説明

ホウ素ベースの触媒

ホウ素ベースの触媒およびこれらの触媒の製造方法が提供される。本触媒は、アルキレンエポキシドを使用するアルコールのアルコキシル化に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本出願と同日に出願された同時係属出願番号[代理人整理番号CL4291]および同時係属出願番号[代理人整理番号CL4555]に関連している。
【0002】
本発明は、ホウ素ベースの触媒、およびそれらの製造方法を対象とする。本触媒は、アルキレンエポキシドを使用するアルコールのアルコキシル化に好適である。
【背景技術】
【0003】
アルコールアルコキシレート含有物質は、多種多様な工業的用途において、たとえば非イオン性界面活性剤として使用されてきた。それらは、1種以上の触媒の存在下にアルコールとエチレンオキシド(すなわちオキシラン)またはプロピレンオキシド(すなわち2−メチルオキシラン)などのアルキレンエポキシドとの反応によって典型的には製造される。フッ素化アルキル基を組み込んでいるアルコールとアルキレンエポキシドとの反応によって製造されるフッ素化アルキルアルコキシレートは、重要な部類の物質である。フッ素化アルキルアルコキシレートは、PVCフィルム、電気化学セル、および様々な写真コーティングの製造における非イオン性界面活性剤としての使用を含む、幾つかの工業的用途においてとりわけ有用である。
【0004】
フッ素化アルコールのアルコキシル化のための公知の触媒系および方法としては、金属水素化物、金属フッ化物、金属アルキルまたは金属アルコキシドと組み合わせて単独での、三フッ化ホウ素または四フッ化ケイ素などのルイス(Lewis)酸の使用が挙げられる。このような酸性物質はまた、アルキルアルコキシル化中にアルキレンエポシキシドの二量化などの副反応を触媒してジオキサンを形成する。このような理由により、多くの方法では、アルコールをアルコキシル化するために強塩基性触媒が使用される。しかし、アルコールの中には強塩基に対して安定ではないものもある。たとえば、強塩基の存在下に、あるハイドロフルオロカーボンは、HFを脱離し、フッ素化オレフィンが形成する傾向がある。ハロヒドリン、XCRCROHは、塩基の存在下にエポキシドを形成することがよく知られており、オレフィンをエポキシドに転化するこの目的のために合成的に用いられる。
【0005】
特許文献1においてHallingおよびHuangは、一般構造RCHCHOHを有するパーフルオロアルキルエタノールの市販混合物がヨウ素源とNaBH(可燃性のために安全性懸念を呈する高価な物質)などのアルカリ金属水素化ホウ素とを含む触媒系の存在下にアルコキシル化されるフルオロアルキルアルコキシレートの製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,608,116号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、化合物MB(OR(X)4−x[式中、Rは、2〜20個の炭素原子を有する、任意選択的に置換された、線状、分枝状、環状、非環式、もしくは芳香族ヒドロカルビル基であり;Xはフッ化物、臭化物、またはヨウ化物であり;Mは、アルカリ金属のカチオンNa、K、LiまたはタイプRもしく
はR(ここで、R、R、R、およびRは独立して、1〜20個の炭素原子を持つヒドロカルビル基である)のカチオンであり;xは1〜4である]を含む組成物である。
【0008】
本発明の別の態様は、好適な溶媒中でB(ORとMXとを化合させる工程を含む、化合物MB(OR(X)4−x(ここで、xは1〜3である)の製造方法であって、B(ORとMXとが約1:3〜約3:1のモル比で化合させられる方法である。
【0009】
本明細書において使用されるところでは、用語「ヒドロカルビル」は、単結合、二重結合、三重結合、もしくは芳香族炭素−炭素結合によっておよび/またはエーテル結合によって連結され、そしてしたがって水素原子で置換された、炭素原子の直鎖、分枝状もしくは環状配置を意味する。このようなヒドロカルビル基は、脂肪族および/または芳香族であってもよい。ヒドロカルビル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、ベンジル、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、キシリル、ビニル、アリル、ブテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、およびブチニルが挙げられる。
