説明

ホウ素含有化合物とクロルヘキシジンとの混合物を含有する電着浴

電着浴での微生物の成長を制御するために、(i)少なくとも1種のホウ素含有化合物と(ii)クロルヘキシジンとの混合物を含んでなる電着浴が開示される。低濃度で(i)および(ii)を組み合わせることによって、より高い濃度で(i)または(ii)のいずれかよりも良好な微生物制御がもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された電着方法に関する。より詳しくは、本発明は、少なくとも1種のホウ素含有化合物とクロルヘキシジンとの混合物を含んでなる改善された電着浴に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング方法としての電着は、コーティング産業でますます重要になっている。世界的に、製造される全自動車の80%超は、カチオン電着によって下塗りが行われている。
【0003】
電気泳動以外のコーティング手段と比較すると、電着によって、ペンキ利用の増加、腐食保護の改善および環境汚染が比較的低いという利点がもたらされる。(1)電着可能なコーティング組成物は有機溶剤をごく少量のみしか含有しないため、そして(2)クローズドループリンスのような下流工程によって、コーティング塗布の間、周囲環境へのコーティング成分の損失を最小にすることができるため、電着によって一般的に環境的な利点がもたらされる。
【0004】
電着方法は周知であり、水性エレクトロコーティング組成物の浴に電気伝導基材(すなわちワークピース)を浸すことを伴う。カチオン性エレクトロコーティング組成物の場合、ワークピースは陰極として用いられる。ワークピース上にコーティングを電着した後、エレクトロコーティングされた基材を水性リンス用組成物でリンスする。
【0005】
典型的なリンス操作には、クローズドループスプレーおよび/または浸漬塗布を含み得る複数の段階がある。そのようなリンス方法は、エレクトロコーティング方法では周知であるが、明確にするために、クローズドループスプレー方法では、脱イオン水または逆浸透水を使用して表面をスプレー洗浄することによって、基材から過剰なエレクトロコーティング材料を除去する。浸漬塗布では、基材を脱イオン水または逆浸透水のタンクに浸すことによって、基材から過剰なエレクトロコーティング材料を除去する。リンス組成物は再循環可能であり、また再利用可能である。典型的なエレクトロコーティング操作では、イオン汚染物質を除去するために電着浴を限外濾過器でろ過し、そして限外濾過液をリンス操作で使用する。
【0006】
コーティングまたはリンス組成物を再循環させることは、経済的および環境的に望ましい。しかしながら、水性コーティングまたはリンス組成物の再循環は、藻類、菌類および細菌などの微生物の成長を促す環境を生じ得る。微生物は、電着させたコーティングの品質および外観に悪影響を与え得る。さらに、エレクトロコーティングまたはリンス組成物中に微生物が存在することによって、タンクでの沈殿物の形成、そしてプロセスパラメータ、例えば、pH、伝導率、フィルムビルド(film build)、スローパワー(throwpower)(すなわち、陽極の位置に対する膜沈着の速度)および安定性の変化が引き起こされ得る。また微粒子の「汚れ(dirt)」の沈着や生物付着が起こり得、それによって塗布されたコーティングの外観に悪影響を及ぼし、システム効率が低下する。
【0007】
初期の電着方法では、リンス段階で使用される「限外濾過液」には典型的に、溶媒、重金属および上述の微生物の成長抑制を助ける他の有機材料が含まれていた。しかしながら、揮発性有機化合物(VOC)、有害な空気汚染物質(HAPs)、ならびに鉛およびクロムなどの重金属などの環境的に望ましくない成分を減少させると、細菌の大発生が起こる。
【0008】
重金属を含まず、有機溶剤含有量が低い電着浴中での細菌成長を制御するためのいくつかの化合物は既知である。例えば、銀イオン、ならびに過酸化水素および次亜塩素酸カルシウムなどの酸化防止剤が利用されている。しかしながら、銀イオンは高価であり、また電着浴に汚れを形成することがある。酸化剤は、電着可能な組成物の有機成分を酸化させることがある。
【0009】
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの混合物を含有する殺微生物剤組成物は、この殺微生物剤を含まないコーティング組成物よりも粗い外観を引き起こすことがある。さらに、そのような殺微生物剤組成物は、金属塩、例えば、硝酸マグネシウムおよび塩化マグネシウムを含有し得るため、陰極での気体発生によるコーティング欠陥を引き起こすことがある。殺微生物剤の使用は不便であることもあり、またそれらは時間とともに効果を失うことがある。さらに、いくつかの殺微生物剤では特別な取り扱いと処分を必要とする。
【0010】
