説明

ホスロリルコリンをベースにする医療用両親媒性シリコーン

医療用具の成分として局所用途と内部用途の両方に使用される両親媒性バイオミメティックホスホリルコリン含有シリコーン化合物。双性イオン性ホスホリルコリン基を含むシリコーン化合物は重合性であっても、または非重合性であってもよい。具体的な応用例としては、眼用レンズ、眼用レンズケア溶液、液体絆創膏、創傷ドレッシング、ならびに潤滑性および抗血栓性コーティングの有効機能成分としての使用が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
[0001]本発明は、双性イオン性成分を有する物質の両親媒性組成物およびその製造に関する。より詳細には、本発明は、医療用具の成分として局所用途と内部用途の両方に使用される、バイオミメティックホスホリルコリン含有シリコーンを提供する。双性イオン性ホスホリルコリン基を含む本発明のシリコーン化合物は、重合性であっても、または非重合性であってもよい。具体的な応用例としては、眼用レンズ、眼用レンズケア溶液、液体絆創膏、創傷ドレッシング、ならびに潤滑性および抗血栓性コーティングの有効機能成分としての使用が挙げられる。
【0002】
[背景技術]
[0002]シリコーンハイドロゲルは、眼用レンズに現在広く使用されている材料である。幾つかのブランドで市販されている。これらのレンズは患者に快適であるため、市販され使用されてきたが、これらのレンズの使用様式は、物理的特性(レンズの酸素透過および潤滑性を含む)、ならびに装用中のレンズへの望ましくないタンパク質および脂質の付着量の両方に依存する。シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズでは、レンズの快適さと相関した酸素透過性は、設計されたシリコーンおよび/または過フッ素化化合物を使用することによりうまく達成することができ、一方、濡れ性および/または潤滑性は、様々な表面改質法によりまたはハイドロゲル組成物に親水性成分を組み込むことにより達成することができる。現在、光学的透明性と所望の潤滑性を有し、弾性率が調整可能で酸素透過性が高い最終シリコーンハイドロゲルレンズを提供する様々な方法が存在する。
【0003】
[0003]装用中の眼の涙液からレンズ材料への望ましくない成分の吸着は、患者の感じる快適さが低減する一因となる。さらに、レンズを使用するためのレンズケア法に従わないと、細菌感染が起こる可能性がある。望ましくない吸着の程度によって、特定のレンズに対するレンズケアの必要性が決まり、眼用レンズがかすみまたは不快感を生じさせることなく眼内に存在し得る持続時間に影響が及ぶことになる。
【0004】
[0004]重合性抗微生物シリコーンハイドロゲル化合物は、レンズに関連する感染が低減し、長時間の装用に適している新世代の市販の眼用レンズを支持するコンタクトレンズ配合物に非常に有用である。これらの化合物が眼用レンズに付与する固有の抗微生物活性は、レンズケアに関連する患者の眼感染の発生を低下させることになる。重合性クオタニウムシリコーン有効成分からレンズ配合物における金属塩の使用にわたる例が、例えば、米国特許出願公開第2007/0142583A1号明細書(Schorzmanら)、米国特許出願公開第2008/0182956A1号明細書(Stanbroら)、米国特許出願公開第2008/0102122A1号明細書(Mahadevanら)などの文献に報告されている。
【0005】
[0005]長時間の装用を支持することになる別の重要な特徴は、レンズへの望ましくないタンパク質や脂質の付着に対する耐性を示す化合物の組み込みである。超低汚染性の表面を有し、タンパク質が吸着しにくいコーティングを得るために、スルホベタイン誘導体やカルボキシベタイン誘導体などの双性イオン性成分がポリマー骨格に組み込まれてきた。米国特許出願公開第2008/011861A1号明細書(Shaoiyiら)参照。
【0006】
[0006]バイオミメティックホスホリルコリン(PC)をベースにするポリマーは、非常に優れた耐汚染性を示すことが知られている。ホスホリルコリンをベースにする非シリコーンハイドロゲルレンズは市販されており、装用後のタンパク質や脂質による汚染が極めて少ない。国際公開第92/07885A1号パンフレット(Bowersら)およびYoungら、“Six month clinical evaluation of a biomimetic hydrogel contact lens,”The CLAO Journal,23(4):226−36(1997)を参照されたい。また、2−メタクリロキシエチルホスホリルコリン(MPC)を結合するためにエアプラズマで表面改質されたシリコーン眼内レンズ(IOL)は、細菌付着およびコロニー形成の抑制の他に、IOLの親水性が向上していることも報告された。Huangら、“Surface modification of silicone intraocular lens by 2−methacryloyloxyethyl phosphorylcholine binding to reduce Staphylococcus epidermidis adherence,”Clinical & Experimental Ophthalmology,35:462−467(2007)。別の研究では、医療用具関連感染に伴って単離されることが多い4種類のヒト病原性微生物、即ち、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)は全部、非コーティング面よりMPCコーティング面に結合する傾向が低いことが分かった。これは、MPCコーティング面の「超親水性」の効果によるものであった。Hirotaら、“Coating of a surface with 2−methacryloyloxyethyl phosphorylcholine(MPC)co−polymer significantly reduces retention of human pathogenic microorganisms,”FEMS Microbiology Letters,248:37−45(2005)。
【0007】
[0007]重合性シリコーン化合物にホスホリルコリン部分を組み込むことにより、シリコーンの高い酸素透過性と、生体安定性ホスホリルコリン(PC)成分によって付与される比較的低いタンパク質接着性、親水性および抗菌性といった有益な特性が兼ね備えられる。ポリマー系にPCを組み込むと、タンパク質吸着の低減の他に、医療用具に使用するのに適した、血小板の粘着および活性化が低減する抗血栓性表面が形成されることも報告された。Ishiharaら、“Antithrombogenic polymer alloy composed of 2−methacryloyloxyethyl phosphorylcholine polymer and segmented polyurethane,”Journal of Biomaterials Science:Polymer Edition,11(11):1183−1195(2000)。Yoneyamaら、“The vascular prosthesis without pseudointima prepared by antithrombogenic phospholipid polymer,”Biomaterials,23:1455−1459(2002)。
【0008】
[0008]2−メタクリロイルホスホリルコリン(MPC)とn−ブチルメタクリレートとの共重合体は、コンタクトレンズ本体と包装溶液の両方に使用されることが報告された。そのレンズは、長時間にわたりコンタクトレンズから親水性ポリマーを放出することができ、表面摩擦を低減することが分かった。米国特許出願公開第2009/0182067Al(Liu)を参照されたい。ホスホリルコリンでコーティングされたシリコーンハイドロゲルレンズは、前進接触角と後退接触角との差であるヒステリシスが極めて小さいことによって示される濡れ性の非常に高い界面を形成することが報告された。コーティングされていないシリコーンハイドロゲルは比較的低いタンパク質吸着を示すが、PCコーティングされたレンズではその効果が向上し、タンパク質汚染の非常に少ない表面が得られる。Willisら、“A novel phosphorylcholine−coated contact lens for extended wear use,”Biomaterials,22:3261−3272(2001)。
【0009】
[0009]2−メタクリロイルホスホリルコリン(MPC)とビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピルグリセロールメタクリレートとのランダム共重合によって製造されたシリコーンハイドロゲルと、相互侵入網目構造(IPN)のように製造されたシリコーンハイドロゲルは両方とも親水性であり、耐タンパク質吸着性(これは、他にシリコーンハイドロゲルで一般に見られる)を有することが分かった。超親水性表面は、とりわけIPNをベースにするシリコーンハイドロゲルで達成された。Shimizuら、“Super−hydrophilic silicone hydrogels with interpenetrating poly(2−methacryloxyethyl phosphorylcholine) networks,”Biomaterials,31:3274−3280(2010)。
【0010】
[0010]眼科用途でのホスホリルコリンの使用に関して報告された化学はほとんど全て、MPCの使用、またはこのモノマーと他の成分との共重合に中心を置いている。所望の機能性を有する光学的に透明な眼用レンズを支持するには、シリコーンハイドロゲル骨格におけるMPC関連ポリマーの相分離を克服する必要がある。従って、ホスホリルコリン部分を導入したシリコーンモノマーおよびオリゴマーを設計することが重要である。これらの化合物の両親媒性により、それらは典型的なレンズ配合物中でシリコーンおよび/またはフッ素化疎水性物質と親水性成分との有効な相溶化剤となる。このようなハイブリッド化合物をシリコーンハイドロゲル配合物に使用することにより、従来のシリコーンハイドロゲルレンズと比較して高い酸素透過性と優れた濡れ性を合わせ持ち、レンズ付着物が低減するコンタクトレンズを形成することが可能になる。
