説明

ホウ素を含まない油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ

【課題】 ホウ素を含まない潤滑剤用添加剤パッケージの提供。
【解決手段】 本発明は、コハク酸イミド分散剤、摩耗防止剤、及び極圧剤を有し、全リン含量が500ppm以下である、ホウ素を含まない油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを提供する。本発明の潤滑油はホウ素の不在下においてでさえ、ISOT及びL60−1の両試験に合格する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤用添加剤及び潤滑剤処方物の分野に関する。特に本発明は、ホウ素の存在が合格にとって必須であると考えられている試験を合格させうるホウ素を含まない潤滑剤用添加剤パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
歴史的には、ホウ素を含む潤滑剤を用いることにより、標準的な工業試験に対して満足できる性能を達成してきた。そのような2つの工業試験は、ISOT及びL−60−1である。しかしながら、ホウ素は例えば水分に敏感で、価格が高いというある望ましくない性質を潤滑剤に与える。かくして工業の要求する性能を付与し、一方でホウ素の存在を減じまたはそれを排除した潤滑剤を製造することは望ましい。最近予期に反してISOT標準試験及びL60−1標準試験に合格するホウ素を含まない潤滑剤用添加剤パッケージが開発された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、ISOT標準試験及びL60−1標準試験の両方に合格しうる潤滑剤用添加剤パッケージを提供する。更に特に、ある具体例において、本発明は、(a)コハク酸イミド分散剤、(b)摩耗防止剤、(c)極圧添加剤、を含んでなる油溶性潤滑剤用添加剤パッケージであって、該分散剤と該極圧添加剤の重量比が約1:7−約1:2であり、且つパッケージがホウ素を含まず、且つパッケージの全リン含量が約500ppm以下である、油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを提供する。
【0004】
他の具体例において、(a)基油、及び(b)本明細書に教示する油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑油も提供される。
【0005】
上の要約に従い、以下には現在最良の態様と考えられる本発明の1つの具体例を詳細に記述する。
【0006】
先ず本発明のある具体例で使用される種々の成分から議論しよう。次いで本発明の潤滑剤用添加剤パッケージと本発明の潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑油の例を提示する。最後に本発明の潤滑剤用添加剤パッケージで達成されるL60−1及びISOT試験の性能について議論する。
【0007】
基油
ここで有用な基油は、天然潤滑油、合成潤滑油、及びこれらの混合物を含む。適当な潤滑油は、合成ワックス及び粗ろうの異性化で得られるベースストック(basestock)、並びに原油の芳香族及び極性成分を水素化分解して製造されるベースストックも含む。一般に、天然及び合成潤滑油の両方は、それぞれ100℃で約1−約40mm/秒(cSt)の動粘度を有するが、典型的な用途ではそれぞれ100℃で約1−約16mm/秒(cSt)、好ましくは100℃で約2−15mm/秒(cSt)の粘度を有する基油を必要としよう。天然潤滑油は、動物油、植物油(例えばひまし油及びラード油)、石油、鉱油、及び石炭もしくは頁岩に由来する油を含む。好適な天然潤滑油は鉱油を含んでなる。
【0008】
本発明で有用な鉱油は、すべての普通の鉱油ベースストックを含むが、これに限定されるものではない。これは化学構造においてナフテン系またはパラフィン系の油を含む。通
常の酸、アルカリ、及び白土または他の試剤、例えば塩化アルミニウムを用いて精製される、或いは例えばフェノール、二酸化硫黄、フルフラ−ル、ジクロロジエチルエ−テルなどの溶媒による溶剤抽出で得られる抽出された油である油。これらは、水素化処理または水素化精製されていても、冷却または接触脱ロウ法で脱ロウされていても、水素化分解されていてもよい。鉱油は天然の原油起源から製造しても、異性化ワックス材料または他の精製工程の残油からなっていてもよい。ある具体例において、潤滑粘度の油は、80以上の、好ましくは90以上の粘度指数(VI)、90容量%以上の飽和物、及び0.03重量%未満の硫黄を有する水素化処理された、水素化分解された及び/またはイソ−脱ロウされた鉱油である。
【0009】
