説明

ホイールカバー

【課題】自動車運搬走行中や完成車の走行テスト中の剥がれを防ぎつつ、粘着剤の跡残りが発生しても容易に除去することが可能なホイールカバー用フィルムを提供すること。
【解決手段】基材層と粘着層との少なくとも2層からなるフィルムであって、粘着層がポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドン、もしくはそれらの混合物からなる組合せからなることを特徴とする、ホイールカバー用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのホイールのためのカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車を輸送又は輸出する際のホイールの防錆及び表面を保護することを目的としたホイールカバーの従来技術には、真空成形された樹脂製のホイールカバーもしくはホイールカバー用フィルムが存在する。
しかしながら、真空成形されたポリプロピレン製のホイールカバーはホイールの形状毎に金型作製する必要があるため、その金型の製作に多額の費用を要し、かつ金型を保管管理する必要があるためその保管場所が広くその確保にも多額の費用を要するため、経済的な負担が大きい。更に、自動車運搬後に不要となった樹脂製のホイールカバーの保管場所及びに廃棄物処理に対しての経済的負担が大きく好ましくない。
【0003】
一方、特許文献1及び2に記載されるように、樹脂製のフィルムにアクリル樹脂などの粘着剤を塗布したホイールカバー用フィルムも知られている。この場合には、粘着剤を樹脂製フィルムに全面塗布するとホイールカバーの使用時に剥離し難くなるものの、ホイールカバーとしての機能が不要となった際、ホイールカバーフィルムを剥離しようとすると粘着剤がホイール表面へ跡残りすることが課題となっている。加えて、粘着剤をホイールカバーフィルムの一部のみに塗布した場合、走行時の風圧によりホイールカバーフィルムが剥離する恐れがあった。
【0004】
また輸送時の温度環境は様々であり、氷点下20℃を下回るような寒冷地域から、路面温度が60℃に上ることもある。環境温度の変化に対して、アクリル系の粘着剤などは、低温時には硬くなり十分な粘着性を維持できず、高温時になると樹脂自体が柔らかくなり過ぎて、走行時にホイールカバー用フィルムが風圧により剥離してしまうことが問題となっていた。
【0005】
この剥離に対して粘着剤をストライプ状に塗布することが特許文献3に紹介されているが、露出する粘着面が長期にわたって粘着性を示す汎用の粘着剤を使用する限り、上記のように低温及び高温環境下ではホイールカバー用フィルムが剥離する懸念がある。
また大抵のホイールは美観や機能上の理由で穴や複雑な凹凸を有する形状を呈する。
汎用の粘着層を有するホイールカバーをそのようなホイール表面に貼り付けた場合、ホイールの穴や凹凸の凹部には粘着層が密着せず空間に露出される。その結果、粘着層の表面がホイール面以外に露出するため、例えば国内にて意図せず昆虫類や種子、塵を付着したあとにそのまま輸出されると、輸出先において検疫上、あるいは生態系を破壊しかねない等の問題が発生することが懸念される。
【0006】
このように、ホイールの保護には廃棄及び製造のコストから、真空成形よりもカバーフィルムの方があらゆる形状のホイールに対応できる他、廃棄時に廃棄物を保管する場所をとらないというメリットがある。
一方で、粘着剤が跡残りしてしまうとそれを剥がす工程を要するので、剥離時に手間がかかることや、ホイールの孔や凹部に粘着剤が露出するため、意図しない生態系の破壊を招く危険性が高かった。更に、低温及び高温環境下でホイールカバー用フィルムが剥離してしまう恐れがあり、輸送される自動車では特に問題となる。故に、ホイールの接着にアクリル系などの汎用の粘着剤を用いるのは好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−309510号公報
【特許文献2】特開2009−227746号公報
【特許文献3】特開2009−280128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
真空成形品によってホイールをカバーすることよりもフィルム状物をホイールに貼り付けるほうが、使用後のカバーを廃棄物として保管する場所を取らない。
