説明

ホスホジエステラーゼ阻害剤としての安息香酸(1−フェニル−2−ピリジン−4−イル)エチルエステル

本発明は、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)酵素の阻害剤に関する。より詳細には、本発明は、(I)において、nは0または1であり;R1およびR2は同じであっても異なっていてもよく、かつ− 直鎖または分枝鎖C〜Cアルキル;− OR3{ここで、R3は、1個もしくは複数のC〜Cシクロアルキル基で場合により置換されているC〜Cアルキルである};および− HNSOR4{ここで、R4は、1個もしくは複数のハロゲン原子またはC〜C基で場合により置換されているC〜Cアルキルである}からなる群から選択され、ここで、R1およびR2の少なくとも一方はHNSOR4である、−フェニル−2−ピリジニルアルキルアルコールの誘導体である化合物、そのような化合物を調製する方法、それらを含む組成物、それらの組合せおよび治療的使用に関する。他の変数は、請求項で定義されている通りである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)酵素の阻害剤に関する。より詳細には、本発明は、1−フェニル−2−ピリジニルアルキルアルコール誘導体、その調製方法、それらを含む組成物、それらの組合せおよび治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
気道閉塞は、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む若干数の重篤な呼吸器疾患を特徴づけるものである。気道閉塞につながる事象は、気道壁の浮腫、粘液産生の増加および炎症を含む。
【0003】
喘息およびCOPD等の呼吸器疾患を治療するための薬物は、現在、吸入によって投与されている。全身経路に勝る吸入経路の利点の1つは、薬物を作用部位に直接送達し、いかなる全身性副作用も回避し、故に、より迅速な臨床応答およびより高い治療可能比を提供する可能性である。
【0004】
吸入コルチコステロイドは、喘息に最適であり、かつ気管支拡張薬β−アゴニストと共に急性症状の軽減に最適な現在の維持療法であり、これらが該疾患の現在の療法の主体となっている。COPDの現在の管理は、ほとんどが、吸入抗コリン薬および吸入β−アドレナリン受容体アゴニストを用いる気管支拡張療法を利用する対症性のものである。しかしながら、コルチコステロイドは、喘息においては炎症応答を低減するが、COPDにおいては低減しない。
【0005】
喘息およびCOPD等の炎症性呼吸器疾患の治療に対するその抗炎症作用の点で調査中である別のクラスの治療剤は、ホスホジエステラーゼ酵素(PDE)、特にホスホジエステラーゼ4型(以後、PDE4と称する)の阻害剤によって代表される。
【0006】
PDE4阻害剤として作用する種々の化合物が開示されてきた。しかしながら、ロリプラムおよびピクラミラスト等、第1世代の数種のPDE4阻害剤の有用性は、中枢神経系におけるPDE4に対する作用に起因する、および消化管内の壁細胞におけるPDE4に対する作用に起因する、悪心、胃酸分泌および嘔吐等、それらの望ましくない副作用のために限定されていた。
【0007】
前記副作用の原因は、広範に調査されてきた。
【0008】
PDE4は、特に中枢神経系および壁細胞に存在する高親和性ロリプラム結合部位つまりHPDE4、ならびに低親和性ロリプラム結合部位つまりLPDE4として指定された異なる立体配座を表す2つの異なる形態で存在し(Jacobitz, Sら、Mol. Pharmacol、1996、50、891〜899)、免疫細胞および炎症細胞において見られることが分かっている。いずれの形態も触媒活性を呈するようであるが、阻害剤に対するそれらの感受性に関しては異なっている。特に、LPDE4に対してより高い親和性を有する化合物は、悪心、嘔吐および胃液分泌増加等の副作用を誘発する傾向が低いようである。
【0009】
LPDE4を標的とする試みは、シロミラストおよびロフルミラスト等の第2世代PDE4阻害剤の選択性においてわずかな改善をもたらした。しかしながら、これらの化合物にさえ、LPDE4に対する良好な選択性は備わっていない。
【0010】
選択的LPDE4阻害活性を有する化合物は、WO 2009/018909において開示されている。
【0011】
1−フェニル−2−ピリジニルアルキレンアルコールおよびPDE4阻害剤としてのそれらの使用も、WO 2008/006509において記載されている。
【0012】
本発明は、優れたLPDE4選択性を有する一連の強力な新規PDE4阻害剤を提供する。
【0013】
驚いたことに、ベンゾエート残基上におけるスルホンアミド置換基の存在は、効力を著しく改善することが分かった。
【0014】
その上、驚いたことに、(−)鏡像異性体(下方にアスタリスクが付けられた炭素原子を参照)である本発明のスルホニルアミド誘導体は、対応する(+)鏡像異性体およびラセミ体よりも強力であることが分かった。
【0015】
今や、呼吸器管の炎症性または閉塞性疾患の治療において、本発明の化合物を長時間作用型β−アゴニストと組み合わせて使用すると、予想外に有益な治療効果、特に相乗効果が達成されることが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO 2009/018909
【特許文献2】WO 2008/006509
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の概要
本発明は、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)酵素の阻害剤として作用する(−)鏡像異性体としての一般式(I)の化合物、その調製方法、それらを含む組成物、およびそれらの治療的使用
【0018】
【化1】

【0019】
[式中、
nは0または1であり、
R1およびR2は同じであっても異なっていてもよく、かつ
− 1個または複数のハロゲン原子によって場合により置換されている直鎖または分枝鎖C〜Cアルキル、
− OR3{ここで、R3は、1個もしくは複数のハロゲン原子またはC〜Cシクロアルキル基で場合により置換されている直鎖または分枝鎖C〜Cアルキルである}、および
− HNSOR4{ここで、R4は、1個または複数のハロゲン原子で場合により置換されている直鎖または分枝鎖C〜Cアルキルである}
からなる群から選択され、
ここで、R1およびR2の少なくとも一方はHNSOR4である]
を対象とする。
【0020】
本発明は、薬学的に許容されるその水和物、溶媒和物、付加錯体、無機または有機塩、例えば、ナトリウム、カリウムおよびリジン塩も包含する。
【0021】
本発明は、スキーム1で報告される通りの式(I)の化合物の調製方法であって、アルデヒド(1)をメチルジクロロピリジン(2)と反応させてラセミアルコール(3)を取得するステップを含む方法も対象とする。次いで、この後者を、(S)−ナプロキセンまたは(S)−アセチルマンデル酸等のキラル酸と縮合して、スキーム1の経路1または2のように、ジアステレオマー混合物(10)または(5)をそれぞれ取得する。それぞれ単一ジアステレオ異性体(11)および(13)または(6)および(8)への分離を、クロマトグラフィー、結晶化または他の周知の方法によって行い、開裂後、それぞれ鏡像異性アルコール(−)(12)および(+)(14)または(+)(7)および(−)(9)を得る。最後に、適切な安息香酸(15)、鏡像異性体(+)(14)または(+)(7)との反応により、一般式(I)の化合物を得る。
【0022】
本発明は、式(I)の化合物[式中、nはスキーム1で報告される通り0である]の調製方法であって、任意の鏡像異性アルコール、例えば(+)(14)の、安息香酸(15)との反応を含む方法も対象とする。
【0023】
本発明は、式(I)の化合物[式中、nはスキーム1で報告される通り1である]の調製方法であって、3−クロロ過安息香酸、過酢酸または過酸化水素等の酸化剤を利用する鏡像異性アルコール(+)(14)の酸化によってアルコール(+)鏡像異性体(7)を取得し、これを式の安息香酸(15)と反応させて式(I)の化合物[式中、nは1である]を得ることを含む方法も対象とする。
【0024】
本発明は、式(I)の化合物[式中、nはスキーム1で報告される通り1である]の調製方法であって、3−クロロ過安息香酸、過酢酸または過酸化水素等の酸化剤を利用する式(I)のエステル[式中、nは0である]の酸化を含む方法も対象とする。
【0025】
本発明は、一般式(II)の中間化合物
【0026】
【化2】

