説明

ホスホジエステラーゼ1−標的トレーサーおよび方法

γ放射線検出に基づいた診断技術における使用、特にSPECTのためのγ放出体標識化トレーサーおよびPETのための陽電子放出体標識化組成物における使用のためのホスホジエステラーゼ1を標的とするトレーサーが開示される。置換ピラゾロ-ピリミジン-4-オン誘導体などのPDE1阻害剤として放射線標識された複数の新規スキャッホルド(scaffold)、インビボでのホスホジエステラーゼ1(PDE1)に対するバイオマーカー、肺動脈高血圧(PAH)、中枢神経系(CNS)および心血管(CV)疾患などのPDE1が関与する症状に対する新規治療方法を開発するための方法、ならびに検出および処置方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、診断技術における使用のためのトレーサーに関し、特にSPECTのためのγ放出体標識トレーサーおよびPETのための陽電子放出体標識組成物、インビボでのホスホジエステラーゼ1(PDE1)のためのバイオマーカー、肺動脈高血圧(PAH)などのPDE1に関連した症状のための新規治療方法を開発するための方法、ならびに検出および処置方法に関する。特に目的とする組成物は、PDE1に選択的に結合する放射性標識組成物であり、これは様々な組織および臓器において目的とする症状と関連がある。例えば、PDE1Cは、PDE1Cが平滑筋増殖に結合する事象の増加につれて、動脈の平滑筋細胞、心筋およびアテローム性動脈硬化創傷中に多く存在する。PDE1Cを標的とする陽電子放出体標識組成物は、PAHに特徴的な機能劣化の危険性のある組織のPET診断の画像化が可能となり、中枢神経系(CNS)および心血管(CV)疾患のための新規治療方法についての基礎を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
γ放射に基づく画像化技術は、画像化すべき身体に導入されるトレーサー化合物を用いる。該トレーサー化合物は、直接的または間接的に光子を放出する放射性核種を含有しており、身体内の元々のその場所はその後のγ放射検出器によって収集した受信データ(intercept data)から計算される。2つに共通して用いられるγ放射に基づく画像化技術は、陽電子断層法(PETという)および単光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECTという)である。PETでは、該放射性核種は一対の逆方向の光子を間接的に放出する。該PET放射性核種は、陽電子を放出し、これがその直ぐ近傍にある電子と接触する際に両電子の反物質消滅を開始して、この事象により光子対が放出される。SPECTでは、該放射性核種は、直接的なγ放出体である。γ放射に基づく画像化において有用なアイソトープの例には、炭素-11(11CまたはC11という)、フッ素-18(18FまたはF18という)、テクネチウム-99m(99mTcまたはTc99mという)、インジウム-111(111InまたはIn111という)およびヨウ素-123(123IまたはI123という)が含まれる。
【0003】
放射性核種に加えて、トレーサー化合物は、1以上の所望の組織、臓器または症状と関連する選択された標的に対するトレーサーの親和性を提供するリガンドを含む。
【0004】
11種のホスホジエステラーゼ(PDE)ファミリーの中のなかで、唯一PDE1は、活性化されたカルシウムおよびカルモジュリンである。それ故に、増加した細胞内カルシウムの慢性的ストレス条件下において、このシステムは最適である。細胞内カルシウムにおける慢性的な増加は、高血圧において十分に確立されている。PDE1は、3つの下位群であるPDE1-A、B、およびCのファミリーである。PDE1Bは、主に脳内に存在する。PDE1Aは脳および精子中で発現される。PDE1Cは、動脈の平滑筋細胞、心筋およびアテローム性動脈硬化創傷ならびに他の組織に多く存在する。PDE1Cと平滑筋増殖および心疾患に関連した心肥大が関連するという証拠が増加している。近年まで、PDE1の分野に関する従来技術は、好適で選択的かつ強力な阻害剤を提供するまでには進歩していなかった。文献で使用される阻害剤は、極めて非選択的であることが知られている。PDE1がcAMPおよびcGMP両方を加水分解できるという事実は、平滑筋細胞の増殖および肺血管の高血圧の双方に対する有益な効果を示すであろうという別の肯定的側面である。PDE1に特異的な薬物候補が開発されており、ナノモル力価および顕著な特異性を有するいくつかの薬剤系統が含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明の局面に従って、ホスホジエステラーゼ1の放射性標識阻害剤が提供される。
