説明

ペースト状魚肉すり身、加工食品、ペースト状魚肉すり身の製造方法及び魚肉すり身用ゲル化阻害剤

【課題】加熱しても糊状感を与えずに、ペースト状態を保つことを可能とするペースト状魚肉すり身、加工食品、ペースト状魚肉すり身の製造方法及び魚肉すり身用ゲル化阻害剤を提供することを目的とする。
【解決手段】ハイドロコロイドとして、キサンタンガム、アルギン酸塩、メチルセルロース、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、コンニャクマンナン、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、プルラン、大豆多糖類、タマリンドガム、サイリウム、ゼラチン、低強度寒天、低粘度グアーガム、及び低粘度タマリンドガムのうち少なくとも1以上と、酸味料として、クエン酸、乳酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びそれらの塩のうち少なくとも1以上を含むことを特徴とするペースト状魚肉すり身。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱しても糊状感を与えずに、ペースト状態を保つことを可能とするペースト状魚肉すり身、加工食品、ペースト状魚肉すり身の製造方法及び魚肉すり身用ゲル化阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な食品の材料として、魚肉すり身が利用されている。例えば、魚肉すり身を加熱によりゲル化させた蒲鉾やチクワなどの練り製品は、代表的な食品である。昨今、需要者の嗜好の多様化により、魚肉すり身をゲル化して食す以外の方法が検討されている。例えば、魚肉すり身をペースト状(ゾル状)で食すことが考えられる。
【0003】
しかし、通常の魚肉すり身を加熱調理してペースト状に加工しようとしても、ゲル化を生じさせてしまう。これは、魚肉すり身の主成分である筋肉タンパク質アクトミオシンが加熱により熱変性し、三次元構造を形成してゲル化するからである。このようなタンパク質のゲル弾性を低下させる物質として、キサンタンガムやアルギン酸などのハイドロコロイドが知られている(例えば、非特許文献1)。また、魚肉すり身のペースト化の方法として、たんぱく質分解酵素を添加する方法や、単に魚肉すり身の添加量を少なくする方法が知られている。
【0004】
【非特許文献1】Journal of Food Sience, Volume 55, No.1, 1990 ( K.S Yoon, C.M.Lee)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ハイドロコロイドを魚肉すり身に添加してそのゲル化を阻害するには、多量のハイドロコロイドを添加しなければならず、その場合糊状感を生じて、滑らかなペースト状にはならないため、満足できる食感を得ることができないという問題がある。たんぱく質分解酵素を用いる方法においては、温度や時間の管理が難しかったり、たんぱく質分解物特有の苦味が生じ、製品の食味に影響が出る場合があり、満足する製品とすることができないという問題がある。魚肉すり身の添加量を少なくする方法は、魚肉すり身特有の味が少なくなったり、たんぱく質の量が少なく栄養的価値が低下し、魚肉すり身を用いた製品としての特徴を出すことができないという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、加熱しても糊状感を与えずに、ペースト状態を保つことを可能とするペースト状魚肉すり身、加工食品、ペースト状魚肉すり身の製造方法及び魚肉すり身用ゲル化阻害剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、魚肉すり身にハイドロコロイドと酸味料を添加することによって、加熱しても糊状感を与えず、ペースト状態を保つことができることを見出した。すなわち、本発明は、ハイドロコロイド及び酸味料が魚肉すり身に練り込まれたペースト状魚肉すり身である。また、そのペースト状魚肉すり身を用いた加工食品である。さらに、ハイドロコロイド及び酸味料が魚肉すり身原料に混錬されたものを加熱処理することによってペースト状の魚肉すり身を得ることを特徴とするペースト状魚肉すり身の製造方法である。