説明

ペースト塗布装置およびペースト塗布方法

【課題】ペースト供給槽あるいはペースト膜が形成される平坦部を有する塗布装置本体の往復動が不要で、生産性が高く、ペースト塗布品質の高いペースト塗布装置およびペースト塗布方法を提供する。
【解決手段】平坦部2を有する塗布装置本体1と、塗布装置本体の平坦部上を搬送されるキャリアフィルム3と、キャリアフィルム搬送手段4と、キャリアフィルム上にペースト(導電ペースト)5を供給して、キャリアフィルム上にペースト膜(導電ペースト膜)5aを形成するためのペースト膜形成手段6と、電子部品素子11を保持する電子部品素子保持手段7とを備え、キャリアフィルムを搬送するだけでキャリアフィルム上にペースト膜が形成され、さらにキャリアフィルムを搬送することにより、次の電子部品素子を浸漬するためのペースト膜が形成されるようにして、ペースト膜形成手段(ペースト供給槽)など部材の往復動を不要にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト塗布装置およびペースト塗布方法に関し、詳しくは、電子部品素子の表面に、導電ペーストなどのペーストを塗布するために用いられるペースト塗布装置およびペースト塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサなどのチップ型の電子部品50は、例えば、図3に示すように、電子部品素子51の両端側に一対の外部電極52a,52bが形成された構造を有している。
【0003】
そして、電子部品素子に外部電極を形成するにあたっては、例えば、以下に説明するような方法が提案されている(特許文献1参照)。
図4は、導電ペーストを塗布して焼き付けることにより外部電極を形成する際に用いられている従来のペースト塗布装置を示す図である。
【0004】
図4に示すように、このペースト塗布装置は、平盤61と、平盤61上を矢印A及びBの方向にスライドするペースト供給槽62と、平盤61の端部に配設された、平盤61上から掃き出された導電ペースト64を受ける導電ペースト回収槽63とを備えている。
【0005】
そして、このペースト塗布装置を用いて、以下の手順で電子部品素子に外部電極用の導電ペーストを塗布するようにしている。
(1)ペースト供給槽62に導電ペースト64を充填した後、ペースト供給槽62を構成するスキージブレード62aの下端部と平盤61との隙間Gを0.5mmに調整し、その隙間Gの大きさを保持しつつ、ペースト供給槽62を矢印Aの方向にスライドさせ、平盤61上に導電ペースト64を展開させて所定の厚みを有する導電ペースト膜64aを形成する。
【0006】
(2)それから、保持具(図示せず)に保持された電子部品素子51を平盤61上の導電ペースト膜64aに浸漬し、電子部品素子51の一方の端部に導電ペースト64を付着させる。
【0007】
(3)次に、ペースト供給槽62のスキージブレード62aを下方にスライドさせてその下端と平盤61との隙間Gを閉じた後、ペースト供給槽62を矢印Bの方向(Aと逆の方向)にスライドさせ、スキージブレード62aにより導電ペースト膜64aを掃き出して、導電ペースト回収槽63に導電ペースト64を回収する。
【0008】
(4)そして、電子部品51の一方の端部に付着させた導電ペースト64を乾燥させた後、上記(1)〜(3)の工程を繰り返して、電子部品素子51の他方の端部にも導電ペースト64を付着させる。その後、電子部品素子51の他方の端部に付着させた導電ペースト64を乾燥させる。
【0009】
(5)それから、導電ペースト64の乾燥が行われた電子部品素子51を800℃で焼成して、導電ペースト64を焼き付ける。これにより、図3に示すような、電子部品素子51の両端部に外部電極52a,52bが形成された電子部品50が得られる。
【0010】
しかしながら、上記方法の場合、導電ペースト膜64aの形成、および、電子部品素子51の導電ペースト膜64aへの浸漬を行った後に、次の電子部品素子51の浸漬に備えて、平盤61上に新しく導電ペースト膜を形成することが必要となる。そして、そのためには、使用済の導電ペースト膜64aを除去(回収)することが必要となる。