【0006】
別の局面において、PDE1阻害剤が、放射化学研究室に好適である化学的手法を用いる合成の最終工程において放射性標識される方法を提供する。
【0007】
本発明の別の局面において、卓越した放射化学生成物収率、化学純度および比活性であるPETリガンドを提供する。
【0008】
さらなる局面は、PAH疾患のための新規臨床薬の同定および開発を促進するための診断ツールとして有用なPETリガンドを提供する。
【0009】
別の局面は、阻害剤の標的の標的占有率を伝達(report)し、薬物の動態の適切な評価を可能にするバイオマーカー、例えば新規PETリガンドを提供する。
【0010】
本発明の別の局面は、肺動脈高血圧、中枢神経系(CNS)および心血管(CV)の疾患の診断および治療のための新規薬剤を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、PETリガンドの調製に関する説明である。
【図2】図2は、HPLC分離の結果に関する説明である。
【図3】図3は、例示的な薬物動態データを表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の詳細な説明)
一連の化合物は、ホスホジエステラ−ゼ 1(PDE1)の阻害剤として作用することが見出されており、これらのPDE1阻害剤およびその製造方法は、全体をとおして以下:2008年8月7日にUS-2008-0188492-A1として公開された2007年12月6日に提出された整理番号第11/916,761号;2008年12月5日に提出された整理番号第12/303,618号;2007年12月6日に提出された仮出願番号61/012,045を基にした2008年12月6日に提出されたPCT/US08/13410;2007年12月6日に提出された米国仮出願番号第61/012,040号を基にした2008年12月6日に提出されたPCT/US08/13411;2008年12月6日に提出された米国仮出願番号第61/120,438;2008年12月6日に提出された米国仮出願番号第61/120,440号; 2008年12月6日に提出された米国仮出願番号第61/120,441号;2008年12月6日に提出された米国仮出願番号第61/120,442号;2008年12月6日に提出された米国仮出願番号第61/120,443号; 2008年12月6日に提出された米国仮出願番号第61/120,444号;および2009年8月21日に提出された米国仮出願番号第61/235,888号を包含する同時継続の米国特許出願に記述され、これらを出典明示により本明細書の一部として本明細書にあたかもそれらの内容が、本明細書に全て記述されたものとして組み込まれる。
【0013】
PETまたはSPECTにおいて使用するためのPDE1リガンドとして有用である化合物のクラスのある特別な例には、以下の放射性標識された誘導体が含まれる:
i) 7,8-ジヒドロ-[1Hまたは2H]-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;
ii) 7,8,9-トリヒドロ-[1Hまたは2H]-ピリミド[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン4(5H)-オン;
iii) 3-(所望によりヘテロ)アリールアミノ-[2H]-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H, 7H)-ジオン; および
iv) (6aR*,9aS*)-3-(フェニルアミノ)-5-6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチルシクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(1Hまたは2H)-オン;
ここで、(i)、(ii)、(iii)および(iv)の各々は、1-または2-位で、C2-9アルキル、C3-9シクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、または置換アリールアルキルにより置換される。
【0014】
これらのPDE1阻害剤を、PDE1に対する分子の親和性および選択性を維持しながら該構造内の原子を放射性核種に置換することにより修飾できる。
【0015】