ハロニトロアルカンは、塗布されたコーティングの外観に悪影響を及ぼし得、金属部品の腐食に関与し得る。
【0011】
米国特許第4,732,905号明細書には、水系での微生物成長を制御するために使用される組成物が開示されている。米国特許第6,017,431号明細書には、電着浴でのスルファミン酸の使用が開示されている。米国特許第3,937,679号明細書、同第3,959,106号明細書、同第3,975,346号明細書および同第4,001,101号明細書には、第四級アンモニウム基および三元スルホニウム(ternary sulfonium)基などのオニウム塩基を有するイオン基含有フィルム形成樹脂の可溶化剤としてのホウ酸の使用が開示されている。米国特許第4,443,569号明細書には、第三級アミノ基と、第一級および/または第二級水酸基と、金属化合物とを含有する窒素塩基含有バインダーに基づく陰極電着可能な組成物が開示されている。米国特許出願公開第2003/0033248号明細書には、ホウ酸を含有する改善された電着浴が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記を考慮して、優れたコーティング塗布条件、コーティングの外観および機能特性を維持しながら、重金属を含まず、VOCが低いか、または含まない、生物分解に抵抗する電着浴に関する必要性が存在する。有機酸で中和される電着浴でしばしば使用される毒性の殺微生物剤を取り扱う必要性を排除することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、微生物耐性に関して改善された電着浴を提供する。この改善は、クロルヘキシジン、ならびにホウ酸、ホウ酸等価物およびそれらの混合物から選択される有効量のホウ素含有化合物を、前記成分がない場合の微生物の成長と比較して電着浴で微生物の成長を遅らせるのに十分な量で電着浴中に含むことから構成される。電着浴は、水性担体とフィルム形成バインダーとの水分散系を含んでなる。フィルム形成バインダーは、エポキシアミン付加物およびブロック化イソシアネートを含んでなる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
操作例以外、または他に記載される場合、本明細書に明示される数値範囲限界または数値パラメータは近似値である。発明の説明および/または請求の範囲で使用される範囲限界は、「約」という用語によって修正されるように解釈されるべきである。明示された範囲限界の上下のわずかな相違が、必ずしも本発明の操作の意図された範囲から外れるということではない。本明細書に提供される範囲は連続的であり、そしてその値が具体的に、または特別に排除されない限り、明示された範囲限界内の全部または一部の値のいずれも組み入れるものとして理解される。そのため、その値が本明細書に個々に、そして具体的に記載されるものとして、指定された範囲内のいずれの値も信頼される。
【0015】
電着浴にクロルヘキシジンとホウ素含有化合物との混合物を加えることによって、より高い濃度でいずれかの化合物を個々に使用する場合よりも優れた微生物保護の水準を提供することが見出された。そのような結果は予想外であり、そしてさらに意外なことに、本明細書に記載の電着浴での微生物成長を低下させるために有効な量でのホウ素含有化合物およびクロルヘキシジンの使用は、浴のpHおよび伝導率などの重要なプロセスパラメーターに損失を与えずに達成可能である。
【0016】
適切なホウ素含有化合物としては、ホウ酸、ホウ酸等価物およびそれらの混合物から選択されるものが挙げられる。本明細書および請求の範囲で使用される場合、「ホウ酸等価物」とは、水性媒体で加水分解してホウ酸を形成することができる多数のホウ素含有化合物のいずれも意味する。ホウ酸等価物の具体的かつ非限定的な例としては、酸化ホウ素、例えばB23、ホウ酸とアルコールまたはフェノールとの反応によって得られるものなどのホウ酸エステル、例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリ−n−プロピル、ホウ酸トリ−n−ブチル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリ−t−アミル、ホウ酸トリ−2−シクロヘキシルシクロヘキシル、ホウ酸トリエタノールアミン、ホウ酸トリイソプロピルアミンおよびホウ酸トリイソプロパノールアミンが挙げられる。加えて、アミノ含有ボレートおよびホウ酸の第3級アミン塩も有用である。