ホイールカバー
【課題】取付爪部材の熱変形に起因するホイールからの脱落を防止できるホイールカバーを提供する。
【解決手段】円盤部3に円周方向に沿って間隔を置いて配置され、ホイールのリム20の内面に係止する複数の取付爪部材4を有するホイールカバー本体と、各取付爪部材4のリテーナ掛止面8に掛止され、内周方向の撓み変形による反力で各取付爪部材4をリム20側に付勢するリング状のリテーナ10とを有するホイールカバーであって、各取付爪部材4のリテーナ掛止面8は、円周方向の中央部側に位置する中央掛止面8bと端末部が中央掛止面8bよりリム20側に位置する補助掛止面8aとで形成されている。
【解決手段】円盤部3に円周方向に沿って間隔を置いて配置され、ホイールのリム20の内面に係止する複数の取付爪部材4を有するホイールカバー本体と、各取付爪部材4のリテーナ掛止面8に掛止され、内周方向の撓み変形による反力で各取付爪部材4をリム20側に付勢するリング状のリテーナ10とを有するホイールカバーであって、各取付爪部材4のリテーナ掛止面8は、円周方向の中央部側に位置する中央掛止面8bと端末部が中央掛止面8bよりリム20側に位置する補助掛止面8aとで形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールのリムの内面に係止するホイールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールカバーは、リテーナによって付勢力を受けた取付爪部材をホイールのリムの内面に係止することによって取り付けられる(特許文献1参照)。図8〜図10にはホイールカバーの一従来例が示されている。
【0003】
図8〜図10において、ホイールカバー50は、ホイールカバー本体51とこのホイールカバー本体51の裏面側に掛止されたリテーナ60とを備えている。ホイールカバー本体51は、円盤部52と、この円盤部52の裏面より円周方向に沿って間隔を置いて配置された複数の取付爪部材53とを有する。リテーナ60は、リング状であり、複数の取付爪部材53のリテーナ掛止面54に掛止されている。ホイールカバー50は、ホイールに組み付けする際、リテーナ60の撓み変形力に抗して複数の取付爪部材53が内周側に変移することによってホイールのリム70(図10(b)、(c)に示す)の内面に係止される。
【0004】
ホイールカバー50は、走行中の振動等によってホイールのリム70より脱落しないことが必要である。ホイールカバー50を脱落させない力、つまり、ホイールカバー50の抜き力は、取付爪部材53の数、爪幅、リテーナ締代(撓み量)、リテーナ軸径によって決定される。
【0005】
図11には、ホイール組付け前の取付爪部材53とリテーナ60の位置が破線で示され、ホイール組付け後の取付爪部材53とリテーナ60の位置が実線で示されている。組付け前後におけるリテーナ60の変位量(取付爪部材53のリテーナ掛止面54の変位量)がリテーナ締代P1となる。リテーナ締代P1が小さくなると、取付爪部材53(リテーナ60)の反力が低下する。
【0006】
又、上記従来例にあっては、取付爪部材53は、近接配置された2つが1つの組を構成する。ホイール組付け状態では、各組の2つの取付爪部材53が一体となってリテーナ60を内周方向に撓み変形させ、且つ、一体となってリテーナ60からの反力を受ける。従って、組を構成する2つの取付爪部材53の両端間の寸法が、爪幅W1(図11に示す)となる。爪幅W1が小さくなると、取付爪部材53(リテーナ60)の反力が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−59702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来のホイールカバー本体51は、耐熱性に優れた樹脂(ポリカーボネート(PC)樹脂とABS樹脂の混合樹脂、PA6樹脂、ABS樹脂等)で成形されていたが、コストダウンを図るために耐熱性の低い材料(ポリプロピレン(PP)樹脂等)で成形しようとする開発が進んでいる。
【0009】
