説明

ホウ素中性子捕捉療法用の医療装置

【課題】
線形加速器を利用し、治療部位に応じて中性子を多方向から治療部位に照射可能なBNCT装置を提供する。
【解決手段】
線形加速器3を用いて陽子エネルギを、Be(p,xn)反応によって単位陽子電流当りに発生する中性子発生率が、Li(p,n)反応によって単位陽子電流当りに発生する中性子発生率より大きく、かつ、核破砕反応によって単位陽子電流当りに発生する中性子発生率よりも小さくなる範囲のエネルギに陽子を加速する。加速された陽子を複数の四重極電磁石14および偏向電磁石15A、15B、15Cからなる回転ガントリ5Aに入射し、回転ガントリ5Aの先端に設置した中性子発生用のベリリウムのターゲット7に衝突させる。ターゲット7で発生した高速中性子を、脱着可能な中性子照射部9を用いてホウ素中性子捕捉療法に必要な熱中性子または熱外中性子に調整し、治療部位に多方向から照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子加速器を用いて発生させた中性子を適切な中性子エネルギに減速し、その減速した中性子を患者の治療部位に照射するホウ素中性子捕捉療法用の治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)は、原子炉から発生する中性子を用いて行われている。BNCTは、加速器で発生されたX線、荷電粒子線等を治療部位に照射して腫瘍細胞を破壊する放射線療法と異なり、予め患者に投与されて腫瘍内部に局在するホウ素(10B)と、外部から照射された中性子との核反応(10B(n,α)Li)によって発生するα線とリチウム原子核(Li)とを腫瘍細胞の破壊に利用する放射線治療と薬剤デリバリーシステムを融合した癌治療法である。
【0003】
α線とリチウム(Li)原子核の飛程は、細胞1個分程度であることから、正常細胞を傷つけることなく腫瘍細胞を破壊することができる。しかし、原子炉自体が高価であり、また、原子炉利用にはさまざまな規制が伴うことから、治療を実施する医師に多大な負担を強いる。そこで、病院に設置が可能な加速器を用いた安価で簡易なホウ素中性子捕捉療法用の加速器システムが望まれていた。ホウ素中性子捕捉療法用の加速器による中性子発生方法としては、2.5MeV程度以下の加速エネルギの陽子によるLi(p,n)Be反応を利用したもの、4MeVの加速エネルギの陽子によるBe(p,n)反応を利用したもの、30MeV以上の加速エネルギの陽子によるタングステンやタンタル等の核破砕反応を利用したものが検討されている。
【非特許文献1】「JRR−4医療照射設備」資料、2005年7月、日本原子力研究所発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、Li(p,n)Be反応においては、中性子発生用のターゲットであるLiの融点が179℃と低いために、加速陽子による熱負荷に耐えることが困難であること、および、必要加速電流が10mA以上と非常に高いことから、加速器を利用したホウ素中性子捕捉療法用の装置としての実現性が低い。
Be(p,n)反応においては、Beの融点が1278℃と高いために、加速陽子による熱負荷には耐えられると考えられるが、所要の中性子束のレベルを得るためには陽子の必要電流が10mA以上と非常に高いことから加速器を利用したホウ素中性子捕捉療法用の装置としての実現性が低い。
【0005】
また、タングステンやタンタル等の核破砕反応を用いた、陽子の加速エネルギが30MeV以上のホウ素中性子捕捉療法用の装置においては、高エネルギの中性子が発生してしまい、患者の治療部位に中性子を照射するための中性子照射部には、発生した中性子の減速または遮蔽に大量の中性子減速材および中性子遮蔽材が必要である。また、加速エネルギが高く加速器も高価となり、さらに、照射部が大型で重量のあるものになってしまうことから、装置全体が大きく高価なものとなってしまう。
また、照射部で所定の中性子エネルギスペクトルに調整して、患者の治療部位に中性子を照射しやすいように、照射部を回転ガントリに取付ける場合も、前記核破砕反応を利用した装置の回転ガントリが大型で高価なものとなってしまう。
【0006】
本発明は、斯かる問題を解決することを課題とし、ホウ素中性子捕捉療法に必要な所定の中性子エネルギスペクトルの中性子束を確保でき、かつ、治療部位に応じて中性子を多方向から治療部位に照射可能な、加速器を利用したホウ素中性子捕捉療法用の医療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明は、陽子を加速する線形加速器により加速された陽子を偏向させて回動自在に患者の治療部位方向に導くための、複数の偏向電磁石を含んで構成された回転ガントリと、回転ガントリの先端に設けられた加速された陽子が照射されるターゲットと、回転ガントリに取り付けられ、ターゲットの周囲を囲む様に構成されて、ターゲットで発生する高速中性子を減速し、かつ、所定の中性子エネルギスペクトルに調整して中性子を照射する中性子照射部と、を備え、線形加速器は、Be(p,xn)反応による単位陽子電流当りの中性子発生率が、Li(p,n)反応による単位陽子電流当りの中性子発生率より大きく、かつ、核破砕反応による単位陽子電流当りの中性子発生率よりも小さくなる範囲のエネルギになるように陽子を加速することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ホウ素中性子捕捉療法に必要な所定の中性子エネルギスペクトルの中性子束を確保でき、かつ、治療部位に応じて中性子を多方向から治療部位に照射可能な、加速器を利用したホウ素中性子捕捉療法用の装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(BNCT装置の全体構成)
