説明

ホウ酸塩および近赤外線吸収材料

式(1):〔BR4−m(式中、Rは電子吸引性基を有するアリール基を示し、Rは有機基、ハロゲン基または水酸基を示し、mは1〜4の整数である)で示されるアニオンを有する近赤外線吸収材料用ホウ酸塩が提供される。本発明のホウ酸塩は、近赤外線吸収色素の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、近赤外線吸収材料用ホウ酸塩、当該ホウ酸塩を含む近赤外線吸収材料、ならびに当該近赤外線吸収材料を用いてなるプラズマディスプレー用及び光半導体素子用フィルターに関する。特に、本発明は、近赤外線吸収色素の耐久性を向上させるホウ酸塩、可視領域の透明性と耐久性に優れる当該ホウ酸塩を含む近赤外線吸収材料、ならびに当該近赤外線吸収材料を用いてなるプラズマディスプレー用及び光半導体素子用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
近年、薄型で大画面に適用できるPDP(Plasma Display Panel)が注目されている。PDPはプラズマ放電の際に波長が800nm〜1000nmの近赤外線が発生するが、この近赤外線が家電用リモコンの誤作動を誘発することが問題となっている。また、CCDカメラ等に使用される光半導体素子も近赤外線領域の感度が高く、近赤外線を除去する必要がある。そこで、近赤外線の吸収能が高く、可視領域の透明性が高い近赤外線吸収材料が求められている。
【0003】
近赤外線吸収材料としては近赤外線を吸収する色素を添加した材料が広く知られている。近赤外線吸収色素としては、従来、シアニン系、ポリメチン系、スクアリリウム系、ポルフィリン系、ジチオール金属錯体系、フタロシアニン系、ジイモニウム系などの色素が使用されている。中でもジイモニウム系色素は波長が900nm以上の近赤外線の吸収能が高く、可視光領域での透明性が高いことから多用されている(例えば、US−B−6,255,031、US−B−6,522,463参照)。また、光半導体素子用の近赤外線吸収材料としてはリン酸銅系化合物を含有するものも使用されている(例えば、US−A−5,567,778参照)。
【0004】
さらに、PDPは、パネル内部に封入された希ガス、特にネオンを主体としたガス中で放電を発生させ、その際に発生する真空紫外線により、パネル内部のセルに設けられたR、G、Bの蛍光体を発光させるため、この発光過程でPDPの作動に不必要な電磁波も同時に放出され、電磁波を遮蔽する必要もある。また、反射光を抑えるために反射防止フィルム、ぎらつき防止フィルム(アンチグレアフィルム)も必要である。このため、プラズマディスプレー用光学フィルターは、近赤外線吸収フィルム、電磁波遮蔽フィルム、反射防止フィルムを支持材であるガラスや衝撃吸収シートの上に積層して作製することが一般的である。このようなプラズマディスプレー用光学フィルターは、PDPの前面側に載置され、または接着剤や粘着剤を用いて直接貼合せて、使用される場合もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ジイモニウム系色素をはじめとして近赤外線吸収色素は耐久性が劣る場合があり、近赤外線の吸収能の低下や着色は、ディスプレーや光半導体素子用途で使用する際の重大な問題となりうる。この劣化は、熱、水分、光等の様々な要因で、色素が変質することで引き起こされると考えられる。このため、従来から近赤外線吸収色素の耐久性改良が試みられてきたが、その効果は十分なものではない。また、リン酸銅系化合物は近赤外線吸収材料中での含有量を高めることが難しいため、近赤外線吸収能に優れる薄膜の材料を得ることが困難である。
【0006】
そこで、本発明は、近赤外線吸収色素の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上させる近赤外線吸収材料(色素)に好適に使用できるホウ酸塩を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、可視領域での透明性と耐久性に優れる近赤外線吸収材料を提供することである。
【0008】
さらに、本発明のさらなる別の目的は、該近赤外線吸収材料を使用したプラズマディスプレー用光学フィルター、光半導体素子用フィルター、プラズマディスプレー、光半導体素子を提供することである。
【0009】
本発明者らは、近赤外線吸収色素、特に光学フィルターに使用される近赤外線吸収材料の耐久性の改良について鋭意検討を行なった結果、電子吸引性基を有するアリール基がホウ素原子に結合したホウ酸塩は、近赤外線吸収色素の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上させること、このようなホウ酸塩を添加した近赤外線吸収材料は可視領域での透明性及び耐久性(特に耐熱性及び耐湿熱性)に優れることを見出した。また、この近赤外線吸収材料を使用することによって、耐久性に優れかつ可視領域の透明性に優れたプラズマディスプレー用光学フィルター及び光半導体素子用光学フィルターが得られることを見出した。上記知見に基づいて、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、上記目的は、下記式(1):
【0011】
【化1】

【0012】
式中、Rは電子吸引性基を有するアリール基を示し;Rは有機基、ハロゲン基または水酸基を示し;mは1〜4の整数である、
で示されるアニオンを有する近赤外線吸収材料用ホウ酸塩によって達成される。
【0013】
また、上記他の目的は、本発明のホウ酸塩及び近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収材料によって達成される。
【0014】
上記さらなる別の目的は、本発明の近赤外線吸収材を用いてなるプラズマディスプレー用光学フィルター及び光半導体素子用フィルター、ならびにこれらのフィルターを用いてなるプラズマディスプレー及び光半導体素子によって達成される。
【0015】
本発明のホウ酸塩は、近赤外線吸収色素の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上し、さらに可視領域での透明性を損なうことがないため、従来耐久性に問題のあったジイモニウム系色素をはじめとする様々な近赤外線吸収材料(色素)に好適に使用できる。
【0016】
また、本発明のホウ酸塩を含む近赤外線吸収材料を使用した光学フィルターをプラズマディスプレーや光半導体素子に使用すると、近赤外線の吸収能及び可視光領域での透明性が長期間にわたって維持されるので、ディスプレーや光半導体素子の外観を向上することができる。
【0017】
本発明の上記および他の目的、態様および他の利点は、下記好ましい態様の説明および添付図面から明らかになるであろう。
【0018】
図面の簡単な説明
図1は、実施例3−1で得られたジイモニウムTEPB塩の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【0019】
図2は、実施例3−1で得られたジイモニウムTEPB塩のIRスペクトルを示す図である。
【0020】
図3は、比較例2−1で使用したジイモニウムSbF6塩の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【0021】
図4は、比較例2−1で使用したジイモニウムSbF6塩のIRスペクトルを示す図である。
【0022】
図5は、比較例3−1で使用したジイモニウムBPh4塩の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【0023】
図6は、比較例3−1で使用したジイモニウムBPh4塩のIRスペクトルを示す図である。
【0024】
図7は、実施例6−3で作成した近赤外線吸収材A6の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【0025】
図8は、比較例5−2で作成した近赤外線吸収材B5の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【0026】
図9は、比較例6−2で作成した近赤外線吸収材B6の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【0027】
図10は、実施例12−1で得られたインドリウムTEPB塩の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【0028】
図11は、実施例12−1で得られたインドリウムTEPB塩のIRスペクトルを示す図である。
【0029】
図12は、実施例12−1で使用したTEPBNaの可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【0030】
図13は、実施例12−1で使用したTEPBNaのIRスペクトルを示す図である。
【0031】
図14は、実施例12−1で使用したインドリウムPF6塩の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【0032】
図15は、実施例12−1で使用したインドリウムPF6塩のIRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
本発明の第一は、下記式(1):
【0035】
【化2】