本発明で使用するには、グループII及びグル−プIIIのベースストックが特に適当でもある。それらは、典型的には苛酷な水素化工程により芳香族、硫黄及び窒素含量を減ぜられ、続いて脱ロウ、水素化仕上げ、抽出及び/または蒸留工程により最終基油とする通常の原料から製造される。更にグル−プIII、硫黄≦0.03重量%、及び飽和物≧90容量%、粘度指数>120として、並びにグループIV、ポリ−アルファーオレフィンとして公知の基油も有用である。水素化処理されたベースストック及び接触脱ロウベ−スストックは、その低い硫黄及び芳香族含量が故に、一般にグループII及びグル−プIIIの範疇に入る。
【0010】
本発明で使用される種々のベースストックの化学組成に関しては制限がない。例えば種々のグループI、グループII及びグル−プIIIの油における芳香族、パラフィン、及びナフテンの割合は、実質的に変化させうる。油の製造に用いる原油の精製の程度及び起源は一般にこの組成を決定する。ある具体例において、基油は少くとも110のVIを有する鉱油を含んでなる。
【0011】
潤滑油は精製された、再精製された油、またはこれらの混合物に由来していてよい。未精製の油は天然起源または合成起源(例えば石炭、頁岩またはタールサンドビチュ−メン)から、更なる精製または処理なしに直接得られる。未精製油の例は、それぞれ更なる処理なしに使用されるレトルト操作から直接得られる頁岩油、蒸留から直接得られる石油、またはエステル化工程から直接得られるエステル油を含む。精製油は未精製油と同様であるが、精製油は1つまたはそれ以上の性質を改良するために1つまたはそれ以上の精製工程で処理されたものである。適当な精製技術は、蒸留、水素化処理、脱ロウ、溶媒抽出、酸または塩基抽出、濾過、及びパーコレーションを含むが、これらのすべては同業者には公知である。再精製油は、精製油を得るために使用されるものと同様の工程で使用済み油を処理することによって得られる。これらの再精製油は再生油または再処理油としても公知であり、しばしば更に消費された添加剤及び油の劣化生成物を除去するための技術により付加的に処理される。
【0012】
合成潤滑油は炭化水素油及びハロ置換炭化水素油、例えばオリゴマ−、ポリマー及びインターポリマー化オレフィン、アルキルベンゼン、ポリフェニル、並びにアルキル化ジフェニルエーテル、アルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類縁体、及び同族体などを含む。好適な合成油は、100℃で約1−約12、好ましくは2−8mm/秒(cSt)の粘度を有するα−オレフィンのオリゴマー、特に1−デセンのオリゴマーである。これらのオリゴマーはポリ−α−オレフィンまたはPAOとして公知である。
【0013】
合成潤滑油は、アルキレンオキシドポリマー、インターポリマー、コポリマー、及び末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などで変性されたそれらの誘導体も含む。この種の合成油は、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合で製造されるポリオキシアルキレンポリマ−、これらのポリオキシアルキレンポリマ−のアルキル及びアリールエーテル(例えば平均分子量1000を有するメチル−ポリイソプロピレングリコール
エーテル、分子量100−1500を有するポリプロピレングリコールのジフェニルエーテル)、並びにそれらのモノ及びポリカルボン酸エステル(例えば酢酸エステル、混合C−C脂肪酸エステル、及びテトラエチレングリコ−ルのC12オキソ酸ジエステル)が例である。
【0014】
他の適当な種類の合成潤滑油は、ジカルボン酸(例えばフタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノレン酸、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、など)と、種々のアルコール(例えばブチルアルコ−ル、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール、など)とのエステルを含んでなる。これらのエステルの特別な例は、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、イソフタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノレン酸ダイマ−の2−エチルヘキシルジエステル、及び1モルのセバシン酸を2モルのテトラエチレングリコール及び2モルの2−エチルヘキサン酸と反応させて得られる複雑なエステル(complex ester)などを含む。この種の合成油からの好適な種類の油はC−C12アルコー−ルのアジピン酸エステルである。
【0015】