以下、本発明の実施の形態に係るホウ素中性子捕捉療法用の装置について図1から図6を参照しながら説明する。以下、ホウ素中性子捕捉療法用の装置を、BNCT装置と略称する。
図1に示すように本実施の形態のBNCT装置1Aは、陽子を所定のエネルギに加速する線形加速器3と、加速された陽子のビームを導くビーム管16を含み、陽子のビームを偏向させて患者2の治療部位の照射方向へ導く回転ガントリ5Aと、この回転ガントリ5Aに取り付けられたビーム管16の終端に設置されたターゲット7と、このターゲット7を囲むように設けられ、ターゲット7で発生する高速中性子を減速し、かつ所定の中性子エネルギスペクトルに調整して、中性子を患者2の治療部に照射する中性子照射部9と、患者2を載せるベッド6と、を含んで構成されている。
【0010】
(線形加速器)
線形加速器3は、イオン源11、高周波四重極線形加速器(以下、RFQ(Radio Frequency Quadrupole)加速器と称する)12、ドリフトチューブ型線形加速器(以下、DTL(Drift Tube Linac)と称する)13、四重極電磁石14、ビーム管16等を含んで構成されている。
イオン源11で生成された陽子イオンは、RFQ加速器12で加速され、さらに一台または加速エネルギによっては複数台のDTL13で7〜18MeVまで加速される。加速された陽子ビームは、真空に維持されたビーム管16の外周にビーム方向に一台または複数台配置された四重極電磁石14でビーム径を調整された後、ビーム管16を含む回転ガントリ5Aを経て中性子照射部9に内蔵されたターゲット7まで導かれる。
【0011】
(回転ガントリ)
回転ガントリ5Aは、屈曲したビーム管16と、線形加速器3の終端に設けられた四重極電磁石14でビーム径を調整された陽子ビームを90°上方に曲げる偏向電磁石15A、その上方に曲げられた陽子ビームを水平方向に90°曲げる偏向電磁石15B、その水平方向に曲げられた陽子ビームを下方向に90°曲げる偏向電磁石15Cと、各偏向電磁石15A、15B、15Cを通過後にビーム径を調整する四重極電磁石14と、偏向電磁石15Cの手前に設けられた回転シール部17と、中性子照射部9を保持する中性子照射部保持板(保持手段)19と、前記各構成の荷重を受ける図示しない支持装置を含んで構成されている。
偏向電磁石15A、15B、15Cは、所定曲率で90°曲げられた図示しないビーム管16をそれぞれの対向する電磁石極の間に挟むように配置されており、偏向電磁石15A、15B、15Cの発生させる磁場により陽子ビームの方向を90°ずつ曲げる。
回転シール部17は、ビーム管16の直管部分の末端同士を、ビーム管16内の真空を維持しながら回転軸X1の周方向に回動可能に結合する密封接続構造物である。回転ガントリ5Aは、回転シール部17から先のビーム管16、偏向電磁石15C、四重極電磁石14、ターゲット7、中性子照射部9を一体に回転軸X1周りに回動可能に、図示しない支持装置で支持し、回転シール部17に回転シール部17から先の前記構成物の荷重が掛からないようにしている。このように回転シール部17を備える回転ガントリ5Aによる回転軸X1周りの中性子照射部9の回動を可能とすることにより、図1のA矢視である図2に示すように、中性子照射部9を患者2の体軸の周方向の上半分の任意の方向に向けることを可能としている。
【0012】
なお、図2に示すように回転ガントリ5Aによる中性子照射部9の回転軸X1周りの角度設定に応じて、ベッド6は図示しないベッド支持装置により中性子照射部9の照射方向と対応する位置に移動設定可能としている。
【0013】
(熱中性子照射部)
次に、図3および図4を参照しながら、本実施の形態におけるBNCT装置1Aの熱中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法用の中性子照射部9について説明する。以下では、熱中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法用の中性子照射部9を熱中性子照射部9Aと称する。ここで、熱中性子は、エネルギが0.5eV以下の中性子である。
図3の(a)は、後記する突起型中性子コリメータ31A付の熱中性子照射部9Aの縦断面図であり、(b)はターゲット7に照射される加速された陽子ビーム10の方向を前面側とすると、熱中性子照射部9Aの前面側(照射面側)を示す平面図である。熱中性子照射部9Aは、図3の(a)に示すように、回転ガントリ5Aに支持されたビーム管16の末端近くの、例えば、溶接で固定された中性子照射部保持板19に固定ピン19aで着脱可能に固定されている。
