説明

ホウ素架橋オルガノポリシロキサンエマルジョン

シラノール官能性オルガノポリシロキサン、ホウ素化合物、乳化剤の混合物を形成し、その後、水を加えてエマルジョンを形成することによるエマルジョン組成物の製造方法が開示されている。得られたエマルジョンは高粘度またはダイラタントシリコーンの被膜提供に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2008年4月14日出願の米国仮特許出願番号61/044594の利益を請求する。
【0002】
本開示は、シラノール官能性オルガノポリシロキサン、ホウ素化合物、乳化剤の混合物を形成し、その後水を加えてエマルジョンを形成することによるエマルジョン組成物の製造方法に関する。得られたエマルジョンは高粘度またはダイラタントシリコーンの被膜提供に有用である。
【背景技術】
【0003】
背景
高分子量シリコーンをバルクとして扱うことの代替として、高分子量シリコーンのエマルジョンを提供する数多くの試みがなされてきた。一般には、高分子量シリコーンのエマルジョンを製造する方法に二つのタイプ、シロキサンモノマーのエマルジョン重合を経由するか、または予め形成された高分子量シリコーンの機械乳化のいずれかがある。多くの場合、シリコーンの特性に影響を及ぼす他の成分をシリコーン組成物に組み込む必要がある。例えば、充填剤、触媒、または架橋剤などの他の添加成分は、その後のシリコーンの物理特性を改変するためにシリコーン組成物にとって興味あるところである。しかし、それら成分の多くをシリコーンエマルジョン組成物に組み込むことは、添加成分および乳化プロセス(これは機械的対エマルジョン重合方法である)の選択に応じて、問題となり得る。例えば、もし所望のシリコーン添加成分が乳化プロセス中に水と相互作用するなら、その添加剤をシリコーンエマルジョンに組み込むことは困難または不可能となり得る。
【0004】
種々の架橋剤成分をオルガノポリシロキサンと組み合わせて高分子量またはエラストマー状シリコーン組成物を提供するシリコーンエマルジョン分野で沢山の実例がある。また一方、シリコーンエマルジョンに架橋添加剤としてのホウ素化合物の添加に関する例はほとんどない。
【0005】
多くのホウ素架橋オルガノポリシロキサン、またはボロシロキサンは、それら固有のダイラタント特性のため、特に興味がある。例えば、ダイラタントホウ素架橋シリコーンはアクティブ・プロテクション・システム(APS)で用いられ、そこでは布地がホウ素架橋シリコーンで被覆されている。しかしながら、そのような製法は、ホウ素架橋シリコーンがまず溶剤に分散または溶解されることを必要とする。ホウ素架橋シリコーンの水ベースエマルジョンがより扱いやすく、そのようなプロセスにおいて環境的にも望まれている。また一方、ホウ素架橋シリコーンまたはボロシロキサンのエマルジョンの例は、ほとんどない。おそらくホウ素架橋剤と水との相互作用が水ベース組成物での架橋化学を制限している。それ故、好ましくない溶剤ベース製法を回避するため、ホウ素架橋シリコーンのエマルジョンを提供する必要性は存在する。
【0006】
米国特許第4,863,985号はエラストマー状に架橋しうるシリコーン水性エマルジョンを教示している。具体的には、米国特許第4,863,985号は、シリコーンエマルジョンから水の除去により、エラストマー状に架橋しうる(例を挙げると、建設業のためのエラストマー・シール材を作る)シリコーンチキソトロピックエマルジョンが、4から8のpHおよび少なくとも50%の固形分を有し、ならびに(A)α、ω‐(ジヒドロキシ)ポリジオルガノシロキサンおよび安定化量の少なくとも1種のアニオンもしくは非イオン界面活性剤またはそれらの混合物の水中油滴型エマルジョン100部;(B)粉末状のシリカ質補強用充填剤1から15部;(C)シリカ質充填剤(B)以外の無機充填剤0から250部;(D)触媒スズ化合物0.01から2部;および(E)酸化ホウ素、ホウ酸またはホウ酸塩0.1から5部を含有する、ことを開示している。米国特許第4,863,985号はエラストマー性シリコーンを与えるシリコーンエマルジョンを教示する一方、スズと充填剤の添加はそれらの組成物では必須である。さらに、米国特許第4,863,985号はホウ素化合物を、α、ω‐(ジヒドロキシ)ポリジオルガノシロキサンの事前形成水中油滴型エマルジョンに添加することを教示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,863,985号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、ホウ素架橋オルガノポリシロキサンのエマルジョンの製造方法を見出した。先行技術の教示と著しく異なって、本発明者らはホウ素化合物をエマルジョンの形成前にオルガノポリシロキサンと組み合わすことができることを予想外に見出した。その製法は、その後の様々な物理特性のシリコーンポリマーを生じさせるホウ素架橋オルガノポリシロキサンのエマルジョンを提供する。具体的には、本製法は、高い粘性のシリコーン液体からダイラタント特性を有するエラストマー状シリコーンまで様々な被膜を生産するホウ素架橋オルガノポリシロキサンのエマルジョンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
本開示は、
I)
A)シラノール官能性オルガノポリシロキサン、
B)ホウ素化合物、及び
C)乳化剤、
の混合物を形成させる工程、
II)工程I)からの混合物に水を混合してエマルジョンを形成させる工程、
を含み、
III)前記エマルジョンをさらにせん断混合する工程、
を任意選択で場合によりさらに含んでもよい、エマルジョン組成物の製造方法を提供する。
【0010】
本製法によるエマルジョンは種々の用途で有用である。たとえば本方法はヘアケア用途向けの高粘性シリコーンエマルジョンを提供する。本製法はさらにアクティブ・プロテクション・システム用布地コーティングとして有用なダイラタントシリコーンエマルジョンを提供する。
【0011】
詳細な説明
