説明

ペースト状混合燃料の供給装置

【課題】石炭・水・脱硫剤等を混練したペースト状燃料が、供給配管内で閉塞するのを防ぐのに好適なペースト状混合物の供給装置を提供する。
【解決手段】石炭の粉砕物と水、もしくは、石炭の粉砕物と水と脱硫剤とを混練してペースト状混合燃料を製造し、ペースト状混合燃料をペーストポンプ4を用いて加圧された流動層火炉101の分散ノズル100に供給するペースト状混合燃料の供給装置において、ペースト状混合燃料を輸送する配管に気体を導入し、ペースト状混合燃料の輸送量に基づいて、配管に導入する気体量を制御し、配管に導入した気体量に基づいて、分散ノズル100への分散用の気体量を制御することで、配管内壁とペーストとの摩擦抵抗を低減し、ペーストによる配管の閉塞を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペースト状混合燃料の供給装置に係り、特に、ガスタービンやスチームタービンを駆動して複合発電を行う加圧流動層ボイラ発電プラント等で、燃焼用の石炭・水混合燃料により輸送配管内が閉塞するのを防ぐのに好適なペースト状混合燃料の供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧流動層ボイラ発電プラントでは、流動層火炉への石炭の供給方法として、主に湿式供給方式が採用されている。例えば、特開昭62−155433号公報に示されているように、破砕された石炭に水を加え、ミキサーにより混合してペースト状の流体燃料(以下、ペーストと略す)とした後、ポンプで流動層火炉に供給する方法である。
【0003】
以下、ペーストを流動層火炉へ供給する方法を説明する。粉砕炭、石灰石および水を、所定の混合比率で連続的に混練機に供給し、回転翼で撹拌混合して製造されたペーストは、ペーストタンクからペーストポンプにより、縦、横、斜めなどに配置された輸送配管を経て、分散ノズルから圧力容器内の火炉へ供給される。
【0004】
上述した火炉へのペーストの供給および燃焼操作の前には、以下に詳述する一連の準備操作が行われる。すなわち、(a)輸送配管の水濡らし、(b)ペーストの循環運転、(c)分散ノズル内の水濡らし、(d)三方弁の切り替えとペーストの火炉への投入。
【0005】
ペーストがペーストタンク内に所定量投入された時点で、まず、ペーストの輸送配管の水濡らし操作を行う(上記操作a)。つまり、水を輸送配管へ一定時間導入し、次に空気を導入して、先に導入した水を空気によって吹き飛ばす。これを数回繰り返して輸送配管の内面を水で濡らす。
【0006】
次に、ポンプによりタンク内のペーストが輸送配管へ送られる。配管よりペーストが排出された時点で、ポンプから送り出されたペーストがタンクへ循環運転される(上記操作b)。
【0007】
燃焼の準備が完了すると、空気および水が輸送配管へ導入され、輸送配管および分散ノズル内が水で濡らされる(上記操作c)。その後、ペーストの火炉への投入が開始される(上記操作d)。火炉に投入したペーストが着火したことを確認した後に、空気および水の供給を停止する。
【0008】
また、特開昭62−155433号公報に開示されているように、輸送配管へ図示されていない石鹸水を供給した後に、ペーストを輸送することもある。いずれの方法も、配管内壁でのペーストの滑りを良くすることを目的とした操作である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62−155433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術において、水濡らし操作後にペーストを輸送する配管の水平部に少量の水が溜まるが、水平部の上面はほとんど濡れていない。従来の水と空気による水濡らし操作では、一旦壁面についた水も重力によって落ちる。
【0011】
特に、垂直方向の輸送配管では、上述した水や石鹸水での配管濡らし操作を行っても、配管内壁に水分が保持されない箇所が多数発生した。そのような箇所では輸送されるペーストの先行端が滑りにくくなる(摩擦抵抗が大きくなる)ため、ペーストの脱水が促進されて管内閉塞を回避することができなかった。
