説明

ホスホリパーゼおよびそれを製造する方法

【課題】本発明は、発現された真菌ペプチドをプロセシングすることによってホスホリパーゼを製造する方法、およびある種の特定されたホスホリパーゼに関する。
【解決手段】本発明は、発現された真菌ペプチドをプロセシングすることによってホスホリパーゼを製造する方法、およびある種の特定されたホスホリパーゼに関する。さらに、本発明は、ホスホリパーゼを使用してチーズを製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、リン脂質を加水分解する方法、ホスホリパーゼを製造する方法、チーズを作る方法、およびホスホリパーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
Soragni E. 他 (2001) ENBO J. 20: 5079-5090には、チューバー・ボルキイ (Tuber borchii) からのホスホリパーゼ (TbSP1) およびそれをコードする遺伝子のcDNAのヌクレオチド配列が開示されている。下記のペプチド配列は示された源において発表され、示された源生物に由来する:
・ COGENE植物病原性真菌および卵菌網 (Oomycete) ESTデータベース、ユニシークエンス (Unisequence) ID: VD0100C34、ベルチシリウム・ダヒリアエ (Verticillium dahliae) 。
・ NCBIタンパク質データベース、gl: 18307435、ニューロスポラ・クラッサ (Neurospora crassa) 。
・ NCBIタンパク質データベース、gl: 16519372、ヘリコスポリウム (Helicosporium) 種HN1。
・ WO 0056762、配列番号5954、アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) 。
・ TREMBLタンパク質データベース、EAA28927、ニューロスポラ・クラッサ (Neurospora crassa) 。
米国特許第6,399,121号には、チーズ製造におけるホスホリパーゼの使用が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
発明の要約
本発明者らは、真菌グループXIIIホスホリパーゼA2についての既知の配列データを解析し、発表された配列から、または天然源からの関係する配列についてスクリーニングすることによって、追加の配列を同定した。真菌グループXIIIホスホリパーゼA2を適当な宿主生物中で発現させることによって、発現された配列がN-またはC-末端側、または両方においてペプチド配列に結合したコアペプチドから成ること、そして適当な宿主生物中の遺伝子の発現が発現されたペプチドを切断して、N-またはC-末端にペプチドのエクステンションをもたないコアペプチドを生成できることを発見した。
【0004】
さらに、N-またはC-末端にペプチドのエクステンションをもたないコアペプチドは、1または2以上のペプチドのエクステンションに結合したコアペプチドよりも有意に高いホスホリパーゼ活性を有することを発見した。最後に、この方法により発見されたコアペプチドは、機能が未知のヘリコスポリウム (Helicosporium) 種からの既知の成熟ペプチド (Wakatsuki S. 他 (2001) Biochem. Biophys. Acta 1522: 74-81) 、および分泌シグナル以外のペプチドのエクステンションを欠如する、細菌グループXIIIホスホリパーゼA2 (Sugiyama M. 他 (2002) J. Biol. Chem. 227: 20051-20058) に類似する長さおよび配列を有することを発見した。
【0005】
本発明者らは、さらに、真菌グループXIIIホスホリパーゼA2の活性部位配列の類似性およびシステイン残基の保存を共有するホスホリパーゼがチーズの製造に有効であることを発見した。
【0006】
さらに、本発明者らは、フザリウム・ベネナツム (Fusarium venenatum) A3/5からの新規なホスホリパーゼをコードする遺伝子を発見し、単離した。この遺伝子は本来フザリウム・グラミネアラム (Fusarium graminearum) ATCC 20334として寄託され、最近下記によりフザリウム・ベネナツム (Fusarium venenatum) として再分類された: YoderおよびChristianson、1998、Fungal Genetics and Biology 23: 62-80; およびO’Donnell 他、1998、Fungal Genetics and Biology 23: 57-67。このホスホリパーゼは、下記により規定された真菌/細菌グループXIII PLA2に属する: Soragni E. 他 (2001) ENBO J. 20: 5079-5090。
【0007】
本発明者らは、また、新規なホスホリパーゼエンコーディング遺伝子を大腸菌 (Escherichia coil) 株中にクローニングし、アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) 中でフザリウム (Fusarium) ホスホリパーゼ遺伝子を発現させる構築物を作るために、前記クローニングした遺伝子を使用した。本発明者らは、この構築物でアスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) を形質転換し、そして形質転換したアスペルギルス (Aspergillus) 細胞からホスホリパーゼを単離した。
【0008】
したがって、本発明は、発現された真菌ペプチドをプロセシングしてC-末端からペプチドおよび/またはN-末端からペプチドを切断して、コアペプチドを生成せしめることを含んで成るホスホリパーゼの製造方法を提供し、ここで当該コアペプチドは、
a) 配列番号1のアミノ酸146-153、配列番号3のアミノ酸87-94、または配列番号12のアミノ酸79-86により与えられるアミノ酸配列、または単一アミノ酸の他のアミノ酸による置換を除外してこれらのアミノ酸配列のいずれかと同一である配列、および
b) 上記a) に記載の配列のN-末端側に位置する少なくとも2つのシステイン残基、および
c) 上記a) に記載の配列のC-末端側に位置する少なくとも2つのシステイン残基、
を含んでなる、ホスホリパーゼを製造する方法を提供する。
【0009】
本発明は、また、リン脂質を本発明のホスホリパーゼで加水分解する方法を提供する。さらに、本発明は、チーズ乳またはチーズ乳の画分をホスホリパーゼと接触させ、そしてこのチーズ乳からチーズを製造する方法を提供する。
最後に、本発明は、ある種の特定した配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであるホスホリパーゼを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1は、既知のプロセシング部位 (|) を示す、真菌グループXIIIホスホリパーゼA2のアミノ酸配列の整列を示す。活性部位のコンセンサスには下線が引かれている。保存されたシステイン残基はコンセンサスの下に|で示されている。整列はベクターNT1プログラムスイートv8のAlignXプログラムを使用して作られた。使用したアルゴリズムはbiosum62mt2マトリックスおよびAlignXデフォルト設定を有するClustalWである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発現されたペプチド
本発明において、発現された真菌ペプチドを使用し、このペプチドは下記の文献に記載されているグループ 「真菌グループXIIIホスホリパーゼA2」 の定義において使用されている活性部位配列の類似性およびシステイン残基の保存により規定されるグループに属する: Soragni E. 他 (2001) ENBO J. 20: 5079-5090。このペプチドは真菌性であり、これは、例えば、セイヨウショウロ (Tuber) 、ベルチシリウム (Verticillium) 、ニューロスポラ (Neurospora) 、ヘリコスポルム (Helicosporum) 、またはアスペルギルス (Aspergillus) 、特にチューバー・ボルキイ (T. borchii) 、チューバー・アルビヅム (T. albidum) 、ベルチシリウム・ダヒリアエ (V. dahliae) 、ベルチシリウム・テネルム (V. tenerum) 、ニューロスポラ・クラッサ (N. crassa) 、ヘリコスポリウム (Helicosporium) 種HN1、またはアスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) に由来する。
【0012】
このペプチドはホスホリパーゼ活性、例えば、ホスホリパーゼA活性、例えば、ホスホリパーゼA1および/またはホスホリパーゼA2活性を有することができる。
いくつかの特定の例は、次のような配列のリストに記載されているアミノ酸配列を有する既知のペプチドである。
【0013】
また、源の生物および参考文献を示す:
・ 配列番号1、チューバー・ボルキイ (Tuber borchii) 、Soragni E. 他 (2001) ENBO J. 20: 5079-5090。
・ 配列番号3、ベルチシリウム・ダヒリアエ (Verticillium dahliae) 、COGENE植物病原性真菌および卵菌網 (Oomycete) ESTデータベース、ユニシークエンス (Unisequence) ID: VD0100C34。
・ 配列番号4、ニューロスポラ・クラッサ (Neurospora crassa) 、NCBIタンパク質データベース、gl: 18307435。
・ 配列番号5、ヘリコスポリウム (Helicosporium) 種HN1、NCBIタンパク質データベース、gl: 16519372。
・ 配列番号7、アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) 、WO 0056762、配列番号5954。
・ 配列番号8、ニューロスポラ・クラッサ (Neurospora crassa) 、TREMBLタンパク質データベース、EAA28927。
【0014】
さらに、本発明者らは、公開収集物から購入したまたは示した国および年に収集された天然源から、下記の示された配列を有する真菌ホスホリパーゼを単離した:
・ 配列番号10、チューバー・アルビヅム (Tuber albidum) 。購入先: Centraalbureau voor Schimmelcultures、オランダ国ウトレヒト、単離物CBS272.72。
・ 配列番号12、ベルチシリウム・テネルム (Verticillium tenerum) 、アイルランド、1996。
【0015】
本発明者らは、チューバー・アルビヅム (T. albidum) からの遺伝子 (配列番号9) を大腸菌 (E. coli) 中に挿入し、このクローンをブタベスト条約の規定に従い2003年2月12日に寄託した。この寄託はDSMZ (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen、ドイツ国ブラウンシュウェイグD-38124、マシェロデル・ウエグ1b) においてなされ、そして受託番号DSM 15441を得た。
【0016】
