説明

ホウケイ酸ガラス、ホウ酸塩ガラスおよび結晶化ホウ素含有材料を製造する方法

高純度および均質性を有する低アルカリ材料を製造可能にするために、本発明は、ホウ酸塩含有低アルカリ材料を製造する方法であって、ホウ素含有溶融材料は、交流電磁場を用いた装置で直接誘導加熱され、溶融材料は、構成成分として、少なくとも25モル%の量的比率で、少なくとも1つの金属酸化物を含み、金属酸化物の金属イオンは、少なくとも2の原子価を有し、溶融材料中のホウ酸塩に対する二酸化ケイ素のモル物質量の比は、0.5以下である方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[説明]
本発明は、ホウ素含有材料を製造する方法に関する。特に、本発明は、溶融材料の誘導加熱を用いて、ホウ酸含有低アルカリ材料を製造する方法に関する。
【0002】
技術的用途では、ホウケイ酸ガラスは、良好な化学耐性および比較的低い熱膨張により、実験用ガラスとして、医薬品産業におけるアンプル用に、および電球ガラスとして使用される。これらのガラスは、73〜86%の高いSiO含有量、6〜13%のB含有量、1〜5%のAl含有量および2〜9%のアルカリ金属含有量を有する(モル%として)。
【0003】
光学ガラスの場合、B含有量もまた13%を超える場合があり、75モル%を超えるほどの量である場合がある。高いB含有量は、高いアッベ数、すなわち低レベルの光散乱をもたらす。したがって、これらのガラスは、色収差を補正するために、レンズ系で使用される。
【0004】
網目形成成分剤としてBを単独でまたは主として含有するガラスは、ケイ酸塩ガラスに類似し、ホウ酸塩ガラスとして知られている。ホウケイ酸ガラスは、網目形成成分剤としてSiOおよびBの両方を含有し、したがって、ホウケイ酸ガラスの組成に関しては、ケイ酸塩ガラスとホウ酸塩ガラスとの間である。
【0005】
低いB含有量、特に15%未満のBを有するホウケイ酸ガラスは、その物理特性、化学特性および光学特性に関して、高いB含有量(15%を超えるB)のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスと非常に異なる。例えば、高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスは通常、高い転移温度Tを有するが、低い作業点VA、従って低い溶融温度および精製温度を有する非常に急な粘性曲線を有する。これらのガラスの光学的見解は、非常に高いアッベ数にあり、化学耐性は、低いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびケイ酸塩ガラスよりも一般的にかなり悪い。
【0006】
一方ではアルカリ金属酸化物は、粘性プロフィールによって溶融に必要とされず、他方ではアルカリ金属酸化物は、化学耐性をさらに悪化させるため、一般的に、高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスにおいて、アルカリ金属酸化物は、全く使用されないか、またはほんの数パーセントのアルカリ金属酸化物が使用される場合もある。また、所望の高いアッベ数は、アルカリ金属酸化物を含有するホウ酸塩ガラスでは達成することができない。
【0007】
ケイ酸塩ガラスおよび高いB含有量のホウケイ酸塩ガラスに関するガラス溶融物は、非常に化学的に攻撃的であるという欠点をもつ。この状況では、化学分析において、単にホウ酸消化に対する言及がなされる必要がある。
【0008】
ケイ酸塩ガラスおよび低いB含有量のホウケイ酸ガラスは、セラミック耐火材料において首尾よく溶融させることができる。しかしながら、光学的用途では、概してより高い要求が、光透過に、および関連してガラスの純度に課せられる。したがって、光学用途のためのケイ酸塩ガラスおよび低いB含有量のホウケイ酸ガラスは、白金容器中または石英ガラス装置中で製造される場合が多い。
【0009】
ケイ酸塩ガラスおよび低いB含有量のホウケイ酸ガラスと異なり、高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスは、非常に強力に石英ガラス装置を攻撃して、ガラス溶融物中で、SiOコードが容易に形成され得る。激しく攪拌しても、これらのSiOコードは、もはや完全に溶解させることはできない。さらに重要な要素は、溶解したSiOは、高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスの特性を、場合によっては相当変化させることである。
【0010】
特性および均質性におけるかなりの悪化に加えて、耐火材料に対する強力な攻撃のさらなる結果は、石英ガラス装置の耐用年数が非常に短いことであり、これらによりかなりのコストが強いられる。第一に石英ガラス装置を取り換える必要性により、第二に製造を絶えず中断させなくてはならないという事実のため、コストがかかる。
【0011】
しかしながら、高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスは、石英ガラス装置だけでなく、白金器具にも攻撃する。溶解した白金もまた、ガラスの特性にかなり悪い影響を与える。ガラス溶融物の酸化状態に応じて、ガラス溶融物は、金属白金粒子または白金イオンを含有する。着色白金イオンは、特に紫外線領域で、もはや多くの用途に許容不可能な程度にまで、これらのガラスの透過を減少させる。
【0012】
高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスによる強力な化学的攻撃は、幾つかの用途のために標準的な溶融プロセスを用いて溶融したこれらの光学ガラスが、透過および均質性に関して、増大される技術的要求をもはや満足することができないことを意味する。
【0013】
さらに、貴金属溶融装置またはセラミック溶融装置に対するガラスによる高レベルの化学的攻撃もまた、かなりのさらなるコストを強いることとなり、これらのガラスの広範囲に及ぶ使用に対する妨害となる。
【0014】
したがって、本発明は、例えば低アルカリまたはさらにアルカリ非含有の高いB含有量のホウケイ酸ガラスならびに高純度および均質性を有するホウ酸塩ガラス、あるいは低アルカリ/アルカリ非含有結晶化ホウ酸塩含有材料のような、ホウ素含有、特にホウ酸塩含有低アルカリ材料、あるいはこの性質の材料用のバッチを溶融し、かつこのようにして、非常に純粋な形態で材料を製造することを可能にする方法を提供するという目的に基づいている。
【0015】
この目的は、請求項1に記載する方法により、非常に驚くべきほど単純な方法で達成される。上記方法に対する好適な改良を従属請求項に示す。
【0016】
したがって、本発明による、ホウ酸塩含有低アルカリ材料を製造する方法において、交流電磁場を用いた装置で誘導加熱が直接行われ、溶融材料は、構成成分として、少なくとも25モル%の量的比率で、少なくとも1つの金属酸化物を含み、金属酸化物の金属イオンは、少なくとも2の原子価を有し、溶融材料中のホウ酸塩に対する二酸化ケイ素の物質量の比は、0.5以下である。
【0017】
本明細書では、特に適切な交流電磁場は、誘導により溶融物に大量のエネルギーを導入するのに使用することができる高周波場である。