本開示の製法の第一工程は、次の混合物を形成させることを含む:
A)シラノール官能性オルガノポリシロキサン、
B)ホウ素化合物、及び
C)乳化剤、
これらそれぞれについて以下詳細に記述する。
【0012】
A)シラノール官能性オルガノポリシロキサン
オルガノポリシロキサンは、(RSiO0.5)、(RSiO)、(RSiO1.5)、または(SiO)シロキシ単位(式中、Rは独立して、有機基、OH(シラノール)、またはH(SiH官能性)であり得る)から独立に選択されたシロキサン単位を含有するポリマーである。これらシロキシ単位は一般にそれぞれM、D、T、およびQ単位と呼ばれている。これらシロキシ単位は種々の方法で組みわせて、環状、直鎖状、または分岐状構造を形成することができる。得られるポリマー構造の化学特性および物理特性は、オルガノポリシリオキサンに存在する各シロキシ単位のタイプおよび数に応じて変化する。例えば、オルガノポリシロキサンは、揮発性または低粘度液体、高粘度液体/ガム、エラストマーまたはラバー、および樹脂(レジン)であり得る。
【0013】
本発明で成分A)として有用なオルガノポリシロキサンは、(RSiO0.5)、(RSiO)、(RSiO1.5)、または(SiO)シロキシ単位の任意の組合せを有し得るが、ただし前記オルガノポリシロキサンは、少なくとも1個のシラノール基(SiOH)を含有することを条件とする。したがって、オルガノポリシロキサンは様々な分子量を有し、液状、ガム、エラストマー、樹脂、またはそれらの任意の組合せであってよい。例えば、オルガノポリシロキサンは、成分A)のオルガノポリシロキサン組成物中に少なくとも1個のシラノール基が存在することを条件に、低分子量の液状オルガノポリシロキサン中に高分子量のオルガノポリシロキサン(例えばエラストマーまたは樹脂など)との混合物でよい。
【0014】
前記オルガノポリシロキサン中に存在するシラノール基の量は変わり得る。オルガノポリシロキサン中のシラノール基の量はSiOHの重量%として指定される。成分A)として有用なオルガノポリシロキサン中に典型的に存在するシラノール基の重量パーセントは、0.01から20重量パーセント、あるいは0.05から10重量パーセント、あるいは0.05から4重量パーセントの範囲である。
【0015】
一つの実施態様において、前記オルガノポリシロキサンは主に、末端シラノール基を有する直鎖状ポリジメチルシロキサンである。その主たる、末端シラノール基を有する直鎖状ポリジメチルシロキサンは式:
HO(Me)SiO[(Me)SiO](Me)SiOH
(式中、xは>0であり、あるいはxは1〜4000、あるいは10〜1000である)
を有し得る。
【0016】
他の実施態様では、前記シラノール官能性オルガノポリシロキサンは、成分B)および成分C)と混合する前または混合中に、他のシランまたはポリシロキサン成分と混合してもよい。他のシランまたはポリシロキサン成分には、シラノール官能性オルガノポリシロキサンと反応できる有機官能性シランまたは有機官能性ポリシロキサンが挙げられる。適する有機官能性シランとして、アミノ官能性シラン、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、エチレンジアミンプロピルトリメトキシシラン、またはエチレンジアミンイソブチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0017】
適する有機官能性ポリシロキサンとしては、アミノ官能性オルガノポリシロキサン、例えば、式:
SiO(RSiO)(RRSiO)SiR、または
SiO(RSiO)(RSiO3/2SiR
[式中、Rは一価の有機基であり、Rは‐RNHおよび‐RNHRNH(式中、Rは少なくとも3個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、Rは少なくとも2個の炭素原子を有する二価の炭化水素基である)からなる群から選ばれた式を有するアミノアルキル基であり、RはR、R、またはOHであり、aは0から2000の値を有し、bはゼロよりも大きく200までの値を有する]を有するもの、が挙げられる。一価R基は、アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、およびヘキシル;アルケニル基、例えば、ビニル、アリル、およびヘキセニル;シクロアルキル基、例えば、シクロブチルおよびシクロヘキシル;アリール基、例えば、フェニルおよびナフチル;アラルキル基、例えば、ベンジルおよび2‐フェニルエチル;アルカリール基、例えば、トリル、およびキシリル;ハロ炭化水素基、例えば、3‐クロロプロピル、4‐ブロモブチル、3,3,3‐トリフルオロプロピル、クロロシクロヘキシル、ブロモフェニル、およびクロロフェニル、によって例示される。典型的には、Rは1から6個の炭素原子を有する一価炭化水素基である。特に、好ましいR基はメチル、フェニル、およびビニルである。基Rは典型的に3から20個の炭素原子を有するアルキレン基である。典型的には、Rは、プロピレン、‐CHCHCH‐、ブチレン、‐CHCH(CH)CH‐、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、3‐エチル‐ヘキサメチレン、オクタメチレン、およびデカメチレンから選ばれる。基Rは典型的に2から20個の炭素原子を有するアルキレン基である。典型的には、Rは、エチレン、プロピレン、‐CHCHCH‐、ブチレン、‐CHCH(CH)CH‐、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、3‐エチル‐ヘキサメチレン、オクタメチレン、およびデカメチレンから選ばれる。Rは典型的には、‐CHCHCHNHCHCHNHまたは‐CHCH(CH)CHNHCHCHNHである。これら同じアミノ官能性基の塩もまた用いることができる。そのような塩の例として、アルキルカルボン酸塩、アリールカルボン酸塩、塩化物および臭化物などのハロゲン化塩、ならびに有機酸でのアミンの中和生成物が挙げられる。基RはR、R、または‐OHであり得るが、典型的にRはメチルまたは‐OHである。ポリオルガノシロキサンは0.1から15モルパーセントの上記アミノ基および最も典型的には0.2から10モルパーセントの上記アミノ基を有し得る。上記の式で、典型的にaは50から2000の値を有し、bは1から100の値を有する。本発明で有用なアミノ官能性ポリオルガノシロキサンは当技術分野で周知の方法により製造することができる。それらポリオルガノシロキサンの多くが市販されている。