【0011】
この使用済の導電ペースト膜64aを除去(回収)するには、図4の矢印Bの方向にペースト供給槽62を移動させることが必要になり、また、平盤61上に新しく導電ペースト膜64aを形成するためには、矢印Bの方向に移動させていたペースト供給槽62を矢印Aの方向に移動させることが必要になる。すなわち、導電ペースト膜の除去と、その後の新たな導電ペースト膜の形成には、ペースト供給槽を往復動させることが必要になる。
そのため、ペースト供給槽62を往復動に時間を要し、サイクルタイムが長くなって生産効率が低下するという問題点がある。
【0012】
ところで、上述の方法で電子部品素子51に導電ペースト64を塗布する場合、電子部品素子51の一方の端部側を、複数回(例えば3回)繰り返して導電ペースト膜64aに浸漬する方法がとられる場合がある。
上述のように、複数回(3回)繰り返して浸漬を行う場合、一度目の浸漬は、主として、電子部品素子51の端面に導電ペースト64を予備的に付着させることを意図して行われる。
【0013】
そして、2度目の浸漬は、端面に予備的に導電ペーストが塗布され、導電ペーストが付着しやすくなった状態の電子部品素子51の端面およびその周囲の稜線部に十分に導電ペースト64を付着させるとともに、端面から側面に所定距離D(図3参照)だけ回り込んだ折返し部分が形成されるように、導電ペースト64を付着させることを意図して行われる。
【0014】
さらに、3度目の浸漬は、電子部品素子51の端面に意図するよりも厚く付着しすぎたり、重力により垂れ下がったりした余剰の導電ペーストを除去するとともに、電子部品素子51の端面および稜線部に、必要な厚みで導電ペースト64が付着した状態とすることを意図して行われる。
【0015】
そして、このように電子部品素子51の一対の端部側のそれぞれを複数回導電ペースト膜64aに浸漬して、導電ペースト64を塗布する場合、浸漬するたびに、浸漬後の導電ペースト膜64aの除去(回収)、および、それに続く次の浸漬のための導電ペースト膜64aの形成に、ペースト供給槽62を往復動させることが必要になり、さらにサイクルタイムが長くなって、生産効率が大幅に低下するという問題点がある。
【0016】
また、スキージブレード62aにより導電ペースト膜64aを掃き出して、導電ペースト回収槽63に導電ペースト64を回収する際に、導電ペースト膜64aの掃き出し(掻き取り)が不十分になると、導電ペースト64が膜状に乾燥し、これが何度目かのスキージブレード62aの動作の際に掻き取られて回収され、ペースト供給槽62内の導電ペースト64に混入する場合がある。そして、その場合、外部電極の外観不良などを引き起こし、歩留まりが低下するという問題点がある。
【0017】
また、上記従来のペースト塗布装置では、ペースト供給槽62を矢印A,Bの方向に往復動させることにより、平盤61上に導電ペースト膜64aを形成したり、導電ペースト膜64aを掻き取ったりするようにしているが、ペースト供給槽を往復動させる代わりに、平盤を往復動させて導電ペースト膜を形成したり、塗布工程終了後の導電ペースト膜の掻き取りを行うようにしたペースト塗布装置も広く用いられている。そして、その場合も、図4に示すペースト塗布装置を用いる場合と同様の問題が生じる。
【特許文献1】特許第3109365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、ペースト膜の形成、および、電子部品素子を浸漬した後のペースト膜の除去のために、ペースト供給槽あるいはペースト膜が形成される平盤を往復動させたりすることが不要で、生産性に優れ、かつ、乾燥して膜状になったペーストを含む状態でペーストが塗布されてしまうことがなく、信頼性の高いペースト塗布を行うことが可能なペースト塗布装置およびペースト塗布方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明のペースト塗布装置は、
電子部品素子の表面にペーストを塗布するための装置であって、
平坦部を有する塗布装置本体と、
前記塗布装置本体の平坦部上を連続的または間欠的に搬送されるキャリアフィルムと、