【0018】
驚くべきことに、本発明者は、B/(B+SiO)モル比が0.5をより大きい場合、すなわち溶融材料中の二酸化ケイ素対ホウ酸塩の量的比が0.5以下である場合、特に、高いB含有量の低アルカリまたはアルカリ非含有ホウケイ酸ガラス、および低アルカリまたはアルカリ非含有ホウ酸塩ガラスのようなホウ素含有溶融物に、高周波を結合させることができることを発見した。
【0019】
/(B+SiO)のモル比が0.5未満である低いB含有量のアルカリ含有ホウケイ酸ガラスでさえ、実際に結合させることができないか、または高温でのみ結合させることができるため、この発見はなおさら驚くべきことであった。高周波電磁エネルギーで加熱したスカル坩堝中で溶融している高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスに対して作用する要素は、第一に高いB含有量の低アルカリ/アルカリ非含有ホウケイ酸ガラス、およびホウ酸塩ガラスを、交流電磁場に結合させる予測される低い能力、および第二にフラッシュオーバーに関連する危険性を伴うこれらのガラスの非常に低粘性による溶融ガラスのブレイクスルー(breaking through)の危険性である。
【0020】
予想に反して、本発明の溶融物が実際に電磁高周波場に結合させることができるという現象に対する説明は、0.5未満のB/(B+SiO)モル比を有するSiOが優勢な網目形成成分であり、Bのみが0.5より大きいB/(B+SiO)モル比で構造を決定することであり得る。
【0021】
アルミノホウ酸塩系が優れた電気絶縁特性を有するということは、H. RawsonによるInorganic Glass-Forming Systemsという文献(Academic Press London and New York 1967, page 107)から知られている。これらのガラスは、石英ガラスより一層高い電気抵抗を有する。このことは、これらのガラスが固体状態で非常に乏しい導電率を有することを意味する。しかしながら、驚くべきことに、この種のガラスはそれにもかかわらず、それらが請求項1に示されるような組成を有する場合、本発明による方法を用いて高周波に結合させて、製造することができる。
【0022】
溶融物と加熱装置の材料との間の直接的な接触がないため、高周波交流場を用いた溶融物の直接誘導加熱により、特に純粋な材料を製造することが可能となる。さらに、例えば、上部燃焼炉雰囲気中で有機燃料の燃焼中に形成され得る残留物および燃焼産物のような不純物が回避される。
【0023】
本明細書では、特に高周波場の形態であるような交流電磁場に溶融物を結合させるという用語は、誘導結合による溶融物へのエネルギーの導入が、熱の放散の結果としての溶融物からのエネルギーの放出より大きいことと理解される。したがって高周波加熱による溶融物の加熱または維持は、溶融物を高周波場に結合させる場合にのみ実際に可能である。
【0024】
高いアルカリ金属含有量のケイ酸ガラス、特にアルミノケイ酸ガラスは、十分な導電率を有し、したがって、高周波に首尾よく結合されるのに対して、低アルカリケイ酸塩ガラスは、非常に高温度でのみ交流電磁場に結合されるか、またはかかる場に全く結合されない。
【0025】
一般に、導電率は、温度が上がるにつれ増加する。しかしながら、高ホウ酸含有量のガラスは、別の状況ではアルカリ金属ホウ酸塩またはホウ酸がかなりの程度にまで蒸発するため、非常に高温に加熱することができず、組成が制御されない状況下で変化することを意味する。これは、特に望ましくないノットの形成を導き得る。
【0026】
低B含有量のホウケイ酸ガラスは、同じアルカリ金属含有量を与えるが、ガラス構造中のアルカリ金属イオンの移動度は酸化ホウ素により妨げられるため、ケイ酸塩ガラスよりも非常に十分に電磁場に結合されないことが予期される。同様に、これは、アルミノケイ酸塩ガラスに対比して、ホウケイ酸塩ガラスは、化学的なイオン交換に比較的適さないという事実によっても明らかである。したがって、この種のガラスが低レベルのアルカリ金属を含有するか、またはアルカリ金属を含有しない場合、ホウ酸塩ガラスの結合はますます悪化するか、あるいはさらにはもはや結合は不可能である。驚くべきことに、本発明による方法のみが、ホウ酸塩含有溶融物を高周波場に結合させることが可能である。
【0027】
驚くべきことに、酸化ケイ素ではなくホウ酸塩が主な網目形成成分である場合、すなわちホウケイ酸ガラスの場合では、ホウ酸塩の量的比率が酸化ケイ素の量的比率を上回る場合に、これらの溶融物を結合させることができることが見出される。この場合、さらに、別の場合では溶融物の十分に導電性の結合に重要であるアルカリ金属イオンを、他の金属イオンで置き換えることも可能である。この状況で、量的比率25%の例えば酸化アルカリ土類金属のような二価または多価金属イオンとの酸化物が十分であることが見出された。
【0028】
高ホウ酸含有量の低アルカリホウケイ酸ガラス、ホウ酸塩ガラスおよび結晶化ホウ酸塩含有材料は、本発明による方法を用いた製造に特に適したホウ酸塩含有材料である。
【0029】
特にアルカリ金属酸化物のような一価金属を有する金属酸化物は、ガラスの導電率、したがって結合挙動を相当増加するが、溶融物がその結合特性を失うことなく、ガラスの物理特性および化学特性を改善するために、特に一価金属の酸化物の量的比率のような溶融材料中のアルカリ金属を含有する化合物の量的比率は、好適には0.5%以下に限定され得る。
【0030】
この状況では、高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスの場合、高周波加熱を用いた本発明による溶融に関する結合挙動は、アルカリ金属含有量が0.5%を上回る場合により良好であることに留意すべきである。特に良好な結合は、ちょうど2%の量的比率のアルカリ金属を含有する化合物を用いた場合に達成される。低アルカリ溶融物という用語は、特に多くても2%、好ましくは多くても0.5%の量的比率のアルカリ金属化合物を有する溶融物を意味すると理解される。
【0031】
従来のセラミック坩堝または貴金属容器のほかに、特に、スカル坩堝を用いて本発明によりセラミックおよびガラスを溶融させることも可能である。本発明による製造方法を実施するのに特に適切な装置は、特に本出願人の名称での先のドイツ国出願である出願第102 44 807.8号(その開示内容はまた、本発明の主題においてその全体が本発明に援用される)に記載されている。適切なスカル坩堝もまた、例えばEP 0 528 025 B1から既知である。
【0032】
スカル坩堝は、冷却式坩堝壁を含む。これは、例えば、円筒状であってもよく、また垂直管、好ましくは金属管のリングで構成されてもよい。使用される冷却用流体は、好ましくは水である。しかしながら、例えば空気またはエーロゾルのような他の冷却用流体による冷却も可能である。
【0033】
隣接する管の間にはスロットが存在する。坩堝の基盤もまた、管から構成され得る。それらの末端では、管は、冷却剤の供給および/または冷却剤の廃棄用の垂直管に接続される。
【0034】
加熱は、坩堝壁を取り囲む誘導コイルを用いて達成され、好ましくは高周波電磁場の形態のその電磁気エネルギーを用いて、坩堝の内容物へ結合され得る。