しかしながら、汎用の粘着剤層を用いたフィルム状物を使用すると、上記のように粘着剤が跡残りすることにより剥離時に手間がかかることや、ホイールに形成されている孔や凹部に面して粘着剤が露出するため、意図しない生態系の破壊を招く危険性が高く、これを解消する必要があった。ホイール表面の貼り付けたい部分のみにホイールカバーを貼り付け、不必要な部分には粘着性を有する層が露出することがないことが望まれる。
更に、低温及び高温環境下でホイールカバー用フィルムが剥離してしまう恐れがあり、輸送される自動車では特に問題となる。故に、ホイールの接着にアクリル系などの汎用の粘着剤を用いるのは好ましくなかった。
また、本発明においては、低温から高温環境下でも剥離することの無いホイールカバー用フィルムを提供することも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、下記の(1)〜(4)の本発明に到達した。
1.タイヤのホイールに貼付けられるホイールカバーであって、該ホイールカバーは基材層と粘着層との少なくとも2層からなり、前記粘着層が再湿性粘着層であり、水溶性であることを特徴とするホイールカバー。
2.粘着層表面もしくは被着体表面に、親水性溶媒を粘着層の重量に対し2g/g〜20g/g塗布して貼り合せて粘着性を発揮することを特徴とする、1記載のホイールカバー。
3.前記ホイールカバーの、粘着力(JIS Z0237)は、3〜10N/25mmである1及び2に記載のホイールカバー。
4.前記粘着層がポリビニルアルコールないしポリビニルピロリドンもしくはそれらの混合物からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のホイールカバー。
【発明の効果】
【0010】
再湿性粘着層は水溶性樹脂からなり、親水性溶媒と触れることで粘着層表面が溶解して所定の粘着性を発揮する。また、低温及び高温環境下での粘着強度を保持する理由は不詳だが、粘着層中に含まれた水分が氷点下で対象物に凍りつくことで粘着力を増し、高温下では水溶性樹脂が溶液化しているため粘度の変化も少なく安定した粘着力を示すものと類推する。
尚、そのような水溶性樹脂は使用される環境の湿度により影響を受けるが、基材層が環境からの湿度の侵入を防ぎ、水溶性樹脂に含ませた溶媒の大気中への拡散を抑制するものである。故に、粘着層の粘着強度を幅広い温度環境下で保つことができるホイールカバーとなる。
さらに、使用後においてホイールカバーを剥離する際には、ホイール表面に粘着剤を残すことがなく剥離できるので、表面に残った粘着剤を洗浄等の手段により剥離する工程を要しない。
また、穴や凹凸を有するホイール表面に対してホイールカバーを貼り付けた場合、その穴や凹部に面するホイールカバーの粘着層表面は、時間の経過により乾燥することにより、水含有量が減少して粘着力を消失する。その結果、虫やごみなどが乾燥してなる粘着層表面に接触しても、その表面に付着することがないので、自動車等やホイールの運搬と共に虫や種子等を運搬先に移動することが防止できる。このため、検疫や生態系の面において支障をきたすことがない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明のホイールカバーは、タイヤのホイールの表面に貼り付けることによって、外部からホイール表面やブレーキディスク等に水や砂等が付着するのを防止して、錆の発生を防止するものである。また、ホイールを保護し、ホイールに石等があたることにより傷が付くことを抑制するものである。
そのようなホイールカバーは、基材層と粘着層が積層されてなり、中央にホイールナットを収納する孔の開いた、ホイールのサイズに合わせた円環状である。
【0012】
粘着層は、使用直前に親水性溶媒で湿潤させて初めて粘着性を発揮する再湿性粘着剤からなり、対象物へホイールを保護する機能を有する基材層を貼り付けることを可能にすることを前提とするものである。そしてこのような粘着層を採用することによって、広い温度範囲において各種ホイールの形状に追従して粘着された状態することができ、しかも剥離時においてホイール表面に粘着剤が一部でも残ることがないものである。
【0013】
基材層は、ホイールに貼り付けた状態でホイール表面に水や砂等が付着するのを防止する機能を有している他、粘着層に塗布した親水性溶媒の揮発を抑制する機能も併せ持つ。他、当該ホイールカバーを貼付けた自動車は製造工場からの出荷前に、水を用いた高圧水洗浄が施されるが、基材層はこの水分の粘着層への湿潤を防ぐ役目も担っている。
