ホイールナットレンチ
【課題】安価であるとともに軽量化されたホイールナットレンチを提供する。
【解決手段】本発明のホイールナットレンチ1は、中空状の軟鋼管からなり、ハンドル部と、ハンドル部2の一端側に当該ハンドル部2と一体的に形成されナット嵌合穴5を内側に有するナット嵌合部4と、を有するホイールナットレンチであって、ナット嵌合部4の外周面側に、ナット嵌合部4の開口端から外側へ折り返されてなる折り返しフランジ部7がナット嵌合部4と一体的に形成されていることを特徴とする。
【解決手段】本発明のホイールナットレンチ1は、中空状の軟鋼管からなり、ハンドル部と、ハンドル部2の一端側に当該ハンドル部2と一体的に形成されナット嵌合穴5を内側に有するナット嵌合部4と、を有するホイールナットレンチであって、ナット嵌合部4の外周面側に、ナット嵌合部4の開口端から外側へ折り返されてなる折り返しフランジ部7がナット嵌合部4と一体的に形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールナットレンチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車には、ホイールを着脱するためのL型のホイールナットレンチが車載工具として搭載されている。上記ホイールナットレンチは、一般的には材料に炭素鋼を用い、ナットに勘合するナット嵌合部を熱間鍛造による複数の工程で成形し、ナット嵌合部の平面、円筒部を機械加工で仕上げ、軸(ハンドル部)を所定の位置より曲げ、さらに全体に焼入れを行うことによって成形している(特許文献1)。
また、製品の軽量化やコストダウンを目的として、ホイールナットレンチを中空状の鋼管を用いて一体成形する技術も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−219380号公報
【特許文献2】特開昭62−236676号公報
【特許文献3】特許第4436887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような鋼管を用いてホイールナットレンチを一体成形する場合、ナット嵌合部は鋼管をプレスにて拡管して成形する必要があり、ナット嵌合部の拡径により鋼管の肉厚が減少し、ナット嵌合部の強度が不足するという問題があった。また、ナット嵌合部の口開き強度を確保するためにリング状部材(補助鋼管)を成形前に鋼管先端部に挿入し、同時成形により板厚の減少と強度不足を補うように製造する方法(特許文献3)も提案されているが、別部材を用いており、成形工程も複雑になっているためコストが高くなってしまう。さらに、ナット嵌合部に曲げ応力およびネジリ応力がかかった時にリング状部材と鋼管先端部が剥離してしまう可能性もあった。また、L型のホイールナットレンチの場合、屈曲部にも強い曲げネジリ応力がかかるためこの部分の強度を確保するためには、強度の高い材質を用いるか、鋼管の外形を大きくするか、肉厚を厚くする必要があり、製品の軽量化やコストダウンを達成するようなホイールナットレンチは実用化されていなかった。
【0005】
本願発明はこのような従来の問題点を鑑みたものであり、安価であるとともに軽量化された強度の高いホイールナットレンチを提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では以下の手段を採用する。
本発明のホイールナットレンチは、中空状の鋼管からなり、ハンドル部と、前記ハンドル部の一端側に当該ハンドル部と一体的に形成されてナット嵌合穴を内側に有するナット嵌合部と、を有するホイールナットレンチであって、前記ナット嵌合部の外周面側に、前記ナット嵌合部の先端から外側へ折り返された折り返しフランジ部が前記ナット嵌合部と一体的に形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記ナット嵌合部の外周面と、前記折り返しフランジ部の内周面とが密着している構成としてもよい。
【0008】
また、前記ナット嵌合部から前記ハンドル部側へ向かうに従って内径が漸次縮径している構成としてもよい。
【0009】
また、前記鋼管を屈曲成形してなり、前記ハンドル部の一端側に屈曲部を介して前記ナット嵌合部が設けられ、前記屈曲部には、当該屈曲部の長さ方向に沿って延在するとともに、外周面から径方向外側へ向かって突出するリブが周方向に所定の間隔をおいて複数設けられている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハンドル部とナット嵌合部とが一体的に形成されているとともに、ナット嵌合部の先端から外側へ折り返されてなるフランジ部がナット嵌合部と一体的に形成されているので、ナット嵌合部と折り返しフランジ部とが別部材である場合に比べてナット嵌合部における曲げねじり応力に対する強度を高めることができる。また、安価な材料を用いることができるとともに軽量化が可能である。