【0010】
「任意選択の」または「任意選択的に」は、その後に記載される事象または状況が起こっても起こらなくてもよいこと、およびその記載が前記事象または状況が起こる場合およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。たとえば、語句「任意選択的に置換された」は、部分が置換されていても置換されていなくてもよいこと、およびこの記載が置換されている部分および置換されていない部分の両方を含むことを意味する。
【0011】
基または部分が「置換されている」と本明細書にあるとき、この基または部分は、これらの基を含有する化合物がさらされるプロセス条件下に不活性である1つ以上の置換基(たとえば、不活性官能基、下を参照されたい)を含有することを意味する。置換基は、元の部分にペンダント結合することができるか、またはこの部分の1つ以上の原子と置き換わってもよい。置換基はまた、本明細書において記載される方法を実質的に有害に妨げない。「置換された」の意味には、窒素、酸素および/または硫黄などの、1つ以上のヘテロ原子を含有する鎖または環が含まれる。置換ヒドロカルビルにおいて、トリフルオロメチルにおけるように、水素のすべてが置換されてもよい。
【0012】
「不活性官能基」とは、この基を含有する化合物がさらされるプロセス条件下に不活性である、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル以外の基を意味する。これらの官能基はまた、それらが存在する化合物が関与する可能性がある、本明細書において記載されるあらゆる方法を実質的に妨げない。官能基の例としては、ハロ(フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨード)、ならびにエーテルが挙げられる。
【0013】
「アルキル」とは、単結合のみを含有する一価のヒドロカルビル基を意味する。
【0014】
「アルキレン」とは、単結合のみを含有する二価のヒドロカルビル基を意味する。
【0015】
「フッ素化」とは、炭素に直接結合している少なくとも1個の水素がフッ素で置換されていることを意味する。
【0016】
「フルオロアルキル」とは、部分的にまたは完全にフッ素化されているアルキル基を意味する。
【0017】
ホウ素ベースの触媒を使用する、エポキシ化によるアルキルアルコキシレート、とりわけフルオロアルキルアルコキシレートの製造方法が本明細書において記載される。この触媒は、多種多様なアルコールと共に使用することができる。
【0018】
一実施形態においては、本方法は、式ROHの1種以上のアルコールを式Q(O)の1種以上の1,2−アルキレンエポキシドと[式中、Qは、式C2y(ここで、yは2〜10の整数である)の線状アルキレン基であり、Rは、1〜30個の炭素原子を有する、任意選択的に置換された、線状、分枝状、環状、もしくは芳香族ヒドロカルビル基である]と約60℃〜約200℃の温度および環境大気圧〜約1035KPaの圧力で;
アルコール対触媒のモル比約200〜15で触媒の存在下に接触させて;
[ここで、触媒は、MB(OR(X)4−xまたはB(OR/MXであり、Mは、Na、K、Li、R、もしくはRであり、R、R、R、およびRは独立してヒドロカルビル基であり、xは1〜3である]
式RO(QO)H(ここで、mは1〜20である)のアルキルアルコキシレートを形成する工程を含む。
【0019】
は、1〜30個の炭素原子のアルキル基、またはフェニルなどの芳香族基であることができる。Rは、官能基がアルコキシル化反応を妨げないという条件で、エーテル、アミド、エステル、ハロゲン、硫黄、ニトリルなどの、しかしそれらに限定されない官能基で任意選択的に置換されることができる。それはまた、タイプC2y+1CHCH(ここで、yは2〜20の整数である)の部分フッ素化されたまたは線状のフルオロアルキル基であることができる。Rは、フルオロアルキル基の混合物などの、1つ以上のアルキル基の混合物であることができる。
【0020】