しかし、ホイールカバー本体51は、ブレーキの連続使用等による発熱によって100℃以上に上昇することがある。そのため、耐熱性の低い材料で成形したホイールカバー本体51は、加熱状態でリテーナ60の反力(撓み復帰力)を受け続けると、取付爪部材53が潰れて肉厚がd1からd2へと薄くなる。つまり、リテーナ60と取付爪部材53のリテーナ掛止面54の位置が図10(b)の位置から図10(c)の位置に変位し、t(=d1−d2)分だけリテーナ締代P1が減少する。詳細には、組を構成する2つの取付爪部材53のリテーナ掛止面54で、且つ、隣り合う組側の端末部aにリテーナ60の反力による応力集中が発生するため、この端末部aが最も潰れて端末部aでのリテーナ締代P1が最も減少する。
【0010】
このリテーナ締代P1の減少によって、ホイールカバー50の抜き力が低下するため(図7(a)参照)、ホイールカバー50がホイールから脱落し易くなるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、取付爪部材の熱変形に起因するホイールからの脱落を防止できるホイールカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、円盤部に円周方向に沿って間隔を置いて配置され、ホイールのリムの内面に係止する複数の取付爪部材を有するホイールカバー本体と、前記各取付爪部材のリテーナ掛止面に掛止され、内周方向の撓み変形による反力で前記各取付爪部材を前記リム側に付勢するリング状のリテーナとを有するホイールカバーであって、前記各取付爪部材の前記リテーナ掛止面は、円周方向の中央部側に位置する中央掛止面と端末部が前記中央掛止面より前記リム側に位置する補助掛止面とで形成されていることを特徴とする。
【0013】
前記リテーナ掛止面の補助掛止面は、前記中央掛止面から端末部の先端に向かって徐々に前記リム側に傾斜するテーパ状であることが好ましい。
【0014】
前記取付爪部材は、近接位置に配置された複数のもの同士が組を構成し、各組の複数の前記取付爪部材が一体となって前記リテーナを内周方向に撓み変形させるよう構成される場合には、各組の両端に位置する前記取付爪部材の前記リテーナ掛止面は、外側の端末部が中央部側に位置する中央掛止面より前記リム側に位置する補助掛止面を有している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、取付爪部材が加熱状態でリテーナの反力(撓み復帰力)を受け続けると、リテーナの反力を受けている取付爪部材のリテーナ掛止面の中央掛止面が潰れてリテーナ締代が減少するが、取付爪部材のリテーナ掛止面の中央掛止面が潰れるとリテーナの反力をリテーナ掛止面の中央掛止面のみならず端末部の補助掛止面でも受けることになるため、リテーナの反力を受ける爪幅寸法が大きくなる。従って、リテーナ締代の減少によってホイールカバーの抜け力が減少する一方で、爪幅の増加によってホイールカバーの抜け力が増加するため、取付爪部材の熱変形に起因するホイールカバーの脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示し、裏面側から見たホイールカバーの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、図1のA部の拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、(a)は取付爪部材の斜視図、(b)は図2のSA−SA先断面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、図3のSB−SB線断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、図4のB部拡大箇所で、ホイールカバーの組付け前の状態と組付け後の状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態を示し、図4のB部拡大箇所で、ホイールカバーの加熱前の状態と加熱後の状態を示す図である。
【図7】(a)はリテーナ締代と取付爪部材(リテーナ)反力の特性線図、(b)は爪幅と取付爪部材(リテーナ)反力の特性線図である。
【図8】従来例を示し、裏面側から見たホイールカバーの斜視図である。
【図9】従来例を示し、図8のC部の拡大図である。
【図10】従来例を示し、(a)は取付爪部材の斜視図、(b)は加熱前の取付爪部材のリテーナ掛止面とリテーナの位置を示す図、(c)は加熱前の取付爪部材のリテーナ掛止面とリテーナの位置を示す図である。図2のSA−SA先断面図である。