【0035】
好ましい実施形態によれば、50kHz〜1500kHzの範囲の周波数を有する交流場が、溶融物の直接的な誘導加熱に使用される。この場合、例えばドイツでの386kHzのような郵政省承認の周波数を使用することが好適である。適切な周波数の選択はまた、使用する坩堝の容量にも依存する。周波数が高くなると、場が溶融物へ浸透する深さが減少する。したがって、坩堝の中心でさえ十分に高い加熱力を保証するためには、より低い周波数は、大きな坩堝に好適である傾向にあり、より高い周波数は、より小さな坩堝に好適である傾向にある。
【0036】
スカル坩堝は、実質的に以下の様式で作動する:坩堝にバッチ混合物または装填カレットあるいはそれら2つの混合物を充填する。ガラス溶融物の最小導電率に到達するために、ガラスまたはガラス溶融物は、まず第一に予熱しなくてはならない。結合温度に到達したら、高周波エネルギーの導入により、さらなるエネルギー供給が達成され得る。
【0037】
スカル坩堝における直接的な誘導加熱による溶融の利点は、バッチと同じ種の材料からなるスカル層が、例えば水冷却式金属管を含む壁のような冷却式壁で形成することができることである。これは、溶融物が、加熱装置との接触だけでなく、坩堝壁との接触も防止する。したがって、例えば壁からの着色イオンのような異物材料の溶融物への導入がみられないため、特に純粋な材料が、この種の坩堝中で溶融され得る。
【0038】
スカル層が、冷却式管上に形成する。管と管の間で、ガラス溶融物は、両側から十分に冷却されて、ガラスの薄層が同様に形成されるまで、空隙になんらかの形で浸透して、管と管の間の間隙をふさぐ。金属管間の距離が広すぎる場合、あるいはスカル層が薄すぎる場合、スカル層は、もはやガラス溶融物の圧力に抵抗することはもはやできなく、結果的にガラスは、金属管間に流れ出す。
【0039】
誘導加熱したスカル坩堝を用いた溶融は、結晶または高溶融ガラスを溶融するのに好ましく使用される。結晶が溶融されるときは、スカル層は、軽く焼結した結晶粉末から構成されるのに対して、ガラスの場合では、ガラス質層または結晶質層が形成される。
【0040】
スカル坩堝において高周波を用いて溶融を実施させるために、高周波によりガラス溶融物へ導入されるエネルギーは、スカル坩堝のスカル層および冷却式壁を介して熱の放射または放散により放散されるエネルギーより大きくなくてはならない。これは、ガラス溶融物が十分な導電率、したがって十分に良好な結合挙動を有する場合のみである。
【0041】
高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスは、ケイ酸塩ガラスおよび低いB含有量のホウケイ酸ガラスと異なり、溶融温度で極めて低い粘性を有する。これらの高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスは、非常に短い。これは、高粘性状態から低粘性状態への遷移が非常に狭い温度範囲内で起きることを意味する。したがって、溶融温度では、これらのガラスは、水に類似した低い粘性を有する。これらの低粘性では、非常に薄いスカル層のみが形成される可能性が高く、この層は、溶融物の重量に抵抗することが不可能であり、したがって、溶融物は漏出する。この状況で、溶融物の漏出は、ガラス溶融物がスカル坩堝の水冷却式金属管間に流出することを意味すると理解される。
【0042】
本発明者は、ガラス溶融物の粘性が低いほど、この流出はより重要になることを発見した。高溶融ガラスの場合、金属管間で比較的長い距離が存在する場合、溶融物は、金属管間の空隙に比較的深く浸透するが、依然として金属管間にスカル層を形成することを見出した。
【0043】
低粘性ガラス溶融物の場合、金属管間のガラス溶融物の流速が高いので、金属管を介して熱の放散は、ガラスの流れを止めて、かつスカル層を形成するのにもはや不十分である。
【0044】
スカル坩堝が「短い」ホウ酸塩含有材料を溶融するのに使用される場合、溶融物が漏出するのを防ぐため、坩堝の金属管間の短い距離が好適である。それにもかかわらず、特に高周波場の遮蔽を防止するために、管間にある特定の距離が存在した状態でなくてはならない。
【0045】
合計5mm以下になる空隙は、特に高溶融高粘性溶融物に関して選択され得る。
【0046】
スカル坩堝の冷却式管間の距離が4mm以下、好ましくは3.5mm以下である場合、特に高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスが流出するのを効果的に防ぐことが可能であることを見出した。より長い距離は、より粘性の高いガラスに関して選択するのが好ましい。
【0047】
ガラス溶融物の粘性が低いほど、より狭い距離が好適に選択される。
【0048】
金属管間の距離を任意に減少させることができないが、一方ではこれがスカル坩堝を製造するのをさらに困難にし、すなわち金属管を溶接またははんだづけすることをより困難にし、他方では金属管間のフラッシュオーバーの危険性の増大が見られるためである。2mm以上、好ましくは2.5mm以上の金属管間の距離が、製造およびフラッシュオーバーの制御の両方にとって最も好適であることが見出された。
【0049】
両方の条件を満足させるために、金属管の管壁間の距離が2mm〜4mm、好ましくは2.5mm〜3.5mmである場合に好適である。非常に低溶融ガラスの場合、2.5mmの距離が好適である傾向にある。
【0050】
さらに、ガラスを溶融する際、さらなる問題は、ある冷却式金属管から次の金属管への溶融物におけるフラッシュオーバーであり得る。スカル層の絶縁作用が低いほど、この危険性は高くなる、この危険性は、薄いスカル層のため、非常に低粘性溶融物の場合に相当して特に高い。特に、高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスはともに概して薄いスカル層のみを形成する場合、金属管間でフラッシュオーバーの傾向が見られる。フラッシュオーバーは、ガラス溶融物と薄いスカル層を介して起きる。スカル層が薄いほど、かつスカル層の電気抵抗が小さいほど、フラッシュオーバーが起こる蓋然性が高い。
【0051】
上述するように、スカル層は、ガラス溶融物が流出するのを防ぐだけでなく、ガラス溶融物を介した金属管間のフラッシュオーバーを防ぐように意図される。スカル層が厚いほど、かつ冷却式金属管間の距離が長いほど、絶縁作用は大きくなる。
【0052】
特許請求したガラスに関して、スカル層の厚さおよび金属管間の特許請求した距離は、ガラス溶融物を介したフラッシュオーバーを防止するのに不十分である場合が多いことが試験により示された。
【0053】
しかしながら、金属管間のフラッシュオーバーは、好適には、特に、例えば高周波コイルのような交流電磁場を放出するための誘導コイルの領域で短絡されている金属管により簡素な方法で回避され得る。短絡は、高電位差が交流電磁場において管間で蓄積することが可能であることを防止する。
【0054】
また、本発明者はまた、スカル坩堝において溶融する場合、ガラス溶融物が流出する程度のガラス溶融物の粘性と溶融物におけるフラッシュオーバーとの間で非常に緊密な相関関係が存在することも発見した。
【0055】