【0011】
また、ナット嵌合部の外周面と折り返しフランジ部の内周面とが密着しているので、ナット嵌合部の開口側の強度を高めることができる。
また、ナット嵌合部からハンドル部側へ向かうにしたがって内径が漸次縮径しているので、ナット嵌合部とハンドル部との間の部分(境界部分)に曲げねじり応力が集中することがない。
また、ナット嵌合部とハンドル部との間の屈曲部に長さ方向に沿って延在する複数のリブを設けたことにより、屈曲部に係る曲げねじり応力に対しても十分な強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態であるホイールナットレンチの全体構成を示す図。
【図2】ホイールナットレンチの全体構成を示す部分断面図。
【図3】ナット嵌合部の嵌合穴の形状を示す図。
【図4】ナット嵌合部の嵌合穴の形状を示す図。
【図5】屈曲部の断面図(図2のC−C線に沿う断面図)。
【図6】ホイールナットレンチの部分断面図。
【図7】ハンドル部に対する嵌合穴の向きの例を示す図。
【図8】ハンドル部に対する嵌合穴の向きの例を示す図。
【図9】折り返しフランジ部を示す部分断面図。
【図10】従来のホイールナットレンチの構成を示す斜視図。
【図11】従来のホイールナットレンチの嵌合状態を示す部分断面図。
【図12】電縫管に引張力を加えた場合の荷重−伸び曲線を示す図。
【図13】(a)〜(e)は、ホイールナットレンチの製造工程を示す断面図。
【図14】ホイールナットレンチの製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態であるホイールナットレンチの全体構成を示す図である。図2は、ホイールナットレンチの全体構成を示す部分断面図である。図3および図4は、ナット嵌合部の嵌合穴の形状を示す図である。図5は、屈曲部の断面図である。図6〜図8は、ハンドル部に対する嵌合穴の向きの例を示す図である。図9は、折り返しフランジ部を示す部分断面図である。
【0015】
図1および図2に示すように、本実施形態のホイールナットレンチ1は、ハンドル部2、屈曲部3およびナット嵌合部4が一体的に形成された自動車用のL字型工具であって、ハンドル部2の一端側に屈曲部3を介してナット嵌合部4が設けられている。このホイールナットレンチ1は、外径が19mm、管壁の厚みが約2mmで、所定の長さを有する中空状の長尺軟鋼管、具体的には安価な電縫管を用いて形成されたものである。
【0016】
ナット嵌合部4には、ホイールナットに嵌合される断面視六角形状のナット嵌合穴5(図2)が軸方向に所定の長さ(深さ)で形成されている。このナット嵌合穴5は、電縫管の軸孔6の一部を六角口にする治具を用いて拡径して形成したものである。ハンドル部2の延在方向に対する六角口のナット嵌合穴5の向きは任意であり、図2〜図4に示すようにハンドル部2の延在方向とナット嵌合穴5の一角とが一致する向きであってもいいし、図6〜図8に示すようにハンドル部2の延在方向とナット嵌合穴5の一辺とが一致する向きであってもよい。
ここで、ナット嵌合穴5の対辺の長さは約21mm、ナット嵌合部4の外径は約30〜31mmである。
【0017】
本実施形態のナット嵌合部4の外周面4b側には、本体1Aの先端側がナット嵌合穴5の開口端5aから屈曲部3側へ折り返されるようにして形成された、折り返しフランジ部7が設けられている。折り返しフランジ部7の内周面7aはナット嵌合部4の外周面4bに密着しており、相互間に隙間のない状態とされている。折り返しフランジ部7の軸方向に沿う長さLは、約5〜6mmである。
折り返しフランジ部7が設けられたナット嵌合部4の開口端側の厚みtは約3.4〜3.7mmである。
【0018】
ナット嵌合部4の外形形状はナット嵌合穴5の寸法精度を確保することができれば、特に限定されず、例えば、図3に示すようにナット嵌合穴5の六角形状を反映した外形であってもいいし、図4に示すようにナット嵌合穴5の形状に係わらず断面視略円形状をなす外形であってもよい。
【0019】