【0011】
[発明の概要]
[0011]本発明は、高い酸素透過性および耐バイオフィルム形成性の表面を必要とする医療用具用途に使用されるバイオミメティックホスホリルコリン(PC)基を含有する新規な重合性および非重合性シリコーン化合物を提供する。本発明で開示されるホスホリルコリンを有する重合性化合物は、コンタクトレンズ配合物中のモノマーまたは架橋剤として有用である。PC含有化合物が徐放されタンパク質および脂質付着物を低減できるように、またレンズの濡れ性および/または潤滑性が向上するように、PC基を有する非重合性化合物をコンタクトレンズの処理に使用してもよい。さらに、非重合性PC含有シリコーン化合物は、レンズ包装溶液およびレンズケア溶液中の配合成分として使用することができる。
【0012】
[0012]一態様では、本発明は、1つ以上のペンダントのリン酸基が同数の第四級アミン基に共有結合している、ホスホリルコリンをベースにする両親媒性シリコーンに関する。これらのシリコーンは、同じペンダント基に正電荷と負電荷の両方を有する両性であり、その中に親水基と親油基を有するため両親媒性である。
【0013】
[0013]本発明は、双性イオン性ホスホリルコリン基と1つ以上のビニル基を有する重合性シリコーン化合物を提供する。この実施形態では、シリコーン化合物は、重量平均分子量500〜50,000ダルトンのシリコーン部分を含んでもよい。双性イオン性ホスホリルコリン部分は、リン酸アニオンとアンモニウムカチオンを含んでもよい。ビニル末端基はカルボニル基に隣接していてもよい。
【0014】
[0014]本発明は、また、双性イオン性ホスホリルコリン基を含む非重合性シリコーン化合物も提供する。この実施形態では、シリコーン化合物は、重量平均分子量1000〜1,500,000ダルトンのシリコーン部分を含んでもよく、双性イオン性ホスホリルコリン末端基はリン酸アニオンとアンモニウムカチオンを含む。
【0015】
[0015]本発明は、本発明の化合物から製造されるハイドロゲル組成物に、高い酸素透過性、タンパク質吸着の低減、および潤滑性表面特性を含む多数の利点を提供する。さらに、本発明によるホスホリルコリン基を有する非重合性の変種は、コンタクトレンズ包装溶液およびレンズケア溶液に有用であり、タンパク質や脂質の吸着を低減し、レンズの濡れ性および/または潤滑性を向上させることができる。
【0016】
[発明の詳細な説明]
[0016]本発明は、双性イオン性ホスホリルコリン末端基を含む非重合性シリコーン化合物を提供する。本発明の非重合性シリコーン化合物は、重量平均分子量1000〜1,500,000ダルトンのシリコーン部分を含む。本発明は、また、分子内に双性イオン性ホスホリルコリン末端基と少なくとも1つのビニル末端基を含む重合性シリコーン化合物も提供する。ビニル末端基および双性イオン性末端基はシリコーンの別々の末端基に存在してもよく、またはそれらは両方とも同じ末端基部分に存在してもよい。本発明の重合性シリコーン化合物は、重量平均分子量500〜50,000ダルトンのシリコーン部分を含む。本発明の重合性シリコーン化合物のビニル基は、カルボニル基に隣接している。本発明の重合性シリコーン化合物と非重合性シリコーン化合物の両方において、双性イオン性ホスホリルコリン末端基はリン酸アニオンとアンモニウムカチオンを含む。本発明によって提供されるシリコーン分子の末端基には双性イオン性ホスホリルコリン部分(およびビニル部分)が存在するため、後述の使用に供される。これに関して「末端基」という用語は、当該分子から製造される物品の表面に官能基を配置することが容易になるように、分子の末端、または分子の末端の十分近くにあることを意味する。双性イオン性ホスホリルコリン部分の場合、使用は生体に影響を及ぼす用途を含むことになり、一方、ビニル基の場合、使用は重合を必要とすることになる。
【0017】
[0017]本発明の重合性シリコーン化合物と非重合性シリコーン化合物のシリコーン部分は、平均組成式RSiO(4−a−b)/2(式中、RおよびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基から選択される同じ基または異なる基であり、添え字aおよびbは、条件0<a<3、0<b<3、およびl<a+b<3を満たす正の数である)を有するシリコーン部分であり得る。
【0018】
[0018]適したシリコーン部分を、次式
13YR11Si(R1415)O[Si(R1617)O][Si(R2728)O]Si(R2930)R12
{式中:
14、R15、R16、R17、R27、R28、R29、およびR30は、互いに独立して、C1−8アルキル、C1−4アルキル置換フェニル、C1−4アルコキシ置換フェニル、フルオロ(C1−18アルキル)、シアノ(C1−12アルキル)、ヒドロキシ−C1−6アルキル、アミノ−C1−6アルキルであり;
Yは、−COO−、−CONR18−、−OCOO−、または−OCONR18−(各R18は、独立してHまたはC1−7アルキルである)を表し;
11は、−O−、−COO−、−CONR18−、−OCOO−または−OCONR18−で中断されていてもよく、ヒドロキシ基、第1級、第2級もしくは第3級アミン基、カルボキシ基、またはカルボン酸を含んでもよい2価のC1−25アルキレン基またはC6−30アリールアルキレン基を表し;
12は、−O−、−COO−、−CONR14−、−OCOO−または−OCONR14−で中断されていてもよく、ヒドロキシ基、第1級、第2級もしくは第3級アミン基、またはカルボキシ基を含んでもよい1価のC1−25アルキルまたはC6−30アリール基であり;
13は、少なくとも1つのヒドロキシ基、第1級もしくは第2級アミン基、カルボキシ基、またはオレフィン性不飽和部位を含む1価のC1−25アルキルまたはC6−30アリール基であり;
rおよびtは、互いに独立して700以下の整数であり、(r+t)は5〜700である}
のものを含むシリコーンから本発明の重合性化合物および非重合性化合物に導入してもよい。このようなモノマーまたはマクロマーとしては、例えば、3−メタクリロキシプロピル末端−ブチル末端−ポリジメチルシロキサンおよび(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル末端−ブチル末端−ポリジメチルシロキサンを挙げてもよい。適した一官能化ポリシロキサンは、例えば、アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Company)およびゲレスト(GELEST)(Morrisville,Pennsylvania)から市販されている。
【0019】
[0019]本発明の化合物のシリコーン部分を提供するのに使用され得るシロキサン含有モノマーの具体例としては、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン、カルボキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、カルボキシデシル末端ポリジメチルシロキサン、アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシアルキル末端ポリ(プロピレンオキシ)ポリジメチルシロキサン、3−メタクリロキシプロピルペンタメチルジシロキサン、ビス(メタクリロキシプロピル)テトラメチル−ジシロキサン、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]アクリルアミド、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル]メタクリルアミド、トリストリメチルシリルオキシシリルプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチレンオキシプロピルメチルシロキサン−(3,4−ジメトキシフェニルプロピル)−メチルシロキサン、N−[トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルイル]メタクリルアミド、N−[トリス(トリメチルシロキシ)−シリルプロピル]アクリルアミド、(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン−)、(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、3−メタクリロキシ−2−(2−ヒドロキシエトキシ)プロピルオキシ)プロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、N−2−メタクリロキシエチル−O−(メチル−ビス−トリメチルシロキシ−3−プロピル)シリルカルバメート、1,3−ビス[4−ビニルオキシカルボニルオキシ)ブト−1−イル]テトラメチル−ジシロキサン、3−(トリメチルシリル)、プロピルビニルカーボネート、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−[トリス(トリメチルシロキシ)シラン],3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカーボネート、t−ブチルジメチルシロキシエチルビニルカーボネート、トリメチルシリルエチルビニルカーボネート、トリメチルシリルメチルビニルカーボネート、ハイドライド末端ポリジメチルシロキサン、およびシラノール末端ポリジメチルシロキサンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
[0020]本発明の重合性化合物は、式(I)
【化1】



