロ懸濁重合法又はシード重合法であればアゾビスイソブチロニトリル、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルペルオキシピバレートに代表されるアゾ化合物、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等の油溶性開始剤等を挙げることができる。
【0026】
また、本発明のペースト塩ビを製造する際に必要に応じて使用される乳化補助剤の具体例としては、セチルアルコールおよびラウリルアルコール等の高級アルコール、ラウリン酸、パルミチン酸およびステアリン酸等の高級脂肪酸又はそのエステル、芳香族炭化水素、高級脂肪酸炭化水素、塩素化パラフィンのようなハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0027】
本発明の製造方法で使用される水性媒体とは、水、界面活性剤、その他水溶性の重合助剤(緩衝剤等)のことで、塩化ビニル単量体などの有機層を分散させる媒体のことである。
【0028】
塩化ビニル系樹脂ラテックスからペースト塩ビを得る方法としては、いかなる方法を用いてもよいが、効率よく該ラテックスから水分を除去することができることから、噴霧乾燥による方法が好ましい。噴霧乾燥に使用する乾燥機は、一般的に使用されているものでよく、例えば「SPRAY DAYING HANDBOOK」(K.Masters著、3版、1979年、George godwin Limitedより出版)の121頁第4.10図に記載されている各種のスプレー乾燥機(例えば、Standard chamber,Tall−form nozzle chamber等)があげられる。乾燥温度は、乾燥機の入口で一般的に80〜200℃に、また出口では40〜70℃、好ましくは45℃〜65℃がよい。乾燥後、得られたペースト塩ビは、塩化ビニル系樹脂ラテックスを構成する粒子の凝集体であり、通常10〜150μmの顆粒状である。乾燥出口温度が52℃を超える場合には、得られた顆粒状ペースト塩ビを粉砕した方が可塑剤への分散性の点から好ましく、乾燥出口温度が52℃以下であれば、顆粒状のままでも粉砕して使用してもどちらでもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、塩化ビニル単量体又は塩化ビニルとこれに共重合し得る単量体との混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で重合を行うに際して、重合時間が大幅に短縮され、塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体の反応性比が高い、ペースト塩ビの製造方法が提供される。
【実施例】
【0030】
以下に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
合成例1(開始剤等含有シードの製造例)
1mオートクレーブ中に脱イオン水360kg、塩化ビニル単量体300kg、過酸化ラウロイル6kg及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30kgを仕込み、該重合液をホモジナイザーを用いて2時間循環し、均質化処理後、温度を45℃に上げて、重合を進めた。45℃における塩化ビニルの飽和蒸気圧より0.2MPa圧力が低下した後、未反応の塩化ビニル単量体を回収した。得られた開始剤等含有シードラテックス(以下、シード1と略記する)の平均粒子径は0.60μm、固形分濃度は32%であった。
【0032】
合成例2(単量体可溶重合開始剤を含有しないシードの製造例)
1mオートクレーブ中に脱イオン水400kg、塩化ビニル単量体350kg、16重量%ラウリン酸カリウム水溶液2kg及び16重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液5kgを仕込み、温度を54℃に上げて重合を進めた。54℃における塩化ビニルの飽和蒸気圧より0.3MPa圧力が低下した後、未反応塩化ビニル単量体を回収した。得られた単量体可溶重合開始剤を含有しないシードラテックス(以下、シード2と略記する)は平均粒子径0.15μm、固形分濃度は35%であった。
【0033】
実施例1
1mオートクレーブ中に脱イオン水325kg、1段目仕込み単量体として塩化ビニル単量体120kg(単量体の全仕込み量に対して30重量%)、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1kg、シード1を40kg、シード2を7kg仕込み、この反応混合物の温度を43℃に上げて1段目重合を開始した。重合転化率が82%となったところで、2段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体120kg(単量体の全仕込み量に対して30重量%)を15分間で1mオートクレーブに仕込み、2段目重合を継続した。更に、1段目仕込み単量体と2段目仕込み単量体の合計に対して重合転化率が82%となったところで、3段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体160kg(単量体の全仕込み量に対して40重量%)を15分間で1mオートクレーブに仕込み、3段目重合を継続し、1mオートクレーブ内圧が43℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.3MPa降下した時に重合を終了した。重合開始してから重合終了までの間、塩化ビニル単量体に対して、20重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液15kgを連続的に添加した。未反応単量体を回収して固形分濃度43%の塩化ビニル樹脂ラテックスとし、スプレードライヤーにて、熱風入口190℃、出口温度63℃で噴霧乾燥を行って、ペースト塩ビを得た。反応混合物の温度を43℃に上げて1段目重合を開始してから、1mオートクレーブ内圧が43℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.3MPa降下し、重合が終了するまでの時間(以下、重合時間という)は640分であった。これらを表1に示す。
【0034】
【表1】

実施例2
重合転化率が92%となったところで、2段目仕込み単量体を1mオートクレーブに仕込み、1段目仕込み単量体と2段目仕込み単量体の合計に対して重合転化率が82%となったところで、3段目仕込み単量体を1mオートクレーブに仕込んだ以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は650分であった。これらを表1に示す。
【0035】
実施例3
重合転化率が82%となったところで、2段目仕込み単量体を1mオートクレーブに仕込み、1段目仕込み単量体と2段目仕込み単量体の合計に対して重合転化率が92%となったところで、3段目仕込み単量体を1mオートクレーブに仕込んだ以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は670分であった。これらを表1に示す。
【0036】
実施例4