【0036】
式中、Rは電子吸引性基を有するアリール基を示し、Rは有機基、ハロゲン基または水酸基を示し、mは1〜4の整数である、
で示されるアニオンを有する近赤外線吸収材料用ホウ酸塩に関するものである。
【0037】
1.式(1)のアニオン
本発明で使用するアニオンは、上記式(1)で示されるホウ酸アニオンであり、電子吸引性基を有するアリール基をホウ素原子に結合させることで、近赤外線吸収色素の耐久性を向上させることができる。
【0038】
上記式(1)中のRは、電子吸引性基を有するアリール基を表わし、特に限定されるものではないが、炭素数6〜12のアリール基に電子吸引性基が結合したものであることが好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基に電子吸引性基が結合したものが挙げられる。上記例示のアリール基のうち、フェニル基に電子吸引性基が結合したもの(即ち、Rが、電子吸引性基を有するフェニル基であること)は、経済的であり好ましい。
【0039】
また、上記式(1)中のRが有する電子吸引性基としては、特に限定されるものではないが、具体的には、−C2p+1(pは自然数)、−NO、−CN、−F、−Clおよび−Brからなる群より選ばれる少なくとも一種の置換基であることが好ましく、−CF、−Cおよび−Fからなる群より選ばれる少なくとも一種の置換基であることがさらに好ましく、−Fであることが特に好ましい。また、アリール基に複数の電子吸引性基が含まれる場合に、各電子吸引性基は同一であってもよく異なっていてもよい。本発明では、特に、−Fを用いると耐熱性、耐湿熱性を向上させることができる。したがって、上記式(1)において、Rは、ペンタフルオロフェニル基(−C)、−CHF、−C、−C、−CF、−CCF、−C(CF、−C(CF、−CF(CF、−C(CFなどが好ましく、ペンタフルオロフェニル基であることが特に好ましい。
【0040】
本発明では、電子吸引性基を導入したアリール基を有するホウ酸アニオンを添加することで、近赤外線吸収色素の耐熱性および耐湿熱性を向上させることができる。
【0041】
上記式(1)中のRで示される置換基は、有機基、ハロゲン原子または水酸基であればよく、該有機基としては電子吸引性基を有していてもよい。有機基としては、例えば、炭素数6〜12のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基)、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基等が挙げられるが、特に限定されるものではない。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などの直鎖、分岐鎖、脂環式のアルキル基などが挙げられる。特に、有機基がアルキル基である場合には電子吸引性基を有していることがより好ましく、水素原子の全部または一部がフッ素原子で置換されていることがさらに好ましい。具体的には、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、具体的には、例えば、−F、−Cl、−Br、−Iが挙げられるが、−Fがより好ましい。
【0042】
本発明において、上記式(1)中のmは、1〜4であれば特に制限はないが、好ましくは4、即ち、[B(Rで表される構造を有するものである。なお、本発明においてmが2以上の場合には複数のRがホウ酸アニオンに含まれるが、この場合に複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
上記式(1)で示されるホウ酸アニオンとしては、例えば、[B(C(テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)、[B(CCF、[B(C(C)]、[B(C(C、[B(C)(C、[B(CF]、[B(C、[B(C)F、[B(C(CF)]、[B(C(CF、[B(C)(CF、[B(C(CCF)]、[B(C(CCF、[B(C)(CCF、[B(CCFF]、[B(CCF、[B(CCF)F、[B(CCF(CF)]、[B(CCF(CF、[B(CCF)(CF、[B(C(C13)]、[B(C(C13、[B(C)(C13、[B(CCF、及び[B(C等が挙げられる。本発明では上記例示のホウ酸アニオンのうち、[B(Cがより好ましい。なお、本発明において、上記ホウ酸アニオンは、1種を単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0044】
2.式(1)のアニオンを含む塩
式(1)のアニオンを含む塩は、上記式(1)のホウ酸アニオンと近赤外線吸収能を有するカチオンとの塩であってもあるいは上記式(1)のホウ酸アニオンと近赤外線吸収能を持たないカチオンとの塩であってもよい。前者の場合は、ホウ酸塩は、近赤外線吸収材料(色素)としても作用でき、かつその耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上できる。また、後者の場合には、それ自体は近赤外吸収能を持たないため、近赤外線吸収色素と混合されることによって、混合された近赤外線材料(色素)の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を有意に向上することができる。
【0045】
以下、後者の場合、即ち、本発明のホウ酸塩が上記式(1)のホウ酸アニオンと近赤外線能を持たないカチオンとの塩である態様を説明する。
【0046】
本発明による前記式(1)のアニオンを含む塩は、上記ホウ酸アニオンの、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属塩;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩;銀、銅等の遷移金属塩;アンモニウム、n−ブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリイソプロピルアンモニウム、トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム等のアンモニウム塩;N−メチルアニリニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジメチル−4−メチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−ジフェニルアニリニウム、N,N,N−トリメチルアニリニウム等のアニリニウム塩;ピリジニウム、N−メチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−メチル−4−メチル−ピリジニウム、N−ベンジルピリジニウム、3−メチル−N−ブチルピリジニウム、2−メチルピリジニウム、3−メチルピリジニウム、4−メチルピリジニウム、2,3−ジメチルピリジニウム、2,4−ジメチルピリジニウム、2,6−ジメチルピリジニウム、3,4−ジメチルピリジニウム、3,5−ジメチルピリジニウム、2,4,6−トリメチルピリジニウム、2−フルオロピリジニウム、3−フルオロピリジニウム、4−フルオロピリジニウム、2,6−ジフルオロピリジニウム、2,3,4,5,6−ペンタフルオロピリジニウム、2−クロロピリジニウム、3−クロロピリジニウム、4−クロロピリジニウム、2,3−ジクロロピリジニウム、2,5−ジクロロピリジニウム、2,6−ジクロロピリジニウム、3,5−ジクロロピリジニウム、3,5−ジクロロー2,4,6−トリフルオロピリジニウム、2−ブロモピリジニウム、3−ブロモピリジニウム、4−ブロモピリジニウム、2,5−ジブロモピリジニウム、2,6−ジブロモピリジニウム、3,5−ジブロモピリジニウム、2−シアノピリジニウム、3−シアノピリジニウム、4−シアノピリジニウム、2−ヒドロキシピリジニウム、3−ヒドロキシピリジニウム、4−ヒドロキシピリジニウム、2,3−ジヒドロキシピリジニウム、2,4−ジヒドロキシピリジニウム、2−メチル−5−エチルピリジニウム、2−クロロ−3−シアノピリジニウム、4−カルボキサミドピリジニウム、4−カルボキシアルデヒドピリジニウム、2−フェニルピリジニウム、3−フェニルピリジニウム、4−フェニルピリジニウム、2,6−ジフェニルピリジニウム、4−ニトロピリジニウム、4−メトキシピリジニウム、4−ビニルピリジニウム、4−メルカプトピリジニウム、4−t−ブチルピリジニウム、2,6−ジt−ブチルピリジニウム、2−ベンジルピリジニウム、3−アセチルピリジニウム、4−エチルピリジニウム、2−カルボン酸ピリジニウム、4−カルボン酸ピリジニウム、2−ベンゾイルピリジニウム等のピリジニウム塩;イミダゾリウム、1−メチル−イミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−メチル−N−ベンジルイミダゾリウム、1−メチル−3−(3−フェニルプロピル)イミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム塩;1−エチル−1−メチル−ピロリジニウム、1−ブチル−1−メチル−ピロリジニウム等のピロリジニウム塩;キノリニウム、イソキノリニウム等のキノリニウム塩、トリフェニルカルベニウム、トリ−4−メトキシフェニルカルベニウム等のカルベニウム塩;ジメチルフェニルフォスフォニウム、トリフェニルフォスフォニウム、テトラエチルフォスフォニウム、テトラフェニルフォスフォニウム等のフォスフォニウム塩;トリメチルスルフォニウム、トリフェニルスルフォニウム、等のスルフォニウム塩;ジフェニルヨードニウム、ジ−4−メトキシフェニルヨードニウム等のヨードニウム塩などが使用できる。この際、ホウ酸アニオンが上記アルカリ土類金属塩の形態で使用される場合には、本発明による塩は、アルカリ土類金属1個に対して、2個のホウ酸アニオンが結合する形態である。
【0047】
上記塩のうち、近赤外線吸収能をもたないカチオンとして好ましいのは、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、窒素を含有する有機カチオン塩である。具体的には、ナトリウム、アンモニウム、ピリジニウム、アニリニウム、イミダゾリウム、ピロリジニウム、及びキノリニウムのいずれかの構造を有するカチオンからなる塩がより好ましく使用される。特に好ましくは、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム塩、N,N−ジメチル−4−メチルアニリニウム塩、N,N−ジエチルアニリニウム塩、1−メチル−イミダゾリウム塩、キノリニウム塩が使用できる。上記ホウ酸塩は近赤外線吸収能をもたないため、近赤外線吸収色素と共に使用するのが好ましい。その際、ホウ酸塩は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0048】
なお、本発明において、上記カチオンは、1種を単独でホウ酸アニオンの対イオンとして使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態でホウ酸アニオンの対イオンとして使用されてもいずれでもよい。
【0049】
本発明の近赤外線吸収材料における式(1)アニオンの塩の配合量は、用途によって適宜選択することが出来るが、併用する近赤外線吸収色素1モルに対して、好ましくは0.5〜8モル、より好ましくは1〜5モルである。この際、アニオン塩の配合量が0.5モル未満であると、電子吸引性基を有するアリール基が結合したホウ素原子の添加量が不十分であり、十分な耐久性の向上が得られない可能性があり、逆に8モルを超えると、添加に見合う効果が得られず経済的でない可能性がある。
【0050】
次に、前者の場合、即ち、本発明のホウ酸塩が上記式(1)のホウ酸アニオンと近赤外線能を有するカチオン、特に近赤外線能を有する有機カチオンとの塩である態様を説明する。この場合には、ホウ酸塩自体が近赤外線吸収色素としての機能を併せ持つので、本発明のホウ酸塩自体が近赤外線吸収材料となり、ホウ酸アニオンの存在により、当該近赤外線吸収材料は、耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性に優れる。
【0051】
上記式(1)のホウ酸アニオンと対イオンを形成できる近赤外線吸収能を有するカチオンは、700〜1200nmの波長範囲の近赤外線吸収能に優れるカチオンであれば特に制限されない。例えば、ジイモニウムカチオン、シアニン色素系カチオン等が挙げられる。これらのうち、ジイモニウムカチオンは、900〜1200nmの波長範囲の近赤外線吸収能に優れ、シアニン色素系カチオンは、700〜1000nmの波長範囲の近赤外線吸収能に優れる。
【0052】
上記(1)のホウ酸アニオンと対イオンを形成できる近赤外線吸収能を有するカチオンがジイモニウムカチオンである場合の、ジイモニウムカチオンは、900〜1200nmの波長範囲の近赤外線のカット効率に優れるものであれば特に制限されないが、好ましくは下記式(2)のカチオンである。このような下記式(2)で示されるジイモニウムカチオンは、可視領域の透明性が高く、プラズマディスプレー用光学に使用することによって、ディスプレーの外観を向上させたり、光半導体素子用光学フィルターに使用することによって、CCDカメラの感度を高めることができる。
【0053】
【化3】

【0054】
上記ジイモニウムカチオンを表わす式(2)において、R〜R10で示す置換基としては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、または置換基を有する炭素数1〜10のアルキル基である。
【0055】
ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0056】
炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、等の直鎖、分岐状、脂環式アルキル基等が挙げられる。
【0057】
また、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基に結合しうる置換基としては、シアノ基;ヒドロキシル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、メトキシブトキシ基、エトキシブトキシ基等の炭素数2〜8のアルコキシアルコキシ基;メトキシメトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基等の炭素数3〜15のアルコキシアルコキシアルコキシ基;アリルオキシ基;フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜12のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基等がある。具体的にはR〜R10はトリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3,−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基等が挙げられる。
【0058】
本発明では、R〜R10は、同一であってもあるいは異なるものであってもよいが、すべて同じであることが好ましい。また、ジアミンの結合位置は、フェニレンジアミン骨格に結合する窒素原子に対してp−位であるものが合成上は簡便であるが、特に限定されるものではない。
【0059】
上記式(1)のホウ酸アニオンと上記式(2)のジイモニウムカチオンとの塩の製造方法は、特に制限されず公知の方法によってあるいは公知の方法を修飾した方法によって製造できる。例えば、ホウ酸アニオンとジイモニウムカチオンとの塩は、1,4−フェニレンジアミン誘導体を銀塩等の酸化剤や電解酸化によって酸化させる際に系中に上記式(1)のホウ酸アニオンを共存させることで製造することができる。例えば、特公昭43−25335号公報に記載されている方法と同様の方法で製造することができる。
【0060】
具体的には、p−フェニレンジアミンと1−クロロ−4−ニトロベンゼンをウルマン反応させて得られた生成物を還元することにより得られる下記式(4):
【0061】
【化4】

【0062】
に示すアミン化合物を、DMF(N,N‐ジメチルホルムアミド)、DMI(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン)、NMP(N−メチルピロリドン)等の水溶性極性溶媒中で、好ましくは50〜140℃で所望のR〜R10に対応するハロゲン化化合物(例えば、R〜R10が全てi−CのときはBrCHCH(CH)と反応させることによって、全ての置換基(R〜R10)が同一である1,4−フェニレンジアミン誘導体を得ることができる。上記方法において、複数のハロゲン化物を併用して複数種の置換基を導入してもよい。
【0063】
その後、上記で合成した1,4−フェニレンジアミン誘導体を、上記式(1)のホウ酸塩(例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのナトリウム塩)と共に、DMF、DMI、NMP等の水溶性極性溶媒に溶解し、銀塩などの酸化剤を添加して5〜70℃で反応させ、式(1)のホウ酸アニオンと式(2)のジイモニウムカチオンとの塩を得ることができる。また、銀塩を使用する代わりに電解酸化によって酸化してもよい。なお、上記式(1)のホウ酸塩は、1,4−フェニレンジアミン誘導体1モルに対して、2モル以上を使用する。
【0064】
さらに、公知のジイモニウム塩と上記式(1)で示すホウ酸アニオンからなる塩とを有機溶媒中で反応させることによっても、上記式(1)で示すホウ酸アニオンを有するジイモニウム色素を製造することができる。このような方法で使用できる上記式(1)のホウ酸アニオンを有する塩としては、上記式(1)で示すホウ酸アニオンのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩等が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属塩であり、より好ましくはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩である。例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩である。
【0065】
また、ジイモニウム色素としては、上記(2)のジイモニウムカチオンとヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオンからなる塩が使用できる。
【0066】
上記ホウ酸化合物と上記公知のジイモニウム色素とを有機溶媒中で反応させる際の、上記ホウ酸アニオンの使用量は、ジイモニウム塩1モルに対して、ホウ酸塩化合物を2モル以上、好ましくは2〜5モル、より好ましくは2〜4モルである。2モル未満では置換率が低く、5モル以上は非経済的である。
【0067】
反応に用いる有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、アセトニトリル等のニトリル系、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル系、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル等のグリコールエーテル系、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系が使用できる。これらを単独で使用しても混合して使用しても良い。ホウ酸塩化合物、ジイモニウム塩の両方に対して溶解性が高い溶媒が好ましい。
【0068】
上記溶媒の使用量はホウ酸塩化合物とジイモニウム塩の合計重量の1〜100倍であることが好ましく、より好ましくは2〜50倍である。1倍未満ではホウ酸塩化合物やイモニウム塩の溶解性が悪く、100倍を超えると非経済的である。反応温度は、ジイモニウム塩の分解を抑制する観点から、60℃以下であるのが好ましく、10〜50℃であるのがより好ましい。反応は、通常、瞬時に完結する。
【0069】
反応液を静置させて目的の化合物が析出する場合はろ過によって回収する。反応液を静置させても目的の化合物が析出しない場合は、反応液に脱イオン水を添加し目的の化合物を析出させ、ろ過によって回収する。脱イオン水の使用量は反応液重量の5〜1000倍が好ましく、より好ましくは10〜500倍である。5倍未満では収率が低下し、1000倍を超えると多量の廃水が生じるため非経済的である。回収した生成物は脱イオン水で洗浄し、原料に由来する不要なイオンを除去する。
【0070】
このような態様のホウ酸塩は、特にホウ酸アニオンとジイモニウムカチオンとの塩である場合には、最大吸収波長が900〜1200nmの波長範囲の近赤外線吸収能と可視領域の透明性が高く、近赤外線吸収色素として好適に使用することができ、このホウ酸塩を添加することにより近赤外線吸収材料となりうる。また、光記録材料としても使用できる。
【0071】
また、本発明のホウ酸塩が上記式(1)のホウ酸アニオンとシアニン色素系カチオンとの塩である場合も、当該ホウ酸塩は近赤外線吸収能を有する。この場合のシアニン色素系カチオンは、700〜1000nmの波長範囲の近赤外線吸収能が高いものであれば特に制限されないが、好ましくはインドリウム系カチオンが使用できる。具体的には、下記式(a)〜(i)で示されるカチオンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような態様のホウ酸塩は、最大吸収波長が700〜1000nmの波長範囲の近赤外線吸収能と可視領域の透明性が高く、近赤外線吸収色素として好適に使用することができ、このホウ酸塩を添加することにより近赤外線吸収材料となりうる。また、光記録材料としても使用できる。
【0072】
【化5】