合成潤滑油として有用なエステルは、C−C12モノカルボン酸とポリオール及びポリオールエーテル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパンペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどから製造されるものも含む。
【0016】
ケイ素に基づく油(例えばポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシ、またはポリアリールオキシシロキサン油及びシリケ−ト油)は他の有用な種類の合成潤滑油を含む。これらの油は、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラ(4−メチル−2−エチルヘキシル)シリケ−ト、テトラ(p−tert−ブチルフェニル)シリケート、ヘキサ(4−メチル−2−ペントキシ)−ジシロキサン、ポリ(メチル)−シロキサン、及びポリ(メチルフェニル)シロキサン等を含む。他の合成潤滑油は、液体のリン含有酸のエステル(例えばトリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、及びデシルホスホン酸のジエチルエステル)、ポリマーテトラヒドロフラン、ポリ−アルファーオレフィンなどを含む。
【0017】
分散剤
ポリイソブチレン(PIB)または混合ブタン置換コハク酸イミドに由来する分散剤は、本発明で有用なコハク酸イミド分散剤である。但しこのPIBの分子量範囲は、約900−2100、最も特に1200−1500である。1つの具体例において、コハク酸イミドは約1.0−1.25の無水コハク酸とPIBの比になる。このポリイソブチレンコハク酸無水物中間体は、モノ、ジ、またはポリアミンのいずれかを含む適当なアミンと更に反応させることができる。
【0018】
分散剤はコハク酸イミド、コハク酸アミド、コハク酸エステル、及びコハク酸エステル−アミドを含む種々の種類の無灰分散剤の1つまたはそれ以上を含んでなってもよい。
【0019】
上述の種類の無灰分散剤の製造法は、同業者には公知であり、特許文献に報告されている。例えば上述の種類の無灰分散剤の合成は、例えば引用により本明細書に包含される米国特許第2459112号、第2962442号、第2984550号、第3036003号、第3163603号、第3166516号、第3172892号、第3184474号、第3202678号、第3215707号、第3216936号、第321966
6号、第3236770号、第3254025号、第3271310号、第3272746号、第3275554号、第3281357号、第3306908号、第3311558号、第3316177号、第3331776号、第3340281号、第3341542号、第3346493号、第3351552号、第3355270号、第3368972号、第3381022号、第3399141号、第3413347号、第3415750号、第3433744号、第3438757号、第3442808号、第3444170号、第3448047号、第3448048号、第3448049号、第3451933号、第3454497号、第3454555号、第3454607号、第3459661号、第3461172号、第3467668号、第3493520号、第3501405号、第3522179号、第3539633号、第3541012号、第3542680号、第3543678号、第3558743号、第3565804号、第3567637号、第3574101号、第3576743号、第3586629号、第3591598号、第3600372号、第3630904号、第3632510号、第3632511号、第3634515号、第3649229号、第3697428号、第3697574号、第3703536号、第3704308号、第3725277号、第3725441号、第3725480号、第3726882号、第3736357号、第3751365号、第3756953号、第3793202号、第3798165号、第3798247号、第3803039号、第3804763号、第3836471号、第3862981号、第3936480号、第3948800号、第3950341号、第3957854号、第3957855号、第3980569号、第3991098号、第4071548号、第4173540号、第4234435号、第5137980号、及びRe第26433号に記述されている。
【0020】
いくつかの具体例において、無灰分散剤は、イミド基を形成しうる第1級アミノ基を少くとも1つ有するアミンのアルケニルコハク酸イミドを1つまたはそれ以上含んでなってよい。このアルケニルコハク酸イミドは常法により、例えばアルケニルコハク酸無水物、酸、酸−エステル、酸ハライド、または低級アルキルエステルを、少くとも1つの第1級アミノ基を含むアミンと共に加熱することによって製造できる。アルケニルコハク酸無水物は、ポリオレフィン及び無水マレイン酸の混合物を約180−220℃まで加熱することによって容易に製造できる。このポリオレフィンはゲルパ−ミエーションクロマトグラフィー(GPC)で決定して約700−約2100の数平均分子量を有する、低級モノオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、イソブテンなどのポリマ−またはコポリマーであってよい。
