説明

ホスホリパーゼA2を阻害する組成物および方法

本発明は、様々な新規な置換ジペプチド誘導性窒素含有複素環式化合物、その薬学的に許容され得る塩誘導体、およびその使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、35U.S.C.§119(e)の下で、2005年12月29日に出願された表題「Compositions and Methods for Synthesizing Novel Heterocyclic Therapeutics」の米国仮特許出願第60/755,631号;2005年12月29日に出願された表題「Compositions and Methods for Treatment and Prevention of Disease」の米国仮特許出願第60/755,632号;および2005年12月29日に出願された表題「Compositions and Methods for the Inhibition of Phospholipase A2」の米国仮特許出願第60/755,626号の利益を主張するものであり、それらは全て本明細書に参考として援用される。
【0002】
本発明は、2006年12月22日に出願された米国非仮特許出願「Compositions and Methods for the Treatment and Prevention of Disease」(Express Mail No.:EV 902583365 US)および2006年12月22日に出願された「Compositions and Methods for Synthesizing Heterocyclic Therapeutic Compounds」(Express Mail No.:EV 902583374 US)に関し、それらは両者とも、本明細書に参考として援用される。
【0003】
発明の分野
本発明は、ホスホリパーゼA2(PLA2)の阻害に有用な7および8員環ジペプチド誘導性窒素含有複素環式化合物、ならびに薬学的に許容され得るその塩に関する。加えて本発明は、PLA2酵素の阻害、患者の炎症の治療もしくは予防、またはその両方に有用な組成物に有用な組成物に関する。
【0004】
背景
ホスホリパーゼA2酵素(PLA2)は、リン脂質の加水分解を触媒して、遊離脂肪酸およびリゾリン脂質を放出する酵素である。この酵素反応は、プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン、血小板活性化因子、リポキシンまたはリゾホスファチド酸のような様々な生理学的および病理生理学的工程に関与する脂質の産生において必須である。PLA2は、細胞内酵素(例えば、カルシウム依存性群IV PLA2およびカルシウム非依存性群VI PLA2)および分泌性PLA2(sPLA2)の2群に分別することができる、Ca2+依存性触媒活性を備えた低分子量タンパク質である。今日まで、12種のホ乳類sPLA2が同定され、3種の主な構造集団:群I/II/V/X、IIIおよびXIIに分類された。
【0005】
sPLA2活性の顕著な上昇が、敗血症性ショック、慢性関節リウマチ、急性膵臓炎、多発外傷、鎌状赤血球病患者における急性胸部症候群、および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の気管支肺胞洗浄(BAL)の血清において検出されたが、生理−病理学的工程におけるsPLA2の厳密な機能は、定かでない。GIIAは、グラム陽性菌膜を加水分解する際に非常に強力であり、微生物からの宿主防御に関与し得ると考えられている。重要なこととして、高濃度のhGIIAが、免疫特権器官である目において見出されている。
【0006】
多くの重要な生理学的および病理学的状態でのPLA2機能に関連付ける研究が増え続けている。そのためPLA2阻害剤の開発は、PLAの機能的および病理生理学的役割の研究および更なる解明だけでなく、PLA2機能が関与する状態(例えば炎症疾患)の処置用の治療薬を開発するためにも不可欠であろう。
【0007】
PLA2の機能様式(即ち、酵素活性の阻害、M型受容体の配位子へのアロステリック変化の導入)の一方を分別し得る治療薬を設計および開発すること、あるいは両方の様式に影響を与えてsPLA2機能全てを阻害する治療薬を開発することも求められている。
【0008】
発明の概要
本発明は、患者の疾患を治療および/または予防するのに有効な化合物、およびその化合物を合成する方法に関する。一つの態様において、本発明は、本発明の方法を用いて合成された新規なジペプチド誘導性複素環式化合物に関する。本発明は、前記化合物を効果的な量含む医薬組成物、およびそれらを必要とする患者に投与することを含む治療方法にも関する。
【0009】
一つの態様において、本発明は、式I:
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、
Wは、−C(R)(R5a)−;−C(R)(R6a)−C(R)(R7a)−;−C(R)=C(R)−;−N(R10)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構成部分であり;
Xは、−N(R1a)C(=Y)N(R)−;−OC(=Y)N(R)−;−N(R1a)C(=Y)O−;−N(R1a)S(=O)N(R)−;−N(R1a)S(=O)N(R)−;−C(R1a)(R3a)C(=Y)N(R)−およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構成部分であり;
YおよびZは、それぞれ互いに独立して、酸素(「O」)および硫黄(「S」)からなる群から選択される構成部分を表し;そして
、R1a、R、R、R3a、R、R、R5a、R、R6a、R、R7a、R、RおよびR10は、それぞれ互いに独立して、水素原子;アミノ酸側鎖;(C1〜C10)アルキル;(C1〜C10)アルケニル;(C1〜C10)アルキニル;(C5〜C12)単環式または二環式アリール;(C5〜C14)単環式または二環式アラルキル;単環式または二環式(C5〜C14)ヘテロアラルキル;ならびにN、O、SおよびPから選択されるヘテロ原子を5個まで有する(C1〜C10)単環式または二環式ヘテロアリール基からなる群から選択される構成部分を表し、前記基は、非置換であるか、またはハロゲン原子、NO、OH、アミジン、ベンズアミジン、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、アルコキシ、(C1〜C4)、アミノ、ピペラジン、ピペリジン、ジアルキルアミノ、グアニジン基、ビスアルキル化またはビスアシル化グアニド基、カルボン酸、カルボキサミド、エステル、ヒドロキサム酸、ホスフィン酸、ホスホナート、ホスホンアミダート、スルフヒドリルおよびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から更に選択される置換基1〜6個により置換されていてもよい)で示される新規なジペプチド誘導性複素環式化合物の合成方法に関する。
【0012】
好ましい実施形態のいずれかにおいて、本発明は、先の式により記載されたジペプチド誘導性複素環式化合物の、遊離塩基または酸形態およびそれらの塩を包含する。本発明は、先の式で記載された化合物の光学異性体、類似体および誘導体も包含する。本発明の更なる実施形態において、単一の製造工程、組合せまたは相互交換から得られる鏡像異性体および/またはジアステレオ異性体の混合物が包含される。本発明の更なる実施形態において、式Iにより記載される化合物は、薬学的に許容され得る形態に含まれ、場合により少なくとも1つの他の成分、例えば、適切な担体、賦形剤、別の薬学活性成分またはそれらの組み合わせを包含する。
【0013】
本発明は、上記類似体および誘導体のプロドラッグ形態も提供するが、そのプロドラッグは、インビボで代謝されて先に示された類似体または誘導体を製造する。事実、上記類似体または誘導体の幾つかは、別の類似体または誘導体のプロドラッグであってもよい。
【0014】
用語「プロドラッグ」は、当該技術分野で十分に理解されており、ホ乳類系において本発明の薬学活性化合物に変換される化合物を包含する。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 1980, vol. 16, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 61 and 424を参照されたい。
【0015】
本発明の別の態様において、上記化合物を含む組成物が提供される。好ましくは該組成物は、適切な担体または賦形剤を含むことにより、医薬使用または農業使用に適するように配合される。
【0016】
本発明の更に別の態様において、疾患を治療および/または予防するために、本明細書に記載された化合物の薬学的に許容され得る形態の適切な量を、必要とするホ乳類(例えばヒト)に投与する方法が提供される。実施形態の一つにおいて、本発明は、PLA2酵素を阻害する方法を含む。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、炎症疾患を治療および/または予防するために、本明細書に記載された化合物の薬学的に許容され得る形態の適切な量を、必要とするホ乳類に投与する方法を含む。
【0018】
本発明の系、方法および工程に関連する更なる有利な特徴および機能性は、以下の詳細な説明から明白となろう。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明の化合物、組成物および方法を説明する際、以下の用語は、他に断りがない限りは以下の意義を有する。
【0020】
「薬学的に許容され得る塩」は、親化合物の生物学的有効性および特性を保持し、投与される用量として生物学的にも他についても有害でないそれらの塩を意味する。本発明の化合物は、それぞれアミノ基およびカルボキシ基の存在により酸塩および塩基塩の両方を形成することができる。薬学的に許容され得る塩基付加塩は、無機および有機塩基から製造してもよい。無機塩基から誘導される塩としては、非限定的に、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩が挙げられる。有機塩基から誘導される塩としては、非限定的に、第1級、第2級および第3級アミン、置換アミン(天然置換アミンなど)および環状アミンの塩、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジンおよびN−エチルピペリジンの塩が挙げられる。他のカルボン酸誘導体(例えば、カルボキサミド、低級アルキルカルボキサミド、ジ(低級アルキル)カルボキサミドなどのカルボン酸アミドなど)が、本発明の実践に有用であることも理解すべきである。
【0021】
薬学的に許容され得る酸付加塩は、無機および有機酸から製造されてもよい。無機酸から誘導される塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。有機酸から誘導される塩としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。
【0022】
本明細書で用いられる用語「処置」は、動物、特にホ乳類、より特にヒトの状態または疾患の処置を包含し、
(i)疾患に罹り易いがまだ罹っていると診断されていない対象において、疾患または状態が起こるのを防ぐこと;
(ii)疾患もしくは状態を阻害すること(即ち、発症を阻止すること);疾患もしくは状態を緩和すること(即ち、状態を緩解させること);または疾患により生じた状態(即ち、疾患の症状)を緩和すること、
を包含する。
【0023】
用語「薬学上効果的な量」は、そのような処置を必要とするホ乳類に投与する際の、本明細書に定義された処置を実行するのに十分な量を指す。薬学上効果的な量は、処置される対象および疾患状態、病気の重症度ならびに投与の手段に応じて変動し、当業者により日常的に決定されてもよい。
【0024】
「複素環」は、炭素原子を4〜9個有し、N、OまたはSからなる群から選択されるヘテロ原子を少なくとも1個有する複素環基を指す。
【0025】
「アルキル」は、炭素原子を1〜6個有する分枝状または非分枝状アルキル基、炭素原子を1〜6個有する分枝状または非分枝状アルケニル基、炭素原子を1〜6個有する分枝状または非分枝状アルキニル基を指す。
【0026】
「ヒドロキシル」は、有機化合物中の置換基であるなら、官能基:−OHを指す。
【0027】
「複素環基」は、アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシ、カルボキシアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、SO−アリール、オキソ(=O)、および−SO−ヘテロアリールからなる群から選択される置換基1〜5個、好ましくは1〜3個で場合により置換されていてもよい。そのような複素環基は、単環または多環式縮合環を有していてもよい。好ましい複素環としては、モルホリノ、ピペリジニルなどが挙げられる。
【0028】
窒素系複素環およびヘテロアリールの例としては、非限定的に、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、モルホリノ、ピペリジニル、テトラヒドロフラニルなど、およびN−アルコキシ窒素含有複素環が挙げられる。
【0029】
用語「チオール」は、基:−SHを指す。
【0030】
用語「チオアルコキシ」は、基:−S−アルキルを指す。
【0031】
「アミノ酸」は、アミノ酸官能基およびカルボン酸官能基の両方を含むいずれかの分子を指し、D、LまたはDL形態の天然アミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、TyrおよびVal)のいずれかを包含する。天然アミノ酸の側鎖は、当該技術分野で周知であり、例えば、水素(例えば、グリシン中など)、アルキル(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン中など)、置換アルキル(例えば、トレオニン、セリン、メチオニン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニンおよびリジン中など)、アルカリール(例えば、フェニルアラニンおよびトリプトファン中など)、置換アリールアルキル(例えば、チロシン中など)、およびヘテロアリールアルキル(例えば、ヒスチジン中など)が挙げられる。
【0032】
「アミジン」は、同一炭素原子に結合した2個のアミン基を有し、炭素−窒素二重結合を1個有する官能基:HN=CR’−NH”2を指す。
【0033】
「アルコキシル」は、酸素に結合したアルキル基、つまりR−O−(式中、Rは、アルキルである)を指す。
【0034】
「置換アルキル」は、炭素原子を1〜10個有し、ヒドロキシル、メルカプト、カルビルメルカプト、ハロゲン、カルビルオキシ、アミノ、アミド、カルボキシル、シクロアルキル、スルホまたはアシルからなる群から選択される置換基1個以上により置換された分枝状または非分枝状アルキル、アルケニルまたはアルキニル基を指す。これらの置換基の一般群は、本明細書に定義された対応する基の定義と同一の意義を有する。
【0035】
「ハロゲン」は、フッ素、臭素、塩素、およびヨウ素原子を指す。
【0036】
「アシル」は、基:−C(O)R(式中、Rは、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アリールアルキル、置換アリールアルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキルであるが、これらの一般群は、この説明で定義された対応する基の定義と同一の意義を有する)を示す。
【0037】
「アシルオキシ」は、基:−OAc(式中、Acは、アシル、置換アシル、ヘテロアシルまたは置換へテロアシルであるが、これらの一般群は、この説明で定義された対応する基の定義と同一の意義を有する)を示す。
【0038】
「アルキルアミノ」は、基:−NR(式中、互いに独立したRおよびRは、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールを表すが、これらの置換基は、本明細書で定義された対応する基の定義と同一の意義を有する)を示す。
【0039】
「アリール」は、炭素原子を1〜18個有し、少なくとも1個の芳香環で、または少なくとも1個が芳香族である多環式縮合環で構成されている、芳香族炭素環基を指す。
【0040】
「置換アリール」は、炭素原子を1〜18個有し、少なくとも1個の芳香環で、または少なくとも1個が芳香族である多環式縮合環で構成されている、芳香族炭素環基を指す。その環は、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシル、カルビルメルカプト、アルキルアミノ、カルビルオキシ、アミノ、アミド、カルボキシル、ニトロ、メルカプトまたはスルホからなる群から選択される置換基1個以上で場合により置換されているが、これらの一般置換基は、この説明で定義された対応する基の定義と同一の意義を有する。
【0041】
「ヘテロアリール」は、炭素原子を4〜9個、およびN、OまたはSからなる群から選択されるヘテロ原子を少なくとも1個有する複素環基であって、この基の少なくとも1個の環が芳香族である複素環基を指す。
【0042】
「置換ヘテロアリール」は、炭素原子を4〜9個、およびN、OまたはSからなる群から選択されるヘテロ原子を少なくとも1個有する複素環基であって、この基の少なくとも1個の環が芳香族であり、この基がハロゲン、アルキル、カルビルオキシ、カルビルメルカプト、アルキルアミノ、アミド、カルボキシル、ヒドロキシ、ニトロ、メルカプトまたはスルホからなる群から選択される置換基1個以上で置換されている複素環基を指すが、これらの一般置換基は、この説明で定義された対応する基の定義と同一の意義を有する。
【0043】
「カルボキシル」は、基:−C(O)ORj(式中、Rは、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールであるが、これらの一般置換基は、本明細書で定義された対応する基の定義と同一の意義を有する)を示す。
【0044】
「シクロアルキル」は、炭素原子を3〜15個含む単環式または多環式アルキル基を指す。
【0045】
「置換シクロアルキル」は、炭素原子を3〜15個含み、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、カルビルオキシ、カルビルメルカプト、アリール、ニトロ、メルカプトまたはスルホからなる群から選択される置換基1個以上で置換されている単環式または多環式アルキル基を指すが、これらの一般置換基は、この説明で定義された対応する基の定義と同一の意義を有する。
【0046】
「ヘテロシクロアルキル」は、環構造の少なくとも1個の環炭素原子が、N、O、SまたはPからなる群から選択されるヘテロ原子で置換された、炭素原子を3〜15個含む単環式または多環式アルキル基を指す。
【0047】
「置換ヘテロシクロアルキル」は、環構造の少なくとも1個の環炭素原子が、N、O、SまたはPからなる群から選択されるヘテロ原子で置換された、炭素原子を3〜15個含む単環式または多環式アルキル基であって、その基がハロゲン、アルキル、置換アルキル、カルビルオキシ、カルビルメルカプト、アリール、ニトロ、メルカプトまたはスルホからなる群から選択される置換基を1個以上含む単環式または多環式アルキル基を指すが、これらの一般的置換基は、この説明で定義された対応する基の定義と同一の意義を有する。
【0048】
用語「アリール」は、単環(例えばフェニル)または多環式縮合環を有し、少なくとも1個の環が、芳香族(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニルまたはアントリル)である、炭素原子6〜20個の不飽和芳香族炭素環基を指す。好ましいアリールとしては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0049】
用語「アルケニル」は、炭素原子を2〜40個、より好ましくは炭素原子を2〜10個、さらにより好ましくは炭素原子を2〜6個有する分枝状または非分枝状不飽和炭化水素基のモノラジカルを指す。好ましいアルケニル基としては、エテニル(−CH=CH)、n−プロペニル(−CHCH=CH)、イソプロペニル(−C(CH)=CH)などが挙げられる。
【0050】
「イミダゾール」は、一般式:Cで示される複素環式塩基を指す。
【0051】
「アラルキル基」は、例えば、炭素原子を6〜10個有する芳香族炭化水素環1または2個に結合し、炭素原子を総数で7〜14個有するC1〜C6アルキル基、例えば、ベンジル、α−ナフチルメチル、インデニルメチル、ジフェニルメチル、2−フェネチル、2−α−ナフチルエチル、3−フェニルプロピル、3−α−ナフチルプロピル、フェニルブチル、4−α−ナフチルブチルまたは5−フェニルペンチル基を指す。
【0052】
「グアニジン」は、一般にアミド炭酸のアミジンを指し、一般式:C(NHを有する。
【0053】
用語「アラルキル」および「ヘテロアリールアルキル」は、先の定義によるアリールまたはヘテロアリールと、アルキルおよび/またはヘテロアルキルおよび/または炭素環および/またはヘテロシクロアルキル環系の両方を含む基を指す。
【0054】
本発明は、以下のとおりの一般式I:
【0055】
【化4】

