説明

ペースト塗布装置及びペースト塗布方法

【課題】描画速度の加速領域における描画速度とスクリューの回転速度との関係変化に起因したパターン切れやペースト断面積ばらつきの発生を防止することができるペースト塗布装置を提供する。
【解決手段】ペースト塗布装置1において、塗布対象物Kに向けてスクリューの回転によりノズル5aからスクリューの回転速度に応じた量のペーストを吐出する塗布ヘッド5と、直線部分及び屈曲部分を有する塗布パターンに基づいて塗布対象物Kと塗布ヘッド5とを相対移動させる移動機構3、4と、スクリューの回転開始タイミングから塗布対象物Kと塗布ヘッド5との相対移動開始タイミングまでの時間、直線部分の塗布を行う場合のスクリューの回転速度より小さくスクリューの回転速度を制御し、その時間が経過した場合、塗布対象物Kと塗布ヘッド5との相対移動速度に応じてスクリューの回転速度を制御する手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布対象物にペーストを塗布するペースト塗布装置及びペースト塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト塗布装置は、液晶表示パネル等の様々な装置を製造するために用いられている。このペースト塗布装置は、塗布対象物に対してペーストを吐出する塗布ヘッドを備えており、その塗布ヘッドと塗布対象物とを相対移動させながら、塗布対象物上にペーストを塗布し、所定の塗布パターン(ペーストパターン)を形成する。
【0003】
塗布ヘッドとしては、スクリューの回転圧によりペーストを吐出する塗布ヘッドが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このスクリュー式の塗布ヘッドは、ペーストを吐出するためのノズルを有するシリンダ部材と、そのシリンダ部材の内部に回転可能に設けられたスクリューと、そのスクリューを回転させる吐出用モータとを備えている。この塗布ヘッドは、塗布対象物に向けてスクリューの回転によりノズルからスクリューの回転量、すなわちスクリューの回転速度(吐出用モータの回転速度)に応じた量のペーストを吐出する。
【0004】
このようなペースト塗布装置は、液晶表示パネル等を製造する場合、2枚の基板を貼り合わせるため、移動する塗布対象物である基板に対して液晶表示パネルの表示領域を囲むように、シール剤等のシール性及び接着性を有するペーストを塗布する。このとき、ペーストは描画開始位置の始点(描画開始点)と描画終了位置の終点(描画終了点)とをつなぎ合わせて基板上に塗布される。
【0005】
ここで、例えば、図7に示すように、基板K上の塗布パターンPの始点Oの大きさ(ペースト断面積)が設計値(所定の設計範囲)より小さい場合には、始点Oと終点Fとの間に隙間が発生し、液晶充填時等に液晶が漏れ出してしまう。また、図8に示すように、基板K上の塗布パターンPの始点Oの大きさが設計値より大きい場合には、貼り合わせ時にペーストが表示領域にはみ出してしまう。これらの不具合を防止するため、始点Oの大きさを調整する必要がある。
【特許文献1】特開平4−49108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の大きさの調整は、図9に示すように、スクリューの回転開始タイミングと基板Kの移動開始タイミングとの間に時間差(時間T1)を設定し(図9中の二点鎖線参照)、この時間T1を変更することにより、始点Oの大きさが設計値と同じになるように行うことが考えられる。なお、スクリューの回転速度(図9中の波形B2)は、描画速度(図9中の波形B1)が変化してもペースト断面積(ペーストの単位時間当たりの塗布量)が一定になるように設定されている。ここで、例えば、時間T1を長く変更すると、スクリューの回転速度の波形B2における加速部分が左方向D1に移動し(図9中の一点鎖線参照)、基板Kの停止状態での吐出時間が延長されるため、始点Oの大きさは大きくなる。一方、時間T1を短く変更すると、吐出用モータ回転速度の波形B2における加速部分が右方向D2に移動し、基板Kの停止状態での吐出時間が短縮されるため、始点Oの大きさが小さくなる。
【0007】
ところが、スクリューの回転開始タイミングから基板Kの移動開始タイミングまでの時間T1を変更した場合、例えば、図9に示す描画速度(基板Kの移動速度)の波形B1及びスクリューの回転速度の波形B2において、時間T1を長くした場合には、波形B2の加速部分が左方向D1に移動する(図9中の一点鎖線参照)。このため、描画速度が最大値(塗布パターンの直線部分の描画速度)に達するまでの加速領域T2においては、描画速度とスクリューの回転速度との関係(比率)が変化してしまう。この関係の変化により、加速領域T2でのペースト断面積(ペーストの単位時間当たりの塗布量)が一定でなくなるため、加速領域T2でパターン切れやペースト断面積ばらつき、特にペースト断面積(塗布量)の増大が発生してしまうので好ましくない。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、描画速度の加速領域における描画速度とスクリューの回転速度との関係変化に起因したパターン切れやペースト断面積ばらつきの発生を防止することができるペースト塗布装置及びペースト塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、ペースト塗布装置において、塗布対象物に向けてスクリューの回転によりノズルからスクリューの回転速度に応じた量のペーストを吐出する塗布ヘッドと、直線部分及び屈曲部分を有する塗布パターンに基づいて塗布対象物と塗布ヘッドとを相対移動させる移動機構と、スクリューの回転開始タイミングから塗布対象物と塗布ヘッドとの相対移動開始タイミングまでの時間、直線部分の塗布を行う場合のスクリューの回転速度より小さくスクリューの回転速度を制御し、前述の時間が経過した場合、塗布対象物と塗布ヘッドとの相対移動速度に応じてスクリューの回転速度を制御する手段とを備えることである。