【0014】
前記ビーム管16の末端には、中性子発生用のターゲット7が着脱可能に取り付けられている。ターゲット7は、ビーム管16の末端を密封できる密封シール構造を有しており、また、ターゲット7の発熱を除去する冷却用のヒートシンク18と密着している。
中性子発生用のターゲット7としてベリリウムを用い、ターゲット冷却用のヒートシンク18として銅を用いる。このターゲット7とヒートシンク18の両者は、熱間等方加圧法(Hot Isostatic Pressing法:HIP法)等で接合されている。ベリリウムおよび銅のHIP接合による耐熱温度は、700℃以上である。例えば、11MeVのエネルギの陽子ビーム3mAを半径3cmの中性子発生用のターゲット7に入射した場合の熱負荷は、1.2kW/cmであるが、電子ビームを用いた1.2kW/cmの熱負荷模擬試験において、接合部分の温度が500℃以下という結果が得られており、中性子発生用のターゲット7の熱負荷による健全性は確かめられている。
【0015】
ターゲット7のビーム方向、つまり、前面側には、円柱形の熱中性子照射部9Aが、前記中性子照射部保持板19に支持されて、ターゲット7を囲むように取り付けられる。
熱中性子照射部9Aは、ターゲット7に照射される加速された陽子ビーム10の方向を前面側とし、陽子ビーム10の軸を中心軸とした径方向に多重および前記中心軸方向に多層の円柱形状の構造である。具体的には、ターゲット7の前面側に円柱形の熱中性子化用減速材21を配置し、さらに、この熱中性子化用減速材21の前面側に円板状の中性子透過γ線遮蔽材(第1の中性子透過γ線遮蔽材)25Aを配置し、さらに、ターゲット7と熱中性子化用減速材21と中性子透過γ線遮蔽材25Aとを囲むように前面側が開口した有底の円筒形状の中性子反射材23を配置し、さらに、この中性子反射材23の径方向外側に中性子吸収材28を配置し、さらに、少なくとも前記中性子透過γ線遮蔽材25Aと有底の円筒形状の中性子反射材23の前面側に中性子透過γ線遮蔽材(第2の中性子透過γ線遮蔽材)25B、突起型中性子コリメータ(中性子コリメータ)31Aの順に配置したものである。
なお、高速中性子は、陽子ビーム10方向と同一方向にターゲット7から発生するので、熱中性子化用減速材21はターゲット7の前面側にだけ配置すれば良い。
【0016】
熱中性子化用減速材21としては、高速中性子および熱外中性子を熱中性子に減速する性能が高く、かつ、熱中性子の吸収が少ない重水を用いる。ここで、熱外中性子は0.5eV以上、10keV未満の中性子であり、高速中性子は10keV以上の中性子を指す。
中性子透過γ線遮蔽材25A、25Bは、ターゲット7における核反応時に生じるγ線、中性子減速過程で生じるγ線等、治療に有害なγ線を抑制し、熱中性子を治療部位に照射できるように透過させる。中性子透過γ線遮蔽材25Aとしては、中性子透過能力が高く、かつ、γ線遮蔽性能が高いフッ化鉛(PbF)等を用い、中性子透過γ線遮蔽材25Bには、中性子透過能力が高く、かつ、γ線遮蔽性能が高いビスマス(Bi)等を用いる。フッ化鉛とビスマスを比較するとビスマスの方が、中性子透過能力が高く、かつ、γ線遮蔽性能が高い材料であるが、ビスマスは非常に高価な材料であることから、価格と必要性能に応じてフッ化鉛とビスマスを使い分ける。
【0017】
突起型中性子コリメータ31Aは、中性子透過γ線遮蔽材25Bを通過した熱中性子を、治療部位の大きさおよび形状に合わせてコリメートし、コリメータ開口部(開口部)31aを通して治療部位に照射する。突起型中性子コリメータ31Aとしては、中性子遮蔽性能が高く、かつ、中性子照射によるγ線発生が低い、フッ化リチウム(LiF)等を用いる。突起型中性子コリメータ31Aは、固定ピン31bにより熱中性子照射部9A本体に着脱自在に固定される。
なお、熱中性子照射部9A本体は、図3に示す前記熱中性子照射部9Aから突起型中性子コリメータ31Aを除いた残り部分である。
【0018】
熱中性子化用減速材21および中性子透過γ線遮蔽材25Aの前面側を除く周囲には、コリメータ開口部31aでの熱中性子束のレベルを増加させるために、中性子反射材23を設置する。中性子反射材23としては、熱中性子の反射性能が高く、かつ、安価な炭素を用いる。価格と必要性能によっては、ベリリウム(Be)を中性子反射材23として用いても良い。中性子反射材23の径方向周囲には、中性子吸収材28を設置し、中性子によって周囲に与える不要な線量をできるだけ低くする。中性子吸収材28としては、高速中性子および熱外中性子を減速し熱中性子化する性能が高いポリエチレンに、熱中性子を吸収する性能が高いホウ素を、例えば、重量割合で10%混合した、ホウ素入りポリエチレン等を用いる。
【0019】
次に、図4を参照しながら、熱中性子照射部9Aの他の例を示す。図4の(a)は、後記する平面型中性子コリメータ31B付の熱中性子照射部9Aの縦断面図であり、(b)はその熱中性子照射部9Aの照射面を示す平面図である。