【0056】
(式中、
Wは、−C(R)(R5a)−;−C(R)(R6a)−C(R)(R7a)−;−C(R)=C(R)−;−N(R10)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構成部分であり;
Xは、−N(R1a)C(=Y)N(R)−;−OC(=Y)N(R)−;−N(R1a)C(=Y)O−;−N(R1a)S(=O)N(R)−;−N(R1a)S(=O)N(R)−;−C(R1a)(R3a)C(=Y)N(R)−およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構成部分であり;
YおよびZは、それぞれ互いに独立して、酸素(「O」)および硫黄(「S」)からなる群から選択される構成部分を表し;そして
、R1a、R、R、R3a、R、R、R5a、R、R6a、R、R7a、R、RおよびR10は、それぞれ互いに独立して、水素原子;アミノ酸側鎖;(C1〜C10)アルキル;(C1〜C10)アルケニル;(C1〜C10)アルキニル;(C5〜C12)単環式または二環式アリール;(C5〜C14)単環式または二環式アラルキル;単環式または二環式(C5〜C14)ヘテロアラルキル;ならびにN、O、SおよびPから選択されるヘテロ原子を5個まで有する(C1〜C10)単環式または二環式ヘテロアリール基からなる群から選択される構成部分を表し、前記基は、非置換であるか、またはハロゲン原子、NO、OH、アミジン、ベンズアミジン、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、アルコキシ、(C1〜C4)、アミノ、ピペラジン、ピペリジン、ジアルキルアミノ、グアニジン基、ビスアルキル化またはビスアシル化グアニド基、カルボン酸、カルボキサミド、エステル、ヒドロキサム酸、ホスフィン酸、ホスホナート、ホスホンアミダート、スルフヒドリルおよびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から更に選択される置換基1〜6個により置換されていてもよい)により表される窒素含有複素環式化合物に関する。
【0057】
記載された方法における中間体および所望の化合物は、単離して、有機合成化学において従来から用いられる精製法(例えば、中和、ろ過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶化および様々な種類のクロマトグラフィー)により精製することができる。中間体は、精製せずに次の反応に供してもよい。
【0058】
本発明は、互変異性体などの全ての可能な異性体およびその混合物を包含する。キラル炭素が、2種の異なる鏡像異性体に用いられる場合、両方の鏡像異性体および2種の鏡像異性体を分離する手順も含まれる。
【0059】
化合物の塩が望ましく、その化合物が所望の塩の形態で製造される場合も、それを精製に供することができる。化合物が遊離状態で製造され、その塩が望ましい場合、その化合物は、適切な有機溶媒に溶解または懸濁され、その後、酸または塩基の付加により塩を形成する。
【0060】
本発明は、式Iで示される薬学的に許容され得る塩、ラセミ体および光学異性体にも関する。本発明の化合物は、代表的にはキラル中心を1個以上含む。したがって本発明は、ラセミ混合物、ジアステレオマー、鏡像異性体、および1種以上の立体異性体が高濃度である混合物を包含するものとする。明細書に記載され請求された本発明の範囲は、該化合物のラセミ形態だけでなく、各鏡像異性体およびその非ラセミ混合物も包含する。
【0061】
本発明の更なる態様において、上記類似体および誘導体の使用方法、ならびに組成物が提供される。これらの方法は、PLA2酵素を阻害してヒトおよび農業的疾患および状態またはその両方を治療または予防する本発明の化合物の使用を包含する。ヒト疾患および状態の例としては、非限定的に、炎症、敗血症性ショック、慢性関節リウマチ、急性膵臓炎、鎌状赤血球病患者における急性胸部症候群、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、肥満、肥満関連のインスリン抵抗性、痛覚過敏、肺浮腫、大腸炎、虚血再灌流、胸膜炎、微生物感染、慢性関節リウマチ、皮膚炎、乾癬、癌、骨粗しょう症、ぜん息、自己免疫疾患、HIV、AIDS、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、I型インスリン依存性糖尿病、組織移植、マラリア、アフリカ睡眠病、シャーガス病、トキソプラズマ症、乾癬、再狭窄、美容上の抑制のための望ましくない毛髪増殖の阻害、上皮小体機能亢進症、炎症、胃潰瘍の処置、緑内障、アルツハイマー病、心房頻脈の抑制、腸運動の刺激または阻害、クローン病および他の炎症性腸疾患、高血圧(血管拡張)、卒中、てんかん、不安症、神経変性疾患、痛覚過敏状態、聴覚喪失(特に癌化学療法による聴覚喪失)の防御、コカイン増強の薬理学的操作、コカイン依存および過剰投与を処置する際の渇望、ならびに他の真菌、ウイルスおよび寄生虫疾患が挙げられる。
【0062】
本発明の別の態様において、上記化合物を含む組成物が提供される。好ましくは該組成物は、適切な担体または賦形剤を含むことにより、医薬または農業的使用に適するように配合される。
【0063】
本発明の更に別の態様において、疾患を治療および/または予防するために、本明細書に記載された化合物の薬学的に許容され得る形態の適切な量を、必要とするホ乳類(例えばヒト)に投与する方法が提供される。一つの実施形態において、本発明は、PLA2酵素を阻害する方法を含む。別の実施形態において、本発明は、PLA2の阻害に有用な、表Iに列挙された分子を含む。特に、分子:49、33、40、9、5、4および3は、群:V sPLA2およびX sPLA2の阻害に有用である。それらの分子では、sPLA2阻害がそれぞれ以下の序列:
【数1】