前記キャリアフィルムを搬送するキャリアフィルム搬送手段と、
前記キャリアフィルム上にペーストを供給して、前記キャリアフィルム上にペースト膜が形成されるようにするためのペースト膜形成手段と、
電子部品素子を保持する電子部品素子保持手段と
を備え、
前記電子部品素子保持手段により保持された前記電子部品素子の所定部分が、前記キャリアフィルム上に形成された前記ペースト膜に浸漬されることにより、前記電子部品素子の所定部分にペーストが塗布されるように構成されていること
を具備することを特徴としている。
【0020】
前記ペースト膜形成手段は、前記キャリアフィルムを介して前記塗布装置本体の前記平坦部と対向するように配設され、前記キャリアフィルムの搬送方向における前方側の側壁構成部材の下端部と、前記平坦部上の前記キャリアフィルムとの間に所定の隙間を形成することが可能で、内部に収容されたペーストが該隙間から前記キャリアフィルム上に供給されるように構成されたペースト供給槽を備え、前記キャリアフィルムが、前記塗布装置本体の平坦部と前記ペースト供給槽の間を搬送されると、前記隙間から前記ペーストが前記キャリアフィルム上に供給され、前記隙間の寸法に対応する厚みのペースト膜が前記キャリアフィルム上に形成されるように構成されていることが望ましい。
【0021】
また、前記ペースト供給槽の前方側の側壁構成部材の上下位置を調整することにより、前記隙間の大きさを調整して、前記キャリアフィルム上の前記ペースト膜の厚みを調整することができるように構成されていることが望ましい。
【0022】
また、前記電子部品素子保持手段は、前記塗布装置本体の前記平坦部の上方であって、前記ペースト供給槽よりも前記キャリアフィルムの搬送方向の前方側に位置するように配設されていることが望ましい。
【0023】
また、本発明において、前記ペーストとして、電子部品の電極形成用の導電ペーストを用いることができる。
【0024】
本発明のペースト塗布方法は、
電子部品素子の表面にペーストを塗布するためのペースト塗布方法であって、
所定の方向に、連続的又は間欠的に搬送されるキャリアフィルム上にペーストを供給してペースト膜を形成し、
前記キャリアフィルム上の前記ペースト膜に電子部品素子の所定部分を浸漬することにより、電子部品素子の表面の所定部分にペーストを塗布すること
を特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明のペースト塗布装置は、塗布装置本体の平坦部上を搬送されるキャリアフィルムと、キャリアフィルムを搬送するキャリアフィルム搬送手段と、キャリアフィルム上にペーストを供給して、キャリアフィルム上にペースト膜を形成するためのペースト膜形成手段と、電子部品素子を保持する電子部品素子保持手段を備えているので、電子部品素子の所定部分を、上記キャリアフィルム上に形成されたペースト膜に浸漬することにより、電子部品素子の所定部分にペーストを効率よく、しかも確実に塗布することが可能になる。
【0026】
すなわち、本発明によれば、キャリアフィルムを搬送するだけで、キャリアフィルム上にペースト膜を形成することが可能であり、ペースト膜への電子部品素子の浸漬後には、キャリアフィルムを搬送して、キャリアフィルムの新しい面上に次のペースト膜を形成することが可能で、次の電子部品素子を浸漬するための新しいペースト膜の形成のために、使用済のペースト膜を除去することが不要であることから、従来のペースト塗布装置を用いる場合のように、ペースト膜の掃き出し(掻き取り)が不十分になることによる、乾燥した膜状のペーストの混入による外部電極の外観不良などの問題の発生を回避することができる。
なお、本発明のペースト塗布装置においては、電子部品素子をペースト膜に浸漬する際に、キャリアフィルムが静止している方が電子部品素子へのペーストの塗布をより確実に行うことができるため、通常はキャリアフィルムを間欠的に搬送できるように構成することが望ましいが、電子部品素子の浸漬の態様や条件によっては、連続搬送とすることも可能である。
【0027】