【0018】
工程Iで添加されたシラノール官能性オルガノポリシロキサンの量は変わり得る。用いられる量は、工程I)で用いられるホウ素化合物のタイプおよび量ならびに所望の架橋の程度に依存する。典型的には、シラノール官能性オルガノポリシロキサンの量は、工程Iの混合物の全重量に基づいて、50から99、あるいは75から95、あるいは85から90重量パーセントの範囲である。
【0019】
B)ホウ素化合物
成分B)はホウ素化合物である。本明細書において、「ホウ素化合物」とはホウ素を含有する任意の化合物を意味する。オルガノポリシロキサンと反応することが知られている任意のホウ素化合物を成分B)として選択できる。あるいは、ホウ素化合物は、オルガノポリシロキサン上のシラノール官能基と反応することで知られているものから選択できる。そのようなホウ素化合物には;酸化ホウ素(boron oxide, boric oxide)、ホウ酸、ボラート(Borate)、ホウ酸無水物が挙げられる。ホウ酸はオルトホウ酸、メタホウ酸、または四ホウ酸でもよい。ボラートには、水の存在下でホウ酸に加水分解するアルキルおよびアリルホウ酸エステル/トリオルガノホウ酸エステル、例えばトリエチルホウ酸エステル、トリフェニルホウ酸エステル、トリベンジルホウ酸エステル、トリシクロヘキシルホウ酸エステル、トリ(メチルシリル)ホウ酸エステル、トリ‐t‐ブチルホウ酸エステル、トリメトキシボロキシンおよびトリイソプロポキシボロキシンなどのトリアルコキシボロキシン、トリエタノールアミンボラート、ならびに2,2’−オキシビス[4,4,6‐トリメチル−1,3,2−ジオキサボラニン](2,2’−oxybis[4,4,6−trimethyl−1,3,2−dioxaboranine])などの誘導体が挙げられる。ボラートはまた、ペンタホウ酸ジアンモニウム、四ホウ酸ナトリウム・10水和物(ホウ砂)、ペンタホウ酸カリウム、二ホウ酸マグネシウム、一ホウ酸カルシウム、三ホウ酸バリウム、およびメタホウ酸亜鉛などの無機ホウ酸塩を含む。適するホウ素化合物はさらに上記のボラートの部分加水分解生成物も含む。典型的には、ホウ素化合物は式Bを有する酸化ホウ素[CAS登録番号#1303−86−2]、または式HBOを有するホウ酸[CAS登録番号#10043−35−3]である。
【0020】
前記ホウ素化合物は、工程Iで単独または他の成分との組合せのいずれかで添加できる。
【0021】
一つの実施態様において、ホウ素化合物は酸化ホウ素またはホウ酸であり、それはトリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、例えば、25℃で0.65cS(mm/秒)から25℃で100,000cS(mm/秒)、あるいは25℃で100から10,000cS(mm/秒)、または25℃で100から1,000cS(mm/秒)までの範囲の粘度を有する、DOW CORNING(登録商標)200フルイド、に分散される。
【0022】
トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン中に分散された酸化ホウ素またはホウ酸の量は変わり得るが、典型的には0.5から70、あるいは10から50重量パーセント、あるいは40から50重量パーセントの範囲である。
【0023】
工程Iで添加されるホウ素化合物の量は変わり得る。用いられる量は工程I)で用いらるオルガノポリシロキサンのタイプおよび量、ならびに所望の架橋の程度に依存する。典型的には、ホウ素化合物の量は、工程Iの混合物の全重量に基づいて、0.05から30、あるいは0.1から10、あるいは0.1から6重量パーセントの範囲である。
【0024】
C)乳化剤
本開示の製法において成分C)は乳化剤である。本明細書において、「乳化剤」とは、エマルジョンの形成を可能にする任意の化合物または物質をさす。エマルジョンは、水中油滴型エマルジョン、油中水滴型エマルジョン、多相または三重エマルジョンでもよい。乳化剤はエマルジョンを安定化できる任意の界面活性化合物またはポリマーから選択できる。典型的には、そのような界面活性化合物またはポリマーは分散された粒子の合体を防ぐことによりエマルジョンを安定化する。本製法において乳化剤として有用な界面活性化合物は界面活性剤または界面活性剤の組み合わせ物であり得る。界面活性剤はアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、またはそれら界面活性剤いずれかの混合物であり得る。
【0025】
適するアニオン界面活性剤の代表的な例として、高級脂肪酸アルカリ金属石鹸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩、長鎖脂肪アルコール硫酸エステル塩、オレフィン硫酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エステル、スルホン酸化エトキシル化アルコール、スルホコハク酸エステル、アルカンスルホン酸塩、リン酸エステル塩、アルキルイセチオン酸エステル、アルキルタウラート、ならびにアルキルサルコシナートが挙げられる。
【0026】
適するカチオン界面活性剤の代表的な例として、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩、およびホスホニウム塩が挙げられる。適する非イオン界面活性剤の代表的な例として、エチレンオキシドとC12−C16アルコールなどの長鎖脂肪アルコールまたは脂肪酸との縮合物、エチレンオキシドとアミンまたはアミドとの縮合物、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの縮合生成物、グリセロールエステル、スクロース、ソルビトール、脂肪酸アルキロールアミド、スクロースエステル、フッ素系界面活性剤、および脂肪族アミンオキシドが挙げられる。適する両性界面活性剤の代表的な例として、イミダゾリン化合物、アルキルアミノ酸塩、およびベタインが挙げられる。