であることが実証された。
【0064】
別の実施形態において、本発明は、炎症疾患を治療および/または予防するために、本明細書に記載された化合物の薬学的に許容され得る形態の適切な量を、必要とするホ乳類に投与する方法を含む。
【0065】
選択されたファーマコフォアを三次元空間に効率的に分布させ得る環式/多環式分子類のコンビナトリアル化学技術による設計および合成は、生物学的工程を調整し得る小分子を同定して、生物学的経路を分離するための重要な方法である。ペプチドから誘導された小環または中環を組入れた分子(例えば2,5−ジケトピペラジン)は、接近が容易であること、ペプチド誘導体の化学および立体化学的多様性、ならびに付随的操作により得られる高い多様性があるため、特に興味深い。ペプチド基質により達成され得る更なる骨格多様性を拡張するために、我々は、高密度で官能基化された(5箇所の多様性)ジペプチド誘導性1,3,5−トリアゼパン−2,6−ジオンスカホールドの合成を研究し、PLA2に対する小さな「探査」ライブラリーをスクリーニングすることにより、その有用性を実証した。
【0066】
本明細書に含まれる実施形態の説明は、例示として示されており、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の系、方法および工程に関連する更なる有利な特徴および機能性は、以下の実施例から明白となろう。
【0067】
実施例
今日まで、12種のホ乳類sPLA2が同定され、3種の主な構造集団:群I/II/V/X、III、およびXIIに分類された。
【0068】
sPLA2活性の顕著な上昇が、敗血症性ショック、慢性関節リウマチ、急性膵臓炎、多発外傷、鎌状赤血球病患者における急性胸部症候群、および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)患者の気管支肺胞洗浄(BAL)の血清において検出されたが、生理−病理学的工程におけるsPLA2の厳密な機能は、定かでない。GIIAは、グラム陽性菌膜を加水分解する際に非常に強力であり、微生物からの宿主防御に関与し得ると考えられている。重要なこととして、高濃度のhGIIAが、免疫特権器官である目において見出されている。
【0069】
GIBは、膵臓中に高レベルで見出され、デオキシコラート(胆汁中に見出される界面活性剤)の存在下で基質への高い活性を有し、トリプシンにより腸内で活性化される。こうして、リン脂質消化におけるGIBの機能が示唆された。この酵素をコードする遺伝子をノックアウトすると、一見したところ脂質吸収における実質的な役割が示されなくなるが、高脂食を与えたマウスから、GIBノックアウトマウスが肥満および肥満関連のインスリン抵抗性を発症する可能性が低くなることが実証された。
【0070】
様々なホ乳類細胞型にGVおよびGXを外部から添加すると、cPLA2を活性化せずに、アラキドナートが放出され、エイコサノイドが生成される。加えて、GVノックアウトマウスから得たジモサン処置の腹腔マクロファージでは、プロスタグランジンE2(PGE2)およびロイコトリエンC4(LTC4)産生が低下した。それゆえ、GVおよびGXは、特定の条件下で、エイコサノイドの産生に関与する可能性がある。GIIC、GIIE、GIIF、GIII、GXIIAおよびGXIIBの生理学的役割は、まだ分類されていないが、幾つかの証拠から、いずれかの酵素活性が欠如した場合でも、GXIIが脊椎の神経発達に関与する可能性が示唆された。
【0071】
近年の証拠から、PLA2タンパク質が、リン脂質を加水分解するだけでなく、異なる結合タンパク質へのリガンドとして働き得ることが示唆された。最もよく知られるsPLA2結合タンパク質が、M型受容体(MtR)である。この受容体は、最初は、マクロファージマンノース受容体による一般的特性を有する膜貫通型糖タンパク質としてクローニングされ、より近年になり、受容体:Endo−180およびDec−205としてクローニングされた。この受容体は、N末端システイン・リッチ・ドメイン、フィブロネクチン様II型ドメイン、8種のC型レクチン様ドメイン(CTLD)、単一の膜貫通ドメインおよび短い細胞質尾部を含む大きな細胞外ドメインを有する。M型受容体は、sPLA2を急速に内在化することもでき、sPLA2クリアランスにおける役割が示唆される。sPLA2結合に関する酵素活性を阻害し得るその受容体の可溶性形態を同定した場合も、この見解と一致する。その上、その受容体の遺伝子標的から得られた結果および膵臓sPLA2を用いた他の試験から、例えば、MAPKカスケードを活性化して、前炎症性表現型を導入し、Fasリガンドの細胞表面発現をアップレギュレートすることにより、M型受容体がsPLA2結合を通した細胞内シグナリング分子として作用することが示唆された。
【0072】
群:IIAに特異的なsPLA2阻害剤を発見するための、構造に基づく研究から、ナノモル親和力によりこのsPLA2を阻害するインドール類似体が同定された。一つの類似体であるLY311727は、マクロファージ、好酸球および上皮細胞を含むモルモットBAL液に関して、外部添加されたhGIIAが惹起したトロンボキサンA2の放出を阻害することができた。LY311727は、ARDSのモルモットモデルにおいてリポ多糖により誘発されたsPLA2活性を阻害することも可能であった。その上、hGIIAを過剰発現するトランスジェニックマウスにLY311727を静脈内投与すると、血中のPLA2触媒活性が喪失するため、この阻害剤が、これらの動物の少なくとも血液循環中では、インビボで活性であり得ることが実証された。ネズミトキソプラズマ症の実験モデルは、LY311727注入によってより早期に死亡したため、これらのマウスにおいてこの阻害剤に感受性のsPLA2の少なくとも1種による防御的役割が示唆された。加えて、痛覚過敏の3種の異なる実験ラットモデルにLY311727を腰部髄腔内投与すると、観察された炎症関連の症状が全て軽減した。
【0073】
S−5920/LY315920Naと呼ばれる第2世代のインドール誘導性阻害剤は、オレイン酸により誘導されたウサギ急性肺傷害モデルの肺の合併症、肺浮腫、血管貫通性および肺サーファクタント変性を有意に軽減した。sPLA2の他の2種の阻害剤であるLY333013(S−3013)および5−(4−ベンジルオキシフェニル)−4s−(7−フェニルヘプタノイルアミノ)ペンタン酸は、ラットをデキストラン硫酸誘導性およびトリニトロベンゼンスルホン酸による大腸炎から防御した。5−(4−ベンジルオキシフェニル)−4s−(7−フェニルヘプタノイルアミノ)ペンタン酸の経口投与は、ラットの腸を虚血および再灌流による傷害からも保護した。
【0074】
mGIIA、mGIID、mGIIE、mGVおよびmGXの強力な阻害剤であることで知られる分子:YM−26734により、マウスのテトラセノイルホルボール−13−アセタートによる耳浮腫が低減した。この同薬物は、カラゲーニン(carageenin)誘導性胸膜炎ラットモデルの滲出液および白血球の蓄積も有意に減少させた。sPLA2阻害剤の有望な効果にもかかわらず、S−5920/LY315920Naを敗血症および臓器不全のヒトに関する臨床試験で用いた場合、PLA2阻害剤処置群とプラセボ群の間に有意差は見出されなかった。しかし、GIIA sPLA2は抗菌性を有し、微生物感染による敗血症性ショックを引き起こすため、sPLA2阻害剤を敗血症性ショック治療薬として用いることが意味をなすかどうかは、議論の余地がある。
【0075】
近年になり、慢性関節リウマチの患者に別のsPLA2阻害剤、つまり経口分布のLY333013を用いた臨床試験では、治験の第一週目に病理が有意に低下したが、その利益はその後喪失した。この最後の報告で、著者は、阻害剤を静脈内投与した場合の病理に対する正の影響を報告した。この同阻害剤は、ぜん息患者への吸入抗原負荷に対し利益を示すことができなかった。LY333013が、これらの患者において良好に耐容されたことに留意することが重要である。
【0076】
つまり、阻害剤ごとに選択される投与経路(例えば、経口、非経口、経腸、経皮、静脈内、経肛門など)および生物系が、有効性に影響を与え得ると思われる。例えば、GIIAおよびcPLA2の両方の阻害剤であるBMS−1881162は、ホルボールエステルへの反復暴露により誘導された慢性皮膚炎のマウスモデルにおいて局所剤として用いられると、非常に強力な抗炎症活性を有する。この同阻害剤は、乾癬患者では効果はなかった。志願者において標識したBMS−1881162を使用すると、識別可能な薬物の浸透はほとんど示されなかったが、それはおそらくマウスに比較してとヒトでは角質層が厚いためと思われる。
【0077】
インドキサム(IDX)と呼ばれるインドール阻害剤は、ラット胃上皮細胞において、TGF−αおよびIL−1により誘導されたPGE2産生を阻害した。インドキサムの誘導体であるMe−インドキサム(Me−IDX)は、hGIIAの阻害がLY311727よりも約20倍強力である。このインドール類似体は、ホ乳類細胞での試験に適しており、hGIIAだけでなく、他の群:I/II/V/X sPLA2の酵素活性も阻害する。IDXおよびその関連のインドール化合物がホ乳類細胞および動物モデルの様々な炎症シグナルに影響を与えるという事実から、群:I/II/V/Xの少なくとも1つのsPLA2が、これらの工程に関与することが示唆される。
【0078】
Me−IDXは、sPLA2の触媒溝(catalytic groove)に結合してそこから突出していることが公知であるため、リン脂質以外の分子とのsPLA2相互作用を妨害することができる。事実、IDXが、M型受容体を発現するマウス細胞への、ブタ膵臓の群IBおよび群X sPLA2の結合を良好な効率で阻害し得ることが示された(IC50は、それぞれ130nMおよび900nM)。しかし、例えばマウスのsPLA2およびM型受容体を用いて、この観察を内在の構成の他のsPLA2に当てはまり得るかどうかは不明である。幾つかの病理生理学的障害が、この受容体に結合するsPLA2に関与し得るため、この検査は非常に重要である。事実、M型受容体を欠損するマウスは、内毒素ショックに抵抗性であり、M型受容体発現マウスに比較して、LPS処置後に循環IL−1およびTNF−αの濃度が低下する。しかしながら、野生型マウスへのリポ多糖注入により誘導された敗血症性ショックは、インドキサム処置により軽減させることができる。近年になり、我々は、群:IBおよびIIA sPLAだけでなく、複数の別のマウスの群:I/II/V/XのsPLA2が、最初、ヘビ毒sPLA2 OS2で同定されたM型受容体に結合し得ることが見出されたことから、1種以上のsPLA2がこれらの工程に関与する可能性があり、インドキサムの効果が、酵素活性の阻害またはM型受容体への結合の阻害のどちらかによる可能性があるとの仮説が得られた。