また、ペースト膜形成手段として、キャリアフィルムを介して塗布装置本体の平坦部と対向するように配設され、キャリアフィルムの搬送方向における前方側の側壁構成部材の下端部と、上記平坦部上のキャリアフィルムとの間に所定の隙間を形成することが可能で、内部に収容されたペーストが該隙間からキャリアフィルム上に供給されるように構成されたペースト供給槽を備えたものを用いることにより、キャリアフィルムが、塗布装置本体の平坦部とペースト供給槽の間を搬送されるだけで、上記隙間からペーストがキャリアフィルム上に供給され、隙間の寸法に対応する厚みのペースト膜が容易かつ確実にキャリアフィルム上に形成することになる。
したがって、ペースト供給槽や平坦部を備えた塗布装置本体を往復動させたりすることを不要にして、装置のサイクルタイムをより確実に短くすることが可能になり、生産性の高いペースト塗布装置を提供することが可能になる。
また、上述のようにペースト供給槽などの部材を往復動させる必要がなくなることから、装置の小型化を図ることが可能になるとともに、設備の設置スペースを小さくすることが可能になり、この点でも有意義である。
【0028】
また、ペースト供給槽の前方側の側壁構成部材の上下位置を調整することにより、前方側の側壁構成部材の下端部と、上記平坦部上のキャリアフィルムとの隙間の大きさを調整して、キャリアフィルム上のペースト膜の厚みを調整できるようにした場合、種々の厚みでペーストを塗布することが必要な場合に、効率よく対応することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【0029】
また、電子部品素子保持手段を、塗布装置本体の平坦部の上方であって、ペースト供給槽よりもキャリアフィルムの搬送方向の前方側に位置するように配設することにより、ペースト膜形成手段により形成されたペースト膜に、速やかに電子部品素子を浸漬して、ペーストを効率よく塗布することが可能な、実用性の高いペースト塗布装置を提供することが可能になる。
【0030】
また、本発明において、ペーストの種類には特に制約はないが、ペーストとして、電子部品の電極形成用の導電ペーストを用いることにより、電子部品素子に外部電極を形成する際に、導電ペーストを効率よく塗布して、例えば、両端部に一対の外部電極備えた積層セラミックコンデンサなどの電子部品を効率よく製造することが可能になる。
【0031】
本発明のペースト塗布方法は、所定の方向に、連続的又は間欠的に搬送されるキャリアフィルムにペーストを供給してペースト膜を形成し、キャリアフィルム上のペースト膜に電子部品素子の所定部分を浸漬することにより、電子部品素子の表面の所定部分にペーストを塗布するようにしているので、上述の従来のペースト塗布装置を用いる場合のように、ペースト供給手段やペースト膜を形成すべき対象(平盤など)を往復動させることを必要とせずに、効率よくペーストの塗布を行うことが可能になる。したがって、ペーストを電子部品素子の表面に塗布する工程を経て製造される電子部品を効率よく製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に本発明の実施例を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0033】
図1は、本発明の実施例にかかるペースト塗布装置の要部構成を示す図、図2は、図1のペースト塗布装置を用いて外部電極用の導電ペーストを塗布し、焼き付ける工程を経て製造される電子部品(この実施例では積層セラミックコンデンサ)の構成を示す斜視図である。
【0034】
この実施例のペースト塗布装置は、電子部品(積層セラミックコンデンサ)を製造するにあたって、電子部品素子に外部電極形成用の導電ペーストを塗布するのに用いるペースト塗布装置である。
【0035】
このペースト塗布装置は、図1に示すように、平坦部2を有する塗布装置本体1と、キャリアフィルム3と、キャリアフィルム3を、塗布装置本体1の平坦部2上を連続的または間欠的に矢印Aの方向に搬送するためのキャリアフィルム搬送手段4と、キャリアフィルム3上にペースト(外部電極形成用の導電ペースト)5を供給して、キャリアフィルム3上に導電ペースト膜5aを形成するためのペースト膜形成手段6と、電子部品素子11を保持する電子部品素子保持手段7とを備えている。