また、本実施形態のホイールナットレンチ1は、ナット嵌合部4からL字状の屈曲部3を経たハンドル部2にかけてその外径が縮径している。これに伴い、内側の軸孔6の穴径も屈曲部3の外形寸法に倣うようにして、ナット嵌合穴5側の端部からハンドル部2側の端部に行くにしたがって漸次縮径するようにテーパ状に形成されている。ホイールナットレンチ1の使用時に、ナット嵌合部4の根元部分、つまりナット嵌合部4と屈曲部3との境界部分にかかる曲げねじり応力が低減される構成となっている。
【0020】
屈曲部3の外周面3bには、軸方向に沿って延在するとともに径方向外側に向かって突出する凸状のリブ31が周方向に所定の間隔をおいて複数設けられている。これら複数のリブ31は、屈曲部3の軸方向中央部分において最も高さを有しており、中央部分からナット嵌合部4側およびハンドル部2側へ行くにしたがって低くなっている。このような屈曲部3の断面形状は、図5に示すように、ホイールナットレンチ1の使用時におけるねじり応力に対する強度を高めることのできる断面形状となっている。
【0021】
なお、本実施形態のホイールナットレンチ1は略L字状を呈する工具であるが、これ以外の形状であっても良く、例えばT字状や十字状を呈するものであってもよい。
【0022】
図10および図11に示すような従来のホイールナットレンチ500は、ナット嵌合部504と屈曲部503との外径の差が大きい構造となっている。このようなホイールナットレンチ500によってナット505を緩める力Wが作用すると、ナット嵌合部504を起点として曲げ応力W2とねじり応力W2が働く。この場合、ナット嵌合部504やナット嵌合部504と屈曲部503との境界部分にかかる曲げネジリ応力によって変形するおそれがあった。しかしながら、本実施形態のように、ナット嵌合部4と屈曲部3との間で極端な外径の変化をなくし、さらに屈曲部3に複数のリブ31を設けることによって、使用時にかかる曲げネジリ応力に対する強度を高めることができる。
【0023】
また、ナット嵌合部4に折り返しフランジ部7を一体的に設けたことにより、ナット嵌合穴5の形成時に管壁の厚みが薄くなることに伴う強度不足を解消することができる。また、全体的に管壁の厚い軟鋼管を使用する必要もないので軽量化が可能である。また、一体的に形成されているので、折り返しフランジ部7がナット嵌合部4から剥離するおそれもなく、十分な口開き強度が確保される。
さらに、本実施形態では、ホイールナットレンチの材料として、電縫管を使用している。このため、コストをかけることなく、強度の高いホイールナットレンチが得られる。
【0024】
図12は、電縫管に引張力を加えた場合の荷重−伸び曲線を示す図である。
電縫管は、引張力(荷重)Xを加えていくと、伸びYは荷重に比例して弾性点Aまで直線的に変化する。弾性点A以上に引張力を増加すると弾性変形の領域から塑性変形の領域に入り、降伏点Bに達する。その後、わずかな荷重の低下を生じ、低下した略一定の荷重の下でC点から降伏伸びが生じる。降伏伸びを終えると、D点で最大荷重に達する。D点に達すると、電縫管の一部に括れが生じ、荷重が減少し、伸びが増大することによりE点で破断する。本実施形態のホイールナットレンチ1はD点(最大荷重点)に近い領域で形成するため、ホイールナットレンチとしての破損強度も従来のものに比べて大きくなり、軽量化を図りつつ強度不足を解消できる構造となっている。
【0025】
次に、ホイールナットレンチの外径拡大に伴うねじり強度について検討する。
原理としては、まず、鋼管のねじり強度をアップさせるために母材径を拡径させると、肉厚は減少するが、その分、ねじり強度に影響を与える極断面係数(Zp)を大きくすることができるので、肉厚減少分を上回るねじり強度アップを図ることができる。
具体例として、外径19mm、内径15mm、管壁の厚さ2mmの鋼管を拡径して、外径23mm、内径19.8mm、管壁の厚さ1.6mmにした場合を考える。
【0026】
拡径前の極断面係数Zpは、
【数1】
であり、
【0027】
拡径後の極断面係数Zpは、
【数2】
である。
【0028】
鋼管にかかるせん断応力τは、拡径前後におけるそれぞれの鋼管にかかるねじりトルクを下記に示す値に仮定すると、
【0029】
【数3】
【0030】
拡径前の鋼管にかかるせん断応力は、
【数4】
となり、
【0031】
拡径後の鋼管にかかるせん断応力は、
【数5】
となる。
【0032】
よって、結論として、鋼管を拡径することによって、拡径前のときよりもねじり強度を約30%アップさせることができるようになる。
【0033】
次に、本実施形態のホイールナットレンチの製造方法について簡単に述べる。
図13(a)〜(e)、図14(a)は、ホイールナットレンチの製造工程を示す断面図である。
図13(f)は、図13(e)のD−D相当断面図である。