【0073】
【化6】

【0074】
【化7】

【0075】
【化8】

【0076】
【化9】

【0077】
【化10】

【0078】
【化11】

【0079】
【化12】

【0080】
【化13】

【0081】
3.近赤外線吸収色素
本発明のホウ酸塩は、近赤外線吸収材料(色素)の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上させることができる。したがって、本発明の第二は、本発明のホウ酸塩及び近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収材料に関するものである。上述したように、本発明のホウ酸塩は近赤外線吸収材料(色素)の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上できるため、本発明の近赤外線吸収材料は、優れた耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を発揮できる。また、本発明の近赤外線吸収材料は、可視領域での透明性にも優れている。
【0082】
本発明において、上記(2)で述べたように、本発明のホウ酸塩が上記式(1)のホウ酸アニオンと近赤外線吸収能を有するカチオンとの塩である場合には、それ自体に近赤外線吸収色素となりうる。このため、このような場合には、本発明の第二の近赤外線吸収材料は、本発明のホウ酸塩そのものであってもよい。この際、近赤外線吸収材料は、1種のホウ酸塩から構成されてもあるいは2種以上のホウ酸塩の混合物から構成されてもよい。この場合であっても、所望の近赤外線吸収能を補助するあるいは別の近赤外線波長の吸収を達成するために、下記に詳述するような他の近赤外線吸収色素を併用してもよい。または、当該式(1)のホウ酸アニオンと近赤外線吸収能を有するカチオンとの塩と、式(1)のホウ酸アニオンと近赤外線吸収能を持たないカチオンとの塩とを併用してもよい。これにより、色素の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性をさらに向上することが可能である。また、本発明のホウ酸塩が上記式(1)のホウ酸アニオンと近赤外線吸収能を持たないカチオンとの塩である場合には、下記に詳述するような近赤外線吸収色素との併用が必須である。ホウ酸塩の存在により、使用される近赤外線吸収色素の耐久性、特に耐熱性及び耐湿熱性を向上することができる。
【0083】
本発明の近赤外線吸収材料で使用できる近赤外線吸収色素は、特に制限されず、例えば、上記したような上記(1)のホウ酸アニオンと近赤外線吸収能を有するカチオンとの塩に加えて、公知の近赤外線吸収色素が使用できる。具体的には、シアニン系、ポリメチン系、スクアリリウム系、ポルフィリン系、ジチオール金属錯体系、フタロシアニン系、ジイモニウム系の近赤外線吸収色素等が挙げられる。これらの中でも、シアニン系及びジイモニウム系の近赤外線吸収色素は、可視領域の透明性に優れ、フタロシアニン系の近赤外線吸収色素は耐久性に優れるため、好ましい。
【0084】
本発明では、上記ジイモニウム系色素は、上記式(2)のジイモニウムカチオンと対アニオンからなる塩である。対アニオンは、特に制限されないが、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミドイオン、ペンタフルオロエタンスルホントリフルオロメタンスルホンイミドイオン、トリフルオロメタンスルホンヘプタフルオロプロパンスルホンイミドイオン、ノナフルオロブタンスルホントリフルオロメタンスルホンイミドイオン、1,3−ジスルホニルヘキサフルオロプロピレンイミドイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ベンゼンスルフィン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、マロン酸イオン、オレイン酸イオン、ステアリン酸イオン、クエン酸イオン、一水素二リン酸イオン、二水素一リン酸イオン、ペンタクロロスズ酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、硫酸イオン、バナジン酸イオン、ホウ酸イオンなどが使用できる。この際、ジイモニウムカチオンは、上記式(2)で示されるように、2価の陽イオンであるため、例えば、塩化物イオン等の1価のアニオンを使用する場合には、本発明によるジイモニウム系色素は、ジイモニウムカチオン1個に対して、2個のアニオンが結合する形態である。上記塩のうち、ジイモニウムカチオンと、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオンとの塩、特に好ましくはジイモニウムカチオンと、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオンとの塩が本発明では好ましく使用される。なお、ジイモニウムカチオンと、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオンとの塩は、本発明の第一において近赤外線吸収能を有するホウ酸塩の一である。
【0085】
また、本発明で使用されるシアニン系色素は、可視領域の透明性と近赤外線吸収能に優れるものであれば特に制限されないが、インドリウム系カチオンと対アニオンからなる塩が好ましく使用できる。インドリウム系カチオンとしては、上記式(a)〜(i)で示されるカチオンが好ましく使用できるが、これらに限定されるものではない。また、対アニオンとしては、特に制限されず、ジイモニウム系色素で列挙したものと同様の対アニオンが使用できる。なお、インドリウム系カチオンと、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオンとの塩は、本発明の第一において赤外線吸収能を有するホウ酸塩の一である。
【0086】
より具体的には、上記一般式(a)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、アメリカンダイソース社製のADS812MI;上記一般式(b)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0712;上記一般式(c)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0726;上記一般式(d)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、アメリカンダイソース社製のADS780MT;上記一般式(e)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0006;上記一般式(f)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0081;上記一般式(g)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0773;上記一般式(h)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製の商品名S0772;上記一般式(i)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製の商品名S0734等の市販されているものを用いることができる。
【0087】
本発明で使用できるフタロシアニン系化合物はとしては、近赤外線吸収能に優れるものであれば特に制限されず、公知のフタロシアニン系化合物が使用できるが、下記式(X)で表される化合物、または下記式(Y)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【0088】
式(X)で示されるフタロシアニン系化合物
【0089】
【化14】

【0090】
上記式(X)において、A〜A16は官能基を表し、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシスルホニル基、カルボキシル基、チオール基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアラルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基を表す。A〜A16の官能基は同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていてもよく、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子あるいはオキシ金属を表す。なお、本明細書において、「アシル基」とは、日刊工業新聞社発行の第三版科学技術用語大辞典の17頁に記載される定義と同様であり、具体的には、有機酸からヒドロキシル基が除去された基であり、式:RCO−(Rは、脂肪基、脂環基または芳香族基である)で表される基である。
【0091】
(末端がアミノ基以外の官能基の場合)
上記式(X)において、官能基A〜A16としてのハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、等の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ジフェニルメチルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルチオ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基、ジフェニルメチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、iso−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、iso−ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、n−ヘプチルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキルスルホニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていても良い炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよいアラルキルスルホニル基としては、ベンジルスルホニル基、フェネチル基、ジフェニルメチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基としてはメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンジルカルボニル基、フェニルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンゾイル基等のアラルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、iso−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、iso−ブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル、ナフチルカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ジフェニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、iso−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、iso−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、n−ヘプチルカルボニルオキシ基、3−ヘプチルカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールカルボニルオキシ基としては、ベンゾイルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基としては、ベンジルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基としては、ピロール基、イミダゾール基、ピペリジン基、モルホリン基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0092】
また、上記式(X)において、官能基A〜A16のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、複素環基に場合によっては存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0093】
(末端がアミノ基である官能基の場合)
上記式(X)において、官能基A〜A16の置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらの置換基は0個、1個、2個存在していてもよく、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合は連結基を介して繋がっていてもよい。
【0094】
上記置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0095】
また、金属Mとして2価の金属の例としては、Cu(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。3価の置換金属原子の例としては、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Fe−Cl、Ga−F、Ga−Cl、Ga−I、Ga−Br、In−F、In−Cl、In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Al−C、Al−C(CH)、In−C、In−C(CH)、In−C、Mn(OH)、Mn(OC)、Mn〔OSi(CH〕、Ru−Cl等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。4価の置換金属原子の例としては、CrCl、SiF、SiCl、SiBr、SiI、ZrCl、GeF、GeCl、GeBr、GeI、SnF、SnCl、SnBr、TiF、TiCl、TiBr、Ge(OH)、Mn(OH)、Si(OH)、Sn(OH)、Zr(OH)、Cr(R、Ge(R、Si(R、Sn(R、Ti(R{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す}Cr(OR、Ge(OR、Si(OR、Sn(OR、Ti(OR、{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基およびその誘導体を表す}、Sn(SR、Ge(SR{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す}などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。オキシ金属の例としては、VO、MnO、TiOなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0096】
式(Y)で示されるフタロシアニン系化合物
【0097】
【化15】