ここで、魚肉すり身原料とは、擂潰前の全ての状態をいい、例えば、原料の魚から魚肉を採取し、水にさらして脱水し、裏ごししたものや、冷凍すり身(洋上すり身、陸上すり身など)などがある。またさらに、ハイドロコロイド及び酸味料を含むことを特徴とする魚肉すり身用のゲル化阻害剤である。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、加熱によるゲル化を阻害し、滑らかな食感を与え、かつ食味を害することのないペースト状魚肉すり身、加工食品、ペースト状魚肉すり身の製造方法及び魚肉すり身用ゲル化阻害剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るペースト状魚肉すり身は、ハイドロコロイドと酸味料とを併用する。ハイドロコロイド及び酸味料を併用することによりペースト状とする(ゲル化を阻害する)ことができる。ハイドロコロイドのみを用いた場合、併用する場合に比べ添加量を多くしなければ十分にゲル化を阻害することができない。その場合、糊状感を生じさせ、滑らかなペースト状にならなかったり、イオン基を含むハイドロコロイドの大量添加では魚肉すり身中のたんぱく質との凝集物が生成し、満足できる食感を得ることができない。さらに添加量が多いために十分に混錬できず、ハイドロコロイドのダマが生じる場合もある。また、酸味料のみを用いた場合、魚肉すり身の主成分である筋肉たんぱく質アクトミオシンの等電点pH5.4付近までpHを低下しなければならず、併用する場合に比べ添加量を多くしなければならないため、タンパク質の凝集物が生成したり、酸味が強くなるなど満足できる食感及び食味を得ることができない。本発明においては、ハイドロコロイドと酸味料を併用することにより、その従来知られていなかった相乗作用を利用し、それぞれの添加量を減少させ、ゲル化阻害効果を維持しつつ、食感および食味の優れるペースト状魚肉すり身を得ることができる。また加熱時間の違いによるたんぱく質変性のムラを低減したり、加熱温度が高い場合のたんぱく質のしまりを抑制し、加熱温度や時間による差の少ないペースト状魚肉すり身を得ることができる。
【0010】
本発明に係るペースト状魚肉すり身において、ハイドロコロイドは、キサンタンガム、改質キサンタンガム、アルギン酸塩、メチルセルロース、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、コンニャクマンナン、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、プルラン、大豆多糖類、タマリンドガム、サイリウム、ゼラチン、低強度寒天、低粘度グアーガム、及び低粘度タマリンドガムのうち少なくとも1以上であることが好ましい。
【0011】
前記改質キサンタンガムは、精製されたキサンタンガムを、粉末状態で加熱処理することにより、水溶液の曳糸性を低下させると同時に、濃度1%,25℃の水溶液で1,200mPa・s以上の粘度を持つように改質されたものである。加熱処理温度は60℃以上、好ましくは80℃以上が好ましい。この改質キサンタンガムは、分子量が大きいため、ゲル化の阻害効果が高い。この改質キサンタンガムは、例えば特開平10−33125号の記載に基づいて製造することができる。
【0012】
低強度寒天は、ゼリー強度が、1.5%寒天濃度において10〜250g/cmの範囲に調整されたものを用いることができる。ゼリー強度は、例えば、特許第3023244号及び特許第3414954号等に記載された方法により調整することができる。
【0013】
低粘度グアーガムは、グアーガムを酸又は酵素により低分子化したものであり、原料となるグアーガムより粘度が低い。
【0014】
低粘度タマリンドガムは、タマリンドガムを酸又は酵素により低分子化したものであり、原料となるタマリンドガムより粘度が低い。
【0015】
ハイドロコロイドは一般に市販されているもの、又は上記のように分子量、粘度、若しくは強度等を必要に応じて調整したものを用いることができる。
【0016】
