説明

ホスホイノシチド依存性キナーゼ1(PDK1)の阻害剤

本発明は、PDKl活性を阻害する化合物を提供する。本発明はまた、かかる阻害化合物を含んでなる組成物、及び癌の治療を必要とする患者に該化合物を投与することによりPDKl活性を阻害する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
3−ホスホイノシチド依存性タンパク質キナーゼ−1(PDK1)は、C−末端プレクストリン相同(PH)ドメイン(残基459−550)及びN−末端キナーゼドメイン(残基70−359)を含んでなる、556個のアミノ酸を含有する酵素である。PDKlのPHドメインは、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)などのホスファチジルイノシトールキナーゼによって産生されるホスファチジルイノシトール(例えば、ホスファチジルイノシトール4,5−二リン酸及びホスファチジルイノシトール3,4,5−三リン酸)と結合し、そのレベルは一部、PTEN(ホスファターゼ及びテンシンホモログ)などのホスファターゼによって調節されている。PDKlは、PI3K/Akt経路において中心的役割を果たしており、重要な上流活性化キナーゼとしての役割の故に、「マスターレギュレーター」キナーゼと呼ばれてきたが、その役割は、PKBの3種のアイソフォーム全て(PKBα、PKBβ、PKBγ、各々Akt1、Akt2、及びAkt3としても公知)、RSK(3種のアイソフォーム、RSK1、RSK2、RSK3、p90RSKとしても公知)、p70S6K(2種のアイソフォーム、S6K1及びS6K2)、SGK1、及びPKCを包含するがこれに限定されない、キナーゼAGCファミリーの多くのキナーゼに対し、いわゆるT−ループリン酸化部位をリン酸化するというものである。
【0002】
インスリン、インスリン様成長因子−1、及び血小板由来成長因子を包含する数種のペプチド成長因子からのシグナルは、PKBによって伝達される。PDKlと同様、PKBは、ホスファチジル3,4,5−三リン酸と結合するPHドメインを含有する。PKBは、原形質膜へ移行し、PI3Kにより産生され、第2のメッセンジャーであるホスファチジル3,4,5−三リン酸に応答して、残基T−308/309(この2つのリン酸化部位は、異なるアイソフォームに対応する)においてPDKlによりリン酸化される。腫瘍細胞におけるPKBの活性化は、抗アポトーシスシグナルによる細胞生存の増大をもたらし、また増殖をもたらす結果となる。PKBβの増幅は、卵巣癌、乳癌、及び膵臓癌を包含する数種の腫瘍タイプの一部に観察されてきた。同様に、PKBαの増幅は、胃腺癌標本においてある割合で観察されてきた。最近、PKBαの活性化された突然変異型(E17K)が、いくつかの乳癌(8%)、結腸直腸癌(6%)、及び卵巣癌(2%)で検出された。PDKlキナーゼ阻害剤は、PDKlによるPKBシグナリングの活性化を妨げることで、PKBシグナリングの関連疾患(例えば、癌、コーデン症候群、レルミット−デュクロス病、及びバンナヤン−ゾナナ(Bannayan−Zonana)症候群)の治療剤として有用である。
【0003】
同様に、PDKlキナーゼ阻害剤は、PDKlによるp70S6Kの活性化を阻止することにより、癌又は他の増殖性疾患の治療に有用である。p70S6Kの数種類の基質(リボソームS6タンパク質、eIF4B、PDCD4など)があり、これらは翻訳阻害複合体形成又はリボソームタンパク質合成に関与する。リボソームS6タンパク質のリン酸化の阻害を介したタンパク質合成の阻害は、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン)による腫瘍細胞増殖を阻害すると考えられる。p70S6K遺伝子の増幅は、乳癌の標本において観察されてきた。p70S6K及びHER−2の同時増幅は、癌患者における低い生存率と相関する。p70S6Kの過剰活性化(T389のリン酸化によって測定される)は、乳癌、頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)、神経膠芽腫、肺及び肝臓の原発腫瘍標本の免疫組織化学的分析により観察されてきた。
【0004】
同様に、PDKlキナーゼ阻害剤は、PDKlによるRSK1(p90RSKとしても公知)の活性化を阻止することにより、癌の治療に有用である。RSK1は、BAD、LKB1、TSC2、NFkB、mTORのリン酸化を直接又は間接的に媒介することにより、抗アポトーシス及び増殖シグナルを伝達する。Ras/MAPK経路は、原発腫瘍の>50%において活性化されている。RSK1活性は、MAPK活性と相関する。RSK1は、原発性の乳癌及び前立腺癌標本において過剰発現されている。
【0005】
PDKlシグナリングは、血管形成における多数の重要な段階を調節している。それ故PDKl活性の阻害剤は、癌、特に、PTENの機能喪失変異、PI3Kの機能獲得変異、及び受容体チロシンキナーゼの機能獲得変異を包含するがこれに限定されない、PTEN/PI3K経路の活性調節解除に関連した癌の治療において有用である。
【0006】
PDKlシグナリングはまた、腫瘍発生にも関連づけられてきており、PDKl阻害剤は腫瘍の予防及び腫瘍再発の予防に有用である。PTENのヘテロ接合(PTEN+/−)遺伝子型をもつマウスが、自然発生的に腫瘍を発生させることは周知である。アレッシー(Alessi)及びその共同研究者らは、正常PDKlタンパク質レベルの<30%を発現するPDKl低次形態PTEN+/−マウスが、正常レベルのPDKlタンパク質を発現する同腹子コントロールに比較して、腫瘍形成において有意な遅延を示すことを見出した(「Current Biology」、2005年、第15巻、p.1839−1846)。
【0007】
SGK1(血清及びグルココルチコイド調節キナーゼ−1)活性は、インスリン媒介性のNa+保持及び高血圧作用にとり重要である。PDKlキナーゼ阻害剤によるSGK1活性の阻害は、高血圧及び/又は低インスリン血症の治療に有用である。
【発明の概要】
【0008】
PDKlの阻害剤である新規化合物を提供することが、本発明の目的である。
【0009】
PDKlの阻害剤である新規化合物を含んでなる医薬組成物を提供することも、本発明の目的である。
【0010】
かかるPDKl活性阻害剤を投与することを含んでなる、癌を治療するための方法を提供することも、本発明の目的である。
【0011】
かかるPDKl活性阻害剤を投与することを含んでなる、腫瘍再発を治療するための方法を提供することも、本発明の目的である。
【0012】
かかるPDKl活性阻害剤を投与することを含んでなる、高血圧を治療するための方法を提供することも、本発明の目的である。
【0013】
かかるPDKl活性阻害剤を投与することを含んでなる、糖尿病を治療するための方法を提供することも、本発明の目的である。
【0014】
発明の要旨
本発明は、PDKl活性を阻害する化合物を提供する。本発明はまた、かかる阻害化合物を含んでなる組成物、及び癌の治療を必要とする患者に該化合物を投与することによりPDKl活性を阻害する方法も提供する。
【0015】
発明の詳細な記載
本発明の化合物は、PDKlの活性の阻害において有用である。本発明の第1の実施態様においては、PDKl活性の阻害剤は、式A:
【0016】
【化1】

【0017】
[式中、
nは、0、1、2、3、4、又は5であり;
Wは、独立して、C又はNであり、Yは、独立して、C又はNであり、Zは、独立して、C又はNであり、ただし、W、Y、及びZの少なくとも1つはNであり;
Xは、O、CH、又はNHであり;
環Kは、アリール又はヘテロアリールであり;
は、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、又はヘテロアリールであり、ここで、前記アルキルは、C−Cアルキル又はフェニルで置換されていてもよく、ここで、前記フェニルは、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、ハロ、及びOHで置換されていてもよく;
は、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、又はヘテロアリールであり、ここで、前記アルキルは、C−Cアルキル又はフェニルで置換されていてもよく;
は、ヘテロシクリルであり、これは、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、NH(C=O)C−Cアルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、オキソ、及びNRで置換されていてもよく;
は、独立して、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
及びRは、独立して、H及びC−Cアルキルから選択され;かつ
及びRは、独立して、H及びC−Cアルキルから選択される]
又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体により例示される。
【0018】
本発明の第2の実施態様においては、PDKl活性の阻害剤は、式B:
【0019】
【化2】

【0020】
[式中、
nは、1、2、又は3であり;
Wは、独立して、C又はNであり、かつYは、独立して、C又はNであり、ただし、W又はYの少なくとも1つはNであり;
Xは、O、CH、又はNHであり;
は、C−Cアルキル、又はC−Cアルケニルであり;
は、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、又はヘテロアリールであり、ここで、前記アルキルは、C−Cアルキル又はフェニルで置換されていてもよく;
は、ヘテロシクリルであり、これは、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、NH(C=O)C−Cアルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、オキソ、及びNRで置換されていてもよく;
は、ハロであり;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
及びRは、独立して、H及びC−Cアルキルから選択され;かつ
及びRは、独立して、H及びC−Cアルキルから選択される]
又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体により例示される。
【0021】
本発明の第3の実施態様においては、PDKl活性の阻害剤は、式C:
【0022】
【化3】

