説明

ホスフェートトリエステルを含む潤滑剤濃縮物

【課題】低コストで容易に製造することのできる、ホスフェートエステルを基にした新しい安定な潤滑剤濃縮物の提供。
【解決手段】本発明は、次の成分、(i)少なくとも1つのアミン、(ii)一般式(I)による少なくとも1つのホスフェート、(iii)少なくとも1つの酸、(iv)場合により、一般式(II):R20−(O(CHOCHCOO−Mを有する少なくとも1つのエーテルカルボン酸化合物、(v)場合により、少なくとも1つの更なる助剤または添加剤を含む潤滑剤濃縮物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤濃縮物に関し、その希釈使用溶液は食品工業における、特に浸漬または自動ベルト潤滑システムによるコンベヤーベルト装置の潤滑およびクリーニングに適する。
【0002】
本発明は、更に潤滑剤濃縮物または潤滑剤濃縮物の水性使用溶液の製造方法ならびにコンベヤーベルト装置、特に浸漬潤滑または自動ベルト潤滑装置による、特に食品工業におけるコンベヤーベルト装置の潤滑およびクリーニングのための潤滑剤濃縮物および水性使用溶液の使用に関する。したがって、この使用は特に食品の充填、特に飲料によるガラスおよびプラスチックボトル、特にこの場合はポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリカーボネート(PC)のボトル、ボックス、金属缶、ガラス、容器、再充填可能な缶、KEG等の樽または容器、飲料容器、紙および板紙容器等の充填に関する。
【背景技術】
【0003】
食品工業においては、潤滑剤濃縮物、別々にその水性使用溶液を使用する、金属、ガラス、紙、板紙および/またはプラスチックで作製された飲料包装品の運搬が一般に適用される。
【0004】
現在、飲料は幾つかの異なる容器で販売されている。このように、飲料はガラス瓶、プラスチックボトル、プラスチック容器、金属缶、ボックス、ワックスカートン等で提供される。充填プラントにおいては、これらの容器は幾つかの場所まで充填中に輸送されなければならない。一般的に、これは、これらの容器がガラス容器に関係する範囲では通常ステンレススチールまたはプラスチックからなる供給または運搬ベルト装置(チェーンまたは軌道を有する)、あるいはこれらの容器がガラス瓶またはガラス容器以外に関係する範囲ではポリプロピレンまたは或る種のポリアセテートのようなプラスチック材料からなる運搬ベルト装置により行われる。以降では、そのような装置を供給および運搬装置またはコンベヤーベルト装置と称する。
【0005】
上述の容器の充填および運搬中には時々容器が倒れたり邪魔することが起るが、コンベヤーベルトは障害なしに更に移動し続ける。特にこの場合には、ベルトが、ベルト上の容器が或る時間の間前方へ移動できない場合でも障害なく前方へ移動することができるためには、コンベヤーベルトの十分な潤滑が必要とされる。
【0006】
この目的のためには、既に前で述べた通り、飲料容器と接触する状態になる供給および運搬装置の部品を十分に潤滑にしクリーンにすることが要求される。運搬装置が十分に潤滑にされないと、これは、一方においては、容器が倒れることになり、あるいは他方においては、それぞれの充填、クリーニングまたはラベル化の場所に既に到達していてもこれらは停止しない結果となる。2種類の機能不全は運搬装置の長期間の停止時間および生産能力の著しい損失を生じる。
【0007】
現在、4つの主たるグループに基本的に分けることのできる知られている潤滑剤濃縮物の幾つかの異なるタイプが存在する:i)石鹸を基にする潤滑剤、ii)ポリシロキサンを基にする潤滑剤(例えば、国際公開第01/18160号に記載されているもの等)、iii)脂肪族アミンを基にする潤滑剤(例えば、国際公開第98/16603号に記載されているもの等)およびiv)ホスフェートエステルを基にする潤滑剤。更に、知られている組成物の多くは5〜8の範囲のpH値を有するが、7〜11のpH値を有する知られている潤滑剤組成物も存在するので、潤滑剤組成物(濃縮物および希釈水性使用溶液の両方)のpH値は異なる可能性がある。中性の範囲までの酸性内にpH値を有する潤滑剤組成物は、プラスチック材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)ボトル等を使用した場合に認められるストレスクラックが少ない利点を有する。それぞれの潤滑剤濃縮物にとって、個々の成分は、適用が意図されるpH範囲に対して安定な組成物を与えるために調和されなければならない。
【0008】
ホスフェートエステルを基にした潤滑剤の幾つかはまたアミン化合物を含む。米国特許第6756347B1号は、少なくとも1つのアルキルアルコキシル化ホスフェートエステル、1つのアリールアルコキシル化ホスフェートエステル、1つの芳香族または直鎖第四級アンモニウム抗菌剤および、水等の液体担体を含む潤滑剤組成物を開示している。ホスフェート成分は、2つのケース(アルキルアルコキシル化またはアリールアルコキシル化)では、ホスフェートモノエステルまたはホスフェートジエステルのいずれかである。前記組成物のpH値は6〜8.5の範囲である。
【0009】
ホスフェートエステルを基にするその他の潤滑剤は国際公開第00/22073号に開示されている。この潤滑剤は、ポリエチレンオキシドを基にするエステル成分を伴うホスフェートモノエステル(更にアミドで置換されている)を含む。前記潤滑剤組成物の欠点は、ホスフェートエステル成分の合成が五酸化リン等の抽出物を含んでかなり複雑であり、したがって、潤滑剤濃縮物の製造がむしろコスト集中的であることである。
【0010】
ホスフェートエステルを基にしたその他の潤滑剤組成物は特許公告第6330079号(JP−B6330079)において開示されていて、アルキルアミンおよびアルキル(ポリ)アルコキシル化ホスフェートモノエステルまたはホスフェートモノエステルおよびそれぞれのホスフェートジエステルとの混合物を含む。前記組成物は5〜8のpH値で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第01/18160号
【特許文献2】国際公開第98/16603号
【特許文献3】米国特許第6756347B1号
【特許文献4】国際公開第00/22073号
【特許文献5】特許公告第6330079号(JP−B6330079)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、低コストで容易に製造することのできる、ホスフェートエステルを基にした新しい安定な潤滑剤濃縮物の提供である。更に、新しい潤滑剤濃縮物は、ホスフェートエステルを基にした知られている潤滑剤と比較して少なくとも匹敵し得る、または好ましい実施形態では、減少された摩擦を引き起す高められた潤滑性を有するべきものである。また、コンベヤーベルト装置(軌道またはチェーン)上に潤滑剤フィルムの素早い形成を引き起す潤滑剤濃縮物を提供することが本発明の目的である。更に、潤滑剤フィルムがコンベヤーベルト装置に極めて均一に適用できることも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、以下の成分:
(i)少なくとも1つのアミン、
(ii)一般式(I)の少なくとも1つのホスフェート
【化1】