驚くべきことに、高いB含有量の低溶融ホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスの組成範囲に関して、スカル坩堝を用いた本発明による溶融中に、ガラス溶融物がまだ流出しない冷却式金属管間の距離に関する範囲を見出すことが可能であり、フラッシュオーバーがさらなる方策を用いて防止することができることが明らかとなった。
【0056】
特許請求した高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスのみが非常に薄いスカル層を形成し、したがって溶融物が流出する非常に強い傾向が見られることが試験により示された。
【0057】
本発明者は、フラッシュオーバーは、スカル層および金属管間の距離だけでなく、使用する金属管の導電率にも依存することを発見した。
【0058】
特に、高導電率を有する複数の水冷却式管、例えば銅管を用いる場合に、1つの短絡している位置で十分である。高導電率により、主な電位差は、それらの管が少なくとも1つの短絡している位置を有する場合、あるいはそれらの金属管がそれぞれに1つの位置で短絡される場合、それらの管の間で蓄積することは不可能である。
【0059】
他方で、銅管ではなく、例えばインコネルから作製された管のような低導電率の管が使用される場合、2つの短絡している位置が好適であり、これらの位置は好ましくは、管の末端に配置される。すなわち、それぞれの金属管は、それらの末端で短絡される。
【0060】
本発明のさらなる目的は、高いB含有量の高純度ホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスを製造することである。
【0061】
驚くべきことに、特に、非常に攻撃的な高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスはさらに、薄いスカル層を通じて金属管を攻撃し、またスカル層とスカル坩堝の管の材料との間の反応も起こり得ることが明らかとなった。管、特に金属から作製される管はまたガラス溶融物上のこれらのガラスの蒸発生成物および装填バッチにより攻撃され得る。
【0062】
透過、したがって溶融物の純度に関して、極めて高い要求が光学ガラスに課せられる場合、特に高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスを溶融する場合に、水冷却式金属管は、白金、白金合金またはアルミニウムから作製される管からなる、あるいは例えば銅、真鍮またはインコネルから作製される管のような管を白金または白金合金でコーティングするものが好適である。
【0063】
本発明により溶融されたガラスおよび材料に関して、DE 100 02 019号(この開示内容はまた、本発明の主題においてその全体が本明細書に援用される)で実証されているように、フッ素含有層は、非常に攻撃的なガラスにさえ攻撃されないため、管がプラスチック、好ましくはフッ素含有プラスチックでコーティングされることが適切であることも証明されている。
【0064】
高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスに使用されるバッチは、非常に強いダスティング(dusting)の傾向が見られる。高レベルのダスティングは、環境保護に関して非常に望ましくない。しかしながら、個々の構成成分の強力なダスティングはまた、続くバッチの補正により適切に補われることができない屈折率におけるバラツキを導く。
【0065】
本発明によれば、バッチがペレットの形態で添加される場合、バッチのダスティングは、大いに抑制することができる。
【0066】
バッチのペレット化は、ガラス産業で既知であるが、工業タンク炉におけるペレット化の目的は、溶融炉から熱を回収することである。一般に、工業等級のガラスでは、ダスティングに関する問題はあまり見られない。
【0067】
多くの場合、ペレット化のコストは価値がないため、ペレットの使用は、依然としてガラス産業では激しい議論事項である。
【0068】
しかしながら、驚くべきことに、本発明者は、酸化物またはケイ酸塩を実質的に含むバッチの場合、ペレットは、ガラス溶融物へと直接攪拌することができることを発見した。ガラス溶融物へペレットを直接攪拌することにより、バッチの溶融中のダスティングのレベルを大幅に減少させることが可能となる。スカル坩堝における溶融中のダスティングのかなりの減少は、スカル坩堝における非常に大きな対流により、ペレットがガラス溶融物に非常に素早く進入し、それによりガラス溶融物で取り囲まれるという事実に起因する。
【0069】
さらに、驚くべきことに、ゆるいバッチではなく、ペレットを使用することは、ダスティングの減少のほかにも、溶融時間を有意に短くし、それにより処理量を有意に増大させることが可能であることを発見した。このことはまた、製造プロセス中の不都合な化学量論的変化をもたらす高揮発性構成成分の蒸発を、機器中の溶融材料のより短い残留時間により、減少させることができることを意味する。均質性に関して非常に高い需要において、溶融物からの構成成分の激しい蒸発は、実質的に抑制されるべきであり、したがって、ペレットの使用はまた、特に、例えば光学ガラス等の高級ガラスの製造にとって好適である。
【0070】
処理量のさらなる増加は、好適には、バッチを溶融しながら溶融物を攪拌することにより達成することができる。これは、例えば、スカル坩堝の溶融選択において実施され得る。
【0071】
また、良好な攪拌作用は特に溶融物にガスを吹き込むことにより達成され得る。このようにして、溶融物は接触することなく攪拌することができ、その結果、異物イオンの導入または攪拌器の表面との反応が回避される。
【0072】
例えば、バブリング管は、例えばスカル坩堝のような機器中の溶融物に導入または挿入することができ、ガスは、バブリング管のノズルを通して溶融物に吹き込むことができる。しかしながら、ガスが溶融物に導入される場合、どんな化学反応が起こり得るかということに注意を払うべきである。酸素含有ガスが導入される場合、ガラス溶融物は部分的に酸化され得る。
【0073】
また、本発明による方法は本発明により製造される材料において気泡を防ぐために、好適には溶融材料の精製を包含する。本発明による方法を実施するために、バッチは、機器において不連続的にまたは連続的に溶融することができる。
【0074】
特に連続溶融の場合、バッチの溶融および精製は、同じ坩堝で、あるいは一連の接続された少なくとも2つの坩堝または機器で実施され得る。スカル坩堝はバッチを同種の材料中に溶融させるため、スカル坩堝を使用することが好ましく、その結果、特に純粋な材料が製造され得る。
【0075】
高周波を用いた加熱は、坩堝、特にスカル坩堝の壁領域と中心との間での強力な温度勾配を生じる。この温度勾配は、上方へ向かう流れをもたらし、溶融物の対流を導き、その結果として、溶融物は、壁に接近した縁領域において下方へ引き出される。また、これは好適には、特に1つのスカル坩堝中で実施されるバッチの溶融および精製の両方を可能にする。下方への移動中に、バッチは溶融され、続いてバッチは、上方への流れ中に精製される。
【0076】
