説明

ホスホン酸含有歯科材料

【課題】良好な接着特性と高い加水分解安定度を示す歯科材料の提供。
【解決手段】定着剤として使用するのに特に適した、エチレン性不飽和二重結合を有する加水分解安定性ホスホン酸を含有する歯科材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯科材料、特に、定着剤(adhesion promoter)または重合性セメント、例えば、独国特許公報DE−A−3536076およびDE−A−3536077から基本的に知られているような重合性酸を含有するグラスアイオノマーセメントもしくはコンポマー(compomer)に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性リン酸をコモノマーとして含有する歯科材料は知られており、該歯科材料は、通常はリン酸およびアクリレートもしくはメタクリレートを含有する。例えば、独国特許公報DE−A−19647140からは、ヒドロキシアクリレートまたはヒドロキシメタクリレートをホスフェートでエステル化することが知られている。このような材料の不利な点は加水分解安定度が低いことである。この理由は、ホスフェートとアルキル鎖との間およびメタクリレートとアルキル鎖との間におけるエステル結合が加水分解によって容易に分解するからである。これによって歯科材料の貯蔵安定性が低下し、また、口腔内条件下では、歯の内部における疲れ耐久度の低下がもたらされる。
【0003】
独国特許公報DE−A−19746708からは、ホスホネートを、スペーサーを介してメタクリレートエステルのメチル基へ結合させることが知られている。さらに、ウレタン結合を介してメタクリレートまたはスチロールに結合させたホスフィンオキシドが知られており(J.スミドら、ジャーナル・オブ・ポリマーサイエンス、パートA、ポリマーケミストリー、第31巻、第239頁〜第247頁(1993年))、また、エステルを介してホスホン酸とメタクリレートを結合させることも知られている(DE−A−19918974)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許第3536076号A明細書
【特許文献2】独国特許第3536077号A明細書
【特許文献3】独国特許第19647140号A明細書
【特許文献4】独国特許第19746708号A明細書
【特許文献5】独国特許第19918974号A明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.スミドら、ジャーナル・オブ・ポリマーサイエンス、パートA、ポリマーケミストリー、第31巻、第239頁〜第247頁(1993年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、冒頭で述べた種類の歯科材料であって、良好な接着特性と高い加水分解安定度を示す歯科材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この技術的課題は、特許請求の範囲の請求項1記載の特徴によって解決された。即ち、本発明による歯科材料は、下記の構造式(1)で表されるホスホン酸または該酸の塩を含有する:
【0008】
【化1】

式中、R、Rおよびpは相互に独立して下記のa)、b)またはc)で表される意義を有する:
a)R:少なくとも6個の炭素原子を有するアルキル基もしくはアルキレン基またはアリール基、
:H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチル、
p:1または2;
または
b)R:−CO−NR−R−[式中、RはH、アルキルもしくはアリールを示し、RはアリールもしくはC2n(式中、4≦n≦18である)を示すか、もしくはRはC2n−Si(R)−[O−Si(R)]−C2n−(式中、3≦n≦12および1≦m≦10であり、Rはメチル、エチルもしくはフェニルを示す)を示すか、もしくはRはC2n−COONH−C2n(式中、4≦n≦12である)を示す(この場合、Rはエーテル基もしくは別のウレタン基を示すことができる)]、
およびp:上記のa)の場合と同意義;
または
c)R:
【0009】
【化2】

(式中、R10はアリール基、少なくとも3個の炭素原子を有するアルキル基および1〜10個のポリエーテル単位を有するポリエーテル基から成る群から選択される基を示し、R11はアルキル基およびアリール基から成る群から選択される同一もしくは異なる基を示し、XはN、BもしくはCHを示す)、
:COOR、CONHR、Hもしくはフェニル(この場合、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびブチルから成る群から選択される基を示す)、
p:2。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1において定義されるように、反応性二重結合とホスホン酸基との間に比較的鎖長の長いブリッジを有する分子が高い加水分解安定度と共に改良された接着特性を示すという驚くべき知見に基づくものである。
【0011】
本発明の好ましい形態は、特許請求の範囲の従属請求項に記載されている。本発明の好ましい実施態様においては、ホスホン酸は次の構造式(2)を有する:
【0012】
【化3】

