説明

ホスホノ酢酸化合物を含有する非水電解液、及びリチウム二次電池

【課題】低温放電特性に優れ、かつ、電池の保存特性に優れたリチウム二次電池を実現し得る非水電解液を提供する。
【解決手段】式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物を含有する非水電解液である〔式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、式(II)で表される基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、又は式(II)で表される基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。式(II)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基を表し、*は、式(I)中の酸素原子との結合位置を表し、nは、0〜2の整数を表す。〕。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
低温放電特性に優れ、かつ、電池の保存特性に優れたリチウム二次電池を実現し得る非水電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池は、携帯電話やノート型パソコンなどの電子機器、或いは電気自動車や電力貯蔵用の電源として広く使用されている。特に最近では、ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載可能な、高容量で高出力かつエネルギー密度の高い電池の要望が急拡大している。
リチウム二次電池は、主に、リチウムを吸蔵放出可能な材料を含む正極および負極、並びに、リチウム塩と非水溶媒とを含む非水電解液から構成される。
正極に用いられる正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiFePOのようなリチウム金属酸化物が用いられる。
また、非水電解液としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、メチルカーボネートなどカーボネート類の混合溶媒(非水溶媒)に、LiPF、LiBF、LiN(SOCF)、LiN(SOCFCF)のようなLi電解質を混合した溶液が用いられている。
一方、負極に用いられる負極用活物質としては、金属リチウム、リチウムを吸蔵及び放出可能な金属化合物(金属単体、酸化物、リチウムとの合金など)や炭素材料が知られており、特にリチウムを吸蔵、放出が可能なコークス、人造黒鉛、天然黒鉛を採用したリチウム二次電池が実用化されている。
【0003】
電池性能の中で、特に自動車用途のリチウム二次電池に関しては、高出力化と長寿命化が必要とされている。電池の抵抗をいろいろな条件にわたって小さくすることと、電池の寿命性能を向上することの両立が大きな課題となっている。
これら電池の諸特性の課題を克服するため、種々の化合物を電解液に添加する試みがなされてきた。
その試みとして、特定のホスホノカルボン酸を含有させて電解液の保存特性、特に連続充電後の発生ガス量および残存容量、高温保存後の残存容量等が検討されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−262908号公報
【特許文献2】特開2009−70615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術のみでは、電池の高出力化と長寿命化が必要とされている状況において、電池の低温放電特性の改善と電池の保存特性の改善との両立について十分な効果が得られないという問題を有している。
本発明は、前記課題に応えるためになされたものであり、本発明の目的は、電池の低温放電特性の改善と電池の保存特性の改善とが両立した非水電解液を提供すること、該非水電解液を用いたリチウム二次電池を提供すること、前記非水電解液に有用なリチウム二次電池用添加剤を提供すること、及び、該リチウム二次電池用添加剤として有用なホスホノ酢酸化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題に対し、鋭意検討した結果、リチウム二次電池の非水電解液に対し、特定のホスホノ酢酸化合物を添加することにより、電池の低温放電特性の改善と電池の保存特性の改善との両立が可能なことを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
【0007】
<1> 下記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物を含有する非水電解液。
【0008】
【化1】

【0009】
〔一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、一般式(II)で表される基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、又は一般式(II)で表される基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。
一般式(II)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基を表し、*は、一般式(I)中の酸素原子との結合位置を表し、nは、0〜2の整数を表す。〕
【0010】
<2> さらに、下記一般式(III)で表される化合物を含有する<1>に記載の非水電解液。
【0011】
【化2】



【0012】
〔一般式(III)中、Y及びYは、各々独立に、水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基を示す。〕
【0013】
<3> さらに、下記一般式(IV)で表される化合物を含有する<1>又は<2>に記載の非水電解液。
【0014】
【化3】

【0015】
〔一般式(IV)中、X、X、X及びXは、各々独立に、ビニル基、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、水素原子、フッ素原子、又は塩素原子を示す。ただし、X〜Xが同時に水素原子であることはない。〕
【0016】
<4> 前記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物の含有量が、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の非水電解液。
<5> 前記一般式(III)で表される化合物の含有量が、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%である<2>〜<4>のいずれか1項に記載の非水電解液。
<6> 前記一般式(IV)で表される化合物の含有量が、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%である<3>〜<5>のいずれか1項に記載の非水電解液。
<7> 下記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物を有効成分として含むリチウム二次電池用添加剤。
【0017】
【化4】

【0018】
〔一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、一般式(II)で表される基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、又は一般式(II)で表される基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。
一般式(II)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基を表し、*は、一般式(I)中の酸素原子との結合位置を表し、nは、0〜2の整数を表す。〕
【0019】
<8> 下記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物。
【0020】
【化5】