特に溶融するのが比較的困難であるガラスの場合、あるいはより高い処理量を達成するために、溶融および精製用に2つの別個の坩堝または機器を使用することが好都合である。より強力な化学的攻撃が溶融中に起こるため、少なくとも溶融坩堝は、スカル坩堝であるべきである。純度に対する要求が非常に高い場合、また、精製坩堝はスカル坩堝を含んでもよい。2つのスカル坩堝を直列に接続させることが可能である。
【0077】
本発明による方法を用いて、ランタンホウケイ酸ガラスを製造することも可能である。これらのガラスは、ランタンクラウン、ランタンフリントまたはランタン重フリントガラスとしても知られる。本発明により製造されるガラスは、その光学特性に関して、特に有意に改善された透過により、既知のガラスと区別され、さらにこの方法を用いて、より低コストで生産され得る。
【0078】
特殊レンズ系を算出するのに使用されるコンピュータプログラムはすべて、市販のガラスおよびそれらの特性に適合されるため、本発明によりこの種のレンズ系用のガラスを製造する場合、これらのガラスの組成を、光学特性、例えば反射指数および散乱が市販のガラスの光学特性と一致するように選択することが好適である。
【0079】
ガラス構造のほかに、網目修飾成分も、結合挙動に関して重要な役割を果たす。二価および三価の金属酸化物は、結合挙動に最も重要である。本発明の一実施形態によれば、溶融材料の組成は、溶融材料中の二価および三価の金属酸化物の濃度、またはそれらの量的比率が少なくとも25モル%であるように好適に選択される。
【0080】
ホウ酸塩ガラスおよび結晶ホウ酸塩含有材料の場合、Al、GaおよびInの総含有量は、25%に達し得る一方で、特に高いB含有量のホウケイ酸ガラスの場合、網目形成成分のAl、GaおよびInの総含有量は10%を超えるべきではない。
【0081】
本発明による方法の一実施形態によれば、特に低アルカリまたはアルカリ非含有の高ホウ酸含有量のホウケイ酸ガラスまたはホウ酸塩ガラスまたは結晶ホウ酸塩含有材料のようなホウ酸含有低アルカリ材料が製造され、材料を製造するために、以下の組成が、ホウ酸塩含有溶融材料に関して選択される:
15〜75モル%、
SiO 0〜40モル%、
Al、Ga、In 0〜25モル%、
ΣM(II)O、M(III)O 15〜85モル%、
ΣM(IV)O、M(V)O、M(VI)O 0〜20モル%、および
ΣM(I)O 0.50モル%未満が存在し、かつ
X(B)が0.50より大きく、
上記式中、
X(B)=B/(B+SiO)、
M(I)=Li、Na、K、Rb、Cs、
M(II)=Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Pb、Cu、
M(III)=Sc、Y、57La−71Lu、Bi、
M(IV)=Ti、Zr、Hf、
M(V)=Nb、Ta、
M(VI)=Mo、W。
【0082】
本明細書で、合計を示す記号である「Σ」は、合計を示す記号後に列挙した量的比率すべての合計を表す。パーセントは、モル%での量的比率である。さらに、X(B)=B/(B+SiO)は、SiOに関する網目形成成分Bの量的モル分率を表す。
【0083】
さらに、周期表の元素の酸化物(Ge酸化物、P酸化物、Sn酸化物、着色酸化物)、ならびに標準的な量の精製剤が、特定用途に応じて可能であるが、材料の特性および溶融物の結合能力に必須ではない。
【0084】
この組成範囲内で、特に高ホウ酸含有量のホウケイ酸塩ガラスまたはホウ酸塩ガラスのようなガラス質材料を製造するために、溶融物の組成は好適には、Bの量的比率が15〜75モル%であり、かつモル分率X(B)が0.52をより大きくなるように選択される。溶融材料の組成に関して、B含有量が20〜70モル%の範囲中で選択される場合、ΣM(II)O、M(III)O含有量、すなわち、二価および三価の金属イオンの酸化物の量的比率の合計が15〜80モル%の範囲中で選択され、かつX(B)が0.55より大きくなるように選択されることが特に好ましい。
【0085】
さらに、ホウ素含有溶融材料の組成に関する上述の範囲内で、溶融材料において、ガラスの光学特性に関して、Bの含有量が28〜70モル%であり、B+SiOの含有量が50〜73モル%であり、Al、Ga、Inの含有量が0〜10モル%であり、ΣM(II)O、M(III)Oの含有量が27〜50モル%であり、かつX(BO)が0.55より大きい組成範囲が特に好適である。
【0086】
ここで、高いホウ酸含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスを製造するために、以下の溶融材料の組成を選択することが特に好ましい:
36〜66モル%、
SiO 0〜40モル%、
+SiO 55〜68モル%、
Al、Ga、In 0〜2モル%、
ΣM(II)O、M(III)O 27〜40モル%、および
ΣM(IV)O、M(V)O、M(VI)O 0〜15モル%が存在し、かつ
X(B)が0.65より大きい。
【0087】
光学用途用の高いホウ酸含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスの製造に特に適切である本発明のさらなる実施形態によれば、溶融材料の組成は、量的比率が、以下の通りであるように選択される:
45〜66モル%、
SiO 0〜12モル%、
+SiO 55〜68モル%、
Al、Ga、In 0〜0.5モル%、
ΣM(II)O 0〜40モル%、
ΣM(III)O 0〜27モル%、
ΣM(II)O、M(III)O 27〜40モル%、および
ΣM(IV)O、M(V)O、M(VI)O 0〜15モル%。この場合、さらに、BおよびSiOの量的比率は、X(B)が0.78より大きいように選択される。この種の方法では、二価金属イオン、すなわちM(II)、特にMg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Pbが添加される。さらに、このようにして得られる光学ガラスの透過は、溶融材料が強力に着色性であるCuOを全く含有しない場合に改善させることができる。網目修飾成分であるPbOおよびCdOは、有毒作用を有することが知られている。したがって、溶融物の組成においてこれらの構成成分を省くこと、ならびにPbOおよびCdOを含まない組成を選択することが好適であり、場合によっては法的要件となることさえある。
【0088】
30〜75モル%、
SiO 1モル%未満、
Al、Ga、In 0〜25モル%、
ΣM(II)O、M(III)O 20〜85モル%、および
ΣM(IV)O、M(V)O、M(VI)O 0〜20モル%が存在し、かつホウ酸塩および酸化ケイ素の量の比が、X(B)が0.90より大きいように選択される、溶融材料の組成が選択される場合、本発明による方法のこの実施形態を用いて、例えばホウ酸塩ガラスだけでなく、結晶ホウ素含有材料、例えば、特にガラスセラミックを製造することが可能である。
【0089】
例えばガラスセラミックのような結晶ホウ素含有材料の生産に特に、適切である上記方法のさらなる実施形態によれば、量的比率が、
20〜50モル%、
SiO 0〜40モル%、
Al、Ga、In 0〜25モル%、
ΣM(II)O、M(III)O 15〜80モル%、および
ΣM(IV)O、M(V)O、M(VI)O 0〜20モル%であり、かつ