【0098】
上記式(Y)において、B〜B24は官能基を表し、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシスルホニル基、カルボキシル基、チオール基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアラルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基を表す。B〜B24の官能基は同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていてもよく、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価又は4価の置換金属原子あるいはオキシ金属を表す。
【0099】
(末端がアミノ基以外の官能基の場合)
上記式(Y)において、官能基B〜B24としてのハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、等の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ジフェニルメチルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルチオ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基、ジフェニルメチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、iso−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、iso−ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、n−ヘプチルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキルスルホニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていても良い炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよいアラルキルスルホニル基としては、ベンジルスルホニル基、フェネチルスルホニル基、ジフェニルメチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基としてはメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンジルカルボニル基、フェニルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンゾイル基等のアラルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、iso−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、iso−ブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル、ナフチルカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ジフェニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、iso−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、iso−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、n−ヘプチルカルボニルオキシ基、3−ヘプチルカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールカルボニルオキシ基としては、ベンゾイルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基としては、ベンジルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基としては、ピロール基、イミダゾール基、ピペリジン基、モルホリン基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
上記式(Y)において、官能基B〜B24としてのアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、複素環基に場合によっては存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0101】
(末端がアミノ基である官能基の場合)
上記式(Y)において、官能基B〜B24の置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基、ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらの置換基は0個、1個、2個存在していてもよく、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合は連結基を介して繋がっていてもよい。
【0102】
上記置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0103】
また、金属Mとして2価の金属の例としては、Cu(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。3価の置換金属原子の例としては、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Fe−Cl、Ga−F、Ga−Cl、Ga−I、Ga−Br、In−F、In−Cl、In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Al−C、Al−C(CH)、In−C、In−C(CH)、In−C、Mn(OH)、Mn(OC)、Mn〔OSi(CH〕、Ru−Cl等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。4価の置換金属原子の例としては、CrCl、SiF、SiCl、SiBr、SiI、ZrCl、GeF、GeCl、GeBr、GeI、SnF、SnCl、SnBr、TiF、TiCl、TiBr、Ge(OH)、Mn(OH)、Si(OH)、Sn(OH)、Zr(OH)、Cr(R、Ge(R、Si(R、Sn(R、Ti(R{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す}、Cr(OR、Ge(OR、Si(OR、Sn(OR、Ti(OR{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基およびその誘導体を表す}、Sn(SR、Ge(SR{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、またはその誘導体を表す}などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。オキシ金属の例としては、VO、MnO、TiOなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0104】
具体的には、商品名イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーIR−12、イーエクスカラーIR−14やTX−EX−906B、TX−EX−910B、TX−EX−902K(いずれも日本触媒製)が挙げられる。
【0105】
本発明の近赤外線吸収材料における近赤外線吸収色素の配合量は、用途によって適宜選択することが出来るが、樹脂の固形分に対して、0.1〜10重量%、好ましくは1〜8重量%である。この際、イオン性の近赤外線吸収色素の配合量が0.1重量%未満であると、色素の配合量が少なすぎて、十分な近赤外線吸収能が達成できなくなる可能性がある。逆に10重量%を超えると、添加に見合う効果が得られず経済的でない上、逆に可視領域での透明性が損なわれる可能性がある。
【0106】
4.樹脂
本発明の近赤外線吸収材料は、さらに樹脂を含むものであってもよい。本発明で使用する樹脂としては、一般に光学材料に使用しうるものであれば特に制限されないが、出来るだけ透明性の高いものが好ましく、より具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、アクリル酸エステル系ポリマー、メタクリル酸エステル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、ハロゲン化ビニル系ポリマー、ポバール等のビニル系ポリマー、ナイロン等のポリアミド系、ポリウレタン系、PET等のポリエステル系、ポリカーボネート系、エポキシ樹脂系、ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系などが挙げられる。
【0107】
これらのうち、溶融または溶液化が可能であるものが好ましく使用される。この際、溶融が可能な高Tgの樹脂を使用すると、成形加工が可能な近赤外線吸収材料が得られる。例えば、溶融が可能でTgが80℃以上の樹脂は、近赤外線吸収色素を練りこむことで成形材料とすることができる。このような樹脂として好適なものはポリメタクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エステル共重合体等のメタクリル系ポリマー、ポリカーボネート、ブチラール樹脂、シクロポリオレフィンポリマー、アートン(日本合成ゴム製)、ゼオノア(日本ゼオン製)、O−PET(鐘紡製)、スミペックス(住友化学製)、オプトレッツ(日立化成工業製)が挙げられる。
【0108】
また、溶液化が可能な樹脂は、近赤外線吸収材料を溶液化することで、コーティング材とすることができる。コーティング材用の樹脂として好適なものはメタクリル酸エステル系ポリマー、アートン(日本合成ゴム製)、ゼオノア(日本ゼオン製)、O−PET(鐘紡製)が挙げられる。特に好ましくはメチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状、脂環式、多環性脂環式アルキル基を有するメタクリル酸エステルを共重合したポリマーである。これは1種のメタクリル酸エステル単量体からなるポリマーであってもよいし、複数のメタクリル酸エステル単量体からなる共重合体であってもよい。また、上記のメタクリル酸エステル以外の単量体と共重合したポリマーであってもよい。他の単量体としてはスチレン、メチルスチレン等の芳香族系モノマー、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体、メタクリル酸、アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体、炭素数1〜15のアルキル基を有するアクリル酸エステル、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート等のヒドロキシ基を有する単量体等も使用できる。上記のメタクリル酸エステル以外の単量体の使用量は50重量%未満、好ましくは30重量%未満、さらに好ましくは10重量%未満である。具体的には、スミペックス(住友化学製)、オプトレッツ(日立化成工業製)、ハルスハイブリッドIR(日本触媒製)等が挙げられる。また、ガラス転移温度(Tg)が85℃よりも高い樹脂は、熱や水分による色素の劣化を効果的に抑制することができる。
【0109】
高Tgの樹脂は耐久性が極めて高いが、フィルム用途で使用する場合には割れやすいという欠点がある。樹脂の割れを抑制するためにはポリスチレン換算の重量平均分子量が5万以上、さらに好ましくは10万以上が好ましい。
【0110】
また、割れにくくするためにはポリマー構造は直鎖型のよりも分岐型の方が好ましい。分岐構造にすると高分子量化した場合でも樹脂の粘度が低く、取り扱いが容易になる。分岐型の樹脂を得るためにはマクロモノマー、多官能モノマー、多官能開始剤、多官能連鎖移動剤が使用できる。マクロモノマーとしては、AA−6、AA−2、AS−6、AB−6、AK−5(いずれも東亜合成製)等が使用できる。多官能モノマーとしては、ライトエスエルEG、ライトエスエル1,4BG、ライトエステルNP、ライトエステルTMP(いずれも共栄社化学)等が挙げられる。多官能開始剤としては、パーテトラA、BTTB−50(いずれも日本油脂製)、トリゴノックス17−40MB、パーカドックス12−XL25(いずれも火薬アクゾ製)等が挙げられる。多官能連鎖移動剤としてはペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)(いずれも堺化学製)等が使用できる。分岐構造の樹脂を得るためには多官能開始剤を使用することが、重合が容易となるため特に好ましい。分岐数が多く、マイルドな温度で反応するパーテトラA、パーカドックス12−XL25が特に好ましい。
【0111】
本発明の近赤外線吸収材料はTgが85℃以下であっても耐久性は良好である。樹脂の種類は特に制限されないが、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が使用できる。割れにくさと、高い耐久性を両立させるためには、樹脂のTgは65〜85℃、好ましくは70〜80℃であることが好ましい。
【0112】
一方、該樹脂は、粘着剤若しくは接着剤、またはこれらの混合物であってもよい。粘着剤や接着剤を用いた本発明の近赤外線吸収材料は、他の機能性フィルムと貼りあわせることができるため、簡便かつ経済的に光学フィルターを製造することができる。
【0113】
粘着剤として好適な樹脂には、アクリル系、シリコン系、SBR系等が挙げられる。特に好ましくはエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート等を主成分として重合したポリマーであり、具体的にはアクリセットAST(日本触媒)等が挙げられる。Tgが−80℃以上0℃以下が好ましい。さらに、好適な粘着剤は、シクロヘキシル基、イソボルニル基等の脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合したアクリル系樹脂である。脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合する際の当該エステルの使用量は、特に制限されないが、樹脂のTgが−80℃以上0℃以下となるような量であることが好ましい。
【0114】
また、カルボキシル基等の酸性基を有する(メタ)アクリル酸エステルを共重合することも可能であるが、このような場合には、耐湿性の向上を目的として、(メタ)アクリル酸エステルの共重合量は、樹脂の酸価が好ましくは30以下、より好ましくは15以下、最も好ましくは5以下となるような量であることが好ましい。本明細書において、「酸価」とは、樹脂固形分1gを中和するのに要する水酸化カリウムのmg量をいう。
【0115】
また、接着剤として好適な樹脂としては、一般的なシリコン系、ウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン等のポリオレフィン系が挙げられる。
【0116】
粘着剤や接着剤を樹脂として使用する場合は前記式(1)のアニオンを含む塩としてアニリニウム、ピリジニウム、キノリニウムカチオンを有する塩を使用するのが好ましい。また、近赤外線吸収色素としてはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオンを対アニオンとするジイモニウム色素を使用するのが好ましい。
【0117】
本発明の近赤外線吸収材料における樹脂の配合量は、用途によって適宜選択することができ、色素や溶剤の量によって適宜選択できる。
【0118】
5.添加剤
本発明の近赤外線吸収材料には波長380〜780nmの可視域に極大吸収波長を有する色素を添加してもよい。このような色素としては、シアニン系、テトラアザポルフィリン系、アズレニウム系、スクアリリウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、オキサジン系、アジン系、チオピリリウム系、ビオローゲン系、アゾ系、アゾ金属錯塩系、ビスアゾ系、アントラキノン系、ペリレン系、インダンスロン系、ニトロソ系、金属チオール錯体系、インジコ系、アゾメチン系、キサンテン系、オキサノール系、インドアニリン系、キノリン系等従来公知の色素を広く使用することができる。例えば、旭電化工業社製、商品名アデカアークルズTW−1367、アデカアークルズSG−1574、アデカアークルズTW1317、アデカアークルズFD−3351、アデカアークルズY944、林原生物化学研究所製、商品名NK−5451、NK−5532、NK−5450等が挙げられる。
【0119】
本発明の近赤外線吸収材料における上記色素の配合量は、用途によって適宜選択することが出来るが、樹脂の固形分に対して、0.1〜10重量%、好ましくは1〜8重量%である。
【0120】
更に、本発明の近赤外線吸材料には、その性能を失わない範囲でイソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤、UV硬化剤等の樹脂硬化剤を使用してもよい。ただし、硬化剤を使用しない近赤外線吸収材料の方が、コーティング液のポットライフが長くエージングが不要になるため、より好ましい。
【0121】
また、本発明の近赤外線吸材料にはフィルムやコーティング剤等に使用される公知の添加剤を用いることができ、分散剤、レベリング剤、消泡剤、粘性調整剤、つや消し剤、粘着付与剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収材、光安定化剤、消光剤、硬化剤、ブロッキング防止剤、滑り剤等が挙げられる。
【0122】
6.近赤外線吸収材の形態
本発明の近赤外線吸収材料は、上記式(1)のアニオン塩とその他の化合物が、それぞれ、固体(例えば、粉末、ペレット)の形態で混合されたものであってもよい。溶融可能な樹脂との混合物の場合は融点以上の温度に加熱することで、任意の形状に加工することができる。加工にはプレス機、押し出し成形機等が使用できる。
【0123】
コーティング法で基材上に近赤外線吸収層を形成させる場合は、溶媒を使用して近赤外線吸収材料を溶解、分散、懸濁させて液状にすることが好ましい。この際使用できる溶剤としては、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族系、トルエン、キシレンなどの芳香族系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系、アセトニトリル等のニトリル系、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル系、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル系、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系が使用できる。これらを単独で使用しても混合して使用してもよい。色素の耐久性を向上させるためにはメチルエチルケトン、酢酸エチル等の沸点が100℃以下の溶媒が好適である。また、コーティング時の塗膜外観を向上させるためにはトルエン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル等沸点が100〜150℃の溶媒が好適である。塗膜の耐クラック性を向上させるにはブチルセロソルブ、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の沸点が150〜200℃の溶媒が好適である。
【0124】
本発明の近赤外線吸収材は、光学用、農業用、建築用、車両用、画像記録用などのフィルムやシート、冷凍・冷蔵ショーケース、色素増感型太陽電池など太陽電池、半導体レーザー光などを光源とする感光材料、光ディスク用などの情報記録材料、眼精疲労防止材、感光紙などの光熱変換材、接着材などとして使用できる。特に、PDP用、CCD用などの光学フィルムやシート、光ディスク用などの情報記録材料、感光紙などの光熱変換材、粘接着材としての使用が好ましい。
【0125】
7.近赤外線吸収材(フィルム、積層膜)
本発明の第三は、本発明の近赤外線吸収材料を含む近赤外線吸収材である。本発明の近赤外線吸収材は、前記近赤外線吸収材料をフィルム状に成形したものであってもよいし、透明基材上に前記近赤外線吸収材料を含む塗膜を積層したものであってもよい。
【0126】
透明基材としては、一般に光学材に使用し得るものであって、実質的に透明であれば特に制限はない。具体的な例としてはガラス、シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のメタクリル系ポリマー、酢酸ビニルやハロゲン化ビニル等のビニル系ポリマー、PET等のポリエステル、ポリカーボネート、ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール、ポリアリールエーテル系樹脂等が挙げられる。更に、該透明基材は、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングを施してもよい。また、上記基材樹脂は、公知の添加剤、耐熱老化防止剤、滑剤、帯電防止剤等を配合することができ、公知の射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶融させてキャスティングする方法などを用い、フィルムまたはシート状に成形される。かかる透明基板を構成する基材は、未延伸でも延伸されていてもよく、また他の基材と積層されていてもよい。
【0127】
コーティング法で近赤外線吸収フィルムを得る場合の透明基材としてはPETフィルムが好ましく、特に易接着処理をしたPETフィルムが好適である。具体的にはコスモシャインA4300(東洋紡績製)、ルミラーU34(東レ製)、メリネックス705(帝人デュポン製)等が挙げられる。また、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、反射防止フィルム、ぎらつき防止フィルム、衝撃吸収フィルム、電磁波シールドフィルム、紫外線吸収フィルムなどの機能性フィルムも使用できる。これにより、簡便にプラズマディスプレー用や光半導体素子用の光学フィルターを作製することができる。フィルムを使用することが好ましい。
【0128】
これらのうち、ガラス、PETフィルム、易接着性PETフィルム、TACフィルム、反射防止フィルム、及び電磁波シールドフィルムが透明基材として好ましく使用される。
【0129】
透明基材として、ガラス等の無機基材を使用する場合にはアルカリ成分が少ないものが近赤外線吸収色素の耐久性の観点から好ましい。ソーダライムガラス等アルカリ成分を多く含む基材を使用する場合の近赤外線吸収材料としては、前記式(1)のアニオンを含む塩としてアニリニウム、ピリジニウム、キノリニウム等のカチオンを有する塩を使用するのが好ましい。また、近赤外線吸収色素としてはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオンを対アニオンとするジイモニウム色素を使用するのが好ましい。
【0130】
本発明の近赤外線吸収材の厚みは一般に0.1μmから10mm程度であるが、目的に応じて適宜決定される。また近赤外線吸収材に含まれる近赤外線吸収色素の含有量も目的に応じて、適宜決定される。
【0131】
本発明の近赤外線吸収材を作製する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば次の方法が利用できる。例えば、(a)樹脂に本発明の近赤外線吸収材料を混練し、加熱成形して樹脂板又はフィルムを作製する方法;(b)本発明の近赤外線吸収材料とモノマー又はオリゴマーを重合触媒の存在下にキャスト重合し、樹脂板又はフィルムを作製する方法;(c)本発明の近赤外線吸収材料を上記の透明基材上にコーティングする方法;(d)離型性のある基材上に本発明の近赤外線吸収材料を塗布した後に、上記の透明基材上へ張り合わせる方法;(e)本発明の近赤外線吸収材料を透明基材上に塗布した後に、他の透明基材上に張り合わせ硬化させる方法等である。
【0132】
(a)の作製方法としては、用いる樹脂によって加工温度、フィルム化(樹脂板化)条件等が多少異なるが、通常、本発明の近赤外線吸収材料を樹脂の粉体又はペレットに添加し、150〜350℃に加熱、溶解させた後、成形して樹脂板を作製する方法、押し出し機によりフィルム化(樹脂板化)する方法等が挙げられる。
【0133】
本発明の近赤外線吸収材料とモノマー又はオリゴマーを重合触媒の存在下にキャスト重合し、作製する(b)の方法において、それらの混合物を型内に注入し、反応させて硬化させるか、又は金型に流し込んで型内で硬い製品となるまで固化させて成形する。多くの樹脂がこの過程で成形可能であり、その様な樹脂の具体例としてアクリル樹脂、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコン樹脂、等が挙げられる。その中でも、硬度、耐熱性、耐薬品性に優れたアクリルシートが得られるメタクリル酸メチルの塊状重合によるキャスティング法が好ましい。
【0134】
重合触媒としては公知のラジカル熱重合開始剤が利用でき、例えばベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。その使用量は混合物の総量に対して、一般的に0.01〜5重量%である。熱重合における加熱温度は、一般的に40〜200℃であり、重合時間は一般的に30分〜8時間程度である。また熱重合以外に、光重合開始剤や増感剤を添加して光重合する方法も利用できる。
【0135】
(c)の方法としては、本発明の近赤外吸収材料を透明基材上にコーティングする方法、本発明の近赤外線吸収材料を微粒子に固定化し、該微粒子を分散させた塗料を透明基材上にコーティングする方法等がある。
【0136】
基材に近赤外線吸収材料を塗布する際には公知の塗工機が使用できる。例えばコンマコーター等のナイフコーター、スロットダイコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、マイクログラビアコーター等のキスコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター等のロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターが挙げられる。塗布前にコロナ放電処理、プラズマ処理等の公知の方法で基材の表面処理を行ってもよい。乾燥、硬化方法としは熱風、遠赤外線、UV硬化等公知の方法が使用できる。乾燥、硬化後は公知の保護フィルムとともに巻き取ってもよい。
【0137】
(d)の方法としては、本発明の近赤外吸収材料を離型性の基材上にコーティングした後に、透明基材上へ張り合わせる方法、本発明の近赤外線吸収材料を微粒子に固定化し、該微粒子を分散させた塗料を離型性の基材上にコーティングした後に、透明基材上へ張り合わせる方法等がある。
【0138】
この方法で製造する場合は、樹脂として粘着剤を使用した近赤外線吸収材料を使用することが好ましい。必要に応じて、さらに粘着付与剤、硬化剤を近赤外線吸収材料に配合してもよい。
【0139】
離型性の基材としてはシリコン系、オレフィン系、オイル系、フッ素系等の離型剤を塗布した紙やフィルム、フッ素系基材、オレフィン系基材等が用いられる。また、透明基材や塗工機は上記のものが使用できる。
【0140】
(e)の方法としては、本発明の近赤外線吸収材料を透明基材上に塗布した後に、他の透明基材上に張り合わせ硬化させる方法等である。
【0141】
この方法で製造する場合は、樹脂として接着剤を使用した近赤外線吸収材料を使用することが好ましい。必要に応じて、硬化剤を近赤外線吸収材料に配合してもよい。なお、透明基材や塗工機は上記のものが使用できる。
【0142】
また、本発明の近赤外線吸収材中の近赤外線吸収色素の添加量は、作製する樹脂板又はフィルムの厚み、吸収強度、可視光透過率等によって異なるが、上記(a)〜(e)の方法において、一般的に、バインダー樹脂の重量に対して、0.01〜20重量%である。
【0143】
本発明の近赤外線吸収材料は、可視領域の透明性と近赤外線の吸収能が高い優れた光学フィルターの構成材料となりうる。従来の近赤外線吸収材料と比べて耐久性、特に耐熱性と耐湿熱性が高いため、長期間の保管や使用でも外観と近赤外線吸収能が維持される。さらに、シートやフィルム状にするのが容易なため、プラズマディスプレー用や光半導体素子用に有効である。そのほかに、赤外線をカットする必要があるフィルターやフィルム、例えば断熱フィルム、サングラス、光記録材料等にも使用することができる。
【0144】
8.プラズマディスプレー用光学フィルター
本発明の近赤外線吸収材料はプラズマディスプレー用光学フィルターに好適である。したがって、本発明の第四は、本発明の近赤外線吸収材を用いてなる、プラズマディスプレー用光学フィルターである。このような光学フィルターは可視領域の全光線透過率が40%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上であり、波長800〜1000nmの近赤外線の透過率が30%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは5%以下である。
【0145】
本発明の光学フィルターは、上記の近赤外線吸収材料からなる近赤外線吸収層のほかに、電磁波遮蔽層、反射防止層、ぎらつき防止(アンチグレア)層、傷付き防止層、色調整層、ガラス等の支持体が設けられていてもよい。
【0146】
光学フィルターの各層の構成は任意に選択すればよいが、好ましくは反射防止層とぎらつき防止層のうち少なくともどちらか一層と、近赤外線吸収層の少なくとも2層を組み合わせたものが好ましく、さらに好ましくは電磁波遮蔽層を組み合わせた少なくとも3層を有する光学フィルターである。
【0147】
反射防止層、またはぎらつき防止層が人側の最表層となり、近赤外線吸収層と電磁波遮蔽層の組み合わせは任意である。また、3つ層の間には傷付き防止層、色調整層、衝撃吸収層、支持体、透明基材等の他の層が挿入されていてもよい。
【0148】
各層を粘着剤や接着剤を使用しても張り合わせてもよいし、近赤外線吸収層については層自体が粘着剤、接着剤であってもよい。特に、Tgが−80℃以上0℃以下の粘着剤や接着剤と混合して得た本発明の近赤外線吸収材料は他の透明基材との接着性に優れるため、反射防止フィルム、ぎらつき防止フィルム、衝撃吸収フィルム、電磁波シールドフィルムなどにこの赤外線吸収材料を介して他の層などを接着することで、容易に本発明のプラズマディスプレー用光学フィルターを作製することができる。なお、各層を張り合わせる際にはコロナ処理、プラズマ処理等の物理的な処理をしてもよいし、ポリエチレンイミン、オキサゾリン系ポリマー、ポリエステル、セルロース等の公知の高極性ポリマーをアンカーコート剤として使用してもよい。
【0149】
プラズマディスプレー用光学フィルターには、画面を見やすくするために、反射防止層またはぎらつき防止層を人側の最表層に設けることが好ましい。
【0150】
反射防止層は、表面の反射を抑えて、表面への蛍光灯などの外光の写り込みを防止するためのものである。反射防止層は、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物の薄膜からなる場合と、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させたものからなる場合とがあり、前者の場合には、蒸着やスパッタリング法を用いて単層あるいは多層の形態で、透明基材上に反射防止コーティングを形成させる方法がある。また、後者の場合は、透明フィルム上に、コンマコーター等のナイフコーター、スロットコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、グラビアコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターを用いて透明基材の表面に反射防止コーティングを塗布する方法がある。
【0151】
ぎらつき防止層は、シリカ、メラミン樹脂、アクリル樹脂等の微粉体をインキ化し、従来公知の塗布法で、本発明のフィルターのいずれかの層上に塗布し、熱或いは光硬化させることにより形成される。また、アンチグレア処理したフィルムを該フィルター上に貼りつけてもよい。
【0152】
また、傷付き防止層は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、多官能アクリレート等のアクリレートと光重合開始剤を有機溶剤に溶解或いは分散させた塗布液を従来公知の塗布法で、本発明のフィルターのいずれかの層上に、塗布し、乾燥させ、光硬化させることにより形成される。
【0153】
反射防止層またはぎらつき防止層と近赤外線吸収層とを有する光学フィルターは、反射防止フィルムまたはぎらつき防止フィルムの裏面に本発明の近赤外線吸収材からなる層を積層させるかことで得られる。積層させる方法としては、フィルム状にした本発明の近赤外線吸収材料と反射またはぎらつき防止フィルムを粘着剤で張り合わせてもよいし、溶液化した本発明の近赤外線吸収材料を反射またはぎらつき防止フィルムの裏面に直接塗布してもよい。反射またはぎらつき防止フィルムの裏面に近赤外線吸収層を設ける場合には、紫外線による色素の劣化を抑えるために、透明基材として紫外線吸収フィルムを使用するのが好ましい。
【0154】
プラズマディスプレー用光学フィルターには、パネルから発生する電磁波を除去するために、電磁波遮蔽層を設けることが好ましい。
【0155】
電磁波遮蔽層はエッチング、印刷等の手法で金属のメッシュをフィルム上にパターニングしたものを樹脂で平滑化したフィルムや、繊維メッシュの上に金属を蒸着させたものを樹脂中に抱埋したフィルムが使用される。
【0156】
近赤外線吸収層と電磁波遮蔽層の2層を有する光学フィルターは電磁波防止材料と近赤外線吸収材料を複合化することで得られる。複合化させる方法としては、フィルム状にした本発明の近赤外線吸収材料と電磁波遮蔽フィルムを粘着剤で張り合わせてもよいし、溶液化した本発明の近赤外線吸収材料を電磁波遮蔽フィルムの裏面に直接塗布してもよい。また、フィルム上の金属のメッシュを平滑化する樹脂として近赤外線吸収材料を使用することもできる。また、金属を蒸着した繊維を抱埋する樹脂として、本発明の近赤外収材料を使用することもできる。
【0157】
近赤外線吸収層と反射またはぎらつき防止層、電磁波遮蔽層の3層を有する光学フィルターとしては、本発明の近赤外線吸収材料からなる近赤外線吸収フィルム、反射またはぎらつき防止フィルム、電磁波遮蔽フィルムの3枚を粘着剤で張り合わせたものが使用できる。必要に応じてガラス等の支持体や色調整フィルム等の機能性フィルムを張り合わせてもよい。
【0158】
光学フィルターの製造工程やフィルム構成を簡略化するためには、複数の機能を有する複合化フィルムを使用するのがよい。例えば近赤外線吸収層と反射またはぎらつき防止層を含む複合化フィルムを粘着剤で電磁波遮蔽フィルムに張り合わせた光学フィルターや、近赤外線吸収層と電磁波遮蔽層を含む複合化フィルムを粘着剤で反射またはぎらつき防止フィルムに張り合わせた光学フィルター、電磁波遮蔽層と反射またはぎらつき防止層を含む複合化フィルムを粘着剤で近赤外線吸収フィルムに張り合わせた光学フィルターが挙げられる。電磁波遮蔽層と反射またはぎらつき防止層を含む複合化フィルムについては近赤外線吸収材料が粘着剤であってもよい。
【0159】
本発明のプラズマディスプレー用光学フィルターは表示装置から離して設置してもよいし、表示装置に直接貼り付けてもよい。表示装置から離して設置する場合は支持体としてガラスを使用するのが好ましい。表示装置に直接張り合わせる場合にはガラスを使用しない光学フィルターが好ましい。
【0160】
9.プラズマディスプレー
本発明の近赤外線吸収材料を積層した光学フィルターをプラズマディスプレーに搭載すると、長期間にわたり良好な画質が維持される。したがって、本発明の第五は、本発明の近赤外線吸収材料、本発明の近赤外線吸収材、または本発明の光学フィルターを用いてなる、プラズマディスプレーである。表示体に直接、光学フィルターを張り合わせたプラズマディスプレーはより鮮明な画質が得られる。光学フィルターを直接張り合わせる場合は表示体のガラスが強化ガラスを使用するか、衝撃吸収層を設けた光学フィルターを使用するのが好ましい。
【0161】
表示装置に貼り付ける際の粘着剤としては、スチレンブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム等のゴム類やポリアクリル酸メチル、ボリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のポリアクリル酸アルキルエステル等が挙げられ、これらは単独に用いられてもよいが、さらに粘着付与剤としてピッコライト、ポリベール、ロジンエステル等を添加したものを用いてもよい。また、特開2004−263084号公報で示されているように衝撃吸収能を有する粘着剤を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0162】
この粘着層の厚みは、通常5〜2000μm、好ましくは10〜1000μmである。粘着剤層の表面に剥離フィルムを設け、粘着剤層にゴミ等が付着しないように、プラズマディスプレーの表面に張り付けるまで粘着剤層を保護するのもよい。この場合、フィルターの縁綾部の粘着剤層と剥離フィルムとの間に、粘着剤層を設けない部分を形成したり、非粘着性のフィルムを挟む等して非粘着部分を形成し、剥離開始部とすれば貼着時の作業がやりやすい。
【0163】
衝撃吸収層は表示装置を外部からの衝撃から保護するためのものである。支持体を使用しない光学フィルターで使用するのが好ましい。衝撃吸収材としては特開2004−246365号公報、特開2004−264416号公報に示されているような、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ウレタン系、シリコン系樹脂等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0164】
実施例
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。なお、部は重量部を示す。また、近赤外線吸収能、可視領域の透明性および耐久性の評価は以下に従った。
【0165】
(1)近赤外線吸収能の評価(近赤外線透過率)
可視−近赤外スペクトルの測定にはUV−3100(島津製作所製)を使用し、波長1090nmまたは835nmでの透過率を評価した。
【0166】
(2)可視領域の透明性の評価(可視透過率)
全光線透過率の測定にはΣ90システム(日本電色工業製)を使用した。
【0167】
(3)耐熱性の評価
試験体を100℃のオーブン中に120時間静置し、試験前後での可視−近赤外領域の透過スペクトルと色差(C光源2°視野でのL*a*b*)を測定した。可視−近赤外スペクトルの測定にはUV−3100(島津製作所製)を使用し、波長1090nmまたは835nmでの透過率の変化(ΔT)を評価した。色差の測定にはSE2000(日本電色工業製)を使用し、b*の変化(Δb*)を評価した。
【0168】
(4)耐湿熱性の評価
試験体を80℃ 95%RHの恒温恒湿器中に120時間静置し、試験前後での可視−近赤外領域の透過スペクトルと色差(C光源2°視野でのL*a*b*)を測定した。可視−近赤外スペクトルの測定にはUV−3100(島津製作所製)を使用し、波長1090nmまたは835nmでの透過率の変化(ΔT)を評価した。色差の測定にはSE2000(日本電色工業製)を使用し、b*の変化(Δb*)を評価した。
【0169】
(実施例1−1)
N,N,N’,N’,−テトラキス(p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウムの六フッ化アンチモン酸塩(以下ジイモニウムSbF6塩と称する)5部をメチルエチルケトン(以下MEKと称する)95部に溶解し、近赤外線吸収色素溶液1を調製した。次に、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム(日本触媒製 TEPBNa)5部をMEK95部に溶解し、ホウ酸塩溶液1を調製した。次に、樹脂としてハルスハイブリッドIR−G205(日本触媒製 固形分29%)を使用し、樹脂を69部、近赤外線吸収色素溶液1を4部、ホウ酸塩溶液1を2部、MEKを22部混合し、塗料固形分21%の近赤外線吸収材溶液A1(固形分比:樹脂/色素/ホウ酸塩=100/1/0.5)を得た。
【0170】
(実施例1−2)
近赤外線吸収材溶液A1をバーコーター(No.34)で易接着処理PETフィルム(東洋紡績製 コスモシャインA4300)上に塗工し150℃の熱風乾燥器中で3分間乾燥させ、近赤外線吸収材A1を得た。近赤外線透過率、全光線透過率及び耐熱性の評価を行い、その結果を表1に示した。この際、近赤外線透過率は、波長1090nmで測定した。
【0171】
(実施例2−1)
樹脂としてハルスハイブリッドIR−G205(日本触媒製 固形分29%)を使用し、樹脂69部、近赤外線吸収色素溶液1を4部、実施例1−1で得られたホウ酸塩溶液1を8部、MEK17部を混合し、塗料固形分21%の近赤外線吸収材溶液A2(固形分比 樹脂/色素/ホウ酸塩=100/1/2)を得た。
【0172】
(実施例2−2)
近赤外線吸収材溶液A2を実施例1−2と同様に塗工、乾燥し、近赤外線吸収材A2を得た。これを実施例1−2と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0173】
(比較例1−1)
バインダーとしてハルスハイブリッドIR−G205(日本触媒製 固形分29%)を使用し、バインダー69部、近赤外線吸収色素溶液1を4部、MEK23部を混合し、塗料固形分21%の近赤外線吸収材溶液B1(固形分比 樹脂/色素/ホウ酸塩=100/1/0)を得た。
【0174】
(比較例1−2)
近赤外線吸収材溶液B1を実施例1−2と同様に塗工、乾燥し、近赤外線吸収材B1を得た。これを実施例1−2と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0175】
【表1】