{式中:Rは、炭素数20以下の、直鎖状、分枝状もしくは環状構造のアルキル基もしくはアルコキシ基、または芳香族基、好ましくはメチル、n−ブチル、メトキシまたはフェニルであり;RおよびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基、好ましくはメチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じ基または異なる基であり;nは、1〜700単位、好ましくは1〜15単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;Rは、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、過フッ素化ポリエーテル結合、カルバメート結合、エステル結合、アミド結合、または尿素結合、好ましくは30個以下の炭素および/または酸素結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、または過フッ素化ポリエーテル結合であり;RおよびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環、好ましくはメチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基であり;Rは、Hまたは炭素数1〜6のアルキル基であり;Xは、O、NH、またはN−C1−6アルキルである}
を有してもよい。
【0021】
[0021]その具体例としては、化合物1:
【化2】



が挙げられる。
【0022】
[0022]本発明の重合性化合物は、式(II)
【化3】



{式中:RおよびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基、好ましくはメチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じまたは異なる基であり;nは、1〜700単位、好ましくは1〜15単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;Rは、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、過フッ素化ポリエーテル結合、カルバメート結合、エステル結合、アミド結合、または尿素結合、好ましくは30個以下の炭素および/または酸素結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、または過フッ素化ポリエーテル結合であり;RおよびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環、好ましくはメチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基であり;Rは、Hまたは炭素数1〜6のアルキル基であり;Xは、O、NH、またはN−C1−6アルキルである}
を有してもよい。
【0023】
[0023]その具体例としては、化合物2および4:
【化4】



および
【化5】



が挙げられる。
【0024】
[0024]本発明の重合性化合物は、式(III)
【化6】



{式中:Rは、炭素数10以下の直鎖状または分枝状低分子量またはオリゴマー構造のアルキレン結合基またはポリエーテル結合基であり;RおよびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基から選択される同じ基または異なる基であり;nは、1〜700単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;Rは、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、過フッ素化ポリエーテル結合、カルバメート結合、エステル結合、アミド結合、または尿素結合であり;RおよびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環であり;Rは、Hまたは炭素数1〜6のアルキル基であり;Rは、炭素数1〜22のアルキル基またはアルコキシ基であり;Xは、O、NH、またはN−C1−6アルキルである}
を有してもよい。
【0025】
[0025]その具体例としては、化合物3:
【化7】



が挙げられる。
【0026】
[0026]本発明の重合性化合物は、式(IV)
【化8】



{式中:Rは、炭素数10以下の直鎖状または分枝状低分子量またはオリゴマー構造のアルキレン結合基またはポリエーテル結合基であり;RおよびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基から選択される同じ基または異なる基であり;nは、1〜700単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;Rは、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、過フッ素化ポリエーテル結合、カルバメート結合、エステル結合、アミド結合、または尿素結合であり;RおよびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環であり;Rは、Hまたは炭素数1〜6のアルキル基であり;Rは、炭素数1〜22のアルキル基またはアルコキシ基であり;Xは、O、NH、またはN−C1−6アルキルである}
を有してもよい。
【0027】
[0027]その具体例としては、化合物5:
【化9】



が挙げられる。
【0028】
[0028]本発明は、また、前述のモノマーのいずれか1つを重合することにより、または前述のモノマーのいずれか1つを含有する配合物を重合することにより生成するポリマーも想到する。このような重合は、熱、紫外線、可視光線または別の放射線源の存在下でフリーラジカル重合開始剤により開始されてもよい。重合開始剤は、過酸化アセタール、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、過酸化ステアロイル、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシピバレート、およびパーオキシジカーボネートからなる群から選択されてもよい。
【0029】
[0029]本発明の非重合性化合物は、式(V)
【化10】