ハイドロコロイドは、加熱による魚肉すり身のゲル化を阻害する効果を有する。ハイドロコロイドは、冷水に分散することで膨潤し、魚肉すり身のタンパク質間に入り込む。この状態で加熱しても、タンパク質間に存在するハイドロコロイドによって、タンパク質間の結合が阻害され、三次元構造を形成せず、ゲル化を生じさせない。この効果は、同じ種類のハイドロコロイドの場合、ハイドロコロイドの分子量が大きいほど高い。
【0017】
本発明に係るペースト状魚肉すり身において、酸味料は、クエン酸、乳酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びそれらの塩のうち少なくとも1以上であることが好ましい。酸味料は、人工的に合成されたものでもよいが、レモン、ライムなどの柑橘類、梅、ぶどう、及び醸造酢等の天然物から得られるものでもよい。これら酸味料は、魚肉すり身のゲル化を阻害する効果があり、魚肉すり身タンパク質の電気的凝集を促進するため、ゲル化を生じさせない。
【0018】
本発明に係るペースト状魚肉すり身において、ハイドロコロイドと酸味料の混合物の1重量%水溶液は、pHが2.7〜5.0であることが好ましく、pH3.2〜4.8であることがさらに好ましい。pHが5.0より高いとゲル化が生じやすくなり、pHが2.7より低いと酸味が強くなって食味が悪くなり好ましくない。ハイドロコロイドと酸味料の混合物の1重量%水溶液のpHは、ハイドロコロイドと酸味料の配合比や組み合わせ、ハイドロコロイド又は酸味料の種類によって調整することができる。特に、酸味料の種類及び配合量は、pHの値に影響する。
【0019】
本発明に係るペースト状魚肉すり身において、ハイドロコロイドと酸味料の混合物の1重量%水溶液は、粘度が3mPa・s〜2000mPa・sであることが好ましく、10mPa・s〜1500mPa・sであることがさらに好ましい。3mPa・s未満であると、十分なゲル化阻害効果を得ることができず、2000mPa・sを超えると、食感や食味等を害する場合がある。粘度は通常使用されているB型粘度計を使用して測定することができる。ハイドロコロイドと酸味料の混合物の1重量%水溶液の粘度は、ハイドロコロイドと酸味料の配合比や組み合わせ、ハイドロコロイド又は酸味料の種類によって調整することができる。特に、ハイドロコロイドの種類及び配合量は、粘度の値に影響する。
【0020】
本発明に係るペースト状魚肉すり身は、ペースト状魚肉すり身に対して、ハイドロコロイドが、0.01〜5.0wt%、酸味料が0.001〜0.3wt%、好ましくはハイドロコロイドが0.02〜3.0wt%、酸味料が0.005〜0.25wt%、さらに好ましくはハイドロコロイドが0.05〜1.0wt%、酸味料が0.01〜0.20wt%添加することができる。
【0021】
本発明に係るペースト状魚肉すり身は、動的貯蔵弾性率G’が10〜1000、動的損失弾性率G’’が10〜200、損失正接tanδが0.23〜0.50であることが好ましい。G’が10未満であると出来上がった魚肉すり身が柔らかすぎて糊状感が出てしまう。G’が1000より大きいと出来上がった魚肉すり身のゲル化が強くなってしまう。G’が10〜1000の時、G”が200より大きいと出来上がった魚肉すり身が柔らかすぎて糊状感が出てしまう。G”が10未満であると出来上がった魚肉すり身のゲル化が強くなってしまう。tanδが0.50より大きいと出来上がった魚肉すり身が柔らかすぎて糊状感が出てしまう。tanδが0.23未満であると出来上がった魚肉すり身のゲル化が強くなってしまう。動的貯蔵弾性率G’が10〜1000、動的損失弾性率G’’が10〜200、損失正接tanδが0.23〜0.50という物性は、例えば厚生労働省の高齢者食品基準として提示された「食品群分別許可基準」の咀しゃく・えん下困難者用食品の物性(5×10N/m以下または1×10/m以下)を満たすことができ、高齢者用食品として好ましい物性の製品を作ることができる。
【0022】
動的貯蔵弾性率G’、動的損失弾性率G’’、および損失正接tanδは、例えば動的粘弾性測定装置ARES(TAインスツルメント社製)等を使用し求めることができる。
【0023】
