説明

ペースト樹脂組成物

【課題】特に炭酸カルシウム等のフィラーが配合されたときにおいても減粘効果が大きく、希釈剤の揮散がきわめて少なく、さらには臭気を低減できるペースト樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)合成樹脂100重量部に対し、(B)一般式(1):R−O−R(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数5〜10のアルキル基を示す。)で表されるジアルキルエーテルを1〜30重量部含有するペースト樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペースト樹脂組成物に関する。本発明のペースト樹脂組成物は、合成樹脂の種類に応じて各種用途に用いることができ、例えば、壁紙、床材クッションフロア、天井材、等の住宅内装品;玩具、手袋、レザー等の汎用品;シーリング材、アンダーコート材等の自動車関係材料;その他、鋼板コート、帆布コート等の各種用途に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
ペースト樹脂組成物に用いられる合成樹脂として、例えば、塩化ビニル系樹脂が多く用いられる。合成樹脂として塩化ビニル樹脂を用いる場合には、例えば、塩化ビニル系樹脂の樹脂粉体に、可塑剤、希釈剤、減粘剤、炭酸カルシウム等のフィラー、顔料、難燃剤、発泡剤、安定剤等が配合されて、ペースト樹脂組成物が調製される。しかし、ペースト樹脂組成物は高粘度のものが多く、加工が困難又は不可能になることが多く見られる。
【0003】
このような高粘度を改良する方法として、従来から、希釈剤又は減粘剤として、ミネラルスピリット、アルキルベンゼン、パラフィン等の炭化水素系溶剤を用いたり、減粘剤として、陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリエチレングリコール、ソルビタンエステル、グリセリンアルキルエステル等を用いたりしている。これら希釈剤、減粘剤は、合成樹脂の製造後やペースト樹脂組成物を調製する際に加えられるが、減粘効果は十分とはいえず、特に炭酸カルシウム等のフィラーが配合された場合は粘度低下は十分ではなかった。
【0004】
また、ペースト樹脂組成物は、各種用途への適用にあたっての加工工程において、ペースト樹脂組成物は、加熱等によりゲル化されるが、前記炭化水素系希釈剤が使用された場合には、ゲル化時に前記希釈剤が大気中に揮散し、環境面やコスト面から好ましいことではなかった。
【0005】
前記不十分な減粘効果、粘度経時安定性、希釈剤の揮散等の加工性や環境面、経済面に関する問題に対して、添加剤として、脂肪酸と脂肪族アルコールとから得られる炭素数の合計が5〜35の脂肪酸エステル及び/又はアルキル基の炭素数が1〜8の(ポリ)アルキレングリコールモノもしくはジアルキルエーテルを用いることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−335696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、近年、要求特性や環境問題の意識が高まっており、より粘度の低く、より揮発分の少ないペースト樹脂用組成物が求められている。さらに、これらペースト用樹脂組成物は、壁紙用にも好適に使用されるため、臭気についても低減することが必要とされるようになった。
【0008】
本発明は、特に炭酸カルシウム等のフィラーが配合されたときにおいても減粘効果が大きく、希釈剤の揮散がきわめて少なく、さらには臭気を低減できるペースト樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち本発明は、(A)合成樹脂(以下、(A)成分ともいう)100重量部に対し、(B)一般式(1):R−O−R(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数5〜10のアルキル基を示す。)で表されるジアルキルエーテル(以下、(B)成分ともいう)を1〜30重量部含有するペースト樹脂組成物、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のペースト樹脂組成物は、前記(B)成分を希釈剤として用いていることから、炭酸カルシウム等のフィラーが配合された場合においても減粘効果に優れるため、加工性が良好である。