1つの態様において、本発明は、配列番号10 (チューバー・アルビヅム (T. albidum)) のアミノ酸91〜210、配列番号1 (チューバー・ボルキイ (T. borchii) のアミノ酸92〜211、配列番号12 (ベルチシリウム・テネルム (V. tenerum)) のアミノ酸30〜137、配列番号3 (ベルチシリウム・ダヒリアエ (V. dahliae)) のアミノ酸38〜145、配列番号4 (ニューロスポラ・クラッサ (N. crassa)) のアミノ酸44〜151、配列番号7 (アスペルギルス・オリゼ (A. oryzae)) のアミノ酸37〜157、または配列番号8 (ニューロスポラ・クラッサ (N. crassa)) のアミノ酸58〜168と少なくとも80%同一である、例えば、少なくとも85%同一である、好ましくは少なくとも90%同一である、より好ましくは少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであるホスホリパーゼを提供する。
【0017】
ペプチドのプロセシング
配列のリスト中のホスホリパーゼ配列を解析することによって、本発明者らは、各発現されたアミノ酸配列が単一ペプチド、コアペプチド、およびさらにコアペプチドのC-またはN-末端、または両方に結合した機能が未知のペプチド配列から成ることを発見した。
【0018】
コアペプチド
コアペプチドは、真菌/細菌グループXIIIホスホリパーゼA2についてSoragni E. 他 (2001) ENBO J. 20: 5079-5090が観測した同一の活性部位配列の類似性およびシステイン残基保存により特徴づけられる。
本発明の好ましい態様において、コアペプチドは下記を含んでなる: a) 配列番号1のアミノ酸146-153、配列番号3のアミノ酸87-94、または配列番号12のアミノ酸79-86により与えられる配列、または単一アミノ酸の他のアミノ酸による置換を除外してこれらのアミノ酸配列のいずれかと同一である配列、およびb) 上記a) に記載の配列のN-末端側に位置する少なくとも2つのシステイン残基、およびc) 上記a) に記載の配列のC-末端側に位置する少なくとも2つのシステイン残基。
【0019】
a) に記載する配列のN-末端側に位置するシステイン残基の1つは、例えば、a) に記載する配列から0〜5アミノ酸、例えば、0〜3アミノ酸、好ましくは0〜2アミノ酸、なおより好ましくは1アミノ酸だけ離れている。a) に記載する配列のN-末端側に位置するシステイン残基の他は、例えば、a) に記載する配列から14〜20アミノ酸、例えば、15〜19アミノ酸、好ましくは16〜18アミノ酸、なおより好ましくは17アミノ酸だけ離れている。
【0020】
a) に記載する配列のC-末端側に位置するシステイン残基の1つは、例えば、a) に記載する配列から22〜29アミノ酸、例えば、23〜28アミノ酸、好ましくは24〜27アミノ酸、なおより好ましくは25〜26アミノ酸だけ離れている。a) に記載する配列のC-末端側に位置するシステイン残基の他は、例えば、a) に記載する配列から27〜49アミノ酸、例えば、29〜46アミノ酸、好ましくは30〜43アミノ酸、なおより好ましくは32〜42アミノ酸、最も好ましくは35〜40アミノ酸だけ離れている。
【0021】
好ましい態様において、完全な発現されたホスホリパーゼ配列を配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10、および配列番号12に記載される配列と同時に整列させるとき、それぞれアミノ酸番号128、144、180、および194をもつ配列番号1のシステイン残基と整列する4つのシステイン残基を含んでなる。
【0022】
本発明によれば、発現されたポリペプチドは1または2以上の結合したペプチドからコアペプチドが分離されるように切断される。この切断はin vivo でそれを適当な糸状菌宿主中で発現させるか、あるいはin vitro で、例えば、適当なプロテアーゼ、例えば、Kex2で処理することによって実施することができる。
切断点はFGである配列の11アミノ酸内で、またはKex2部位である配列の10アミノ酸内で見出すことができる。Kex2部位は、例えば、RR、KR、KKまたはRKである。1つの態様において、コアペプチドは100〜150アミノ酸、例えば、110〜140アミノ酸、115〜133アミノ酸、116〜129アミノ酸、または118〜126アミノ酸の長さを有する。
【0023】
本発明の1つの態様において、完全な発現されたホスホリパーゼ配列を配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10、および配列番号12に記載される配列と同時に整列させるとき、配列番号1のアミノ酸97-101と整列する配列のN-末端側の0〜18アミノ酸、例えば、3〜16アミノ酸、好ましくは5〜14アミノ酸内で発現されたホスホリパーゼが切断される。
【0024】
好ましい態様において、完全な発現されたホスホリパーゼ配列を配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10、および配列番号12に記載される配列と同時に整列させるとき、配列番号1のアミノ酸204-209と整列する配列のC-末端側の0〜11アミノ酸、例えば、0〜9アミノ酸、好ましくは0〜7アミノ酸内で発現されたホスホリパーゼが切断される。
【0025】
好ましい態様において、プロセシングされたホスホリパーゼは、プロセシング前の発現されたペプチドの活性より高い、比ホスホリパーゼ活性を有する。例えば、1つの態様において、比ホスホリパーゼ活性は、プロセシング前の発現されたペプチドの比ホスホリパーゼ活性の少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍、最も好ましくは少なくとも10倍である。本発明の1つの態様において、発現されたペプチドはプロセシング前に測定可能なホスホリパーゼ活性をもたない。
【0026】
ホスホリパーゼ活性は、例えば、LEUアッセイにおいて、大豆レシチン (L-α-ホスファチジル-コリン) をpH 8.0および40℃において2分間加水分解することによって測定することができる。ホスホリパーゼ活性、標準に関して、pHを一定に保持するために必要な滴定剤 (0.1 M NaOH) 消費の割合として表される。
【0027】
糸状真菌宿主細胞
糸状真菌宿主細胞は、例えば、下記の細胞であることができる: アクレモニウム (Acremonium) 、アスペルギルス (Aspergillus) 、フザリウム (Fusarium) 、フミコラ (Humicola) 、ミセリオフトラ (Myceliopthora) 、ニューロスポラ (Neurospora) 、ペニシリウム (Penicillium) 、リゾムコル (Rhizomucor) 、テルモマイセス (Thermomyces) 、チエラビア (Thielavia) 、トリポクラジウム (Tolypocladium) 、またはトリコデルマ (Trichoderma) 、特にアスペルギルス・アワモリ (Aspergillus awamori) 、アスペルギルス・フェチヅス (A. foetidus) 、アスペルギルス・ジャポニカス (A. japonicus) 、アスペルギルス・ニヅランス (A. nidulans) 、アスペルギルス・ニガー (A. niger) 、アスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) 、
【0028】
フザリウム・バクトリジオイデス (F. bactridioides) 、フザリウム・セレアリス (F. cerealis) 、フザリウム・クロックウェレンセ (F. crookwellense) 、フザリウム・クルモルム (F. culmorum) 、フザリウム・グラミネアラム (F. graminearum) 、フザリウム・グラミヌム (F. graminum) 、フザリウム・ヘテロスポルム (F. heterosporum) 、フザリウム・ネグンジ (F. negundi) 、フザリウム・オキシスポラム (F. oxysporum) 、フザリウム・レチクラツム (F. reticulatum) 、フザリウム・ロセウム (F. roseum) 、フザリウム・サムブシヌム (F. sambucinum) 、フザリウム・サルコクロウム (F. sarcochroum) 、フザリウム・スポロトリキオイデス (F. sporotrichioides) 、フザリウム・スルフリウム (F. sulphureum) 、フザリウム・トルロスム (F. torulosum) 、フザリウム・トリコテキオイデス (F. trichothecioides) 、フザリウム・ベネナツム (F. venenatum) 、
【0029】
フミコラ・インソレンス (H. insolens) 、ミセリオフトラ・サーモフィラ (M. thermophila) 、ニューロスポラ・クラッサ (N. crassa) 、ペニシリウム・パープロゲナム (P. purpurogenum) 、リゾムコル・ミエヘイ (R. miehei) 、サーモミセス・ラヌギノスス (Thermomyces lanuginosus) 、チエラビア・テレストリス (Thielavia terrestris) 、トリコデルマ・ハルジアナム (Trichoderma harzianum) 、トリコデルマ・コニンギイ (Trichoderma koningii) 、トリコデルマ・ロンギブラキアツム (Tricoderma longibrachiatum) 、トリコデルマ・リーセイ (Trichoderma reesei) 、またはトリコデルマ・ビリデ (Trichoderma viride) 。
【0030】
特に好ましい態様において、宿主生物はアスペルギルス (Aspergillus) 、フザリウム (Fusarium) 、またはトリコデルマ (Trichoderma) の株、特にアスペルギルス・ニガー (A. niger) 、アスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) 、フザリウム・ベネナツム (F. venenatum) 、フザリウム・サルコクロウム (F. sarcochroum) またはフザリウム・セレアリス (F. cerealis) である。
形質転換、培養、発現、回収は慣用法により、例えば、下記の文献に記載されている一般的方法により実施することができる: EP 238023、EP 305216、WO 9600787、EP 244234またはT. Christensen 他、Bio Technology Vol. 6、Dec. 1988、1419-22。
【0031】
ホスホリパーゼのポリペプチドおよびDNA
1つの態様において、本発明は、ホスホリパーゼ活性を有するポリペプチドに関し、ここでポリペプチドは少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、なおより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、例えば、少なくとも97%、なお最も好ましくは少なくとも98%、例えば、少なくとも99%の配列番号16 (すなわち、成熟ポリペプチド) のアミノ酸29〜149に対する同一度を有するアミノ酸配列を含んでなり、好ましくはから成る。
【0032】
好ましくは、ポリペプチドは配列番号16のアミノ酸配列、そのアレレ変異型、またはホスホリパーゼ活性を有するそのフラグメントを含んでなる。好ましい態様において、本発明のポリペプチドは配列番号16のアミノ酸29〜149を含んでなる。それ以上の態様において、ポリペプチドは配列番号16のアミノ酸29〜149から成る。
【0033】
本発明は、また、配列番号15のヌクレオチド133〜495と少なくとも80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでなり、好ましくはから成る。好ましくは、ヌクレオチド配列は配列番号15のヌクレオチド133〜495に対して少なくとも85%の同一性、例えば、少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、例えば、少なくとも96%の同一性、例えば、少なくとも97%の同一性、なおより好ましくは少なくとも98%の同一性、例えば、少なくとも99%の同一性を有する。好ましくは、ヌクレオチド配列はホスホリパーゼ活性を有するポリペプチドをコードする。
