説明

ペースト転写装置及びペースト転写方法

【課題】ペーストの転写不良を起こした部品を可能な限り良品に転換することができ、歩留まりを向上させることができるペースト転写装置及びペースト転写方法を提供する。
【解決手段】一定厚さに形成されたペースト膜pに部品2のバンプ2aを接触させてバンプ2aにペーストPを転写させた後(ステップST5)、バンプ2aの表面状態の検出を行い(ステップST6)、バンプ2aへのペーストPの付着状態の良否判定を行う(ステップST7)。その結果、バンプ2aへのペーストPの付着状態が不良(転写不良)であると判定された場合には、ペーストPの成分又はその部品2に対するペーストPの転写の実行回数に応じてペースト膜pの厚さtを変更したうえで(ステップST12)、改めてペースト膜pに部品2のバンプ2aを接触させて、バンプ2aにペーストPを転写(再転写)させる(ステップST5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定厚さに形成されたペースト膜に部品のバンプを接触させてバンプにペーストを転写させるペースト転写装置及びペースト転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、BGA(Ball Grid Array)等のように、下面にバンプ(半田バンプや金バンプなど)が形成された部品を基板上に搭載する部品実装機には、部品を基板に搭載する前に、バンプにペーストを塗布するペースト転写装置が備えられている。バンプに塗布されるペーストはバンプの種類によって異なり、半田バンプに対しては例えば(半田粒子入りでない)フラックスペーストが、また金バンプに対しては例えば半田ペーストが塗布される。
【0003】
ペースト転写装置は、部品実装機内に設置したペースト槽内でスキージを水平方向に往復移動させてペーストを均し、これにより形成された一定厚さのペースト膜に吸着ノズルによりピックアップした部品のバンプを上方から接触させてペースト膜の厚さに応じたペーストをバンプに転写させるようになっている。また、バンプへのペーストの付着状態が不良であった(例えば、バンプ表面でのペーストの広がりが不十分であった)ときには半田の濡れ性が不足したり半田の量が不足したりしてオープン不良が発生するおそれがあるため、ペーストの転写後にバンプをカメラで観察してバンプへのペーストの付着状態の良否判定を行い、ペーストの付着状態が不良(転写不良)であったときにはその旨の警告が発せられるようにしたものが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2007−305724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにペーストの転写不良が生じた場合に警告を発するものでは、転写不良を起こした部品を基板の生産ラインから取り除くことによって不良製品数を低減させることができるものの、ペーストの転写不良を起こした部品を良品に転換できるわけではないので歩留まりを向上させることはできなかった。
【0005】
そこで本発明は、ペーストの転写不良を起こした部品を可能な限り良品に転換することができ、歩留まりを向上させることができるペースト転写装置及びペースト転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のペースト転写装置は、一定厚さに形成されたペースト膜に部品のバンプを接触させてバンプにペーストを転写させるペースト転写装置であって、ペーストを転写させた後のバンプの表面状態の検出を行う表面状態検出部と、表面状態検出部により検出されたバンプの表面状態に基づいて、バンプへのペーストの付着状態の良否判定を行う判定部と、判定部によりバンプへのペーストの付着状態が不良であると判定された場合にペーストの成分又はその部品に対するペーストの転写の実行回数に応じてペースト膜の厚さを変更するペースト膜厚変更部と、ペースト膜厚変更部により厚さが変更されたペースト膜に部品のバンプを接触させてバンプにペーストを再転写させる再転写実行部とを備えた。
【0007】