【0079】
Me−IDXの存在下で細胞膜で放射線標識したホ乳類sPLA2の直接結合性を分析して得られた結果、およびsPLA2の阻害剤として知られる他の様々な分子の阻害効果の評価から、異なる試験でのsPLA2阻害剤で観察された効果が、sPLA2触媒活性の阻害によるだけでなく、それらの受容体へのsPLA2結合性の調節による可能性が強く示された。
【0080】
ジアゼピンおよびトリアゼピン骨格を含む分子により示された顕著な生物活性から、ジペプチド誘導性1,3,5−トリアゼパン−2,6−ジオンスカホールドの設計および評価への関心が生まれた。特に7員環尿素は、近年になり、HIV−プロテアーゼおよび逆転写酵素阻害剤、因子Xa阻害剤、β−ラクタマーゼ阻害剤、ホスホリパーゼC阻害剤、ならびにケモカイン受容体アンタゴニストの開発での適用に関して非常に大きな関心が寄せられた。
【0081】
以下の試験から、本発明の新規な7および8員環窒素含有複素環式化合物が、PLA2の阻害に有用であり、炎症疾患の治療および予防に効果的となり得ることが確立された。
【0082】
I.[H]−オレイン酸でのE. coli膜の標識
【0083】
1)Luria Broth(LB)w/またはw/oアンピシリン中のE. coli菌株の単一コロニーからの一夜前培養液10mlを調製した。DH10BおよびXL−1菌株は、JM101菌株よりも良好と思われ、即ちそれらは、よりバックグランドの小さい膜を提供し、PLA2アッセイの後にペレット化が容易であった。飽和した一夜前培養液のOD600nmは、約2UDOであった。1/5希釈を調製し、OD600nmを測定した。
【0084】
2)新しいLB 100ml中の前培養液を0.05UOD600nmに希釈し、[H]−オレイン酸(NET289、NEN、5mCi/ml、アルコール溶液)250μlを添加した。フードの下で放射性原液を含むバイアルを開け、Nでバイアルをフラッシュした後閉じた。後に取り込まれたオレイン酸を定量するために、培養液のアリコート10μlを保存した。
【0085】
3)激しく振とうしながら(200〜230rpm)37℃で約5時間細胞を1UOD600nmまで増殖させた。
【0086】
4)15分/4000rpm/50mlファルコン管/室温で培養液を遠心分離した。取り込まれたオレイン酸を定量するために、上清50μlを保存した。上清を廃棄して、ペレットをLB50mlに懸濁させ、振とうしながら37℃で更に30分間細胞を増殖させた(このステップにより、残りの取り込まれていない標識オレイン酸をリン脂質に取り込ませた)。
【0087】
5)再度、上記のとおり遠心分離した。後の定量のために、上清50μlを保存した。上清を廃棄して、ペレットを洗浄緩衝液50mlに再懸濁させた。
【0088】
6)上記のとおり遠心分離した。後の定量のために、上清50μlを保存した。上清を廃棄して、BSAを含まない洗浄緩衝液2mlにペレットを再懸濁させた。カウントのためにアリコート2μlを保存し、残りの溶液をCorexガラス管に移した。アルミホイルのカップに入れて、オートクレーブにかけた(20分、120℃、1.5バール)。このステップは、一晩実行することができる。
【0089】
7)翌日、カウントのために別のアリコート2μlを保存し、残りの溶液をエッペンドルフ管2本に移した。Corex管を洗浄緩衝液1mlですすぎ、溶液2mlと混合した。
【0090】
8)14,000rpm(室温)で1分間遠心分離した。後の定量のために上清10μlを保存した。上清を廃棄して、各ペレットを洗浄緩衝液1.5mlに再懸濁させた。このステップを更に4回繰り返した。
【0091】
9)ペレットを洗浄緩衝液5mlに再懸濁させ、取り込まれたオレイン酸を定量するために5μlをカウントした。溶液を100,000dpm/μlに希釈し、30μlのアリコートを調製した。
【0092】
10)異なる上清をカウントし、投入量に対するステップ9の放射線量の割合%を計算した。通常、取り込まれた放射線量は、ステップ2で添加された投入放射線量の30〜40%を超えていた。
【0093】
II.PLA2アッセイ
1)基質の調製
必要な量の放射線をピペットで取り出し(反応あたりの標識膜の100,000dpm×反応回数)、エッペンドルフ管でPLA2活性緩衝液1mlに希釈した。
【0094】
14,000rpm(室温)で1分間遠心分離した。上清を廃棄した。ペレットをPLA2活性緩衝液150μlに注意深く再懸濁させ、反応の全回数に対するPLA2活性緩衝液を添加した。プールを室温で保存した(プールはあらかじめ過剰に調製しなかった)
【0095】
2)PLA2アッセイ反応
エッペンドルフ管内で代表的反応物を製造したが、それは、PLA2活性緩衝液50μl、無視できる容量の酵素溶液、および上記の基質プール100μlで製造された全量150μlで構成されていた(かなり大容量の基質をマルチピペットで添加すると十分に混合されるため、基質を添加した後ボルテックスにかける必要はなかった)。
【0096】
反応混合物を25℃または37℃で1時間までの様々な時間、異なる量の酵素と共にインキュベートした(インキュベートは、室温で日常的に実施した)。インキュベーション時間および試料の容量は、酵素アッセイの直線性の範囲内での加水分解速度が確保されるように調整した(代表的には全ての基質の加水分解量の10〜20%)。添加されるsPLA2が存在しない対照インキュベーションを同時に実施して、特異的加水分解を計算するのに用いた。
【0097】
3)停止緩衝液を300μl添加することにより、反応を停止させた。管を室温、14,000rpmで3分間遠心分離した。遊離した標識オレイン酸を含む上清を回収し、カウントした。
【0098】
基質のプール100μlのアリコート3または4本もカウントして、注入された放射線/反応物の全量を決定した。
【0099】
先の上清でのカウントが、膜リン脂質から放出された遊離[H]−オレイン酸に対応すると、我々が日常的に判断していることに留意されたい。遊離オレイン酸とリン脂質とを分離し得る条件下で、シリカゲル60での薄層クロマトグラフィーを実施することにより、これらのカウントが実際の遊離オレイン酸であることを検証してもよい。
【0100】
このプロトコルでは、sPLA2活性が特異的に検出されず、細胞質型PLA2の活性を検出できることにも留意されたい。
【0101】
材料
DH10BまたはXL−1 E. coli菌株(保有する菌株であり、プラスミドではない);[H]−オレイン酸(NET289、NEN、エタノール中5mCi/ml);分画V脂肪酸不含BSA(Sigma #A6003またはA7511);分画V BSA(Sigma#A7906);Corexガラス管または均等物。緩衝液:洗浄緩衝液:0.1M トリス/HCl pH8.0、脂肪酸不含BSAを0.5%含む1mM EDTA;PLA2活性緩衝液:0.1M トリス/HCl pH8.0、10mM CaCl、0.1%BSA;停止緩衝液:脂肪酸不含BSAを0.2%含む0.1M EDTA。
【0102】
治療薬の投与
本発明の一つの実施形態は、PLA2酵素を阻害する方法を包含する。本発明の別の実施形態は、本発明の化合物を薬学的に許容され得る形態で含む医薬組成物を包含する。更に別の実施形態において、本発明は、薬学的に許容され得る形態の本発明の化合物の適切な量を投与することを含む、ホ乳類(例えばヒト)の疾患(例えば炎症疾患)を治療および/または予防する方法を包含する。本発明の化合物は、場合により、担体、賦形剤、別の生物活性剤またはそれらの混合物の少なくとも1つと共に投与してもよい。
【0103】
適切な投与経路としては、経口、経直腸、脈管内、局所(眼内、口腔内および舌下など)、経膣および非経口(皮下、筋肉内、硝子体内、静脈内、皮内、髄内および硬膜外など)が挙げられる。好ましい投与経路は、患者の状態、化合物の毒性および感染部位、とりわけ臨床医に知られる他の判断基準に依存する。
【0104】
本発明の治療組成物は、活性成分を約1〜約95%含み、単回投与形態は好ましくは活性成分を約20〜約90%含み、単回ではない投与形態は好ましくは活性成分を約5%〜約20%含む。単位投与形態は、例えば、コート錠、錠剤、アンプル、バイアル、坐剤またはカプセルである。別の投与形態は、例えば、軟膏、クリーム、ペースト、フォーム、チンキ剤、リップスティック、ドロップ、スプレー、分散剤などである。例は、活性成分を約0.05g〜約1.0g含むカプセルである。
【0105】
本発明の医薬組成物は、それ自体が公知の手法、例えば、従来の混合、造粒、コーティング、溶解または凍結乾燥法により調製される。
【0106】
好ましくは活性成分の溶液、加えて懸濁液または分散液、特に等張の水溶液、分散液または懸濁液を用い、例えば活性物質を単独で、または担体(例えばマンニトール)と一緒に含む凍結乾燥組成物の場合には、これらを使用前に調製することができる。該医薬組成物は、滅菌されており、そして/または賦形剤、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤および/もしくは乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節する塩ならびに/または緩衝液を含むことができ、それらは、それ自体が公知の手法、例えば従来の溶解または凍結乾燥法で調製される。上述の溶液または懸濁液は、増粘物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンを含むことができる。
【0107】