{式中:Rは、炭素数20以下の、直鎖状、分枝状もしくは環状構造のアルキル基もしくはアルコキシ基、または芳香族基、好ましくはアルキル基または単環式芳香族炭化水素基、より好ましくはメチル、n−ブチル、メトキシまたはフェニルであり;RおよびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基、好ましくはアルキル基、アルコキシ基および芳香族基、より好ましくはメチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じ基または異なる基であり;nは、1〜20,000単位、好ましくは1〜700単位、より好ましくは1〜15単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;Rは、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合またはポリエーテル結合または過フッ素化ポリエーテル結合、好ましくは30個以下の炭素および/または酸素結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、または過フッ素化ポリエーテル結合であり;RおよびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、または芳香族基、より好ましくはメチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基であり;Rは、炭素数1〜22のアルキル基またはアルコキシ基、好ましくはアルキル基、より好ましくはC1−6アルキルである}
を有してもよい。
【0030】
[0030]このような化合物の具体例には、
【化11】



および
【化12】



がある。
【0031】
[0031]本発明の非重合性化合物は、式(VI)
【化13】



{式中:Rは、炭素数20以下の、直鎖状、分枝状もしくは環状構造のアルキル基もしくはアルコキシ基、または芳香族基、好ましくはアルキル基または単環式芳香族炭化水素基、より好ましくはメチル、n−ブチル、メトキシまたはフェニルであり;RおよびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、および芳香族基、より好ましくはメチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じ基または異なる基であり;nは、1〜20,000単位、好ましくは1〜700単位、より好ましくは1〜15単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;Rは、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合またはポリエーテル結合または過フッ素化ポリエーテル結合、好ましくは30個以下の炭素および/または酸素結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、または過フッ素化ポリエーテル結合であり;RおよびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、または芳香族基、より好ましくはメチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基であり;Rは、炭素数1〜22のアルキル基またはアルコキシ基、好ましくはアルキル基、より好ましくはC1−6アルキルである}
を有してもよい。
【0032】
[0032]本発明の非重合性化合物は、式(VII)または(VIII)
【化14】



{式中、RおよびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、および芳香族基、より好ましくはメチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じ基または異なる基であり;nは、1〜20,000単位、好ましくは1〜700単位、より好ましくは1〜15単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;Rは、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合またはポリエーテル結合または過フッ素化ポリエーテル結合、好ましくは30個以下の炭素および/または酸素結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、または過フッ素化ポリエーテル結合であり;RおよびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、または芳香族基、より好ましくはメチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基であり;Rは、炭素数1〜22のアルキル基またはアルコキシ基、好ましくはアルキル基、より好ましくはC1−6アルキルである}
を有してもよい。
【0033】
[0033]本発明は、本明細書に記載の本発明のモノマー化合物を含有する配合物から製造されるポリマー、またはこのようなモノマーから製造されるポリマー、および/または本明細書に記載の本発明の非重合性化合物を含む、耐汚染性の表面を有する眼用レンズを含む。このような眼用レンズを製造するために、本発明の重合性シリコーン化合物、着色剤、反応性希釈剤、強化剤、紫外線吸収剤、フリーラジカル重合開始剤、および相溶化溶媒を含むモノマー混合物をフリーラジカル重合により鋳型形状に硬化してもよい。あるいは、本明細書に記載のもの以外の重合性シリコーン化合物、本発明の非重合性双性イオン性シリコーン化合物、着色剤、強化剤、紫外線吸収剤、フリーラジカル重合開始剤、および反応性希釈剤を含むモノマー混合物をフリーラジカル重合により鋳型形状に硬化してもよい。
【0034】
[0034]また、本発明は眼用レンズケア溶液および眼用レンズ包装溶液も想到し、これらは共に本発明の非重合性双性イオン性ホスホリルコリン基含有シリコーン化合物を含む。
【0035】
[0035]本発明はさらに、本明細書に記載のモノマー化合物から製造されるポリマー、このようなモノマーから製造される本明細書に記載のポリマー、および/または本明細書に記載の非重合性双性イオン性シリコーン化合物を含む通気性創傷ドレッシングも想到する。
【0036】
[0036]本発明のさらに別の実施形態は、医療用具、例えば、抗血栓性表面を有する冠動脈ステントまたは血管ステントであり、この抗血栓性表面は、本明細書に開示される双性イオン性ホスホリルコリン基および少なくとも1つのビニル末端基を含む重合性シリコーン化合物から製造されるポリマーを含む。
【0037】
[発明の実施例]
[0037]本発明による1つ以上の双性イオン性ホスホリルコリン部分を有する重合性化合物の例示的な具体例としては、以下のものが挙げられる。
【化15】



【0038】
[0038]上記化合物4はフッ素化ポリエチレンオキサイドブロックを示すが、フッ素含有材料への酸素の溶解性は非常に高いため、フッ素原子を組み込むと酸素透過性(Dk)を劇的に増大することができるので、フッ素化ポリエーテルブロックはフッ素化ポリエチレンオキサイドのみに限定される必要はなく、他のフッ素化ポリエーテルを包含することもできる。
【0039】
[0039]本発明による双性イオン性ホスホリルコリン部分を有する非重合性化合物の例示的な具体例としては、以下のものが挙げられる。
【化16】



【0040】
[0040]本発明のこれらの化合物および他の化合物は、市販のシリコーンおよび他の成分から、当業者に周知の方法を使用して合成することができる。例えば、脂肪族ヒドロキシル基末端シリコーンを2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホランとアルカリ性物質の存在下で反応させ、ヒドロキシル基から水素原子を脱離し、2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン基から塩素原子を脱離して、2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン部分が脂肪族結合によりシリコーン部分に結合している中間体を生成することができる。次いで、中間体を脂肪族アミンと反応させる。式1および2の化合物を製造するために、例えば、脂肪族アミンはジメチルアミノエチルメタクリレートであってもよく、得られた反応生成物は、双性イオン性化合物の生成したアンモニウム部分に結合したビニル基(メタクリレートからの)を含有してもよい。下記の合成例1を参照されたい。式3の化合物を製造するために、n−ブチルジメチルアミンを使用してもよく、ビニル基が別の工程で、双性イオン性部分から離れた分子部分に結合してもよい。合成例2および3に記載のように、本発明による双性イオン性ホスホリルコリン基を含む非重合性シリコーン化合物を製造するためには、ビニル基を分子に導入しない。前述の方法により、ホスホリルコリンアニオンの方がアンモニウムカチオンよりもシリコーン部分に近い、双性イオン性ホスホリルコリン基を含むシリコーン化合物が得られる。式5の化合物に示すように、本発明はまた、アンモニウムカチオンの方がホスホリルコリンアニオンよりもシリコーン部分に近い、双性イオン性ホスホリルコリン基を含むシリコーン化合物も提供する。本発明の化合物のこれらの変種は、適した反応物および反応工程の順番を適切に選択することによって製造することができる。即ち、まずアミンをシリコーン部分に導入した後、得られた中間体をアルキル置換2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン化合物と反応させてもよい。
【0041】
[0041]一官能性および二官能性の反応性モノマーおよびマクロマーをフリーラジカル、イオン、有機金属またはグループトランスファー機構により、当業者に既知の適した触媒または開始剤(熱または放射線源の存在下または非存在下で誘導され得る)を用いて重合させることができる。
例示的な合成例は以下の通りである。
【0042】
[合成例]
[0042]合成例1.2つの重合性ホスホリルコリン部分を含有する重合性シリコーン化合物の合成。この化合物は、上記化合物2で示した種類のものである。
工程1:
250mLの四口丸底フラスコに、カルビノール末端PDMS(ゲレストから入手したDMS−C16)38.15g、トリエチルアミン7.92gおよび無水THF100mLを加えた。混合物を−20℃未満に冷却した。次いで、混合物の温度を−20℃未満に維持しながら、2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン(COP)(10.96g)の無水THF(50mL)溶液をフラスコに滴下した。反応を−20℃未満で3時間継続した後、室温にゆっくり加温した。塩副生成物を濾去し、溶媒を減圧除去してビス−オキソ−ジオキサホスホランシリコーン中間体を得た。
【化17】