【0010】
本発明の実施の形態に係る第2の特徴は、ペースト塗布方法において、塗布対象物に向けてスクリューの回転によりノズルからスクリューの回転速度に応じた量のペーストを吐出する塗布ヘッドを用いて、直線部分及び屈曲部分を有する塗布パターンに基づいて塗布対象物と塗布ヘッドとを相対移動させながら、塗布対象物にペーストを塗布する工程と、スクリューの回転開始タイミングから塗布対象物と塗布ヘッドとの相対移動開始タイミングまでの時間、直線部分の塗布を行う場合のスクリューの回転速度より小さくスクリューの回転速度を制御し、前述の時間が経過した場合、塗布対象物と塗布ヘッドとの相対移動速度に応じてスクリューの回転速度を制御する工程とを有することである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、描画速度の加速領域における描画速度とスクリューの回転速度との関係変化に起因したパターン切れやペースト断面積ばらつきの発生を防止することができるペースト塗布装置及びペースト塗布方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の一形態について図1乃至図6を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るペースト塗布装置1は、塗布対象物である基板Kが水平状態(図1中、X軸方向とそれに直交するY軸方向に沿う状態)で載置されるステージ2と、そのステージ2を保持してY軸方向に移動させるY軸移動機構3と、そのY軸移動機構3を介してステージ2をX軸方向に移動させるX軸移動機構4と、ステージ2上の基板Kにシール剤等のペースト(例えば、シール性及び接着性を有するペースト)をそれぞれ塗布する複数の塗布ヘッド5と、それらの塗布ヘッド5をZ軸方向にそれぞれ移動させる複数のヘッドZ軸移動機構6と、各塗布ヘッド5を対応するヘッドZ軸移動機構6を介してX軸方向に移動可能に支持し、X軸方向に沿って移動させるヘッドX軸移動機構7と、そのヘッドX軸移動機構7を支持する支持部材8と、X軸移動機構4及び支持部材8を支持する架台9と、各部を制御する制御部10とを備えている。
【0014】
ステージ2は、Y軸移動機構3上に積層され、Y軸方向に移動可能に設けられている。このステージ2はY軸移動機構3によりY軸方向に移動する。なお、ステージ2の載置面には、ガラス基板等の基板Kが自重により載置されるが、これに限るものではなく、例えば、その基板Kを保持するため、静電チャックや吸着チャック等の機構を設けるようにしてもよい。
【0015】
Y軸移動機構3は、ステージ2をY軸方向に案内して移動させる移動機構である。このY軸移動機構3はX軸移動機構4上に設けられ、制御部10に電気的に接続されている。なお、Y軸移動機構3としては、例えば、モータを駆動源とする送りネジ移動機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ移動機構等を用いる。
【0016】
X軸移動機構4は、Y軸移動機構3をX軸方向に案内して移動させる移動機構である。このX軸移動機構4は架台9上に設けられ、制御部10に電気的に接続されている。なお、X軸移動機構4としては、例えば、モータを駆動源とする送りネジ移動機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ移動機構等を用いる。
【0017】
塗布ヘッド5は、図2に示すように、ペーストを吐出するためのノズル5aを有するシリンダ部材5bと、そのシリンダ部材5bの内部に回転可能に設けられたスクリュー5cと、そのスクリュー5cを回転させる吐出用モータ5dと、スクリュー5cと吐出用モータ5dとを連結する連結部材5eと、ペーストを貯留する貯留容器5fと、シリンダ部材5bと貯留容器5fとを接続する供給パイプ5gとを備えている。
【0018】
シリンダ部材5bは、先端部にノズル5aを有する中空の収容筒である。このシリンダ部材5bの側壁には、内部に連通する貫通孔H1が設けられている。スクリュー5cは、その外周にらせん状のネジ部Nを有している。このスクリュー5cは連結部材5eにより吐出用モータ5dに連結されている。吐出用モータ5dは、シリンダ部材5bの基端部に固定されて設けられており、制御部10に電気的に接続されている。この吐出用モータ5dが回転すると、スクリュー5cも連結部材5eを介して回転する。
【0019】
貯留容器5fは、シリンダ部材5bと並列に設けられている。この貯留容器5fは、液状のペーストを貯留する貯留部として機能する。この貯留容器5fの上部には、開口部H2が形成されており、貯留容器5fの底部にも、開口部H3が形成されている。上部の開口部H2は、気体を供給する気体供給部(図示せず)にホースJ1を介して接続されている。底部の開口部H3は、供給パイプ5gを介して貫通孔H1に接続されている。