【0012】
つまり、配管壁面に水分が保持されていれば、上記の摩擦抵抗力が小さくなるので脱水されずに流動する。しかし、配管壁面での水分の保持が不十分であると、輸送配管内を移動するペーストの先行部分は、配管内壁面から受ける摩擦抵抗力によって脱水される。脱水されて配管内を流れにくくなっても、ペーストポンプの吐出圧によりペーストは押され続けて遂には閉塞に至る。
【0013】
また、前述の水濡らし操作とは無関係に、ペースト燃料自身は、配管の制作、施工度合いで発生する流路の段差部があると、脱水、閉塞しやすいという特徴がある。特に、ペースト中の石炭粒子と水が分離しやすい炭種では、閉塞が顕著となる。
【0014】
その結果、配管の分解、清掃等が必要となり、廃スラリが大量に発生して復旧にも多大な時間を要した。また、供給配管の接続や配管の溶接部分など、段差を作らないように製作上の注意も必要であった。
【0015】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を解決し、石炭と水および脱硫剤等を混練した石炭・水混合燃料などのペースト状混合物が、供給配管内で閉塞するのを防ぐのに好適なペースト状混合燃料の供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、ペースト状燃料をポンプを用いて加圧された流動層火炉へ輸送する方法において、輸送配管に空気を導入し、空気を同伴した状態でペーストを火炉に供給することによって達成される。
【0017】
本発明を達成するための装置構成として、輸送配管へ空気を導入する手段を有し、ペースト輸送量に応じて導入する空気量を制御する手段、すなわち配管内での容積比率を制御する手段と、導入した空気量分だけ分散ノズルへの分散空気量を減じる手段を具備するとよい。
【0018】
上記の制御において、空気の容積比率が60〜95vol%の範囲となるようにすると、本発明の効果が顕著になる。また、輸送配管の垂直部、もしくは上方向に立ち上がる配管部分に、空気の導入手段を設けると効果的である。
【0019】
空気の導入は、常時行う必要はない。空気を輸送配管で導入しながら、ペーストの輸送を開始した後に、空気の導入を停止してポンプのみによる燃料供給に切り替えてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、輸送配管内へ供給されたペーストが管内を移動する過程で、空気等の気体が同伴するので、管壁面の抵抗が減少する。その結果、ペーストが脱水されにくくなり輸送配管内での閉塞が無くなる。
【0021】
また、起動時に配管の分解、清掃等が不要になる上に、従来実施してきた配管の水濡らし操作を省略することができるため、ポンプ台数の多い大形PFBC設備において、廃水の発生を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を実施するに好適なペースト製造供給の系統図である。
【図2】ペースト供給時の運転パターンの一例を示す説明図である。
【図3】本発明における輸送配管内の観察結果である。
【図4】ペースト供給時の運転パターンの一例を示す説明図である。
【図5】ペースト製造供給および燃焼設備の一参考例を示す系統図である。
【図6】一参考例における配管閉塞状況の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、詳述するように、本発明のポイントは、輸送配管内にペーストを充満した状態(加圧下では特に充満しやすい)で輸送させない点にある。すなわち、ペーストの輸送時に空気等の気体を同伴させることによって、配管壁面から受ける摩擦抵抗を著しく減少させることを可能とする。
【0024】
従来法で問題なのは、配管内をペーストが充満して流れると、管壁面から受ける摩擦抵抗によって先端部が脱水される。特に立ち上がり配管部ではその傾向が顕著であった。本発明法によれば、同伴する気体によって、供給配管内のペースト容積比率が減少し、管壁面とペーストとの間に抵抗力が発生しにくくなる。