工程2:
工程1で得られたビス−オキソ−ジオキサホスホランシリコーン中間体20gの混合物を、冷却器およびNスパージを備えた二口RBF内で無水ジメチルアミノエチルメタクリレート2.60gおよび無水アセトニトリル40mlと混合した。反応混合物を密閉容器内で24時間加熱した。反応後、アセトニトリルをロータリーエバポレーターで留去し、粗生成物をシクロヘキサンで繰り返し洗浄した。シクロヘキサンを除去し、重合性二官能化PC含有シリコーンを得た。化合物の構造的純度を分光学的方法で確認した。
【化18】



【0043】
[0043]合成例2:ホスホリルコリン部分を含有する非重合性シリコーン組成物の合成。
工程1:ヒドロキシプロピル−nBuPDMS(HPnBuPDMS)の合成
【化19】



アリルアルコール35.10gおよび無水ヘキサン65gを、マグネチックスターラー、熱電対温度計、冷却器、および滴下漏斗を備えた500mlの丸底フラスコに仕込んだ。1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)(カルステッド触媒)錯体(0.16g)のキシレン溶液(約2wt%Pt)を反応媒体に添加した。混合物を撹拌し、均質な溶液を得た。ゲレストから市販されているn−ブチルポリジメチルシロキサンハイドライド123.60gを60℃のアリルアルコール溶液に45分間かけて滴下した。反応を終夜(約18時間)放置し、ジエチレンエチレンジアミンでクエンチした。アリルアルコールが全て除去されるまでヘキサン中の粗反応混合物を2:1メタノール:水(v/v)混合物で抽出した。ラフィネートを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ヘキサンをロータリーエバポレーターで35℃にて減圧留去し、生成物を無色の油状物として得た。生成物(HPnBuPDMS)の構造的純度をH NMRで確認した。
工程2:mPDMSOPの合成
【化20】



HPnBuPDMS(工程1から)111.44g、トリエチルアミン14.91gおよび無水テトラヒドロフラン(THF)溶媒50mlを、マグネチックスターラー、窒素入口および出口、ならびに滴下漏斗を備えた500mlの三口RBFに仕込んだ。反応混合物をNブランケット下で−20℃に冷却し、2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン(COP)15gを無水THF75gに溶解したものを滴下漏斗から滴下した。COP溶液の滴下が完了した後、反応混合物を−10℃で6時間撹拌した。混濁した反応混合物を濾過して、トリエチルアミン塩酸塩沈殿物を除去し、濾液を減圧下で蒸発させて、オキソ−ジオキサホスホランシリコーン中間体、mPDMSOPを得た。
工程3:mPDMSPCの合成
【化21】



mPDMSOP(工程2から)20gおよびn−ブチルジメチルアミン2.05gを無水アセトニトリルに溶解させ、N雰囲気下、65℃で24時間反応させた。反応後、アセトニトリルをロータリーエバポレーターで留去し、粗生成物をシクロヘキサンで繰り返し洗浄した。得られた生成物を減圧乾燥し、PC置換シリコーン(mPDMSPC)を得た。生成物の構造的純度を分光学的方法で確認した。
【0044】
[0044]合成例3.ホスホリルコリン部分とエーテル基を含有する非重合性シリコーン組成物の合成。
工程1:ヒドロキシエチルオキシプロピル−nBuPDMS(HEPnBuPDMS)の合成
【化22】



2−アリルオキシエタノール61.28gおよび無水ヘキサン65gを、マグネチックスターラー、熱電対温度計、冷却器、および滴下漏斗を備えた500mlの丸底フラスコに仕込んだ。1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン白金(0)(カルスデッド触媒)錯体(0.16g)のキシレン溶液(約2wt%Pt)を反応媒体に添加した。混合物を撹拌し、均質な溶液を得た。ゲレストから市販されているn−ブチルポリジメチルシロキサンハイドライド(nBuPDMSH)123.60gを60℃の2−アリルオキシエタノール溶液に45分間かけて滴下した。反応を終夜(約18時間)放置し、ジエチレンエチレンジアミンでクエンチした。アリルアルコールが全て除去されるまでヘキサン中の粗反応混合物を2:1メタノール:水(v/v)混合物で抽出した。ラフィネートを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ヘキサンをロータリーエバポレーターで35℃にて減圧留去し、生成物(>90%)を無色の油状物として得た。生成物の構造的純度をH NMRで確認した。
工程2:mPDMSEPOPの合成
【化23】