【0027】
適する市販の非イオン界面活性剤の代表的な例には、ユニケマ(ICI Surfactants)社、米国デラウェア州ウィルミントンから商標名BRIJ(登録商標)で販売されている、ポリオキシエチレン脂肪アルコールがある。いくつかの例はBRIJ(登録商標)35Liquid、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルとして知られているエトキシル化アルコール、およびBRIJ(登録商標)30、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルとして知られている別のエトキシル化アルコールである。いくつかのさらなる非イオン界面活性剤には、ダウケミカル社、米国ミシガン州ミッドランドから商標TERGITOL(登録商標)で販売されているエトキシル化アルコールがある。いくつかの例は、TERGITOL(登録商標)TMN−6、エトキシル化トリメチルノナノールとして知られているエトキシル化アルコール;および商標TERGITOL(登録商標)15−S−5、TERGITOL(登録商標)15−S−12、TERGITOL(登録商標)15−S−15、およびTERGITOL(登録商標)15−S−40で販売されている種々のエトキシル化アルコール、すなわちC12−C14の第二級アルコールエトキシレートである。エトキシル化C10ゲルベアルコール(ethoxylated Guerbet alcohol)として知られているLutensol XPおよびエトキシル化イソ‐C13アルコールとして知られているLutensol TOのシリーズでBASF社から供給されるLutensol(登録商標)もまた用いられ得る。
【0028】
非イオン界面活性剤を含有する混合物が用いられる場合、二つの非イオン界面活性剤が11から15の組み合わせたHLB(combined HLB)、あるいは12.5から14.5の組み合わせたHLB(combined HLB)を有するように、一つの非イオン界面活性剤は低い親水親油バランス(HLB)を有し、他の非イオン界面活性剤は高いHLBを有していることもできる。
【0029】
あるいは、乳化剤はポリマーまたは「増稠剤」もしくは「増粘剤」と考えられる物質であり得る。そのようなポリマー乳化剤には、ポリビニルアルコール、セルロースポリマーまたはキサンタンガムが挙げられる。ポリビニルアルコールには、加水分解されたポリビニルアルコール、例えば80から95%加水分解されたポリビニルアルコールがある。適する増粘剤は、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、ポリオキシエチレン、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、エトキシル化アルコール、例えばラウレス−4またはポリエチレングリコール400など、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルヒドロキシエチルセルロースで例示されるセルロース誘導体、デンプンおよびヒドロキシエチルアミロースおよびデンプンアミロースで例示されるデンプン誘導体、イナゴマメガム、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウムで例示される電解質、ならびにフラクトースおよびグルコースなどのサッカライド、およびPEG−120メチルグルコースジオレエーートなどのサッカライド誘導体、またはこれら2種以上の混合物により例示される。典型的には、増粘剤は、セルロース誘導体、サッカライド誘導体および電解質からなる群から、またはセルロース誘導体と任意の電解質、およびデンプン誘導体と任意の電解質との組み合わせにより例示される、上記増粘剤の2種以上の組み合わせから選択される。
【0030】
前記乳化剤は単独または工程Iにおいてさまざまな量の水との組合せのいずれかで添加することができる。典型的には、界面活性剤単独または界面活性剤の組合せが乳化剤として選択されるときは、界面活性剤は濃い水性分散液または水溶液として工程Iで添加される。
【0031】
一つの実施態様では、乳化剤が8〜15の総HLB(組み合わせてのHLB)を有する2種の非イオン界面活性剤を少なくとも70重量%含有する水溶液である。
【0032】
あるいは、乳化剤は、8〜15のHLBを単独で有する非イオン界面活性剤5〜30重量パーセントの水溶液であり、または乳化剤は1種の非イオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤を少なくとも20重量パーセント含有する水溶液であり、または乳化剤はアニオン界面活性剤を30から100重量パーセント含有する水性界面活性剤である。
【0033】
工程Iで添加される乳化剤の量は変わり得る。用いられる量は所望のエマルジョンのタイプおよび所望する粒径に依存する。典型的には、工程Iで添加される乳化剤の量は、工程Iの混合物の0.1から40重量パーセントであり、あるいはその量は0.5から30重量パーセントである。
【0034】