なお、この実施例では、キャリアフィルム3として、ポリエチレンテレフタレート(PET)製で、厚みが30μmまたは50μmのものが用いられている。なお、キャリアフィルム3はこれに限らず、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)のような化学フィルムや、鉄、ステンレスなどの金属フィルムからなるものなど種々のものを用いることが可能である。
【0036】
キャリアフィルム3を連続的または間欠的に搬送するキャリアフィルム搬送手段4は、キャリアフィルム3の搬送方向についてみた場合の塗布装置本体1の手前側に配設された第1のローラ21と,搬送方向についてみた場合の前方側に配設された第2のローラ22と、巻き出し機構31と、巻き取り機構32とを備えた構成とされている。そして、この実施例では、巻き出し機構31から供給されるキャリアフィルム3が第1のローラ21,第2のローラ22を経て、巻き取り機構32により巻き取られることによりキャリアフィルム3が搬送されるとともに、電子部品素子保持手段7に保持された電子部品素子11を導電ペースト膜5aに浸漬する際には、キャリアフィルム3の搬送を一時的に停止させる(すなわち間欠搬送を行う)ことができるように構成されている。
【0037】
また、キャリアフィルム3の搬送方向の、第2のローラ22よりも前方側には、電子部品素子11への導電ペースト5の塗布工程後にキャリアフィルム3上に残る導電ペーストを掻き取って回収するための掻き取り用ブレード15が配設されている。なお、ここでの導電ペーストの掻き取りは、上述の従来のペースト塗布装置における、次の電子部品素子の浸漬のために新しい導電ペースト膜を形成する領域を確保するためのものではなく、単なる導電ペーストの回収のための掻き取りである。
【0038】
また、ペースト膜形成手段6は、キャリアフィルム3を介して塗布装置本体1の平坦部2と対向するように配設されたペースト供給槽8を備えている。ペースト供給槽8は、キャリアフィルム3の搬送方向(矢印A)についてみた場合における前方側の側壁構成部材(ペースト膜厚調整用ブレード)16の下端部と、平坦部2上のキャリアフィルム3との間に所定の隙間Gを形成することができるように構成されており、ペースト供給槽8の内部に収容された導電ペースト5が該隙間Gからキャリアフィルム3上に供給されるように構成されている。
【0039】
なお、ペースト供給槽8の前方側の側壁構成部材(ペースト膜厚調整用ブレード)16と対向する、キャリアフィルム3の搬送方向についてみた場合の後方側の側壁構成部材17および、キャリアフィルム3の搬送方向に沿う一対の側壁構成部材(図示せず)は、キャリアフィルム3の搬送時にも導電ペーストが漏れ出さないように、キャリアフィルム3と密着していることが必要になるが、その場合にも、キャリアフィルム3を損傷しないように、ゴムなどの弾性材料から形成されたものであることが望ましい。
【0040】
そして、キャリアフィルム3が、塗布装置本体1の平坦部2とペースト供給槽8の間を搬送されると、隙間Gから導電ペースト5がキャリアフィルム3上に供給され、隙間Gの寸法に対応する厚みの導電ペースト膜5aがキャリアフィルム3上に形成されるように構成されている。
【0041】
さらに、前方側の側壁構成部材(ペースト膜厚調整用ブレード)16は、上下位置を制御することができるように構成されており、これにより隙間Gの大きさを調整して、キャリアフィルム3上の導電ペースト膜5aの厚みを調整することが可能になる。なお、前方側の側壁構成部材(ペースト膜厚調整用ブレード)16は、隙間Gの寸法、形状を確実に保持することができるように剛性を有する材料(この実施例では金属材料)から形成されている。
【0042】
また、電子部品素子11を保持する電子部品素子保持手段7は、塗布装置本体1の平坦部2の上方であって、ペースト供給槽8よりもキャリアフィルム3の搬送方向の前方側に位置するように配設されており、ペースト膜形成手段6により形成された導電ペースト膜5aに、速やかに電子部品素子11を浸漬して、導電ペースト5を効率よく電子部品素子11に塗布することができるように構成されている。