【0020】
ここで、シリンダ部材5bの内周(内壁)とスクリュー5cとの間には、ペーストが充満されるらせん状の液室が形成されている。この液室にペーストを充填する場合には、予備吐出動作が行われる。まず、気体が気体供給部により貯留容器5fの開口部H2から供給される。この状態で吐出用モータ5dによりスクリュー5cが回転させられる。このとき、スクリュー5cの回転はペーストが液室に充満するまで持続される。さらに、スクリュー5cの回転はペーストがノズル5aから吐出された後も所定時間だけ持続される。これにより、液室内に空気を残留させることなく、シリンダ部材5b内の液室にペーストを充満させることができる。
【0021】
この予備吐出動作後、吐出用モータ5dの回転に応じてシリンダ部材5b内のスクリュー5cが回転すると、シリンダ部材5bの内周とスクリュー5cとの間の液室に充填されたペーストはノズル5aから吐出される。このとき、スクリュー5cの回転量に応じた量のペーストがノズル5aから吐出される。例えば、スクリュー5cが一回転すると、そのスクリュー5cのネジ部Nのピッチ相当分のペーストがノズル5aから吐出される。このペーストの単位時間当たりの吐出量は、吐出用モータ5dの回転速度(単位時間当たりの回転量)、すなわちスクリュー5cの回転速度に比例するので、スクリュー5cの回転速度を変えることによりノズル5aからのペーストの単位時間当たりの吐出量を調整することができる。このように、塗布ヘッド5はスクリュー5cにより機械的にペーストを押し出すことから、スクリュー5cの回転速度(回転量)に比例した吐出量を得ることができる。
【0022】
図1に戻り、ヘッドZ軸移動機構6は、塗布ヘッド5を支持して水平面に直交するZ軸方向、すなわちステージ2に対して塗布ヘッド5を接離させる接離方向に移動させる移動機構である。なお、ヘッドZ軸移動機構6としては、例えば、モータを駆動源とする送りネジ移動機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ移動機構等を用いる。
【0023】
ヘッドX軸移動機構7は、各塗布ヘッド5をX軸方向に移動可能にそれぞれ支持しており、それらの塗布ヘッド5をX軸方向、すなわち支持部材8に沿って移動させる移動機構である。なお、ヘッドX軸移動機構7としては、例えば、モータを駆動源とする送りネジ移動機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ移動機構等を用いる。
【0024】
支持部材8は、ヘッドX軸移動機構7、すなわち各塗布ヘッド5を支持する門型のコラムである。この支持部材8は、その延伸部8aがX軸方向に沿うように位置付けられ、その脚部8bが架台9の上面に固定されて架台9上に設けられている。なお、ヘッドX軸移動機構7は延伸部8aの前面(図1中)に設けられている。
【0025】
架台9は、四角平板状のベース板9aと、そのベース板9aを支持する4つの支柱9bとを備えている。ベース板9aの上面には、X軸移動機構4及び支持部材8が載置されて設けられている。なお、各支柱9bは、ベース板9aを水平に支える脚部として機能する。
【0026】
制御部10は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、ペースト塗布に関する塗布情報や各種のプログラム等を記憶する記憶部と(いずれも図示せず)を備えている。塗布情報は、所定の塗布パターンP1や描画速度(基板Kの移動速度)、スクリュー5cの回転速度(吐出用モータ5dの回転速度)等に関する情報を含んでいる。
【0027】
この制御部10は、塗布情報や各種のプログラムに基づいてY軸移動機構3、X軸移動機構4及びヘッドX軸移動機構7を制御し、各塗布ヘッド5のノズル5aとステージ2上の基板Kとを基板Kの表面に沿って平行に相対移動させる。なお、塗布ヘッド5のノズル5aには、レーザ変位計等の距離測定器(図示せず)が一体的に設けられている。この距離測定器は、ステージ2上の基板Kの表面までの離間距離を測定する。制御部10は、距離測定器により測定された離間距離によるフィードバック制御を行うことによって、ノズル5aと基板Kの表面とのギャップを所定のギャップに保つように制御する(ギャップ制御)。
【0028】
ここで、図3に示すように、ペースト塗布装置1がステージ2上の基板Kの周縁部にペーストを塗布し、1つの塗布パターンP1を描画する場合には、図4に示すような描画速度変化パターン(図4中の波形B3)及びスクリュー5c(吐出用モータ5d)の回転速度変化パターン(図4中の波形B4)が塗布情報として記憶部に格納されている。ペースト塗布装置1は、描画速度変化パターン及びスクリュー5cの回転速度変化パターンを含む塗布情報に基づいて、ステージ2上の基板Kの周縁部に沿って例えば時計回りに線状にペーストを塗布し、矩形状の塗布パターンP1を描画する。なお、ペースト塗布装置1は、各塗布ヘッド5により同じ塗布パターンを並列に描画する場合もある。
【0029】
塗布パターンP1の直線部分Sでは、描画時間を短縮するため、描画速度を極力高速に設定し、塗布パターンP1の屈曲部分であるコーナー部分C1〜C4では、ペーストを小さな半径で均一な塗布量で描画するため、描画速度を減速させるので、コーナー部分C1〜C4を通過するときに描画速度の急減速及び急加速が生じる。このため、その描画速度の変化に合わせてノズル5aからのペーストの塗布量を減少及び増加させる必要がある。
【0030】