X(B)が0.52より大きい組成が、溶融材料に関して選択される。
【0090】
良好な結合を達成するために、本発明による方法のこの実施形態では、溶融材料の組成は、好適にはX(B)が0.55より大きいように選択され得る。
【0091】
この場合、この種の溶融物の結合は、溶融材料において、量的比率が、
ΣM(II)Oとして 15〜80モル%であり、および
(III)Oとして 0〜5モル%であり、かつ
X(B)が0.60より大きい場合にさらに改善され得る。
【0092】
この方法のさらに別の好適な変形によれば、Al、GaおよびInからなる群から選択される物質の量的比率は、それが5モル%を超えないように選択される。
【0093】
Al、GaおよびInからなる群から選択される物質の量的比率は、3モル%を超えず、かつ溶融物におけるΣM(II)Oの量的比率が15〜80モル%の範囲であり、M(II)=Zn、PbおよびCuからなる群から選択される、本発明による方法のこの実施形態の変形が特に好ましい。この場合、さらに、溶融物の組成は、X(B)が0.65より大きくなるように選択される。
【0094】
さらなる実施形態によれば、量的比率が、
20〜50モル%、
SiO 0〜40モル%、
Al 0〜3モル%、
ΣZnO、PbO、CuO 15〜80モル%、
Bi 0〜1モル%、および
ΣM(IV)O、M(V)O、M(VI)O 0〜0.5モル%である組成が、溶融材料に関して選択される。この実施形態では、さらに、その組成は、X(B)が0.65より大きくなるように選択される。
【0095】
上記方法のこの実施形態の好ましい変形によれば、以下の量的比率が選択される:
20〜50モル%、
SiO 0〜40モル%、
Al 0〜3モル%、
ΣZnO、PbO、CuO 15〜80モル%、
Bi 0〜1モル%、および
ΣM(IV)O、M(V)O、M(VI)O 0〜0.5モル%。この場合、ホウ酸塩および酸化ケイ素の量的比率は、好適にはX(B)が0.65より大きくなるように選択される。
【0096】
本発明を、多数の実施例を参照して、以下により詳細に説明する。
【実施例1】
【0097】
結合試験に関して、ガラスを30リットルのスカル坩堝中で試験した。この目的で、バッチをスカル坩堝中に導入して、バーナーを用いて溶融した。溶融した後、高周波を入れて、バーナーを切る。次に、ガラス溶融物を、高周波を用いてさらに加熱する。ガラス溶融物をさらに高温に加熱することができる場合、ガラスを高周波に結合される。
【0098】
これが不可能である場合、あるいは高周波がうまく結合されず、その結果ガラス溶融物が再び冷却する場合、ガラス溶融物は結合させることが不可能であるとみなされる。
【0099】
ガラス溶融物が分断される場合、スカル坩堝およびガラス表面により放出される熱の量は、高周波で結合されるエネルギーより大きい。
【0100】
表1は、結合しない高B含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスの例を示す。
【0101】
【表1】

【0102】
非結合ガラス1〜4では、酸化ケイ素に対するホウ酸塩の量的比率は、0.5未満である。したがって、これらのガラスでは、酸化ケイ素は、優勢な網目形成成分である。アルカリ金属イオンが存在しないか、または少量でのみ存在するという事実により、かつ酸化ケイ素SiOに対するホウ酸塩Bのこの量的比率により、スカル坩堝での高周波場へのこれらの溶融物の誘導結合は不可能である。表1中のガラス5の場合では、ホウ酸塩が唯一の網目形成成分であるが、金属イオンが少なくとも2の原子価を有する金属酸化物の量的比率が20%に過ぎない。これはまた、溶融物の導電率がスカル坩堝中での結合に不十分であることを意味する。
【0103】
表2では、実施例6〜8は、高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸ガラスに関する限定事例であり、ここで実験条件は、依然として結合を達成するために、非常に慎重に選択しなくてはならない。例えば、十分量のエネルギーを結合させるために、1300℃を超える温度、高周波を誘導するコイルでの高電圧および高周波発生器の十分な電力が必要とされる。他方で、Bが蒸発するのを防ぐために、温度はあまり高く選択すべきではない。これは、これらのガラスに関するプロセス枠が非常に狭い可能性があることを意味する。
【0104】
【表2】

【0105】
表3は、問題なく高周波と結合させることができ、かつスカル坩堝中で溶融させることができる高いB含有量のホウケイ酸ガラスおよびホウ酸塩ガラスの例を示す。
【0106】
【表3】



【実施例2】
【0107】
例えば、白金坩堝中での従来の溶融物と比較して、高周波加熱と併用したスカル溶融技法により引き起こされる光透過の改善は、表3中のガラス14に基づいて実証され、これは結合可能である。
【0108】
ランタンホウケイ酸ガラス系由来の光学ガラスを、白金でコーティングしたステンレス鋼スカル坩堝中で溶融した。以下の溶融パラメータを使用した:
装填:1240〜1260℃
精製:1280℃
静置:1240〜1200℃
注入:坩堝中でおよそ1200℃、供給機中でおよそ1100℃。
【0109】
溶融物は、様々な幾何学の鋳型(窓ガラス、ロッド、バー)に注入して、650℃から室温にまで冷却した。
【0110】
以下の値を測定した:
nd=1.71554 (1.71300)
vd=53.41 (53.83)
ΔPg,F=−0.0084 (−0.0083)
τi(400nm、25mm)=0.972 (0.94)。
【0111】
ここで、ndは、λ=587.5618nmでのフラウンホーファー線dにおける屈折率を示し、vは、このフラウンホーファー線におけるアッベ数である。ΔPg,Fは、フラウンホーファー線gおよびFにおいて測定される相対部分分散Pg,Fの偏差に相当する。τiは、正味の透過率を示す。
【0112】
括弧内に付与した参照値は、従来の溶融技術を用いて、すなわち誘導加熱した白金坩堝中で溶融した同じ組成のガラスで測定した。
【0113】
正味の透過率が青色スペクトル領域中で有意に上昇したという事実から、改善が認められる。青色領域中での吸収は、黄色いキャストをもたらし、その結果、写真、顕微鏡および望遠鏡のような観察用途に関して、最小の考え得る吸収が望ましい。屈折率およびアッベ数の偏差は、新たな技術のわずかに高いダスティングの割合により生じ、バッチを微同調させることにより、あるいはゆるいバッチの代わりにペレットを使用することで、容易に補正することができる。
【0114】
以下の溶融条件下での、同じガラスを用いた連続溶融試験:
1280℃で高周波加熱したスカル坩堝中で溶融。1400℃で白金精製チャンバ中で精製した後、以下の値が得られた:
nd=1.70712 (1.71300)
vd=53.68 (53.83)
ΔPg,F=−0.0084 (−0.0084)
τi(400nm、25mm)=0.965 (0.94)
τi(365nm、25mm)=0.831 (0.72)
【0115】
上述の括弧内に付与した参照値は、誘導加熱した白金坩堝を用いて溶融した同じ組成のガラスで測定した値に関する。
【0116】