図14(b)は、図14(a)のE−E相当断面図である。
図13(a)に示すように、所定の直径を有する電縫管(軟鋼管)50を母材として用意する。本実施形態では直径19mm、管壁の肉厚2mmの電縫管を用いる。
【0034】
次に、図13(b)に示すように、電縫管50の一方の端部50aを径方向外側へ向けて湾曲変形させる。
【0035】
次に、図13(c)に示すように、径方向外側に向かって湾曲変形させた電縫管50の一方の端部50aを外周面50bに沿うように変形させる。このように、電縫管50の一端側を折り返すことによってフランジ部7を形成する。
【0036】
次に、図13(d)に示すように、フランジ部7側の開口端51から母材の内側にテーパ形状をなす治具(図示せず)を挿入することにより、上記開口端51側にかけて拡径するように電縫管50を変形させる。
【0037】
次に、図13(e),(f)に示すように、フランジ部7側の開口端51から断面視における外形が六角形状を呈する治具(図示せず)を挿入することによりナット嵌合穴5を形成し、電縫管50のフランジ部7側の開口端51にナット嵌合部4を作製する。
【0038】
次に、図14(a),(b)に示すように、ナット嵌合部4側から電縫管50の軸方向に沿った所定領域に複数のリブ31を形成する。具体的には、ナット嵌合部4から内径が縮径しているテーパ部分に複数のリブ31を形成する。
【0039】
次に、不図示のパイプ曲げ加工装置やパイプベンダー等を用いて電縫管を所定の角度となるように湾曲させる。電縫管50を湾曲させる際、複数のリブ31が形成された領域の軸方向略中央部分から湾曲させることによって、図1,図2に示したような略L字状を呈する本実施形態のホイールナットレンチ1が完成する。
【0040】
本実施形態によれば、以下に示すような効果が得られる。
(1)鋼管をL字状に屈曲成形したホイールナットレンチ本体1Aの先端部に一体的に形成されたナット嵌合部4を有するホイールナットレンチ1であって、ナット嵌合部4の開口外側部に折り返しフランジ部7が一体的に形成されているので、鋼管で成形されたホイールナットレンチであっても、強度が高く特に六角部頭部の開口部の口開き強度が高く、安価であるとともに軽量化されたホイールナットレンチ1を得ることができる。
(2)ナット嵌合部4と折り返しフランジ部7とが密着して形成されているため、さらに六角部頭部の開口部の口開き強度の高いホイールナットレンチ1を得ることができる。
(3)ナット嵌合部4からホイールナットレンチ本体のL字状の屈曲部3に向けて断面径が徐変して形成されているため、ナット嵌合部4の根元部に曲げネジリ応力が集中することがないない。
(4)屈曲部3に長手方向に沿って凸状のリブ31が形成されているため、屈曲部3にかかる曲げネジリ応力に対しても十分な強度を確保することができる。
【実施例1】
【0041】
電縫管
材質:STKM11A(機械構造用炭素鋼管)
直径:19mm
管壁の厚さ:1.6〜1.8mm
ねじり応力:226N・m
六角ボルト対応:ナット嵌合穴の対辺の長さ:21m
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0043】
1…ホイールナットレンチ、2…ハンドル部、4…ナット嵌合部、3…屈曲部、3b,4b,50b…外周面、5…嵌合穴、5a,51…開口端、7…フランジ部、7a…内周面、L…長さ、31…リブ、50…電縫管(軟鋼管)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールナットレンチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車には、ホイールを着脱するためのL型のホイールナットレンチが車載工具として搭載されている。上記ホイールナットレンチは、一般的には材料に炭素鋼を用い、ナットに勘合するナット嵌合部を熱間鍛造による複数の工程で成形し、ナット嵌合部の平面、円筒部を機械加工で仕上げ、軸(ハンドル部)を所定の位置より曲げ、さらに全体に焼入れを行うことによって成形している(特許文献1)。
また、製品の軽量化やコストダウンを目的として、ホイールナットレンチを中空状の鋼管を用いて一体成形する技術も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−219380号公報
【特許文献2】特開昭62−236676号公報