【0034】
ホスホリパーゼは、この明細書においてDNA配列に基づいてデザインされたプローブを使用して、フザリウム (Fusarium) の株、例えば、フザリウム・ベネナツム (F. venenatum) から誘導される。1つの態様において、ホスホリパーゼはホスホリパーゼA活性を有する。
ホスホリパーゼは、ホスホリパーゼをコードするDNA配列で適当な宿主細胞を形質転換し、その酵素の産生を可能とする条件下に形質転換された生物を培養し、そして培養物から酵素を回収することによって製造することができる。
【0035】
宿主は下記のものであることが好ましい: 真核生物、特に真菌細胞、例えば、酵母細胞または糸状菌細胞、例えば、アスペルギルス (Aspergillus) 、フザリウム (Fusarium) 、トリコデルマ (Trichoderma) またはサッカロマイセス (Saccharomyces) の株、特にアスペルギルス・ニガー (A. niger) 、アスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) 、フザリウム・ベネナツム (F. venenatum) 、フザリウム・サルコクロウム (F. sarcochroum) 、フザリウム・セレアリス (F. cerealis) またはサッカロマイセス・セレビシエ (S. cerevisiae) 、例えば、アスペルギルス・ニガー (A. niger) のグルコアミラーゼ産生株、例えば、米国特許第3,677,902号に記載されているものまたはそれらの突然変異体の細胞。このような宿主生物におけるホスホリパーゼの産生は、下記の文献に記載されている一般的方法により実施することができる: EP 238,023 (Novo Nordisk) 、WO 96/00787 (Novo Nordisk) またはEP 244,234 (Alko) 。
【0036】
典型的には、本発明の発現ベクターは、プロモーター、翻訳開始シグナル、および必要に応じて、選択可能なマーカー、転写ターミネーターとして機能する調節配列、リプレッサー遺伝子または種々のアクチベーター遺伝子を含む。ベクターは自律的に複製するベクターであるか、あるいは宿主細胞ゲノム中に組込むことができる。
【0037】
配列の整列および同一性
ヌクレオチド配列は、デフォルト設定を使用してベクターNTIプログラムスイート7.0のAlignX適用で整列させることができる。この設定は変更されたClustalWアルゴリズム (Thompson J. D.、Higgins D. G. およびGibson T. J. (1994) Nucl. Acids Res. 22: 4673-4680) 、swgapdnarntスコアマトリックス、15のギャップオープニングペナルティーおよび6.66のギャップエクステンションペナルティーを使用する。
【0038】
アミノ酸配列は、デフォルト設定を使用してベクターNTIプログラムスイートv8のAlignX適用で整列させることができる。この設定は変更されたClustalWアルゴリズム (Thompson J. D.、Higgins D. G. およびGibson T. J. 、1994) 、blosum62mt2スコアマトリックス、10のギャップオープニングペナルティーおよび0.1のギャップエクステンションペナルティーを使用する。
【0039】
本発明の1つの態様において、配列の整列および相同性スコアの計算は、Lipman-Pearson法 (Lipman D. J. およびW. R. Pearson (1985) Rapid and sensitive protein similarity searches. Science 227: 1435-1441) に従い下記を使用して実施される: PAM250残基量表 (Dayhoff M. O.、R. M. Schwartz、およびB. C. Orcutt (1978) A Model of evolutionary change in proteins. Dayhoff M. O. (編者) 、Atlas of Protein Sequence and Structure. National Biomedical Research Foundation. ワシントンD. C. Vol. 5、Suppl. 3: pp. 345-358) およびLasergeneソフトウェアパッケージ中のMegAlignプログラム、v4.03のデフォルト設定 (DNASTAR Inc.、ウィスコンシン州53715マディソン、サウスパークストリート1228) 。デフォルト設定は、2のK-tuple、4のギャップペナルティー、および12のギャップ長さペナルティーである。
【0040】
リン脂質の加水分解
任意のリン脂質、例えば、レシチン、セファリンまたはイノシチドの加水分解において、本発明を使用することができる。
本発明は、先行技術のプロセスと同様に、例えば、焼いた製品(WO 0032758、WO 9953769) 、マヨネーズ (GB 1525929、米国特許第4,034,124号) の製造、または植物油の処理 (米国特許第5,264,367号) においてホスホリパーゼを置換することによって、使用することができる。
【0041】
ホスホリパーゼの使用
本発明のホスホリパーゼは、ホスホリパーゼの種々の工業的用途において、例えば、後述するように使用することができる。
【0042】
ベキングにおける使用
本発明のホスホリパーゼは、練り粉、パンおよびケーキの製造において、例えば、パンまたはケーキの弾性を改良するために使用できる。こうして、ホスホリパーゼは、それを練り粉の成分に添加し、練り粉を練り、そして練り粉を焼いてパンを製造することを含んでなる、パンを製造する方法において使用することができる。これは米国特許第4,567,056号またはWO 99/53769におけるようにして実施することができる。
【0043】
洗剤における使用
変異型は洗剤添加剤として、例えば、0.001〜10 (例えば、0.01〜1) mg/gの洗剤または0.001〜100 (例えば、0.01〜10) mg/リットルの洗浄液の濃度 (純粋な酵素タンパク質として表して) で使用できる。
【0044】
本発明の洗剤組成物は、例えば、汚れた布帛の前処理に適当な洗濯添加剤組成物およびリンス添加布帛柔軟剤組成物を含む手によるまたは機械的洗濯洗組成物として配合するか、あるいは一般的家庭の硬質表面クローニング作業において使用する洗剤組成物として配合することができる。洗濯洗剤において、変異型は脂肪の汚れの除去、白色度の維持、および薄汚れの清浄化に有効である。洗濯洗剤組成物は下記の文献に記載されているように配合することができる: GB 2247025、WO 9901531またはWO 9903962。
【0045】
本発明の洗剤組成物は、下記の文献に記載されているように、特に手によるまたは機械的皿洗浄作業のために配合することができる: GB 2,247,025 (Unilever) またはWO 99/01531 (Procter & Gamble) 。皿洗浄組成物において、変異型は油脂性/油性の汚れの除去、食卓用器具および皿洗浄機のプラスチック成分の高度に着色された成分による汚れ/変色の予防、および食卓用器具上のライム石鹸の付着の回避に有効であろう。
【0046】
他の使用
本発明のホスホリパーゼは、炭水化物由来の水性溶液またはスラリーをホスホリパーゼで処理することによってその濾過性を改良するために使用できる。これは特に澱粉加水分解物、ことにコムギ澱粉加水分解物を含有する溶液またはスラリーに適用可能である。なぜなら、これは濾過し、曇った濾液を得ることが困難である傾向があるからである。この処理はEP 219,269 (CPC International) と同様にして実施することができる。
【0047】
さらに、本発明のホスホリパーゼはリン脂質、好ましくはレシチンを部分的に加水分解して、改良されたリン脂質乳化剤を得るために使用できる。さらに、この応用は下記の文献に記載されている: Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry (発行所: VCH Weinheim (1996)) 、日本国特許2794574、およびJP-B 6-087751。
さらに、本発明のホスホリパーゼは、ホスホリパーゼを飼料物質および少なくとも1種のリン脂質と混合することを含んでなる、動物飼料を製造する方法において使用できる。これはEP 743 017と同様にして実施できる。
【0048】
なおさらに、本発明のホスホリパーゼは、食用油をホスホリパーゼで処理してリン脂質の主要部分を加水分解し、そしてリン脂質加水分解物を含有する水性相を油から分離することを含んでなる、食用油中のリン脂質含有率を減少させる方法において使用することができる。この方法は、リン脂質を含有する食用油、例えば、植物油、例えば、大豆油、ナタネ油およびヒマワリ油の精製に適用できる。ホスホリパーゼは、例えば、下記の文献に記載されている方法において使用することができる: JP-A 2-153997および米国特許第5,264,367号。
【0049】
チーズを製造する方法
本発明のホスホリパーゼは、米国特許第6,399,121号に記載されている方法と同様にして、チーズの製造に使用することができる。
本発明の好ましい態様において、チーズ乳またはチーズ乳の画分を本発明のホスホリパーゼと接触させ、そしてチーズ乳からチーズを製造することによって、チーズを製造する。
【0050】
それ以上の好ましい態様において、チーズはチーズ乳またはチーズ乳の画分をホスホリパーゼと接触させることによって製造され、ここでホスホリパーゼは
a) 配列番号1のアミノ酸146-153、配列番号3のアミノ酸87-94、または配列番号12のアミノ酸79-86により与えられる配列、または単一アミノ酸の他のアミノ酸による置換を除外してこれらのアミノ酸配列のいずれかと同一である配列、および
b) 上記 a) に記載の配列のN-末端側に位置する少なくとも2つのシステイン残基、および
c) 上記 a) に記載の配列のC-末端側に位置する少なくとも2つのシステイン残基、
を含んでなる。
【0051】
本発明の関係において、用語 「チーズ乳」 はチーズの製造に使用する任意の乳に基づく組成物をカバーすることを意味する。チーズ乳の画分は、チーズ乳の任意の画分、例えば、クリーム、スキムミルク、乳、バターミルク、バターまたは乳脂であることができる。
【0052】
好ましい態様において、チーズのオイリングオッフ (oiling-off) を減少しおよび/またはチーズ収率を増加させるために十分な量の本発明のホスホリパーゼと、チーズ乳またはチーズ乳の画分を接触させる。オイリングオッフ作用は、貯蔵および/または溶融時に遊離油を形成するチーズの傾向である。
1つの面において、本発明は、乳製品組成物を本発明のホスホリパーゼで処理し、そして前記乳製品組成物からチーズを製造することを含んでなる、チーズを製造する方法に関する。
【0053】
本発明の他の面は、乳製品組成物をホスホリパーゼで処理し、そして前記乳製品組成物からチーズを製造することを含んでなり、ここでホスホリパーゼは真菌/細菌グループXIII PLA2のホスホリパーゼの群から選択される、チーズを製造する方法に関する。本発明の好ましい態様において、真菌/細菌グループXIII PLA2は真菌、より好ましくは子嚢菌網 (Ascomycetes) に属する真菌に由来する。
【0054】