塗布量の設定は、以下の手順で行われる。まず、直線部分Sでの描画速度Va及びコーナー部分C1〜C4での描画速度Vbが設定される。この設定は、例えば、操作者が、制御部10に接続されたタッチパネルやキーボード等の入力部を操作して行われる。通常、直線部分Sでの描画速度Vaは、基板Kとノズル5aとを相対移動させるY軸移動機構3及びX軸移動機構4が許容する最高速度に設定される。コーナー部分C1〜C4での描画速度Vbは、経験的あるいは実験的に得られた好ましい速度(例えば、塗布パターンP1の線幅や厚さ等の膨らみが発生しない速度)に設定される。
【0031】
次いで、スクリュー5cの回転速度(吐出用モータ5dの回転速度)が設定される。この回転速度は計算により求められる。ペーストの単位時間当たりの吐出量は、スクリュー5cのピッチや直径等の機械構造と、スクリュー5cの回転速度により算出される。単位時間当たりに塗布すべきペーストの塗布量及び描画速度Va、Vbに基づいて、それぞれの描画速度Va、Vbにおいて単位時間当たりに吐出させるべきペーストの吐出量を算出することが可能である。この算出した吐出量から各描画速度Va、Vbでのスクリュー5cの回転速度Ra、Rbが逆算される。このようにして、各描画速度Va、Vb及びスクリュー5cの各回転速度Ra、Rbが設定される。
【0032】
次に、このようなペースト塗布装置1が行う塗布動作について説明する。ここでは、前述のように、ペースト塗布装置1がステージ2上の基板Kの周縁部にペーストを塗布し、1つの塗布パターンP1を描画する場合について説明する(図3参照)。ペースト塗布装置1は、描画速度変化パターン及びスクリュー5cの回転速度変化パターンを含む塗布情報に基づいて、ステージ2上の基板Kの周縁部に沿って例えば時計回りに線状にペーストを塗布し、矩形状の塗布パターンP1を描画する。
【0033】
まず、制御部10は、Y軸移動機構3、X軸移動機構4及びヘッドX軸移動機構8を制御し、塗布ヘッド5のノズル5aを始点(描画開始点)Oの真上(始点Oに対向する位置)に移動させ、ヘッドZ軸移動機構6を制御し、距離測定器による測定結果に応じてノズル5aと基板Kの表面とのギャップが所定のギャップになるまで、塗布ヘッド5のノズル5aを下降させる。
【0034】
次いで、制御部10は、図4に示すように(図4中の波形B4)、スクリュー5cの回転開始タイミングから基板Kの移動開始タイミングまでの時間(事前回転時間)T1だけ、塗布パターンP1の直線部分S(図3参照)の塗布を行う場合のスクリュー5cの回転速度Raより小さくスクリュー5cの回転速度(吐出用モータ5dの回転速度)を制御する。ここでは、特に、制御部10は、塗布パターンP1のコーナー部分C1〜C4(図3参照)の塗布を行う場合のスクリュー5cの回転速度Rb以下である回転速度Rcで、所定時間T3だけ一定にスクリュー5cの回転速度を制御する。なお、所定時間T3は、スクリュー5cの回転開始タイミングから基板Kの移動開始タイミングまでの時間T1内で予め設定された時間(一定回転時間)である。この所定時間T3は操作者により変更可能である。例えば、操作者は、制御部10に接続されたタッチパネルやキーボード等の入力部を操作して所定時間T3を変更する。
【0035】
ここで、塗布パターンP1の終点Fでは、通常、スクリュー5cを吐出時の回転方向と逆方向に回転させることによって、玉や糸引き等の発生が防止されている。このときのスクリュー5cの逆回転により、ノズル5a内のペーストP2はシリンダ部材5bの内部方向に引き込まれてしまう。これにより、図5に示すように、ノズル5aの先端にペーストP2が存在しない状態が発生している。
【0036】
したがって、前述のように制御部10が所定時間T3だけ一定の回転速度Rcでスクリュー5cを回転させることによって、ノズル5a内のペーストP2をノズル5aの先端に向けて移動させる。このとき、基板Kが停止した状態で、スクリュー5cは回転速度0(ゼロ)から回転速度Rcまで加速し、その回転速度Rcで所定時間T3だけ回転する。これに応じて、図5に示すようなシリンダ部材5b内のペーストP2は、図6に示すように、ノズル5aの先端まで移動する。なお、所定時間T3を変更することによって、基板Kの停止状態で吐出されるペーストP2の吐出量を適切に調整することが可能である。これにより、塗布パターンP1の始点Oの大きさ(ペースト断面積)を所定の設計範囲内に調整することができ、その結果、液晶の漏れやペーストのはみ出し等の不具合を防止することができる。
【0037】
その後、制御部10は、図4に示すように(図4中の波形B4)、所定時間T3が経過した場合、X軸移動機構4を制御し、ノズル5aに対してステージ2上の基板KをX軸の正方向(図1中のX軸の右方向)に移動させ、基板Kと塗布ヘッド5との相対移動速度である描画速度(図4中の波形B3)に応じてスクリュー5cの回転速度(吐出用モータ5dの回転速度)を制御して塗布を行う。なお、描画速度としては、X軸方向の相対移動速度、Y軸方向の相対移動速度、及び、それらのX軸方向の相対移動速度とY軸方向の相対移動速度とを合成した相対移動速度等が挙げられる。
【0038】
このとき、制御部10は、X軸移動機構4のモータに同期させて塗布ヘッド5の吐出用モータ5d、すなわちスクリュー5cを回転させ、塗布ヘッド5にペーストを吐出させる。すなわち、制御部10は、基板Kの移動が開始すると、描画速度(基板Kの移動速度)の増加に応じてスクリュー5cの回転速度を増加させる。基板Kは停止状態から塗布パターンP1の直線部分Sに対応して設定された描画速度(最大値)Vaまで加速する。このとき、スクリュー5cは、X軸移動機構4のモータ回転速度の変化に同期して、回転速度Rcから塗布パターンP1の直線部分Sに対応して設定された回転速度(最大値)Raまで加速する。