【図11】従来例を示し、ホイールカバーの組付け前の状態と組付け後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図6は本発明の一実施形態を示す。図1〜図4に示すように、ホイールカバー1は、ホイールカバー本体2と、このホイールカバー本体2の裏面側に掛止されたリテーナ10とを備えている。
【0019】
ホイールカバー本体2は、耐熱性の低い材料(ポリプロピレン(PP)樹脂等)で形成されている。ホイールカバー本体2は、浅いすり鉢状に形成された円盤部3と、この円盤部3の外周側の裏面より円周方向に沿って間隔を置いて配置された複数の取付爪部材4と、円盤部3の裏面より円周方向に沿って間隔を置いて配置された複数の脱落防止突起部5とを有する。
【0020】
取付爪部材4は、近接配置された2つのものがそれぞれ1つの組を構成している。取付爪部材4は、全部で6組配置されている。各組の取付爪部材4は、円周方向に等間隔で配置されている。ホイール組付け状態では、各組の2つの取付爪部材4が一体となってリテーナ10を内周方向に撓み変形させる。各組を構成する2つの取付爪部材4は、一体となってリテーナ10からの反力を受ける。従って、組を構成する2つの取付爪部材4の両端間の寸法が、ホイールカバー1の抜き力を計算する際の爪幅W2(図5に示す)となる。
【0021】
各取付爪部材4は、アーム部6とこのアーム部6の先端側に設けられた爪本体部7とを有する。爪本体部7は、その外周面7aがホイールへの組み付け状態でリム20の内面に密着される。爪本体部7の内面には、外周側に向かって窪んだ最奥位置にリテーナ掛止面8が形成されている。
【0022】
リテーナ掛止面8は、円周方向に沿って位置する中央掛止面8bと端末部が中央掛止面8bよりリム20側に位置する補助掛止面8aとで形成されている。ここで、この実施形態では、近接配置された2つの爪本体部7によって組を構成している。そのため、各リテーナ掛止面8は、隣り合う組に近い側の端末部にのみ補助掛止面8aを有している。3つ以上の爪本体部7で組を構成する場合には、各組の両端に位置する取付爪部材4のリテーナ掛止面8は、隣り合う組に近い側の端末部にのみ補助掛止面8aを有するよう形成すれば良い。
【0023】
補助掛止面8aは、リテーナ掛止面8の中央掛止面8bから端末部の先端に向かって徐々にリム20側に傾斜するテーパ状である。
【0024】
脱落防止突起部5は、1組を構成する2つの取付爪部材4の間に配置されている。脱落防止突起部5は、取付爪部材4に掛止されたリテーナ10の内周側への撓み変形を阻止している。
【0025】
リテーナ10は、剛性の高い金属材より形成されている。リテーナ10は、リング状であり、複数の取付爪部材4のリテーナ掛止面8にそれぞれ掛止されている。リテーナ10の軸径は、撓み変形前の状態では、6組の取付爪部材4のリテーナ掛止面8を結ぶ仮想円の径よりも大きい。ホイールカバー2は、ホイールに組み付けする際、リテーナ10の撓み復帰力に抗して全ての取付爪部材4が内周側に変移することによってリム20の内面に係止される。ホイールカバー1は、ホイールカバー本体2がリテーナ10の反力(撓み復帰力)を受けてホイールのリム20に係止される。
【0026】
このように構成されたホイールカバー1の抜き力について説明する。ホイールカバー1をホイールに組み付けると、各取付爪部材4がリム20から受ける撓み変形力によってホイール組付け前より内周方向に変位し、リテーナ10の反力(撓み復帰力)によって各取付爪部材4がリム20の内面に係止する。図5において、ホイール組付け前の取付爪部材4とリテーナ10の位置が破線の位置であり、ホイール組付け後の取付爪部材4とリテーナ10の位置が実線の位置である。この組付け前後でのリテーナ10の変位量(取付爪部材4のリテーナ掛止面8の変位量)がリテーナ締代P2となる。又、各取付爪材4は、熱変形前の状態では、補助受け面8aを除くリテーナ掛止面8(中央掛止面8b)でリテーナ10の反力(撓み復帰力)を受けるため、組を構成する2つの取付爪部材4のリテーナ掛止面8の中央掛止面8bの間の寸法が爪幅W2となる。
【0027】