そのようなホウ素含有化合物としては、限定されないが、2−(ベータ−ジメチルアミノイソプロポキシ)−4,5−ジメチル−1,3,2−ジオキサボロラン、2−(ベータ−ジエチルアミノエトキシ)−4,4,6−トリメチル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(ベータ−ジメチルアミノエトキシ)−4,4,6−トリメチル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(ベータ−ジイソプロピルアミノエトキシ−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(ベータ−ジブチルアミノエトキシ)−4−メチル−1,3,2−ジオキサボリナン、2−(ガンマ−ジメチルアミノプロポキシ)−1,3,6,9−テトラオキサ−2−ボラシクロウンデカン、および2−(ベータ−ジメチルアミノエトキシ)−4,4−(4−ヒドロキシブチル)−1,3,2−ジオキサボロランが挙げられる。ホウ酸等価物としては、ホウ酸の金属塩(すなわち、ホウ酸金属)も挙げられるが、ただし、そのようなホウ酸金属は、水性媒体中で容易に溶解し、ホウ酸を形成可能であることを条件とする。本発明の電着浴中で有用なホウ酸金属の適切な例としては、例えば、ホウ酸カルシウム、メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウムおよび八ホウ酸カリウムなどのホウ酸カリウム、メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウムおよび八ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸ナトリウムが挙げられる。同様に、ホウ酸アンモニウムは有用である。そのうえ、任意のホウ素含有化合物としては、例えば、ホウ酸ビスマスおよびホウ酸イットリウムが挙げられる。
【0017】
適切なホウ酸等価物としては、ホウ素含有部分を含んでなる有機オリゴマーおよびポリマー化合物も含み得る。適切な例としては、活性水素含有ポリマー、例えばヒドロキシ官能基含有アクリルポリマーまたはポリシロキサンポリマーとホウ酸および/またはホウ酸塩エステルとを反応させ、ホウ酸エステル基を有するポリマーを形成することによって形成されるものなどのポリマーホウ酸エステルが挙げられる。
【0018】
この目的のために適切なポリマーとしては、アクリルポリマー、ポリエポキシドポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエーテルポリマーおよびシリコンベースのポリマーの少なくとも1種から選択されるもののような種々の活性水素含有ポリマーのいずれも挙げられる。「シリコンベースのポリマー」とは、骨格鎖中に1個以上の−SiO−単位を含んでなるポリマーを意味する。そのようなシリコンベースのポリマーとしては、骨格鎖中に1個以上の−SiO−単位を有する有機ポリマーブロックを含んでなるものなどのハイブリッドポリマーが挙げられる。好ましくは、本発明の電着浴でホウ酸を使用する。
【0019】
本発明のホウ酸またはホウ酸等価物は、浴の総重量の0.3%より高く〜2.0%未満の範囲の濃度でエレクトロコーティング浴に存在する。好ましくは、本発明のホウ酸またはホウ酸等価物は、浴の総重量の0.4%〜1.7%の範囲の濃度でエレクトロコーティング浴に存在する。最も好ましくは、本発明のホウ酸またはホウ酸等価物は、浴の総重量の0.5%〜1.6%の範囲の濃度でエレクトロコーティング浴に存在する。
【0020】
クロルヘキシジンは、既知の防腐性化合物である。これは1,6−ビス[5−(p−クロロフェニル)ビグアニジノ]ヘキサンとしても知られており、図Iに示す構造式を有する。
【化1】

【0021】
クロルヘキシジンは、浴の総重量の0.01%より高く〜0.2%の濃度でエレクトロコーティング浴に存在する。好ましくは、クロルヘキシジンは、浴の総重量の0.02%〜0.18%の範囲の濃度でエレクトロコーティング浴に存在する。最も好ましくは、クロルヘキシジンは、浴の総重量の0.03%〜0.16%の範囲の濃度でエレクトロコーティング浴に存在する。
【0022】
クロルヘキシジンが最も低い濃度、浴の総重量の0.01%で存在する場合、ホウ酸の濃度を浴の総重量の0.5%より高く、より好ましくは、浴の総重量の1.0%以上の濃度に保つことが望ましい。
【0023】
もう1つの実施形態において、本発明は、イオン塩基を有するフィルム形成樹脂を含んでなり、ホウ酸およびクロルヘキシジンを含む電着浴としての使用のために適切な電着可能な組成物である。そのようなフィルム形成樹脂の例は、アミン塩基および/またはスルホニウム塩基を有するエポキシベースの樹脂である。
【0024】
好ましい実施形態において、電着可能な組成物は7以下のpHを有する。7より高いpHでは、そのようなカチオン性組成物は周囲雰囲気から二酸化炭素を吸着する傾向があり、結果的に、時間とともに7より低いpHへと徐々に移行し得る。したがって、7以下のpHを有する組成物はより安定であり、そしてプロセス条件をより容易に制御することができる。
【0025】