薬学的に許容され得る形態としては、例えば、ゲル、ローション、スプレー、粉末、ピル、錠剤、制御放出錠、持続放出錠、律速放出錠、腸溶性コーティング、エマルション、液体、塩、ペースト、ジェリー、エアロゾル、軟膏、カプセル、ゲルカップ、または当業者に明白な他の適切な形態が挙げられる。
【0108】
油中の懸濁液は、油性成分として、注入目的で慣用的な植物油、合成油または半合成油を含む。上述の油は、特に、炭素原子を8〜22個、特に12〜22個有する長鎖脂肪酸、例えばラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸または対応する不飽和酸、例えば、オレイン酸、エライジン酸、ユール酸、ブラシジン酸またはリノール酸を酸成分として含有する液体脂肪酸エステルであり、適宜、酸化防止剤、例えばビタミンE、β−カロテンまたは3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを添加する。これらの脂肪酸エステルのアルコール成分は、6個以下の炭素原子を有し、一価または多価アルコール、例えば一価、二価または三価アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールもしくはペンタノール、またはその異性体であるが、特にグリコールおよびグリセロールである。そのため、脂肪酸エステルは、例えば、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、"Labrafil M 2375"(パリのGattefosee;ポリオキシエチレングリセリン=トリオレアート)、"Labrafil M 1944 CS"(パリのGattefosee;アプリコット種油の加アルコール分解により調製され、グリセリドおよびポリエチレングリコールエステルからなる不飽和ポリグリコール酸グリセリド)、"Labrasol"(パリのGattefosee;TCMの加アルコール分解により調製され、グリセリドおよびポリエチレングリコールエステルからなる飽和ポリグリコール酸グリセリド)および/または"Miglyol 812"(ドイツ、Huls AGの、鎖長C〜C12の飽和脂肪酸のトリグリセリド)、そして特に、植物油、例えば、綿実油、アーモンド油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、大豆油、そして特に落花生油である。
【0109】
注射用組成物の製造は、例えば、アンプルまたはバイアルへの充填や容器を封止する際、滅菌条件下、慣用法で実施される。
【0110】
例えば、経口使用される医薬組成物は、活性成分を1種以上の固形担体と配合し、適宜、得られた混合物を造粒し、所望ならば、適宜、更なる賦形剤を添加することにより、その混合物または顆粒を錠剤またはコート錠コアに加工することにより得ることができる。
【0111】
適切な担体は、特に、糖などの充填剤、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトール、セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム、例えば、リン酸三カルシウム、またはリン酸水素カルシウム、更にデンプンなどの結合剤、例えば、トウモロコシ、小麦、米もしくはジャガイモデンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/もしくはポリビニルピロリドン、ならびに/または所望ならば、上述のデンプンなどの崩壊剤、更にはカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムである。更なる賦形剤は、特に、流出調整剤および滑剤、例えばサリチル酸、タルク、ステアリン酸もしくはその塩(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム)、および/またはポリエチレングリコールもしくそれらの誘導体である。
【0112】
コート錠コアは、適宜、胃液に抵抗性の適切なコーティングを備えることができ、使用されるコーティングは、とりわけ、適宜、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/もしくは二酸化チタンを含む濃縮糖溶液、適切な有機溶媒もしくは溶媒混合物中のコーティング溶液、または胃液に抵抗性のコーティングを調製する場合は、適切なセルロース調製物の溶液、例えば、フタル酸アセチルセルロースまたはフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0113】
「制御放出」は、本発明の目的では、治療活性化合物が、制御的速度で、もしくは特定の部位(例えば腸)で、またはその両方で、調製物から放出されるため、治療上有益な血液レベル(しかし毒性レベル未満)が、長期間にわたり保持され、例えば12時間〜24時間投与形態を提供することを意味する。
【0114】
本明細書で用いられる用語「律速ポリマー」は、化合物の放出をインビボで遅延できる親水性ポリマー、疎水性ポリマー、または親水性および/もしくは疎水性ポリマーの混合物を包含する。加えて、同ポリマーの多くは、薬物、薬物懸濁液、または薬物マトリックスの腸溶性コーティングを調製するのに使用することができる。過度に実験を行わずに、コーティング厚、透過性および溶解性を改良して、所望の制御放出プロファイル(例えば、薬物放出速度および部位)を提供するのは、当該技術の範囲内である。
【0115】
本発明で用いられる適切な制御放出ポリマーの例としては、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース);ポリ(エチレン)オキシド;アルキルセルロース(例えば、エチルセルロースおよびメチルセルロース);カルボキシメチルセルロース;親水性セルロース誘導体;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドン;酢酸セルロース;酢酸酪酸セルロース;酢酸フタル酸セルロース;酢酸トリメリト酸セルロース;酢酸フタル酸ポリビニル;フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ポリ(メタクリル酸アルキル);およびポリ(酢酸ビニル)が挙げられる。他の適切な疎水性ポリマーとしては、アクリル酸またはメタクリル酸エステルから得られるポリマーまたはコポリマー、アクリル酸およびメタクリル酸エステルのコポリマー、ゼイン、ワックス、シェラック、ならびに水添植物油が挙げられる。
【0116】
正しい放出速度を確実に実行するために、本発明の制御放出調製物は、制御放出ポリマーを約5〜75重量%、好ましくは約20〜50重量%、より好ましくは約30〜45重量%、および活性化合物を約1〜40重量%、好ましくは約3〜25重量%含む。本発明の制御放出調製物は、好ましくは補助剤、例えば希釈剤、滑剤および/または融解結合剤を含んでいてもよい。好ましくは賦形剤は、調製物の水分量を最小限に抑えるように選択される。好ましくは調製物は、酸化防止剤を含む。適切な希釈剤としては、薬学的に許容され得る不活性充填剤、例えば、微結晶セルロース、ラクトース、二塩基性リン酸カルシウム、サッカライド、および/または前述のものの混合物が挙げられる。希釈剤は、適切には水溶性希釈剤である。希釈剤の例としては、微結晶セルロース(例えば、Avicel ph112、Avicel pH101およびAvicel pH102);ラクトース(例えば、ラクトース一水和物、ラクトース無水物、およびPharmatose DCL21);二塩基性リン酸カルシウム(例えば、Emcompress);マンニトール;デンプン;ソルビトール;スクロース;およびグルコースが挙げられる。希釈剤は、各配合を圧縮性への留意点と一致させるように注意深く選択される。圧縮される力の流動性に作用する薬剤など適切な滑剤は、例えば、コロイド状二酸化ケイ素(例えばAerosil 200);タルク;ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸カルシウムである。適切な低温融解結合剤としては、ポリエチレングリコール(例えば、PEG6000);セトステアリルアルコール;セチルアルコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ステアリン酸ポリオキシエチレン;ポロキサマー;およびワックスが挙げられる。
【0117】
制御放出調製物の安定性を改善するために、酸化防止化合物を含ませることができる。適切な酸化防止剤としては、メタ重亜硫酸ナトリウム;トコフェロール(例えば、α、βまたはδ−トコフェロールエステルおよび酢酸α−トコフェロール);アスコルビン酸または薬学的に許容され得るその塩;パルミチン酸アスコルビル;没食子酸アルキル(例えば没食子酸プロピル)、Tenox PG、Tenox s-1;亜硫酸または薬学的に許容され得るその塩;BHA;BHT;およびモノチオグリセロールが挙げられる。
【0118】
本発明の制御放出調製物は、好ましくは、該化合物を制御放出ポリマーおよび補助賦形剤と混和し、その後、直接圧縮することにより製造することができる。その調整物を製造する他の方法としては、融解造粒が挙げられる。好ましい融解造粒法としては、律速ポリマーおよび希釈剤を一緒に融解造粒し、その後、顆粒を圧縮すること、ならびに律速ポリマーおよび希釈剤を引き続き混和して融解造粒し、次に混和物を圧縮することが挙げられる。所望なら圧縮の前に、容易に流動可能な均一混合物が得られるまで、混和物および/または顆粒をスクリーニングし、そして/または補助剤と混合してもよい。
【0119】
本発明の制御放出調製物の経口投与形態は、錠剤、コート錠、腸溶性コーティング錠の形態であってもよく、または多粒子(例えば、ペレットまたはミニタブレットの形態)であってもよい。所望なら、カプセル(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル)が、多粒子を含んでいてもよい。所望なら、多粒子経口投与形態が、インビトロおよび/またはインビボ放出プロファイルにおいて異なる制御放出を有するペレットまたはミニタブレットの少なくとも2種の集合体のブレンドを含んでいてもよい。所望なら、ペレットまたはミニタブレット集合体の一つが、直後放出多粒子(例えば、従来の手段により形成される多粒子)を含んでいてもよい。