【0027】
[式中、nは上記で定義された通りであり、かつ下方にアスタリスク付きで表示されている炭素原子は(S)配置を示す]
も対象とする。
【0028】
本発明は、式(I)の化合物と、1種または複数の薬学的に許容される担体および/または添加剤とを含む医薬組成物も提供する。
【0029】
本発明は特に、吸入による投与に適した医薬調製物を提供する。
【0030】
本発明は、式(I)の化合物と、長時間作用型βアゴニスト、M3アンタゴニストおよびコルチコステロイドのクラスから選択される第2の成分との組合せも提供する。
【0031】
本発明は、式(I)の化合物と、カルモテロール、GSK−642444、インダカテロール、ミルベテロール、アルホルモテロール、ホルモテロール、サルブタモール、ホルモテロール、レバルブテロール、テルブタリン、AZD−3199、BI−1744−CL、LAS−100977、バンブテロール、イソプロテレノール、プロカテロール、クレンブテロール、レプロテロール、フェノテロールおよびASF−1020からなる群から選択される長時間作用型βアゴニストとの組合せも提供する。
【0032】
本発明は、式(I)の化合物と、アクリジニウム、チオトロピウム、イプラトロピウムおよびオキシトロピウムからなる群から選択されるM3アンタゴニストとの組合せも提供する。
【0033】
本発明は、式(I)の化合物と、デキサメタゾン、フルチカゾン、フルチカゾンフロエート、プレドニゾロン、ベタメタゾン、ブデソニド、モメタゾン、モメタゾンフロエート、トリアムシノロンアセトニド、シクレソニド、TPI−1020、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、プレドニゾン、デフラザコルト、ヒドロコルチゾン、QAE−397およびフルニソリドからなる群から選択されるコルチコステロイドとの組合せも提供する。
【0034】
好ましい実施形態において、本発明は、式(I)の化合物とホルモテロールまたはカルモテロールとの組合せを提供する。
【0035】
本発明は、薬剤として使用するための、式(I)の化合物も提供する。
【0036】
PDE4受容体の活性が関係し、PDE4受容体活性の阻害が望まれる任意の疾患の予防または治療用の薬剤の調製における、式(I)の化合物の使用も提供される。
【0037】
本発明は、PDE4受容体の活性が関係し、PDE4受容体活性の阻害が望まれる任意の疾患の予防または治療ための方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の式(I)の化合物を投与するステップを含む方法も提供する。
【0038】
上記の使用または方法は、式(I)の化合物を、単独で、または先に報告したもののうち他の有効成分と組み合わせてのいずれかで含む。
【0039】
PDE4受容体の活性およびPDE4受容体の阻害が関係する上記の疾患は、喘息およびCOPD等、気道閉塞を特徴とする呼吸器管の疾患を含む。
【0040】
さらに、本発明は、PDE4のインビトロ阻害のための式(I)の化合物の使用も対象とする。
【0041】
本発明は、式(I)の化合物を含む、単回もしくは多回用量ドライパウダー吸入器、定量吸入器またはソフトミストネブライザーであってよいデバイスも対象とする。
【0042】
本発明は、式(I)の化合物の医薬組成物を、単独で、または1種もしくは複数の薬学的に許容される担体および/もしくは添加剤と混和された追加の医薬成分と組み合わせて、ならびに、単回もしくは多回用量ドライパウダー吸入器、定量吸入器またはソフトミストネブライザーであってよいデバイスを含むキットも対象とする。
定義
用語「ハロゲン原子」は、本明細書において使用される場合、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0043】
本明細書において使用される場合、C〜CまたはC〜Cアルキル等、表現「直鎖または分枝鎖C〜Cアルキル[ここで、xは1を超える整数である]」は、炭素原子の数が1からx(例えば、1から6または1から4)の範囲内である直鎖または分枝鎖アルキル基を指す。故に、アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル等を含み得る。
【0044】
場合により、前記基中、1個または複数の水素原子は、ハロゲン原子、好ましくは塩素またはフッ素によって置き換えられていてよい。
【0045】
本明細書において使用される場合、表現「C〜Cシクロアルキル」は、3から7個の環炭素原子を含有する環式非芳香族炭化水素基を指す。故に、それらの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルを含み得る。
【0046】
キラル化合物に言及する場合、別段の定めがない限り、本明細書における「実質的に純粋な」純度は、少なくとも約97%を超えて、好ましくは99%を超えて、最も好ましくは99.9%を超えてキラル的に純粋であることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図は、本発明の好ましい実施形態のための相乗作用の存在を示す。OA=オボアルブミン(Ovoalbumin)C1=3−シクロプロピルメトキシ−4−メタンスルホニルアミノ−安息香酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−エチルエステルCARM=カルモテロール発明の詳細な説明 本発明は、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)酵素の阻害剤として作用する化合物を対象とする。
【0048】
前記化合物は、環状ヌクレオチド、特に環状アデノシン一リン酸(cAMP)の、それらの不活性5’−モノヌクレオチド形態への変換を阻害する。
【0049】
気道において、環状ヌクレオチドの、特にcAMPの細胞内レベル上昇に対する生理学的応答は、マスト細胞、マクロファージ、Tリンパ球、好酸球および好中球等の免疫細胞および炎症誘発性細胞の活性の抑制につながり、IL−1、IL−3および腫瘍壊死因子−α(TNF−α)等のサイトカインを含む炎症性メディエーターの放出の減少をもたらす。該応答は、気道平滑筋弛緩および浮腫の減少にもつながる。
【0050】
PDE4の触媒部位は以前に同定されており、2つのサブポケット、例えばSおよびSが存在する疎水性領域と、同じく金属イオンを拡散させるサブポケットSおよび疎水性ポケットの中央から約90°分枝しているサブポケットSを含む、金属イオンZn2+およびMg2+を含有する親水性領域とを主として含む。
【0051】
公知の化合物のほとんどには、置換カテコール(cathecol)基等の疎水性領域のサブポケットSおよびSと相互作用することができる部分、ならびに、Sサブポケットの金属イオン、例えばピリジンまたはピロリドン等の複素環と間接的に相互作用することができる別の部分が備わっている。
【0052】
本発明は、置換カテコール部分を利用してサブポケットSおよびSとの相互作用を、また他の公知のPDE4阻害剤のようなピリジン環を利用して金属イオン領域との相互作用を維持することができるが、スルホニルアミノ−安息香酸基の存在については、サブポケットSとの追加の相互作用を確立することができるものとは異なる化合物を対象とする。
【0053】
特に、本発明は、薬学的に許容されるその無機および有機塩、水和物、溶媒和物または付加錯体を含む、先に定義した通りの一般式(I)の化合物に関する。
【0054】
【化3】