【0176】
上記表1に示される結果から、本発明の近赤外線吸収材A1及びA2は、本発明のホウ酸塩を使用しなかった近赤外線吸収材B1と比較して、近赤外線の透過率と全光線透過率は同等であるが、100℃で120時間経過後の光学特性変化(透過率変化)が、本発明の近赤外線吸収材A1及びA2の方が、近赤外線吸収材B1に比して有意に、小さく、これから、本発明の近赤外線吸収材料は、劣化しにくいことが示唆された。
【0177】
(実施例3−1)
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム(日本触媒製 TEPBNa)1.05部とジイモニウムSbF6塩0.70部とを温度25℃でメチルエチルケトン(MEK)10部に溶解した。引き続き、脱イオン水500部中に得られた溶液全量を一括添加し、25℃で1時間静置させた。析出物をろ過によって回収し、80℃で乾燥させて黒色固体0.83部を得た。
【0178】
得られた黒色固体をMEKに溶解し蛍光X線スペクトルで元素分析したところ、アンチモンは検出されなかった。また、重ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して測定したF−NMRはTEPBのピークと一致し、SbF6に由来するピークは検出されなかった。また、MEKに溶解して測定した可視−近赤外スペクトルは原料のジイモニウム色素と同等のスペクトルとなり、ジイモニウム構造が維持されていることを確認した。
【0179】
以上の結果から得られた黒色固体が原料ジイモニウムのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩(以下、ジイモニウムTEPB塩と称する)であることを確認した。MEK溶液中で測定したジイモニウムTEPB塩の可視−近赤外スペクトルを図1に、KBr法で測定したジイモニウムTEPB塩のIRスペクトルを図2に示した。
【0180】
(実施例3−2)
ジイモニウムTEPB塩2部をMEK98部に溶解して近赤外線吸収色素溶液2を調製した。バインダーとしてハルスハイブリッドIR−G205(日本触媒製 固形分29%)を使用し、バインダー69部、近赤外線吸収色素溶液2を17部、MEK11部を混合し、塗料固形分21%の近赤外線吸収材溶液A3(固形分比 樹脂/色素/ホウ酸塩=100/1.7/0.0)を得た。
【0181】
(実施例3−3)
近赤外線吸収材溶液A3を実施例1−2と同様に塗工、乾燥し、近赤外線吸収材A3を得た。これを実施例1−2と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0182】
(比較例2−1)
ジイモニウムSbF6塩を使用した。MEK溶液中で測定したジイモニウムSbF6塩の可視−近赤外スペクトルを図3に、KBr法で測定したジイモニウムSbF6塩のIRスペクトルを図4に示した。
【0183】
(比較例2−2)
ジイモニウムSbF6塩2部をMEK98部に溶解して近赤外線吸収色素溶液3を調製した。バインダーとしてハルスハイブリッドIR−G205(日本触媒製 固形分29%)を使用し、バインダー69部、近赤外線吸収色素溶液3を10部、MEK17部を混合し、塗料固形分21%の近赤外線吸収材溶液B2(固形分比 樹脂/色素/ホウ酸塩=100/1.0/0)を得た。
【0184】
(比較例2−3)
近赤外線吸収材溶液B2を実施例1−2と同様に塗工、乾燥し、近赤外線吸収材B2を得た。これを実施例1−2と同様に評価し、その結果を表2に示した。
【0185】
(比較例3−1)
テトラフェニルホウ酸ナトリウム(同仁化学製 Kalibor)0.51部とジイモニウムSbF6塩0.70部とを温度25℃でMEK(MEK)10部に溶解し,静置すると析出物が発生した。この溶液と析出物をMEK5部で洗浄しながら脱イオン水500部中に全量を一括添加し、25℃で1時間静置させた。析出物をろ過によって回収し、これを室温で真空乾燥させて、赤褐色固体0.83部を得た。
【0186】
得られた赤褐色固体をMEKに溶解し蛍光X線スペクトルで元素分析したところ、アンチモンは検出されなかった。また、アニオンの質量スペクトルからはテトラフェニルボレートに由来するピークが検出された。また、MEKに溶解すると徐々に溶液が緑色に変色し、可視−近赤外スペクトルは原料のジイモニウムSbF6塩よりも可視領域の吸収が大きく、近赤外領域の吸収が小さいことを確認した。
【0187】
以上の結果から、得られた赤褐色個体は原料ジイモニウムのテトラフェニルホウ酸塩(ジイモニウムBPh4塩と称する)であるが、安定性が悪くアミニウム塩に変化しやすいことを確認した。MEK溶液中で測定したジイモニウムBPh4塩の可視−近赤外スペクトルを図5に、KBr法で測定したジイモニウムBPh4塩のIRスペクトルを図6に示した。
【0188】
(比較例3−2)
ジイモニウムBPh4塩2部をMEK98部に溶解して近赤外線吸収色素溶液4を調製した。バインダーとしてハルスハイブリッドIR−G205(日本触媒製 固形分29%)を使用し、バインダー69部、得られた色素溶液4 11部、MEK16部を混合し、塗料固形分21%の近赤外線吸収材溶液B3(固形分比 樹脂/色素/ホウ酸塩=100/1.1/0)を得た。
【0189】
(比較例3−3)
近赤外線吸収材溶液B3を実施例1−2と同様に塗工、乾燥し、近赤外線吸収材B3を得た。これを実施例1−2と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0190】
【表2】