【特許文献3】特許第4436887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような鋼管を用いてホイールナットレンチを一体成形する場合、ナット嵌合部は鋼管をプレスにて拡管して成形する必要があり、ナット嵌合部の拡径により鋼管の肉厚が減少し、ナット嵌合部の強度が不足するという問題があった。また、ナット嵌合部の口開き強度を確保するためにリング状部材(補助鋼管)を成形前に鋼管先端部に挿入し、同時成形により板厚の減少と強度不足を補うように製造する方法(特許文献3)も提案されているが、別部材を用いており、成形工程も複雑になっているためコストが高くなってしまう。さらに、ナット嵌合部に曲げ応力およびネジリ応力がかかった時にリング状部材と鋼管先端部が剥離してしまう可能性もあった。また、L型のホイールナットレンチの場合、屈曲部にも強い曲げネジリ応力がかかるためこの部分の強度を確保するためには、強度の高い材質を用いるか、鋼管の外形を大きくするか、肉厚を厚くする必要があり、製品の軽量化やコストダウンを達成するようなホイールナットレンチは実用化されていなかった。
【0005】
本願発明はこのような従来の問題点を鑑みたものであり、安価であるとともに軽量化された強度の高いホイールナットレンチを提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では以下の手段を採用する。
本発明のホイールナットレンチは、中空状の鋼管からなり、ハンドル部と、前記ハンドル部の一端側に当該ハンドル部と一体的に形成されてナット嵌合穴を内側に有するナット嵌合部と、を有するホイールナットレンチであって、前記ナット嵌合部の外周面側に、前記ナット嵌合部の先端から外側へ折り返された折り返しフランジ部が前記ナット嵌合部と一体的に形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記ナット嵌合部の外周面と、前記折り返しフランジ部の内周面とが密着している構成としてもよい。
【0008】
また、前記ナット嵌合部から前記ハンドル部側へ向かうに従って内径が漸次縮径している構成としてもよい。
【0009】
また、前記鋼管を屈曲成形してなり、前記ハンドル部の一端側に屈曲部を介して前記ナット嵌合部が設けられ、前記屈曲部には、当該屈曲部の長さ方向に沿って延在するとともに、外周面から径方向外側へ向かって突出するリブが周方向に所定の間隔をおいて複数設けられている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハンドル部とナット嵌合部とが一体的に形成されているとともに、ナット嵌合部の先端から外側へ折り返されてなるフランジ部がナット嵌合部と一体的に形成されているので、ナット嵌合部と折り返しフランジ部とが別部材である場合に比べてナット嵌合部における曲げねじり応力に対する強度を高めることができる。また、安価な材料を用いることができるとともに軽量化が可能である。
【0011】
また、ナット嵌合部の外周面と折り返しフランジ部の内周面とが密着しているので、ナット嵌合部の開口側の強度を高めることができる。
また、ナット嵌合部からハンドル部側へ向かうにしたがって内径が漸次縮径しているので、ナット嵌合部とハンドル部との間の部分(境界部分)に曲げねじり応力が集中することがない。
また、ナット嵌合部とハンドル部との間の屈曲部に長さ方向に沿って延在する複数のリブを設けたことにより、屈曲部に係る曲げねじり応力に対しても十分な強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態であるホイールナットレンチの全体構成を示す図。
【図2】ホイールナットレンチの全体構成を示す部分断面図。
【図3】ナット嵌合部の嵌合穴の形状を示す図。
【図4】ナット嵌合部の嵌合穴の形状を示す図。
【図5】屈曲部の断面図(図2のC−C線に沿う断面図)。
【図6】ホイールナットレンチの部分断面図。
【図7】ハンドル部に対する嵌合穴の向きの例を示す図。
【図8】ハンドル部に対する嵌合穴の向きの例を示す図。
【図9】折り返しフランジ部を示す部分断面図。
【図10】従来のホイールナットレンチの構成を示す斜視図。
【図11】従来のホイールナットレンチの嵌合状態を示す部分断面図。
【図12】電縫管に引張力を加えた場合の荷重−伸び曲線を示す図。
【図13】(a)〜(e)は、ホイールナットレンチの製造工程を示す断面図。
【図14】ホイールナットレンチの製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態であるホイールナットレンチの全体構成を示す図である。図2は、ホイールナットレンチの全体構成を示す部分断面図である。図3および図4は、ナット嵌合部の嵌合穴の形状を示す図である。図5は、屈曲部の断面図である。図6〜図8は、ハンドル部に対する嵌合穴の向きの例を示す図である。図9は、折り返しフランジ部を示す部分断面図である。