図3に示す熱中性子照射部9Aとほぼ同じであるが、突起型中性子コリメータ31Aの代わりに平面型中性子コリメータ(中性子コリメータ)31Bを組み合わせている点が異なる。図3に示す突起型中性子コリメータ31A付の中性子照射部9Aと同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
平面型中性子コリメータ31Bは、突起型中性子コリメータ31Aと比較して、コリメータ開口部31aにおける熱中性子束のレベルは高いが、平面型であるため患者2の頭頸部等の腫瘍のように肩等を避ける必要がある場合は使用できない。しかし、頭部や胸部等に対しては使用可能であり、突起型中性子コリメータ31Aを使用する場合と比較して、単位加速陽子電流値あたりの治療位置での熱中性子束のレベルを高くできるため、突起型中性子コリメータ31Aを使用する場合と比較して治療時間を短くできる。突起型および平面型中性子コリメータ31A、31Bは、それぞれ取り外し可能な構造となっており、軽量であることから、治療部位に応じて容易に付け替えることができる。
【0020】
(熱外中性子照射部)
次に、図5および図6を参照しながら、本実施の形態におけるBNCT装置1Aの熱外中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法用の中性子照射部9について説明する。以下では、熱外中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法用の中性子照射部9を熱外中性子照射部9Bと称する。熱中性子照射部9Aと同じ構成については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図5の(a)は、前記の突起型中性子コリメータ31A付の熱外中性子照射部9Bの縦断面図であり、(b)は熱外中性子照射部9Bの照射面を示す平面図である。熱外中性子照射部9Bも、図5の(a)に示すように、中性子照射部保持板19に固定ピン19aで着脱可能に固定されている。
【0021】
ターゲット7のビーム方向前面側には、円柱形の熱外中性子照射部9Bが、前記中性子照射部保持板19に支持されて、ターゲット7を囲むように取り付けられる。
熱外中性子照射部9Bは、ターゲット7に照射される加速された陽子ビーム10の方向を前面側とし、陽子ビーム10の軸を中心軸とした径方向に多重および前記中心軸方向に多層の円柱形状の構造である。具体的には、ターゲット7の前面側に円柱形にさらに前面側に円錐台を重ねた形状の熱外中性子化用減速材22を配置し、さらに、ターゲット7と熱外中性子化用減速材22の円柱形部分とを囲むように前面側が開口した有底の円筒形状の中性子反射材(第1の中性子反射材)23を配置し、さらに、この中性子反射材23の前面側に前記熱外中性子化用減速材22の円錐台部分を囲むように環状の熱外中性子用中性子反射材(第2の中性子反射材)24を配置し、さらに、この中性子反射材23および前記熱外中性子用中性子反射材24の径方向外側に中性子吸収材28を配置し、さらに、少なくとも、前記熱外中性子化用減速材22と前記熱外中性子用中性子反射材24の前面側に熱中性子吸収材26を配置し、さらに、この熱中性子吸収材26の前面側の中央に中性子透過γ線遮蔽材25Bを、その径方向周囲にγ線遮蔽材27を配置し、さらに、前記中性子透過γ線遮蔽材25Bとγ線遮蔽材27の前面側に突起型中性子コリメータ31Aを配置したものである。
【0022】
熱外中性子化用減速材22としては、高速中性子から熱外中性子へ減速する割合が比較的高く、熱外中性子から熱中性子へ減速する割合が比較的低い、アルミニウム、フッ化アルミニウム、アルミニウムとフッ化アルミニウムの混合材等を用いる。アルミニウム、フッ化アルミニウム、アルミニウムとフッ化アルミニウムの混合材との間で、治療位置での熱外中性子束のレベルの計算結果がほとんど変わらなかったことから、価格および加工のし易さを考慮に入れた場合、アルミニウムが適している。
熱外中性子用中性子反射材24は、熱外中性子化用減速材22の円錐台部分の周囲に配置され、コリメータ開口部31aでの熱外中性子束のレベルをできるだけ高めるようにしている。熱外中性子用中性子反射材24としては、熱外中性子反射性能が高い材料である、ニッケル等を使用する。
【0023】
熱中性子吸収材26としては、熱中性子吸収性能の高いカドミウム等を用いる。ただし、カドミウムは、熱中性子を吸収するときに治療に有害なγ線を発生するので、熱中性子束のレベルとγ線束のレベルを治療に必要なレベルまで抑えるように厚さを調整する必要がある。
中性子透過γ線遮蔽材25Bは、熱中性子吸収材26を通過した熱外中性子を透過させ、治療に有害なγ線束を低減する。
治療部位の大きさおよび形状に合わせてコリメートする突起型中性子コリメータ31Aの後面側には、突起型コリメータ31Aを通過してくるγ線束を少なく押さえるために、γ線遮蔽材27を設置する。γ線遮蔽材27としては、γ線遮蔽性能が高く、かつ、安価である鉛等を用いる。
【0024】