式中、Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。好ましくは、Rは、水素原子、メチル、エチルおよびイソプロピルからなる群から選択される。Rは4〜18個の炭素原子を有するアルキル基を示し、該アルキル基は非分枝状または分枝状であってもよい。好ましくは、該アルキル基は6〜12個の炭素原子を有する。本発明の範囲内においては、Rは、エーテル基もしくは別のウレタン基によって遮断されたアルキル鎖として形成されていてもよい。
【0013】
別の好ましい実施態様においては、ホスホン酸は下記の構造式(3)を有する:
【0014】
【化4】

式中、RまたはRはアリール基またはアルキル基を示す。該アルキル基は非分枝状または分枝状であってもよく、好ましくは、3〜12個の炭素原子を有する。置換基Rは同一もしくは異なっていてもよく、メチル基、エチル基またはフェニル基を示す。mは1〜10の数を示す。
【0015】
反応性二重結合とホスホン酸との間のブリッジ結合中にケイ素原子を有するホスホン酸の中でも、下記の構造式(4)を有する化合物が好ましい:
【0016】
【化5】

【0017】
下記の構造式(5)で表されるジホスホネートは、本発明による歯科材料の成分として使用するのに好ましいものである:
【0018】
【化6】

式中、Xは窒素原子、ホウ素原子またはCH−基を示し、Rは少なくとも3個の炭素原子を有する非分枝状もしくは分枝状アルキル基、アリール基または1〜10個のポリエーテル単位を有するポリエーテル基を示し、また、Yはエチレン性不飽和結合を有しており、特に、Yは、CH=CH−O−、スチロール、メタクリルアミドおよびCH=C(COOR12)−CH−(式中、R12はH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチルを示す)から成る群から選択される基を示す。
【0019】
本発明の別の対象は、本発明による歯科材料の定着剤、コンポマーまたは重合性セメントとしての使用である。
【0020】
定着剤として使用する場合には、歯科材料は専ら前記のホスホン酸またはその塩から形成させることができるが、該歯科材料は1種もしくは2種以上の溶剤および/または付加的な重合性モノマー(例えば、特に、アクリレートまたはメタクリレート)を含有することができる。
【0021】
適当な歯科材料用溶剤は当業者には周知であるが、好ましいものとしては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、エチルメチルケトン、エチルアセテートおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
水溶性メタクリレート、例えば、ヒドキシエチル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの添加が好ましい。他の好ましい(メタ)アクリレートとして適当なものは、少なくとも2個のメタクリレート基を有する以下に例示するような(メタ)アクリレートである:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[p−(ヒドロキシ(メタ)アクリロイルオキシ)フェニル]プロパン、エトキシル化ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、ウレタンポリエステル−ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリット−ペンタ(メタ)アクリレート。
【0023】
重合性カルボン酸型の他の酸を添加することもできる。この種の酸としては、マレイン酸−モノ−2−メタクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸−モノ−2−メタクリロイルオキシエチルエステルおよびトリメリット酸−モノ−2−メタクリロイルオキシエチルエステルが例示される。
【0024】
本発明の範囲内において、歯科材料が話題となる場合には、該材料は、歯の修復または補綴に使用される材料であって、本発明によるホスホネートまたはその塩を含有する全ての材料を意味する。本発明によるホスホン酸は定着剤に使用するのが特に有利である。
【0025】
本発明による歯材料には、特に以下の成分を含有させることができる:
本発明によるホスホン酸またはその塩:2.5〜60重量%、
他のラジカル重合性コモノマー:5〜80重量%、
溶剤:0〜80重量%、
ラジカル重合開始剤:0〜2重量%、
フィラー:0〜80重量%(この含有量は、定着剤、セメントまたはコンポマーとしての所望の用途によって左右される)。
【0026】
定着剤に対しては、フィラーの含有量を0〜20重量%にするのが好ましい。セメントおよびコンポマーとしては溶剤を含有しないものが好ましく、また、フィラーの含有量は40〜80重量%にするのが好ましい。
【実施例】
【0027】
以下において、本発明を実施例に基づいて説明する。先ず第一に、本発明によるホスホン酸の多段階合成法について説明し、次いで、本発明による定着剤の実施例による組成について説明する。
【0028】
1−(2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエニル)−ホスホン酸(式(6))の合成
【0029】
【化7】