重合転化率が92%となったところで、2段目仕込み単量体を1mオートクレーブに仕込み、1段目仕込み単量体と2段目仕込み単量体の合計に対して重合転化率が92%となったところで、3段目仕込み単量体を1mオートクレーブに仕込んだ以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は680分であった。これらを表1に示す。
【0037】
実施例5
1段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体80kg(単量体の全仕込み量に対して20重量%)を仕込み、2段目単量体として、塩化ビニル単量体80kg(単量体の全仕込み量に対して20重量%)を仕込み、3段目単量体として、塩化ビニル単量体240kg(単量体の全仕込み量に対して60重量%)を仕込んだ以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は670分であった。これらを表1に示す。
【0038】
実施例6
1段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体160kg(単量体の全仕込み量に対して40重量%)を仕込み、3段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体120kg(単量体の全仕込み量に対して30重量%)を仕込んだ以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は680分であった。これらを表1に示す。
【0039】
実施例7
1段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体120kg(単量体の全仕込み量に対して30重量%)を仕込み、2段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体40kg(単量体の全仕込み量に対して10重量%)を仕込み、3段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体240kg(単量体の全仕込み量に対して60重量%)を仕込んだ以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は720分であった。これらを表2に示す。
【0040】
【表2】

実施例8
1段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体120kg(単量体の全仕込み量に対して30重量%)を仕込み、2段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体240kg(単量体の全仕込み量に対して60重量%)を仕込み、3段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体40kg(単量体の全仕込み量に対して10重量%)を仕込んだ以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は730分であった。これらを表2に示す。
【0041】
実施例9
1段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体100kg(単量体の全仕込み量に対して25重量%)を仕込み、2段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体100kg(単量体の全仕込み量に対して25重量%)を仕込み、3段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体100kg(単量体の全仕込み量に対して25重量%)を仕込み、1段目仕込み単量体と2段目仕込み単量体と3段目仕込み単量体の合計に対して重合転化率が82%となったところで、4段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体100kg(単量体の全仕込み量に対して25重量%)を15分間で1mオートクレーブに仕込み、4段目重合を継続し、1mオートクレーブ内圧が43℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.3MPa降下した時に重合を終了した以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は620分であった。これらを表2に示す。
【0042】
実施例10
1段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体128kg(混合単量体の全仕込み量に対して32重量%)と酢酸ビニル単量体16kg(混合単量体の全仕込み量に対して4%)を仕込み、2段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体128kg(混合単量体の全仕込み量に対して32重量%)と酢酸ビニル単量体8kg(混合単量体の全仕込み量に対して2重量%)を仕込み、3段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体120kg(混合単量体の全仕込み量に対して30重量%)を仕込んだ以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は670分であった。これらと得られたペースト塩ビ中に含有する酢酸ビニル重量%の測定結果を表2に示す。
【0043】
<酢酸ビニル重量%の測定方法>
ペースト塩ビ中に含有する酢酸ビニル重量%(VAc含量)は、ペースト塩ビ100mgと臭化カリウム10mgを混合し、すりつぶして成形した測定サンプルを、赤外分光光度計(島津FTIR−8100A)を使用して、赤外吸収スペクトル測定し、下記式(1)から算出した。
【0044】
ペースト塩ビ中に含有する酢酸ビニル重量%(VAc含量)
=(3.73×B/A+0.024)×1.04 (1)
A:1430cm−1付近のC−H面内変角による吸収ピークトップのAbs.値
B:1740cm−1付近のC=O伸縮による吸収ピークトップのAbs.値
実施例11
1段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体120kg(混合単量体の全仕込み量に対して30重量%)と酢酸ビニル単量体24kg(混合単量体の全仕込み量に対して6重量%)を仕込み、2段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体136kg(混合単量体の全仕込み量に対して34重量%)を1mオートクレーブに仕込み、3段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体120kg(混合単量体の全仕込み量に対して30重量%)を仕込んだ以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は665分であった。これらと得られたペースト塩ビ中に含有する酢酸ビニル重量%の測定結果を表2に示す。
【0045】
実施例12