真菌/細菌グループXIII PLA2に属するホスホリパーゼは、Soragni E. 他、EMBO Journal 20 (2001) 、5079-5090により定義されている、このグループに属する任意のホスホリパーゼであることができ、そして、例えば、種セイヨウショウロ (Tuber) 、例えば、チューバー・ボルキイ (T. borchii) 、ストレプトマイセス (Streptomyces) 、例えば、ストレプトマイセス・ケリコロル (S. coelicolor) 、ベルチシリウム (Verticillium) 、例えば、ベルチシリウム・ダヒリアエ (V. dahliae) 、アスペルギルス (Aspergillus) 、例えば、アスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) 、ニューロスポラ (Neurospora) 、例えば、ニューロスポラ・クラッサ (N. crassa) 、またはヘリコスポリウム (Helicosporium) に由来することができる。
【0055】
本発明による乳製品組成物は、乳構成成分を含んでなる任意の組成物であることができる。乳構成成分は、乳の任意の構成成分、例えば、乳脂、乳タンパク質、乳漿タンパク質、およびラクトースであることができる。乳画分は、乳の任意の画分、例えば、スキムミルク、バターミルク、乳漿、クリーム、ミルク粉末、全乳粉末、スキムミルク粉末であることができる。本発明の好ましい態様において、乳製品組成物は、乳、スキムミルク、バターミルク、全乳、乳漿、クリーム、またはそれらの任意の組み合わせを含んでなる。より好ましい態様において、乳製品組成物は乳、例えば、スキムミルク、全乳、クリーム、バターミルク、またはそれらの任意の組み合わせから成る。
【0056】
本発明のプロセスにおける酵素処理は、ホスホリパーゼを乳製品組成物中に分散させ、そして適当な保持時間の間適当な温度において酵素反応を起こさせることによって実施できる。ホスホリパーゼを使用する処理は、この分野においてよく知られている原理に従い選択した1または2以上の酵素に適合するように選択した条件下に実施することができる。
【0057】
酵素処理は、任意の適当なpH、例えば、pH 2〜10、例えば、pH 4〜9または5〜7において実施することができる。1つの態様において、ホスホリパーゼ処理は、3〜60℃、例えば、25〜45℃において (例えば、少なくとも5分間、例えば、少なくとも10分間または少なくとも30分間、例えば、5〜120分間) 実施する。ホスホリパーゼは、必要な性質を有するチーズを製造するために適当な量で添加される。好ましくは、ホスホリパーゼは、チーズのオイリングオッフを減少しおよび/またはチーズ収率を増加させるために有効な量で添加される。通常、ホスホリパーゼの適当な投与量は、0.001〜0.5 mgの酵素/gの乳脂、好ましくは0.01〜0.3 mgの酵素/gの乳脂、より好ましくは0.02〜0.1 mgの酵素/gの乳脂の範囲であろう。
【0058】
本発明の方法により製造されるチーズは下記のものを含んでなる: チーズのすべて変種、例えば、カンペシノ (Campesino) 、チェスター (Chester) 、ダンボー (Danbo) 、ドラバント (Dorabant) 、ヘレガード (Herregard) 、マンチェゴ (Manchego) 、プロボロン (Provolone) 、セイント・ポーリン (Saint Paulin) 、ソフトチーズ、スベシア (Svecia) 、タレッギオ (Taleggio) 、ホワイトチーズ、下記のものを含む: チーズ凝乳のレンネット凝固により製造されたレンネット凝乳チーズ; 熟成チーズ、例えば、チェダー (Chedar) 、コルビー (Colby) 、エダム (Edam) 、ムエンスター (Muenster) 、グルイェレ (Gruyere) 、エムメンタル (Emmenthal) 、カメムバート (Camembert) 、パルメサン (Parmesan) およびロマノ (Romano); ブルーチーズ、例えば、ダニッシ (Danish) ブルーチーズ; フレッシュチーズ、例えば、フェタ (Feta) ; 酸凝固チーズ、例えば、クリームチーズ、ネウフテャテル (Neufchatel) 、クアルグ (Quarg) 、コッテージチーズ (Cottage Cheese) およびクエソ・ブランコ (Queso Blanco) 。
【0059】
好ましい態様において、本発明は、パスタ・フィラタ (pasta filata) チーズ、例えば、モッザレラ (Mozzarella) およびピザ (Pizza) チーズを製造する方法に関する。通常、パスタ・フィラタ、またはストレッチド凝乳、チーズは、熱水中で新鮮な凝乳の独特な可塑化および混練処理により区別される。熱水は仕上げられたチーズにその特徴ある繊維質構造を付与し、そして溶融およびストレッチ性質を付与する。例えば、下記の文献を参照のこと: “Mozzarella and Pizza cheese”、Paul S. Kindstedt 著、Cheese: Chemistry, physics and microbiology、Vol. 2: Major Cheese groups、第2版、pp. 337-341、Chapman & Hall。
【0060】
配列表および寄託された微生物
この出願は配列表の形態で情報を含有し、これはこの出願に添付され、また、この出願に付随するデータキャリアで提出される。さらに、この出願において、寄託された微生物が言及されている。このデータキャリアおよび寄託された微生物の内容は、完全に引用することによって本明細書の一部とされる。
【0061】
生物学的材料の寄託
下記の生物学的材料はブタベスト条約の規定に従い下記に寄託された: Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen、ドイツ国ブラウンシュウェイグD-38124、マシェロデル・ウエグ1B、そして下記の受託番号が与えられた:
寄託物 受け入れ番号 寄託日
大腸菌 (E. coli) DSM 15441 2003年2月12日
大腸菌 (E. coli) DSM 15442 2003年2月12日
【0062】
材料および方法
培地および基質
培地YP+2%G
10 gの酵母エキス
20 gのペプトン
1リットルとする水
121℃において20分間オートクレーブ処理する。
100 mlの20%の無菌グルコース溶液を添加する。
【0063】
RA胞子形成緩衝液
50 gのコハク酸
12.1 gの硝酸ナトリウム
1 gのグルコース
20 mlの50×ボーゲル塩類 (Vogel’s salts) (Davis R. H. およびF. J. de Serres (1970) Meth. Enzymol. 17A: 79-143)
成分を1リットルの蒸留水中でブレンドし、滅菌濾過する。
【0064】
ブリットン・ロビンソン (Britton Robinson) 溶液
0.023 Mのリン酸
0.023 Mの酢酸
0.023 Mのホウ酸
NaOHまたはHClで滴定して必要なpHにする。
【0065】
方法
ホスホリパーゼ活性 (LEU)
レシチンを一定pHおよび温度において加水分解し、そしてホスホリパーゼ活性を遊離した脂肪酸の中和間の滴定剤 (0.1 N NaOH) の割合として決定する。
基質が大豆レシチン (L-α-ホスファチジル-コリン) であり、そして条件はpH 8.0、40.0℃、反応時間2分である。
【実施例】
【0066】
実施例1アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) におけるチューバー・アルビヅム (Tuber albidum) からのホスホリパーゼA2の発現
Soragni 他 (前掲) に開示されているDNA配列を使用して、ゲノムDNAからのTbSP1のPCR増幅のためのプライマーをデザインし、適当な制限部位をプライマー末端に付加してPCR生成物 (配列番号13および14) のクローニングを促進した。チューバー・アルビヅム (Tuber albidum) 株、CBS 272.72はCBS (Centraalbureau voor Schimmelcultures、オランダ国ウトレヒト) から入手し、そして培養物のリスト (1996) においてCBSが推奨するように、X-寒天上で20℃において培養した。菌糸体をプレート表面から除去し、製造業者の使用説明書に従い、FastDNA Spin Kit (BIO 101, Inc.、カリフォルニア州ヴィスタ) を使用して全DNAを単離した。
【0067】
製造業者の使用説明書に従いExtensor Hi-Fidelity PCR Master Mix (ABgene、英国サレイ) を使用し、そして最初の5サイクル間に52℃および最後の25サイクル間に62℃のアニリーング温度を使用して、PCR増幅を実施した。単一PCR生成物が得られ、配列を決定し、付加した合成制限部位を除外して配列番号9として提示する。このゲノム配列をE. Soragni 他が提示したcDNA配列と比較すると、単一イントロンが明らかになった。このイントロンを除去すると、チューバー・アルビヅム (T. albidum) CBS 272.72からのヌクレオチド配列は、E. Soragni 他が使用した株、チューバー・ボルキイ (T. borchii) ATCC 96540からのそれと92.5%同一である。チューバー・アルビヅム (T. albidum) CBS 272.72遺伝子配列から予測された対応するペプチドは、E. Soragni 他が報告したペプチド配列と93.8%同一である。
【0068】
標準技術を使用してPCRフラグメントをBamH1およびXhoIで制限し、アスペルギルス (Aspergillus) 発現ベクターpMStr57中にクローニングした。発現ベクターpMStr57はpCaHj483 (WO 98/00529) と同一のセグメントを含有し、アスペルギルス (Aspergillus) NA2プロモーターに小さい修飾がなされており、そして大腸菌 (E. coli) 中の選択および増殖およびアスペルギルス (Aspergillus) 中の選択および発現のための配列を有する。詳しくは、アスペルギルス (Aspergillus) における選択はアスペルギルス・ニヅランス (Aspergillus nidulans) のamdS遺伝子により促進され、この遺伝子は唯一の窒素源としてアセトアミドの使用を可能とする。
【0069】
アスペルギルス (Aspergillus) における発現は、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) からの修飾された中性アミラーゼII (NA2) プロモーター、およびアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) からのアミログルコシダーゼエンコーディング遺伝子からのターミネーターにより仲介され、前記プロモーターはアスペルギルス・ニヅランス (Aspergillus nidulans) からのトリオースリン酸イソメラーゼ (tpi) エンコーディング遺伝子の5’リーダー配列に融合されている。生ずるアスペルギルス (Aspergillus) 発現構築物、pMStr70、のホスホリパーゼA2エンコーディング遺伝子を配列決定し、この配列をクローニングされなかったPCRフラグメント、配列番号9について以前に決定された配列と比較した。単一のTからCへの突然変異は終結コドンの52塩基対下流に見出された。
【0070】
アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) を、下記の文献に記載されている標準的技術に従い、pMStr70で形質転換した: Christensen T. 他 (1988) 、Biotechnology 6、1419-1422。形質転換体を30℃において275 rpmで震蘯したYP+2%G培地中で培養し、そしてセイヨウショウロ (Tuber) ホスホリパーゼA2、TbPLA2、の発現をSDS-PAGEでモニターした。