PCl 104g(0.5モル)をトルエン1リットル中に懸濁させ、該懸濁液に2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン120ml(0.6モル)を冷却下で滴下した。反応を15℃で3時間おこなった後、SOを15℃で3時間導入した。次いで、トルエンとSOClを留去させ、トリフェニルホスファン0.5gを添加し、この混合物を弱減圧下において180℃で8時間保持した。得られた混合物をジクロロメタン100mlで希釈し、該希釈溶液に、冷却下で強く撹拌しながら、5モルのNaOH溶液300mlを滴下した。2時間後、反応混合物を水300mlで希釈し、該希釈物に、冷却下で25%のリン酸300mlを混合した。この混合物をジクロロメタン500mlを用いる振とう処理に3回付し、有機相をMgSOを用いて乾燥させ、次いで、溶剤を真空下で除去することによって、褐色のシロップ状物を42g得た(収率:44%)。
【0030】
6−メタクリルアミド−2,5−ジメチル−1−ヘキセニル−ホスホン酸(式(7))の合成
【0031】
【化8】

1−(2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエニル)−ホスホン酸19g(0.1モル)を氷酢酸100mlに溶解させ、該溶液にフェノチアジン60mgとメタクリルニトリル7g(0.1モル)を混合し、次いで、85%硫酸12gを添加した。50℃で24時間保持した後、沈殿物を冷却させ、これに水200mlとジクロロメタン200mlを混合し、次いで、ジクロロメタン200mlを用いる振とう処理に合計3回付した。一緒にした有機相を水を用いる振とう処理にさらに2回付した後、モレキュラーシーブを用いて乾燥させることによって生成物を18g得た(収率:66%)。
【0032】
1−(4−メチル−4−ペンテニル)−ホスホン酸(式(8))の合成
【0033】
【化9】

1−ブロム−4−メチル−4−ペンテン4g(48ミリモル)をP(OCH 7.5g(60ミリモル)と共に、窒素中、120℃で6時間加熱した。得られた溶液を室温まで冷却した後、37%の塩酸35mlと混合し、次いで、100℃でさらに20時間加熱した。得られた溶液を再び冷却した後、水10mlと混合した。水相を分離して得られた淡褐色の沈殿物を空気中で乾燥させることによって生成物を5.6g得た(収率:71%)。
【0034】
4−メタクリルアミド−4−メチル−ペンチル−ホスホン酸(式(9))の合成
【0035】
【化10】

1−(4−メチル−4−ペンテニル)−ホスホン酸(式(12))1.9g(10ミリモル)を氷酢酸10mlに溶解させ、得られた溶液にフェノチアジン6mgとメタクリルニトリル0.7g(10ミリモル)を混合し、次いで、85%の硫酸1.2gを冷却下で添加した。50℃で24時間保持した後、得られた沈殿物を冷却し、これを水20mlおよびジクロロメタン20mlと混合し、次いで、ジクロロメタン20mlを用いる振とう処理に合計3回付した。一緒にした有機相を水を用いる振とう処理にさらに2回付した後、モレキュラーシーブを用いて乾燥させることによって生成物を1.3g得た(収率:52%)。
【0036】
2−(エチルオキシカルボニル)−2−プロペニル−1−オキシエチル−アミノビスメチレンホスホン酸(式(10))の合成
【0037】
【化11】