【0025】
さらに、空気に同伴してペーストが配管内を移動する間に、供給配管の壁面に微粒石炭粒子とともに水が付着する。その結果、空気の供給を停止した後でも、輸送配管内へ供給されたペーストが管内を移動する過程で、ペーストと管壁面の抵抗が著しく減少し、ペースト先行部分が脱水されることなく閉塞しない。
【0026】
従来法で問題なのは、水濡らし操作をしても、ペーストの輸送配管の内壁面に水分が保持されにくい点にあった。本発明によって、ペーストをはじめて配管に供給する起動時に供給配管内での閉塞が無くなる。
【0027】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
(1)全体の構成
図1は本発明を実施するに好適なペーストの供給装置の系統図である。粉砕炭B、石灰石Cおよび水Dが混練機1に供給される。各原料は混練機1内で撹拌混合され、所定の水分を含有するペーストFとなってペーストタンク3に投入される。
【0028】
ペーストFの供給指令信号は、制御装置14を介してポンプ制御装置15に信号が出力され、所定の供給量となるようにペーストポンプ4が運転される。一方、制御装置14より、流量調節弁16および17に信号が出力され、所定の空気量となるようにそれぞれの弁開度が調節される。
【0029】
三方弁9はペーストタンク3側の戻り配管7方向に開く。また、三方弁10は排出側の配管12側へ開かれている。排出側の配管12にペーストFが循環されてきたことを確認した後、三方弁10が配管11へ切り替えられ、ペーストタンク3へペーストFが循環される。
【0030】
次に、燃焼の準備が完了すると三方弁9が戻り側の輸送配管7から火炉側の輸送配管8へ切り替えられ、ペーストFが分散ノズル100から火炉101へ投入され燃焼に入る。
【0031】
(2)各構成部分の相互関係および作用
ペーストポンプ4による輸送量に対して、制御装置14に設定されている容積比率(容積流量の比率)となるように、輸送配管6(垂直部)に導入する輸送用空気G1の量が調節される。
【0032】
一方、火炉101の側壁に設置した分散ノズル100の先端部に供給される分散用空気Gdは、輸送配管6に導入した量だけ減じられる。すなわち、分散ノズル100の先端部を通過する空気量が一定となるようにする。
【0033】
輸送配管6に導入された輸送用空気Gtは、分散ノズル100を経由して火炉101内に供給されるため、分散用空気Gdの量をそのままにしておくと、ペーストFが必要以上に分散し過ぎて、未燃分の飛散やNOxの増加を招く原因となる。
【0034】
輸送配管6(垂直部)に選択的に空気を導入するのは、立ち上がり配管部で管壁面から受ける摩擦抵抗によって、ペーストが脱水される傾向が顕著なためである。輸送配管5のペーストポンプ4に近い部分に空気の導入口を設けても、本実施形態で述べる効果を得ることは可能である。
【0035】
輸送用空気Gtを同伴させて輸送すると、同伴する気体によって輸送配管6内のペーストの容積比率が減少し、管壁面とペーストとの間に抵抗力が発生しにくくなる。
【0036】
以下、いくつかの実施形態により本発明を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1に示した設備を用い、X炭(豪州炭、灰分11.5%)のペーストを製造し火炉へ輸送、供給した。
【0037】
図2に、循環運転および火炉に燃料を投入するまでの運転トレンドを示した。時刻t1でX炭ペーストFの製造を開始する。製造されたX炭ペーストFがペーストタンク3内に一定量貯まった時刻t2で、X炭ペーストFの供給指令信号が制御装置14に出力される。
【0038】
本実施形態では、X炭ペーストFの供給量が1000kg/hの設定である(トレンドa)。一方、制御装置14では、以下の式1で定義する容積比率に相当する輸送用空気Gtの供給量が計算される。