【0023】
[式中、
Wは、独立して、CH又はNであり、かつYは、独立して、CH又はNであり、ただし、W又はYの少なくとも1つはNであり;
Xは、O、又はNHであり;
は、C−Cアルキルであり;
は、C−Cアルキルであり;かつ
は、ハロである]
又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体により例示される。
【0024】
本発明の具体的な化合物は、
1−(3,4−ジフルオロベンジル)−6−オキソ−N−{(1R)−2−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−5−イル)オキシ]−1−フェニルエチル}−1,6−ジヒドロピリミジン−5−カルボキサミド;及び
4−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−オキソ−N−{(1R)−2−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−5−イル)オキシ]−1−フェニルエチル}−3,4−ジヒドロピラジン−2−カルボキサミド;
又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体を包含する。
【0025】
本発明の化合物は、不斉中心、キラル軸、及びキラル面を有してもよく(エリエル(E.L.Eliel)及びウィレン(S.H.Wilen)、「Streochemistry of Carbon Compounds(炭素化合物の立体化学)」、John Wiley & Sons,New York、1994年、p.1119−1190に記載の通り)、かつラセミ体として、ラセミ混合物、及び個々のジアステレオマーとして存在し、全ての可能な異性体及びそれらの混合物が、光学異性体を含めて、本発明に包含される。さらに、本明細書に開示された化合物は、互変異性体として存在してもよく、たとえ一方の互変異性体構造のみが描かれている場合でも、双方の互変異性体型が本発明の範囲によって包含されることが意図されている。
【0026】
任意の変数(例えば、R)が任意の構成成分において2回以上出現する場合、その出現ごとの定義は、他のあらゆる出現とは無関係である。また、置換基及び変数の組合せは、かかる組合せが結果として安定な化合物を生じる場合にのみ許容される。置換基から環系内へ描かれた線は、示された結合が、置換可能な任意の環原子へ結合されてよいことを表わしている。環系が二環式である場合、結合は該二環式基のいずれかの環上の任意の適当な原子に結合されることが意図されている。
【0027】
本発明の化合物上の置換基及び置換パターンが、当業者により選択されて、容易に入手可能な出発物質から、化学的に安定な化合物であり、かつ当該技術分野における技術上既知の方法並びに以下に示す方法により、容易に合成し得る化合物を提供し得ることが理解される。1個の置換基自体が2個以上の基で置換されている場合、結果として安定な構造を生じる限り、これらの多数の基が、同じ炭素上若しくは異なる炭素上にあってもよいことが理解される。語句「1個以上の置換基で置換されていてもよい」は、語句「少なくとも1個の置換基で置換されていてもよい」と同等であると理解されるべきであり、かかる場合、好適な実施態様は、ゼロないし3個の置換基をもつことができる。
【0028】
本発明の化合物中に、1個以上のSi原子が当業者により取り込まれて、容易に入手可能な出発物質から、化学的に安定な化合物であり、かつ当該技術分野における技術上既知の方法により容易に合成し得る化合物を提供し得ることが理解される。
【0029】
本明細書で用いる場合、「アルキル」は、特定の数の炭素原子を有している、分枝及び直鎖双方の飽和脂肪族炭化水素基を包含することを意図している。例えば、「C−Cアルキル」における場合、C−Cは、1、2、3、4、5、又は6個の炭素を、直鎖又は分枝状の配置中に有する基を包含するものと定義される。例えば、「C1−アルキル」は、具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを包含する。
【0030】
炭素原子の数が指定されていない場合、用語「アルケニル」は、2ないし10個の炭素原子と、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合とを含有する、直鎖、分枝鎖、又は環式の非芳香族炭化水素基を指す。好ましくは、1つの炭素−炭素二重結合が存在し、かつ4個までの非芳香族炭素−炭素二重結合が存在してもよい。したがって、「C−Cアルケニル」は、2ないし6個の炭素原子を有するアルケニル基を意味する。アルケニル基は、エテニル、プロペニル、ブテニル、2−メチルブテニル、及びシクロヘキセニルを包含する。アルケニル基の直鎖、分枝鎖、又は環式部分が、二重結合を含有してもよく、かつ置換アルケニル基が示されている場合には置換されていてもよい。
【0031】
本明細書で用いる場合、「アリール」は、各環が7個までの原子からなる任意の安定な単環又は二環式の炭素環を意味することを意図しており、ここで、少なくとも1つの環は芳香族である。かかるアリール基の例は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アントリル、又はアセナフチルを包含する。アリール置換基が二環式であり、かつ一方の環が非芳香族である場合、結合は芳香族環を介するものと理解される。
【0032】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書で用いる場合、各環が7個までの原子からなる安定な単環又は二環式の環を表わし、ここで、少なくとも1つの環は芳香族であり、かつ、O、N、及びSからなる群より選択される1ないし4個のヘテロ原子を含有する。この定義の範囲内のヘテロアリール基は、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、キノキサリニル、ピラゾリル、インドリル、ベンゾトリアゾリル、フラニル、チエニル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、キノリニル、イソキノリニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、テトラヒドロキノリンを包含する。以下の複素環の定義と同様に、「ヘテロアリール」はまた、任意の窒素含有ヘテロアリールのN−オキシド誘導体を包含するものと理解される。ヘテロアリール置換基が二環式であり、かつ一方の環が非芳香族であるか又は何らヘテロ原子を含有しない場合、結合はそれぞれ、芳香族環又はヘテロ原子含有環を介するものと理解される。
【0033】
当業者により理解されるように、「ハロ」又は「ハロゲン」は、本明細書で用いる場合、クロロ(Cl)、フルオロ(F)、ブロモ(Br)、及びヨード(I)を包含することが意図されている。
【0034】
用語「複素環」又は「ヘテロシクリル」は、本明細書で用いる場合、O、N、及びSからなる群より選択される1ないし4個のヘテロ原子を含有する、3ないし10員の、芳香族又は非芳香族複素環を意味することが意図されており、かつ二環式、三環式、四環式の基を包含する。それ故「ヘテロシクリル」は、上述のヘテロアリール、並びにそのジヒドロ及びテトラヒドロ類似体を包含する。「ヘテロシクリル」のさらなる例は、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾフラザニル、ベンゾピラゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インドリニル、インドリル、インドラジニル、インダゾリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフトピリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、オキサゾリン、イソオキサゾリン、オキセタニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、テトラヒドロピラニル、テトラゾリル、テトラゾロピリジル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、アゼチジニル、1,4−ジオキサニル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾチオフェニル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソクロメニル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジヒドロキノリニル、ジヒドロテトラゾリル、ジヒドロチアジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロトリアゾリル、ジヒドロアゼチジニル、メチレンジオキシベンゾイル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、及びテトラヒドロチエニル、及びそのN−オキシドを包含する。ヘテロシクリル置換基の結合は、炭素原子を介するか、又はヘテロ原子を介して生じ得る。
【0035】
式Aの1つの実施態様においては、環Kは、フェニルである。
【0036】
式Aの別の実施態様においては、Zは、CHである。
【0037】
式Aの別の実施態様においては、Xは、Oである。
【0038】
式Aの1つの実施態様においては、Xは、NHである。
【0039】
式Aの別の実施態様においては、Xは、CHであり、Lは、C−Cアルキルであり、ここで、前記アルキルは、フェニルで置換されている。
【0040】
式Aの別の実施態様においては、Xは、NHであり、Lは、C−Cアルキルであり、ここで、前記アルキルは、フェニルで置換されている。
【0041】
式Aの別の実施態様においては、Lは、C−Cアルキルである。
【0042】
式Aの別の実施態様においては、Lは、存在しない。
【0043】
式Aの別の実施態様においては、Rは、以下の:
【0044】
【化4−1】

【0045】
【化4−2】

【0046】
から選択され、これらは、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRで置換されていてもよい。
【0047】
式Aの別の実施態様においては、Rは、ハロである。
【0048】
式Aの別の実施態様においては、Rは、Fである。
【0049】
式Aの別の実施態様においては、Rは、H及びハロから選択される。
【0050】
式Aの別の実施態様においては、Rは、H及びハロから選択される。
【0051】
式Aの別の実施態様においては、Rは、H及びハロから選択される。
【0052】
式Aの別の実施態様においては、R及びRは、Hである。
【0053】
式Bの1つの実施態様においては、Xは、Oである。
【0054】
式Bの1つの実施態様においては、Xは、CHである。
【0055】
式Bの1つの実施態様においては、Xは、NHである。
【0056】
式Bの別の実施態様においては、Lは、C−Cアルキルである。
【0057】
式Bの別の実施態様においては、Lは、C−Cアルキルである。
【0058】
式Bの別の実施態様においては、Rは、以下の:
【0059】
【化5−1】