(式中、R1a、R1bおよびR1cは、互いに独立に同じか異なり、C〜C30−アルキルまたは−([CH−O)−R1d(ここで、mは2または3であり、nは1〜10であり、R1dはC〜C30−アルキル、フェニルまたはフェニル−(C〜C10−アルキル)−である)を表す)、
(iii)少なくとも1つの酸、
(iv)場合により、一般式(II)を有する少なくとも1つのエーテルカルボン酸化合物
20−(O(CHOCHCOO (II)
(式中、
20は、1〜22個の炭素原子を有する飽和、直鎖もしくは分岐アルキル残基あるいは2〜22個の炭素原子を有するモノもしくはポリ不飽和直鎖もしくは分岐アルケニルまたはアルキニル残基あるいは少なくとも1つのC〜C22−アルキル、C〜C22−アルケニルまたはC〜C22−アルキニルで場合により置換されているアリール残基であり、
nは0〜30の正数であり、mは2または3であり、
Mは水素またはアルカリ金属である)、
(v)場合により、少なくとも1つの更なる助剤または添加剤
を含む潤滑剤濃縮物であって、
前記濃縮物に関する成分(i)+(ii)+(iii)の割合が1〜100重量%であり、前記任意選択の成分(iv)および(v)が99重量%までの割合で存在してもよく、前記(i)〜(v)の割合が合計で100重量%となるように選択される潤滑剤濃縮物により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の潤滑剤濃縮物の利点は、低コストで容易に製造することができ、従来知られているホスフェートエステルを基にした潤滑剤組成物と比較して高められた潤滑性が与えられる点である。高められた潤滑性はコンベヤーベルト装置上で減少された摩擦を引き起し(摩擦係数μで決定される)、したがって、包装またはコンベヤーのチェーンの材質にかかわらず、使用される飲料包装品の改善された運搬をもたらす。
【0015】
更なる利点は、潤滑フィルムがコンベヤーベルト装置(軌道またはチェーン)上により素早く形成される点である。これは、これらのシステムが、好適に均一な潤滑フィルムを形成する軌道またはチェーン上に十分な量の潤滑剤を有する場合にのみ操作できるので、飲料包装品の改善された数(改善された生産能力)がコンベヤーベルト装置上で処理されることができることを意味する。潤滑剤ベルト装置の軌道またはチェーン上に十分かつ/または均一な潤滑が得られない場合は、ボトル等の飲料包装品は、システム全体の閉塞を引き起し、またはこれらは軌道もしくはチェーンから落下して破壊することもある。
【0016】
本発明の潤滑剤濃縮物の更なる利点は、潤滑フィルムがコンベヤーベルト装置上により均一にかつ長期間形成される点である。軌道またはチェーン上での潤滑フィルムの均一な形成により、飲料包装品はより一層円滑に輸送することができる。これは、また、より僅かな量の潤滑剤濃縮物が、より長期間にわたって達成される均一な潤滑フィルムを与えるのに必要とされることを意味する。更なる結果として、潤滑剤濃縮物を希釈するために使用される溶剤、特に水の消費が少なく、更なるコスト低減をもたらす。
【0017】
本発明の潤滑剤濃縮物は全ての型のコンベヤーベルトシステム(例えば、プラスチックチェーンまたはステンレススチールチェーン等)および全ての型の飲料包装材料(例えば、ガラスまたはプラスチック容器等)に使用することができる。多くの知られている潤滑剤濃縮物とは対照的に、本発明の潤滑剤濃縮物は、数週間にわたって単一相系(透明な溶液形態で)として貯蔵することができるので、3〜9のpH範囲で顕著な安定性を有する。以下で示される一般式IIによる少なくとも1つのエーテルカルボン酸を更なる(場合による)成分として含む好ましい潤滑剤組成物は、潤滑性に関する更なる改善に加えて、また改善された水相溶性が、場合による成分を含まない本発明の潤滑剤濃縮物との比較において認められ得るという利点を有する。エーテルカルボン酸を更に含む潤滑剤濃縮物は、優れた硬水許容範囲を有する良好な硫酸塩調節剤である。
【0018】
成分(i):
本発明による潤滑剤濃縮物は成分(i)として1つまたは複数のアミンを必須に含む。本発明の文脈において使用される「アミン」という用語は、それによってより広い文脈においてモノアミン、ポリアミン、環状アミジンに加えてその加水分解生成物または非環状合成前駆体、オキシアルキル化アミン、アミド基を更に含むアミンおよび先に述べた化合物の塩を含む。
【0019】
カチオン、例えば成分(iii)の酸等のプロトンを含む更なる成分の存在により、使用されるアミンは、潤滑剤濃縮物の調製および/または貯蔵中に、相当する塩に部分的にまたは完全に転化されてもよいことが指摘されなければならない。これは潤滑剤濃縮物が、水等の溶剤を含む場合、または潤滑剤濃縮物の相当する水性使用溶液において特に関連性がある。成分(i)、(ii)、(iii)、(iv)および(v)の以下の化合物は、個々の成分を互いに混合して潤滑剤濃縮物を調製する前のこれらの化学的構造/名称で列挙される。それにもかかわらず、アミン(成分(i))は、本発明の潤滑剤濃縮物を製造する場合の出発物質として既に塩形態で使用されてもよい。
【0020】
本発明に従って適用できるモノアミンとしては、特に一般式III〜VおよびVa
【化2】

(式中、R、R、RおよびR21は、互いに独立に同じか異なり、C〜C30−アルキル、C〜C30−アリール、C〜C30−アルケニル、C〜C30−アルキニル、C〜C30−シクロアルキル、C〜C30−アリールアルキルまたは5〜7個の環原子を有するヘテロアリールを表し、前述の残基は1つまたは複数のアミン、イミン、ヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはカルボキシル残基で更に置換されていてもよい)による第一級、第二級、第三級および第四級アミン、ならびに式III〜Vの化合物の塩が挙げられる。残基R〜Rの2つは、また環を形成するために閉じて、例えば、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピペラジン、モルホリン等およびそのC−アルキル誘導体のような環状アミンを形成することもできる。
【0021】
好ましいモノアミン化合物は、一般式IVおよびVによるもの、ならびに一般式VIおよびVII、
【化3】

(式中、R、RおよびRは、互いに独立に同じか異なり、
置換基として少なくとも1つのアミン、イミン、ヒドロキシル、ハロゲンおよび/またはカルボキシル残基を表示することのできる、6〜22個の炭素原子を有する置換または非置換、直鎖または分岐、飽和またはモノもしくはポリ不飽和アルキル残基、
置換基として少なくとも1つのアミン、イミン、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボキシルを表示することのできる、置換または非置換フェニル残基および/または6〜22個の炭素原子を有する直鎖または分岐、飽和またはモノもしくはポリ不飽和アルキル残基を示し、
アニオンXとしては、当業者に良く知られた、無機酸および/または有機酸由来で、有害な方法で本発明による潤滑剤濃縮物に影響を及ぼさない、例えば、望ましくない濁度または静止をもたらさない全ての通常の残基が適用できる)に相当するこれらの化合物の塩である。
【0022】
本発明の場合、そのような酸は、そのアニオンXが、アミドスルホネート、硝酸塩、ハロゲン化物、硫酸水素塩、硫酸塩、炭酸水素塩、炭酸塩、リン酸塩またはR−COO(ここで、残基Rは水素、1〜20個の炭素原子を有する置換または非置換、直鎖または分岐アルキル残基を表し、置換基は1つまたは複数のヒドロキシル、アミン、イミンおよび/またはカルボキシル残基から選択される)の群から選択されるものが好ましい。タイプR−COOの有機アニオンXの例として特に挙げられるものは、ギ酸塩、酢酸塩、グリコール酸塩、オレイン酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩およびグルタミン酸塩である。
【0023】
更に好ましいモノアミンまたはその塩は、一般式IV、V、VIおよびVII(ここで、Rは8〜22個の炭素原子を有する飽和または不飽和、分岐または直鎖アルキル基であり、RはA−COOH(ここで、Aは2〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルケニル基を表す)を表し、Rは1〜4個の炭素原子を有するアルキル基またはヒドロキシル−アルキル基を表す)に相当する。
【0024】
また、成分(i)として本発明により適用することのできるポリアミンは、一般式VIII
【化4】