【0039】
塗布パターンP1の始点O付近の範囲Wa(図4参照)では、描画速度(基板Kの移動速度)は塗布パターンP1の直線部分Sの範囲Ws(図4参照)での描画速度Vaに比べ低速である。この低速領域においては、ペーストの単位時間当たりの吐出量を直線部分Sに対応する高速領域におけるペーストの単位時間当たりの吐出量に比べて少なくし、単位長さ当たりの塗布量が高速領域の塗布量と同じになるようにする。これにより、始点O付近の範囲Waで塗布量が多くなることが抑えられるので、塗布パターンP1の線幅や厚み等の膨らみを防止することができる。
【0040】
次いで、制御部10は、ノズル5aが屈曲部分である第1コーナー部分C1手前に近づくと、描画速度(基板Kの移動速度)Vaを第1コーナー部分C1の低速領域に対応して設定された描画速度Vbまで減速させる。同時に、制御部10は、その描画速度(基板Kの移動速度)の減速に応じて、Y軸移動機構3を制御し、X軸移動機構4のモータの減速に同期させて吐出用モータ5dの回転、すなわちスクリュー5cの回転を回転速度Raから回転速度Rbに減速させる。
【0041】
さらに、制御部10は、ノズル5aが第1コーナー部分C1に至ると、描画速度(基板Kの移動速度)Vbを減速し、X軸方向に移動する基板Kを停止させる。制御部10は、基板Kの減速の開始と同時に、Y軸移動機構3を制御し、第1コーナー部分C1の描画中に基板Kの移動速度が一定になるように、ノズル5aに対してステージ2上の基板KをY軸の正方向(図1中のY軸方向の上方向)に移動(描画速度Vbまで徐々に加速)させる。このとき、制御部10は、吐出用モータ5dの回転、すなわちスクリュー5cの回転を回転速度Rbに維持する。
【0042】
第1コーナー部分C1付近の範囲Wc(図4参照)では、描画速度(基板Kの移動速度)は塗布パターンP1の直線部分Sの範囲Ws(図4参照)での描画速度Vaに比べて低速である。この低速領域においては、ペーストの単位時間当たりの吐出量を直線部分Sに対応する高速領域におけるペーストの単位時間当たりの吐出量より少なくし、単位長さ当たりの塗布量が高速領域の塗布量と同じになるようにする。これにより、第1コーナー部分C1付近の範囲Wcで塗布量が多くなることが抑えられるので、塗布パターンP1の線幅や厚さ等の膨らみを防止することができる。また、第1コーナー部分C1付近で基板Kとノズル5aとの相対移動速度を直線部分Sの相対移動速度よりも低速にするので、第1コーナー部分C1での基板Kの加減速に起因する塗布ヘッド5の上下振動を防止し、第1コーナー部分C1付近でのパターン切れやペースト断面積ばらつき(塗布量のばらつき)等の発生を防止することができる。
【0043】
次いで、制御部10は、第1コーナー部分C1と同様な制御を各屈曲部分、すなわち第2コーナー部分C2、第3コーナー部分C3及び第4コーナー部分C4において行い、塗布パターンPの終点(描画終了点)Fまで基板K上にペーストを塗布する。なお、終点F付近の範囲Wb(図4参照)でも、制御部10は、X軸移動機構4のモータを減速させるのに同期させて、吐出用モータ5dの回転、すなわちスクリュー5cの回転を徐々に遅くして、ペーストの吐出量を減らす。これにより、終点F付近で塗布量が多くなることが抑えられるので、塗布パターンP1の線幅や厚み等の膨らみを防止することができる。
【0044】
最後に、制御部10は、塗布完了後、Y軸移動機構3、X軸移動機構4及びヘッドX軸移動機構8を制御し、塗布ヘッド5がステージ2上の基板Kに対向しない退避位置までステージ2を移動させ、ステージ2上の基板Kの交換に待機する。基板Kの交換が完了すると、前述の塗布動作が繰り返される。なお、基板Kに複数の塗布パターンP1を塗布する場合には、制御部10は、1つの塗布パターンP1の塗布後、Y軸移動機構3、X軸移動機構4及びヘッドX軸移動機構8を制御し、塗布ヘッド5のノズル5aを次の始点Oの真上に移動させ、前述の塗布動作を繰り返す。
【0045】
このような塗布動作では、スクリュー5cの回転速度は、図4に示す回転速度の波形B4のように所定時間T3だけ、塗布パターンP1の直線部分Sの塗布を行う場合のスクリュー5cの回転速度Raより小さく、好ましくは塗布パターンP1のコーナー部分C1〜C4の塗布を行う場合のスクリュー5cの回転速度Rb以下である回転速度Rcで一定に回転する。これにより、図5に示すようなシリンダ部材5b内のペーストP2は、図6に示すように、ノズル5aの先端まで移動する。その後、所定時間T3が経過した場合、スクリュー5cの回転速度は、基板Kと塗布ヘッド5との相対移動速度(図4に示す描画速度の波形B3)に応じて、図4に示す回転速度の波形B4のように制御される。
【0046】