工程(I)での混合は、高粘度材料の混合に作用するために当技術分野で知られている方法により行うことができる。混合は、バッチ、半連続または連続プロセスとして、行うことができる。混合は、チェンジ‐キャンミキサー(change−can mixers)、二重遊星型ミキサー(double−planetary mixers)、 コニカル‐スクリュウミキサー(conical−screw mixers)、リボンブレンダー(ribbon blenders)、ダブルアームまたはシグマブレードミキサー(Double−arm or sigma−blade mixers)を含めた、中せん断、低せん断を有するバッチ混合装置;Charles Ross & Sons(米国ニューヨーク州)、Hockmeyer Equipment Corp.(米国ニュージャージー州)製のものを含めた、高せん断および高速分散機を有するバッチ装置;Banbury−型(CW Brabender Instrument社、米国ニュージャージー州)およびHenschel型(Henschel mixers America、米国テキサス州)を含めた、高せん断作用を有するバッチ装置、を例えば用いて行うことができる。連続ミキサー/コンパウンダーの実例には、単軸押出機、二軸押出機および多軸押出機、同方向回転押出機、例えばKrupp Werner & Pfleiderer Corp.(米国ニュージャージー州Ramsey)およびLeistritz(米国ニュージャージー州)製のものなど;異方向回転二軸押出機、二段押出機、二軸ローター連続ミキサー、ダイナミックまたはスタティックミキサー、またはこれら装置の組合せが含まれる。
【0035】
工程Iの混合が行われる温度および圧力は決定的な意味は持たないが、一般に周囲温度(室温)および圧力で行われる。典型的には、混合物の温度は、そのような高粘度材料のせん断に付随する機械的エネルギーにより、混合プロセス中に上昇する。
【0036】
理論により縛られることを望まないが、本発明者らは成分A)、B)、およびC)の混合の結果、ホウ素化合物がシラノール官能性オルガノポリシロキサンと反応して、種々の架橋を形成するものと考えている。また一方、工程I)混合物へ乳化剤を含めることは、工程II)におけるその後のエマルジョン形成を高める。
【0037】
本製法の工程IIは、工程Iの混合物に水を加えてエマルジョンを形成することを含む。典型的には、工程Iの混合物100部毎に、5から700部の水が混合されて、エマルジョンが形成される。一つの実施態様では、形成されたエマルジョンは水連続相エマルジョンである。典型的には、水連続相エマルジョンは工程Iからのホウ素架橋オルガノポリシロキサンの、150μm未満の平均粒径を有する分散粒子を有する。
【0038】
添加される水の量は、工程Iからの混合物100重量部あたり、5から700重量部で変わり得る。水は、工程Iからの混合物のエマルジョンを形成するような割合で、工程Iの混合物に加えられる。水のこの量は、ホウ素架橋オルガノポリシロキサンおよび乳化剤の選択に依存して変わり得るが、一般的には、水の量は、工程Iの混合物100重量部あたり5から700部、あるいは工程Iの混合物100重量部あたり5から100部、あるいは工程Iの混合物100重量部あたり5から70部である。
【0039】
典型的には、水は漸増分(incremental portions)に分けて工程Iの混合物に添加され、それにより各漸増分は工程Iの混合物の30重量%未満からなり、各漸増分の水が、前の漸増分の水が分散された後それに引き続いて添加され、ここで、ホウ素架橋オルガノポリシロキサンのエマルジョンを形成するに十分な漸増分の水が添加される。
【0040】
工程(II)での混合は、高粘度材料の混合に作用するために当技術分野で知られている方法により行うことができる。混合は、バッチ、半連続または連続プロセスとして、行うことができる。工程(I)のために記載した混合方法のいずれかが、工程(II)の混合を行うために用いることができる。
【0041】
任意選択で、工程(II)で形成された水連続相エマルジョンは、さらに粒径を小さくしおよび/または長期間保存安定性を改良するために、工程(III)に従ってさらにせん断を受けてもよい。このせん断は上で説明した混合技術のいずれかにより行うことができる。
【0042】
本方法によって得られるエマルジョン製品は、水中油滴型エマルジョン、油中水滴型エマルジョン、多相エマルジョンまたは三重エマルジョンであり得る。
【0043】
一つの実施態様において、本方法により製造されるエマルジョン製品は水中油滴型エマルジョンである。水中油滴型エマルジョンは、連続水相中の、分散されたホウ素架橋オルガノポリシロキサン相の平均体積粒子によって特徴付けることができる。その粒子径はエマルジョンのレーザー回折により測定することができる。適するレーザー回折技術は当技術分野では周知である。粒子径は粒子径分布(particle size distribution、PSD)から得られる。PSDは、体積、面積、長さベースで測定できる。体積粒子径は、その特定の粒子と同じ体積を有する球体の直径に等しい。用語Dvは分散粒子群の平均体積粒子径を表す。Dv0.5は、累積粒子母集団の50%に相当する体積で測定された粒子径である。言い換えれば、もしDv0.5=10μmであるなら、粒子の50%が10μmより小さい平均体積粒子径を有し、粒子の50%は10μmより大きい平均体積粒子径を有する。別段の表示がない限り、全ての平均体積粒子径、Dv0.5を用いて計算されている。
【0044】
水中油滴型エマルジョン中の分散シロキサン粒子の平均体積粒子径は0.1μmと150μmの間;または0.1μmと30μmの間;または0.3μmと5.0μmとの間である。
【0045】
本開示のエマルジョンは、エマルジョンのフィルムを乾燥させた後に生じた得られたフィルムまたは被膜の特性によってさらに特徴付けることができる。典型的には、そのような被膜はエマルジョンのフィルムを形成し、エマルジョン中に存在する水を蒸発させるのに十分な時間フィルムをそのままおくことにより得られる。このプロセスはフィルムまたは被膜の周囲温度を上昇させることにより促進させることができる。
【0046】
本エマルジョンから得られるフィルムまたは被膜は、レオロジー特性によって特徴付けることができる、例えばCarri−Medレオメーターを使用して、LVR中0.2Hzで、動的せん断貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)の両方を測定する。ホウ素架橋オルガノポリシロキサンエマルジョンのフィルムを乾燥して被膜が生じる場合、典型的には、得られたシリコーン被膜について25℃で、