また、本発明のペースト樹脂組成物は、前記(B)成分を希釈剤として用いていることから、一般的に使われている炭化水素系希釈剤を省略できるため、ゲル化時、さらにはその後の加工時、さらには加工終了後において有機性物質の揮散(VOCの低減)、臭気の発生を抑えることができ、環境汚染を低減でき、経済面にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のペースト樹脂組成物に用いられる、(A)成分である、合成樹脂としては、例えば、塩化ビニル系樹脂;メタクリル樹脂、エチレン・アクリル共重合樹脂等のアクリル系樹脂、エチレン・酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。これらのなかでもの、(A)成分としては、塩化ビニル系樹脂が好ましい。塩化ビニル系樹脂としては、特に、本発明における、(B)成分である、ジアルキルエーテルとの相互作用による減粘効果や臭気低減の観点から、塩化ビニル単体又はこれと共重合可能なモノマーとの混合物を乳化重合やミクロ懸濁重合して得られた平均粒径0.1〜50μmで、平均重合度700〜4000のものが好適である。塩化ビニルと共重合可能なモノマーとしては、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0012】
なお、塩化ビニル系樹脂は、通常、樹脂ラテックスとして得られるが、本発明のペースト樹脂組成物にあたっては、当該樹脂ラテックスは、実使用上の観点から、乾燥したものが用いられる。他の合成樹脂においても、樹脂ラテックスとして得られているものは、噴霧乾燥したものが用いられる。
【0013】
本発明では、希釈剤として、(B)成分である、一般式(1):R−O−R(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数5〜10のアルキル基を示す。)で表されるジアルキルエーテルを用いる。前記一般式(1)において、R及びRは同じであってもよく、異なっていてもよい。(B)成分における、R及びRに係るアルキル基の炭素数はいずれも5〜10であり、アルキル基が炭素数5以上であることにより、有機性物質の揮散、臭気の発生を抑えることができる。また前記アルキル基が10以下であることにより、希釈剤としての機能を発揮し、かつ減粘効果を発揮する。前記R及びRに係るアルキル基の炭素数は6〜10のアルキル基が好ましく、更には炭素数7〜10のアルキル基がより好ましい。また、前記観点から、R及びRのアルキル基の合計炭素数は、10〜20であるが、合計炭素数は12〜20が好ましく、更には14〜20であるのがより好ましい。また、前記アルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖の方が分岐鎖よりも沸点が高く、有機性物質の揮散、臭気の発生を抑えられる点から、直鎖アルキル基が好ましい。なお、(B)成分は、有機性物質の揮散、臭気の発生を抑える観点から、沸点200℃以上であるのが好ましく、また、化学構造の安定性の観点から沸点は350℃以下であることが好ましい。
【0014】
また、(B)成分の凝固点は、ペースト樹脂組成物の製造において希釈剤として有効に機能して、(A)成分を容易に溶解して短時間に製造を終了できること、特に冬期においては、作業性の効率性やツブの発生による品質の低下を抑える観点から、1013hPaにおける凝固点が20℃以下であることが好ましい。前記凝固点は、更に好ましくは10℃以下である。一方、前記凝固点は、有機性物質の揮散、臭気の発生を抑える観点から、−60℃以上であるのが好ましく、更には−20℃以上であるのが好ましい。なお、凝固点はJIS K6750に基づいて測定される。
【0015】
(B)成分の具体例としては、例えば、ジn−ペンチルエーテル、ジアミルエーテル、ジn−ヘキシルエーテル、ジn−ヘプチルエーテル、ジn−オクチルエーテル、ジn−ノニルエーテル、ジ2−エチルヘキシルエーテル、ジn−デシルエーテル等があげられるが、有機性物質の揮散、臭気の発生を抑える点から、ジn−ヘキシルエーテル、ジn−ヘプチルエーテル、ジn−オクチルエーテルが好ましい。(B)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
本発明のペースト樹脂組成物における(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、1〜30重量部である。(B)成分は前記範囲の配合量において、(A)成分に係る合成樹脂に対して減粘効果を有し、壁紙等の最終製品の性能面から好ましい。前記(B)成分の配合量は、前記観点から、(A)成分100重量部に対して、2〜20重量部が好ましく、更には3〜20重量部が好ましく、更には5〜20重量部であるのが好ましい。
【0017】