一実施形態においては、式ROHのアルコールの混合物を本方法で1,2−アルキレンエポキシドと接触させたテロマー混合物であることができる、アルキルアルコキシレートの相当する混合物を製造することができる。式Q(O)の1,2−アルキレンエポキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、およびスチレンオキシド、またはそれらの混合物であることができ、典型的にはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドであることができる。
【0021】
本明細書において開示される方法に好適な触媒としては、MB(OR(X)4−xまたはB(OR/MXが挙げられる。B(OR/MXとは、B(ORとMXとの混合物である二成分触媒を意味する。二成分は、本方法に別々に、任意の順に、または同時に加えることができる。Rは上に定義された通りである。式MB(OR(X)4−xにおいて、xは1〜3であることができるが、典型的には3である。B(OR/MX触媒は、触媒種として機能する、式MB(ORXの組成物をその場で形成すると考えられる。Rは上に定義された通りである。
【0022】
Mは、アルカリ金属のカチオンNa、K、LiまたはタイプRもしくはR(ここで、R、R、R、およびRは独立して、1〜20個の炭素原子のヒドロカルビル基である)のカチオンである。典型的には、R、R、R、およびRは独立して、ブチルなどの、1〜4個の炭素のアルキル基であり、同じまたは異なるものであることができる。一実施形態においては、MはRである。
【0023】
Xは、フッ化物、臭化物、またはヨウ化物であるが、典型的にはIである。
【0024】
触媒は、商業的に入手することができるかまたは本明細書において以下に開示される方法などの、当該技術分野において公知の任意の方法によって製造することができる。
【0025】
一実施形態においては、本方法は、アルコールを触媒の存在下にアルキレンオキシドと接触させる工程を含む。アルコールおよび触媒は、同時にまたは任意の順にアルキレンオキシドに加えることができる。典型的には触媒は、反応のための溶媒としてもまた機能する、ニートのアルコールに加えられるか、ニートのアルコール中で生み出されるかのどちらかである。1種以上の共溶媒が、この溶媒がすべての試薬および生成物に対して実質的に不活性であるという条件で、さらに使用されてもよい。触媒およびアルコール反応混合物は次に、所望の転化率が達成されるまで高められた温度でアルキレンオキシドで処理される。
【0026】
触媒は、約0.1モル%〜約11モル%、典型的には約0.5%〜約8%、より典型的には約1モル%から約6モル%のアルコールに対する量で使用される。アルキレンオキシドは、触媒およびアルコールの添加後に液体または蒸気として触媒/アルコール溶液に典型的には供給される。反応混合物に加えられるアルキレンオキシドの量は、最終生成物において所望の数のアルキルオキシ単位を提供するために必要な最小量を提供すること以外は決定的に重要であるわけではない。
【0027】
使用されるアルキレンオキシドの量は可変であり、アルコキシル化アルコール製品において望まれる物理的特性によって決定される。したがって、ある場合には、出発アルコール当たりのアルコキシ基の平均数は、比較的低い、たとえば、2〜6である必要があるが、その他の場合については、8〜30以上などの著しくより高い数が必要とされる可能性がある。
【0028】
本方法は、多くのアルキレンオキシドの可燃性による安全上の理由で、窒素または別の不活性ガスなどの、不活性雰囲気下に典型的には行われる。水は通常アルコキシル化され、それによって汚染物質を生成するであろうから、本方法を無水条件下に行うことが典型的である。水はまた、ある触媒を阻害するかまたは毒する可能性がある。
【0029】
反応温度は可変であり、約60℃〜約180℃の範囲であることができ、好ましくは約80℃〜140℃である。所望の温度は、許容することができる反応時間によって主として決定され、より低い温度はより長い反応時間をもたらし、より高い温度はより短い反応時間をもたらす。
【0030】
反応は、反応中に生み出される圧力、典型的には約0〜約200psig、または約0〜約100psigで行われる。
【0031】
撹拌は必要とされないが、通常は均一な混合を促すためにおよび伝熱を促すために行われる。
【0032】
本明細書において開示される方法によって製造されるアルキルアルコキシレートは、任意の所望の数のアルキルオキシ単位を有することができ、所望の最終用途向けの特性の調整を可能にする。アルキルオキシ単位は、典型的にはアルキルアルコキシレート組成物の約10重量%〜約90重量%、より典型的には約20%〜約70%で存在するであろう。