次に、図6を参照しながら、熱外中性子照射部9Bの他の例を示す。図6の(a)は、平面型中性子コリメータ31B付の熱外中性子照射部9Bの縦断面図であり、(b)はその熱外中性子照射部9Bの照射面を示す平面図である。
図5に示す熱中性子照射部9Bとほぼ同じであるが、突起型中性子コリメータ31Aの代わりに平面型中性子コリメータ(中性子コリメータ)31Bを組み合わせている点が異なる。図5に示す突起型中性子コリメータ31A付の中性子照射部9Bと同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
平面型中性子コリメータ31Bは、突起型中性子コリメータ31Aと比較して、コリメータ開口部31aにおける熱外中性子束のレベルは高いが、平面型であるため患者2の頭頸部等の腫瘍のように肩等を避ける必要がある場合は使用できない。しかし、頭部や胸部等に対しては使用可能であり、突起型中性子コリメータ31Aを使用する場合と比較して、単位加速陽子電流値あたりの治療位置での熱外中性子束のレベルを高くできるため、突起型中性子コリメータ31Aを使用する場合と比較して治療時間を短くできる。突起型および平面型中性子コリメータ31A、31Bは、それぞれ取り外し可能な構造となっており、軽量であることから、治療部位に応じて容易に付け替えることができる。
【0025】
(作 用)
次に、図7から図10を参照(適宜、図1を参照)しながら、本実施の形態のBNCT装置1Aの作用を説明する。
イオン源11で生成された陽子イオンをRFQ加速器12で加速し、さらにDTL13で、Be(p,xn)反応による単位陽子電流当りの中性子発生率が、図7に示すように、Li(p,n)反応による単位陽子電流当りの中性子発生率より大きく、かつ、核破砕反応による単位陽子電流当りの中性子発生率よりも小さくなる範囲のエネルギ、例えば、7〜18MeVまで加速する。加速された陽子ビームは、四重極電磁石14でビーム径を調整された後、回転ガントリ5Aの部分でビーム方向を曲げられて中性子照射部9の内部に設置したターゲット7に衝突させられる(図1参照)。
ターゲット7で発生した高速中性子は、中性子照射部9によって、所定の中性子エネルギスペクトルの中性子に整えられた後、患者2に照射される。
【0026】
また、回転ガントリ5Aに支持されたビーム管16の先端近傍に設けられた中性子照射部保持板19により中性子照射部9が保持されているので、回転ガントリ5Aの回転軸X1周りの回動に合わせて患者2の体軸周囲を中性子照射部9が回動可能となり、多方向から熱中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法用の中性子(または熱外中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法用の中性子)を患者2に照射することができる。
【0027】
中性子照射部9によって所定の中性子エネルギスペクトルに整えられた中性子が、ベッド6の上に位置する患者2に突起型中性子コリメータ31Aまたは平面型中性子コリメータ31Bのコリメータ開口部31aを通して照射される。患者2に予め投与され、腫瘍内部に局在するホウ素(10B)と、外部から照射した中性子との核反応(10B(n,α)Li)によって発生するα線とリチウム原子核(Li)によって腫瘍細胞を破壊できる。
【0028】
図7に、Be(p,xn)反応、Li(p,xn)反応、核破砕反応の中性子発生率を、それぞれ実線、破線、一点鎖線で示す。単位陽子電流当りの中性子発生率は、陽子ビームの加速エネルギが7〜18MeVのエネルギ範囲R2においては、ベリリウムと陽子が核反応することによって中性子が発生する反応であるBe(p,xn)反応による中性子発生率が他の2つの核反応より大きいことから、中性子発生用のターゲット7としてベリリウムが適していることが分かる。また、ベリリウムの融点は1278℃と高いために、加速陽子による熱負荷に耐えることができる。
陽子とベリリウムの核反応は、陽子のエネルギが7〜18MeVのエネルギ範囲R2では、Be(p,xn)反応、つまり、陽子1個の衝突により複数の高速中性子を発生する。この発生高速中性子の個数は、図7の実線で示すように陽子のエネルギが高いほど多くなる。
しかし、陽子のエネルギが7MeV以下のエネルギ範囲R1では、Li(p,xn)反応の中性子発生率の方が高いが、前記従来技術で述べたように融点が低いのでターゲットに用いるのに適していない。
【0029】
また、18MeV以上のエネルギ範囲R3の核破砕反応を利用しようとすると、中性子発生率は良くなるが、次の2つの問題がある。(1)18MeV以上のエネルギまで陽子を加速するためには、線形加速器3がより大型になり、価格が高くなる。(2)加速された陽子の方向を回転ガントリ5A部分で照射方向に曲げるためには、より強力な磁場を発生させたり、より長い距離を使用したりして曲げる必要が生じるため、回転ガントリ5Aが大きくなる。(3)核破砕反応で生じる高速中性子のエネルギがより高くなるので、それを減速するための減速材の体積、中性子反射材の体積が増加し中性子照射部9の大きさが増加し、熱中性子照射部9Aおよび熱外中性子照射部9Bの重量も増加する。