本発明のペースト樹脂組成物は、前記(A)成分及び(B)成分に加えて、(C)アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜20のポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びアルキル基の炭素数が8〜20のポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボキシレートからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、(C)成分ともいう)を含有することができる。(C)成分をペースト樹脂組成物に加えることにより、減粘効果が向上するため、塗工性が良好になり、フィラーが配合された場合においてもフィラーの分散性を向上させて良好な塗工性を示すと考えられる。
【0018】
前記(C)成分の凝固点は、前記減粘効果を示し、ペースト樹脂組成物の製造において短時間に製造を終了できること、特に冬期においては、作業性の効率性やツブの発生による品質の低下を抑える観点から、1013hPaにおける凝固点が20℃以下であることが好ましい。前記凝固点は、更に好ましくは10℃以下である。
【0019】
前記(C)成分のうち、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜20のポリオキシアルキレンアルキルエーテル(以下、(C1)成分という)は、炭素数8〜20のアルコールに、炭素数2〜3のアルキレンオキシドを付加することで合成できる。前記アルキル基は、直鎖または分岐鎖のいずれでもよい。前記アルキル基は、減粘効果の観点から、炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数12〜18のアルキル基又はアルケニル基がより好ましい。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等を例示することができる。アルキレンオキシドを2種以上用いる場合は、ポリオキシアルキレン構造の繰り返し単位は、ブロック体でもランダム体のいずれでもよい。また、ポリオキシアルキレン構造の繰り返し単位に係る、アルキレンオキシドの平均付加モル数は、ペースト樹脂組成物の減粘効果の観点から、1〜10が好ましく、2〜7がより好ましい。なお、平均付加モル数は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの分子量とエーテルの分子量の差から求められる。なお、該ポリオキシアルキレンアルキルエーテル1モルの分子量は、56.1(水酸化カリウムの分子量)を、JIS K0070により求められた水酸基価(mg/KOHg)で割ることにより求められる。
ポリオキシアルキレンエーテル1モルの分子量=56100/ポリオキシアルキレンエーテルの水酸基価
【0020】
前記(C1)成分の具体例としては、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンステアリルエーテル等が挙げられる。
【0021】
また(C)成分のうちアルキル基の炭素数が8〜20のポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボキシレート((以下、(C2)成分という))は、前述のようにして得られた(C1)成分を、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水酸化アルカリでアルコラートにした後、クロロ酢酸ナトリウム等のハロゲン化カルボキシレートを反応させることにより、脱ハロゲン化アルカリ金属(例えは、脱食塩)することにより合成できる。
【0022】
前記(C2)成分の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテルカルボキシレート、ポリオキシエチレンミリスチルエーテルカルボキシレート、ポリオキシエチレンデシルエーテルカルボキシレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテルカルボキシレート等が挙げられる。
【0023】
前記(C)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。前記(C)成分としては、特に、ポリオキシエチレンラウリルエーテルカルボキシレート、ポリオキシエチレンミリスチルエーテルカルボキシレートが好ましい。
【0024】
本発明のペースト樹脂組成物における(C)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、又、0.05重量部以上であるのが好ましい。(C)成分は前記範囲の配合量において、(A)成分に係る合成樹脂に対して減粘効果を有し、またコスト面または最終製品の性能面から好ましい。これらの観点から、(C)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して、更には0.05〜5重量部であるのが好ましく、更には0.1〜3重量部であるのがより好ましい。
【0025】
また、本発明のペースト樹脂組成物は、可塑剤やフィラーを添加することができる。