【0021】
〔一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、一般式(II)で表される基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、又は一般式(II)で表される基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。
一般式(II)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基を表し、*は、一般式(I)中の酸素原子との結合位置を表し、nは、1〜2の整数を表す。〕
【0022】
<9> 正極と、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料から選ばれた少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の非水電解液と、を含むリチウム二次電池。
<10> 正極と、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料から選ばれた少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の非水電解液と、を含むリチウム二次電池を、充放電させて得られたリチウム二次電池。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電池の低温放電特性の改善と電池の保存特性の改善とが両立した非水電解液を提供すること、該非水電解液を用いたリチウム二次電池を提供すること、前記非水電解液に有用なリチウム二次電池用添加剤を提供すること、及び、該リチウム二次電池用添加剤として有用なホスホノ酢酸化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のリチウム二次電池の一例を示すコイン型電池の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のホスホノ酢酸化合物を用いた非水電解液、およびその非水電解液を用いたリチウム二次電池について具体的に説明する。
【0026】
〔ホスホノ酢酸化合物〕
本発明のホスホノ酢酸化合物は、下記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物である。
【0027】
【化6】

【0028】
一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、一般式(II)で表される基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、又は一般式(II)で表される基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。
一般式(II)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基を表し、*は、一般式(I)中の酸素原子との結合位置を表し、nは、0〜2の整数を表す。
【0029】
前記一般式(I)及び(II)中、「炭素数1〜6のアルキル基」とは、炭素数が1ないし6個である直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、2−メチルブチル、1−メチルペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、3,3−ジメチルブチルが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
【0030】
前記一般式(I)中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が具体例として挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0031】
前記一般式(I)中、「炭素数1〜6のハロアルキル基」とは、炭素数が1ないし6個である直鎖又は分岐鎖のアルキル基における水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子に置き換わった構造のハロアルキル基であり、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロブチル、パーフルオロペンチル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロイソプロピル、パーフルオロイソブチル、クロロメチル、クロロエチル、クロロプロピル、ブロモメチル、ブロモエチル、ブロモプロピル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピルが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のハロアルキル基としては、炭素数1〜3のハロアルキル基がより好ましい。
【0032】
前記一般式(II)中、フェニル基は、無置換であっても置換されていてもよい。
前記フェニル基に対し置換可能な置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。
前記フェニル基に対し置換可能な「ハロゲン原子」は、一般式(I)中における「ハロゲン原子」として前述したハロゲン原子と同義であり、好ましい態様も同様である。
前記フェニル基に対し置換可能な「炭素数1〜6のアルキル基」は、一般式(I)中における「炭素数1〜6のアルキル基」として前述した炭素数1〜6のアルキル基と同義であり、好ましい態様も同様である。
前記フェニル基に対し置換可能な「炭素数1〜6のハロアルキル基」は、一般式(I)中における「炭素数1〜6のハロアルキル基」として前述した炭素数1〜6のハロアルキル基と同義であり、好ましい態様も同様である。
前記フェニル基に対し置換可能な「炭素数1〜6のアルコキシ基」は、炭素数が1ないし6個である直鎖又は分岐鎖を有するアルコキシ基であり、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、1−エチルプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、3,3’−ジメチルブトキシ基などが具体例として挙げられる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、炭素数1〜3のアルコキシ基がより好ましい。
【0033】
一般式(I)中には一般式(II)で表される基が複数存在するが、複数存在する一般式(II)で表される基は、同一であっても互いに異なっていてもよい。
【0034】
前記一般式(I)中、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、又は一般式(II)で表される基を表すが、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のハロアルキル基、又は一般式(II)で表される基であり、より好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロアルキル基、又は一般式(II)で表される基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、トリメチルシリル基、又は2−(トリメチルシリル)エチル基である。
【0035】
前記一般式(I)中、前記R及び前記Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表すが、好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又はハロゲン原子であり、より好ましくは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又はフッ素原子であり、特に好ましくは水素原子またはフッ素原子である。
【0036】
一般式(II)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基を表す。一般式(I)中に複数存在する、R、R及びRは、それぞれ、同一であっても互いに異なっていてもよい。
、R及びRとして、好ましくは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基である。
【0037】
一般式(II)中、nは、0〜2の整数を表す。一般式(I)中に複数存在するnは、同一であっても互いに異なっていてもよい。nとして、好ましくは1〜2の整数であり、特に好ましくは2である。
【0038】
前記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物として、好ましくは、2−トリメチルシリルエチル 2−(ビス(2−トリメチルシリルエトキシ)ホスホリル)アセテート、又はエチル 2−(ビス(トリメチルシリルオキシ)ホスホリル)アセテートであり、特に好ましくは、2−トリメチルシリルエチル 2−(ビス(2−トリメチルシリルエトキシ)ホスホリル)アセテートである。
【0039】
なお、前記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物は、後述するように、リチウム二次電池用添加剤として有用である。
【0040】
本発明における一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物の具体例〔例示化合物1〜例示化合物43〕を、一般式(I)における各置換基を明示することで下記の表に記載するが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
下記例示化合物の構造中、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Pr」はプロピル基を、「iPr」はイソプロピル基を、「Bu」はブチル基を、「tBu」はターシャリブチル基を、「Pent」はペンチル基を、「Hex」はヘキシル基を、「Ph」はフェニル基を、それぞれ表す。
【0041】
【化7】