【0021】
無灰分散剤を製造するのに使用しうるアミンは、限定するものではないが、反応してイミド基を形成しうる少くとも1つの第1級アミノ基及び少くとも1つの更なる第1級または第2級アミノ基及び/または少くとも1つのヒドロキシル基を有するいずれかのものを含む。いくつかの代表的な例は、N−メチルプロパンジアミン、N−ドデシルプロパンジアミン、N−アミノプロピルピペラジン、エタノ−ルアミン、N−エタノール−エチレンジアミン、N−フェニレンジアミンなどである。
【0022】
適当なアミンは、アルキレンポリアミン、例えばプロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、ジ(1,2−ブチレン)トリアミン、及びテトラ(1,2−プロピレン)ペンタミンを含んでいてよい。更なる例は、式HN(CHCHNH)H(但し、nは約1−約10の整数)で記述できるエチレンポリアミンを含む。これらは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなど、並びにこれらの混合物を含む。但しこの場合、nは混合物の平均値である。これらの記述したエチレンポリアミンは、各端に第1級のアミン基を有し、その結果モノアルケニルコハク酸イミド及びビスアルケニルコハク酸イミドを形成しうる。市販のエチレンポリアミン混合物は、少量の分岐したもの及び環化したもの、例え
ばN−アミノエチルピペラジン、N,N´−ビス(アミノエチル)ピペラジン、N,N´−ビス(ピペラジニル)エタンなどの化合物を含みうる。市販の混合物は、ジエチレントリアミン−テトラエチレンペンタミンに相当する範囲に入る凡その全体的な組成を有し得る。ポリアルケニルコハク酸無水物とポリアルキレンポリアミンのモル比は約1:1−約2.4:1であってよい。いくつかの具体例において、無灰分散剤は、ポリエチレンポリアミン、例えばトリエチレンテトラミンまたはテトラエチレンペンタミンの、適当な分子量のポリオレフィン、例えばポリイソブテンの反応で作られる炭化水素置換カルボン酸または無水物との、不飽和ポリカルボン酸または無水物、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸などとの反応の生成物、並びにそのような物質の2つまたはそれ以上の混合物を含んでなってもよい。
【0023】
分散剤は、少くとも1つのポリアルキレン残基を含みうる。更なる例として、分散剤は少くとも2つのポリアルキレン残基を含んでなってもよい。このポリアルキレン残基は約900−約3000amuの分子量を有しうる。ポリアルキレン残基は、例えば約1300−約2100amuの分子量を有していてよい。更なる例として、ポリアルキレン残基は、約2100amuの分子量を有しうる。このポリアルキレン残基はポリブテニル基を含んでなってもよい。
【0024】
分散剤は取扱が容易な適当な粘度の油に溶解させることができる。本明細書に示す重量%は、添加されるいかなる希釈油もない、純分散剤に対するものであることを理解すべきである。
【0025】
分散剤は、更に有機酸、無水物、及び/またはアルデヒド/フェノ−ル混合物と反応させることができる。そのような工程は、例えば弾性体シールとの親和性を高めることができる。分散剤は更に分散剤の混合物を含んでなってもよい。更なる例として、分散剤は窒素を含んでなってもよく、及び/またはリンを含まなくてもよい。分散剤は、ある具体例の場合、約1−約5重量%の量で潤滑流体中に存在しうる。
【0026】
本開示のいくつかの具体例で使用される分散剤はアルケニルコハク酸または無水物及びアンモニアから製造されるコハク酸イミドを含んでなってもよい。例えばコハク酸イミドは、無水コハク酸とアンモニアの反応生成物を含んでなってもよい。アルケニルコハク酸のアルケニル基は短鎖アルケニル基、例えば炭素数約12−約36のアルケニル基であってよい。更に無水コハク酸は、C12−約C36脂肪族ヒドロカルビルコハク酸イミドを含んでいてよい。更なる例として、無水コハク酸はC16−約C28脂肪族ヒドロカルビルコハク酸イミドを含んでいてよい。更なる例として、無水コハク酸は、C18−約C24脂肪族ヒドロカルビルコハク酸イミドを含んでなってよい。
【0027】
コハク酸イミドは、引用により本明細書に包含されるヨ−ロッパ特許第0020037号に記述されているように無水コハク酸とアンモニアから製造できる。更に、コハク酸イミドは、エチル社(Ethyl Corporationn)から入手できるHiTEC3191摩擦調整剤(friction modifier)を含んでいてもよい。いくつかの具体例において、本明細書に開示されるコハク酸イミド以外の非金属摩擦調整剤は含まれない。