前記理由により18MeV以上のエネルギ範囲R3の核破砕反応を利用するBNCT装置は、病院に設置するのに適しない。
【0030】
(効 果)
本実施の形態のBNCT装置1Aによれば、陽子ビームの加速エネルギが7〜18MeVと低いことから回転ガントリ5Aを回転半径1m程度に小型にできる。また、発生する高速中性子のエネルギが核破砕反応により発生する高速中性子のエネルギより低いので、中性子照射部9を半径60cm程度、高さ60cm程度の小型円柱形状にできる。したがって、中性子照射部9と回転ガントリ5Aの部分を小型軽量にできる。このように回転ガントリ5Aが小型軽量にできることから、患者2の治療部位に体軸周方向の多方向からの中性子照射が可能となり治療部位の適用範囲が拡大する。
特に、熱中性子照射部9Aおよび熱外中性子照射部9Bの前記構成材料の組合せおよび配置構造にすることで、Be(p,xn)反応によって発生する中性子を効率良く熱中性子化または熱外中性子化でき、熱中性子照射部9Aおよび熱外中性子照射部9Bを小型にすることができる。
【0031】
突起型中性子コリメータ31Aは、頭頸部等の腫瘍の治療時に、肩などを避けて中性子を照射することができるとともに、治療部以外の正常部への不要な線量を低減できる。また、熱中性子照射部9Aの中性子透過γ線遮蔽材25A、25Bは、ターゲット7で発生した高速中性子が伴うγ線束を低減できる。熱外中性子照射部9Bの中性子透過γ線遮蔽材25Bは、ターゲット7で発生した高速中性子が伴う治療に有害なγ線束を低減でき、γ線遮蔽材27は熱中性子を熱中性子吸収材26で吸収したときに発生する治療に有害なγ線束を低減できる。
【0032】
図8に、11MeVの加速エネルギの陽子とベリリウムのターゲット7との核反応によって発生した高速中性子を、熱中性子照射部9Aを用いて中性子エネルギスペクトルを調整し、熱中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法用の中性子に整えた結果を示す。横軸が径方向位置、縦軸が中性子束のレベルを示す。
照射部分を制限するためのコリメータ開口部31aで、熱中性子束のレベルが熱外中性子束の50倍以上となっており、良好な熱中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法用の中性子束が形成されていることがわかる。このとき、治療に必要な線形加速器の電流値は1.68mAであり、製作可能な電流値となっている。
【0033】
図9に、11MeVの加速エネルギの陽子とベリリウムのターゲット7との核反応によって発生した高速中性子を、熱外中性子照射部9Bを用いて中性子エネルギスペクトルを調整し、熱外中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法用の中性子に整えた結果を示す。照射部分を制限するためのコリメータ開口部31aで、熱外中性子束のレベルが熱中性子束の50倍以上となっており、良好な熱外中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法用の中性子束が形成されていることがわかる。このとき、治療に必要な線形加速器の電流値は2.85mAであり、製作可能な電流値となっている。
【0034】
図10に参考用に、BNCT装置1Aにおける熱中性子照射モード(熱中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法)、および熱外中性子照射モード(熱外中性子を用いたホウ素中性子捕捉療法)の熱中性子束、熱外中性子束、高速中性子混在割合、γ線混在割合に対する必要条件を示す。
図8および図9と、図10とを比較して分かるように、必要電流値が3mA以下(2.85mA)で、前記ホウ素中性子捕捉療法用の所定の中性子エネルギスペクトルの中性子束が形成できることから、製作可能な線形加速器3でBNCT装置1Aを提供することができる。
【0035】
(変形例)
次に、図11を参照しながら本実施の形態のBNCT装置1Aの変形例を説明する。本変形例では、回転ガントリ5Bにおける回転軸X2の位置が図11に示すように線形加速器3の終端部の四重極電磁石14のすぐ前方に回転シール部17が設けられている。実施の形態と同じ構成については同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
この位置に回転シール部17を持ってくることにより、ベッド6を図2のように回動させて位置設定するが必要なく、体軸回りの多方向から所定の中性子を照射することが出来る。
また、図示しないが回転シール部17と同様の回転シール部を偏向電磁石15Aと偏向電磁石15Bの間に設けて、回転ガントリ5Bを縦方向の回転軸周りに回動可能としても良い。そのような構造にすることにより、前記縦方向の回転軸の周りに放射状に複数のベッド6を用意し、複数の患者2を1台のBNCT装置で、照射時間をずらして治療することが可能となる。
【0036】