(式中、R、R、RおよびRは、互いに独立に同じか異なり、
水素、
置換基として1つまたは複数のヒドロキシル、アミン、イミン、ハロゲンおよび/またはカルボキシル残基を表示することができる、1〜22個の炭素原子を有する置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐アルキル残基または2〜22個の炭素原子を有するモノもしくはポリ不飽和アルケニル残基、あるいは
置換基として1つまたは複数のアミン、イミン、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボキシルおよび/またはできれば更に1〜22個の炭素原子を有する置換、直鎖もしくは分岐、飽和またはモノもしくはポリ不飽和アルキル残基を表示することができる、置換もしくは非置換フェニル残基を表し、
は1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレン基を表し、
nは1〜30の範囲の正の整数である)に相当するものならびにこの塩である。
好ましいポリアミンは、式中R、RおよびR=水素、A=−(CH−、およびn=1または2の一般式VIIIのものである。
また、次の一般式(IX)および(X)に属するこれらの化合物の塩も好ましく適用できる、
−NH−(CHNH−(CH)23 2X
(IX) (X)
(式中、Rは式VIIIについて述べたのと同じ意味を有し、Xは式VIおよびVIIについて述べたのと同じ意味を有する)。
【0025】
本発明のその他の実施形態においては、好ましいポリアミンは、また一般式VIII(ここで、
は8〜22個の炭素原子を有する飽和または不飽和、分岐または直鎖アルキル基であり、
は水素、1〜4個の炭素原子を有するヒドロキシル−アルキル基のアルキル基またはA−NHであり、
n=1であり、RおよびRは水素を表す)により得ることができる。
【0026】
本発明により好ましく適用できるポリアミンの幾つかの個々の例は、(特に)エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラ−アミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラ−アミン、ブチレンジアミン、アミノエチルプロピレンジアミン、アミノエチルブチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−ココ−1,3−ジアミノプロパン(N−ココス脂肪族−アルキル−1,3−ジアミノプロパン)、N−獣脂−1,3−ジアミノプロパン(N−獣脂脂肪族−アルキル−1,3−ジアミノプロパン)、N−オレイル−1,3−ジアミノプロパン、N−ラウリル−1,3−ジアミノプロパンの遊離アミンの形態またはホルメート、アセテート、オレエート、グリコール酸塩、ラクテート、グルコネート、シトレート、グルタメート、安息香酸またはサリチル酸塩のような塩の形態のそれぞれの場合である。
【0027】
更に好ましいポリアミンは、N−獣脂−1,3−ジアミノプロパン、N−ココ−1,3−ジアミノプロパンおよびN−オレイル−1,3−ジアミノプロパンであり、最も好ましいポリアミンはN−オレイル−1,3−ジアミノプロパンである。
【0028】
また、その次に一般式XIによる脂肪族アミンのポリアミン誘導体は、本発明による潤滑剤濃縮物の成分(i)として適用できる、
−A−(CH−NH−[(CH−NH]−(CH−NH−(H (XI)
(式中、
およびXは、式VIおよびVIIについて示された通りの意味を有し、
は、−NH−または−O−のいずれかを表し、
k、l、mは、互いに独立に同じか異なる1〜6の範囲の数であり、
yは、A=−NH−の場合は0、1、2または3を表し、A=−O−の場合は1、2、3または4を表し、
nは0〜6の範囲の整数である)。
【0029】
上述の一般式(XI)においては、次の残基が置換基Rとして適用できる:n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル、n−オクタデシル、n−ノナデシル、n−エイコシル、n−ウンエイコシルおよびn−ドコシルならびに言及されたアルキル残基の分岐鎖異性体。飽和アルキル残基Rの代わりに、また直鎖または分岐であることのできる相当するモノまたはポリ不飽和アルキル残基を表すこともできる。上で表された残基はまた置換することもでき、置換基として、1つまたは複数のアミン、イミン、ヒドロキシル、ハロゲンまたはカルボキシル基が使用できる。更に、残基Rは、また1つまたは複数のアミン、イミン、ヒドロキシル、ハロゲンまたはカルボキシル基で置換することのできるフェニル残基を表すこともできる。また、アルキルフェニル残基はRに対して使用することができ、アルキル残基は6〜22個の炭素原子を含み、また直鎖または分岐、飽和またはモノもしくはポリ不飽和であることもできる。全ての場合において塩素および臭素はハロゲン置換基として好ましい。
【0030】
=−NH−、k、lおよびmが互いに独立に3または4であり、yが0または1であり、その他の変数が式(XI)について前に示された通りの意味を有する一般式XIによるポリアミンが好ましい。
したがって、k、lおよびmが3である式XIの全てのアミンは更に好ましい。
【0031】
先に示された一般式XIに相当するポリアミンは、文献で知られている方法により調製することができ、更に、またベロールノベル社(Berol Nobel、 Stockholm、 Sweden)から市販品として、Amine 640、Amine 660、Amine 740、Amine 760およびAmine 780の名称の下で或る範囲まで提供される。
【0032】
本発明のその他の実施態様によれば、先に述べた一般式(XI)の脂肪族アミンのポリアミン誘導体は、
が12〜18個の炭素原子を有する直鎖または分岐、飽和またはモノもしくはポリ不飽和アルキル残基を表し、
が−NH−を表し、
が残基R−COO(ここでRは水素、CH−、HO−CH−またはCH−CH(OH)−を表す)を表すポリアミン誘導体が好ましい。
また、本発明による成分(i)として適用可能なものは、一般式XII
【化5】

(式中、
Zは1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
は水素または(ANH)−Hであり、
は、モノまたはポリ不飽和であることもできる1〜18個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
10は、それぞれに可能であり有用である場合は、1〜30個の炭素原子を有するアルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルまたはヘテロ環である)による環状アミジン、例えば、イミダゾリンまたはテトラヒドロピリミジン等またはこの塩である。
好ましい環状アミジンは、一般式(XIII)
【化6】

(式中、
11、R12、R13は、同じか異なり、水素またはA−Zであり、
は1〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和、直鎖または分岐アルキレン残基であり、
は7〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和、直鎖または分岐アルキレン残基であり、
は水素、NH、OHまたはCOOMであり、
は水素またはアルカリ金属であり、
は水素、NH、OH、COOMまたは−NH−CO−R14であり、
はMと同じか異なり、水素またはアルカリ金属であり、
14は6〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和、直鎖または分岐アルキル基、
別々にアルケニル基である)に相当する化合物である。
【0033】
一般式XIIIによる化合物に関しては、好ましくは残基R11、R12、R13、Aおよび/またはR14の少なくとも1つは、少なくとも12個の炭素原子を有する飽和または不飽和アルキレン基あるいは少なくとも12個の炭素原子を有する分岐アルキレン基を含む。
【0034】
更に、一般式XIIIによる化合物のグループ内では、Aが12〜18個の炭素原子を含む化合物が特に有用であり、AがC17残基に相当する場合が特に好ましい。A6は好ましくは1〜6個の炭素原子を有し、非常に好ましいのは−CH−CH−基である。Zの非常に有利な変体はNHである。なお更に好ましい性質は、ZがNHであり、R11およびR12が水素であり、R13がA、A17であり、Zが水素である、一般式XIIIによる化合物、または成分(i)の構成成分としての化合物を有する。
好ましい環状アミジンは、また、一般式XIV:
【化7】

(式中、残基R11、R12、R13、AおよびZは、式XIIIにより示されたものと同じ意味を有することができ、CH−環置換基はイミダゾリン環の1または3−位置で結合され、Xは、例えば、式XIにおけるXの説明に関連して示される様な適当なアニオンである)に相当する、一般式XIIIを有する化合物の塩を含む。XがCH−O−SO−である場合が特に好ましい。
式XIIIおよびXIVの環状化合物に加えて、また一般式XVおよびXVI
【化8】