G’は200Paから10,000,000Paであり、あるいはG’は1000Paから200,000Paであり;
G”は1000Paから10,000,000Paであり、あるいはG”は1000Paから200,000Paである。
【0047】
一つの実施態様において、得られるフィルムは、粘度にて特徴付けられる高粘度フルイドとして考えることもできる。そのような粘度測定はレオメーターを用いて行うことができる。得られたフィルムの動的粘度(dynamic viscosity)は、25℃で測定して、100Paから10,000,000Pa、あるいは1000Paから300,000Paである。
【0048】
他の添加剤、例えば、充填剤、泡制御剤、不凍剤、殺生物剤などを、本開示のエマルジョンに組込むこともできる。
【0049】
一つの実施態様において、シリカがエマルジョンに加えられて、その結果生じた特性、特にダイラタント特性に作用する。エマルジョンに添加されるシリカの量およびタイプは変わり得る。典型的には、エマルジョンに添加されるシリカの量は0.1から50重量パーセント、あるいは1から40重量パーセントで変わることができ、あるいは5から30重量パーセントがエマルジョンに添加されうる。シリカはエマルジョンの製法中いつでも添加することができるが、典型的には後で添加される。すなわち、エマルジョンが最初に製造され、その後でコロイダルシリカがその製造されたエマルジョンに添加される。
【0050】
適するシリカには、ヒュームドシリカ、たとえば、AEROSIL(登録商標)OX−50(Evonik社から入手可能な、40ナノメートル平均粒径のシリカ)など;安定化シリカゾル、例えばKLEBOSOL(登録商標)シリーズ(Rohm and Haas社から入手可能)、KLEBOSOL(登録商標)30H25(25nm平均粒径、2.2のpHおよび30%固形分を有するプロトン安定化水性コロイダルシリカゾル)、KLEBOSOL 30H50(50nm平均粒径、2.5から3.0のpHおよび30%固形分を有するプロトン安定化水性コロイダルシリカゾル)、KLEBOSOL 30N12(12nm平均粒径、9.5から10.5のpHおよび30%固形分を有するアンモニウムイオン安定化水性コロイダルシリカゾル)、KLEBOSOL 30N25(25nm平均粒径、9.6のpHおよび30%固形分を有するアンモニウムイオン安定化水性コロイダルシリカゾル)、NALCO(登録商標)1034A(20ナノメートル平均粒径、2.8のpHおよび34%固形分を有する、Nalco Chemical社から入手可能な酸性コロイダルシリカゾル)、NALCO1130(8ナノメートル平均粒径、10.0のpHおよび30%固形分を有する、Nalco Chemical社から入手可能なアルカリ性コロイダルシリカゾル)、NALCO1140(15ナノメートル平均粒径、9.4のpHおよび40%固形分を有する、Nalco Chemical社から入手可能なアルカリ性コロイダルシリカゾル)などが挙げられる。適するコロイダルシリカとして、W.R.Grace社のLUDOX(登録商標)シリーズ、例えば、LUDOX AM、LUDOXAM−30(12nm平均粒径、30%固形分を有する水性シリカゾル)、LUDOX AS、LUDOX HS40、LUDOX LS、LUDOX TM、およびLUDOX TMA(22nm平均粒径、34%固形分を有する水性シリカゾル)などが挙げられる。他の適するシリカとして、ニッサンケミカル社(米国テキサス州ヒューストン)のSNOWTEX(登録商標)シリーズコロイダルシリカという商品名で販売されているもの、例えばSNOWTEXなどが挙げられる。
【実施例】
【0051】
これら実施例は、本発明を当業者に例証することを意図しているのであって、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するように解釈してはならない。すべての測定および実験は、別段の表示がない限り、23℃で行った。
【0052】
平均粒径はMalvern Mastersizer2000を使用して測定した。レオロジー特性はティ・エイ・インスツルメントARESレオメーター(円錐およびプレート形状(コーンプレート)装備)(実施例1から5)ならびにCarri−MedレオメーターCSL(円錐およびプレート形状(コーンプレート)装備)(実施例6から10)を使用して測定した。
【0053】
実施例1
最初に、およそ50,000mPa・s(cP)の粘度およびおよそ61,000の数平均分子量を有するMeSiOH末端ジメチルポリシロキサン50gを秤量しマックス100カップ(max 100 cup)に入れ、続いておよそ1000cStの動粘度(kinematic viscosity)を有するトリメチルシロキシキャップポリジメチルシロキサンフルイド中の酸化ホウ素の50重量%分散液0.10gを添加した。カップを閉じ、Speedmixer(登録商標)DAC150ミキサー内に置き、最大速さで20秒間回転(spin)させた。カップを15分間そのままに置いた後、最大速度で20秒間再度回転させた。追加10分間静止させた後、カップを再度20秒間回転させた。
前述の回転に続き、直ちにラウリルアルコール(4)エトキシラート(Brij(登録商標)30)0.75gを添加し、ラウリルアルコール(23)エトキシラート(Brij(登録商標)35L)の72%水溶液1.5gおよび脱イオン水(DI)0.6gを引き続いて添加した。カップを閉じ、Speedmixer(登録商標)中で20秒間回転させた。カップの中身は濃厚ゲル状粘稠度を有する塊を形成し、カップの壁はスパチュラで掻き取った。カップおよびその中身を再度20秒間回転させた。濃厚相組成物は、徐々に増やしながら合計31gのDI水で希釈した。最初の漸増量は5gで、さらに別の5g、その後10gが続き、最後の11gと続けた。カップは、各漸増量の水添加後、SpeedMixer(登録商標)の中全速力で18秒間回転させた。得られた最終組成物は低粘度の乳白色液体で、酸化ホウ素を含有するポリジメチルシロキサンおよそ60重量%の、およそ0.75μmの粒径を有する水中油滴型エマルジョンからなっていた。次の日にエマルジョンの20gをペトリ皿に流し入れ、周囲条件で24時間蒸発させた。エマルジョンから得られたポリマーを検査し、原料シリコーンポリマーの粘度から実質的に粘度が増加していることが分かった。エマルジョンからのポリマーの粘度はレオメーターを用いて測定し、図1にまとめたように、およそ10cP(10−1/sおよび24℃で)のゼロずり粘度(zero−shear−rate viscosity)であることが分かった。これらの結果エマルジョンからのシロキサンポリマーの粘度が原料シロキサンポリマー(およそ5x10cP)の粘度よりも非常に高かったことを示している。