薬剤を、PDE1に対する低いナノモル力価および他のPDE酵素ファミリーに対する10倍以上の選択性を同定するために、ハイスループットPDE1酵素アッセイにおいてPDE1の阻害について評価し、さらにPDE酵素の11のファミリーに対して評価する。
【0016】
ITIにて過去7年にわたり構築されたPDE1B酵素の結晶構造ならびに詳細な構造-活性の関係を基にした分子モデリングは、良好な脳浸透性および長い半減期を有するものから、脳に侵入出来ない薬剤までの様々な薬物動力特性を有する幅広い化合物をもたらした。我々は、この知識を応用して、肺、心臓および脳組織における使用のためのPETリガンドを測定および最適化する。
【0017】
別の局面は、PET放射化学研究室に好適な化学的方法を用いて、放射性同位元素標識法をふくめた、例えば合成の最終工程における、特定の選択的かつ強力なPDE1阻害剤の製造方法である。有用な放射性核種の例示は、炭素-11(11CまたはC11と示す)、フッ素-18(18FまたはF18と示す)、テクネチウム-99m (99mTcまたはTc99mと示す)、インジウム-111 (111InまたはIn111と示す)およびヨウ素-123 (123I またはI123と示す)である。この過程の例を式Iにより図示する:
【化1】

図1
【0018】
薬剤を、ハイスループットPDE1酵素アッセイにおいてPDE1の阻害について評価し、さらにPDE酵素の11のファミリーに対してさらに評価して、PDE1に対する低いナノモル力価および他のPDE酵素ファミリーに対する10倍以上の選択性を同定する。
【0019】
別の局面は、合成の最終工程における放射性同位元素標識法を含む−PET放射化学研究室に好適である化学的方法を用いる、多系統の選択的かつ強力なPDE1阻害剤の製造方法である。
【0020】
PET放射性同位元素標識法をサポートする前駆体および生成物の半分取型高速HPLC分離もまた提供される。かかる迅速な分離は、11Cなどの短命なラジオリガンドにとって理想的である。
【0021】
本出願として言及される方法は、好適な動物種、例えば、ラットおよびヒヒの投薬および全身分布の測定を含む。
【0022】
同様に、該方法は、標識していないPDE1阻害剤を用いる予備的な占有試験を行う必要がある。
【0023】
標識後、動物またはヒト対象は、適切な臓器において経時的に評価される薬剤および分布により投薬される。シグナル対ノイズ比が確立され、該分布は肺血管系におけるPDE1の既知の分布に対応する。
【0024】
占有率は、これらの組織内のPDE1を占有する能力、即ちPET候補放射性リガンドの特異的シグナルを遮断する能力についての臨床候補を評価するために検討する。
【0025】
一般的なヒヒのPET方法:橈骨動脈のラインが、放射性血漿採取およびHPLC代謝試験のために取り付けられる。走査画像化プロトコールは、経時的な複数のスキャン収集からなる。画像収集後に全血漿濃度を決定した。
【0026】
非放射性阻害剤による放射性トレーサーの置換
放射化学基準を満たす放射性トレーサーを、非放射性の特異的かつ強力なPDE1阻害剤による肺内の置換について評価した。この候補物質の放射性トレーサーは、脳の取り込み、反応速度、特異的な非放射性阻害剤による置換、および非特異的な非放射性阻害剤による非置換に関して順位付けされる。
【0027】
かかるリガンドは、新規治療剤の開発を促進する際および新規PETリガンドを提供する際に有益である。
【0028】
別の局面は、ヒツジおよびラットの肺動脈高血圧(PAH)モデルに対する効果について関連のあるPDE1阻害剤の薬理学的投与量の効果を評価するための方法である。
【0029】
実施例
実施例1. 11C-標識されたPETリガンドの製造
7-イソブチル-5-メチル-2-(4-(1-[11C]-メチルピペリジン-2-イル)ベンジル)-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン
【0030】
(a) (4-(ピペリジン-2-イル)フェニル)メタノール
無水THF(2 ml)のLiAlH4(72 mg, 1.8 mmol)懸濁液に、0℃でメチル 4-(ピペリジン-2-イル)ベンゾエートハイドロクロライド(250 mg, 0.98 mmol)のTHF溶液を滴加した。反応混合物を、室温にて4時間攪拌し、次いで注意深く0℃で水を用いて停止させた。濾過後、濾液を蒸発させて、乾燥させ、さらなる精製をせずに次の反応に使用される粗製生成物(187 mg)を白色固体として得た。
【0031】
(b) Tert-ブチル 2-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)ピペリジン-1-カルボキシレート.