【0055】
式(I)の化合物の好ましい群は、
− R1がHNSOR4であり、R2がOR3であり、かつnが0である、
− R1がHNSOR4であり、R2がOR3であり、かつnが1である、
− R1がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、R2がOR3[ここで、R3はシクロプロピルメチルである]であり、かつnが0である、
− R1がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、R2がOR3[ここで、R3はシクロプロピルメチルである]であり、かつnが1である、
− R1が直鎖または分枝鎖C〜Cアルキルであり、R2がHNSOR4であり、かつnが0である、
− R1がメチルであり、R2がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、かつnが0である、
− R1が直鎖または分枝鎖C〜Cアルキルであり、R2がHNSOR4であり、かつnが1である、
− R1がメチルであり、R2がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、かつnが1である、
− R2が直鎖または分枝鎖C〜Cアルキルであり、R1がHNSOR4であり、かつnが0である、
− R2がメチルであり、R1がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、かつnが0である、
− R2が直鎖または分枝鎖C〜Cアルキルであり、R1がHNSOR4であり、かつnが1である、
− R2がメチルであり、R1がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、かつnが1である、
− R1がOR3であり、R2がHNSOR4であり、かつnが0である、
− R1がOR3であり、R2がHNSOR4であり、かつnが1である、
− R1がOR3[ここで、Rはシクロプロピルメチルである]であり、R2がHNSOR4であり、R4がメチルであり、かつnが1である、
− R1がOR3であり、R2がHNSOR4であり、かつnが1である、
− R1およびR2の両方がHNSOR4であり、かつnが0である、
− R1およびR2の両方がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、かつnが0である、
− R1およびR2の両方がHNSOR4であり、かつnが1である、
− R1およびR2の両方がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、かつnが1である
化合物である。
【0056】
一般式(I)の化合物は、下方にアスタリスク付きの炭素原子によって現在表示されている1つの不斉中心を少なくとも含有し、したがって、光学立体異性体として存在することが、当業者には明らかであろう。
【0057】
本発明は、下方にアスタリスク付きで表示されている炭素原子において配置(S)を有する(−)鏡像異性体である式(I)の化合物を対象とする。
【0058】
本発明は、下方にアスタリスク付きで表示されている炭素原子が(S)配置を示す式(II)の中間化合物も対象とする。
【0059】
式(I)の化合物は、nM範囲内のPDE4酵素に対するインビトロ阻害活性を示し、該化合物には、COPDの動物モデルにおいて、気管内投与時、肺における顕著な活性が与えられている。
【0060】
該化合物は、短時間の全身作用の指標である、血奬中では検出不可能な、肺における持続性肺レベルも呈し得る。
【0061】
好ましい実施形態によれば、本発明は、以下で報告される式(I)の化合物を提供する。
【0062】
【表1】

【0063】
上記の化合物は便宜上(−)鏡像異性体として同定されているが、該化合物は、アスタリスクが付けられた炭素原子において(S)配置を有する。そのため、同化合物を、下記の表のように同定してもよい。
【0064】
【表2】

【0065】
有利なことに、それらのIC50値の決定によって取得される通り、本発明の化合物は、HPDE4に対するものよりも高いLPDE4に対する選択性を特徴とする。
【0066】
LPDE4の場合、IC50は、Cortijo Jら、Br J Pharmacol、1993、108:562〜568において記載されている通りに評価したcAMP消失の50%阻害を生じさせる試験化合物のモル濃度である。代わってHPDE4の場合、IC50は、Duplantier AJら、J Med Chem、1996、39:120〜125に記載されている通りに評価した[H]ロリプラムの結合の50%阻害を生じさせる試験化合物のモル濃度である。
【0067】
好ましくは、本発明の化合物についてのHPDE4/LPDE4のIC50比は、5を超え、より好ましくは10を超え、より一層好ましくは20を超え、最も好ましくは100を超える。
【0068】
式(I)の化合物は、公知の方法に従って慣習的に調製できる。使用され得る方法のいくつかを以下に記載し、スキーム1において報告する。
【0069】
【化4】