【0028】
コハク酸イミドは、構造式
【0029】
【化1】

【0030】
[式中、Zは構造式
【0031】
【化2】

【0032】
を有し、但しR及びRは独立に水素或いは炭素原子数約1−約34の直鎖または分
岐鎖炭化水素基であってよく、但しR及びRの炭素原子数の合計は約11−約35
である]
を有する化合物の1つまたはそれ以上を含んでなってよく、またコハク酸イミドは、それに加えてまたはそれに代えて、マレイン酸、無水物、またはエステルを、炭素原子数約12−約36の、線状α−オレフィンまたはその混合物のオレフィン性二重結合を異性化して内部オレフィンの混合物とした内部オレフィンと反応させることによって製造できる。
【0033】
1つの具体例は、テトラエチルペンタミン型のポリアミンを利用する。その例は、エチル社から入手できるHiTEC646分散剤、及び同様のコハク酸イミド分散剤を含むが、これに限定されるものではない。
【0034】
極圧添加剤
同業者には公知の極圧剤は、潤滑剤用添加剤パッケージ、潤滑油、潤滑される機械、及び本発明の方法に有用である。また硫化イソブチレン、アルキルポリスルフィド及び硫化脂肪酸エステルを含むが、これに限定されない硫化オレフィンも極圧剤として有用である。
【0035】
腐食防止剤
チアジアゾ−ル及びトリアゾ−ル型の腐食防止剤は、本発明での使用に適当である。アルキル置換チアジアゾ−ル並びにアルキル置換トリアゾ−ルは本発明に有用である。
【0036】
他の試剤
同業者には公知の且つ例えば米国特許第5492638号に教示されるような摩耗防止剤(antiwear)及びシロキサン含有ポリマ−消泡剤も、本発明の潤滑剤用添加剤パッケージ及び最終潤滑油に使用できる。
【0037】
種々の油溶性硫黄含有摩耗防止剤及び/または極圧添加剤は本発明の実施に使用できる。その例はジヒドロカルビルポリスルフィド、硫化オレフィン、天然及び合成起源の硫化脂肪酸エステル、トリチオン、硫化チエニル誘導体、硫化テルペン、C−Cモノオレフィンの硫化オリゴマー、及び例えば米国再発行特許Re第27331号に記述されているような硫化ディールス−アルダー付加物はその範疇に含まれる。特別な例は、Mn1100の硫化ポリイソブテン、硫化イソブチレン、硫化ジイソブチレン、硫化トリイソブチレン、ジシクロヘキシルポリスルフィド、ジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジノニルポリスルフィド、及びジ−tert−ブチルポリスルフィド、中でも
例えばジ−tert−ブチルトリスルフィド、ジ−tert−ブチルテトラスルフィド及びジ−tert−ブチルペンタスルフィドの混合物を含む。
【0038】
そのような範疇の硫黄含有摩耗防止剤及び/または極圧剤の組合わせ、例えば硫化イソブチレンとジ−tert−ブチルトリスルフィドの組合わせ、硫化イソブチレンとジノニルトリスルフィドの組合わせ、硫化ト−ル油とジベンジルポリスルフィドの組合わせなども使用できる。
【0039】
この成分に関する更なる詳細は、上述のヨ−ロッパ特許第531585号を参照できる。
【0040】
本発明の目的に対して、リン及び硫黄の両方を、その化学構造中に含む成分は、硫黄含有摩耗防止剤及び/または極圧剤よりもむしろリン含有摩耗防止剤及び/または極圧剤として見なされる。
【0041】
本発明の実施で使用できるあるそのような種類のリン及び窒素含有摩耗防止剤及び/または極圧添加剤は、英国特許第1009913号、英国特許第1009914号、米国特許第3197405号及び/または米国特許第3197496号に記述されている種類のリン及び窒素含有組成物である。一般にこれらの組成物は、ホスホロチオン酸のヒドロキシ置換トリエステルの、無機リン酸、酸化リン、またはハロゲン化リンとの反応で酸性中間体を生成させ、そして該酸性中間体の実質的な部分をアミンまたはヒドロキシ置換アミンで中和することによって製造される。
【0042】
本発明の組成物に使用できる他の種類のリン及び窒素含有摩耗防止剤及び/または極圧添加剤は、ヒドロキシ置換ホスフェタンのアミン塩またはヒドロキシ置換チオホスフェタンのアミン塩である。この一般的な種類の摩耗防止剤及び/または極圧剤の例は、イルガリュ−ブ(Irgalube)295添加剤(チバ−ガイギ−社)で代表されるヒドロキシ置換ホスフェタンのアミン塩及びヒドロキシ置換チオホスフェタンのアミン塩を含む。
【0043】
他の有用な範疇のリン及び窒素含有摩耗防止剤及び/または極圧剤は、リン酸及びチオリン酸の部分エステルのアミン塩からなる。この成分に関する更なる詳細については、上述のヨ−ロッパ特許第531585号を参照できる。
【0044】