【0054】
実施例2
実施例1に記載したものと同じ方法を用いて、およそ50,000mPa・s(cP)の粘度およびおよそ61,000の数平均分子量を有するMeSiOH末端ジメチルポリシロキサン50g、ならびにおよそ1000cStの動粘度を有するトリメチルシロキシ‐キャップポリジメチルシロキサンフルイド中の酸化ホウ素の50重量%分散液0.11gから製造した組成物を、ラウリルアルコール(4)エトキシラート(Brij(登録商標)30)0.75g、ラウリルアルコール(23)エトキシラート(Brij(登録商標)35L)の72%水溶液1.5gおよび脱イオン水(DI)0.60gを用いて、乳化した。エマルジョンの濃厚相を、実施例1と同じ方法を用いて、徐々に増量させながら合計31gのDI水で希釈した。エマルジョンの平均粒径はおよそ0.75μmであった。
【0055】
実施例3
用いたポリジメチルシロキサン中の酸化ホウ素分散液の量を除いて、実施例2に記載した同じ方法および量を用いて、エマルジョンを製造した。このエマルジョンは、MeSiOH末端ジメチルポリシロキサン50gおよび酸化ホウ素/ポリジメチルシロキサン分散液0.40gを用いて製造した。このエマルジョンの平均粒径はおよそ0.75μmであった。
【0056】
実施例4
実施例1で記載した方法を用いて、およそ50,000mPa・s(cP)の粘度およびおよそ61,000の数平均分子量を有するSiOH官能性ジメチルポリシロキサン50g、およびおよそ1000cStの動粘度を有するトリメチルシロキシ‐キャップポリジメチルシロキサンフルイド中の酸化ホウ素の50重量%分散液0.50gから製造した組成物を、水性第二級アルキルスルホン酸ナトリウム(Hostapur(登録商標)SAS−60)の60重量%の1.25gおよび水5.0gを用いて乳化した。得られた濃厚相組成物をDI水27gで、実施例1に記載されたように徐々に増量しながら希釈した。得られたエマルジョンは0.5%のBを含有するPDMSのアニオンエマルジョン(およそ60%固定分)からなっていた。このエマルジョンから水を取り除くと高粘度ポリマーがもたらされた。
【0057】
実施例5
実施例1で記載した方法を用いて、およそ50,000mPa・s(cP)の粘度およびおよそ61,000の数平均分子量を有するSiOH官能性ジメチルポリシロキサン50g、およびおよそ1000cStの動粘度を有するトリメチルシロキシ‐キャップポリジメチルシロキサンフルイド中のホウ酸の50重量%分散液0.50gから製造した組成物を、塩化セチルトリメチルアンモニウムの30%水溶液(CETAC(登録商標)30)3.3gおよび水0gを用いて、乳化させた。得られた濃厚相組成物をDI水30gで、実施例1に記載されたように徐々に増量しながら希釈した。得られたエマルジョンは500ppmのBを含有するPDMSのおよそ60%カチオンエマルジョンからなっていた。このエマルジョンから水を取り除くとゴム状粘稠度を有したポリマーフィルムがもたらされた。
【0058】
実施例6
最初に、α‐イソ‐トリデシル‐ω‐ヒドロキシルポリ(オキシエチレン)(Lutensol TO12)2gを、250mLガラスビーカーに入れ、続いて脱イオン水40gを加えた。この界面活性剤溶液を1時間(IKAローター上の4枚羽根金属攪拌器にて150rpmで)攪拌した。およそ50mPa・s(cP)の粘度および800の数平均分子量を有するSiOH官能性シロキサン50gをマックス100カップに秤量して入れ、続いて25℃でおよそ1000cS(mm/秒)の動粘度を有するトリメチルシロキシキャップポリジメチルシロキサンフルイド中の酸化ホウ素の50重量%分散液6.6gを添加した。カップを閉じ、Speedmixer(登録商標)DAC150ミキサー中に置いた。カップを最大速度で20秒間回転させた。カップの中身を上述した界面活性剤溶液に加え、Ultraturraxミキサーにて最大速度で混合した。その後、ステアリン酸0.17gおよびオレイン酸0.18gを、穏やかな攪拌下(IKAローター上の4枚羽根金属攪拌器にて150rpm)で加えた。得られた最終組成物は低粘度の乳白色液体で、酸化ホウ素を含有するポリジメチルシロキサンおよそ60重量%の、およそ3.8μmの平均粒径を有する水中油滴型エマルジョンからなっていた。次の日にエマルジョンの20gをアルミニウムカップに流し入れ、周囲条件で24時間蒸発させた。エマルジョンから得られたポリマーを検査し、フィルムを形成していることが分かった。このフィルムのレオロジー特性をCarri−medレオメーターを用いて調べた。線形粘弾性領域(LVR)をまず測定した(0.2Hzおよび25℃で2cm、4°のスチール製円錐形状を有するトルクランプ(Torque ramp))。その後、貯蔵弾性率(G’)および損失弾性率(G”)両方をこの領域で測定した。G’は13600Paで、G”は72400Paであった。
【0059】
実施例7