(式中、残基R11、R12、R13、AおよびZは、式XIIIまたはXIVに対して示されたものと同じ意味を有する)を有する直鎖アミドも成分(i)として適当である。
【0035】
式XVおよびXVIによる化合物は、また、化合物XIIIまたはXIVの合成中の副生成物として利用可能となることができ、これらは、またこれらの化合物の貯蔵中に、例えば、加水分解により生成することもできれば、環状中間体生成物を経る迂回路なしで直接合成により形成することもできる。
【0036】
オキシアルキル化アミン、例えば、上述のアミン(モノアミン、ポリアミン、環状アミジン等)のオキシアルキル化誘導体もまた、本発明の範囲内で、成分(i)として適当である。したがって、オキシアルキル化誘導体は、一般式XVII、
【化9】

(式中、R15、R16、R17およびR18は、互いに独立に同じか異なり、水素または、置換されていてもよい残基、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール等である)を有する任意の適当なα,β−アルキレンオキシドから誘導できる−(OA−基を示す。
【0037】
例としては、特に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アミレンオキシド、オクチレンオキシド、スチロールオキシド、メチルスチロールオキシド、シクロヘキサンオキシド(ここで、R15およびR17は、一緒になって環を形成する)等が挙げられ、アルキレンオキシドの代わりに、またアルキレンカーボネート、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等も適用できる。
−(OA−は、
−(OEt)−、−(OPr)−、−(OBu)−、−(Oオクチル)−等のようなホモ単位;
−(OEt)(OPr)−、−(OEt)(OBu)−(OPr)(OEt)(OPr)、−(OEt)(OPr)(OBu)等のようなブロック単位(ここで、a+b+c=n);
複数のオキシド(OEt−OPr)、(OPr−OBu)、(OEt−OBu)の同時統計的配列を含むヘテロ単位を含む基(ここで、1つのオキシド対他方のオキシドの割合は、例えば、1〜99対99〜1である);
ヘテロ−ホモ単位、例えば、
(EtO)(EtO−PrO)
(EtO)(PrO)(EtO−PrO)
(EtO−PrO)(BuO)
を意味する。
好ましいオキシアルキル化アミンは、一般式XVIIIおよびXIX:
【化10】

(式中、
19は8〜22個の炭素原子を有する直鎖または分岐、飽和または不飽和アルキレン残基であり、
12は8〜22個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレン基であり、
、A10、A11は、同じか異なり、それぞれ少なくとも1つのエトキシまたはプロポキシ基あるいは1つの結合を表す(ここで、基A、A10、A11の合計は2〜200である))による化合物である。
【0038】
有用な化合物は、特に、
ココス−ビス(2−ヒドロキシルエチル)アミン、ポリオキシエチレン(5)ココス−アミン、ポリオキシエチレン(15)ココス−アミン、獣脂−ビス(2−ヒドロキシルエチル)アミン、ポリオキシエチレン(5)獣脂−アミン、獣脂/オレイル−ビス(2−ヒドロキシルエチル)アミン、オレイル−ビス(2−ヒドロキシルエチル)アミン、ポリオキシエチレン(5)オレイルアミン、ポリエチレン(15)オレイルアミン、獣脂−ビス(2−ヒドロキシルエチル)アミン(水和物)、ポリオキシエチレン(5)獣脂−アミン(水和物)、ポリオキシエチレン(15)獣脂−アミン(水和物)、ポリオキシエチレン(50)獣脂−アミン、N,N’,N’−トリス(2−ヒドロキシルエチル)N−獣脂−1,3−ジアミノプロパン、N,N’,N’−ポリオキシエチレン(10)−N−獣脂−1,3−ジアミノ−プロパン、N,N’,N’−ポリオキシエチレン(15)−N−獣脂−1,3−ジアミノプロパンおよびポリオキシエチレン(15)−獣脂−アミンである。
【0039】
本発明による潤滑剤濃縮物は、好ましくは、成分(i)として、一般式VIIIによる1つまたは複数のポリアミンまたはこの塩を含む。更に好ましくは、成分(i)として、一般式VIII(ここで、R、RおよびRは水素であり、Aは−(CH−であり、nは1または2である)による1つまたは複数のポリアミンを含む。なお更に好ましくは、成分(i)として、N−獣脂−1,3−ジアミノプロパン、N−ココ−1,3−ジアミノプロパンおよび/またはN−オレイル−1,3−ジアミノプロパン、最も好ましくはN−オレイル−1,3−ジアミノプロパンを含む。
【0040】
成分(ii):
本発明による潤滑剤濃縮物は、成分(ii)として、一般式I
【化11】

(式中、R1a、R1bおよびR1cは、互いに独立に同じか異なり、C〜C30−アルキルまたは−([CH−O)−R1d(ここで、mは2または3であり、nは1〜10であり、R1dはC〜C30−アルキル、フェニルまたはフェニル−(C〜C10−アルキル)−である)を表す)による1つまたは複数のホスフェートを必須に含む。以下で表される通り、R1a〜R1dのアルキルおよび/またはフェニルフラグメントは場合により更に置換されていてもよい。式(I)による化合物はホスフェートトリエステルということができる。
【0041】
一般式Iによる好ましいホスフェートは、R1a、R1bおよびR1cが、互いに独立に同じか異なり、−([CH−O)−R1d(ここで、mは2であり、nは1〜3であり、R1dはC〜C30−アルキルである)を表すものである。更に好ましくは、R1a、R1bおよびR1cが同じ意味を有し、−([CH−O)−R1d(ここで、mは2であり、nは1〜3であり、R1dはC〜C30−アルキルである)を表す一般式Iによる化合物である。なお更に好ましくは、R1a、R1bおよびR1cが同じ意味を有し、−CH−CH−O−(C〜C10−アルキル)を表す一般式Iの化合物である。最も好ましくは、R1a、R1bおよびR1cがそれぞれブトキシエチルである一般式Iによる化合物である。
【0042】
一般式(I)による化合物は、トリス(2−ブトキシエチル)ホスフェート(商標名:Etingal TP(登録商標)、BASF AG)等の市販品を利用することもできれば、これらは、当業者に知られている方法により合成することもできる。
【0043】
成分(iii):
本発明による潤滑剤濃縮物は更なる必須成分として1つまたは複数の酸を含む。全ての適当な無機または有機酸が使用できる。無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、スルホン酸および硫酸である。有機酸の例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、安息香酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、メタスルホン酸、アクリル酸、プロピオル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、オレイン酸、エライジン酸およびトリフルオロ酢酸である。存在する場合は、そのような酸は純粋な形態においてまたは溶剤、好ましくは水で希釈して使用される。水で希釈した酸の使用が好ましい。好ましい成分(iii)は、1〜8個までの炭素原子を含む飽和脂肪族モノカルボン酸(C〜C−モノカルボン酸)である。更に好ましい成分(iii)は酢酸またはギ酸であり、両方の酸は好ましくは水で40〜60重量%の濃度に希釈される。最も好ましい成分(iii)は、水で40〜60重量%の濃度に希釈された酢酸である。
【0044】
成分(iv):
本発明による潤滑剤濃縮物は、任意成分として、一般式(II)
20−(O(CHOCHCOO (II)
(式中、R20は1〜22個の炭素原子を有する飽和、直鎖もしくは分岐アルキル残基あるいは2〜22個の炭素原子を有するモノもしくはポリ不飽和直鎖もしくは分岐アルケニルまたはアルキニル残基あるいは少なくとも1つのC〜C22アルキル、C〜C22アルケニルもしくはC〜C22−アルキニルで場合により置換されているアリール残基であり、
nは0〜30の正数であり、mは2または3であり、
Mは水素またはアルカリ金属である)を有する1つまたは複数のエーテルカルボン酸化合物を含んでもよい。
【0045】
有利に適用することのできる一般式(II)を有するエーテルカルボン酸としては、特に、以下が挙げられる。
【表1】