本発明の処方物は全リン含量が約500ppm以下である。この処方物は又、ホウ素を含まない。ここに、「ホウ素を含まない」とは、痕跡量のまたは低量のまたは故意でない量のホウ素汚染物を除いて、実質的にホウ素を含まないことを意味する。
【0045】
ここにホウ素を含まないとは、約25ppmまでの低量のホウ素を含むことができる。また「実質的にホウ素を含まない」とは、約50ppm未満のホウ素を意味する。
【0046】
例示処方物
本発明の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージの例を、下表に示す。
【0047】

成分 重量%
硫化オレフィン 30−50
第1級アミン 0.1−5
酸性ホスフェ−ト 0.5−5.0
錆止め剤 0.01−1
消泡剤 0.2−2.0
腐食防止剤 0.2−2.0
希釈油 30−40
分散剤 2−15.0

好適なホウ素を含まない油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる最終油を、試験の目的で製造した。次いで最終油をL60−1及びISOT標準試験で試験した。潤滑剤用添加剤パッケージが処方物中にホウ素源を含まなくてもL60−1及びISOT標準試験の両方に合格し得たことは予期できないものである。
【0048】

添加剤 分散剤 リン ホウ素 L60−1 ISOT
ppm ppm C/V スラッジ ビーカー 棒
パッケ−ジA あり 1425 158 9.25 9.59 2.5 1
パッケ−ジB あり 870 132
パッケ−ジC あり 680 0 8.0 9.0
パッケ−ジD あり 576 150 9.10 9.64 2.0 2.0
パッケ−ジE あり 525 195 9.10 9.54 2.5 2.5
パッケ−ジF あり 525 0 8.15 9.50
パッケ−ジG なし 525 0 3.40 8.68 7.0 9.0
パッケ−ジH なし 300 0 7.60 9.46 8.0 9.0
本発明 あり 300 0 9.44 9.52 1.5 2.0

L60−1試験は、合格には少くとも7.5カーボン/ワニス(varnish)(C/V)またはそれ以上の評価を必要とし、合格には少くとも9.4またはそれ以上のスラッジ評価を必要とする。このL−60−1評価はカーボン/ワニスのないことを示す10と最悪の評価を表わす0との間の評価系に基づく。
【0049】
これに対し、ISOT試験は、きれいなギヤー性能を示すには、ガラスビーカー上のワニスに対して及びガラス棒上のワニスに対して大きくても3.0を必要とする。このISOT評価はワニスの無いことを示すISOTの最良評価0と最悪のワニス評価を表わす9との間の評価系に基づく。この評価は、ISOT法において薄くないし軽く付着するラッカーとしても記述できる。リン及びホウ素を含む従来の処方物は両試験に合格することが特記できる。低リンの処方物だけは両試験に合格しない。低リン及び分散剤の双方を有する本発明の処方物だけはホウ素がなくても両試験に合格した。
【0050】
本発明の処方物は、乗り物の車軸ギヤー及び乗り物の変速機ギヤーの潤滑に特に効果的である。この乗り物は、乗用車、低荷重トラック、高荷重トラック、バス、リクリエーション車、海洋クラフト、などであってよい。
【0051】
以上、現在最も実際的な及び好適な具体例であると考えられるものと関連して本発明を記述してきたけれど、本発明は開示した具体例に限定されるものでなく、それとは逆に本発明の精神及び特許請求の範囲内に含まれる、引用により本明細書に包含された、種々の改変及び均等の事柄を網羅することが意図されていることを理解すべきである。
【0052】
本発明の好適な実施の態様は次のとおりである。
1. (a)約500ppm以下のリンを含み、実質的にホウ素を含んでいない分散剤、及び
(b)少くとも1つの防止剤、
を含んでなり、該防止剤と該分散剤の重量比が約1:17−約4:5である、油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ。
2. 該分散剤がコハク酸イミド、コハク酸アミド、コハク酸エステル、及びコハク酸
エステル−アミドを含む種々の種類の無灰分散剤の1つまたはそれ以上からなる群から選択される、上記1の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ。
3. 少くとも1つの該防止剤が腐食防止剤及び酸化防止剤からなる群から選択される、上記1の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ。
4. 少くとも1つの該防止剤がチアジアゾ−ル及びトリアゾ−ルからなる群から選択される、上記1の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ。
5. (a)基油、及び
(b)上記1の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ
を含んでなる潤滑油。
6. 該潤滑油がISOT試験及びL60−1試験からなる群から選択される少くとも1つの試験において満足できる成績を達成する、上記5の潤滑油。
7. 上記5の潤滑油で潤滑された機械。
8. 該機械が自動車のギヤー組立品及び自動車の変速機組立品からなる群から選択される、上記7の機械。
9. 上記1の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる乗り物。
10. 上記1の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑剤で該車軸組立品を少くとも部分的に満たす工程を含んでなる、車軸組立品を潤滑する方法。
11. 少くとも1つの駆動部分を上記1の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑剤と接触させる工程を含んでなる、少くとも1つの駆動部分の潤滑法。
12. (a)約500ppm以下のリンを含み、実質的にホウ素を含んでいない分散剤、及び
(b)少くとも1つの摩耗防止剤、
を含んでなり、該分散剤と該摩耗防止剤の重量比が約10:1−約2:1である、油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ。
13. 該分散剤がコハク酸イミド、コハク酸アミド、コハク酸エステル、及びコハク酸エステル−アミドを含む種々の種類の無灰分散剤の1つまたはそれ以上からなる群から選択される、上記12の該油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ。
14. 少くとも1つの摩耗防止剤がジヒドロカルビルポリスルフィド、硫化オレフィン、天然及び合成起源の硫化脂肪酸エステル、トリチオン、硫化チエニル誘導体、硫化テルペン、C2 −C8 モノオレフィンの硫化オリゴマ−、及び硫化ディ−ルス−アルダ−付加物からなる群から選択される、上記12の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ。
15. (a)基油、及び
(b)上記12の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ
を含んでなる潤滑油。
16. 該潤滑油がISOT試験及びL60−1試験からなる群から選択される少くとも1つの試験において満足できる成績を達成する、上記15の潤滑油。
17. 上記15の潤滑油で潤滑された機械。
18. 該機械が乗り物の車軸ギヤー及び乗り物の変速機ギヤーからなる群から選択される、上記17の機械。
19. 上記12の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる乗り物。
20. 上記12の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑剤で該車軸組立品を少くとも部分的に満たす工程を含んでなる、車軸組立品を潤滑する方法。
21. 少くとも1つの駆動部分を上記12の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑剤と接触させる工程を含んでなる、少くとも1つの駆動部分の潤滑法。
22. (a)約500ppm以下のリンを含み、実質的にホウ素を含んでいない分散剤、及び
(b)少くとも1つの消泡剤、
を含んでなり、該分散剤と該消泡剤の重量比が約30:1−約5:1である、油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ
23. 該分散剤がコハク酸イミド、コハク酸アミド、コハク酸エステル、及びコハク
酸エステル−アミドを含む種々の種類の無灰分散剤の1つまたはそれ以上からなる群から選択される、上記22の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ。
24. 少くとも1つの消泡剤がシロキサン含有ポリマ−からなる群から選択される、上記22の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ。
25. (a)基油、及び
(b)上記22の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ
を含んでなる潤滑油。
26. 該潤滑油がISOT試験及びL60−1試験からなる群から選択される少くとも1つの試験において満足できる成績を達成する、上記25の潤滑油。
27. 上記25の潤滑油で潤滑された機械。
28. 該機械が乗り物の車軸ギヤー及び乗り物の変速機ギヤーからなる群から選択される、上記27の機械。
29. 上記22の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる乗り物。