基材層は、上記の機能を有するものであればよく、このため、耐水性、低い透湿性、水不溶性を備え、かつ砂や石によって、傷が付かないことが必要である。このため、紙や多孔性シートのような透湿性を有する材料は基材層には不適である。
本発明にて使用される基材には、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリナフタレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン−プロピレン共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等のエチレン共重合体、熱可塑性ポリオレフィン樹脂や熱可塑性ポリエステルエラストマー、ポリ乳酸樹脂などの各種樹脂を用いることができる。上述した中でも、低い透湿性や高い柔軟性の面からポリエチレン樹脂が好ましい。
【0014】
基材層には、加工適性や取り扱い性を高める目的で、可塑剤、賦形剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防錆剤、アンチブロッキング剤など必要に応じて添加しても良い。
基材層の厚みは、特に限定されないが、10〜2000μmの範囲が好ましく、より好ましくは20〜200μmである。10μm未満では破れやすくなり、基材層に石などがあたって穴があく可能性があり、また200μmを超えると基材層が硬くなりホイール表面の曲面に追従して密着して被覆することが困難になる可能性がある。
【0015】
粘着層は加湿されて粘着性を発揮する再湿性粘着剤からなり、水溶性樹脂を含有する粘着剤からなり、水分を付与されることによって溶解して粘着性を発現するが、乾燥すると粘着性が消失する粘着剤が採用される。その粘着剤の例としては、ヒプロメロースやメチルセルロースなどのセルロース系樹脂や、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニルアセテート共重合体や、アラビアゴム、グアーガム、ローカストビーンガムなどの多糖類系樹脂を用いることができる。
上述した中でも、湿潤後の粘着性を保持するためにはポリビニルアルコール樹脂にポリビニルピロリドン樹脂を含む粘着層、あるいはポリビニルアルコールにポリビニルピロリドンが重合してなる樹脂を含む粘着層であることが好ましい。その理由はフィルム状態では粘着性を示さないが、親水性の溶媒で湿潤した際に初めて粘着性を発揮して粘着層が平衡水分率に達しても良好に粘着性を保持するためである。
【0016】
さらに上記のポリビニルアルコールは重合度が100〜4000であり、あるいはポリビニルピロリドンを混合、又はポリビニルピロリドンを重合させる際のポリビニルピロリドンは10重量%以上とすることが好ましい。
中でもポリビニルアルコールのケン化度は70〜100mol%であるのが好ましく、70〜99mol%がより好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度が70mol%未満では接着性が低下する。ケン化度は74mol%以上がより好ましく、88mol%以上が特に好ましいが、99mol%を超えると再湿しにくくなる。
また、粘着層に使用されるポリビニルアルコール樹脂やポリビニルピロリドン樹脂などには水分や酢酸塩が少量含まれるが、含有量は錆などを誘発するほどではない。
【0017】
粘着層の製造方法は、上記再湿性粘着樹脂の水溶液をエンドレスベルトやドライヤー上に流延し加熱乾燥して得るほか、熱可塑性樹脂の場合には溶融押出しであっても良い。基材層と共に溶融押出しするか、基材層に水溶性の粘着フィルムを熱ラミネーション又はウェットラミネーションして多層化したホイールカバーを作製すれば良い。これらの製造方法は、このような樹脂の特性に合わせて適宜選ぶことができる。
【0018】
なお、粘着層には、可塑剤やアンチブロッキング剤、賦形剤、帯電防止剤、界面活性剤顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、pH調製剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、硬膜剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の各種添加剤を必要に応じて添加しても良い。他に、2種類以上の水溶性樹脂を混合して使用してもなんら問題はない。