【0042】
【化8】

【0043】
本発明における一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物は、例えば、以下に記載する工程によって製造することができるが、本製法に限定されるものではない。
【0044】
本発明における一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物のうち、n=0である化合物は、公知の方法、例えば、
J. Chem. Soc. Chem. Commun., 1979, 739
J. Org. Chem., 1981, 46(10), 2097-2107
J. Org. Chem., 1984, 49(18), 3437-3438
に記載の方法に準じる方法により製造される。
【0045】
本発明における一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物のうち、n=1又は2である化合物、例えば、下記一般式(Ia)で表される化合物は、以下に記載する工程によって製造することができるが、本製法に限定されるものではない。
【0046】
【化9】



【0047】
上記式中、R4〜R8は前記と同義である。nは1又は2である。
【0048】
一般式(V)で表されるクロル化されたリン誘導体(以下、「化合物(V)」ともいう)を、塩基存在下、一般式(VI)と反応させることにより、一般式(Ia)で表される特定の化合物(リン誘導体)(以下、「化合物(Ia)」ともいう)を製造できる。
本工程において、用いられる溶媒としては、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はなく、例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン及びジオキサンのようなエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン及びクロロベンゼンのような芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン及びヘプタンのような脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン及びクロロホルムのようなハロゲン化炭化水素類;又は、これらの混合溶媒が挙げられ、好適には、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類又は芳香族炭化水素類であり、より好適には、塩化メチレン、テトラヒドロフラン又はトルエンである。
溶媒の量は、化合物(V)1molに対し、通常、0.5〜10リットルを用いることができ、好適には、1.0〜5リットルである。
本工程において、使用される塩基としては、基質に対し脱プロトン能を示す塩基であれば特に限定はなく、例えば、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムのようなアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムのようなアルカリ金属の重炭酸塩;トリエチルアミンおよびN,N−ジメチルアニリンおよびピリジンのような有機塩基類;水素化ナトリウム及び水素化カリウムのような金属水素化物; ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド及びカリウムtert−ブトキシドのような金属アルコキシド類;等が挙げられ、好適には、有機塩基類であり、より好適には、トリエチルアミンである。
反応温度は、原料化合物、反応試薬及び溶媒等により異なるが、通常、−20℃〜反応系における還流温度の範囲で行うことができ、好適には、−10〜50℃である。
反応時間は、原料化合物、反応試薬、溶媒及び反応温度等により異なるが、通常、0.5時間〜48時間の範囲で行うことができ、好適には、0.5〜24時間である。
本工程に使用される化合物(V)は、公知の方法、例えば、Chemische Berichte, 1924, vol.57, p.1030に記載する方法に準じて合成できる。
【0049】
上記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物は、リチウム二次電池用添加剤、特にリチウム二次電池の非水電解液用添加剤として有用であり、この添加剤を非水電解液に添加することで、低温放電特性に優れ、かつ、電池の保存特性に優れたリチウム二次電池を実現し得る。
以下、上記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物が上記効果を奏する理由について、推測される理由を説明する。
一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物を用いることにより、初期充電による負極側への皮膜形成の際、本骨格を有する一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物が、負極側に低温状態でもリチウムイオン伝導性に富み、しかも電極表面での継続的な溶媒分解などを抑えることができるように働くため、初期の低温放電特性に優れた電池を提供できるものと推測される。加えて、電池の保存特性に対しては、正極側においては活物質の構造変化や含有する遷移金属の溶出などをよる抵抗上昇や容量低下を、また負極側においては皮膜の必要以上の形成や遷移金属の析出による抵抗上昇や容量低下を、ホスホン酸構造とシリル基を有する構造とを同一分子上に併せ持つことで、効果的に抑制することができている。本作用が主作用となり、保存特性に優れた電池を提供できるものと推測している。但し、本発明は上記の推測によって限定されることはない。
【0050】
さらには、本発明のリチウム二次電池用添加剤は、必要に応じて、その他の成分を含んでいてもよい。
前記その他の成分としては、上記効果をより効果的に得る観点より、例えば、後述の一般式(III)または後述の一般式(IV)で表される化合物の少なくとも1種を用いることができる。
【0051】
<非水電解液>
本発明の非水電解液は、一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物を含有することを特徴とするが、その他の成分としては、公知のものを任意に含むことができる。
本発明の非水電解液に含まれる前記ホスホノ酢酸化合物は、1種のみであっても、2種以上を併用してもよい。
本発明の非水電解液に含まれる前記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物の含有量は、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%の範囲であることがより好ましい。この範囲において、低温放電特性に優れ、かつ、電池の保存特性に優れたリチウム二次電池を実現し得る。
【0052】
次に、非水電解液の他の成分について説明する。非水電解液は、一般的には、電解質と非水溶媒を含有する。
【0053】
〔非水溶媒〕
前記非水溶媒としては、種々公知のものを適宜選択することができるが、環状の非プロトン性溶媒及び/又は鎖状の非プロトン性溶媒を用いることが好ましい。
電池の安全性の向上のために、溶媒の引火点の向上を志向する場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒を使用することが好ましい。
【0054】
〔環状の非プロトン性溶媒〕