KOH 4.45g(60ミリモル)をDMSO 50ml中において、室温下で5分間の撹拌処理に付した。次いで、エタノールアミノ−N、N−ビスメチレンホスホン酸2.49g(10ミリモル)を注意深く添加した。得られた僅かに着色した懸濁液にα−ブロムメチルアクリル酸エチルエステル2.94g(15ミリモル)をゆっくりと滴下する。この反応混合物を室温で24時間撹拌した後、冷水50mlと混合し、次いで、系のpHを酸性pHに調整した後、ジクロロメタン50mlを用いる抽出処理をおこなった。有機相を乾燥させた後、溶剤を真空下で除去し、残存するワックス状残渣を乾燥機内で乾燥させることによって生成物を1.5g得た(収率:40%)。
【0038】
4−メタクリルアミド−4−メチル−ペンチル−ホスホン酸(式(9))および1−(4−メチル−4−ペンテニル)−ホスホン酸(式(8))の別の合成法

1−(4−メチル−4−ペンテニル)−ホスホン酸ジエチルエステル
5−ブロム−2−メチル−2−ペンテン10ml(0.0752モル)をP(OC 15ml(0.0856モル)と共に、反応中に生成するエチルブロミドを留去させながら、160〜190℃で加熱した。得られた粗生成物はそのまま使用した。
【0039】
1−(4−メチル−4−ペンテニル)−ホスホン酸(式(8))
1−(4−メチル−4−ペンテニル)−ホスホン酸ジエチルエステル4g(0.0182モル)を乾燥クロロホルム40mlに溶解させ、この溶液をトリメチルシリルブロミド4ml(0.04モル)と混合し、この混合物を室温で2時間撹拌した後、真空下で濃縮させ、次いで、エタノール/水(1:1)混合物40mlと混合し、さらに2時間撹拌した。反応生成物を回転エバポレーターを用いて濃縮させ、残渣をPと共に真空下で乾燥させた。
【0040】
4−メタクリルアミド−4−メチル−ペンチル−ホスホン酸(式(9))
1−(4−メチル−4−ペンテニル)−ホスホン酸2.99g(0.0182モル)をBHT3mgおよびメタクリルニトリル1.53ml(1.22g;0.0182モル)と混合し、この混合物に97%の硫酸1ml(1.84g)と水0.32mlとの混合物を20℃で滴下した。反応系を20〜30℃で16時間保持した後、系の温度を4時間以内に60℃まで上昇させ、この温度で反応系をさらに16時間保持した。次いで、冷却した沈殿物を水1.16mlとメタノール10mlとの混合物に溶解させ、この溶液中の硫酸は、NaOH1.46g、水1.1mlおよびメタノール10mlを含有する溶液を添加することによって中和した。最終的には、混合物のpHは酸性pHに維持されなければならない。硫酸ナトリウムを濾去し、濾液を真空下で十分に濃縮させた。
【0041】
以下の表1に本発明による3種類の定着剤(実施例1〜3)の組成を示す:
【0042】
【表1】

【0043】
実施例4:二成分定着剤系
本発明による接着性モノマーの1種を活性成分として含有するプライマーから成る定着剤系の組成、および第2段階においてプライマーが予め付与される歯牙硬質物質上に塗布されるボンドの組成を以下にまとめて示す。
【0044】
成分1:プライマー
【0045】
【表2】

【0046】
プライマーの個々の成分を秤量してガラス容器内へ入れ、室温において、撹拌下で均質な溶液が得られるまで混合させた。
【0047】
成分2:ボンド
ボンドとしては、市販されている定着剤系「エクシット(Ecusit)-プライマー/モノ」のプライマーB(デンタル・マテリアル・ゲゼルシャフトmbH(ハンブルグ、独国)製)を使用した。
【0048】
実施例5:一成分定着剤系
特に本発明による接着性モノマーの1種を含有する成分から成る定着剤系の組成を以下の表3にまとめて示す。
【0049】
【表3】