【0033】
一実施形態においては、本方法は、テロマーとしても知られる、テロマー混合物を形成する。テロマーは、式:A(C)B(式中、mは一般に1〜20の範囲にある)で表される低重合度のポリマーの混合物が形成されるようにタキソーゲン(C)がテローゲン(AB)に加えられるときに形成される。本明細書において使用されるところでは、テロマー混合物は、その重合度mが互いに異なる複数のテロマーと定義される。このように、ある実施形態では本明細書において記載される方法は、異なる値のmを有する、式RO(QO)Hのアルキルアルコキシレートのテロマー混合物を製造することができる。本明細書において開示される方法は、1〜20、より典型的には2〜8の平均重合度のテロマーの製造に特に好適である。
【0034】
本方法は、製造されたアルキルアルコキシレートの1つ以上の回収または単離を任意選択的にさらに含むことができる。これは、蒸留、デカンテーション、再結晶、または抽出などの、当該技術分野において公知の任意の方法によって行うことができる。
【0035】
また、MB(OR(X)4−x
[式中、
は、2〜20個の炭素原子を有する、任意選択的に置換された、線状、分枝状、環状、非環式、もしくは芳香族ヒドロカルビル基であり;
Xはフッ化物、臭化物、またはヨウ化物であり;
Mは、アルカリ金属のカチオンNa、K、LiまたはタイプRもしくはR(ここで、R、R、R、およびRは独立して、1〜20個の炭素原子のヒドロカルビル基である)のカチオンであり;xは1〜4である]
を含む化合物が提供される。
【0036】
これらの化合物は、特にアルコキシル化反応において、触媒として使用することができる。
【0037】
は、1〜30個の炭素原子のアルキル基、またはフェニルなどの芳香族基であることができる。それは、官能基がアルコキシル化反応を妨げないという条件で、エーテル、アミド、エステル、ハロゲン、硫黄、ニトリルなどの、しかしそれらに限定されない官能基で任意選択的に置換されることができる。それはまた、部分フッ素化されているかまたは、とりわけxが4であるときに、タイプC2y+1CHCH(ここで、y=2〜20である)の線状のフルオロアルキル基であることができる。Rは、フルオロアルキル基の混合物などの、基の混合物であることができる。xが4であるとき、Rは、部分的にまたは完全にフッ素化された、フッ素化アルキルであることができる。
【0038】
式MB(OR(X)4−xにおいてxは1〜3であることができるが、典型的には3である。
【0039】
Mは、アルカリ金属のカチオンNa、K、LiまたはタイプRもしくはR(ここで、R、R、R、およびRは独立して、1〜20個の炭素原子のヒドロカルビル基である)のカチオンである。典型的には、R、R、R、およびRは独立して、ブチルなどの、1〜4個の炭素のアルキル基であり、同じまたは異なるものであることができる。一実施形態においては、MはRである。
【0040】
Xはフッ化物、臭化物、またはヨウ化物であるが、典型的にはヨウ化物である。
【0041】
xが4であるとき、テトラアルコキシボレートB(OR)は様々な方法によって製造することができる。たとえば、B(OH)から出発する2段階プロセスがEuropean Journal of Inorganic Chemistry 2006、1690ページにMalkowskyによって記載されている。これらの化合物はまた、たとえば、B(OMe)またはその他のテトラアルコキシドを使用するアルコール交換によって製造することができる。さらに、NaBOまたはその他のアニオン性ボレートは、水除去とともにアルコールと反応して、示されるように、テトラアルコキシドをもたらすことができる:
NaBO+4ROH→NaB(OR)+2H
【0042】
化合物MB(OR)(X)4−x(ここで、xは1〜3である)は、中性のホウ酸エステルB(OR)とMとの化合によって製造することができる。B(OR)を第1段階で形成することができ、これに、第2段階におけるMXの付加が続く。あるいは、MB(OR)(X)4−xは、アルコールROH中でMXとB(OH)かBかのどちらかとの化合およびその後任意選択的に水を除去することによって単段階で生み出すことができる。
【0043】