前記環状の非プロトン性溶媒としては、環状カーボネート、環状カルボン酸エステル、環状スルホン、環状エーテルを用いることができる。
環状の非プロトン性溶媒は単独で使用してもよいし、複数種混合して使用してもよい。
環状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。このような比率にすることによって、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
環状カーボネートの例として具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、2,3−ペンチレンカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、誘電率が高いエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートが好適に使用される。負極活物質に黒鉛を使用した電池の場合は、エチレンカーボネートがより好ましい。また、これら環状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0055】
環状カルボン酸エステルとして、具体的にはγ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、あるいはメチルγ−ブチロラクトン、エチルγ−ブチロラクトン、エチルδ−バレロラクトンなどのアルキル置換体などを例示することができる。
環状カルボン酸エステルは、蒸気圧が低く、粘度が低く、かつ誘電率が高く、電解液の引火点と電解質の解離度を下げることなく電解液の粘度を下げることができる。このため、電解液の引火性を高くすることなく電池の放電特性に関わる指標である電解液の伝導度を高めることができるという特徴を有するので、溶媒の引火点の向上を指向する場合は、前記環状の非プロトン性溶媒として環状カルボン酸エステルを使用することが好ましい。環状カルボン酸エステルの中でも、γ−ブチロラクトンが最も好ましい。
また、環状カルボン酸エステルは、他の環状の非プロトン性溶媒と混合して使用することが好ましい。例えば、環状カルボン酸エステルと、環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートとの混合物が挙げられる。
【0056】
環状スルホンの例としては、スルホラン、2−メチルスルホラン、3―メチルスルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、メチルエチルスルホン、メチルプロピルスルホンなどが挙げられる。
環状エーテルの例としてジオキソランを挙げることができる。
【0057】
〔鎖状の非プロトン性溶媒〕
前記鎖状の非プロトン性溶媒としては、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、鎖状エーテル、鎖状リン酸エステルなどを用いることができる。
鎖状の非プロトン性溶媒の非水溶媒中の混合割合は、10質量%〜100質量%、さらに好ましくは20質量%〜90質量%、特に好ましくは30質量%〜80質量%である。
鎖状カーボネートとして具体的には、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネートなどが挙げられる。これら鎖状カーボネートは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0058】
鎖状カルボン酸エステルとして具体的には、ピバリン酸メチルなどが挙げられる。
鎖状エーテルとして具体的には、ジメトキシエタンなどが挙げられる。
鎖状リン酸エステルとして具体的には、リン酸トリメチルなどが挙げられる。
【0059】
〔溶媒の組み合わせ〕
本発明に係る非水電解液で使用する非水溶媒は、1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。また、環状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、鎖状の非プロトン性溶媒のみを1種類又は複数種類用いても、又は環状の非プロトン性溶媒及び鎖状のプロトン性溶媒を混合して用いてもよい。電池の負荷特性、低温特性の向上を特に意図した場合は、非水溶媒として環状の非プロトン性溶媒と鎖状の非プロトン性溶媒を組み合わせて使用することが好ましい。
さらに、電解液の電気化学的安定性から、環状の非プロトン性溶媒には環状カーボネートを、鎖状の非プロトン性溶媒には鎖状カーボネートを適用することが最も好ましい。また、環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせによっても電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。
【0060】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合割合は、質量比で表して、環状カーボネート:鎖状カーボネートが、5:95〜80〜20、さらに好ましくは10:90〜70:30、特に好ましくは15:85〜55:45である。このような比率にすることによって、電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温又は低温での電気伝導性に優れた電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。
【0061】
環状カルボン酸エステルと環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートの組み合わせの例として、具体的には、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトンとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとスルホラン、γ−ブチロラクトンとスルホランとジメチルカーボネートなどが挙げられる。
【0062】
〔その他の溶媒〕
本発明に係る非水電解液は、非水溶媒として、上記以外の他の溶媒を含んでいてもよい。他の溶媒としては、具体的には、ジメチルホルムアミドなどのアミド、メチル−N,N−ジメチルカーバメートなどの鎖状カーバメート、N−メチルピロリドンなどの環状アミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどの環状ウレア、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリブチル、ほう酸トリオクチル、ほう酸トリメチルシリル等のホウ素化合物、及び下記の一般式で表されるポリエチレングリコール誘導体などを挙げることができる。
HO(CHCHO)
HO[CHCH(CH)O]
CHO(CHCHO)
CHO[CHCH(CH)O]
CHO(CHCHO)CH
CHO[CHCH(CH)O]CH
19PhO(CHCHO)[CH(CH)O]CH
(Phはフェニル基)
CHO[CHCH(CH)O]CO[OCH(CH)CHOCH
前記式中、a〜fは、5〜250の整数、g〜jは2〜249の整数、5≦g+h≦250、5≦i+j≦250である。
【0063】
〔一般式(III)で表される化合物〕
本発明の非水電解液は、一般式(III)で表される化合物を含有することができる。本発明の非水電解液が一般式(III)で表される化合物を含有する形態は、負極の表面皮膜形成の点で好ましい。
【0064】
【化10】