【0050】
定着剤の個々の成分を秤量してガラス容器内へ入れ、室温において、撹拌下で均質な溶液が得られるまで混合した。
【0051】
実施例6(比較実施例)
実施例4記載のボンド[エクシット-プライマー/モノ-定着剤系のプライマーB(デンタル・マテリアル・ゲゼルシャフトmbH(ハンブルグ、独国)製)]を、実施例4のプライマーを予め適用することなく使用した。
【0052】
せん断結合強度(shear bond strength)の測定:
本発明による定着剤を使用する場合における、歯牙硬質物質へのコンポシットの接着力を測定するために、せん断結合試験をおこなった。このために、予め歯髄を除去した後、0.5重量%のクロラミンTの水溶液中に保存したウシの切歯の前面から象牙質までを湿潤状態で研磨し、次いで、きめの細かいサンドペーパー(P500)を用いて湿潤状態で平面状に研磨した。該切歯を脱イオン水中に短時間保存した後、引き上げて、研磨表面を通風下で乾燥させ、次いで、定着剤系を該研磨表面上へ塗布した。
【0053】
二成分定着剤(実施例4)
実施例4のプライマーを研磨された象牙質表面上へマイクロブラシを用いて20秒間すり込んだ。次いで、実施例4のボンドを用いて同様の処理をおこない、処理表面に空気を吹き付けた後、歯科用ランプ[「トランスルックスEC」;フィルマ・クルツァー・ウント・カンパニーGmbH(ヴェールハイム、独国)製]を用いて光を20秒間照射した。直径が3.0mmのキャビティを有する2分化テフロン(登録商標)フォームを装着させ、次いで、歯科用コンポジット(「エクシット」;デンタル・マテリアル・ゲゼルシャフトmbH(ハンブルグ、独国)製)を充填させた後、光を40秒間照射した(クルツァー社製の「トランスルックスEC」を使用)。
【0054】
一成分定着剤(実施例5)
実施例5の定着剤を研磨された象牙質表面上へマイクロブラシを用いて20秒間すり込んだ。次いで、処理表面に空気を吹き付けた後、歯科用ランプ[「トランスルックスEC」;フィルマ・クルツァー・ウント・カンパニーGmbH(ヴェールハイム、独国)製]を用いて光を20秒間照射した。実施例5の定着剤を象牙質表面上へマイクロブラシを用いて再度20秒間すり込み、該表面に空気を吹き付けた後、歯科用ランプ[「トランスルックスEC」;フィルマ・クルツァー・ウント・カンパニーGmbH(ヴェールハイム、独国)製]を用いて光を20秒間照射した。直径が3.0mmのキャビティを有する2分化テフロン(登録商標)フォームを装着させ、次いで、歯科用コンポジット(「エクシット」;デンタル・マテリアル・ゲゼルシャフトmbH(ハンブルグ、独国)製)を充填させた後、光を40秒間照射した(クルツァー社製の「トランスルックスEC」を使用)。
【0055】
比較実施例(実施例6)
実施例6のボンドを研磨された象牙質表面上へマイクロブラシを用いて20秒間すり込み、次いで、処理表面に圧縮空気を吹き付けた後、歯科用ランプ[「トランスルックスEC」;フィルマ・クルツァー・ウント・カンパニーGmbH(ヴェールハイム、独国)製]を用いて光を20秒間照射した。直径が3.0mmのキャビティを有する2分化テフロン(登録商標)フォームを装着させ、次いで、歯科用コンポシット(「エクシット」;デンタル・マテリアル・ゲゼルシャフトmbH(ハンブルグ、独国)製)を充填させた後、光を40秒間照射した(クルツァー社製の「トランスルックスEC」を使用)。
【0056】
各々の場合、テフロン(登録商標)フォームを除去し、調製試料を水中において37℃で23時間保存した後、23℃で1時間保存する。せん断結合強度の測定のために(ISO/DTSコミティー・ドラフト11405、レファレンス・ナンバーISO/TC 106/SC 1N 321および該ドラフトに引用されている文献参照)、調製試料をホルダーに装着させ、0.50mm/分で送るときの力−距離−ダイアグラムを測定するための装置(「Z010」;ツビックGmbH・ウント・カンパニー(ウルム、独国)製)を用いて測定をおこなった。試験は複数個(n個)の調製試料についておこなった。試験結果を以下の表4にまとめて示す:
【0057】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造式を有するホスホン酸および/または該酸の塩を1種または2種以上含有することを特徴とする歯科材料:
【化1】