請求項2に記載のペースト転写装置は、請求項1に記載のペースト転写装置であって、ペースト膜厚変更部は、ペーストが半田粒子を含んでいる場合には、ペーストの転写の実
行回数が多くなるほどペースト膜の厚さを減ずる。
【0008】
請求項3に記載のペースト転写装置は、請求項1又は2に記載のペースト転写装置であって、ペーストに有色のものを用いる。
【0009】
請求項4に記載のペースト転写方法は、一定厚さに形成されたペースト膜に部品のバンプを接触させてバンプにペーストを転写させるペースト転写方法であって、ペーストを転写させた後のバンプの表面状態の検出を行う表面状態検出工程と、表面状態検出工程で検出されたバンプの表面状態に基づいて、バンプへのペーストの付着状態の良否判定を行う判定工程と、判定工程でバンプへのペーストの付着状態が不良であると判定された場合にペーストの成分又はその部品に対するペーストの転写の実行回数に応じてペースト膜の厚さを変更するペースト膜厚変更工程と、ペースト膜厚変更工程で厚さが変更されたペースト膜に部品のバンプを接触させてバンプにペーストを再転写させる再転写実行工程とを含む。
【0010】
請求項5に記載のペースト転写方法は、請求項4に記載のペースト転写方法であって、ペースト膜厚変更工程において、ペーストが半田粒子を含んでいる場合には、ペーストの転写の実行回数が多くなるほどペースト膜の厚さを減ずる。
【0011】
請求項6に記載のペースト転写方法は、請求項4又は5に記載のペースト転写方法であって、ペーストに有色のものを用いる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、ペーストの転写不良が発生した部品を廃棄してしまうのではなく、バンプにペーストを再転写させて可能な限り良品に転換させるようになっているので、歩留まりを向上させることができる。また、ペーストの再転写時には、ペーストの成分又はその部品に対するペーストの転写の実行回数に応じてペースト膜の厚さを変更するようにしており、ペーストの再転写を行うことにより生じ得る弊害、すなわち、ペーストの再転写を行うことによってバンプに過度のペーストが付着し、部品を基板に接合したときに隣接する電極間にブリッジが形成されて短絡が発生してしまう不都合を極力防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施の形態におけるペースト転写装置を含む部品実装機の構成図、図2は本発明の一実施の形態におけるペースト転写方法の実行手順を含む部品の基板への実装手順を示すフローチャート、図3(a),(b),(c)は本発明の一実施の形態におけるバンプにペーストを転写させる手順の説明図、図4は本発明の一実施の形態におけるペーストのバンプへの付着状態を示す部品の(a)側面図及び(b)下面図、図5は本発明の一実施の形態におけるペーストのバンプへの付着状態を示す部品の側面図である。
【0014】
図1において、基板1上に部品2を搭載する部品実装機3は本発明の一実施の形態におけるペースト転写装置を含むものであり、基板1の位置決めを行う基板位置決め部4、部品2の供給を行うパーツフィーダ5、一定厚さのペースト膜pを形成するペースト膜形成部6、パーツフィーダ5より供給された部品2をピックアップして移動させる部品吸着移動部7、部品吸着移動部7によりピックアップされた部品2を下方から撮像するカメラ8及びこれらの作動制御を行う制御装置9を備えている。
【0015】
基板位置決め部4は水平面内の一の方向(図1の紙面と直交する方向)に平行に延びた一対のコンベアベルト10及びコンベアベルト10を作動させるコンベア駆動機構11か
ら成る。コンベア駆動機構11は制御装置9に制御されてコンベアベルト10を駆動し、コンベアベルト10の上面に載置された基板1の搬送と所定の基準位置への位置決めを行う。
【0016】
パーツフィーダ5は制御装置9に制御されて作動し、所定の部品供給位置に部品2を供給する。この実施の形態では、部品2は下面に半田バンプや金バンプなどの複数のバンプ2aを有するBGAタイプ等の部品であるとする(図1中に示す部品2の拡大図参照)。
【0017】