ここで、例えば、液晶の漏れ出しやペーストのはみ出しを防止するため、始点Oの大きさを調整する場合には、所定時間T3を長く変更すると、基板Kの停止状態での吐出時間が延長されるため、始点Oの大きさ(ペースト断面積)は大きくなる。一方、所定時間T3を短く変更すると、基板Kの停止状態での吐出時間が短縮されるため、始点Oの大きさが小さくなる。このように所定時間T3を変更した場合でも、描画速度が直線部分Sの描画速度(最大値)に達するまでの加速領域(加速時間)T2においては、描画速度とスクリュー5cの回転速度との関係(比率)は変化しない。これにより、描画速度の加速領域T2におけるその描画速度とスクリュー5cの回転速度との関係を変えることなく、塗布パターンP1の始点Oの大きさを調整することが可能になるので、加速領域T2でのペースト断面積(ペーストの単位時間当たりの塗布量)を調整することが容易となり、加速領域T2でパターン切れやペースト断面積ばらつきが発生してしまうことを防止することができる。
【0047】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、スクリュー5cの回転開始タイミングから基板Kと塗布ヘッド5との相対移動開始タイミングまでの時間T1で、塗布パターンP1の直線部分Sの塗布を行う場合のスクリュー5cの回転速度Raより小さくスクリュー5cの回転速度を制御し(特に、その時間T1中の所定時間T3だけ一定にスクリュー5cの回転速度を制御し)、時間T1が経過した場合、基板Kと塗布ヘッド5との相対移動速度に応じてスクリュー5cの回転速度を制御することによって、描画速度の加速領域T2におけるその描画速度とスクリュー5cの回転速度との関係を変えることなく、塗布パターンP1の始点Oの大きさを調整することが可能になるので、描画速度の加速領域T2における描画速度とスクリュー5cの回転速度との関係変化に起因したパターン切れやペースト断面積ばらつきの発生を防止することができる。その結果、液晶の漏れ出しやペーストのはみ出し等が防止された品質の良い液晶表示パネルを得ることができる。
【0048】
特に、塗布パターンPのコーナー部分C1〜C4の塗布を行う場合のスクリュー5cの回転速度Rb以下である回転速度Rcで一定にスクリュー5cの回転速度を制御することによって、コーナー部分C1〜C4での回転速度Rb以下の回転速度Rcで吐出用モータ5dが回転し、ノズル5a内においてノズル5aの先端方向へ向かうペーストの移動速度を制御が容易な速度に抑えることが可能になるので、ペーストの移動制御を精度良く行うことができる。その結果、例えば、ペーストの粘度が高い場合でも、ペーストをノズル5aから安定して吐出させることができ、ペーストの塗布量がばらついたり、描画されたペーストの塗布パターンP1が断線したりする等の不具合を防止することができる。
【0049】
また、スクリュー5cを吐出用モータ5dで回転させることによって、スクリュー5cの回転量、すなわち吐出用モータ5dの回転量に比例した量(体積)のペーストを機械的に押し出すので、周囲温度の変化によりペーストの粘度が変化したり、貯留容器5f内のペーストの残量が減少したりしたとしても、スクリュー5cの回転速度を一定に保つことにより、ノズル5aからのペーストの単位時間当たりの吐出量を一定に維持することができる。さらに、ペーストをノズル5aからスクリュー5cの回転により機械的に押し出すので、スクリュー5cを回転させる吐出用モータ5dの回転速度を変化させることで、ペーストの単位時間当たりの吐出量を応答性良く増減させることができる。
【0050】
また、気体圧力だけによりペーストを吐出するタイプの塗布ヘッドでは、ノズル5aと基板Kとの間のギャップが変動すると、ノズル5aからのペーストの吐出抵抗が変動し、この影響でペーストの吐出量が変化してしまう。しかしながら、本発明の実施の形態では、回転するスクリュー5cのネジ部Nによる機械的な押し出しによりペーストをノズル5aから吐出させることから、ネジ部Nによって押し出された分のペーストをノズル5aから吐出させることができ、さらに、ノズル5aからのペーストの吐出量がギャップの変動を受け難く、機械的に常に一定量のペーストを押し出すことができる。その結果、ペーストを基板K上に均一な塗布量で塗布することができ、基板Kに対するペーストの塗布精度を向上させることができる。したがって、液晶漏れや空気の侵入が防止された品質の良い液晶表示パネルを製造することができる。また、上述により、気体圧力だけによりノズル5aからペーストを吐出させる場合に必須であった、ノズル5aと基板Kとの間のギャップを一定に保つ制御(ギャップ制御)を不要に、あるいは制御頻度を少なくすることができ、制御の簡素化を図ることができる。また、これにより、ギャップ制御の処理に要する時間を不要、あるいは減少させることが可能になるので、ペーストの塗布に要する時間を短縮することができ、効率を向上させることができる。
【0051】
さらに、矩形状の塗布パターンP1でペーストを基板Kに塗布するとき、始点O付近、コーナー部分C1〜C4付近及び終点F付近では、直線部分Sに比べてノズル5aと基板Kとの相対移動速度が遅くなるので、吐出用モータ5dの回転速度、すなわちスクリュー5cの回転速度を遅くすることにより、ノズル5aからのペーストの単位時間当たりの吐出量が少なく調整される。このとき、ノズル5aからのペーストの単位時間当たりの吐出量は、スクリュー5cの回転による機械的な押し出しにより応答性良く制御される。その結果、基板K上に均一な塗布量からなる塗布パターンP1を描画することができる。
【0052】
加えて、始点O付近及びコーナー部分C1〜C4付近の塗布中や、終点F付近でノズル5aと基板Kとの相対移動速度が減速する場合には、Y軸移動機構3及びX軸移動機構4のモータの回転速度に吐出用モータ5dの回転速度、すなわちスクリュー5cの回転速度を同期させて減速するようにしている。その結果、従来のように始点O付近やコーナー部分C1〜C4付近の塗布量や終点F付近でペーストの塗布量が多くなることを防止することができ、基板K上に均一な塗布量で塗布パターンP1を描画することができる。