【0043】
次に、上述のように構成されたペースト塗布装置を用いて電子部品素子に導電ペーストを塗布する方法について説明する。
(1)導電ペースト5が充填されたペースト供給槽8の前方側の側壁構成部材(ペースト膜厚調整用ブレード)16の下端部とキャリアフィルム3との隙間Gを所定の間隔(例えば0.5mm)に調整し、その隙間Gの大きさを保持しつつ、キャリアフィルム3を矢印Aの方向に搬送し、キャリアフィルム3上に、導電ペースト5を展開させて所定の厚みを有する導電ペースト膜5aを形成した後、キャリアフィルム3の搬送を一時的に停止させる。
【0044】
(2)それから、電子部品素子保持手段7に保持された電子部品素子11を、キャリアフィルム3上の導電ペースト膜5aに浸漬し、電子部品素子11の一方の端部に導電ペースト5を付着させる。
その後、キャリアフィルム3の搬送(このとき、キャリアフィルム3の搬送と同時に導電ペースト膜5aの形成が行われる)、キャリアフィルム3の搬送停止、電子部品素子11の導電ペースト膜5aへの浸漬の工程を2度繰り返して、合計3度、電子部品素子11への導電ペースト5の塗布を行う。
【0045】
ここで、一度目の浸漬は、主として、電子部品素子11の端面に導電ペーストを予備的に付着させることを意図して行われる。
また、2度目の浸漬は、端面に予備的に導電ペースト5が塗布され、導電ペースト5が付着しやすくなった状態の電子部品素子11の端面およびその周囲の稜線部に十分に導電ペースト5を付着させるとともに、端面から側面に所定距離D(図2参照)だけ回りんだ折返し部分が形成されるように、導電ペースト5を付着させることを意図して行われる。
さらに、3度目の浸漬は、電子部品素子11の端面に意図するよりも厚く付着しすぎたり、重力により垂れ下がったりした余剰の導電ペーストを除去するとともに、電子部品素子11の端面および稜線部に、必要な厚みで導電ペースト5が付着した状態とすることを意図して行われる。
【0046】
(3)次に、電子部品素子11の一方の端部に付着させた導電ペースト5を乾燥させた後、上記(1)〜(3)の工程を繰り返して、電子部品素子11の他方の端部にも導電ペースト5を付着させる。その後、電子部品素子11の他方の端部に付着させた導電ペースト5を乾燥させる。
【0047】
(4)それから、導電ペースト5の乾燥が行われた電子部品素子11を800℃で焼成して、導電ペースト5を焼き付ける。これにより、図2に示すような、電子部品素子11の両端部に外部電極12a,12bを備えた電子部品10が得られる。
【0048】
なお、電子部品素子11が浸漬された後の、キャリアフィルム3上の導電ペースト膜5aは、掻き取り用ブレード15により順次掻き取られて回収され、固形物の溶解や組成調整などが行われた後、導電ペーストとして再利用されることになる。
【0049】
上述のペースト塗布装置を用いて、導電ペーストを電子部品素子に塗布することにより、電子部品素子の端部に効率よく導電ペーストを塗布して、信頼性の高い外部電極を備えた電子部品を効率よく製造することが可能になる。
【0050】
なお、図4に示した従来のペースト塗布装置を用いて、上記実施例の場合と同様に、電子部品素子に導電ペーストを塗布しようとすると、背景技術の欄でも説明したように、導電ペースト膜の形成と、電子部品素子を浸漬した後の導電ペースト膜の除去(回収)のために、ペースト供給槽を往復動させることが必要になり、装置のサイクルタイムが長くなることが避けられない。
【0051】
さらに、従来のペースト塗布装置を用いて上記実施例の場合のように、電子部品素子の一対の端部のそれぞれを、繰り返して3回導電ペースト膜に浸漬しようとすると、ペースト供給槽の往復動を浸漬の回数だけ繰り返して行わなければならず、さらにサイクルタイムが長くなって、生産効率が大幅に低下することになる。
【0052】
これに対し、上記実施例のペースト塗布装置を用いて、導電ペーストを電子部品素子に塗布するようにした場合、ペースト膜の形成、および、電子部品素子を浸漬した後のペースト膜の除去のために、ペースト供給槽あるいはペースト膜が形成される平坦部を備えた塗布装置本体を往復動させたりすることが不要で、効率よく導電ペーストを電子部品素子に塗布することができる。