【0060】
【化5−2】

【0061】
から選択され、これらは、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRで置換されていてもよい。
【0062】
式Bの別の実施態様においては、Rは、ハロである。
【0063】
式Bの別の実施態様においては、Rは、Fである。
【0064】
式Bの別の実施態様においては、Rは、H及びハロから選択される。
【0065】
式Bの別の実施態様においては、Rは、H及びハロから選択される。
【0066】
式Bの別の実施態様においては、Rは、H及びハロから選択される。
【0067】
式Bの別の実施態様においては、R及びRは、Hである。
【0068】
式Cの別の実施態様においては、Xは、Oである。
【0069】
式Cの別の実施態様においては、Xは、HNである。
【0070】
式Cの別の実施態様においては、Lは、CHである。
【0071】
式Cの別の実施態様においては、Lは、存在しない。
【0072】
式Cの1つの実施態様においては、Rは、Fである。
【0073】
本発明に包含されるのは、式Aの化合物の遊離型、並びにその薬学的に許容される塩及び立体異性体である。本明細書に例示された単離された具体的な化合物のあるものは、アミン化合物のプロトン化された塩である。用語「遊離型」は、非塩型のアミン化合物を指す。包含される薬学的に許容される塩は、本明細書に記載の具体的な化合物に代表される単離された塩ばかりでなく、式Aの化合物の遊離型の全ての典型的な薬学的に許容される塩も包含する。記載された具体的な塩化合物の遊離型は、当該技術分野における技術上既知の方法を用いて単離されてよい。例えば、遊離型は、その塩を、適当な塩基の希釈水溶液、例えばNaOH、炭酸カリウム、アンモニア、及び炭酸水素ナトリウムの希釈水溶液、で処理することにより再生してもよい。遊離型は、極性溶媒中の溶解度のような、ある物理的性質において、その各々の塩型と幾分異なってもよいが、本発明では、酸及び塩基塩は、その他の点ではその各々の遊離型と医薬的に同等である。
【0074】
当該化合物の薬学的に許容される塩は、塩基性又は酸性の基を含有する本発明化合物から、通常の化学的方法により合成可能である。一般に、塩基性化合物の塩は、イオン交換クロマトグラフィーによるか、又は、遊離塩基を化学量論的な量の、又は過剰の、所望の塩形成性無機又は有機酸と、適当な溶媒又は溶媒の種々の組合せの中で反応させることにより調製される。同様に、酸性化合物の塩は、適切な無機又は有機塩基との反応により形成される。
【0075】
したがって、本発明化合物の薬学的に許容される塩は、塩基性の当該化合物を無機又は有機酸と反応させることにより形成される、本発明化合物の通常の非毒性塩を包含する。例えば、通常の非毒性塩は、無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸など)から誘導される塩、並びに有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)など)から調製される塩を包含する。
【0076】
本発明化合物が酸性である場合、適当な「薬学的に許容される塩」は、無機塩基及び有機塩基を含む、薬学的に許容される非毒性塩基から調製される塩を指す。無機塩基から誘導される塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩を包含する。特に好適な塩は、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウムの塩である。薬学的に許容される有機の非毒性塩基から誘導される塩は、第一級、第二級、及び第三級のアミンの塩;天然産置換アミンを含む置換アミンの塩;環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩を包含する。
【0077】
上記記載の薬学的に許容される塩及び他の典型的な薬学的に許容される塩の調製は、バーグ(Berg)ら著、「ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンセズ(J.Pharm.Sci.)、ファーマシューティカル・ソルツ(‘Pharmaceutical Salts’ (医薬用塩類)」、1977年、第66巻、p.1−19により、さらに充分に記載されている。
【0078】
生理的条件下では、該化合物中の脱プロトン化された酸性基、例えばカルボキシル基がアニオン性であってよく、この電子電荷が次に、プロトン化又はアルキル化された塩基性基、例えば第四級窒素原子のカチオン性電荷に対し、内部で平衡化されてもよいことから、本発明の化合物が潜在的に内部塩又は両性イオンであることもまた注目されるであろう。
【0079】
有用性
3−ホスホイノシチド依存性タンパク質キナーゼ−1(PDK1)は、C−末端プレクストリン相同(PH)ドメイン(残基459−550)及びN−末端キナーゼドメイン(残基70−359)を含んでなる、556個のアミノ酸を含有する酵素である。PDKlのPHドメインは、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)などのホスファチジルイノシトールキナーゼによって産生されるホスファチジルイノシトール(例えば、ホスファチジルイノシトール4,5−二リン酸及びホスファチジルイノシトール3,4,5−三リン酸)と結合し、そのレベルは一部、PTEN(ホスファターゼ及びテンシンホモログ)などのホスファターゼによって調節されている。PDKlは、PI3K/Akt経路において中心的役割を果たしており、重要な上流活性化キナーゼとしての役割の故に、「マスターレギュレーター」キナーゼと呼ばれてきたが、その役割は、PKBの3種のアイソフォーム全て(PKBα、PKBβ、PKBγ、各々Akt1、Akt2、及びAkt3としても公知)、RSK(3種のアイソフォーム、RSK1、RSK2、RSK3、p90RSKとしても公知)、p70S6K(2種のアイソフォーム、S6K1及びS6K2)、SGK1、及びPKCを包含するがこれに限定されない、キナーゼAGCファミリーの多くのキナーゼに対し、いわゆるT−ループリン酸化部位をリン酸化するというものである。
【0080】
インスリン、インスリン様成長因子−1、及び血小板由来成長因子を包含する数種のペプチド成長因子からのシグナルは、PKBによって伝達される。PDKlと同様、PKBは、ホスファチジル3,4,5−三リン酸と結合するPHドメインを含有する。PKBは、原形質膜へ移行し、PI3Kにより産生され、第2のメッセンジャーであるホスファチジル3,4,5−三リン酸に応答して、残基T−308/309(この2つのリン酸化部位は、異なるアイソフォームに対応する)においてPDKlによりリン酸化される。腫瘍細胞におけるPKBの活性化は、抗アポトーシスシグナルによる細胞生存の増大をもたらし、また増殖をもたらす結果となる。PKBβの増幅は、卵巣癌、乳癌、及び膵臓癌を包含する数種の腫瘍タイプの一部に観察されてきた。同様に、PKBαの増幅は、胃腺癌標本においてある割合で観察されてきた。最近、PKBαの活性化された突然変異型(E17K)が、いくつかのの乳癌(8%)、結腸直腸癌(6%)、及び卵巣癌(2%)で検出された。PDKlキナーゼ阻害剤は、PDKlによるPKBシグナリングの活性化を妨げることで、PKBシグナリングの関連疾患(例えば、癌、コーデン症候群、レルミット−デュクロス病、及びバンナヤン−ゾナナ(Bannayan−Zonana)症候群)の治療剤として有用である。
【0081】
同様に、PDKlキナーゼ阻害剤は、PDKlによるp70S6Kの活性化を阻止することにより、癌又は他の増殖性疾患の治療に有用である。p70S6Kの数種類の基質(リボソームS6タンパク質、eIF4B、PDCD4など)があり、これらは翻訳阻害複合体形成又はリボソームタンパク質合成に関与する。リボソームS6タンパク質のリン酸化の阻害を介したタンパク質合成の阻害は、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン)による腫瘍細胞増殖を阻害すると考えられる。p70S6K遺伝子の増幅は、乳癌の標本において観察されてきた。p70S6K及びHER−2の同時増幅は、癌患者における低い生存率と相関する。p70S6Kの過剰活性化(T389のリン酸化によって測定される)は、乳癌、頭頚部扁平上皮癌(HNSCC)、神経膠芽腫、肺及び肝臓の原発腫瘍標本の免疫組織化学的分析により観察されてきた。
【0082】
同様に、PDKlキナーゼ阻害剤は、PDKlによるRSK1(p90RSKとしても公知)の活性化を阻止することにより、癌の治療に有用である。RSK1は、BAD、LKB1、TSC2、NFkB、mTORのリン酸化を直接又は間接的に媒介することにより、抗アポトーシス及び増殖シグナルを伝達する。Ras/MAPK経路は、原発腫瘍の>50%において活性化されている。RSK1活性は、MAPK活性と相関する。RSK1は、原発性の乳癌及び前立腺癌標本において過剰発現されている。
【0083】
PDKlシグナリングは、血管形成における多数の重要な段階を調節している。それ故PDKl活性の阻害剤は、癌、特に、PTENの機能喪失変異、PI3Kの機能獲得変異、及び受容体チロシンキナーゼの機能獲得変異を包含するがこれに限定されない、PTEN/PI3K経路の活性調節解除に関連した癌の治療において有用である。
【0084】
PDKlシグナリングはまた、腫瘍発生にも関連づけられてきており、PDKl阻害剤は腫瘍の予防及び腫瘍再発の予防に有用である。PTENのヘテロ接合(PTEN+/−)遺伝子型をもつマウスが、自然発生的に腫瘍を発生させることは周知である。アレッシー(Alessi)及びその共同研究者らは、正常PDKlタンパク質レベルの<30%を発現するPDKl低次形態PTEN+/−マウスが、正常レベルのPDKlタンパク質を発現する同腹子コントロールに比較して、腫瘍形成において有意な遅延を示すことを見出した(「Current Biology」、2005年、第15巻、p.1839−1846)。
【0085】
SGK1(血清及びグルココルチコイド調節キナーゼ−1)活性は、インスリン媒介性のNa+保持及び高血圧作用にとり重要である。PDKlキナーゼ阻害剤によるSGK1活性の阻害は、高血圧及び/又は低インスリン血症の治療に有用である。
【0086】
本発明の化合物は、腫瘍再発の治療に有用である。
【0087】
本発明の化合物は、高血圧の治療に有用である。
【0088】
本発明の化合物は、糖尿病の治療に有用である。
【0089】
本発明は、かかるPDKl活性阻害剤を投与することを含んでなる、腫瘍再発を治療
するための方法を提供する。
【0090】
本発明は、かかるPDKl活性阻害剤を投与することを含んでなる、高血圧を治療するための方法を提供する。
【0091】
本発明は、かかるPDKl活性阻害剤を投与することを含んでなる、糖尿病を治療するための方法を提供する。
【0092】
本明細書において提供された化合物、組成物、及び方法は、特に癌の治療に有用であると考えられる。本発明の化合物、組成物、及び方法によって治療され得る癌は、制限されることなく:心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫、及び奇形腫;:気管支原性癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(細気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨腫様過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(腺管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);結腸直腸;尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道(扁平上皮細胞癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胎児性癌、奇形癌、絨毛上皮腫、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽細胞腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄種、悪性巨細胞腫軟骨腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨症)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫及び、巨細胞腫;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣細胞腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性神経膠芽腫、乏突起神経膠腫、神経鞘種、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科系:子宮(子宮内膜癌)、子宮頚(子宮頚癌、前腫瘍性子宮頚部異形成)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、分類不能癌腫]、顆粒膜卵胞膜細胞腫、セルトリ−ライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰(扁平上皮細胞癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮細胞癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌腫)、乳癌;血液系:血液(骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ芽球生白血病、慢性リンパ球性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、脊髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、カポジ肉腫、色素性異形成毋斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維種、ケロイド、乾癬;及び副腎:神経芽細胞腫を包含する。したがって、本明細書に提供された、用語「癌性細胞」は、上記に定義された症状の任意の1つに苦しむ細胞を包含する。
【0093】
本発明の化合物、組成物、及び方法によって治療され得る癌は、制限されることなく:乳癌、前立腺癌、結腸癌、結腸直腸癌、肺癌、非小細胞肺癌、脳癌、精巣癌、胃癌、膵臓癌、皮膚癌、小腸癌、大腸癌、咽頭癌、頭頸部癌、口腔癌、骨癌、肝臓癌、膀胱癌、腎臓癌、甲状腺癌、及び血液癌を包含する。
【0094】
本発明の化合物、組成物、及び方法によって治療され得る癌は、乳癌、前立腺癌、結腸癌、卵巣癌、子宮内膜癌、及び甲状腺癌を包含する。
【0095】
本発明の化合物、組成物、及び方法によって治療され得る癌は、乳癌、及び前立腺癌を包含する。
【0096】
本発明の化合物はまた、癌の治療において有用な医薬の調製において有用である。
【0097】