【0015】
図1および図2に示すように、本実施形態のホイールナットレンチ1は、ハンドル部2、屈曲部3およびナット嵌合部4が一体的に形成された自動車用のL字型工具であって、ハンドル部2の一端側に屈曲部3を介してナット嵌合部4が設けられている。このホイールナットレンチ1は、外径が19mm、管壁の厚みが約2mmで、所定の長さを有する中空状の長尺軟鋼管、具体的には安価な電縫管を用いて形成されたものである。
【0016】
ナット嵌合部4には、ホイールナットに嵌合される断面視六角形状のナット嵌合穴5(図2)が軸方向に所定の長さ(深さ)で形成されている。このナット嵌合穴5は、電縫管の軸孔6の一部を六角口にする治具を用いて拡径して形成したものである。ハンドル部2の延在方向に対する六角口のナット嵌合穴5の向きは任意であり、図2〜図4に示すようにハンドル部2の延在方向とナット嵌合穴5の一角とが一致する向きであってもいいし、図6〜図8に示すようにハンドル部2の延在方向とナット嵌合穴5の一辺とが一致する向きであってもよい。
ここで、ナット嵌合穴5の対辺の長さは約21mm、ナット嵌合部4の外径は約30〜31mmである。
【0017】
本実施形態のナット嵌合部4の外周面4b側には、本体1Aの先端側がナット嵌合穴5の開口端5aから屈曲部3側へ折り返されるようにして形成された、折り返しフランジ部7が設けられている。折り返しフランジ部7の内周面7aはナット嵌合部4の外周面4bに密着しており、相互間に隙間のない状態とされている。折り返しフランジ部7の軸方向に沿う長さLは、約5〜6mmである。
折り返しフランジ部7が設けられたナット嵌合部4の開口端側の厚みtは約3.4〜3.7mmである。
【0018】
ナット嵌合部4の外形形状はナット嵌合穴5の寸法精度を確保することができれば、特に限定されず、例えば、図3に示すようにナット嵌合穴5の六角形状を反映した外形であってもいいし、図4に示すようにナット嵌合穴5の形状に係わらず断面視略円形状をなす外形であってもよい。
【0019】
また、本実施形態のホイールナットレンチ1は、ナット嵌合部4からL字状の屈曲部3を経たハンドル部2にかけてその外径が縮径している。これに伴い、内側の軸孔6の穴径も屈曲部3の外形寸法に倣うようにして、ナット嵌合穴5側の端部からハンドル部2側の端部に行くにしたがって漸次縮径するようにテーパ状に形成されている。ホイールナットレンチ1の使用時に、ナット嵌合部4の根元部分、つまりナット嵌合部4と屈曲部3との境界部分にかかる曲げねじり応力が低減される構成となっている。
【0020】
屈曲部3の外周面3bには、軸方向に沿って延在するとともに径方向外側に向かって突出する凸状のリブ31が周方向に所定の間隔をおいて複数設けられている。これら複数のリブ31は、屈曲部3の軸方向中央部分において最も高さを有しており、中央部分からナット嵌合部4側およびハンドル部2側へ行くにしたがって低くなっている。このような屈曲部3の断面形状は、図5に示すように、ホイールナットレンチ1の使用時におけるねじり応力に対する強度を高めることのできる断面形状となっている。
【0021】
なお、本実施形態のホイールナットレンチ1は略L字状を呈する工具であるが、これ以外の形状であっても良く、例えばT字状や十字状を呈するものであってもよい。
【0022】
図10および図11に示すような従来のホイールナットレンチ500は、ナット嵌合部504と屈曲部503との外径の差が大きい構造となっている。このようなホイールナットレンチ500によってナット505を緩める力Wが作用すると、ナット嵌合部504を起点として曲げ応力W2とねじり応力W2が働く。この場合、ナット嵌合部504やナット嵌合部504と屈曲部503との境界部分にかかる曲げネジリ応力によって変形するおそれがあった。しかしながら、本実施形態のように、ナット嵌合部4と屈曲部3との間で極端な外径の変化をなくし、さらに屈曲部3に複数のリブ31を設けることによって、使用時にかかる曲げネジリ応力に対する強度を高めることができる。
【0023】
また、ナット嵌合部4に折り返しフランジ部7を一体的に設けたことにより、ナット嵌合穴5の形成時に管壁の厚みが薄くなることに伴う強度不足を解消することができる。また、全体的に管壁の厚い軟鋼管を使用する必要もないので軽量化が可能である。また、一体的に形成されているので、折り返しフランジ部7がナット嵌合部4から剥離するおそれもなく、十分な口開き強度が確保される。