ホイールカバー本体2がブレーキの連続使用等によって加熱される。この加熱状態でリテーナ10の反力(撓み復帰力)を受け続けると、取付爪部材4の中央掛止面8bが潰れて肉厚が薄くなる。すると、図6に示すように、リテーナ締代がP3分だけ減少する。その一方、取付爪部材4のリテーナ掛止面8の中央掛止面8bが潰れるとリテーナ10の反力をリテーナ掛止面8の中央掛止面8bと共に端末部の補助掛止面8aでも受けることになる。これにより、ホイールカバー1の抜き力を計算する場合の爪幅(リテーナ10の反力を受ける爪幅)がW2から増加し、最終的にW3になる。
【0028】
詳細には、組を構成する2つの取付爪部材4のリテーナ掛止面8の中央掛止面8bの端末bにリテーナ10の反力による応力集中が発生するため、この中央掛止面8bの端末bが最も潰れてリテーナ締代が減少する。その一方、リテーナ掛止面8の中央掛止面8bの端末bの潰れによって、リテーナ10の反力を補助掛止面8aでも受けるようになり、その箇所にリテーナ10の反力による応力集中が発生する。このようにしてリテーナ10の反力を受ける補助掛止面8aが徐々に拡大し、最終的に補助掛止面8aの全域でリテーナ10の反力を受けることになる。
【0029】
ここで、リテーナ締代と取付爪部材(リテーナ)反力は、図7(a)に示す特性を有する。爪幅と取付爪部材(リテーナ)反力は、図7(b)に示す特性を有する。つまり、上記したような挙動を示すため、リテーナ締代の減少によってホイールカバー1の抜き力が減少する方向に向かうが、その一方で爪幅の増加によってホイールカバー1の抜き力が増加する方向に向かうため、トータルとして抜き力の低減を極力防止できる。以上より、取付爪部材4の熱変形に起因するホイールカバー1のホイールからの脱落を防止できる。
【0030】
取付爪部材4のリテーナ掛止面8の補助掛止面8aは、テーパ状である。従って、取付爪部材4の中央掛止面8bの潰れ量に応じてリテーナ10の反力を受けるリテーナ掛止面8の寸法が増加するため、ホイールカバー1の抜き力をほぼ一定に保持できる。リテーナ掛止面8の補助掛止面8aは、中央掛止面8bよりもリム20側に一律に後退する段差面として形成しても良い。
【0031】
この実施形態では、2つの取付爪部材4によって1つの組(一体となってリテーナ10の反力を受ける組)を構成したが、3つ以上の取付爪部材4によって1つの組を構成するようにしても良い。この場合には、各組の中央に位置する取付爪部材のリテーナ掛止面8には補助掛止面8aを形成する必要がなく、組の両端に位置する2つの取付爪部材4について補助掛止面8aを形成する。又、複数の取付爪部材で組を構成せずに単独でリテーナ10の反力を受ける場合には、各取付爪部材4のリテーナ掛止面8の両側の端末部を補助掛止面8aに形成することが好ましい。
【0032】
ポリプロピレン(PP)樹脂製のホイールカバー本体2は、耐熱性に優れた樹脂(ポリカーボネート(PC)樹脂とABS樹脂の混合樹脂、PA6樹脂、ABS樹脂等)で形成したものに較べて非常に軽量で、低コストである。そして、軽量であるため、車両の燃費向上となる。
【符号の説明】
【0033】
1 ホイールカバー
2 ホイールカバー本体
3 円盤部
4 取付爪部材
8 リテーナ掛止面
8a 補助掛止面
8b 中央掛止面
10 リテーナ
20 リム
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールのリムの内面に係止するホイールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールカバーは、リテーナによって付勢力を受けた取付爪部材をホイールのリムの内面に係止することによって取り付けられる(特許文献1参照)。図8〜図10にはホイールカバーの一従来例が示されている。
【0003】
図8〜図10において、ホイールカバー50は、ホイールカバー本体51とこのホイールカバー本体51の裏面側に掛止されたリテーナ60とを備えている。ホイールカバー本体51は、円盤部52と、この円盤部52の裏面より円周方向に沿って間隔を置いて配置された複数の取付爪部材53とを有する。リテーナ60は、リング状であり、複数の取付爪部材53のリテーナ掛止面54に掛止されている。ホイールカバー50は、ホイールに組み付けする際、リテーナ60の撓み変形力に抗して複数の取付爪部材53が内周側に変移することによってホイールのリム70(図10(b)、(c)に示す)の内面に係止される。
【0004】