HEPnBuPDMS(工程1から)117g、トリエチルアミン14.91gおよび無水テトラヒドロフラン(THF)溶媒50mlを、マグネチックスターラー、窒素入口および出口、ならびに滴下漏斗を備えた500mlの三口RBFに仕込んだ。反応混合物をNブランケット下で−20℃に冷却し、2−クロロ−2−オキソ−1,3,2−ジオキサホスホラン(COP)15gを無水THF75gに溶解したものを滴下漏斗から滴下した。COP溶液の滴下が完了した後、反応混合物を−10℃で6時間撹拌した。混濁した反応混合物を濾過して、トリエチルアミン塩酸塩沈殿物を除去し、濾液を減圧下で蒸発させて、オキソ−ジオキサホスホランシリコーン中間体、mPDMSEPOPを得た。
工程3:mPDMSPCの合成
【化24】



mPDMSEPOP(工程2から)20gおよびn−ブチルジメチルアミン1.96gを無水アセトニトリルに溶解させ、N雰囲気下、65℃で反応させた。反応後、アセトニトリルをロータリーエバポレーターで留去し、粗生成物をシクロヘキサンで繰り返し洗浄した。化合物(mPDMSOP)の構造的純度をH NMRで確認した。得られた生成物を減圧乾燥し、PC置換シリコーン(mPDMSPC)を得た。生成物の構造的純度を分光学的方法で確認した。
【0045】
[化合物の使用]
[0045]本発明は、2種類の化合物、即ち、双性イオン性ホスホリルコリン基および少なくとも1つのビニル基を含む重合性シリコーン化合物と、双性イオン性ホスホリルコリン基を含む非重合性シリコーン化合物を提供する。双性イオン性ホスホリルコリン基および少なくとも1つのビニル基を含む重合性シリコーン化合物は、医療用具用の重合性成分として、眼用レンズ製造用配合物の重合性成分として使用することができる。本発明によって提供される双性イオン性ホスホリルコリン基を含むシリコーン化合物は2種類とも、抗血栓性および/または耐汚染性を付与するために、眼用レンズ配合物の成分として、眼用レンズの後処理用の成分として、眼用レンズ包装溶液の成分として、眼用レンズケア溶液の添加剤として、プラズマ放電またはグロー放電による医療用具の表面改質用のコーティング層として、組織接着バリアの有効成分として、液体接着剤配合物の有効成分として、カテーテルコーティング用配合物の有効成分として、通気性創傷ドレッシングおよび医療用具の有効成分として使用することができる。当業者には、本明細書で請求する新規な化合物をこのような用途に利用し得る方法が容易に分かるであろう。しかし、説明のため、これらの有用物の幾つかについて以下でさらに詳細に説明する。
【0046】
[0046]眼用レンズ:本明細書に記載の重合性および非重合性双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーンをコンタクトレンズモノマー配合物の有効成分として使用し、タンパク質付着物が非常に少なく、脂質付着が低減するシリコーンハイドロゲルレンズを得ることができる。これらの利点は、本化合物を組み込んだ配合物から製造されるレンズの表面の親水性から生じるものと考えられる。本明細書に開示される重合性モノマーは、レンズ配合物に使用されると、湿潤環境では分子のイオン性双性イオン性ホスホリルコリン部分が分子の疎水性シリコーン部分に優先して表面に移動するため、共有結合耐汚染性表面を形成することになる。
【0047】
[0047]本発明によるレンズ用途では、使用するモノマー混合物は、本発明の重合性材料を従来の様々なレンズ形成モノマーおよび化合物と混合して含むことになる。レンズ形成モノマーは全て、通常、フリーラジカル重合により重合可能なモノマー、通常、活性化不飽和基、最も好ましくはエチレン性不飽和(ビニル)基であろう。従来のレンズ形成モノマーは、フリーラジカル重合によって重合可能な低分子量化合物であってもよく、または、プレポリマーまたはマクロモノマーとも称される比較的高分子量の化合物であってもよい。任意選択により、初期モノマー混合物は、溶媒、着色剤、強化剤、紫外線吸収剤、およびコンタクトレンズの分野で既知の他の材料などの追加の材料を含んでもよい。代表的な溶媒は、米国特許第5,260,000号明細書(Nanduら)および米国特許第6,020,445号明細書(Vanderlaanら)に開示されている。
【0048】
[0048]本共重合体は、重合を誘導するためにモノマー混合物を可視光線または紫外線などの光線、熱、またはこれらの両方に暴露する従来のフリーラジカル重合法で容易に鋳型形状に硬化することができる。代表的なフリーラジカル熱重合開始剤は、過酸化アセタール、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、過酸化ステアロイル、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシピバレート、およびパーオキシジカーボネートなどの有機化酸化物であり、これらは全モノマー混合物の約0.01〜1重量パーセントの濃度で使用される。代表的な紫外線開始剤は、ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインエチルエーテルなどの当該技術分野で既知のものである。
【0049】
[0049]当業者には、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの一般的な製造方法は周知である。例えば、米国特許第4,600,571号明細書(Leeら)、米国特許第7,268,198号明細書(Kunzlerら)、および米国特許第7,540,609B2号明細書(Chenら)を参照されたい。本開示に基づいて、当業者には、本明細書に開示される新規な双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーン化合物を組み込んだシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの製造方法が容易に分かるであろう。
【0050】
[0050]本明細書に開示される非重合性双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーンモノマーは、製造プロセスの硬化工程の後で、他の重合性レンズ成分を有する相互侵入網目構造高分子(IPN)を支持する媒体の役割を果たす。高分子量非重合性PC含有シリコーンを配合物に添加して、IPN構造を支持してもよい。高分子量非重合性双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーンを使用して、コンタクトレンズの製造後および装用中の浸出物の存在を低減してもよい。別の実施形態では、重合性および非重合性双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーンを両方とも、コンタクトレンズ配合物に使用してもよい。
【0051】
[0051]また、本明細書に開示される重合性シリコーンを後処理工程時に組み込み、コンタクトレンズ上に双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーン表面コーティングを形成することができる。このプロセスでは、コンタクトレンズを、双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーンモノマーを含有する溶液で処理した後、適したラジカル開始剤の存在下で重合して前記コーティングを得る。非重合性双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーンモノマーは、また、ホスホリルコリン結合シリコーンのコンタクトレンズマトリックスへの含有を支持するため、製造プロセス中、レンズ包装溶液にも有用となるであろう。これは、撹拌、超音波処理、または熱、蒸気、熱放射源、もしくは他の放射線源などのエネルギー源を使用することによって達成することができる。或いは、非重合性双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーンのコンタクトレンズへの組み込みは、製造プロセスの滅菌工程中に達成することができる。
【0052】
[0052]眼用レンズケア溶液:非重合性双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーンは、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズに表面濡れ性/潤滑性を付与するコンタクトレンズケア溶液の相溶化成分として使用することができる。非重合性双性イオン性ホスホリルコリン含有化合物は、レンズケア配合物中に存在する抗微生物成分および他の成分を補完するために使用することができる。本発明の化合物によって付与される生物汚染性および抗微生物性の両方を兼ね備えることにより、コンタクトレンズを清浄にし、消毒する非常に有効なレンズケア溶液が可能になる。
【0053】
[0053]通気性創傷ドレッシング:双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーンを同様に配合物に組み込み、創傷部接触層としてまたは滲出性創傷用の吸収性ドレッシングとして使用される通気性フィルム構造体を製造することができる。他方、本明細書に開示される非重合性双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーンモノマーは、製造プロセスの硬化工程の後に、重合性創傷ドレッシング成分を有する相互侵入網目構造高分子(IPN)を支持する媒体の役割を果たすことができる。高分子量(重量平均分子量50,000〜1,500,000ダルトン)の非重合性双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーンを使用して、コンタクトレンズの製造後および装用中の浸出物の存在を低減してもよい。さらに別の実施形態では、重合性および非重合性双性イオン性ホスホリルコリン含有シリコーンを両方とも、コンタクトレンズ配合物に添加してもよい。
【0054】
[0054]流体を保持できる小さい連続気泡を有する、シート状または他の形状の発泡ポリマー構造体は、当業者に既知の方法で製造することができる。ポリマー構造体のホスホリルコリンを多く含む表面は細菌バリアの役割をすることになり、一方、シリコーン成分は、酸素の透過を可能にし、より迅速な創傷治癒を促進することになる。
【0055】
[0055]抗血栓性用途:本発明の重合性シリコーン化合物から製造されるポリマーは、血小板の粘着および活性化が低減する抗血栓性表面を形成する。このようなものとして、それらは、冠動脈ステントおよび血管ステントなどの血液に接触する医療用具に使用するのに適している。当業者は、このような医療用具を製造またはコーティングするポリマー系の使用に精通している。例えば、米国特許第5,837,313号明細書(Drug Release Stent Coating Process)、米国特許第6,099,563号明細書(Substrates,Particularly Medical Devices,Provided with Bio−Active/Biocompatible Coatings)、米国特許第6,248,127Bl号明細書(Thromboresistant Coated Medical Device)、および米国特許第6,517,889Bl号明細書(Process for Coating a Surface of a Stent)を参照されたい。次の出版物も、抗血栓性の付与におけるホスホリルコリン化合物の使用に関する一般的な指針を示している。Yoneyamaら、“The vascular prosthesis without pseudointima prepared by antithrombogenicphospholipid polymer,”Biomaterials 23:1455−1459(2002);Ishiharaら、“Reduced thrombogenicity of polymers having phospholipid polar groups,”J.Biomed.Mater.Res.,24:1069−1077(1990);Xuら、“Ozone−induced grafting phosphorylcholine polymer ontosilicone film to improve hemocompatibility,”Colloids and Surfaces B:Biointerfaces,30:215−223(2003)。本発明の新規な双性イオン性化合物を使用して、ホスホリルコリン化合物を含む既知の化合物について記載されているものと同様に医療用具を製造してもよい。
【0056】
[0056]本発明の特定の例示的実施形態を前述の明細書中に示し、記載してきた。しかし、当業者には、本発明の原理および精神から逸脱することなく例示的実施形態に変更をなし得ることが分かるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双性イオン性ホスホリルコリン基および少なくとも1つのビニル末端基を含む重合性シリコーン化合物。
【請求項2】
前記シリコーン化合物が、重量平均分子量500〜50,000ダルトンのシリコーン部分を含み、前記双性イオン性ホスホリルコリンがリン酸アニオンとアンモニウムカチオンを含み、前記ビニル末端基がカルボニル基に隣接している、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
次式
【化1】