本発明にて使用する粘着層には、本発明の目的を妨げない範囲で顔料等も添加可能であり、例えばアルミニウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、チタン等の炭酸塩、酸化物、水酸化物、硫酸塩等、および天然シリカ、ゼオライト、カオリン、焼成カオリン等の粘土類を含む無機系顔料、澱粉、スチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、パラフィン、天然ワックス、合成ワックス等が使用可能である。
【0019】
また、粘着層の厚みは10〜2000μmの範囲が好ましく、より好ましくは20〜200μm、さらに好ましくは30〜100μmである。粘着層の厚さが10μm未満では十分な粘着力を有することができず、2000μmを超える厚さを備える場合には、逆に粘着力が強くなりすぎる可能性がある。
そしてアルミホイールに対する粘着層の粘着力は2〜10N/25mmの範囲であることが、さらに確実にホイール表面を保護し、保護中に不用意に剥離することがなく、かつ確実に剥離を糊跡残りなくして、剥離作業を容易に行うためには好ましい。
【0020】
本発明のホイールカバーは、自動車の搬送後、ホイールに付着しているホイールカバー用フィルムを糊残りなく剥離する必要がある。このため、粘着層とホイールとの粘着力は、基材層と粘着層との粘着力、及び粘着層の凝集力よりも低いことが必要であり、かつ粘着層は水溶性であることが必要である。
粘着層とホイールとの粘着力が基材層と粘着層との間の粘着力よりも高いと、ホイールカバーをホイールから剥離する際には、専ら基材層と粘着層との間で剥離されて、剥離後においてほとんどの粘着層がホイール表面に残っている状態となり、その後親水性溶媒を塗布することによって残っていた粘着層を溶解・除去する工程を必要としてしまう。
このように本発明においては、ホイールカバーを剥離させる際に、ホイール表面に粘着層を残ないこと、つまり糊残りを発生させないことが必要である。
【0021】
しかしながら、粘着層がホイールから剥離して、ホイールには糊残りがない程度のホイールに対する粘着層の粘着力となるように、ホイールに対する粘着層の粘着力を低下させすぎると、ホイールカバーを使用中にホイールからホイールカバーが剥離しやすく、ホイールを十分に保護することができない等の支障が生じる可能性がある。
【0022】
また、粘着層とホイールとの粘着力が粘着層の凝集力よりも高い場合には、ホイールカバーを剥離することにより、粘着層内部において凝集破壊が発生して、一部の粘着層がホイール表面に糊残りし、一部の粘着層が基材層に付着することになる。この場合においてもその後親水性溶媒を塗布することによって残っていた粘着層を溶解・除去することが必要になってしまう。
【0023】
特に基材層がポリオレフィン系樹脂やフッ素樹脂等の粘着層に対する接着性が小さい材料からなる場合には、基材層と粘着剤層との間にプライマー層を設けたり、基材層の粘着層を設ける側の表面にコロナ放電処理等の表面処理を行うことができる。
【0024】
加えて、本発明のホイールカバーを使用する前に保管する際には、粘着層表面に何らかのゴミや埃等が付着することによって汚れて粘着力が低下しないよう、予め粘着層表面に離型フィルムを貼り付けておく等して保護しても良い。また、乾燥した状態において、粘着層表面が粘着力を有しない場合には、必ずしもこのような離型フィルムを貼り付けておく必要はない。
【0025】
基材層と粘着層の少なくとも2層からなるホイールカバーは、粘着面をホイール側に接触させて貼り付け、ホイール内部への水や埃の侵入を防ぐことができる。その貼付け方法は、粘着層表面もしくはホイール表面に親水性溶媒をスプレー噴霧もしくは刷毛塗りなどにより塗布すれば良く、中でもホイール表面に親水性溶媒を塗布する方が余分な粘着面の露出もなくより好ましい。
親水性溶媒としては、水、エタノールやグリコール等のアルコール類を使用することができる。但し、入手が容易であることなどを考慮して水やエタノールを採用することが望ましい。