【0120】
所望なら、本発明の制御放出マトリックス錠または多粒子は、制御放出ポリマー層でコーティングされることで、更なる制御放出性を与えることができる。この制御放出層を形成するのに用いられ得る適切なポリマーとしては、先に列挙された律速ポリマーが挙げられる。
【0121】
所望なら、本発明の錠剤、ペレットまたはミニタブレットは、光防御および/または化粧品フィルムコーティング(例えば、フィルム形成剤、顔料、抗付着剤および可塑化剤)を用いて提供することができる。そのようなフィルム形成剤は、速溶解性成分、例えば、低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Methocel E5もしくはD14、またはPharmacoat 606(Shin-Etsu))からなってもよい。そのフィルムコーティングは、フィルムコーティング手順において慣用的な賦形剤、例えば光防御顔料(例えば、酸化鉄または二酸化チタン)、抗付着剤(例えば、タルク)、および適切な可塑化剤(例えば、PEG400、PEG6000、フタル酸ジエチルまたはクエン酸トリエチル)を含んでいてもよい。
【0122】
本発明の制御放出ポリマーは、ヒドロゲルマトリックスからなってもよい。例えば該化合物は、律速ポリマー(例えばHPMC)または膨潤するとヒドロゲルを形成するポリマーの混合物を含む投与形態に圧縮することができる。この投与形態からの放出速度は、膨潤された錠剤塊からの拡散、および時間経過による錠剤表面からの浸蝕の両方により制御される。放出速度は、錠剤ごとのポリマーの量、および用いられたポリマー固有の粘度の両方により制御してもよい。
【0123】
例えば、異なる用量の活性成分を同定または特徴づけするために、染色剤または顔料を錠剤またはコート錠のコーティングに混和してもよい。
【0124】
経口使用できる医薬組成物には、ハードゼラチンカプセルおよびソフト密閉ゼラチンカプセルならびに可塑剤(例えば、グリセリンまたはソルビトール)もある。ハードカプセルは、顆粒の形態の活性成分を、充填剤(例えばトウモロコシデンプン)、結合剤および/または滑剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウム)、ならびに適宜、安定化剤と混和して含有することができる。ソフトカプセルでは、活性成分は、好ましくは適切な液体賦形剤、例えば脂肪性油、パラフィン油、液体ポリエチレングリコール、またはエチレングリコールもしくはプロピレングリコールの脂肪酸エステルに溶解または懸濁されているが、同様に、例えばポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル型の安定化剤および洗剤を添加することが可能である。
【0125】
他の経口投与形態は、例えば、慣用法で調製されるシロップであり、これは、活性成分を例えば懸濁形態で、約5%〜20%、好ましくは約10%または類似の濃度で含むため、例えば5または10mlを測り取ると、適切な単位用量をもたらす。他の形態には、例えば、振とう物(例えばミルクセーキ)の調製用の粉体または液体濃縮物もある。そのような濃縮物は、単位用量で包装することもできる。
【0126】
経直腸使用できる医薬組成物は、例えば、活性成分と坐剤用基剤との配合物を含む坐剤である。適切な坐剤用基剤は、例えば、天然または合成トリグリセリド、パラフィン炭化水素、ポリエチレングリコールまたは高級アルカノールである。
【0127】
非経口投与に適した組成物は、水溶性形態(例えば水溶性塩)の活性成分の水溶液、または水性注射用懸濁液であり、これらは増粘物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトルム、ソルビトールおよび/またはデキストラン、ならびに適宜、安定化剤を含む。活性成分は、ここでは適宜、賦形剤と共に凍結乾燥形態で存在することもでき、非経口投与の前に適切な溶媒を添加して溶解させることもできる。例えば、非経口投与に使用されるような溶液は、点滴溶液として使用することもできる。好ましい防腐剤は、例えば、酸化防止剤(例えばアスコルビン酸)または抗菌剤(例えばソルビン酸または安息香酸)である。
【0128】
軟膏は、水または水相を70%以下、好ましくは20〜50%含む水中油エマルションである。脂肪相は、特に炭化水素、例えばワセリン、パラフィン油または硬質パラフィンからなり、それは好ましくは、適切なヒドロキシ化合物、例えば脂肪アルコールまたはそのエステル(例えば、セチルアルコールまたは羊毛ロウなどの羊毛ロウアルコール)を含めることで、水結合能が改善される。乳化剤は、ソルビタン脂肪酸エステル(Spans)などの対応する親油性物質、例えば、オレイン酸ソルビタンおよび/またはイソステアリン酸ソルビタンである。水相への添加剤は、例えば、ポリアルコールなどの湿潤剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールおよび/またはポリエチレングリコール)、または防腐剤および芳香物質である。
【0129】
脂肪性軟膏は無水物であり、基剤として特に炭化水素、例えばパラフィン、ワセリンもしくはパラフィン油、更に、天然もしくは半合成脂肪、例えば水添ココナッツ脂肪酸トリグリセリド、または好ましくは水添油、例えば水添落花生油もしくはヒマシ油、更にグリセロールの脂肪酸部分エステル、例えば、モノおよび/もしくはジステアリン酸グリセリン、ならびに、例えば脂肪アルコールを含む。それらは、乳化剤、および/または軟膏に関連して記載された、水の取り込みを増大させる添加剤も含む。
【0130】
クリームは、50%を超える水を含む水中油エマルションである。使用した油性基剤は、特に、脂肪アルコール(例えば、ラウリル、セチルまたはステアリルアルコール)、脂肪酸(例えばパルミチン酸またはステアリン酸)、液体〜固形ワックス(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、羊毛ロウまたは蜂ロウ)、および/または炭化水素(例えば、ワセリン(ペトロラタム)またはパラフィン油)である。乳化剤は、主に親水性を有する界面活性物質であり、例えば、対応する非イオン性乳化剤(例えば、ポリアルコールの脂肪酸エステルまたはそのエチレンオキシ付加物、例えば、ポリグリセリン酸脂肪酸エステルまたはポリエチレンソルビタン脂肪エステル(Tween)、更に、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテルまたはポリオキシエチレン脂肪酸エステル)、または対応するイオン性乳化剤(例えば、脂肪アルコール硫酸エステルのアルカリ金属塩、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムまたはステアリル硫酸ナトリウム)であり、それらは、通常、脂肪アルコール(例えば、セチルステアリルアルコールまたはステアリルアルコール)の存在下で使用される。水相への添加物は、とりわけ、クリームが乾燥するのを防ぐ薬剤であり、例えば、ポリアルコール(例えば、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールおよび/またはポリエチレングリコール)、更に、防腐剤および芳香物質である。
【0131】
ペーストは、分泌−吸収性粉末成分を有するクリームおよび軟膏(例えば、金属酸化物、例えば酸化チタンまたは酸化亜鉛、更にはタルクおよび/またはケイ酸アルミニウム)であり、存在する水分または分泌物と結合する働きを有する。
【0132】
フォームは、加圧容器から投与され、それらは、エアロゾル形態で存在する液体水中油エマルションである。噴射ガスとして、ハロゲン化炭化水素、例えば、クロロフルオロ−低級アルカン(例えば、ジクロロジフルオロメタンおよびジクロロテトラフルオロエタン)、または好ましくは非ハロゲン化気体炭化水素、空気、NOまたは二酸化炭素が使用される。使用される油相は、とりわけ、軟膏およびクリームに関して先に記載されたものであり、そこに記載された添加物も同様に使用される。
【0133】
チンキ剤および溶液は、通常、水性エタノール性基剤を含み、それに、蒸発を抑えるための湿潤剤、例えばポリアルコール(例えば、グリセリン、グリコールおよび/またはポリエチレングリコール)、および再油化物質(例えば、低級ポリエチレングリコールとの脂肪酸エステル)即ち、エタノールにより皮膚から除去される脂肪物質を補填するための、水性混合物に可溶性の親油性物質、そして必要に応じ、他の賦形剤および添加物が混和される。
【0134】
本発明は、上述の疾患状態の処置工程または方法にも関する。該化合物は、それ自体を、または医薬組成物の形で、好ましくは上記疾患に対して有効な量で、予防的またな治療的に投与することができる。そのような処置を必要とする温血動物(例えばヒト)に、該化合物が、特に医薬組成物の形で使用される。本発明の化合物の日用量約0.1〜約5g、好ましくは約0.5g〜約2gが、この場合、約70kgの体重に投与される。
【0135】
本明細書に記載された実施例および実施形態が、例示の目的に過ぎないこと、そして本明細書に照らして様々な置換、改良または変更が当業者に示唆され、それらが本願の精神および目的に含まれ、そして添付の特許請求の範囲内と見なされることは理解されよう。以下の実施例は、好ましい実施形態の例を示すものであり、本明細書の限定と見なすべきではない。例えば、成分の相対量は、異なる所望の効果を実現するために変動してもよく、追加の成分を添加してもよく、そして/または類似の成分を記載された成分1種以上に置き換えてもよい。本明細書に引用された発行物、特許および特許出願の全てが、全ての目的のために、全体が本明細書に参考として援用される。
【0136】
一般的合成スキームおよび手順の実施例
【0137】
実施例1:[1,3,5]オキサジアゼパン−2,6−ジオン(式Ia)の合成
【0138】
【化5】