【0032】
粗製(4-(ピペリジン-2-イル)フェニル)メタノール (187 mg)をDMF(3 mL)に溶解し、次いでBoc 無水物を添加した。該混合物を、3時間室温にて攪拌し、次いで塩基性のアルミナカラムクロマトグラフィーにより精製し、生成物(200 mg)を全収率70%にて透明な油として得た。
【0033】
(c) 6-クロロ-1-イソブチル-3-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン
無水DMF(200 mL)中の6-クロロ-3-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(3 g, 18.8 mmol)、イソブチルヨウ化物(5 mL, 43.5 mmol)および炭酸カリウム(5.3 g, 38.4 mmol)の混合物を、50℃で8時間加熱した。追加のイソブチルヨウ化物(4.3 mL, 37.5 mmol)を添加し、該反応混合物を50℃で24時間加熱した。熱濾過後、濾液を蒸発させ、減圧下で乾燥させた。得られた油を、さらにシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、純粋な生成物(2.1 g)を得た(収率:52%)。
【0034】
(d) 6-ヒドラジニル-1-イソブチル-3-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン
EtOH(8 mL)中の6-クロロ-1-イソブチル-3-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(2.0 g, 9.3 mmol)溶液に、EtOH(3 mL)中のヒドラジン一水和物(1.3 mL)をゆっくりと添加した。該反応混合物を5時間還流し、次いで室温まで冷却した。大量の酢酸エチルを反応混合物中に添加し、生成物を沈殿させた。固体を回収し、酢酸エチルで洗浄して、黄色味を帯びた固体として生成物(1.95 g)を得た(収率:100%)。
【0035】
(e) 7-イソブチル-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン
フェニルイソチオシアネート(0.17 mL, 1.4 mmol)を、DMF(10 mL)中の6-ヒドラジニル-1-イソブチル-3-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(31 mg, 0.47 mmol)溶液に添加した。該反応混合物を120℃で6時間加熱し、次いで蒸発させて、減圧下に溶媒を除去する。該残渣を、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、生成物(20 mg)を得た(収率:41%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 0.95 (s, 3H), 0.97 (s, 3H), 2.30 (m, 1H), 3.37 (s, 3H), 3.77 (d, 2H), 7.16-7.43 (m, 5H), 7.61 (s, 1H). MS (FAB) m/z 314.3 [M+H]
【0036】
(f) Tert-ブチル 2-(4-((7-イソブチル-5-メチル-4,6-ジオキソ-3-(フェニルアミノ)4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-2-イル)メチル)フェニル)ピペリジン-1-カルボキシレート
Tert-ブチル 2-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)ピペリジン-1-カルボキシレート (47 mg, 0.16 mmol)を、無水THF(1 mL)に溶解し、次いでトリフェニルホスフィン(42 mg, 0.16 mmol)、続いて7-イソブチル-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン (50 mg, 0.16 mmol) を添加した。該混合物を、-78℃まで冷却し、次いでDIAD (95%, 50 μL)をゆっくりと添加した。該反応が完了した後、該混合物を、塩基性のアルミナカラム上で精製して、生成物(76 mg)(収率:81%)を得た。MS(ESI) m/z 587.3 [M+H].
【0037】
(g) 7-イソブチル-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-(4-(ピペリジン-2-イル)ベンジル)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン
Tert-ブチル 2-(4-((7-イソブチル-5-メチル-4,6-ジオキソ-3-(フェニルアミノ)-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-2-イル)メチル)フェニル)ピペリジン-1-カルボキシレート(76 mg)を、ジクロロメタン(2 mL)に溶解し、次いでTFA(2 mL)を添加した。該混合物を、1時間室温にて攪拌した。蒸発の後、該残渣を、半分取HPLCにより精製し、純粋な生成物(32 mg)を白色固体として得た。
【0038】
(h1) 7-イソブチル-5-メチル-2-(4-(1-[11C]-メチルピペリジン-2-イル)ベンジル)-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン
7-イソブチル-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-(4-(ピペリジン-2-イル)ベンジル)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン (8 mg, 0.015 mmol)を、K2CO3の存在下で[11C]-ヨウ化メチレンと反応させた。
【0039】
実施例2.
18F-標識されたPETリガンド、7-イソブチル-5-メチル-2-(4-(1-[18F]フルオロメチルピペリジン-2-イル)ベンジル)-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオンの調製
最終工程(h1)の代わりに以下の工程(h2)を行う以外は実施例1の方法と同様である。
【0040】
(h2) 7-イソブチル-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-(4-(ピペリジン-2-イル)ベンジル)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン (8 mg, 0.015 mmol)を、18[F]フルオロヨウ化メチル、18[F]フルオロ臭化メチル、または18[F]フルオロメチルトリフラート(triflate)と、K2CO3およびCs2CO3などの塩基存在下で反応させた後、HPLC精製を行った。
【0041】
比較実施例3.
非放射性参照物、7-イソブチル-5-メチル-2-(4-(1-メチルピペリジン-2-イル)ベンジル)-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオンの調製
最終工程(h1)に代えて以下の工程 (h3)を行う以外は実施例1の方法を繰り返した。
【0042】
(h3) 7-イソブチル-5-メチル-2-(4-(1-メチルピペリジン-2-イル)ベンジル)-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン
7-イソブチル-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-(4-(ピペリジン-2-イル)ベンジル)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン(8 mg, 0.015 mmol)を、無水塩化メチレン(0.5 mL)に溶解し、次いで37% ホルムアルデヒド水溶液(5μL)、その後無水硫酸ナトリウム(20 mg)を添加した。該混合物を室温にて30分間攪拌した後、NaBH3CN(1.4 mg, 0.022 mmol)を添加した。該反応混合物を室温で2時間攪拌し、次いで半分取HPLCを用いて精製して、生成物(4.5 mg)(収率:55%)を得た。
【0043】
実施例4.