{式中:
は、炭素数20以下の、直鎖状、分枝状もしくは環状構造のアルキル基もしくはアルコキシ基、または芳香族基であり;
およびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基から選択される同じ基または異なる基であり;
nは、1〜700単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
は、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、過フッ素化ポリエーテル結合、カルバメート結合、エステル結合、アミド結合、または尿素結合であり;
およびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環であり;
は、Hまたは炭素数1〜6のアルキル基であり;
Xは、O、NH、またはN−C1−6アルキルである}
を有する、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
が、メチル、n−ブチル、メトキシまたはフェニルであり;
およびRが、メチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じ基または異なる基であり;
nが、1〜15単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
が、30個以下の炭素および/または酸素結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、または過フッ素化ポリエーテル結合であり;
およびRが、メチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じ基または異なる基である、
請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、n−ブチルであり;
およびRが、メチル基であり;
nが、11であり;
が、3個の炭素結合原子を有するアルキレン結合であり;
およびRが、メチルであり、
が、メチルであり、
Xが、Oである、
請求項4に記載の化合物であって、
次の構造、
【化2】



を有する化合物。
【請求項6】
次式
【化3】



{式中、
およびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基から選択される同じまたは異なる基であり;
nは、1〜700単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
は、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、過フッ素化ポリエーテル結合、カルバメート結合、エステル結合、アミド結合、または尿素結合あり;
およびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環であり;
は、Hまたは炭素数1〜6のアルキル基であり;
Xは、O、NH、またはN−C1−6アルキルである}
を有する請求項1または2に記載の化合物。
【請求項7】
およびRが、メチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じまたは異なる基であり;
nが、1〜15単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
が、30個以下の炭素および/または酸素結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、または過フッ素化ポリエーテル結合であり;
およびRは、メチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じまたは異なる基である、
請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
およびRが、メチルであり;
nが、11であり;
が、3個の炭素結合原子を有するアルキレン結合であり;
およびRが、メチルであり、
が、メチルであり、
Xが、Oである、
請求項7に記載の化合物であって、
次の構造、
【化4】



を有する化合物。
【請求項9】
およびRが、メチルであり;
nが、10であり;
が、合計25個の炭素および酸素結合原子を有する過フッ素化ポリエーテル結合であり;
およびRが、メチルであり、
が、メチルであり、
Xが、Oである、
請求項7に記載の化合物であって、
次の構造、
【化5】



を有する化合物。
【請求項10】
次式
【化6】



{式中:
は、炭素数10以下の直鎖状または分枝状低分子量またはオリゴマー構造のアルキレン結合基またはポリエーテル結合基であり;
およびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基から選択される同じ基または異なる基であり;
nは、1〜700単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
は、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、過フッ素化ポリエーテル結合、カルバメート結合、エステル結合、アミド結合、または尿素結合であり;
およびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環であり;
は、Hまたは炭素数1〜6のアルキル基であり;
は、炭素数1〜22のアルキル基またはアルコキシ基であり;
Xは、O、NH、またはN−C1−6アルキルである}
を有する、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項11】
が、(CHであり;
およびRが、メチルであり;
nが、11であり;
が、(CHであり;
およびRは、メチルであり;
が、メチルであり;
が、n−ブチルであり;
Xが、Oである、
請求項10に記載の化合物であって、
次の構造、
【化7】



を有する化合物。
【請求項12】
次式
【化8】



{式中:
は、炭素数10以下の直鎖状または分枝状低分子量またはオリゴマー構造のアルキレン結合基またはポリエーテル結合基であり;
およびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基から選択される同じ基または異なる基であり;
nは、1〜700単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
は、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、過フッ素化ポリエーテル結合、カルバメート結合、エステル結合、アミド結合、または尿素結合であり;
およびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環であり;
は、Hまたは炭素数1〜6のアルキル基であり;
は、炭素数1〜22のアルキル基またはアルコキシ基であり;
Xは、O、NH、またはN−C1−6アルキルである}
を有する、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項13】
が、CHであり;
およびRが、メチルであり;
nが、11であり;
が、CHであり;
およびRが、メチルであり;
が、メチルであり;
が、n−プロピルであり;
Xが、Oである、
請求項12に記載の化合物であって、
次の構造、
【化9】