本明細書で使用される「主要エマルジョン(principal emulsion)」という用語は、水溶性生成物を形成するために酸で中和された架橋剤とブレンドされたエポキシアミン付加物のバインダーの水性エマルジョンを含んでなるエレクトロコーティング組成物を意味する。エレクトロコーティング組成物のバインダーは、一般的に、エポキシアミン付加物とブロック化ポリイソシアネート架橋剤とのブレンドである。殺微生物剤は種々の陰極エレクトロコーティング樹脂に潜在的に有用であるが、エポキシアミン付加物樹脂は特に好ましい。これらの樹脂は、参照によって組み込まれる米国特許第4,419,467号明細書に一般に開示される。
【0026】
エポキシアミン付加物樹脂のための好ましい架橋剤は、先行技術でも周知である。これらは、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネートなどの脂肪族、脂環式、芳香族イソシアネートである。これらのイソシアネートは、イソシアネート官能性(すなわち架橋官能性)をブロックするオキシム、アルコールまたはカプロラクタムのようなブロッキング剤と予め反応させる。加熱時にブロッキング剤は分離し、それによって、反応性イソシアネート基が提供され、架橋が生じる。イソシアネート架橋剤およびブロッキング剤は先行技術で周知であり、また上述の米国特許第4,419,467号明細書に開示されている。
【0027】
エポキシアミン付加物の陰極バインダーおよびブロック化イソシアネートは、エレクトロコーティング組成物の主要樹脂成分であって、通常、組成物固体の約30〜50重量%の量で存在する。エレクトロコーティング浴を作成するために、固体を一般に水性媒体で希釈する。
【0028】
上記のバインダー樹脂の他に、エレクトロコーティング組成物は、通常、顔料ペーストの形態で組成物に組み込まれる顔料を含有する。顔料ペーストは、粉砕溶媒、ならびに湿潤剤、界面活性剤および消泡剤などの任意の成分中に顔料を粉砕するか、または分散させることによって調製される。当該技術分野で周知の顔料粉砕溶媒のいずれも使用可能であるか、または上記の新規添加剤を使用することもできる。粉砕後、顔料の粒径は実用的な程度に小さいべきであり、一般に、粒径はHegman粉末ゲージを使用して約6〜8である。
【0029】
本発明を使用可能な顔料としては、二酸化チタン、塩基性ケイ酸鉛、クロム酸ストロンチウム、カーボンブラック、酸化鉄、粘土などが挙げられる。高い表面積および油吸収性を有する顔料は、電着したコーティングの癒着および流れに望ましくない影響を及ぼし得るため、これらを賢明に使用するべきである。
【0030】
顔料対バインダーの重量比も重要であり、好ましくは0.5:1未満、より好ましくは0.4:1未満、通常、約0.2:1〜0.4:1であるべきである。より高い顔料対バインダーの重量比も癒着および流れに悪影響を与えることがわかっている。
【0031】
本発明のコーティング組成物は、湿潤剤、界面活性剤、消泡剤などの任意の成分を含有することができる。界面活性剤および湿潤剤の例としては、Ciba−Geigy Industrial Chemicals(Tarrytown,New York)から「Amine C」として入手可能であるものなどのアルキルイミダゾリン、Air Products and Chemicals(Allentown,Pennsylvania)から「Surfynol(登録商標)104」として入手可能なアセチレンアルコールが挙げられる。これらの任意の成分は、存在する場合、組成物のバインダー固体の約0.1〜20重量%を構成する。
【0032】
場合により、流れを促進するために可塑剤を使用することができる。有用な可塑剤の例は、ノニルフェノールまたはビスフェノールAのエチレンまたは酸化プロピレン付加物などの高熱湯不溶性材料である。可塑剤は、通常、樹脂固体の約0.1〜15重量%の濃度で使用される。
【0033】
本発明のエレクトロコーティング組成物は、水分散系である。「分散系」という用語は、本発明の文脈の範囲内で使用する場合、バインダーが分散相にあり、水が連続層にある二相の半透明または不透明な水性樹脂バインダー系であると考えられる。バインダー相の平均粒径は、約0.1〜10ミクロン、好ましくは5ミクロン未満である。水性媒体中のバインダーの濃度は一般に重要ではないが、通常、水分散系の大部分は水である。水分散系は、通常、約3〜50重量%、好ましくは5〜40重量%のバインダー固体を含有する。エレクトロコーティング浴に添加されるときに水でさらに希釈される水性バインダー濃縮物は、一般に10〜30重量%のバインダー固体の範囲を有する。
【実施例】
【0034】
エレクトロコーティング試料を含有する抗微生物性添加剤の調製。表1に従って、ホウ酸および/またはクロルヘキシジンの量を、DuPont(Wilmington,Delaware)から入手可能なCORMAX(登録商標)VIの49ml試料に添加した。表1に記載されるホウ酸およびクロルヘキシジンの量は、試料の総重量に基づく重量%による。