【0070】
式(I)の化合物の調製のための手順
本発明の特定の実施形態によれば、式(I)の化合物は、例えば、スキーム1において記載されている合成経路に準じて調製できる。
【0071】
ラセミアルコール(3)は、アルデヒド(1)をメチルジクロロピリジン(2)と反応させることによって調製できる。
【0072】
経路1− ラセミアルコール(3)は、ラセミ混合物を適切なキラル補助基と反応させ、それによりジアステレオ異性体の混合物を取得することによって等、公知の方法によって(−)(12)および(+)(14)鏡像異性体に分離できる。そのようなジアステレオ異性体は、結晶化によってもしくはクロマトグラフィーによって、または公知の方法に従って酵素を利用して、分離できる。その後、キラル補助基をジアステレオ異性体から除去して、所望のキラルアルコールを単一鏡像異性体として得ることができる。代替として、アルコールラセミ混合物を、公知の方法に従い、キラル固定相を用いるクロマトグラフィーを利用して分割してもよい(参照:「Enantiomer Separation: Fundamentals and Practical Methods」、F. Toda、Springer- Verlag、2004;「Drug Stereochemistry: Analytical Methods and Pharmacology」、Irving W. Wainer、CRC Press、1993)。
【0073】
特に、ラセミアルコール(3)は(S)−ナプロキセン等のキラル酸と縮合することができ、取得したジアステレオマー混合物(10)をクロマトグラフィーによって2つの単一ジアステレオ異性体(11)および(13)に分離することができる。水性溶媒中での加水分解による、またはアルコール溶媒中でのアルコール分解による、酸性または塩基性条件を使用する単一ジアステレオマーエステルの開裂後、鏡像異性的に純粋なアルコール中間体(−)(12)および(+)(14)が取得され得る。
【0074】
経路2− 従来の方法に従って行われたラセミ体(3)の酸化によって取得されたラセミ体(4)を、(S)−アセチルマンデル酸等のキラル酸と反応させて、2つのジアステレオ異性体の混合物(5)を取得することができる。ジエチルエーテルでの粉砕およびイソプロパノール、エタノールまたはメタノール等の溶媒中における結晶化によって、またはクロマトグラフ分離によって、単一ジアステレオマーエステル(6)および(8)が取得され得る。
【0075】
水性溶媒中での加水分解による、またはアルコール溶媒中でのアルコール分解による、酸性または塩基性条件を使用する単一ジアステレオマーエステルの開裂後、鏡像異性的に純粋なアルコール中間体(+)(7)および(−)(9)が取得され得る。
【0076】
一般式(I)の化合物[式中、nは0である]は、適正な鏡像異性アルコール(+)(14)を、安息香酸(15)と、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、NaHまたはジメチルアミノピリジン(DMAP)等の適切な強塩基の存在下、かつ1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)またはN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)等の縮合剤の存在下、ジクロロメタン等の溶媒中で反応させることによって調製できる。ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、ジオキサン、または当業者に公知である任意の他の非プロトン性溶媒等、他の溶媒を使用してもよい。特定の実施形態において、反応は、溶媒の不在下で行われることもある。
【0077】
式(I)の化合物[式中、nは1である]は、対応する式(I)の化合物[式中、nは0である]を、3−クロロ過安息香酸、過酢酸または過酸化水素等の酸化剤を利用して、クロロホルム、ジクロロメタンまたは酢酸等の溶媒中で酸化させることによって調製できる(経路B)。
【0078】
代替として、式(I)の化合物[式中、nは1である]は、最初に前述の動作条件を利用してアルコール鏡像異性体(+)(14)を酸化させ、それにより、アルコール鏡像異性体(+)(7)を取得することによって調製することもできる。所与のアルコール鏡像異性体と式(15)の安息香酸との間の後続反応により、上記の式(I)の化合物[式中、nは0である]が提供される(経路A)。
【0079】
ラセミアルコール(3)の酸化によって変化して取得されたラセミアルコール(4)からの(+)(7)および(−)(9)鏡像異性体の分離は、ラセミアルコール(3)の鏡像異性体の分離について上記で記載した通り、公知の方法によって行われ得る。
【0080】
当業者であれば、スキーム1において報告されている合成ステップに対する任意選択の変形が、本発明の化合物の調製にも適用され得ることを承知しているはずである。
【0081】
本出願人らは、特に、所望化合物またはその中間体を得られるように実施され得る反応の順序と、溶媒、任意選択の酸化剤、縮合剤等を含む、適合される動作条件の選択とに言及する。
【0082】
例として、不要な副反応を引き起こすかもしれない化学反応性置換基が、出発材料またはその中間体のいずれか中に存在する場合、反応が起こる前に、同置換基の適切な保護が行われ得る。
【0083】
類推によると、次いで、上記の化学反応性置換基または基を遊離形態で再度取得するように、後続の脱保護が行われ得る。
【0084】
官能基の保護および脱保護については、「Protective Groups in Organic Chemistry」、第3版、T. W. GreeneおよびP.G.M. Wuts、Wiley-Interscience(1999)および「Protecting Groups」、P.J. Kocienski、Georg Thieme Verlag(1994)において記載されている。
【0085】
本発明の化合物の調製のための本方法およびその改良形によれば、式(1)および(2)の出発材料ならびに任意の追加反応物[(例えば式(15)のもの]、キラル補助基、溶媒、または用いられる作用物質は、公知であるか、または公知の方法に従って容易に調製できる。
【0086】
本発明は、1種または複数の薬学的に許容される担体、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences Handbook、第XVII版、Mack Pub.、N.Y.、U.S.Aにおいて記載されているものと混和された、式(I)の化合物の医薬組成物も提供する。
【0087】
例は、賦形剤(スクロース、マンニトール、ラクトース、デンプン等)、ならびに、懸濁化剤、可溶化剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、保存剤、着色剤、香味剤、滑沢剤等を含む公知の添加剤を含む。持続放出カプセル剤、錠剤およびゲル剤も、本発明の化合物を投与するのに有利である。
【0088】
本発明の化合物の投与は、患者のニーズに従って、例えば、経口的に、経鼻的に、非経口的に、例えば、皮下に、静脈内に、筋肉内に、胸骨内におよび注入によって、吸入によって、経直腸的に、経膣的に、局所的に、局部的に、経皮的に、ならびに眼内投与によって、遂行され得る。本発明の化合物を投与するために、錠剤、ゲルキャップ剤、カプセル剤、カプレット剤、顆粒剤、ロゼンジ剤および混合散剤等の固体形態を含む種々の固体経口剤形が使用され得る。
【0089】
本発明の化合物を投与するために、水性および非水性液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、ならびにエリキシル剤を含む種々の液体経口剤形を使用してもよい。そのような剤形は、水等の公知の適切な不活性賦形剤、ならびに、保存剤、湿潤剤、甘味料、香味剤、および本発明の化合物を乳化し、かつ/または懸濁させるための作用物質等の公知の適切な添加剤も含有し得る。本発明の化合物は、例えば、等張性無菌溶液の形態で静脈内に注射され得る。他の公知の調製物も可能である。
【0090】
本発明の前記化合物の直腸投与用の坐剤は、化合物を、ココアバター、サリチレートおよびポリエチレングリコール等の適切な添加剤と混合することによって調製できる。
【0091】
膣内投与用の製剤は、有効成分に加えて従来の担体を含有する、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー剤処方の形態であってよい。
【0092】
局所投与のために、医薬組成物は、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、乳剤、懸濁剤、ゲル剤、液剤、ペースト剤、散剤、スプレー剤、および皮膚、眼、耳または鼻への投与に適した点滴剤の形態であってよい。局所投与は、例えば経皮パッチ剤を利用する経皮投与を伴ってもよい。
【0093】
呼吸器管の疾患の治療のために、本発明の化合物は、好ましくは吸入によって投与される。
【0094】
吸入用調製物は、吸入用散剤、噴射剤含有定量エアゾール剤または噴射剤を含有しない吸入用製剤を含む。
【0095】
ドライパウダーとしての投与のために、公知の単回または多回用量吸入器が利用され得る。その場合、散剤が、ゼラチン、プラスチックもしくは他のカプセル、カートリッジまたはブリスターパック内に、あるいはレザバー内に充填され得る。
【0096】
本発明の化合物に対し概して化学的に不活性である賦形剤または担体、例えば、ラクトースまたは呼吸性画分を改善するのに適した任意の他の添加物を、本発明の粉末化合物に添加してよい。
【0097】
ヒドロフルオロアルカン等の噴射剤ガスを含有する吸入用エアゾール剤は、本発明の化合物を溶液または分散形態のいずれかで含有し得る。噴射剤駆動の製剤は、共溶媒、安定剤および場合により他の添加剤等の他の成分も含有し得る。
【0098】
本発明の化合物を含む噴射剤を含有しない吸入用製剤は、水性、アルコール性または水アルコール性媒質中の溶液または懸濁液の形態であってよく、該製剤は、公知のジェット式もしくは超音波式ネブライザーによって、またはRespimat(登録商標)等のソフトミストネブライザーによって送達され得る。
【0099】
本発明の化合物は、唯一の活性剤として、または、呼吸器障害の治療において現在使用されている成分、例えば、β−アゴニスト、コルチコステロイドおよびM3アンタゴニストを含む、1種もしくは複数の他の薬学的有効成分と組み合わせて投与され得る。
【0100】
本発明の化合物の投薬量は、治療される特定の疾患、症状の重症度、投与経路、投与間隔の頻度、利用される特定の化合物、化合物の有効性、毒性プロファイルおよび薬物動態プロファイルを含む様々な要因によって決まり得る。
【0101】
有利なことに、式(I)の化合物は、例えば、0.001から1000mg/日の間、好ましくは0.1から500mg/日の間に含まれる投薬量で投与され得る。
【0102】
吸入経路によって投与される場合、式(I)の化合物の投薬量は、有利なことに、0.01から20mg/日の間、好ましくは0.1から10mg/日の間に含まれる。
【0103】
好ましくは、単独のまたは他の有効成分と組み合わせた式(I)の化合物は、喘息、慢性気管支炎および慢性閉塞性肺疾患(COPD)等、任意の閉塞性呼吸器疾患の予防および/または治療のために投与され得る。
【0104】
しかしながら、式(I)の化合物は、PDE4受容体の活性が関係しており、かつPDE4受容体活性の阻害が望まれる任意の疾患、またはPDE4活性によって媒介される病状(例えば、PDE4が過剰発現または過剰活性している病状)の予防および/または治療のために投与され得る。そのような疾患の例は、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、春季カタル等のアレルギー性病状、好酸球性肉芽腫、乾癬、炎症性関節炎、関節リウマチ、敗血性ショック、潰瘍性結腸炎、クローン病、心筋および脳の再灌流傷害、慢性糸球体腎炎、内毒素性ショック、嚢胞性線維症、動脈再狭窄、アテローム性動脈硬化症、角化症、リウマチ様脊椎炎、変形性関節炎、発熱(pyresis)、真性糖尿病、塵肺症、毒性およびアレルギー性接触湿疹、アトピー性湿疹、脂漏性湿疹、単純苔癬、日焼け、肛門性器部のそう痒、円形脱毛症、肥厚性瘢痕、円板状エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス、毛包性および広範性膿皮症(wide−area pyodermias)、内因性および外因性座瘡、酒さ性座瘡、ベーチェット(Beghet’s)病、アナフィラクトイド紫斑病性腎炎、炎症性腸疾患、白血病、多発性硬化症、消化器疾患、自己免疫疾患等を含む。
【0105】
該疾患の例は、アルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多系統萎縮症(MSA)、統合失調症、パーキンソン病、ハンチントン病、ピック病、鬱病、脳卒中および脊髄損傷等の神経および精神障害も含む。
【0106】
ここから、下記の例によって本発明をさらに説明する。
例1
1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−エタノール(3)の調製
50mlの乾燥THF中の3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−ベンズアルデヒド(5.00g)および3,5−ジクロロ−4−メチルピリジン(2.57g)の溶液を、−30℃に冷却した。
【0107】
温度を−30℃から−20℃の間に維持しながら、固体カリウムt−ブトキシド(tBuOK、1.96g)を小分けにして添加し、それにより、暗赤色溶液を取得した。添加の完了後、混合物を−30℃で1時間撹拌した。次いで、温度を−5℃から−10℃の間に維持しながら、NHClの飽和水溶液(50ml)を反応混合物に添加した。反応混合物の色が黄色に変わった。
【0108】
次いで、混合物をEtOAcで抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発除去した。残留物を石油エーテル/EtOAc=8/2の混合物30mlで処理し、沈澱物を濾過し、乾燥させて、4.83gの表題化合物を取得し、これをさらに精製することなく次のステップにおいて用いた。
MS/ESI 404−406 [MH]
例2
1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−1−オキシ−ピリジン−4−イル)−エタノール(4)の調製
化合物(3)(13.0g)をCHCl(250ml)に溶解し、次いでm−クロロ過安息香酸(16.5g)を添加し、得られた溶液を室温で2時間撹拌した。Na(25.4g)を添加し、混合物を室温で1時間激しく撹拌した。固体残留物を濾過除去し、溶液を1N NaOH(3×100ml)で洗浄し、次いで有機相をNaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発除去して、10.3gの所望生成物(4)を白色固体として得、これをさらに精製することなく次のステップにおいて使用した。
MS/ESI 420−422 [MH]
例3
アセトキシ−フェニル−酢酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−1−オキシ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル(5,ジアステレオ異性体の混合物)の調製
化合物(4)(19.95g)、(S)−アセチルマンデル酸(9.22g)、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(18g)および4−ジメチルアミノピリジン(2.89g)を、N雰囲気下、乾燥CHCl(300ml)に溶解した。反応混合物を室温で終夜撹拌した。NaHCOの5%水溶液(200ml)を添加し、水相をCHCl(3×100ml)で抽出した。合わせた有機相をNaSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発させて、表題化合物(5)を2つのジアステレオ異性体の混合物(32g)として得た。2つのジアステレオ異性体の分離については、例4および6において記載する。
例4
(+)−アセトキシ−フェニル−酢酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−1−オキシ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル(6)の調製