【0065】
前記一般式(III)中、Y及びYは、各々独立に、水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基を示す。
【0066】
一般式(III)で表される化合物としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、ブロピルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ジプロピルビニレンカーボネートなどが例示される。これらのうちでビニレンカーボネートが最も好ましい。
【0067】
一般式(III)で表される化合物の含有量は、目的に応じて適宜選択できるが、非水電解液全量に対して、0.001質量%〜10質量%が好ましく、0.05質量%〜5質量%であることが更に好ましい。
【0068】
〔一般式(IV)で表される化合物〕
本発明の非水電解液は、一般式(IV)で表される化合物を含有することができる。本発明の非水電解液が一般式(IV)で表される化合物を含有する形態は、負極の表面皮膜形成の点で好ましい。
【0069】
【化11】



【0070】
前記一般式(IV)中、X、X、X及びXは、各々独立に、ビニル基、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、水素原子、フッ素原子、又は塩素原子を示す。ただし、X〜Xが同時に水素原子であることはない。
【0071】
一般式(IV)中、X〜Xのフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基としては、例えばフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピルなどが挙げられる。
【0072】
一般式(IV)で表される化合物としては公知のものを使用でき、たとえば、ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4,4,5−トリフルオロエチレンカーボネート、4,4,5,5−テトラフルオロエチレンカーボネートなどの、エチレンカーボネートにおいて1〜4個の水素がフッ素により置換されたフッ素化エチレンカーボネートが挙げられる。これらの中でも、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロエチレンカーボネートが最も望ましい。
【0073】
一般式(IV)で表される化合物の含有量は、目的に応じて適宜選択できるが、非水電解液全量に対して、0.001質量%〜10質量%が好ましく、0.05質量%〜5質量%であることが更に好ましい。
【0074】
〔電解質〕
本発明の非水電解液においては、種々公知の電解質を使用することができ、通常、非水電解液用電解質として使用されているものであれば、いずれをも使用することができる。
電解質の具体例としては、(CNPF、(CNBF、(CNClO、(CNAsF、(CSiF、(CNOSO(2k+1)(k=1〜8の整数)、(CNPF[C(2k+1)(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)などのテトラアルキルアンモニウム塩、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiOSO(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPF[C(2k+1)(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)などのリチウム塩が挙げられる。また、次の一般式で表されるリチウム塩も使用することができる。
【0075】
LiC(SO)(SO)(SO)、LiN(SOOR10)(SOOR11)、LiN(SO12)(SO13)(ここでR〜R13は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基である)。これらの電解質は単独で使用してもよく、また2種類以上を混合してもよい。
これらのうち、特にリチウム塩が望ましく、さらには、LiPF、LiBF、LiOSO(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiClO、LiAsF、LiNSO[C(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPF[C(2k+1)(6−n)(n=1〜5、k=1〜8の整数)が好ましい。
本発明に係る電解質は、通常は、非水電解質中に0.1mol/L〜3mol/L、好ましくは0.5mol/L〜2mol/Lの濃度で含まれることが好ましい。
【0076】
本発明の非水電解液において、非水溶媒として、γ−ブチロラクトンなどの環状カルボン酸エステルを併用する場合には、特にLiPFを含有することが望ましい。LiPFは、解離度が高いため、電解液の伝導度を高めることができ、さらに負極上での電解液の還元分解反応を抑制する作用がある。LiPFは単独で使用してもよいし、LiPFとそれ以外の電解質を使用してもよい。それ以外の電解質としては、通常、非水電解液用電解質として使用されるものであれば、いずれも使用することができるが、前述のリチウム塩の具体例のうちLiPF以外のリチウム塩が好ましい。
具体例としては、LiPFとLiBF、LiPFとLiN[SO(2k+1)(k=1〜8の整数)、LiPFとLiBFとLiN[SO(2k+1)](k=1〜8の整数)などが例示される。
【0077】
リチウム塩中に占めるLiPFの比率は、1質量%〜100質量%、好ましくは10質量%〜100質量%、さらに好ましくは50質量%〜100質量%である。このような電解質は、0.1mol/L〜3mol/L、好ましくは0.5mol/L〜2mol/Lの濃度で非水電解液中に含まれることが好ましい。
本発明の非水電解液は、リチウム二次電池用の非水電解液として好適であるばかりでなく、一次電池用の非水電解液、電気化学キャパシタ用の非水電解液、電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサー用の電解液としても用いることができる。
【0078】
<リチウム二次電池>
本発明のリチウム二次電池は、負極と、正極と、前記本発明の非水電解液とを基本的に含んで構成されており、通常、負極と正極との間にセパレータが設けられている。
【0079】
(負極)
前記負極を構成する負極活物質は、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。
リチウム(又はリチウムイオン)との合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。また、チタン酸リチウムでもよい。
これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。前記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状いずれの形態であってもよい。
【0080】
前記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソペーズビッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