18F-標識されたPETリガンド、7-イソブチル-5-メチル-2-(4-(1-[18F]フルオロメチルピロリジン-2-イル)ベンジル)-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオンの調製
【0044】
(a) Tert-ブチル 2-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピロリジン-1-カルボキシレート
4-(1-(Tert-ブトキシカルボニル)ピロリジン-2-イル)安息香酸(350 mg, 1.2 mmol)を、無水メタノール(2mL)に溶解し、次いでEDC(310 mg, 1.67 mmol)、その後にDIEA(0.3 mL, 1.7 mmol)を添加した。該混合物を、室温で終夜攪拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液および塩水を用いて連続して洗浄した。有機相を乾燥するまで蒸発させて、シリカゲルカラムにより乾燥させて、生成物(247 mg)を透明な油(収率:67%)として得た。
【0045】
(b) Tert-ブチル 2-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)ピロリジン-1-カルボキシレート
LiAlH4を、0℃で無水THF(2 mL)に懸濁し、次いで無水THF(5 mL)中のtert-ブチル 2-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピロリジン-1-カルボキシレート(238 mg, 0.78 mmol)を5分かけて滴加した。該混合物を、0℃で1時間攪拌し、次いで注意深く水(1 mL)を用いて反応を停止させた。該混合物を、THFで希釈し、セライト層を通して濾過した。回収した濾液を乾燥させて、生成物(232 mg)を得た。これをさらなる精製なしに次の反応に使用する。
【0046】
(c) Tert-ブチル 2-(4-((7-イソブチル-5-メチル-4,6-ジオキソ-3-(フェニルアミノ)-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-2-イル)メチル)フェニル)ピロリジン-1-カルボキシレート
Tert-ブチル 2-(4-(ヒドロキシメチル)フェニル)ピロリジン-1-カルボキシレート(232 mg, 0.84 mmol)を、無水THF(7 mL)に溶解し、次いでトリフェニルホスフィン(230 mg, 0.87 mmol)を添加し、その後7-イソブチル-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン(262 mg, 0.84 mmol)をゆっくり添加した。該混合物を、-78℃まで冷却し、次いでDIAD(95%, 262 μL)をゆっくりと添加した。該反応が完了した後、該混合物をシリカゲルカラム上で精製し、生成物(227 mg)を白色固体として得た。
【0047】
(d) 7-イソブチル-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-(4-(ピロリジン-2-イル)ベンジル)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン
Tert-ブチル 2-(4-((7-イソブチル-5-メチル-4,6-ジオキソ-3-(フェニルアミノ)-4,5,6,7-テトラヒドロピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-2-イル)メチル)フェニル)ピロリジン-1-カルボキシレート (227 mg, 0.40 mmol)を、ジクロロメタン(3 mL)に溶解し、次いでTFA (1 mL)を添加した。該混合物を、室温にて30分間攪拌した。蒸発の後、該残渣を、さらに高真空下で終夜乾燥させ、TFA塩として生成物(390 mg)を得た。該粗生成物を、さらに半分取HPLCによりさらに精製して、純粋な生成物を得た。
【0048】
(e1) 7-イソブチル-5-メチル-2-(4-(1-18[F]フルオロメチルピロリジン-2-イル)ベンジル)-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン
7-イソブチル-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-(4-(ピロリジン-2-イル)ベンジル)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオンを、18[F]フルオロヨウ化メチル、18[F]フルオロ臭化メチル、または18[F]フルオロメチルトリフラートと、K2CO3およびCs2CO3などの塩基存在下で反応させた後、HPLC精製を行った。
と反応させた。
【0049】
実施例5
11C-標識されたPETリガンド、7-イソブチル-5-メチル-2-(4-(1-[11C]-メチルピロリジン-2-イル)ベンジル)-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオンの調製
最終工程(e1)に代えて、以下の工程(e2)を行う以外、実施例4の方法を繰り返した。
【0050】
(e2) 7-イソブチル-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-(4-(ピロリジン-2-イル)ベンジル)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオンを、K2CO3の存在下で[11C]-ヨウ化メチレンと反応させた。
【0051】
比較実施例6