【0053】
(他の実施の形態)
なお、本発明は、前述の実施の形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0054】
例えば、前述の実施の形態においては、塗布ヘッド5に対して基板Kを移動させるようにしているが、これに限るものではなく、基板Kに対して塗布ヘッド5を移動させるようにしてもよく、基板Kと塗布ヘッド5とを相対移動させるようにすればよい。したがって、塗布ヘッド5と基板Kとを互いに相反する方向に移動させるようにしてもよい。この場合には、同じ相対移動速度であれば、基板Kのみ移動させる場合に比べて、基板K及び塗布ヘッド5の移動速度をそれぞれ半分にすることが可能になる。これにより、ステージ2及び塗布ヘッド5の移動に伴う慣性力が小さくなるので、ステージ2及び塗布ヘッド5の加速あるいは減速に起因して生じる振動を低減させることができる。その結果、X軸方向に沿う塗布パターンの始端及び終端の形状や塗布方向が転換する塗布パターンのコーナー部分の形状を所望の形状で精度良く塗布することが可能となり、品質の良い液晶表示パネルを製造することができる。
【0055】
また、前述の実施の形態においては、コーナー部分C1〜C4付近で基板Kとノズル5aとの相対移動速度を減速させる例で説明したが、これに限るものではなく、例えば、直線部分Sの相対移動速度のままとしてもよい。この場合には、コーナー部分C1〜C4でのY軸移動機構3及びX軸移動機構4による加減速に起因して塗布ヘッド5に上下振動が生じ、これによりノズル5aからのペーストの吐出抵抗が変動したとしても、スクリュー5cがそのネジ部Nによる機械的な押し出しによって押し出した分のペーストをノズル5aから吐出させるので、ノズル5aからのペーストの吐出量が変化することを防止することができる。そのため、基板Kに対して必要とする塗布量でペーストを塗布することができ、さらに、コーナー部分C1〜C4付近においてもペーストを均一な塗布量で線状に塗布することができ、精度良く塗布パターンP1を形成することができる。
【0056】
また、前述の実施の形態においては、所定時間T3だけ一定の回転速度Rcでスクリュー5cを回転させるようにしているが、これに限るものではなく、例えば、スクリュー5cの回転速度を時間T1の間に回転速度Rcまで徐々に増加させる等、スクリュー5cの回転速度を変化させるようにしてもよい。要は、ノズル5a内に引き込まれたペーストP2の先端が所定の時間T1の間にノズル5aの先端まで到達するようにスクリュー5cの回転速度を制御すればよい。
【0057】
さらに、前述の実施の形態においては、所定時間T3だけ一定の回転速度Rcでスクリュー5cを回転させるようにしているが、これに限るものではなく、例えば、スクリュー5cを所定の回転角度θcで回転させるようにしてもよい。すなわち、スクリュー5cの回転速度(回転速度Rc)とスクリュー5cを回転させる時間(所定時間T3)とスクリュー5cの回転角度θとの間には、回転角度θ=回転速度Rc×所定時間T3の関係が成り立つ。したがって、所定時間T3だけ一定の回転速度Rcでスクリュー5cを回転させることは、所定の回転角度θcだけスクリュー5cを回転させることに置き換えることができるので、スクリュー5cの回転を回転角度θで制御するようにしてもよい。
【0058】
また、前述の実施の形態においては、ギャップ制御を行う例で説明したが、これに限るものではなく、例えば、ギャップ制御を省くようにしてもよい。この場合には、ギャップ制御を全く行わないようにしてもよいし、ノズル5aを始点Oに位置付けるときのみギャップ制御を行い、パターンの描画中にはギャップ制御を省くようにしてもよい。
【0059】
さらに、前述の実施の形態においては、スクリュー5cをその下端がシリンダ部材5bのノズル5aが設けられた底部(先端部)に達するように配置した例で説明したが(図2参照)、これに限るものではなく、例えば、スクリュー5cをその下端とシリンダ部材5bの底部との間にある程度の空間(図2に比べ大きい空間)を設けるように配置するようにしてもよい。この場合のスクリューも、シリンダ部材内に設けられており、上端部が吐出用モータの回転軸に連結部材を介して連結され、下端部が自出端とされる。特に、スクリューは、その自由端とシリンダ部材のノズルが設けられた底部との間に、図2に示すスクリュー5cの自出端とシリンダ部材5bの底部との間隔よりも大きな間隔を有し、その間にペーストを貯留可能とする。
【0060】
加えて、前述の実施の形態においては、スクリュー5cのネジ部Nが一条の例で説明したが、これに限るものではなく、例えば、ネジ部Nを二条以上の複数条にしてもよい。このように、ピッチPを有するネジ部Nを複数条(n条)設けた場合には、リードLはL=nPとなる。一条のネジ部Nを有するスクリュー5cと同一ピッチPの等ピッチでn条のネジ部Nを有するスクリューの場合には、一条のネジ部Nを有するスクリュー5cと同一の吐出量を得るために必要なスクリューの回転数、すなわち吐出用モータ5dの回転数は1/nとなる。そのため、スクリューを回転駆動する吐出用モータ5dの回転数は1/nで済むので、スクリューとペーストとの摩擦、あるいは、吐出用モータ5dの発熱がペーストに伝わること等により、ペーストが発熱して硬化したり劣化したりすることを抑えることができ、さらに、高価なペーストを廃棄することによる損失の発生を防止することができる。