本発明化合物はまた、以下の治療薬との併用において、癌の治療に有用であってもよい:アバレリックス(プレナキシス・デポ(Plenaxis depot)(登録商標));アルデスロイキン(プロカイン(Prokine)(登録商標));アルデスロイキン(プロロイキン(Proleukin)(登録商標));アレムツズマブ(キャンパス(Campath)(登録商標));アリトレチノイン(パンレチン(Panretin)(登録商標));アロプリノール(ザイロプリム(Zyloprim)(登録商標));アルトレタミン(ヘキサレン(Hexalen)(登録商標));アミフォスチン(エチヨル(Ethyol)(登録商標));アナストロゾール(アリミデックス(Arimidex)(登録商標));三酸化ヒ素(トリセノックス(Trisenox)(登録商標));アスパラギナーゼ(エルスパル(Elspar)(登録商標));アザシチジン(ビダザ(Vidaza)(登録商標));ベバシズマブ(アバスチン(Avastin)(登録商標));ベキサロテン・カプセル(タルグレチン(Targretin)(登録商標));ベキサロテン・ゲル(タルグレチン(Targretin)(登録商標));ブレオマイシン(ブレノキサン(Blenoxane)(登録商標));ボルテゾミブ(ベルケード(Velcade)(登録商標));ブスルファン・静脈内(ブスルフレックス(Busulflex)(登録商標));ブスルファン・経口(マイレラン(Myleran)(登録商標));カルステロン(メトサーブ(Methosarb)(登録商標));カペシタビン(ゼローダ(Xeloda)(登録商標));カルボプラチン(パラプラチン(Paraplatin)(登録商標));カルムスチン(BCNU(登録商標)、BiCNU(登録商標));カルムスチン(グリアデル(Gliadel)(登録商標));インプラント型ポリフェプロサン20カルムスチン(グリアデル・ウエファー(Gliadel Wafer)(登録商標));セレコキシブ(セレブレックス((Celebex)(登録商標));セツキシマブ(アービタックス(Erbitux)(登録商標));クロランブシル(ロイケラン(Leukeran)(登録商標));シスプラチン(プラチノール(Platinol)(登録商標));クラドリビン(ロイスタチン(Leustatin)(登録商標)、2−CdA(登録商標));クロファラビン(クロラール(Clolar)(登録商標));シクロホスファミド(サイトキサン(Cytoxan)(登録商標)、ネオサール(Neosar)(登録商標));シクロホスファミド(サイトキサン注射薬(Cytoxan Injection)(登録商標));シクロホスファミド(サイトキサン・錠剤(Cytoxan Tablet)(登録商標));シタラビン(サイトサール−U(Cytosar−U)(登録商標));リポソーム化シタラビン(DepoCyt(登録商標));デカルバジン(DTIC−Dome(登録商標));ダクチノマイシン、アクチノマイシンD(コスメゲン(Cosmegen)(登録商標));ダルベポエチン・アルファ(アラネスプ(Aranesp)(登録商標));リポソーム化ダウノルビシン(DanuoXome(登録商標));ダウノルビシン、ダウノマイシン(ダウノルビシン(Daunorubicin)(登録商標));ダウノルビシン、ダウノマイシン(セルビジン(Cerbidine)(登録商標));デニロイキン・diftitox(オンタック(Ontak)(登録商標));デクスラゾキサン(ザインカード(Zinecard)(登録商標));ドセタキセル(タキソテール(Taxotere)(登録商標));ドキソルビシン(アドリアマイシンPFS(Adriamycin PFS)(登録商標));ドキソルビシン(アドリアマイシン(Adriamycin)(登録商標)、ルベックス(Rubex)(登録商標));ドキソルビシン(アドリアマイシンPFS注射薬(Adriamycin PFS Injection)(登録商標));リポソーム化ドキソルビシン(ドキシル(Doxil)(登録商標));プロピオン酸ドロモスタノロン(ドロモスタノロン(Dromostanolone)(登録商標));プロピオン酸ドロモスタノロン(マステロン注射薬(Masterone Injection)(登録商標));エリオットのB溶液(エリオットのB溶液(Elliott’s B Solution)(登録商標));エピルビシン(エレンス(Ellence)(登録商標));エポエチン・アルファ(エポジェン(epogen)(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(Tarceva)(登録商標));エストラムスチン(Emcyt(登録商標));エトポシドリン酸塩(エトポフォス(Etopophos)(登録商標));エトポシド、VP−16(ベペシド(Vepesid)(登録商標));エキセメスタン(アロマシン(Aromasin)(登録商標));フィルグラスチム(ノイポゲン(Neupogen)(登録商標));フロクスウリジン(動脈内)(FUDR(登録商標));フルダラビン(フルダラ(Fludara)(登録商標));フルオロウラシル、5−FU(アドルシル(Adrucil)(登録商標));フルベストラント(ファスロデックス(Faslodex)(登録商標));ゲフィチニブ(イレッサ(Iressa)(登録商標));ゲムシタビン(ゲムザール(Gemzar)(登録商標));ゲムツズマブ・オゾガマイシン(マイロターグ(Mylotarg)(登録商標));ゴセレリン酢酸塩(ゾラデックス・インプラント(Zoladex Implant)(登録商標));ゴセレリン酢酸塩(ゾラデックス(Zoladex)(登録商標));ヒストレリン酢酸塩(ヒストレリン・インプラント(Histrelin implant)(登録商標));ヒドロキシウレア(ハイドレア(Hydrea)(登録商標));イブリツモマブ・チウキセタン(ゼヴァリン(Zevalin)(登録商標));イダルビシン(イダマイシン(Idamycin)(登録商標));イフォスファミド(IFEX(登録商標));イマチニブメシル酸塩(グリベック(Gleevec)(登録商標));インターフェロンアルファ2a(ロフェロンA(Roferon A)(登録商標));インターフェロンアルファ−2b(イントロンA(Intron A)(登録商標));イリノテカン(カンプトサール(Camptosar)(登録商標));レナリドマイド(レブリミド(Revlimid)(登録商標));レトロゾール(フェマーラ(Femara)(登録商標));ロイコボリン(ウェルコボリン(Wellcovorin)(登録商標)、ロイコボリン(Leucovorin)(登録商標));酢酸ロイプロリド(エリガード(Eligard)(登録商標));レバミソール(エルガミゾール(Ergamisol)(登録商標));ロムスチン、CCNU(CeeBU(登録商標));メクロレタミン・ナイトロジェンマスタード(マスタルゲン(Mustargen)(登録商標));酢酸メゲストロール(メゲース(Megace)(登録商標));メルファラン、L−PAM(アルケラン(Alkeran)(登録商標));メルカプトプリン、6−MP(プリネトール(Purinethol)(登録商標));メスナ(メスネックス(Mesnex)(登録商標));メスナ(メスネックス錠(Mesnex tabs)(登録商標));メトトレキサート(メトトレキセート(Methotrexate)(登録商標));メトキサレン(ウヴァデクス(Uvadex)(登録商標));マイトマイシンC(ミュータマイシン(Mutamycin)(登録商標));ミトタン(リソドレン(Lysodren)(登録商標));ミトキサントロン(ノバントロン(Novantrone)(登録商標));フェンプロピオン酸ナンドロロン(デュラボリン−50(Durabolin−50)(登録商標));ネララビン(アラノン(Arranon)(登録商標));ノフェツモマブ(ヴァールマ(Verluma)(登録商標));オプレルベキン(ニューメガ(Neumega)(登録商標));オキサリプラチン(エロキサチン(Eloxatin)(登録商標));パクリタキセル(パクセン(Paxene)(登録商標));パクリタキセル(タキソール(Taxol)(登録商標));パクリタキセル・タンパク質結合粒子(アブラキサン(Abraxane)(登録商標));パリフェルミン(ケピバンス(Kepivance)(登録商標));パミドロネート(アレディア(Aredia)(登録商標));ペグアデマーゼ(アダジェン(Adagen)(ウシ・ペグアデマーゼ(Pegademase Bovine))(登録商標));ペグアスパラガーゼ(オンキャスパー(Oncaspar)(登録商標));ペグフィルグラスチム(ニューラスタ(Neulasta)(登録商標));ペメトレキセド2ナトリウム(アリムタ(Alimta)(登録商標));ペントスタチン(ナイペント(Nipent)(登録商標));ピポブロマン(バーサイト(Vercyte)(登録商標));プリカマイシン、ミトラマイシン(ミトラシン(Mithracin)(登録商標));ポルフィマー・ナトリウム(フォトフリン(Photofrin)(登録商標));プロカルバジン(マツラン(Matulane)(登録商標));キナクリン(アタブリン(Atabrine)(登録商標));ラスブリカーゼ(エリテック(Elitek)(登録商標));リツキシマブ(リツキサン(Rituxan)(登録商標));サルグラモスチン(リューカイン(Leukine)(登録商標));サルグラモスチン(プロカイン(Prokine)(登録商標));ソラフェニブ(ネクサバール(Nexavar)(登録商標));ストレプトゾシン(ザノサール(Zanosar)(登録商標));スニチニブ・マレイン酸塩(スーテント(Sutent)(登録商標));タルク(スクレロゾール(Sclerosol)(登録商標));タモキシフェン(ノルバデックス(Nolvadex)(登録商標));テモゾロミド(テモダール(Temodar)(登録商標));テニポシド、VM−26(ヴァモン(Vumon)(登録商標));テストラクトン(テスラク(Teslac)(登録商標));チオグアニン、6−TG(チオグアニン(Thioguanine)(登録商標));チオテパ(チオプレックス(Thioplex)(登録商標));トポテカン(ハイカムチン(Hycamtin)(登録商標));トレミフェン(フェアストン(Fareston)(登録商標));トシツモマブ(ベキサール(Bexxar)(登録商標));トシツモマブ/I−131 トシツモマブ(ベキサール(Bexxar)(登録商標));トラツズマブ(ハーセプチン(Herceptin)(登録商標));トレチノイン、ATRA(ベサノイド(Vesanoid)(登録商標));ウラシル・マスタード(ウラシル・マスタード・カプセル(Uracil Mustard Capsules)(登録商標));バルルビシン(バルスター(Valstar)(登録商標));ビンブラスチン(ベルバン(Velban)(登録商標));ビンクリスチン(オンコビン(Oncovin)(登録商標));ビノレルビン(ナベルビン(Navelbine)(登録商標));ゾレドロネート(ゾメタ(Zometa)(登録商標))及びボリノスタット(ゾリンザ(Zolinza)(登録商標))。
【0098】
本発明の化合物は、タキサンとの併用において、癌を治療するために有用である。
【0099】
本発明の化合物は、ドセタキセル(タキソテール(Taxotere)(登録商標))との併用において、癌を治療するために有用である。
【0100】
本発明の化合物は、ボリノスタット(ゾリンザ(Zolinza(登録商標))との併用において、癌を治療するために有用である。
【0101】
本発明の化合物は、mTOR阻害剤、AP23573との併用において、癌を治療するために有用である。
【0102】
本発明の化合物は、1GF1R阻害剤、MK−0646との併用において、癌を治療するために有用である。
【0103】
本発明の化合物は、サトラプラチンとの併用において、癌を治療するために有用である。
【0104】
本発明の化合物は、ラパチニブ(タイケルブ(Tykerb(登録商標))との併用において、癌を治療するために有用である。
【0105】
本発明の化合物は、ヒトを含む哺乳類に対し、単独で、又は薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤と組合せて、標準的薬学のプラクティスに従い、医薬組成物において投与されてよい。該化合物は、経口的に、又は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸内、及び局所の投与経路を含め、非経口的に投与可能である。
【0106】
活性成分を含有する医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性又は油性懸濁液、分散性粉末又は顆粒、エマルジョン、硬又は軟カプセル、又はシロップ又はエリキシルのような、経口使用に適した形状であってよい。経口使用を意図した組成物は、医薬組成物の製造のための当該技術分野において周知の任意の方法に従って調製されてよく、かかる組成物は、医薬的にエレガントで美味な製剤を提供するため、甘味剤、着香剤、着色剤、及び保存剤からなる群より選択される、1種以上の薬剤を含有してもよい。錠剤は、活性成分を、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中に含有する。これらの賦形剤は、例えば、不活性な希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム;造粒及び崩壊剤、例えば、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ、又はアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニル−ピロリドン、又はアラビアゴム、及び潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクであってよい。錠剤は、コートされていなくてもよく、或いはそれらは、薬物の不快な味をマスクするか、又は消化管内での崩壊及び吸収を遅延させ、そしてそれにより長期間にわたる持続作用を提供するようにするため、周知の技術によりコートしてもよい。例えば、水溶性の味覚マスキング剤、例えばヒドロキシプロピルメチル−セルロース又はヒドロキシプロピルセルロース、又は時間遅延物質、例えば、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレートを使用してもよい。
【0107】
経口使用用の製剤はまた、活性成分が、不活性な固形希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、又はカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセルとして、或いは、活性成分が、水溶性担体、例えばポリエチレングリコール、又は油性媒体、例えば、ラッカセイ油、流動パラフィン、又はオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセルとして供してもよい。
【0108】
水性懸濁液は、活性成分を、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物中に含有する。かかる賦形剤は、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドン、トラガカントゴム、及びアラビアゴムであり;分散又は湿潤剤は、天然産ホスファチド、例えばレシチン、又は、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合産物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、又は、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はエチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合産物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、又はエチレンオキシドと、脂肪酸及びヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合産物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンでよい。水性懸濁液はまた、1種以上の保存剤、例えば、エチル、又はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾアート、1種以上の着色剤、1種以上の着香剤、及び1種以上の甘味剤、例えばスクロース、サッカリン、又はアスパルテームを含有してもよい。