ホイールカバー50は、走行中の振動等によってホイールのリム70より脱落しないことが必要である。ホイールカバー50を脱落させない力、つまり、ホイールカバー50の抜き力は、取付爪部材53の数、爪幅、リテーナ締代(撓み量)、リテーナ軸径によって決定される。
【0005】
図11には、ホイール組付け前の取付爪部材53とリテーナ60の位置が破線で示され、ホイール組付け後の取付爪部材53とリテーナ60の位置が実線で示されている。組付け前後におけるリテーナ60の変位量(取付爪部材53のリテーナ掛止面54の変位量)がリテーナ締代P1となる。リテーナ締代P1が小さくなると、取付爪部材53(リテーナ60)の反力が低下する。
【0006】
又、上記従来例にあっては、取付爪部材53は、近接配置された2つが1つの組を構成する。ホイール組付け状態では、各組の2つの取付爪部材53が一体となってリテーナ60を内周方向に撓み変形させ、且つ、一体となってリテーナ60からの反力を受ける。従って、組を構成する2つの取付爪部材53の両端間の寸法が、爪幅W1(図11に示す)となる。爪幅W1が小さくなると、取付爪部材53(リテーナ60)の反力が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−59702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来のホイールカバー本体51は、耐熱性に優れた樹脂(ポリカーボネート(PC)樹脂とABS樹脂の混合樹脂、PA6樹脂、ABS樹脂等)で成形されていたが、コストダウンを図るために耐熱性の低い材料(ポリプロピレン(PP)樹脂等)で成形しようとする開発が進んでいる。
【0009】
しかし、ホイールカバー本体51は、ブレーキの連続使用等による発熱によって100℃以上に上昇することがある。そのため、耐熱性の低い材料で成形したホイールカバー本体51は、加熱状態でリテーナ60の反力(撓み復帰力)を受け続けると、取付爪部材53が潰れて肉厚がd1からd2へと薄くなる。つまり、リテーナ60と取付爪部材53のリテーナ掛止面54の位置が図10(b)の位置から図10(c)の位置に変位し、t(=d1−d2)分だけリテーナ締代P1が減少する。詳細には、組を構成する2つの取付爪部材53のリテーナ掛止面54で、且つ、隣り合う組側の端末部aにリテーナ60の反力による応力集中が発生するため、この端末部aが最も潰れて端末部aでのリテーナ締代P1が最も減少する。
【0010】
このリテーナ締代P1の減少によって、ホイールカバー50の抜き力が低下するため(図7(a)参照)、ホイールカバー50がホイールから脱落し易くなるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、取付爪部材の熱変形に起因するホイールからの脱落を防止できるホイールカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、円盤部に円周方向に沿って間隔を置いて配置され、ホイールのリムの内面に係止する複数の取付爪部材を有するホイールカバー本体と、前記各取付爪部材のリテーナ掛止面に掛止され、内周方向の撓み変形による反力で前記各取付爪部材を前記リム側に付勢するリング状のリテーナとを有するホイールカバーであって、前記各取付爪部材の前記リテーナ掛止面は、円周方向の中央部側に位置する中央掛止面と端末部が前記中央掛止面より前記リム側に位置する補助掛止面とで形成されていることを特徴とする。
【0013】
前記リテーナ掛止面の補助掛止面は、前記中央掛止面から端末部の先端に向かって徐々に前記リム側に傾斜するテーパ状であることが好ましい。
【0014】
前記取付爪部材は、近接位置に配置された複数のもの同士が組を構成し、各組の複数の前記取付爪部材が一体となって前記リテーナを内周方向に撓み変形させるよう構成される場合には、各組の両端に位置する前記取付爪部材の前記リテーナ掛止面は、外側の端末部が中央部側に位置する中央掛止面より前記リム側に位置する補助掛止面を有している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、取付爪部材が加熱状態でリテーナの反力(撓み復帰力)を受け続けると、リテーナの反力を受けている取付爪部材のリテーナ掛止面の中央掛止面が潰れてリテーナ締代が減少するが、取付爪部材のリテーナ掛止面の中央掛止面が潰れるとリテーナの反力をリテーナ掛止面の中央掛止面のみならず端末部の補助掛止面でも受けることになるため、リテーナの反力を受ける爪幅寸法が大きくなる。