この場合、多くのUV用途の特徴である365nmでの透過率の値も決定した。この波長は、多くの用途に使用されるHg蒸気ランプの重要な輝線に相当する。本発明により製造されるガラスでは、この波長での光収率は、従来技術から既知であるガラスと比較して、0.111または15%増加させることができ、かなりの生成物の利点につながる。さらに、上記の補正措置に関する可能性は、より低い値へと向かう屈折率の偏差から認識され得る。
【0117】
構成成分BおよびLn(Ln=Sc、Y、La、Gd、Yb、Lu)は、実施例2によるガラスの特徴である。構成成分BおよびLnは、広い濃度範囲内を変更させることができる。他の構成成分はすべて任意であり、さらなる構成成分を補ってもよい。このようにして、広範囲の屈折率およびアッベ数内のランタンクラウン、ランタンフリントおよびランタン重フリントガラスに属する光学ガラスを製造することが可能である。
【実施例3】
【0118】
結合能力を有する表2からのガラス8の溶融物を用いて、ガラス溶融物が漏出するのを防ぐために、水冷却式金属管間の距離は、4mm未満、好ましくは3.5mm未満であるべきであることが実証される。
【0119】
バッチは、10リットルのスカル坩堝に導入され、スカル坩堝の金属管は、せいぜい4.5mm離れて間隔を空け、バーナーを用いて最初に溶融した。初期のバッチを溶融した後、高周波を入れて、バーナーを切った。それ以降、専ら高周波を用いて、バッチを溶融した。スカル坩堝がガラス溶融物でおよそ四分の三に満たされたら、ガラス溶融物は突破した。ガラス溶融物は、2つの水冷却式金属管間を迅速に漏出した。
【0120】
第2の試験は、金属管が3.5mm間隔を空けたスカル坩堝を使用した。試験は、上述のように繰り返した。問題なく、かつガラス溶融物が流出することなく、スカル坩堝を溶融バッチで満たすことが可能であった。
【実施例4】
【0121】
添付の図面は、溶融材料組成を有する溶融物の導電率の変化を表す図を示し、ここで溶融材料中のホウ酸塩に対する二酸化ケイ素のモル量の比は、0.5未満である。溶融物を通過する電流および電流を生ずるために印加した電圧を測定した。測定した値は、BaO、すなわち二価金属イオンを有する金属酸化物の量的比率の関数としてプロットした。
【0122】
25モル%のBaO量的比率で、溶融物を通過する電流において急激な増加が見られることが図からわかる。続いて、この量的比率以上ではまた、この電流を生ずるのに必要とされる電圧のかなりの低下、したがって、溶融物の導電率のさらなる増加が見られる。この効果、図でBaOの例として示している効果により、本発明により、25%以上の二価または多価の金属酸化物の量的比率を超えると、溶融物をさらに結合させることが可能であり、ここで溶融材料中でのホウ酸塩に対する二酸化ケイ素のモル量の比は、0.5未満である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】溶融材料組成を有する溶融物の導電率の変化を表す図である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ酸塩含有低アルカリ材料を製造する方法であって、ホウ素含有溶融材料は、交流電磁場を用いた装置で直接誘導加熱され、該溶融材料は、構成成分として、少なくとも25モル%の量的比率で、少なくとも1つの金属酸化物を含み、該金属酸化物の金属イオンは、少なくとも2の原子価を有し、前記溶融材料中のホウ酸塩に対する二酸化ケイ素のモル物質量の比は、0.5以下である方法。
【請求項2】
前記溶融体は、高周波場を用いて直接誘導加熱されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶融体は、50kHz〜1500kHzの範囲の周波数の交流電磁場を用いて直接誘導加熱されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ホウ酸塩含有低アルカリ材料は、ホウ酸塩含有材料、ホウ酸塩ガラスまたは高ホウ酸含有量のホウケイ酸ガラスを含むことを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融材料中のアルカリ含有化合物の量的比率は、2%未満、好ましくは0.5%未満であることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記装置は、前記溶融材料が溶融されるスカル坩堝からなることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶融材料はスカル坩堝中で溶融され、該スカル坩堝の壁は、複数の管壁が2mm〜4mm、好ましくは2.5mm〜3.5mmの間隔を取るように、互いに離れて間隔を空けている複数の冷却式管からなる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記スカル坩堝の前記冷却式管は、特に前記交流電磁場を放出するための高周波コイルの領域において短絡されることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記管は、それぞれ1つの位置で短絡されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記管は、それぞれ前記管の末端で短絡されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記冷却式管は、白金、白金合金またはアルミニウムから作製される管からなることを特徴とする、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記スカル坩堝の前記管は、白金または白金合金の層でコーティングされることを特徴とする、請求項6〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記スカル坩堝の前記管は、プラスチック、特にフッ素含有プラスチックでコーティングされることを特徴とする、請求項6〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
バッチがペレットの形態で添加されることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶融物は、前記バッチが溶融されながら攪拌されることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ガスが前記溶融物に吹き込まれることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
バブリング管が前記溶融物に導入され、ガスが該バブリング管のノズルを通して前記溶融物に吹き込まれることを特徴とする、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記溶融材料は、精製されることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記バッチは、少なくとも2つの直列接続された装置中で溶融および精製されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記バッチは、同じ装置中で溶融および精製されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記溶融材料は、前記装置中で不連続的に溶融されることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記溶融材料は、前記装置中で連続して溶融されることを特徴とする、請求項1ないし21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記溶融材料は、