【0109】
油性懸濁液は、活性成分を、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油又はヤシ油か、又は鉱物油、例えば流動パラフィン中に懸濁することにより製剤してもよい。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィン、又はセチルアルコールを含有してもよい。上記に示されたような甘味剤、及び着香剤を、美味な経口用製剤を提供するために添加してもよい。これらの組成物は、酸化防止剤、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール又はアルファー−トコフェロールの添加により保存してもよい。
【0110】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散性粉末及び顆粒は、活性成分を、分散又は湿潤剤、懸濁化剤、及び1種以上の保存剤との混合物中に提供する。適当な分散又は湿潤剤、及び懸濁化剤は、上記のすでに列挙されたものに例示される。付加的な賦形剤、例えば、甘味剤、着香剤、及び着色剤もまた存在してよい。これらの組成物を、アスコルビン酸のような酸化防止剤の添加により保存してもよい。
【0111】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型エマルジョンの形状であってもよい。油性相は、植物油、例えばオリーブ油又はラッカセイ油、或いは鉱物油、例えば流動パラフィン、又はこれらの混合物でよい。適当な乳化剤は、天然産ホスファチド、例えばダイズレシチン、及び、脂肪酸とヘキシトール無水物とから誘導されるエステル又は部分エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン、及び、前記部分エステルと、エチレンオキシドとの縮合産物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンでよい。エマルジョンはまた、甘味、着香剤、保存剤、及び酸化防止剤を含有してもよい。
【0112】
シロップ及びエリキシルは、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、又はスクロースを用いて製剤してもよい。かかる製剤はまた、粘滑剤、保存剤、着香剤及び着色剤、及び酸化防止剤を含有してもよい。
【0113】
医薬組成物はまた、無菌の注射用水溶液の形態であってもよい。使用してもよい許容されるビヒクル及び溶媒は、なかんずく、水、リンガー液、及び等張の塩化ナトリウム溶液である。
【0114】
無菌の注射用製剤はまた、活性成分が油性相中に溶解されている、無菌の注射可能な水中油型マイクロエマルジョンでもよい。例えば、活性成分を、まず、ダイズ油及びレシチンの混合物中に溶解してもよい。この油性溶液を、次に水とグリセロールとの混合物中に投入し、マイクロエマルジョンを形成するべく加工する。
【0115】
注射用溶液又はマイクロエマルジョンは、局所ボーラス注射により、患者の血中へ投入してもよい。別法として、該溶液又はマイクロエマルジョンを、本発明化合物の一定の循環濃度を維持するように投与することが有利であってもよい。かかる一定濃度を維持するため、持続静脈内送達装置を利用してもよい。かかる装置の一例は、デルテック(Deltec)CADD−PLUS(登録商標)モデル5400静脈内ポンプである。
【0116】
医薬組成物は、筋肉内及び皮下投与用の、無菌の注射用水性又は油脂性懸濁液の形状でもよい。この懸濁液は、当該技術分野において周知の方法に従い、上記に列挙されてきた適当な分散又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて製剤してもよい。無菌の注射用製剤はまた、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液のような、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の、無菌の注射用溶液又は懸濁液であってもよい。さらに、無菌の固定油が、溶媒又は懸濁媒体として慣習的に使用される。この目的のためには、合成モノ−、又はジグリセリドを含む、任意の無刺激性の固定油を使用してもよい。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は、注射用物質の調製において用途がある。
【0117】
式Aの化合物はまた、薬剤の直腸投与用の坐剤の形態で投与してもよい。これらの組成物は、該薬剤を、常温では固定であるが直腸温度では液体であり、それ故直腸内では融解して該薬物を放出することができる、適当な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製可能である。かかる物質は、カカオバター、グリセリンゼラチン、硬化植物油、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物、及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルを包含する。
【0118】
局所使用には、式Aの化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁液その他が使用される。(本出願では、局所適用はマウスウォッシュ及びうがい薬を含むものとする。)
【0119】
本発明の化合物は、鼻腔内形態において、適当な鼻腔内ビヒクル及び送達装置の局所使用により、或いは、経皮経路により、当業者に周知の経皮パッチの形態のものを用いて投与可能である。経皮送達系の形態において投与されるためには、用量投与は、もちろん、用法用量全体を通し、断続的であるよりもむしろ連続的となるであろう。本発明化合物はまた、例えば、カカオバター、グリセリンゼラチン、硬化植物油、種々の分子量のポリエチレングリコールの混合物、及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルといった、基剤を用いた坐剤として送達してもよい。
【0120】
本発明による化合物がヒト患者へ投与される場合、1日用量は、通常、処方する医師により、一般的には、年齢、体重、及び個々の患者の応答、並びに患者の症状の重さによって異なる用量を用いて決定されるであろう。
【0121】
1つの実施態様においては、所望の量のPDKl阻害剤を、癌の治療を受けている哺乳類に投与する。投与は、1日当たり約0.1mg/体重kgないし約60mg/体重kgの間、又は、1日当たり0.5mg/体重kgないし約40mg/体重kgの間、の阻害剤の量で行なわれる。本組成物を含んでなる別の治療用の量は、PDK1阻害剤約0.01mgないし約1000mgを含む。別の実施態様においては、用量は、PDK1阻害剤約1mgないし約1000mgを含む。
【0122】
本化合物はまた、治療剤、化学治療剤、及び抗癌剤との併用においても有用である。本開示化合物と、治療剤、化学治療剤、及び抗癌剤との併用もまた、本発明の範囲内である。かかる薬剤の例は、デビータ(V.T.Devita)及びヘルマン(S.Hellman)共編による、「キャンサー・プリンシプルズ・アンド・プラクティス・オブ・オンコロジー(Cancer Principles and Practice of Oncology)(癌の原理及び腫瘍学のプラクティス)」、第6版、リピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス出版(Lippincott Williams&Wilkins Publishers)、2001年2月15日、において見出すことができる。当業者は、薬物及び関係する癌の、特定の性質に基づき、どの薬剤の組合せが有用であるかを識別することができるであろう。かかる抗癌剤は、以下:エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、レチノイド受容体モジュレータ、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤及び他の血管新生阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、細胞増殖及び生存シグナリングの阻害剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療剤、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を妨害する薬剤、及び細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤、を包含する。本化合物は、放射線療法と同時投与された場合、特に有用である。
【0123】
したがって、本発明の範囲は、ここにクレームした化合物の、エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、レチノイド受容体モジュレータ、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管形成阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、生来多剤耐性の阻害剤、抗嘔吐剤、貧血症の治療において有用な薬剤、好中球減少症の治療において有用な薬剤、免疫強化剤、細胞増殖及び生存シグナリングの阻害剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療剤、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を妨害する薬剤、及び細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤から選ばれる、第2の化合物との併用における使用を包含する。
【0124】
用語「投与」及びその変形(例えば、化合物を「投与すること」)は、本発明の化合物に関し、当該化合物又は当該化合物のプロドラッグを、治療を必要とする動物の系内へ投入することを意味する。本発明化合物又はそのプロドラッグが1以上の他の活性成分(例えば、細胞傷害剤など)と組合せて提供される場合、「投与」及びその変形は、各々、当該化合物又はそのプロドラッグと、他の薬剤との、同時の及び連続した投入を包含するものと理解される。
【0125】
本明細書において用いられる、用語「組成物」は、指定された量の指定された成分を含んでなる生成物、並びに指定された量の指定された成分の組合せから、結果として直接又は間接的に得られる任意の生成物を包含することを意図する。
【0126】
本文において用いられる、用語「治療上有効な量」は、組織、系、動物、又はヒトにおいて生物学的又は医学的応答を誘起する活性化合物又は医薬物質の量であって、研究者、獣医師、医師、又は他の臨床家によって探し求められている量を意味する。
【0127】
用語「癌を治療すること」又は「癌の治療」は、癌の症状に苦しむ哺乳類への投与を指し、かつ癌性細胞を殺すことにより癌性症状を緩和する作用を指すが、また、結果として癌の増殖及び/又は転移の阻害を生じる作用も指す。
【0128】
本発明はまた、癌の治療又は予防のために有用である医薬組成物であって、治療上有効な量の本発明化合物と:エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、レチノイド受容体モジュレータ、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管新生阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、細胞増殖及び生存シグナリングの阻害剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療剤、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を妨害する薬剤、及び細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤から選ばれる、第2の化合物とを含んでなる該組成物も包含する。
【0129】
特定された全ての特許、公開物、及び係属中の特許出願は、本明細書に援用される。
【0130】
化学の記載において、及び以下の実施例において使用された略号は、以下の通りである:BSA(ウシ血清アルブミン);BOC(炭酸tert−ブチル);BOCO(二炭酸ジ−tert−ブチル);CDCl(クロロホルム−d);CDI(1,1’−カルボニルジイミダゾール);CSO(ジメチルスルホキシド−d6);CHCl(ジクロロメタン);CHOH(メタノール);CO(二酸化炭素);DIPEA(ジイソプロピルエチルアミン);DMA(N,N−ジメチルアセトアミド);DMF(N,N−ジメチルホルムアミド);DMSO(ジメチルスルホキシド);DTT(ジチオスレイトール);EDTA(エチレン−ジアミン−四酢酸);EGTA(エチレン−グリコール−四酢酸);Et(エチル);EtOAc(酢酸エチル);EtOH(エタノール);ESI(エレクトロスプレーイオン化);Fe(鉄金属);HATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート);HCl(塩酸/塩酸塩);HPLC(高速液体クロマトグラフィー);LC−MS(液体クロマトグラフィー−質量分析法);LRMS(低分解能質量スペクトル);MeOH(メタノール);MgCl(塩化マグネシウム);MW(分子量);NaCl(塩化ナトリウム);NaF(フッ化ナトリウム);NaH(水素化ナトリウム);NaHCO(炭酸水素ナトリウム);NaOH(水酸化ナトリウム);NaSO(硫酸ナトリウム);NHCl(塩化アンモニウム);NMP(1−メチル−2−ピロリジノン);NMR(核磁気共鳴);PBS(リン酸緩衝食塩水);RBF(丸底フラスコ);RT(室温);TFA(トリフルオロ酢酸);THF(テトラヒドロフラン);Zn(亜鉛金属);及びμW(マイクロ波照射)。
【0131】
本発明の化合物は、文献において公知であるか又は実験法において例証されている他の標準的な操作に加えて、以下の反応スキームに示したような反応を用いることにより、調製してもよい。以下の例示的な反応スキームは、それ故、リストされた化合物により、又は例示を目的として用いた任意の特定の置換基により、限定されるものではない。反応スキームにおいて示した置換基の付番は、特許請求の範囲において用いたものと必ずしも相関せず、しばしば、上記の式Aの定義下で多数の置換基が任意選択的に可能である場合、明確さのため、単一の置換基が化合物に結合して示される。
【0132】
本発明の化合物を生成するのに使用した反応は、反応スキーム1−7に示したような反応を用いることにより処理される。
【0133】
反応スキームの要約
【0134】
【化6】