非放射性参照物の調製
7-イソブチル-5-メチル-2-(4-(1-メチルピロリジン-2-イル)ベンジル)-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン
最終工程(e1)の代わりに以下の工程(e3)を行う以外、実施例4の方法を繰り返した。
【0052】
(e3) 7-イソブチル-5-メチル-2-(4-(1-メチルピロリジン-2-イル)ベンジル)-3-(フェニルアミノ)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオン
7-イソブチル-5-メチル-3-(フェニルアミノ)-2-(4-(ピロリジン-2-イル)ベンジル)-2H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H,7H)-ジオンを、無水塩化メチレン(7.5 mL)およびメタノール(2.5 mL)に溶解し、次いで37% ホルムアルデヒド水溶液(300 μL)を添加した。該混合物を室温にて20分間攪拌した後、NaBH3CN(120 mg)を添加した。該反応混合物を、室温で90分攪拌し、次いで飽和塩化アンモニウム水溶液で反応停止させた。通常の工程(workup)の後、得られた粗製生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、純粋な生成物(112 mg)を白色固体として得た。
【0053】
一連の放射性標識PDE1リガンド調製物を以下に表す:
【化2】

【0054】
HPLCによる活性な11C-放射性リガンドの単離
我々は、PET放射性標識を保持(support)するために前駆物質および生成物の高速の半分取HPLC分離も開発した。該高速分離は、11Cなどの短命の放射性リガンドにとって理想的である。代表的なHPLC分離の印刷物を次に示す。次の略図において、上記に直接図解した放射性標識薬物は、第一のピークに対応しており、前駆物質のピークとは十分に分離される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性標識されたPDE1阻害剤。
【請求項2】
γ放射に基づく画像診断において使用するための、以下の化合物を含む放射性トレーサー組成物:
a)以下から選択される遊離、塩またはプロドラッグ形態のホスホジエステラーゼ1-選択的リガンド:
i)7,8-ジヒドロ-[1Hまたは2H]-イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(5H)-オン;
ii)7,8,9-トリヒドロ-[1Hまたは2H]-ピリミド[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン4(5H)-オン;
iii)3-(所望によりヘテロ)アリールアミノ-[2H]-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4,6(5H, 7H)-ジオン;および
iv)(6aR*,9aS*)-3-(フェニルアミノ)-5-6a,7,8,9,9a-ヘキサヒドロ-5-メチルシクロペンタ[4,5]イミダゾ[1,2-a]ピラゾロ[4,3-e]ピリミジン-4(1Hまたは2H)-オン;
ここで、(i)、(ii)、(iii)および(iv)の各々は、1-または2-位にて、C2-9アルキル、C3-9シクロアルキル、ヘテロアリールアルキル、または置換アリールアルキルにより置換される;ならびに
b)該リガンドに化学的に結合した放射性核種。
【請求項3】
該放射性核種が、炭素-11、フッ素-18、テクネチウム-99m、インジウム-111およびヨウ素-123から選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
(a) 有効量の請求項1記載の化合物を対象に投与すること、
(b) 目的の組織および臓器において、十分な期間、放射性トレーサーをホスホジエステラーゼ1と有効に結合させること、および
(c) 陽電子断層法を用いて目的の組織および臓器を分析すること、
を含む、陽電子断層法を用いて、インビボでの目的とする組織および/または臓器において機能的ホスホジエステラーゼ1活性を選択的かつ可逆的に結合し、マッピングする方法。
【請求項5】
請求項1記載の放射性トレーサー組成物を対象に投与すること、
陽電子断層装置により該対象を画像化すること、
放射性核種を含有しないホスホジエステラーゼ1阻害剤を、所定の用量にて該対象に投与すること、
該対象を陽電子断層装置により画像化すること、
得られたデータを比較すること、そして
ホスホジエステラーゼ1に関連した症状において目的とする組織に対するホスホジエステラーゼ1阻害剤の効果的な送達を評価すること、
を含む、ホスホジエステラーゼ1に関連した症状に対する治療的処置。
【請求項6】
該症状が肺動脈高血圧、中枢神経系疾患および心血管疾患からなる群から選択される、請求項5記載の方法。

【公表番号】特表2013−507360(P2013−507360A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533137(P2012−533137)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/002707
【国際公開番号】WO2011/043816
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(507401225)イントラ−セルラー・セラピーズ・インコーポレイテッド (21)
【氏名又は名称原語表記】INTRA−CELLULAR THERAPIES, INC.
【Fターム(参考)】