15〜75モル%、
SiO 0〜40モル%、
Al、Ga、In 0〜25モル%、
ΣM(II)O、M(III)O 15〜85モル%、
ΣM(IV)O、M(V)O、M(VI)O 0〜20モル%、および
ΣM(I)O 0.50モル%未満が存在し、かつ
X(B)が0.50より大きい、
上記式中、
X(B)=B/(B+SiO)、
M(I)=Li、Na、K、Rb、Cs、
M(II)=Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Pb、Cu、
M(III)=Sc、Y、57La−71Lu、Bi、
M(IV)=Ti、Zr、Hf、
M(V)=Nb、Ta、
M(VI)=Mo、W
である組成を有することを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記溶融物質中の前記B含有量は、15〜75モル%であり、X(B)は0.52より大きいことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記溶融材料中で、Bの含有量は20〜70モル%であり、ΣM(II)O、M(III)Oの含有量は15〜80モル%であり、X(B)は0.55をより大きい、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記溶融材料中で、Bの含有量は28〜70モル%であり、B+SiOの含有量は50〜73モル%であり、Al、Ga、Inの含有量は0〜10モル%であり、ΣM(II)O、M(III)Oの含有量は27〜50モル%であり、X(BO)は0.55より大きいことを特徴とする、請求項23〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
36〜66モル%、
SiO 0〜40モル%、
+SiO 55〜68モル%、
Al、Ga、In 0〜2モル%、
ΣM(II)O、M(III)O 27〜40モル%、
ΣM(IV)O、M(V)O、M(VI)O 0〜15モル%が存在し、かつ
X(B)が0.65より大きい組成が、前記溶融材料に関して選択されることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
特に光応用のホウ酸塩ガラスおよび高ホウ酸含有量のホウケイ酸ガラスの製造のための前記請求項のいずれか1項に記載の方法であって、前記溶融材料は、以下の組成:
45〜66モル%、
SiO 0〜12モル%、
+SiO 55〜68モル%、
Al、Ga、In 0〜0.5モル%、
ΣM(II)O 0〜40モル%、
ΣM(III)O 0〜27モル%、
ΣM(II)O、M(III)O 27〜40モル%、
ΣM(IV)O、M(V)O、M(VI)O 0〜15モル%を有し、かつ
X(B)が0.78より大きい、M(II)=Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Pbであることを特徴とする方法。
【請求項29】
特にホウ酸塩ガラスおよび結晶ホウ素含有材料の製造のための前記請求項のいずれか1項に記載の方法であって、前記溶融材料は、以下の含有量:
30〜75モル%、
SiO 1モル%未満、
Al、Ga、In 0〜25モル%、
ΣM(II)O、M(III)O 20〜85モル%、および
ΣM(IV)O、M(V)O、M(VI)O 0〜20モル%が存在し、かつ
X(B)が0.90より大きい組成を有することを特徴とする方法。
【請求項30】
特に結晶ホウ素含有材料の製造のための前記請求項のいずれか1項に記載の方法であって、前記溶融材料は、
20〜50モル%、
SiO 0〜40モル%、
Al、Ga、In 0〜25モル%、
ΣM(II)O、M(III)O 15〜80モル%、および
ΣM(IV)O、M(V)O、M(VI)O 0〜20モル%が存在し、かつ
X(B)が0.52より大きい組成を有する方法。
【請求項31】
X(B)は0.55より大きいことを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記量的比率が、
ΣM(II)O 15〜80モル%、および
(III)O 0〜5モル%であり、かつ
X(B)が0.60より大きいことを特徴とする、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
Al、GaおよびInからなる群から選択される物質の量的比率は、5モル%を超えないことを特徴とする、請求項30〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記溶融材料に関する前記組成は、Al、GaおよびInからなる群から選択される物質の量的比率が3モル%を超えず、かつΣM(II)Oの量的比率が15〜80モル%の範囲であり、かつX(B)が0.65より大きいように選択されることを特徴とし、M(II)=Zn、Pb、Cuである、請求項30〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
20〜50モル%、
SiO 0〜40モル%、
Al 0〜3モル%、
ΣZnO、PbO、CuO 15〜80モル%、
Bi 0〜1モル%、および
ΣM(IV)O、M(V)O、M(VI)O 0〜0.5モル%が存在し、かつ
X(B)が0.65より大きい組成が、前記溶融材料に関して選択されることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
物質の量が、
20〜42モル%、
SiO 0〜38モル%、
ΣZnO、PbO 20〜68モル%、
CuO 0〜10モル%、
ΣZnO、PbO、CuO 20〜68モル%、および
Bi 0〜0.1モル%であり、かつ
X(B)が0.65より大きい組成が、前記溶融材料に関して選択されることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
PbOおよびCdOを含まない組成が、前記溶融材料に関して選択される、請求項1〜36のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−508886(P2006−508886A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557972(P2004−557972)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013576
【国際公開番号】WO2004/052797
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】