式中、R、Rおよびpは相互に独立して下記のa)、b)またはc)で表される意義を有する:
a)R:少なくとも6個の炭素原子を有するアルキル基もしくはアルキレン基またはアリール基、
:H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチル、
p:1または2;
または
b)R:−CO−NR−R−[式中、RはH、アルキルもしくはアリールを示し、RはアリールもしくはC2n(式中、4≦n≦18である)を示すか、もしくはRはC2n−Si(R)−[O−Si(R)]−C2n−(式中、3≦n≦12および1≦m≦10であり、Rはメチル、エチルもしくはフェニルを示す)を示すか、もしくはRはC2n−COONH−C2n(式中、4≦n≦12である)を示す(この場合、Rはエーテル基もしくは別のウレタン基を示すことができる)]、
およびp:上記のa)の場合と同意義;
または
c)R:
【化2】

(式中、R10はアリール基、少なくとも3個の炭素原子を有するアルキル基および1〜10個のポリエーテル単位を有するポリエーテル基から成る群から選択される基を示し、R11はアルキル基およびアリール基から成る群から選択される同一もしくは異なる基を示し、XはN、BもしくはCHを示す)、
:COOR、CONHR、Hもしくはフェニル(この場合、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびブチルから成る群から選択される基を示す)、
p:2。
【請求項2】
ホスホン酸が下記の構造式を有する請求項1記載の歯科材料:
【化3】

(式中、Rは少なくとも4個(好ましくは、6〜12個)の炭素原子を有するアルキル基もしくはアリール基を示し、Rはアルキル、アリールもしくはHを示す)。
【請求項3】
ホスホン酸が下記の構造式を有する請求項1記載の歯科材料:
【化4】

(式中、RおよびRは同一もしくは異なるアリールもしくはアルキルを示し、Rは同一もしくは異なるメチル、エチルもしくはフェニルを示し、mは1〜10の数を示す)。
【請求項4】
ホスホン酸が下記の構造式を有する請求項1記載の歯科材料:
【化5】

(式中、XはN、BもしくはCHを示し、R12はH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルもしくはブチルを示し、R13は少なくとも3個の炭素原子鎖長を有するアルキル、アリールもしくは1〜10個のポリエーテル単位を有するポリエーテル基を示す)。
【請求項5】
溶剤をさらに含有する請求項1から4いずれかに記載の歯科材料。
【請求項6】
溶剤が水、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、エチルメチルケトンおよびエチルアセテートから成る群から選択される請求項5記載の歯科材料。
【請求項7】
ホスホン酸のアルカリ土類金属塩、アルカリ金属塩および/またはアンモニウム塩を含有する請求項1から6いずれかに記載の歯科材料。
【請求項8】
モノ−、ジ−もしくはオリゴ−メタクリレートをさらに含有する請求項1から7いずれかに記載の歯科材料。
【請求項9】
フィラーをさらに含有する請求項1から8いずれかに記載の歯科材料。
【請求項10】
フィラーがイオン放出性である請求項9記載の歯科材料。
【請求項11】
スターターをさらに含有する請求項1から10いずれかに記載の歯科材料。
【請求項12】
請求項1から11いずれかに記載の歯科材料の定着剤または定着剤の成分としての使用。
【請求項13】
請求項1から11いずれかに記載の歯科材料のコンポマーもしくは重合性セメントまたはこのようなコンポマーもしくはセメントの成分としての使用。

【公開番号】特開2013−10784(P2013−10784A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−196901(P2012−196901)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2002−506680(P2002−506680)の分割
【原出願日】平成13年7月3日(2001.7.3)
【出願人】(503011251)エルンスト・ミュールバウアー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】Ernst Muehlbauer GmbH & Co. KG
【Fターム(参考)】