粗製ジアステレオマー混合物(5)(32g)をEtO(100ml)で粉砕し、音波破砕し、濾過した。ジアステレオ異性体が豊富な固体混合物(6)を取得するために、手順を4回繰り返した。この固体をiPrOH(80ml)から結晶化し、濾過して、ジアステレオマー純度が95%超である9.65gの化合物(6)を得た。ジアステレオマー純度は、HPLC分析およびキラルセル(Chiracel)ODカラム上で実施した分析用キラルHPLC(ヘキサン:イソプロパノール 40:60による定組成溶離、流量0.45ml/分、保持時間=27.2分)によって決定した。
MS/ESI 596,598 [MH]
’1H NMR(300MHz,DMSO−d6)ppm 8.57(s,2H),7.27〜7.44(m,5H),6.91〜7.18(m,1H),7.03(t,1H),6.71〜6.79(m,2H),5.95(dd,1H),5.85(s,1H),3.72(dd,1H),3.60(dd,1H),3.41(dd,1H),3.23(dd,1H),2.13(s,3H),1.07〜1.31(m,1H),0.48〜0.72(m,2H),0.21〜0.44(m,2H)
[α]=+14°(c=0.54,MeOH)
例5
(+)−1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−1−オキシ−ピリジン−4−イル)−エタノール(7)の調製
化合物(6)(6.42g)をメタノール(350ml)に懸濁させ、次いでNaHCOの飽和溶液(175ml)を添加した。白色懸濁液を室温で終夜激しく撹拌した。反応混合物をCHCl(700ml)で希釈し、NaHCOの5%水溶液(300ml)で洗浄し、水相をCHCl(2×300ml)で抽出し、合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、溶媒を真空下で蒸発除去した。取得した粗白色固体をEtO(2×100ml)で粉砕し、濾過して、鏡像異性体純度が99%超である3.88gの化合物(7)を得た。鏡像異性体純度は、キラルセルODカラム上で実施した分析用キラルHPLC(ヘキサン:イソプロパノール 30:70による定組成溶離、流量0.35ml/分、保持時間=22.3分)によって決定した。
MS/ESI 420−422 [MH]
’1H NMR(300MHz,DMSO−d6)ppm 8.51(s,2H),7.11(d,1H),7.05(d,1H),6.88(dd,1H),7.01(t,1H),5.59(d,1H),4.84(dd,1H),3.89(dd,1H),3.84(dd,1H),3.18(dd,1H),3.02(dd,1H),1.03〜1.35(m,1H),0.46〜0.67(m,2H),0.24〜0.46(m,2H)
[α]=+68°(c=0.5,MeOH)
例6
(+)−アセトキシ−フェニル−酢酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−1−オキシ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル(8)の調製
粗製ジアステレオマー混合物(5)をEtO(100ml)で粉砕し、音波破砕し、濾過した。手順を4回繰り返し、濾液を収集し、減圧下で蒸発させて、ジアステレオ異性体が豊富な固体混合物(8)を得、これをiPrOH(100ml)から結晶化して、6.4gの化合物(8)を、ジアステレオマー純度が99%超である白色固体として得た。ジアステレオマー純度は、HPLC分析およびキラルセルODカラム上で実施した分析用キラルHPLC(ヘキサン:イソプロパノール 40:60による定組成溶離、流量0.45ml/分、保持時間=21.6分)によって決定した。
MS/ESI 596,598 [MH]
H NMR(300MHz,DMSO−d6)ppm 8.27(s,2H),7.27〜7.45(m,5H),7.20(d,1H),7.08(d,1H),7.00(dd,1H),7.08(t,1H),5.97(dd,1H),5.85(s,1H),3.93(dd,1H),3.89(dd,1H),3.33(dd,1H),3.17(dd,1H),2.07(s,3H),1.14〜1.38(m,1H),0.50〜0.71(m,2H),0.21〜0.47(m,2H)
[α]=+26°(c=0.55,MeOH)
例7
(−)−1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−1−オキシ−ピリジン−4−イル)−エタノール(9)の調製
化合物(8)(1.18g)をメタノール(50ml)に懸濁させ、次いでNaHCOの飽和溶液(25ml)を添加した。白色懸濁液を室温で24時間激しく撹拌した。反応混合物をCHCl(700ml)で希釈し、次いでNaHCOの5%水溶液(300ml)を添加し、相を分離した。水相をCHCl(2×100ml)で抽出し、合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、溶媒を真空下で蒸発除去した。取得した粗白色固体を、EtO(50ml)で2回、CHCl(20ml)で1回粉砕し、次いで濾過して、鏡像異性体純度が99%超である0.74gの化合物(7)を得た。鏡像異性体純度は、キラルセルODカラム上で実施した分析用キラルHPLC(ヘキサン:イソプロパノール 30:70による定組成溶離、流量0.35ml/分、保持時間=24.0分)によって決定した。
MS/ESI 420−422 [MH]
’1H NMR(300MHz,DMSO−d6)ppm 8.51(s,2H),7.11(d,1H),7.05(d,1H),6.88(dd,1H),7.01(t,1H),5.59(d,1H),4.84(dt,1H),3.89(dd,1H),3.84(dd,1H),3.18(dd,1H),3.02(dd,1H),1.08〜1.32(m,1H),0.47〜0.66(m,2H),0.26〜0.45(m,2H)
[α]=−61°(c=0.5,MeOH)
例8
2−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イル)−プロピオン酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル(10,ジアステレオ異性体11および13の混合物)
化合物(3)(12.0g)をDMF(100ml)に溶解し、次いで、(S)−2−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イル)−プロピオン酸(7.5g)、4−ジメチルアミノピリジン(3.6g)および1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(5.7g)を添加した。室温で4時間撹拌後、水(1000ml)を添加した。混合物をEtOAc(500ml×2)で抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で蒸発除去して17.0gの油を得、これをEtOHから結晶化させ、それにより、11.5gの表題化合物をジアステレオマー(11)および(13)の混合物として取得した。
H NMR(200MHz,CDCl)ppm 8.43及び8.60(2s,各1H,2H),7.51〜7.68(m,3H),7.10〜7.23(m,3H),6.85〜6.97(m,2H),6.51〜6.68(m,1H),6.22〜6.97(t,1H,CHF),6.00〜6.13(m,1H),3.93〜3.95(s,3H,OCH),3.72〜3.84(m,2H),3.07〜3.57(m,3H),1.42〜1.45(d,3H,CH),0.94〜1.25(m,1H),0.51〜0.67(m,2H),0.12〜0.36(m,2H).
MS/ESI 616,618[MH]
例9
(+)−2−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イル)−プロピオン酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル(2番目に溶離したジアステレオ異性体)(13)
化合物は、ダイソーゲル10μm、50×300mmカラム;溶離液:n−ヘキサン/メチル−tert−ブチル−エーテル/イソプロピルアルコール:90/9.9/0.1;流量:80ml/分;充填:1回の注射当たり300mg;溶離時間:11から20分までを使用するHPLC分離によって、例8のジアステレオマー混合物から単離した。収集した画分を蒸発させ、残留物をn−ヘキサン/イソプロピル−アルコールから結晶化した。
H NMR(200MHz,CDCl)ppm 8.60(s,2H),7.68〜7.75(m,2H),7.58〜7.59(m,1H),7.27〜7.29(d,1H),7.12〜7.24(m,2H),6.98〜7.04(m,1H),6.73〜6.78(dd,1H),6.67〜6.68(d,1H),6.60〜7.35(t,1H,CHF),5.99〜6.06(m,1H),3.84〜3.87(m,4H),3.47〜3.55(m,2H),3.32〜3.41(dd,1H),3.22〜3.29(m,1H),1.33〜1.37(d,3H,CH),0.96〜1.03(m,1H),0.43〜0.52(m,2H),0.13〜0.21(m,2H).
MS/ESI 616,618[MH]
[α]=+52.8°(c=0.5,MeOH)
例10
(+)−2−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イル)−プロピオン酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル(最初に溶離したジアステレオ異性体)(11)
化合物は、ダイソーゲル10μm、50×300mmカラム;溶離液:n−ヘキサン/メチル−tert−ブチル−エーテル/イソプロピル−アルコール:90/9.9/0.1;流量:80ml/分;充填:1回の注射当たり300mg;溶離時間:7から10分までを使用するHPLC分離によって、例8のジアステレオマー混合物から単離した。収集した画分を蒸発させ、残留物をn−ヘキサン/イソプロピル−アルコールから結晶化した。
H NMR(200MHz,CDCl)ppm 8.27(s,2H),7.64〜7.80(m,2H),7.56〜7.57(m,1H),7.28〜7.29(d,1H),7.14〜7.20(m,3H),6.68〜7.42(t,1H,CHF),6.93〜6.98(m,2H),6.00〜6.07(m,1H),3.88〜3.92(m,4H),3.71〜3.84(m,2H),3.39〜3.51(dd,1H),3.16〜3.25(dd,1H),1.33〜1.37(d,3H,CH),1.08〜1.23(m,1H),0.50〜0.59(m,2H),0.34〜0.26(m,2H).
MS/ESI 616,618[MH]
[α]=+45°(c=0.5,MeOH)
例11
(+)−1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−エタノール(14)
メタノール(110ml)中の(+)−2−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イル)−プロピオン酸−1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル(13)(14.0g)の懸濁液に、カリウムtert−ブトキシド(5.1g)を添加した。得られた混合物を室温で2時間撹拌して、透明な溶液を取得した。初期沈殿物(混濁溶液)に、撹拌しながら水をゆっくり添加した。
【0109】
さらに60分間撹拌後、沈殿した固体を濾過し、水で洗浄し、クロロホルム(100ml)に溶解した。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空下で除去した。残留物をクロロホルム/ヘキサン=1/2.5中で結晶化して、8.1gの白色固体を取得した。
H NMR(200MHz,CDCl)ppm δ 8.45(s,2H),7.19〜7.08(d,1H),7.06〜7.00(d,1H),6.95〜6.85(dd,1H),6.99〜6.24(t,1H,CHF),5.18〜5.00(m,1H),3.98〜3.78(m,2H),3.54〜3.35(m,1H),3.31〜3.15(m,1H),2.04〜1.94(d,1H,OH),1.40〜1.14(m,1H),0.75〜0.53(m,2H),0.50〜0.29(m,2H).
MS/ESI 404,406[MH]
[α]=+9.35°(c=1,CHCl).
例12
(−)−1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−エタノール(12)
ジアステレオ異性体(11)から出発し、例10の手順に準じて、アルコール(12)を取得した。
MS/ESI 404,406 [MH]
[α]=−9.15° (c=1、CHCL)。
例13
アルコール(14)の酸化によるアルコール(7)の調製
化合物(14)(3.0g)をCHCl(100ml)に溶解した。70%m−クロロ過安息香酸(5.4g)を添加し、得られた溶液を室温で18時間撹拌した。次いで、固体Na(5g)を添加し、混合物を室温で30分間激しく撹拌した。固体残留物を濾過除去し、有機溶液を追加の100mlのCHClで希釈し、飽和NaHCO水溶液(3×100ml)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発除去した。残留物をEtOAc(20ml)中で粉砕して1.9gの所望生成物7を白色固体として得、これをさらに精製することなく次のステップにおいて使用した。
H NMR(200MHz,CDCl)ppm 8.14(s,2H),7.18〜7.09(d,1H),7.07〜7.02(d,1H),6.92〜6.83(dd,1H),7.01〜6.22(t,1H,CHF),5.10〜4.96(m,1H),3.96〜3.84(d,2H),3.45〜3.29(m,1H),3.23〜3.07(m,1H),3.24〜3.17(d,1H,OH),1.41〜1.67(m,1H),0.75〜0.53(m,2H),0.50〜0.29(m,2H).
MS/ESI 420,422[MH]
[α]=+65.0°(c=0.5,MeOH)
例14
アルコール(12)の酸化によるアルコール(9)の調製
アルコール(9)は、出発材料としてアルコール(14)の代わりにアルコール(12)を使用し、例13において記載されている手順に準じて取得できる。
MS/ESI 420,422 [MH]
[α]=−60.6° (c=0.5、MeOH)。
例15
(−)−3−シクロプロピルメトキシ−4−メタンスルホニルアミノ−安息香酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−1−ピリジン−4−イル)−エチルエステル(C1)の調製
ステップ1:3−シクロプロピルメトキシ−4−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メタンスルホニル)−アミノ安息香酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル
1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(2.85g)を、乾燥CHCl(180ml)中の、アルコール(14)(2.0g)、4−ジメチルアミノピリジン(0.3g)、3−シクロプロピルメトキシ−4−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メタンスルホニル)−アミノ−安息香酸(2.0g)の溶液に、室温にて窒素雰囲気下で添加した。
【0110】
室温で終夜撹拌後、混合物を5%HCl水溶液(2×100ml)で洗浄し、有機相を分離し、NaHCOの飽和水溶液(2×100ml)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発乾固した。粗製物を、シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより勾配溶離(ヘキサン/EtOAc 10/1から6/4)で精製して、1.4gの表題化合物を得た。
【0111】
ステップ2:C1の調製
3−シクロプロピルメトキシ−4−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メタンスルホニル)−アミノ−安息香酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル(1.4g)をCHCl(140ml)に溶解した。ジオキサン中HClの4M溶液(40ml)を添加し、得られた混合物を室温で24時間撹拌した。次いで、反応混合物を蒸発乾固し、残留物をiPrOH(50ml)中で、その後EtOH(50ml)、続いてEtO(70ml)中で粉砕して、0.880gの化合物(C1)を得た。
【0112】
C1の分析的特徴を表1において報告する。
【0113】
【表3】