【0135】
反応スキーム1は、カルボン酸3を得るための経路を示す。ピリミドン1は、ジエチルエトキシメチレンマロナートを、酸を含むエタノール中で、イミドアミドを用いて環化することにより生成する。次にピリミドン1を、臭化ベンジルでアルキル化して、中間体2を産生する。次いでエチルエステル2を、水酸化ナトリウムで鹸化して、酸3を産生する。
【0136】
【化7】

【0137】
反応スキーム2は、カルボン酸5を得るための経路を示す。ピリミドン1は、ジエチルエトキシメチレンマロナートを、酸を含むエタノール中で、イミドアミドを用いて環化することによって生成する。次にピリミドン1を、ヘテロアリールメチルブロミドでアルキル化して、中間体4を産生する。次いでエチルエステル4を、水酸化ナトリウムで鹸化して、酸5を産生する。
【0138】
【化8】

【0139】
反応スキーム3は、アミド7を生成するための、HATUなどのカップリング剤の作用を介しての、アミン又はアミン塩6とカルボン酸3とのカップリングを示す。
【0140】
【化9】

【0141】
反応スキーム4は、アミド8を生成するための、HATUなどのカップリング剤の作用を介しての、アミン又はアミン塩6とカルボン酸5とのカップリングを示す。
【0142】
表1中の、式R−L−X−L−NHの、以下のアミン(遊離塩基として又は、HCl若しくはTFAのいずれかの塩として)の合成は、WO2008/005457に記載された。表1のアミン又はアミン塩を、基質として、反応スキーム3及び反応スキーム4に記載した反応において使用して、アミド7及び8を得ることができる。
【0143】
【表1−1】

【0144】
【表1−2】

【0145】
【表1−3】

【0146】
【表1−4】

【0147】
【表1−5】

【0148】
【表1−6】

【0149】
【化10】

【0150】
反応スキーム5は、D−フェニルグリシノールから出発することによる、アミン13の合成を示す。D−フェニルグリシノールにより、5−フルオロ−2−ニトロアニリンからフッ化物をSAr置換して9を得た後、アミンをBOC保護して10を得、鉄/塩化アンモニウムで還元してビス−アニリン11を得て、これを次にCDIの作用により環化して、最後から2番目の尿素12を得た。次いで、BOC保護された尿素12を、HClを使用して脱保護して、アミンの塩酸塩13を得た。
【0151】
【化11】

【0152】
反応スキーム6は、化合物15の調製法を示す。酸13を、HATUを用いてD−フェニルグリシノールにカップリングして、アルコール14を得て、これを次にSAr反応により4−ニトロ−3−アミノ−フルオロベンゼンにカップリングし、続いてZn及びHClで還元し、CDIによる環状尿素生成を受けて、化合物15を得た。
【0153】
中間体1
【0154】
【化12】

【0155】
エチル6−オキソ−1,6−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシラート
エタノール(4.99ml)中の、塩酸ホルムアミジン(4.02g、49.9mmol)及びジエチルエトキシメチレンマロナート(5ml、24.95mmol)の混合物を、120℃(マイクロ波照射による)で15時間加熱した。反応混合物を室温に冷却した後、酢酸エチル、塩酸(1M)、及び水を添加した。水層を、酢酸エチルで洗浄し、次に3:1 クロロホルム:イソプロパノールで抽出した。合わせた有機抽出物を、硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で濃縮して、エチル6−オキソ−1,6−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシラートを、橙色の固体として得た。LRMS(ESI)(C)[M+H],計算値169.1;実測値169.1.
【0156】
中間体2
【0157】
【化13】

【0158】
エチル1−(3,4−ジフルオロベンジル)−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシラート
水素化ナトリウム(0.262g、6.54mmol、鉱物油中60%分散物)及び
エチル6−オキソ−1,6−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシラート(1g、5.95mmol)の混合物を、DMF(11.89ml)中に溶解した。室温で30分後、3,4−ジフルオロベンジルブロミド(0.761ml、5.95mmol)を添加した。反応混合物を、室温で一晩攪拌し、次いで塩酸水溶液(10%)に注入した。水層を、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物を、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにより、酢酸エチル/ヘキサンで溶出して精製し、エチル1−(3,4−ジフルオロベンジル)−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシラートを、オフホワイトの固体として得た。LRMS(ESI)(C1413)[M+H],計算値295.1;実測値295.1.
【0159】
中間体3
【0160】
【化14】

【0161】
1−(3,4−ジフルオロベンジル)−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリミジン−5−カルボン酸
メタノール(3195μl)中のエチル1−(3,4−ジフルオロベンジル)−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリミジン−5−カルボキシラート(470mg、1.597mmol)の溶液に、0℃で、水酸化ナトリウム水溶液(1917μl、1.917mmol、1M)を滴下添加した。室温に2時間温めた後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣に、水(5mL)及び酢酸エチル(2.5mL)を添加した。水層を、酢酸エチルで洗浄し、次に塩酸水溶液(1M)でpH1に酸性化した。次いで水層を、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機抽出物を、水及び食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で濃縮して、1−(3,4−ジフルオロベンジル)−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリミジン−5−カルボン酸を、白色固体として得た。LRMS(ESI)(C12)[M+H],計算値267.1;実測値267.0.
【0162】
中間体4
【0163】
【化15】

【0164】
5−[(2R)−2−アミノ−2−フェニルエトキシ]−2−ニトロアニリン
(R)−(−)−2−フェニルグリシノール(5.043g、36.8mmol)を、250mLのRBF(丸底フラスコ)中に入れ、窒素雰囲気下においた。DMF(100mL)を添加し、透明な無色の溶液が得られるまで反応を攪拌した。次いでNaH(2.206g、55.1mmol)を添加し、続いてDMF(10mL)を洗浄液として添加し、激しい反応(ガス発生)を生じた。反応を室温で、ガス発生が鎮まるまで攪拌し、赤みがかった不均一の混合物を得た。次いで5−フルオロ−2−ニトロアニリン(6.89g、44.1mmol)を、続いてDMF(10mL)を添加し、これにより直ちに鮮紅色を生じた。反応を、室温で攪拌させておき、LC−MSでモニターした。これを、酢酸エチル(200mL)及びNaHCO希釈水溶液(250mL)を含有するエレンマイヤーフラスコに添加することにより、反応をクエンチした。分液漏斗中で相を分離し、有機層を水(150mL)で、次に食塩水(100mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥し、真空中で濃縮した。次いで反応を、シリカゲルカラム(5−75% EtOAc(n−ヘプタン中))により精製して、高純度の5−[(2R)−2−アミノ−2−フェニルエトキシ]−2−ニトロアニリンの2つの分画を、黄色−橙色の油として得たが、双方ともに残留性DMFが混入していた。LRMS(ESI)(C1416)[M+H],計算値274.1;実測値274.1.
【0165】
中間体5
【0166】
【化16】

【0167】
tert−ブチル[(1R)−2−(3−アミノ−4−ニトロフェノキシ)−1−フェニルエチル]カルバメート
5−[(2R)−2−アミノ−2−フェニルエトキシ]−2−ニトロアニリン(中間体4)(2.35g、8.60mmol)を、窒素雰囲気下で、100mLのRBFに入れ、続いてTHF(30mL)を入れた。N,N−ジイソプロピルエチルアミン(2.25mL、12.9mmol)を添加し、反応を10分間攪拌し、続いて二炭酸ジ−tert−ブチル(2.40mL、10.3mmol)を添加した。次いで反応を、室温で3時間攪拌し、次にLC−MSにより分析し、これにより反応が完了したことが示された。反応を、酢酸エチル(300mL)及びNaHCO希釈水溶液(150mL)を含有する分液漏斗に添加し、相を分離し、有機層を食塩水(100mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥し、真空中で濃縮して、tert−ブチル[(1R)−2−(3−アミノ−4−ニトロフェノキシ)−1−フェニルエチル]カルバメートを、黄色の固体として得た。
LRMS(ESI)(C1923NaO)[M+Na],計算値396.2;実測値396.2.
【0168】
中間体6
【0169】
【化17】

【0170】
tert−ブチル[(1R)−2−(3,4−ジアミノフェノキシ)−1−フェニルエチル]カルバメート
tert−ブチル[(1R)−2−(3−アミノ−4−ニトロフェノキシ)−1−フェニルエチル]カルバメート(中間体5)(346mg、0.93mmol)を、マイクロ波反応バイアル(10−20mL)に入れ、続いて鉄(259mg、4.63mmol)、水(4mL)、塩化アンモニウム(40mg、0.74mmol)、及び最後にエタノール(4mL)を入れた。反応バイアルを密封し、設定により80℃で20時間加熱した。反応を、酢酸エチル(100mL)及び食塩水(75mL)を含有する分液漏斗に添加し、相を分離し、有機層を食塩水(75mL)で再度洗浄した。次いで、酢酸エチル層を真空中で濃縮して、tert−ブチル[(1R)−2−(3,4−ジアミノフェノキシ)−1−フェニルエチル]カルバメートを、橙色の固体として得た。LRMS(ESI)(C1926)[M+H],計算値344.2;実測値344.2.
【0171】
中間体7
【0172】
【化18】

