説明

ホイールローダ

【課題】フロントフレームからの騒音を良好に低減できるホイールローダを提供すること。
【解決手段】ホイールローダは、後部車体と、後部車体の前方に連結されて作業機が取り付けられるフロントフレーム3とを備えて構成されており、このフロントフレーム3の後方側に開いた部分を背面板27で覆った。こうすることで、背面板27が遮音板として機能するため、フロントフレーム3内に配置されたコントロールバルブ12の動作音等が運転台5側に洩れにくくなり、オペレータにとっては騒音の少ない快適な操縦環境を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダに設けられるフロントフレームの防音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールローダからの騒音を低減する手段として、後部車体を構成するメインフレーム(リヤフレーム)の下部側を騒音対策カバーで覆うことが提案されている(特許文献1)。この騒音対策カバーによれば、メインフレーム内に収容されるエンジンやトランスミッションといった振動発生源に起因する騒音を低減できるとしている。
【0003】
【特許文献1】実公平4−12130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の騒音対策カバーは、ホイールローダの後部車体からの騒音を低減するに過ぎないため、後部車体の前方に設けられるフロントフレームからの騒音に関しては全く効果がない。フロントフレーム内には通常、ブームシリンダや、チルトシリンダへの圧油の供給を制御するコントロールバルブが配置されるのであるが、コントロールバルブでの動作音が騒音となる場合があり、この騒音の低減が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、フロントフレームからの騒音を良好に低減できるホイールローダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るホイールローダは、後部車体と、後部車体の前方に連結されて作業機が取り付けられるフロントフレームとを備え、このフロントフレームの後方側に開いた部分が背面板で覆われていることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係るホイールローダは、請求項1に記載のホイールローダにおいて、前記フロントフレームは、前記後部車体に対してアーティキュレート自在に設けられているとともに、前記背面板には、前記フロントフレームの左右方向の中心に対して側方にずれた位置に切欠部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上において、請求項1の発明によれば、フロントフレームの開口部分を塞ぐ背面板が遮音板として機能するので、例えばフロントフレーム内にコントロールバルブが配置されている場合でも、コントロールバルブでの動作音が外部に洩れるのを抑制でき、騒音を確実に低減できる。
【0009】
請求項2の発明によれば、アーティキュレートさせるためのアーティキュレートシリンダがフロントフレームの中心に対して側方にずれて配置され、これに伴ってコントロールバルブもフロントフレーム内で側方にずれて位置している場合であっても、このようなコントロールバルブの配置位置に切欠部を対応させることができ、コントロールバルブに繋がる圧油用配管等の取り回しを容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るホイールローダ1の全体を示す側面図である。
本実施形態のホイールローダ1は、運転質量が2.5t前後であり、後部車体2の前方側にフロントフレーム3がアーティキュレート可能に取り付けられた構造である。後部車体2には、後輪4や運転台5が設けられているとともに、図示しないパワートレインが収容されている。フロントフレーム3には前輪6が設けられ、フロントフレーム3のさらに前方には作業機7が設けられ、作業機7の先端にはバケット8が取り付けられている。
【0011】
これらのうち、作業機7は、基端がフロントフレーム3の上部側に連結され、先端がバケット8に連結されたバケットブーム10を備えている。バケットブーム10の途中とフロントフレーム3の上部側とはブームシリンダ14で連結され、このブームシリンダ14の伸縮によりブーム10の前方側が昇降し、バケット8が上下動する。
【0012】
ブーム10にはチルトレバー15がブラケット13を介して回動自在に支承されている。チルトレバー15の上端側とフロントフレーム3の上部側とはチルトシリンダ16で連結され、チルトレバー15の下端側とバケット8とがチルトロッド17で連結されている。従って、チルトシリンダ16の伸縮によりバケット8がチルト動作を行うことになる。
【0013】
以下には、図2ないし図4に基づき、フロントフレーム3について詳説する。
フロントフレーム3は、略三角形状とされた左右一対の側面板21を有しており、側面板21間の正面側が正面板22(図2)で覆われている。この正面板22の上部にはブラケット23が設けられ、このブラケット23にチルトシリンダ16(図1)の基端側が連結される。
【0014】
側面板21間の下方は底面板24で覆われている。この底面板24とその上方に配置された上面板25とには、図示しないアーティキュレートピン挿通用の挿通孔24A,25Aが設けられ、アーティキュレートピンを中心としてフロントフレーム3側がアーティキュレートする。図3中の符号9は、アーティキュレートシリンダである。底面板24の下面にはフロントアクスル11が取り付けられている。