B(OR)は、水の脱離とともにB(OH)またはBとHORとの反応によって製造することができる。あるいは、それらは、HClの形成とともにBClなどのホウ素ハロゲン化物とアルコールとから製造することができる。生み出されるHClは、塩基で除去される。B(OR)化合物は、独立して製造するまたはアルコキシル化が行われる同じ反応器で生み出すことができる。水除去は任意選択であるが、水のアルコキシル化による、ポリ(アルキレングリコール)の形成を回避するために典型的には行われる。アルコールアルコキシレート製品中のポリ(アルキレングリコール)の存在が許容されない場合、水は、アルコキシル化反応を行う前に除去されるべきである。
【実施例】
【0044】
次の省略形を用いた:「L」はリットルを意味し、「mol」はモルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「%」はパーセントを意味し、「ca」は約を意味し、「g」はグラムを意味し、「h」は時間を意味し、「EO」はエチレンオキシドを意味する。
【0045】
すべてのB(OR)化合物は、B(OH)またはBなどのオキシホウ素化学種を適切なアルコールと反応させる、Cotton,F.A.;Wilkinson,G.「Advanced Inorganic Chemistry,Fifth Edition」,Wiley−Interscience:New York,1988,168ページおよび171ページ.Malkowskyら、Eur.J.Inorg.Chem.2006、1690に記載されているものなどの以前に公表された方法によって製造した。反応は、溶媒、典型的には還流トルエン中で迅速に進行した。水は、エステルB(OR)へのオキシホウ素物質の完全な転化を確実にするために標準方法によって連続的に除去した。これらの化合物は、多核NMR(1H、13C、19F)、質量分析、および元素分析によって特性評価した。以下は代表的な反応である。
【0046】
実施例1
B(OCHCH13
(1.60g細粉砕粉末、46.0ミリモル)および52.8g(145ミリモル、3.15当量)のHOCHCH13を75mLのトルエン中で組み合わせた。混合物を窒素下に還流させ、Dean Starkトラップを、水を除去するために使用した。水の発生は約1時間後に完了すると思われ;完全な反応を確実にするために還流をもう2時間続行した。集められた水は、合計で1.2mL、理論の100%になった。生成物を濾過し、次にエバポレーター(rotovap)でストリッピングして生成物を無色液体として生じさせた。収量:50.36g、100%。
【0047】
NMRは、この生成物が94%のB(ORおよび6%のHORを含有することを示した。H NMR(d8−THF):4.15(t,6.3Hz,6H),2.47(tt,19.0Hz,6.2Hz,6H)。
【0048】
+B(OR)のNMR特性評価
2mLのジエチルエーテル中のB(OCHCHCFCH(0.189g、0.19ミリモル)の溶液に、2mLのエーテル中のBuNF一水和物(0.062g、0.22ミリモル)のスラリーを加えた。2、3分の撹拌後に、結晶性BuNFは溶解して無色の溶液をもたらした。一晩撹拌した後、エーテルを真空下にストリップした。生じたオイルをCDClに再溶解させ、19F NMRによって分析し、それは、フロオロ−ホウ素化学種に特徴的な、そしてアニオンB(OCHCHCFCHに帰属される1:1:1:1カルテット(−144.9ppm,JB−F=17.3Hz)を示した。
【0049】
これは、溶液中でのB(OR)とXとの化合でのB(OR)の形成を実証する。
【0050】
実施例2
NaB(OR)の合成
これらの化合物は、NaB(OCHと適切なアルコールとの反応によって製造した。メタノールがこの反応から遊離し、真空下にまたは窒素パージ下に反応混合物を加熱することによって除去される。化合物は、元素分分析およびH NMRによって特性評価した。以下は代表的なものである。
【0051】
NaB(OCH(1.00g、6.3ミリモル)およびHOCHCHOCFCFHOCFCFCF(9.35g、28.5ミリモル)を組み合わせ、70℃に加熱して淡黄色液体を得た。3時間後に混合物を室温に冷却し、発生したメタノールを減圧下に除去した。生成物を次に2時間真空下に100℃で加熱した。生成物をエーテルで数回洗浄し、乾燥させた。
【0052】
H NMR(CDOD):HOCHCHOCFCFHOCFCFCFによる共鳴に加えて少量の残存HOCH(3モル%)が検出された。
【0053】
元素分析:C2820BF40NaO12についての計算値:C,25.06%;H,1.50%;F,56.62%.実測値:C,24.80%;H,1.63%;F,56.58%.