【0026】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)やフタル酸ジイソノニル(DINP)の他、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジウンデシル等の炭素数1〜13のアルコールのフタル酸エステル系;トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリデシル等の炭素数6〜10のアルコールのトリメリット酸エステル系;アジピン酸エステル系、アゼライン酸エステル系、セバチン酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、エポキシ系、脂肪酸エステル系、ピロメリット酸エステル系可塑剤等が挙げられる。可塑剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
本発明のペースト樹脂組成物における可塑剤の配合量は、(A)成分100重量部に対して、10〜150重量部であるのが好ましい。可塑剤の前記配合量は、ペースト樹脂組成物の粘度の点から好ましい。可塑剤の配合量は、前記観点から、(A)成分100重量部に対して、30〜130重量部が好ましく、更には50〜100重量部が好ましい。
【0028】
本発明に用いられるフィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、珪酸カルシウム、アルミナ等が挙げられる。フィラーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
本発明のペースト樹脂組成物におけるフィラーの配合量は、(A)成分100重量部に対して、10〜400重量部であるのが好ましい。フィラーの前記配合量は、ペースト樹脂組成物の粘度の点から好ましい。フィラーの配合量は、前記観点から、(A)成分100重量部に対して、50〜300重量部が好ましく、更には100〜200重量部が好ましい。
【0030】
さらに本発明のペースト樹脂組成物は、前記成分以外に、通常、ペースト樹脂組成物に添加される発泡剤、安定剤、滑剤、難燃剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0031】
本発明のペースト樹脂組成物の調製は、(A)成分に、(B)成分及び必要により(C)成分を添加することにより行なわれる。前記(B)成分及び(C)成分の添加方法は特に制限されるものではなく、順次に、または予め配合したものを、(A)成分に配合することにより行なうことができる。またペースト樹脂組成物の調製にあたっては、調製物が、固体又はペースト状の時は当該調製物を適宜に融点以上に加熱して、前記(B)成分及び(C)成分を添加することができる。また、本発明のペースト樹脂組成物の調製に際しては、可塑剤、フィラー、その他の添加剤が適宜に配合される。
【0032】
本発明のペースト樹脂組成物の調製にあたっては、通常使用されるリボンブレンダー、スーパーミキサー、ディスパー、ディゾルバー等の撹拌分散装置を用いることができる。
【実施例】
【0033】
実施例1
塩化ビニル樹脂(ZESTPQ84:新第一塩ビ社製)100重量部に、希釈剤として、(B)成分である、ジn−ヘキシルエーテル10重量部、可塑剤としてDINP(ビニサイザー90:花王社製)50重量部、炭酸カルシウム(ホワイトンH:東洋ファインケミカル社製)100重量部及び酸化チタン15重量部、並びに及びその他の添加剤として、スズ系安定剤(アデカスタブFL44:旭電化工業社製)3重量部及び発泡剤(ビニホールAC#1C:永和化成工業社製)3重量部を加え、ラボミキサーで均一に攪拌分散した後、真空下で脱泡して塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製した。
【0034】
実施例2〜7
実施例1において、(B)成分の種類と配合量、(C)成分をさらに含有する場合にはその種類と配合量を表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製した。
【0035】
比較例1〜7
実施例1において、(B)成分の代わりに、表1に示す種類と配合量の希釈剤を用いたこと、(C)成分をさらに含有する場合にはその種類と配合量を表1に示すように変えたこと以外は実施例1と同様にして、塩化ビニル系ペースト樹脂組成物を調製した。但し、比較例7では、希釈剤も(C)成分も配合していない。
【0036】
実施例及び比較例で得られた塩化ビニル系ペースト樹脂組成物について、下記評価を行なった。結果を表1に示す。
【0037】
(1)ペースト樹脂組成物の粘度(以下B型粘度という)
23℃、相対湿度60%の恒温恒湿室で2時間放置後、23℃で、ブルックフィールドBL型粘度計(東京計器社製)でNo.4ローターを用い、回転数60r/min(B型粘度が10000mPa・s以上の場合は6r/min)で測定した。