その親水性溶媒の使用量は、粘着層の単位重量に対して2〜20g、つまり2〜20g/gの範囲であることが望ましい。好ましくは5〜15g/gである。2g/g未満、あるいは20g/gを超えると、十分な粘着力を発揮することができない。例えば、ポリビニルアルコールが高重合度又は高ケン化度の場合には親水性溶媒の量が多くても粘着力を発揮することができる。
【0026】
本発明のホイールカバーが使用される対象のホイールは、アルミニウム、スチール等公知のホイール用材料からなるホイールでよい。さらに、そのホイールは自動車用、オートバイ用等、ホイールを使用する公知の車輌にて使用されるホイールでよい。
そして、本発明のホイールカバーは、専ら工場や倉庫、商店等から出荷されるホイールや、車軸に組み付けられて車輌と一体化されたホイール等、保護する必要があるホイールを対象として使用される。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。粘着層にポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとを含む組成について実施例を示す。
【0028】
(試料の評価)
○粘着層の水分量測定
25mm×20cm角のホイールカバーの平面に対し垂直方向にスプレーの噴出孔を20cm離して、親水性溶媒を塗布した際の、スプレー前後のフィルム重量の差を精密秤にて測定して粘着層に与えた水分量(g)を求めた。その値を粘着層の重量で除して粘着層に対する水分量(g/g)を求めた。
【0029】
○粘着性評価
23℃−50%RHの雰囲気下で、JIS Z0237に準拠して測定される貼付け24時間後の180°引き剥がし法によるアルミホイールに対する粘着力(以下、「粘着力(単位:N/25mm)」と呼ぶ)で評価した。ただし、粘着力の温度の影響を評価するため測定方法は同様にしながら測定環境温度のみ−30℃〜80℃の範囲で変更して測定している。
粘着力の値を基に以下の3段階に分類する。
2N/25mm以上且つ10N/25mm以下を示すホイールカバー・・・○
2N/25mm未満、または10N/25mmを超えるホイールカバー・・・×
【0030】
○糊跡残りの判断
25mm×20cm角のホイールカバーを親水性溶媒にて湿潤した粘着層を、被対象物であるアルミホイール表面上に圧着後、2時間後にホイールカバーを剥離した際のホイール表面の様子を粘着層の残存有無について目視にて観察した。
糊の跡残りの有無で以下の2段階に分類する。
糊の跡残りが見られないホイールカバー・・・○
糊の跡残りが見られるホイールカバー・・・×
【0031】
○ホイールカバーの総合判断基準
粘着力が“○”かつ糊跡残りが“○”の場合・・・○
粘着力が“○”かつ糊跡残りが“×”の場合・・・×
粘着力が“×”かつ糊跡残りが“○”の場合・・・×
粘着力が“×”かつ糊跡残りが“×”の場合・・・×
【実施例1】
【0032】
重合度1000、ケン化度88.0モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール社製)からなる厚み40μmの粘着層を、厚み60μmの低密度ポリエチレンからなる基材層に熱ラミネーションして多層フィルムを得た。この粘着層側に親水性溶媒として蒸留水を粘着層に塗布して、ホイールカバー試料1を得た。
【実施例2】
【0033】
重合度500、ケン化度74.5モル%の低ケン化ポリビニルアルコール(クラレ社製)にポリビニルピロリドンK−30を20wt%と可塑剤としてグリセリンを10wt%含む厚み60μmの粘着層を、厚み30μmのポリプロピレンからなる基材層にウェットラミネーションして多層フィルムを得た。この粘着層側に親水性溶媒としてメタノールを粘着層に塗布して、ホイールカバー試料2を得た。
【0034】
〔比較例1〕
粘着層としてアクリル系樹脂及びスチレン系樹脂からなる有機溶剤含有の粘着剤を採用して、粘着層を厚み10μmとなるように、厚み60μmの低密度ポリエチレンの基材層に塗布して、ホイールカバー試料3を得た。
【0035】
(結果)
実施例1においては、試料1について水分量を8g/gに固定し、粘着層の温度を−30〜80℃とした場合のアルミニウムに対する粘着力を測定すると共に、アルミホイールに対する糊跡残りの有無を確認した。
下記の表に示すように、屋外にアルミホイールを放置した場合において、該アルミホイールの起こりえる温度範囲である−20〜80℃の範囲では粘着力が2〜10N/25mmの範囲であり、かつアルミホイールに糊跡残りがみられないため、総合判定が優れた結果であった。