【0054】
比較例1
NaHでのC13CHCHOHの処理
バイアルに、0.259g(0.71ミリモル)のC13CHCHOH、4mg(0.17ミリモル)のNaH、および撹拌棒を装入した。ガス発生が直ちに起こった。混合物を、撹拌しながら、100℃に加熱した。最初は無色の溶液は暗黄褐色になった。75分後に混合物を室温に冷却した。GCMS分析は、未反応アルコールに加えて、このアルコール(質量=364)からのHF(質量=20)の損失に相当する質量344の新しいピークを示した。H NMR分析(CDCl)は、その他の少ないオレフィン生成物に加えてC11CF=CHCHOHに帰属できるオレフィン共鳴を示した。この比較例は、水素化ナトリウムでアルコールを処理してアルコキシドエトキシル化触媒を生み出す方法が、フッ化物を脱離し、オレフィンを形成する傾向があるフッ素化アルコールについては失敗することを示す。
【0055】
比較例2
KOHでのC13CHCHOHの処理
バイアルに、0.251g(0.69ミリモル)のC13CHCHOH、12mg(0.21ミリモル)のKOH、および撹拌棒を装入した。混合物を、撹拌しながら、100℃に加熱した。最初は無色の混合物は暗黄褐色になった。75分後に混合物を室温に冷却した。GCMS分析は、未反応アルコールに加えて、このアルコール(質量=364)からのHF(質量=20)の損失に相当する質量344の新しいピークを示した。H NMR分析(CDCl)は、その他の少ないオレフィン生成物に加えてC11CF=CHCHOHに帰属できるオレフィン共鳴を示した。
【0056】
この比較例は、水酸化カリウムでアルコールを処理してアルコキシドエトキシル化触媒を生み出す方法が、フッ化物を脱離し、オレフィンを形成する傾向があるフッ素化アルコールについては失敗することを示す。
【0057】
実施例3〜34
エトキシル化反応−一般的な手順
エトキシル化は、ステンレススチール反応器で行った。ある場合にはガラスライナーを使用した。反応器に、アルコール、磁気撹拌棒、触媒成分(MB(OR)またはB(OR)およびMX)を装入し、密封し、次にガス多岐管に接続した。触媒が形態B(OR/MXのものであるとき、両成分を一緒に加えた。反応器を排気し、次に、4〜10のEO/アルコールの比で、あらかじめ測定した量のEOを、0〜5℃での反応器中へ凝縮させた。EO移動が完了したとき、システムを約1psigの窒素で充填し戻し、供給バルブを閉めた。反応器をブロックヒーター中に入れ、反応温度に至らせ、磁気撹拌した。反応の進行は、圧力を監視することによって追跡した。より高い触媒濃度(約6モル%)では、ガス吸収は普通は3〜6時間以内に完了した。より低い触媒濃度ではより長い時間を要し、典型的には、完全なエチレンオキシド消費を確実にするために一晩進行させた。
【0058】
分析およびワークアップのために反応器を氷で0〜3℃に冷却した。もし存在すれば、未反応EOを真空によって除去し、−196℃トラップに集めた。エトキシレート生成物をGCおよび様々なその他の技法(HPLC、MS、NMR)によって分析した。
【0059】
エトキシル化結果を添付の表にまとめる。「EO#」は、挿入されたエチレンオキシド単位の平均数、たとえば、式RO(CHCHO)Hにおけるnの平均数である。所与のエトキシル化反応についてのnの値は一般に、アルコール転化率およびエチレンオキシド対アルコールの比によって決定される。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
実施例34
触媒単離なしでのC13CHCHOHエトキシル化
反応器に、C13CHCHOH(12モル当量)および酸化ホウ素(B、ホウ素の2モル当量に相当する、1モル当量)を装入した。混合物を、撹拌および窒素の流れでスパージしながら80℃に加熱した。窒素流れを氷冷トラップに放出、そこで水が集まることを観察した。3時間後に酸化ホウ素は溶解し、水収集が止んで、透明の無色溶液を得た。アリコートのカール・フィッシャー滴定分析は100ppmの含水率を示した。アリコートを溶液から取り出し、H NMR(CDCl)によって分析し、それは、エステルへのBの定量的な転化を裏付ける、C13CHCHOH対B(OCHCH13の3:1モルの混合物を示した。
【0064】
生じた溶液に、0.6モル当量のNaIおよび追加の24モル当量のC13CHCHOHを加えた。117モル当量のエチレンオキシドを加え(EO対C13CHCHOH比=9.8)、反応物を120℃で加熱した。迅速な圧力低下が観察された。EO消費が完了したとき反応器を冷却し、生成物をGCによって分析したところ、約9の平均エトキシレート数のエトキシレートと0.7%の未反応C13CHCHOHとの混合物を示した。