【0071】
タンパク質の特性決定
SDS-PAGEにより、約25 kDaおよび約16 kDaの分子量の2つのバンドが明らかにされた。50 mMの酢酸塩緩衝液と平衡化したSP-セファローズカラム上のイオン交換クロマトグラフィーにより、上清を精製し、1 MのHCl pH 5.0で溶離した。2つのタンパク質は2つの別々の画分で溶出した。タンパク質濃度をタンパク質アッセイ(Protein Assay) ESL (Roche) で測定した。活性をLEUアッセイにより測定した。
【0072】
【表1】

【0073】
タンパク質をN-末端において配列決定した。プール1 (23〜25 kDaのバンド) のN-末端配列は、配列番号10のアミノ酸32〜50に対応することが見出された。プール2 (16 kDaのバンド) のブロッティングにおいて、それぞれアミノ酸86〜98および91〜103に対応するN-末端配列をもつ2つのバンドが明らかにされた。2つのバンドの質量分析により、それぞれ13934および14348 Daの2つのバンドが示され、これらは、それぞれ、配列番号10のアミノ酸86〜210および91〜210の配列から計算した5 Daの値と一致した。
【0074】
実施例2アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) において発現されたチューバー・アルビヅム (T. albidum) PLA2の2つの形態についての精製手順
チューバー・アルビヅム (T. albidum) PLA2を産生する実施例1に記載するアスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) 形質転換体のほとんどの発酵において、酵素の2つの形態が精製間に検出された。1つの形態はSDS-PAGEにおいて22〜23 kDaにおいて展開し、Soragni 他 (前掲) により報告されたペプチドに対応する。さらに、新しい形態が検出され、これはSDS-PAGEにおいて16〜17 kDaで展開し、そして高い比活性および高い等電点を有する。
【0075】
22〜23 kDaのペプチドの精製
アスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) 中で発現されたチューバー・アルビヅム (T. albidum) からのホスホリパーゼを含有する発酵上清 (実施例1において調製された) を、EKSフィルター (購入先: Seltz Schenk Bad Kreuznach、ドイツ国ワルドステッテンD-73550、ベットリンゲストラッセ42) で滅菌濾過した。
次いで、滅菌濾過した上清をpH 8に調節し、イオン強度を4 mSi以下に調節した。
【0076】
アニオン交換クロマトグラフィー
50 mlのFast flow Q TMセファローズカラム (購入先: Amersham Pharmacia) を使用するアニオン交換カラムにより、精製の第1工程を実施した。このカラムを50 MのTris酢酸塩緩衝液pH 8と前もって平衡化した。次いで滅菌濾過した発酵ブロスをこのカラムに適用し、すべての非結合物質が洗浄除去されるまで、カラムを同一緩衝液で洗浄した。
【0077】
1 Mの塩化ナトリウムpH 8を含有する同一緩衝液で流速5 ml/分において500 mlの全緩衝剤の最終体積に、結合したタンパク質を溶離した。各5 mlの画分を画分コレクターにより収集し、基質としてレシチン、L-α-ホスファチジル-コリン (購入先: Sigma、製品P-5638) を使用してすべての画分が含有するホスホリパーゼ活性を定量的にアッセイし、そしてNEFA Cキット (購入先: Wako Chemicals GmbH、ドイツ国ネウスス41468、ニッサンストラッセ2) を使用して活性をアッセイした。
【0078】
異なる緩衝液、例えば、50 mMの酢酸塩pH 5または50 mMのHepes pH 7または緩衝剤として2 mMのCaCl2および0.1%のトリトンX-100を含有する50 mMのTris酢酸塩pH 9 (購入先: Fluka chemicals) 中で、10 mg/mlのレシチン基質を含有する基質溶液を調製した。次いで基質を攪拌および50℃における加温により乳化し、次いで40℃に冷却し、基質として使用した。
【0079】
25 μlの酵素画分と40℃において20分間インキュベートした300 μlの基質乳濁液を使用して活性のアッセイを実施し、次いで製造業者が記載するように調製した300 μlのNEFA C色試薬Aに30 μlのアッセイ混合物を移し、37℃において10分間インキュベートし、600 μlの色試薬NEFA C B溶液を混合物に添加し、さらに10分間インキュベートした。次いで、発生した青色を505 nmにおいて分光計で測定した。
【0080】
タンパク質の特性決定
次いで活性を含有する画分をプールし、Novex Pre注型ゲル4〜20% Tris-グリシンゲル (購入先: Invitrogen Life Technologies、米国カリフォルニア州92008、カリスバッド) を使用するSDS-PAGE電気泳動により、分子量について特性決定した。
22〜23 kDaのタンパク質が検出され、これらをブロットし、そして配列決定装置 (Applied Biosystems) によりN-末端を解析した。
N-末端からの最初の19アミノ酸残基が決定され、配列番号10のアミノ酸32-50の配列を有することが見出された。
【0081】
16〜17 kDaのペプチドの精製
アスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) 中で発現されたチューバー・アルビヅム (T. albidum) ホスホリパーゼの滅菌濾過した発酵上清をpH 4.7に調節し、そしてイオン強度を4 mSi以下に調節した。
【0082】
カチオン交換クロマトグラフィー
SP-sepharose TM 高速流をAmersham Pharmaciaから購入した。50 mlのカラムを充填し、50 mlの酢酸塩緩衝液pH 4.7に対して平衡化し、次いで発酵上清をカラムに適用し、そして同一緩衝液を使用して非結合物質を洗浄した。
次いで1 Mの塩化ナトリウムを含有する50 mMの酢酸塩緩衝液pH 4.7を使用する線形塩勾配で、pIが高い結合タンパク質を溶離した。分画および流速は、低いpI形態のホスホリパーゼに使用したものに類似した。前述したようにNEFAキットを使用して、画分中のホスホリパーゼ活性を定量的にアッセイした。ホスホリパーゼ活性を含有する画分をプールし、前述したように、SDS-PAGEを実施した。
【0083】
16〜17 kDaのタンパク質が観測され、これは9以上の高い等電点を有した。
タンパク質をブロットした後、配列決定装置 (Applied Biosystems) によりN-末端を解析し、これによりSoragni 他 (前掲) により報告されたものと完全に異なるN-末端を示された。こうして、チューバー・アルビヅム (T. albidum) PLA2は異なるN-末端のプロセシングから誘導される2つの形態を有することが見出され、N-末端配列は配列番号10のそれぞれアミノ酸86-105および91-110に対応する。
【0084】
実施例3チューバー・アルビヅム (T. albidum) ホスホリパーゼを使用するチーズの製造
低温殺菌した、非均質化クリーム (North Carolina State University Dairy Plant) を使用して、500 gの低温殺菌した、非均質化スキムミルク (North Carolina State University Dairy Plant) を3.5%の脂肪に標準化し、こうして完全な脂肪のモッザレラ (mozzarella) チーズを製造した。各実験のためのチーズ乳を、実施例2に従い製造した16〜17 kDaのチューバー・アルビヅム (T. albidum) ホスホリパーゼ、または商業的ホスホリパーゼLecitase(商標)10L (Novozymes A/S、デンマーク国バグスバード) で処理し、35℃の水浴中に配置してその温度に平衡化した。チーズ乳の初期pHを測定し、そして0.01% (w/w) のスターター培養物を添加した。
【0085】
pH 6.4に到達するまで、pHをモニターした。250 μlのレンネット (Novozym 89L) を脱イオン水で9 mlの全溶液に希釈し、そしてチーズ乳を激しく3分間攪拌した。攪拌棒を除去し、そしてレンネット化乳を35℃において放置した。
【0086】
上記処理後、スパチュラを挿入すると、凝乳は切断される状態であり、鋭いへりが見られた。カッターを押し下げると同時にビーカー保持してカッターを急速に回転させることによって、チーズを切断し、最後にカッターを上昇させた。凝乳を5分間放置し、次いでスプーンでおだやかに攪拌した。間欠的におだやかに攪拌し - 45分間またはpHが6.0〜5.9に低下するまで、温度を41℃に上昇させた。チーズクロスを使用して凝乳を排水し、次いでビーカーに入れ、必要に応じて乳漿を注ぎ出しながら、水浴中で41℃に保持した。
【0087】
凝乳がpH 5.3に到達したとき、凝乳を含有するステンレス鋼製ボールを69℃の水浴中に5分間充満させ、次いで手で伸張させた。凝乳を冷たい氷水中で30分間調質した。チーズ凝乳をペーパータオルで乾燥させ、秤量し、一夜冷蔵した。
ホスホリパーゼを添加しない以外同一手順に従い、同一バッチの乳から、対照チーズを製造する実験を実施した。
【0088】
チーズ乳の全重量に関してストレッチ後の重量として、実際のチーズ収率を計算した。
湿分の標準的レベルに調節した実際の収率として、湿分調節したチーズの収率を表した。下記の式に従い、実際の収率および実際の湿分/標準的湿分の比を掛けることによって、湿分調節した収率を計算した:
Y調節 = Y実際 × (1 - M実際) / (1 - M標準的)
ここでY調節 = 湿分調節したチーズ収率、Y実際 = 実際のチーズ収率、M実際 = 実際の湿分分数およびM標準的 = 標準的湿分分数 (0.48) 。
【0089】
すべての実験および対照の湿分調節チーズ収率を表2に示す。
【表2】

【0090】
実施例4アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) 中でフザリウム・ベネナツム (Fusarium venenatum) からのホスホリパーゼ(FvPLA2) のクローニングおよび発現
フザリウム・ベネナツム (Fusarium venenatum) A3/5の細胞 (本来フザリウム・グラミネアラム (Fusarium graminearum) ATCC 20334として寄託され、そして最近下記によりフザリウム・ベネナツム (Fusarium venenatum) として再分類された: YoderおよびChristianson、1998、Fungal Genetics and Biology 23: 62-80; およびO’Donnell 他、1998、Fungal Genetics and Biology 23: 57-67) を、ボーゲル(Vogel) 最小培地 (Davis R. H. およびF. J. de Serres (1970) Meth. Enzymol. 17A: 79-143) 中で28℃において震蘯培養により2日間増殖させ、無菌のミラクロス (Miracloth) (Calbiochem、米国カリフォルニア州サンディエゴ) 上で濾過し、 「RA胞子形成培地」 に移し、ここでそれらを震蘯培養により28℃においてさらに24時間インキュベートした。
【0091】