従って、リテーナ締代の減少によってホイールカバーの抜け力が減少する一方で、爪幅の増加によってホイールカバーの抜け力が増加するため、取付爪部材の熱変形に起因するホイールカバーの脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示し、裏面側から見たホイールカバーの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、図1のA部の拡大図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、(a)は取付爪部材の斜視図、(b)は図2のSA−SA先断面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、図3のSB−SB線断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、図4のB部拡大箇所で、ホイールカバーの組付け前の状態と組付け後の状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態を示し、図4のB部拡大箇所で、ホイールカバーの加熱前の状態と加熱後の状態を示す図である。
【図7】(a)はリテーナ締代と取付爪部材(リテーナ)反力の特性線図、(b)は爪幅と取付爪部材(リテーナ)反力の特性線図である。
【図8】従来例を示し、裏面側から見たホイールカバーの斜視図である。
【図9】従来例を示し、図8のC部の拡大図である。
【図10】従来例を示し、(a)は取付爪部材の斜視図、(b)は加熱前の取付爪部材のリテーナ掛止面とリテーナの位置を示す図、(c)は加熱前の取付爪部材のリテーナ掛止面とリテーナの位置を示す図である。図2のSA−SA先断面図である。
【図11】従来例を示し、ホイールカバーの組付け前の状態と組付け後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1〜図6は本発明の一実施形態を示す。図1〜図4に示すように、ホイールカバー1は、ホイールカバー本体2と、このホイールカバー本体2の裏面側に掛止されたリテーナ10とを備えている。
【0019】
ホイールカバー本体2は、耐熱性の低い材料(ポリプロピレン(PP)樹脂等)で形成されている。ホイールカバー本体2は、浅いすり鉢状に形成された円盤部3と、この円盤部3の外周側の裏面より円周方向に沿って間隔を置いて配置された複数の取付爪部材4と、円盤部3の裏面より円周方向に沿って間隔を置いて配置された複数の脱落防止突起部5とを有する。
【0020】
取付爪部材4は、近接配置された2つのものがそれぞれ1つの組を構成している。取付爪部材4は、全部で6組配置されている。各組の取付爪部材4は、円周方向に等間隔で配置されている。ホイール組付け状態では、各組の2つの取付爪部材4が一体となってリテーナ10を内周方向に撓み変形させる。各組を構成する2つの取付爪部材4は、一体となってリテーナ10からの反力を受ける。従って、組を構成する2つの取付爪部材4の両端間の寸法が、ホイールカバー1の抜き力を計算する際の爪幅W2(図5に示す)となる。
【0021】
各取付爪部材4は、アーム部6とこのアーム部6の先端側に設けられた爪本体部7とを有する。爪本体部7は、その外周面7aがホイールへの組み付け状態でリム20の内面に密着される。爪本体部7の内面には、外周側に向かって窪んだ最奥位置にリテーナ掛止面8が形成されている。
【0022】
リテーナ掛止面8は、円周方向に沿って位置する中央掛止面8bと端末部が中央掛止面8bよりリム20側に位置する補助掛止面8aとで形成されている。ここで、この実施形態では、近接配置された2つの爪本体部7によって組を構成している。そのため、各リテーナ掛止面8は、隣り合う組に近い側の端末部にのみ補助掛止面8aを有している。3つ以上の爪本体部7で組を構成する場合には、各組の両端に位置する取付爪部材4のリテーナ掛止面8は、隣り合う組に近い側の端末部にのみ補助掛止面8aを有するよう形成すれば良い。
【0023】
補助掛止面8aは、リテーナ掛止面8の中央掛止面8bから端末部の先端に向かって徐々にリム20側に傾斜するテーパ状である。