さらに、本実施の形態およびその変形例では回転ガントリ5Aまたは回転ガントリ5Bに支持されたビーム管16の末端近くに、中性子照射部保持板19が溶接固定されるものとしたが、それに限定されない。中性子照射部9の荷重がビーム管16に掛からないように、回転ガントリ5Aまたは回転ガントリ5Bの図示しない支持装置が、直接、中性子照射部保持板19を、回転軸X1または回転軸X2回りに回動可能に支持する構成でも良い。
【0037】
なお、本実施の形態およびその変形例においては、線形加速器3をホウ素中性子捕捉療法専用に用いる構成としたが、それに限定されるものではない。
線形加速器3の終端部の四重極電磁石14の前方に、図示しないY字形に分岐するY字ビーム管と、このY字ビーム管の一方の分岐管が回転ガントリ5A(または、回転ガントリ5B)のビーム管16に連なり、他方の分岐管が図示しない放射性核種製造用ターゲット装置へのビーム管に連なっている構成でも良い。そして、前記Y字ビーム管には偏向電磁石が設けられており、偏向電磁石に通電時には、陽子ビームは回転ガントリ5A(または、回転ガントリ5B)側に偏向され、偏向電磁石に無通電時には陽子ビームは放射性核種製造用ターゲット装置へ直進する。
【0038】
放射性核種製造用ターゲット装置には、11B、13C、 15Nまたは 18O等を含むターゲットを設置して陽子ビームで照射することで、11B(p,n)11C、13C(p,n)13N、15N(p,n)15Oまたは18O(p,n)18F反応を利用し、核医学に利用される11C、13N、15Oまたは18F等の放射性物質または放射性物質を含む化合物を製造する。
このような構成とすることにより、陽子ビームの方向を中性子照射部9の方向および放射性核種製造用ターゲット装置の方向に振り分けることができ、線形加速器3を有効に利用することができる。例えば、一日に必要な量の18Fをはじめとする核医学用放射性核種は、数分程度の加速器運転時間で製造することができるため、ホウ素中性子捕捉療法の合間にでも、充分な量の放射性核種を製造することが可能である。
ホウ素中性子捕捉療法においては、パラボロノフェニールアラニン(BPA)を18Fで標識した物質が通常使用されており、1台の線形加速器3をホウ素中性子捕捉療法にも核医学用放射性核種製造にも利用でき、線形加速器3の稼働率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施の形態のホウ素中性子捕捉療法用の医療装置の全体模式図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】(a)は突起型中性子コリメータ付の熱中性子照射部の縦断面図であり、(b)はその正面図である。
【図4】(a)は平面型中性子コリメータ付の熱中性子照射部の縦断面図であり、(b)はその正面図である。
【図5】(a)は突起型中性子コリメータ付の熱外中性子照射部の縦断面図であり、(b)はその正面図である。
【図6】(a)は平面型中性子コリメータ付の熱外中性子照射部の縦断面図であり、(b)はその正面図である。
【図7】各中性子発生反応の中性子発生率を示すグラフである。
【図8】熱中性子照射部を用いた中性子束の検討結果を示すグラフである。
【図9】熱外中性子照射部を用いた中性子束の検討結果を示すグラフである。
【図10】ホウ素中性子捕捉療法の熱中性子照射モード、熱外中性子照射モードの照射される中性子の必要条件のデータ表を示す図である。
【図11】実施の形態のホウ素中性子捕捉療法用の医療装置の変形例の全体模式図である。
【符号の説明】
【0040】
1A、1B ホウ素中性子捕捉療法用の医療装置
2 患者
3 線形加速器
5A、5B 回転ガントリ
6 ベッド
7 ターゲット
9 中性子照射部
9A 熱中性子照射部
9B 熱外中性子照射部
10 陽子ビーム
11 イオン源
12 高周波四重極線形加速器
13 ドリフトチューブ型加速器
14 四重極電磁石
15A、15B、15C 偏向電磁石
16 ビーム管
17 回転シール部
18 ヒートシンク
19 中性子照射部保持板(保持手段)
19a 固定ピン
21 熱中性子化用減速材
22 熱外中性子化用減速材
23 中性子反射材(第1の中性子反射材)
24 熱外中性子用中性子反射材(第2の中性子反射材)
25A 中性子透過γ線遮蔽材(第1の中性子透過γ線遮蔽材)
25B 中性子透過γ線遮蔽材(第2の中性子透過γ線遮蔽材)
26 熱中性子吸収材
27 γ線遮蔽材
28 中性子吸収材
31A 突起型中性子コリメータ(中性子コリメータ)
31B 平面型中性子コリメータ(中性子コリメータ)
31a コリメータ開口部
31b 固定ピン
X1、X2 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽子を加速する線形加速器と、
該線形加速器により加速された陽子を偏向させて回動自在に患者の治療部位方向に導くための、複数の偏向電磁石を含んで構成された回転ガントリと、
該回転ガントリの先端に設けられた前記加速された陽子が照射されるターゲットと、
前記回転ガントリに取り付けられ、前記ターゲットの周囲を囲む様に構成されて、該ターゲットで発生する高速中性子を減速し、かつ、所定の中性子エネルギスペクトルに調整して中性子を照射する中性子照射部と、を備え、