前記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
【0081】
これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
前記炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましい。また、炭素材料としては、真密度が1.70g/cm以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料も好ましい。以上のような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。
【0082】
(正極)
前記正極を構成する正極活物質としては、MoS、TiS、MnO、Vなどの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物、LiCoO、LiMnO、LiMn、LiNiO、LiNiCo(1−X)〔0<X<1〕、LiFePOなどのリチウムと遷移金属とを含む複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とを含む複合酸化物が好ましい。負極がリチウム金属又はリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物と、炭素材料と、の混合物を用いることもできる。
上記の正極活物質は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。正極活物質は導電性が不充分である場合には、導電性助剤とともに使用して正極を構成することができる。導電性助剤としては、カーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料を例示することができる。
【0083】
(セパレータ)
前記セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。
前記多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。
特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされていてもよい。
前記高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。
本発明の非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
【0084】
(電池の構成)
本発明のリチウム二次電池は、前記の負極活物質、正極活物質及びセパレータを含む。 本発明のリチウム二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。
本発明の非水電解質二次電池の例として、図1に示すコイン型電池が挙げられる。
図1に示すコイン型電池では、円盤状負極2、電解質を非水溶媒に溶解してなる非水電解液を注入したセパレータ5、円盤状正極1、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板7、8が、この順序に積層された状態で、正極缶3(以下、「電池缶」ともいう)と封口板4(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶3と封口板4とはガスケット6を介してかしめ密封する。
【0085】
なお、本発明のリチウム二次電池は、負極と、正極と、前記本発明の非水電解液とを含むリチウム二次電池(充放電前のリチウム二次電池)を、充放電させて得られたリチウム二次電池であってもよい。
即ち、本発明のリチウム二次電池は、まず、負極と、正極と、前記本発明の非水電解液と、を含む充放電前のリチウム二次電池を作製し、次いで、該充放電前のリチウム二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウム二次電池(充放電されたリチウム二次電池)であってもよい。
【0086】
本発明の実施形態の非水電解液及びその非水電解液を用いたリチウム二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。例えば、ノートパソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。
【実施例】
【0087】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。なお、以下の実施例において、「%」及び「wt%」はいずれも質量%を表す。
【0088】
以下、一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物の合成例を示す。
〔合成例1〕
<2−トリメチルシリルエチル 2−(ビス(2−トリメチルシリルエトキシ)ホスホリル)アセテート(例示化合物8)の合成>
【0089】
2−トリメチルシリルエタノール(3.90g,33.0mmol)をジクロロメタン(32ml)に溶かし、氷冷下、トリエチルアミン(3.64g、36.0mmol)を滴下し、続いて、2−(ジクロロホスホリル)アセチルクロライド(1.95g,10.0mmol)のジクロロメタン溶液(8ml)を滴下した。反応液を20℃で2時間撹拌した後、水(30ml)で3回で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濃縮した。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン系)で精製し、標記化合物(例示化合物8)を1.55g(収率35%)得た。
H−NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):4.25−4.17(6H,m),2.93(2H,d,J=21.4Hz),1.14−1.08(4H,m),1.06−0.99(2H,m),0.04(27H,s).
【0090】
〔合成例2〕
<エチル 2−(ビス(トリメチルシリルオキシ)ホスホリル)アセテート(例示化合物33)の合成>
【0091】
エチル 2−(ジエトキシホスホリル)アセテート(3.00g,13.4mmol)をジクロロメタン(15ml)に溶かし、室温で、トリメチルシリルブロマイド(7.1ml、53.5mmol)を滴下し、3.5時間撹拌した。減圧下、反応液を濃縮し、標記化合物(例示化合物33)を3.98g(収率95%)得た。
H−NMR(270MHz,CDCl)δ(ppm):4.17(2H,q,J=7.6Hz),2.94(2H,d,J=22.1Hz),1.29(3H,t,J=7.6Hz),0.32(18H,s).
【0092】
以上、一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物の合成例として、例示化合物8及び例示化合物33の合成例を説明したがその他の一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物についても上記合成例と類似の方法により合成できる。
【0093】