【0024】
脱落防止突起部5は、1組を構成する2つの取付爪部材4の間に配置されている。脱落防止突起部5は、取付爪部材4に掛止されたリテーナ10の内周側への撓み変形を阻止している。
【0025】
リテーナ10は、剛性の高い金属材より形成されている。リテーナ10は、リング状であり、複数の取付爪部材4のリテーナ掛止面8にそれぞれ掛止されている。リテーナ10の軸径は、撓み変形前の状態では、6組の取付爪部材4のリテーナ掛止面8を結ぶ仮想円の径よりも大きい。ホイールカバー2は、ホイールに組み付けする際、リテーナ10の撓み復帰力に抗して全ての取付爪部材4が内周側に変移することによってリム20の内面に係止される。ホイールカバー1は、ホイールカバー本体2がリテーナ10の反力(撓み復帰力)を受けてホイールのリム20に係止される。
【0026】
このように構成されたホイールカバー1の抜き力について説明する。ホイールカバー1をホイールに組み付けると、各取付爪部材4がリム20から受ける撓み変形力によってホイール組付け前より内周方向に変位し、リテーナ10の反力(撓み復帰力)によって各取付爪部材4がリム20の内面に係止する。図5において、ホイール組付け前の取付爪部材4とリテーナ10の位置が破線の位置であり、ホイール組付け後の取付爪部材4とリテーナ10の位置が実線の位置である。この組付け前後でのリテーナ10の変位量(取付爪部材4のリテーナ掛止面8の変位量)がリテーナ締代P2となる。又、各取付爪材4は、熱変形前の状態では、補助受け面8aを除くリテーナ掛止面8(中央掛止面8b)でリテーナ10の反力(撓み復帰力)を受けるため、組を構成する2つの取付爪部材4のリテーナ掛止面8の中央掛止面8bの間の寸法が爪幅W2となる。
【0027】
ホイールカバー本体2がブレーキの連続使用等によって加熱される。この加熱状態でリテーナ10の反力(撓み復帰力)を受け続けると、取付爪部材4の中央掛止面8bが潰れて肉厚が薄くなる。すると、図6に示すように、リテーナ締代がP3分だけ減少する。その一方、取付爪部材4のリテーナ掛止面8の中央掛止面8bが潰れるとリテーナ10の反力をリテーナ掛止面8の中央掛止面8bと共に端末部の補助掛止面8aでも受けることになる。これにより、ホイールカバー1の抜き力を計算する場合の爪幅(リテーナ10の反力を受ける爪幅)がW2から増加し、最終的にW3になる。
【0028】
詳細には、組を構成する2つの取付爪部材4のリテーナ掛止面8の中央掛止面8bの端末bにリテーナ10の反力による応力集中が発生するため、この中央掛止面8bの端末bが最も潰れてリテーナ締代が減少する。その一方、リテーナ掛止面8の中央掛止面8bの端末bの潰れによって、リテーナ10の反力を補助掛止面8aでも受けるようになり、その箇所にリテーナ10の反力による応力集中が発生する。このようにしてリテーナ10の反力を受ける補助掛止面8aが徐々に拡大し、最終的に補助掛止面8aの全域でリテーナ10の反力を受けることになる。
【0029】
ここで、リテーナ締代と取付爪部材(リテーナ)反力は、図7(a)に示す特性を有する。爪幅と取付爪部材(リテーナ)反力は、図7(b)に示す特性を有する。つまり、上記したような挙動を示すため、リテーナ締代の減少によってホイールカバー1の抜き力が減少する方向に向かうが、その一方で爪幅の増加によってホイールカバー1の抜き力が増加する方向に向かうため、トータルとして抜き力の低減を極力防止できる。以上より、取付爪部材4の熱変形に起因するホイールカバー1のホイールからの脱落を防止できる。
【0030】
取付爪部材4のリテーナ掛止面8の補助掛止面8aは、テーパ状である。従って、取付爪部材4の中央掛止面8bの潰れ量に応じてリテーナ10の反力を受けるリテーナ掛止面8の寸法が増加するため、ホイールカバー1の抜き力をほぼ一定に保持できる。リテーナ掛止面8の補助掛止面8aは、中央掛止面8bよりもリム20側に一律に後退する段差面として形成しても良い。
【0031】
この実施形態では、2つの取付爪部材4によって1つの組(一体となってリテーナ10の反力を受ける組)を構成したが、3つ以上の取付爪部材4によって1つの組を構成するようにしても良い。この場合には、各組の中央に位置する取付爪部材のリテーナ掛止面8には補助掛止面8aを形成する必要がなく、組の両端に位置する2つの取付爪部材4について補助掛止面8aを形成する。又、複数の取付爪部材で組を構成せずに単独でリテーナ10の反力を受ける場合には、各取付爪部材4のリテーナ掛止面8の両側の端末部を補助掛止面8aに形成することが好ましい。