つまり、この温度範囲においては、ホイールカバーはアルミホイールに対して十分に強い粘着力で粘着でき、かつ、剥離時において糊跡残りがなくきれいに剥離をすることができるという効果を発揮することができた。
一方温度が−30℃では、粘着層の粘着力が低下して2N/25mm未満の粘着力にすぎないことから、この温度においてはアルミホイールに対してホイールカバーが十分粘着力によって粘着されていないので、実際にはアルミホイールからホイールカバーが剥離される可能性があるため、総合判定は良好な結果ではなかった。
【0036】
また、ホイールカバーの粘着層に与える水分量を1〜24g/gとして、粘着剤層の温度を24℃と固定した場合、その水分量が3〜19g/gの範囲としたときにホイールカバーがアルミホイールに対して、2〜10N/25mmの範囲の粘着力によって粘着され、かつ糊跡残りがなく剥離することができるので、総合判定の優れることが解る。
水分量が少なく、1g/gのときにはホイールカバーの粘着層は十分な粘着力を備えることができず、2N/25mm未満にすぎなかった。逆に粘着層の水分量が24g/gと高い場合にも、ホイールカバーの粘着層の粘着力は十分な強さではなく、低い場合と同じく2N/25mm未満にすぎなかった。これらの結果に関して総合判定は良好ではなかった。
この結果からみて明らかなように、水分量が低い、つまり粘着層から水分が蒸発した後には、粘着層の粘着力が低下することが理解できる。ホイール表面を保護する際に、ホイールの穴や表面凹凸の凹部に面する粘着層が乾燥して水分の含有量が低下すると、その部分の粘着層の粘着力が虫やごみ等を付着させない程度に低下する。
【0037】
実施例1に対して粘着層の組成を変更した例が実施例2であり、実施例2では、粘着層の水分量を5g/gとし、温度を−20℃、23℃及び60℃とした場合には、いずれの場合においても、粘着層の粘着力は2〜10N/25mmの範囲であり、かつアルミホイールからホイールカバーを剥離したときの糊跡残りがないため総合判定も優れた結果であった。
【0038】
上記のような実施例1及び2に対して、比較例1としては粘着層の水分量を0g/gとした。つまり、有機溶剤含有の粘着層を採用したので、そもそも粘着層に水分を供給する必要がない粘着層を採用したことになる。そして粘着層の温度を−30〜80℃の範囲として粘着力を測定し、かつ糊跡残りを確認した。
その結果、粘着層の温度が15℃及び23℃の場合においては、粘着力が2〜10N/25mmの範囲であるが、その他の温度では粘着力が2〜10N/25mmの範囲にはなく、本発明のホイールカバーには向かない粘着力を示した。
さらに全ての温度条件下において、アルミホイールからホイールカバーを剥離したときに糊跡残りが発生した。この結果総合判定では、全ての温度範囲おいて良好な判定結果とはならず、比較例1にて使用された粘着剤は本発明にて使用される粘着剤には不適であることが理解できる。
【0039】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのホイールに貼付けられるホイールカバーであって、該ホイールカバーは基材層と粘着層との少なくとも2層からなり、前記粘着層が再湿性粘着層であり、水溶性であることを特徴とするホイールカバー。
【請求項2】
粘着層表面もしくは被着体表面に、親水性溶媒を粘着層の重量に対し2g/g〜20g/g塗布して貼り合せて粘着性を発揮することを特徴とする、請求項1記載のホイールカバー。
【請求項3】
前記ホイールカバーの、粘着力(JIS Z0237)は、3〜10N/25mmである請求項1及び2に記載のホイールカバー。
【請求項4】
前記粘着層がポリビニルアルコールないしポリビニルピロリドンもしくはそれらの混合物からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のホイールカバー。

【公開番号】特開2013−75636(P2013−75636A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217959(P2011−217959)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000100849)アイセロ化学株式会社 (20)
【Fターム(参考)】