【0139】
Iaの一般的合成スキーム
【0140】
【化6】

【0141】
a)ビストリフルオロ酢酸ヨードベンゼン(IBTFA)、THF/HO;b)BocO;c)p−ニトロフェニルクロロホルマート、CHCl、ジイソプロピルエチルアミン;d)トリフルオロ酢酸;e)DIEA、HOBt;f)NaH、RBr。
【0142】
実施例2:2−チオキソ−[1,3,5]トリアゼパン−6−オン(式Ib)の合成
【0143】
【化7】

【0144】
Ibの一般的合成スキーム
【0145】
【化8】

【0146】
ステップa)ジペプチドアミド:Ib−p1をTHF/水(3:1)に溶解し、ビストリフルオロ酢酸ヨードベンゼン(1.2当量)で3時間処理し、その後、出発原料が消費された。溶媒を真空除去し、EtOを添加した。形成した固体を回収し、EtOで洗浄して、対応するgem−ジアミノ誘導体を生成させ、それを更に精製せずに、次のステップで用いた。定量的収率。
【0147】
ステップb)ビス(ベンゾトリアゾール−1−イル)メタンチオン(1当量)を、室温でCHClに溶解した。これまで合成されたgem−ジアミノ誘導体を滴下して、反応混合物を18時間撹拌した。溶媒を真空除去し、残渣をEtOAcに再溶解し、5%水性炭酸ナトリウム、水およびブラインで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空除去し、1b−p2を酢酸エチルで再結晶化させた。
【0148】
ステップc)1−チオカルバモイルベンゾトリアゾールを0℃のTFAで処理した。30分後、ヘキサンとの共蒸着によりTFAを除去し、ジエチルエーテルを添加することによりTFA塩を沈殿させた。得られた塩:Ib−p3をろ過により回収し、高真空下で乾燥させた。それを更に精製せずに、次のステップで用いた。
【0149】
ステップd)TFA塩:Ib−p3をMeCNに溶解し、その後、ジイソプロピルエチルアミン(2.5当量)を添加して、反応混合物を24時間撹拌した。溶媒を真空除去し、残渣をEtOAcに再溶解し、5%水性炭酸ナトリウム、1M HCl、水およびブラインで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空除去し、環状Ib−1をCHCl/ジイソプロピルエーテルで再結晶化させて精製した。
【0150】
実施例3:4−ベンジル−6−メチル−[1,3,6]オキサジアゾカン−2,5−ジオン(式Ib−1)の合成
【0151】
【化9】

【0152】
Ib−1の一般的合成スキーム
【0153】
【化10】

【0154】
ステップa)ジペプチドアミド:Ib−p1をTHF/水(3:1)に溶解し、ビストリフルオロ酢酸ヨードベンゼン(1.2当量)で3時間処理し、その後、出発原料が消費された。溶媒を真空除去し、EtOを添加した。形成した固体を回収し、EtOで洗浄して、対応するgem−ジアミノ誘導体を生成させ、それを更に精製せずに、次のステップで用いた。定量的収率。
【0155】
ステップb)ビス(ベンゾトリアゾール−1−イル)メタンチオン(1当量)を、室温でCHClに溶解した。これまで合成されたgem−ジアミノ誘導体を滴下して、反応混合物を18時間撹拌した。溶媒を真空除去し、残渣をEtOAcに再溶解し、5%水性炭酸ナトリウム、水およびブラインで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空除去し、1b−p2を酢酸エチルで再結晶化させた。
【0156】
ステップc)1−チオカルバモイルベンゾトリアゾールを0℃のTFAで処理した。30分後、ヘキサンとの共蒸着によりTFAを除去し、ジエチルエーテルを添加することによりTFA塩を沈殿させた。得られた塩Ib−p3をろ過により回収し、高真空下で乾燥させた。それを更に精製せずに、次のステップで用いた。
【0157】
ステップd)TFA塩:Ib−p3をMeCNに溶解し、その後、ジイソプロピルエチルアミン(2.5当量)を添加して、反応混合物を24時間撹拌した。溶媒を真空除去し、残渣をEtOAcに再溶解し、5%水性炭酸ナトリウム、1M HCl、水およびブラインで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を真空除去し、環状Ib−1をCHCl/ジイソプロピルエーテルで再結晶化させて精製した
【0158】
実施例4:2−チオキソ−[1,3,5]オキサジアゼパン−6−オン(式Ic)の合成
【0159】
【化11】

【0160】
Icの一般的合成スキーム
【0161】
【化12】

【0162】
a)ビストリフルオロ酢酸ヨードベンゼン(IBTFA)、THF/HO;b)ビス(ベンゾトリアゾリル)メタンエチオン、CHCl;c)トリフルオロ酢酸;d)ジイソプロピルエチルアミン、MeCN、NaH。
【0163】
実施例5:[1,3,6]オキサジアキソカン−2,5−ジオン(式Id)の合成
【0164】
【化13】

【0165】
Idの一般的合成スキーム
【0166】
【化14】

【0167】
a)クロロギ酸p−ニトロフェニル(2当量)、ピリジン(1.1当量)、CHCl、TA一晩;b)TFA、TA30分;c)DIEA(2.6当量)、HOBt(1当量)、MeCN、TA3jours。
【0168】
実施例6:4−ベンジル−6−メチル−[1,3,6]オキサジアゾカン−2,5−ジオン(式Id−1)の合成
【0169】
【化15】

【0170】
Id−1の一般的合成スキーム
【0171】
【化16】

【0172】
a)クロロギ酸p−ニトロフェニル(2当量)、ピリジン(1.1当量)、CHCl、TA一晩;b)TFA、TA30分;c)DIEA(2.6当量)、HOBt(1当量)、MeCN、TA3jours。
【0173】
1)炭酸p−ニトロフェニル前駆体:Id−p2の合成
【0174】
【化17】

【0175】
出発原料:ジペプチドアルコール:Id−p1(300mg、0.93mmol、1当量)を、CHCl 5mLおよびピリジン82μL(1.02mmol、1.1当量)に溶解した。2mL中のクロロギ酸4−ニトロフェニル(0.37g、1.86mmol、2当量)の溶液。
【0176】
24時間撹拌した後、反応混合物をCHCl 15mLで希釈し、1N NaHCOで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、濃縮して、フラッシュクロマトグラフィー(溶離液 1:2AE/シクロヘキサン)により精製して、純粋な炭酸塩:Id−p2を59%の収率で生成させた。HPLC tR14.1(勾配 30−100%B、20分)。
【0177】
【表1】