【0046】
一般式(II)による好ましい化合物は、R20がC〜C18−アルキルまたはアルケニル基であり、nが2〜9であり、Mが水素、ナトリウムまたはカリウムである化合物である。最も好ましいのは、R20がオレイル基であり、nが9である場合である。
【0047】
一般式によるエーテルカルボン酸は市販されており、または文献から分かる方法により合成することができる。例えば、表に記載された化合物は、特定の界面活性剤として、ケム−ワイ社(CHEM−Y)から商標名AKYPOで得ることができる。
【0048】
成分(v):
成分(v)は任意選択であり、したがって、本発明による潤滑剤濃縮物には可能な場合にのみ含まれる。成分(v)として、本発明による潤滑剤濃縮物は、互いに独立に選択することのできる以下の化合物また助剤または添加剤と称するものの1つまたは複数を含んでもよい。
【0049】
成分(v)としては水が適用できる。添加される水は軟水、硬水または軟化水でよく、好ましくは軟化水が使用される。
本発明による潤滑剤濃縮物は更なる任意選択の成分(v)として、一般式(XX)、
H−(OC−OH (XX)
(式中、nは5〜>100,000の正の整数である)を有する1つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)を含んでもよい。
【0050】
好ましいポリエチレングリコールは約200〜5,000,000g/molの分子量を有する。PEGは、分子の観点から見て非単一性物質、即ち、異なる分子量を有する巨大分子の集合体から成る高分子化合物に関係する。これらの化合物は、主に少量の水を含み出発分子としてエチレングリコールを伴う系において、エチレンオキシド(オキシラン)のアルカリ触媒された重付加により主に技術的に調製される。
【0051】
タイプを特徴付けるためには、多くの場合、分子量区分の主要点が当該技術分野において使用される。したがって、PEG 200、PEG 400、PEG 1000、PEG 10,000等について論じられる。
【0052】
<約25,000g/mol、即ちnが約5〜約580の分子量を有するPEGが本発明の範囲内で好ましい;これらの実際のPEGは圧力および温度の標準状態下では液体であり、したがって、極めて簡単に取り扱うことが可能である。nが約8〜13のPEGが特に好ましい。そのような化合物は、例えば、BASF社から商標名「Plural」で得ることができる。
【0053】
水および/またはPEGに加えて、また以下の助剤および/または添加剤も成分(v)とみなす:
溶液中間体、例えばアルコール、多価アルコール、エーテルまたはポリエーテル、特にイソプロパノール、ブチルグリコール、ブチルジグリコールまたはエチレングリコールエーテル。
溶液中間体とみなす成分の例は、以下の表において見出すことができる。
【表2】