〔実施例1〕
以下の手順にて、リチウム二次電池を作製した。
<負極の作製>
人造黒鉛20質量部、天然黒鉛系黒鉛80質量部、カルボキシメチルセルロース1質量部及びSBRラテックス2質量部を水溶媒で混錬してペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ18μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層からなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は10mg/cmであり、充填密度は1.5g/mlであった。
【0094】
<正極の作製>
LiCoOを90質量部、アセチレンブラック5質量部及びポリフッ化ビニリデン5質量部を、N−メチルピロリジノンを溶媒として混錬してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は30mg/cmであり、充填密度は2.5g/mlであった。
【0095】
<非水電解液の調製>
非水溶媒としてエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とをそれぞれ34:33:33(質量比)の割合で混合した中に、電解質であるLiPFを、最終的に得られる非水電解液中における電解質濃度が1モル/リットルとなるように溶解させた。
前記で得られた溶液に対して、添加剤として、前記合成例1で得られた2−トリメチルシリルエチル 2−(ビス(2−トリメチルシリルエトキシ)ホスホリル)アセテート(例示化合物8)を、非水電解液全体に対する含有量が0.5wt%となるように添加し、非水電解液を得た。
【0096】
<コイン型電池の作製>
上述の負極を直径14mmで、上述の正極を直径13mmで、それぞれ円盤状に打ち抜いて、コイン状の電極(負極及び正極)を得た。また厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを直径17mmの円盤状に打ち抜きセパレータを得た。
得られたコイン状の負極、セパレータ及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(2032サイズ)内に積層し、非水電解液20μlを注入してセパレータと正極と負極に含漬させた。
更に、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより電池を密封し、直径20mm、高さ3.2mmの図1で示す構成を有するコイン型のリチウム二次電池(以下、「コイン型電池」又は「試験用電池」と称することがある)を作製した。
得られたコイン型電池(試験用電池)について、各測定を実施した。
【0097】
[評価方法]
<電池の初期特性、抵抗値(−20℃)測定>
上記コイン型電池を定電圧4.2Vで充電し、次いで、該充電後のコイン型電池を恒温槽内で−20℃に冷却し、−20℃において0.2mA定電流で放電し、放電開始から10秒間における電位低下を測定することにより、コイン型電池の直流抵抗[Ω]を測定し、得られた値を初期抵抗値[Ω](−20℃)とした。後述の比較例1のコイン型電池についても同様にして、初期抵抗値[Ω](−20℃)を測定した。
これらの結果から、下記式により、比較例1での初期抵抗値[Ω](−20℃)を100%としたときの実施例1での初期抵抗値(相対値)として、「初期特性、抵抗値(−20℃)[%]」を求めた。
得られた結果を表1に示す。
【0098】
初期特性、抵抗値(−20℃)[%]
=(実施例1での初期抵抗値[Ω](−20℃)/比較例1での初期抵抗値[Ω](−20℃))×100[%]
【0099】
<電池の保存特性、容量維持率測定>
上記で得られたコイン型電池について、25℃の恒温槽中で定電流1mAかつ定電圧4.2Vで充電し、この25℃の恒温槽中で1mA定電流で2.85Vまで放電し、1サイクル目の放電容量[mAh]を測定した。
次に、定電圧4.2V充電し、充電したコイン型電池を80℃の恒温槽内に3日間保存(以下、この操作を「高温保存試験」とする)した後、1サイクル目の放電容量と同様の方法で高温保存試験後の放電容量[mAh]を測定し、下記式にて電池の保存特性である容量維持率を計算した。
【0100】
保存特性、容量維持率[%]
=(高温保存試験後の放電容量[mAh]/1サイクル目の放電容量[mAh])×100[%]
【0101】
後述の比較例1のコイン型電池についても同様にして、容量維持率を計算した。
これらの結果から、比較例1での容量維持率を100%としたときの実施例1での容量維持率(相対値)を求めた。
得られた容量維持率(相対値)を表1に示す。
【0102】
<電池の保存特性、開放電圧低下率測定>
上記高温保存試験後の開放電圧を測定し、電池の保存特性である開放電圧低下率[%]を下式により計算した。
【0103】
開放電圧低下率[%]
=((4.2−高温保存試験後の開放電圧[V])/4.2)×100[%]
【0104】
後述の比較例1のコイン型電池についても同様にして、開放電圧低下率[%]を求めた。
これらの結果から、比較例1での開放電圧低下率を100%としたときの実施例1での開放電圧低下率(相対値)を求めた。
得られた開放電圧低下率(相対値)を表1に示す。
【0105】
<電池の保存特性、抵抗値(−20℃)測定>
初期抵抗値測定後のコイン型電池を定電圧4.2V充電し、充電したコイン型電池を80℃の恒温槽内に2日間保存(以下、この操作を「高温保存試験」とする)した。この高温保存試験後の抵抗値(−20℃)を、前述の初期抵抗値(−20℃)と同様の方法で測定した。後述の[比較例1]のコイン型電池についても同様にして、高温保存試験後の抵抗値(−20℃)を測定した。
これらの結果から、下記式により、比較例1での高温保存試験後の抵抗値[Ω](−20℃)を100%としたときの実施例1での高温保存試験後の抵抗値(相対値)として、実施例1での「保存特性、抵抗値(−20℃)[%]」を求めた。
得られた結果を表1に示す。
【0106】
保存特性、抵抗値(−20℃)[%]
=(実施例1での高温保存試験後の抵抗値[Ω](−20℃)/(比較例1での高温保存試験後の抵抗値[Ω](−20℃))×100[%]
【0107】
〔比較例1〕
非水電解液の調製において、例示化合物8を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を表1に示す。
【0108】
〔比較例2〕
非水電解液の調製において、例示化合物8に代えてホスホノ酢酸(比較化合物1)を、非水電解液全体に対する含有量が0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を
表1に示す。
【0109】
〔比較例3〕
非水電解液の調製において、例示化合物8に代えてトリエチルホスホノ酢酸(比較化合物2)を、非水電解液全体に対する含有量が0.5wt%となるように添加したこと以外は実施例1と同様にしてコイン型電池を得た。
得られたコイン型電池について、実施例1と同様にして各測定を実施した。評価結果を
表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
例示化合物8、比較化合物1、比較化合物2の構造を以下に示す。
【0112】
【化12】