【0114】
同様にして、下記の化合物が調製され得る。
・(−)−4−シクロプロピルメトキシ−3−メタンスルホニルアミノ−安息香酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル、
・(−)−3,4−ビス−メタンスルホニルアミノ−安息香酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル、
・(−)−3−メタンスルホニルアミノ−4−メチル−安息香酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル及び
・(−)−4−メタンスルホニルアミノ−3−メチル−安息香酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−1−オキシ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル。
例16
(−)−3−シクロプロピルメトキシ−4−メタンスルホニルアミノ−安息香酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−1−オキシ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル(C2)の調製
化合物(C2)は、アルコール中間体(7)から出発し、例15と同じ合成手順に従って調製した。代替として、化合物(C2)は、化合物(C1)から出発し、下記の例17において記載する通りに調製できる。
例17
化合物(C1)から出発する(−)−3−シクロプロピルメトキシ−4−メタンスルホニルアミノ−安息香酸1−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−フェニル)−2−(3,5−ジクロロ−1−オキシ−ピリジン−4−イル)−エチルエステル(C2)の調製
化合物(C1)(0.69g)をCHCl(20ml)に溶解した。70%m−クロロ過安息香酸(0.355g)を添加し、得られた溶液を室温で18時間撹拌した。次いで、固体Na(0.244g)を添加し、混合物を室温で30分間激しく撹拌した。固体残留物を濾過除去し、有機溶液を追加の20mlのCHClで希釈し、飽和NaHCO水溶液(3×20ml)で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発除去した。残留物をEtOH(20ml)中で粉砕して、0.710gの所望化合物(C2)を白色固体として得た。
【0115】
下記の化合物は、適切な試薬を使用し、同じ経路に準じて調製した。
【0116】
【表4−1】