【0173】
tert−ブチル{(1R)−2−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−5−イル)オキシ]−1−フェニルエチル}カルバメート
tert−ブチル[(1R)−2−(3,4−ジアミノフェノキシ)−1−フェニルエチル]カルバメート(中間体6)(318mg、0.93mmol)を、窒素雰囲気下で、50mLのRBFに入れ、DMF(5mL)中に溶解した。CDI(135mg、0.83mmol)を添加し、反応を室温で4時間攪拌した。反応を、酢酸エチル(125mL)及びNaHCO希釈水溶液(75mL)を含有する分液漏斗に添加し、相を分離し、有機層を食塩水(75mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥し、その後、真空中で濃縮した。次いで粗生成物混合物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、tert−ブチル{(1R)−2−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−5−イル)オキシ]−1−フェニルエチル}カルバメートを、白色固体として得た。H NMR(500MHz,CSO)δ10.49(s,1H),10.37(s,1H),7.54(d,1H),7.34(m,4H),7.25(t,1H),6.77(d,1H),6.48(s,2H),4.86(q,1H),3.98(m,2H),1.37(s,9H).LRMS(ESI)(C1616)[M−C+H],計算値314.1;実測値314.1.
【0174】
中間体8
【0175】
【化19】

【0176】
5−[(2R)−2−アミノ−2−フェニルエトキシ]−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾイミダゾール−2−オン塩酸塩
tert−ブチル{(1R)−2−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−5−イル)オキシ]−1−フェニルエチル}カルバメート(中間体7)(67mg、0.18mmol)を、窒素雰囲気下で、10mLのRBFに入れ、THF(2mL)中に溶解した。HCl(1mL、4.0mmol)(1,4−ジオキサン中4M)を添加し、反応を室温で16時間攪拌した。反応を次に、真空中で濃縮し、THFによる希釈/濃縮のサイクルを繰り返し、残留するHClを最少化して、5−[(2R)−2−アミノ−2−フェニルエトキシ]−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾイミダゾール−2−オン塩酸塩を、黄色の固体として得た。LRMS(ESI)(C1516)[M+H]+,計算値270.1;実測値270.1.
【0177】
【化20】

【0178】
反応スキーム7は、実施例1のアミドを産生するための、アミン塩8とカルボン酸3とのカップリングを示す。
【0179】
実施例1
【0180】
【化21】

【0181】
1−(3,4−ジフルオロベンジル)−6−オキソ−N−{(1R)−2−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−5−イル)オキシ]−1−フェニルエチル}−1,6−ジヒドロピリミジン−5−カルボキサミド
DMA(710μl)中の、5−[(2R)−2−アミノ−2−フェニルエトキシ]−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾイミダゾール−2−オン塩酸塩(38mg、0.124mmol)、1−(3,4−ジフルオロベンジル)−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリミジン−5−カルボン酸(33.1mg、0.124mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(65.1μl、0.373mmol)の溶液に、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(54.3mg、0.143mmol)を添加した。室温で90分間の攪拌後、反応混合物を水、アセトニトリル、及びDMSOで希釈した。この溶液を、逆相分取HPLC(C−18)により、アセトニトリル/水+0.05% TFAで溶出して精製し、1−(3,4−ジフルオロベンジル)−6−オキソ−N−{(1R)−2−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−5−イル)オキシ]−1−フェニルエチル}−1,6−ジヒドロピリミジン−5−カルボキサミドを、HPLC分画の中和、抽出、及び乾燥の後に、白色固体として得た。H NMR(500MHz,CSO)δ10.51(s,1H),10.38(s,1H),9.73(d,1H),8.95(s,1H),8.67(s,1H),7.52(m,1H),7.41(m,3H),7.34(t,2H),7.25(m,2H),6.74(d,1H),6.49(d,2H),5.36(m,1H),5.19(t,2H),4.26(m,1H),4.19(m,1H).LRMS(ESI)(C2722)[M+H],計算値518.2;実測値518.1.
【0182】
中間体9
【0183】
【化22】

【0184】
メチル4−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロピラジン−2−カルボキシラート
メチル2−ヒドロキシ−3−ピラジンカルボキシラート(103mg、0.67mmol)(フルクルム・サイエンティフィック社(Fulcrum Scientific Ltd.)から入手)を、窒素雰囲気下で、25mLのRBFに入れた。DMF(3mL)を、続いてNaH(33mg、0.83mmol)を添加し、反応を室温で20分間攪拌した。3,4−ジフルオロベンジルブロミド(0.094mL、0.735mmol)を添加し、反応を室温で一晩攪拌し、LC−MSにより反応の完了を検出した。反応を、酢酸エチル(125mL)及びNaHCO希釈水溶液(75mL)を含有する分液漏斗に添加し、相を分離し、有機層を食塩水で洗浄し、無水NaSO上で乾燥し、次に真空中で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーにより、10−100% EtOAc(n−ヘプタン中)を使用して精製し、メチル4−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロピラジン−2−カルボキシラートを、黄色の固体として得た。H NMR(500MHz,CSO)δ8.08(d,1H),7.49(t,1H),7.44(d,1H),7.42(t,1H),7.23(m,1H),5.09(s,2H),3.80(s,3H).LRMS(ESI)(C1311)[M+H],計算値281.1;実測値281.1.
【0185】
中間体10
【0186】
【化23】

【0187】
4−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロピラジン−2−カルボン酸
メチル4−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロピラジン−2−カルボキシラート(110mg、0.39zmol)を、10mLのRBFに入れ、THF(3mL)中に溶解した。NaOH(1mL、2.000mmol)(2N溶液)を添加し、反応を室温で攪拌した。次に反応を、室温で一晩攪拌させておき、次いでLC−MSで分析したところ、反応の完了を示した。次に反応を、1N HCl(2mL)の添加により中和し、次いで飽和塩化ナトリウムで飽和した。得られた混合物を、次に酢酸エチル(3x50mL)で洗浄し、合わせた有機層を、次いで食塩水(25mL)で洗浄し、真空中で濃縮して、4−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロピラジン−2−カルボン酸を、黄色の固体として得た。LRMS(ESI)(C12)[M+H],計算値267.1;実測値267.0.
【0188】
実施例2
【0189】
【化24】