細胞および胞子を遠心により収集し、溶菌し、RNAを抽出し、WO 00/56762に記載されている方法によりpZErO-2中にクローニングされたcDNAに転写した。増幅前のこのライブラリー中の独立クローンの数は2.5×105であり、それらのうちの92%は大きさ範囲550〜2500塩基対のインサートを含有した。ほぼ1000のランダムに選択したクローンについて部分的DNA配列を決定し、そしてWO 00/56762に記載されている方法により配列をコンピュータのデータベース中に記憶させた。
【0092】
TbSP1、チューバー・ボルキイ (Tuber borchii) からのホスホリパーゼA2をコードするcDNAのヌクレオチド配列、および対応するペプチドの翻訳はE. Soragni 他 (2001) により報告された。TFASTXYプログラム、バージョン3.3t06 (Person 他、1997) を使用して、この翻訳されたペプチド配列をフザリウム・ベネナツム (Fusarium venenatum) 部分的cDNA配列の翻訳と比較した。1つの翻訳されたフザリウム・ベネナツム (F. venenatum) 配列は、125アミノ酸のオーバーラップを通してTbSP1に対して42%の同一性を有するとして同定された。対応するクローン、FM0700のcDNAインサートの完全な配列を決定し、配列番号15として提示し、この配列から翻訳されたペプチドFvPLA2を配列番号16として提示する。
【0093】
この配列を使用して、FM0700からのFvPLA2をコードする遺伝子のPCR増幅のためのプライマーFvPLA1およびFvPLA2.2をデザインし、適当な制限部位をプライマー末端に付加してPCR生成物のサブクローニングを促進した。
FvPLA1: CTGGGATCCTCAAGATGAAGTTCAGCG
FvPLA2.2: GACCTCGAGACCCGCCATTTAAGATT
製造業者の使用説明書に従いExtensor Hi-Fidelity PCR Master Mix (Abgene、英国サレイ) を使用し、そして20サイクルについて52℃のアニリーング温度および60℃のエクステンション温度を使用して、PCR増幅を実施した。
【0094】
標準技術を使用してPCRフラグメントをBamH1およびXhoIで制限し、アスペルギルス (Aspergillus) 発現ベクターpMStr57中にクローニングした。発現ベクターpMStr57はpCaHj483 (WO 98/00529) と同一のセグメントを含有し、WO 01/12794中にベクターpMT2188について記載されているようにアスペルギルス (Aspergillus) NA2プロモーターに小さい修飾がなされており、そして大腸菌 (E. coli) 中の選択および増殖およびアスペルギルス (Aspergillus) 中の選択および発現のための配列を有する。詳しくは、アスペルギルス (Aspergillus) における選択はアスペルギルス・ニヅランス (Aspergillus nidulans) のamdS遺伝子により促進され、この遺伝子は唯一の窒素源としてアセトアミドの使用を可能とする。
【0095】
アスペルギルス (Aspergillus) における発現は、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) からの修飾された中性アミラーゼII (NA2) プロモーター、およびアスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger) からのアミログルコシダーゼエンコーディング遺伝子からのターミネーターにより仲介され、前記プロモーターはアスペルギルス・ニヅランス (Aspergillus nidulans) からのトリオースリン酸イソメラーゼ (tpi) エンコーディング遺伝子の5’リーダー配列に融合されている。生ずるアスペルギルス (Aspergillus) 発現構築物、pMStr77、のホスホリパーゼA2エンコーディング遺伝子を配列決定し、この配列はFM0700のインサートのために以前に決定された配列と完全に一致した。
【0096】
標準的技術 (T. Christensen 他、1988) を使用して、アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) 株BECh2 (WO 00/39322) をpMStr77で形質転換した。形質転換体を30℃において275 rpmで震蘯したYP+2%G培地中で培養し、そしてFvPLA2の発現をSDS-PAGEでモニターした。
フザリウム・ベネナツム (F. venenatum) からのホスホリパーゼをコードする遺伝子を含有する大腸菌 (Escherichia coil) の株はブタベスト条約の規定に従い下記に寄託された: Deutsche Sammlung von Microorganismen und Zellkulturen、ドイツ国ブラウンシュウェイグD-38124、マシェロデル・ウエグ1b。寄託日は2003年2月12日であり、そして受託番号はDSM 15442であった。
【0097】
実施例5FvPLA2の精製および配列の比較
50 mlの酢酸塩緩衝液pH 4.7と平衡化したSP-セファローズ細胞上のイオン交換クロマトグラフィーにより、実施例4の発酵からのFvPLA2を精製し、そして1 MのNaCl pH 4.7で溶離した。画分をSDS-PAGEで分析し、そして14 kDaのタンパク質を含有する画分をプールした。純粋なタンパク質の同一性をN-末端配列の決定により確認し、これは配列番号16のアミノ酸 (aa) 29-40からの配列と同一であった。さらに、ペプチドの質量を質量分析により決定した。なぜなら、SDS-PAGEから推定された見掛けの大きさ14 kDaは、配列番号16における理論的ペプチドのプロセシングにより予測されるそれよりも小さいからである。精製された活性なFvPLA2の質量は13336 Daであることが見出された。この分子量はC-末端における追加のプロセシングを示し、配列番号16におけるアミノ酸29-149が13335.66 Daの理論的質量を有するので、149と150との間の切断と一致する。
【0098】
プロセシングされた成熟ペプチド (配列番号16のアミノ酸29-149) を既知の配列と比較すると、最も密接な先行技術の配列がCOGENE植物病原性真菌および卵菌網 (Oomycete) ESTデータベース、バージョン1.2 (http://cogeme.ex.ac.uk/) からのユニシークエンス (Unisequence) ID: VD0100C34から翻訳されたベルチシリウム・ダヒリアエ (Verticillium dahliae) からのホスホリパーゼであることを示した (Soanes 他 (2002) Genomics of phytopathogenic fungi and the development of bioinformatic resources. Mol. Plant Microbe Interact. 15 (5) : 421-7) 。ベルチシリウム・ダヒリアエ (V. dahliae) 配列から予測された部分的ペプチドのプロセシングは、FvPLA2について見出されたプロセシングと比較することによって推定された。配列番号16のアミノ酸29-149とベルチシリウム・ダヒリアエ (V. dahliae) ホスホリパーゼの成熟ペプチドの推定された配列との間の同一性は、77%であると計算された。
【0099】
実施例6FvPLA2の物理的性質
触媒活性
実施例4のホスホリパーゼA2についてのLEUアッセイにより、酵素濃度の関数としてのホスホリパーゼ活性を決定した。結果を表3に示す。
【0100】
【表3】

【0101】
温度構造
5.3 μg/mlの濃度の酵素溶液について、温度の関数として酵素活性を測定した。結果を表4に示す。
【0102】
【表4】

【0103】
pH安定性
酵素をブリットン・ロビンソン (Britton Robinson) 緩衝液中に特定したpHにおいて30℃で30分間希釈した。水中にさらに希釈した後、触媒活性をLEUアッセイにおいて測定した。結果を表5に示す。
【0104】
【表5】

【0105】
熱安定性
酵素をブリットン・ロビンソン (Britton Robinson) 緩衝液中で、それぞれ、pH 3およびpH 10において、そして30%のソルビトールとともにpH 7において希釈した。特定した温度において30分間インキュベートした後、溶液を反応温度に冷却し、LEUアッセイにおいてアッセイした。結果を表6に示す。最高の測定された活性に関して、活性を記載する。
【0106】
【表6】

【0107】
実施例7FvPLA2を使用するチーズの製造
低温殺菌した、非均質化クリーム (North Carolina State University Dairy Plant) を使用して、500 gの低温殺菌した、非均質化スキムミルク (North Carolina State University Dairy Plant) を3.5%の脂肪に標準化し、こうして完全な脂肪のモッザレラ (mozzarella) チーズを製造した。
【0108】
各実験のためのチーズ乳を、実施例5に従い製造したフザリウム・ベネナツム (F. venenatum) ホスホリパーゼ (FvPLA2) 、または商業的ホスホリパーゼLecitase(商標)10L (Novozymes A/S、デンマーク国バグスバード) で処理し、35℃の水浴中に配置してその温度に平衡化した。チーズ乳の初期pHを測定し、そして0.01% (w/w) のスターター培養物を添加した。
pH 6.4に到達するまで、pHをモニターした。250 μlのレンネット (Novozym 89L) を脱イオン水で9 mlの全溶液に希釈し、そしてチーズ乳を激しく3分間攪拌した。攪拌棒を除去し、そしてレンネット化乳を35℃において放置した。
【0109】
上記処理後、スパチュラを挿入すると、凝乳は切断される状態であり、鋭いへりが見られた。カッターを押し下げると同時にビーカー保持してカッターを急速に回転させることによって、チーズを切断し、最後にカッターを上昇させた。凝乳を5分間放置し、次いでスプーンでおだやかに攪拌した。間欠的におだやかに攪拌し - 45分間またはpHが6.0〜5.9に低下するまで、温度を41℃に上昇させた。チーズクロスを使用して凝乳を排水し、次いでビーカーに入れ、必要に応じて乳漿を注ぎ出しながら、水浴中で41℃に保持した。
【0110】
凝乳がpH 5.3に到達したとき、凝乳を含有するステンレス鋼製ボールを69℃の水浴中に5分間充満させ、次いで手で伸張させた。凝乳を冷たい氷水中で30分間調質した。チーズ凝乳をペーパータオルで乾燥させ、秤量し、一夜冷蔵した。
ホスホリパーゼを添加しない以外同一手順に従い、同一バッチの乳から、対照チーズを製造する実験を実施した。
チーズ乳の全重量に関してストレッチ後の重量として、実際のチーズ収率を計算した。
湿分の標準的レベルに調節した実際の収率として、湿分調節したチーズの収率を表した。
【0111】
下記の式に従い、実際の収率および実際の湿分/標準的湿分の比を掛けることによって、湿分調節した収率を計算した:
Y調節 = Y実際 × (1 - M実際) / (1 - M標準的)
ここでY調節 = 湿分調節したチーズ収率、Y実際 = 実際のチーズ収率、M実際 = 実際の湿分分数およびM標準的 = 標準的湿分分数 (0.48) 。
すべての実験および対照の湿分調節チーズ収率を表7に示す。
【0112】
【表7】

【0113】
実施例8FvPLA2を使用するチーズの製造
乳を72℃において15秒間低温殺菌し、次いで10℃以下に冷却した。乳をクリームで2.4%の脂肪に標準化した。標準化した後、乳を熱交換器中で34.5℃の前熟成温度に予熱した。150 kgの乳を各チーズ大桶に注入し、15 gの培養物 (F-DVS ST-M6) を添加した。実施例5からのホスホリパーゼを5 LEU/gの脂肪の投与量で添加し、そして乳を34.5℃において1時間インキュベートした。レンネット (Chy-Max Plus、200 IMCU) を添加し、攪拌を4分以下の時間続けた。