気体容積比率(vol%)= {気体の容積流量/(気体の容積流量+ペーストの容積流量)}×100 ・・・(式1)
【0039】
X炭ペーストの密度ρ=1290kg/m3で、設定された気体容積比率は85vol%である。本実施形態では、流量調節弁16が調節されて4.4m3/hの輸送用空気Gtを供給した(トレンドb)。同時に、分散用空気Gdが4.4m3/hだけ減少するように(トレンドc)、制御装置14からの出力信号によって流量調節弁17の開度が調節される。
【0040】
三方弁9はペーストタンク3側の戻り輸送配管7の方向に開く。また、三方弁10は排出側の輸送配管12側へ開かれている。排出側の配管12にX炭ぺーストFが循環されてきたことを確認した後、三方弁10が輸送配管11へ切り替えられ、ペーストタンク3へペーストFが循環される。
【0041】
次に、燃焼の準備が完了した時刻t3で、ペースト供給指令信号が制御装置14に出力され、ペースト供給量が燃焼に必要な量まで低下される。同時に、輸送配管6への輸送用空気Gtの供給量、分散ノズル100への分散用空気Gdの供給量が調節される。三方弁9が戻り側の輸送配管7から火炉側の輸送配管8へ切り替えられ、ペーストFが分散ノズル100から火炉101へ投入され燃焼に入る。
【0042】
さらに、ペースト供給指令信号によって、火炉101内の運転条件に応じたペースト供給量と成るように制御装置14が動作し、ペースト供給量を徐々に上昇させる。その都度、前記の輸送用空気Gt、分散用空気Gdの供給量は調節される。
【0043】
本実施形態では、輸送配管6(垂直部)で輸送用空気Gtを同伴させてペーストFを輸送すると、同伴する輸送用空気Gtによって輸送配管6内のペーストFの容積比率が減少する。すなわち、輸送配管6内を密に充填して移動するのでなく、輸送用空気Gtを同伴してスカスカの状態で移動する。
【0044】
したがって、本実施形態では、特に立ち上がり配管部(輸送配管6)で管壁面とペースFとの間に抵抗力が発生しにくい。その結果、閉塞の無い安定した供給が達成された。
【0045】
図3は、前述の立ち上がり配管部(輸送配管6)に透明部分を設け、後部より光をあてて、輸送される様子を観察した結果である。
(a):輸送用空気Gtを供給しない場合には、配管内をペーストが密に詰まった状態で移動する。
(b、c):輸送用空気Gtの供給を開始すると、輸送配管6内をペーストFが占有する容積割合が減少することが分かる。
【0046】
(実施形態2)
表1は、X炭(豪州炭、灰分11.5%)、Y炭(豪州炭、灰分14.5%)、Z炭(米国炭、灰分8.5%)の3炭種のペーストFについて、輸送配管6に供給する輸送用空気Gtを変化させ、閉塞発生の有無を調べた結果である。3炭種について、式1で定義した気体の容積比率を変化させた。それ以外の条件、運転手順は実施形態1と同一とした。
【0047】
【表1】

【0048】
輸送配管6に供給する輸送用空気Gtが少なすぎると閉塞を発生する。炭種によって必要量は異なるが、Y炭ペーストの場合、少なくとも空気量0.6m3/h(気体の容積比率として44vol%相当)までは閉塞のない運転が可能であった。一方、Z炭ペーストの場合には、閉塞させないために少なくとも1.8m3/h(気体の容積比率として70vol%相当)の輸送用空気Gtが必要である。
【0049】
(実施形態3)
表2は、X炭、Y炭およびZ炭の3炭種のペーストについて、輸送配管6に供給する気体を、輸送用空気Gtに代えて水蒸気とし、水蒸気供給量を変化させて閉塞発生の有無を調べた結果である。水蒸気を利用する以外の条件、運転手順は実施形態2と同一とした。
【0050】
【表2】

【0051】
水蒸気を用いることにより、いずれの炭種についても閉塞を開始するための容積流量が著しく減少する(表1との比較)。これは、水蒸気を用いた場合、輸送配管6内を通過する際に凝縮した水分が微細な水滴となり、ペーストと管壁面との間で発生する摩擦抵抗を軽減するためである。
【0052】
(実施形態4)