【0053】
なお、上記実施例の場合のように、電子部品素子の両端部をそれぞれ3回ずつ導電ペースト膜に浸漬して導電ペーストの塗布を行った場合、図4に示す従来のペースト塗布装置を用いた場合には、種々の条件にもよるが、実施例のペースト塗布装置を用いた場合よりも工程時間が約25秒長くなること、すなわち、本発明のペースト塗布装置を用いることにより、従来よりも、工程時間を約25秒短縮できることが確認されている。これは、上記実施例の(1)〜(3)の工程で、キャリアフィルムを搬送するだけでよく、従来のペースト塗布装置を用いる場合のように、ペースト供給槽あるいはペースト膜が形成される平盤を往復動させる必要がないことによる。
また、上述のように本発明の実施例のペースト塗布装置においては、ペースト供給槽などの部材を往復動させる必要がなくなることから、その分だけ装置の小型化を図ることが可能になるとともに、設備の設置スペースを小さくすることが可能になる。
【0054】
また、上記従来のペースト塗布装置の場合、同じ平盤上に繰り返して導電ペースト膜を形成するようにしているため、電子部品素子を浸漬するたびに、浸漬後の導電ペースト膜を掻き取って除去しなければならず、掻き取りが不十分になると、次の導電ペースト膜の形成に支障をきたしたり、掻き取られなかった導電ペーストが膜状に乾燥し、導電ペーストの回収工程を経てペースト供給槽内の導電ペーストに混入し、外部電極の外観不良の原因になったりするおそれがあるが、 上記実施例のペースト塗布装置を用いた場合、搬送されるキャリアフィルム上に導電ペースト膜が形成されるとともに、電子部品素子の浸漬後には、キャリアフィルムが順次巻き取られ、キャリアフィルムの新しい面に、次の電子部品素子を浸漬するための導電ペースト膜が形成されることになる。したがって、上述の従来のペースト塗布装置を用いた場合に生じるような上記問題を確実に回避することが可能になる。
【0055】
なお、上記実施例では、電子部品素子に塗布すべきペーストが、外部電極形成用の導電ペーストである場合を例にとって説明したが、本発明において、ペーストの種類に特別の制約はなく、抵抗材料ペースト、絶縁材料ペースト、磁性体ペーストなど種々のペーストを電子部品素子に塗布する場合にも本発明を適用することが可能である。
【0056】
また、上記実施例では、電子部品素子の両端部に導電ペーストを塗布して外部電極を形成する場合を例にとって説明したが、本発明は、電子部品素子の他の部分にペーストを塗布する場合にも広く適用することが可能である。
【0057】
本発明はさらにその他の点においても上記実施例に限定されるものではなく、平坦部を備えた塗布装置本体の具体的な構成、キャリアフィルムを構成材料やその厚み、キャリアフィルム搬送手段、ペースト膜形成手段、および、電子部品素子保持手段の構成などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
上述のように、本発明によれば、ペースト供給槽あるいはペースト膜が形成される平坦部を備えた塗布装置本体を往復動させること、電子部品素子の浸漬後にペースト膜を除去すること、導電ペースト膜が除去された面に再びペースト膜を形成することを必要とせず、サイクルタイムを短くすることが可能になるとともに、ペースト膜の除去工程におけるペースト膜の一部残留などによる不具合が発生することを防止して、効率よくしかも信頼性の高いペースト塗布を行うことが可能になる。
したがって、本発明は、電子部品素子の表面に種々のペースト(導電ペースト、抵抗ペースト、絶縁体ペーストなど)を塗布する工程を経て製造される電子部品の製造工程に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例にかかるペースト塗布装置の要部構成を示す図である。
【図2】図1のペースト塗布装置を用いて外部電極用の導電ペーストを塗布して焼き付ける工程を経て製造される電子部品(積層セラミックコンデンサ)の外観構成を示す斜視図である。