【0054】
使用される溶液中間体の量は使用される個々のアミンにより決定されるべきで、当業者は試行錯誤により個々のケースにおいて必要とされる溶液中間体を計算する。一般的に、溶液中間体の添加は、全組成物を基準に計算して5〜20重量%の範囲で十分である。場合により、溶液中間体の2つ以上が混合物として使用されてもよい。
【0055】
更に、本発明による助剤および/または添加剤として、特に非イオンおよび/または両性界面活性剤、例えば、脂肪族アルコールおよびアルコキシル化脂肪族アルコールは考慮に値する。これらの界面活性剤は、これが個々のケースで必要とされる範囲でチェーンおよびコンベヤーベルトの湿潤を改善することができる。一般的に、全組成物を基準に計算して1〜5重量%の範囲での界面活性剤の添加が、この目的にとって十分である。また、上で示されたポリエチレングリコールには含まれないポリアルキレングリコールも使用することができる。更に、米国特許第6756347B1号、国際公開第98/16603号パンフレットまたは特許公告第6330079号において示されている1つまたは複数のホスフェートモノまたはジエステルも成分(v)とみなす。
【0056】
更なる添加剤としては、消泡剤、発泡調節剤、発泡安定剤、湿潤剤、カップリング剤、キレート剤もしくはキレート形成剤または溶解度改善剤、例えば殺菌剤のような殺生剤、腐食防止剤、pH緩衝剤、ならびに既に記載された物質のクラスの代表の組合せが挙げられる。
【0057】
別途言及しない限り、式(I)〜(XX)において定義されたアルキル(もしくはアルキレン)、アルケニル(もしくはアルケニレン)またはアルキニル(もしくはアルキニレン)残基またはフラングメントのそれぞれ、例えば、R〜R21、R1a〜R1d、またはA〜A12等は、独立に、直鎖または分岐、非環式または環式であってもよい。これはまた、これらがその他の基、例えば、アルコキシ基(C〜C10−アルキル−O−)、アルコキシカルボニル基またはアミノ基の部分である場合、あるいはこれらが置換されている場合にも適用される。
【0058】
アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルである。これは、これらの残基のn−異性体およびイソプロピル、イソブチル、イソペンチル、sec−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、3,3−ジメチルブチル等の両方を含む。更に、別途言及しない限り、アルキルという用語は、本明細書においては、非置換アルキル残基に加えて、1つまたは複数、例えば、1つ、2つ、3つまたは4つの同じか異なる残基、例えば、アリール、ヘテロアリール、C〜C10−アルコキシ、−CF、−OH、−NHまたはハロゲンで置換される、場合により置換されているアルキル残基を含む。置換基はアルキル基の任意の所望の位置に存在してもよい。アルキルという用語は、本明細書においては、またシクロアルキル残基およびシクロアルキル−アルキル−残基(シクロアルキルで置換されたアルキル)を明確に含み、この場合シクロアルキルは少なくとも3個の炭素原子を含む。そのようなシクロアルキル残基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルである。全てのシクロアルキル基は非置換であってもよく、またはアルキル基の場合に上で例示された1つまたは複数の更なる残基で場合により置換されていてもよい。同じことは、それぞれのアルキレンまたはシクロアルキレンフラグメントにも適用される。
【0059】
アルケニルおよびアルキニル基の例は、ビニル残基、1−プロペニル残基、2−プロペニル残基(アリル残基)、2−ブテニル残基、2−メチル−2−プロペニル残基、3−メチル−2−ブテニル残基、エチニル残基、2−プロピニル残基(プロパルギル残基)、2−ブチニル残基または3−ブチニル残基である。別途指示しない限り、アルケニルという用語はまた、少なくとも3個の炭素原子を含むシクロアルケニル残基およびシクロアルケニル−アルキル−残基(シクロアルケニルで置換されたアルキル)を含む。同じことは、それぞれのシクロアルキニル基にも適用される。シクロアルケニル残基の例は、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルおよびシクロオクテニルである。同じことは、それぞれのアルケニレン、シクロアルケニレン、アルキニレンまたはシクロアルキニレンフラグメントにも適用される。別途指示しない限り、アルケニル、アルキニル等の用語はまた、ポリ不飽和残基、例えば、アルキ−ジエニル、アルキ−トリエニル、アルキ−ジイニル等を含む。
【0060】
本発明によれば、アリールは、6〜30個、好ましくは6または10個の炭素原子を有する単環式、二環式または多環式芳香族から誘導される残基であり、環は任意のヘテロ原子を含まない。単環式ではない場合、アリールという用語は、それぞれの形態が知られていて安定である場合において、その2番目の環に対してまたその飽和した形態(ペルヒドロ形態)またはその部分的に不飽和な形態(例えば、ジヒドロ形態またはテトラヒドロ形態)を含む。本明細書において使用されるアリールという用語は、したがって、例えば、両方の環が芳香族である二環式残基ならびに1つの環だけが芳香族である二環式残基を含む。ヘテロアリールのそのような例は、フェニル、ナフチル、インダニル、1,2−ジヒドロナフテニル、1,4−ジヒドロナフテニル、インデニルまたは1,2,3,4−テトラヒドロナフチルである。好ましくは、アリールはフェニルである。
【0061】
更に、式(I)〜(XX)で定義される残基またはフラグメント、例えば、R〜R21、R1a〜R1dまたはA〜A12等は、アリール(またはアリーレン)フラグメント、特にフェニルを含み、前記アリールフラグメントは非置換であってもよくまたは、1つまたは複数の同じか異なる残基、例えば、ハロゲン、C〜C10−アルキル、C〜C10−アルコキシ、−OH、−NHおよび−CFで場合により置換されていてもよい。アリールアルキル(アリール−(C〜C10−アルキル)−、特にフェニル−(C〜C10−アルキル)−等)は、アリール残基で置換されているアルキル残基(C〜C10−アルキル等)を意味する。
【0062】
潤滑剤濃縮物または相当する希釈(例えば水性)使用溶液に関して、別々に、個々の成分(i)〜(iii)または(i)〜(v)の以下に示される割合は、前記濃縮物または使用溶液の調製前のそれぞれの成分、即ち、それらを互いに混合する前の出発物質(抽出物)としての個々の成分の割合を意味することは強調しておかなければならない。潤滑剤濃縮物の調製(個々の成分の混合)により、その成分の2つ以上が、例えば塩等の付加物を部分的にまたは完全に形成することが起ってもよい。これはまた、溶剤等の更なる成分、例えば水の存在によるものであってもよい。潤滑剤濃縮物または希釈使用溶液のそのような付加物も、本発明の範囲に包含される。
【0063】
本発明による好ましい効果は成分(i)〜(iii)の任意の割合で既に実現できるが、本発明による潤滑剤濃縮物は、成分(i):(ii)が、全ての成分(i)ならびに(ii)の重量を基に常に計算して1:0.5〜1:2の割合で存在する場合に特別に好ましい効果を示す。
【0064】
また、成分(i):(iii)が、全ての成分(i)ならびに(iii)の重量を基に計算して1:0.75〜1:3の割合で存在することを特徴とする濃縮物も好ましい。
アミン対ホスフェートトリエステル対酸の割合が言及されている範囲内にある限り、ホスフェートトリエステルの添加のない組成物と比較して、優れて明快な溶解度が水性媒体において得られ、加えて優れた滑り特性が達成される。
【0065】
本発明による潤滑剤濃縮物は、一般に0.1〜50重量%の量でアミン成分(i)を含む。アミン成分(i)は、本発明による潤滑剤濃縮物の好ましいバージョンでは0.5〜20重量%、更に好ましいバージョンでは0.5〜10重量%の量で存在し、2〜6重量%の量が特に好ましい。
【0066】
ホスフェートトリエステル(成分ii)は、一般的に0.1〜50重量%の量で本発明による潤滑剤濃縮物に含まれる。0.5〜20重量%の値が好ましく、0.5〜10重量%が更に好ましく、本発明による潤滑剤濃縮物におけるホスフェートトリエステルの2〜6重量%の値が特に好ましいことが示された。
【0067】
成分(iii)は、一般的に0.1〜50重量%の量で本発明による潤滑剤濃縮物に存在する。0.5〜20重量%の量が好ましく、0.5〜10重量%の量が更に好ましく、1〜3.5重量%の値が特に好ましい。
【0068】
存在する場合、任意選択の成分(iv)は、一般的に0.1〜50重量%の量で本発明による潤滑剤濃縮物に含まれる。0.5〜20重量%の値が好ましく、0.5〜10重量%が更に好ましく、本発明による潤滑剤濃縮物におけるホスフェートトリエステルの2〜6重量%の値が特に好ましいことが示された。
【0069】
好ましい実施態様においては、本発明による濃縮物は、0.5〜10重量%の(i)、0.5〜10重量%の(ii)、0.5〜10重量%の(iii)および70〜98.5重量%の(v)により特徴付けられ、全ての重量%は100%(重量/重量)の濃縮物が得られるように選択される。その他の好ましい実施態様においては、濃縮物は、同じ割合の成分(i)〜(iii)に加えて、0.5〜10重量%の(iv)を更に含み、その代わり成分(v)は70〜98重量%であり、全ての重量%は100%(重量/重量)の濃縮物が得られるように選択される。
【0070】
特に有効な態様においては、本発明による濃縮物は次の含有量を示す:
(i)2〜6重量%、
(ii)2〜6重量%、
(iii)1〜3.5重量%、
(iv)2〜6重量%、および
(v)80〜93重量%
(ここで、(i)〜(v)の量は、合計が100重量%となるように選択される)。
潤滑剤濃縮物は、好ましくは3〜9のpH値、更に好ましくは4〜8のpH値に調整される。
【0071】
好ましい潤滑剤濃縮物は以下の成分:
(i)が、一般式(VIII)の少なくとも1つのアミンであり
【化12】

(式中、R、R、RおよびRは、互いに独立に同じか異なり、
水素、
置換基として1つまたは複数のヒドロキシル、アミン、イミン、ハロゲンおよび/またはカルボキシル残基を表示することができる、1〜22個の炭素原子を有する置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐アルキル残基または2〜22個の炭素原子を有するモノもしくはポリ不飽和アルケニル残基、あるいは
置換基として1つまたは複数のアミン、イミン、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボキシルおよび/またはできれば更に1〜22個の炭素原子を有する置換、直鎖もしくは分岐、飽和またはモノもしくはポリ不飽和アルキル残基を表示することができる、置換もしくは非置換フェニル残基を表し、
が1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレン基を表し、
nは1〜30の範囲の正の整数、好ましくは1または2である)、
(ii)が式(I)[ここで、R1a、R1bおよびR1cは、互いに独立に同じか異なり、−([CH−O)−R1d(ここで、mは2であり、nは1〜3であり、R1dはC〜C30−アルキルである)を表す]の成分から選択される少なくとも1つの化合物であり、
(iii)が1〜8個までの炭素原子を含む少なくとも1つの飽和脂肪族モノカルボン酸である成分を含む。
【0072】
本発明のその他の好ましい実施形態においては、潤滑剤濃縮物は成分(iii)として、7〜20個の炭素原子を含む1つまたは複数の不飽和カルボン酸を更に含む。好ましくは、オレイン酸が更なる成分(iii)として使用され、更に好ましくは、少なくとも1つの飽和C〜C−カルボン酸と、特に酢酸と組み合わせて使用される。更に好ましい実施形態においては、潤滑剤濃縮物は、更なる(1つまたは複数の)不飽和カルボン酸に加えて、一般式(XX)による1つまたは複数のポリエチレングリコールを含む。
【0073】
1つまたは複数の不飽和C〜C20−カルボン酸の存在は、消泡剤としても極めて有効な安定な潤滑剤濃縮物が得られる利点を有する。前記実施形態はまた、食品工業における供給および運搬装置における潤滑性を高め、泡の抑制を顕著に示す。
【0074】
本発明のその他の好ましい実施形態においては、潤滑剤濃縮物は成分(iv)として、式(II)(ここで、R20はC〜C18−アルキルまたはアルケニル基であり、nは2〜9であり、Mは水素、ナトリウムまたはカリウムである)の化合物から選択される少なくとも1つの化合物を含み、または成分(v)として、a)水およびb)場合により少なくとも1つの更なる助剤もしくは添加剤を含む。更に好ましい実施形態においては、潤滑剤濃縮物は(最後の文の)上記定義を有する成分(iv)および(v)の両方を含む。
【0075】
更に、本発明は、本発明による潤滑剤の調製方法に関する。
これは、場合により成分(iv)および(v)の添加を伴う成分(i)、(ii)および(iii)の混合により製造される。したがって、水は成分(v)として好ましい。したがって、本発明の更なる対象は、成分(i)〜(iii)の混合による、そしてできれば更なる成分(iv)および/または(v)の添加による潤滑剤濃縮物の調製方法である。
【0076】
更に、本発明は、食品工業における供給および運搬装置の潤滑およびクリーニングのための潤滑剤溶液に関する。潤滑剤溶液(これは希釈使用溶液と称することができる)は、潤滑剤濃縮物(上で示された通り成分(i)〜(iii)および場合により(iv)または(v)を含む)と溶剤とを混合することにより得られる。したがって、潤滑剤溶液は、以下の成分の組合せの含有量により特徴付けられる:
a)(i)少なくとも1つのアミン、
(ii)一般式I
【化13】