輸送配管6内に供給する気体は、常時流さなくてもよく、閉塞しにくいペーストであれば、空配管に初めてペーストを供給する起動時にのみ供給すればよい。図1に示した設備を用い、Y炭(豪州炭、灰分14.5%)のペーストFを製造し火炉101へ輸送、供給した。
【0053】
図4に、循環運転および火炉101に燃料を投入するまでの運転トレンドを示した。時刻t4において、製造されたY炭ペーストの輸送が、供給量1000kg/hの設定条件で開始される(トレンドd)。一方、気体容積比率60vol%に相当する輸送用空気Gtが供給される。Y炭ペーストの密度は、ρ=1290kg/m3である。
【0054】
本実施形態では、流量調節弁16が調節されて1.2m3/hの輸送用空気Gtを供給した(トレンドe)。同時に、分散用空気Gdが1.2m3/hだけ減少させるように(トレンドf)、制御装置14からの出力信号によって流量調節弁17の開度が調節される。
【0055】
三方弁9はペーストタンク3側の戻り輸送配管7の方向に開く。また、三方弁10は排出側の輸送配管12側へ開かれている。排出側の輸送配管12にY炭ペーストが循環されてきたことを確認した後、三方弁10が輸送配管11へ切り替えられ、タンク3へペーストが循環される。
【0056】
次に、燃焼の準備が完了した時刻t5で、ペースト供給指令信号が制御装置14に出力され、ペースト供給量が燃焼に必要な量まで低下される。同時に、輸送配管6への輸送用空気Gtの供給を停止する。分散ノズル100への分散用空気Gdが、輸送配管6への空気供給量分だけ増加される。三方弁9が戻り側の輸送配管7から火炉側の輸送配管8へ切り替えられ、ペーストFが分散ノズル100から火炉101へ投入され燃焼に入る。
【0057】
本実施形態では、空気に同伴してペーストが配管内を移動する間に、供給配管の壁面に微粒石炭粒子とともに水が付着する。その結果、空気の供給を停止した後でも、輸送配管6内へ供給されたペーストが管内を移動する過程で、ペーストと管壁面の抵抗が著しく減少し、先行部分が脱水されず閉塞しない。
【0058】
従来法で問題なのは、水濡らし操作をしても、ペーストの輸送配管の内壁面に水分が保持されにくい点にあった。本実施形態では、ペーストをはじめて配管に供給する起動時に供給配管内での閉塞が無くなり、安定した供給が達成された。
【0059】
図5は、本発明の参考例を示す図で、ペーストを製造して流動層火炉へ供給し燃焼する設備の系統図である。図5を用いて、ペーストを流動層火炉へ供給する方法を詳細に説明する。
【0060】
粉砕炭B、石灰石Cおよび水Dが、混練機1へ所定の混合比率で連続的に供給されると、混練機1の回転翼18で撹拌、混合されペーストFが製造される。このペーストFはペーストタンク3に投入され、撹拌翼19で撹拌される。ペーストタンク3の下部には、開閉弁20を介してペーストFを輸送するペーストポンプ4が設けられる。
【0061】
ペーストポンプ4により輸送されるペーストFは、輸送配管5(水平部)、輸送配管6(垂直部)および輸送配管8(水平部)を経て、分散ノズル100から火炉101へ供給される。火炉101は、圧力容器102内に収納されている。
【0062】
上述した火炉101へのペーストFの供給および燃焼操作の前には、以下に詳述する一連の準備操作が行われる。
a.輸送配管5〜7の水濡らし
b.ペーストFの循環運転
c.分散ノズル100内の水濡らし
d.三方弁9、10の切り替え、ペーストFの火炉101への投入
【0063】
ペーストFがペーストタンク3内に所定量投入された時点で、まず、ペーストの輸送配管5、6および7の水濡らし操作(上記操作a)を行う。この場合、三方弁9はタンク3側の戻り配管7方向に開く。また、三方弁10は排出側の配管12側へ開かれ排水層13へ開閉する。
【0064】
開閉弁22を開いて水D1が導管26を経由して輸送配管5へ一定時間導入される。次に、開閉弁22を閉じ開閉弁21開けて、空気G1を導管25を経由して輸送配管5へ導入し、先に導入した水D1を空気G1によって吹き飛ばす。これを数回繰り返して輸送配管56および7の内面を水で濡らす。