本発明に係る加工食品は、本発明に係るペースト状魚肉すり身をさらに加工したものである。例えば、クラッカー等に使うディップソースやパテ、パスタソース、肉まん等の具、おでん等に使用するもちの包餡物、ソフト食感の蒲鉾、テリーヌ、及びさつま揚げなどが挙げられる。また、高齢者用食品として用いることもでき、すり身を使った全ての食品をソフト化させ、嚥下困難食や介護食の素材として使用することができる。従来は介護食として魚肉すり身を使用した加工食品を作る場合、魚肉すり身は高タンパク質のため、一度加熱するとゲル化してしまうことから、ミキサー等でペースト化したり、きざみ食としたりするなどの煩雑な工程が行われていた。本発明に係るペースト状魚肉すり身を使用すれば、加熱してもペースト状なので、ミキサーをかけたり、きざんだりする必要がなくそのまま食することができる。また、原料となる魚肉すり身を多くしてもペースト状になるので、高タンパクで栄養的価値も高い。ハイドロコロイドのみを用いた場合、添加量を多くしなければ十分にゲル化を阻害することができない。その場合、糊状感を生じさせ付着性が高くなり、高齢者食として適した物性にならない。また、酸味料のみを用いた場合、添加量を多くしなければならないので、タンパク質の凝集物が生成したり、酸味が強くなるなど満足できる食感及び食味を得ることができない。
【0024】
本発明に係るペースト状魚肉すり身の製造方法においては、ハイドロコロイドと酸味料をすり身にする前の魚肉(魚肉すり身原料)に添加して、擂潰した後に、加熱処理して本発明に係るペースト状魚肉すり身を得ても良いし、また魚肉すり身にした後にハイドロコロイドと酸味料を添加して練り込み、さらに加熱処理して本発明に係るペースト状魚肉すり身を得ても良い。ハイドロコロイド及び酸味料の他に、魚肉すり身の食味、食感、及び香り等を調節するために、例えば、塩、グルタミン酸Na、香料及び/又は水等を添加してもよい。これらの添加の後又は添加しながら、混錬することができる。混錬方法は公知の方法を用いることができ、例えばフードプロセッサを用いて混錬することができる。混錬の後、魚肉すり身原料にハイドロコロイド及び酸味料を馴染ませる等のために、数時間〜数日間、常温又は冷蔵庫等に静置してもよい。その後、例えば80〜100℃の熱水中で数分〜数十分間ボイル処理等の加熱処理をすることによりペースト状魚肉すり身を得ることができる。
【0025】
本発明に係る魚肉すり身用ゲル化阻害剤は、ハイドロコロイド及び酸味料を含む。ハイドロコロイド及び酸味料は、前記本発明に係るペースト状魚肉すり身に用いられるハイドロコロイド及び酸味料と同じものを用いることができる。
【実施例】
【0026】
実施例1乃至28
次に、本発明のペースト状魚肉すり身に係る実施例1乃至28として、表1乃至4に示した処方にて魚肉すり身を得た。具体的には、魚肉すり身原料、塩、グルタミン酸Na、水、ハイドロコロイド、及び酸味料を混ぜ合わせ、フードプロセッサ(POT−33,(株)大道産業)にて5分間処理し、成型容器に入れ、4℃にて1晩放置後、90℃において40分間ボイル処理し、本発明に係るハイドロコロイド及び酸味料を含むペースト状魚肉すり身(実施例1乃至28)を得た。比較例1乃至11として、表5及び6に示した処方にて、ハイドロコロイド及び/又は酸味料を含まない以外は実施例1乃至28と同様にして魚肉すり身(比較例1乃至11)を得た。結果を表1乃至6に示した。表中の数値は、特に記載がなければ重量部であり、魚肉すり身原料、塩、グルタミン酸Na及び水の合計を100重量部とした。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
【表5】

【0032】
【表6】

【0033】
魚肉すり身の強度は、レオメーター(サン科学社製:COMPAC−100,プランジャーは円柱状で断面積1cmのもの)を用いて測定した。魚肉すり身の状態は、ゲル状態を目視及び食感によって評価した。流動性がない状態を“ゲル”、ゲル化はしておらず流動性をある程度有する状態を“半ペースト”、流動性を有する状態を“ペースト”として判定した。魚肉すり身の糊状感は、食感によって評価した。魚肉すり身を食した時に、糊状であると感じた場合は、“あり”と、やや感じた場合は、“少しあり”と、感じなかった場合は“なし”として判定した。魚肉すり身の凝集状態は、目視によって評価した。魚肉すり身に凝集物が見られた場合は“あり”と、少し見られた場合は“少しあり”と、見られなかった場合は“なし”として判定した。魚肉すり身の酸味は、味覚によって評価した。魚肉すり身を食した時に、酸味を感じた場合は“あり”と、感じなかった場合は“なし”として判定した。魚肉すり身の動的粘弾性の測定は、動的粘弾性測定装置ARES(TAインスツルメント社製)を使用し、温度20℃におけるG’,G”,tanδを求めた。周波数は1Hzに固定し、安定領域の歪である0.3%の数値を採用した。動的粘弾性の測定は実施例1乃至28及び比較例2乃至7において行った。