【図3】積層セラミックコンデンサなどのチップ型の電子部品を示す図である。
【図4】従来のペースト塗布装置を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 塗布装置本体
2 平坦部
3 キャリアフィルム
4 キャリアフィルム搬送手段
5 ペースト(導電ペースト)
5a 導電ペースト膜
6 ペースト膜形成手段
7 電子部品素子保持手段
8 ペースト供給槽
10 電子部品
11 電子部品素子
12a,12b 外部電極
15 掻き取り用ブレード
16 前方側の側壁構成部材(ペースト膜厚調整用ブレード)
17 後方側の側壁構成部材
21 第1のローラ
22 第2のローラ
31 巻き出し機構
32 巻き取り機構
D 折返し部分の長さ(端面から側面に回り込んだ距離)
G 前方側の側壁構成部材の下端部とキャリアフィルムとの間の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品素子の表面にペーストを塗布するための装置であって、
平坦部を有する塗布装置本体と、
前記塗布装置本体の平坦部上を連続的または間欠的に搬送されるキャリアフィルムと、
前記キャリアフィルムを搬送するキャリアフィルム搬送手段と、
前記キャリアフィルム上にペーストを供給して、前記キャリアフィルム上にペースト膜が形成されるようにするためのペースト膜形成手段と、
電子部品素子を保持する電子部品素子保持手段と
を備え、
前記電子部品素子保持手段により保持された前記電子部品素子の所定部分が、前記キャリアフィルム上に形成された前記ペースト膜に浸漬されることにより、前記電子部品素子の所定部分にペーストが塗布されるように構成されていること
を特徴とするペースト塗布装置。
【請求項2】
前記ペースト膜形成手段は、前記キャリアフィルムを介して前記塗布装置本体の前記平坦部と対向するように配設され、前記キャリアフィルムの搬送方向における前方側の側壁構成部材の下端部と、前記平坦部上の前記キャリアフィルムとの間に所定の隙間を形成することが可能で、内部に収容されたペーストが該隙間から前記キャリアフィルム上に供給されるように構成されたペースト供給槽を備え、
前記キャリアフィルムが、前記塗布装置本体の平坦部と前記ペースト供給槽の間を搬送されると、前記隙間から前記ペーストが前記キャリアフィルム上に供給され、前記隙間の寸法に対応する厚みのペースト膜が前記キャリアフィルム上に形成されるように構成されていること
を特徴とする請求項1記載のペースト塗布装置。
【請求項3】
前記ペースト供給槽の前方側の側壁構成部材の上下位置を調整することにより、前記隙間の大きさを調整して、前記キャリアフィルム上の前記ペースト膜の厚みを調整することができるように構成されていることを特徴とする請求項2記載のペースト塗布装置。
【請求項4】
前記電子部品素子保持手段が、前記塗布装置本体の前記平坦部の上方であって、前記ペースト供給槽よりも前記キャリアフィルムの搬送方向の前方側に位置するように配設されていることを特徴とする請求項2または3記載のペースト塗布装置。
【請求項5】
前記ペーストが、電子部品の電極形成用の導電ペーストであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のペースト塗布装置。
【請求項6】
電子部品素子の表面にペーストを塗布するためのペースト塗布方法であって、
所定の方向に、連続的又は間欠的に搬送されるキャリアフィルム上にペーストを供給してペースト膜を形成し、
前記キャリアフィルム上の前記ペースト膜に電子部品素子の所定部分を浸漬することにより、電子部品素子の表面の所定部分にペーストを塗布すること
を特徴とするペースト塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−17642(P2010−17642A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179762(P2008−179762)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】