【0191】
上記表2に示される結果から、本発明の近赤外線吸収材A3は、本発明のホウ酸アニオンをもたないジイモニウム系色素を使用した近赤外線吸収材B2と比較して、近赤外線の透過率と全光線透過率は同等であるが、100℃で120時間経過後の光学特性変化(透過率変化、色差変化)が、本発明の近赤外線吸収材A3の方が、近赤外線吸収材B2に比して有意に小さい。このことから、本発明の近赤外線吸収材料は、劣化しにくいことが示唆された。
【0192】
上記表2に示される結果から、本発明の近赤外線吸収材A3は、電子吸引基を持たないアリール基を有するホウ酸アニオンからなるジイモニウム系色素を使用した近赤外線吸収材B3と比較して、全光線透過率は同等であるが、近赤外線の吸収能は本発明の近赤外線吸収材料A3の方が大幅に高い。また、100℃で120時間経過後の光学特性変化(透過率変化、色差変化)も、本発明の近赤外線吸収材A3の方が、近赤外線吸収材B3に比して有意に小さく、このことから、本発明の近赤外線吸収材料は、劣化しにくいことが示唆された。
【0193】
(実施例4−1)
モノマーとしてメチルメタクリレート407.0部、ノルマルブチルアクリレート93.0部を混合し、モノマー混合物を得た。パーカドックス12−XL25(化薬アクゾ製)6.0部とトルエン100部を混合し、開始剤溶液を得た。このモノマー混合物のうち350部と、トルエン250部を、フラスコに添加し、温度計、攪拌機、窒素ガス導入管、還流冷却機、滴下漏斗をセットした。モノマー混合物のうち150部と開始剤溶液のうち31.8部を混合し、滴下漏斗に添加した。窒素ガスを20ml/分で流通させながら、フラスコ内を加熱して内温を100℃とした。開始剤溶液のうち74.2部をフラスコに添加し、重合反応を開始した。重合開始剤の投入後から20分後に、滴下漏斗のモノマー、開始剤溶液を60分かけて添加した。添加後75部のトルエンで滴下漏斗を洗浄し、フラスコ内に洗浄液を添加した。その後、60分間熟成し、希釈溶剤としてトルエンを150部添加した。さらに60分間熟成し、希釈溶剤としてトルエンを150部添加した。さらに60分間熟成し、希釈溶剤としてトルエンを150部添加した。さらに、60分間熟成し、110℃まで昇温した。昇温してから300分間熟成し、希釈溶剤としてトルエンを100部添加した。室温まで冷却し樹脂Aを得た。固形分は34.4%、重量平均分子量は19.8万、Tgは77℃であった。
【0194】
(実施例4−2)
N,N,N’,N’,−テトラキス(p−ジ(n−ブチル)アミノフェニル)−p−フェニレンジイモニウムのビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド塩6部、イーエクスカラーIR−10A(日本触媒製)5部をMEK89部に溶解し、近赤外線吸収色素溶液5を調製した。次にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸1−メチルイミダゾリウム5部をMEK95部に溶解し、ホウ酸塩溶液2を調製した。次に、樹脂Aを58部、近赤外線吸収色素溶液5を10部、ホウ酸塩溶液2を10部、MEK24部を混合し、塗料固形分21%の近赤外線吸収材溶液A4(固形分比:樹脂/色素/ホウ酸塩=100/5.5/2.5)を得た。
【0195】
(実施例4−3)
近赤外線吸収材溶液A4をバーコーター(No.34)で易接着処理PETフィルム(東洋紡績製 コスモシャインA4300)上に塗工し150℃の熱風乾燥器中で3分間乾燥させ、近赤外線吸収材A4を得た。近赤外線透過率、全光線透過率及び耐湿熱性の評価を行い、その結果を表3に示した。この際、近赤外線透過率は、波長1090nmで測定した。
【0196】
(実施例5−1)
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム5部をMEK95部に溶解し、ホウ酸塩溶液3を調製した。次に、樹脂Aを58部、近赤外線吸収色素溶液5を10部、ホウ酸塩溶液3を10部、MEK24部を混合し、塗料固形分21%の近赤外線吸収材溶液A5(固形分比:樹脂/色素/ホウ酸塩=100/5.5/2.5)を得た。
【0197】
(実施例5−2)
近赤外線吸収材溶液A5を実施例4−3と同様に塗工、乾燥し、近赤外線吸収材5を得た。これを実施例4−3と同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0198】
(比較例4−1)
樹脂Aを58部、近赤外線吸収色素溶液5を10部、MEKを32部混合し、塗料固形分21%の近赤外線吸収材溶液B4(固形分比:樹脂/色素/ホウ酸塩=100/5.5/0)を得た。
【0199】
(比較例4−2)
近赤外線吸収材溶液B4を実施例4−3と同様に塗工、乾燥し、近赤外線吸収材B4を得た。これを実施例4−3と同様に評価し、その結果を表3に示した。
【0200】
【表3】