【0035】
化合物の抗微生物性活性を評価するために、5ヶ所の異なる自動車組み立て部で、汚染されたエレクトロコーティング浴から11種の固有の細菌を単離することによって「チャレンジ接種材料(Challenge Inoculum)」を調製した。エレクトロコーティング試料は、49mlのエレクトロコーティング試料分散系にチャレンジ接種材料1ミリリットル(ml)を添加することによって調製された。この細菌の接種は、1.0×105から1.7×106CFU/mlの範囲の細菌数をもたらした。30日間、攪拌および無菌空気攪拌(空気は0.1リットル/分未満で)をしながら、これらのチャレンジ試料を室温で培養した。接種の後、1時間、24時間、1週間、2週間、3週間および30日後に標準プレートカウント法によって、細菌の存在に関して試料を試験した。標準スプレッドプレート技術を使用するエレクトロコーティング試料からの細菌の算出のために、トリプシンダイズ寒天(TSA)を使用した。
【0036】
表1に、試験された殺微生物剤および対照データに関する細菌数のデータを示す。
【0037】
表1

N.D.−細菌は検出せず
【0038】
表1の結果は、1.0%および1.5%のホウ酸のみ、または0.01%または0.1%のクロルヘキシジンのみを含有するエレクトロコーティング浴では、試験期間に微生物個体数の十分な制御をもたらすことができないことを示す。1.5%のホウ酸を含有する実施例Eでは、3週後に最終的に個体数を制御する前の微生物数の増加が示された。対照的に、0.5%以上のホウ酸および0.01%超のクロルヘキシジンを含有するエレクトロコーティング組成物は、微生物個体数の減少を示した。
【0039】
上記エレクトロコーティング浴組成物をそれぞれ、エレクトロコーティング浴伝導率およびフィルムビルドに及ぼす殺生物剤添加剤の影響を決定するために試験した。試験の結果を表2に示す。
【0040】
表2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善されたコーティングの電着方法であって、(a)(i)エポキシアミン付加物を含んでなるフィルム形成バインダーおよび(ii)ブロック化ポリイソシアネート架橋剤がその中に分散された水性担体と、(b)(1)ホウ酸、ホウ酸等価物またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種のホウ素含有化合物と、(2)1,6−ビス[5−(p−クロロフェニル)ビグアニジノ]ヘキサン(クロルヘキシジン)との組み合わせである、有効量(電着浴中で微生物の成長を遅らせるために十分な量)の殺生物剤とを含んでなる水性電着浴の使用を含んでなり、電着浴のpHが7以下である方法。
【請求項2】
前記ホウ素含有化合物が、ホウ酸塩、ホウ酸エステル、酸化ホウ素およびそれらの混合物を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ホウ素含有化合物がホウ酸を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ホウ素含有化合物の量が、浴の総重量の0.3%超〜2.0%未満の範囲のホウ素量を提供するのに十分な量で存在する請求項1に記載の電着浴。
【請求項5】
1,6−ビス[5−(p−クロロフェニル)ビグアニジノ]ヘキサンが、浴の総重量の0.01%超〜0.2%の範囲の量で浴中に存在する請求項1に記載の電着浴。
【請求項6】
電着によってコーティングを沈着させる改善された方法であって、(a)(i)エポキシアミン付加物を含んでなるフィルム形成バインダーおよび(ii)ブロック化ポリイソシアネート架橋剤がその中に分散された水性担体と、(b)(1)ホウ酸、ホウ酸等価物またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種のホウ素含有化合物と、(2)1,6−ビス[5−(p−クロロフェニル)ビグアニジノ]ヘキサン(クロルヘキシジン)との組み合わせである、有効量(電着浴中で微生物の成長を遅らせるために十分な量)の殺生物剤とを含んでなる水性電着浴の使用を含んでなり、電着浴のpHが7より高い方法。

【公表番号】特表2010−529281(P2010−529281A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512213(P2010−512213)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/007462
【国際公開番号】WO2008/156711
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】