【0038】
(2)揮発分
調製したペースト樹脂組成物をガラス板(縦×横×高さ=20cm×15cm×2mm)に、塗布量1mm厚で展開し、200℃のオーブン中で5分間放置して、ゲル化させて、下記の式で重量変化率を求めて、これを揮発分(%)とした。
重量変化率(%)={(ゲル化前のベース樹脂組成物の重量−ゲル化後のベース樹脂組成物の重量)/ゲル化前のベース樹脂組成物の重量}×100
【0039】
(3)臭気
調製したペースト樹脂組成物について、23℃に調整された室内で、下記の4段階で臭気を評価した。
4:全く臭気がない。
3:殆ど臭気がない。
2:やや臭気がある。
1:激しい臭気がある。
【0040】
【表1】

【0041】
表1中、実施例で用いている(B)成分の沸点及び1013hPaにおける凝固点は、
ジn−ヘキシルエーテル:沸点227℃、凝固点−40℃、
ジn−オクチルエーテル:沸点314℃、凝固点−10℃、
ジn−デシルエーテル:沸点350℃以上、凝固点12℃、であり、
比較例で用いている希釈剤の沸点及び1013hPaにおける凝固点は、
ミネラルスピリット:沸点225℃、凝固点−40℃
ジn−ブチルエーテル:沸点141℃、凝固点−98℃、
ジn−ドデシルエーテル:沸点350℃以上、凝固点32℃、である。
(C)成分は、
POE(9)L:ポリオキシエチレン(平均付加モル数は9)ラウリルエーテル:凝固点:20℃、
POE(4.5)LEC:ポリオキシエチレン(平均付加モル数は4.5)ラウリルエーテルカルボキシレート:凝固点:0℃、である。
【0042】
表1から明らかなように、実施例は、希釈剤として(B)成分に係るジアルキルエーテルを用いていることから、希釈剤を用いていない比較例7に比して、減粘効果が大きく、かつ希釈剤の揮散がきわめて少なく、さらには臭気を低減できていることが分かる。一方、比較例1〜4では、希釈剤としてミネラルスピリットを用いており、希釈剤を用いていない比較例7に比して、減粘効果は認められるが、希釈剤の揮散が多く、臭気を低減できていない。比較例5では、希釈剤としてジアルキルエーテルを用いており、希釈剤を用いていない比較例7に比して、減粘効果は認められるが、(B)成分に比べてアルキル基の炭素数が小さく、希釈剤の揮散が多く、臭気を低減できていない。比較例6では、希釈剤としてジアルキルエーテルを用いており、希釈剤を用いていない比較例7に比して減粘効果はあるが、(B)成分に比べてアルキル基の炭素数が大きく、減粘効果が十分でない。また、実施例1と比較例1では、同じような沸点を有する希釈剤を使用しているが、実施例1は、比較例1に対して揮発分、臭気とも格段に少なく、ビニル系樹脂と(B)成分に係るジアルキルエーテルと組み合わせによる顕著な効果が発現できていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)合成樹脂100重量部に対し、(B)一般式(1):R−O−R(式中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数5〜10のアルキル基を示す。)で表されるジアルキルエーテルを1〜30重量部含有するペースト樹脂組成物。
【請求項2】
更に、(A)合成樹脂100重量部に対し、(C)アルキル基の炭素数が8〜20のポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びアルキル基の炭素数が8〜20のポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボキシレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を0.05重量部以上5重量部以下含有する請求項1記載のペースト樹脂組成物。
【請求項3】
更に、前記(A)合成樹脂100重量部に対し、可塑剤を10〜150重量部、フィラーを10〜400重量部含有する請求項1又は2記載のペースト樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)のジアルキルエーテルは、1013hPaにおける凝固点が−60℃以上20℃以下である請求項1〜3のいずれかに記載のペースト樹脂組成物。
【請求項5】
合成樹脂が塩化ビニル系樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載のペースト樹脂組成物。


【公開番号】特開2011−79935(P2011−79935A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232687(P2009−232687)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】