ペースト膜形成部6はペーストPが供給されるペースト槽12、ペースト槽12に対して水平方向に相対移動自在に設けられたスキージ13及びスキージ13をペースト槽12に対して相対移動させるスキージ作動機構14から成る。スキージ作動機構14は制御装置9に制御されてスキージ13を水平方向に往復移動させ(図1中に示す矢印A)、ペースト槽12内のペーストPを均してペースト槽12内のペースト膜形成面12a上に一定厚さのペースト膜pを形成させる。また、スキージ作動機構14は制御装置9に制御されてスキージ13をペースト槽12に対して昇降させる(図1中に示す矢印B)。これによりペースト膜形成面12aとスキージ13の下縁との間の間隔(スキージギャップ)を変化させることができ、ペースト膜形成面12a上に形成されるペースト膜pの厚さt(図1及び図3(a)参照)を変更することができる。
【0018】
ペーストPは、バンプ2aが半田バンプであれば例えば半田粒子入りでないフラックスペーストが用いられ、バンプ2aが金バンプであれば例えば半田ペーストが用いられる。なお、この実施の形態では、後述するようにカメラ8を介してバンプ2aの表面に付着したペーストPの画像認識を行うが、このペーストPの認識を容易にするため、ペーストPには有色のものが用いられている。
【0019】
部品吸着移動部7は部品2の吸着を行う複数の吸着ノズル15を備えた搭載ヘッド16、搭載ヘッド16を水平面内で移動させるときのガイドとなるヘッド移動ガイド17、搭載ヘッド16をヘッド移動ガイド17に沿って移動させるヘッド作動機構18及び各吸着ノズル15に搭載ヘッド16に対する昇降動作と部品2の吸着動作を行わせるノズル作動機構19から成る。ヘッド作動機構18は制御装置9に制御されて搭載ヘッド16をヘッド移動ガイド17に沿って水平方向に移動させ(図1中に示す矢印C)、ノズル作動機構19は制御装置9に制御されて各吸着ノズル15を搭載ヘッド16に対して昇降させ(図1中に示す矢印D)、各吸着ノズル15に部品2を真空吸着させる。
【0020】
カメラ8は撮像面を上方に向けて設置されており、制御装置9に制御されて部品吸着移動部7にピックアップされた部品2を下方から撮像する。カメラ8によって撮像された部品2の画像データは制御装置9の画像認識部9a(図1)に送られ、制御装置9の画像認識部9aはその画像データに基づいて部品2の画像認識を行う。
【0021】
図1において、制御装置9には入力部21と表示部22が接続されている。部品実装機3のオペレータは入力部21から制御装置9に対して種々の操作入力を行うことができ、制御装置9は表示部22を介してオペレータに文字や画像による種々の情報を提供する。
【0022】
次に、図2のフローチャートを用いて部品実装機3による部品実装手順について説明する。ここで示す部品実装手順は本発明の一実施の形態におけるペースト転写方法の実行手順を含んでいる。
【0023】
図2において、制御装置9は先ず、コンベアベルト10を作動させて上流側の装置から送られてきた基板1を部品実装機3内に搬入し、所定の基準位置に位置決めする(ステップST1)。そして、搭載ヘッド16に取り付けられて撮像面を下方に向けた基板カメラ
16a(図1)によって、基板1に設けられた図示しない位置決めマークの画像認識を行い、基板1の基準位置からの位置ずれを求める。制御装置9は、基板1を基準位置に位置決めしたら、パーツフィーダ5を作動させて部品2を所定の部品供給位置に供給させる(ステップST2)。
【0024】
制御装置9は、パーツフィーダ5に部品2を部品供給位置に供給させたら、搭載ヘッド16をその部品供給位置の上方に移動させ、吸着ノズル15に部品2をピックアップさせる(ステップST3)。部品2のピックアップは、吸着ノズル15を下降させてその下端部を部品2の上面に接触させ、吸着ノズル15に部品2を真空吸着させることによって行う。
【0025】
制御装置9は吸着ノズル15に部品2をピックアップさせたら、スキージ13をペースト槽12に対して相対的に往復移動させて、ペースト膜形成面12a上に一定厚さのペースト膜pを形成させる(ステップST4)。このときペースト膜pの厚さは、ステップST3で吸着ノズル15にピックアップさせた部品2のバンプ2aの大きさ、形状等によって予め定められた厚さとする。なお、このペースト膜の形成工程は必ずしもステップST3の部品2のピックアップ工程の後に行わなければならないわけではなく、それ以前に行っていてもよい。