【0114】
ほぼ60分後、凝固物は10 mmのナイフで切断される状態となったと判断された。攪拌機を大桶に戻し、10分後、30分以内に41℃の温度に上昇させることによって、煮えたぎりが開始した。41℃に到達した後、さらにほぼ20分間攪拌し、このとき0.15〜0.16%の滴定可能な酸性度に到達した。凝乳を大桶中で沈降させ、そして乳漿を排出した。凝乳を均一なブロックに切断し、ブロックを回転させ、2つに積み重ねた。引き続いて、10分の間隔で、ブロックを回転させ、2つの積み重ねで保持した。pH 5.15〜5.20において、凝乳を微粉砕機で微粉砕した。凝乳片に2%の塩 (重量/重量) を添加した。
【0115】
微粉砕後、70リットルの74℃に予熱した水を含有するストレッチャー中に、すべての凝乳を添加した。約20リットルの熱水を上部チャンバーに移し、そしてチーズを添加する。凝乳温度が62℃に到達したとき、ストレッチングを停止し、そして凝乳を押出機へ動かした。チーズを各々が2.3 kgの8〜9のチーズ塊に押出し、5〜7℃の水中で20分間冷却した。20分間の冷却後、チーズを飽和ブラインへ動かし、5〜6℃において1.5時間ブライン処理した。120 kgの水、塩を22ボーメに添加する、750 gのCaCl2 (34%の溶液) をブレンドしてブラインを調製し、pH 5.1に調節した。ブライン処理後、各チーズを約30分間乾燥し、秤量した後、真空包装した。冷たい室中で1数週貯蔵した後、試料を採取してpHを測定し、組成 (湿分、塩、脂肪およびタンパク質) を分析した。
実際の収量 (AY) チーズ中の48%の湿分に調節した:
調節収量 = AY × (100 - 湿分%) / (100-48)
【0116】
【表8】

【0117】
実施例9アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) におけるアスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) PLA2 (AoPLA2) の過剰発現
培地
DAP2C-1
11 gのMgSO4・7H2O
1 gのKH2PO4
2 gのクエン酸、一水和物
30 gのマルトデキストリン
6 gのK3PO4・3H2O
0.5 gの酵母エキス
0.5 mlの微量金属溶液
1 mlのPluronic PE 6100 (BASF、ドイツ国ルドウィグシャフェン)
【0118】
成分を1 リットルの脱イオン水中で配合し、フラスコに少しずつ出し、250 mgのCaCO3を各150 mlの部分に添加する。
この培地をオートクレーブ中で滅菌する。冷却した後、下記の成分を1リットルの培地に添加する:
23 mlの50% w/vの(NH4)2PO4、濾過滅菌した
33 mlの20% 乳酸、濾過滅菌した
【0119】
微量金属溶液
6.8 gのZnCl2
2.5 gのCuSO4・5H2O
0.24 gのNiCl2・6H2O
13.9 gのFeSO4・7H2O
8.45 gのMnSO4・H2O
3 gのクエン酸、一水和物
成分を1 リットルの脱イオン水中で配合する。
【0120】
アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) からのホスホリパーゼA2をコードするcDNAのクローニングおよび部分的配列決定はWO 00/56762に記載されている。クローンAS3812の完全な配列は配列番号6に記載されている。
この配列を使用してプライマーAoPLA1をデザインした。このプライマーは、AS3812からのPLA2エンコーディング遺伝子のPCR増幅においてベクタープライマーpYESrevとともに使用し、制限部位を付加してPCR生成物のサブクローニングを促進した:
AoPLA1: TGAGGATCCATCATGAAGAACATCTTCG
PYESrev: gggcgtgaatgtaagcgtgac
【0121】
製造業者の使用説明書に従いExtensor Hi-Fidelity PCR Master Mix (ABgene、英国サレイ) を使用し、そして最初の5サイクルについて52℃および最後の25サイクルについて62℃のアニリーング温度、および1.5分のエクステンション時間を使用して、PCR増幅を実施した。
【0122】
標準技術を使用してPCRフラグメントをBamH1およびXhoIで制限し、アスペルギルス (Aspergillus) 発現ベクターpMStr57 (実施例1に記載する) 中にクローニングした。生ずるアスペルギルス (Aspergillus) 発現構築物、pMStr71、のホスホリパーゼエンコーディング遺伝子を配列決定し、この配列はAS3812のインサートのために以前に決定された配列と完全に一致した。
【0123】
標準的技術 (T. Christensen 他、1988) を使用して、アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) 株BECh2 (WO 00/39322) をpMStr71で形質転換した。形質転換体を37℃において4日間270 rpmで震蘯したDAP2C-1培地中で培養し、そしてホスホリパーゼの発現をSDS-PAGEでモニターした。
【0124】
実施例10精製およびペプチドプロセシングの決定
実施例9の発酵からのアスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) ホスホリパーゼを0.22 μの滅菌フィルターSeltz-EKS (購入先: Pall Corporation、Pall SeitzSchenk Filter Systems GmbH、ドイツ国バッド・クレウズナーハD-55543、ピアニゲルストラッセ137) に通して濾過した。次いで滅菌濾過した溶液を希薄酢酸でpH 4.7に調節した。次いで発酵上清のイオン強度を調節して、塩濃度を低くし、そしてイオン強度を4 mSi以下にした。SPセファローズ高速流マトリックス (購入先: Amersham-Pharmacia、スウェーデン国) を使用するカチオン交換クロマトグラフィーにより、必要なPLA2タンパク質を精製した。
【0125】
XK26カラム (購入先: Amersham Pharmacia) にカチオン交換マトリックスを充填し、50 mMの酢酸ナトリウム緩衝液pH 4.7 (緩衝液A) で洗浄し、前平衡化した。次いでpHおよびイオン強度を調節した、必要なPLA2を含有する発酵上清をカラムに適用した。次いで画分コレクター装置に取り付けられたUVモニターで監視して、すべてUV吸収性物質が洗浄除去されるまで、非結合物質を緩衝液Aで洗浄した。50 mMの酢酸ナトリウム緩衝液pH 4.7中に塩として1 Mの塩化ナトリウムを含有する緩衝液Bを使用する線形塩勾配で、結合したタンパク質を溶離した。1モルの塩濃度に到達する線形勾配の全体積は約500 ml (10カラム体積) であった。
【0126】
溶離の間に、各10 mlの画分を収集した。基質としてレシチン (購入先: Sigma chemicals) を使用して、すべての画分をホスホリパーゼ活性についてアッセイした。ホスホリパーゼとのインキュベーションでレシチンから解放された脂肪酸をNEFA Cキット (入手先: Waco chemicals) で検出した。次いで標準的SDS-PAGE技術を使用して、タンパク質の純度により、ホスホリパーゼ活性を含有する画分をチェックした。分子量標準 (Amersham-Pharmacia) に対する比較により決定して、約16 kDaの分子量を示す必要なPLA2の単一バンドを含有する画分をプールした。
【0127】
配列番号7のアミノ酸 (aa) からの配列と同一であるN-末端配列を決定することによって、純粋なタンパク質の同一性を確認した。さらに、ペプチドの質量を質量分析により決定した。精製された活性アスペルギルス (Aspergillus) PLA2は2つの質量、14114および14242 Daを与えた。これらの分子量は、C-末端における追加のプロセシングを示し、配列番号7におけるアミノ酸37-121からのペプチド配列が14114.11 Daの理論的質量を有するので、121と122との間の切断と一致し、そしてアミノ酸122と123との間の切断を示し、14242.29 Daの理論的質量を有するアミノ酸37-123からのペプチド配列を予測する。
【0128】
実施例11アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) およびフザリウム・ベネナツム (Fusarium venenatum) からの不完全にプロセシングされたホスホリパーゼの発現
N-およびC-末端の両方におけるアスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) PLA2 (AoPLA2) およびフザリウム・ベネナツム (Fusarium venenatum) PLA (FvPLA2) のプロセシングは単一または複数の塩基性残基 (lysまたはarg) において起こり、Kexin様マツラーゼの切断部位に典型的であり、これらはしばしばプロペプチドのプロセシングを原因とする (Jalving R. 他 (2000) Appl. Environ. Microbiol. 66: 363-368) 。AoPLA2およびFvPLA2の活性に対するプロセシングの効果を決定するために、アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) のKexin欠失株において酵素を発現させた。次いでプロセシングをSDS-PAGEで評価し、そして野生型およびKexin欠失バックグラウンドの両方においてAoPLA2およびFvPLA2を発現する株の培養物について、ホスホリパーゼ活性を測定した。
【0129】
この分野において確立された方法、例えば、WO 98/12300および米国特許第6,013,452号に記載されている方法により、アスペルギルス・オリゼ (A. oryzae)(EMBL-AB056727) のkexB遺伝子を崩壊させることによって、アスペルギルス・オリゼ (Aspergillus oryzae) のKexin欠失株 (kexB-) を構築した。サザンブロット分析により、そしてKexBが成熟の原因となるペプチドの発現をモニターすることによって、kexBの崩壊を確認した。実施例9に記載されているAoPLA2発現構築物、および実施例4に記載されているFvPLA2発現構築物で、kexB- 株を形質転換した。実施例9および4に記載されている両方のAoPLA2およびFvPLA2についてのkexB+ 発現株、および対照として非形質転換と一緒に、これらの株をYP+2%G中で30℃において発酵させた。AoPLA2発現株を200 rpmで4日間震蘯したが、FvPLA2発現株を275 rpmで3日間震蘯した。ホスホリパーゼの発現およびプロセシングをSDS-PAGEにより評価した。
【0130】
SDS-PAGE分析において、AoPLA2は両方のkexB+ 株およびkexB- 株において明確な単一バンドとして分離された。kexB+ 株中で発現させたとき、AoPLA2は約16 kDaにおいて展開し、完全にプロセシングされたAoPLA2 (実施例10) について初期に観測された移動と一致したが、kexB- 株において、AoPLA2は約27〜28 kDaにおいて展開し、プロセシングの欠如および不完全なプロセシングと一致した。kexB+ 株中で発現させたとき、FvPLA2は17 kDaおよび14 kDaの見掛け分子量の2つのバンドとして分割された。
【0131】