【0190】
4−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−オキソ−N−{(1R)−2−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−5−イル)オキシ]−1−フェニルエチル}−3,4−ジヒドロピラジン−2−カルボキサミド
4−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−オキソ−3,4−ジヒドロピラジン−2−カルボン酸(48mg、0.18mmol)を、窒素雰囲気下で、25mLのRBFに入れ、続いてHATU(82mg、0.22mmol)を、次にNMP(1.0mL)を、最後にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.11mL、0.63mmol)を入れた。反応を、室温で5分間攪拌し、NMP(1.0mL)中の5−[(2R)−2−アミノ−2−フェニルエトキシ]−1,3−ジヒドロ−2H−ベンゾイミダゾール−2−オン(55mg、0.18mmol)の溶液に添加した。反応を、室温で40分間攪拌し、次に、酢酸エチル(75mL)及びNHCl希釈水溶液(50mL)を含有する分液漏斗に添加し、相を分離し、有機層を飽和NaHCO水溶液(50mL)で、次に食塩水(50mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥し、次に真空中で濃縮した。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(10グラムカラム)により、0−10% CHOH(CHCl中)を使用して精製し、生成物を8% CHOH(CHCl中)において溶出して、4−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−オキソ−N−{(1R)−2−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−5−イル)オキシ]−1−フェニルエチル}−3,4−ジヒドロピラジン−2−カルボキサミドを、明黄色の固体として溶出した。H NMR(500MHz,CSO)δ10.51(s,1H),10.38(s,1H),9.82(d,1H),8.05(d,1H),7.57(d,1H),7.50(m,1H),7.43(m,3H),7.35(t,2H),7.27(t,1H),7.24(m,1H),6.75(d,1H),6.51(d,2H),5.34(m,1H),5.16(s,2H),4.09(m,2H).LRMS(ESI)(C2723)[M+H],計算値518.2;実測値518.2.
【0191】
本発明の化合物を、以下の生物学的アッセイにおいて試験し、30μM未満のIC50値を持つことが判明した。
【0192】
生物学的アッセイ
インビトロのPDKlキナーゼアッセイ
活性化された組換え完全長の、mT(Glu−Glu−Phe)タグ付きヒトPDK1を使用して、本発明の化合物がこのキナーゼの酵素活性を調節するかどうかを測定した。
【0193】
完全長PDK1をコードしているcDNAを、インフレームのミドルTタグ(MEYMPME)をそのN末端に含有するバキュロウイルス発現ベクターpBlueBac4.5(インビトロジェン(Invitrogen))にサブクローニングした。可溶性の活性化組換え完全長mT(Glu−Glu−Phe)タグ付きヒトPDK1を、バキュロウイルス感染したSf9昆虫細胞(ケンプ・バイオテクノロジーズ(Kemp Biotecnologies)中で、製造業者により推奨されるプロトコールに従って発現させた。昆虫細胞溶解物からの、PDK1キナーゼのイムノアフィニティ精製は、プロテインG−EEカラムに結合したミドルTタグ抗体を用いて行なった。50mM トリス pH7.4、1mM EDTA、1mM EGTA、0.5mM NaVO、1mM DTT、50mM NaF、ピロリン酸Na、Na−β−グリセロリン酸、10% グリセロール、コンプリート(Complete)、1μM ミクロシステイン、及び50μg/ml EYMPMEペプチドを使用した溶出により、PDK1タンパク質を含有する分画を、SDS−PAGE及びウエスタンブロット分析に基づき一緒にプールし、次にタンパク質濃度を、BSAを標準として、BCAプロテインアッセイ(Protein Assay)(ピアース(Pierce))を使用して分析した。最終産物をアリコートに分け、液体窒素中で急速冷凍した後、−80℃で保存した。得られたPDK1タンパク質は、分子量64kDaを有し、「デフォルトにより(by default)」リン酸化され、昆虫細胞から活性化キナーゼとして精製された。
【0194】
化合物の、PDK1キナーゼ阻害能を測定するための方法は、以下の工程を含んでなる:
1. 384ウェルプレートにて、3倍連続希釈された化合物溶液を、100%ジメチルスルホキシド(DMSO)中で、所望の終濃度の20倍に調製する。
2. 62.5mM ヘペス(HEPES)(pH7.5)、12.5mM MgCl、0.013% Brij−35、1.25mM EGTA、2.5mM ジチオスレイトール、1.25nM 組換えPDK1、及び375nM ビオチン化合成ペプチド基質(ビオチン−GGDGATMKTFCGGTPSDGDPDGGEFTEF−COOH(配列番号:1)を含有する、主反応混合物を調製する。
3. 黒色のアッセイプレートにて、ウェル当たり、化合物溶液(又はDMSO) 2.5μl、及び主反応混合物 22.5μlを添加する。10分間プレインキュベートする。ウェル当たり6μlの0.25mM MgATPを添加することにより、キナーゼ反応を開始する。反応を、室温で25分間進行させる。反応の最終条件は、1nM PDK1、300nM ペプチド基質、5μM MgATP、10mM MgCl、2mM DTT、50mM ヘペス(pH7.5)、0.01% Brij−35、1mM EGTA、及び5%DMSOである。
4. キナーゼ反応を、10mM EDTA、1xランス検出バッファー(Lance Detection Buffer)(カタログNo.CR97−100、パーキンエルマー)、TBS中の1% スーパーブロッキング(SuperBlocking)(カタログNo.37535、ピアース)、5nM ホスホ−Akt(T308)モノクローナル抗体(カタログNo.4056、セル・シグナリング・テクノロジーズ(Cell Signaling Technologies))、5nM ランス(Lance)標識Eu−抗ウサギIgG(カタログNo.AD0083、パーキンエルマー)、及び100nM ストレプトアビジン−アロフィコシアニンコンジュゲート(カタログNo.PJ25S、プロザイム(Prozyme))を含有する、停止/検出バッファー 30μlで停止する。
5. 60分後、HTRFモードのエンビジョン(Envision)リーダー(パーキンエルマー)でHTRFシグナルを読み取る。
6. 化合物濃度とHTRFシグナルとの間に観察された関係を、4−パラメータロジスティック方程式にあてはめることにより、IC50を決定する。
【0195】
PDKl阻害の細胞生化学アッセイ
目的:
PI3’K経路に対するPD1阻害剤の阻害能(IC50)を、PC3細胞において、
オデッセイ(Odyssey)ウエスタンブロット分析、及びPDKlの2つの直接の基質である、RSK(Ser221)及びAKT(Thr308)と、下流のエフェクター分子S6RP(235/236)とに対するリン酸特異的抗体のカクテル、を使用して測定すること。
【0196】
細胞:
PC−3細胞を、10% FBS、1x L−グルタミン、1x 非必須アミノ酸、1x ピルビン酸ナトリウム、及び1x Hepesを加えたイーグルMEM中で増殖させる。他の細胞を使用してもよい。
【0197】
試薬:
一次抗体:
Akt308−セル・シグナリング、カタログNo.4056
RSKS221−バイオソース(Biosource)カタログNo.44 924G
S6RP235/236−セル・シグナリング カタログNo.2211
−p44/42 MAPキナーゼ(Thre202/Tyr204)−セル・シグナリング カタログNo.9101
Total eIF4E−セル・シグナリング カタログNo.9742
二次抗体:
赤外線(IR)標識ヤギ抗マウスIRDye600(LI−COR カタログNo.926−32221)
赤外線(IR)標識ヤギ抗ウサギIRDye800CW(LI−COR カタログNo.926−32210)
参考化合物(経路阻害剤)
ラパマイシン−カルビオケム(Calbiochem)、553211
LY294002−カルビオケム、440204
プロテアーゼ・インヒビター・タブレット−ロシュ(Roche)11836145001
ペイジルーラー・プレステインド・プロテイン・ラダー(PageRuler Prestained Protein Ladder)−ファーメンタス(Fermentas)、SM0671
ニトロセルロース膜
【0198】
バッファー/溶液
溶解ストック(4℃で保存)
20mM トリスHCl、pH7.5
150mM NaCl
15% グリセロール
1% イゲパル(Igepal)
完全溶解バッファー
1M β−グリセロールリン酸 1.25mL
0.5M NaF 5mL
0.1M NaPPi 5mL
100mM オルトバナジン酸ナトリウム 0.5mL
プロテアーゼ・インヒビター・タブレット 1
溶解ストックを50mLまで充填し、10mLのアリコートを作成し、凍結する。使用に先立ち、1つのアリコートに、200mM PMSF 100uLを添加する。
【0199】
TBS−ツイーン
20mM トリスHCl、pH7.5
150mM NaCl
0.05% ツイーン−20
TBS
20mM トリスHCl、pH7.5
150mM NaCl
ブロッキングバッファー
オデッセイ・ブロッキングバッファー(LI−COR、カタログNo.927−40000)
一次希釈剤
4% BSAフラクション5(PBS中)
0.02% ツイーン−20
0.5% アジ化ナトリウム
4x SDSサンプルバッファー
【0200】
サンプルプロトコール
完全増殖培地中での化合物刺激の24時間前の細胞播種
1. PC−3細胞を、T150フラスコ内で、標準的な組織培養法を用いて、細胞が近集密状態(1.0x10)に達するまで増殖させる。
2. 増殖培地を除去し、細胞を無菌の1xPBSで洗浄し、トリプシン 3mlの使用により、細胞をトリプシン処理して移動させる。
3. 移動した細胞を、培地 30mlで中和し、50mlのチューブに移す。
4. チューブを短時間ボルテックス処理して再懸濁させ、細胞懸濁液を完全に混合する。
5. 細胞を計数し、培地で希釈して、1mL当たり150,000細胞の濃度とする。
6. 細胞懸濁液 1mlを、12ウェルプレートの各ウェルに、リピートピペッターを用いて分配し、37℃、5%COにて24時間インキュベートする。
【0201】
化合物刺激
1. 96ウェルマスタープレートを使用して、PDKl阻害剤の3倍希釈シリーズを、DMSO中に作成する(7つの異なる化合物濃度、及び化合物を含まないDMSOコントロール)。濃度は、アッセイにおいて使用する最終濃度の200倍とする。
2. 細胞を刺激するため、化合物/DMSO 5μLを、細胞を入れた各ウェルに添加し、37℃、5%COにて、24時間インキュベートする。
【0202】
細胞溶解
1. 翌日、増殖培地を除去し、冷却した1x PBSで洗浄し、PBSを完全に除去した後、溶解バッファー 100uLを各ウェルに添加する。
2. 低温室内で、シェーカー上でプレートを10分間振盪する。
3. 各ウェルから溶解物を収集し、氷上に立たせた1.5mLのエッペンドルフチューブに移す。
4. 4℃で、13,000rpmで5分間遠沈する。
5. 溶解物 90uLを、4x SDSローディングバッファー 30uLを含有する新たなエッペンドルフチューブに移し入れる。
6. チューブを、70℃のヒートブロック中に7分間置き、−80℃でサンプルを保存する。
【0203】
ウエスタンブロット検出
1. 18ウェルの、10%又は4−20% トリスグリシンバイオラッド(Biorad)ゲル上で、ウェル当たりサンプル 30uL及び着色分子量マーカー 2uLを負荷することにより、サンプルを流す(70V、一定、40分間)。1番目と9番目のウェルに、ラダーを負荷する。
2. バイオ−ラッド(Bio−Rad)システムを用いてニトロセルロース上にブロットする(70V、350mA、40分間)。
3. 膜の非特異的結合を、オデッセイ・ブロッキングバッファー中で、室温で1時間ブロックする。
4. 一次抗体を、0.1% ツイーン20を含有するオデッセイ・ブロッキングバッファー中に希釈する(すなわち、各々を1:1000に希釈することにより、3種の抗体(PAKT、PS6RP、PRSK)のカクテルを作成する)。低温室中で一晩、振盪しながらインキュベートする。
5. 0.1% ツイーン20を加えたPBS中で、室温で4x5分間、膜を洗浄する。
6. 0.1% ツイーンを含有するオデッセイ・ブロッキングバッファー中で、蛍光標識二次抗体を希釈する(1:10,000)。
7. ブロットを、二次抗体中で、室温で60−90分間インキュベートする。長時間の光への暴露を避ける。
8. 0.1% ツイーン20を加えたPBS中で、室温で4x5分間、膜を洗浄する。光から保護する。
9. 膜をPBS中ですすぎ、残留するツイーン20を除去する。この時点で、膜はスキャンできるようになっている。
【0204】
膜のスキャン
1. 適切なチャンネルでスキャンし、スキャン完了まで膜を光から保護する。シグナルは、光から保護した場合、数カ月間は安定である。膜は、4℃のPBSバッファー中に保存するか、又は乾燥して保存してもよい。
2. オデッセイ・ソフトウェアを使用してバンドを定量し、負荷コントロール(mAb)に対し標準化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式A:
【化1】

[式中、
nは、0、1、2、3、4、又は5であり;
Wは、独立して、C又はNであり、Yは、独立して、C又はNであり、Zは、独立して、C又はNであり、ただし、W、Y、及びZの少なくとも1つはNであり;
Xは、O、CH、又はNHであり;
環Kは、アリール又はヘテロアリールであり;
は、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、又はヘテロアリールであり、ここで、前記アルキルは、C−Cアルキル又はフェニルで置換されていてもよく、ここで、前記フェニルは、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、ハロ、及びOHで置換されていてもよく;
は、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、又はヘテロアリールであり、ここで、前記アルキルは、C−Cアルキル又はフェニルで置換されていてもよく;
は、ヘテロシクリルであり、これは、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、NH(C=O)C−Cアルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、オキソ、及びNRで置換されていてもよく;
は、独立して、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
及びRは、独立して、H及びC−Cアルキルから選択され;かつ
及びRは、独立して、H及びC−Cアルキルから選択される]
の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体。
【請求項2】
式B:
【化2】

[式中、
nが、1、2、又は3であり;
Wが、独立して、C又はNであり、かつYが、独立して、C又はNであり、ただし、W又はYの少なくとも1つがNであり;
Xが、O、CH、又はNHであり;
が、C−Cアルキル、又はC−Cアルケニルであり;
が、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、又はヘテロアリールであり、ここで、前記アルキルは、C−Cアルキル又はフェニルで置換されていてもよく;
が、ヘテロシクリルであり、これは、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、NH(C=O)C−Cアルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、オキソ、及びNRで置換されていてもよく;
が、ハロであり;
が、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
が、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
が、H、C−Cアルキル、C−Cアルキル−OH、O(C−C)アルキル、C−Cアルケニル、COH、ハロ、OH、及びNRから選択され;
及びRが、独立して、H及びC−Cアルキルから選択され;かつ
及びRが、独立して、H及びC−Cアルキルから選択される]
の、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体。
【請求項3】
式C:
【化3】

[式中、
Wが、独立して、CH又はNであり、かつYが、独立して、CH又はNであり、ただし、W又はYの少なくとも1つがNであり;
Xが、O、又はNHであり;
が、C−Cアルキルであり;
が、C−Cアルキルであり;かつ
が、ハロである]
の、請求項2に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体。
【請求項4】
1−(3,4−ジフルオロベンジル)−6−オキソ−N−{(1R)−2−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−5−イル)オキシ]−1−フェニルエチル}−1,6−ジヒドロピリミジン−5−カルボキサミド;及び
4−(3,4−ジフルオロベンジル)−3−オキソ−N−{(1R)−2−[(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−5−イル)オキシ]−1−フェニルエチル}−3,4−ジヒドロピラジン−2−カルボキサミド;
から選択される、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体。
【請求項5】
医薬担体と、そこに分散された治療有効量の請求項1に記載の化合物とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項6】
その処置を要する哺乳類における癌の治療又は予防に有用な医薬の製造のための、請求項1に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2012−511000(P2012−511000A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539589(P2011−539589)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/065606
【国際公開番号】WO2010/065384
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】