を有する化合物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物、または請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物を含有する配合物を重合することによって生成するポリマー。
【請求項15】
重合が、熱、紫外線、可視光線、または別の放射線源の存在下でフリーラジカル重合開始剤によって開始される、請求項14に記載のポリマー。
【請求項16】
前記重合開始剤が、過酸化アセタール、過酸化ラウロイル、過酸化デカノイル、過酸化ステアロイル、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシピバレート、およびパーオキシジカーボネートからなる群から選択される、請求項15に記載のポリマー。
【請求項17】
双性イオン性ホスホリルコリン末端基を含む非重合性シリコーン化合物。
【請求項18】
前記シリコーン化合物が、重量平均分子量1000〜1,500,000ダルトンのシリコーン部分を含み、前記双性イオン性ホスホリルコリン末端基がリン酸アニオンとアンモニウムカチオンを含む、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
次式
【化10】



{式中:
は、炭素数20以下の、直鎖状、分枝状もしくは環状構造のアルキル基もしくはアルコキシ基、または芳香族基であり;
およびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基から選択される同じ基または異なる基であり;
nは、1〜20,000単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
は、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合またはポリエーテル結合または過フッ素化ポリエーテル結合であり;
およびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環であり;
は、炭素数1〜22のアルキル基またはアルコキシ基である}
を有する、請求項17または18に記載の化合物。
【請求項20】
が、アルキル基または単環式芳香族炭化水素基であり;
およびRが、アルキル基、アルコキシ基および芳香族基から選択される同じ基または異なる基であり;
nが、1〜700単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
およびRが、同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基、または芳香族基であり;
が、アルキル基である、
請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
が、メチル、n−ブチル、メトキシまたはフェニルであり;
およびRが、メチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じ基または異なる基であり;
nが、1〜15単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
が、30個以下の炭素および/または酸素結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、または過フッ素化ポリエーテル結合であり;
およびRは、メチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じ基または異なる基であり;
は、C1−6アルキルである、
請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
次の構造、
【化11】



を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
次の構造、
【化12】



を有する、請求項21に記載の化合物。
【請求項24】
次式
【化13】



{式中:
は、炭素数20以下の、直鎖状、分枝状もしくは環状構造のアルキル基もしくはアルコキシ基、または芳香族基であり;
およびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基から選択される同じ基または異なる基であり;
nは、1〜20,000単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
は、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合またはポリエーテル結合または過フッ素化ポリエーテル結合であり;
およびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環であり;
は、炭素数1〜22のアルキル基またはアルコキシ基である}
を有する、請求項17または18に記載の化合物。
【請求項25】
が、アルキル基または単環式芳香族炭化水素基であり;
およびRが、アルキル基、アルコキシ基および芳香族基から選択される同じ基または異なる基であり;
nは、1〜700単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
およびRは、同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基、または芳香族基であり;
は、アルキル基である、
請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
が、メチル、n−ブチル、メトキシまたはフェニルであり;
およびRが、メチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じ基または異なる基であり;
nが、1〜15単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
が、30個以下の炭素および/または酸素結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、または過フッ素化ポリエーテル結合であり;
およびRが、メチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じ基または異なる基であり;
が、C1−6アルキルである、
請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
次式
【化14】



または、次式
【化15】



{式中、
およびRは、アルキル基、トリアルキルシロキシ基、置換シリコーン基、アルコキシ基、脂環式基、および芳香族基から選択される同じ基または異なる基であり;
nは、1〜20,000単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
は、30個以下の結合原子を有するアルキレン結合またはポリエーテル結合または過フッ素化ポリエーテル結合であり;
およびRは、炭素数3〜6の同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基もしくは芳香族基または脂環式環であり;
は、炭素数1〜22のアルキル基またはアルコキシ基である}
を有する、請求項17または18に記載の化合物。
【請求項28】
およびRが、アルキル基、アルコキシ基および芳香族基から選択される同じ基または異なる基であり;
nが、1〜700単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
およびRが、同じまたは異なるアルキル基、アルコキシ基、または芳香族基であり;
が、アルキル基である、
請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
およびRが、メチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じ基または異なる基であり;
nが、1〜15単位の繰り返しシリコーン単位の数であり;
が、30個以下の炭素および/または酸素結合原子を有するアルキレン結合、ポリエーテル結合、または過フッ素化ポリエーテル結合であり;
およびRが、メチル基、n−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、またはフェニル基から選択される同じ基または異なる基であり;
が、C1−6アルキルである、
請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のモノマー化合物を含有する配合物から製造されるポリマー、請求項14〜16のいずれか1項に記載のポリマー、および/または請求項17〜29のいずれか1項に記載の化合物を含む、耐汚染性表面を有する眼用レンズ。
【請求項31】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の重合性シリコーン化合物、着色剤、反応性希釈剤、強化剤、紫外線吸収剤、フリーラジカル重合開始剤、および相溶化溶媒を含むモノマー混合物をフリーラジカル重合により鋳型形状に硬化する、請求項30に記載の眼用レンズ。
【請求項32】
重合性シリコーン化合物、請求項17〜29のいずれか1項に記載の化合物、着色剤、強化剤、紫外線吸収剤、フリーラジカル重合開始剤、および反応性希釈剤を含むモノマー混合物をフリーラジカル重合により鋳型形状に硬化する、請求項30に記載の眼用レンズ。
【請求項33】
請求項17〜29のいずれか1項に記載の化合物を含む、眼用レンズケア溶液。
【請求項34】
請求項17〜29のいずれか1項に記載の化合物を含む、眼用レンズ包装溶液。
【請求項35】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のモノマー化合物から製造されるポリマー、請求項14〜16のいずれか1項に記載のポリマー、および/または請求項17〜29のいずれか1項に記載の化合物を含む、通気性創傷ドレッシング。
【請求項36】
非血栓性表面を有する医療用具であって、前記表面が請求項1〜13のいずれか1項に記載のモノマー化合物から製造されるポリマーを含む医療用具。
【請求項37】
冠動脈ステントまたは血管ステントとして構成される、請求項36に記載の医療用具。
【請求項38】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のモノマーから製造されるポリマーのコンタクトレンズにおける使用。
【請求項39】
医療用具に非血栓性表面を形成するための、請求項1〜13のいずれか1項に記載のモノマーから製造されるポリマーの使用。
【請求項40】
請求項17〜29のいずれか1項に記載のモノマーから製造されるポリマーのコンタクトレンズケア溶液または創傷ドレッシングにおける使用。

【公表番号】特表2012−530052(P2012−530052A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515011(P2012−515011)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/037576
【国際公開番号】WO2010/147779
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】