【0117】
【表4−2】

【0118】
記載されている最終化合物の合成において用いたカルボン酸中間体は、市販されているか、または既に公知であるか、または公知の方法に従って合成される。
例18
3−シクロプロピルメトキシ−4−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メタン−スルホニル)−アミノ−安息香酸の合成
【0119】
【化5】

【0120】
ステップ1:3−ヒドロキシ−4−ニトロ−安息香酸メチルエステル
3−ヒドロキシ−4−ニトロ−安息香酸(10g)をMeOH(500ml)に溶解した。96%HSO(2ml)を添加し、混合物を60℃に18時間加熱した。反応混合物を約200mlに濃縮し、EtOAc(200ml)で希釈し、NaHCOの飽和水溶液(2×20ml)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発除去して、10.5gの所望中間体を産出した。
【0121】
ステップ2:3−シクロプロピルメトキシ−4−ニトロ−安息香酸メチルエステル
3−ヒドロキシ−4−ニトロ−安息香酸メチルエステル(10.5g)を、N雰囲気下、乾燥DMF(150ml)に溶解した。KCO(24.3g)、KI(2.6g)およびシクロプロピルメチルブロミド(10.3ml)を添加し、混合物を50℃で6時間撹拌した。反応混合物を水(300ml)で希釈し、EtO(2×200ml)で抽出し、合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発除去して、12.7gの所望中間体を産出した。
【0122】
ステップ3:4−アミノ−3−シクロプロピルメトキシ−安息香酸メチルエステル
3−シクロプロピルメトキシ−4−ニトロ−安息香酸メチルエステル(12.7g)をMeOH(100ml)およびEtOAc(100ml)に溶解し、10%Pd/C(1.0g、20mlの水に懸濁させたもの)を添加し、混合物をパール装置(H:20psi)内で5時間水素化した。37%HClを添加し(10ml)、水素化を追加で2時間続けて、完全変換を達成した。触媒をセライトパッドで濾過し、混合物をEtOAc(200ml)で希釈し、NaHCOの飽和水溶液(2×100ml)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発除去して、10.7gの所望中間体を産出した。
【0123】
ステップ4:3−シクロプロピルメトキシ−4−メタンスルホニルアミノ−安息香酸メチルエステル
メチル3−(シクロプロピルメトキシ)−4−アミノベンゾエート(8.86g)を、室温にてN雰囲気下でピリジン(80mL)に溶解した。塩化メタンスルホニル(4.04mL)を添加し、混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、粗製物を1N HCl(500mL)で処理し、CHCl(3×200mL)で抽出した。有機層をNaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発除去して、11.7gの所望中間体を産出した。
MS/ESI 300 [MH]
【0124】
ステップ5:3−シクロプロピルメトキシ−4−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メタンスルホニル)−アミノ−安息香酸メチルエステル
3−シクロプロピルメトキシ−4−メタンスルホニルアミノ−安息香酸メチルエステル(3.0g)をCHCl(150ml)に溶解した。ジメチルアミノピリジン(DMAP、1.22g)およびBocO(2.18g)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を5%HCl水溶液(2×50ml)で洗浄し、有機層をNaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発除去した。残留物をEtO中で粉砕し、濾過して4.0gの所望中間体を得、これをさらに精製することなく次のステップにおいて使用した。
【0125】
ステップ6:3−シクロプロピルメトキシ−4−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メタンスルホニル)−アミノ−安息香酸
シクロプロピルメトキシ−4−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メタンスルホニル)−アミノ−安息香酸メチルエステル(4.0g)をMeOH(100ml)に溶解した。1N NaOH(15ml)を添加し、得られた混合物を室温で1時間撹拌し、次いで50℃に2時間加熱した。次いで、反応混合物をEtOAc(250ml)で希釈し、1N HCl(2×100ml)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、溶媒を蒸発除去して、3.5gの所望酸誘導体を得た。
MS/ESI 386 [MH]
説明
NMR
s=一重項
d=二重項
t=三重項
q=四重項
dd=二重項の二重項
m=多重項
br=広域
ESI=エレクトロスプレー
本発明の化合物の薬理学的活性
例19
末梢血単核細胞(PBMC)アッセイにおけるPDE4阻害活性のインビトロ決定
末梢血単核細胞(PBMC)におけるリポ多糖体(lipopolyshaccarides)(LPS)誘導性腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α放出に対して、PDE4阻害剤によって及ぼされる公知の阻害活性に基づくアッセイを、以前に記載された方法(Hatzelmann Aら、J. Pharmacol. Exp. Ther.、2001、297:267〜279;Draheim Rら、J. Pharmacol. Exp. Ther.、2004、308:555〜563に従って実行する。
【0126】
凍結保存ヒトPBMC(100μl/ウェル)を、96ウェルプレート(10細胞/ウェル)中、その濃度が10−12Mから10−6Mまでの範囲である試験化合物の存在下または不在下(50マイクロl)で30分間インキュベートする。その後、LPS(3ng/ml)を添加する。
【0127】
95%空気および5%COの雰囲気下、加湿インキュベーター内37℃で18時間インキュベーション後、培養培地を収集し、ELISAによってTNF−αを測定する。
【0128】
化合物C1からC6に関する結果は、LPS誘導性TNF−α放出の50%阻害(IC50)を生じさせる試験化合物のモル濃度の平均±95%信頼限界として表現され、0.06から4.4nMの間に含まれる。阻害化合物の不在下におけるLPS誘導性TNF−α産生を100%、LPSの不在下におけるPBMCの基礎TNF−α産生を0%と仮定して、試験した化合物の効果をTNF−α放出の阻害パーセンテージとして算出する。
例20
低親和性LPDE4を阻害する能力対高親和性HPDE4を競合する能力の評価
LPDE4およびHPDE4に対する親和性は、Cortijo Jら、Br J Pharmacol、1993、108:562〜568およびDuplantier AJら、J Med Chem、1996、39:120〜125においてそれぞれ以前に記載された通りに評価する。
【0129】
試験化合物の濃度は、10−12Mから10−5Mの間の範囲である。化合物C1からC6について試験されたLPDE4およびHPDE4に対する親和性の値は、82から477の間に含まれる。
【0130】
LPDE4の場合、IC50はcAMP消失の50%阻害を生じさせる試験化合物のモル濃度であり、一方、HPDE4の場合、IC50は[H]ロリプラムの結合の50%阻害を生じさせる試験化合物のモル濃度である。
【0131】
結果は、本発明の化合物が、ナノモル未満の親和性を有するLPDE4を阻害し、HPDE4と比べLPDE4に対してはるかに選択的であることを示す。
例21
モルモット気管におけるカルバコール誘導性収縮に対する、カルモテロール/C1の多剤混合薬の相乗活性
雄オボアルブミン(OA)感作モルモットからジグザグ気管断片を取得し、気管から2つの標本を取得する。各標本を、酸素化した(O95%およびCO5%)規定のクレブスヘンゼライト液で満たした20mlの浴槽に入れ、37℃に維持する。気管標本を、1gの静止張力(resting tone)下、等張力変換器(isometric force transducers)に接続する。60分の平衡期間後、気管標本をC1(10−7M)、カルモテロール(310−10M)で30分間前処理し、C1とカルモテロールまたはビヒクルとをそれぞれ会合させ、続いてOA(10−10〜10−5g/ml)の累積投与を行う。OA投与の終了時に、最大濃度のカルバコール(10−5M)を添加して、各標本の最大収縮を達成する。効果は、カルバコール誘導性最大応答のパーセント値(100%)として表現される。
【0132】
C1(10−7M)による標本の30分間の前処理は、OA誘導性収縮の23%の阻害を引き起こした。同様に、カルモテロール(310−10M)によって生じた阻害は18%である。
【0133】
C1(10−7M)およびカルモテロール(310−10M)の組合せは、OA誘導性収縮の93%の低減を引き起こした。
【0134】
この研究は、カルモテロールおよびC1がいずれも、モルモット気道におけるカルバコール誘導性収縮をアンタゴナイズするのに効力があることを示す。その上、それらの相補的分子の作用機序を踏まえ、機能的アゴニズム−アンタゴニズムの枠組みで、固定組合せは、モルモット気管におけるコリン作動性収縮の制御において相乗効果を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(−)鏡像異性体としての一般式(I)の化合物
【化1】