【0015】
また、側面板21の背面側においては、底面板24と上面板25との間が閉塞板26で塞がれているとともに、上面板25のさらに上方側は背面板27で塞がれている。そして、このような構成によりフロントフレーム3は異形の箱状とされ、内部には各シリンダ9,14,16への圧油の供給を制御するコントロールバルブ12収容されている。
【0016】
ここで、背面板27の内面には、発泡ウレタン樹脂等の吸音材27Aが貼設されている。つまり、背面板27は、フロントフレーム3の後方側に開いた部分で、かつ運転台5と前後に対向した部分を覆うことで、コントロールバルブ12での動作音をフロントフレーム3の外部に洩れないようにしており、遮音板として機能する。さらに、背面板27の内面に貼設された吸音材27Aにより、動作音を効果的に吸音し、外部への洩れを一層低減している。
【0017】
従来では、背面板27が設けられていないため、コントロールバルブ12の動作音が運転台5で操縦しているオペレータに洩れてしまい、オペレータの操縦環境を著しく阻害してした。これに対して本実施形態では、背面板27を設けることで、そのような動作音が遮音されるため、騒音の少ない快適な操縦環境をオペレータに提供できる。特に、運転台5がキャブで覆われていない本実施形態のホイールローダ1では本来、オペレータに動作音が聞こえやすいのであるが、背面板27により騒音を確実に低減できることにより、キャブで覆われていないホイールローダ1でも、動作音が全く気にならないのである。
【0018】
そして、背面板27の下端縁には切欠部27Bが設けられており、この切欠部27Bを通して複数の配管が配されている。複数の配管としては、コントロールバルブ12から各シリンダ9,14,16に繋がれるものの他、コントロールバルブ12と後部車体2に搭載された図示しない油圧ポンプや作動油タンクとを繋ぐもの等がある。
【0019】
切欠部27Bは、背面板27の側方に寄せて設けられている。具体的には、図2に示すように、アーティキュレートシリンダ9はアーティキュレートを実現するために構造上、フロントフレーム3の左右方向の中心Cから側方にずれた位置に設けられており、これに伴ってコントロールバルブ12もまたフロントフレーム3内の側方側にずれて位置し、このコントロールバルブ12に対応した位置に切欠部27Bが設けられているのである。こうすることで、コントロールバルブ12からの配管を容易に外部に引き出すことができ、配管の取り回しをすっきりさせることができる。
【0020】
このような背面板27は、各側面板21の内面に設けられた取付片21Aにボルト止めされて取り付けられており、コントロールバルブ12のメンテナンス時には、ボルトを緩めて取り外すことが可能である。ただし、背面板27を着脱自在に設けるか否かは、その実施にあたって任意に決められてよく、着脱できない場合でも、本発明に含まれる。
【0021】
なお、フロントフレーム3の側面板21には、上下方向に沿って断面コ字形に折り返された折返し部28が設けられている。そして、折返し部28の外側を形成する面状部29とこれに対向した内側の面状部30とには、前述したブームシリンダ14用の取付ボス3Aと、バケットブーム10用の取付ボス3Bとが上下に離間して設けられている。
【0022】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、数量などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、数量などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、比較的小型のホイールローダに好適に利用できる他、大型のホイールローダにも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係るホイールローダの全体を示す側面図。
【図2】ホイールローダのフロントフレームを後方から見た背面図。
【図3】フロントフレームを示す斜視図。
【図4】後部車体に取り付けられたフロントフレームを別の角度で示す斜視図。
【符号の説明】
【0025】
1…ホイールローダ、2…後部車体、3…フロントフレーム、7…作業機、27…背面板、27B…切欠部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部車体と、
後部車体の前方に連結されて作業機が取り付けられるフロントフレームとを備え、
このフロントフレームの後方側に開いた部分が背面板で覆われている
ことを特徴とするホイールローダ。
【請求項2】
請求項1に記載のホイールローダにおいて、
前記フロントフレームは、前記後部車体に対してアーティキュレート自在に設けられているとともに、
前記背面板には、前記フロントフレームの左右方向の中心に対して側方にずれた位置に切欠部が設けられている
ことを特徴とするホイールローダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−127948(P2008−127948A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317131(P2006−317131)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000184643)コマツユーティリティ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】