【0201】
上記表3に示される結果から、本発明の近赤外線吸収材A4、A5は、本発明のホウ酸アニオンをも使用しない近赤外線吸収材B4と比較して、近赤外線の透過率と全光線透過率は同等であるが、80℃95%RHで120時間経過後の光学特性変化(透過率変化、色差変化)が、本発明の近赤外線吸収材A4、A5の方が、近赤外線吸収材B4に比して有意に小さい。このことから、本発明の近赤外線吸収材料は、劣化しにくいことが示唆された。
【0202】
(実施例6−1)
モノマーとして2−エチルヘキシルアクリレート(478.2部)、シクロヘキシルメタクリレート(120部)、ヒドロキシエチルアクリレート(1.8部)を秤量し、十分に混合し、モノマー混合物を得た。モノマー混合物(240部)と、酢酸エチル(147部)とを、温度計、攪拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器、および滴下ロートを備えたフラスコに添加した。モノマー混合物(360部)、酢酸エチル(16部)、および重合開始剤であるナイパーBMT−K40(0.72部)からなる滴下用モノマー混合物を滴下ロートに入れ、よく混合した。窒素ガスを20ml/分で流通させながら、フラスコの内温を84℃まで上昇させ、重合開始剤であるナイパーBMT−K40(0.96部)をフラスコに投入し、重合反応を開始させた。重合開始剤の投入から10分後に、滴下ロートに入れた滴下用モノマー混合物の滴下を開始した。滴下用モノマー混合物は、90分かけて、均等に滴下した。滴下終了後、酢酸エチル(50部)をフラスコに投入した。その後、反応液を、82℃で4.3時間熟成した。反応終了後、酢酸エチル(44.4部)を添加し、最後に、不揮発分が約45%になるようにトルエンで、反応液を希釈し、アクリル系重合体溶液を得た。これを粘着剤Aとした。該粘着剤Aの計算Tgは−51℃であり、酸価は0であった。
【0203】
(実施例6−2)
ジイモニウムSbF6塩2.5部、イーエクスカラーIR−10A(日本触媒製)2.5部をMEK95部に溶解し、近赤外線吸収色素溶液6を調製した。樹脂として粘着剤Aを使用し、粘着剤Aを89部、近赤外線吸収色素溶液6を16部、ホウ酸塩溶液1を16部、MEKを18部混合し、塗料固形分30%の近赤外線吸収材溶液A6(固形分比 樹脂/色素/ホウ酸塩=100/2/2)を得た。
【0204】
(実施例6−3)
近赤外線吸収材溶液A6を、バーコーター(No.50)で易接着処理PETフィルム(東洋紡績製 コスモシャインA4300)上に塗工し、150℃の熱風乾燥器中で3分間乾燥させ、厚みが10μmの塗膜を形成させた。この上にもう一枚の易接着処理PETフィルム(東洋紡績製 コスモシャインA4300)を張りあわせ、近赤外線吸収材A6を得た。この近赤外線吸収材A6の可視−近赤外吸収スペクトルを図7に示す。これを耐熱性試験の試験体とした。近赤外線透過率、全光線透過率及び耐熱性の評価を行い、その結果を表4に示した。この際、近赤外線透過率は、波長1090nmで測定した。
【0205】
(比較例5−1)
粘着剤Aを89部、近赤外線吸収色素溶液6を16部、MEKを31部混合し、塗料固形分30%の近赤外線吸収材溶液B5(固形分比 樹脂/色素/ホウ酸塩=100/2/0)を得た。
【0206】
(比較例5−2)
近赤外線吸収材溶液B5を用いて、実施例6−3と同様にして近赤外線吸収材B5を得た。この近赤外線吸収材B5の可視−近赤外吸収スペクトルを図8に示す。これを実施例6−3と同様に評価を行い、その結果を表4に示した。
【0207】
(比較例6−1)
テトラフェニルホウ酸ナトリウム(同仁化学製カリボール)5部をMEK95部に溶解し、ホウ酸塩溶液4を調製した。粘着剤Aを89部、近赤外線吸収色素溶液6を16部、ホウ酸塩溶液4を16部、MEKを31部混合し、塗料固形分30%の近赤外線吸収材溶液B6(固形分比 樹脂/色素/ホウ酸塩=100/2/2)を得た。
【0208】
(比較例6−2)
近赤外線吸収材溶液B6を用いて、実施例6−3と同様にして近赤外線吸収材B6を得た。この近赤外線吸収材B6の可視−近赤外吸収スペクトルを図9に示す。これを耐熱性試験の試験体とした。これを実施例6−3と同様に評価を行い、その結果を表4に示した。
【0209】
【表4】

【0210】
上記表4に示される結果のうち、まず、本発明の近赤外線吸収材A6及び、本発明のホウ酸塩溶液を使用しなかった近赤外線吸収材B5の結果を比較すると、本発明の近赤外線吸収材A6は、近赤外線吸収材B5と比較して、近赤外線の透過率と全光線透過率は同等であるが、100℃で120時間経過後の光学特性変化(透過率変化)が、本発明の近赤外線吸収材A6の方が、近赤外線吸収材B5に比して有意に、小さく、これから、本発明の近赤外線吸収材料は、劣化しにくいことが示唆された。
【0211】
また、本発明の近赤外線吸収材A6及び電子吸引性基を持たないアリール基を有するホウ酸アニオンからなる塩を使用した近赤外線吸収材B6の結果を比較すると、これらの吸収材は、同等の全光線透過率を示すものの、近赤外線透過率は、本発明の近赤外線吸収材A5の方が有意に低いことから、本発明の近赤外線吸収材A5は、近赤外線吸収材B6に比して、有意に高い近赤外線カット効率を発揮できることが示される。さらに、本発明の近赤外線吸収材A6及び近赤外線吸収材B6の耐熱性を比較すると、本発明の近赤外線吸収材A6の方が、近赤外線吸収材B6に比して、100℃で120時間経過後の光学特性変化(透過率変化)が有意に小さく、これから、本発明の近赤外線吸収材料は劣化しにくいことが示唆された。
【0212】
(実施例7−1)
撹拌装置、窒素導入管、滴下ロ−ト、温度計、冷却管を備えた4つ口フラスコに、アクリル酸2−エチルヘキシル278部、メタクリル酸シクロヘキシル120部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル2部、酢酸エチル258部を加え、窒素雰囲気下で85℃まで昇温した。内温が85℃に達した後、ナイパーBMT−K40(日本油脂社製)0.8部、酢酸エチル8部を投入して重合を開始した。反応開始10分後、アクリル酸2−エチルヘキシル417部、メタクリル酸シクロヘキシル180部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル3部、ナイパーBMT−K40を0.6部、酢酸エチル10部を90分かけて滴下した。滴下終了120、150、180、210分後にそれぞれアゾビスイソブチロニトリル1部、酢酸エチル10部を投入し、さらに還流下で2時間反応を行った後、最後に固形分濃度が40%になるように酢酸エチルで希釈し、粘着剤溶液Bを得た。得られた重合体の重量平均分子量は35万、計算Tgは−40℃、酸価は0であった。
【0213】
(実施例7−2)
ジイモニウムTEPB塩4部、イーエクスカラーIR−10A(日本触媒製)2部をMEK94部に溶解し、近赤外線吸収色素溶液7を調製した。次にテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸N,N−ジメチル−4−メチルアニリニウム10部をMEK90部に溶解し、ホウ酸塩溶液5を調製した。次に、粘着剤溶液Bを50部、近赤外線吸収色素溶液7を10部、ホウ酸塩溶液5を10部混合し、塗料固形分31%の近赤外線吸収材溶液A7(固形分比:樹脂/色素/ホウ酸塩=100/3/5)を得た。
【0214】
(実施例7−3)
近赤外線吸収材溶液A7を用いて、アプリケーターにて、易接着処理PETフィルム(東洋紡績社製、コスモシャインA4300)上に乾燥後の接着層厚みが20ミクロンとなるように塗工し、100℃の熱風乾燥機中で2分間乾燥させた。この感圧接着性フィルムをガラス板に貼り付けて近赤外線吸収材A7を得た。これを耐湿熱性試験の試験体とした。近赤外線透過率、全光線透過率及び耐湿熱性の評価を行い、その結果を表5に示した。この際、近赤外線透過率は、波長1090nmで測定した。
【0215】
(実施例8−1)
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸キノリニウム10部をMEK90部に溶解し、ホウ酸塩溶液6を調製した。次に、粘着剤溶液Bを50部、近赤外線吸収色素溶液7を10部、ホウ酸塩溶液6を10部混合し、塗料固形分31%の近赤外線吸収材溶液A8(固形分比:樹脂/色素/ホウ酸塩=100/3/5)を得た。
【0216】
(実施例8−2)
近赤外線吸収材溶液A8を用いて、実施例7−3と同様にして近赤外線吸収材A8を得た。これを実施例7−3と同様に評価を行い、その結果を表5に示した。
【0217】
(実施例9−1)
粘着剤溶液Bを50部、近赤外線吸収色素溶液7を10部、酢酸エチルを10部混合し、塗料固形分29%の近赤外線吸収材溶液A9(固形分比:樹脂/色素/ホウ酸塩=100/3/0)を得た。
【0218】
(実施例9−2)
近赤外線吸収材溶液A9を用いて、実施例7−3と同様にして近赤外線吸収材A9を得た。これを耐湿熱性試験の試験体とした。これを実施例7−3と同様に評価を行い、その結果を表5に示した。
【0219】
(比較例7−1)
ジイモニウムSbF6塩4部、イーエクスカラーIR−10A(日本触媒製)2部をMEK94部に溶解し、近赤外線吸収色素溶液8を調製した。粘着剤溶液Bを50部、近赤外線吸収色素溶液8を10部、酢酸エチルを10部混合し、塗料固形分29%の近赤外線吸収材溶液B7(固形分比:樹脂/色素/ホウ酸塩=100/3/0)を得た。
【0220】
(比較例7−2)
近赤外線吸収材溶液B7を用いて、実施例7−3と同様にして近赤外線吸収材B7を得た。これを耐湿熱性試験の試験体とした。これを実施例7−3と同様に評価を行い、その結果を表5に示した。
【0221】
【表5】