【0065】
次に、ポンプ制御装置15からの出力信号によりポンプ4を起動してタンク3内のペーストFが輸送配管5、6および7へ送られる。配管12よりペーストFが排出された時点で、三方弁10はタンク3側へ切り替えられ、ポンプ4から送り出されたペーストFがタンク3へ循環運転される(上記操作b)。
【0066】
燃焼の準備が完了すると、開閉弁23および24が開いて、空気G2および水D2が輸送配管8へ導入され、輸送配管8および分散ノズル100内が水で濡らされる(上記操作c)。
【0067】
その後、三方弁9が戻り側の輸送配管7から火炉側の輸送配管8へ切り替えられ、ペーストFの火炉101への投入が開始される(上記操作d)。火炉101に投入したペーストFが着火したことを確認した後に、開閉弁23、24を閉じ、空気G2、水D2の供給を停止する。
【0068】
また、特開昭62−155433号公報に開示されているように、輸送配管へ図示されていない石鹸水を供給した後に、ペーストFを輸送することもある。いずれの方法も、配管内壁でのペーストFの滑りを良くすることを目的とした操作である。
【0069】
図6は、輸送配管内でのペーストFの流動状態を示したものである。配管壁面に水分が保持されていれば、上記の摩擦抵抗力が小さくなるので脱水されずに流動する。
【0070】
しかし、配管壁面での水分の保持が不十分であると、輸送配管内を移動するペーストFの先行部分Ftは、配管内壁面から受ける摩擦抵抗力によって脱水される。脱水されて配管内を流れにくくなっても、ペーストポンプの吐出圧によりペーストFは押され続けて遂には閉塞に至る恐れがある。
【0071】
しかしながら、前述した本発明のいくつかの実施形態によれば、ペーストの輸送時に空気等の気体を同伴させることによって、輸送配管内にペーストを充満した状態(加圧下では特に充満しやすい)で輸送しないので、配管壁面から受ける摩擦抵抗が著しく減少し、ペーストが供給配管内で閉塞するのを防止される。
【符号の説明】
【0072】
1 混練機
4 ペーストポンプ
14 制御装置
16 流量調節弁
17 流量調節弁
100 分散ノズル
101 加圧流動層燃焼炉
B 粉砕機
C 石灰石
D 水
F ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭の粉砕物と水、もしくは、石炭の粉砕物と水と脱硫剤とを混練してペースト状混合燃料を製造し、前記ペースト状混合燃料をペーストポンプを用いて火炉側壁に設けた分散ノズルから加圧された流動層火炉へ供給するペースト状混合燃料の供給装置において、
前記ペースト状混合燃料を輸送する配管に第1の気体を導入する気体導入手段と、前記ペースト状混合燃料の輸送量に基づいて、前記配管に導入する前記第1の気体の量を制御する第1の制御手段と、前記配管に導入した前記第1の気体の量に基づいて、前記分散ノズルへ供給する分散用の第2の気体の量を制御する第2の制御手段とを具備することを特徴とするペースト状混合物の供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載のペースト状混合燃料の供給装置において、
前記配管は、立ち上がり配管部を有してなり、前記気体導入手段は、前記立ち上がり配管部の下端部に前記第1の気体を導入することを特徴とするペースト状混合燃料の供給装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−156541(P2010−156541A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30257(P2010−30257)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【分割の表示】特願平11−66350の分割
【原出願日】平成11年3月12日(1999.3.12)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】