[式中、R1a、R1bおよびR1cは、互いに独立に同じか異なり、C〜C30−アルキルまたは−([CH−O)−R1d(ここで、mは2または3であり、nは1〜10であり、R1dはC〜C30−アルキル、フェニルまたはフェニル−(C〜C10−アルキル)−である)を表す]による少なくとも1つのホスフェート、
(iii)少なくとも1つの酸、
(iv)場合により、一般式II
20−(O(CHOCHCOO (II)
(式中、R20は、1〜22個の炭素原子を有する飽和、直鎖もしくは分岐アルキル残基または2〜22個の炭素原子を有するモノもしくはポリ不飽和直鎖もしくは分岐アルケニルまたはアルキニル残基あるいは少なくとも1つのC〜C22−アルキル、C〜C22−アルケニルまたはC〜C22−アルキニルで場合により置換されているアリール残基であり、
nは0〜30の正の数であり、mは2または3であり、
Mは水素またはアルカリ金属である)を有する少なくとも1つのエーテルカルボン酸化合物、
(v)場合により、少なくとも1つの更なる助剤または添加剤
(ここで、前記濃縮物に関する成分(i)+(ii)+(iii)の割合は1〜100重量%であり、前記任意選択成分(iv)および(v)は99重量%までの割合で存在してもよく、前記割合の(i)〜(v)は合計で100重量%となるように選択される)を含む潤滑剤溶液濃縮物、ならびに
b)水、ポリエチレングリコール、アルコール、エーテルおよびポリエーテルから選択される少なくとも1つの溶剤
(ここで成分a)は、2〜10,000の希釈倍率で成分b)で希釈される)。
【0077】
本発明によれば、この潤滑剤溶液(希釈使用溶液)は、溶剤(成分b))による、2〜10,000、好ましくは100〜2,000、更に好ましくは係数200〜1,000の希釈倍率(容量%(vol%)で測定される)の希釈により、本発明による潤滑剤濃縮物(成分a))から得ることができる。
【0078】
好ましくは、潤滑剤溶液(希釈使用溶液)は水性使用溶液である。希釈は、成分b)として列挙される溶剤の少なくとも1つを使用することにより得られる。同じ定義および例は、潤滑剤濃縮物の成分(v)の相当する部分において上で既に示された通りに潤滑剤溶液の個々の溶剤(成分b))に対して適用される。好ましくは、成分b)は水、水と成分b)の少なくとも1つの更なる溶剤またはアルコールとの混合物であり、アルコールは好ましくはエタノール、イソプロパノールもしくはn−プロパノールである。更に好ましくは、成分b)は水であり、場合により成分b)の少なくとも1つの更なる溶剤との組合せにおける水である。水を含まないが、その代わりに成分(v)として列挙された1つまたは複数のその他の成分を含む潤滑剤濃縮物を使用することは可能であり、前記濃縮物は水性使用溶液を得るために水で希釈されることが指摘されねばならない。
【0079】
本発明は、更に、食品工業におけるチェーン潤滑剤として、特に、食品工業における供給および運搬装置、特に自動チェーンおよびベルト潤滑装置の潤滑およびクリーニングのための、先に言及された技術による潤滑剤濃縮物の使用に関する。本発明は、特に、0.01〜50重量%の形態での、先に言及された潤滑剤濃縮物の使用に関する。更に、本発明は、食品工業における供給および運搬装置の潤滑および/またはクリーニングのための一般式(I)によるホスフェートトリエステルの使用に関する。好ましくは、ホスフェートトリエステルは潤滑剤濃縮物に含まれ、更に好ましくは、潤滑剤溶液に、最も好ましくは水性使用溶液に含まれる。
【0080】
これは、本発明が、食品工業における、供給および運搬装置の、特に浸漬および/または自動ベルト潤滑装置による潤滑およびクリーニングに適したチェーンの滑りおよび潤滑手段としての、先に言及された潤滑剤濃縮物、好ましくは潤滑剤溶液、更に好ましくは水性使用溶液の使用に関することを意味する。本発明による製品は、プラスチック対象物に適用した場合に、標準の石鹸製品とは対照的に、応力亀裂腐食を引き起さず、したがって、特にPETまたはPC−対象物に対して問題なく適用することができる。したがって、本発明による潤滑剤溶液は、ガラス、プラスチック層で被覆されたガラス、プラスチック、特にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)またはポリ塩化ビニル、錫板またはアルミニウムで作製された対象物またはボトル(これらの金属で作製されたそれぞれにニス塗りされたまたはプラスチック層状化容器)の供給または運搬のためのチェーン潤滑剤としての用途を見出すことができる。したがって、この使用は、特に、ガラスおよびプラスチックのボトル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリカーボネート(PC)の場合のプラスチックボトル、ボックス、金属缶、ガラス、容器、再充填可能な缶、KEG等の樽または容器、飲料容器、紙および板紙容器等の、食品特に飲料での充填に関する。
【0081】
したがって、本発明はまた、飲料運搬装置が、本明細書で定義されるように水性使用溶液の潤滑およびクリーニング量と接触する、金属、ガラス、紙、板紙および/またはプラスチックで作製された飲料包装品の運搬方法に関する。
【0082】
本発明による製品は、知られている潤滑剤と比較して、水性媒体における水化学に対して著しく良好な許容範囲ならびに著しく良好な滑り性を示す。その上、潤滑剤濃縮物、別々に水性潤滑剤溶液の所望の技術的性質は、トリエステルおよび/またはアミン、別々にアミンのアニオンの選択により意図的に調整することができる。
【0083】
(実施例)
以下の実施例および比較例は本発明の更に詳細な説明を提示するのに役立つ。
I 方法
a)摩擦係数
摩擦係数の測定のための実験は、以下の条件下でボトルコンベヤーについて行った:
6本のガラス瓶(0.5リットル)をテスト軌道上に置く。
摩擦力[F]をA/D変換器を伴う電子秤で一定に測定する。
摩擦力[F]/ボトル重量[F]の係数は、潤滑性を示す摩擦係数[μ]を表す。[数1]
μ = F/F
0.3重量%の潤滑剤溶液でのコンベヤーの噴霧。
コンベヤーの速度:約0.4m/秒。
位相時間:40秒噴霧/60秒噴霧なし。
噴霧ノズル当たりの噴霧性能:約4リットル/時間。
更に、製品をDIN 53 902の規定により硬水(16°dH)でテストし、完全に脱塩した水でテストした。
【0084】
変動は、それぞれにコンベヤーベルト装置(軌道またはチェーン)についての潤滑性または摩擦の均一性に関する測定で、摩擦係数の測定のノイズから決定される。減少する変動値は軌道またはチェーンについて更に均一な潤滑に関係する。係数測定の摩擦のノイズが一定水準にある場合の時間は、均一な潤滑フィルムの形成によるコンベヤー上の飲料包装品を輸送するための出発点を示す。
【0085】
b)水相溶性
本発明により適用される組成物は、実施された濁度測定(比濁計)により示すことのできる優れた水相溶性を示す。
これにより、硫酸塩、リン酸塩および炭酸塩のようなイオンと潤滑剤溶液との反応のために発生する廃棄物の定期的な除去が回避される。
このために、0.3重量%の使用溶液を、7日間(168時間)にわたって測定した。これらの実験は以下の水条件で行った:
【表3】