【0222】
上記表5に示される結果のうち、まず、近赤外線吸収材A9及び本発明のホウ酸アニオンを使用しない近赤外線吸収材B7の結果を比較すると、本発明の近赤外線吸収材A9は、近赤外線吸収材B7と比較して、同等の全光線透過率を示すものの、近赤外線透過率は、本発明の近赤外線吸収材A9の方が有意に低いことから、本発明の近赤外線吸収材A9は、近赤外線吸収材B7に比して、有意に高い近赤外線カット効率を発揮できることが示唆された。
【0223】
また、本発明のホウ酸アニオンを有するジイモニウム色素と、さらに本発明のホウ酸塩の両方を使用した近赤外線吸収材A7、A8、さらには本発明の近赤外線吸収材A9は、80℃95%RHで120時間経過後の光学特性変化(透過率変化)が、近赤外線吸収材A6に比して、有意に小さく、これからガラス基板上に粘着剤が使用されても、本発明の近赤外線吸収材料は劣化しにくいことが示唆された。
【0224】
(実施例10)
1.重合性ポリシロキサン(M−1)の合成
攪拌機、温度計および冷却管を備えた300mlの四つ口フラスコにテトラメトキシシラン144.5部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン23.6部、水19.0部、メタノール30.0部、アンバーリスト15(商品名、オルガノ社性の陽イオン交換樹脂)5.0部を入れ、65℃で2時間攪拌し、反応させた。反応混合物を室温まで冷却した後、冷却管に代えて蒸留塔、これに接続させた冷却管および流出口を設け、常圧下でフラスコ内温約80℃まで2時間かけて昇温し、メタノールが流出しなくなるまで同温度で保持した。さらに、2.67×10kPaの圧力下90℃の温度で、メタノールが流出しなくなるまで保持し、反応を更に進行させた。再び、室温まで冷却した後、アンバーリスト15を濾過し、数平均分子量が1,700の重合性ポリシロキサン(M−1)を得た。
【0225】
2.有機ポリマー(P−1)の合成
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管およびNガス導入口を備えた1リットルのフラスコに、有機溶剤として酢酸n−ブチル260部を入れ、Nガスを導入し、攪拌しながら、フラスコ内温を110℃まで加熱した。ついで重合性ポリシロキサン(M−1)12部、tert−ブチルメタクリレート19部、ブチルアクリレート94部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート67部、パーフルオロトオクチルエチルメタクリレート(ライトエステルFM−108、共栄社化学社製)48部、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)2.5部を混合した溶液を滴下口より3時間かけて滴下した。滴下後も同温度で1時間攪拌を続けた後、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.1部を30分おきに2回添加し、さらに2時間加熱して共重合を行ない、数平均分子量が12000重量平均分子量が27,000の有機ポリマー(P−1)が酢酸n−ブチルに溶解した溶液を得た。得られた溶液の固形分は48.2%であった。
【0226】
3.有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)の合成
攪拌機、2つの滴下口(滴下口イと滴下口ロ)、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、酢酸n−ブチル200部、メタノール500部を入れておき、内温を40℃に調整した。ついでフラスコ内を攪拌しながら、有機ポリマー(P−1)の酢酸n−ブチル溶液10g、テトラメトキシシラン30部、酢酸n−ブチル5部の混合液(原料液A)を滴下口イから、25%アンモニア水5部、脱イオン水10部、メタノール15部の混合液(原料液B)を滴下口ロから、2時間かけて滴下した。滴下後、冷却管に代えて蒸留塔、これに接続させた冷却管および流出口を設け、40kPaの圧力下、フラスコ内温を100℃まで昇温し、アンモニア、メタノール、酢酸n−ブチルを固形分が30%となるまで留去し、有機ポリマー複合無機微粒子中の無機微粒子と有機ポリマーの比率が70/30の有機ポリマー複合無機微粒子が酢酸n−ブチルに分散した分散体(S−1)を得た。得られた有機ポリマー複合無機微粒子の平均粒子径は23.9nmであった。なお、有機ポリマー複合無機微粒子中の無機微粒子と有機ポリマーの比率は、有機ポリマー複合微粒子分散体を1.33×10kPaの圧力下、130℃で24時間乾燥したものについて元素分析を行ない、灰分を有機ポリマー複合無機微粒子含有量として求めた。また、平均粒子径は、有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)1部を酢酸n−ブチル99部で希釈した溶液を用いて、透過型電子顕微鏡により粒子を撮影し、任意の100個の粒子の直径を読み取り、その平均を平均粒子径として求めた。
【0227】
4.反射フィルム
ジぺンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPE−6A、共栄社化学社製)8部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PE−3A、共栄社化学社製)2部を混合し、MEK40部に溶解した溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.5部をMEK2部に溶解した溶液を加え、ハードコート層塗布液を調製した。
【0228】
有機ポリマー複合無機微粒子分散体(S−1)9部、デスモジュールN3200(商品名、住化バイエルウレタン社製のイソシアネート硬化剤)0.3部、ジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ0.003部、メチルイソブチルケトン110部を混合し、低屈折率層塗布液を調製した。
【0229】
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4300、東洋紡績社製)に上記ハードコート層塗布液を、バーコーターを用いて塗布し、100℃で15分乾燥した後、高圧水銀灯で200mJ/cmの紫外線を照射することにより塗布層を硬化させ、膜厚5μmのハードコート層を形成した。次に、このハードコート層の上に上記の塗布層を硬化させ、膜厚5μmのハードコート層を形成した。次に、このハードコート層の上に低屈折率塗布液をバーコーターを用いて塗布し、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に反射防止膜を作成した。
【0230】
フィルムの反射防止膜側とは反対側の面をスチールウールで粗面化し、さらに黒インキを塗り、反射防止膜側の面の入射角5°における鏡面反射スペクトルを紫外可視分光光度計(UV−3100、島津製作所製)を用いて測定し、反射率が最小値を示す波長としてその反射率の最小値を求めた。得られた反射防止フィルムの反射率は波長550nmで0.45%であった。
【0231】
5.光学フィルター
得られた反射防止フィルムの裏面側に、近赤外線吸収材溶液A7を用いて、アプリケーターにて、乾燥後の感圧接着層厚みが20ミクロンとなるように塗工し、100℃の熱風乾燥機中で2分間乾燥させた。この感圧接着性フィルムをガラス板に貼り付けて光学フィルターを作製した。この光学フィルターの全光線透過率、反射率、近赤外線の透過率は良好だった。
【0232】
(実施例11−1)
式(c)のインドリウムカチオンの六フッ化リン酸塩(FEWケミカルズ製、S0728、以下インドリウムPF6塩と称する)5部をMEK95部に溶解し、近赤外線吸収色素溶液9を調製した。次に、樹脂として樹脂Aを使用し、樹脂を125部、近赤外線吸収色素溶液9を3.3部、ホウ酸塩溶液1を20部、MEKを48部混合し、塗料固形分21%の近赤外線吸収材溶液A11(固形分比:樹脂/色素/ホウ酸塩=100/0.43/2.5)を得た。
【0233】
(実施例11−2)
近赤外線吸収材溶液A11をバーコーター(No.34)で易接着処理PETフィルム(東洋紡績製 コスモシャインA4300)上に塗工し150℃の熱風乾燥器中で3分間乾燥させ、近赤外線吸収材A11を得た。近赤外線透過率、全光線透過率及び耐熱性の評価を行い、その結果を表6に示した。この際、近赤外線透過率は波長835nmで測定した。
【0234】
(実施例12−1)
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム(日本触媒製、TEPBNa)2.11部とインドリウムPF6塩0.80部とを温度25℃でテトラヒドロフラン(THF)20部に溶解した。次にロータリーエバポレーターを用いて40℃で溶媒を蒸発させ、得られた析出物を800部の脱イオン水に添加し、攪拌しながら分散させた。この分散液をろ過し、80℃で乾燥させて黒色固体を得た。
【0235】
得られた黒色固体をMEKに溶解し、MEKに溶解して測定した可視−近赤外スペクトルは原料のインドリウム系色素と同等のスペクトルであることを確認した。また、IRスペクトルと質量スペクトルからTEPBアニオンに由来するピークを確認した。以上の結果から得られた黒色固体が式(c)のインドリウムカチオンのテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩(以下、インドリウムTEPB塩と称する)であることを確認した。MEK溶液中で測定したインドリウムTEPB塩の可視−近赤外スペクトルを図10に、KBr法で測定したインドリウムTEPB塩のIRスペクトルを図11に示した。また、MEK溶液中で測定したTEPBNaの可視−近赤外スペクトルを図12に、KBr法で測定したTEPBNaのIRスペクトルを図13に、MEK溶液中で測定したインドリウムPF6塩の可視−近赤外スペクトルを図14に、KBr法で測定したインドリウムPF6塩のIRスペクトルを図15に示した。
【0236】
(実施例12−2)
インドリウムTEPB塩2部をMEK98部に溶解し、近赤外線吸収色素溶液10を調製した。次に、樹脂として樹脂Aを使用し、樹脂を63部、近赤外線吸収色素溶液10を5.5部、MEKを27部混合し、塗料固形分21%の近赤外線吸収材溶液A12(固形分比:樹脂/色素/ホウ酸塩=100/0.55/0)を得た。
【0237】
(実施例12−3)
近赤外線吸収材溶液A12を実施例11−2と同様に塗工、乾燥し、近赤外線吸収材A12を得た。これを実施例11−2と同様に評価し、その結果を表6に示した。
【0238】
(比較例8−1)
樹脂として樹脂Aを使用し、樹脂を125部、近赤外線吸収色素溶液9を3.3部、MEKを63部混合し、塗料固形分21%の近赤外線吸収材溶液B8(固形分比:樹脂/色素/ホウ酸塩=100/0.43/0)を得た。
【0239】
(比較例8−2)
近赤外線吸収材溶液B8を実施例11−2と同様に塗工、乾燥し、近赤外線吸収材B8を得た。これを実施例11−2と同様に評価し、その結果を表6に示した。
【0240】
【表6】

【0241】
上記表6に示される結果から、本発明の近赤外線吸収材A11、A12は、本発明のホウ酸塩を使用しなかった近赤外線吸収材B8と比較して、全光線透過率は同等であるが、近赤外線の透過率、100℃で120時間経過後の光学特性変化が、本発明の近赤外線吸収材A11、A13の方が、近赤外線吸収材B8に比して有意に、小さく、これから、本発明の近赤外線吸収材料は、劣化しにくいことが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0242】
本発明の近赤外線吸収材料は、近赤外線吸収能と可視領域の透明性が高く、耐熱性、耐湿熱性に優れることから、プラズマディスプレー用の光学フィルター、光半導体素子用光学フィルターとして有用である。また、光情報記録材料としても使用することができる。
【0243】
本出願は、2005年2月4日に出願された日本特許出願番号2005−029504号、2005年5月10日に出願された日本特許出願番号2005−137530号、及び2005年5月10日に出願された日本特許出願番号2005−137561号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】図1は、実施例3−1で得られたジイモニウムTEPB塩の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図2】図2は、実施例3−1で得られたジイモニウムTEPB塩のIRスペクトルを示す図である。
【図3】図3は、比較例2−1で使用したジイモニウムSbF6塩の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図4】図4は、比較例2−1で使用したジイモニウムSbF6塩のIRスペクトルを示す図である。
【図5】図5は、比較例3−1で使用したジイモニウムBPh4塩の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図6】図6は、比較例3−1で使用したジイモニウムBPh4塩のIRスペクトルを示す図である。
【図7】図7は、実施例6−3で作成した近赤外線吸収材A6の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図8】図8は、比較例5−2で作成した近赤外線吸収材B5の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図9】図9は、比較例6−2で作成した近赤外線吸収材B6の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図10】図10は、実施例12−1で得られたインドリウムTEPB塩の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図11】図11は、実施例12−1で得られたインドリウムTEPB塩のIRスペクトルを示す図である。
【図12】図12は、実施例12−1で使用したTEPBNaの可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図13】図13は、実施例12−1で使用したTEPBNaのIRスペクトルを示す図である。
【図14】図14は、実施例12−1で使用したインドリウムPF6塩の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図15】図15は、実施例12−1で使用したインドリウムPF6塩のIRスペクトルを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】

式中、Rは電子吸引性基を有するアリール基を示し;Rは有機基、ハロゲン基または水酸基を示し;mは1〜4の整数である、
で示されるアニオンを有する近赤外線吸収材料用ホウ酸塩。
【請求項2】
前記式(1)において、電子吸引性基が、−C2p+1(pは自然数)、−NO、−CN、−F、−Clおよび−Brからなる群より選ばれる少なくとも一種の置換基である、請求項1に記載の近赤外線吸収材料用ホウ酸塩。
【請求項3】
前記式(1)において、Rで示される電子吸引性基を有するアリール基が、電子吸引性基を有するフェニル基である、請求項1または2に記載の近赤外線吸収材料用ホウ酸塩。
【請求項4】
前記式(1)において、Rで示される電子吸引性基を有するアリール基が、ペンタフルオロフェニル基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線吸収材料用ホウ酸塩。
【請求項5】
前記式(1)で示されるアニオンがテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の近赤外線吸収材料用ホウ酸塩。
【請求項6】
前記式(1)で示されるアニオンと、有機カチオンとからなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の近赤外線吸収材料用ホウ酸塩。
【請求項7】
前記式(1)で示されるアニオンと、近赤外線吸収能を有するカチオンからなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の近赤外線吸収材料用ホウ酸塩。
【請求項8】
前記カチオンは、ジイモニウムカチオンまたはシアニン色素系カチオンの少なくとも一方である、請求項7に記載の近赤外線吸収材料用ホウ酸塩。
【請求項9】
前記式(1)で示されるアニオンと、下記式(2):
【化2】

式中、R〜R10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、または置換基を有する炭素数1〜10のアルキル基を表わす、
で示されるカチオン、
またはインドリウム系カチオンからなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の近赤外線吸収材料用ホウ酸塩。
【請求項10】
前記式(1)で示されるアニオンと、アンモニウム、ピリジニウム、アニリニウム、イミダゾリウム、ピロリジニウム及びキノリニウムからなる群より選択される一の構造を有するカチオンからなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の近赤外線吸収材料用ホウ酸塩。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のホウ酸塩及び近赤外線吸収色素を含む近赤外線吸収材料。
【請求項12】
前記近赤外線吸収色素は、請求項7〜9のいずれか1項に記載のホウ酸塩、ジイモニウム系色素、フタロシアニン系色素、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、及び金属ジチオール系色素からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項11に記載の近赤外線吸収材料。
【請求項13】
請求項10に記載のホウ酸塩、ならびに近赤外線吸収色素として請求項7〜9のいずれか1項に記載の少なくとも一のホウ酸塩を含む、請求項11または12に記載の近赤外線吸収材料。
【請求項14】
炭素数が1〜10の直鎖型、分岐型、脂環式、多環性脂環式アルキル基を有するメタクリル酸エステルを共重合してなる樹脂;ガラス転移温度が65〜85℃である樹脂;分岐構造を有する樹脂;粘着剤および/または接着剤;−80℃以上0℃以下のTg及び30以下の酸価を有する樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の樹脂をさらに含む、請求11〜13のいずれか1項に記載の近赤外線吸収材料。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の近赤外線吸収材料を含む近赤外線吸収材。
【請求項16】
透明基材に、請求項11〜14のいずれか1項に記載の近赤外線吸収材料を積層した近赤外線吸収材。
【請求項17】
前記透明基材は、ガラス、PETフィルム、易接着性PETフィルム、TACフィルム、反射防止フィルムまたは電磁波シールドフィルムである、請求項16に記載の近赤外線吸収材。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の近赤外線吸収材を用いてなる、プラズマディスプレー用光学フィルター。
【請求項19】
請求項15〜17のいずれか1項に記載の近赤外線吸収材を用いてなる、光半導体素子用光学フィルター。
【請求項20】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の近赤外線吸収材料、請求項15〜17のいずれか1項に記載の近赤外線吸収材、または請求項18に記載の光学フィルターを用いてなる、プラズマディスプレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−528706(P2008−528706A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537050(P2007−537050)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【国際出願番号】PCT/JP2006/301914
【国際公開番号】WO2006/082945
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】