【0034】
ハイドロコロイドと酸味料の混合物のpHは、精製水にハイドロコロイドと酸味料の混合物を溶解させ1重量%水溶液とし、それを20℃においてpHメーター(東亜電波工業社製HM−50G)を使用して測定した。ハイドロコロイドと酸味料の混合物の粘度は、精製水にハイドロコロイドと酸味料の混合物を溶解させ1重量%水溶液とし、それを20℃においてB型粘度計(芝浦システム(株)製ビストメトロン)で測定した。測定条件は、回転数60rpm、使用ローターは粘度0〜100mPa・sの範囲においてはNo1、100〜500mPa・sの範囲においてはNo2、500〜2000mPa・sの範囲においてはNo3、2000〜10000mPa・sの範囲においてはNo4を使用した。
【0035】
実施例及び比較例に用いた原料等は、以下の通りである。
魚肉すり身原料:FAグレード(アメリカ製)
キサンタンガム:CPケルコ社製
改質キサンタンガム:キサンタンガム(CPケルコ社製)1kgを90℃の恒温槽中にて7時間処理して改質キサンタンガムを得た。B型粘度計(芝浦システム(株)製ビストメトロン、測定温度25℃,1%濃度)で粘度を測定したところ9,900mPa・sであった。
アルギン酸Na:I−5キミカ社製
メチルセルロース:メトローズSM1500 信越化学工業社製
グアーガム:伊那食品工業社製
タラガム:伊那食品工業社製
ローカストビーンガム:伊那食品工業社製
コンニャクマンナン:伊那食品工業社製
カラギナン:伊那食品工業社製
LMペクチン:LM104 CPケルコ社製
HMペクチン:DD-slow set CPケルコ社製
アラビアガム:CNI社製
プルラン:林原商事社製
大豆多糖類:三栄源FFI社製
タマリンドガム:大日本住友製薬社製
サイリウム:大日本住友製薬社製
ゼラチン:新田ゼラチン社製
低強度寒天:ウルトラ寒天UX−30 伊那食品工業社製
低粘度グアーガム:グアーガム(伊那食品工業製)の2%水溶液にクエン酸を加えてpH4.0に調整した後、90℃で13時間加熱処理し、水酸化ナトリウムで中和後、アルコール沈殿させることにより低粘度グアーガムを得た。粘度は220mPa・sであった。粘度はB型粘度計(芝浦システム社製ビストメトロン:測定濃度1.0%、回転数12rpm、ローターNo3、測定温度20℃)を用い測定した。なお、原料となるグアーガムの粘度は6200mPa・sであった。
低粘度タマリンドガム:タマリンドガム(大日本住友製薬社製)の4%水溶液にクエン酸を加えてpH3.0に調整した後、90℃で15時間加熱処理し、水酸化ナトリウムで中和後、アルコール沈殿させることにより低粘度タマリンドガムを得た。低粘度化タマリンドガムの粘度は90mPa・sであった。粘度はB型粘度計(芝浦システム社製ビストメトロン:測定濃度1.0%、回転数12rpm、ローターNo3、測定温度20℃)を用い測定した。なお、原料となるタマリンドガムの粘度は320mPa・sであった。
クエン酸:磐田化学社製
乳酸:扶桑化学社製
酢酸:五協産業社製
フマル酸:扶桑化学社製
リンゴ酸:扶桑化学社製
酒石酸:磐田化学社製
グルコノデルタラクトン:協和発酵フーズ社製
フィチン酸:敷島スターチ社製
リン酸:純正化学社製
【0036】
実施例1乃至28及び比較例1乃至11から、ハイドロコロイド及び酸味料を含むことにより相乗的な効果が得られ、ゲル化阻害効果を維持しつつ、食感および食味の優れるペースト状魚肉すり身を得られることが分かる。
【0037】
実施例29
実施例2に係るペースト状魚肉すり身を、嚥下困難者に介護食として食してもらったところ、容易に嚥下が可能であった。
【0038】
実施例30
実施例1に係るペースト状魚肉すり身50重量部とクリームチーズ50重量部を混合し、本発明に係る加工食品としてディップソースを得た。これをクラッカーにのせて食したところ、従来にない食味で、滑らかなクラッカー用ディップソースであった。10名のパネラーに試食してもらったところ、滑らかさと魚特有の旨みの出たディップソースとの評価を得た。