【0061】
また、前述の実施の形態においては、塗布ヘッド5を複数個設けているが、これに限るものではなく、例えば、塗布ヘッドを1つだけ設けるようにしてもよく、その数は限定されない。
【0062】
最後に、前述の実施の形態においては、ペーストとしてシール性や接着性を有するシール剤を用いているが、これに限るものではなく、例えば、シール性及び接着性のいずれか一方のみを有するもの等、他の性状を有するペーストであってもよく、本発明に係るペーストとしては、必ずしもシール性及び接着性を有する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の一形態に係るペースト塗布装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すペースト塗布装置が備える塗布ヘッドの概略構成を示す断面図である。
【図3】図1に示すペースト塗布装置が塗布するペーストの塗布パターンを示す模式図である。
【図4】図1に示すペースト塗布装置における描画速度及びスクリューの回転速度と時間との関係を説明するための説明図である。
【図5】図2に示す塗布ヘッドのノズル部分を拡大して示す断面図である。
【図6】図2に示す塗布ヘッドのノズル部分を拡大して示す断面図である。
【図7】ペーストの塗布パターンの一例を示す模式図である。
【図8】ペーストの塗布パターンの一例を示す模式図である。
【図9】描画速度及びスクリューの回転速度と時間との関係の一例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 ペースト塗布装置
3 移動機構(Y軸移動機構)
4 移動機構(X軸移動機構)
5 塗布ヘッド
5a ノズル
5c スクリュー
7 移動機構(ヘッドX軸移動機構)
K 塗布対象物(基板)
C1〜C4 屈曲部分(コーナー部分)
S 直線部分
P1 塗布パターン
P2 ペースト
T1 時間
T3 所定時間
Va 相対移動速度(描画速度)
Vb 相対移動速度(描画速度)
Ra 回転速度
Rb 回転速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象物に向けてスクリューの回転によりノズルから前記スクリューの回転速度に応じた量のペーストを吐出する塗布ヘッドと、
直線部分及び屈曲部分を有する塗布パターンに基づいて前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとを相対移動させる移動機構と、
前記スクリューの回転開始タイミングから前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動開始タイミングまでの時間、前記直線部分の塗布を行う場合の前記スクリューの回転速度より小さく前記スクリューの回転速度を制御し、前記時間が経過した場合、前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動速度に応じて前記スクリューの回転速度を制御する手段と、
を備えることを特徴とするペースト塗布装置。
【請求項2】
前記制御する手段は、前記時間中における前記スクリューの回転速度を前記屈曲部分の塗布を行う場合の前記スクリューの回転速度以下に制御することを特徴とする請求項1記載のペースト塗布装置。
【請求項3】
前記制御する手段は、前記時間中における前記スクリューの回転速度を所定時間一定に制御することを特徴とする請求項1又は2記載のペースト塗布装置。
【請求項4】
塗布対象物に向けてスクリューの回転によりノズルから前記スクリューの回転速度に応じた量のペーストを吐出する塗布ヘッドを用いて、直線部分及び屈曲部分を有する塗布パターンに基づいて前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとを相対移動させながら、前記塗布対象物にペーストを塗布する工程と、
前記スクリューの回転開始タイミングから前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動開始タイミングまでの時間、前記直線部分の塗布を行う場合の前記スクリューの回転速度より小さく前記スクリューの回転速度を制御し、前記時間が経過した場合、前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとの相対移動速度に応じて前記スクリューの回転速度を制御する工程と、
を有することを特徴とするペースト塗布方法。
【請求項5】
前記制御する工程は、前記時間中における前記スクリューの回転速度を前記屈曲部分の塗布を行う場合の前記スクリューの回転速度以下に制御することを特徴とする請求項4記載のペースト塗布方法。
【請求項6】
前記制御する工程は、前記時間中における前記スクリューの回転速度を所定時間一定に制御することを特徴とする請求項4又は5記載のペースト塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−39661(P2009−39661A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207764(P2007−207764)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】