【0065】
実施例35
触媒単離なしでのC13CHCHOHエトキシル化
反応器に、酸化ホウ素(B、1モル当量)、ヨウ化ナトリウム(1モル当量)、およびC13CHCHOH(17モル当量)を装入した。混合物を、撹拌および窒素でスパージしながら80℃で加熱した。30分後にカール・フィッシャー滴定分析は3000ppmの含水率を示した。加熱および窒素スパージングをもう60分間続行すると滴定は、含水率が12ppmに低下したことを示した。
【0066】
生じた混合物に7.2モル当量のエチレンオキシドを加えた。反応器を120℃に加熱し、EO消費が完了するまで当該温度に保持した。反応器を冷却し、生成物をGCによって分析したところ、約6の平均エトキシレート数のエトキシレートと2%の未反応C13CHCHOHとの混合物を示した。
【0067】
比較例3
ハロゲン化物:C4VDFアルコールの不存在下でのB(ORf)でのエトキシル化
反応器に、0.888gのB(OCHCHCFCH(80%に基づき0.895ミリモル)および5.7g(17.5ミリモル)のHOCHCHCFCHを装入した。エチレンオキシド(5mL、0.10モル)を次に加え、反応器を125℃に加熱した。17時間加熱後に圧力低下は全く認められなかった。冷却および未反応エチレンオキシドの除去後に、GC分析は、97%の未反応アルコールが残り、1モルのエトキシレートへのアルコールの転化率が3%だけであったことを示した。
【0068】
比較例4
ハロゲン化物:C6アルコールの不存在下でのB(ORf)でのエトキシル化
反応器に、HOCHCH13中のB(OCHCH13(4.1モル%)の溶液を装入した。エチレンオキシド(25モル当量)を加え、反応器を125℃に18時間加熱した。室温に冷却し、未反応エチレンオキシドを除去した後、溶液をガスクロマトグラフィーによって分析し、それは未反応アルコールのみおよび全く検出できない量のエトキシレート生成物を示した。
【0069】
反応器に、HOCHCH13中のB(OCHCH13(9.5モル%)の溶液を装入した。エチレンオキシド(25モル当量)を加え、反応器を125℃に18時間加熱した。室温に冷却し、未反応エチレンオキシドを除去した後、溶液をガスクロマトグラフィーによって分析したところ、95%超の未反応アルコールおよび微
量のエトキシレート生成物を示した。
【0070】
比較例5
ナトリウムn−オクチラートでのn−オクタノールエトキシル化
n−オクタノール(1.31g、0.010モル)および11mgのNaH(0.46ミリモル、4.6モル%)を、撹拌しながら室温で混合した。ガス発生が直ちに起こり、5分以内に完了してオクタノール中のナトリウムの溶液を得た。この溶液を、5mL(4.4g、0.10モル)のエチレンオキシドと一緒に上記のエトキシル化反応器に装入した。反応器を100℃に加熱した。反応は、反応器圧力を監視することによって判断されるように、2時間以内に完了した。室温に冷却した後、5.20g(91%)の生成物を単離した。GC分析は、6の平均EO数、1.07の多分散性のエトキシレートと、7.8%の未反応アルコールとの混合物を示した。
【0071】
実施例36
B(O−n−C17およびBuNIでのn−オクタノールエトキシル化
上記のエトキシル化反応器に、n−オクタノール(1.30g、0.010モル)、BuNI(0.148g、0.40ミリモル、4モル%)、およびB(O−n−C17(0.159g、0.40ミリモル、4モル%)を装入した。エチレンオキシド(5.0mL、0.10モル)を加え、反応器を100℃に加熱した。ガス吸収が直ちに認められた。反応を一晩進行させたところ、エチレンオキシド転化は、圧力を監視することによって判断されるように、完了した。室温に冷却した後5.47g(91%)の生成物を単離した。GC分析は、5.5の平均EO数、1.04の多分散性のエトキシレートと、0.1%の未反応アルコールとの混合物を示した。
【0072】
この実施例および比較例5は、アルカリ金属アルコキシドに由来するエトキシル化触媒が、本発明の触媒がもたらすよりも広い分布のおよび著しく多い量の未反応アルコールのエトキシレート生成物をもたらすことを実証する。
【0073】
実施例37
低い触媒使用量(0.6重量%)でのC13CHCHOHのエトキシル化