1段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体120kg(混合単量体の全仕込み量に対して30重量%)を仕込み、2段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体136kg(混合単量体の全仕込み量に対して34重量%)を1mオートクレーブに仕込み、3段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体120kg(混合単量体の全仕込み量に対して重量30%)と酢酸ビニル単量体24kg(混合単量体の全仕込み量に対して6重量%)を仕込んだ以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は660分であった。これらと得られたペースト塩ビ中に含有する酢酸ビニル重量%の測定結果を表2に示す。
【0046】
比較例1
塩化ビニル単量体400kg(単量体の全仕込み量に対して100重量%)を仕込み、重合を開始し、2段目仕込み単量体と3段目仕込み単量体の仕込みを行わず、1mオートクレーブ内圧が43℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.3MPa降下した時に重合を終了した以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は850分であり、重合時間を大幅に短縮することができなかった。これらを表3に示す。
【0047】
【表3】

比較例2
塩化ビニル単量体376kg(混合単量体の全仕込み量に対して94重量%)と酢酸ビニル単量体24kg(混合単量体の全仕込み量に対して6重量%)を仕込み、重合を開始し、2段目仕込み単量体と3段目仕込み単量体の仕込みを行わず、1mオートクレーブ内圧が43℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.3MPa降下した時に重合を終了した以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は870分であり、重合時間を大幅に短縮することができなかった。これらと得られたペースト塩ビ中に含有する酢酸ビニル重量%の測定結果を表3に示す。
【0048】
比較例3
塩化ビニル単量体160kg(単量体の全仕込み量に対して40重量%)を仕込み、重合を開始し、重合転化率が82%となったところで、2段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体240kg(単量体の全仕込み量に対して60重量%)を1mオートクレーブに仕込み、3段目仕込み単量体の仕込みを行わず、1mオートクレーブ内圧が43℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.3MPa降下した時に重合を終了した以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は790分であり、重合時間を大幅に短縮することができなかった。これらを表3に示す。
【0049】
比較例4
重合転化率が75%となったところで、2段目単量体として、塩化ビニル単量体120kg(単量体の全仕込み量に対して30重量%)を1mオートクレーブに仕込み、1段目単量体と2段目単量体の合計に対して重合転化率が75%となったところで、3段目単量体として、塩化ビニル単量体160kg(単量体の全仕込み量に対し40重量%)を1mオートクレーブに仕込んだ以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は830分であり、重合時間を大幅に短縮することができなかった。これらを表3に示す。
【0050】
比較例5
重合転化率が98%となったところで、2段目単量体として、塩化ビニル単量体120kg(単量体の全仕込み量に対して30重量%)を1mオートクレーブに仕込み、1段目単量体と2段目単量体の合計に対して重合転化率が98%となったところで、3段目単量体として、塩化ビニル単量体160kg(単量体の全仕込み量に対し40重量%)を1mオートクレーブに仕込んだ以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は880分であり、重合時間を大幅に短縮することができなかった。これらを表3に示す。
【0051】
比較例6
1段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体40kg(単量体の全仕込み量に対して10重量%)を1mオートクレーブに仕込み、3段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体240kg(単量体の全仕込み量に対して60重量%)を1mオートクレーブに仕込んだ以外は実施例1と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は820分であり、重合時間を大幅に短縮することができなかった。これらを表3に示す。
【0052】
比較例7
1段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体240kg(単量体の全仕込み量に対して60重量%)を1mオートクレーブに仕込み、3段目仕込み単量体として、塩化ビニル単量体80kg(単量体の全仕込み量に対して20重量%)を1mオートクレーブに仕込んだ以外は実施例5と同様の方法でペースト塩ビを得た。重合時間は770分であり、重合時間を大幅に短縮することができなかった。これらを表3に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれに共重合し得る単量体との混合単量体を、重合開始剤の存在下において水性媒体中で重合を行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を製造するに際し、重合開始前に塩化ビニル単量体又は該混合単量体の全仕込み量に対して15重量%〜45重量%の塩化ビニル単量体又は該混合単量体(1段目仕込み単量体)を仕込み、重合を開始後、残りの単量体を2段階以上に分割して、追加仕込みし、それぞれの追加仕込みは、仕込まれた単量体の重合転化率が80%を超えて95%に達するまでの期間に開始することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項2】
1段目仕込み単量体の重合開始後、塩化ビニル単量体又は混合単量体の全仕込み量に対して15重量%〜45重量%の塩化ビニル単量体又は上記混合単量体(2段目仕込み単量体)を追加仕込み、重合を継続し、残りの単量体を1段階以上に分割して、追加仕込みすることを特徴とする請求項1記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【請求項3】
塩化ビニル単量体に共重合し得る単量体の全量と塩化ビニル単量体の一部を1段目仕込み単量体として仕込み、重合を開始することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2009−221335(P2009−221335A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66562(P2008−66562)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】