さらに、本実施形態では、ホイールナットレンチの材料として、電縫管を使用している。このため、コストをかけることなく、強度の高いホイールナットレンチが得られる。
【0024】
図12は、電縫管に引張力を加えた場合の荷重−伸び曲線を示す図である。
電縫管は、引張力(荷重)Xを加えていくと、伸びYは荷重に比例して弾性点Aまで直線的に変化する。弾性点A以上に引張力を増加すると弾性変形の領域から塑性変形の領域に入り、降伏点Bに達する。その後、わずかな荷重の低下を生じ、低下した略一定の荷重の下でC点から降伏伸びが生じる。降伏伸びを終えると、D点で最大荷重に達する。D点に達すると、電縫管の一部に括れが生じ、荷重が減少し、伸びが増大することによりE点で破断する。本実施形態のホイールナットレンチ1はD点(最大荷重点)に近い領域で形成するため、ホイールナットレンチとしての破損強度も従来のものに比べて大きくなり、軽量化を図りつつ強度不足を解消できる構造となっている。
【0025】
次に、ホイールナットレンチの外径拡大に伴うねじり強度について検討する。
原理としては、まず、鋼管のねじり強度をアップさせるために母材径を拡径させると、肉厚は減少するが、その分、ねじり強度に影響を与える極断面係数(Zp)を大きくすることができるので、肉厚減少分を上回るねじり強度アップを図ることができる。
具体例として、外径19mm、内径15mm、管壁の厚さ2mmの鋼管を拡径して、外径23mm、内径19.8mm、管壁の厚さ1.6mmにした場合を考える。
【0026】
拡径前の極断面係数Zpは、
【数1】
であり、
【0027】
拡径後の極断面係数Zpは、
【数2】
である。
【0028】
鋼管にかかるせん断応力τは、拡径前後におけるそれぞれの鋼管にかかるねじりトルクを下記に示す値に仮定すると、
【0029】
【数3】
【0030】
拡径前の鋼管にかかるせん断応力は、
【数4】
となり、
【0031】
拡径後の鋼管にかかるせん断応力は、
【数5】
となる。
【0032】
よって、結論として、鋼管を拡径することによって、拡径前のときよりもねじり強度を約30%アップさせることができるようになる。
【0033】
次に、本実施形態のホイールナットレンチの製造方法について簡単に述べる。
図13(a)〜(e)、図14(a)は、ホイールナットレンチの製造工程を示す断面図である。
図13(f)は、図13(e)のD−D相当断面図である。
図14(b)は、図14(a)のE−E相当断面図である。
図13(a)に示すように、所定の直径を有する電縫管(軟鋼管)50を母材として用意する。本実施形態では直径19mm、管壁の肉厚2mmの電縫管を用いる。
【0034】
次に、図13(b)に示すように、電縫管50の一方の端部50aを径方向外側へ向けて湾曲変形させる。
【0035】
次に、図13(c)に示すように、径方向外側に向かって湾曲変形させた電縫管50の一方の端部50aを外周面50bに沿うように変形させる。このように、電縫管50の一端側を折り返すことによってフランジ部7を形成する。
【0036】
次に、図13(d)に示すように、フランジ部7側の開口端51から母材の内側にテーパ形状をなす治具(図示せず)を挿入することにより、上記開口端51側にかけて拡径するように電縫管50を変形させる。
【0037】
次に、図13(e),(f)に示すように、フランジ部7側の開口端51から断面視における外形が六角形状を呈する治具(図示せず)を挿入することによりナット嵌合穴5を形成し、電縫管50のフランジ部7側の開口端51にナット嵌合部4を作製する。
【0038】
次に、図14(a),(b)に示すように、ナット嵌合部4側から電縫管50の軸方向に沿った所定領域に複数のリブ31を形成する。具体的には、ナット嵌合部4から内径が縮径しているテーパ部分に複数のリブ31を形成する。
【0039】
次に、不図示のパイプ曲げ加工装置やパイプベンダー等を用いて電縫管を所定の角度となるように湾曲させる。電縫管50を湾曲させる際、複数のリブ31が形成された領域の軸方向略中央部分から湾曲させることによって、図1,図2に示したような略L字状を呈する本実施形態のホイールナットレンチ1が完成する。
【0040】
本実施形態によれば、以下に示すような効果が得られる。
(1)鋼管をL字状に屈曲成形したホイールナットレンチ本体1Aの先端部に一体的に形成されたナット嵌合部4を有するホイールナットレンチ1であって、ナット嵌合部4の開口外側部に折り返しフランジ部7が一体的に形成されているので、鋼管で成形されたホイールナットレンチであっても、強度が高く特に六角部頭部の開口部の口開き強度が高く、安価であるとともに軽量化されたホイールナットレンチ1を得ることができる。