14 kDaのバンドは完全にプロセシングされたペプチド (実施例5) に対応するが、17 kDaのペプチドは部分的にプロセシングされた形態である。kexB- 株中で発現させたとき、FvPLA2は約18〜19 kDaにおけるバンドとして展開し、この大きさは不完全なプロセシングと一致した。非形質転換株からの対照試料のいずれにおいても、同様なバンドは見られなかった。相対的バンド強度は、kexB- 株におけるAoPLA2の発現がkexB+ 株におけるそのレベルの1/5〜1/10であったが、kexB- 株におけるFvPLA2の発現がkexB+ 株におけるそのレベルの1/2と同一であったことを示唆する。
【0132】
各株により産生されたホスホリパーゼ活性をLEUアッセイにおいて測定し、表9に示す。
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発現された真菌ペプチドをプロセシングしてC-末端からペプチドおよび/またはN-末端からペプチドを切除して、ホスホリパーゼ活性をもつコアペプチドを生成せしめることを含んで成るホスホリパーゼの製造方法において、当該コアペプチドが、
a) 配列番号1のアミノ酸146-153、配列番号3のアミノ酸87-94、または配列番号12のアミノ酸79-86により与えられるアミノ酸配列、あるいは単一アミノ酸の他のアミノ酸による置換を除外してこれらのアミノ酸配列のいずれかと同一である配列;および
b) 上記 a) に記載の配列のN-末端側に位置する少なくとも2つのシステイン残基;および
c) 上記 a) に記載の配列のC-末端側に位置する少なくとも2つのシステイン残基;
を含んでなる、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記発現されたペプチドをコードするDNAで形質転換された糸状菌宿主細胞において、発現されたペプチドを発現させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記宿主細胞がアスペルギルス (Aspergillus) 、フザリウム (Fusarium) またはトリコデルマ (Trichoderma) 、特にアスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) 、アスペルギルス・ニガー (A. niger) 、フザリウム・ベネナツム (F. venenatum) またはトリコデルマ・リーセイ (T. reesei) である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記発現されたペプチドをin vivo で宿主細胞によりプロセシングする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記コアペプチドが100〜150アミノ酸の長さを有する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ホスホリパーゼが、プロセシング前の発現されたペプチドの活性の少なくとも2倍である比ホスホリパーゼ活性を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記発現されたペプチドが、セイヨウショウロ (Tuber) 、ベルチシリウム (Verticillium) 、ニューロスポラ (Neurospora) 、アスペルギルス (Aspergillus) 、またはヘリコスポルム (Helicosporum) 、特にチューバー・ボルキイ (T. borchii) 、チューバー・アルビヅム (T. albidum) 、ベルチシリウム・ダヒリアエ (V. dahliae) 、ベルチシリウム・テネルム (V. tenerum) 、ニューロスポラ・クラッサ (N. crassa) 、アスペルギルス・オリゼ (A. oryzae) 、またはヘリコスポリウム (Helicosporium) 種HN1に由来する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
完全な発現されたペプチド配列を、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10、および配列番号12に記載される配列と同時に整列させるとき、配列番号1のアミノ酸97-101と整列する配列のN-末端側の0〜18アミノ酸内で発現されたペプチドが切断される、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
完全な発現されたペプチド配列を、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号10、および配列番号12に記載される配列と同時に整列させるとき、配列番号1のアミノ酸204-209と整列する配列のC-末端側の0〜11アミノ酸内で発現されたペプチドが切断される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記発現されたペプチドがKex2プロセシング部位の10アミノ酸内でまたはFG配列の11アミノ酸内でまたは両方内で切断される、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の方法により製造されたホスホリパーゼとリン脂質と接触させることを含んでなる、リン脂質を加水分解する方法。
【請求項12】
チーズ乳またはチーズ乳の画分をホスホリパーゼと接触させることを含んでなるチーズの製造方法において、前記ホスホリパーゼが、
a) 配列番号1のアミノ酸146-153、配列番号3のアミノ酸87-94、または配列番号12のアミノ酸79-86により与えられる配列、あるいは単一アミノ酸の他のアミノ酸による置換を除外してこれらのアミノ酸配列のいずれかと同一である配列;および
b) 上記 a) に記載の配列のN-末端側に位置する少なくとも2つのシステイン残基;および
c) 上記 a) に記載の配列のC-末端側に位置する少なくとも2つのシステイン残基;
を含んでなる、ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載のホスホリパーゼとチーズ乳またはチーズ乳の画分を接触と接触させることを含んでなる、チーズの製造方法。
【請求項14】
配列番号10 (チューバー・アルビヅム (T. albidum)) のアミノ酸91〜210、配列番号1 (チューバー・ボルキイ (T. borchii) のアミノ酸92〜211、配列番号12 (ベルチシリウム・テネルム (V. tenerum)) のアミノ酸30〜137、配列番号3 (ベルチシリウム・ダヒリアエ (V. dahliae)) のアミノ酸38〜145、配列番号4 (ニューロスポラ・クラッサ (N. crassa)) のアミノ酸44〜151、配列番号7 (アスペルギルス・オリゼ (A. oryzae)) のアミノ酸37〜157、または配列番号8 (ニューロスポラ・クラッサ (N. crassa)) のアミノ酸58〜168と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドであるホスホリパーゼ。
【請求項15】
下記のいずれかのポリペプチド:
a) 大腸菌 (Escherichia coil) 受託番号DSM 15442中に存在するプラスミド中にクローニングされたDNA配列のホスホリパーゼコード部分によりコードされたポリペプチド;あるいは
b) 配列番号16のアミノ酸29-149のアミノ酸配列、または1または2以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または挿入によりそれから得ることができるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド;あるいは
c) 下記を満足する上記 (a) または (b) に規定されるポリペプチドのアナローグ:
i) 前記ポリペプチドと少なくとも80%の同一性を有するか、または
ii) 精製された形態の前記ポリペプチドに対して発生した抗体と免疫学的に反応性であるか、または
iii) 前記ペプチドのアレレ変異型である;あるいは
d) 成熟ポリペプチドをコードする配列番号15の核酸133-495の核酸配列の相補的鎖または少なくとも100ヌクレオチドを有するそのサブ配列と低ストリンジェンシイ条件下にハイブリダイゼーションする核酸配列によりコードされるポリペプチド;
を含んで成るホスホリパーゼ。
【請求項16】
フザリウム (Fusarium) の株、特にフザリウム・ベネナツム (F. venenatum) に対して生来的である、請求項15に記載のホスホリパーゼ。
【請求項17】
請求項15または16に記載のホスホリパーゼをコードする核酸配列を含んでなる核酸配列。
【請求項18】
下記の配列:
a) 大腸菌 (Escherichia coil) 受託番号DSM 15442中に存在するプラスミド中にクローニングされた成熟ホスホリパーゼをコードする部分的DNA配列;あるいは
b) 配列番号15の核酸133-495の成熟ホスホリパーゼをコードする部分的DNA配列;
c) ホスホリパーゼをコードする上記a) またはb) において規定された配列のアナローグ、前記アナローグは下記を満足する:
i) 前記DNA配列と少なくとも80%の同一性を有するか、または
ii)前記DNA配列の相補的鎖または少なくとも100ヌクレオチドを有するそのサブ配列と低ストリンジェンシイ条件下にハイブリダイゼーションする、または
iii)それらのアレレ変異型である;あるいは
d) 上記 a) 、b) またはc) の相補的鎖;
を含んで成る核酸。
【請求項19】
適当な発現宿主におけるホスホリパーゼの発現を指令することができる1または2以上の制御配列に作用可能に連鎖された請求項17または18に記載の核酸配列を含んでなる核酸構築物。
【請求項20】
請求項19に記載の核酸構築物、プロモーター、および転写および翻訳の停止シグナルを含んでなる組換え発現ベクター。
【請求項21】
請求項20に記載の核酸構築物を含んでなる組換え宿主細胞。
【請求項22】
ホスホリパーゼの産生を促進する条件下に請求項21に記載の宿主細胞を培養し、そしてホスホリパーゼを回収することを含んでなる、ホスホリパーゼを製造する方法。
【請求項23】
請求項15に記載のホスホリパーゼを練り粉に添加することを含んでなる、練り粉または練り粉から作られた焼かれた製品を製造する方法。
【請求項24】
請求項15に記載のホスホリパーゼを含んでなる練り粉組成物。
【請求項25】
界面活性剤と、請求項15に記載のホスホリパーゼとを含んでなる洗剤組成物。
【請求項26】
水の存在下に植物油を請求項15に記載のホスホリパーゼと接触させ、次いで水性相を油から分離するを含んでなる、植物油中のリン含有率を減少させる方法。
【請求項27】
乳製品組成物をホスホリパーゼで処理し、そして前記乳製品組成物からチーズを製造することを含んでなり、ここでホスホリパーゼは請求項15に記載のホスホリパーゼである、チーズの製造方法。
【請求項28】
乳製品組成物をホスホリパーゼで処理し、そして前記乳製品組成物からチーズを製造することを含んでなり、ここでホスホリパーゼは真菌/細菌グループXIII PLA2のホスホリパーゼの群から選択される、チーズの製造方法。

【公開番号】特開2010−172343(P2010−172343A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−95997(P2010−95997)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【分割の表示】特願2006−504363(P2006−504363)の分割
【原出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【出願人】(503260310)セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ (23)
【Fターム(参考)】