[式中、nは0または1であり、
R1およびR2は同じであっても異なっていてもよく、かつ
− 1個または複数のハロゲン原子によって場合により置換されている直鎖または分枝鎖C〜Cアルキル、
− OR3{ここで、R3は、1個もしくは複数のハロゲン原子またはC〜Cシクロアルキル基で場合により置換されている直鎖または分枝鎖C〜Cアルキルである}、および
− HNSOR4{ここで、R4は、1個または複数のハロゲン原子で場合により置換されている直鎖または分枝鎖C〜Cアルキルである}
からなる群から選択され、
ここで、R1およびR2の少なくとも一方はHNSOR4である]、
薬学的に許容されるその無機もしくは有機塩、水和物、溶媒和物または付加錯体。
【請求項2】
R1がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、R2がOR3[ここで、R3はシクロプロピルメチルである]であり、かつnが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、R2がOR3[ここで、R3はシクロプロピルメチルである]であり、かつnが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R1がOR3であり、R2がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、かつnが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R1がメチルであり、R2がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、かつnが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R1およびR2の両方がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、かつnが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R1およびR2の両方がHNSOR4[ここで、R4はメチルである]であり、かつnが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1から7に記載の化合物の調製方法であって、アルデヒド(1)
【化2】

をメチルジクロロピリジン(2)
【化3】

と反応させてラセミアルコール(3)
【化4】

を取得し、これを対応するN−オキシド誘導体(4)に場合により酸化するステップと、
(3)または(4)を、(S)−ナプロキセンまたは(S)−アセチルマンデル酸等のキラル酸と縮合して、ジアステレオマー混合物(10)
【化5】

または(5)
【化6】

をそれぞれ取得するステップと、
ジアステレオ異性体混合物(10)または(5)を、クロマトグラフィーまたは結晶化によって、それぞれ2つの単一ジアステレオ異性体(11)
【化7】

および(13)
【化8】

または(6)
【化9】

および(8)
【化10】

に分離して、開裂後にアルコール(14)
【化11】

または(+)(7)
【化12】

および(−)(9)
【化13】

を得るステップと、
次いで、化合物(+)(14)または(+)(7)を、適切な安息香酸(15)
【化14】

と反応させて、一般式(I)の化合物[式中、R1およびR2は、請求項1で定義された通りである]を得るステップと
を含む方法。
【請求項9】
一般式(II)の化合物
【化15】

[式中、nは請求項1で定義された通りであり、下方にアスタリスク付きで表示されている炭素原子は(S)配置を示す]。
【請求項10】
請求項1から7に記載の式(I)の化合物と、β2アゴニスト、M3アンタゴニストおよびコルチコステロイドのクラスから選択される第2の薬学的活性成分との組合せ。
【請求項11】
第2の活性成分がホルモテロールまたはカルモテロールである、請求項9に記載の組合せ。
【請求項12】
請求項1から7に記載の式(I)の化合物または請求項9もしくは10に記載の組合せと、1種または複数の薬学的に許容される担体および/または添加剤とを含む医薬組成物。
【請求項13】
薬剤としての、請求項1から7に記載の式(I)の化合物。
【請求項14】
喘息およびCOPD等、気道閉塞を特徴とする呼吸器管の疾患の予防および/または治療のための、請求項1から7に記載の式(I)の化合物。
【請求項15】
請求項11に記載の医薬組成物を含むデバイス。
【請求項16】
請求項11に記載の医薬組成物と、単回もしくは多回用量ドライパウダー吸入器、定量吸入器またはソフトミストネブライザーであってよいデバイスとを含むキット。
【請求項17】
アレルギー性鼻炎の予防および/または治療のための、請求項1から7に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項18】
アトピー性皮膚炎の予防および/または治療のための、請求項1から7に記載の式(I)の化合物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−516863(P2012−516863A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548600(P2011−548600)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000676
【国際公開番号】WO2010/089107
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(304037234)シエシー ファルマセウティチィ ソシエタ ペル アチオニ (24)
【Fターム(参考)】