最初に、30%活性成分量の第二級アルキルスルホン酸塩(HostapurSAS30)40gを500mLガラスビーカーに秤量し、続いて脱イオン水100gを加えた。(IKAローター上の4枚羽根金属攪拌器で150rpm)。およそ50mPa・s(cP)の粘度およびおよそ800の数平均分子量を有するSiOH官能性シロキサン300gを500mLガラスベーカーに秤量し、続いて25℃でおよそ1000cS(mm/秒)の動粘度を有するトリメチルシロキシキャップポリジメチルシロキサンフルイド中の酸化ホウ素の50重量%分散液37gを添加した。この混合物を15分攪拌した(IKAローター上の4枚羽根金属攪拌器で150rpm)。このシリコーン相を上述した界面活性剤水溶液に流し込み、5分間攪拌した。得られた混合物をRannie(登録商標)APVシステム200中400バールにて1回通して処理した。その後、ステアリン酸0.55gおよびオレイン酸0.78gを、最後に穏やかな攪拌(IKAローター上の4枚羽根金属攪拌器で150rpm)下で添加した。得られた最終組成物は低粘度の乳白色液体で、酸化ホウ素を含有するポリジメチルシロキサンおよそ60重量%の、およそ1.3μmの平均粒径を有する水中油滴型エマルジョンからなっていた。上に記載したようにして、フィルムのレオロジーを調べた。弾性率G’は2400Paで、G”は28600Paであった。
【0060】
実施例8
α‐イソ‐トリデシル‐ω‐ヒドロキシルポリ(オキシエチレン)1.5gを塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(有効成分30%)(Arquad16−29)で置き換えたことを除いて、実施例6に記載したものと同じ方法および量を用いた。先に記載したようにしてフィルムのレオロジーを調べた。弾性率G’は29970Paで、G”は112500Paであった。
【0061】
実施例9
SiOH官能性シロキサン4.2gをDow Corning(登録商標)AP−6087(これは末端メトキシおよびヒドロキシ官能性シロキシ基を有する、ジメチル−、メチル−、アミノエチルアミノイソブチル−シロキサンである)で置き換えたことを除いて、実施例6に記載したものと同じ方法および量を用いた。先に記載したようにしてフィルムのレオロジーを調べた。弾性率G’は3300Paで、G”は29400Paであった。
【0062】
実施例10
SiOH官能性シロキサン0.6gをエチレンジアミンプロピルトリメトキシシランで置き換えたことを除いて、実施例6に記載したものと同じ方法および量を用いた。先に記載したようにしてフィルムのレオロジーを調べた。弾性率G’は23300Paで、G”は62000Paであった。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
I)A)シラノール官能性オルガノポリシロキサン、
B)ホウ素化合物、及び
C)乳化剤、
の混合物を形成させる工程、
II)工程I)からの混合物に水を混合してエマルジョンを形成させる工程、
を含み、
III)前記エマルジョンをさらにせん断混合する工程、
を任意選択で場合によりさらに含んでいてもよい、エマルジョン組成物の製造方法。
【請求項2】
前記工程Iの混合物が
50〜99重量パーセントのA)、
0.05〜30重量パーセントのB)、
0.10〜40重量パーセントのC)、
を、A)、B)およびC)の合計が100重量パーセントとなる条件で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エマルジョンが、ホウ素架橋オルガノポリシロキサンを含む分散相を有する水連続相エマルジョンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサンがシラノール末端ポリジメチルシロキサンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ホウ素化合物がトリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサンに分散されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ホウ素化合物がBまたはHBOである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記乳化剤が非イオン系界面活性剤の混合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非イオン系界面活性剤がポリオキシエチレン脂肪アルコールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記非イオン系界面活性剤が8〜15の組み合わせたHLB値を有する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記非イオン系界面活性剤混合物がポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルを含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記非イオン系界面活性剤混合物がエトキシル化C10ゲルベアルコールまたはエトキシル化イソ‐C13アルコールを含有する、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程Iからの混合物100部毎に5〜700部の水が混合されてエマルジョンが形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記水が漸増分に分けて添加され、各漸増分が工程Iからの混合物の30重量%未満である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたエマルジョン組成物。
【請求項15】
請求項14に記載のエマルジョンのフィルムを形成させ、前記フィルムを乾燥させる工程を含む、被膜の形成方法。

【公表番号】特表2011−516715(P2011−516715A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505111(P2011−505111)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/040350
【国際公開番号】WO2009/129175
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】