【0026】
制御装置9はペースト膜形成面12a上にペースト膜pを形成させたら、搭載ヘッド16の作動制御を行って、現在吸着ノズル15にピックアップさせている部品2をペースト膜形成面12aの上方に移動させる(図3(a))。そして、部品2を(吸着ノズル15を)降下させてバンプ2aをペースト膜pに接触させた後(図3(b))、部品2を引き上げる(図3(c))。これにより部品2のバンプ2aにペースト膜pの厚さtに応じたペーストPが転写される(ステップST5)。
【0027】
制御装置9は、部品2のバンプ2aにペーストPを転写させたら、搭載ヘッド16をカメラ8の上方に移動させ、現在吸着ノズル15にピックアップさせている部品2を下方からカメラ8に撮像させる。そして、これにより得られた部品2の画像データから画像認識を行って、ペーストPを転写させた後のバンプ2aの表面状態の検出を行う(ステップST6)。
【0028】
バンプ2aの表面状態の検出は、カメラ8によって撮像された部品2の画像中に占めるペーストPの位置及び広がり状況等に基づいて行う。これは、部品2を下方から見たときの画像中に占めるペーストPの位置及び広がりは、バンプ2aに転写されたペーストPのバンプ2aの表面上での位置及び広がりに応じたものとなるからである。例えば、バンプ2aの下半分の一部にペーストPが付着している場合(図4(a))、その部品2を下方から見ると、バンプ2aの設けられている位置に、バンプ2aより小さい径で広がったペーストPを認識することができる(図4(b))。
【0029】
制御装置9は、ペーストPを転写させた後のバンプ2aの表面状態の検出を行ったら、その結果に基づいて、バンプ2aへのペーストPの付着状態の良否判定を行う(ステップST7)。
【0030】
ペーストPのバンプ2aへの付着状態の良否は、例えば、バンプ2aにペーストPが付着しているかどうか、更には、付着したペーストPが付着したペーストPが予め定めた基準以上の広がりを有しているかどうか等によって判定する。例えば、バンプ2aの表面にペーストPがわずかでも付着していれば良好な付着状態であるとの基準を設けている場合には、図4(a),(b)に示すペーストPの付着状態は良好であると判定する。
【0031】
制御装置9は、ステップST7において、ペーストPのバンプ2aへの付着状態が良好であると判定した場合には、そのままカメラ8による部品2の認識を行う(ステップST8)。この部品2の認識は、吸着ノズル15に対する部品2の位置ずれを求めるものである。なお、この部品2の位置ずれを求めるための認識は、ステップST6のバンプ2aの表面状態の検出のための画像認識工程で同時に行うようにしてもよい。
【0032】
部品2の認識が終了したら、制御装置9は搭載ヘッド16をステップST1で位置決めした基板1の上方に移動させ、現在ピックアップしている部品2を基板1上の目標搭載位置に搭載させる(ステップST9)。この目標搭載位置は部品2ごとに定められており、そのデータは制御装置9の記憶部9b(図1)に予め記憶されている。
【0033】
ここで、部品2を基板1上の目標搭載位置に搭載させるときには、ステップST1で求めた基板1の基準位置からの位置ずれと、ステップST8で求めた吸着ノズル15に対する部品2の位置ずれがキャンセルされるように吸着ノズル15の位置補正を行うようにする。
【0034】
部品2を基板1に搭載するときには部品2を基板1に熱圧着する。これによりバンプ2aが半田バンプであるときには半田バンプの一部が溶融し、バンプ2aが金バンプであるときにはバンプ2aに塗布された(付着した)半田ペーストが溶融するので、部品2と基板1はその電極同士が半田接合される。
【0035】
制御装置9は、部品2の基板1への搭載が終了したら、次のステップST10に進む。
【0036】