【0113】
表1に示すように、添加剤を含有しない比較例1と比べ、実施例1では、初期特性として低温抵抗値を有意に低減することができており、また保存特性として開放電圧低下率を維持したまま、容量維持率と低温抵抗値をいずれも有意に改善することができている。一方、比較例2で示したように、比較化合物1を添加した場合は、初期特性としての低温抵抗値が増加傾向にあり、また保存特性全般にわたって比較例1に比べ改善ができていない。比較例3においても、初期特性としての低温抵抗値の低減は見られず、保存特性としての容量維持率と開放電圧の低下が見られ、比較化合物2を添加による悪影響が見られる。
したがって、実施例1では低温放電特性に優れ、かつ、電池の保存特性に優れたリチウム二次電池を実現し得る非水電解液を提供することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 正極
2 負極
3 正極缶
4 封口板
5 セパレータ
6 ガスケット
7,8 スペーサー板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物を含有する非水電解液。
【化1】


〔一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、一般式(II)で表される基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、又は一般式(II)で表される基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。
一般式(II)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基を表し、*は、一般式(I)中の酸素原子との結合位置を表し、nは、0〜2の整数を表す。〕
【請求項2】
さらに、下記一般式(III)で表される化合物を含有する請求項1に記載の非水電解液。
【化2】


〔一般式(III)中、Y及びYは、各々独立に、水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基を示す。〕
【請求項3】
さらに、下記一般式(IV)で表される化合物を含有する請求項1又は請求項2に記載の非水電解液。
【化3】


〔一般式(IV)中、X、X、X及びXは、各々独立に、ビニル基、フッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基、水素原子、フッ素原子、又は塩素原子を示す。ただし、X〜Xが同時に水素原子であることはない。〕
【請求項4】
前記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物の含有量が、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の非水電解液。
【請求項5】
前記一般式(III)で表される化合物の含有量が、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%である請求項2に記載の非水電解液。
【請求項6】
前記一般式(IV)で表される化合物の含有量が、非水電解液全質量に対して0.001質量%〜10質量%である請求項3に記載の非水電解液。
【請求項7】
下記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物を有効成分として含むリチウム二次電池用添加剤。
【化4】


〔一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、一般式(II)で表される基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、又は一般式(II)で表される基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。
一般式(II)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基を表し、*は、一般式(I)中の酸素原子との結合位置を表し、nは、0〜2の整数を表す。〕
【請求項8】
下記一般式(I)で表されるホスホノ酢酸化合物。
【化5】


〔一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、一般式(II)で表される基を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基、又は一般式(II)で表される基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。
一般式(II)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換されていてもよいフェニル基を表し、*は、一般式(I)中の酸素原子との結合位置を表し、nは、1〜2の整数を表す。〕
【請求項9】
正極と、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料から選ばれた少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の非水電解液と、を含むリチウム二次電池。
【請求項10】
正極と、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料から選ばれた少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の非水電解液と、を含むリチウム二次電池を、充放電させて得られたリチウム二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2013−109924(P2013−109924A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253133(P2011−253133)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】