水相溶性は、FNU(Formazine nephelometric units)で表される。
0〜1FNU =透明
1〜10FNU =弱い、乳白色
10〜50FNU =濁り
50〜>100FNU =強い濁り
【0086】
c)発泡挙動
発泡挙動は以下の方法により計算した:
100mlの使用溶液(0.3%)を250mlの測定シリンダーに移した。その後、30秒間で30回振盪し、更に20秒後に100mlの印より上の発泡の容量を読み取った。
【0087】
d)材料の相溶性PET
本発明による混合物および比較例の材料相溶性を1つのテストで試験した。
このために、以下の装置が必要であった:
環境室:
それぞれの場合において、木箱に入れた20本の新しいPET(1.5リットル)ボトル、はめ込み減圧弁を伴うCO−シリンダー、COでボトルを充填するための治具、COに関してボトルをテストするための分離マノメーター;
テストは以下の方法で実行した:
初めにボトルを1.5リットルのVE−水で充填し、その後3.0〜3.1barのCOを治具を介してボトルに入れた。次いで、振盪によりCOの量を水に溶解した。テストマノメーターが0barを示した後になって初めて全てのCOが溶解したものとみなした。
【0088】
1)次にボトルを、濃縮したベルト潤滑剤(BSM)に短時間浸漬し(〜2cm)、その後24時間放置した。
2)その後、ボトルを木箱に詰め、38℃で、85%の相対湿度で6日間気候キャビネットに置いた。
参照として、BDMに浸漬していないボトルを各木箱に詰めた。
テストの最後に、目測を行った。本明細書では、5つの範疇が区別される。
O:損傷なし
A:僅かに損傷
B:中程度、表面に亀裂
C:多数、適度に深い亀裂
D:多数、深い亀裂
【表4】

【0089】
上記表から、本発明によるそれぞれの潤滑剤濃縮物は、現況技術による潤滑剤濃縮物に比べて少なくとも比肩し得るものであり、殆どの実施形態で高められた潤滑性を示すことが分かる。更に、これらは透明な溶液として安定であり、改善された変動により、食品工業における供給および運搬装置の軌道およびチェーンに更に均一な潤滑を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
(i)一般式(VIII)の少なくとも1つのアミンであり、
【化1】

(式中、Rは、
水素、
置換基として1つまたは複数のヒドロキシル、アミン、イミン、ハロゲンおよび/またはカルボキシル残基を表示することができる、1〜22個の炭素原子を有する置換もしくは非置換、直鎖もしくは分岐アルキル残基または2〜22個の炭素原子を有するモノもしくはポリ不飽和アルケニル残基、あるいは
置換基として1つまたは複数のアミン、イミン、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボキシルおよび/またはできれば更に1〜22個の炭素原子を有する置換、直鎖もしくは分岐、飽和またはモノもしくはポリ不飽和アルキル残基を表示することができる、置換もしくは非置換フェニル残基を表し、
、RおよびRは、水素であり、
は−(CH−であり、
nは1または2である)、
(ii)一般式(I)の成分から選択される少なくとも1つの化合物であり
【化2】

(式中、R1a、R1bおよびR1cは、互いに独立に同じか異なり、−([CH−O)−R1d(ここで、mは2であり、nは1〜3であり、R1dはC〜C30−アルキルである)を表す)、
(iii)1〜8個までの炭素原子を含む少なくとも1つの飽和脂肪族モノカルボン酸である、
(iv)一般式(II)を有する少なくとも1つのエーテルカルボン酸化合物
20−(O(CHOCHCOO (II)
(式中、
20は、1〜22個の炭素原子を有する飽和、直鎖もしくは分岐アルキル残基あるいは2〜22個の炭素原子を有するモノもしくはポリ不飽和直鎖もしくは分岐アルケニルまたはアルキニル残基あるいは少なくとも1つのC〜C22−アルキル、C〜C22−アルケニルまたはC〜C22−アルキニルで場合により置換されているアリール残基であり、
nは0〜30の正数であり、mは2または3であり、
Mは水素またはアルカリ金属である)、
(v)少なくとも1つの更なる助剤または添加剤
を含む潤滑剤濃縮物であって、
前記濃縮物に関する成分(i)+(ii)+(iii)の割合が1〜100重量%であり、前記任意選択の成分(iv)および(v)が99重量%までの割合で存在してもよく、前記(i)〜(v)の割合が合計で100重量%となるように選択される、潤滑剤濃縮物。
【請求項2】
前記濃縮物が、全ての成分(i)ならびに(ii)の重量を基準に1:0.5〜1:2の比率で成分(i):(ii)を含みおよび/または全ての成分(i)ならびに(iii)の重量を基準に1:0.75〜1:3の比率で成分(i):(iii)を含む、請求項1に記載の濃縮物。
【請求項3】
(i)がN−獣脂−1,3−ジアミノプロパン、N−ココ−1,3−ジアミノプロパンおよび/またはN−オレイル−1,3−ジアミノプロパンであり、
(ii)が式(I)[ここで、R1a、R1bおよびR1cは、互いに独立に同じか異なり、−([CH−O)−R1d(ここで、mは2であり、nは1〜3であり、R1dはC〜C30−アルキルである)を表す]の化合物から選択される少なくとも1つの化合物であり、
(iii)が酢酸である、請求項1に記載の濃縮物。
【請求項4】
成分(ii)において、R1a、R1bおよびR1cは、互いに独立に同じか異なり、−CH−CH−O−(C〜C10−アルキル)を表す、請求項1に記載の濃縮物。
【請求項5】
成分(iv)および(v)が存在し、
(iv)が式(II)(ここで、R20はC〜C18−アルキルまたはアルケニル基であり、nは2〜9であり、Mは水素、ナトリウムまたはカリウムである)の化合物から選択される少なくとも1つの化合物であり、
(v)がa)水、及び/又はb)少なくとも1つの更なる助剤または添加剤である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の濃縮物。
【請求項6】
以下の組成:
(i)2〜6重量%、
(ii)2〜6重量%、
(iii)1〜3.5重量%
(iv)2〜6重量%および
(v)80〜93重量%、
(ここで、(i)〜(v)の量は、その合計が100重量%であるように選択される)を特徴とする、請求項1に記載の濃縮物。
【請求項7】
a)請求項1に記載の潤滑剤濃縮物および
b)水、ポリエチレングリコール、アルコール、エーテルおよびポリエーテルから選択される少なくとも1つの溶剤
を成分として含み、成分a)が2〜10000の希釈倍率により成分b)で希釈される、食品工業における供給および運搬装置の潤滑およびクリーニングのための潤滑剤溶液。
【請求項8】
成分b)が水である、請求項7に記載の潤滑剤溶液。
【請求項9】
飲料運搬装置が請求項7に記載の潤滑剤溶液の潤滑およびクリーニングに適切な量と接触する、金属、ガラス、紙、板紙および/またはプラスチックで作製された飲料包装品の運搬方法。

【公開番号】特開2013−91810(P2013−91810A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−32947(P2013−32947)
【出願日】平成25年2月22日(2013.2.22)
【分割の表示】特願2007−555137(P2007−555137)の分割
【原出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(398061050)ディバーシー・インコーポレーテッド (101)
【Fターム(参考)】