30. 上記22の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑剤で該車軸組立品を少くとも部分的に満たす工程を含んでなる、車軸組立品を潤滑する方法。
31. 少くとも1つの駆動部分を上記22の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑剤と接触させる工程を含んでなる、少くとも1つの駆動部分の潤滑法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)500ppm以下のリンを含み、実質的にホウ素を含んでいない分散剤、及び
(b)少くとも1つの防止剤、
を含んでなり、該防止剤と該分散剤の重量比が1:17−4:5である、油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ
【請求項2】
(a)基油、及び
(b)請求項1の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ
を含んでなる潤滑油。
【請求項3】
機械が自動車のギヤー組立品及び自動車の変速機組立品からなる群から選択される、請求項2の潤滑油で潤滑された機械。
【請求項4】
請求項1の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑剤で該車軸組立品を少くとも部分的に満たす工程を含んでなる、車軸組立品を潤滑する方法。
【請求項5】
少くとも1つの駆動部分を請求項1の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑剤と接触させる工程を含んでなる、少くとも1つの駆動部分の潤滑法。
【請求項6】
(a)500ppm以下のリンを含み、実質的にホウ素を含んでいない分散剤、及び
(b)少くとも1つの摩耗防止剤、
を含んでなり、該分散剤と該摩耗防止剤の重量比が10:1−2:1である、油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ。
【請求項7】
(a)基油、及び
(b)請求項6の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ
を含んでなる潤滑油。
【請求項8】
該潤滑油がISOT試験及びL60−1試験からなる群から選択される少くとも1つの試験において満足できる成績を達成する、請求項7の潤滑油。
【請求項9】
機械が乗り物の車軸ギヤー及び乗り物の変速機ギヤーからなる群から選択される、請求項7の潤滑油で潤滑された機械。
【請求項10】
請求項6の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑剤で該車軸組立品を少くとも部分的に満たす工程を含んでなる、車軸組立品を潤滑する方法。
【請求項11】
少くとも1つの駆動部分を請求項6の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑剤と接触させる工程を含んでなる、少くとも1つの駆動部分の潤滑法。
【請求項12】
(a)500ppm以下のリンを含み、実質的にホウ素を含んでいない分散剤、及び
(b)少くとも1つの消泡剤、
を含んでなり、該分散剤と該消泡剤の重量比が30:1−5:1である、油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ
【請求項13】
(a)基油、及び
(b)請求項12の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージ
を含んでなる潤滑油。
【請求項14】
機械が乗り物の車軸ギヤー及び乗り物の変速機ギヤーからなる群から選択される、請求項13の潤滑油で潤滑された機械。
【請求項15】
請求項12の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑剤で該車軸組立品を少くとも部分的に満たす工程を含んでなる、車軸組立品を潤滑する方法。
【請求項16】
少くとも1つの駆動部分を請求項12の油溶性潤滑剤用添加剤パッケージを含んでなる潤滑剤と接触させる工程を含んでなる、少くとも1つの駆動部分の潤滑法。

【公開番号】特開2012−46769(P2012−46769A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−270247(P2011−270247)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【分割の表示】特願2004−272174(P2004−272174)の分割
【原出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】