前記線形加速器は、Be(p,xn)反応による単位陽子電流当りの中性子発生率が、Li(p,n)反応による単位陽子電流当りの中性子発生率より大きく、かつ、核破砕反応による単位陽子電流当りの中性子発生率よりも小さくなる範囲のエネルギになるように陽子を加速することを特徴とするホウ素中性子捕捉療法用の医療装置。
【請求項2】
前記線形加速器は、陽子を7〜18MeVのエネルギ範囲で加速できることを特徴とする請求項1に記載のホウ素中性子捕捉療法用の医療装置。
【請求項3】
前記中性子照射部は、前記ターゲットで発生した高速中性子を減速する熱中性子化用減速材、中性子反射材、中性子吸収材、中性子透過γ線遮蔽材および中性子コリメータによって構成され、前記中性子コリメータの開口部を通して患者の治療部位に前記所定の中性子エネルギスペクトルの中性子を照射することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホウ素中性子捕捉療法用の医療装置。
【請求項4】
前記中性子照射部は、前記ターゲットで発生した高速中性子を減速する熱外中性子化用減速材、中性子反射材、中性子吸収材、中性子透過γ線遮蔽材および中性子コリメータによって構成され、前記中性子コリメータの開口部を通して患者の治療部位に前記所定の中性子エネルギスペクトルの中性子を照射することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホウ素中性子捕捉療法用の医療装置。
【請求項5】
前記中性子照射部は、前記回転ガントリに設けられた保持手段により着脱可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のホウ素中性子捕捉療法用の医療装置。
【請求項6】
前記中性子コリメータは、前記中性子照射部の照射側の面に交換、着脱可能であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のホウ素中性子捕捉療法用の医療装置。
【請求項7】
前記所定の中性子エネルギスペクトルの中性子は、熱中性子であり、
前記中性子透過γ線遮蔽材は、第1の中性子透過γ線遮蔽材と第2の中性子透過γ線遮蔽材とを含み、
前記照射部は、前記ターゲットに照射される加速された陽子のビームの方向を前記所定の中性子エネルギスペクトルの中性子を照射する前面側とし、前記陽子のビームの軸を中心軸とした径方向に多重および前記中心軸方向に多層の構造であり、
前記ターゲットの前面側に円柱形の熱中性子化用減速材を配置し、
さらに、該熱中性子化用減速材の前面側に円板状の第1の中性子透過γ線遮蔽材を配置し、
さらに、前記ターゲットと前記熱中性子化用減速材と第1の中性子透過γ線遮蔽材とを囲むように前面側が開口した有底の円筒形状の中性子反射材を配置し、
さらに、該有底の円筒形状の中性子反射材の径方向外側に中性子吸収材を配置し、
さらに、少なくとも前記第1の中性子透過γ線遮蔽材と有底の円筒形状の中性子反射材の前面側に第2の中性子透過γ線遮蔽材、前記中性子コリメータの順に配置したことを特徴とする請求項3に記載のホウ素中性子捕捉療法用の医療装置。
【請求項8】
前記所定の中性子エネルギスペクトルの中性子とは、熱外中性子であり、
前記中性子反射材は、第1の中性子反射材と第2の中性子反射材を含み、
前記照射部は、前記ターゲットに照射される加速された陽子のビームの方向を前記所定の中性子エネルギスペクトルの中性子を照射する前面側とし、前記陽子のビームの軸を中心軸とした径方向に多重および前記中心軸方向に多層の構造であり、
前記ターゲットの前面側に、円柱形にさらに前面側に円錐台を重ねた形状の熱外中性子化用減速材を配置し、
さらに、前記ターゲットと前記熱外中性子化用減速材の円柱形部分とを囲むように前面側が開口した有底の円筒形状の第1の中性子反射材を配置し、
さらに、該有底の有底の円筒形状の第1の中性子反射材の前面側に前記熱外中性子化用減速材の円錐台部分を囲むように環状の第2の中性子反射材を配置し、
さらに、前記有底の円筒形状の第1の中性子反射材および前記環状の第2の中性子反射材の径方向外側に中性子吸収材を配置し、
さらに、少なくとも前記円錐台形状の熱外中性子化用減速材と前記第2の中性子反射材の前面側に熱中性子吸収材を配置し、
さらに、前記熱中性子吸収材の前面の中央に中性子透過γ線遮蔽材を、その周囲にγ線遮蔽材を配置し、
さらに、前記中性子透過γ線遮蔽材とγ線遮蔽材の前面側に前記中性子コリメータを配置したことを特徴とする請求項4に記載のホウ素中性子捕捉療法用の医療装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−22920(P2008−22920A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196110(P2006−196110)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】