制御装置9は、ステップST7において、ペーストPのバンプ2aへの付着状態が不良(転写不良)であると判定した場合には、バンプ2aにペーストPを再転写させる。ペーストPの再転写では、制御装置9は先ず、現在ピックアップしている部品2についてこれまでに実行した再転写の回数が予め定めた規定回数以下であるかどうかの判断を行う(ステップST11)。この規定回数は、ペーストPのバンプ2aへの付着状態が不良である場合に行うペーストPの再転写の実行回数に制限を与えるものであり、再転写の実行回数を「3」に制限するときには規定回数を「3」に設定しておく。
【0037】
ステップST11における判断の結果、現在ピックアップしている部品2に対してこれまでに実行した再転写の回数が規定回数以下であった場合には、制御装置9はスキージ13の昇降制御を行い、ペーストPの成分や現在ピックアップしている部品2に対するペーストPの転写の実行回数に応じてペースト膜形成面12a上のペースト膜pの厚さtを変更する(ステップST12)。具体的には、ペーストPが半田ペーストである場合のように半田粒子を含んでいる場合には、ペーストの転写の実行回数(最初の転写とその後の再転写の総実行回数)が多くなるほど、ペースト膜pの厚さtを減ずるようにし、ペーストPが半田粒子を含んでいない場合には、ペーストPの転写の実行回数が増えてもペースト膜pの厚さtを減じないようにする。
【0038】
これは、ペーストPが半田ペーストであって、その成分に半田粒子が含まれている場合には、ペーストPの再転写を行うことによって隣接するバンプ2a同士の間にペーストPが入り込んでバンプ2a同士が半田入りのペーストPで繋がり、(図5)、部品2を基板1に接合したときに隣接する電極間にブリッジが形成されてしまうおそれがあるからである。これに対し、ペーストPが半田粒子入りでないフラックスペーストであって、その成分に半田粒子が含まれていない場合には、隣接するバンプ2a同士の間にペーストPが入り込んだとしても、部品2を基板1に搭載したときに隣接する電極間にブリッジが形成されるおそれは少ない一方、ペーストPが不足すると、部品2を基板1に接合したときに濡れ性不足に起因するオープン不良が発生するおそれがあるからである。
【0039】
制御装置9は、ステップST12でペースト膜pの厚さtを変更したら、ステップST5に戻り、部品吸着移動部7の作動制御を行って部品2のバンプ2aをペースト膜pに接触させ、バンプ2aにペーストPを再転写させる。そして、ペーストPを再転写させた後のバンプ2aの表面状態の検出を行い(ステップST6)、バンプ2aへのペーストPの付着状態の良否の判定を行う(ステップST7)。その結果、ペーストPのバンプ2aへの付着状態が良好であった場合にはステップST8に進んで部品2の基板1への搭載を行い、ペーストPのバンプ2aへの付着状態が不良(転写不良)であった場合には再びステップST11に進んでペーストPの再転写を再実行する。
【0040】
上記のようにペーストPの再転写が繰り返された結果、ステップST11の判断において、これまでに実行した再転写回数が規定回数を超えていた場合には、制御装置9は、ペースト膜pの厚さtの変更を行うことなく、表示部22を介してオペレータにエラー報知をし(ステップST13)、搭載ヘッド16を移動させて現在吸着ノズル15にピックアップさせている部品2を所定の部品廃棄位置に廃棄したうえで(ステップST14)、ステップST10に進む。
【0041】
制御装置9は、ステップST10では、基板1に搭載すべき全ての部品2の基板1への搭載を終了したかどうかの判断を行う。その結果、全ての部品2の基板1への搭載が終了していなかったときにはステップST2に戻り、まだ基板1に搭載していない部品2の基板1への搭載を行う。一方、全ての部品2の基板1への搭載が終了していたときにはコンベアベルト10を作動させて基板1を部品実装機3の外部に搬出する(ステップST15)。
【0042】