【0178】
【表2】

【0179】
2)Id−p1への環化
炭酸p−ニトロフェニル:Id−p2をトリフルオロ酢酸で30分間処理した。エーテルを添加して、対応するTFA塩を白色固体として沈殿させて得た。それをろ過して、更に精製せずに次のステップで用いた。TFA塩(220mg、0.44mmol、1当量)をMeCN(10mL)に溶解し、MeCN 25mL中のジイソプロピルエチルアミン(194μL、1.14mmol、2.6当量)およびヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(60mg、0.44mmol、1当量)の溶液に緩やかに添加した。反応混合物を3日間撹拌し、真空濃縮した。その後、CHClを添加して、有機相を1N NaHCO、ブラインで洗浄して、NaSOで乾燥させて、真空濃縮した。その後、残渣(110mg)をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。
【0180】
[CHCl/MeOH/AcOH(20:0.5:0.1)、その後、puis CHCl/MeOH(20:1)]により、Id−1 42mgを得た。
【0181】
HPLCtR(Id−1)5.88(勾配30−100%B、20分)
【0182】
HRMS(ESI)ではC1316の計算値が249.1234、測定値が249.1230であった。
【0183】
【表3】

【0184】
【表4】

【0185】
実施例7:1,1−ジオキソ−1λ−[1,2,5,8]チアトリアゾカン−4−オン(式If)の合成
【0186】
【化18】

【0187】
Ifの一般的合成スキーム
【0188】
【化19】

【0189】
i)(a)TFA;(b)飽和NaHCO、DCM;ii)Burgess試薬(2.5当量)、THF、70℃で2時間
【0190】
実施例8:10−メチル−6,6,11−トリオキソ−8,9,10,11,11a,12−ヘキサヒドロ−5H−6λ−チア−5a,7,10−トリアザシクロオクタ[b]ナフタレン−7−カルボン酸メチルエステル(式If−1)の合成
【0191】
【化20】

【0192】
If−1の一般的合成スキーム
【0193】
【化21】

【0194】
i)N−Boc保護ジペプチドアルコールを、0℃で30分間TFAで処理した。TFAを真空除去し、残渣をAcOEtに溶解した。撹拌しながら飽和NaHCOを添加し、10分後に有機相をNaSOで乾燥させ、真空濃縮して、If−p1を得た。
【0195】
ii)化合物If−p1(175mg、0.75mmol、1当量)を無水THF10mLに溶解し、Burgess試薬(534mg、2.24mmol、2.5当量)を添加した。その後、溶液を約70℃〜約90℃で2日間加熱還流した。その後、反応混合物を、飽和NHCl溶液(40mL)に注いだ。混合物をCHClで抽出し、有機相をHOで洗浄して、NaSOで乾燥させ、真空濃縮した。その後、粗混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl/MeOH/AcOH(18:1:0.2))で精製して、If−1を得た。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】1,3,5−トリアゼパン−2,6−ジオンスカホールド:Bと2,5−ジケトピペラジン:Aとの比較。
【図2】a)EtOCOCl、NMM、THF、−20℃、その後HO中のNaN;b)トルエン、65℃、その後、HOSuおよびピリジン;c)TFA、30分;d)DIEA、MeCN;e)PS−DIEA、CHCl、g=gemは、ChorevおよびGoodmanが提案した命名法による対応するアミノ酸の2−アルキルgem−ジアミノ誘導体を指す。
【図3】代表的な1,3,5−トリアゼパン−2,6−ジオン:4、7および9のX線結晶構造。
【図4】a)NaH(4当量)、RX(4当量);b)KF/Al(10当量)またはNaH(2当量)、RX(1.5当量)。
【図5】Me−IDXに比較した阻害剤分子の半最大阻害曲線(IC50)。PLA2酵素:hGXとhGVとの比較(Y軸は、PLA2の活性の%値であり、X軸は、阻害剤濃度である);阻害剤分子数(例えば「モル33#」)により、表Iで用いられた特定の化合物が同定された。
【図6】Me−IDXに比較した阻害剤分子の半最大阻害曲線(IC50)。PLA2酵素:hGXとhGVとの比較(Y軸は、PLA2の活性の%値であり、X軸は、阻害剤濃度である);阻害剤分子数(例えば「モル33#」)により、表Iで用いられた特定の化合物が同定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


(式中、
Wは、−C(R)(R5a)−;−C(R)(R6a)−C(R)(R7a)−;−C(R)=C(R)−;−N(R10)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構成部分であり;
Xは、−N(R1a)C(=Y)N(R)−;−OC(=Y)N(R)−;−N(R1a)C(=Y)O−;−N(R1a)S(=O)N(R)−;−N(R1a)S(=O)N(R)−;−C(R1a)(R3a)C(=Y)N(R)−およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構成部分であり;
YおよびZは、それぞれ互いに独立して、酸素(「O」)および硫黄(「S」)からなる群から選択される構成部分を表し;そして
、R1a、R、R、R3a、R、R、R5a、R、R6a、R、R7a、R、RおよびR10は、それぞれ互いに独立して、水素原子;アミノ酸側鎖;(C1〜C10)アルキル;(C1〜C10)アルケニル;(C1〜C10)アルキニル;(C5〜C12)単環式または二環式アリール;(C5〜C14)単環式または二環式アラルキル;単環式または二環式(C5〜C14)ヘテロアラルキル;ならびにN、O、SおよびPから選択されるヘテロ原子を5個まで有する(C1〜C10)単環式または二環式ヘテロアリール基からなる群から選択される構成部分を表し、前記基は、非置換であるか、またはハロゲン原子、NO、OH、アミジン、ベンズアミジン、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、アルコキシ、(C1〜C4)、アミノ、ピペラジン、ピペリジン、ジアルキルアミノ、グアニジン基、ビスアルキル化またはビスアシル化グアニド基、カルボン酸、カルボキサミド、エステル、ヒドロキサム酸、ホスフィン酸、ホスホナート、ホスホンアミダート、スルフヒドリルおよびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から更に選択される置換基1〜6個により置換されていてもよい)を含むPLA2酵素を阻害する化合物、または薬学的に許容され得るその塩。
【請求項2】
式I:
【化2】


(式中、
Wは、−C(R)(R5a)−;−C(R)(R6a)−C(R)(R7a)−;−C(R)=C(R)−;−N(R10)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構成部分であり;
Xは、−N(R1a)C(=Y)N(R)−;−OC(=Y)N(R)−;−N(R1a)C(=Y)O−;−N(R1a)S(=O)N(R)−;−N(R1a)S(=O)N(R)−;−C(R1a)(R3a)C(=Y)N(R)−およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構成部分であり;
YおよびZは、それぞれ互いに独立して、酸素(「O」)および硫黄(「S」)からなる群から選択される構成部分を表し;そして
、R1a、R、R、R3a、R、R、R5a、R、R6a、R、R7a、R、RおよびR10は、それぞれ互いに独立して、水素原子;アミノ酸側鎖;(C1〜C10)アルキル;(C1〜C10)アルケニル;(C1〜C10)アルキニル;(C5〜C12)単環式または二環式アリール;(C5〜C14)単環式または二環式アラルキル;単環式または二環式(C5〜C14)ヘテロアラルキル;ならびにN、O、SおよびPから選択されるヘテロ原子を5個まで有する(C1〜C10)単環式または二環式ヘテロアリール基からなる群から選択される構成部分を表し、前記基は、非置換であるか、またはハロゲン原子、NO、OH、アミジン、ベンズアミジン、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、アルコキシ、(C1〜C4)、アミノ、ピペラジン、ピペリジン、ジアルキルアミノ、グアニジン基、ビスアルキル化またはビスアシル化グアニド基、カルボン酸、カルボキサミド、エステル、ヒドロキサム酸、ホスフィン酸、ホスホナート、ホスホンアミダート、スルフヒドリルおよびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から更に選択される置換基1〜6個により置換されていてもよい)で示される化合物、または薬学的に許容され得るその塩を効果的な量で含む、患者の炎症状態を治療または予防する医薬組成物。
【請求項3】
薬学的に許容され得る担体、賦形剤、佐剤、別の生物活性剤またはそれらの組み合わせの少なくとも1つを更に含む、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
生物活性剤が、ステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、アセチルサリチル酸(acetylsiacylic acid)、シクロオキシゲナーゼ阻害剤またはその組み合わせの少なくとも1つを含む、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
治療薬が、薬学的に許容され得る形態で存在する、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項6】
薬学的に許容され得る形態が、腸溶性コーティングを含む錠剤またはカプセルを含む、請求項5記載の医薬。
【請求項7】
請求項2記載の医薬の効果的な量を、必要とする患者に投与することを含む、炎症疾患または状態の治療または予防の方法。
【請求項8】
医薬が、薬学的に許容され得る担体、賦形剤、佐剤、別の生物活性剤、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される別の成分の少なくとも1つを更に含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
生物活性剤が、ステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、アセチルサリチル酸、シクロオキシゲナーゼ阻害剤またはその組み合わせを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
医薬が、薬学的に許容され得る形態で投与される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
薬学的に許容され得る形態が、経口投与用の腸溶性コーティングを含む錠剤またはカプセルを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
医薬が、非経口投与される、請求項7記載の方法。
【請求項13】
炎症疾患または状態が、組織傷害、慢性関節リウマチ、骨関節炎、湿疹、狼瘡、IBD、クローン病、ARDS、大腸炎、乾癬、ぜん息、嚢胞性線維症、AIDS、狭窄、再狭窄、アルツハイマー病、パーキンソン病、癌、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症および心肺疾患からなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項14】
炎症に関連する生理学的状態を治療または予防するための、複数の容器を含むキットであって、前記容器の少なくとも1個が、請求項2記載の医薬または薬学的に許容され得るその塩を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−522234(P2009−522234A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547973(P2008−547973)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/070256
【国際公開番号】WO2007/074169
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(507311991)イミュファルマ・フランス・エスアー (4)
【氏名又は名称原語表記】ImmuPharma France SA
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【Fターム(参考)】