【0039】
実施例31
実施例2に係るペースト状魚肉すり身50重量部とトマトソース50重量部を混合し、本発明に係る加工食品としてパスタソースを得た。これを食したところ、トマトソースに適度な粘度が出て、従来にない滑らかさと魚介のこくのあるパスタソースであった。10名のパネラーに試食したもらったところ、新しい食味で、滑らかなパスタソースとの評価を得た。
【0040】
実施例32
実施例3に係るペースト状魚肉すり身70重量部とピザソース30重量部を混合し、本発明に係る加工食品としてピザまん生地の内包物を得た。これを生地に内包して蒸したところ、蒸し後も固まっておらず、良好な食感で、新しい変り種まんじゅうに仕上がった。10名のパネラーに試食してもらったところ、今までに無い新しい良好な食味との評価を得た。
【0041】
実施例33
実施例5に係るペースト状魚肉すり身98重量部とすりおろししょうが2重量部を混合して、本発明に係る加工食品として餅の内包物を得た。これを包餡機での包餡したところ、適度な粘度があり、包餡が可能であった。また、温めても冷やしても内包物はペースト状で、従来にない食感のもち製品であった。10名のパネラーに試食してもらったところ、餅の内包物である魚のペーストが従来に無い食味だが、餅と非常に相性がよく、良好との評価を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロコロイド及び酸味料が魚肉すり身に練り込まれたことを特徴とするペースト状魚肉すり身。
【請求項2】
前記ハイドロコロイドが、キサンタンガム、改質キサンタンガム、アルギン酸塩、メチルセルロース、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、コンニャクマンナン、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、プルラン、大豆多糖類、タマリンドガム、サイリウム、ゼラチン、低強度寒天、低粘度グアーガム、及び低粘度タマリンドガムのうち少なくとも1以上であることを特徴とする請求項1記載のペースト状魚肉すり身。
【請求項3】
前記酸味料が、クエン酸、乳酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びそれらの塩のうち少なくとも1以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のペースト状魚肉すり身。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか記載のペースト状魚肉すり身を用いた加工食品。
【請求項5】
ハイドロコロイド及び酸味料が魚肉すり身原料に混錬されたものを加熱処理することによってペースト状の魚肉すり身を得ることを特徴とするペースト状魚肉すり身の製造方法。
【請求項6】
ハイドロコロイド及び酸味料を含むことを特徴とする魚肉すり身用ゲル化阻害剤。
【請求項7】
前記ハイドロコロイドが、キサンタンガム、改質キサンタンガム、アルギン酸塩、メチルセルロース、グアーガム、タラガム、ローカストビーンガム、コンニャクマンナン、カラギナン、ペクチン、アラビアガム、プルラン、大豆多糖類、タマリンドガム、サイリウム、ゼラチン、低強度寒天、低粘度グアーガム、及び低粘度タマリンドガムのうち少なくとも1以上であることを特徴とする請求項6記載の魚肉すり身用ゲル化阻害剤。
【請求項8】
前記酸味料が、クエン酸、乳酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコノデルタラクトン、フィチン酸、リン酸、及びそれらの塩のうち少なくとも1以上であることを特徴とする請求項6又は7記載の魚肉すり身用ゲル化阻害剤。

【公開番号】特開2009−34040(P2009−34040A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201083(P2007−201083)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】