【0032】
ポリプロピレン(PP)樹脂製のホイールカバー本体2は、耐熱性に優れた樹脂(ポリカーボネート(PC)樹脂とABS樹脂の混合樹脂、PA6樹脂、ABS樹脂等)で形成したものに較べて非常に軽量で、低コストである。そして、軽量であるため、車両の燃費向上となる。
【符号の説明】
【0033】
1 ホイールカバー
2 ホイールカバー本体
3 円盤部
4 取付爪部材
8 リテーナ掛止面
8a 補助掛止面
8b 中央掛止面
10 リテーナ
20 リム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤部に円周方向に沿って間隔を置いて配置され、ホイールのリムの内面に係止する複数の取付爪部材を有するホイールカバー本体と、
前記各取付爪部材のリテーナ掛止面に掛止され、内周方向の撓み変形による反力で前記各取付爪部材を前記リム側に付勢するリング状のリテーナとを有するホイールカバーであって、
前記各取付爪部材の前記リテーナ掛止面は、円周方向の中央部側に位置する中央掛止面と端末部が前記中央掛止面より前記リム側に位置する補助掛止面とで形成されていることを特徴とするホイールカバー。
【請求項2】
請求項1記載のホイールカバーであって、
前記リテーナ掛止面の補助掛止面は、前記中央掛止面から端末部の先端に向かって徐々に前記リム側に傾斜するテーパ状であることを特徴とするホイールカバー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のホイールカバーであって、
前記取付爪部材は、近接位置に配置された複数のもの同士が組を構成し、各組の複数の前記取付爪部材が一体となって前記リテーナを内周方向に撓み変形させるよう構成され、
各組の両端に位置する前記取付爪部材の前記リテーナ掛止面は、外側の端末部が中央部側に位置する前記中央掛止面より前記リム側に位置する補助掛止面を有していることを特徴とするホイールカバー。
【請求項1】
円盤部に円周方向に沿って間隔を置いて配置され、ホイールのリムの内面に係止する複数の取付爪部材を有するホイールカバー本体と、
前記各取付爪部材のリテーナ掛止面に掛止され、内周方向の撓み変形による反力で前記各取付爪部材を前記リム側に付勢するリング状のリテーナとを有するホイールカバーであって、
前記各取付爪部材の前記リテーナ掛止面は、円周方向の中央部側に位置する中央掛止面と端末部が前記中央掛止面より前記リム側に位置する補助掛止面とで形成されていることを特徴とするホイールカバー。
【請求項2】
請求項1記載のホイールカバーであって、
前記リテーナ掛止面の補助掛止面は、前記中央掛止面から端末部の先端に向かって徐々に前記リム側に傾斜するテーパ状であることを特徴とするホイールカバー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のホイールカバーであって、
前記取付爪部材は、近接位置に配置された複数のもの同士が組を構成し、各組の複数の前記取付爪部材が一体となって前記リテーナを内周方向に撓み変形させるよう構成され、
各組の両端に位置する前記取付爪部材の前記リテーナ掛止面は、外側の端末部が中央部側に位置する前記中央掛止面より前記リム側に位置する補助掛止面を有していることを特徴とするホイールカバー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−210915(P2012−210915A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78667(P2011−78667)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(504136889)株式会社ファルテック (57)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(504136889)株式会社ファルテック (57)
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