NaI(0.016g、0.11ミリモル、0.6モル%)を、0.16gのC13CHCHO(CHCHO)OH(平均n=4)と0.49gのC13CHCHOHとの混合物に溶解させた。この溶液を、B(OCHCH13(0.133g、0.6モル%)および6.50gのC13CHCHOH(19ミリモルの全アルコール量)と一緒に上記のようなエトキシル化反応器に装入した。反応器に次に0.08モルのエチレンオキシド(EO:アルコール=4)を装入し、115℃に14時間、125℃に8時間、次に135℃に14時間加熱したところ、圧力は0psigに低下し、EO吸収は完了であると判断された。反応器を冷却し、9.8gの無色エトキシレートが単離生成物であった。GC分析は、5.5重量%の未反応アルコール、4の平均EO数、および多分散性1.03を示した。
【0074】
実施例38
2−クロロエタノールのエトキシル化
反応器に、2−クロロエタノール(0.805g、0.01モル)、BuNI(0.148g、0.4ミリモル)、およびB(OCHCHCl)(0.0997g、0.4ミリモル)を装入した。エチレンオキシド(5mL、0.1モル)を加え、反応器を次に100℃に加熱し、圧力は125psigに上昇した。一晩撹拌した後、圧力は0psigに低下し、完全なエチレンオキシド消費を示唆した。反応器を冷却し、5.19gのエトキシレート生成物を集めた。生成物組成をLCMSによって確認し、それは、nが1〜30の範囲で、約n=11にピークのあるオリゴマーCl(CHCHO)OHの混合物を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物MB(OR(X)4−x[式中、Rは、2〜20個の炭素原子を有する、任意選択的に置換される、直鎖、分枝状、環状、非環式、もしくは芳香族ヒドロカルビル基であり;Xはフルオリド、ブロミド、またはヨージドであり;Mは、アルカリ金属のカチオンNa、K、LiまたはタイプRもしくはR(ここで、R、R、R、およびRは独立して、1〜20個の炭素原子のヒドロカルビル基である)のカチオンであり;xは1〜4である]を含む組成物。
【請求項2】
xが1〜3である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
xが3である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Xがヨージドである請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
、R、R、およびRがそれぞれ、1〜4個の炭素のアルキル基である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
MがRであり、R、R、R、およびRがそれぞれ、1〜4個の炭素原子のアルキル基である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
xが4であり、Rがフッ素化アルキル基である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
xが4であり、Rが、タイプC2y+1CHCH(式中、yは2〜20の整数である)の直鎖フルオロアルキル基である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
適した溶媒中、B(ORとMXとを化合させる工程を含む請求項2に記載の組成物の製造方法であって、B(ORとMXとを約1:3〜約3:1のモル比で化合させる、上記製造方法。
【請求項10】
a)適した溶媒中、BまたはB(OH)を式ROHの化合物と化合させて反応混合物を形成させる工程と;
b)任意選択的に、反応混合物から水を除去する工程と;
c)反応混合物に、式MXの化合物を約1:3〜3:1のBまたはB(OH)/MXモル比で加える工程と
を含む請求項2に記載の組成物の製造方法。

【公表番号】特表2012−525256(P2012−525256A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508771(P2012−508771)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/033151
【国際公開番号】WO2010/127234
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】