このように、本実施の形態におけるペースト転写装置(部品実装機3)は、一定厚さに形成されたペースト膜pに部品2のバンプ2aを接触させてバンプ2aにペーストPを転写させるものであり、ペーストPを転写させた後のバンプ2aの表面状態の検出を行う表面状態検出部(カメラ8及び制御装置9の画像認識部9a)と、表面状態検出部により検出されたバンプ2aの表面状態に基づいて、バンプ2aへのペーストPの付着状態の良否判定を行う判定部(制御装置9)と、判定部によりバンプ2aへのペーストPの付着状態が不良(転写不良)であると判定された場合にペーストPの成分又はその部品2に対するペーストPの転写の実行回数に応じてペースト膜pの厚さtを変更するペースト膜厚変更部(ペースト膜形成部6及び制御装置9)と、ペースト膜厚変更部により厚さtが変更されたペースト膜pに部品2のバンプ2aを接触させてバンプ2aにペーストPを再転写させる再転写実行部(部品吸着移動部7及び制御装置9)を備えたものとなっている。
【0043】
また、本実施の形態におけるペースト転写方法は、一定厚さに形成されたペースト膜pに部品2のバンプ2aを接触させてバンプ2aにペーストPを転写させるものであり、ペーストPを転写させた後のバンプ2aの表面状態の検出を行う表面状態検出工程(ステップST6)と、表面状態検出工程で検出されたバンプ2aの表面状態に基づいて、バンプ2aへのペーストPの付着状態の良否判定を行う判定工程(ステップST7)と、判定工程でバンプ2aへのペーストPの付着状態が不良(転写不良)であると判定された場合にペーストPの成分又はその部品2に対するペーストPの転写の実行回数に応じてペースト膜pの厚さtを変更するペースト膜厚変更工程(ステップST12)と、ペースト膜厚変更工程で厚さtが変更されたペースト膜pに部品2のバンプ2aを接触させてバンプ2aにペーストPを再転写させる再転写工程(ステップST5)を含んでいる。
【0044】
上述のように、本実施の形態におけるペースト転写装置(部品実装機3)及びペースト転写方法では、一定厚さに形成されたペースト膜pに部品2のバンプ2aを接触させてバンプ2aにペーストPを転写させた後、バンプ2aの表面状態の検出を行い、バンプ2a
へのペーストPの付着状態の良否判定を行った結果、バンプ2aへのペーストPの付着状態が不良(転写不良)であると判定された場合には、改めてペースト膜pに部品2のバンプ2aを接触させてバンプ2aにペーストPを転写(再転写)させるようになっている。
【0045】
このように本実施の形態におけるペースト転写装置(部品実装機3)及びペースト転写方法では、ペーストPの転写不良が発生した部品2を廃棄してしまうのではなく、バンプ2aにペーストPを再転写させて可能な限り良品に転換させるようになっているので、歩留まりを向上させることができる。
【0046】
また、ペーストPの再転写時には、ペーストPの成分又はその部品2に対するペーストPの転写の実行回数に応じてペースト膜pの厚さtを変更するようにしており、ペーストPの再転写を行うことにより生じ得る弊害、すなわち、ペーストPの再転写を行うことによってバンプ2aに過度のペーストPが付着し、部品2を基板1に接合したときにバンプ2a同士或いは基板1の電極同士の間にブリッジが形成されて短絡が発生してしまう不都合を極力防止することができる。
【0047】
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述の実施の形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施の形態では、バンプ2aの表面状態の検出は、部品吸着移動部7によりピックアップした部品2の下面をカメラ8により下方から撮像して行うものであったが、ピックアップした部品2の側方から各バンプ2aの下縁にレーザや赤外線等の検査光を照射してこれが反射される否かによって(バンプ2aにペーストが付着している場合には検査光が遮られる)、バンプ2aの表面状態(ペーストPが付着しているか否か)の検出を行うようにしてもよい。
【0048】
また、上述の実施の形態では、ペーストPに有色のものを用いるようにしていたが、これは前述したように、カメラ8を介して部品2の画像認識を行ったときに、バンプ2aに転写されたペーストPの認識を容易にするためであるので、ペーストPは必ずしも有色でなくてもよい。また、上述の実施の形態では、ペーストの成分及びペーストの転写の実行回数の双方に応じてペースト膜の厚さを変更するようにしていたが、ペーストの成分及びペーストの転写の実行回数の一方に応じてペースト膜の厚さの変更を行うようにしてもよい。したがって、例えば、ペーストの成分を問わず、常に、ペーストの転写の実行回数が多くなるほどペースト膜の厚さを減ずるようにしたものも本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