(2)ナット嵌合部4と折り返しフランジ部7とが密着して形成されているため、さらに六角部頭部の開口部の口開き強度の高いホイールナットレンチ1を得ることができる。
(3)ナット嵌合部4からホイールナットレンチ本体のL字状の屈曲部3に向けて断面径が徐変して形成されているため、ナット嵌合部4の根元部に曲げネジリ応力が集中することがないない。
(4)屈曲部3に長手方向に沿って凸状のリブ31が形成されているため、屈曲部3にかかる曲げネジリ応力に対しても十分な強度を確保することができる。
【実施例1】
【0041】
電縫管
材質:STKM11A(機械構造用炭素鋼管)
直径:19mm
管壁の厚さ:1.6〜1.8mm
ねじり応力:226N・m
六角ボルト対応:ナット嵌合穴の対辺の長さ:21m
【0042】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0043】
1…ホイールナットレンチ、2…ハンドル部、4…ナット嵌合部、3…屈曲部、3b,4b,50b…外周面、5…嵌合穴、5a,51…開口端、7…フランジ部、7a…内周面、L…長さ、31…リブ、50…電縫管(軟鋼管)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状の鋼管からなり、ハンドル部と、前記ハンドル部の一端側に当該ハンドル部と一体的に形成されナット嵌合穴を内側に有するナット嵌合部と、を有するホイールナットレンチであって、
前記ナット嵌合部の外周面側に、前記ナット嵌合部の開口端から外側へ折り返されてなる折り返しフランジ部が前記ナット嵌合部と一体的に形成されている
ことを特徴とするホイールナットレンチ。
【請求項2】
前記ナット嵌合部の外周面と、前記折り返しフランジ部の内周面とが密着している
ことを特徴とする請求項1記載のホイールナットレンチ。
【請求項3】
前記ナット嵌合部から前記ハンドル部側へ向かうに従って内径が漸次縮径している
ことを特徴とする請求項1または2記載のホイールナットレンチ。
【請求項4】
前記ハンドル部の一端側に、前記鋼管を屈曲成形してなる屈曲部を介して前記ナット嵌合部が設けられ、
前記屈曲部には、当該屈曲部の長さ方向に沿って延在するとともに、外周面から径方向外側へ向かって突出するリブが周方向に所定の間隔をおいて複数設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のホイールナットレンチ。
【請求項1】
中空状の鋼管からなり、ハンドル部と、前記ハンドル部の一端側に当該ハンドル部と一体的に形成されナット嵌合穴を内側に有するナット嵌合部と、を有するホイールナットレンチであって、
前記ナット嵌合部の外周面側に、前記ナット嵌合部の開口端から外側へ折り返されてなる折り返しフランジ部が前記ナット嵌合部と一体的に形成されている
ことを特徴とするホイールナットレンチ。
【請求項2】
前記ナット嵌合部の外周面と、前記折り返しフランジ部の内周面とが密着している
ことを特徴とする請求項1記載のホイールナットレンチ。
【請求項3】
前記ナット嵌合部から前記ハンドル部側へ向かうに従って内径が漸次縮径している
ことを特徴とする請求項1または2記載のホイールナットレンチ。
【請求項4】
前記ハンドル部の一端側に、前記鋼管を屈曲成形してなる屈曲部を介して前記ナット嵌合部が設けられ、
前記屈曲部には、当該屈曲部の長さ方向に沿って延在するとともに、外周面から径方向外側へ向かって突出するリブが周方向に所定の間隔をおいて複数設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のホイールナットレンチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−171054(P2012−171054A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36080(P2011−36080)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(504136889)株式会社ファルテック (57)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(504136889)株式会社ファルテック (57)
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