ペーストの転写不良を起こした部品を可能な限り良品に転換することができ、歩留まりを向上させることができるペースト転写装置及びペースト転写方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態におけるペースト転写装置を含む部品実装機の構成図
【図2】本発明の一実施の形態におけるペースト転写方法の実行手順を含む部品の基板への実装手順を示すフローチャート
【図3】(a)(b)(c)本発明の一実施の形態におけるバンプにペーストを転写させる手順の説明図
【図4】本発明の一実施の形態におけるペーストのバンプへの付着状態を示す部品の(a)側面図(b)下面図
【図5】本発明の一実施の形態におけるペーストのバンプへの付着状態を示す部品の側面図
【符号の説明】
【0051】
2 部品
2a バンプ
3 部品実装機(ペースト転写装置)
6 ペースト膜形成部(ペースト膜厚変更部)
7 部品吸着移動部(再転写実行部)
8 カメラ(表面状態検出部)
9 制御装置(再転写実行部、判定部、ペースト膜厚変更部)
9a 画像認識部(表面状態検出部)
P ペースト
p ペースト膜
t ペースト膜の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定厚さに形成されたペースト膜に部品のバンプを接触させてバンプにペーストを転写させるペースト転写装置であって、ペーストを転写させた後のバンプの表面状態の検出を行う表面状態検出部と、表面状態検出部により検出されたバンプの表面状態に基づいて、バンプへのペーストの付着状態の良否判定を行う判定部と、判定部によりバンプへのペーストの付着状態が不良であると判定された場合にペーストの成分又はその部品に対するペーストの転写の実行回数に応じてペースト膜の厚さを変更するペースト膜厚変更部と、ペースト膜厚変更部により厚さが変更されたペースト膜に部品のバンプを接触させてバンプにペーストを再転写させる再転写実行部とを備えたことを特徴とするペースト転写装置。
【請求項2】
ペースト膜厚変更部は、ペーストが半田粒子を含んでいる場合には、ペーストの転写の実行回数が多くなるほどペースト膜の厚さを減ずることを特徴とする請求項1に記載のペースト転写装置。
【請求項3】
ペーストに有色のものを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のペースト転写装置。
【請求項4】
一定厚さに形成されたペースト膜に部品のバンプを接触させてバンプにペーストを転写させるペースト転写方法であって、ペーストを転写させた後のバンプの表面状態の検出を行う表面状態検出工程と、表面状態検出工程で検出されたバンプの表面状態に基づいて、バンプへのペーストの付着状態の良否判定を行う判定工程と、判定工程でバンプへのペーストの付着状態が不良であると判定された場合にペーストの成分又はその部品に対するペーストの転写の実行回数に応じてペースト膜の厚さを変更するペースト膜厚変更工程と、ペースト膜厚変更工程で厚さが変更されたペースト膜に部品のバンプを接触させてバンプにペーストを再転写させる再転写実行工程とを含むことを特徴とするペースト転写方法。
【請求項5】
ペースト膜厚変更工程において、ペーストが半田粒子を含んでいる場合には、ペーストの転写の実行回数が多くなるほどペースト膜の厚さを減ずることを特徴とする請求項4に記載のペースト転写方法。
【請求項6】
ペーストに有色のものを用いることを特徴とする請求項4又は5に記載のペースト転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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